JP2004352733A - ラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤及び硬化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】単量体の残存量が少なく、表面光沢の保持率が高い硬化物を容易に得ることができるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤、およびこれをラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られる硬化物、さらに人造大理石成形品を提供する。
【解決手段】特定の第三級アルキルパーオキシネオデカノエート(A)および第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(B)を含有し、かつそのA/Bの重量比が90/10〜40/60の範囲にあるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤。
【選択図】 なし
【解決手段】特定の第三級アルキルパーオキシネオデカノエート(A)および第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(B)を含有し、かつそのA/Bの重量比が90/10〜40/60の範囲にあるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、単量体の残存量が少なく、表面光沢の保持率が高い硬化物を容易に得ることができるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤、およびこれをラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られる硬化物、さらに人造大理石成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂に代表されるラジカル重合型熱硬化性樹脂は、成形時の作業性、硬化性および硬化物の特性のバランスに優れている。そのため、これらの樹脂は、浴槽、防水パン、浄化槽などの住設機材、漁船、ボートなどの舟艇・船舶製品、スポイラー、ヘッドランプリフレクターなどの自動車部品、パイプ、タンクなどの繊維強化プラスチック(以下、FRPと略記する。)製品として広く使用されている。さらに、塗料、ライニング、化粧板、レジンコンクリート、人造大理石などの非FRP製品のマトリックス樹脂として広く使用されている。
【0003】
これらラジカル重合型熱硬化性樹脂は、一般にその原料となる組成物に硬化剤として有機過酸化物やアゾ化合物を加えて熱硬化させる。その際、硬化剤は適用される硬化温度に応じて適宜選択されるが、50〜100℃のいわゆる中温で硬化させる場合においては、常温での取扱い性に優れるという理由から、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの常温で固体状の有機過酸化物が広く利用されてきた。
しかし固体状の有機過酸化物を使用する硬化方法では、有機過酸化物を液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂に溶解させる必要があり、完溶させるのに時間を要したり、硬化物中に不溶分が残存して成形品の外観不良を招くという問題があった。そのような外観不良は、特に人造大理石製品のような透明性や表面光沢など、外観を重視する製品では致命的な欠陥となる場合があった。
また固体状の有機過酸化物はラジカル重合型熱硬化性樹脂に完全に溶解しにくいので、未溶解の有機過酸化物がラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化に有効に作用しない場合があり、硬化物中に未反応の単量体が多く残存するとの問題があった。
このような問題点を解決する方法として、予め固体状の有機過酸化物をフタル酸エステルなどの液状可塑剤に溶解してからラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に配合する方法がある。ところが、この方法では樹脂に溶解させることに係わる問題点はある程度解決できるものの、硬化剤の使用形態がペースト状になるため、取扱い性が極めて悪くなるという新たな問題が発生していた。
【0004】
近年この分野では、取扱性が良い上に、残存単量体が少なく、かつ外観に優れたラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物を得ることが可能なラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤が益々要望されており、これらの問題を解決すべく種々検討されている。
例えば、2種類の液状有機化酸化物からなるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を使用する硬化方法が開示されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−80114号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特許文献1に開示された2種類の液状有機化酸化物からなる硬化剤を使用した場合、ラジカル重合型熱硬化性樹脂に対する硬化剤の配合は容易になるものの、特に高級感のある外観と良好な耐候性が求められる熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂成形品において、得られる成形物の表面光沢が経時的に劣化する、いわゆる光沢保持率について問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、単量体の残存量が少なく、表面光沢の保持率が高い硬化物を容易に得ることができるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤およびこれをラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られる硬化物、さらに良質な人造大理石成形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、下記式1
【0009】
【化3】
【0010】
(但し、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロヘキシル基を示す。)で示される第三級アルキルパーオキシネオデカノエート(A)および下記式2
【0011】
【化4】
【0012】
(但し、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロヘキシル基を示す。)
で示される第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(B)を有効成分とし、かつA/Bの重量比(第三級アルキルパーオキシネオデカノエート/第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)が90/10〜40/60の範囲にあるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤である。
【0013】
第2の発明は、前記第三級アルキルパーオキシネオデカノエートがtert−ヘキシルパーオキシネオデカノエートまたはtert−アミルパーオキシネオデカノエートであり、かつ第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートである第1の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤である。
【0014】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤をラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られた硬化物である。
【0015】
第4の発明は、第1の発明または第2の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を(メタ)アクリル系樹脂原料の組成物に加え硬化して得られた人造大理石成形品である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤中には、式1で示される第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと式2で示される第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとが特定の割合で含まれている。
【0017】
前記式1で示される第三級アルキルパーオキシネオデカノエートの具体例としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエートなどが挙げられる。
【0018】
これらの中では、ポットライフが確保でき、かつ第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートと併用した場合に硬化物中の残存単量体が少なくできるため、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシネオデカノエートが好ましい。
