JP2004346209A - イオン性ポリマーおよびポリマー含有基板 - Google Patents

イオン性ポリマーおよびポリマー含有基板 Download PDF

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Abstract

【課題】糖鎖等の生体関連物質と相互作用をするリガンドと、基板表面との固定化が安定かつ容易に実施でき、しかも水中や緩衝液中にあっても、リガンド部位が安定に存在し、長時間その検出能が低下しないポリマー含有基板を提供しうるイオン性ポリマー、および該ポリマー含有基板を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るイオン性ポリマーは、側鎖として、2以上のイオン性官能基(A)、および2以上の下記一般式(1)L−X−B−〔ただし、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基を意味する。〕で表される生体相互作用可能基が、主鎖となるポリマーに共有結合していることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なイオン性ポリマーおよび該イオン性ポリマーを用いるポリマー含有基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
病原性大腸菌O−157は、長さ2μm、幅1μmの棒状細菌であって、1982年に米国で発見されたものである。我が国では、平成8〜9年に大量に感染して多数の死者を出し、大きな社会問題になった。これは、食品や飲料水、患者の排泄物等を通して経口感染し、下痢などの症状が発症後、治療が開始されるまでに平均7日かかるために発見が遅れたこと、その大腸菌O−157が生産するベロ毒素の毒性はフグ毒の数十倍も強いこと等によるものである。加えて、ベロ毒素の迅速な検出法が知られていなかったことも1つの原因と考えられる。
【0003】
従来、大腸菌O−157の検査法としては、抗原抗体法、PCR法及びバイオアッセイ法の3つの原理に基づく方法が知られている。また、これらを組み合わせた方法も提案されており、これらの原理に基づいたキットが幾つか市販されている。ところで、抗原抗体法では、ベロ毒素を形成する6個のサブユニットの個々の蛋白質に対して抗原抗体反応を行うものであるため、測定に長時間を要し、また、測定誤差が生じる場合があり、ベロ毒素を正確に検出することが困難な場合があった。さらにPCR法は、大腸菌の遺伝子の断片よりベロ毒素の存在を示唆する判定を行うもので、ベロ毒素を直接検出できない。またさらに、バイオアッセイ法では、一応の精度ある検出ができるものの、操作が煩雑なうえ、ベロ毒素の分析に3〜4日程度の日時を要するという課題がある。
【0004】
このように、現在幾つか知られているベロ毒素の検出方法は、大腸菌の菌体の存在について調べるか、その存在を示唆する程度のものであり、その分析時間が長くて多大の労力を要するうえ、分析結果の信頼性に乏しい場合があった。
【0005】
一方、糖化合物を用いた一般的なバイオセンサーとして、金などの基板表面に糖鎖を固定化したバイオセンサーが提案されている(特許文献1)。このバイオセンサーは、糖鎖を有する基が、金表面に直接共有結合した構造を有している。このセンサーでは、まず、糖鎖に炭化水素などの低分子化合物を結合させ、さらに、該糖鎖部位にチオール基を結合させ、さらに金表面とチオール基(SH)との直接的な共有結合や吸着によりかかる糖鎖部位を基板に固定化させるものである。
しかしながら、チオール基を介した結合は安定である反面、糖鎖誘導体には、抗原や抗体、酵素などと異なり多くの水酸基が存在し、また立体構造も複雑であるため、糖鎖部位に当該チオール基を導入するには、多くの工程数と労力を必要とし、当該糖鎖にチオール基を簡便に導入できないという問題がある。一方、金にまずチオール基を有する基を導入し、別途合成した糖鎖部位を結合させることも論理的に可能であるが、この方法では金表面への該糖鎖部位の導入効率が悪く、実用上採用できない。
また、該チオール基を有する糖鎖部位を金表面に結合する場合、該糖鎖化合物を作製後、大量に基板に該糖鎖化合物を基板に固定化する作業が必要となるが、通常、金表面に大量の糖鎖部位を均一に一度で導入することは難しく、ピンホールが発生したり、結合反応を繰り返す必要がある。
【0006】
一方、発明者らが以前に開発した検出試薬である糖化合物(特許文献2)は、ベロ毒素が認識・結合できる糖鎖部分と、この糖鎖に、アグリコン部分として炭化水素鎖が結合した構造から構成されている。そして、このアグリコン部分の炭化水素鎖が、あらかじめ疎水処理を施してある基板表面に対して、いわゆる疎水結合という弱い結合により固定化されている。このため、水中や緩衝液中に長時間浸漬したり、繰り返し使用すると基板から検出試薬が、時に一部、剥離するという可能性があるなど、安定性・耐久性などに欠けるという問題があった。
特に、通常、毒素が結合したセンサーチップは、単分子膜を介して糖鎖を結合させているので、一度使用した後洗浄すると基板表面に固定化してある糖化合物(特許文献2)が剥離する場合があり、再度、該糖化合物を金基板に累積する必要があった。
また、この方法においては、単分子膜を作製後、しかるべき基板に移し取る(累積)作業が必要となるが、大量に基板に該糖鎖化合物を移し固定化する場合、一度に数多くの処理をすることが困難である。つまり、単分子膜を疎水処理した金表面に累積するという作業を、短時間に大量に行うことには限度があり、実用的とは言い難い。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第3231733号
【特許文献2】
特開2001−342197号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、糖鎖等の、生体関連物質との相互作用が可能なリガンドと、基板表面との固定化が安定かつ容易に実施でき、しかも水中や緩衝液中にあっても、リガンド部位が安定に存在し、長時間その検出能が低下しない、非特異的な吸着をできる限り排除した、生体関連物質との特異的結合に優れたポリマー含有基板を提供しうるイオン性ポリマー、および該ポリマー含有基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、側鎖として、生体または生体由来物質(これらを「生体関連物質」ということがある。)との相互作用が可能な2以上のリガンドおよびスペーサーを有する生体相互作用可能基と、イオン性官能基とが、一つのポリマー主鎖上に存在するイオン性ポリマーを用いると、基板表面への固定化を容易かつ安定に行うことができるとともに、生体または生体由来物質との結合性に優れたポリマー含有基板が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0010】
〔1〕 側鎖として、2以上のイオン性官能基(A)、および2以上の下記一般式(1)L−X−B− 〔ただし、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基を意味する。〕で表される生体相互作用可能基が、主鎖となるポリマーに共有結合していることを特徴とするイオン性ポリマー。
〔2〕 少なくとも2個の前記リガンドLが、同一の生体関連物質に同時に相互作用しうることを特徴とする〔1〕に記載のイオン性ポリマー。
〔3〕 前記主鎖となるポリマーが、置換基を有していてもよい、炭化水素骨格またはポリアミノ酸由来の骨格を有し、前記イオン性官能基(A)と主鎖となるポリマー部分の重量平均分子量が1000〜100万であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載のイオン性ポリマー。
〔4〕 前記イオン性ポリマーが、下記一般式(1)
【化6】
Figure 2004346209
〔式(1)中、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基、Zは主鎖部分の炭素原子数が1〜8の置換基を有してもよいアルキレン基、主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基または−C(=O)NH−で表される基を意味する。〕で表される構成単位(I)および、下記一般式(2)
【化7】
Figure 2004346209
〔式(2)中、Aはイオン性官能基を示し、R、Zは、それぞれ式(1)と同意義である。〕で表される構成単位(II)を含有し、構成単位(I)のモル数と構成単位(II)のモル数との合計に対し、構成単位(I)が1〜99%、構成単位(II)が99〜1%の割合で存在することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
〔5〕 前記イオン性ポリマーが、下記一般式(3)
【化8】
Figure 2004346209
〔式(3)中、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基、Aはイオン性官能基、R、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基、Zは主鎖部分の炭素原子数が1〜8の置換基を有してもよいアルキレン基または主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基である。〕で表される構成単位(III)、および/または下記一般式(4)
【化9】
Figure 2004346209
〔式(4)中、L、X、B、A、R、R、Zは、それぞれ、式(3)と同意義を意味する。〕
で表される構成単位(IV)からなることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
〔6〕 さらに、下記一般式(5)
【化10】
Figure 2004346209
〔式(5)中、A、R、R、Zは、それぞれ、前記式(3)と同意義である。〕
で表される構成単位(V)を含有し、前記構成単位(III)〜(V)のモル数の合計に対し、構成単位(III)および(IV)の合計が1〜99%、構成単位(V)が99〜1%の割合で存在することを特徴とする〔5〕に記載のイオン性ポリマー。
〔7〕 前記Xが、炭素原子数2〜30のアルキル基からなる疎水性基を含むことを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
〔8〕 前記生体関連物質と相互作用有するリガンドが、タンパク質、糖タンパク質、単糖、糖鎖、ビオチン、インターカレーター、抗原、抗体、糖脂質、核酸塩基および核酸からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
〔9〕 前記イオン性官能基(A)が、アニオン性官能基またはカチオン性官能基であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のイオン性ポリマーと基板とからなり、該イオン性ポリマーが基板と2以上のイオン結合で結合し、該イオン性ポリマーが最外層を形成していることを特徴とするイオン結合性ポリマー含有基板。
〔11〕 前記イオン性ポリマーが、少なくとも1つのポリイオン性高分子膜を介して、基板とイオン結合していることを特徴とする〔10〕に記載のイオン結合性ポリマー含有基板。
〔12〕 前記ポリイオン性高分子膜が、ポリカチオン性高分子膜とポリアニオン性高分子膜とが交互に積層されてなる交互積層膜であることを特徴とする〔11〕に記載のイオン結合性ポリマー含有基板。
〔13〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー中の2以上のイオン性官能基(A)と、基板上の2以上の官能基とが、共有結合により結合してなることを特徴とする共有結合性ポリマー含有基板。
〔14〕 生体関連物質の検出用イオン性ポリマーである、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
〔15〕 生体関連物質の検出用基板である、〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の基板。
〔16〕 〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の基板を含有する、生体関連物質の検出用センサー。
〔17〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のイオン性ポリマーを含有する、生体関連物質の検出用試薬。
〔18〕 下記の工程からなる、生体関連物質の検出方法:
(1)試験化合物を、〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の基板に接触させる工程、
(2)基板に結合した生体関連物質を検出する工程。
【0011】
【発明の実施の形態】
【0012】
イオン性ポリマー
本発明に係るイオン性ポリマーは、側鎖として、2以上のイオン性官能基(A)、および2以上の一般式(1)L−X−B−で表される生体相互作用可能基が、主鎖となるポリマーに共有結合している。ここで、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基を意味する。以下に、生体相互作用可能基、イオン性官能基、イオン性ポリマーについて具体的に説明する。
【0013】
生体相互作用可能基(L−X−B−)
本発明で用いられる生体相互作用可能基は、L−X−B−からなる。
(生体関連物質との相互作用が可能なリガンド:L)
Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンドで、リガンドとしてはたとえば、タンパク質、糖タンパク質、単糖、糖鎖、ビオチン、インターカレーター、糖脂質、抗原、抗体、核酸塩基、核酸(RNA、DNA)などが挙げられる。このリガンドは、必ずしも天然由来とは限らず、化学的に合成した人工のものも含まれる。
本明細書において、生体関連物質とは、生体および生体由来物質を含む。生体由来物質とは、生体そのものではなく、生体から発出される物質、さらに抗原、抗体などの物質を含む。
ここで、生体関連物質と相互作用するとは、生体関連物質がリガンドに選択的に非共有結合的に吸着されることをいう。これらリガンドの種類は、相互作用する生体関連物質の種類により異なり、限定されない。
前記糖鎖は、オリゴ糖および多糖を含む。
【0014】
相互作用する生体関連物質としては、具体的には、たとえば、毒素、ウィルス、細菌、微生物、細胞、タンパク質、DNAなどが挙げられる。
【0015】
たとえば、生体関連物質が、大腸菌O−157または大腸菌O−157が生産するベロ毒素の場合、リガンドLとしては、下記式(6)
【化11】
Figure 2004346209
で表されるガラクトース2個がα結合した2糖単位(Galα1−4Galβ1−O−)のもの、または下記式(7)
【化12】
Figure 2004346209
で表されるガラクトース2個がα結合したものに、さらにグルコースが結合した3糖単位(Galα1−4Galβ1−4Glcβ1−O−)のものを好ましく用いることができる。
【0016】
本発明のイオン性ポリマーが、リガンドLとして、病原菌類(たとえば、大腸菌O−157)やそれらの生産する毒素類(たとえば、ベロ毒素)と容易に結合可能であると、これらの菌体もしくは毒素ときわめて特異的かつ効果的に結合あるいは捕捉できる。したがって、それらの定性分析及び定量分析に有効に使用できる。
【0017】
たとえば、式(6)に示した2糖構造は、ベロ毒素を認識する最小単位であり、前記ガラクトース2個がアルファ結合した構造単位のみを有し、他のいわゆる夾雑物質との反応を受けにくい構造のものであるから、より正確にベロ毒素を検出することができる。
【0018】
一方、式(7)で表される3糖構造の糖鎖は、還元末端側の2糖は、いわゆる、ラクトース構造である。このラクトース構造は、ベロ毒素のみならず、生体中に存在する多くの蛋白質と反応する(クロスする)ため、ベロ毒素に対する選択性(特異性)が減少する可能性があるが、ベロ毒素に対する結合の強さは、生体に存在する糖鎖構造の類似性から判断して、2糖化合物に比し優れている。
【0019】
したがって、ベロ毒素の検出に係るリガンドの選定に当たっては、その正確性、迅速性などを十分考慮し、両者の化合物のそれぞれの特徴が十分発揮されるように選定することが望ましい。
【0020】
また、毒素がボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素Bの場合、Lとしては、下記式(8)
【化13】
Figure 2004346209
で表される7糖のリガンドが挙げられる。
【0021】
(スペーサー:X)
