JP2017019992A - 分子インプリントポリマーの製造方法、分子インプリントポリマー、および標的タンパク質の検出方法 - Google Patents

分子インプリントポリマーの製造方法、分子インプリントポリマー、および標的タンパク質の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、標的タンパク質に対する選択性と感度が極めて高い特異的認識空間を有する分子インプリントポリマーを製造するための方法、標的タンパク質に対する選択性と感度が極めて高い特異的認識空間を有する分子インプリントポリマー、当該分子インプリントポリマーを含むプラズモニックチップ、および、当該分子インプリントポリマーを用いて標的タンパク質を検出する方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係る分子インプリントポリマーは、標的タンパク質を構成する分子の反応性基を利用して、その特異的認識空間内にポストインプリンティング化合物と蛍光レポーター化合物がそれぞれ複数導入されているものであることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、標的タンパク質に対する選択性と感度が極めて高い特異的認識空間を有する分子インプリントポリマーを製造するための方法、標的タンパク質に対する選択性と感度が極めて高い特異的認識空間を有する分子インプリントポリマー、当該分子インプリントポリマーを含むプラズモニックチップ、および、当該分子インプリントポリマーを用いて標的タンパク質を検出する方法に関するものである。
生体内では、様々な情報伝達物質が細胞間における情報の伝達などを媒介し、生体の恒常性維持に寄与している。情報伝達物質としては、カルシウムイオンや一酸化窒素といった無機化合物やホルモンなどの低分子有機化合物の他、高分子化合物であるタンパク質もある。また、がんマーカーに代表されるように、ある特定の疾患の進行に伴って増加する生体因子が存在し、例えばそのような生体因子の血中濃度を測定し、特定の疾患の有無や進行度合いを診断することが行われている。さらに、感染症などにおいては、その病原因子に特異的な抗体が増加する。よって、生体試料におけるタンパク質などの生体内分子の有無や量を検出することは、非常に有用である。
生体内分子の主な検出法としてはELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)が挙げられる。ELISAは、検出すべき生体内分子に特異的な抗体を固定化し、試料を添加した後、抗体に結合した生体内分子に酵素標識した二次抗体を結合させ、抗体−標的生体内分子−酵素標識抗体の複合体を検出する方法である。その他、金微小電極を自己組織化単分子膜(SAM)で修飾し、その表面に抗コルチゾール抗体を結合させたセンサーが開発されている(非特許文献1,2)。何れにせよ、従来は、生体内分子の検出にあたり抗体や酵素を用いるのが主流であった。
しかし抗体や酵素には、その製造や単離に高コストがかかり、また、不安定であることから保存が難しく、製品化に難があるといった問題がある。
そこで、生体がもつ緻密な分子認識能を模倣した人工分子認識材料創製法である分子インプリンティング法(MI法)が注目を集めている。MI法は、検出すべき標的分子の存在下でモノマーを重合させ、得られたポリマーから標的分子を除去することにより、標的分子に特異的な認識空間を形成することを基本とする。また、かかる特異的認識空間の内部または近辺に蛍光レポーター化合物を導入し、特異的認識空間と標的分子との相互作用に伴う蛍光強度の変化により標的分子を検出する技術もある。
例えば特許文献1には、分子インプリントポリマー(MIP)膜の特異的認識空間内またはその付近にレポーター分子を結合させている。その製造方法として、標的分子と活性化レポーター分子との複合体と特異的認識空間とを相互作用させ、特異的認識空間またはその近辺にレポーター分子を結合させる方法が記載されている。しかし、蛍光化合物などのレポーター分子が特異的認識空間の内部に存在する場合と外部に存在する場合とでは、標的分子の検出感度が大きく異なる。
そこで本発明者らは、蛍光レポーター化合物をMIP膜の特異的認識空間の内部に結合させる技術を開発してきた。
例えば非特許文献3には、標的タンパク質であるリゾチームと相互作用する({[2−(2−メタクリルアミド)エチルジチオ]エチルカルバモイル}メトキシ)酢酸(MDTA)をモノマーの一つとして用い、リゾチームの存在下で共重合することにより特異的認識空間内にチオール基を導入し、当該チオール基を介して蛍光レポーター化合物を導入する技術が開示されている。
また、非特許文献4には、MIP膜の特異的認識空間外の反応性基を選択的にブロックした後、特異的認識空間内の反応性基に蛍光レポーター化合物を結合させる技術が開示されている。
さらに非特許文献5には、特異的認識空間内に蛍光分子を一つだけ導入する技術が開示されている。
また、本発明者らは、メタクリル酸など標的分子に特異的かつ可逆的に結合する分子と、ポルフィリン亜鉛錯体など標的分子と相互作用するものであって脱着または交換可能な分子を有する、シンコニジンなどの標的分子の分子認識ポリマーを開発している(特許文献2)。
また、通常の蛍光顕微鏡を用いて蛍光の変化を観察する場合、特に蛍光の変化により夾雑物の多い生体試料などを分析する場合には、より高感度な測定が必要とされる。そこで、表面プラズモン共鳴を利用して、蛍光を増強する技術が開発されている(特許文献3など)。
特開2007−520700号公報 国際公開第2005/108443号パンフレット 特開2008−286778号公報
Sunil K.Aryaら,Biosens Bioelectron,2010,25(10),pp.2296−2301 Cruz AFら,Biosens Bioelectron,2014,62,pp.249−254 Hirobumi Sunayama,Toshifumi Takeuchi,ACS Appl.Mater.Interfaces,2014,6,pp.20003−20009 Hirobumi Sunayama,Tooru Ooya,Toshifumi Takeuchi,Chem.Commun,2014,50,pp.1347−1349 Suga,Y.,Sunayama,H.,Ooya,T.,Takeuchi,T.,Chem.Commun,2013,49,pp.8450−8452
上述したように、MIP膜の特異的認識空間の内部に蛍光レポーター化合物を結合させる技術は開発されている。しかし、標的分子に対する選択性や感度をより一層向上させることが求められている。
そこで本発明は、標的タンパク質に対する選択性と感度が極めて高い特異的認識空間を有する分子インプリントポリマーを製造するための方法、標的タンパク質に対する選択性と感度が極めて高い特異的認識空間を有する分子インプリントポリマー、当該分子インプリントポリマーを含むプラズモニックチップ、および、当該分子インプリントポリマーを用いて標的タンパク質を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、標的タンパク質を構成するアミノ酸残基の反応性基を介して異なる切断性基を有する2種の機能性モノマーをそれぞれ複数結合させた上で、基材上で共重合することにより分子インプリントポリマーを作製した後、切断性基の切断により生じる2種の官能基の一方に、利用したアミノ酸残基の反応性基と相互作用する基を有するポストインプリンティング化合物を複数結合させれば、分子インプリントポリマーの特異的認識空間の標的タンパク質に対する選択性と親和性が顕著に向上することを見出した。また、切断性基の切断により生じる他方の官能基に複数の蛍光レポーター化合物を結合させ、特異的認識空間内のみに正確に導入することで、標的タンパク質の検出感度が顕著に高まることも見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
[1] 標的タンパク質に対する特異的認識空間を有する分子インプリントポリマーを製造するための方法であって、
上記標的タンパク質を構成する分子の反応性基(1)を介して、末端にビニルモノマー基を有し且つ末端以外の部分に切断性基(1)を有する機能性モノマー(I)を複数結合させる工程(ここで、上記切断性基(1)は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基を示す);
上記標的タンパク質を構成する分子の反応性基(2)を介して、末端にビニルモノマー基を有し且つ末端以外の部分に切断性基(2)を有する機能性モノマー(II)を複数結合させる工程(ここで、上記切断性基(2)は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基であって、上記切断性基(1)とは異なる基を示す);
基材上に自己組織化単分子膜を形成する工程;
上記自己組織化単分子膜の表面へ、上記標的タンパク質を結合させる工程;
ビニルモノマーを添加し、上記機能性モノマー(I)および上記機能性モノマー(II)のビニルモノマー基と共重合させる工程;
少なくとも上記切断性基(1)および切断性基(2)を切断することにより、上記標的タンパク質を除去する工程;
上記切断性基(1)を切断することにより生成する基に、上記反応性基(1)と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させるか、または、上記切断性基(2)を切断することにより生成する基に、上記反応性基(2)と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させる工程;および、
上記切断性基(1)を切断することにより生成する基または上記切断性基(2)を切断することにより生成する基であって、上記ポストインプリンティング化合物を結合させなかった基に、蛍光レポーター化合物を複数結合させる工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 上記反応性基(1)または反応性基(2)としてアミノ基を利用し、当該アミノ基に2−イミノチオランを反応させることによりチオール基を導入し、当該チオール基に上記機能性モノマー(I)または機能性モノマー(II)を結合させる上記[1]に記載の方法。
[3] 特異的認識空間に挿入される標的タンパク質を構成するアミノ酸残基の反応性基(1)または反応性基(2)と相互作用するポストインプリンティング化合物が特異的認識空間内に複数導入されており、且つ、
蛍光レポーター化合物が特異的認識空間内に複数導入されていることを特徴とする分子インプリントポリマー。
[4] ベース基板、表面プラズモン共鳴光を発生し得る金属からなる金属層、消光抑制層をこの順で含み、
上記ベース基板、金属層および消光抑制層の表面には複数の凹部からなる周期構造が形成されており、
上記周期構造上に、上記[3]に記載の分子インプリントポリマーが形成されていることを特徴とするプラズモニックチップ。
[5] 直径2mm以上、6mm以下の円形孔を通過可能な形状を有する上記[4]に記載のプラズモニックチップ。
[6] 試料中における上記標的タンパク質を検出する方法であって、
上記[3]に記載の分子インプリントポリマー、または上記[4]もしくは[5]に記載のプラズモニックチップの分子インプリントポリマーと、上記試料を接触させる工程、および、
上記分子インプリントポリマーと上記試料との接触による蛍光強度の変化を測定する工程を含むことを特徴とする方法。
本発明に係る分子インプリントポリマーは、標的タンパク質の高次構造に対応した形状の特異的認識空間を有するのみならず、当該特異的認識空間内には、標的タンパク質を構成する分子の反応性基に対応する位置に、この反応性基と相互作用可能なポストインプリンティング化合物が複数存在する。また、当該特異的認識空間内には、複数の蛍光レポーター化合物が導入されている。よって、本発明に係る分子インプリントポリマーは、従来の分子インプリントポリマーに比べて標的タンパク質に対する選択性と親和性が非常に高く、且つ標的タンパク質の検出感度が極めて高いという利点がある。
図1は、分子インプリント膜の特異的認識空間内において、標的タンパク質のリジン残基に対応する位置にカルボキシ基または水酸基を導入した場合における、表面プラズモン共鳴測定法による標的タンパク質の検出結果を示すグラフである。 図2は、架橋度を変更して作製した分子インプリント膜を用いた表面プラズモン共鳴測定法による標的タンパク質の検出結果を示すグラフである。 図3は、標的タンパク質に対する分子インプリント膜の選択性を試験するために、標的タンパク質であるα−フェトプロテイン(AFP)に加え、ヒト血清アルブミン(HSA)の表面プラズモン共鳴測定法による検出結果を示すグラフである。 図4は、本発明に係る分子インプリント膜を用いた水晶振動子マイクロバランス法による標的タンパク質の検出結果を示すグラフである。 図5は、標的タンパク質であるα−フェトプロテイン(AFP)、100倍希釈血清中のα−フェトプロテイン(AFP)、および対照タンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA)を、本発明に係る分子インプリント膜を用い、蛍光強度変化により検出した結果を示すグラフである。 図6は、特異的認識空間内において蛍光レポーター化合物の導入量を変更して作製した分子インプリント膜を用い、標的タンパク質を蛍光強度変化により検出した結果を示すグラフである。 図7は、標的タンパク質であるα−フェトプロテイン(AFP)、100倍希釈血清中のα−フェトプロテイン(AFP)、およびウシ血清アルブミンと共存するα−フェトプロテイン(AFP)を、本発明に係る分子インプリント膜を用い、蛍光強度変化により検出した結果を示すグラフである。 図8は、標的タンパク質に対する分子インプリント膜の選択性を試験するために、標的タンパク質であるα−フェトプロテイン(AFP)に加え、前立腺特異抗原(PSA)を蛍光強度変化により検出した結果を示すグラフである。 図9は、Agベースのプラズモニック基板の走査型プローブ顕微鏡による観察画像である。 図10は、プラズモニックチップによる蛍光増強効果を確認した実験の結果を示すグラフである。 図11は、蛍光化合物であるCy3.5を導入した分子インプリント膜を有するプラズモニックチップを用い、HSA濃度と蛍光強度の変化との関係を測定した実験の結果を示すグラフである。 図12は、蛍光化合物であるCy5を導入した分子インプリント膜を有するプラズモニックチップを用い、HSA濃度と蛍光強度の変化との関係を測定した実験の結果を示すグラフである。 図13は、蛍光化合物であるCy3.5とCy5を導入した分子インプリント膜を有するプラズモニックチップを用い、HSA濃度と蛍光強度の変化との関係を測定した実験の結果を示すグラフである。(1)はCy3−Cy5用蛍光フィルター用いた結果を示し、(2)はCy3用蛍光フィルターを用いた結果を示す。 図14は、ビオチン導入プラズモニックチップを用い、その周期構造内と周期構造外で蛍光を測定した結果である。 図15は、ビオチン導入プラズモニックチップを用い、その周期構造内と周期構造外で測定された蛍光強度を比較するためのグラフである。 図16は、本発明に係るプラズモニックチップを使用可能な小型自動分注・反応・計測装置の一例を示す写真である。 図17は、蛍光化合物であるAlexa647と消光剤であるBHQ−3を導入した分子インプリント膜を有するプラズモニックチップを用い、AFP濃度と蛍光強度の変化との関係を測定した実験の結果を示すグラフである。