【0019】
また式2で示される第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの具体例としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0020】
これらの中では、硬化速度が速く、かつ第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと併用した場合に硬化物中の残存単量体を少なくできるため、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが好ましい。
【0021】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤には、硬化温度や所望する硬化速度によって二種または三種以上が適宜選択して用いられる。
【0022】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤の作用は以下のようである。
本発明の第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとからなるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤によるラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物の硬化は、まず、50〜100℃の中温下で、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートが熱分解して生成するラジカルにより開始され、単量体の重合等による硬化に伴う発熱により温度が更に上昇した後、第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが熱分解することにより単量体の重合等の硬化反応が連鎖的に進行する。
【0023】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤において第三級アルキルパーオキシネオデカノエート(A)と第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(B)とのA/Bの重量比(第三級アルキルパーオキシネオデカノエート/第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)は、通常90/10〜40/60、好ましくは90/10〜50/50の範囲である。
【0024】
A/Bの重量比が40/60未満の場合は、硬化速度が遅くなるので好ましくない。一方、A/Bの重量比が90/10を超える場合は、得られる硬化物に単量体が多く残存し、かつ表面光沢の劣化が大きくなるので好ましくない。
【0025】
また、本発明の第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとからなるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤は、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとの混合物をそのまま使用することもできるが、取扱い性を高めるために、希釈品の形態で使用することもできる。希釈剤で有機過酸化物の濃度を低下させることにより、その保存時およびラジカル重合型熱硬化性樹脂への配合時などにおける取扱い性を向上させることができる。
【0026】
前記希釈剤としては、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化特性や硬化物の物性に悪影響を与えないものであればいずれも使用可能であるが、例えば、シェルゾール71(シェルジャパン製)、ソルベッソ100(エクソン化学製)、アイソパーL(エクソン化学製)、IPソルベント1620(出光石油化学製)、IPソルベント2028(出光石油化学製)、ミネラルスピリットなど、蒸留における初留点〜終点が150〜300℃の温度範囲である脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジメチルグルタレート、ジブチルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルグルタレートなどのグルタル酸エステル類;ジメチルサクシネート、ジブチルサクシネート、ジ−2−エチルヘキシルサクシネートなどのコハク酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのアジピン酸エステル類;ジメチルマレエート、ジブチルマレエート、ジ−2−エチルヘキシルマレエートなどのマレイン酸エステル類;ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレートなどのフマル酸エステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類などが挙げられる。
【0027】
前記希釈剤は任意の割合で混合することができ、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートや第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの製造時や製造後、適宜添加することができる。
【0028】
前記ラジカル重合型熱硬化性樹脂は、ラジカル重合により熱硬化する樹脂である。好ましいラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物としては、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ビニルエステル樹脂組成物および(メタ)アクリル系樹脂組成物を挙げることができ、用途に応じて適宜選択して用いられる。これらのラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物は単独のみならず、併用することもできる。
【0029】
前記不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸および多価アルコールを特定の割合で加熱脱水縮合させ、エステル化して得られる不飽和ポリエステルを共重合性不飽和単量体(以下、単量体と略記する)に溶解させた液状樹脂であり、公知のものがいずれも使用できる。
【0030】
ここで、不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。飽和二塩基酸としては、無水フタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族二塩基酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸などが挙げられる。これらの群の一種または二種以上より選択して用いられる。
【0031】
多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの多価アルコールは、一種または二種以上が選択して用いられる。
【0032】
前記単量体は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、ジアリルフタレートなどが挙げられる。これらの単量体は、一種単独または二種以上を用いられる。
【0033】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の構成成分である不飽和ポリエステルと単量体の好ましい構成比率は、不飽和ポリエステルが30〜80重量%であり、単量体が70〜20重量%である。不飽和ポリエステルが30重量%未満で、単量体が70重量%を超える場合には、これより得られる硬化物の機械的特性が低下する傾向にある。一方、不飽和ポリエステルが80重量%を超え、単量体が20重量%未満の場合には、粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0034】
前記ビニルエステル樹脂組成物は、不飽和エポキシ樹脂組成物またはエポキシアクリレート樹脂組成物とも言われるもので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和一塩基酸またはマレイン酸やフマル酸などの不飽和二塩基酸のモノエステルを開環付加させた反応生成物(以下、単にエポキシアクリレートと略記する。)を単量体に溶解させた液状樹脂組成物である。このビニルエステル樹脂組成物としては、公知のものがいずれも使用可能である。
【0035】
ここで、エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂がいずれも使用できるが、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSとエピクロルヒドリンから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下反応させて得られるいわゆるフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下に反応させて得られるいわゆるクレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0036】
