JP2007204648A - 成形材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂の特性を低下させることなく、常温で硬化し、着色の少ない人造大理石を得ることができる成形材料を提供することを目的とする。
【解決手段】 熱硬化性樹脂、レドックス活性有機コバルト化合物、有機カリウム化合物、及び、無機充填剤を含んでなる成形材料であって、
該成形材料は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、
レドックス活性有機コバルト化合物を金属コバルトとして0.0003〜0.01質量部と、
有機カリウム化合物を金属カリウムとして0.001〜0.1質量部と、
屈折率が1.50〜1.60の無機充填剤を50〜400質量部とを含んでなり、
該熱硬化性樹脂は、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体とからなるものであり、ラジカル重合性オリゴマーの65%以上がビニルエステルである
ことを特徴とする成形材料。
【選択図】 なし

Description

本発明は、成形材料に関する。より詳しくは、建築用装飾材、住設機器、各種装飾品等に用いられる人造大理石の材料として好適に用いることができる成形材料に関する。
人造大理石は、天然の大理石と見紛うばかりの外観を有することから、高級住宅建材等として、例えば、タイル、壁用パネル等の建築用装飾材;浴槽(バスタブ)、洗面化粧台(洗面カウンター)、流し台(シンク)、浴室パネル、システムキッチン天板(キッチンカウンター)、テーブル天板、トイレカウンター等の住設機器;各種装飾品、表札等に広く利用されている。このような人造大理石は、樹脂に各種無機物を充填した素材を材料としてつくられるものであり、樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等が主に用いられてきている。
ビニルエステル樹脂は、硬化すると優れた耐薬品性、耐水性、耐熱性、機械特性等を発現する樹脂であるが、着色が大きい樹脂であることから、透明性が要求される人造大理石用途にはあまり用いられていなかった。しかし近年、淡色なビニルエステル樹脂の開発にともない、ビニルエステル樹脂も人造大理石用途に応用されるようになってきている。ビニルエステル樹脂を用いると、加熱硬化で成形した場合には、透明性を有し、着色の少ない人造大理石が得られることになるが、常温又は常温に近い温度で成形する場合には、樹脂を硬化させるための硬化促進剤として硬化物を大きく着色させるレドックス活性有機コバルト化合物を多量に配合する必要があることから、充分な透明性を有する人造大理石を得ることはできなかった。このため、ビニルエステル樹脂を含む成形材料を人造大理石用途に用いる場合には、着色の原因となるレドックス活性有機コバルト化合物を使用する必要のない加熱硬化によって成形する方法が用いられてきたが、製造コストの削減や作業性の向上のため、より常温に近い温度で樹脂を硬化し、充分な透明性を有する人造大理石を得ることができる成形材料の開発が要望されている。
従来のビニルエステル樹脂を用いた人造大理石用成形材料として、ビニルエステルと重合性単量体、トリアリールアンチモン、ヒンダードフェノールを含有する人造大理石用ビニルエステル樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この組成物は、加熱によって硬化するものであり、常温で硬化する人造大理石用成形材料とする工夫の余地があった。
またエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸から得られるビニルエステル樹脂とエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と無機充填剤とを必須成分とする人工大理石用樹脂組成物(例えば、特許文献2参照。)、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸から得られるビニルエステル樹脂を重合性単量体に溶解させて得られるビニルエステル樹脂組成物に2,5−ビス[2−(ベンゾオキザゾリル)]チオフェン系化合物を配合してなるビニルエステル樹脂組成物(例えば、特許文献3参照。)、及び、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸から得られるビニルエステル樹脂とスチレンモノマー及びアクリル酸又はメタクリル酸の多官能エステル誘導体を含有してなるビニルエステル樹脂組成物等が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。これらのビニルエステル樹脂組成物は、加熱による硬化のみではなく、光重合開始剤やケトンパーオキシド類等を併用することにより、常温硬化も可能となるものであるが、得られる硬化物は、透明性が充分なものではないことから、常温で硬化することができ、かつ充分な透明性を有する人造大理石を得ることができる成形材料とする工夫の余地があった。
更に、ビニルエステル樹脂とアクリル系シランカップリング剤又はアシレート系チタンカップリング剤で表面処理された水酸化アルミニウムとからなるビニルエステル樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。このビニルエステル樹脂組成物は、常温で硬化するものであり、透明感に優れた人造大理石を与えるものであると記載されているが、このビニルエステル樹脂組成物から得られる硬化物は、充分な光線透過率を有するものではないことから、充分な光線透過率を有し、透明性が要求される人造大理石用途により好適に用いることができる成形材料とする工夫の余地があった。