Xはスペーサーであり、Lとポリマー主鎖とを一定の間隔を置いて結合基Bを介して結合させている。ポリマー含有基板を水溶液(緩衝液)中で使用する場合に、イオン性官能基(A)が対応する反対のチャージを持つイオン性ポリマーまたは基板表面と静電的な結合(イオン結合)により結合している場合、そのイオン結合部位に対して、水や水に溶けているイオン性物質(緩衝液中の塩など)の接触を低減し、イオン性ポリマー自身の剥離を抑制するため、該スペーサーは疎水的な構造を有していることが好ましい。一方、該生体相互作用可能基の調製過程では、生体関連物質との相互作用が可能なリガンドLを水溶液中で固定化することが多く、操作の簡便性を保持するため、水に対する溶解性が必要となる場合がある。
【0022】
このため、該スペーサーXは、たとえば、好ましくは炭素数原子2〜30、さらに好ましくは6〜20、特に好ましくは8〜15の直鎖状のアルキル基を有していることが望ましい。
【0023】
たとえば、相互作用する生体関連物質が、O−157またはO−157の生産するベロ毒素である場合、スペーサーXとしては、好ましくは炭素原子数6〜20、さらに好ましくは炭素原子数8〜12の直鎖状アルキレン基であることが望ましい。
【0024】
これまで、たとえば、該糖鎖化合物のアグリコン部分は、疎水的な相互作用により単に基板に固定化するための機能として利用されているにすぎなかったが、本発明をO−157またはベロ毒素に適用する場合、該スペーサー部位が上記範囲の炭素原子数による疎水構造を採ることにより、リガンドLへのO−157またはベロ毒素の結合を向上させることができる。
【0025】
また、相互作用する生体関連物質が、たとえばボツリヌス菌の生産する毒素である場合、スペーサーXとしては、好ましくは炭素原子数6〜20、さらに好ましくは炭素原子数10〜15の直鎖状アルキレン基を含有することが好ましい。たとえば、炭素原子数13のアルキレン基を含有する基として、下記式(9)
【化14】
Figure 2004346209
で表される基が挙げられる。なお、Lはリガンド、Bはポリマーとの結合基である。
【0026】
(結合基:B)
Bは結合基であり、生体相互作用可能基と、ポリマー主鎖との結合部位に当たる。
【0027】
このような結合基としては、たとえば、−NH−CO−(ポリマー)、−CO−NH−(ポリマー)、−NH−CO−R−(ポリマー)、−CO−NH−R−(ポリマー)などのアミド結合;
−NH−SO−(ポリマー)、−SO−NH−(ポリマー)、−NH−SO−R−(ポリマー)、−SO−NH−R−(ポリマー)などのスルホンアミド結合;
また、シッフ塩基−CH=N−(ポリマー)、−N=CH−(ポリマー)、または、それらをNaBHCN、BHNHMe、Pd−HCOOHなどにより還元し安定化した−CH−NH−(ポリマー)、−NH−CH−(ポリマー)などもあげられる。
この他、尿素結合−NH−CO−NH−(ポリマー)、エステル−O−CO−(ポリマー)、ウレタン結合−O−CO−NH−(ポリマー)、−S−CO−NH−(ポリマー)、−NH−CS−NH−(ポリマー)、−NH−CCl(1,3,5−トリアジン骨格)−NH−(ポリマー)などもあげられる。
なお、前記「−CCl」の部分を1,3,5−トリアジン骨格という。
上記の尿素結合、ウレタン結合は、(ポリマー)−N=C=Oから、また、−S−CO−NH−(ポリマー)、−NH−CS−NH−(ポリマー)は、(ポリマー)−N=C=Sから、それぞれ調製可能である。
−NH−CCl(1,3,5−トリアジン骨格)−NH−(ポリマー)の場合には、トリエチルアミンや水酸化ナトリウムのような塩基性条件下で反応させることができる。
エステルやアミド結合、スルホンアミド結合などは、後述のアミド結合を形成させる方法に準じて形成することができる。
【0028】
ただし−R−は、ポリマー主鎖と、これらのアミド結合、スルホンアミド結合等との間に、さらに他の基があってもよいことを示す。このようなRとしては、炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((CO))などが挙げられる。
また、前記「−(ポリマー)」は、結合基が主鎖となるポリマー側に結合していることを示す。
【0029】
イオン性官能基(A)
イオン性官能基(A)としては、アニオン性官能基またはカチオン性官能基が挙げられる。
【0030】
アニオン性官能基としては、たとえば、−CO (カルボン酸基)、−SO (スルホン酸基)、−OSO (硫酸基)、−OPO (リン酸基)、−B(OH)(ボロン酸)などが挙げられる。また、このようなアニオン性官能基は、金属陽イオンまたは有機陽イオンと結合していてもよい。
【0031】
金属陽イオンとしては、たとえば、Na(ナトリウム陽イオン)、K(カリウム陽イオン)、Ca(カルシウム陽イオン)などのアルカリ金属が挙げられる。有機陽イオンとしては、MeH(トリメチルアンモニウム陽イオン)、EtH(トリエチルアンモニウム陽イオン)、Me(ジメチルアンモニウム陽イオン)などが挙げられる。
【0032】
カチオン性官能基としては、たとえば、グアニジウムイオン、−NH 、−NH(CH、−NH(CH 、−N(CH などが挙げられる。また、下記式
【化15】
Figure 2004346209
で表される基でもよい。
このようなカチオン性官能基は、塩素、臭素などのハロゲン陰イオン、硫酸陰イオン、スルホン酸陰イオン、燐酸陰イオン、カルボン酸陰イオンなどと結合して塩を形成していてもよい。
【0033】
これらのうち、アニオン性官能基としては、−CO 、−SO を好ましく用いることができる。また、カチオン性官能基としては、−NH 、−N(CH 、下記式
【化16】
Figure 2004346209
をより好ましく用いることができ、さらに好ましくは、4級アンモニウムイオンである、−N(CH 、下記の構造を含む基を用いることができる。
【化17】
Figure 2004346209
【0034】
このようなイオン性官能基(A)は、主鎖となるポリマーに直接結合していても、たとえば、他の結合基Rを介してポリマー主鎖に結合していてもよい(たとえば、A−R−ポリマー主鎖)。
【0035】
結合基−R−としては、たとえば、炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((CO))などが挙げられる。
このようなイオン性官能基は、導入が容易であり、また変換しやすく、さらに、ポリイオン性高分子膜とより強力な結合を形成することができる。
【0036】
イオン性官能基の種類は、基板上のポリイオン性高分子膜のイオン性官能基の種類との組合せ、あるいは生体相互作用可能基との結合基への変換のしやすさなどにより決定され、限定されない。
このようなイオン性官能基は、主鎖となるポリマーに当初から含まれる官能基をそのまま適用するか、又はポリマーに当初含まれる官能基を誘導して得ることができる。
【0037】
イオン性ポリマー
本発明に係るイオン性ポリマーは2以上の生体相互作用可能基と2以上のイオン性官能基(A)を有している。該イオン性ポリマーは、イオン性官能基を有するポリマー(以下「原料ポリマー」ということがある。)に、生体相互作用可能基を誘導する生体相互作用可能化合物を結合させて形成することができる。
【0038】
(原料ポリマー)
前記原料ポリマーとしては、イオン性官能基を2以上有していればよく、主鎖となるポリマーは特に限定されない。
入手の容易性からは、たとえば、置換基を有していてもよい炭化水素骨格またはポリアミノ酸由来の骨格を有するポリマーを好ましく用いることができる。
【0039】
このような置換基を有していてもよい炭化水素骨格またはポリアミノ酸由来の骨格を有するポリマーとしては、たとえば、下記一般式(1)および(2)で表される構成単位(I)および(II)を有するものが挙げられる。
【化18】
Figure 2004346209
で表される構成単位(I)。
【化19】
Figure 2004346209
で表される構成単位(II)。
【0040】
式(1)中、L、X、Bは、それぞれ、前記生体関連物質との相互作用が可能な基L、スペーサーX、結合基Bと同意義である。
【0041】
は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、炭素原子数1〜6のアルキル基のうちでは、炭素原子数1または2のアルキル基(メチル基またはエチル基)がより好ましい。
【0042】
これらのうちでは、Rは水素原子であることが望ましい。Rの分子径が小さいと、イオン性官能基が基板とイオン結合する際の立体障害を低減することができる。
【0043】
は、好ましくは、主鎖部分の炭素原子数が1〜8の、置換基を有してもよいアルキレン基、主鎖部分の炭素原子数が2〜8の、置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基または−C(=O)NH−で表される基が挙げられる。
【0044】
本明細書におけるアルキレン基とはアルキル基からさらに任意の水素原子を1個除いて誘導される二価の基を意味し、主鎖部分の炭素原子数が1〜8のアルキレン基としては、具体的には例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、1,3−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などがあげられ、より好ましくは主鎖部分の炭素原子数が1または2のアルキレン基(メチレン基またはエチレン基)が挙げられ、さらにメチレン基が好ましい。
【0045】
また、前記アルキレン基が置換基を有する場合、置換基としては、たとえば、炭素原子数1〜15、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜2のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜2のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基などが挙げられる。
【0046】
具体的には、炭素原子数1〜15のアルキル基は、炭素数1〜15個の脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基である、炭素数1〜15個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を意味し、具体的には例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−へキシル基、2−へキシル基、3−へキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、3−メチル−1−ペンチル基、4−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基などの炭素原子数1〜6のアルキル基、さらには、ヘプチル基、オクタン基、ノナン基、デカン基、テトラデセン基などがあげられる。
【0047】
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は、たとえば、前記C1−6アルキル基が結合したオキシ基であることを意味し、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、2−メチル−1−プロピルオキシ基、2−メチル−2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、1−ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブチルオキシ基、3−メチル−1−ブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロピルオキシ基、1−へキシルオキシ基、2−へキシルオキシ基、3−へキシルオキシ基、2−メチル−1−ペンチルオキシ基、3−メチル−1−ペンチルオキシ基、4−メチル−1−ペンチルオキシ基、2−メチル−2−ペンチルオキシ基、3−メチル−2−ペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2−エチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、2,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基等があげられる。
【0048】
炭素原子数6〜10のアリール基は、炭素数6〜10の芳香族性の炭化水素環式基をいい、具体的には例えば、フェニル基、トシル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
【0049】
また、主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基としては、たとえば、炭素原子数4〜8の二重結合が1つ含まれるアルケニレン基、炭素原子数4〜8のジエンなどが挙げられる。また、α,β−不飽和カルボニル構造を有していてもよい。
なお、アルケニレン基は、前記アルキレン基の少なくとも1つの単結合が二重結合となった基であり、末端または主鎖中のいずれに二重結合が存在していてもよい。
【0050】
アルケニレン基が置換基を有する場合、置換基としては、たとえば、炭素原子数1〜15、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜2のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜2のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基などが挙げられ、その具体例は、前記アルキレン基の置換基と同様のものが挙げられる。
【0051】
の炭素原子数が増加して疎水性が高まると、生体相互作用可能基を、水溶液中で主鎖となるポリマーに結合させる場合に、主鎖となるポリマーの溶解性が低下し、結合反応を効率的に行えなくなる場合がある。
なお、水以外の溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)もしくは、水やこれらの2種類の溶媒の混液中で生体相互作用可能基をポリマー原料に結合させることも可能である。生体相互作用可能基は、エステル系の保護基(アセチル基、ベンゾイル基、など)や、エーテル系の保護基(ベンジル基、トリチル基など)、アセタール系保護基(イソプロピリデン基、ベンジリデン基など)などで保護されていても良く、一部保護されていても良く、さらに、保護されていなくても良い。保護されていない場合には、水系の溶媒が好ましいが、DMFやDMSOのような有機溶媒も使用可能である。保護されている場合には、水系溶媒は溶解性の問題から使用することは困難である。
【0052】
式(2)中、Aは前記イオン性官能基(A)と同意義である。R、Zは、式(1)中のR、Zと同意義である。
【0053】
このようなポリマー主鎖に、側鎖としてイオン性官能基(A)と生体相互作用可能基が存在するイオン性ポリマーであって、構成単位(I)および構成単位(II)を有するイオン性ポリマーは、たとえば、主鎖ポリマー中のイオン性官能基の一部に、生体相互作用可能基を結合させるとともに、生体相互作用可能基が結合しなかったイオン性官能基をそのまま残存させて得ることができる。
【0054】
このような構成単位(I)および(II)の含有割合は、検出すべき生体関連物質の種類、リガンドLの種類、基板上のポリイオン性高分子膜のイオン性官能基の密度などにより異なり、限定されない。
【0055】
これらの構成割合は、構成単位(I)のモル数と構成単位(II)のモル数との合計に対し、好ましくは、構成単位(I)が10〜95%、構成単位(II)が5〜90%の割合で、さらに好ましくは構成単位(I)が25〜75%、構成単位(II)が75〜25%の割合で存在することが望ましい。
導入割合の調整は、原料ポリマーに接触させる、生体相互作用可能基を誘導する生体相互作用可能化合物のモル当量を適宜調整して実施することができる。
【0056】
構成単位(I)と構成単位(II)との配列順序は限定されず、たとえば、ランダム、交互、ブロック状、またはこれらを組み合わせた配列にすることができる。
【0057】
また、本発明のイオン性ポリマーとしては、さらに、下記一般式(3)および/または(4)で表される構成単位(III)および/または(IV)を有するものが挙げられる。また、さらに、これらに加え、下記式(5)で表される構成単位(V)を含んでいてもよい。
【化20】
Figure 2004346209
で表される構成単位(III)。
【化21】
Figure 2004346209
で表される構成単位(IV)。
【化22】
Figure 2004346209
で表される構成単位(V)。
【0058】
式(3)および(4)中、L、X、B、Aは、それぞれ、前記生体関連物質との相互作用が可能な基L、スペーサーX、結合基B、イオン性官能基Aと同意義である。