前記単量体は、前記した不飽和ポリエステル樹脂における単量体がいずれも使用できる。ビニルエステル樹脂の構成成分であるエポキシアクリレートと単量体の好ましい構成比率は、エポキシアクリレートが30〜90重量%であり、単量体が70〜10重量%である。エポキシアクリレートが30重量%未満で、単量体が70重量%を超える場合には、これより得られる硬化物の耐蝕性や耐熱性が悪化する傾向にある。一方、エポキシアクリレートが90重量%を超え、単量体が10重量%未満の場合には、粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0037】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂を1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する架橋剤を必須成分とするラジカル重合性不飽和単量体に溶解させた(メタ)アクリルシラップを指し、公知のものがいずれも使用できる。
【0038】
前記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを有機過酸化物またはアゾ化合物で重合することにより得られる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの総称である。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、公知の(メタ)アクリル酸エステルがいずれも使用できるが、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステルなどが挙げられる。
【0039】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、一種または二種以上が選択して使用されるが、メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することが好ましい。メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することにより、耐候性や透明性、表面光沢に優れる硬化物が得られる。
【0040】
また、(メタ)アクリル樹脂の構成成分として(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和一塩基酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸、これら不飽和二塩基酸のモノエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類を30重量%以下の範囲で含有させることもできる。
【0041】
前記ラジカル重合性不飽和単量体は、上記(メタ)アクリル樹脂の構成成分である(メタ)アクリル酸エステルに加え、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和一塩基酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸、これら不飽和二塩基酸のモノエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。
【0042】
これらのラジカル重合性不飽和単量体は、一種または二種以上が選択して用いられるが、メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することが好ましい。メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することにより、耐候性や透明性、表面光沢に優れる硬化物が得られる。
【0043】
このラジカル重合性不飽和単量体には、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体、いわゆる架橋剤を必須成分として含有する。この架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルなどが挙げられる。これらの架橋剤は、一種または二種以上より選択して用いられる。
【0044】
ラジカル重合性不飽和単量体中に占める架橋剤の含有量は、1〜20重量%であり、好ましくは3〜15重量%である。架橋剤の含有量が1重量%未満の場合には、これより得られる硬化物の耐熱性が悪化する傾向にある。一方、架橋剤の含有量が20重量%を超える場合には、これより得られる硬化物が脆くなる傾向にある。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂組成物の構成成分である(メタ)アクリル樹脂とラジカル重合性不飽和単量体の好ましい構成比率は、(メタ)アクリル樹脂が10〜50重量%であり、ラジカル重合不飽和単量体が90〜50重量%である。(メタ)アクリル樹脂が10重量%未満で、ラジカル重合性不飽和単量体が90重量%を超える場合には、これより得られる硬化物にクラックが入り易くなる。一方、(メタ)アクリル樹脂が50重量%を超え、ラジカル重合性不飽和単量体が50重量%未満の場合には、粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0046】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物は、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に前記した本発明の硬化剤を加えて混合し、50〜100℃の温度で硬化することにより製造される。
【0047】
この場合、ラジカル重合型熱硬化性樹脂に第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを別々に配合しても良いが、予め混合したものを使用することもできる。このとき、有機過酸化物の混合物は一液品であるため、ラジカル重合型熱硬化性樹脂への混合がより容易になって好ましい。
【0048】
使用する硬化剤の量は、使用するラジカル重合型熱硬化性樹脂の種類や硬化温度および所望する硬化速度によって異なるが、ラジカル重合型熱硬化性樹脂に対し有機過酸化物の純分として、好ましくは0.2〜5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。有機過酸化物の総量が0.2重量%未満の場合には、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化速度が遅く、硬化物の硬度が低く、残存単量体量が多くなる傾向にある。一方、有機過酸化物の総量が5重量%を超える場合には、増量したことによるさらなる効果が見られず、硬化剤が無駄になるだけで実用的でない。
【0049】
硬化温度は50〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜90℃である。
また、昇温硬化や多段階硬化させることもできる。硬化温度が50℃未満の場合にはラジカル硬化型熱硬化性樹脂の硬化速度が遅くなり、100℃を超える場合には硬化速度が速くなりすぎるため、硬化物にクラックが入り易くなる。
【0050】
硬化方法としては、中温におけるレジントランスファー成形法、バッグ成形法、波・平板の連続成形法、引抜成形法、フィラメントワインディング成形法などのFRP製品を製造するための成形法に加え、中温における注型法など、それ自体公知の成形法を利用することができる。
【0051】
得られたラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化物はそのままの形態で使用することができるが、成形品の機械的強度の向上の目的で、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維を強化材として配合することができる。強化材の形態としては、例えばチョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービングクロス、サーフェスマットおよび不織布などが挙げられる。
【0052】
加えて、必要に応じて、硬化促進剤、硬化促進助剤、充填材、着色剤、低収縮剤、離型剤などを配合することができる。硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどの金属石鹸が挙げられる。硬化促進助剤としては、第三級アミン、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステルが挙げられる。充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルク、珪砂、水酸化アルミニウムおよびガラスフリットが挙げられる。
【0053】