特開2004−35703号公報(第1−2頁) 特開平7−109332号公報(第1−2、5頁) 特開平9−104728号公報(第1−2、5頁) 特開平10−251499号公報(第1−2、5頁) 特開平2−99509号公報(第1−2、4頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂の特性を低下させることなく、常温で硬化し、着色の少ない人造大理石を得ることができる成形材料を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂の特性を低下させることなく常温で硬化し、着色の少ない人造大理石を得ることができる成形材料について、種々検討したところ、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂と特定の屈折率を有する無機充填剤とを含んでなる成形材料において、各種硬化促進剤の中でも、常温でビニルエステル樹脂を硬化させる効果の高い硬化促進剤であるが、着色の原因となるレドックス活性有機コバルト化合物に有機カリウム化合物を組み合わせて配合し、これらのそれぞれが、成形材料中に特定の割合で含まれることになるように濃度を調整して用いると、レドックス活性有機コバルト化合物が有する硬化促進作用を損なうことなく、成形材料の着色を抑制することが可能となることを見出した。これにより、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂の特性を低下させることなく常温で硬化して着色の少ない硬化物を与えることから、人造大理石用途に好適に用いることができる成形材料が得られることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、熱硬化性樹脂、レドックス活性有機コバルト化合物、有機カリウム化合物、及び、無機充填剤を含んでなる成形材料であって、該成形材料は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、レドックス活性有機コバルト化合物を金属コバルトとして0.0003〜0.01質量部と、有機カリウム化合物を金属カリウムとして0.001〜0.1質量部と、屈折率が1.50〜1.60の無機充填剤を50〜400質量部とを含んでなり、該熱硬化性樹脂は、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体とからなるものであり、ラジカル重合性オリゴマーの65%以上がビニルエステルである成形材料である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の成形材料は、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂の特性を低下させることなく、常温で硬化し、着色の少ない人造大理石を得ることができる成形材料である。ビニルエステル樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂に比べて、耐煮沸性、耐熱性等において優れた特性を有することから、本発明の成形材料は、不飽和ポリエステル樹脂を樹脂の主成分とする材料に比べて、優れた特性を有する硬化物を与えるものであり、人造大理石用途により好適に用いることができるものである。
本発明の成形材料が含むビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂、レドックス活性有機コバルト化合物、有機カリウム化合物、及び、無機充填剤はそれぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、これらの各成分を少なくとも1種ずつ含むものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
本発明の成形材料は、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対してレドックス活性有機コバルト化合物を金属コバルトとして、0.0003〜0.01質量部含むものであるが、0.0004〜0.009質量部含むものであることが好ましい。より好ましくは、0.0005〜0.008質量部含むものである。
また、有機カリウム化合物を金属カリウムとして、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して0.001〜0.1質量部含むものであるが、0.002〜0.09質量部含むものであることが好ましく、0.003〜0.08質量部含むものであることがより好ましい。
レドックス活性有機コバルト化合物、有機カリウム化合物の含有量がこのような範囲であると、レドックス活性有機コバルト化合物の有する高い硬化促進作用を損なうことなく、より着色の少ない硬化物を与える成形材料とすることが可能となる。
本発明においては、このように、レドックス活性有機コバルト化合物と有機カリウム化合物とを併用するところに技術的な意義があり、上記数値範囲の技術的な意義については、後述する実施例、比較例の実験データによって裏付けられている。
本発明の成形材料が含むビニルエステルは、下記に詳述するように、エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を付加させることによって得られるビニルエステル(ラジカル重合性オリゴマー)である。
エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を付加させる反応においては、エポキシ化合物のエポキシ基に対する不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量が0.8〜1.2となるような比率でエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを用いることが好ましい。より好ましくは、エポキシ化合物のエポキシ基に対する不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量が0.9〜1.1となるような比率でエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを用いることである。
また上記エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を付加させる反応の反応温度としては、80〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは、100〜130℃である。
ビニルエステルに用いるエポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂肪族型、脂環式、単環式エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物等が挙げられ、ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、臭素化ノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。脂肪族型エポキシ化合物としては、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、プロピレングリコールポリグリシジルエーテル化合物等が挙げられ、脂環式エポキシ化合物としては、アリサイクリックジエポキシアセタール、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、これらのエポキシ化合物は、ビスフェノールA等のフェノール化合物、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸、液状ニトリルゴム等の二塩基酸により変性したエポキシ化合物として用いてもよい。
ビニルエステルに用いる不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等のモノカルボン酸や、二塩基酸無水物と分子中に少なくとも一個の不飽和基を有するアルコールとの反応物等が挙げられる。二塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂肪族又は芳香族のジカルボン酸が挙げられる。不飽和基を有するアルコールの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニルエステルに用いるエポキシ化合物としては、分子中に、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を含むものであれば、特に限定されるものではないが、機械的強度、耐食性、耐熱性に優れるビスフェノール型エポキシ化合物が好ましい。
また、ビニルエステルに用いる不飽和一塩基酸としては、上述したものの中でも、耐熱性、耐薬品性の観点から炭素数が6以下のものが好ましい。より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
上記ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂において、ラジカル重合性単量体の含有量としては、20〜60%が好ましい。ラジカル重合性単量体の含有量が20〜60%であると、得られるビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂が、人造大理石用途に適した粘度を有するものとなる。より好ましくは、30〜50%である。
上記ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂に用いるラジカル重合性単量体としては、スチレンモノマー、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸エステル類等の各種のビニルモノマーが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、分子内に1個のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分子内に2個のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分子内に3個以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂は、ラジカル重合性オリゴマーの65%(質量%)以上がビニルエステルであるが、上記ビニルエステル以外のラジカル重合性オリゴマーを35%未満含むものであってもよい。該ビニルエステル以外のオリゴマーとしては不飽和ポリエステルが好ましい。ビニルエステルと不飽和ポリエステルとを組み合わせて用いる場合、ビニルエステルと不飽和ポリエステルの配合比率としては、不飽和ポリエステルが35%未満であるが、30%未満であることがより好ましい。65%以上がビニルエステルであることによって、煮沸変色や耐熱変色といった面で成形材料に要求される物性を高いレベルで満たすことができるように、ビニルエステルのもつ性能を引き出すことができることとなる。
本発明では、ビニルエステルがもつ耐熱変色性に優れるという物性を成形材料において発揮させるために、後述の実施例、比較例の実験データからもわかるように、ラジカル重合性オリゴマー中のビニルエステルの割合を65%以上に設定したものである。