以下、先ず、本発明に係る分子インプリントポリマーを製造する方法を説明する。但し、以下に示す例はあくまで代表例であって、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
1.分子インプリントポリマーの製造方法
(1−1) 標的タンパク質への機能性モノマー(I)の結合工程
本発明では、ジスルフィド基など選択的な切断が可能な切断性基を介して標的タンパク質にビニルモノマー基を導入したり、鋳型化合物である標的タンパク質を基材上に形成した自己組織化単分子膜に結合させる。本工程では、標的タンパク質を構成する分子の反応性基(1)を介して、末端にビニルモノマー基を有し且つ末端以外の部分に切断性基(1)を有する機能性モノマー(I)を複数結合させる。
本工程で利用する反応性基(1)を含む分子としては、標的タンパク質を構成するものであり且つ所定の反応性基を有する分子であれば特に制限されないが、例えば、アミノ酸残基や、糖鎖を構成する糖残基を挙げることができる。反応性基(1)としては、例えば、リシン残基やN末端のアミノ基;アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、C末端のカルボキシ基;システイン残基のチオール基;セリン残基、トレオニン残基、糖鎖の水酸基;チロシン残基のフェノール性水酸基などを挙げることができる。
反応性基(1)は、機能性モノマー(I)との反応の前に活性化しておいてもよい。例えば、カルボキシ基は、N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノールなどを用いて事前に活性エステル化しておいてもよい。
また、反応性基(1)に、上記反応性基を有するリンカーを反応させておいてもよい。即ち、本発明において「反応性基(1)を介して機能性モノマー(I)を結合させる」とは、反応性基(1)に、当該反応性基(1)との反応性を示し且つ機能性モノマー(I)中に存在する基を直接結合させてもよいし、リンカー基を介して反応性基(1)と当該基を結合させてもよいことを意味する。例えば、後記の実施例のように2−イミノチオランを用いれば、標的タンパク質のアミノ基と容易に反応し、チオール基を導入することができる。2−イミノチオランは、アミノ基の塩基性を損なわないので、標的タンパク質の変性を最小限に抑えることができる。この導入チオール基に、機能性モノマー(I)を結合させてもよい。
タンパク質を構成するアミノ酸残基は、タンパク質の高次構造の形成や維持に関与していることがある。また、本発明では、次工程において、反応性基(1)と同種の反応性基を介して機能性モノマー(II)を結合させることもある。よって、本工程において利用する反応性基(1)の量を調整する必要がある。具体的には、機能性モノマー(I)の使用量や、機能性モノマー(I)を導入するためのリンカー基導入試薬の使用量を調整したり、反応温度や反応時間などを調整することが好ましい。また、反応の前後において標的タンパク質の高次構造の維持を円偏光二色性スペクトル(CDスペクトル)で確認することが好ましい。さらに、機能性モノマー(I)の導入数や、機能性モノマー(I)を結合させるためのリンカー基導入試薬の導入数は、マススペクトルで確認することができる。
本工程で用いる機能性モノマー(I)は、反応性基(1)またはリンカー基を介して導入された反応性基とビニルモノマー基とが、切断性基(1)を有するリンカー基により結合されている構造を有する。
機能性モノマー(I)は、具体的には、例えば以下の構造を有する。
1−X1−Y1−Z1−Q1・・・ (I)
上記式中、W1はビニルモノマー基を示す。ビニルモノマー基は、分子インプリントポリマーを形成するための他のビニルモノマーと共重合が可能であるものであれば特に制限されないが、例えば、ビニル基、メチルビニル基(CH3−CH=CH−)、クロロビニル基(Cl−CH=CH−)、アクリル酸エステル基(CH2=CH−C(=O)−O−)、メタクリル酸エステル基(CH3−CH=CH−C(=O)−O−)を挙げることができる。
1およびZ1は、独立して、単結合またはリンカー基を示す。リンカー基としては、例えば、C1-6アルキレン基、アミノ基(−NH−)、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、エステル基(−C(=O)−O−または−O−C(=O)−)、アミド基(−C(=O)−NH−または−NH−C(=O)−)、スルホキシド基(−S(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、およびこれら2以上が結合した基を挙げることができる。2以上の上記基が結合して上記リンカー基が構成されている場合、当該結合数としては、5以下または4以下が好ましく、3以下または2がより好ましい。
1は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基から選択される切断性基(1)を示す。これら切断性基は、水素結合など非共有結合に比べて比較的安定であり、重合反応時にも安定的に維持され、特異的認識空間の形成に寄与する一方で、比較的切断され易いことから、重合反応後における鋳型化合物の除去が容易である。上記切断性基は、例えば、還元剤、比較的低温での加熱、比較的穏和な条件での加水分解、光照射などで切断することができる。例えばカルボン酸エステル基は、タンパク質を構成するアミド結合よりも切断され易く、比較的穏和な条件での加水分解により選択的に切断することができ、また、カルボン酸エステル基の中でもo−ニトロベンジルエステル基は、光照射でも選択的な切断が可能である。
1は、反応性基(1)、または反応性基(1)と反応させたリンカー基導入試薬中の反応性基(以下、「反応性基(1)等」という)と反応して共有結合を形成するための反応性基である。例えば、反応性基(1)等がアミノ基である場合は、N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノールなどを用いた活性エステル基;NHSカルバメートなどのカルバミン酸活性エステル基;イミンを形成するためのアルデヒド基;イソシアネート基;イソチオシアネート基;エポキシ基;マレイミド基などを挙げることができる。反応性基(1)等がカルボキシ基である場合、水酸基やアミノ基を挙げることができる。この場合、当該カルボキシ基は活性化しておくことが好ましい。反応性基(1)等がチオール基である場合、マレイミド基やアクリル酸エステル基など、電子不足の不飽和炭素基;ヨードアセトアミド基;ピリジルジスルフィド基;ラジカル付加系クリックケミストリーのためのアルケン(ビニルスルホン)・アルキン基;ネイティブ・ケミカル・ライゲーション法のためのチオエステル基を挙げることができる。反応性基(1)等が水酸基またはフェノール性水酸基である場合、活性エステル基を挙げることができる。特に糖鎖中のcisジオール基に対しては、フェニルボロン酸基などのボロン酸基を用いることもできる。
反応性基(1)等と機能性モノマー(I)との反応は、当業者公知の条件により行うことができる。例えば、標的タンパク質中のアミノ基と機能性モノマー(I)のカルボキシ基との反応は、アミド結合を形成するための脱水縮合剤を用いたり、或いは、機能性モノマー(I)のカルボキシ基が活性エステル化されている場合には、適切な溶媒中、標的タンパク質と機能性モノマー(I)を混合するのみでも反応は進行する。
本工程において、目的化合物の精製は、限外濾過など一般的なタンパク質の精製で用いられる方法により行えばよい。標的タンパク質への機能性モノマーの結合やその数は、マススペクトルで確認することができる。
(1−2) 標的タンパク質への機能性モノマー(II)の結合工程
本工程では、標的タンパク質を構成する分子の反応性基(2)を介して、末端にビニルモノマー基を有し且つ末端以外の部分に切断性基(2)を有する機能性モノマー(II)を複数結合させる。
本工程は、上記工程1−1と同様に実施することができる。また、本工程で利用する反応性基(2)は、上記工程1−1で利用する反応性基(1)と同一であっても異なっていてもよい。同一である場合には、標的タンパク質に対する機能性モノマー(I)、機能性モノマー(II)、リンカー基導入試薬などの使用量を調整し、機能性モノマー(I)および機能性モノマー(II)がそれぞれ適量導入されるようにする。
但し、本工程で用いる切断性基(2)は、切断性基(1)とは異なるものを用いる。即ち、機能性モノマー(II)としては、例えば以下の構造を有する化合物を用いる。
2−X2−Y2−Z2−Q2・・・ (II)
[式中、W2、X2、Y2およびZ2は、それぞれW1、X1、Y1およびZ1と同義を示すが、Y2は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基であって、切断性基(1)とは異なる基を示し、Q2は、反応性基(2)、または反応性基(2)と反応させたリンカー基導入試薬中の反応性基と反応して共有結合を形成するための反応性基を示す。]
切断性基(1)と切断性基(2)として互いに異なるものを用いることにより、これらを切断した場合に特異的認識空間内に残留する官能基も互いに異なるものとなる。即ち、ジスルフィド結合基の切断によりチオール基が、イミノ結合基の切断によりアミノ基またはアルデヒド基が、ボロン酸cisジオールエステル基の切断によりボロン酸基または水酸基が、カルボン酸エステル基の切断によりカルボキシ基または水酸基が残る。それら異なる官能基へ、反応性基(1)または反応性基(2)と相互作用するポストインプリンティング化合物と蛍光レポーター化合物をそれぞれ結合させることにより、本発明に係る分子インプリントポリマーが得られる。
(1−3) 自己組織化単分子膜の形成工程
本工程では、基材上に自己組織化単分子膜(SAM:Self−Assembled Monolayer)を形成する。SAMは、基材へ化学結合していると共に、基材上に分子が分子間力により密に且つ規則的に整列していることから、安定で均一である。
SAMを形成する基材としては、基板や粒子などを利用することができる。基材の材質としては、金属やガラスなど、SAMを形成できるものであれば特に制限されない。SAMを形成するための基材を構成する金属としては、金が汎用されているが、銀、銅、白金、パラジウムなども用いることができる。また、ガラス基板やテフロン(登録商標)基板上にこれら金属の薄膜を形成したものも金属基板として利用可能である。また、後記の表面プラズモン共鳴測定法や水晶振動子マイクロバランス法などの測定方法に適した金属基板が市販されているので、かかる市販金属基板を用いてもよい。
SAMを形成するための分子としては、通常、金属基材表面と結合可能なチオール基または酢酸チオエステル基を一方の端部に有し、他端には、機能性モノマー(I)および機能性モノマー(II)を結合させた標的タンパク質を結合させるための反応性基を有する炭素数8以上の直鎖アルカンを用いることができる。標的タンパク質を結合させるための反応性基としては、例えば、ピリジルジスルフィド基など、標的タンパク質を構成する分子の反応性基(3)、または反応性基(3)と反応させたリンカー基導入試薬中の反応性基(以下、「反応性基(3)等」という)と反応して共有結合を形成するための反応性基を挙げることができる。切断性基(3)としては、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基を挙げることができる。また、分子−分子間の特異的な相互作用を利用して標的タンパク質を結合させる場合には、上記反応性基として標的タンパク質のアフィニティーリガンドを用いてもよい。かかる分子−分子間の特異的相互作用としては、例えば、ビオチン−アビジンまたはストレプトアビジン間相互作用、ヘパリン−血管内皮細胞増殖因子(VEGF)間相互作用、抗原−抗体間相互作用などを挙げることができる。或いは、上記直鎖アルキルチオール化合物が酸化的に縮合したジスルフィド化合物を用いることもできる。また、強固なSAMを形成すべく長鎖部分が同一または類似するものである範囲で、標的タンパク質を導入するための反応性基以外の官能基を有する分子を併用してもよい。他の官能基としては、例えば、ビニルモノマーの重合開始作用を有する基を挙げることができる。
金属基材上へのSAMの形成は、常法に従えばよい。例えば、SAM形成分子をエタノールなどに溶解し、得られた溶液に金属基材を常温で30分間以上48時間程度浸漬すれば、当該分子がチオエーテル結合を介して金属基材表面に結合し、且つ分子間力により配向しつつ密に集合し、SAMが形成される。或いは、上記工程1−1に例示したリンカー基を介して、SAM形成分子を段階的に延長していってもよい。その場合には、標的タンパク質を結合するための反応性基を最終末端に導入するようにする。次いで、過剰のSA
M形成分子を洗浄により除去した後、乾燥すればよい。
また、ガラス基材を用いる場合には、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)などのシランカップリング剤で表面にアミノ基などの反応性基を導入することにより、SAMの形成が可能である。
(1−4) 標的タンパク質の結合工程
本工程では、上記工程1−3で基材上に形成されたSAMの末端の反応性基を利用して、標的タンパク質をSAMの表面に結合させる。
本工程において、標的タンパク質を構成する分子の反応性基(3)等を介して標的タンパク質をSAMの表面に結合させる場合には、SAMの末端反応性基と標的タンパク質との間には、切断性基(3)を介在させる。即ち、SAMの表面へ、標的タンパク質を構成する分子の反応性基(3)と切断性基(3)を介して機能性モノマー(I)および機能性モノマー(II)を結合させた上記標的タンパク質を結合させる。切断性基(3)により、後記の工程1−6においてポリマーからの標的タンパク質の除去が可能になる。切断性基(3)は、SAMと標的タンパク質との間のリンカー基中に含まれていてもよいが、SAM末端の反応性基と標的タンパク質の反応性基(3)との反応の結果形成されるものであってもよい。例えば、SAMの末端にチオール基または活性チオール基を導入し、また、標的タンパク質のシステイン由来のチオール基や、リンカー基導入試薬により導入されたチオール基とを反応させれば、切断性基であるジスルフィド結合が形成される。
切断性基(3)は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基から選択され、切断性基(1)または切断性基(2)と同一であってもよいし異なっていてもよい。
本工程の反応条件は、当業者であれば、SAMの末端反応性基と標的タンパク質の反応性基(3)の種類などにより、適宜選択することができる。例えば、ピリジルジスルフィド基などSAM表面の反応性基と標的タンパク質に導入されたチオール基との反応は容易であり、溶媒中、上記工程1−3で基材上に形成したSAMと標的タンパク質に導入されたチオール基とを接触させるのみで反応は進行する。
或いは、本工程において、分子−分子間の特異的相互作用を利用して標的タンパク質をSAMの表面に結合させる場合には、例えば、当該相互作用が有効となるような緩衝液中でSAMと標的タンパク質を接触させればよい。