着色剤としては、各種有機染料または無機顔料が挙げられ、低収縮剤としては熱可塑性の単独重合体または共重合体が挙げられる。離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの内部離型剤やパラフィンワックスなどの外部離型剤が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル系樹脂原料の組成物を本発明の硬化剤にて硬化させ人造大理石成形品を製造することができる。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂原料に、シリカ、ガラスパウダー、水酸化アルミニウム等の無機系充填剤あるいはポリマービーズ等の有機系充填剤、内部離型剤等の添加剤、有機染料又は無機染料もしくは顔料等の柄剤を配合して、(メタ)アクリル系樹脂原料の組成物とし、これを硬化する。
本発明の硬化剤を用いると、透明性、光沢度が高く、大理石状外観の紋様を具現化できるので、商品価値の高い製品とすることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例および比較例により前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例において、部および%はそれぞれ重量部および重量%を表す。
また、各例中の試験は以下の方法に従った。
【0056】
(1)硬化特性試験
電鋳型の中央部に配置した熱伝対を介し、試験開始から試料の温度が85℃になるまでの時間をゲル化時間(以下、GT(単位:分)と略記する。)、試料の温度が最高温度になるまでの時間を最小硬化時間(以下、CT(単位:分)と略記する。)、最高温度を最高発熱温度(以下、PET(単位:℃)と略記する。)として求めた。
【0057】
(2)残存するメタクリル酸メチルの定量試験
得られた硬化物を粉砕機により粉砕した後、約3gを精秤する。それを50ミリリットルの共栓付き三角フラスコ中に塩化メチレン20ミリリットルと共に入れ、室温で24時間抽出することにより粉砕物中に残存するメタクリル酸メチル(以下、残存MMAと略記する。)を抽出した。その後、メタクリル酸エチルを内部標準に用いてガスクロマトグラフィーにより硬化物中の残存MMAを定量(%)した。
【0058】
(3)60度鏡面光沢度試験
得られた人造大理石成形品より100mm×80mm×10mmの試験片を切り出し、JIS−K−7105のプラスチックの光学的特性試験方法に準じて、東洋精機製作所(株)製のグロスメーターを用いて60度鏡面光沢度(単位:%、表中では単に光沢度と略記し、煮沸前の60度鏡面光沢度に相当する。)を測定した。
【0059】
(4)光沢保持率試験
(3)で記載した人造大理石成形品の試験片を90℃の熱水に24時間浸漬した後、(3)と同様に測定して煮沸試験後の60度鏡面光沢度を求めた。そして光沢保持率(煮沸前の60度鏡面光沢度/煮沸後の60度鏡面光沢度×100、単位:%)を求めた。
【0060】
なお、各実施例と比較例で使用した有機過酸化物に関する略記号の意味は以下のとおりである。
oND:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
hND:tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
hND50:tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエートの50%シェルゾール71溶液
aND:tert−アミルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
bND:tert−ブチルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
oO:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:90%、日本油脂(株)製、商品名:パーオクタO)
oO50:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの50%シェルゾール71溶液
hO:tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:90%、日本油脂(株)製、商品名:パーヘキシルO)
aO:tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:90%)
bO:tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:97%、日本油脂(株)製、商品名:パーブチルO)
TCP:ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(純度:90%、日本油脂(株)製、商品名:パーロイルTCP)
OPP:ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(純度:90%)
hPV:tert−ヘキシルパーオキシピバレート(純度:90%)
【0061】
実施例1〜11
メタクリルシラップ(ポリメタクリル酸メチル(三菱レーヨン(株)製、商品名:BR−83)20部およびメタクリル酸メチル80部を含む)39.5部と、ネオペンチルグリコールジメタクリレート0.5部と、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:LS−3380)1部と、シリカ(トクヤマ(株)製、商品名:SE−5)59部と、内部離形剤(二葉産業(株)製、商品名:Zelec UN)0.005部とからなる(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物に表1に記載した本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を混合して熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を調製した。
【0062】
この熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を60℃に予熱した電鋳型に注入後、10分かけて80℃に昇温した。PETに到達してから1分間保持した後で脱型し、縦200mm×横100mm×高さ200mm×厚さ10mmの浴槽状の人造大理石成形品を得た。この成形時の硬化特性、人造大理石成形品中の残存MMA、60度鏡面光沢度および光沢保持率を求め、その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
比較例1〜7
実施例1で使用した(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物に表2に示す硬化剤を混合して熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を調製した。この熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして人造大理石成形品を得た。そして、実施例1と同様な試験を行い、その結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表1に示したように、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとを併用して熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物を硬化させた場合(実施例1〜11)では、クラックを発生することなく、残存MMAが少なく、鏡面光沢度が高く、かつ光沢保持率の高い人造大理石成形品が得られるということが明らかになった。特にhNDとoOとを併用した場合(実施例2〜4)や6、aNDとoOとを併用した場合(実施例7)では特に光沢保持率が高くなった。
【0067】
これに対して表2に示したように、TCPを使用した場合(比較例1)や、OPPとhPVとを併用した場合(比較例2)は、残存MMAが多い上に光沢保持率が低かった。
hNDのみを使用した場合(比較例3)は残存MMAが多い上に、光沢保持率が低かった。
そしてhNDとoOとの重量比が95.2/4.8である場合(比較例4)では、残存MMA量と光沢保持率は比較例3より改善されるものの実施例1〜11の場合より劣っていた。
さらに、hNDとoOとの重量比が33.3/66.7である場合(比較例5)では、硬化速度が遅い上に残存MMAが多く光沢保持率も低くなった。
また、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートの替わりにOPPを使用した場合(比較例6)や、第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの替わりにhPVを使用した場合(比較例7)は、硬化速度は速いものの、何れも光沢保持率が低かった。
【0068】
【発明の効果】
第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとを特定割合で併用した本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を使用すると、得られるラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物は単量体の残存量が少なく、かつ光沢保持率の高いものとなる。