上記不飽和ポリエステルは、酸成分(多塩基酸成分)と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを縮合反応して得ることができる。なお、酸成分と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分との反応モル比としては特に限定されず、例えば、酸成分:グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とした場合に、10:8〜10:12であることが好適である。
上記多塩基酸成分としては、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に含まれる水酸基及び/又はエポキシ基と反応してエステル結合を生成することができる置換基を2つ以上有する化合物であればよく、不飽和多塩基酸を必須とし、その一部を飽和多塩基酸に置き換えて使用してもよい。
上記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β―不飽和多塩基酸;ジヒドロムコン酸等のβ,γ―不飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記飽和多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族飽和多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族飽和多塩基酸;ヘット酸、ダイマー酸等の脂環式飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記エポキシ化合物成分としては、上述したものの中でも、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、3,4−エポキシ−1−ブテン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記レドックス活性有機コバルト化合物としては、有機酸のコバルト塩、有機コバルト錯体の1種又は2種以上を用いることができる。
有機酸のコバルト塩としては、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト等が挙げられる。また、有機コバルト錯体としては、コバルトアセチルアセトナート等が挙げられる。
これらの中でも、ナフテン酸コバルト又はオクテン酸コバルトを用いることが好ましい。
上記有機カリウム化合物としては、オクテン酸カリウム、ナフテン酸カリウム等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性からオクテン酸カリウムを用いることが好ましい。オクテン酸カリウムを用いると、レドックス活性有機コバルト化合物の硬化促進効果を損なうことなく、より着色の少ない硬化物を与える成形材料とすることができる。
また硬化促進剤として、上述した有機コバルト、有機カリウムに加え、硬化促進効果を発揮する他の硬化促進剤を用いることができ、更に促進助剤を用いることもできる。他の硬化促進剤を用いる場合、その含有量としては、本発明のビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して0〜5質量部であることが好ましい。
上記他の硬化促進剤としては、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マグネシウム、オクテン酸マンガン、オクテン酸亜鉛、オクテン酸カルシウム、オクテン酸ジルコニウム等が挙げられる。また、促進助剤としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、N−ピロジニノアセトアセタミド、N,N−ジメチルアセトアセタミド等のβ−ジケトン類;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシ)−4−メチルアニリン等のアミン類等のβ−ケトエステル、β−ケトアミド類等の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の成形材料が含む無機充填剤は、屈折率1.50〜1.60であれば特に限定されず、水酸化アルミニウム(ATH)、硫酸カルシウム、アルミナ、ガラスマイクロバルーン、クレー、タルク、ガラスパウダー、マイカ等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、水酸化アルミニウムやガラスパウダーを用いることが好ましい。
なお、屈折率1.50〜1.60の数値範囲は、人造大理石として使用されるときの無機充填剤の屈折率の好ましい範囲であり、そのような無機充填剤を使用することにより、人造大理石として透明感、高級感のあるものとすることができる。すなわち、屈折率を1.50〜1.60の範囲とすることにより、無機充填剤の屈折率が硬化した熱硬化性樹脂の屈折率と同等となり、成形材料に透明感がもたらされることになる。
本発明の成形材料はまた、本発明の作用効果を損なわない範囲内で空気乾燥性付与剤、揺変剤、繊維強化材(補強繊維材)、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、低収縮化剤、内部離型剤、着色剤、柄剤、連鎖移動剤、不活性粉体、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、ブルーイング剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤等の添加剤を含むことができる。
