JP2004226384A - 核酸検出用チップおよびその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】DNA等の核酸検出用センサの検出感度を向上させることを目的とした、核酸検出用チップにおける手段を提供すること。
【解決手段】親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面等を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【選択図】 なし
【解決手段】親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面等を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオセンサにおいて用い得る、センサチップに関する発明であり、特に、核酸検出用のセンサチップに関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
バイオセンサは、例えば、生物学的な試料を検体とした、特定の被検物質の検出に適しており、現在、様々なバイオセンサが提案されている。バイオセンサの典型的な態様として、センサチップ表面に担持された核酸におけるハイブリダイズ等を検出するための、核酸検出用センサが挙げられる。
【0003】
核酸検出用センサとしても好適に用い得る、主要なバイオセンサの一つとして、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用するバイオセンサ(以下、SPRセンサともいう)が提供されている。このSPRセンサは、プリズムの底面に金や銀等の金属薄膜を形成し、金属薄膜の裏面からレーザーなどの光を、入射角度を変えながら入射して、その反射光を測定し、金属表面プラズモンと共鳴して吸収される、特定入射角度の光を指標として、当該金属表面で起きている、核酸のハイブリダイゼーション等の反応を検出することが可能なバイオセンサであり、金属薄膜の表面およびその近傍における屈折率の変化に対して鋭敏であることが知られている(例えば、A.Szabo et al.,Curr.Opin.Strnct.Biol.5(1995)699−705)。
【0004】
特に、近年、遺伝子の解読が進み、1塩基置換変異等の、核酸の微妙な変異を感度良く検出することが要求されており、非特異的な反応が抑制され、簡便、かつ、鋭敏に、所望する核酸の変異を検出可能な核酸検出用センサの提供が待ち望まれている。
【0005】
後述する本発明に関連する先行文献として、例えば、以下に掲げる文献が挙げられる。
1.特開平7−316285号公報(特許文献1)
特許文献1には、SPRセンサのチップの表面において用い得る、ポリアルキレンオキシド誘導体の製造方法が記載されているが、この文献自体には、ポリアルキレンオキシド誘導体のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。
【0006】
2.特開平11−322916号公報(特許文献2)
特許文献2には、SPRセンサの表面において、さらに好適に用い得る、ビオチン残基をω末端に有する、ポリオキシエチレン誘導体について開示されているが、この文献自体には、このヘテロポリオキシエチレン誘導体のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。
【0007】
3.特開2001−200050号公報(特許文献3)
特許文献3には、ポリエチレングリコール誘導体が担持された、金等の金属微粒子が、分散性が良好である旨等が記載されているが、この文献自体には、この金属微粒子のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。
【0008】
4.特開2002−80903号公報(特許文献4)
特許文献4には、ポリエチレングリコールをブロックとして有し、かつ、特定のメタクリル酸ポリマーを他のブロックとして有する、ブロックポリマー誘導体が担持された、金等の金属微粒子について開示されているが、この文献自体には、この金属微粒子のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。なお、この特許文献4のブロックポリマーは、本発明においても用い得るブロックポリマーである。
【0009】
5.特許第2815120号公報(特許文献5)
特許文献5には、HS−R−Y(Rは、炭素原子数が10を超える、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素基であり、Yは、リガンド又は生適合性多孔質マトリックスを共有結合させるための活性基である)で表される有機分子を用いて、そのチオール基を介して、金、銀等の自由金属の膜表面へ結合させて、この有機分子が密に詰め込まれた単層を設け、次いで、生適合性多孔質マトリックスとして、アガロース、デキストラン、ポリエチレングリコール等からなるヒドロゲルを共有結合した表面が記載されている。
【0010】
6.特許第3071823号公報(特許文献6)
特許文献6には、保持材上へ、チオール基の硫黄原子を介して結合したスペーサー分子に、親水性リンカー部とビオチン誘導体残基等の固相反応物質が順に共有結合した表面が記載されている。
【0011】
7.特開2001−178442号公報(特許文献7)
特許文献7には、末端部にチオール基を有するDNA断片と、当該チオール基と反応して共有結合を形成し得る反応性置換基を有する鎖状分子が、一方の末端で表面に固定された固相担体とを液相にて接触させることにより、当該DNA断片と鎖状分子との間で共有結合を形成させることを特徴とするDNA断片の固相担体表面への固定方法、が記載されている。
【0012】
8.「Roberts et al.,J.Am.Chem Soc.1998,120,6548−6555」(非特許文献1)非特許文献1には、HS−スペーサー分子−親水性リンカーをベースとする化合物を用い、チオール基を介して、金表面に自己集積した単層が記載されている。また、親水性リンカー部が、エチレンオキシド単位3個の化合物と、エチレンオキシド単位6個の化合物との混合物から形成された表面は、細胞のリガンド特異的結合を促進するが、付着した細胞による蛋白質の堆積を低減することも教示されている。
【0013】
9.「Pavey et al.,Biomaterials 20(1999)885−890(非特許文献2)
非特許文献2には、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドのトリブロックポリマーの様々な2種の組み合わせ物を、SPRの検出用金属薄膜上に付着させた表面が記載されている。また、当該表面においては、溶液中に、ポリエチレンオキシド鎖が伸長し、ブラシ様構造物(brush−like architecture)を形成し得ることが示唆されている。
【0014】
【特許文献1】
特開平7−316285号公報
【特許文献2】
特開平11−322916号公報
【特許文献3】
特開2001−200050号公報
【特許文献4】
特開2002−80903号公報
【特許文献5】
特許第2815120号公報
【特許文献6】
特許第3071823号公報
【特許文献7】
特開2001−178442号公報
【非特許文献1】
Roberts et al.,J.Am.Chem Soc.1998,120,6548−6555
【非特許文献2】
Pavey et al.,Biomaterials 20(1999)885−890
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、核酸検出用のセンサ等のバイオセンサにおいて用いるチップにおける共通の課題の一つとして、バイオセンサの検出感度の向上が挙げられる。
【0016】
例えば、上記の従来技術のうち、バイオセンサにおいて用いるチップと直接関係がある技術(特許文献5,6、非特許文献1,2)は、すべて、チップ表面における非特異的な反応を可能な限り抑制して、バイオセンサの検出感度の向上を目的とするものである。
【0017】
また、本発明者の一部は、上記の非特異的な反応を抑制することを目的として、SPRセンサチップの表面に、鎖長の異なるポリエチレンオキシド誘導体のブラシ状構造物を担持することによって、検出感度が向上することを見いだし、特許出願を行った(特願2002−65298号)。さらに、ポリエチレンオキシド誘導体で処理した金属微粒子を、SPRセンサチップの表面に担持することによっても、検出感度が向上することを見いだし、特許出願を行った(特願2002−101134号)。
【0018】
このように、バイオセンサの検出感度を向上させることを目的とした、センサチップに関する検討は、バイオセンサの検出感度の、さらなる向上を目指してなされており、依然として、この課題が、バイオセンサの分野においては重要である。
【0019】
本発明が解決すべき課題は、バイオセンサの中でも、特に、DNA等の核酸検出用センサの検出感度を向上させることを目的とした、核酸検出用チップにおける手段を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この課題を解決するために、さらに、非特異的な反応が抑制され得る、核酸検出用のセンサチップの表面構造について検討を行った。その結果、センサチップの表面に、親水性ポリマーのブラシ状構造を設けて、核酸を、このブラシ状構造の間に担持させることによって、チップ表面において核酸をハイブリダイズさせる際の、非特異的な反応が、著しく抑制されることを見いだし、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明は、親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面(以下、本チップ表面ともいう)、本チップ表面を有するセンサチップ(以下、本チップともいう)、および、本チップの使用方法(以下、本使用方法ともいう)、を提供する発明である。
【0022】
なお、上述した特許文献7には、本発明のように、親水性ポリマーのブラシ状構造物を設けたチップ表面への核酸分子の担持については、記載も示唆もなされていない。
【0023】
【発明の実施の形態】
本チップは、表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサ(SPRセンサ)における検出に用いるのが好適であるが、これに限定されるものではなく、核酸とその相補鎖の組における結合対の形成により、チップ表面に生ずる何らかの変化を検出することが可能なセンサであれば、いかなる範疇のセンサにおいても用いることができる。検出対象となる変化としては、上記の表面プラズモン共鳴以外に、放射能、接触角、沈降、紫外分光、蛍光、化学発光、電気化学発光等を挙げることができる。
【0024】
ブラシ状構造物
本チップ表面に担持され得るブラシ状構造物として用いる親水性ポリマーは、具体的には、式(1)
【0025】
A−L−P−B (1)
[式中、Aは、本チップ表面の支持体に配位可能な官能基であり、Lは、2価の基または原子価結合であり、Pは、親水性ポリマーセグメントであり、Bは、1価の基である]
で表される、親水性ポリマー誘導体として,官能基Aの本チップ表面の支持体に対する配位を行い、本チップ表面に担持することにより、所望するブラシ状構造物とすることができる。
【0026】
官能基Aとしては、具体的には、例えば、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルフィド基、または、式(2)
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、R1、R2およびR3は、同一であっても異なってもよく、炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す]で表される基を挙げることができる。