また、人造大理石製品のような透明性や表面光沢など、外観を重視するラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物においては、特に工業的な価値がある。
【発明の属する技術分野】
この発明は、単量体の残存量が少なく、表面光沢の保持率が高い硬化物を容易に得ることができるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤、およびこれをラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られる硬化物、さらに人造大理石成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂に代表されるラジカル重合型熱硬化性樹脂は、成形時の作業性、硬化性および硬化物の特性のバランスに優れている。そのため、これらの樹脂は、浴槽、防水パン、浄化槽などの住設機材、漁船、ボートなどの舟艇・船舶製品、スポイラー、ヘッドランプリフレクターなどの自動車部品、パイプ、タンクなどの繊維強化プラスチック(以下、FRPと略記する。)製品として広く使用されている。さらに、塗料、ライニング、化粧板、レジンコンクリート、人造大理石などの非FRP製品のマトリックス樹脂として広く使用されている。
【0003】
これらラジカル重合型熱硬化性樹脂は、一般にその原料となる組成物に硬化剤として有機過酸化物やアゾ化合物を加えて熱硬化させる。その際、硬化剤は適用される硬化温度に応じて適宜選択されるが、50〜100℃のいわゆる中温で硬化させる場合においては、常温での取扱い性に優れるという理由から、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの常温で固体状の有機過酸化物が広く利用されてきた。
しかし固体状の有機過酸化物を使用する硬化方法では、有機過酸化物を液状のラジカル重合型熱硬化性樹脂に溶解させる必要があり、完溶させるのに時間を要したり、硬化物中に不溶分が残存して成形品の外観不良を招くという問題があった。そのような外観不良は、特に人造大理石製品のような透明性や表面光沢など、外観を重視する製品では致命的な欠陥となる場合があった。
また固体状の有機過酸化物はラジカル重合型熱硬化性樹脂に完全に溶解しにくいので、未溶解の有機過酸化物がラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化に有効に作用しない場合があり、硬化物中に未反応の単量体が多く残存するとの問題があった。
このような問題点を解決する方法として、予め固体状の有機過酸化物をフタル酸エステルなどの液状可塑剤に溶解してからラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に配合する方法がある。ところが、この方法では樹脂に溶解させることに係わる問題点はある程度解決できるものの、硬化剤の使用形態がペースト状になるため、取扱い性が極めて悪くなるという新たな問題が発生していた。
【0004】
近年この分野では、取扱性が良い上に、残存単量体が少なく、かつ外観に優れたラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物を得ることが可能なラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤が益々要望されており、これらの問題を解決すべく種々検討されている。
例えば、2種類の液状有機化酸化物からなるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を使用する硬化方法が開示されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−80114号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特許文献1に開示された2種類の液状有機化酸化物からなる硬化剤を使用した場合、ラジカル重合型熱硬化性樹脂に対する硬化剤の配合は容易になるものの、特に高級感のある外観と良好な耐候性が求められる熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂成形品において、得られる成形物の表面光沢が経時的に劣化する、いわゆる光沢保持率について問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、単量体の残存量が少なく、表面光沢の保持率が高い硬化物を容易に得ることができるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤およびこれをラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られる硬化物、さらに良質な人造大理石成形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、下記式1
【0009】
【化3】
【0010】
(但し、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロヘキシル基を示す。)で示される第三級アルキルパーオキシネオデカノエート(A)および下記式2
【0011】
【化4】
【0012】
(但し、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基、シクロヘキシル基を示す。)
で示される第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(B)を有効成分とし、かつA/Bの重量比(第三級アルキルパーオキシネオデカノエート/第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)が90/10〜40/60の範囲にあるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤である。
【0013】
第2の発明は、前記第三級アルキルパーオキシネオデカノエートがtert−ヘキシルパーオキシネオデカノエートまたはtert−アミルパーオキシネオデカノエートであり、かつ第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートである第1の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤である。
【0014】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤をラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られた硬化物である。
【0015】
第4の発明は、第1の発明または第2の発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を(メタ)アクリル系樹脂原料の組成物に加え硬化して得られた人造大理石成形品である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤中には、式1で示される第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと式2で示される第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとが特定の割合で含まれている。
【0017】
前記式1で示される第三級アルキルパーオキシネオデカノエートの具体例としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエートなどが挙げられる。
【0018】
これらの中では、ポットライフが確保でき、かつ第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートと併用した場合に硬化物中の残存単量体が少なくできるため、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−アミルパーオキシネオデカノエートが好ましい。
【0019】
また式2で示される第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの具体例としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0020】
これらの中では、硬化速度が速く、かつ第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと併用した場合に硬化物中の残存単量体を少なくできるため、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが好ましい。
【0021】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤には、硬化温度や所望する硬化速度によって二種または三種以上が適宜選択して用いられる。
【0022】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤の作用は以下のようである。