【0059】
、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、炭素原子数1〜6のアルキル基のうちでは炭素原子数1または2のアルキル基(メチル基またはエチル基)がより好ましい。
【0060】
これらのうちでは、R、Rは共に水素原子であることが望ましい。R、Rの分子径が小さいと、イオン性官能基が基板とイオン結合する際の立体障害を低減することができる。
【0061】
は、好ましくは、主鎖部分の炭素原子数が1〜8の置換基を有してもよいアルキレン基または主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基で表される基である。
【0062】
主鎖部分の炭素原子数が1〜8の置換基を有してもよいアルキレン基としては、より好ましくは主鎖部分の炭素原子数が1または2のアルキレン基(メチレン基またはエチレン基)が挙げられ、さらにメチレン基が好ましい。
【0063】
アルキレン基が置換基を有する場合、置換基としては、たとえば、炭素原子数1〜15、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜2のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜2のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基などが挙げられ、その具体例はZと同様のものが挙げられる。
【0064】
また、主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基としては、たとえば、炭素原子数4〜8の二重結合を1つ含むアルケニレン基、炭素原子数4〜8のジエンなどが挙げられる。また、α,β−不飽和カルボニル構造を有していてもよい。
なお、アルケニレン基は、アルキレン基の少なくとも1つの単結合が二重結合となった基であり、末端または主鎖中のいずれに二重結合が存在していてもよい。
【0065】
また、アルケニレン基が置換基を有する場合、置換基としては、たとえば、炭素原子数1〜15、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜2のアルキル基;炭素原子数1〜6のアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜2のアルコキシ基;炭素原子数6〜10のアリール基などが挙げられ、その具体例はZと同様のものが挙げられる。
【0066】
が大きくなって疎水性が高まると、生体相互作用可能基を、水溶液中でポリマー主鎖に結合する場合に、主鎖となるポリマーの溶解性が低下し、結合反応を効率的に行えなくなる場合がある。
なお、水以外の溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)もしくは、水やこれらの2種類の溶媒の混液中で生体相互作用可能基をポリマー原料に結合させることも可能である。生体相互作用可能基は、エステル系の保護基(アセチル基、ベンゾイル基、など)や、エーテル系の保護基(ベンジル基、トリチル基など)、アセタール系保護基(イソプロピリデン基、ベンジリデン基など)などで保護されていても良く、一部保護されていても良く、さらに、保護されていなくても良い。保護されていない場合には、水系の溶媒が好ましいが、DMFやDMSOのような有機溶媒も使用可能である。保護されている場合には、水系溶媒は溶解性の問題から使用することは困難である。
【0067】
式(5)中、Aは前記イオン性官能基(A)と同意義である。R、R、Zは、式(3)、(4)中のR、R、Zと同意義である。
【0068】
このような構成単位(III)、(IV)を含むイオン性ポリマーは、たとえば、主鎖となるポリマー中のイオン性官能基の一部に、生体相互作用可能基を結合させるとともに、生体相互作用可能基が結合しなかったイオン性官能基をそのまま残存させて得ることができる。
【0069】
このような構成単位(III)、(IV)、さらに必要に応じ(V)の含有割合は、検出すべき生体関連物質の種類、リガンドLの種類、基板上のポリイオン性高分子膜のイオン性官能基の密度などにより異なり、限定されない。
【0070】
構成単位(V)を含む場合、これらの構成割合は、構成単位(III)〜(V)のモル数の合計に対し、好ましくは構成単位(III)および(IV)の合計が10〜95%、構成単位(V)が5〜90%の割合で、さらに好ましくは構成単位(III)および(IV)の合計が25〜75%、構成単位(V)が75〜25%の割合で存在することが望ましい。
【0071】
導入割合の調整は、原料ポリマーに接触させる生体相互作用可能基を誘導する生体相互作用可能化合物のモル当量を適宜調整して実施することができる。
【0072】
構成単位(III)および/または(IV)と構成単位(V)との配列順序は限定されず、たとえば、ランダム、交互、ブロック状、またはこれらを組み合わせた配列にすることができる。
【0073】
相互作用しうる生体関連物質におけるリガンドLの受容量にもよるが、1つの生体関連物質に複数のリガンドLが結合しうる場合には、少なくとも2つのリガンドLが、同一の生体関連物質に同時に相互作用しうる間隔で主鎖ポリマーに結合していることが望ましい。このため、少なくとも2つの前記構成単位(I)(または(III)若しくは(IV))が、同一の生体関連物質に同時に相互作用しうる間隔で配列していることが望ましい。
1本のポリマー主鎖上に存在する2以上のリガンドLが、同時に生体関連物質に結合することにより、マルチバレンシー効果あるいはクラスター効果と呼ばれる相乗効果が発現する(M. Mammen, S.−K. Choi, and G. Whitesides, Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 2754−2794)。
【0074】
通常、この効果は、モノマーレベルと比較して、10〜100000倍となる。このため、モノマー上にリガンドLが結合している場合と比較して、生体関連物質との結合がより強力になり、該イオン性ポリマーをセンサーなどに適用した場合、極めて高い感度での生体関連物質の検出が可能となる。
【0075】
なお、少なくとも2つのリガンドLが、同一の生体関連物質に同時に相互作用しうる間隔を、該主鎖ポリマーに発現させることは、該生体関連物質のリガンド結合部位に対応させた分子をその都度、設計・合成することを意味するが、主鎖のポリマーに組み込まれたリガンドLの一部(ポリマー全体に対して1%〜100%で、3%〜90%のリガンドLが含まれることが好ましい)が、偶発的に生体関連物質のリガンド結合部位(リセプター蛋白質など)と相互作用すれば、生体関連物質とリガンドLを含むイオン性ポリマーとが結合できる。従って、前記各コンポーネント(III)、(IV)、(V)を、特に配列順序を限定せずに、ランダム、交互、ブロック状、またはこれらを組み合わせた配列を有するイオン性ポリマーを供給することにより、十分に生体関連物質を捉えることができる。必ずしも、オーダーメイドのリガンドLを含むイオン性ポリマーを合成する必要はない。また、リガンドLのモル比を増大させることにより、生体関連物質との相互作用の確率が高まるため、Lの含量を増やしてもよい。
【0076】
以下に、このような構成単位(I)および(II)、構成単位(III)および/または(VI)と、(V)の具体例を示す。
【0077】
構成単位(I)、(II)からなりリガンドとして糖鎖を含有するイオン性ポリマーとして、たとえば、下記式(10)〜(13)が挙げられる。
【化23】
Figure 2004346209
【0078】
前記(10)〜(13)に示した糖鎖(2糖)は、前記(7)式に示す3糖でもよく、これも大腸菌O−157及びそれの生産するベロ毒素のリガンドとして用いることができる。
式(10)〜(13)中、Xは好ましくは6〜20、さらに好ましくは8〜12の整数を示す。Y、Zはそれぞれ、5〜5000の整数である。Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。それぞれの構成単位は、ランダム、交互またはブロック状に存在していてもよい。これらは、O−157およびベロ毒素のリガンドとして好ましく用いることができる。
【0079】
構成単位(III)および/または(VI)と、さらに必要に応じ構成単位(V)を有するイオン性ポリマーとしては、たとえば、下記式(14)および/または(15)、(16)で表される構成単位を含むものが挙げられる。
【化24】
Figure 2004346209
【化25】
Figure 2004346209
【化26】
Figure 2004346209
【0080】
式(14)または(15)において、Galα1―4Galβ1―O−は、前記式(6)で表されるガラクトース2個がα結合した2糖単位を表す。また、Xは好ましくは6〜20、さらに好ましくは8〜12の整数を示す。Mは、Na、K、MeHなどの金属陽イオン又は有機陽イオンを示す。これらは、O−157およびベロ毒素のリガンドとして好ましく用いることができる。
【0081】
(主鎖ポリマーの製造)
本発明に係るイオン性ポリマーは、2以上の生体相互作用可能基と2以上のイオン性官能基(A)を側鎖として有しているが、通常、生体相互作用可能基の導入は、原料ポリマー、たとえば、置換基を有していてもよい炭素骨格またはポリアミノ酸由来の骨格を有するポリマーに含まれるイオン性官能基に結合させて行うことができる。
このため、原料ポリマーは、当初、好ましくはイオン性官能基を少なくとも4以上有しているか、あるいは、官能基を変換して、イオン性官能基が4以上となっていてもよい。
【0082】
このような原料ポリマーは、市販品を用いてもよいし、またたとえば、イオン性官能基を有するモノマーまたはイオン性官能基を誘導しうるモノマーを(共)重合して得ることができる。
このようなモノマーとしては、たとえば、イオン性官能基またはイオン性官能基を誘導しうる基を有する、ビニル基、アリル基、ジエンなどを有するモノマーが挙げられる。
【0083】
具体的には、たとえば、
(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;
(メタ)アクリル酸、または蟻酸ビニル、酢酸ビニル、酢酸アリル、アセト酢酸アリル、ビニルマレイン酸などのカルボン酸またはそのエステル類;
スチレンスルホン酸、またはスチレンスルホン酸エステルなどのスルホン酸またはそのエステル類;
この他、硫酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステルなども挙げられる。
【0084】
モノマーの重合は、公知の方法により行うことができ、たとえば、溶媒の存在下又は非存在下で、必要に応じ重合開始剤を添加して、モノマーを重合させて行うことができる。
【0085】
溶媒としては、モノマーが溶解するものであればよく、限定されない。たとえばTHF、メタノール、DMF、DMSOなどを用いることができる。
【0086】
重合開始剤としては、たとえば2,2’‐アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1’‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カルボニトリル)、2,2’‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)などを用いることができる。また、このようなアゾ化合物の他に、過酸化物、有機金属化合物などを用いることもできる。
【0087】
上記THF等の溶媒に溶解しないモノマーを用いる場合は、たとえば、超純水を溶媒として用い、N,N,N’,N’‐テトラメチルエチレンジアミン、4,4’‐アゾビスシアノ吉草酸などの重合開始剤を用いて重合を行うことができる。
【0088】
重合は、モノマーの種類により異なり限定されないが、通常、たとえば、室温〜100℃程度の温度範囲で、1〜72時間程度の時間で実施することができる。
【0089】
また、アスパラギン酸、グルタミン酸などの縮合体であるポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのカルボン酸を有するポリアミノ酸、あるいは、ポリリシンなどの側鎖にアミノ基を有するポリアミノ酸を用いることもできる。
【0090】
このような縮合体は、市販品を用いてもよいし、常法により合成することもできる。
【0091】
さらにポリマーとしては、下記式(17)
【化27】
Figure 2004346209
で表されるエチレン系無水マレイン酸誘導体を用いることができる。式(17)中nは、好ましくは5〜10000の整数である。R11、R12、R21、R22は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数6〜10のアリール基を示す。
なお、該R11、R12、R21、R22は、前記式(1)、(2)、(3)、(4)におけるZ、Zがメチレン基の場合の置換基に相当する。
炭素原子数1〜15のアルキル基のうちでは、好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜2のアルキル基が望ましく、炭素原子数1〜6のアルコキシ基のうちでは、好ましくは炭素原子数1〜2のアルコキシ基が望ましい。このようなアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基の具体例は、前記ZまたはZで挙げた置換基と同様の基が挙げられる。
【0092】
これらのうち、より具体的には、たとえば、
11、R12、R21、R22が全て水素原子、
11、R12が共に水素原子、R21、R22が共にメチル基、
11が水素原子、R12がテトラデセン、R21、R22が共に水素原子、
11、R12、R21が水素原子、R22がメトキシ基等のアルコキシ基またはフェニル基等のアリール基である繰り返し単位を有する原料ポリマーを好ましく用いることができる。
【0093】
これらのうちでは、下記式(18)で表されるR11、R12、R21、R22が全て水素原子の繰り返し単位のものが好ましい。
【化28】
Figure 2004346209
【0094】
これらのエチレン系無水マレイン酸誘導体を用いると、生体反応性可能基を誘導するモノマーがアミノ基を有する場合に、アミド結合を形成し、前記生体反応性可能基を容易にポリマーに結合させることができるとともに、イオン性官能基(A)として、カルボキシル基を創出させることができる。
このようなエチレン系無水マレイン酸誘導体は、O−157またはベロ毒素の検出用イオン性ポリマーの製造に、好適に用いることができる。
【0095】
これらのエチレン系無水マレイン酸誘導体のうち、たとえば、ポリ(エチレン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(ブタジエン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸−alt−1−テトラデセン)(「alt」は、交互に繰り返すことを示す。)などは市販品を用いてもよいし、あるいは、常法により合成することもできる。
【0096】
このようなポリマーでは、前記無水カルボン酸部分1つに生体反応性可能基が最大1つ結合するので、生体反応性可能基の導入割合は、最大50%となる。
このような本発明で用いる主鎖となるポリマー部分およびイオン性官能基(A)の重量平均分子量は好ましくは1000〜1,000,000、さらに好ましくは100,000〜500,000の範囲にあることが望ましい。
【0097】
(生体相互作用可能化合物の製造方法)
生体相互作用可能基は、リガンドL、スペーサーXおよび結合基Bとからなる。このような生体相互作用可能基を誘導する生体相互作用可能化合物は、通常、リガンドLに、官能基を有するスペーサーを任意の方法により結合して合成する。次いでこの生体相互作用可能化合物をポリマー主鎖に任意の方法により導入する。
【0098】
たとえばリガンドLが糖鎖である場合を例にとって生体相互作用可能化合物の製造方法を示す。具体的には、前記式(14)、(15)においてxが10である場合の生体相互作用可能化合物(Galα1−4Galβ1−O−(CH10−NH)(図1中、化合物9)の製造方法を、図1を参照しつつ示す。
【0099】
市販の1−ブロモ−10−デカノール、及び市販のアセトブロモガラクトピラノシド1を、炭酸銀(AgCO)、過塩素酸銀(AgClO)またはシルバートリフレート(AgOTf)等のプロモーターの存在下に、溶媒中で反応させ、糖の1位のアグリコン部分に選択的にアルキル鎖を導入した化合物2(ガラクトース誘導体)を得る。溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、トルエンなどを好ましく用いることができる。これらのうちでは溶解性の点から、塩化メチレンをより好ましく用いることができる。反応系には、乾燥剤としてモレキュラーシーブスを添加してもよい。
プロモーターにトリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、トリフルオロボランジエチルエーテル(BFEtO)を用いる場合には、原料1の代わりに市販のペンタアセチルガラクトピラノシドまたは、2,3,4,6−O−テトラアセチルガラクトピラノシル トリクロロイミデート誘導体を用いても良い。いずれの場合も、化合物2を得る。
【0100】
反応は、TMSOTf及びBFEtOを用いるときには、−80℃〜30℃、好ましくは、−30℃〜10℃であり、炭酸銀、過塩素酸銀、シルバートリフレートを用いるときには、好ましくは、−10℃〜室温(20〜30℃)が好ましい。
また、原料の糖化合物に対して、用いるモノアルコールの量は、好ましくは1.0モル当量〜10モル当量、さらに好ましくは1.1〜1.5モル当量の範囲にあることが望ましい。反応時間は、好ましくは1時間から1週間で、より好ましくは5時間〜48時間、特に好ましくは20時間前後であることが望ましい。
【0101】
つぎに、前記化合物2を乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、アジ化ナトリウムを加え、アジドを導入し、化合物3(アジド体)へと変換する。
クラウンエーテルやヘキサフォスフォリックトリアミドなどの求核性試薬をさらに加えてもよい。反応温度は、好ましくは室温〜140℃、さらに好ましくは80℃〜110℃が好ましい。反応時間は、好ましくは5分〜5日、さらに好ましくは3時間〜48時間である。
【0102】
化合物3をメタノール中ナトリウムメチラート、メタノール中水酸化ナトリウム(水酸化カリウムでも可)、または水中水酸化ナトリウム(水酸化カリウムでも可)で処理し、アセチル基を除去する。これらの塩基性試薬の使用量は、化合物3に対して、好ましくは1〜80%(原料の3に対するモル当量)、さらに好ましくは5から10%(3に対するモル当量)である。反応温度は、好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは室温で行う。反応時間は、好ましくは1分〜5日、さらに好ましくは30分〜5時間程度である。
【0103】
つづいて、脱保護した糖アルコールをアセトンに溶解し、酸触媒(カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下、ガラクトースの3位及び4位に選択的にイソプロピリデン基を導入し、化合物4へと誘導する。酸触媒は、原料に対して好ましくは1〜80%(モル当量)、さらに好ましくは10〜30%(モル当量)である。アセトンは、イソプロピリデン基の供給源であると同時に溶媒でもある。従って、使用するアセトンの量は、通常大過剰で、数百倍〜数万倍である。反応を効率よく行うために、ジメトキシプロパンを好ましくは0.1モル当量〜100モル当量、さらに好ましくは0.5〜5モル当量を加えることが望ましい。反応時間は、好ましくは30分〜7日、さらに好ましくは1〜48時間、特に好ましくは2〜12時間である。反応温度は、好ましくは室温〜50℃、さらに好ましくは室温程度である。
【0104】
化合物4を、次に、DMFに溶解後、水素化ナトリウム(水酸基1つあたり、好ましくは1.0モル当量〜2.0モル当量)、及び臭化ベンジルまたは塩化ベンジル(水酸基1つあたり、1.0モル当量〜2.0モル当量)を加え、5分〜1週間反応させ、化合物5(ジベンジル体)へと変換する。反応時間は、通常は、1時間〜24時間程度である。反応温度は、好ましくは−10℃〜80℃、さらに好ましくは室温近辺である。
図1には、トータルの臭化ベンジルおよび水素化ナトリウムの量(モル当量)が記載されている。1つの水酸基あたりに直すと、いずれも1.25モル当量となる。
【0105】
化合物5は、メタノール中または塩化メチレンとメタノールの混合溶液中(メタノール:塩化メチレンが好ましくは1:0〜1:5、さらに好ましくは1:1)、酸触媒(カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下、3,4−イソプロピリデン基を選択的に除去し、化合物6へと誘導する。使用する酸触媒は、化合物5に対して好ましくは1〜200モル当量、さらに好ましくは10〜30モル当量である。反応時間は、好ましくは30分〜7日、さらに好ましくは1〜48時間、特に好ましくは2〜12時間である。反応温度は、好ましくは室温〜50℃、さらに好ましくは室温であることが望ましい。
【0106】
次に、化合物6をトルエン等の溶媒に溶解し、たとえば酸化ジブチルスズ(化合物6に対して、好ましくは1.0〜2.0モル当量、さらに好ましくは1.0〜1.5モル当量)とともに、加熱還流をおこない、連続的に脱水する。還流温度は、溶媒の沸点以上が必要である。反応時間は、好ましくは1時間〜5日、さらに好ましくは3〜24時間である。トルエンの代わりにベンゼン、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)などを用いることもできる。つづいて、この操作により得られた、単離されることのないスズ中間体を、トルエン、THFなどに溶解後、テトラブチルアンモニウムブロミド(化合物6に対して、好ましくは0.1〜3モル当量、さらに好ましくは0.5〜1.0モル当量)の存在下、臭化ベンジル又は塩化ベンジルを1〜5当量加え、好ましくは室温〜80℃、さらに好ましくは室温〜50℃で、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは2〜5時間反応させ、ガラクトースの3位のみを選択的にベンジル化した化合物7(トリベンジル体)へと変換する。
【0107】
この化合物7と市販のテトラベンジルガラクトピラノシルクロリドとを、過塩素酸銀(AgClO)、シルバートリフレート(AgOTf)または炭酸銀(AgCO)の存在下反応させ、アルファー1−4結合した所望の化合物8(2糖誘導体)へと導く。用いる銀塩は、化合物7に対して、好ましくは1.0〜5モル当量、さらに好ましくは1.0〜1.5モル当量である。これらの銀塩は、互いに組み合わせて用いてもよい。反応温度は、好ましくは−20〜50℃、さらに好ましくは0℃〜室温である。反応時間は、好ましくは1時間から1週間で、さらに好ましくは2〜24時間である。また、反応溶媒は、ジエチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレンなどを用いることができる。乾燥剤として、モレキュラーシーブスを加えてもよい。
【0108】
化合物8を、パラジウムブラック、パラジウムカーボンまたは水酸化パラジウムの存在下、溶媒中、水素雰囲気下で、接触水添を行い、ベンジル基を除去した化合物9へと変換させる。溶媒は、メタノール、エタノール、水、酢酸エチルなどが挙げられ、メタノールと酢酸エチルの混液(1:1)を好ましく用いることができる。触媒量(1〜30%モル当量程度)の塩酸、酢酸などを反応促進のために加えてもよい。
【0109】
反応は、好ましくは1気圧〜100気圧下、さらに好ましくは1〜80気圧が望ましい。図1には、50気圧の例を示してあるが、1気圧下でも実行可能である。その場合の反応時間は、1時間〜1週間で、8時間から48時間が好ましい。
以上のスキームに従い、目的の生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー)9を合成できる。
【0110】
また、前記リガンドとして2糖のものを用いたが、2糖のリガンドの代わりに3糖構造のリガンドを用いる場合も、上記と同様のアプローチにより生体相互作用可能化合物を合成することができる。たとえば、化合物1のかわりに、市販の「アセトブロモラクトース」を出発原料に用いて、化合物2〜7へと変換した同様の反応条件を用いることにより、4‘位以外をベンジル基で保護したブロモデシル2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサベンジルラクトース誘導体へと容易に変換できる。この化合物に対して、先に示した銀塩を用いて、市販のテトラベンジルガラクトピラノシルクロリドと反応させ、アルファー(1−4)結合した3糖誘導体へと導くことができる。この後、8→9の変換と同様にして、3糖リガンドを合成できる。
【0111】
また、リガンドとして糖鎖の代わりに、たんぱく質(抗原、抗体)、ホルモン、ビオチンなどの他のリガンドを用いることにより、各種のリガンドが組み込まれた生体相互作用可能化合物を得ることができる。
蛋白質を用いるときには、蛋白質の適当なアミノ酸残基にスペーサー及び結合基を反応させることができる。
【0112】
例えば、アミノ酸残基がセリン残基の水酸基の場合、図1の4→5への変換と類似の反応により、1,10−ジブロモデカンをDMF中、水素化ナトリウムとともに反応させて、セリン残基にC10のスペーサーを導入できる。このときの反応条件は、図1の4→5への変換と同様である。次に、蛋白質のセリン残基の水酸基に導入したスペーサーの末端にあるブロム基をアジド基に変換する。図1の化合物2→3の変換方法と同様にして末端にアジド基を導入できる。図1と同様にして、アジド基を還元しアミノ基とし主鎖ポリマーに導入できる。
【0113】
他のアミノ酸残基、例えば、アスパラギン酸やグルタミン酸を残基に持つ場合には、そのカルボン酸に適当な長さのスペーサーに末端としてアミノ基を有するもの(例:1―アミノー10−ブロモデカンをDMFまたはDMSO中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−Ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl) carbodiimide, hydrochloride(EDC、WSCとも呼ばれる)などの縮合剤を用いてアミド結合により縮合することもできる。HOBtのようなアシルウレア転位防止剤を加えても良い。さらに、トリエチルアミンやジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基を加えることもある。反応時間は、1時間から1週間、好ましくは3時間〜48時間である。反応時間は、10℃〜100℃で、通常、室温近辺である。末端のブロモ基は、図1と同様にアジド基、それに続くアミノ基へと還元可能である。
【0114】
蛋白質にリジン残基がある場合、その反応点は、アミノ基なので、末端にカルボン酸を有するスペーサー(例:10−ブロモーデカン酸)を用いて、アミド結合で結合することもできる。この反応条件は、アスパラギン酸やグルタミン酸に末端アミノ基を導入する方法と同じで、条件も同じである。その後も、同様である。
【0115】
この他、より穏和な方法(蛋白質の機能をできるだけ失活させない方法)として、シアヌル酸とリジン残基、キノンとリジン残基(マイケル付加)、ニトロフェニルアジドとリジン残基(光化学反応)、マレイミドとシステイン残基(マイケル付加)など様々な方法を取り得る。
【0116】
さらに、1−ブロモ−10−デカノールを用いる代わりに、他のハロゲン化アルキルアルコールを用いることにより、種々の炭素数、構造を有するスペーサーが組み込まれた生体相互作用可能化合物を得ることができる。
【0117】
(生体相互作用可能化合物のポリマーへの導入方法)
次に、前記生体相互作用可能化合物9(糖鎖含有モノマー)を適当な高分子に導入する方法について、図2を用いて説明する。
【0118】
前記式(3)および/または(4)さらに(5)で表される構成単位を有するイオン性ポリマーを得る場合、たとえば、10で表される反応性ポリマー(市販品、重量平均分子量:好ましくは1000〜100万、さらに好ましくは10万〜40万)を用いると、きわめて容易に糖鎖含有モノマー9のアミノ基と反応して、アミド結合を形成できる。この反応は、無水のN,N,−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)中、ポリマー10とモノマー9を窒素気流下で混合する。
【0119】
生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー)の使用割合は、対象とする生体関連物質と糖鎖含有モノマーとの組み合わせ等により異なり限定されないが、たとえば、反応性ポリマーに対して、1〜500モル%の量を加えることができる。任意の量を加えることにより、生体相互作用可能基の含有割合を適宜調整することができる。生体相互作用可能化合物の使用割合を高めるほど、イオン性ポリマー中の生体相互作用可能基は増大するが、前記ポリマー10を用いる場合は、生体相互作用可能基は理論的に、反応性官能基の合計に対して最大50%(モル当量)である。最大50モル当量%の生体相互作用可能基を達成するのに好ましい生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー)9の使用量は、原料ポリマー中のイオン性官能基に対して、好ましくは50〜300モル当量%、より好ましくは150〜250モル当量%であることが望ましい。
なお、実施例では、酸無水物を有するポリマーのため、原料ポリマー(10)と生体相互作用可能基(9)は、当モル量(10:9=1:1)、および、1:2の比で反応させている。
【0120】
反応温度は、好ましくは0〜130℃、さらに好ましくは20〜90℃であることが望ましい。反応時間は、好ましくは1分〜7日で、さらに好ましくは、5分〜48時間であることが望ましい。なお、反応溶液に、必要に応じ、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ヘキサメチルホスホリック(トリ)アミド、4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基(ベース)を共存させても良い。
反応の後処理は、水、もしくは、炭酸水素ナトリウム溶液、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の希アルカリ水溶液(全水溶液の質量に対して0.1〜50質量%)を加え、水に対して透析して、目的のイオン性糖鎖高分子11を精製する。なお、透析の代わりに、ポリビニルアルコール系ポリマー(充填剤)、メタアクリル酸系ポリマー(充填剤)、セファデックス系充填剤、バイオゲルなどを使用した分子ふるい(ゲル濾過)によるカラムを用いて、精製することもできる。
【0121】
化合物の確認および、糖鎖含量の決定は、H−NMR、13H−NMR、 IRなどにより決定する。また、平均分子量の決定は、原料ポリマーに生体相互作用可能基を単純に結合させたものなので、結合後の分子量は、原料ポリマーに準ずると解して良いが、必要に応じ、上記記載の分子ふるい(ゲル濾過)カラムで分離し、ポリスチレンポリマーなどの標準ポリマーとの比較により、平均分子量を決定することもできる。また、光散乱動的解析装置により、分子サイズや分子量をポリスチレンポリマーなどの標準ポリマーとの比較により、決定することもできる。さらに、超円心分離による分子量決定も可能である。
なお、この該反応性ポリマー10の代わりに、ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(ブタジエン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(無水マレイン酸−alt−1−テトラデセン)などを用い、同様の方法でイオン性ポリマーを得ることができる。
【0122】
また、ポリマーの側鎖にカルボン酸をイオン性官能基として有する場合であって、アクリル酸モノマーなどの重合により得られるポリマーを用いる場合(すなわち、前記式(1)および(2)で表される構成単位を有するイオン性ポリマーを得る場合)、前記ポリマー10の代わりに、該カルボン酸を有するポリマーに先の生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー)9を導入することにより、たとえば、前記式(10)で表されるイオン性糖鎖ポリマーを合成することができる。なお、前記式(10)では、糖鎖に2糖を、カルボン酸の塩にはナトリウムイオンを用いているが、これに限定されず、各種のリガンドの生体相互作用可能基を導入できる。
【0123】