これらの基のうち、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、または、スルフィド基は、本チップ表面の支持体の素材が、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であることが好適である。また、式(2)で表される基は、同素材が、ガラス;CdS、ZuS等の半導体;グラファイト等のカーボン;酸化チタン、Al2O3等の金属酸化物であることが好適である。
【0029】
なお、本チップ表面の素材、すなわち、本チップ表面の支持体の素材は、本チップの基板の素材と同一(すなわち、基板自体が、本チップ表面を形成する)とすることも可能であり、基板の表面に、金属等の薄膜を形成して、この金属等を支持体とすることも可能である。
【0030】
親水性ポリマーセグメントPとしては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等を例示することができるが、ポリアルキレンオキシドが好適である。
【0031】
特に、ポリアルキレンオキシドが、炭素原子数が2〜4のアルキレンオキシド、すなわち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、ブチレンオキシドをモノマー単位とする、ポリアルキレンオキシドであることが、好適である。また、ポリアルキレンオキシドにおける、アルキレンオキシド単位の重合度は、2〜10000が好適であり、特に好適には、10〜3000である。
【0032】
1価の基Bは、ブラシ状構造物の先端に相当する、親水性ポリマーセグメントPの末端を構成し得る基であることが好適である。具体的には、水素原子、炭素原子数が1〜6のアルキル基、水酸基、アセタール基等を例示することができる。
【0033】
また、Lがとり得る2価の基としては、例えば、炭素原子数が1〜12,好適には1〜3のアルキレン基、さらに、基(3)
【0034】
【化4】
【0035】
[式中、L1は、−COO−、−O−、−S−等の2価基を表し、pは、1〜12、好適には、1〜3である]
等を挙げることができる。
【0036】
親水性ポリマー誘導体(1)は、その具体的な構造に応じて、すでに公知の手段で製造することができる。例えば、親水性ポリマーセグメントPが、ポリアルキレンオキシドの場合には、特開平7−316285号公報(特許文献1)等に記載の方法と条件に従い、または、改変して製造することができる。
【0037】
ここに、このブロックポリマー誘導体(1)として、アセタール−PEG−SHの製造工程の一例を開示する。なお、この製造工程において、rは正の整数を意味する。
【0038】
【化5】
【0039】
チップ表面に、上記の親水性ポリマーセグメントPに相当するブラシ状構造物を構築する際に、親水性ポリマー誘導体(1)の官能基Aが、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、または、スルフィド基である場合は、適切な緩衝化した水溶液に、ブロックポリマー誘導体(1)を溶解し、このポリマー溶液を、適温、例えば、20〜37℃程度で、浸漬等により、チップの支持体(金、銀、銅、アルミニウム等の金属)表面に接触させた状態で、数10分〜数時間のインキュベートを行うことにより、所望するブラシ状構造物が設けられたチップ表面を製造することができる。このポリマー溶液における、ブロックポリマー誘導体(1)の濃度は、用いるブロックポリマーの分子量により異なるが、通常、溶液の0.1〜5mg/ml、好適には1mg/ml程度である。
【0040】
また、官能基Aが、基(2)である場合には、ブロックポリマー誘導体(1)を好適には無水の有機溶媒(例えば、トルエン等のポリマー易溶性有機溶媒)に溶解した溶液を用い、チップの支持体(ガラス、半導体、セラミック、カーボン、金属酸化物)の表面へのポリマーの結合または付着処理を行い、溶媒を留去した後、表面に対して未反応のポリマーを、当該有機溶媒で洗浄除去することの他は、上記の官能基Aがメルカプト基等の場合と同様に処理することにより、所望するブラシ状構造物が設けられたチップ表面を製造することができる。
【0041】
ブロックポリマー誘導体
本発明の好適な態様として、チップ表面上のブラシ状構造物を構成する親水性ポリマーが、下記の特徴(a)および(b)を有するブロックポリマー(4)の第1のブロックを構成する親水性ポリマーセグメントであり、かつ、第2のブロックを構成するポリマーセグメントの、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基を介して、下記のブロックポリマーがセンサチップ表面に固定されている態様を挙げることができる。
【0042】
(a)上記の親水性ポリマーセグメントを第1のブロックとする。
(b)センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基を有するモノマーをモノマー単位とする、重合度が1〜200のポリマーセグメントを第2のブロックとする。
【0043】
第1のブロックにおける親水性ポリマーセグメントは、上述した親水性ポリマーセグメントPと同一である。
また、第2のブロックにおけるポリマーセグメントにおける、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基としては、例えば、メルカプト基、ジチオール基、スルフィド基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基、または、炭素原子数が1〜5のトリアルキルシリル基等を挙げることができる。これらの官能基を有するモノマー単位としては、例えば、メタクリル酸(2−ジエチルアミノエチル)、メタクリル酸(2−ジメチルアミノエチル)、ポリシステイン、ポリリジン、ポリグルタミン、メタクリル酸(3−トリメトキシシリルプロピル)等を挙げることができる。これらのモノマー単位を、常法に従い、重合反応を、当該ブロックポリマー誘導体(4)の製造工程において行うことにより、所望する官能基を有する第2のブロックを形成することができる。
【0044】
さらに、第2のブロックの好適な態様の一つとして、式(5)
【0045】
【化6】
【0046】
[式中、mは1〜10の整数、nは1〜100の整数を表し、R4およびR5は、互いに独立して、炭素原子数が1〜5のアルキル基、アミノ基、メルカプト基、または、スルフィド基を表す]で表される、メタクリル酸ポリマーのセグメントを挙げることができる。
【0047】
このメタクリル酸ポリマー(5)を第2のブロックとする、ブロックポリマー誘導体(4)の製造工程については、特開2002−80903号公報(特許文献4)において詳細に開示されており、これに従い、所望するメタクリル酸ポリマー(5)を第2のブロックとする、ブロックポリマー誘導体(6)を製造することができる。
【0048】
すなわち、例えば、式
A−L−P−OH (7)
[式中のA、L、Pの定義は、それぞれ、親水性ポリマー誘導体(1)における定義と同一である]
の化合物(7)[この化合物(7)の製造方法自体も、公知である(例えば、特開平7−316285号公報:特許文献1、特開平11−322916号公報:特許文献2、特開2001−200050号公報:特許文献3等を参照のこと)]に対して、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルを、所望する重合度になるように、重合反応することにより、ブロックポリマー誘導体(6)を得ることができる。
【0049】
ここに、このブロックポリマー誘導体(6)として、アセタール−PEG/PAMAの製造工程の一例を開示する。なお、この製造工程において、sおよびtは、それぞれ正の整数を意味する。
【0050】
【化7】
【0051】
上述のようにして得られるブロックポリマー誘導体(4)または(6)を、第1のブロックをブラシ状構造物となるように担持する際には、上述した親水性ポリマー誘導体(1)についての担持工程と実質的には同一の担持工程を行うことができる。
【0052】
まず、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を担持させる、本チップ表面の素材、すなわち、本チップ表面の支持体の素材は、本チップの基板の素材と同一とすることも可能であり、基板の表面に、金属等の薄膜を形成して、この金属等を支持体とすることも可能である。なお、支持体として用い得る素材として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の金属とすることができる。また、ガラス;CdS、ZnS等の半導体;グラファイト等のカーボン;酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;酸化イリジウムスズ等の合金酸化物;とすることができる。
【0053】
これらの本チップ表面の支持体の素材に応じて、適切な官能基を有するブロックP2をセグメントとするブロックポリマー誘導体(4)または(6)を選択して用いることが好ましい。すなわち、各本チップ表面の支持体の素材に配位可能な官能基を有する第2のブロックをセグメントとするブロックポリマー誘導体(5)または(7)を用いることで、容易に、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)をチップ表面上に固定することができる。
【0054】
例えば、上記の官能基が、アミノ基、または、メルカプト基である場合には、本チップ表面の支持体の素材は、金、銀、銅、アルミニウム等の金属;CdS、ZnS等の半導体;酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;であることが好適である。また、同官能基が、シラノール基である場合には、チップの支持体の素材は、ガラス、シリコーン、酸化チタンであることが好適である。また、同官能基が、カルボキシル基である場合には、チップの支持体の素材は、カーボンが好適である。
【0055】
所望するチップ表面を製造する際には、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を含有する溶液の中に、チップを浸漬させて、接触させることにより、第2のブロックの、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基がチップ表面に結合して、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を、チップ表面に固定することができる。その結果、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)の第1のブロック側がブラシ状に起立した、本チップ表面を製造することができる。
【0056】
すなわち、適切な緩衝化した水溶液に、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を溶解し、このポリマー溶液を、適温、例えば、20〜37℃程度で、浸漬等により、チップの支持体表面に接触させた状態で、数10分〜数時間のインキュベートを行うことにより、本チップ表面を製造することができる。このポリマー溶液における、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)の濃度は、用いるブロックポリマーの分子量により異なるが、通常、溶液の0.1〜5mg/ml、好適には1mg/ml程度である。
【0057】
核酸の担持
本チップ表面は、上述のようにして、ブラシ状構造物を担持したチップ表面上に、さらに、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されていることが必要である。
【0058】
この核酸の担持工程においては、核酸を、チップ表面上に固定可能な核酸誘導体を調製することが前提となる。
まず、本チップ表面において担持する核酸は、特に限定されず、DNAであっても、RNAであってもよく、また、1本鎖であっても、2本鎖であってもよいが、1本鎖のDNAであることが好適である。また、核酸は、直鎖状であっても、特定の構造(例えば、ヘアピン構造やループ構造)を有していてもよいが、直鎖状であることが好適である。さらに、鎖長は、特に限定されないが、好適には、
5〜200000塩基対程度、さらに好適には、10〜20000塩基対程度である。
【0059】