反応の進行は、例えば、基材として表面プラズモン共鳴測定法や水晶振動子マイクロバランス法などのための金属基板を使用した場合には、それぞれ表面プラズモン共鳴測定法と水晶振動子マイクロバランス法により確認することができる。
反応終了後、目的化合物の精製は、基板を洗浄することにより行えばよい。
本工程は、少なくともSAM形成工程1−3の後に実施する必要はあるが、機能性モノマー(I)の結合工程1−1および機能性モノマー(II)の結合工程1−2との実施順序は任意である。また、工程1−1および工程1−2は、標的タンパク質へのリンカー基導入試薬によるリンカー基および反応性基の導入反応と、機能性モノマー(I)または機能性モノマー(II)の結合反応を分け、間に他工程を実施してもよい。例えば後記の実施例では、先ず標的タンパク質に2−イミノチオランを反応させることによりリンカー基と反応性基を導入し、一方の機能性モノマーを標的タンパク質の反応性基へ直接結合させた後に、当該標的タンパク質を基材上のSAMに結合させ、さらに上記リンカー基の末端反応性基へ他方の機能性モノマーを結合させている。
(1−5) 共重合工程
本工程では、標的タンパク質が結合したSAMが形成された基材にビニルモノマーを添加し、鋳型化合物である標的タンパク質に結合させた機能性モノマー(I)および機能性モノマー(II)中のビニルモノマー基と共重合させることにより、標的タンパク質を含むポリマーを形成する。
添加するビニルモノマーは、機能性モノマー中のビニルモノマー基と共重合可能なビニル基構造を有するものであれば特に制限されず、適宜選択することができるが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを好適に用いることができる。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンはリン脂質と類似した構造を有し、そのポリマーは生体への親和性に優れるため、血液などの生体試料の分析に適しているという利点がある。その他、非特異的吸着の低減の観点から、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートなどのPEGビニルモノマーも用い得る。
また、ビニルモノマーに加えて、架橋剤を併用してもよい。架橋剤により共重合体が架橋され、標的タンパク質に対する特異的認識空間の選択性が向上する可能性がある。一方、過剰に架橋すると、形成される架橋鎖と標的タンパク質との親和性の問題や、標的タンパク質が特異的認識空間内に挿入され難くなるなどしてかえって選択性が低下するおそれがあり得るので、架橋剤の種類や使用量、反応条件は調整する必要がある。架橋剤としては、2以上のビニルモノマー基がリンカー基により結合された化合物を挙げることができる。また、架橋剤の使用量に関しては、モノマーと架橋剤の合計モル数に対する架橋剤のモル数の割合を1%以上、50%以下とすることができる。当該割合としては40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がよりさらに好ましい。
重合条件は、常法に従って設定すればよい。例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは水溶性であるので、水系溶媒に、少なくとも上記工程1−1〜1−4を経て標的タンパク質が結合した基材と2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを添加し、重合開始剤(SAM表面に結合させたものでもよい)により重合を開始すればよい。反応液には、リビングラジカル重合を行うため、1価の銅化合物や、2価の銅化合物とアスコルビン酸などの還元剤との組み合わせを添加してもよい。重合温度は常温、さらには0℃以上120℃以下程度でよく、重合時間は10分間以上50時間以下程度とすることができる。具体的な重合条件は、重合が十分でないと形成された特異的認識空間の標的タンパク質への選択性が低下するおそれがあり得る一方で、過剰に重合させると次工程で鋳型化合物である標的タンパク質を除去できなくなるおそれがあり得るので、予備実験などで決定してもよい。
重合反応後は、余分な試薬を除去するため、使用した溶媒などでよく洗浄することが好ましい。
(1−6) 鋳型化合物である標的タンパク質の除去工程
本工程では、少なくとも、鋳型化合物である標的タンパク質とポリマーを結合している切断性基(1)および切断性基(2)を切断することにより、標的タンパク質を除去する。その結果、ポリマー中には、除去された標的タンパク質に特異的な認識空間が形成される。標的タンパク質を構成する分子の反応性基(3)と切断性基(3)を介して標的タンパク質をSAMの表面に結合させた場合には、SAMから標的タンパク質を除去するために当該切断性基(3)も切断する。分子−分子間の特異的相互作用を利用して標的タンパク質をSAMの表面に結合させた場合には、切断性基(1)と切断性基(2)の切断に加え、当該分子−分子間相互作用が解消されるよう、高濃度塩溶液や高pHまたは低pHの緩衝液を作用させればよい。
切断性基(1)〜(3)は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基から選択されるものであり、これら切断性基の切断条件は当業者にとり公知である。例えば、ジスルフィド基の切断は、還元により行うことができる。例えば、常温下、適切な溶媒中、上記工程1−5を経た基材と還元剤を接触させればよい。還元剤としては、例えば、トリス(2−カルボキシエチルホスフィン)(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、トリブチルホスフィン(TBP)を挙げることができる。還元反応後、基材を洗浄することが好ましい。
上記切断反応により、鋳型化合物である標的タンパク質が除去され、特異的認識空間が
形成された分子インプリントポリマー(MIP)が得られる。当該特異的認識空間内には、少なくとも切断性基(1)と切断性基(2)の切断により生じた官能基が存在する。切断性基(1)と切断性基(2)は異なるので、特異的認識空間内には少なくとも2種の官能基が存在する。
(1−7) ポストインプリンティング化合物の結合工程
本工程では、上記1−6工程により生成する特異的認識空間内の2種の官能基の一方に、標的タンパク質の反応性基と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させる。即ち、切断性基(1)を切断することにより生成する官能基に、反応性基(1)と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させるか、または、切断性基(2)を切断することにより生成する基に、反応性基(2)と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させる。特異的認識空間内に結合したポストインプリンティング化合物は、標的タンパク質が特異的認識空間内に挿入された場合、当該標的タンパク質の反応性基(1)または反応性基(2)と相互作用する。その結果、特異的認識空間の標的タンパク質に対する親和性や選択性が向上する。また、標的タンパク質とSAMを結合している切断性基(3)を切断することにより生成する官能基に、反応性基(3)と相互作用するポストインプリンティング化合物を結合させてもよい。
例えば、標的タンパク質のアミノ基を介して、標的タンパク質と機能性モノマー(I)およびSAMを結合させ、切断性基(1)および切断性基(3)の切断により生成する官能基に、カルボキシ基などアミノ基と相互作用する基を有するポストインプリンティング化合物を結合させた場合には、当該ポストインプリンティング化合物の位置は、特異的認識空間に挿入される標的タンパク質のアミノ基の位置に対応する。その結果、特異的認識空間内のカルボキシ基と標的タンパク質のアミノ基が相互作用するため、本発明に係るMIPの標的タンパク質に対する選択性と親和性が向上する。
ポストインプリンティング化合物は、反応性基(1)または反応性基(2)と相互作用する官能基の他、切断性基(1)または切断性基(2)の切断により生成する官能基と結合可能な反応性基を有する。これら基は上記工程1−1で例示したようなリンカー基で結合されていてもよいが、当該リンカー基が長過ぎると反応性基(1)または反応性基(2)の位置に基づく効果が低減するおそれがあり得るので、当該リンカー基としてはC1-4アルキレン基が好ましく、C1-2アルキレン基がより好ましい。
ポストインプリンティング化合物は、特異的認識空間内に複数結合させるために、鋳型化合物である標的タンパク質に結合させた機能性モノマー(I)または機能性モノマー(II)の数に対して、十分量用いることが好ましい。
切断性基(1)または切断性基(2)の切断により生成する官能基とポストインプリンティング化合物との反応は、当業者公知の条件により行うことができる。例えば、後記の実施例のように、標的タンパク質の反応性基(1)としてアミノ基を介して、切断性基(1)としてジスルフィド結合を有する機能性モノマー(I)を導入した場合には、当該切断性基(1)の切断により特異的認識空間内にチオール基が生成する。よって、カルボキシ基に加えてピリジルジスルフィド基などの活性チオール基を有するポストインプリンティング化合物であれば、溶媒中、MIPと混合するのみで、特異的認識空間内のチオール基に結合させることができる。勿論、当業者であれば、切断性基(1)または切断性基(2)の切断により生成する官能基に応じて、脱水縮合剤を用いるなどすることは可能である。
(1−8) 蛍光レポーター化合物の結合工程
本工程では、上記工程1−7においてポストインプリンティング化合物を結合させなかった上記切断性基(1)を切断することにより生成する官能基または上記切断性基(2)を切断することにより生成する官能基に、蛍光レポーター化合物を複数結合させる。これら官能基は特異的認識空間の内部に存在するため、蛍光レポーター化合物も特異的認識空間の内部に結合することになる。蛍光レポーター化合物が特異的認識空間の内部に複数存在する場合、標的タンパク質の挿入の有無により蛍光強度が変化するので、試料中における標的タンパク質の有無やその濃度を容易に測定することが可能になり、標的タンパク質に対する検出感度は顕著に向上する。
本発明では、機能性モノマー(I)の切断性基(1)と機能性モノマー(II)の切断性基(2)とは異なるものを用いるため、これら切断性基の切断により生じる官能基は異なるものとなる。よって、これら官能基それぞれに上記工程1−7でポストインプリンティング化合物を結合させ、本工程で蛍光レポーター化合物を結合させることは容易であり、上記工程1−7と本工程での反応の特別な制御は必要でない。
蛍光レポーター化合物は適宜選択すればよいが、少なくとも特異的認識空間内への標的タンパク質の挿入が妨げられない程度の大きさを有するものである必要がある。また、十分な蛍光特性を有するものが好ましい。例えば、バックグラウンドの低い長波長可視領域に蛍光特性を有するCyanine5(Cy5)を用いることができる。
また、蛍光レポーター化合物は、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、2種の蛍光レポーター化合物を使用し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用することが考えられる。また、蛍光レポーター化合物と消光化合物とを組み合わせ、標的タンパク質の存在による蛍光強度の変化を測定することも考えられる。
特異的認識空間内に結合させるべき蛍光レポーター化合物は、特異的認識空間内に複数結合させるために、鋳型化合物である標的タンパク質に結合させた機能性モノマー(I)または機能性モノマー(II)の数に対して、十分量用いることが好ましい。
2.分子インプリントポリマー
以上で説明した本発明方法により製造される本発明に係る分子インプリントポリマーは、標的タンパク質に対する特異的認識空間を有し、また上記工程1−7における説明のとおり、特異的認識空間に挿入される標的タンパク質を構成する分子の反応性基と相互作用するポストインプリンティング化合物が特異的認識空間内に複数存在している。その結果、標的タンパク質に対する選択性と親和性が向上している。
また、上記工程1−8により特異的認識空間内に蛍光レポーター化合物が複数結合した分子インプリントポリマーは、蛍光強度により試料中の標的タンパク質の有無や量を測定可能である点で利便性と検出感度が高い。
本発明に係る分子インプリントポリマーの形態は、標的タンパク質を特異的認識空間内に選択的に取り込むことができるものであれば特に制限されないが、例えば、膜状とすることができる。
なお、本発明において「特異的認識空間」とは、標的タンパク質の三次元構造と類似した形状の空間であり、標的タンパク質を特異的かつ可逆的に取り込むことが可能な空間をいう。
3.標的タンパク質の検出方法
以下、本発明に係る分子インプリントポリマーを用いた試料中における標的タンパク質の検出方法につき説明する。
本発明に係る標的タンパク質の検出方法は、本発明に係る分子インプリントポリマーと試料を接触させる工程(接触工程)、および、上記分子インプリントポリマーと上記試料との接触による蛍光強度の変化を測定する工程(測定工程)を含む。
測定すべき試料は、標的タンパク質の存在または不存在を確認すべきもの、また、標的タンパク質の量を測定すべきものであれば、特に制限されない。例えば、ヒトまたは動物の血液、尿、唾液などを挙げることができる。また、生体試料をある程度精製したものを試料としてもよい。例えば、血清や血漿を試料としてもよい。なお、ここでいう「量」には、「濃度」も含まれるものとする。
試料は、溶媒で希釈してもよい。使用する溶媒は、試料中に含まれる程度の量の標的タンパク質を溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、検出すべき標的タンパク質を適度に溶解できる緩衝液を用いることができる。
本発明の分子インプリントポリマーと試料とを接触させるには、例えば、溶媒中、分子インプリントポリマーが存在する容器や流路に試料、または溶媒と試料の混合物を導入すればよい。その際の温度は、測定結果が温度により異なることがあり得るので、例えば20℃以上30℃以下、特に25℃など、一定にすることが好ましい。また、浸漬時間は、対象となる標的タンパク質が特異的認識空間へ十分に取り込まれるよう十分な時間とし、例えば、5分間以上、5時間以下程度とすることができる。
本発明に係る標的タンパク質の検出方法では、分子インプリントポリマーと試料との接触による蛍光強度の変化を測定することにより、標的タンパク質の存在の有無または量を求める。即ち、先ず、試料の不存在下で、分子インプリントポリマーの蛍光強度を測定する。次に、分子インプリントポリマーと試料を十分に接触させた後、同様の条件により蛍光強度を測定する。これら蛍光強度の測定値の変化を測定することにより、試料中における標的タンパク質の有無や量を求めることが可能である。
4.プラズモニックチップ
本発明に係る分子インプリントポリマーをプラズモニックチップの周期構造上に形成した場合には、標的タンパク質の検出感度がより一層向上し得る。プラズモニックチップとは、表面に波長オーダーの周期構造が形成された金属層を含み、入射光をチップ界面に結合させて増強電場として局在化させることができ、チップに結合した蛍光レポーター化合物などの蛍光を増強させることにより、標的タンパク質などの高検出感度を実現するものである。