この場合の生体相互作用可能基の導入方法としては、まず、市販のポリアクリル酸や、ポリエチレンマレイン酸のような、カルボン酸をイオン性官能基として側鎖に有するポリマーと、生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー9)とを、DMF(ジメチルホルムアミド)またはDMSO(ジメチルスルホキシド)中、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−Ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide, hydrochloride(EDC、WSCとも呼ばれる)などの適当な縮合剤を使用して、反応させる。HOBt(1−Hydroxy−1H−benzotriazole)のようなアシルウレア転位を防止する試薬を加えても良い。トリエチルアミンやジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基を加えても良い。
反応温度は、好ましくは室温〜100℃、さらに好ましくは室温〜50℃であることが望ましい。反応時間は、好ましくは1時間〜8日、さらに好ましくは5〜20時間であることが望ましい。
【0124】
この場合、生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー)の使用割合は、対象とする生体関連物質と糖鎖含有モノマーとの組み合わせ等により異なり限定されないが、たとえば、反応性ポリマーに対して、1〜500モル%の量を加えることができる。任意の量を加えることにより、生体相互作用可能基の含有割合を適宜調整することができる。
【0125】
また、カルボン酸部分がベンゼンスルホン酸であるポリマーを用いる場合、上記と同様の方法を適用して、たとえば糖鎖9を該ポリスチレンスルホン酸ポリマーに導入することができる。
すなわち、前記反応性ポリマー10またはその類縁体の代わりに、原料ポリマーとして、スチレンスルホン酸クロリドの重合体である、ポリマー側鎖にイオン性官能基としてスルホン酸クロリドを有するポリマーと反応させ、未反応のスルホン酸クロリドを水、もしくは、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの希アルカリ水溶液(0.1〜50%モル比)でクエンチして、前記式(11)で表されるスルホンアミドで結合したイオンポリマーを同様にして合成することができる。
また、ポリスルホン酸クロリドポリマーのかわりに側鎖にスルホン酸を有するポリスルホン酸ポリマーを用い、例えば、図1の9のような生体相互作用可能基を、前述のポリアクリル酸と生体相互作用可能化合物との縮合条件によって導入してもよく、式(11)で示すイオン性ポリマーを得ることができる。反応条件、温度などは、前述と同様である。この場合、分子量の決定や、糖含有率の決定については、前記糖鎖含量の決定方法と同様である。
この場合も生体相互作用可能化合物(糖鎖含有モノマー)の使用割合は、対象とする生体関連物質と生体相互作用可能基との組み合わせ等により異なり限定されないが、たとえば、反応性ポリマーに対して、1〜500モル%、好ましくは1〜99モル%の量を加えることができる。
生体相互作用可能基(糖鎖部分)の含有割合を1〜99%程度(少なくとも2以上のイオン性基Aが存在することが必要で、その方法は、生体相互作用可能基のモル当量を適宜調製することにより得られる。)に適宜調製することができる。
【0126】
さらに、カルボン酸あるいはスルホン酸を含有するポリマーを使用するほかに、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリアミノ酸を用いる場合、該ポリアミノ酸に生体相互作用可能基を導入する方法は、前記リガンドとして糖鎖の代わりに、たんぱく質(抗原、抗体)をリガンドとして組み込んだ生体相互作用可能化合物の合成方法と同様の方法により実施することができる。このようなポリアミノ酸の重量平均分子量としては、たとえば、好ましくは2000〜100万、さらに好ましくは10万〜50万のものを望ましく用いることができる。
【0127】
さらに、カルボキシル基ではなく、ポリマーの側鎖にアルデヒド基を有するポリマー(例えば、分子量10万から100万のポリエチレングリコールーオメガーアルデヒド あるいは、そのジメチルアセタール)を用いることもできる。この場合には、糖鎖含有モノマーのアグリコン部分のアミノ基と、ポリマーのアルデヒドとを有機溶媒又は、水中(緩衝液を含む)でシッフ塩基を形成させて結合させる。この後、NaBHCNやジメチルボランなどによる還元を行うことでより安定な化合物を得ることができる。
【0128】
一方、ポリマーの側鎖にアミノ基を有する場合には、たとえば生体相互作用可能化合物の末端のアミノ基(前記糖鎖含有モノマー9の場合、アグリコン部分の末端アミノ基)を対応するカルボン酸に変換後、アミノ基を有するポリマーと結合させればよい。この反応は、先に示したカルボン酸あるいはスルホン酸を側鎖に有するポリマーと、アグリコンにアミノ基を有する糖鎖含有モノマー9とを結合させる条件と同様にして実施することができる。
【0129】
具体的には以下の通りである。
末端にカルボン酸を有する生体相互作用可能基は、図1の2の化合物を用い、末端のブロモ基のまま、図1の3→4の条件と同様にして、4のアジド部位がブロモ体の誘導体を得ることができる。つぎに、4→5と同様に、末端ブロモ体を反応させ、5のアジド基がブロモ基となったものを得ることができる。5→6と同様にしてイソプロピリデン基を除去後、6→7と同様にして選択的ベンジル化を行い、7→8と同様にして、8の末端アジド基がブロモ体である2糖誘導体を得ることができる。
【0130】
つぎに、この末端ブロモ体(2糖)をDMF中、酢酸ナトリウムや酢酸セシウム(ブロモ体の1モル当量〜30モル当量で、1モル当量〜10モル当量が好ましい)存在下、室温〜120℃、好ましくは室温〜80℃で反応させる。そうすると、図1の5のアジド基がアセチル基(OAc)のものに変換される。または、水酸化ナトリウム(カリウム、カルシウム、など)水溶液で加熱(50〜100℃、好ましくは50〜80℃)してもよい。この場合は、5のアジド基が水酸基である。末端がアセチル基のものは、3→4と同様にしてアセチル基を除去し、末端が水酸基のものへと変換する。
【0131】
このようにして得られる図1の5の末端アジド基が水酸基に置き換えられた糖鎖を、次に、Swern 酸化をおこなう。つまり、塩化メチレン中、オキザリルクロリド(1モル当量〜50当量、2当量〜10当量が好ましい)及びDMSO(1当量〜1000当量、2当量〜50当量がこのましい)を−78℃で加え、1分〜24時間反応させる。通常、30分〜3時間程度である。その後、−20℃〜+30℃に上昇させ(通常、−10〜+10℃で、特に、0℃近辺が望ましい)、ジイソプロピルエチルアミンやトリエチルアミン(1当量〜1000当量、2当量〜50当量が好ましい)を加え、1分〜3日反応させる。通常、10分〜10時間である。この操作により、末端がアルデヒド基のものに変換される。このアルデヒド基のものは、前述の対応するアミノ基を側鎖に有するポリマーとシッフ塩基により結合できる。
【0132】
カルボン酸にまで酸化するには、このアルデヒド基を、t−ブチルアルコールとリン酸水素ナトリウム水溶液(NaHPO・2HO)の混液中、NaClOのような酸化剤(アルデヒドに対し1当量〜100当量、2当量〜50当量が好ましい)で10分〜1週間、1時間〜48時間反応させて、末端がカルボン酸に変換した2糖誘導体を得ることができる。
これら末端がアルデヒド基、または、カルボン酸の2糖は、つづいて、図1の8→9の条件と同様(この場合、接触水添は1気圧以下で行うことが好ましい)に脱保護して9の化合物の末端がアルデヒドまたはカルボン酸の糖鎖を得ることができる。
【0133】
このようにして得られる末端がアルデヒドまたは、カルボン酸の糖鎖は、前記記載のシッフ塩基形成、または、アミド形成法に従い、側鎖にアミノ基を有するイオン性ポリマーと反応させることができる。この結果、生体相互作用可能基としての糖鎖を側鎖に有し、シッフ塩基、あるいは、それを還元したもの、あるいは、アミド結合により主鎖のイオン性ポリマーと結合したポリマー(この場合、未反応の主鎖のアミノ基が、イオン性基(A)に対応する)を得ることができる。
なお、生体相互作用可能基として末端にカルボン酸を有する糖鎖モノマーの場合には、反応させる原料ポリマーは、アミノ基を側鎖に有するポリマーに限定されない。前記記載したとおり、側鎖に、スルホン酸などを有していても良い。
【0134】
さらに、別法として、保護されている糖鎖モノマーと原料ポリマーとを反応させてから、糖鎖部分の保護基を除去する方法もある。すなわち、たとえば、側鎖にアミノ基を有するポリマーに、上記方法により合成した生体相互作用可能基である、末端にアルデヒド基またはカルボン酸を有する糖鎖モノマーとを、前記記載のシッフ塩基形成法やアミド形成法に従いあらかじめ結合させ、その後、糖鎖部分に結合している保護基(ここでは、ベンジル基)を、前記記載の方法(ベンジル基を除去する方法に従う)により完全脱保護を行い、目的とする糖鎖含有イオン性ポリマーを得ることもできる。
【0135】
イオン結合性ポリマー含有基板
本発明に係るイオン結合性ポリマー含有基板は、前記イオン性ポリマーが、基板と2以上のイオン結合により結合し、該イオン性ポリマーが最外層を形成している。
また、該イオン性ポリマーは、少なくとも1つのポリイオン性高分子膜を介して、基板とイオン結合していてもよい。
【0136】
ポリイオン性高分子膜としては、ポリカチオン性高分子膜とポリアニオン性高分子膜とが存在し得る。このような前記ポリイオン性高分子膜は、ポリカチオン性高分子膜とポリアニオン性高分子膜とが交互に積層されてなる交互積層膜であってもよい。
【0137】
ポリカチオン性高分子膜を形成する高分子としては、たとえば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリリジン、ポリグアニジン、またはそのアルキルアンモニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
ポリアニオン性高分子膜を形成する高分子としては、たとえば、ポリ(エチレンマレイン酸)、ポリ(スチレンスルホネート)などが挙げられる。
【0138】
基板の素材としては、金、ガラス、プラスチック製ウェル、ポリ塩化ビニル、紙などが挙げられる。本発明に係るイオン結合性ポリマー含有基板を生体関連物質の検出センサーとして用いる場合は、金を用いることが好ましい。基板の形状は限定されず、板状、管状、球状などの形状が挙げられる。このうち本発明では、板状の形状を有する基板を好ましく用いることができる。
【0139】
本発明では、イオン性ポリマーは、2以上のイオン性官能基(A)により基板にイオン結合している。すなわち、生体相互作用可能基が結合せずに、イオン性ポリマーに残留する2以上のイオン性官能基(A)の荷電基が存在する。このため、あらかじめ、該イオン性官能基(A)と反対のチャージを有する低分子アルカンチオール化合物などで修飾した金基板等を用意し、該イオン性ポリマーとイオン結合させると、多価効果(多点のイオン結合により、より強力にお互いの高分子が結合すること)により、イオン性ポリマーを基板に強力に固定化できる。これは、単独のチャージを有するモノマーと比べて、イオン性ポリマーに存在する複数個の荷電が基板に同時に固定化されるため、より強いイオン結合が形成されるためと推定される。
したがって、その基板を水中や緩衝液に長時間浸しても、単に疎水的相互作用により固定化しているモノマーの場合のように、容易に剥がれることがなく、水やイオン強度の高い緩衝液中などにおいてさえもきわめて安定なイオン結合性ポリマー含有基板を形成できる。さらに、酸、アルカリ性条件下においても、安定にイオン結合性ポリマー含有基板を形成できる。
【0140】
またさらに、基板にポリカチオン性高分子膜とポリアニオン性高分子膜とを交互に基板に累積(固定化)を繰り返し、最後に該イオン性ポリマーをイオン結合させると、最外層にベロ毒素等の生体関連物質を結合できるリガンドを配置できる。
この場合、イオン性高分子膜の累積回数は、基板表面に結合した低分子化合物の電荷とイオン性ポリマーの電荷の種類によるが、好ましくは1または2回以上20回以下、さらに好ましくは5または6回以上20回以下、特に好ましくは10回以上15回以下程度の累積を繰り返すことにより、より堅固に、安定に高分子を固定化することがきる。
【0141】
イオン性ポリマーの結合およびポリイオン性高分子膜の結合方法は、具体的には、下記の通りである。
該イオン性ポリマーを、水(緩衝液)溶液中または、DMFやDMSOのような溶媒を水または緩衝液に加えて溶解させ(濃度:1μg(マイクログラム)/ml〜100g/mlで、好ましくは10マイクログラム/ml〜10mg/mlである)、バッチ式またはフロー方式で固定化(累積)する。緩衝液のpHは、酸性側(例えば、pH4.5)でも、中性側(pH7付近)でも、アルカリ性側(pH8付近)でもよく、水よりは緩衝液を使用した方がよい。
【0142】
バッチ式の場合、前述の基板などに上記の溶液を滴下するか、または、基板などをその溶液に浸積させる。時間は、1秒〜1週間で、1秒〜10時間が好ましい。さらに、1分〜3時間が望ましい。温度は、0℃〜100℃で、10〜50℃が好ましい。滴下した場合、そのまま自然乾燥させるか窒素気流下で乾燥あるいは、真空下で乾燥させる。浸積した場合は軽く水、エタノール、それらの混液で軽くリンスし、同様に乾燥させる。この操作を数回繰り返しても良い。つぎに、反対のチャージを持つイオン性ポリマーを同様にして累積する。この操作を数回繰り返してもよい。
【0143】
フローセルの場合、上記のポリマーの溶解した溶液を、1マイクロリットル/分〜1ml/分の流速で、1分〜1週間、好ましくは1分〜48時間流し続ける。その後、該緩衝液、水などで洗浄して、必要ならこの操作を繰り返す。つぎに、反対のチャージのポリマーも同様に累積する。
【0144】
金表面への固定化
以下に、より具体的に金基板表面への糖鎖をリガンドに有するイオン性ポリマーの固定化について図2を用いて説明する。
まず、十分に洗浄した金基板を、定法に従い、3−メルカプトプロピオン酸−エタノール溶液中に10分〜3日浸積し、疎水性の基板にする。この操作は、室温(20〜30℃)付近で行う。また、1時間〜30時間程度が好ましい。エタノールを用いる代わりに、メタノールやアルカリ水溶液を使用してもよい。さらに、3−メルカプトプロピオン酸を用いる代わりに、脂肪族のより長いω−メルカプト脂肪酸(例、10−メルカプトデカン酸)、芳香族を有する、例えば、4−チオ安息香酸などを用いることもできる。この他、リポ酸を用いてもよい。図2では、3−メルカプトプロピオン酸を用いた例を示した。
【0145】
次に、3−メルカプトプロピオン酸をself−assembly monolayer(SAM)で固定化した金表面をsurface Aとした。これに、Poly(diallyl dimethyl ammonium chloride)、ポリリジンまたはポリグアニジンのようなポリカチオン性高分子(例えば、4級アルキルアンモニウム塩や1級アンモニウム塩など)を酸性、中性、塩基性下の緩衝液中や純粋中で反応させ、表面にポリカチオンで覆われた基板にする(surface B)。
【0146】
さらに、同様の方法にて、Poly (ethylenemaleic acid)、poly (styrenesulfonate)のようなポリアニオン性高分子を、基板表面に固定化する(surface C)。この操作を数回から十数回繰り返し、基板表面を、生体相互作用可能基を有するイオン性ポリマーと反対のチャージを有するポリイオン性高分子膜(図2ではポリカチオン性高分子膜)で被覆(累積)する。
また、Surface Bに、累積を繰り返さずに直ちに生体相互作用可能基を有するイオン性ポリマー11を固定化してもよい。実施例にはこの例を示す。
【0147】
最後に、生体相互作用可能基を有するイオン性ポリマー11で表面を処理し、最外層がイオン性ポリマーのリガンド(図2では糖鎖)で被覆されたsurface Dを構築して、ベロ毒素等の生体関連物質の検出が可能なイオン結合性ポリマー含有基板を得ることができる。
最終段階にて、イオン性ポリマー11で被覆したが、途中の過程で使用するイオン性ポリマーと同一のチャージを有するポリイオン性高分子(図2では、ポリアニオン性高分子)をイオン性ポリマー11で代用することもできる。
【0148】
図2中、Surface Aは、基板表面にカルボン酸を有しているが、スルホン酸等他の陰イオンで被覆してもよい。
また、NH などの陽イオン性の化合物でSAMを介して得られる金表面(例えば、図3のsurface E)においても、同様にイオン性ポリマー11を最外層に固定化できる。すなわち、surfaceEに対して、ポリアニオン性高分子膜、ポリカチオン性高分子膜の固定化を繰り返し、ポリカチオン性高分子膜で被覆後に、アニオン性のイオン性ポリマー11を固定化して、surface Fとして糖鎖等のリガンドを基板上に固定化できる。
【0149】