核酸としては、所望する塩基配列を有する核酸を、例えば、特定の生物の遺伝子DNAやcDNAから、PCR法等の遺伝子増幅法による増幅産物を用いることも可能である。また、核酸の塩基配列が完全に既知であり、かつ、比較的短い場合には、所望する塩基配列の核酸を、ホスファイト トリエステル法等の化学合成法によって合成することも可能であり、核酸合成機を用いて合成することも可能である。
【0060】
このように入手した核酸の一方の末端、例えば、5’末端のリン酸基や、3’末端の水酸基を利用して、チップ表面の支持体の素材、および/または、担持したブロックポリマー誘導体(4)(6)の第2のブロックを構成するポリマーセグメントに対して、配位可能な官能基、例えば、メルカプト基、ジチオール基、ジスルフィド基、スルフィド基、アミノ基、シラノール基、カルボキシル基等を導入して付加することにより、所望する核酸誘導体(8)を合成することが可能である。
【0061】
また、同じく核酸の一方の末端に、常法により、ビオチニル基を導入して付加することによっても、所望する核酸誘導体(8)を合成することも可能である。なお、この場合は、チップ表面、および/または、担持したブロックポリマー誘導体(4)(6)の第2のブロックを構成するポリマーセグメントに、アビジニル基が導入して付加されていることが、核酸を、アビジン−ビオチン結合により、チップ表面に結合させるために必要である。このアビジニル基とビオチニル基の核酸の末端またはチップ表面若しくはポリマーセグメントへの導入は、常法により行うことができる。
【0062】
また、プローブとなる塩基配列を有する核酸の末端に、直接的に上記の官能基(ビオチニル基を含む)を導入して付加すること(直接的な官能基の付加)も可能であるが、核酸の実質的にプローブとする部分と、上記の官能基の間に、リンカーDNAや、スペーサー分子を設けて固定すること(間接的な官能基の付加)が好適である。
【0063】
通常、リンカーDNAとしては、オリゴdTやオリゴdA等を好適に用いることができる(通常は、3〜100塩基程度のオリゴヌクレオチド)。また、スペーサー分子としては、炭素原子数が2〜100程度の直鎖状アルキル基、オリゴエチレングリコール等を挙げることができる。
【0064】
かかる核酸誘導体(8)の合成法としては、常法を用いることができる。また核酸誘導体(8)の市販品を用いることもできる。
ブラシ状構造物が設けられたチップ表面への、核酸誘導体(8)の担持は、例えば、当該チップ表面に、核酸誘導体(8)を含有する適切な緩衝液を接触させて、当該緩衝液を乾燥させないようにして、適切な条件下で放置することにより、容易に行うことができる。すなわち、核酸誘導体(8)の官能基を介して、チップ表面に直接的に固定する、および/または、ブロックポリマーの第2のブロックを介して間接的に固定することができる。
【0065】
担持工程の順番
上述した、本チップ表面の製造工程においては、ブラシ状構造物の担持工程の後に、核酸の担持工程を行っているが、これとは逆に、核酸の担持工程の後に、ブラシ状構造物の担持工程を行うこともできる。ただし、ブラシ状構造物の担持工程の後に、核酸の担持工程を行う方が、一般的には好適である。
【0066】
担持密度の調整
なお、親水性ポリマー誘導体(1)を含有するポリマー溶液を用いて、ブラシ状構造物をチップ表面上に構築する場合は、当該溶液中の親水性ポリマー誘導体(1)の濃度を調整することにより、チップ上のブラシ状構造物の担持密度を調整することが可能である。
【0067】
また、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を含有するポリマー溶液を用いて、ブラシ状構造物をチップ表面上に構築する場合は、当該溶液中のブロックポリマー誘導体(4)または(6)の濃度を調整することにより、チップ上のブラシ状構造物の担持密度を調整することが可能である。
【0068】
すなわち、これらのポリマー溶液における親水性ポリマー誘導体(1)、あるいは、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)の濃度が高ければ、本チップ表面上のブラシ状構造物の担持密度が高くなり、逆に前記濃度が低ければ、同担持密度は低くなる。本チップ表面においては、ブラシ状構造物が、0.001〜1分子/nm2の密度で担持されていることが好適である。この担持密度が、0.001分子/nm2未満であると、目的とする非特異的反応を十分に抑制することが困難な傾向があり、10分子/nm2を超えると、親水性ポリマー誘導体(1)がチップ状で多層化して、検出感度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0069】
また、本チップ表面におけるブラシ状構造物の嵩高は、すべて、実質的に同一であってもよいし、異なってもよい。
次いで、本チップ表面上における、核酸の担持密度は、核酸を担持させるために、チップ表面に接触させる核酸誘導体(8)溶液の濃度に依存する。
【0070】
すなわち、当該核酸誘導体溶液における核酸誘導体(8)の濃度が高ければ、本チップ表面上のブラシ状構造物の担持密度が高くなり、逆に前記濃度が低ければ、同担持密度は低くなる。本チップ表面においては、核酸が、0.001〜1分子/nm2の密度で担持されていることが好適である。この担持密度が、0.001分子/nm2未満であると、目的とする非特異的反応を十分に抑制することが困難な傾向があり、1分子/nm2を超えると、親水性ポリマー誘導体(1)がチップ状で多層化して、検出感度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0071】
なお、上述したブラシ状構造物と核酸のチップ表面における密度は、原子間力顕微鏡(AFM)により確認することが可能であり、さらに、SPR等により確認することも可能である。
【0072】
マスキング処理
上記のようにして提供される、本チップ表面に、さらにマスキング処理を行うことにより、さらに非特異的な反応を抑制することができる。
【0073】
このマスキング処理は、上述のようにして得られる本チップ表面に、マスキング剤を接触させて、当該マスキング剤を本チップ表面上に固定化することにより行われる。
【0074】
マスキング剤としては、式(9)
【0075】
【化8】
【0076】
[式中、qは、1〜200の整数であり、R6は、水酸基、炭素原子数が1〜6のアルキル基であり、R7は、水素原子、炭素原子数が1〜6のアルキル基、または、ピリジルチオ基である]
で表されるチオ化合物を挙げることができる。また、マスキング処理の好適な態様の一つとして、マスキング剤を2−メルカプトエタノールとする態様を挙げることができる。
【0077】
マスキング処理は、上述のようにして製造され得る本チップ表面を、マスキング剤の溶液と接触させることにより行うことができる。この場合のマスキング剤の溶液におけるマスキング剤の濃度は、マスキング剤の種類等によっても異なるが、概ね、0.001〜1000mM,好適には、0.1〜10mM程度である。また、マスキング処理の時間は、好適には、3分〜1日程度である。さらに、マスキング処理は、20〜37℃程度の温度下で行うことが好適である。
【0078】
このようにして、ブロックP2が平面固定され、かつ、ブロックP1が嵩高に起立し、ブラシ状構造物の主要部を構成している、ブロックポリマー誘導体(1)が担持された本チップ表面、および、本チップ表面を有する本チップが提供される。本チップ表面において、生物学的な結合反応を行うと、非特異的な反応を著しく抑制することが可能となり、本チップを用いたセンサによる検出感度を向上させることができる。
【0079】
本使用方法
上述のようにして提供される本チップは、バイオセンサにおける核酸検出を目的とするバイオチップである。すなわち、本発明は、本チップと、核酸試料を接触させて、本チップの固定化核酸とのハイブリダイズを検出する、本チップの使用方法(本使用方法)を提供する発明である。
【0080】
本使用方法において用いるバイオセンサは、上述したように、SPRセンサにおける検出に用いるのが好適であるが、これのみに限定されず、核酸とその相補鎖の組における結合対の形成により、チップ表面に生ずる何らかの変化を検出することが可能なセンサであれば、表面プラズモン共鳴以外に、放射能、接触角、沈降、紫外分光、蛍光、化学発光、電気化学発光等に基づく標識を検出可能な、いかなる範疇のセンサにおいても用いることができる。また、核酸試料も特に限定されず、生体試料から抽出した核酸、生体細胞、血液検体、リンパ液、滑液、唾液、尿等を、必要に応じて用いることができる。
【0081】
また、本使用方法において、核酸同士のハイブリダイズの検出を、電気化学発光源を用いることにより行うことが好適である。電気化学発光源としては、例えば、特に好適なものとして、ルテニウムビピリミジン錯体、ルテニウムソラーレン錯体等のルテニウム錯体等を挙げることができる。
【0082】
オリゴペプチド等の担持
ここまで、ブラシ状構造物を設けたチップ表面に、核酸を担持させる態様について説明したが、核酸に代えて、または、核酸と共に、ペプチド鎖、糖鎖、または、糖タンパク鎖のような、分子認識能が認められ得るオリゴ分子とすることも可能である。この場合も、本チップ表面の、前記ブラシ状構造物や、前記ブロックポリマーセグメント、さらには、マスキング剤により、非特異的な反応が抑制され、検出感度の飛躍的向上を見込むことができる。
【0083】
すなわち、本発明は、親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸、ペプチド鎖、糖鎖、および、糖タンパク鎖からなる群から選ばれる1種または2種以上の分子認識能を有する分子が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面を提供する発明である。
【0084】
なお、ペプチド鎖、糖鎖、糖タンパク鎖の、アミノ酸および/または単糖単位数は、概ね、2〜500単位が好適である。
【0085】
【実施例】以下に、本発明の実施例を記載するが、この実施例により、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
〔参考例〕 ブロックポリマー誘導体(1)等の製造
(1)アセタール−PEG−SH(Mn=5,000)の合成
アルゴン(Ar)置換下、室温のフラスコ中、に溶媒としてTHF60mlを入れ、これに開始剤3,3−diethoxy−1−propanol 1mmolとK−Naph(0.3168mol/l) 1mmolを攪拌しながら加え、メタル化を行った。充分攪拌後、EOを112.99mmol加え水冷しながら二日間攪拌し、重合を行った。
【0086】
二日間攪拌後、この溶液に再メタル化を目的としてK−Naph 0.5mmolとtriethylamine 4.5mmolを加えた。Ar置換下のナスフラスコ中にTHF溶媒10mlと停止剤として、methylsulfonyl chloride 3.5mmolを溶解させ、これに等圧滴下漏斗を用いてPEG重合溶液を滴下した。滴下後、ether再沈により回収し、その後、chloroformと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
【0087】
減圧乾燥されたpotassium o −ethyldithiocarbonate 0.44mmolにAr下で溶媒としてTHF 50mlとDMF3.6mlを加え攪拌した。この溶液を減圧乾燥させたacetal−PEG−MS 0.2gに加え、室温で4時間反応させた。反応後、chloroformと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ether再沈により精製、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
【0088】
更に、減圧乾燥させたacetal−PEG−dithiocarbonate 0.1gにAr下で溶媒としてTHF 10mlを加えた、ここにn−propylamineを1.4M THF溶液になるように加え、室温で3時間攪拌し反応させた。反応後、chloroformと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ether再沈により精製、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
