JP6100022B2 - ポリオレフィン微多孔膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法に関する。
ポリオレフィン微多孔膜は、種々の物質の分離や選択透過分離膜、及び隔離材等として広く用いられており、その用途例としては、精密ろ過膜、リチウムイオン電池や燃料電池等の電池のセパレータ、コンデンサー用セパレータ、又は機能材を孔の中に充填させ新たな機能を出現させるための機能膜の母材などが挙げられる。中でも、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、タブレットPC、デジタルカメラなどに広く使用されているリチウムイオン電池用のセパレータとして、ポリオレフィン微多孔膜が好適に使用されている。
リチウムイオン電池等の特性や安全性は、セパレータの性能と密接な関係がある。例えば、電池の出力特性や、シャットダウンに関わる安全特性等は、セパレータの特性と密接な関係がある。
そのため、リチウムイオン電池等の電池のセパレータとして用いられるポリオレフィン微多孔膜についても、透過性、機械的特性、シャットダウン性等の性能面からの検討がなされている。
ところで、微多孔膜の製造方法としては、乾式法、湿式法、界面剥離法等が知られている。乾式法は非多孔質シートを延伸することによって孔を形成する方法であり、界面剥離法は、高分子原材料と粒子とを混ぜて非多孔質シートを形成し、延伸過程における延伸力によってポリマーと粒子間の界面に割れを生じさせて孔を形成する方法である。一方、湿式法は、高分子原材料と可塑剤とを混合して押出し、次いで可塑剤を除去して孔を形成する方法である。
特許文献1では、湿式法で延伸速度を制御することにより、加熱圧縮時の透気度変化が小さいセパレータを製造する方法が開示されている。
特許第5021461号
自己放電の抑制は電池の重要な性能の一つである。電池は一般に、充電して放置しておくと、何もしていなくても自己放電を起こして、徐々に充電容量が減っていく。よって、二次電池としては、自己放電が起きにくく、使用できる電気量がより多い電池が好まれる。そのため、自己放電の抑制効果の高いセパレータを提供することの意義は大きい。また、近年、電池の高容量化に伴い、電池内部の空隙量がより小さくなってきており、電解液の浸透はより困難になってきている。そのため、電解液が確実に浸透するには時間を要するようになり、電池の生産性に大きく影響している。この観点から、注液性に優れるセパレータを提供することの意義も大きい。
しかしながら、これまで、リチウムイオン二次電池用セパレータとしたときに、自己放電が抑制されると共に、注液性にも優れるポリオレフィン微多孔膜は提供されていない。
特許文献1では、湿式法の延伸速度に着目しているが、速度の領域は異なり、自己放電特性や注液性に対する改善への影響について記載も示唆もない。
本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータとしたときに、自己放電が抑制されると共に、注液性にも優れるポリオレフィン微多孔膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、可塑剤等を抽出する前の延伸(一時延伸)及び可塑剤等を抽出した後の延伸(二次延伸)を採用する湿式法において、二次延伸工程における延伸速度を特定の範囲にすることで、リチウムイオン二次電池用セパレータとしたときに、自己放電が抑制されると共に、注液性にも優れるポリオレフィン微多孔膜が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(a)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材料を含む樹脂組成物を溶融混練し押出す押出工程、
(b)前記(a)工程で得られた押出物をシート状に成形するシート成形工程、
(c)前記(b)工程で得られたシート状成形物を、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸する一次延伸工程、
(d)前記(c)工程で得られた延伸シートから孔形成材料を抽出する抽出工程、及び
(e)前記(d)工程で得られたシートを、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸速度が60%/秒以上で延伸する二次延伸工程、
を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[2]
前記(e)工程における延伸速度が80%/秒以上である、[1]記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[3]
前記(e)工程における延伸速度が120%/秒以上である、[1]記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[4]
前記(e)工程において、少なくとも一軸方向に3倍以上に延伸する、[1]〜[3]いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[5]
前記(c)工程及び前記(e)工程における延伸総倍率が一軸方向に20倍未満である
、[1]〜[4]いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[6]
前記(e)工程において、下記式(1)に規定される温度範囲で延伸する、[1]〜[5]いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
(Tm−30(℃))〜Tm(℃) (1)
(式(1)において、Tmは前記ポリオレフィン組成物に含まれる樹脂のうち、最も多く含まれる樹脂の融点を示す。)
[7]
前記ポリオレフィン微多孔膜がリチウムイオン二次電池用セパレータである、[1]〜[6]いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池用セパレータとしたときに、自己放電が抑制されると共に、注液性にも優れるポリオレフィン微多孔膜の製造方法を提供できる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記することがある。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の製造方法は、以下の(a)から(e)の各工程を含む。