本発明に係るプラズモニックチップは、ベース基板、表面プラズモン共鳴光を発生し得る金属からなる金属層、消光抑制層をこの順で含み、当該ベース基板、金属層および消光抑制層の表面には複数の凹部からなる周期構造が形成されており、当該周期構造上に、本発明に係る分子インプリントポリマーが形成されていることを特徴とする。プラズモニックチップは、界面に対する照射光により発生する表面プラズモンポラリトン波の波長の整数倍が周期構造の周期と一致または略一致する場合に、蛍光を増強することができる。
ベース基板の素材は、観察光に対して透明であることが好ましく、例えば、ガラスや透明無色プラスチックを用いることができる。また、上記金属層と消光抑制層は十分に薄く、ベース基板の表面に形成された周期構造を消光抑制層に反映させることが可能であるため、ベース基板に周期構造を形成すればよい。かかる周期構造は、型を用いるなどして容易に形成可能である。
金属層は、表面プラズモン共鳴光を発生し得る金属からなる。かかる金属としては、金、銀、銅、白金、ニッケルなどの遷移金属を挙げることができる。金属層の厚さは適宜調整すればよいが、例えば、10nm以上、500nm以下とすることができる。
消光抑制層は、金属による蛍光の消光を抑制すべく、蛍光レポーター化合物から金属層への励起エネルギー移動の消光距離を保つためのものであり、照射光や蛍光を吸収しない透明な素材で構成する。消光抑制層の素材としては、例えば、シリカ、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどを用いることができる。消光抑制層の厚さは、金属層を構成する金属に応じ、蛍光の消光を抑制できる範囲で適宜調整すればよい。例えば、金属層が銀で構成されている場合は20nm以上、50nm以下とし、金で構成されている場合は40nm以上、70nm以下とすればよい。
ベース基板、金属層および消光抑制層の表面は、複数の凹部からなる周期構造を有する。かかる周期構造は、上述したようにベース基板に形成してその形状を金属層および消光抑制層に反映させてもよいし、常法により金属層および消光抑制層の表面に直接形成してもよい。後者の場合には、周期構造の凹部の形状や位置は、ベース基板、金属層および消光抑制層において一致させる。
周期構造の周期は、観察すべき蛍光の波長の整数倍または略整数倍となるようにする。例えば10nm以上、800nm以下とすることができ、100nm以上、600nm以下が好ましい。周期構造の高さ若しくは深さは、4nm以上、400nm以下とすることができる。周期構造の形状は適宜選択すればよいが、例えば、鋸歯状溝、正弦波状溝、矩形状溝などの溝状とすることができる。また、かかる溝を互いに直交する方向に重ね合わせた矩形凹部としてもよい。
本発明に係るプラズモニックチップは、上記の周期構造上に、本発明に係る分子インプリントポリマーが形成されている。当該分子インプリントポリマー中の特異的認識空間における標的タンパク質の存在または不存在により蛍光強度が変化する場合、表面プラズモン共鳴により蛍光強度が増強され、その変化が大きくなる。よって、本発明に係るプラズモニックチップを用いて標的タンパク質を検出することにより、その感度はより一層改善される。
本発明に係るプラズモニックチップの大きさは、測定条件などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、直径2mm以上、6mm以下の円形孔を通過可能な形状とした場合には、ピペットチップに挿入可能になり、ピペットチップを使った測定が可能になる。例えば、本発明に係るプラズモニックチップをピペットチップに挿入した場合、標的タンパク質の存在の有無や濃度を測定すべき試料溶液を吸い取ることにより分子インプリントポリマーと試料溶液とを接触させることができるが、その際、試料溶液の必要量を極めて少なくすることができる。また、本発明に係るプラズモニックチップをピペットチップに挿入した場合には、多数の試料を効率的に分析できるような自動測定への適用が可能になり得る。例えば、少なくとも、ピペットチップを保持するラック、XYZ方向に駆動可能なピペッター、ピペットチップ内の反応溶液の温度を制御するインキュベータ、蛍光測定部を備える自動測定装置に適用することができる。そのような自動測定を可能にする小型自動分注・反応・計測装置の一例を図16に示す。
十分に小さなプラズモニックチップであれば、図16に示すようなピペットチップの中に挿入可能である。例えば、図16に示す装置では、プラズモニックチップを事前に挿入したピペットチップをチップラックに置いておき、試料を入れた試験管などを試料ラックに置いておく。測定時には、ピペッターが自動的にチップラックに移動してピペットチップを装着し、次いで試料ラックに移動して所定量の試料を吸い上げた後、インキュベート部分に移動して所定時間反応させる。その他の反応や洗浄操作が必要である場合は、反応溶液を排出した後、試料ラックの試薬溶液や洗浄液を吸い上げて、同様の操作をすればよい。次に、測定部に移動して、蛍光強度を測定する。測定後はピペットチップを外して廃棄し、次の測定に移ればよい。このような自動装置を用いることにより、ELISAなど酵素を用いる方法に比べ、血液試料など多数の試料を迅速かつ簡便に検査することが可能になる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1: オキシム型機能性モノマー(FM1)の合成
(1) N−Boc−エチレンジアミン(化合物1)の合成
エチレンジアミン(3.5mL,50mmol,9.4eq)をジクロロメタン(40mL)に溶解し、(Boc)2O(1.098g,5.3mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解した溶液を氷冷下で滴下した。1.5時間後にアイスバスを外し、さらに室温で0.5時間撹拌後、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて原料である(Boc)2Oのスポット(Rf=0.8,ジクロロメタン,アニスアルデヒド)の消失と目的化合物1と思われるスポット(Rf=0.25,MeOH,ニンヒドリン)の出現を確認したことから反応終了とした。溶媒をエバポレーターによって減圧留去した後、残渣に飽和Na2CO3水溶液を加えて分散させたものをジクロロメタンで抽出した。有機層を無水MgSO4で脱水した後、エバポレーターによって溶媒を減圧留去した。さらに残渣に純水を加えて副生成物の(2−Boc−アミノエチル)カルバミン酸 t−ブチルエステルを析出させ、メンブレンフィルター(孔径:0.22μm)を用いて濾過することによりこれを除去した。この水溶液に飽和Na2CO3水溶液を加えて塩基性にした後、ジクロロメタンで抽出し、無水MgSO4で脱水した後、エバポレーターによって溶媒を減圧留去することでオイル状の目的化合物1を得た。1H−NMRより生成物の精製を確認した。
収量:771.2mg,収率:90.9%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=4.86(br,1H,C(=O)-NH),3.20-3.14(q,2H,NHCH2CH2),2.82-2.78(t,2H,CH2NH2),1.45(s,9H,C(CH3) 3
(2) N−メタクリロイル−N’−Boc−エチレンジアミン(化合物2)の合成
メタクリル酸(1.17mL,13.83mmol,1.5eq)と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(3.25mL,18.44mmol,2eq)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、30分間撹拌した後、化合物1(1.48g,9.22mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解させた溶液を、窒素雰囲気、氷冷下で滴下した。滴下終了後、室温下で6時間撹拌し、TLCにて目的化合物2と思われるスポット(Rf=0.51,AcOEt,UV−ニンヒドリン)を確認し、また、化合物1のスポット(Rf=0,AcOEt,ニンヒドリン)が消失したことから反応終了とした。反応溶液を、飽和食塩水、飽和クエン酸水溶液、飽和NaHCO3水溶液で3回ずつ洗浄し、有機層を無水MgSO4で脱水した後、エバポレーターによって減圧留去した。目的化合物2と思われるスポット(Rf=0.41,ヘキサン:AcOEt=1:1,UV−ニンヒドリン)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/AcOEt=50/50→0/100)によって分離し、溶媒を減圧留去することで白色固体である目的化合物2を得た。1H−NMRより生成物の精製を確認した。
収量:1.627g,収率:77.3%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=6.68(br,1H,CH2=C(CH3)-C(=O)-NH),5.76,5.33(s,2H,H2C=C(CH3)),4.90(br,1H,NH-Boc),3.44-3.32(m,4H,NHCH2CH2NH),1.97(s,3H,CH2=C(CH3)),1.44(s,9H,C(CH3)3
(3) N−メタクリロイルエチレンジアミン塩酸塩(化合物3)の合成
化合物2(1.627g,7.13mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、4N HCl/ジオキサン(9.33mL,35.65mmol,5eq)をジクロロメタン(5mL)に溶解させた溶液を氷冷下で滴下した。滴下終了後、室温下で12時間反応した時点のTLCにて化合物2のスポット(Rf=0.41,AcOEt,UV−ニンヒドリン)の消失および目的化合物3と思われるスポット(Rf=0,AcOEt,UV−ニンヒドリン)を確認したことから、反応終了とした、反応液を減圧濃縮し、得られた固体をジクロロメタンに再分散させた後、桐山ロートによる濾過にて回収した固体を真空乾燥させることで白色固体である目的化合物3を得た。1H−NMRより生成物の精製を確認した。
収量:1.146g,収率:98.0%
1H-NMR(300Hz,D2O)δ=5.54,5.29(s,2H,H2C=C(CH3)),3.44(t,2H,C(=O)-NHCH2),3.20(t,2H,CH2NH2),2.82,2.76(t,4H,CH2SSCH2),1.76(s,3H,CH3
(4) N−Boc−アミノオキシ酢酸(化合物A)の合成
アミノオキシ酢酸1/2塩酸塩(1.09g,10mmol,1.5eq)とNaHCO3(840mg,10mmol,1.5eq)を純水(10mL)中で混合し、ここに(Boc)2O(1.45g,6.6mmol)をジオキサン(20mL)に溶解させた溶液を滴下した。室温下で撹拌し、24時間後におけるTLC(展開液:AcOEt/ヘキサン=7/3(v/v))にて、原料化合物のスポット(Rf=0.5,アニスアルデヒド)の消失と、生成物と思われるスポット(Rf=0.375,アニスアルデヒド)の出現を確認したことから反応終了とした。溶媒を減圧留去した後、純水と1M HClを加えてpHを1〜2に調整し、AcOEtで抽出した。無水MgSO4で脱水した後、エバポレーターによって溶媒を減圧留去することで白色固体である目的化合物Aを得た。1H−NMRより生成物の精製を確認した。
収量:1.023g(5.35mmol),収率:81.0%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=7.74(s,1H,O-NH-Boc),4.50(s,2H,O-CH2),1.51(s,9H,(CH3)3
(5) N−(N’−Boc−アミノオキシ酢酸)アクリルアミド(化合物4)の合成
化合物A(1.15g,6mmol,1.5eq)とEDC(6.4mL,12mmol,3eq)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、30分間撹拌した。ここに化合物3(656mg,4mmol)とトリエチルアミン(TEA)(1.67mL,12mmol,3eq)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた溶液を室温下で滴下した。6時間後、TLC(展開液:AcOEt)にて生成物と思われるスポット(Rf=0.34,UV−ニンヒドリン)の出現を確認したが、化合物3のスポット(Rf=0,UV−ニンヒドリン)が残存していたことから、さらにEDC(3.2mL,6mmol)を添加し、室温下で撹拌した。24時間後、TLCに変化が見られなかったことから反応終了とした。反応溶液を飽和食塩水、飽和クエン酸水溶液、飽和NaHCO3水溶液で3回ずつ洗浄し、有機層を無水MgSO4で脱水した後、エバポレーターによって溶媒を減圧留去した。目的化合物4と思われるスポット(Rf=0.29,AcOEt,UV−ニンヒドリン)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:AcOEt)によって分離し、溶媒を減圧留去することで透明の高粘性オイル状生成物を得た。1H−NMRより目的化合物4の精製を確認した。
収量:281mg(0.93mmol),収率:23.3%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=8.321(s,1H,CH2NHC=O),7.90(s,1H,O-NH-Boc),6.86(s,1H,CH2=C(CH3)C(=O)NH),5.79-5.35(s,2H,CH2=C(CH3)),4.34(s,2H,O-CH2),3.51(s,4H,NHCH2CH2NH),1.98(s,3H,CH2=C(CH3)),1.48(s,9H,(CH3)3)
(6) N−アミノオキシ酢酸アクリルアミド塩酸塩(化合物5)の合成
化合物4(281mg,0.93mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ここに4N HCl/ジオキサン(0.75mL,3mmol,3.23eq)をジクロロメタン(5mL)に溶解させた溶液を氷冷下で滴下した。滴下終了後、室温下で撹拌して12時間反応させ、TLCにて原料のスポット(Rf=0.25,AcOEt,UV−ニンヒドリン)の消失と、化合物5と思われるスポット(Rf=0,AcOEt,UV−ニンヒドリン)を確認したことから、反応終了とした。溶媒を減圧留去し、得られた固体をジクロロメタンに再分散させ、桐山ロートによる濾過にて回収した固体を真空乾燥することで白色固体である目的化合物5を得た。1H−NMRより生成物の精製を確認した。
収量:216.9mg(0.91mmol),収率:98.1%
1H-NMR(300Hz,D2O)δ=5.50-5.27(s,2H,CH2=C(CH3)),4.36(s,2H,O-CH2),3.26(s,4H,NHCH2CH2NH),1.73(s,3H,CH2=C(CH3))
(7) 2,3,4,6−テトラヒドロキシ−5−(ピリジルジスルファニル)ヘキサナール(化合物B)の合成