以上の操作は、溶液に浸けて行うが、ポリアニオン性高分子膜、ポリカチオン性高分子膜などをチップ表面に滴下し、軽くリンス後、乾燥させる方法により、固定化することもできる。この他、前述したフローセル方式で一定の流量のイオン性ポリマーを流しても良い。この具体的な例を実施例に示した。
また、複数回累積を繰り返さずに、surface Eのように4級アルキルアンモニウムでなく、1級アンモニウム塩を基板表面に持つ場合には、必ずしも固定化が十分でないことが多いので、直接イオン性ポリマー11を固定化しても良いが、好ましくは、1〜2回は、ポリアニオン性高分子膜、ポリカチオン性高分子膜を固定化し、最後にイオン性ポリマー11を固定化することが望ましい。
【0150】
共有結合性ポリマー含有基板
本発明に係る共有結合性ポリマー含有基板は、前記イオン性ポリマー中の2以上のイオン性官能基(A)と、基板上の2以上の官能基とが、共有結合により結合してなる。
結合形態は限定されず、イオン性ポリマー中のイオン性官能基と基板表面に結合した官能基とが共有結合可能であればよく、たとえば、アミド結合、尿素結合、エステル結合、シッフ塩基、及びその還元された形態、C−C結合などの結合形態が挙げられる。
【0151】
たとえば、図2に示す2以上のカルボキシル基を有する前記イオン性ポリマー11を、アミノ基を表面に有する基板に、共有結合を介して結合する方法もある。結合方法には、バッチ方式とフロー方式がある。
バッチ方式の場合、過酸化水素水(30%):濃硫酸(1:3、v/v)の混液で金表面を洗浄後、オゾンクリーナーで処理して、十分洗浄した金基板を、ω−アミノ−1−アルカンチオール〔HS−(CH)n−NH;nは、2〜20の整数、例:先に述べた6−アミノ−1−ヘキサンチオールなど〕、シスタミン(HNCHCHSSCHCHNH)などと予め反応させ疎水処理を施す。イオン性ポリマー11をDMF(DMSO他)に溶解後、先に修飾した金基板をこの溶液に浸すか、または金部位分に該溶液を滴下する。
以下ここでは、金表面に末端アミノアルカンチオールで予め疎水処理した金基板に、イオン性ポリマー(糖鎖ポリマー)11を固定化する方法について説明するが、この例に限定されない。
【0152】
つぎに、hydroxybenzotriazole(HOBt)(HOBtは必要に応じ用いることができる)、1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride もしくはN,N’−dicyclohexylcarbodiimide (DCC)のような脱水縮合剤と、triethylamineのような塩基を共存させ(あるいは共存させなくてもよい)、十分に脱水したイオン性ポリマー11をDMFやDMSOに縮合剤などとともに溶解し、これを先の基板表面に滴下(付着)させるか、または、基板(金部分)をこの反応液につける。反応は、室温〜50℃で、1時間〜1週間で実施することができる。反応後、DMF、エタノール等で洗浄して、共有結合性ポリマー含有基板を得ることができる。以上の方法は、無水の条件で行うことが望ましい。
【0153】
一方、水溶液(緩衝液)中、フロー方式で、イオン性ポリマーを固定化する方法もある。例えば、N−ethyl−N’−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochroride (EDC)、N−hydroxysuccinimide (NHS)を用い、金表面を活性化後、イオン性ポリマーを固定化する方法である。
この場合、反応は、すべて、水または、燐酸緩衝液などの緩衝液中で行う。50%までのジメチルスルホキシドを添加してもよい。反応温度は、好ましくは10℃〜80℃で、さらに好ましくは室温〜40℃であることが望ましい。反応時間は、好ましくは1分〜7日、さらに好ましくは3分〜10時間であることが望ましい。
【0154】
さらに最近では、市販の固定化キットも市販されており、このようなキットを使用しても良い。例えば、市販のBIACORE CM5(ビアコア社製)は、基板表面にカルボン酸を有しているので、上記の方法と同様にこのカルボン酸を活性化して、例えば、ヒドラジンのようなアミノ基を有する化合物を導入後(この操作により、末端にアミノ基が遊離する)、カルボン酸を有するイオン性ポリマーをフロー方式、バッチ方式のいずれの方法によっても固定化することができる。
【0155】
上記の方法により得られた共有結合性ポリマー含有基板は、化学的な結合により生体相互作用可能基が基板に固定されているため、きわめて安定であり、取り扱いも容易であることから、病原菌類や毒素類の定性分析及び定量分析に有効に使用できる。
【0156】
水素結合性ポリマー含有基板
以上、イオン性ポリマーを、これと逆(対となる、反対のチャージを有する)のイオンを有する基板表面に、イオン結合により結合・固定化する方法、共有結合により基板に固定化する方法について述べたが、この他、イオン性ポリマーを、例えば、グアニジン基を側鎖に有するポリマー(ポリアルギニン)と水素結合を形成して結合・固定化させる方法もある。この固定化は、イオン結合により両イオンポリマーを固定化する方法と同様に行うことができる。
【0157】
なお、イオン結合性ポリマー含有基板、共有結合性ポリマー含有基板および水素結合性ポリマー含有基板をポリマー含有基板ということがある。
【0158】
生体関連物質検出用イオン性ポリマー、生体関連物質検出用基板、センサー、生体関連物質検出用試薬
以上のような本発明に係るイオン性ポリマー、イオン結合性ポリマー含有基板、共有結合性ポリマー含有基板、あるいは水素結合性ポリマー含有基板は、複数のリガンドがポリマーに結合しており、「マルチバレンシー効果」もしくは「クラスター効果」により、生体関連物質をモノマー単独よりも効率よく強く結合できることから、生体関連物質の検出用のセンサーとして好ましく用いることができる。
【0159】
また、本発明のセンサーは、前記イオン性ポリマーまたは前記ポリマー含有基板からなる。具体的には、イオン性ポリマー単独では、生体の特定蛋白質(この蛋白質は、既に述べたとおり、リガンドの糖鎖構造により決まる)などを吸着する吸着剤、毒素の場合には、中和剤として利用できる。また、ポリマー含有基板は、生体の特定蛋白質、毒素を特異的に結合できるので、水晶振動子法(QCM)や表面プラズモン共鳴法(SPR)などと連動させることで、これらの特定蛋白質、毒素を迅速に測定することができる。QCMの場合、周波数変化から、SPRでは共鳴角度の変化から、生体関連物質分子の結合量を求めることができる。
【0160】
またさらに、本発明に係る前記イオン性ポリマーは、セルロースなどの支持体あるいは膜に固定または吸着させることにより、生体関連物質検出用試薬としても用いることができる。具体的には、フルオレッセイン、フルオレッセインカダベリンなどの蛍光試薬を、リガンドとして導入し、一方、生体相互作用可能基としてリガンドに糖鎖などを導入し、主鎖ポリマーに蛍光試薬、糖鎖、イオン性基Aの3種類が同時に存在するポリマーを、前述したように、作成できる。ここに示した蛍光試薬には、結合基として分子内にアミノ基を有しているので、前述の方法でこのアミノ基に主鎖ポリマーのイオン性基Aとアミド(共有)結合させることができる。
この蛍光性ポリマーに生体関連物質が結合すると、ポリマーの蛍光強度が変化する(増大、または減少する。相互作用する相手により変化するので、一義的に強度関係を議論できない)ので、この強度変化から、定性、定量分析できる。
【0161】
生体関連物質の検出方法
本発明においては、リガンドが堅固かつ安定に固定化された基板が作成できることから(センサー化)、水晶振動子計測装置や表面プラズモン共鳴に組み込んでベロ毒素などの生体関連物質を水中や緩衝液中のような通常の分析条件下でも迅速かつ安定に検出することができる。
以下に、検出方法の一例を示す。
【0162】
表面プラズモン共鳴法 (SPR) や水晶振動子法 (QCM) によるベロ毒素の検出実験
ここでは、実際のベロ毒素や標準蛋白質であるレクチンを使用して、該毒素、蛋白質を検出する方法について示す。
毒素、蛋白質等の生体関連物質の検出は、温度を、好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25℃〜40℃の範囲で、一定に保持し、好ましくは、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液またはトリス緩衝液中、より好ましくはHEPES緩衝液中で行うことが望ましい。これにベロ毒素、蛋白質などの生体関連物質を含む試料をゆっくりと注入する。たとえば、ベロ毒素は、市販のものを利用するか、他の研究者等から入手する。
但し、市販のベロ毒素は、ベロ毒素1型と2型の両方が混入しているため、QCMやSPRで正確なアフィニティー定数などを求めることはできない。その場合には、毒素としての純度が99.9%以上の(つまり、ベロ毒素1型には、2型を含まない、又その逆)毒素を用いることが望ましい。
【0163】
具体的な検出法を示す。
バッチ方式の場合、あらかじめ前記イオン性ポリマーの結合及びポリイオン性高分子膜の結合方法において述べたように、金基板などの最外層(最上層)にイオン性(糖鎖)ポリマー(例えば図2の11)を固定化しておき、これを緩衝液の容積量が0.01マイクロリットル(μL)〜100ミリリットル(mL)である反応槽(セル)に浸しておく。これに、数ピコグラム(pg)〜数ミリグラム(mg)の毒素を1マイクロリットル(μL)〜50ミリリットル(mL)の緩衝液(先に示したHEPES緩衝液など)に溶解、または、希釈させた後、そのうちの数μL〜数mLをシリンジ等で取り、基板の浸積してある反応槽(セル)にゆっくりと加える。反応槽は、スターラーなどで撹拌しても良い。また、温度を制御したほうがよく、10℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃である。緩衝液が少ない場合(数マイクロリットル)、基板の上に滴下しても良い。乾燥しないよう注意が必要である。
【0164】
フローインジェクト方式の場合、前記イオン性ポリマーの結合及びポリイオン性高分子膜の結合方法において述べた方法で金基板にイオン性ポリマー(図2の11など)を固定化後、この基板を装置の所定の場所にセットする。バッチ式で示したのと同様の方法で毒素などを緩衝液に溶解、または、希釈した試料を、前記イオン性ポリマーの結合及びポリイオン性高分子膜の結合方法において述べた流速で送液しておき、毒素試料を自動注入装置によって注入すると、イオン性ポリマーの固定化した基板に毒素が送液される。温度制御が好ましい。バッチ式と同様の温度範囲である。
【0165】
いずれの場合も、添加後に、シグナルが平衡に達するか、または、1分〜3時間後に新たな試料を追加する。この操作を必要に応じ数回行い、基板に結合した蛋白(毒素)量や結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、アフィニティー定数などを求めるとともに、周波数変化(QCMの場合)または、共鳴角の変化(SPRの場合)より、基板に結合した生体関連物質を検出する。
【0166】
蛋白質量あるいは毒素量は、検量線を作成することにより求めることができる。
またアフィニティー定数は、結合量と濃度との関係を逆数プロットして求める(QCMの場合)。
SPR法では、解離速度定数(kd)が求められる。これは、BIACORE 3000または、BIACORE 2000(いずれもビアコア社製)を用いた場合、結合カーブと解離カーブの実測曲線および計算して得られる曲線との関係から求める。
【0167】
なお、ベロ毒素を生体関連物質として用いる場合、ベロ毒素が純粋(100%)のものを用いるか、もしくは、ベロ毒素に加え他の夾雑蛋白質(膜蛋白質や酵素等の毒性のない蛋白質)が含有するベロ毒素試料溶液を用いることができる。夾雑蛋白質は、好ましくはまったく含まない系(夾雑蛋白質0%、ベロ毒素100%)が最も望ましいが、試料の調製においては、必ずしも純度を高めることはできない。従って、夾雑蛋白質の割合をできる限り低く抑えた試料が好ましく、具体的には、夾雑蛋白質量として99%(重量)以下(1%以上がベロ毒素)、できれば90%以下(10%以上がベロ毒素)が好ましい。
【0168】
本発明では、以上の操作を行うことにより、ベロ毒素や他の蛋白質の検出(存在の有無)や結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)などを使用した装置に応じてベロ毒素や他の蛋白質の含有量を容易に検出することができる。
【0169】
前述の通り、センサー部分にリガンドを固定化する(センサー化する)には、チオール(−SH)を有するリガンド誘導体を金基板に直接結合させる([リガンド−スペーサー−SH])、あるいは、イオン性のモノマー化合物を介して、金とリガンドをイオン的に結合させる方法([リガンド−スペーサー−イオン(+ or −)])がある。この他、先願の単分子膜を用いた固定化法もある。
【0170】
前者の方法は、チオールをあらかじめ糖鎖に導入するための合成に手間がかかり、また、チオール部分が不安定であるため合成後に直ちに水晶振動子の金に結合させる必要があるといった制約があり、実際にこれを利用したベロ毒素等の生体関連物質そのものの検出はほとんど行われていない。
【0171】
また、後者2つの方法は、検出試薬である糖鎖はモノマーレベルでイオン的または、疎水的に結合しているため、その結合安定性に欠け、イオン強度の高い緩衝液中に長時間浸漬しておくと基板から検出試薬が剥離するという難点があった。
【0172】
以上の通り、本発明は、基板に疎水性のイオン化したアルカンチオール等をあらかじめ吸着させ、該官能基と、イオン性ポリマーに残留するプラス又はマイナスにチャージされたイオン性官能基との間で、2以上のイオン結合を形成させることから、従来の単なるモノマーレベルでのイオン的吸引力による固定化や、単なる疎水的相互作用による固定化とは異なり、多価イオン効果による複数のチャージ同士の引き合いにより、モノマーとは比較にならないほど強く、ベロ毒素などの生体関連物質の検出能に優れたリガンドを、基板に容易かつ安定に固定化できる。
【0173】
また、本発明は、イオン性ポリマーにベロ毒素などの生体関連物質を特異的に結合できるリガンドを複数導入しているため、リガンドによるクラスター効果により、ベロ毒素などの生体関連物質との結合を強力に行うことができる。
【0174】
このように、本発明においては、リガンドが堅固かつ安定に固定化され、しかも、大量のリガンドが固定化されたセンサーを一度に作成することができる。そして、市販の水晶振動子計測装置や表面プラズモン共鳴装置に組み込むことにより、ベロ毒素などの生体関連物質を、たとえば水中や緩衝液中のような通常の分析条件下でも迅速かつ安定に検出することができる。
【0175】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を説明するが、当該実施例により本発明が何ら限定されない。
[実施例]
【0176】
(1)化合物9の合成
図1における化合物9を以下の通り合成した。
[化合物2の合成]
10−ブロモ−1−デカノール123.0 mg(0.52 mmol)(東京化成社製)とAgCO137.9 mg(0.5 mmol)とを、塩化メチレン(CHCl 2 mLに溶かしMS4A(モレキュラーシーブス)を加え室温で1時間攪拌した。そこにCHCl 3 mLに溶かした2,3,4,6−tetra−O−acetyl−α−D−galactopyranosyl bromide(A7562、シグマ社製(化合物1)) 205.6 mg(0.5 mmol)を40分かけて滴下し、室温で20時間反応させた。その後、反応液にトリエチルアミンを加えセライトろ過した。濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)で精製した。その結果、化合物2を208.6 mg(0.36 mmol、72%)得た。
【0177】
化合物2のNMRのデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ5.387 (dd, H−4, J = 3.2 and 0.8 Hz), 5.204 (dd, H−2, J = 8.0 and 10.4 Hz), 5.018 (dd, H−3, J = 3.2 and 10.4 Hz), 4.452(d, H−1, J = 8.0 Hz), 4.191 (dd, H−6, J = 6.4 and 11.2 Hz), 4.126 (dd, H−6’, 7.2 and 11.2 Hz), 3.91−3.85 (m, H−5 and −(CH)−, 2H), 3.49−3.44(m, −(CH)−, 1H), 3.407(t, −CH−Br, J 6.8 Hz, 2H), 2.149 (Ac), 2.051 (Ac), 2.049 (Ac), 1.986 (Ac), 1.88−1.81 (m, −(CH)−, 2H), 1.62−1.24 (m, −(CH)−, 14H).