(a)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材料を含む樹脂組成物を溶融混練し押出す押出工程、
(b)前記(a)工程で得られた押出物をシート状に成形するシート成形工程、
(c)シート状成形物を、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸する一次延伸工程、
(d)前記(c)工程で得られた延伸シートから孔形成材料を抽出する抽出工程、及び
(e)前記(d)工程で得られたシートを、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸速度が60%/秒以上で延伸する二次延伸工程。
本実施の形態の製造方法は、前記工程を含む湿式法を採用することにより、均一な孔構造を達成し、電池用セパレータとして用いる場合に、自己放電の抑制効果が高い膜を提供できる。
上記(a)の溶融混練において用いられるポリオレフィン樹脂(以下、単に「PO」と略記することがある。)としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン等のポリオレフィンの単独重合体や、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン及びノルボルネンよりなる群から選ばれる少なくとも2つ以上のモノマーを重合して得られる共重合体が挙げられる。上記単独重合体は、エチレン又はプロピレンの単独重合体が好ましい。
上記POは、特に限定されず、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、予め混合した混合物とした後、孔形成材料等の他の成分と混合してもよいし、他の成分に別々に添加して混合して用いてもよい(以下、「混合物」との記載は、前記両方の場合を包含することがある。)。2種以上を用いると、セパレータのヒューズ温度や短絡温度の制御が容易となるため好ましい。例えば、粘度平均分子量(以下「Mv」と略記することがある。)50万以上の超高分子量POとMv50万未満のPOとの混合物は、その適度な分子量分布により、セパレータの強度に等方性を付与しやすいという観点からもより好ましい。なお、本明細書において、MvはASTM−D4020に準拠して測定されるものである。
PO微多孔膜全体のMvは、特に限定されないが、単独で使用する場合も、2種以上を併用する場合も、10万〜120万であることが好ましく、30万〜80万であることがより好ましい。Mvが10万以上であると、異物などに起因して短絡による発熱時に耐破膜性を発現しやすいため好ましく、120万以下であると押出工程での長手方向(原料樹脂吐出方向及び機械方向と同義。以下、「MD」と略記することがある。)への配向が抑制され、等方性を発現しやすいため好ましい。
本実施形態においては、より均一な孔構造の膜を得る観点から、上記ポリエチレンの混合物に、ポリプロピレン、特に、異なるMvを有する複数種のポリプロピレンを更に混合することが好ましい。理由は定かではないが、延伸工程を経た延伸シートがMD方向へ配向しやすくなるという特性を抑制し、結果として等方的な特性を得やすくなる為、より均一な孔構造を得ることができるのではないかと考えられる。更には、電池において短絡によって局所的に発熱が生じた際、ポリプロピレンの融点である160℃付近において、ポリプロピレンの融解による電池内部の吸熱作用が起こり安全性が高まる傾向となるため、ポリプロピレンを混合することが好ましい。
(a)工程の混練において、POとして、ポリエチレンとポリプロピレンを含む混合物を使用する場合、ポリプロピレンの混合量は、特に限定されないが、POの合計量に対して、1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。ポリプロピレンの混合量が1質量%以上であるとその混合による上記効果が発現しやすく、80質量%以下であると透過性を確保しやすくなる。
POの配合割合は、特に限定されないが、POと可塑剤と必要に応じて配合される無機材との合計質量に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
(a)工程において、POを含む樹脂組成物には、さらに、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料などの公知の添加剤を混合してもよい。
本実施形態において、孔形成材料とは、可塑剤や必要に応じて配合する無機材のことを指し、後の(d)抽出工程で孔形成材料を除去した際に微多孔膜の孔となる部分に相当する材料である。
可塑剤としては、沸点以下の温度でPOと均一な溶液を形成し得る有機化合物が挙げられる。具体的には、例えば、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n−デカン、n−ドデカン、パラフィン油(流動パラフィン)が可塑剤として挙げられる。これらのうち、パラフィン油、ジオクチルフタレートが好ましい。
可塑剤の配合割合は、特に限定されないが、得られるPO微多孔膜の気孔率の観点から、POと、可塑剤と、必要に応じて配合される無機材との合計質量に対して20質量%以上が好ましく、粘度の観点から90質量%以下が好ましい。押出機から押し出された後のMD配向を低減させやすいという観点から、この配合割合は好ましくは50〜80質量%であり、より好ましくは60〜75質量%である。
無機材としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニアが好ましい。
無機材の配合割合は、特に限定されないが、例えば、POと無機材との合計質量に対して、良好な隔離性を得る観点から5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、高い強度を確保する観点から99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