5−チオ−D−グルコース(392mg,2mmol)と2,2’−ジピリジルジスルフィド(4.41g,20mmol,10eq)をピリジン(25mL)に溶解し、60℃で撹拌した。24時間反応させた時点で、TLC(展開液:AcOEt)はRf=0(UV,アニスアルデヒド(黒))、0.25(UV,アニスアルデヒド(赤紫))、0.5(UV,アニスアルデヒド(黄))、0.62(UV,アニスアルデヒド(黄))の4スポットを示し、それぞれ5−チオ−D−グルコース、生成物、ピリジン/副生成物、2,2’−ジピリジルジスルフィドに対応する。原料のスポットが色濃く残存していたため、さらに2日間反応を継続した。72時間前後において原点のスポットの濃さに変化が見られなくなったため、反応終了とし、エバポレーターにより溶媒のピリジンを除去することで赤褐色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:AcOEt)によりRf=0.25のフラクションを分離し、エバポレーターにより溶媒を留去したところ、白色固体とオレンジ色のオイル状物質の混合物が得られたため、ジクロロメタンを用いて桐山ロートによる濾過を行うことで白色固体のみを回収した。1H−NMRおよびMALDI−TOF−MSより生成物の精製を確認した。
収量:336mg(1.1mmol),収率:55.0%
1H-NMR(300Hz,DMSO-d6)δ=8.43-7.22(4H,pyridyl),5.95-4.07(5H,OH,CHO),4.02-3.20(6H,glucose)
1H-NMR(300Hz,D2O)δ=8.26-7.13(4H,pyridyl),5.31-5.29,4.08-3.64,3.16-2.96(6H,glucose)
MALDI-TOF-MS(matrix:DHB):m/z=306.16[M+H+],328.16[M+Na+],633.31[2M+Na+]
(8) オキシム型機能性モノマー(FM1)の合成
化合物5(309.5mg,1.302mmol,1.5eq)と化合物B(265.2mg,0.868mmol)をピリジン(40mL)と水(5mL)の混合溶媒に溶解し、室温で撹拌した。反応開始時のTLC(展開液:AcOEt/MeOH=10/1)は、Rf=0(UV,アニスアルデヒド(黒))、0.55(UV,アニスアルデヒド(赤紫))、0.64(UV,アニスアルデヒド(白))を示した。12時間後、Rf=0.2(UV,アニスアルデヒド(赤紫))に新たなスポットを確認した。反応溶媒をエバポレーターによって減圧留去することで黄色のオイルを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:AcOEt/MeOH=9/1(v/v))を用いてRf=0.2のフラクションを分離回収し、溶媒を減圧留去することで白色固体の目的化合物6(FM1)を得た。1H−NMRおよびMALDI−TOF−MSより生成物の精製を確認した。
収量:364.7mg(0.746mmol),収率:86.0%
1H-NMR(300Hz,CD3OD)δ=8.43-7.25(4H,pyridyl),7.60(m,1H,ON=CH-),5.70-5.36(s,2H,CH2C(CH3)-),4.47(s,2H,C(=O)CH2ON),6.82,5.06,4.34-3.80,3.20(m,6H,glucose),3.30(s,4H,NHCH2CH2NH),1.92(s,3H,CH2C(CH3)C(=O))
MALDI-TOF-MS(matrix:DHB)m/z=511.67(M+Na+)
実施例2: ジスルフィド型機能性モノマー(FM2)の合成
(1) ヒドロキシエチル ピリジル ジスルフィド(化合物7)の合成
アルドリチオール−2(1.21g,6.0mmol)をメタノール(10mL)に溶解し、酢酸(130μL)を加えた。そこに、メルカプトエタノール(300μL,4.4mmol)をメタノール(2mL)に溶解させた溶液を滴下し、室温で30分間撹拌した。滴下終了後、室温で一晩反応させた。撹拌を止め、減圧留去により黄色のオイルが得られた。カラム(AcOEt/ヘキサン=50/50(v/v))によりRf=0.33のフラクションを回収し、溶媒を除去することで黄色オイル状の目的化合物7を得た。
収量:617.9mg(3.3mmol),収率:75%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=8.52(d,1H,pyridyl),7.61(t,1H,pyridyl),7.41(d,1H,pyridyl),7.16(t,1H,pyridyl),3.81(t,2H,-CH2-),2.96(t,2H,-CH2-)
(2) メタクリロイルヒドロキシエチル ピリジル ジスルフィド(化合物8)の合成
化合物7(617.9mg,3.3mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解させた溶液にTEA(980μL,7.0mmol)を加え、混合物をアイスバスで冷却した。そこに、メタクリロイルクロライド(386μL,4.0mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解させた溶液を、撹拌しながら滴下した。混合溶液を室温で3時間撹拌し、飽和食塩水と純水で分液し有機層を回収した。これを無水Na2SO4で脱水し、減圧濃縮することで茶色のオイルが得られた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:AcOEt/ヘキサン=2/8(v/v))によりRf=0.33のフラクションを回収し、溶媒を除去することで黄色のオイル状の目的化合物8を得た。
収量:553.8mg(2.17mmol),収率:65.8%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=8.48(d,1H,pyridinyl),7.69(m,2H,pyridinyl),7.10(m,1H,pyridinyl),6.13(s,1H,vinyl),5.59(s,1H,vinyl),4.40(t,2H,-CH2-),3.09(t,2H,-CH2-),1.96(s,3H,methyl)
(3) 3−(メタクリロイルエチルジチオ)プロピオン酸(化合物9)の合成
ジクロロメタン(10mL)に化合物8(553.8mg,2.17mmol)を溶解し、室温で撹拌した。その後、3−メルカプトプロピオン酸(261μL,3.00mmol)を反応溶液に加え、室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:AcOEt/ヘキサン=1/1(v/v))により目的化合物9を分離した。
収量:296.6mg(1.19mmol),収率:54.7%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=6.14(s,1H,vinyl),5.59(s,1H,vinyl),4.41(t,2H,-CH2-),2.97(m,4H,-CH2-CH2-),2.79(t,2H,-CH2-),1.95(s,3H,methyl)
(4) ジスルフィド型機能性モノマー(FM2)の合成
化合物9(137.5mg,0.55mmol)とスルホ−NHS(108mg,0.5mmol)をジメチルアセトアミド(DMA)(3mL)に溶解し、そこにジシクロヘキシルカルボジイミド(147mg,0.7mmol)を加えた。反応溶液を室温で24時間撹拌し、4℃まで冷却することで生成した沈殿を濾過した。溶媒を減圧留去した後、得られた残留物にAcOEt/ヘキサン=1/1(v/v)を加え、生じた沈殿物を濾過することで白色固体の目的化合物(FM2)を得た。
収量:93.1mg(0.21mmol),収率:41.5%
1H-NMR(300Hz,DMSO-d6)δ=6.05(s,1H,vinyl),5.70(s,1H,vinyl),4.34(t,2H,-CH2-),3.94(d,1H,-CH-),3.12-2.98(m,8H,-CH2- etc. ),1.88(s,3H,methyl)
実施例3: ポストインプリンティング試薬の合成
(1) 3−ピリジルジチオプロピオン酸(P1)の合成
アルドリチオール−2(404.6mg,1.84mmol)をエタノール(5mL)に溶解し、酢酸(50μL)を添加した。そこに、3−メルカプトプロピオン酸(104μL,1.2mmol)をエタノール(2mL)に溶解した溶液を滴下しながら、室温で30分間撹拌した。滴下終了後、室温でさらに一晩撹拌し続けた。溶媒を減圧留去することで黄色いオイルが得られた。これをカラム(溶離液:AcOEt/ヘキサン=2/3⇒1/1(v/v))により分離した。
収量:233.2mg(1.08mmol),収率:90%
1H-NMR(300Hz,CDCl3)δ=8.47(d,1H,pyridyl),7.67(m,2H,pyridyl),7.18(m,1H,pyridyl),3.08(t,2H,-CH2-),2.79(t,2H,-CH2-)
(2) 3−ピリジルジチオエチルアミン(P2)の合成
アルドリチオール−2(2.21g,10.0mmol)をメタノール(20mL)に溶解し、酢酸(800μL)を添加した。反応容器内の気相をアルゴンガスで置換した後、2−アミノエタンチオール塩酸塩(0.57g,5.0mmol)をメタノール(10mL)に溶解した溶液を滴下しながら、室温で30分間撹拌した。滴下終了後、アルゴンガス雰囲気下、室温でさらに24時間撹拌し続けた。溶媒を減圧留去し、得られた残渣にジエチルエーテルを加え洗浄した。これをメタノール(5mL)に溶解し、そこにジエチルエーテル(25mL)を加えて生じた沈殿を回収した。これを純水に溶解し、1M NaOHを用いてpHを9に調整した後にAcOEtで抽出した。抽出液を無水NaSO4で脱水した後に溶媒を減圧留去することで目的化合物P2を得た。なお、当該化合物P2は、タンパク質中のアスパラギン酸残基やグルタミン酸残基の側鎖カルボキシ基などの酸性基と相互作用可能なアミノ基を特異的認識空間に導入するためのポストインプリンティング化合物として利用可能である。
収量:301mg(2.74mmol),収率:54.7%
1H-NMR(300Hz,D2O)δ=8.40(d,1H,pyridinyl),7.99(t,1H,pyridinyl),7.84(d,1H,pyridinyl),7.41(t,1H,pyridinyl),3.22(t,2H,-CH2-),2.97(t,2H,-CH2-)
実施例4: タンパク質修飾およびタンパク質インプリンティング・ポストインプリンティング修飾による特異的認識空間の形成
(1) AFPへのチオール基の導入
基材へのタンパク質の固定化とオキシム型機能性モノマーの導入点として、2−イミノチオラン(2−IT)を用いてチオール基をタンパク質に導入した。また、導入されたチオール基を5,5’−ジチオビス(ニトロ安息香酸)(DTNB)を用いて定量した。
1.79mg/mLのα−フェトプロテイン(AFP)の水溶液(100mM PBS,pH7.4,0.1%アジ化ナトリウム)へ、AFPに対して100eqとなるように2−イミノチオラン溶液(10mMリン酸バッファー(pH8.0))を添加し、4℃で24時間反応させた。反応後、10mMリン酸バッファー(pH7.4)を用いた限外濾過(milipore製「アミコンウルトラ−0.5」,MWCO:30kDa,6000rpm,20分間×5セット,遠心分離機:TOMY社製「suprema(登録商標)21」)により反応溶液を精製した。
その後、精製したAFP溶液の濃度を算出するために、未修飾のAFPを用いてUV測定から得られた280nmの波長における吸光度から検量線を作成した。濃度算出後、UVセル中で10mMリン酸バッファー(pH7.4)を用いてAFPが1μM、DTNBが20μMになるように混合し、UV測定を行った。ここで、限外濾過後の濾液中に2−ITが含まれていないことをDTNBを用いて確認することで、反応溶液中の2−ITが全て除去されていることを確認した。具体的には、AFPに導入されたチオール基とDTNBとの反応により生成する2−ニトロ−5−メルカプト安息香酸の吸収ピークである412nmの吸光度を用いて検量線を作成し、チオール基の濃度を求め、チオール基の濃度をAFP濃度で除してチオール基導入個数を算出することにより、AFP複合体1分子あたり約5個のチオール基が導入されていることを確認した。以降の実験では、1分子に対してチオール基が約5個導入された当該AFP複合体(5T−AFP)を用いた。但し、模式的に示す化学反応式には、5個のチオール基は記載していない。また、タンパク質に対する2−ITの使用量を変更することにより、チオール基の導入数は調整可能である。
(2) チオール基導入AFP(5T−AFP)へのジスルフィド型機能性モノマー(FM2)の導入
1分子あたり約5個のチオール基が導入された5T−AFP(3.82μM,200μL)にFM2を5eq添加し、4℃で24時間反応させた。反応後、限外濾過(milipore社製「アミコンウルトラ−0.5」,MWCO:30kDa,6000rpm,20分間×5セット,遠心分離機:TOMY社製「suprema(登録商標)21」)により未反応のFM2を除去した。精製したタンパク質をMALDI−TOF−MS(マトリックス:0.1%TFAを含むアセトニトリル/水=50/50の混合溶媒中のシナピン酸,Method:IgG liner)による質量測定とCDスペクトル測定から評価した。また、FM2修飾AFPの濃度はUV測定から作成したAFPの検量線を用いて算出し、CDスペクトルは未修飾のAFPとFM2修飾AFP(in 10mMリン酸バッファー(pH7.4))の濃度を0.04μMに調整し、表1に示した条件で測定した。
分析の結果、5T−AFP1分子に対してFM2が4.15個、すなわち3〜5個導入されていると算出された。また、CDスペクトルにより、FM2の導入後もAFPの二次構造は保持されていることが確認された。
(3) SPR金基板表面への重合官能基およびタンパク質固定化用基修飾
SPR金基板(GE Healthcare社製「SIA Kit Au」)をUV−O3処理した後、直ちにビス[2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)ウンデシル]ジスルフィドと(11−メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)をそれぞれ0.5mMずつ、合計1mM含むエタノール溶液に、30℃で24時間浸漬し、金基板上に混合自己組織化単分子膜を形成させた。この基板をエタノールと水で洗浄した後、N2ブローで乾燥した。続いて5mM 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸−NHSエステルのジクロロメタン溶液に、30℃で24時間浸漬し、基板上にタンパク質固定化用基としてピリジルジスルフィド基を導入した。
(4) SPR金基板上へのFM2修飾AFPの固定化とオキシム型機能性モノマー(FM1)の導入
SPRによる分子間相互作用解析装置(GE Healthcare社製「Biacore(登録商標)3000」)を用いて、以下の測定条件により、基板上へのFM2修飾AFPの固定化をモニタリングした。
測定用セルを装着した状態では固定化を行うことが困難であったため、実際に基板作製を行う場合は10μg/mLのFM2修飾AFP溶液を基板上に200μL滴下し、25℃で10分間静置することで、基板上へのFM2修飾AFPの固定化を行なった。FM2修飾AFPの固定化後、1mM オキシム型機能性モノマー(FM1)水溶液に25℃で24時間浸漬し、基板上で鋳型分子を合成した。その後、10mMリン酸バッファー(pH7.4)で基板をリンスし、10mMリン酸バッファー(pH7.4)中4℃で保存した。