【0089】
回収後、1H−NMRにより構造解析、GPC測定を行った。
(2)アセタール−PEG/PAMA(PEG=6,000, PAMA=10,000)の合成
Ar下の反応容器中に、反応溶媒としてテトラヒドロキシフラン(THF)を45ml、反応開始物質として3,3−ジエトキシ‐1−プロパノールを1mmol加え、等モル量のカリウムナフタレン(K−Naph)THF溶液を加えて開始物質をメタル化し、開始剤を調製した。続けてエチレンオキシド(EO)137mmolを液体窒素で冷却したシリンジを用いて加え、室温下で2日間攪拌し、重合を行なった。EO重合後、シリンジでGPC測定用のサンプルを少量抜き取り、2‐メタクリル酸ジメチルアミノエチル(AMA)31mmolをシリンジで素早く加え、水冷下で20分間反応させ、少量の酢酸を用いて反応を停止した。生成物は−20℃に冷却した2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(−10℃, 5000 rpm, 60min)により沈殿物を分離し、沈殿物はエバポレーターにより溶媒を除去した後、ベンゼン凍結乾燥を経て白色粉末として回収した。この回収したポリマー1gを蒸留水約100mlに溶解させ、塩酸を用いてpH5に調整し、凍結乾燥した。さらにこのポリマーをTHF約100mlに溶解させ、ポリマーの沈殿物を吸引ろ過で濾別し、THFで数回リンスした。濾別した沈殿物は蒸留水約100mlに溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9に調整した。その後、ベンゼンに溶解させ凍結乾燥を経て白色粉末を回収した。GPC,H−NMR測定により生成物の構造を確認した。
【0090】
〔製造例〕 本チップ等の製造
(1)まず、金表面のSPRセンサチップ(SIAキット:BIACORE社、以下、同様である)の、いわゆるピラニア洗浄を行った。洗浄液として、特級濃硫酸:特級過酸化水素水=3:1(容量比)とし、洗浄は、室温で1分間、洗浄液中にチップを浸漬することにより行った。次に、上記の参考例において製造した、Acetal−PEG−b−PAMA(PEG:MW6000、PAMA:MW10000)を、50mM リン酸Na緩衝液に溶解し、0.2mMになるように調整した。次に、チップを、このAcetal−PEG−b−PAMA 溶液に、4時間浸漬して、チップ表面におけるAcetal−PEG−b−PAMA の固定を行った。この固定化工程は、1回行った。なお、この固定化の工程終了後に、チップの洗浄を行ったが、固定化工程後の洗浄は、50mM NaOHで1回行い、次いで、50mM リン酸Na緩衝液で2回行った。
【0091】
このようにして、Acetal−PEG−b−PAMAを担持させたチップを得た。
次に、配列番号1で示されるプローブDNAを、DNA合成機で化学合成し、次いで、このプローブDNAの5’末端を、−SH化して、プローブDNA誘導体を調製した。
【0092】
配列番号1:5’−SH−TTTTTTTTTTGCCACCAGC−3’
また、同様に、配列番号2で示されるターゲットDNAを、DNA合成機で化学合成した。
【0093】
配列番号2:5’−GCTGGTGGC−3’
上記のプローブDNAを、TE(tris−EDTA)緩衝液で、10μMとなるように希釈して、このプローブDNAの希釈液を、チップの作用極に、15μl添加し、室温で1日静置して、プローブDNAのチップ表面における担持を行い、その後、チップ表面を、2×SSC(Saline−sodium citrate buffer:pH7.0)で洗浄した。
【0094】
このようにして、チップ表面に、ブラシ状構造物とプローブDNAが担持され、かつ、チップ表面が、ブロックポリマーのポリマーセグメントで被覆された、本チップ(実施例1)を得た。
実施例1のチップ表面を、SPRで解析したところ、チップ表面上に、0.2本/nm2程度の密度で、ブラシ状構造物と核酸分子が認められた。
【0095】
(2)金表面のSPRセンサチップ(SIAキット)の、いわゆるピラニア洗浄を行った。洗浄液として、特級濃硫酸:特級過酸化水素水=3:1(容量比)とし、洗浄は、室温で1分間、洗浄液中にチップを浸漬することにより行った。
【0096】
次に、上記の参考例において製造した、Acetal−PEG−SHを、1.0M NaCl含有の50mM PBSに溶解し、0.2mMになるように調整した。次に、チップを、このAcetal−PEG−SH溶液に、20分間浸漬して、チップ表面におけるAcetal−PEG−SHの固定を行った。この固定化工程を、計3回行った。なお、各固定化の工程終了後に、チップの洗浄を行ったが、各固定化工程後の洗浄は、1.0M NaCl含有50mM PBSで1回行い、次いで、50mM NaClで1回行い、次いで、1.0M NaOH含有50mM PBSで2回行った。
【0097】
このようにして、Acetal−PEG−SHを担持させたチップを得た。このチップ表面を、AFMで解析したところ、チップ表面上に、0.3本/nm2程度の密度で、ブラシ状構造物が認められた。
【0098】
次に、上記の配列番号1で示されるプローブDNAを、DNA合成機で化学合成し、次いで、このプローブDNAの5’末端を、−SH化して、プローブDNA誘導体を調製した。
【0099】
上記のプローブDNAを、TE(tris−EDTA)緩衝液で、10μMとなるように希釈して、このプローブDNAの希釈液を、チップの作用極に、15μl添加し、室温で1日静置して、プローブDNAのチップ表面における担持を行い、その後、チップ表面を、2×SSC(Saline−sodium citrate buffer:pH7.0)で洗浄した。
【0100】
このようにして、チップ表面に、ブラシ状構造物とプローブDNAが担持された、本チップ(実施例2)を得た。
この実施例2のチップ表面を、AFMで解析したところ、チップ表面上に、0.3本/nm2程度の密度で、ブラシ状構造物が認められた。
【0101】
[試験例]ターゲットDNAのハイブリダイズテスト
(1)上述のようにして製造した実施例1の本チップの作用極に、滅菌超純水で希釈したターゲットDNA(10μM溶液)を、15μl添加し、室温下で、ハイブリダイゼーションを2時間静置して行った。ハイブリダイゼーション終了後、チップの作用極を、2×SSCと、50mMPBS(1.0M NaCl)で、1回ずつ洗浄した。
【0102】
このターゲットDNAとのハイブリダイズを行った、ハイブリダイズチップと、対照として、ハイブリダイズを行っていない実施例1のチップの作用極に対して、ルテニウムビピリジン錯体(以下、Ru錯体ともいう)溶液(2μM)を添加し、室温で10分間静置した。その後、各表面から、Ru錯体を除去し、HEPESbuffer(pH7.4)で1回洗浄後、電子供給物質であるn−tripropylamine(TPA)100mMでリンスし、紫外線(350nm)を10分間照射し、Ru錯体の発光強度の測定を、ルテニウムキレート型電気化学発光装置(松下電器産業における注文生産品)を用いて行った。
【0103】
その結果を、第1図に示す(縦軸に、Ru錯体の発光強度を示す。ssDNAとあるのは、対照の結果を示し、dsDNAとあるのは、実施例1のチップについての結果を示す)。この図により、実施例1のチップの発光強度が、対照よりも明らかに(約4.3倍)強いことが示された。Ru錯体は、2本鎖DNAに特異的に取り込まれる金属錯体であるので、この結果は、本チップ表面が、著しく、核酸のハイブリダイズに際しての非特異的な反応を抑制し得ることを示している。
【0104】
(2)金表面、実施例1のチップ表面(Δθ=0.18°)、実施例2のチップ表面(Δθ=0.19°)上に、プローブDNAを接触させて(DNA溶液濃度:10μM、温度:25℃、接触時間:60分)、このプローブDNAの、チップ表面における固定化を行い、このときの固定化量を、SPRを用いて検討した。
その結果を、第2図に示す。第2図の結果から、プローブDNAの固定化量は、実施例1のブロックポリマーを担持させたタイプが、最も多かった。
【0105】
(3)次に、実施例1と実施例2のチップに、連続的(3分間)にDNA溶液(ターゲットDNA:配列番号2と、ミスマッチDNA:配列番号3)を流した際の、SPR角度変化について検討した。その結果を、第3図に示す。第3図(1)は、実施例1のチップについての結果を示し、(2)は、実施例2のチップについての結果を示す。この結果から、実施例1のチップも、実施例2のチップも、3分間という短時間にもかかわらず、ターゲットDNAとミスマッチDNAとの間で、明確なΔθの差異が認められた。また、実施例1のチップでは、乖離状態(DNA溶液をやめた後の状態)においても、ターゲットDNAとミスマッチDNAとの間で、Δθの差異が認められた(乖離後は、ターゲットDNAの方が脱離が遅い)。
【0106】
ミスマッチDNA:5‘−GCCACCAGC−3’(配列番号3)
(4)実施例1のチップ表面において、ターゲットDNA溶液を流す時間を変えることによって、DNAハイブリダイゼーション量を調節することができた。すなわち、3分間または60分間、DNA溶液を流した後に、ランニングバッファーを3分間流した際の、SPRの変化量を測定すると、3分間では、
21×10−4(°)であったのに対し、60分間では、364×10−4(°)であった。
【0107】
【発明の効果】
本発明により、DNA等の核酸検出用センサの検出感度を向上させることを目的とした、核酸検出用チップが提供される。
【0108】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】Ru錯体の発光強度を指標として、実施例のチップの、核酸のハイブリダイズ反応における、非特異的な反応の抑制について示した図面である。
【図2】各表面における、プローブDNAの固定化量を検討した図面である。
【図3】DNAハイブリダイゼーションの、SPRによる計測値の変化について、経時的に検討した図面である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオセンサにおいて用い得る、センサチップに関する発明であり、特に、核酸検出用のセンサチップに関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
バイオセンサは、例えば、生物学的な試料を検体とした、特定の被検物質の検出に適しており、現在、様々なバイオセンサが提案されている。バイオセンサの典型的な態様として、センサチップ表面に担持された核酸におけるハイブリダイズ等を検出するための、核酸検出用センサが挙げられる。
【0003】
核酸検出用センサとしても好適に用い得る、主要なバイオセンサの一つとして、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用するバイオセンサ(以下、SPRセンサともいう)が提供されている。このSPRセンサは、プリズムの底面に金や銀等の金属薄膜を形成し、金属薄膜の裏面からレーザーなどの光を、入射角度を変えながら入射して、その反射光を測定し、金属表面プラズモンと共鳴して吸収される、特定入射角度の光を指標として、当該金属表面で起きている、核酸のハイブリダイゼーション等の反応を検出することが可能なバイオセンサであり、金属薄膜の表面およびその近傍における屈折率の変化に対して鋭敏であることが知られている(例えば、A.Szabo et al.,Curr.Opin.Strnct.Biol.5(1995)699−705)。
【0004】
特に、近年、遺伝子の解読が進み、1塩基置換変異等の、核酸の微妙な変異を感度良く検出することが要求されており、非特異的な反応が抑制され、簡便、かつ、鋭敏に、所望する核酸の変異を検出可能な核酸検出用センサの提供が待ち望まれている。
【0005】
後述する本発明に関連する先行文献として、例えば、以下に掲げる文献が挙げられる。
1.特開平7−316285号公報(特許文献1)