(a)工程における混練の方法としては、特に限定されないが、例えば、原材料の一部又は全部を必要に応じてヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて予め混合した後、全ての原材料を、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ニーダー、ミキサー等により溶融混練する方法が挙げられる。
本実施形態では、混練時において、原料のPOに酸化防止剤を所定の濃度で混合した後、それらの混合物の周囲を窒素雰囲気に置換し、窒素雰囲気を維持した状態で溶融混練を行うことが好ましい。溶融混練時の温度は、160℃以上が好ましく、180℃以上がさらに好ましい。また、その温度は300℃未満が好ましい。原料の組成やPO濃度によって好ましい温度範囲があるが、溶融混練時の温度は、PO微多孔膜のMD配向が軽減するような条件であると好ましい。例えば、原料のPOのMvが高い場合、250℃程度の高い温度で溶融混錬することにより、MD配向を抑制することが好ましい。
(a)工程においては、上記混練を経て得られた混練物が、T型ダイや環状ダイ等の押出機により押し出される。このとき、単層押出しであってもよく積層押出しであってもよい。押出しの際の諸条件は、特に限定されず、例えば公知の方法を採用できる。
次いで、(b)のシート成形工程において、上記(a)工程を経て得られた押出物をシート状に成形して冷却固化させる。シート成形により得られるシート状成形物は単層であってもよく、積層であってもよい。シート成形の方法としては、特に限定されないが、例えば、押出物を圧縮冷却により固化させる方法が挙げられる。冷却方法としては、特に限定されないが、例えば、冷風や冷却水等の冷却媒体に押出物を直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に押出物を接触させる方法が挙げられる。冷媒で冷却したロールやプレス機に押出物を接触させる方法が、膜厚制御が優れる点で好ましい。その場合の冷却温度は押出物が固化する温度であれば特に限定されないが、例えば、20〜90℃が好ましい。
次に(c)工程において、シート成形工程を経て得られたシート状成形物を少なくとも一回以上、少なくとも一軸以上の方向へ延伸する。このように、次の(d)工程(抽出工程)より前に行う延伸工程を「一次延伸」と呼ぶこととする。
一次延伸の延伸方法としては、特に限定されないが、ロール延伸機による一軸延伸、テンターによる幅方向(長手方向と直交する方向。以下、「TD」と略記することがある。)一軸延伸、ロール延伸機及びテンター、又は複数のテンターの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターやインフレーション成形による同時二軸延伸が挙げられる。より等方性の高いPO微多孔膜を得るという観点から、同時二軸延伸であることが好ましい。
一次延伸は、特に限定されないが、少なくとも一軸方向に3倍以上が好ましい。一次延伸を行うことで、孔径が均一に形成されやすくなる。一次延伸時に一軸延伸をする場合は、二次延伸は一次延伸と直行する方向に延伸するのが均一性の観点から好ましい。また、同じく均一性の観点から一次延伸時に二軸延伸を行ってもよい。一方で、透過性が悪化するのを防ぐため、(c)工程の一次延伸と(e)工程の二次延伸の両工程を併せたトータルの一軸方向の総延伸倍率をMD方向、TD方向それぞれ20倍未満、面積倍率で200倍以下が好ましい。
(d)の抽出工程では、延伸工程を経て得られた延伸シートから可塑剤と、必要に応じて無機材とを抽出する。抽出方法としては、特に限定されないが、抽出溶媒に延伸シートを浸漬する方法、延伸シートに対して抽出溶媒をシャワー等の噴霧により接触させる方法等が挙げられる。抽出溶媒としては、特に限定されないが、POに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤や無機材に対しては良溶媒であり、沸点がPOの融点よりも低いものが望ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン、フルオロカーボン系化合物等のハロゲン化炭化水素類;エタノールやイソプロパノール等のアルコール類;アセトンや2−ブタノン等のケトン類;及びアルカリ水が挙げられる。抽出溶媒はこれらの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせて選択して用いられる。
なお、抽出の順序、方法及び回数については特に制限はない。また、抽出工程後に得られる延伸シートは、POを90質量%以上含む樹脂組成物から構成されるのが好ましい。POの含有量が90質量%以上であると、無機材など他の素材によって膜の均一性が阻害されて放電しやすくなることを抑制でき、自己放電特性が向上する。抽出の際、脱溶媒によってTDへの膜収縮が生じ、MD及びTDへの配向性が変化するため、テンションコントロールによって配向性を制御することが好ましい。
そして、(e)工程において、(d)の抽出工程を経た延伸シートを所定の温度で加熱して延伸する。このように、(d)の抽出工程の後に行う延伸工程を「二次延伸」と呼ぶこととする。二次延伸では、(d)の抽出工程を経た延伸シートを少なくとも一回以上、少なくとも一軸以上の方向へ延伸する。延伸方法としては、特に限定されないが、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機及びテンター、又は複数のテンターの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸が挙げられる。
二次延伸は、一軸延伸でも、二軸延伸でもよい。二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次延伸でもよい。またこれらを組み合わせて多段延伸を行ってもよい。延伸倍率は、特に限定されないが、少なくとも一軸方向に少なくとも1.5倍以上が好ましく、3倍以上に延伸するのがより好ましい。二軸方向に延伸する場合は、MD、TD少なくともどちらかの方向で1.5倍以上が好ましく、3.0倍以上延伸するのがより好ましい。この倍率を好ましい倍率である1.5倍以上、より好ましい倍率である3.0倍以上とすると、孔径をより小さく制御することができ、自己放電特性に優れる。