本発明の第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとからなるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤によるラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物の硬化は、まず、50〜100℃の中温下で、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートが熱分解して生成するラジカルにより開始され、単量体の重合等による硬化に伴う発熱により温度が更に上昇した後、第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが熱分解することにより単量体の重合等の硬化反応が連鎖的に進行する。
【0023】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤において第三級アルキルパーオキシネオデカノエート(A)と第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(B)とのA/Bの重量比(第三級アルキルパーオキシネオデカノエート/第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエート)は、通常90/10〜40/60、好ましくは90/10〜50/50の範囲である。
【0024】
A/Bの重量比が40/60未満の場合は、硬化速度が遅くなるので好ましくない。一方、A/Bの重量比が90/10を超える場合は、得られる硬化物に単量体が多く残存し、かつ表面光沢の劣化が大きくなるので好ましくない。
【0025】
また、本発明の第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとからなるラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤は、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとの混合物をそのまま使用することもできるが、取扱い性を高めるために、希釈品の形態で使用することもできる。希釈剤で有機過酸化物の濃度を低下させることにより、その保存時およびラジカル重合型熱硬化性樹脂への配合時などにおける取扱い性を向上させることができる。
【0026】
前記希釈剤としては、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化特性や硬化物の物性に悪影響を与えないものであればいずれも使用可能であるが、例えば、シェルゾール71(シェルジャパン製)、ソルベッソ100(エクソン化学製)、アイソパーL(エクソン化学製)、IPソルベント1620(出光石油化学製)、IPソルベント2028(出光石油化学製)、ミネラルスピリットなど、蒸留における初留点〜終点が150〜300℃の温度範囲である脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジメチルグルタレート、ジブチルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルグルタレートなどのグルタル酸エステル類;ジメチルサクシネート、ジブチルサクシネート、ジ−2−エチルヘキシルサクシネートなどのコハク酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのアジピン酸エステル類;ジメチルマレエート、ジブチルマレエート、ジ−2−エチルヘキシルマレエートなどのマレイン酸エステル類;ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレートなどのフマル酸エステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類などが挙げられる。
【0027】
前記希釈剤は任意の割合で混合することができ、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートや第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの製造時や製造後、適宜添加することができる。
【0028】
前記ラジカル重合型熱硬化性樹脂は、ラジカル重合により熱硬化する樹脂である。好ましいラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物としては、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ビニルエステル樹脂組成物および(メタ)アクリル系樹脂組成物を挙げることができ、用途に応じて適宜選択して用いられる。これらのラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物は単独のみならず、併用することもできる。
【0029】
前記不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸および多価アルコールを特定の割合で加熱脱水縮合させ、エステル化して得られる不飽和ポリエステルを共重合性不飽和単量体(以下、単量体と略記する)に溶解させた液状樹脂であり、公知のものがいずれも使用できる。
【0030】
ここで、不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。飽和二塩基酸としては、無水フタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族二塩基酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸などが挙げられる。これらの群の一種または二種以上より選択して用いられる。
【0031】
多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの多価アルコールは、一種または二種以上が選択して用いられる。
【0032】
前記単量体は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、ジアリルフタレートなどが挙げられる。これらの単量体は、一種単独または二種以上を用いられる。
【0033】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の構成成分である不飽和ポリエステルと単量体の好ましい構成比率は、不飽和ポリエステルが30〜80重量%であり、単量体が70〜20重量%である。不飽和ポリエステルが30重量%未満で、単量体が70重量%を超える場合には、これより得られる硬化物の機械的特性が低下する傾向にある。一方、不飽和ポリエステルが80重量%を超え、単量体が20重量%未満の場合には、粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0034】
前記ビニルエステル樹脂組成物は、不飽和エポキシ樹脂組成物またはエポキシアクリレート樹脂組成物とも言われるもので、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基にアクリル酸やメタクリル酸などの不飽和一塩基酸またはマレイン酸やフマル酸などの不飽和二塩基酸のモノエステルを開環付加させた反応生成物(以下、単にエポキシアクリレートと略記する。)を単量体に溶解させた液状樹脂組成物である。このビニルエステル樹脂組成物としては、公知のものがいずれも使用可能である。
【0035】
ここで、エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂がいずれも使用できるが、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSとエピクロルヒドリンから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下反応させて得られるいわゆるフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールとホルムアルデヒドを酸性触媒存在下に反応させて得られるいわゆるクレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0036】
前記単量体は、前記した不飽和ポリエステル樹脂における単量体がいずれも使用できる。ビニルエステル樹脂の構成成分であるエポキシアクリレートと単量体の好ましい構成比率は、エポキシアクリレートが30〜90重量%であり、単量体が70〜10重量%である。エポキシアクリレートが30重量%未満で、単量体が70重量%を超える場合には、これより得られる硬化物の耐蝕性や耐熱性が悪化する傾向にある。一方、エポキシアクリレートが90重量%を超え、単量体が10重量%未満の場合には、粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0037】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂を1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する架橋剤を必須成分とするラジカル重合性不飽和単量体に溶解させた(メタ)アクリルシラップを指し、公知のものがいずれも使用できる。