【0178】
[化合物3の合成]
化合物2を1.4625 g(2.58 mmol)とアジ化ナトリウム(NaN)300 mg(4.61 mmol)をジメチルホルムアミド(DMF) 20 mLに溶かして80℃で4時間反応させた。反応溶液に酢酸エチルと飽和食塩水を加え分液し、硫酸マグネシウムで乾燥させて濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)で精製した。その結果、化合物3を1.3533 g(2.55 mmol、99%)得た。
【0179】
化合物3のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ 5.386 (d, H−4, 3.2 Hz), 5.204 (dd, H−2, 8.0 and 10.4 Hz), 5.018 (dd, H−3, 3.2 and 10.4 Hz), 4.453(d, H−1, J 8.0 Hz), 4.191 (dd, H−6, J 6.4 and 11.2 Hz), 4.126 (dd, H−6’, J 7.2 and 11.2 Hz), 3.91− 3.85 (m, H−5 and −(CH)−, 2H), 3.49−3.44 (m, −(CH)−, 1H), 3.256(t, −CH−N, J 6.8 Hz, 2H), 2.147, 2.051, 2.049 and 1.986 (4 x Ac), 1.64− 1.24 (m, −(CH)−, 16H).
【0180】
[化合物4の合成]
化合物3 707.8 mg(1.34 mmol)をメタノール20 mLに溶かしソディウムメトキシド(NaOMe)を加え室温で3時間反応させた。反応液をイオン交換樹脂(DowexH型)で中和し、ろ過した。濃縮した粗精製物をアセトン20 mLに溶かし、ジメトキシプロパン0.86 mL(7 mmol)とカンファースルホン酸(CSA) 255 mg(1.1 mmol)を加え室温で2.5時間反応させた後、トリエチルアミンを加え反応を止めた。反応溶液を濃縮した後、酢酸エチルを加え、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=8:2)で精製した。その結果、化合物4を392.1 mg(0.978 mmol、73%)得た。
【0181】
化合物4のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ 4.181(d, H−1, J 8.4 Hz), 3.254(t, −CH− N, J 6.8 Hz), 1.521 and 1.349 (2 x Me of isopropylidene).13C NMR (100 MHz,CDCl): δ 110.946(MeC), 102.879(C−1), 79.50, 74.47, 74.22, 74.06, 70.70, 62.94, 52.032(−CH− N), 30.16, 29.97, 29.95, 29.93, 29.67, 29.38, 28.69(Me), 27.25, 26.93(Me), 26.50.
【0182】
[化合物5の合成]
化合物4 338.3 mg(0.84 mmol)をDMF 20 mLに溶かし臭化ベンジル(BnBr) 0.26 mL(2.16 mmol)と水素化ナトリウム(NaH) 52 mg(2.16 mmol)を加え室温で2時間反応させた。反応溶液にメタノールを加えた後濃縮し、酢酸エチルで希釈して、飽和食塩水で希釈した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)で精製した。その結果、化合物5を530.4 mg(quant.)得た。
【0183】
化合物5のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ 7.42−7.22 (m, 10H, aromatic), 4.851 (d, CH−C, 11.6 Hz), 4.784 (d, CH−C, 11.6 Hz), 4.638 (d, CH−C, 11.6 Hz), 4.554 (d, CH−C, 11.6 Hz), 4.295 (d, H−1, 8.0 Hz), 4.16−3.88 (m, H−2, H−3, H−4, H−5), 3.82−3.74 (m, H−6 and H−6’), 3.54−3.46 (m, −(CH)−, 1H), 3.41−3.35 (m, −(CH)−, 1H), 3.231(t, −CH− N, J 7.2 Hz, 2H), 1.344 and 1.319 (s, 2 x Me), 1.69−1.24 (m, −(CH)−, 16H).
【0184】
[化合物6の合成]
化合物5 508.2mg(0.84 mmol)をメタノール10mLに溶かしカンファースルホン酸(CSA)139.4mg(0.6 mmol)加え室温で2時間反応させた。トリエチルアミンを加えた後、濃縮した。酢酸エチルで希釈して飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)で精製した。その結果、化合物6を387.1 mg(0.71 mmol, 84%)得た。
【0185】
化合物6のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m, aromatics, 10H), 4.965 (d, CH−C, 11.6 Hz), 4.665 (d, CH−C, 11.6 Hz), 4.59−4.56(m, CH−C, 2H), 4.356(d, H−1, J 7.6 Hz), 4.00−3.92 (m, H−2 and H−4, 2H), 3.82−3.71 (m, H−6 and H−6’, 2H), 3.63−3.46 (m, H−3, H−5 and −(CH)−, 4H), 3.235(t, −CH− N, J 7.2 Hz, 2H), 1.71−1.22 (m, −(CH)−, 16H).13C NMR (100 MHz,CDCl): δ 139.08, 138.55, 129.04, 129.01, 128.65, 128.39, 128.33, 129.30, 104.25(C−1), 79.73, 75.13, 74.22, 73.92, 73.75, 70.53, 69.96, 69.56, 52.02 (−CH− N), 30.31, 30.03, 29.98, 29.96, 29.70, 29.39, 27.27, 26.72.
【0186】
[化合物7の合成]
化合物6 157.3 mg(0.29 mmol)をトルエン10 mLに溶かし酸化ジブチルスズ(BuSnO) 79.7 mg(0.32 mmol)加え4回共沸した後、2時間還流した。室温に戻した後、臭化ベンジル(BnBr) 0.1mL(0.87 mmol)とテトラブチルアンモニウムブロミド(BuNBr) 48 mg(0.15 mmol)を加え室温で3時間反応させた。反応液に酢酸エチルを加え、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させてろ過した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)で精製した。その結果、化合物7を170.7 mg(0.27 mmol, 93%)得た。
【0187】
化合物7のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ 7.39−7.25 (m, aromatics, 15H), 4.917 (d, CH−C, 10.8 Hz), 4.723 (d, CH−C, 10.8 Hz), 4.717 (s, CH−C, 2H), 4.588 (s, CH−C, 2H), 4.348(d, H−1, J 7.6 Hz), 4.016 (bs, H−4), 3.98−3.91 (m, H−3), 3.801 (dd, H−6, 6.0 and 10.0 Hz), 3.723 (dd, H−6’, 6.0 and 10.0 Hz), 3.634 (dd, H−2, 8.0 and 9.2 Hz), 3.552 (bt, H−5, 6.0Hz), 3.53−3.47 (m, −(CH)−, 2H), 3.240(t, −CH− N, J 7.2 Hz, 2H), 1.71−1.22 (m, −(CH)−, 16H).
13C NMR (125 MHz,CDCl): δ 139.26, 138.64, 138.54, 129.03, 129.01, 128.87, 128.68, 128.41, 128.36, 128.32, 128.18, 104.15 (C−1), 81.03, 79.44, 75.59, 74.14, 73.60, 72.82, 70.40, 69.69, 67.35, 52.03 (−CH− N), 30.34, 30.04, 30.00, 29.72, 29.41, 27.28, 26.74.
【0188】
[化合物8の合成]
文献(Austin, P. W.; Hardy, F. E.; Buchanan, J. G.; Baddiley, J. J. Chem. Soc. 1965, 1419.)に従い 2,3,4,6−tetra−O−benzyl−D−galactose (1g, 1.85 mmol, T6412、シグマ社製)、DMF(50 μl)、塩化チオニル(7 ml)を混合し、室温で6時間反応させ2,3,4,6−tetra−O−benzyl−α−D−galactopyranosyl chloride(1.06 g, quant.)を得た。
次に、この2,3,4,6−tetra−O−benzyl−α−D−galactopyranosyl chloride(202.5 mg, 0.36 mmol)と化合物7の115.9 mg(0.18 mmol)をジエチルエーテル20 mlに溶かし、MS4A (乾燥剤)1gを加え1時間攪拌した。0℃に冷却し過塩素酸銀(AgClO)を112 mg(0.54 mmol)を加え徐々に室温に上げて22時間反応させた。反応液にトリエチルアミンを加えセライトろ過した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:8)で精製した。その結果、化合物8を133.6 mg(0.12 mmol, 67%)得た。
【0189】
化合物8のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDCl):δ 7.40−7.16(m, aromatics, 35H), 5.029 (bs, H−1’), 4.93−4.87 (m, CH−C, 3H), 4.81−4.76(m, CH−C, 4H), 4.687(d, CH−C, 12.0 Hz, 1H), 4.547 (d, CH−C, 11.6 Hz, 1H), 4.535(d, CH−C, 12.8 Hz, 1H), 4.46−4.42(m, H−5, 1H), 4.321 (d, H−1, 7.6 Hz), 4.264(d, CH−C, 12.0 Hz, 1H), 4.216(d, CH−C, 11.6 Hz, 1H), 4.16−4.10(m, H−2’, H−4’, H−5’ and CH−C, 5H), 4.025−4.018(bd, H−4, 2.8 Hz, 1H), 3.989−3.907(m, H−3’ and −O−CH−(CH)−, 2H), 3.674(dd, H−2, 7.6 and 10.0 Hz), 3.575−3.456(m, H6a, H6’a, H6’b and −O−CH−(CH)−, 4H), 3.382(dd, H−3, 2.8 and 10.0 Hz), 3.262−3.194(m, H−6 and −CH−N, 3H), 1.71−1.26(m, −(CH)−, 16H).
13C NMR (100 MHz,CDCl): δ 138.929, 138.753, 138.715, 138.646, 138.089, 138.012, 128.294, 128.210, 128.164. 128.058, 127.996, 127.767, 127.553, 127.507, 127.400, 127.286, 103.946(C−1), 100.401(C−1’), 80.828, 78.918, 76.488, 75.044, 74.838, 74.746, 74.662, 73.692, 73.524, 73.111, 72.989, 72.301, 72.233, 70.139, 69.207, 67.954, 67.893, 51.383(−CH− N), 29.724, 29.403, 29.365, 29.067, 28.754, 26.622, 26.072.
【0190】
[化合物9の合成]
化合物8 49.0 mg(0.042 mmol)を酢酸エチル2 mL、メタノール5 mLに溶かし水酸化パラジウム[Pd(OH)]を加え水素雰囲気下(50 kgf/cm)で4時間反応させた後、ろ過した。その結果、目的生成物を18.0 mg(0.036 mmol, 85%)得た。
【0191】
化合物9のNMRデータは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,CDOD):δ 4.976(bs, H−1’), 4.311(t, H−5’, 6.0 Hz), 4.280(d, H−1, 7.6 Hz), 4.007(d, H−4’, 2.8 Hz), 3.931(bs, H−4), 3.622(bt, H−5, 6.4 Hz), 3.466(dd, H−2, J 7.6 and 10.0 Hz), 2.917(t, −CH− NH, J 7.2 Hz), 1.66−1.28(m, −(CH)−, 16H).
13C NMR (100 MHz, CDOD): δ 105.995(C−1), 103.291(C−1’), 79.738, 76.927, 75.536, 73.688, 73.374, 72.175, 71.923, 71.610, 63.466, 61.739, 41.670(−CH−NH), 31.670, 31.372, 31.311, 31.204, 31.013, 29.401, 28.294, 27.866.
【0192】
(2) 11の合成
〔イオン性ポリマーの製造〕
図2に示すように、前記により得た化合物9を4.6 mg(0.01 mmol)、Poly(ethylene−alt−maleic anhydride)(アルドリッチ製、18805−0:Mw100,000〜500,000)10を1.2 mg(maleic anhydride unit 約0.01 mmol)をDMFに溶かし、80℃で25時間反応させた。反応液を濃縮し水に溶かして透析し、目的のイオン性ポリマー(糖鎖ポリマー)11を4.2 mg得た。H−NMRの結果より糖鎖の含有量は約12%と推定される。従って、約88%がカルボン酸となる。このH−NMRは、各シグナルがブロードニングしており、明らかに、9の化合物のNMRとは異なっていた。なお、SPRの測定には、9と10を2:1の比で仕込んだものを用いた。
【0193】
イオン性ポリマーのNMRは下記の通りであった。
H NMR (400 MHz,DO):δ 4.829(d, H−1’, 3.6 Hz), 4.315(d, H−1, 7.6 Hz), 4.238(bt, H−5’), 2.415(m, −(CH−, 8H), 1.7−1.1(m, −CH(COOH)−CH(CONH−)− and −(CH)−).