測定条件
ランニングバッファー: 10mMリン酸バッファー(pH7.4)
FM2修飾AFP溶液濃度: 10μg/mL(濃縮したFM2修飾AFP溶液を10mMリン酸バッファーで希釈)
流速: 5μL/min
接触時間: 5分間
インジェクションボリューム: 25μL
設定温度: 25℃
実験を3回行ったところ、3回ともRU値が240増加したことがみられ、FM2修飾AFPが基板上に固定化されていることが確認された。
(5) 特異的認識空間の形成
表2に示した組成のプレポリマー溶液を用いて、表面開始原子移動ラジカル重合法(SI−ATRP)によりポリマー合成を行った。詳しい実験操作を以下に示す。重合時間は1時間、温度は40℃で行った。また、架橋剤比率(コモノマーと架橋剤の合計モル数に対する架橋剤のモル数)を10%または20%として2種類のポリマーを合成した。
テフロン(登録商標)セルを装着したSPR基板を重合用の20mLスクリュー瓶に入れ、セプタムで封をした。別の20mLスクリュー瓶中、表2の各組成を有するプレポリマー溶液を作製し、凍結脱気法により溶存酸素を除去した。SPR基板の入ったスクリュー瓶を真空引きし、直ちに脱気した10mMリン酸バッファー(pH7.4)に溶解したアスコルビン酸(100μL)を2.5mLディスポーザブルシリンジを用いてプレポリマー溶液に添加し、そのままプレポリマー溶液を吸引し、重合用スクリュー瓶にプレポリマー溶液(10mL)を添加した。グリスをセプタム上部と側面に塗布し、40℃の恒温槽(EYELA社製「UNITHREMO SHAKER NTS−1200」)で振とうすることで重合を開始した。
重合後、基板を純水で洗浄し、ポリマー内部に残存するCuイオンを除去するために1M EDTA−4NA水溶液に25℃で24時間浸漬した。その後、基板を純水で洗浄し、N2ブローで乾燥した。続いて、基板をBiacore(登録商標)3000に設置し、トリス−(2−カルボキシエチルホスフィン)(TCEP)水溶液をインジェクションすることで還元による鋳型分子の除去を行い、SPRにより鋳型分子の除去を確認した。SPRの測定条件を以下に示す。
測定条件
ランニングバッファー: 10mMリン酸バッファー(pH7.4)
還元剤溶液: 20mM TCEP水溶液
流速: 20μL/min
接触時間: 10分間
インジェクションボリューム: 200μL
設定温度: 25℃
還元剤(TCEP)をインジェクションした後、バッファーに置換したところRU値が200減少したことから、鋳型分子が除去されていることが確認された。また、鋳型分子固定化時におけるRU値変化である+240と比較すると、鋳型分子の除去率が83.3%であると算出された。重合時間が短くポリマー膜が薄いことから、鋳型分子の除去が効率良く進行したと考えられる。
鋳型分子除去後、以下に示すピリジルジスルフィド誘導体を用いたジスルフィド交換反応により、AFPのアミノ基との相互作用部位としてカルボキシ基を導入し、または、比較のため水酸基を導入した。
反応は、5mM 3−ピリジルジチオプロピオン酸水溶液または5mM 3−ピリジルジチオエタノール水溶液(50%メタノール,v/v)を、SPR測定セルを装着した基板上に200μL滴下し、カバーガラスで封をした状態で25℃、24時間浸漬することで行った。反応後、基板を純水で洗浄し、10mMリン酸バッファー(pH7.4)中、4℃で保存した。
参考例1: 選択性試験
上記実施例4で製造された分子インプリント膜のAFPに対する選択性を確認するために、以下の条件でSPR測定を行った。また、対照タンパク質としてヒト血清アルブミン(HSA)についても同様に測定を行った。なお、HSAの分子質量は66.5kDa、等電点(PI)は4.7であり、AFPとのアミノ酸配列同一性は66%である。
測定手法
(i) ランニングバッファー(10mMリン酸バッファー(pH7.4))でベースラインを安定化
(ii) タンパク質溶液をインジェクション(5分間)
(iii) ランニングバッファーをインジェクション(5分間)
(iv) 以下、上記(ii)と(iii)を繰り返し
測定条件
ランニングバッファー: 10mMリン酸バッファー(pH7.4)
流速: 20μL/min
接触時間: 5分間
インジェクションボリューム: 100μL
タンパク質濃度: 10,20,50,100,150,200ng/mL
(in 10mMリン酸バッファー(pH7.4))
設定温度: 25℃
架橋剤比率が10%であるMIP10を用い、相互作用部位としてカルボキシ基または水酸基を導入した場合の比較結果を図1に示す。
図1に示すとおり、特異的認識空間内の特定位置に水酸基を導入した場合に比べ、カルボキシ基を導入した場合には、AFPに対する感度が顕著に向上した。かかる結果から、ポストインプリンティング修飾による相互作用部位の導入がポリマーのタンパク質認識能に影響を与え、また認識空間内に配置された相互作用部位の電気的特性がタンパク質認識において重要な役割を果たすことが示唆された。
また、相互作用部位としてカルボキシ基を導入した各架橋剤比率の分子インプリント膜のAFP結合実験の結果を図2に示す。
図2のとおり、各MIP膜間で結合量自体に大きな差は見られなかった。これは、重合時間が1時間と短く、ポリマー薄膜の厚さが数十nmに過ぎないために、認識空間へのアクセシビリティーに違いがないことに由来すると考えられる。また今回の測定条件では検出限界は20ng/mLであった。
さらに、AFPとHSAに対する選択性を比較した結果を図3に示す。MIP10とMIP20はHSAよりもAFP結合量が大きく、MI法によりAFPに対して親和性の高い認識空間が構築されていると考えられる。
実施例5: QCM−D金基板上へのAFPインプリントポリマーの作製
(1) QCM−D金基板表面への重合官能基およびタンパク質固定化用基修飾
水晶振動子センサーを用いたQCM−D(Quartz Crystal Microbalance with Dissipation monitoring system)法のため、QCM−D金基板上へAFPインプリントポリマーを作製した。
先ず、QCM−D金基板(qsence社製「QSX301 AU 10342A」)をUV−O3処理した後、直ちにQCM−D用テフロン(登録商標)セルを装着し、ビス[2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)ウンデシル]ジスルフィドと(11−メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)をそれぞれ0.5mMずつ、合計1mM含むエタノール溶液(500μL)をセルに滴下した。カバーガラスとパラフィルムで封をし、30℃で24時間浸漬することで金基板上に混合自己組織化単分子膜を形成させた。この基板をエタノールと水で洗浄した後、N2ブローで乾燥した。続いて5mM 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸−NHSエステルのジクロロメタン溶液(500μL)をセルに滴下し、カバーガラスとビニルテープで封をした後に30℃で24時間浸漬することで、基板上にタンパク質固定化部位としてピリジルジスルフィド基を導入した。
(2) QCM−D金基板上へのFM2修飾AFPの固定化とオキシム型機能性モノマー(FM1)の導入
以下の測定手法・条件により、QCM−Dオープンモジュールを用いて基板上へFM2修飾AFPを固定化し、その進行状況をモニタリングした。
測定手法・条件
設定温度: 25℃
オーバートーン次数: 9
(i) 10mMリン酸バッファー(pH7.4)200μLをセルに滴下し、ベースラインを安定化
(ii) 濃縮したFM2修飾AFP溶液を、そのセル内濃度が10μg/mLになるようにセルに10μL添加
(iii) シグナルが安定したところでセル上の溶液を吸引し、直ちに10mMリン酸バッファー(pH7.4)200μLをセルに滴下する操作を3回繰り返し、セル上の余分なFM2修飾AFPを除去
FM2修飾AFP溶液のインジェクションから3時間前後でF値の減少が停滞し、基板上のFM2修飾AFP溶液をバッファーに置換した後のF値が−6Hzであったことから、基板上にFM2修飾AFPが固定化されていることを確認した。また、上記F値から、Sauerbreyの式により質量換算すると、基板上に固定化されたFM2修飾AFPの量は37.05ngであった。
(3) 特異的認識空間の形成
上記表2に示した組成のプレポリマー溶液を用いて、SI−ATRPによりポリマー合成を行った。詳しい実験操作を以下に示す。重合時間は1時間、温度は40℃で行った。また、架橋剤比率は10%とした。
テフロン(登録商標)セルを装着したQCM−D基板を重合用の50mLスクリュー瓶に入れ、セプタムで封をした。別の20mLスクリュー瓶中、表2の各組成を有するプレポリマー溶液を作製し、凍結脱気法により溶存酸素を除去した。QCM−D基板の入ったスクリュー瓶を真空引きし、直ちに脱気した10mMリン酸バッファー(pH7.4)に溶解したアスコルビン酸(100μL)を2.5mLディスポーザブルシリンジを用いてプレポリマー溶液に添加し、そのままプレポリマー溶液を吸引し、重合用スクリュー瓶にプレポリマー溶液(2mL)を添加した。グリスをセプタム上部と側面に塗布し、40℃の恒温槽(EYELA社製「UNITHREMO SHAKER NTS−1200」)で振とうすることで重合を開始した。
重合後、基板を純水で洗浄し、ポリマー内部に残存するCuイオンを除去するために1M EDTA−4Na水溶液に25℃で24時間浸漬した。その後、基板を純水で洗浄し、N2ブローで乾燥した。続いて、基板をQCM−Dフローモジュールに設置し、トリス−(2−カルボキシエチルホスフィン)(TCEP)水溶液をインジェクションすることで還元による鋳型分子の除去を行い、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により鋳型分子の除去を確認した。QCM法の測定条件を以下に示す。
測定条件
ランニングバッファー: 10mMリン酸バッファー(pH7.4)
還元剤溶液: 20mM TCEP水溶液
流速: 25μL/min
インジェクションボリューム: 2.25mL
設定温度: 25℃
オーバートーン次数:9
還元剤(TCEP)溶液をインジェクションしたところ、F値の増加が確認された。還元剤溶液をバッファーに置換した後のF値が5.5Hz(=34.0ng)であったことから、鋳型分子の除去率は91.7%と算出された。重合時間が短くポリマー膜が薄いことから、鋳型分子の除去が効率良く進行したと考えられる。
鋳型分子除去後、ピリジルジスルフィド誘導体を用いたジスルフィド交換反応により、AFPとの相互作用部位としてカルボキシ基を導入した。反応は、5mM 3−ピリジルジチオプロピオン酸水溶液に基板を25℃で24時間浸漬することで行った。反応後、基板を純水で洗浄し、10mMリン酸バッファー(pH7.4)中、4℃で保存した。
(4) AFP認識空間への蛍光レポーター化合物導入
相互作用部位導入後の基板を1mM Cy5−NHSエステルのDMSO溶液に25℃で12時間浸漬し、アルコキシアミン基とのカップリングにより蛍光レポーター化合物であるCy5をAFP認識空間に導入した。
参考例2: QCM−D測定によるポリマーの特性評価
上記実施例5で製造された分子インプリント膜のAFP結合能について、QCM−Dフローモジュールを用いて、以下の測定手法・条件によりAFP再結合実験を行った。
測定手法
(i) ランニングバッファー(10mMリン酸バッファー(pH7.4))でベースラインを安定化
(ii) タンパク質溶液をインジェクション(5分間)
(iii) ランニングバッファーをインジェクション(5分間)
(iv) 以下、上記(ii)と(iii)を繰り返し
測定条件
ランニングバッファー: 10mMリン酸バッファー(pH7.4)
流速: 25μL/min
接触時間: 5分間
インジェクションボリューム: 125μL
設定温度: 25℃
オーバートーン次数:9
タンパク質濃度:0.1,0.2,0.5,1.0,2.0,5.0,10μg/mL
(in 10mMリン酸バッファー(pH7.4))
架橋剤比率が10%のMIP膜(MIP10)を用い、QCM−D測定により得られたF値を図4(1)に、D値を図4(2)に示す。
F値の減少から、MIP膜へのAFPの吸着が確認でき、本実施例の測定条件では検出限界が250ng/mLであった。また、D値に関して、MIP膜へのAFPの吸着によって微増した。これは、MIP膜へのAFPの吸着によって、AFP自身の粘性・弾性の値がポリマーの粘性・弾性(D値)も変化として表れたと考えられる。
実施例6: 蛍光顕微鏡観察によるポリマーの特性評価
QCM−Dウィンドウモジュールに、上記実施例5で得たMIP膜形成基板を設置し、以下の条件下、蛍光顕微鏡によってAFPの吸着に伴う基板の蛍光変化を観察した。また、対照タンパク質としてヒト血清アルブミン(HSA)についても同様に測定を行った。さらに、リン酸バッファーの代わりに100希釈血清を用い、同様に実験を行った。
測定条件・操作
ランニングバッファー: 10mMリン酸バッファー(pH7.4)
流速: 25μL/min
接触時間: 5分間
インジェクションボリューム: 125μL
タンパク質濃度: 10,20,50,100,150,200ng/mL
(in 10mMリン酸バッファー(pH7.4))
(i) QCM−Dウィンドウモジュールに基板を設置し、ランニングバッファーをインジェクションし、初期蛍光(I0)を測定
(ii) AFP溶液を5分間インジェクション
(iii) ランニングバッファーを5分間インジェクションしてリンスした後、蛍光を測定
蛍光顕微鏡条件
対物レンズ: 倍率10×,N.A.0.30
蛍光フィルター: Exciter:600〜650nm,Emitter:675〜725nm
露光時間: 0.1sec
データ処理方法
(i) 測定開始前のバッファーで満たされた状態下、金基板上で5つエリアを選択し、そのエリアの平均蛍光強度の平均値をIin(t=0)、基板上の金ではない淵の部分で5つエリアを選択し、そのエリアの平均蛍光強度の平均値をIout(t=0)として得た
(ii) 各タンパク質溶液をインジェクションし、バッファーでリンスした後の金基板上で5つエリアを選択しそのエリアの平均蛍光強度の平均値をIin(t)、基板上の金ではない淵の部分で5つエリアを選択しそのエリアの平均蛍光強度の平均値をIout(t)として得た
(iii) 測定毎のずれを補正するために、以下の式に従って測定毎の平均蛍光強度を算出した
real(t)=[Iin(t)/Iout(t)]×Iout(t=0)
(iv) 以下の式から相対蛍光強度変化を算出する。
[Ireal(t)−Ireal(t=0)]/Ireal(t=0)
コモノマーに対する架橋剤比率が10%のMIP膜(MIP10)を用いて得られた結果を図5に示す。図5中、「I」はIreal(t)に対応し、「I0」はIreal(t=0)に対応している。