特許文献1には、SPRセンサのチップの表面において用い得る、ポリアルキレンオキシド誘導体の製造方法が記載されているが、この文献自体には、ポリアルキレンオキシド誘導体のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。
【0006】
2.特開平11−322916号公報(特許文献2)
特許文献2には、SPRセンサの表面において、さらに好適に用い得る、ビオチン残基をω末端に有する、ポリオキシエチレン誘導体について開示されているが、この文献自体には、このヘテロポリオキシエチレン誘導体のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。
【0007】
3.特開2001−200050号公報(特許文献3)
特許文献3には、ポリエチレングリコール誘導体が担持された、金等の金属微粒子が、分散性が良好である旨等が記載されているが、この文献自体には、この金属微粒子のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。
【0008】
4.特開2002−80903号公報(特許文献4)
特許文献4には、ポリエチレングリコールをブロックとして有し、かつ、特定のメタクリル酸ポリマーを他のブロックとして有する、ブロックポリマー誘導体が担持された、金等の金属微粒子について開示されているが、この文献自体には、この金属微粒子のバイオセンサへの応用に関する開示はなされていない。なお、この特許文献4のブロックポリマーは、本発明においても用い得るブロックポリマーである。
【0009】
5.特許第2815120号公報(特許文献5)
特許文献5には、HS−R−Y(Rは、炭素原子数が10を超える、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素基であり、Yは、リガンド又は生適合性多孔質マトリックスを共有結合させるための活性基である)で表される有機分子を用いて、そのチオール基を介して、金、銀等の自由金属の膜表面へ結合させて、この有機分子が密に詰め込まれた単層を設け、次いで、生適合性多孔質マトリックスとして、アガロース、デキストラン、ポリエチレングリコール等からなるヒドロゲルを共有結合した表面が記載されている。
【0010】
6.特許第3071823号公報(特許文献6)
特許文献6には、保持材上へ、チオール基の硫黄原子を介して結合したスペーサー分子に、親水性リンカー部とビオチン誘導体残基等の固相反応物質が順に共有結合した表面が記載されている。
【0011】
7.特開2001−178442号公報(特許文献7)
特許文献7には、末端部にチオール基を有するDNA断片と、当該チオール基と反応して共有結合を形成し得る反応性置換基を有する鎖状分子が、一方の末端で表面に固定された固相担体とを液相にて接触させることにより、当該DNA断片と鎖状分子との間で共有結合を形成させることを特徴とするDNA断片の固相担体表面への固定方法、が記載されている。
【0012】
8.「Roberts et al.,J.Am.Chem Soc.1998,120,6548−6555」(非特許文献1)非特許文献1には、HS−スペーサー分子−親水性リンカーをベースとする化合物を用い、チオール基を介して、金表面に自己集積した単層が記載されている。また、親水性リンカー部が、エチレンオキシド単位3個の化合物と、エチレンオキシド単位6個の化合物との混合物から形成された表面は、細胞のリガンド特異的結合を促進するが、付着した細胞による蛋白質の堆積を低減することも教示されている。
【0013】
9.「Pavey et al.,Biomaterials 20(1999)885−890(非特許文献2)
非特許文献2には、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドのトリブロックポリマーの様々な2種の組み合わせ物を、SPRの検出用金属薄膜上に付着させた表面が記載されている。また、当該表面においては、溶液中に、ポリエチレンオキシド鎖が伸長し、ブラシ様構造物(brush−like architecture)を形成し得ることが示唆されている。
【0014】
【特許文献1】
特開平7−316285号公報
【特許文献2】
特開平11−322916号公報
【特許文献3】
特開2001−200050号公報
【特許文献4】
特開2002−80903号公報
【特許文献5】
特許第2815120号公報
【特許文献6】
特許第3071823号公報
【特許文献7】
特開2001−178442号公報
【非特許文献1】
Roberts et al.,J.Am.Chem Soc.1998,120,6548−6555
【非特許文献2】
Pavey et al.,Biomaterials 20(1999)885−890
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、核酸検出用のセンサ等のバイオセンサにおいて用いるチップにおける共通の課題の一つとして、バイオセンサの検出感度の向上が挙げられる。
【0016】
例えば、上記の従来技術のうち、バイオセンサにおいて用いるチップと直接関係がある技術(特許文献5,6、非特許文献1,2)は、すべて、チップ表面における非特異的な反応を可能な限り抑制して、バイオセンサの検出感度の向上を目的とするものである。
【0017】
また、本発明者の一部は、上記の非特異的な反応を抑制することを目的として、SPRセンサチップの表面に、鎖長の異なるポリエチレンオキシド誘導体のブラシ状構造物を担持することによって、検出感度が向上することを見いだし、特許出願を行った(特願2002−65298号)。さらに、ポリエチレンオキシド誘導体で処理した金属微粒子を、SPRセンサチップの表面に担持することによっても、検出感度が向上することを見いだし、特許出願を行った(特願2002−101134号)。
【0018】
このように、バイオセンサの検出感度を向上させることを目的とした、センサチップに関する検討は、バイオセンサの検出感度の、さらなる向上を目指してなされており、依然として、この課題が、バイオセンサの分野においては重要である。
【0019】
本発明が解決すべき課題は、バイオセンサの中でも、特に、DNA等の核酸検出用センサの検出感度を向上させることを目的とした、核酸検出用チップにおける手段を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この課題を解決するために、さらに、非特異的な反応が抑制され得る、核酸検出用のセンサチップの表面構造について検討を行った。その結果、センサチップの表面に、親水性ポリマーのブラシ状構造を設けて、核酸を、このブラシ状構造の間に担持させることによって、チップ表面において核酸をハイブリダイズさせる際の、非特異的な反応が、著しく抑制されることを見いだし、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明は、親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面(以下、本チップ表面ともいう)、本チップ表面を有するセンサチップ(以下、本チップともいう)、および、本チップの使用方法(以下、本使用方法ともいう)、を提供する発明である。
【0022】
なお、上述した特許文献7には、本発明のように、親水性ポリマーのブラシ状構造物を設けたチップ表面への核酸分子の担持については、記載も示唆もなされていない。
【0023】
【発明の実施の形態】
本チップは、表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサ(SPRセンサ)における検出に用いるのが好適であるが、これに限定されるものではなく、核酸とその相補鎖の組における結合対の形成により、チップ表面に生ずる何らかの変化を検出することが可能なセンサであれば、いかなる範疇のセンサにおいても用いることができる。検出対象となる変化としては、上記の表面プラズモン共鳴以外に、放射能、接触角、沈降、紫外分光、蛍光、化学発光、電気化学発光等を挙げることができる。
【0024】
ブラシ状構造物
本チップ表面に担持され得るブラシ状構造物として用いる親水性ポリマーは、具体的には、式(1)
【0025】
A−L−P−B (1)
[式中、Aは、本チップ表面の支持体に配位可能な官能基であり、Lは、2価の基または原子価結合であり、Pは、親水性ポリマーセグメントであり、Bは、1価の基である]
で表される、親水性ポリマー誘導体として,官能基Aの本チップ表面の支持体に対する配位を行い、本チップ表面に担持することにより、所望するブラシ状構造物とすることができる。
【0026】
官能基Aとしては、具体的には、例えば、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルフィド基、または、式(2)
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、R1、R2およびR3は、同一であっても異なってもよく、炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す]で表される基を挙げることができる。
これらの基のうち、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、または、スルフィド基は、本チップ表面の支持体の素材が、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であることが好適である。また、式(2)で表される基は、同素材が、ガラス;CdS、ZuS等の半導体;グラファイト等のカーボン;酸化チタン、Al2O3等の金属酸化物であることが好適である。
【0029】
なお、本チップ表面の素材、すなわち、本チップ表面の支持体の素材は、本チップの基板の素材と同一(すなわち、基板自体が、本チップ表面を形成する)とすることも可能であり、基板の表面に、金属等の薄膜を形成して、この金属等を支持体とすることも可能である。
【0030】
親水性ポリマーセグメントPとしては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等を例示することができるが、ポリアルキレンオキシドが好適である。
【0031】
特に、ポリアルキレンオキシドが、炭素原子数が2〜4のアルキレンオキシド、すなわち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、または、ブチレンオキシドをモノマー単位とする、ポリアルキレンオキシドであることが、好適である。また、ポリアルキレンオキシドにおける、アルキレンオキシド単位の重合度は、2〜10000が好適であり、特に好適には、10〜3000である。
【0032】
1価の基Bは、ブラシ状構造物の先端に相当する、親水性ポリマーセグメントPの末端を構成し得る基であることが好適である。具体的には、水素原子、炭素原子数が1〜6のアルキル基、水酸基、アセタール基等を例示することができる。
【0033】
また、Lがとり得る2価の基としては、例えば、炭素原子数が1〜12,好適には1〜3のアルキレン基、さらに、基(3)
【0034】
【化4】
【0035】
[式中、L1は、−COO−、−O−、−S−等の2価基を表し、pは、1〜12、好適には、1〜3である]
等を挙げることができる。
【0036】
親水性ポリマー誘導体(1)は、その具体的な構造に応じて、すでに公知の手段で製造することができる。例えば、親水性ポリマーセグメントPが、ポリアルキレンオキシドの場合には、特開平7−316285号公報(特許文献1)等に記載の方法と条件に従い、または、改変して製造することができる。
【0037】
ここに、このブロックポリマー誘導体(1)として、アセタール−PEG−SHの製造工程の一例を開示する。なお、この製造工程において、rは正の整数を意味する。
【0038】
【化5】
【0039】