【0194】
(3)イオン結合により固定化したGb2 polymerによるベロ毒素の検出
〔センサーチップの作成〕
Biacore社より市販されているSIA kit Auの金基板をオゾンクリーナーで洗浄し、4 mMのβ−メルカプトプロピオン酸(β−Mercaptopropionic acid)−エタノール溶液に室温で4時間浸漬した。その後、エタノール、水で洗浄し、センサーチップを組み立て、図2に示すようなsurfaceAを調製した。
【0195】
〔Gb2 polymerの固定化〕
センサーチップへの化合物の吸着を計測するため、Biacore 3000(商品名、ビアコア社製)に装着して流速1μL/minで水を流した。センサーグラムが安定した後、図2中に示される構成単位を有するポリカチオン(Poly(diallyldimethylammonium chloride):アルドリッチ製、40903−0、Mw=400,000−500,000)を10 mM酢酸緩衝液(pH4.5)に溶かし100μg/mlに調製した溶液を10μLインジェクトした。
【0196】
その結果、図4に示すように、該ポリカチオンが金基板に1750 RU固定化され、図2に示すようなsurfaceBが形成されたことが確認できた。
続いて、前記で合成したイオン性ポリマー(Gb2ポリマー)11を10 mM酢酸緩衝液(pH4.5)に溶かし100 μg/mlに調製した溶液を、該ポリカチオンが固定化されているsurfaceBを有する金基板に、60 μLインジェクトした。その結果、図5に示すように、surfaceB上に、10000 RUの化合物11が固定化された(糖鎖ポリマー含有金基板)ことが確認できた。
なお、「RU」とは、「resonance unit」の略で、基板表面に物質が吸着、付着、固定化されると、その量に応じて値が増大することを意味する。ビアコア社によると、1RU = 約1 pg / mmである。
【0197】
〔SPR測定〕
MPA(Maclura pomifera 由来のα−Gal recognition protein:レクチン、シグマ製、比較実験用)、ベロ毒素の測定にあたって、糖鎖ポリマーのついてないフローセルをブランクコントロールとして用い、前記イオン性ポリマー11を固定化したフローセルのセンサーグラムから差し引くことで、バルク効果、および非特異的吸着の影響を除いた。
測定温度は25℃、流速5 μL/min、ランニングバッファーは10 mM HEPES緩衝液(pH7.4, 150 mM NaCl, 0.005% surfactant P20)を用いた。
【0198】
センサーグラムが安定した後、10 μg/ml(232 nM)のMPAを10 μLインジェクトした。その結果、図6に示すように約220 RUのレクチンが前記の合成した糖鎖ポリマー含有金基板に結合した。
ベロ毒素(1型)は、岐阜薬科大学 森 裕志教授、横山 慎一郎助手(いずれも本件出願時)のご厚意により遺伝子工学的にノックアウトしたベロ毒素1型を純度として100%のものを使用した(ベロ毒素2型をまったく含まない試料で、同時に、他の夾雑蛋白質なども含まない)。ここで使用したベロ毒素は、すべてベロ毒素−1である(ここでは、ベロ毒素、ベロ毒素1型、ベロ毒素−1などと表記している)。このベロ毒素1型をHEPES緩衝液で希釈し、5 μg/ml(71.5 nM)に調製し10 μLインジェクトした。その結果、図7に示すように、約40 RUのベロ毒素が前記糖鎖ポリマー含有金基板に結合した。一方、ベロ毒素5 μg/ml (71.5 nM)に、ベロ毒素の吸着を阻害するGb2 acrylamide copolymer (Dohi, H.; Nishida, Y.; Tanaka, H.; Kobayashi, K. Synlett 2001, 1446−1448.)を715 nM (Gb2 unit) 加えてインジェクトしたところ、結合シグナルの変化が見られず、阻害効果が確認された。
このことは、ベロ毒素1型が、基板表面に非特異的な吸着により結合しているのではなく、基板表面の糖鎖を介した特異的な結合であることを意味している。
【0199】
(4)共有結合により固定化したGb2 polymerによるベロ毒素の検出
〔センサーチップの作成〕
Biacore社より市販されているSIA kit Auの金基板をオゾンクリーナーで洗浄し、4 mMの6−アミノー1−ヘキサンチオール 塩酸塩 (6−Amino−1−hexanethiol hydrochloride, 同仁化学製)をエタノール溶液に室温で4時間浸漬した。その後、エタノール、水で洗浄し、センサーチップを組み立てた。
【0200】
〔固定化〕
センサーチップをBiacore 3000に装着して水を流した。センサーグラムが安定した後、前記で合成したGb2 polymer11水溶液 200 μg/mlをN−ethyl−N’−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochroride (EDC)(Biacore社製)とN−hydroxysuccinimide (NHS) (Biacore社製)で活性化して、インジェクトした。この操作を5回繰り返し、さらに濃度を500 μg/mlにしてインジェクトを2回繰り返した。最後に、エタノールアミンで残っているNHS基をブロックし、50 mM NaOHで洗浄した。その結果、図8に示すように、Gb2 polymer 11が最終的に約8800 RU固定化された糖鎖ポリマー含有金基板を得た。
ブランクコントロールとして用いるフローセルには、糖鎖の結合していないポリアニオン(ポリ(エチレンマレイン酸))を上記と同様にして共有結合により固定化した。
【0201】
〔SPR測定〕
測定温度は25℃、流速5 μL/min、ランニングバッファーは10 mM HEPES緩衝液(pH7.4, 150 mM NaCl, 0.005% surfactant P20)を用いた。
10 μg/ml(232 nM)のMPAを10 μLインジェクトした結果、図9に示すように、糖鎖に、約330 RUのMPAが結合したことが確認できた。
【0202】
ベロ毒素1型は純度100%のものを10 mM HEPES緩衝液で5 μg/ml(71.5 nM)、3μg/ml(43nM)、2μg/ml(29nM)、1μg/ml(14nM)に調製し、それぞれ10 μLインジェクトした。その結果、図10に示すように、それぞれ約75 RU、40 RU、25 RU、10 RUのベロ毒素が糖鎖に結合した。
次に、ベロ毒素5 μg/ml (71.5 nM)に阻害剤としてGb2 acrylamide copolymerを142 nM、 358 nM、715nM(Gb2 unit)と濃度を変化させて混合しインジェクトしたところ、図11に示すように、結合量が徐々に減少して、715 nMのとき完全な阻害効果が見られた。
【0203】
(5)剥離強度の実験
図5に示す表面(イオン結合によりイオン性ポリマー11を固定化させたとき)を使用したときの、2層目のイオン性糖鎖高分子(ポリアニオン)の耐久性実験(剥離実験)を行った。
前記と同様にして、1層目にポリカチオン、2層目にGb2 polymer 11を固定化した。その後、150 mM、500 mM、1 Mの NaCl水溶液を1分間インジェクトした。その結果、いずれの濃度でもGb2 polymer 11の剥離は殆ど見られなかった。その結果を図12に示す。
【0204】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、生体相互作用可能基の製造方法の一例を示すスキーム図である。
【図2】図2は、イオン性ポリマーおよびイオン結合性ポリマー含有基板の製造方法の一例を示すスキーム図である。
【図3】図3は、イオン結合性ポリマー含有基板の製造方法の一例を示すスキーム図である。
【図4】図4は、ポリカチオンを金基板にイオン結合させたときのレスポンスを測定したグラフである。すなわち、予め3−メルカプトプロピオン酸で金表面を処理した表面に、ポリカチオンをイオン結合で累積させたときのSPRであり、イオン結合固定化の第1層目である。ポリカチオンの固定化条件は、次の通りである:ポリカチオン 100μg/ml、10 mM 酢酸buffer、pH4.5。
【図5】図5は、ポリカチオンがイオン結合した金基板に、さらにイオン性ポリマーをイオン結合させたときのレスポンスを測定したグラフである。すなわち、前記図4の表面にイオン性ポリマー11を固定化したときのSPRであり、イオン結合固定化の2層目である。イオン性ポリマー(ポリアニオン)の固定化条件は次の通りであった:Gb2 polymer 100μg/ml、10 mM 酢酸buffer、pH4.5。
【図6】図6は、イオン性ポリマーをイオン結合させた図5に示す金基板に、レクチン(MPA) (Maclura pomifera aggulutinin: α−Gal recognition protein)を作用させたときのレクチンのレスポンスを測定したグラフである。すなわち、図5に示す表面(イオン結合によりイオン性ポリマー11を固定化させたとき)を使用したときの、標準蛋白質(MPA)の結合実験であり、MPAの濃度は、10μg/ml (232 nM)であった。
【図7】図7は、イオン性ポリマーをイオン結合させた図5に示す金基板に、ベロ毒素1型を作用させたときのベロ毒素のレスポンスを測定したグラフおよびベロ毒素阻害剤を添加した場合のベロ毒素のレスポンスを測定したグラフである。すなわち、ベロ毒素1型の結合実験及び阻害実験を示し、用いたベロ毒素の濃度はVerotoxin 5μg/ml (71.5 nM)であった。阻害剤は、Gb2−acrylamide copolymerを用いた。
【図8】図8は、イオン性ポリマーを金基板に共有結合させたときのレスポンスを測定したグラフである。すなわち、金表面を6−アミノ−1−ヘキサンチオールで処理後、これにイオン性ポリマー11を共有結合で固定化させたときのSPRであり、固定化を数回繰り返した。
【図9】図9は、イオン性ポリマーを共有結合させた金基板に、レクチンを作用させたときのレクチンのレスポンスを測定したグラフである。すなわち、図8に示した表面(イオン性ポリマー11を共有結合で固定化した表面)を用いたときの、レクチン:MPA(Maclura pomifera aggulutinin: α−Gal recognition protein)の結合実験であり、MPAの濃度は10μg/ml (232 nM)であった。
【図10】図10は、イオン性ポリマーを共有結合させた金基板に、ベロ毒素を作用させたときのベロ毒素のレスポンスを測定したグラフである。すなわち、図8に示した表面(イオン性ポリマー11を共有結合で固定化した表面)を用いたときの、ベロ毒素1型の濃度依存の結合実験(SPR)である。
【図11】図11は、イオン性ポリマーを共有結合させた金基板に、ベロ毒素を作用させたときのベロ毒素のレスポンスおよびベロ毒素阻害剤を添加した場合のベロ毒素のレスポンスを測定したグラフである。すなわち、図8に示した表面(イオン性ポリマー11を共有結合で固定化した表面)を用いたときの、阻害剤の濃度依存によるベロ毒素1型の阻害実験(SPR)である。ベロ毒素は、すべてVerotoxin−1 5μg/ml (71.5 nM)を使用した。阻害剤はGb2−acrylamide copolymerを用いた。
【図12】図12は、イオン強度を上昇させたときのイオン性ポリマーの固定化の剥離がないことを確かめた実験である。すなわち、図5に示す表面(イオン結合によりイオン性ポリマー11を固定化させたとき)を使用したときの、2層目のイオン性ポリマー(ポリアニオン)の耐久性実験(剥離実験)である。

Claims (18)

  1. 側鎖として、2以上のイオン性官能基(A)、および2以上の下記一般式(1)
    L−X−B− (1)
    〔ただし、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基を意味する。〕で表される生体相互作用可能基が、主鎖となるポリマーに共有結合していることを特徴とするイオン性ポリマー。
  2. 少なくとも2つの前記リガンドLが、同一の生体関連物質に同時に相互作用しうることを特徴とする請求項1に記載のイオン性ポリマー。
  3. 前記主鎖となるポリマーが、置換基を有していてもよい、炭化水素骨格またはポリアミノ酸由来の骨格を有し、前記イオン性官能基(A)と主鎖となるポリマー部分の重量平均分子量が1000〜100万であることを特徴とする請求項1または2に記載のイオン性ポリマー。
  4. 前記イオン性ポリマーが、下記一般式(1)
    Figure 2004346209
    〔式(1)中、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基、Zは主鎖部分の炭素原子数が1〜8の置換基を有してもよいアルキレン基、主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基または−C(=O)NH−で表される基を意味する。〕で表される構成単位(I)および、下記一般式(2)
    Figure 2004346209
    〔式(2)中、Aはイオン性官能基を示し、R、Zは、それぞれ式(1)と同意義である。〕で表される構成単位(II)を含有し、構成単位(I)のモル数と構成単位(II)のモル数との合計に対し、構成単位(I)が1〜99%、構成単位(II)が99〜1%の割合で存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
  5. 前記イオン性ポリマーが、下記一般式(3)
    Figure 2004346209
    〔式(3)中、Lは生体関連物質との相互作用が可能なリガンド、Xはスペーサー、Bは結合基、Aはイオン性官能基、R、Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基、Zは主鎖部分の炭素原子数が1〜8の置換基を有してもよいアルキレン基または主鎖部分の炭素原子数が2〜8の置換基を有してもよい不飽和結合を含むアルケニレン基である。〕で表される構成単位(III)、および/または下記一般式(4)
    Figure 2004346209
    〔式(4)中、L、X、B、A、R、R、Zは、それぞれ、式(3)と同意義を意味する。〕
    で表される構成単位(IV)からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
  6. さらに、下記一般式(5)
    Figure 2004346209
    〔式(5)中、A、R、R、Zは、それぞれ、前記式(3)と同意義である。〕
    で表される構成単位(V)を含有し、前記構成単位(III)〜(V)のモル数の合計に対し、構成単位(III)および(IV)の合計が1〜99%、構成単位(V)が99〜1%の割合で存在することを特徴とする請求項5に記載のイオン性ポリマー。
  7. 前記Xが、炭素原子数2〜30のアルキル基からなる疎水性基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
  8. 前記生体関連物質と相互作用有するリガンドが、タンパク質、糖タンパク質、単糖、糖鎖、ビオチン、インターカレーター、抗原、抗体、糖脂質、核酸塩基および核酸からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
  9. 前記イオン性官能基(A)が、アニオン性官能基またはカチオン性官能基であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のイオン性ポリマーと基板とからなり、該イオン性ポリマーが基板と2以上のイオン結合で結合し、該イオン性ポリマーが最外層を形成していることを特徴とするイオン結合性ポリマー含有基板。
  11. 前記イオン性ポリマーが、少なくとも1つのポリイオン性高分子膜を介して、基板とイオン結合していることを特徴とする請求項10に記載のイオン結合性ポリマー含有基板。
  12. 前記ポリイオン性高分子膜が、ポリカチオン性高分子膜とポリアニオン性高分子膜とが交互に積層されてなる交互積層膜であることを特徴とする請求項11に記載のイオン結合性ポリマー含有基板。
  13. 請求項1〜9のいずれかに記載のイオン性ポリマー中の2以上のイオン性官能基(A)と、基板上の2以上の官能基とが、共有結合により結合してなることを特徴とする共有結合性ポリマー含有基板。
  14. 生体関連物質の検出用イオン性ポリマーである、請求項1〜9のいずれかに記載のイオン性ポリマー。
  15. 生体関連物質の検出用基板である、請求項10〜13のいずれかに記載の基板。
  16. 請求項10〜13のいずれかに記載の基板を含有する、生体関連物質の検出用センサー。
  17. 請求項1〜9のいずれかに記載のイオン性ポリマーを含有する、生体関連物質の検出用試薬。
  18. 下記の工程からなる、生体関連物質の検出方法:
    (1)試験化合物を、請求項10〜13のいずれかに記載の基板に接触させる工程、
    (2)基板に結合した生体関連物質を検出する工程。
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