図5のとおり、インジェクションするタンパク質濃度の増加とともに蛍光強度の減少が確認されたことから、ポストインプリンティング修飾により特異的認識空間内に蛍光レポーター化合物を導入することで、タンパク質吸着挙動を蛍光強度により検出できることが明らかとなった。また、本発明に係るMIP膜は、HSAよりもAFPをインジェクションした場合に大きな蛍光強度の変化を示し、AFP以外の物質を含む100倍希釈血清中においてもAFPを認識可能であった。さらに、上記参考例1のとおりSPR測定法によるAFP検出限界は20ng/mL、上記参考例2のとおりQCM−D測定法によるAFP検出限界は250ng/mLであったのに対して、蛍光強度による測定でのAFPは1ng/mLと、SPR測定法の20倍、QCM−D測定法の250倍であり、蛍光強度による測定では検出感度が顕著に向上し、十分臨床応用可能な感度を示すことが明らかとなった。
実施例7: 蛍光レポーター化合物導入量と検出感度との関係の検証
AFPに導入されたチオール基はUV−vis測定から5つであることが分かっている。このうち1つが基板上への複合体の固定化に使用されているため、Cy5導入点は4箇所である。そこで、上記実施例5(4)において、Cy5−NHSエステルのDMSO溶液の代わりに、Cy5−NHSエステル:Ac−NHSエステル=1:3,2:2,4:0の混合DMSO溶液を用い、QCM−D金基板上に、AFP特異的認識空間内に蛍光レポーター化合物Cy5が導入されたAFPインプリントポリマーを形成した。溶液中におけるCy5−NHSエステルとAc−NHSエステルの濃度は、合計で1mMとなるようにした。
蛍光顕微鏡の対物レンズの倍率を4倍とし、観察エリアを5箇所から3箇所にした以外は上記実施例7と同様にして、相対蛍光強度変化を算出した。各基板におけるI0の値を表3に、タンパク質濃度と相対蛍光強度変化との関係を図6に示す。
表3と図6に示す結果より、Cy5導入比率が高いものほどI0の値が大きく、また検出感度が優れているという結果になった。この結果は、蛍光レポーター化合物の多点導入により蛍光強度そのものが大きくなり、タンパク質吸着に伴う蛍光強度変化が大きくなることで検出感度が向上したことを示しているといえる。
実施例8: 不純物を含む試料中での対象タンパク質の検出
測定試料として、AFPのみを含む水溶液の他、不純物を含む試料として100倍希釈血清にAFPを溶解した溶液と、AFPに加えて1mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含む溶液についても、上記実施例7と同様に蛍光強度変化を算出した。結果を図7に示す。
図7に示す結果のとおり、100倍希釈血清下では、本発明に係るMIP膜のAFPに対する感度はほとんど変わらない。また、BSA存在下では、感度は低下するものの、AFPの検出は十分に可能であった。
実施例9: 選択性の確認
本発明に係るMIP膜のAFPに対する選択性を確認するために、前立腺特異抗原(PSA)溶液についても上記実施例7と同様に蛍光強度変化を算出した。結果を図8に示す。
図8のとおり、本発明に係るMIP膜へのPSAの結合による蛍光強度変化は、AFPに比べて遥かに小さく、特異的認識空間への結合量が少ないという結果であった。その理由としては、本発明に係るMIP膜のAFP特異的認識空間がPSAを認識しなかったことや、PSAが特異的認識空間内に担持されなかったためであると考えられる。
参考例3: プラズモニック基板上へのHSAインプリントポリマーの作製
(1) 機能性モノマーとしてのアクリル酸ピロリジルの合成
N−Boc−3−ヒドロキシピロリジン(561.6mg,3.0mmol)とN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,784μL,4.5mmol)をジクロロメタンに溶解させ、そこに滴下ロートを用いて塩化アクリル(363μL,4.5mmol)のジクロロメタン溶液を加えた。氷冷下で1時間撹拌した後、さらに室温で12時間撹拌した。反応後、反応溶液を飽和NaHCO3水溶液と飽和クエン酸水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒をエバポレーターにて減圧留去した後、オートカラム(YAMAZEN社製,溶離液:EtOAc/Hex=1/1)にて精製を行い、透明オイル状の中間体を得た。1H−NMR(300MHz,d−CDCl3)で中間体の合成を確認した。
収量:577.6mg(2.39mmol), 収率:79.8%
得られた中間体(577mg,2.39mmol)をジクロロメタンに溶解させ、氷冷下(0℃)で撹拌した。そこに4.0M HCl/ジオキサン(4.0mL,8.00mmol)のジクロロメタン溶液を加え、そのまま一晩撹拌した。反応溶液中に生じた沈殿物を桐山濾過にて回収し、真空乾燥させることで白色固体状の目的物3を得た。1H−NMR(300MHz,d−CDCl3)で目的物の合成を確認した。
収量:389.1mg(2.19mmol), 収率:91.7%
(2) 3−(2−ピリジル)−ジチオプロピオン酸の合成
2,2’−ジピリジルジスルフィド(404.6mg,1.84mmol)と酢酸(50μL)をエタノールに溶解させ、そこに3−メルカプトプロピオン酸(104μL,1.2mmol,エタノール溶液)を約30分かけて添加した。その後、室温にて一晩撹拌して、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=2/3→1/1(v/v))にて精製した。1H−NMR(300MHz,d−CDCl3)で目的物の合成を確認した。
収量:233.2mg(1.08mmol), 収率:90%
(3) ピリジルチオエチルアミン塩酸塩の合成
2,2’−ジピリジルジスルフィド(2.21g,10.0mmol)と酢酸(0.8mL)をメタノール(20mL)に溶解させ、そこに2−アミノエタンチオール塩酸塩(0.57g,5.0mmol,10mLメタノール溶液)を30分かけて加えた。添加後、反応液を24時間室温にて撹拌した。反応後、反応液をエバポレーターにて減圧留去し、残渣をジエチルエーテルにて2回洗浄した。洗浄後、少量のメタノール(5mL)に再溶解させ、過剰量(25mL)のジエチルエーテルを加えることで目的物を沈殿させた。この操作を2回行った。得られた沈殿をMilli−Q水に溶解させ、1M水酸化ナトリウム水溶液にてpHを9に調整し、酢酸エチルにて4回抽出した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を減圧留去して目的物を得た。1H−NMR(300MHz,d−CDCl3)で目的物の合成を確認した。
収量:301mg(2.74mmol), 収率:54.7%
(4) プラズモニックチップの作製
無リン酸洗浄剤(「decon(登録商標)」ARBROWN社製)の5vol%溶液、純水、純水、エタノールを順に用いて、ガラス基板をそれぞれ10分間ずつ超音波洗浄した。超音波洗浄後、エタノールでリンスし、ドライヤーで乾燥させた。純水:エタノール:1mol/L酢酸=50:25:25(容量基準)の混合溶液に3−メタクリロイルプロピルトリメトキシシランを溶解した1vol%溶液に、超音波洗浄したガラス基板を浸漬させ、40℃で1時間反応させた。メタクリロイル化ガラス基板をエタノールでリンスし、ドライヤーで乾燥させた。
メタクリロイル化したガラス基板の上からUV硬化性樹脂を滴下し、石英ガラス製のモールド1(25×25mm,周期構造:4×4mm,周期:500nm,溝深さ:30nm,凹凸比:0.5)、或いはモールド2(4.3×9.8mm,周期構造:3×3mm,周期:480nm,溝深さ:27nm,凹凸比:0.55)を上から被せた。続いてUVを照射し、光ナノインプリント法により周期構造を作製した後、エタノールで3分間超音波洗浄し、真空下で乾燥させた。
周期構造がインプリントされたガラス基板を、Ar雰囲気下、室温でrfスパッタを行った。Agベースのプラズモニックチップは、3nm程度のTi、145±15nmのAg、3nm程度のTi、最後に消光抑制層として20nm程度のSiO2を成膜した。Auベースのプラズモニックチップは、3nm程度のTi、150±15nmのAu層を成膜した。図9はモールド2で作製したAgベースのプラズモニックチップの走査型プローブ顕微鏡による観察画像である。
(5) プラズモニックチップ上へのHSAインプリントポリマーの作製
モールド1で周期構造を形成し、チタンと金をスパッタしたプラズモニックチップ(以下、「Ti/Auプラズモニックチップ」という)をDMFと純水で洗浄後、20分間UV−O3処理した。次に、シリコンシートを貼り付け、2.5mMビス[2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)ウンデシル]ジスルフィドと5mM 11−アミノ−1−ウンデカンチオール塩酸塩の混合DMF溶液(SAMのモル比:Br/NH2=1/1)(100μL)を滴下し、25℃、24時間反応させることでMixed SAMを作製した。反応後、DMFと純水で洗浄し、N2ガスによって乾燥させた。
Mixed SAM形成Ti/Auプラズモニックチップ上に、5mM DIEA,5mM EDC・HCl,5mM 3−(2−ピリジル)−ジチオプロピオン酸の混合DMF溶液(100μL)を滴下し、室温で2時間反応させた後、DMFで洗浄することで、ジスルフィドを導入した。
ジスルフィドを導入したTi/Auプラズモニックチップ上に、5mMチオグリコール酸水溶液(100μL)を滴下し、室温で2時間反応させることでジスルフィド交換反応によりカルボン酸を導入した。反応後、純水で洗浄した。
カルボン酸を導入したTi/Auプラズモニックチップ上に、5mM N−ヒドロキシスクシンイミド,5mM DIEA,5mM EDC・HClの混合DMF溶液(100μL)を滴下し、室温で2時間反応させて、活性エステルを導入した。反応後、DMFで洗浄した。
活性エステルを導入したTi/Auプラズモニックチップ上に、ヒト血清アルブミン(HSA)の100μg/mLリン酸緩衝液溶液(pH7.4,100μL)を滴下し、室温で1時間反応させることで、HSAを固定化した。反応後、純水で洗浄した。
HSA固定化Ti/Auプラズモニックチップに2mMアクリル酸ピロリジル,30mM MPC,8mM MBAA,0.5mM CuBr2,1mM 2,2’−ビピリジル混合水溶液(120μL)を滴下し、脱気窒素置換を行った。0.25mM L−アスコルビン酸水溶液(30μL)を滴下し、表面開始アクチベーターによる原子移動ラジカル重合(SI−AGET−ATRP)を開始し、25℃で1時間反応させた。プレポリマー溶液の組成を表4に示す。重合後、純水で洗浄した。次いで、200mM EDTA−4Na溶液を滴下し、室温で一晩反応させることにより銅(Cu2+)を除去した。
銅除去後のTi/Auプラズモニックチップ上に、5mM トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン水溶液(100μL)を滴下し、室温で2時間反応させることでジスルフィド結合を還元した。反応後、純水で洗浄した。
還元したTi/Auプラズモニックチップ上に、330mM NaCl,0.33wt% SDS混合水溶液(100μL)を滴下し、室温で2時間静置することでHSAを除去した。静置後、純水で洗浄した。
HSA−MIP上に、5mM ピリジルチオエチルアミン塩酸塩の水溶液を滴下し、室温で2時間反応させ、ジスルフィド交換反応により1級アミンを導入した。反応後純水で洗浄した。
HSA−MIP薄膜内のHSA鋳型空間内に蛍光分子を導入する場合は、以下の操作を行った。1級アミンを導入したHSA−MIPに、5mM Cy3.5−NHS DMF溶液、5mM Cy5−NHS DMF溶液、或いは2.5mM Cy3.5−NHSと2.5mM Cy5−NHSの混合DMF溶液をそれぞれ滴下し、室温で1時間反応させた。反応後、DMFで洗浄した。
参考例4: プラズモニックチップにおける周期構造による蛍光増強効果
参考例3で作製したHSA−MIPプラズモニックチップに、0nM,50nM,100nM,200nM,400nMまたは800nMのCy5ラベル化HSA溶液(10mMリン酸緩衝液,pH7.4)を50μL滴下し、10分間反応させた。Cy5ラベル化HSAについては、Cy5ラベル化キットを用い、定法により作製した。反応後、10mMリン酸緩衝液(pH7.4,100μL)で3回リンスした。次いで、以下の条件下、蛍光顕微鏡で測定し、プラズモニックチップの周期構造による蛍光増強効果について評価した。
蛍光顕微鏡: IX−73(Olympus社製)
カメラ: U−HGLGPS(Olympus社製)
対物レンズ: ×10
露光時間 0.5秒
Cy5用蛍光フィルター: Exciter:608〜648nm,Emitter:672〜712nm
結果を図10に示す。図10に示すように、Cy5−HSAの濃度とともに蛍光強度は上昇する様子が観察され、周期構造内と周期構造外でその蛍光強度を比較したところ、周期構造内では蛍光強度は約6.5倍大きく、周期構造による蛍光増強効果が確認された。
よって、プラズモニックチップの特異的認識空間内へ、さらに標的タンパク質であるHSAと相互作用可能なポストインプリンティング化合物を挿入すれば、より一層高感度での測定が可能になることが予想される。
参考例5: ポストインプリンティング修飾法により蛍光物質を導入したHSA−MIPプラズモニックチップでのHSA蛍光検出
(1) Cy3.5導入HSA−MIPでのHSA蛍光検出
蛍光分子としてCy3.5を導入したHSA−MIPと、濃度3.125nM,6.25nM,12.5nM,25nMまたは50nMのHSAの10mMリン酸緩衝液溶液(pH7.4,50μL)溶液をそれぞれ20分間反応させた後、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)でリンスし、下記条件下、蛍光顕微鏡で測定した。
蛍光顕微鏡: IX−73(Olympus社製)
カメラ: U−HGLGPS(Olympus社製)
対物レンズ: ×10
露光時間: 0.1秒
Cy3用蛍光フィルター: Exciter:511〜551nm,Emitter:573〜613nm
結果を図11に示す。図11に示すように、HSA濃度上昇と共に相対蛍光強度は減少し、Cy3.5を導入したHSA−MIPプラズモニックチップにてHSAの結合情報を蛍光強度変化として読み出すことが可能であることが実証された。
(2) Cy5導入HSA−MIPでのHSA蛍光検出
蛍光分子としてCy5を導入したHSA−MIPと、濃度3.125nM,6.25nM,12.5nM,25nMまたは50nMのHSAの10mMリン酸緩衝液溶液(pH7.4,50μL)溶液をそれぞれ20分間反応させた後、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)でリンスし、下記条件下、蛍光顕微鏡で測定した。
蛍光顕微鏡: IX−73(Olympus社製)
カメラ: U−HGLGPS(Olympus社製)
対物レンズ: ×10
露光時間: 0.1秒
Cy5用蛍光フィルター: Exciter:608〜648nm,Emitter:672〜712nm
結果を図12に示す。図12に示すように、HSA濃度上昇と共に相対蛍光強度は減少し、Cy5を導入したHSA−MIPプラズモニックチップにてHSAの結合情報を蛍光強度変化として読み出すことが可能であることが実証された。
(3) Cy3.5+Cy5導入HSA−MIPでのHSA蛍光検出