チップ表面に、上記の親水性ポリマーセグメントPに相当するブラシ状構造物を構築する際に、親水性ポリマー誘導体(1)の官能基Aが、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、または、スルフィド基である場合は、適切な緩衝化した水溶液に、ブロックポリマー誘導体(1)を溶解し、このポリマー溶液を、適温、例えば、20〜37℃程度で、浸漬等により、チップの支持体(金、銀、銅、アルミニウム等の金属)表面に接触させた状態で、数10分〜数時間のインキュベートを行うことにより、所望するブラシ状構造物が設けられたチップ表面を製造することができる。このポリマー溶液における、ブロックポリマー誘導体(1)の濃度は、用いるブロックポリマーの分子量により異なるが、通常、溶液の0.1〜5mg/ml、好適には1mg/ml程度である。
【0040】
また、官能基Aが、基(2)である場合には、ブロックポリマー誘導体(1)を好適には無水の有機溶媒(例えば、トルエン等のポリマー易溶性有機溶媒)に溶解した溶液を用い、チップの支持体(ガラス、半導体、セラミック、カーボン、金属酸化物)の表面へのポリマーの結合または付着処理を行い、溶媒を留去した後、表面に対して未反応のポリマーを、当該有機溶媒で洗浄除去することの他は、上記の官能基Aがメルカプト基等の場合と同様に処理することにより、所望するブラシ状構造物が設けられたチップ表面を製造することができる。
【0041】
ブロックポリマー誘導体
本発明の好適な態様として、チップ表面上のブラシ状構造物を構成する親水性ポリマーが、下記の特徴(a)および(b)を有するブロックポリマー(4)の第1のブロックを構成する親水性ポリマーセグメントであり、かつ、第2のブロックを構成するポリマーセグメントの、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基を介して、下記のブロックポリマーがセンサチップ表面に固定されている態様を挙げることができる。
【0042】
(a)上記の親水性ポリマーセグメントを第1のブロックとする。
(b)センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基を有するモノマーをモノマー単位とする、重合度が1〜200のポリマーセグメントを第2のブロックとする。
【0043】
第1のブロックにおける親水性ポリマーセグメントは、上述した親水性ポリマーセグメントPと同一である。
また、第2のブロックにおけるポリマーセグメントにおける、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基としては、例えば、メルカプト基、ジチオール基、スルフィド基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基、または、炭素原子数が1〜5のトリアルキルシリル基等を挙げることができる。これらの官能基を有するモノマー単位としては、例えば、メタクリル酸(2−ジエチルアミノエチル)、メタクリル酸(2−ジメチルアミノエチル)、ポリシステイン、ポリリジン、ポリグルタミン、メタクリル酸(3−トリメトキシシリルプロピル)等を挙げることができる。これらのモノマー単位を、常法に従い、重合反応を、当該ブロックポリマー誘導体(4)の製造工程において行うことにより、所望する官能基を有する第2のブロックを形成することができる。
【0044】
さらに、第2のブロックの好適な態様の一つとして、式(5)
【0045】
【化6】
【0046】
[式中、mは1〜10の整数、nは1〜100の整数を表し、R4およびR5は、互いに独立して、炭素原子数が1〜5のアルキル基、アミノ基、メルカプト基、または、スルフィド基を表す]で表される、メタクリル酸ポリマーのセグメントを挙げることができる。
【0047】
このメタクリル酸ポリマー(5)を第2のブロックとする、ブロックポリマー誘導体(4)の製造工程については、特開2002−80903号公報(特許文献4)において詳細に開示されており、これに従い、所望するメタクリル酸ポリマー(5)を第2のブロックとする、ブロックポリマー誘導体(6)を製造することができる。
【0048】
すなわち、例えば、式
A−L−P−OH (7)
[式中のA、L、Pの定義は、それぞれ、親水性ポリマー誘導体(1)における定義と同一である]
の化合物(7)[この化合物(7)の製造方法自体も、公知である(例えば、特開平7−316285号公報:特許文献1、特開平11−322916号公報:特許文献2、特開2001−200050号公報:特許文献3等を参照のこと)]に対して、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルを、所望する重合度になるように、重合反応することにより、ブロックポリマー誘導体(6)を得ることができる。
【0049】
ここに、このブロックポリマー誘導体(6)として、アセタール−PEG/PAMAの製造工程の一例を開示する。なお、この製造工程において、sおよびtは、それぞれ正の整数を意味する。
【0050】
【化7】
【0051】
上述のようにして得られるブロックポリマー誘導体(4)または(6)を、第1のブロックをブラシ状構造物となるように担持する際には、上述した親水性ポリマー誘導体(1)についての担持工程と実質的には同一の担持工程を行うことができる。
【0052】
まず、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を担持させる、本チップ表面の素材、すなわち、本チップ表面の支持体の素材は、本チップの基板の素材と同一とすることも可能であり、基板の表面に、金属等の薄膜を形成して、この金属等を支持体とすることも可能である。なお、支持体として用い得る素材として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の金属とすることができる。また、ガラス;CdS、ZnS等の半導体;グラファイト等のカーボン;酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;酸化イリジウムスズ等の合金酸化物;とすることができる。
【0053】
これらの本チップ表面の支持体の素材に応じて、適切な官能基を有するブロックP2をセグメントとするブロックポリマー誘導体(4)または(6)を選択して用いることが好ましい。すなわち、各本チップ表面の支持体の素材に配位可能な官能基を有する第2のブロックをセグメントとするブロックポリマー誘導体(5)または(7)を用いることで、容易に、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)をチップ表面上に固定することができる。
【0054】
例えば、上記の官能基が、アミノ基、または、メルカプト基である場合には、本チップ表面の支持体の素材は、金、銀、銅、アルミニウム等の金属;CdS、ZnS等の半導体;酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;であることが好適である。また、同官能基が、シラノール基である場合には、チップの支持体の素材は、ガラス、シリコーン、酸化チタンであることが好適である。また、同官能基が、カルボキシル基である場合には、チップの支持体の素材は、カーボンが好適である。
【0055】
所望するチップ表面を製造する際には、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を含有する溶液の中に、チップを浸漬させて、接触させることにより、第2のブロックの、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基がチップ表面に結合して、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を、チップ表面に固定することができる。その結果、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)の第1のブロック側がブラシ状に起立した、本チップ表面を製造することができる。
【0056】
すなわち、適切な緩衝化した水溶液に、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を溶解し、このポリマー溶液を、適温、例えば、20〜37℃程度で、浸漬等により、チップの支持体表面に接触させた状態で、数10分〜数時間のインキュベートを行うことにより、本チップ表面を製造することができる。このポリマー溶液における、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)の濃度は、用いるブロックポリマーの分子量により異なるが、通常、溶液の0.1〜5mg/ml、好適には1mg/ml程度である。
【0057】
核酸の担持
本チップ表面は、上述のようにして、ブラシ状構造物を担持したチップ表面上に、さらに、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されていることが必要である。
【0058】
この核酸の担持工程においては、核酸を、チップ表面上に固定可能な核酸誘導体を調製することが前提となる。
まず、本チップ表面において担持する核酸は、特に限定されず、DNAであっても、RNAであってもよく、また、1本鎖であっても、2本鎖であってもよいが、1本鎖のDNAであることが好適である。また、核酸は、直鎖状であっても、特定の構造(例えば、ヘアピン構造やループ構造)を有していてもよいが、直鎖状であることが好適である。さらに、鎖長は、特に限定されないが、好適には、
5〜200000塩基対程度、さらに好適には、10〜20000塩基対程度である。
【0059】
核酸としては、所望する塩基配列を有する核酸を、例えば、特定の生物の遺伝子DNAやcDNAから、PCR法等の遺伝子増幅法による増幅産物を用いることも可能である。また、核酸の塩基配列が完全に既知であり、かつ、比較的短い場合には、所望する塩基配列の核酸を、ホスファイト トリエステル法等の化学合成法によって合成することも可能であり、核酸合成機を用いて合成することも可能である。
【0060】
このように入手した核酸の一方の末端、例えば、5’末端のリン酸基や、3’末端の水酸基を利用して、チップ表面の支持体の素材、および/または、担持したブロックポリマー誘導体(4)(6)の第2のブロックを構成するポリマーセグメントに対して、配位可能な官能基、例えば、メルカプト基、ジチオール基、ジスルフィド基、スルフィド基、アミノ基、シラノール基、カルボキシル基等を導入して付加することにより、所望する核酸誘導体(8)を合成することが可能である。
【0061】
また、同じく核酸の一方の末端に、常法により、ビオチニル基を導入して付加することによっても、所望する核酸誘導体(8)を合成することも可能である。なお、この場合は、チップ表面、および/または、担持したブロックポリマー誘導体(4)(6)の第2のブロックを構成するポリマーセグメントに、アビジニル基が導入して付加されていることが、核酸を、アビジン−ビオチン結合により、チップ表面に結合させるために必要である。このアビジニル基とビオチニル基の核酸の末端またはチップ表面若しくはポリマーセグメントへの導入は、常法により行うことができる。
【0062】
また、プローブとなる塩基配列を有する核酸の末端に、直接的に上記の官能基(ビオチニル基を含む)を導入して付加すること(直接的な官能基の付加)も可能であるが、核酸の実質的にプローブとする部分と、上記の官能基の間に、リンカーDNAや、スペーサー分子を設けて固定すること(間接的な官能基の付加)が好適である。
【0063】
通常、リンカーDNAとしては、オリゴdTやオリゴdA等を好適に用いることができる(通常は、3〜100塩基程度のオリゴヌクレオチド)。また、スペーサー分子としては、炭素原子数が2〜100程度の直鎖状アルキル基、オリゴエチレングリコール等を挙げることができる。
【0064】
かかる核酸誘導体(8)の合成法としては、常法を用いることができる。また核酸誘導体(8)の市販品を用いることもできる。
ブラシ状構造物が設けられたチップ表面への、核酸誘導体(8)の担持は、例えば、当該チップ表面に、核酸誘導体(8)を含有する適切な緩衝液を接触させて、当該緩衝液を乾燥させないようにして、適切な条件下で放置することにより、容易に行うことができる。すなわち、核酸誘導体(8)の官能基を介して、チップ表面に直接的に固定する、および/または、ブロックポリマーの第2のブロックを介して間接的に固定することができる。
【0065】
担持工程の順番