本実施形態の延伸工程には一次延伸と二次延伸があるが、両工程を合わせたトータルの一軸方向の総延伸倍率は、特に限定されないが、寸法安定性や延伸時の破断防止の点から、MD方向、TD方向それぞれ20倍未満、面積倍率で200倍以下であることが好ましい。
二次延伸温度は、特に限定されず、PO組成物に含まれる原料樹脂組成及び濃度を参照して選択することが可能である。延伸温度は、過大な延伸応力による破断を防ぐ観点から、(主要組成樹脂の融点−30℃)〜主要組成樹脂の融点の範囲であることが好ましい。主要組成樹脂がポリエチレンの場合、延伸温度は110℃以上であると好ましく、微多孔膜の強度を高める観点から130℃以下であると好ましい。延伸温度は、より好ましくは115〜129℃、更に好ましくは118〜127℃である。ここで、「主要組成樹脂」とはPO組成物に含まれる樹脂のうち、最も多く含まれる樹脂のことをいう。
二次延伸は、延伸軸方向に60%/秒以上の速度で延伸する必要があり、好ましくは80%/秒、さらに好ましくは120%/秒以上の速度で延伸する。二次延伸は多段延伸を行ってもよく、この場合、60%/秒以上の延伸速度で延伸する工程が、二次延伸工程の中で少なくとも一回実施されることで、より小孔径な微多孔膜を製造でき、自己放電特性に優れる。さらに驚くべきことには、二次延伸の速度を60%/秒以上にすると、理由は明らかではないものの、注液性が非常に良化することが分かった。また、二次延伸速度の上限は、特に限定されないが、孔径の大きさや電池に適用した際の出力の点から、1000%/秒以下が好ましい。
延伸速度は以下の様に算出される。
延伸速度(%/秒)=(延伸倍率×100−100)÷延伸時間(秒)
ここで、延伸倍率は「延伸後の長さ(m)÷延伸前の長さ(m)」により算出される。延伸時間は、実質的に延伸に使用した時間(秒)を用いる。延伸倍率は延伸機に入力する設定倍率を用いてもよいが、好ましくは、延伸する直前に膜に10cm四方のスタンプを押してから延伸を実施し、延伸前後のスタンプの長さを測定するのがよい。その際に延伸に使用した時間も実測することができる。
本実施形態では、高速延伸を行うことで注液性が予想以上に良化した。この理由は定かではないが、高速延伸を行うとより大きな延伸応力を得られることから、高速延伸を行うことによって非常に均一な孔径分布を有する微多孔膜を製造できるためではないかと考えている。また、注液性はセパレータ中の空隙量(=気孔率)と相関があるが、本実施形態の技術を用いると、微多孔膜中の空隙量を損なうことなく、均一な孔径分布形成を行うことができる結果、毛細管現象が顕著に効果を発揮し、飛躍的に注液性が良化したと予想している。
本実施形態において、(e)工程では、必要に応じて所定の温度にて熱固定を施してもよい。この際の熱処理の方法としては、特に限定されないが、テンターやロール延伸機を利用して、延伸及び緩和操作を行う熱固定方法が挙げられる。緩和操作とは、延伸により生じた応力を緩和する為に、膜のMD及び/又はTDへ、所定の緩和率で行う縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜のMD寸法を操作前の膜のMD寸法で除した値、又は、緩和操作後の膜のTD寸法を操作前の膜のTD寸法で除した値、あるいは、MD、TDの両方向で緩和した場合、MDの膜の緩和率とTDの膜の緩和率とを乗じた値のことである。
上記所定の温度は、特に限定されないが、熱収縮率の観点より100℃以上が好ましく、気孔率及び透過性の観点より140℃未満が好ましい。緩和率は、特に限定されないが、熱収縮率の観点より、0.9倍以下が好ましく、0.80倍以下であることがより好ましい。また、しわの発生を防止する観点、並びに気孔率及び透過性の観点より、緩和率が0.6倍以上であることが好ましい。緩和操作は、MD、TD両方向で行ってもよい。ただし、MD又はTDのいずれか一方の方向にのみ緩和操作を行ってもよく、これによって、操作方向のみでなく操作と直交する方向にも、熱収縮率を低減することが可能である。
本実施形態のPO微多孔膜の製造方法は、上記(a)〜(e)の各工程以外の他の工程を含むことができる。他の工程としては、特に限定されないが、例えば、上記熱固定の工程に加え、積層体であるPO微多孔膜を得るための工程として、単層体であるPO微多孔膜を複数枚重ね合わせる工程が挙げられる。また、本実施形態のPO微多孔膜の製造方法は、PO微多孔膜の表面に対して、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤の塗布、化学的改質などの表面処理を施す表面処理工程を含んでもよい。さらには、上記の無機材を、PO微多孔膜の片面又は両面に塗工して無機材層を備えたPO微多孔膜を得てもよい。この場合、PO微多孔膜の全体の厚みに対する無機材層の厚みの割合は、特に限定されないが、良好な隔離性を得る観点から1%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。また、高い強度を確保する観点から、無機材層の厚みの割合は99%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
更に、上記の後加工工程の後に、微多孔膜を巻回したマスターロールに対して、所定の温度の下でエージング処理を施し、その後、マスターロールの巻き返し操作を行うこともできる。これにより、通常MDに強く配向しているマスターロール内の微多孔膜の配向が緩和されやすくなり、より均一性の高いPO微多孔膜を得やすくなる。
上記の場合、マスターロールをエージング処理する際の温度は、特に限定されないが、35℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。また、PO微多孔膜の透過性保持の観点から、その温度は120℃以下が好ましい。エージング処理に要する時間は、特に限定されないが、24時間以上であると、上記効果が発現しやすいため好ましい。