上記空気乾燥性付与剤とは、樹脂を含む成形材料が硬化する際に成形材料から形成される被膜や成形物の表面に析出し、空気との遮断層を該表面に形成することにより、空気中の酸素が樹脂のラジカル重合を阻害することを防止して樹脂の乾燥性を向上させる作用を有するものである。このような空気乾燥性付与剤としては、天然ワックス、合成ワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記空気乾燥性付与剤としては、上記天然ワックス、合成ワックスの中でも、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
なお、成形材料を常温で硬化させる場合には、上記空気乾燥性付与剤としては、JIS K2235−1991に分類される融点が40〜80℃であるものを用いることが好ましい。これにより、成形材料の施工において、硬化途中の成形材料から形成される被膜や成形物の表面に析出しやすくなることから、空気との遮断層が充分に形成されることとなる。
上記空気乾燥性付与剤の使用が必要である場合、使用量は特に限定されないが、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.001質量部(10ppm)以上、1質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01質量部以上、0.3質量部以下である。
上記揺変剤としては、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
上記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミド、ポリエステル、ビニロン、フェノール、テフロン(登録商標)等の有機繊維;天然繊維等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、5質量部以上、70質量部以下であることが好ましい。
上記重合禁止剤は、可使時間、硬化反応の立ち上がりを調整するために用いられ、例えば、ハイドロキノン類、ベンゾキノン類、カテコール類、フェノール類;フェノチアジン、ナフテン酸銅、N−オキシル類等を用いることができる。
上記消泡剤としては、シリコン系等の他、市販の高分子系消飽剤その他添加剤を用いることができる。
上記増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の多価金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の多価金属水酸化物;多官能イソシアネート等が好適である。
上記低収縮化剤は、成形収縮を調整するために用いることができ、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル−ポリスチレンブロックコポリマー、アクリル/スチレン等の多相構造ポリマー、架橋/非架橋等の多相構造ポリマー、SBS(ゴム)等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。
上記内部離型剤としては、例えば、ジメチルシロキサン構造を持ったジメチルポリシロキサン等のシリコン系内部離型剤等があり、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以下であることが好適である。
上記柄剤としては、例えば、酸化アルミニウム、PETフィルム、マイカ、セラミック及びそれらを着色剤、表面処理剤等でコーティングしたもの、メッキ処理したもの、熱硬化性樹脂と無機フィラーと着色剤等とを熱硬化させて粉砕したもの等が挙げられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー(4−メチル2−4−ジフェニルペンテン)、α−メチルスチレン等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記連鎖移動剤の使用割合としては、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、下限が0.01質量部、上限が10質量部であることが好ましい。
その他、硬化物の黄味を緩和する目的で、蛍光増白剤、ブルーイング剤等も使用可能である。
本発明の成形材料を人造大理石用途に用いる場合、成形材料に硬化剤を添加して硬化させることにより人造大理石として用いる硬化物が得られることになる。
上記硬化剤としては、通常使用されるものを用いることができ、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、エチルアセトアセテートパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、キュメンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート、1,1−ジブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、アミルパーオキシ−p−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−へキシルパーオキシベンゾエート等の1種又は2種以上を使用することができる。使用量としては特に限定されないが、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上、5質量部以下であることが好適である。
本発明の成形材料は、常温で硬化させることができるものであるが、硬化温度としては、0〜40℃であることが好ましい。より好ましくは、10〜35℃である。また硬化時間としては、生産性を考慮し、より短いことが好ましい。常温で硬化した後、50〜70℃程度に加熱することにより、短時間で硬化を完結させることができる。後硬化の時間は5時間以内であることが好ましく、3時間以内であればより好ましい。