上述した、本チップ表面の製造工程においては、ブラシ状構造物の担持工程の後に、核酸の担持工程を行っているが、これとは逆に、核酸の担持工程の後に、ブラシ状構造物の担持工程を行うこともできる。ただし、ブラシ状構造物の担持工程の後に、核酸の担持工程を行う方が、一般的には好適である。
【0066】
担持密度の調整
なお、親水性ポリマー誘導体(1)を含有するポリマー溶液を用いて、ブラシ状構造物をチップ表面上に構築する場合は、当該溶液中の親水性ポリマー誘導体(1)の濃度を調整することにより、チップ上のブラシ状構造物の担持密度を調整することが可能である。
【0067】
また、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)を含有するポリマー溶液を用いて、ブラシ状構造物をチップ表面上に構築する場合は、当該溶液中のブロックポリマー誘導体(4)または(6)の濃度を調整することにより、チップ上のブラシ状構造物の担持密度を調整することが可能である。
【0068】
すなわち、これらのポリマー溶液における親水性ポリマー誘導体(1)、あるいは、ブロックポリマー誘導体(4)または(6)の濃度が高ければ、本チップ表面上のブラシ状構造物の担持密度が高くなり、逆に前記濃度が低ければ、同担持密度は低くなる。本チップ表面においては、ブラシ状構造物が、0.001〜1分子/nm2の密度で担持されていることが好適である。この担持密度が、0.001分子/nm2未満であると、目的とする非特異的反応を十分に抑制することが困難な傾向があり、10分子/nm2を超えると、親水性ポリマー誘導体(1)がチップ状で多層化して、検出感度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0069】
また、本チップ表面におけるブラシ状構造物の嵩高は、すべて、実質的に同一であってもよいし、異なってもよい。
次いで、本チップ表面上における、核酸の担持密度は、核酸を担持させるために、チップ表面に接触させる核酸誘導体(8)溶液の濃度に依存する。
【0070】
すなわち、当該核酸誘導体溶液における核酸誘導体(8)の濃度が高ければ、本チップ表面上のブラシ状構造物の担持密度が高くなり、逆に前記濃度が低ければ、同担持密度は低くなる。本チップ表面においては、核酸が、0.001〜1分子/nm2の密度で担持されていることが好適である。この担持密度が、0.001分子/nm2未満であると、目的とする非特異的反応を十分に抑制することが困難な傾向があり、1分子/nm2を超えると、親水性ポリマー誘導体(1)がチップ状で多層化して、検出感度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0071】
なお、上述したブラシ状構造物と核酸のチップ表面における密度は、原子間力顕微鏡(AFM)により確認することが可能であり、さらに、SPR等により確認することも可能である。
【0072】
マスキング処理
上記のようにして提供される、本チップ表面に、さらにマスキング処理を行うことにより、さらに非特異的な反応を抑制することができる。
【0073】
このマスキング処理は、上述のようにして得られる本チップ表面に、マスキング剤を接触させて、当該マスキング剤を本チップ表面上に固定化することにより行われる。
【0074】
マスキング剤としては、式(9)
【0075】
【化8】
【0076】
[式中、qは、1〜200の整数であり、R6は、水酸基、炭素原子数が1〜6のアルキル基であり、R7は、水素原子、炭素原子数が1〜6のアルキル基、または、ピリジルチオ基である]
で表されるチオ化合物を挙げることができる。また、マスキング処理の好適な態様の一つとして、マスキング剤を2−メルカプトエタノールとする態様を挙げることができる。
【0077】
マスキング処理は、上述のようにして製造され得る本チップ表面を、マスキング剤の溶液と接触させることにより行うことができる。この場合のマスキング剤の溶液におけるマスキング剤の濃度は、マスキング剤の種類等によっても異なるが、概ね、0.001〜1000mM,好適には、0.1〜10mM程度である。また、マスキング処理の時間は、好適には、3分〜1日程度である。さらに、マスキング処理は、20〜37℃程度の温度下で行うことが好適である。
【0078】
このようにして、ブロックP2が平面固定され、かつ、ブロックP1が嵩高に起立し、ブラシ状構造物の主要部を構成している、ブロックポリマー誘導体(1)が担持された本チップ表面、および、本チップ表面を有する本チップが提供される。本チップ表面において、生物学的な結合反応を行うと、非特異的な反応を著しく抑制することが可能となり、本チップを用いたセンサによる検出感度を向上させることができる。
【0079】
本使用方法
上述のようにして提供される本チップは、バイオセンサにおける核酸検出を目的とするバイオチップである。すなわち、本発明は、本チップと、核酸試料を接触させて、本チップの固定化核酸とのハイブリダイズを検出する、本チップの使用方法(本使用方法)を提供する発明である。
【0080】
本使用方法において用いるバイオセンサは、上述したように、SPRセンサにおける検出に用いるのが好適であるが、これのみに限定されず、核酸とその相補鎖の組における結合対の形成により、チップ表面に生ずる何らかの変化を検出することが可能なセンサであれば、表面プラズモン共鳴以外に、放射能、接触角、沈降、紫外分光、蛍光、化学発光、電気化学発光等に基づく標識を検出可能な、いかなる範疇のセンサにおいても用いることができる。また、核酸試料も特に限定されず、生体試料から抽出した核酸、生体細胞、血液検体、リンパ液、滑液、唾液、尿等を、必要に応じて用いることができる。
【0081】
また、本使用方法において、核酸同士のハイブリダイズの検出を、電気化学発光源を用いることにより行うことが好適である。電気化学発光源としては、例えば、特に好適なものとして、ルテニウムビピリミジン錯体、ルテニウムソラーレン錯体等のルテニウム錯体等を挙げることができる。
【0082】
オリゴペプチド等の担持
ここまで、ブラシ状構造物を設けたチップ表面に、核酸を担持させる態様について説明したが、核酸に代えて、または、核酸と共に、ペプチド鎖、糖鎖、または、糖タンパク鎖のような、分子認識能が認められ得るオリゴ分子とすることも可能である。この場合も、本チップ表面の、前記ブラシ状構造物や、前記ブロックポリマーセグメント、さらには、マスキング剤により、非特異的な反応が抑制され、検出感度の飛躍的向上を見込むことができる。
【0083】
すなわち、本発明は、親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸、ペプチド鎖、糖鎖、および、糖タンパク鎖からなる群から選ばれる1種または2種以上の分子認識能を有する分子が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面を提供する発明である。
【0084】
なお、ペプチド鎖、糖鎖、糖タンパク鎖の、アミノ酸および/または単糖単位数は、概ね、2〜500単位が好適である。
【0085】
【実施例】以下に、本発明の実施例を記載するが、この実施例により、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
〔参考例〕 ブロックポリマー誘導体(1)等の製造
(1)アセタール−PEG−SH(Mn=5,000)の合成
アルゴン(Ar)置換下、室温のフラスコ中、に溶媒としてTHF60mlを入れ、これに開始剤3,3−diethoxy−1−propanol 1mmolとK−Naph(0.3168mol/l) 1mmolを攪拌しながら加え、メタル化を行った。充分攪拌後、EOを112.99mmol加え水冷しながら二日間攪拌し、重合を行った。
【0086】
二日間攪拌後、この溶液に再メタル化を目的としてK−Naph 0.5mmolとtriethylamine 4.5mmolを加えた。Ar置換下のナスフラスコ中にTHF溶媒10mlと停止剤として、methylsulfonyl chloride 3.5mmolを溶解させ、これに等圧滴下漏斗を用いてPEG重合溶液を滴下した。滴下後、ether再沈により回収し、その後、chloroformと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
【0087】
減圧乾燥されたpotassium o −ethyldithiocarbonate 0.44mmolにAr下で溶媒としてTHF 50mlとDMF3.6mlを加え攪拌した。この溶液を減圧乾燥させたacetal−PEG−MS 0.2gに加え、室温で4時間反応させた。反応後、chloroformと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ether再沈により精製、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
【0088】
更に、減圧乾燥させたacetal−PEG−dithiocarbonate 0.1gにAr下で溶媒としてTHF 10mlを加えた、ここにn−propylamineを1.4M THF溶液になるように加え、室温で3時間攪拌し反応させた。反応後、chloroformと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ether再沈により精製、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
【0089】
回収後、1H−NMRにより構造解析、GPC測定を行った。
(2)アセタール−PEG/PAMA(PEG=6,000, PAMA=10,000)の合成
Ar下の反応容器中に、反応溶媒としてテトラヒドロキシフラン(THF)を45ml、反応開始物質として3,3−ジエトキシ‐1−プロパノールを1mmol加え、等モル量のカリウムナフタレン(K−Naph)THF溶液を加えて開始物質をメタル化し、開始剤を調製した。続けてエチレンオキシド(EO)137mmolを液体窒素で冷却したシリンジを用いて加え、室温下で2日間攪拌し、重合を行なった。EO重合後、シリンジでGPC測定用のサンプルを少量抜き取り、2‐メタクリル酸ジメチルアミノエチル(AMA)31mmolをシリンジで素早く加え、水冷下で20分間反応させ、少量の酢酸を用いて反応を停止した。生成物は−20℃に冷却した2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(−10℃, 5000 rpm, 60min)により沈殿物を分離し、沈殿物はエバポレーターにより溶媒を除去した後、ベンゼン凍結乾燥を経て白色粉末として回収した。この回収したポリマー1gを蒸留水約100mlに溶解させ、塩酸を用いてpH5に調整し、凍結乾燥した。さらにこのポリマーをTHF約100mlに溶解させ、ポリマーの沈殿物を吸引ろ過で濾別し、THFで数回リンスした。濾別した沈殿物は蒸留水約100mlに溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9に調整した。その後、ベンゼンに溶解させ凍結乾燥を経て白色粉末を回収した。GPC,H−NMR測定により生成物の構造を確認した。
【0090】
〔製造例〕 本チップ等の製造
(1)まず、金表面のSPRセンサチップ(SIAキット:BIACORE社、以下、同様である)の、いわゆるピラニア洗浄を行った。洗浄液として、特級濃硫酸:特級過酸化水素水=3:1(容量比)とし、洗浄は、室温で1分間、洗浄液中にチップを浸漬することにより行った。次に、上記の参考例において製造した、Acetal−PEG−b−PAMA(PEG:MW6000、PAMA:MW10000)を、50mM リン酸Na緩衝液に溶解し、0.2mMになるように調整した。次に、チップを、このAcetal−PEG−b−PAMA 溶液に、4時間浸漬して、チップ表面におけるAcetal−PEG−b−PAMA の固定を行った。この固定化工程は、1回行った。なお、この固定化の工程終了後に、チップの洗浄を行ったが、固定化工程後の洗浄は、50mM NaOHで1回行い、次いで、50mM リン酸Na緩衝液で2回行った。
【0091】
このようにして、Acetal−PEG−b−PAMAを担持させたチップを得た。