本実施形態の製造方法によって得られるPO微多孔膜は、特に限定されないが、気孔率が、注液性や出力特性の点から、30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上であり、耐破膜性の点から、70%以下であることが好ましく、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下である。
本実施形態の製造方法によって得られるPO微多孔膜は、特に限定されないが、孔径が、自己放電特性の点から、0.040μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.045μm以上、さらに好ましくは0.050μm以上であり、注液性の点から、0.10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.08μm以下、さらに好ましくは0.07μm以下である。
本実施形態の製造方法によって得られるPO微多孔膜は、特に限定されないが、膜厚が、機械強度と透過性の観点から、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは3〜30μmである。
本実施形態の製造方法によって得られるPO微多孔膜は、特に限定されないが、透気度が、20μm相当の厚みで、透過性の点から、1000秒以下であることが好ましく、より好ましくは800秒以下、さらに好ましくは500秒以下であり、機械強度の点から、20秒以上であることが好ましく、より好ましくは50秒以上、さらに好ましくは100秒以上である。
本実施形態の製造方法によって得られるPO微多孔膜は、特に限定されないが、突刺強度が、耐電圧の点から、2N以上であることが好ましく、より好ましくは3N以上、さらに好ましくは4N以上である。
なお、本実施形態における各種特性(パラメータ)は、特に断りのない限り、後記の実施例における測定方法に準じて測定される。
上記のようにして得られたPO微多孔膜は、所望の形状に加工された後、例えば、リチウムイオン二次電池等のセパレータとして用いられる。本実施形態のPO微多孔膜からなるセパレータは、従来のセパレータと比較して、自己放電が抑制されると共に、注液性にも優れる。
本実施形態の製造方法により得られるセパレータを用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法は、特に限定されず、例えば、上記セパレータと、正極、負極、電解液等の公知のリチウムイオン二次電池と同様の各部材を用いて、公知の方法により製造する方法が挙げられる。
本実施形態の製造方法により得られるセパレータは、リチウムイオン二次電池の中でも特に、ノート型パソコン、電動工具、電気自動車、ハイブリッド自動車用といった高容量であることが必要なアプリケーションに好適である。かかる用途により、従来以上の安全性と電池特性とをリチウムイオン二次電池に付与させることが可能となる。また、本実施形態の製造方法により得られるセパレータは、高容量の円筒型リチウムイオン二次電池用セパレータとしても好適である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性は下記の方法により測定した。
(1)粘度平均分子量(Mv)
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求めた。その極限粘度[η]からポリエチレンのMvを次式により算出した。
[η]=6.77×10-4Mv0.67
同様に極限粘度[η]からポリプロピレンのMvを次式により算出した。
[η]=1.10×10-4Mv0.80
(2)膜厚(μm)
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて、室温23±2℃でPO微多孔膜の膜厚を測定した。
(3)気孔率(%)
10cm×10cm角の試料をPO微多孔膜から切り取ってサンプルを得、室温23±2℃におけるその体積(cm3)と質量(g)とを求めた。それらと膜密度(g/cm3)とから、PO微多孔膜の気孔率を次式により算出した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度は0.95g/cm3と一定にして計算した。
(4)透気度(秒)
JIS P−8117に準拠し、ガーレー式透気度計(東洋精器(株)製、G−B2(商標))により、室温23±2℃におけるPO微多孔膜の透気度を測定した。透気度とは100ccの空気が、6.452cm2の試料面積を通過する為に要する時間(秒)を指す。その後、以下の計算式により、20μm相当の透気度に換算した値を算出した。
20μm厚み相当の透気度(秒)=透気度(秒)÷膜厚(μm)×20(μm)
(5)突刺強度(N)
カトーテック製のハンディ圧縮試験器であるKES−G5(商標)を用いて、下記条件によりPO微多孔膜の突刺試験を行った。そのときの最大突刺荷重(N)を測定し、突刺強度とした。
試料ホルダーの開口部の直径:11.3mm
針先端の曲率半径:0.5mm
突刺速度:2mm/sec
雰囲気温度:23±2℃
(6)平均孔径(μm)、屈曲率、及び孔数(個/μm2
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定し、孔径d(μm)と屈曲率τ(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めた。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
τ=(d×(ε/100)×ν/(3L×Ps×Rgas))1/2