本発明の成形材料は、上述の構成よりなり、ビニルエステルを主成分とする熱硬化性樹脂が有する優れた特性を損なうことなく、常温で硬化し、着色の少なく充分な透明性を有する硬化物を与えることから、人造大理石の材料として好適に用いることができる成形材料である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<人造大理石の作成>
実施例1〜16及び比較例1〜12に示した配合処方に沿い、順次攪拌混合して得られたコンパウンドに、硬化剤としてパーメックN(日本油脂社製)を、水酸化アルミニウムを除いた樹脂分100質量部に対し1質量部添加し、攪拌混合した。この硬化剤入りコンパウンドを成形品厚みが8mmtとなるようにスペーサーを挟んだガラス板内部に注型した。
室温(約25℃)で2時間放置後、ガラス板及びスペーサーを取り除き、得られた成形品を60℃に保持された熱風乾燥機中で1時間硬化させ、物性評価用人造大理石成形品を得た。得られた物性評価用人造大理石成形品の評価を煮沸変色、耐熱変色、光線透過率、及び、脱型時表面硬度の測定により行った。また、初期の色目評価用人造大理石成形品を別途作成し、初期の色目評価を行った。結果を表1〜3に示す。各評価項目の評価方法を以下に示す。
<初期(物性評価前の人造大理石)の色目評価用成形品の作成>
着色の基となる促進剤を用いない色目評価用成形品を以下のように加熱硬化により作成した。
ビニルエステル樹脂100部に対し、水酸化アルミニウム200部及びパーキュア−HO(日本油脂社製)を2部添加したものを攪拌混合し、100℃に保持された熱風乾燥機中で1時間硬化させ、色目評価用人造大理石成形品を得た。
[初期の色目]
物性評価用人造大理石成形品と初期の色目評価用成形品との比較で色差ΔLを測定した。色差ΔLは、日本電色工業社製SZ−Σ−90を用いて測定した。
色差ΔL=(色目評価用人造大理石成形品のL値)−(物性評価用人造大理石成形品のL値)
ΔLの絶対値が大きいほど着色が大きい。
[光線透過率]
物性評価用人造大理石成形品を50mm×50mm×8mmに切断したものの光線透過率を日本電色工業株式会社製濁度計300Aで測定した。
[煮沸変色]
物性評価用人造大理石成形品を50mm×50mm×8mmに切断したものを、95〜98℃に保持された熱水中に全面浸漬し、1000時間後に取り出し、浸漬前後の色差ΔEを測定した。
色差ΔEは、日本電色工業株式会社製 SZ−Σ−90を用いて測定した。
[耐熱変色]
物性評価用人造大理石成形品を50mm×50mm×8mmに切断したものを、100℃に保持された熱風乾燥機中に5時間放置し、熱風乾燥前後の前後の色差ΔEを測定した。
色差ΔEは、日本電色工業株式会社製 SZ−Σ−90を用いて測定した。
[脱型時表面硬度]
物性評価用人造大理石を作製する際、ガラス板及びスペーサーを取り除いた直後の表面硬度を測定した。
表面硬度は、バーコル硬度計GZJ934−1型を用いて測定した。
脱型時表面硬度は、成形品の硬化度を確認する為の指標である。硬度が低い場合、脱型が困難となる他、樹脂の本来持つ物性が発現しないことになる。
常温硬化で人造大理石を成形する際、FRP型を使用するが、熱が掛かると型が傷む為、後硬化を行う前に脱型を行う。
Figure 2007204648
Figure 2007204648
Figure 2007204648
実施例、比較例において、成形材料の製造には以下の材料を用いた。
ビニルエステル樹脂; ポリホープRF−711BN ジャパンコンポジット社製(ラジカル重合性オリゴマー/ラジカル重合性単量体=65/35)
不飽和ポリエステル樹脂; ポリホープ6339 ジャパンコンポジット社製(ラジカル重合性オリゴマー/ラジカル重合性単量体=60/40)
オクテン酸コバルト8%;金属コバルト8%含有 東栄化工社製
ナフテン酸コバルト6%;金属コバルト6%含有 東栄化工社製
オクテン酸カリウム13%;金属カリウム13%含有 東栄化工社製
オクテン酸カルシウム5%;金属カルシウム5%含有 東栄化工社製
水酸化アルミニウム;ハイジライトH−341(屈折率1.57) 昭和電工社製
TEBAC;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド
比較例1に示すように、レドックス活性有機コバルト化合物の含有量が少ない場合、硬化が遅く、脱型時の硬度が低くなった。また、比較例4、5、10に示すように、有機カリウム化合物が少ない又は無い場合も同様に脱型時の硬度が低くなった。
比較例2、6に示すようにレドックス活性有機コバルト化合物の含有量が多い場合、着色が大きくなり光線透過率も低下した。
比較例3に示すように、有機カリウム化合物が多い場合、硬化物にクラックが生じた。
比較例7、8、9に示すように、有機カリウム化合物の代わりに他の促進剤を用いた場合、硬化が遅く、脱型する事も不可能であった。
比較例11、12に示すように、不飽和ポリエステルを多量にブレンドした場合、煮沸変色や耐熱変色が大きくなった。

Claims (1)

  1. 熱硬化性樹脂、レドックス活性有機コバルト化合物、有機カリウム化合物、及び、無機充填剤を含んでなる成形材料であって、
    該成形材料は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、
    レドックス活性有機コバルト化合物を金属コバルトとして0.0003〜0.01質量部と、
    有機カリウム化合物を金属カリウムとして0.001〜0.1質量部と、
    屈折率が1.50〜1.60の無機充填剤を50〜400質量部とを含んでなり、
    該熱硬化性樹脂は、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体とからなるものであり、ラジカル重合性オリゴマーの65%以上がビニルエステルである
    ことを特徴とする成形材料。
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