次に、配列番号1で示されるプローブDNAを、DNA合成機で化学合成し、次いで、このプローブDNAの5’末端を、−SH化して、プローブDNA誘導体を調製した。
【0092】
配列番号1:5’−SH−TTTTTTTTTTGCCACCAGC−3’
また、同様に、配列番号2で示されるターゲットDNAを、DNA合成機で化学合成した。
【0093】
配列番号2:5’−GCTGGTGGC−3’
上記のプローブDNAを、TE(tris−EDTA)緩衝液で、10μMとなるように希釈して、このプローブDNAの希釈液を、チップの作用極に、15μl添加し、室温で1日静置して、プローブDNAのチップ表面における担持を行い、その後、チップ表面を、2×SSC(Saline−sodium citrate buffer:pH7.0)で洗浄した。
【0094】
このようにして、チップ表面に、ブラシ状構造物とプローブDNAが担持され、かつ、チップ表面が、ブロックポリマーのポリマーセグメントで被覆された、本チップ(実施例1)を得た。
実施例1のチップ表面を、SPRで解析したところ、チップ表面上に、0.2本/nm2程度の密度で、ブラシ状構造物と核酸分子が認められた。
【0095】
(2)金表面のSPRセンサチップ(SIAキット)の、いわゆるピラニア洗浄を行った。洗浄液として、特級濃硫酸:特級過酸化水素水=3:1(容量比)とし、洗浄は、室温で1分間、洗浄液中にチップを浸漬することにより行った。
【0096】
次に、上記の参考例において製造した、Acetal−PEG−SHを、1.0M NaCl含有の50mM PBSに溶解し、0.2mMになるように調整した。次に、チップを、このAcetal−PEG−SH溶液に、20分間浸漬して、チップ表面におけるAcetal−PEG−SHの固定を行った。この固定化工程を、計3回行った。なお、各固定化の工程終了後に、チップの洗浄を行ったが、各固定化工程後の洗浄は、1.0M NaCl含有50mM PBSで1回行い、次いで、50mM NaClで1回行い、次いで、1.0M NaOH含有50mM PBSで2回行った。
【0097】
このようにして、Acetal−PEG−SHを担持させたチップを得た。このチップ表面を、AFMで解析したところ、チップ表面上に、0.3本/nm2程度の密度で、ブラシ状構造物が認められた。
【0098】
次に、上記の配列番号1で示されるプローブDNAを、DNA合成機で化学合成し、次いで、このプローブDNAの5’末端を、−SH化して、プローブDNA誘導体を調製した。
【0099】
上記のプローブDNAを、TE(tris−EDTA)緩衝液で、10μMとなるように希釈して、このプローブDNAの希釈液を、チップの作用極に、15μl添加し、室温で1日静置して、プローブDNAのチップ表面における担持を行い、その後、チップ表面を、2×SSC(Saline−sodium citrate buffer:pH7.0)で洗浄した。
【0100】
このようにして、チップ表面に、ブラシ状構造物とプローブDNAが担持された、本チップ(実施例2)を得た。
この実施例2のチップ表面を、AFMで解析したところ、チップ表面上に、0.3本/nm2程度の密度で、ブラシ状構造物が認められた。
【0101】
[試験例]ターゲットDNAのハイブリダイズテスト
(1)上述のようにして製造した実施例1の本チップの作用極に、滅菌超純水で希釈したターゲットDNA(10μM溶液)を、15μl添加し、室温下で、ハイブリダイゼーションを2時間静置して行った。ハイブリダイゼーション終了後、チップの作用極を、2×SSCと、50mMPBS(1.0M NaCl)で、1回ずつ洗浄した。
【0102】
このターゲットDNAとのハイブリダイズを行った、ハイブリダイズチップと、対照として、ハイブリダイズを行っていない実施例1のチップの作用極に対して、ルテニウムビピリジン錯体(以下、Ru錯体ともいう)溶液(2μM)を添加し、室温で10分間静置した。その後、各表面から、Ru錯体を除去し、HEPESbuffer(pH7.4)で1回洗浄後、電子供給物質であるn−tripropylamine(TPA)100mMでリンスし、紫外線(350nm)を10分間照射し、Ru錯体の発光強度の測定を、ルテニウムキレート型電気化学発光装置(松下電器産業における注文生産品)を用いて行った。
【0103】
その結果を、第1図に示す(縦軸に、Ru錯体の発光強度を示す。ssDNAとあるのは、対照の結果を示し、dsDNAとあるのは、実施例1のチップについての結果を示す)。この図により、実施例1のチップの発光強度が、対照よりも明らかに(約4.3倍)強いことが示された。Ru錯体は、2本鎖DNAに特異的に取り込まれる金属錯体であるので、この結果は、本チップ表面が、著しく、核酸のハイブリダイズに際しての非特異的な反応を抑制し得ることを示している。
【0104】
(2)金表面、実施例1のチップ表面(Δθ=0.18°)、実施例2のチップ表面(Δθ=0.19°)上に、プローブDNAを接触させて(DNA溶液濃度:10μM、温度:25℃、接触時間:60分)、このプローブDNAの、チップ表面における固定化を行い、このときの固定化量を、SPRを用いて検討した。
その結果を、第2図に示す。第2図の結果から、プローブDNAの固定化量は、実施例1のブロックポリマーを担持させたタイプが、最も多かった。
【0105】
(3)次に、実施例1と実施例2のチップに、連続的(3分間)にDNA溶液(ターゲットDNA:配列番号2と、ミスマッチDNA:配列番号3)を流した際の、SPR角度変化について検討した。その結果を、第3図に示す。第3図(1)は、実施例1のチップについての結果を示し、(2)は、実施例2のチップについての結果を示す。この結果から、実施例1のチップも、実施例2のチップも、3分間という短時間にもかかわらず、ターゲットDNAとミスマッチDNAとの間で、明確なΔθの差異が認められた。また、実施例1のチップでは、乖離状態(DNA溶液をやめた後の状態)においても、ターゲットDNAとミスマッチDNAとの間で、Δθの差異が認められた(乖離後は、ターゲットDNAの方が脱離が遅い)。
【0106】
ミスマッチDNA:5‘−GCCACCAGC−3’(配列番号3)
(4)実施例1のチップ表面において、ターゲットDNA溶液を流す時間を変えることによって、DNAハイブリダイゼーション量を調節することができた。すなわち、3分間または60分間、DNA溶液を流した後に、ランニングバッファーを3分間流した際の、SPRの変化量を測定すると、3分間では、
21×10−4(°)であったのに対し、60分間では、364×10−4(°)であった。
【0107】
【発明の効果】
本発明により、DNA等の核酸検出用センサの検出感度を向上させることを目的とした、核酸検出用チップが提供される。
【0108】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】Ru錯体の発光強度を指標として、実施例のチップの、核酸のハイブリダイズ反応における、非特異的な反応の抑制について示した図面である。
【図2】各表面における、プローブDNAの固定化量を検討した図面である。
【図3】DNAハイブリダイゼーションの、SPRによる計測値の変化について、経時的に検討した図面である。
Claims (21)
- 親水性ポリマーが、チップ表面に起立した状態で固定されているセンサチップ表面において、当該親水性ポリマー同士のチップ表面上における隙間に、核酸が、チップ表面に対して起立した状態で、直接的または間接的に固定されている、核酸検出用チップ表面。
- 親水性ポリマーが、炭素原子数が2〜4のアルキレンオキシドをモノマー単位とする、重合度が2〜10000のポリアルキレンオキシドである、請求項1記載の核酸検出用チップ表面。
- アルキレンオキシドが、エチレンオキシドをモノマー単位とする、重合度が2〜10000のポリエチレンオキシドである、請求項2記載の核酸検出用チップ表面。
- 親水性ポリマーが、下記(a)および(b)の特徴を有するブロックポリマーの第1のブロックを構成する親水性ポリマーセグメントであり、かつ、第2のブロックを構成するポリマーセグメントの、センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基を介して、下記のブロックポリマーがセンサチップ表面に固定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸検出用チップ表面。(a)上記親水性ポリマーセグメントを第1のブロックとする。
(b)センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基を有するモノマーをモノマー単位とする、重合度が1〜200のポリマーセグメントを第2のブロックとする。 - センサチップ表面の支持体に配位能を有する官能基が、メルカプト基、ジチオール基、スルフィド基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基、または、炭素原子数が1〜5のトリアルキルシリル基である、請求項4記載の核酸検出用チップ表面。
- 核酸が、メルカプト基、ジチオール基、スルフィド基を介して、ブロックポリマーの他ブロックに結合することにより、チップ表面に担持されている、請求項4〜6のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- 親水性ポリマーおよび核酸が、0.01〜1分子/nm2の密度で担持されている、請求項1〜7のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- さらに、マスキング処理がなされている、請求項1〜8のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- マスキング処理に用いられるマスキング剤が、2−メルカプトエタノールである、請求項9記載の核酸検出用チップの表面。
- センサチップ表面の支持体が、金、銀、銅、および、アルミニウムからなる群から選ばれる素材で形成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- センサチップ表面の支持体が、ガラス、半導体、カーボン、金属酸化物、および、合金酸化物からなる群から選ばれる素材で形成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- 核酸が、1本鎖DNAである、請求項1〜13のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- 核酸の一方の末端に、直接的または間接的に付加されている、メルカプト基、スルフィド基、アミノ基、シラノール基、若しくは、カルボキシル基を介してセンサチップ表面に、当該核酸が結合している、請求項1〜14のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- 核酸の一方の末端にビオチニル基が、直接的または間接的に付加され、かつ、アビジニル基を介してなる、アビジン−ビオチン結合によって、当該核酸がセンサチップ表面に結合している、請求項1〜14のいずれかに記載の核酸検出用チップの表面。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の表面を有する核酸検出用チップ。
- 核酸検出用チップと、核酸試料を接触させて、当該センサチップの固定化核酸とのハイブリダイズを検出する、請求項17記載の核酸検出用チップの使用方法。
- 請求項18記載の核酸検出用チップの使用方法において、核酸同士のハイブリダイズの検出が、表面プラズモン共鳴を利用するセンサによって行われる、核酸検出用チップの使用方法。
- 請求項17〜19のいずれかに記載の核酸検出用チップの使用方法において、核酸同士のハイブリダイズの検出が、電気化学発光源を標識物質として用いることにより行われる、核酸検出用チップの使用方法。
- 電気化学発光源が、ルテニウム錯体である、請求項20記載の核酸検出用チップの使用方法。
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-
2003
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