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求めた。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10-4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・sec・Pa))から次式を用いて求めた。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求めた。室温23±2℃にて、直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm3 )より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10-2kg/mol)から次式を用いて求めた。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
さらに、孔数B(個/μm2)は、次式より求めた。
B=4×(ε/100)/(π×d2×τ)
(7)自己放電特性、注液性
a.正極の作製
正極活物質として数平均粒子径2μmのリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2と、導電助剤として数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFともいう。)とを、LiCoO2:アセチレンブラック粉末:PVDF=86:7:7の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPともいう。)を固形分68質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを57.0mm幅にスリットして正極を得た。
b.負極の作製
負極活物質として数平均粒子径10μmの人造グラファイトMCMB、及び、バインダーとしてPVDFとを、MCMB:PVDF=90:10の質量比で混合した。得られた混合物にNMPを固形分74質量%となるように投入してさらに混合し、スラリー状の溶液を調整した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを58.5mm幅にスリットして負極を得た。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1mol/リットルとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
d.電池組立
正極、後記のPO微多孔膜及び負極を積層した後、常法により巻回電極体を作製した。なお、PO微多孔膜の厚みによって巻回数を調整した。得られた巻回電極体の最外周端部を絶縁テープの貼付により固定した。負極リードを電池缶に、正極リードを安全弁にそれぞれ溶接して、巻回電極体を電池缶の内部に挿入した(ここまでの、捲回電極体を電池缶内部に挿入したものを「電解液注液前の電池」と呼ぶ)。その後、非水電解液を電池缶内に5g注入し、ガスケットを介して蓋を電池缶にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。この円筒型二次電池を25℃雰囲気下、0.2C(定格電気容量の1時間率(1C)の0.2倍の電流)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。続いて0.2Cの電流値で電池電圧3.0Vまで放電し、そのときの電池容量をXmAhとした。
e.自己放電特性
上記dで組み立てた電池を、0.2Cの電流値で電池電圧4.2Vまで充電し24時間放置した。この操作を合計50セルの電池で行った。その後、50セルのうち、Xの90%以上の容量を維持していたセルの割合(%)を、自己放電特性として算出した。
f.注液性
上記dで組み立てた「電解液注液前の電池」をそれぞれ10個作製し、電解液を入れた容器に完全に浸漬させて、25℃、1.0KPaの減圧環境で5分間放置した。電解液中から電池を取り出し、大気解放して、周りの余分な電解液を拭きとったのち、電池の試験前後の質量変化を測定した。10個の電池での電解液注液量の平均値を求め、注液性を評価した。
[実施例1]
Mvが70万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが40万であるポリプロピレンとMvが15万であるポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、ポリマー濃度(以下、「PC」と略記することがある。)が35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:24kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物である原反膜厚1600μmのゲルシートを得た。
得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸により延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD倍率を7倍、TD倍率を5倍、すなわち、面倍率を7×5=35倍、二軸延伸温度を123℃とした。
次いで、得られた延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
得られたシートをTD一軸テンターに導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、TD1.5倍とし、延伸温度を120℃、延伸速度60%/秒とした。続いて、熱固定を行なうべく延伸シートをTDテンターに導いた。熱固定温度130℃、延伸倍率1.4倍の条件でHSを行い、その後、緩和率(HS緩和率)が0.8倍の緩和操作を行った。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例2、3]
表1に示すように各条件を変更した以外は実施例1と同様にして、PO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
Mvが70万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが40万であるポリプロピレンとMvが15万であるポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、PC35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:12kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物である原反膜厚800μmのゲルシートを得た。