【0038】
前記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを有機過酸化物またはアゾ化合物で重合することにより得られる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの総称である。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、公知の(メタ)アクリル酸エステルがいずれも使用できるが、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステルなどが挙げられる。
【0039】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、一種または二種以上が選択して使用されるが、メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することが好ましい。メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することにより、耐候性や透明性、表面光沢に優れる硬化物が得られる。
【0040】
また、(メタ)アクリル樹脂の構成成分として(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和一塩基酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸、これら不飽和二塩基酸のモノエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類を30重量%以下の範囲で含有させることもできる。
【0041】
前記ラジカル重合性不飽和単量体は、上記(メタ)アクリル樹脂の構成成分である(メタ)アクリル酸エステルに加え、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和一塩基酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸、これら不飽和二塩基酸のモノエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。
【0042】
これらのラジカル重合性不飽和単量体は、一種または二種以上が選択して用いられるが、メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することが好ましい。メタクリル酸メチルを50重量%以上含有することにより、耐候性や透明性、表面光沢に優れる硬化物が得られる。
【0043】
このラジカル重合性不飽和単量体には、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体、いわゆる架橋剤を必須成分として含有する。この架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルなどが挙げられる。これらの架橋剤は、一種または二種以上より選択して用いられる。
【0044】
ラジカル重合性不飽和単量体中に占める架橋剤の含有量は、1〜20重量%であり、好ましくは3〜15重量%である。架橋剤の含有量が1重量%未満の場合には、これより得られる硬化物の耐熱性が悪化する傾向にある。一方、架橋剤の含有量が20重量%を超える場合には、これより得られる硬化物が脆くなる傾向にある。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂組成物の構成成分である(メタ)アクリル樹脂とラジカル重合性不飽和単量体の好ましい構成比率は、(メタ)アクリル樹脂が10〜50重量%であり、ラジカル重合不飽和単量体が90〜50重量%である。(メタ)アクリル樹脂が10重量%未満で、ラジカル重合性不飽和単量体が90重量%を超える場合には、これより得られる硬化物にクラックが入り易くなる。一方、(メタ)アクリル樹脂が50重量%を超え、ラジカル重合性不飽和単量体が50重量%未満の場合には、粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0046】
本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物は、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に前記した本発明の硬化剤を加えて混合し、50〜100℃の温度で硬化することにより製造される。
【0047】
この場合、ラジカル重合型熱硬化性樹脂に第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを別々に配合しても良いが、予め混合したものを使用することもできる。このとき、有機過酸化物の混合物は一液品であるため、ラジカル重合型熱硬化性樹脂への混合がより容易になって好ましい。
【0048】
使用する硬化剤の量は、使用するラジカル重合型熱硬化性樹脂の種類や硬化温度および所望する硬化速度によって異なるが、ラジカル重合型熱硬化性樹脂に対し有機過酸化物の純分として、好ましくは0.2〜5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。有機過酸化物の総量が0.2重量%未満の場合には、ラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化速度が遅く、硬化物の硬度が低く、残存単量体量が多くなる傾向にある。一方、有機過酸化物の総量が5重量%を超える場合には、増量したことによるさらなる効果が見られず、硬化剤が無駄になるだけで実用的でない。
【0049】
硬化温度は50〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜90℃である。
また、昇温硬化や多段階硬化させることもできる。硬化温度が50℃未満の場合にはラジカル硬化型熱硬化性樹脂の硬化速度が遅くなり、100℃を超える場合には硬化速度が速くなりすぎるため、硬化物にクラックが入り易くなる。
【0050】
硬化方法としては、中温におけるレジントランスファー成形法、バッグ成形法、波・平板の連続成形法、引抜成形法、フィラメントワインディング成形法などのFRP製品を製造するための成形法に加え、中温における注型法など、それ自体公知の成形法を利用することができる。
【0051】
得られたラジカル重合型熱硬化性樹脂の硬化物はそのままの形態で使用することができるが、成形品の機械的強度の向上の目的で、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維を強化材として配合することができる。強化材の形態としては、例えばチョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービングクロス、サーフェスマットおよび不織布などが挙げられる。
【0052】
加えて、必要に応じて、硬化促進剤、硬化促進助剤、充填材、着色剤、低収縮剤、離型剤などを配合することができる。硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどの金属石鹸が挙げられる。硬化促進助剤としては、第三級アミン、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステルが挙げられる。充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、シリカ、タルク、珪砂、水酸化アルミニウムおよびガラスフリットが挙げられる。
【0053】
着色剤としては、各種有機染料または無機顔料が挙げられ、低収縮剤としては熱可塑性の単独重合体または共重合体が挙げられる。離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの内部離型剤やパラフィンワックスなどの外部離型剤が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル系樹脂原料の組成物を本発明の硬化剤にて硬化させ人造大理石成形品を製造することができる。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂原料に、シリカ、ガラスパウダー、水酸化アルミニウム等の無機系充填剤あるいはポリマービーズ等の有機系充填剤、内部離型剤等の添加剤、有機染料又は無機染料もしくは顔料等の柄剤を配合して、(メタ)アクリル系樹脂原料の組成物とし、これを硬化する。
本発明の硬化剤を用いると、透明性、光沢度が高く、大理石状外観の紋様を具現化できるので、商品価値の高い製品とすることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例および比較例により前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例において、部および%はそれぞれ重量部および重量%を表す。
また、各例中の試験は以下の方法に従った。
【0056】
(1)硬化特性試験