得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸により延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD倍率を6倍、TD倍率を3倍、すなわち、面倍率を18倍、二軸延伸温度を123℃とした。
次いで、得られた延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
得られたシートをロール延伸機に導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD1.5倍とし、延伸温度を120℃、延伸速度100%/秒とした。続いて、HSを行なうべく延伸シートをTDテンターに導いた。熱固定温度130℃、延伸倍率1.4倍の条件でHSを行い、その後、緩和率(HS緩和率)が0.8倍の緩和操作を行った。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
表1に示すように各条件を変更した以外は実施例4と同様にして、PO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
Mvが70万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが40万であるポリプロピレンとMvが15万であるポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、PC35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:8kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物である原反膜厚450μmのゲルシートを得た。
得られたゲルシートをロール延伸機に導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD倍率を5、延伸温度を123℃とした。
次いで、得られた延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
得られたシートをTDテンターに導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、TD3倍とし、延伸温度を120℃、延伸速度364%/秒とした。続いて、HSを行なうべく延伸シートをTDテンターに導いた。熱固定温度130℃、延伸倍率1.4倍の条件でHSを行い、その後、緩和率(HS緩和率)が0.8倍の緩和操作を行った。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例7、8]
表1に示すように各条件を変更した以外は実施例6と同様にして、PO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
Mvが70万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが40万であるポリプロピレンとMvが15万であるポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、PC35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:11kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物である原反膜厚720μmのゲルシートを得た。
得られたゲルシートをTDテンターに導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、TD倍率を5倍、延伸温度を123℃とした。
次いで、得られた延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
得られたシートをロール延伸機に導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD5倍とし、延伸温度を120℃、延伸速度600%/秒とした。続いて、HSを行なうべく延伸シートをTDテンターに導いた。熱固定温度130℃、延伸倍率1.4倍の条件でHSを行い、その後、緩和率(HS緩和率)が0.8倍の緩和操作を行った。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例10]
表1に示すように各条件を変更した以外は実施例9と同様にして、PO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表1に示す。
[比較例1、2]
表2に示すように各条件を変更した以外は実施例1と同様にしてPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表2に示す。
[比較例3、4]
表2に示すように各条件を変更した以外は実施例4と同様にして、PO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表2に示す。
[比較例5]
Mvが70万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが40万であるポリプロピレンとMvが15万であるポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、PC35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:21kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物である原反膜厚1400μmのゲルシートを得た。
得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸により延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD倍率を7.0倍、TD倍率を7倍、すなわち、面倍率を7×7=49倍、二軸延伸温度を123℃とした。
次いで、得られた延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
続いて、HSを行なうべく、延伸シートをTDテンターに導いた。熱固定温度130℃、延伸倍率1.0倍の条件でHSを行った。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表2に示す。
[比較例6]
Mvが70万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが30万であるホモポリマーのポリエチレン(融点:135.5℃)を45質量部と、Mvが40万であるポリプロピレンとMvが15万であるポリプロピレンとの混合物(質量比=4:3)10質量部とを、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたPO混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-52/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。押し出される全混合物中に占める流動パラフィンの割合が65質量%となるように、すなわち、PC35質量%となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で溶融混練した。なお、溶融混練条件は、温度:230℃、スクリュー回転数:240rpm、吐出量:4kg/hとした。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度90℃に制御された冷却ロール上に押出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物である原反膜厚250μmのゲルシートを得た。
得られた延伸シートをメチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に十分に浸漬して可塑剤である流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、得られたシートをTDテンターに導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、TD1.5倍、延伸温度120℃、延伸速度60%/秒とした。引き続き、得られた膜をロール延伸機に導き、延伸シートを得た。設定延伸条件は、MD5倍とし、延伸温度を120℃、延伸歪速度300%/秒とした。
続いて、HSを行なうべく、延伸シートをTDテンターに導いた。熱固定温度130℃、延伸倍率1.4倍の条件でHSを行い、その後、緩和率(HS緩和率)が0.8倍の緩和操作を行った。得られたPO微多孔膜及びそれをセパレータとして備えた電池の各種特性を上記方法により評価した。結果を表2に示す。
本発明の製造方法により得られるPO微多孔膜は、リチウムイオン二次電池用セパレータとしたときに、自己放電が抑制されると共に、注液性にも優れるため、リチウムイオン二次電池用セパレータ等の電池用セパレータとして有用である。また、本発明の製造方法は、空隙量を損なうことなく、小孔径で均一な孔径分布が形成されているPO微多孔膜の提供を可能とするものであり、電池用セパレータに限らず、種々の物質の分離膜や選択透過分離膜、及び隔離材等として有用である。

Claims (7)

  1. (a)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材料を含む樹脂組成物を溶融混練し押出す押出工程、
    (b)前記(a)工程で得られた押出物をシート状に成形するシート成形工程、
    (c)前記(b)工程で得られたシート状成形物を、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に3倍以上延伸する一次延伸工程、
    (d)前記(c)工程で得られた延伸シートから孔形成材料を抽出する抽出工程、及び
    (e)前記(d)工程で得られたシートを、少なくとも一回、少なくとも一軸方向に延伸速度が60%/秒以上で延伸する二次延伸工程、
    を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  2. 前記(e)工程における延伸速度が80%/秒以上である、請求項1記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  3. 前記(e)工程における延伸速度が120%/秒以上である、請求項1記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  4. 前記(e)工程において、少なくとも一軸方向に3倍以上に延伸する、請求項1〜3いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  5. 前記(c)工程及び前記(e)工程における延伸総倍率が一軸方向に20倍未満である、請求項1〜4いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  6. 前記(e)工程において、下記式(1)に規定される温度範囲で延伸する、請求項1〜5いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
    (Tm−30(℃))〜Tm(℃) (1)
    (式(1)において、Tmは前記ポリオレフィン組成物に含まれる樹脂のうち、最も多く含まれる樹脂の融点を示す。)
  7. 前記ポリオレフィン微多孔膜がリチウムイオン二次電池用セパレータである、請求項1〜6いずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
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