電鋳型の中央部に配置した熱伝対を介し、試験開始から試料の温度が85℃になるまでの時間をゲル化時間(以下、GT(単位:分)と略記する。)、試料の温度が最高温度になるまでの時間を最小硬化時間(以下、CT(単位:分)と略記する。)、最高温度を最高発熱温度(以下、PET(単位:℃)と略記する。)として求めた。
【0057】
(2)残存するメタクリル酸メチルの定量試験
得られた硬化物を粉砕機により粉砕した後、約3gを精秤する。それを50ミリリットルの共栓付き三角フラスコ中に塩化メチレン20ミリリットルと共に入れ、室温で24時間抽出することにより粉砕物中に残存するメタクリル酸メチル(以下、残存MMAと略記する。)を抽出した。その後、メタクリル酸エチルを内部標準に用いてガスクロマトグラフィーにより硬化物中の残存MMAを定量(%)した。
【0058】
(3)60度鏡面光沢度試験
得られた人造大理石成形品より100mm×80mm×10mmの試験片を切り出し、JIS−K−7105のプラスチックの光学的特性試験方法に準じて、東洋精機製作所(株)製のグロスメーターを用いて60度鏡面光沢度(単位:%、表中では単に光沢度と略記し、煮沸前の60度鏡面光沢度に相当する。)を測定した。
【0059】
(4)光沢保持率試験
(3)で記載した人造大理石成形品の試験片を90℃の熱水に24時間浸漬した後、(3)と同様に測定して煮沸試験後の60度鏡面光沢度を求めた。そして光沢保持率(煮沸前の60度鏡面光沢度/煮沸後の60度鏡面光沢度×100、単位:%)を求めた。
【0060】
なお、各実施例と比較例で使用した有機過酸化物に関する略記号の意味は以下のとおりである。
oND:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
hND:tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
hND50:tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエートの50%シェルゾール71溶液
aND:tert−アミルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
bND:tert−ブチルパーオキシネオデカノエート(純度:90%)
oO:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:90%、日本油脂(株)製、商品名:パーオクタO)
oO50:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの50%シェルゾール71溶液
hO:tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:90%、日本油脂(株)製、商品名:パーヘキシルO)
aO:tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:90%)
bO:tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(純度:97%、日本油脂(株)製、商品名:パーブチルO)
TCP:ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(純度:90%、日本油脂(株)製、商品名:パーロイルTCP)
OPP:ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(純度:90%)
hPV:tert−ヘキシルパーオキシピバレート(純度:90%)
【0061】
実施例1〜11
メタクリルシラップ(ポリメタクリル酸メチル(三菱レーヨン(株)製、商品名:BR−83)20部およびメタクリル酸メチル80部を含む)39.5部と、ネオペンチルグリコールジメタクリレート0.5部と、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:LS−3380)1部と、シリカ(トクヤマ(株)製、商品名:SE−5)59部と、内部離形剤(二葉産業(株)製、商品名:Zelec UN)0.005部とからなる(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物に表1に記載した本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を混合して熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を調製した。
【0062】
この熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を60℃に予熱した電鋳型に注入後、10分かけて80℃に昇温した。PETに到達してから1分間保持した後で脱型し、縦200mm×横100mm×高さ200mm×厚さ10mmの浴槽状の人造大理石成形品を得た。この成形時の硬化特性、人造大理石成形品中の残存MMA、60度鏡面光沢度および光沢保持率を求め、その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
比較例1〜7
実施例1で使用した(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物に表2に示す硬化剤を混合して熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を調製した。この熱硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして人造大理石成形品を得た。そして、実施例1と同様な試験を行い、その結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表1に示したように、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとを併用して熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物を硬化させた場合(実施例1〜11)では、クラックを発生することなく、残存MMAが少なく、鏡面光沢度が高く、かつ光沢保持率の高い人造大理石成形品が得られるということが明らかになった。特にhNDとoOとを併用した場合(実施例2〜4)や6、aNDとoOとを併用した場合(実施例7)では特に光沢保持率が高くなった。
【0067】
これに対して表2に示したように、TCPを使用した場合(比較例1)や、OPPとhPVとを併用した場合(比較例2)は、残存MMAが多い上に光沢保持率が低かった。
hNDのみを使用した場合(比較例3)は残存MMAが多い上に、光沢保持率が低かった。
そしてhNDとoOとの重量比が95.2/4.8である場合(比較例4)では、残存MMA量と光沢保持率は比較例3より改善されるものの実施例1〜11の場合より劣っていた。
さらに、hNDとoOとの重量比が33.3/66.7である場合(比較例5)では、硬化速度が遅い上に残存MMAが多く光沢保持率も低くなった。
また、第三級アルキルパーオキシネオデカノエートの替わりにOPPを使用した場合(比較例6)や、第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの替わりにhPVを使用した場合(比較例7)は、硬化速度は速いものの、何れも光沢保持率が低かった。
【0068】
【発明の効果】
第三級アルキルパーオキシネオデカノエートと第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートとを特定割合で併用した本発明のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を使用すると、得られるラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物は単量体の残存量が少なく、かつ光沢保持率の高いものとなる。
また、人造大理石製品のような透明性や表面光沢など、外観を重視するラジカル重合型熱硬化性樹脂硬化物においては、特に工業的な価値がある。
Claims (4)
- 前記第三級アルキルパーオキシネオデカノエートがtert−ヘキシルパーオキシネオデカノエートまたはtert−アミルパーオキシネオデカノエートであり、かつ第三級アルキルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートである請求項1に記載のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤。
- 請求項1または2に記載のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤をラジカル重合型熱硬化性樹脂の原料組成物に加え硬化して得られた樹脂硬化物。
- 請求項1または2に記載のラジカル重合型熱硬化性樹脂用硬化剤を(メタ)アクリル系樹脂の原料組成物に加え硬化して得られた人造大理石成形品。
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KR100881759B1 (ko) | 2007-11-15 | 2009-02-06 | 주식회사 에스켐 | 거대입경을 갖는 인조대리석 칩, 이의 제조방법 및 이를이용한 인조대리석 |
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