蛍光分子としてCy3.5とCy5を導入したHSA−MIPと、濃度3.125nM,6.25nM,12.5nM,25nMまたは50 nMのHSAの10mMリン酸緩衝液溶液(pH7.4,50μL)をそれぞれ20分間反応させた後、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)でリンスし、下記条件下、蛍光顕微鏡で測定した。
蛍光顕微鏡: IX−73(Olympus社製)
カメラ: U−HGLGPS(Olympus社製)
対物レンズ: ×10
露光時間: 0.1秒
Cy3用蛍光フィルター: Exciter:511〜551nm,Emitter:573〜613nm
Cy3−Cy5用蛍光フィルター: Exciter:511〜551nm,Emitter:672〜712nm
Cy3−Cy5用蛍光フィルター用いた結果を図13(1)に、Cy3用蛍光フィルターを用いた結果を図13(2)に示す。図13に示すように、Cy3−Cy5用フィルターで観察した場合にはHSAの濃度とともに相対蛍光強度は減少し、逆にCy3用フィルターで観察した場合にはHSAの濃度とともに相対蛍光強度は上昇した。この結果は、HSA鋳型空間内においてCy3.5とCy5との間で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を起こっていたが、HSAと相互作用することにより解消され、Cy3.5の蛍光強度が上昇し、Cy5側の蛍光強度は減少したものと考えられる。このように、Cy3.5とCy5を導入したHSA−MIPプラズモニックチップにてHSAの結合情報を蛍光強度変化として読み出すことが可能であることが実証された。
参考例6: ボロン酸との結合により前立腺特異抗原(PSA)を配向固定化した分子インプリントポリマーの作製
(1) 機能性モノマーの合成
(1−1) N−Boc−エチレンジアミンの合成
二炭酸 ジ−tert−ブチル(2.0g,9.08mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、エチレンジアミン(7.0mL,100mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解させた溶液に、氷冷下で攪拌しながら1時間かけて滴下し、室温で一晩攪拌した。TLCにて二炭酸 ジ−tert−ブチルのスポット(Rf=0.8,展開溶媒:ジクロロメタン,アニスアルデヒドで発色)の消失および生成物のスポット(Rf=0.3,展開溶媒:メタノール,ニンヒドリンで発色)を確認し、反応終了とした。反応溶液を減圧留去し、残渣に水を加えてジ−Boc−エチレンジアミンを析出させメンブレンフィルター(孔径:0.22μm)を用いて濾別した。炭酸ナトリウムを用いて溶液を塩基性にした後、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。TLCのスポットは1つ(Rf=0.3,展開溶媒:メタノール,ニンヒドリンで発色)になった。溶媒を減圧留去し、真空乾燥を行うことで無色のオイル状の生成物を得た。1H−NMRにて目的物であることを確認した。
収量:882mg, 収率:60.5%
(1−2) 2−メタクリロイルアミノエチルカルバミン酸 tert−ブチルエステルの合成
メタクリル酸(556μL,6.6mmol)、EDC・HCl(1371mg,7.15mmol)およびDIEA(1240μL,7.15mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解した。N−Boc−エチレンジアミン(882mg)をジクロロメタン(5mL)に溶解した溶液を、氷冷および窒素雰囲気下で加え、2時間攪拌したのち室温で一晩攪拌した。目的物のスポット(Rf=0.62,展開溶媒:メタノール,ニンヒドリン発色とUVを使用)を確認して反応を終了とした。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、クエン酸水溶液、および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。このときTLCのスポットは2つ(Rf=0.62と0.25,展開溶媒:メタノール,ニンヒドリン発色とUVを使用)であった。溶液を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(オートカラム,溶離液:酢酸エチル/ジクロロメタン=1/1⇒1/0)にて精製を行い、白色固体状の目的物を得た。1H−NMRにより目的物であることを確認した。
収量:938mg, 収率:74.9%
(1−3) 2−メタクリロイルアミノエチルカルバミン酸塩酸塩の合成
2−メタクリロイルアミノエチルカルバミン酸 tert−ブチルエステル(938mg,4.12mmol)をジクロロメタンに溶解し、氷冷下で攪拌しながら4.0M HCl/ジオキサン(4eq,4.13mL,16.52mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。目的物のスポット(Rf=0,展開溶媒:酢酸エチル,ニンヒドリン発色とUVを使用)の出現、また原料のスポット(Rf=0.45,展開溶媒:酢酸エチル,ニンヒドリン発色とUVを使用)の消失を確認し、反応終了とした。生成した白色の沈殿をジエチルエーテルで洗浄した。1H−NMRにより目的物であることを確認した。
収量:628mg, 収率:92%
(1−4) 4−[2−(N−メタクリルアミド)エチルアミノメチル]安息香酸の合成
2−メタクリロイルアミノエチルカルバミン酸塩酸塩(130mg,1mmol)とトリエチルアミン(280μL,2mmol)をメタノール(5mL)に溶解し、氷冷下で攪拌しながら4−ホルミル安息香酸(150mg,1mmol)を加え、氷冷下で2時間、室温で一晩攪拌した。TLCにて反応生成物である4−[2−(N−メタクリルイミド)エチルアミノメチル]安息香酸のスポットを確認した(Rf=0.56,展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=1/1,ニンヒドリン発色とUVを使用)。氷冷下で反応溶液に還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(38mg,1mmol)を加え、2時間攪拌した。TLCで目的物のスポット(Rf=0.55,展開溶媒:メタノール,ニンヒドリン発色とUVを使用)を確認した。また、未反応の4−[2−(N−メタクリルイミド)エチルアミノメチル]安息香酸のスポット(Rf=0.67,展開溶媒:メタノール,ニンヒドリン発色とUVを使用)を確認したので水素化ホウ素ナトリウム(20mg,0.53mmol)を追加し、さらに2時間攪拌した。還元前の化合物のスポットの消失を確認し、反応溶液に純水を加えて反応を停止した。反応後の溶液を減圧濃縮し、得られた残渣をジクロロメタンで洗浄した。残渣をMeOHに溶解しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(オートカラム,溶離液:メタノール/ジクロロメタン=1/3⇒1/1)にて精製し、白色固体を得た。1H−NMRにより目的物であることを確認した。
収量:101.3mg, 収率:38.6%
(2) リンカー分子であるO−(2−カルボキシエチル)−O’−(2−ピリジルジチオエチル)ヘプタエチレングリコールの合成
2,2’−ジピリジルジスルフィド(137mg,3eq)と酢酸(40μL)をメタノールに溶解させ、そこに、溶解させたO−(2−カルボキシエチル)−O’−(2−メルカプトエチル)ヘプタエチレングリコール(100mg,0.208mmol)をメタノールに溶解させた溶液を滴下し、室温で一晩撹拌した。溶液は透明から黄色に変化した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(オープンカラム,溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1⇒酢酸エチル⇒酢酸エチル/メタノール=4/1)にて精製を行い、無色のオイル状の物質を得た。1H−NMRにより目的物であることを確認した。
収量:48mg, 収率:40%
(3)ガラス基板上へのPSAインプリント薄膜の合成
ガラス基板(0.5×10mm)をピラニア溶液に5分間浸漬し、エタノールで洗浄後1% 3−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液(溶媒:エタノール/水=95/5)に1時間浸漬させた。基板をエタノールで洗浄した後、ホットプレートを用いて110℃で15分間焼成した。
1.5mMリンカー分子,3mM Boc−NH−PEG6−COOH,0.1M EDC・HCl,および0.1M DIEAをジクロロメタン(2mL)に溶解し、APTES修飾したガラス基板を25℃で12時間浸漬した。その後、20mM HCl/ジオキサンのジクロロメタン溶液に浸漬し、25℃で3時間静置して脱保護した。飽和炭酸ナトリウム水溶液で基板を洗浄した。10mM 4−ブロモイソブタン酸,0.1M EDC・HCl,および0.1M DIEAを含むジクロロメタン溶液に12時間浸漬した。10mM シスタミン塩酸塩水溶液に基板を25℃で2時間浸漬し、ジスルフィド交換反応によりアミノ基を導入した。10mM 4−カルボキシ−3−フルオロフェニルボロン酸と10mM DMT−MMを含むエタノール溶液に浸漬し、ボロン酸で表面修飾した基板を作製した。
上述した手順でボロン酸と重合開始基を導入したガラス基板に、1μg/mL PSAの10mMリン酸緩衝液(pH7.4)溶液を滴下し、室温で1時間静置することで基板にPSAを固定化した。次いで、表5に示した組成のプレポリマー溶液を用いて、40℃で1時間、基板上で重合反応を行った。
重合後、1M EDTA−4Na水溶液に1時間浸漬した。次いで、10mM トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン溶液に25℃で12時間浸漬し、リンカーのジスルフィド結合を還元し、純水で基板を洗浄した。330mM塩化ナトリウムと0.5wt% SDSを含む水溶液に15分間浸漬し、リンスして基板を洗浄した。
洗浄後、1mM Cy5−マレイミドのDMF溶液に基板を30分間浸漬した後、DMFと純水で洗浄することにより、基板の特異的認識空間内に蛍光分子を導入した。
以上のとおり、標的タンパク質に含まれる糖鎖を利用して標的タンパク質をSAM表面に結合させても、分子インプリントポリマーの作製が可能であることが明らかとなった。
参考例7: 特異的リガンドであるヘパリンを介して血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を配向固定化した分子インプリントポリマーの作製
(1) チオール誘導体化ヘパリンの合成
高分子量ヘパリン(平均で約5.56μmol)を酢酸水溶液(1mL)に溶解し、p−アミノチオフェノール(3.48mg,27.8μmol,5eq.)および還元剤として2−ピコリンボラン(5.7mg,27.8μmol,5eq.)を40〜70μLのメタノールに溶解させた溶液を加え、室温で24〜48時間激しく攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで3回洗浄することにより、p−アミノチオフェノール、2−ピコリンボランおよび副生成物を除去し、水相を凍結乾燥して36.96mgの白色粉末を得た。分画分子量(MWCO)10000および5000のフィルタで限外ろ過して、分子量分布がMw:6000〜10000とMw:10000〜12000のチオール誘導体化高分子量ヘパリンを得た。
(2) 金基板上へのVEGF165−インプリント薄膜の合成
金基板をエタノールと純水でリンスし、N2ガスで乾燥後、20分間UV−O3処理して基板を洗浄した。その後、直ちに0.5mM 11−スルファニロウンデカ−1−イル 2−ブロモ−2−メチルプロピオネートおよび0.5mM (11−メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)の混合エタノール溶液(1mL)30℃で24時間浸漬させ、金基板上にmixed SAMを形成した。mixed SAMを形成した基板は、エタノールと純水でリンスし、N2ガスで乾燥後、遮光下真空中で保存した。
Mixed SAM膜を形成させた金基板を5mMのMAL−dPEG4−NHSの乾燥ジクロロメタン溶液(1mL)に浸漬させて、N2雰囲気下、遮光して25℃にて18時間マレイミド基の導入を行った。反応終了後、ジクロロメタンとエタノールでリンスし、N2ガスで乾燥させ、使用前まで真空下で遮光して保存した。
マレイミド基を導入した金基板にシリコンフレームをかぶせ、チオール化されたヘパリンの濃度が約40μMとなるよう高分子量ヘパリンを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解して溶液を調製し、シリコンフレーム内に100μL注入し、25℃で2時間インキュベートしてヘパリンの固定化を行った。その後、100μLの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)でセル内を3回洗浄した。
低分子のチオール化合物である2−{2−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノールを用いて、基板上に未反応で残存するマレイミド基をキャッピングした。2−{2−[2−(2−メルカプトエトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノールを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解して作製した濃度500μMの溶液(100μL)をテフロンセルないしシリコンフレーム内に注入し、25℃で1時間インキュベートした。その後、100μLの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)でセル内を3回洗浄した。
次に、セル内を10mMリン酸緩衝液(pH7.4)で置換した後、VEGF165ストック溶液(濃度:100μg/mL,溶媒:0.1wt%エンドトキシンフリーHSAまたはBSAを含む殺菌水)を10mMリン酸緩衝液(pH7.4)で10倍に希釈して濃度を10μg/mLとし、テフロンセル中に100μL入れて25℃で2時間インキュベートすることにより、VEGF165を固定化した。その後、100μLの10mMリン酸緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。
VEGF165固定化基板に、表面開始アクチベーターによる原子移動ラジカル重合(SI−AGET−ATRP)によりポリマーを作製した。具体的には、表6に示すプレポリマー溶液組成のうちL−アスコルビン酸以外を10mM Tris−HCl緩衝液(120μL)に溶解させて、別容器でフリーズポンプソーにより脱気しておいた。また、L−アスコルビン酸溶液も調製し、別容器でフリーズポンプソーにより脱気しておいた。
純水をなじませておいたVEGF165固定化基板をシュレンクフラスコ内に固定し、5回脱気窒素置換を行った。置換後のシュレンクフラスコ内に、アスコルビン酸を含まないプレポリマー溶液とL−アスコルビン酸溶液をこの順でシリンジにより注入し、再度シュレンクフラスコ内を5回脱気窒素置換し、真空にした。L−アスコルビン酸溶液の注入前後で溶液の色が水色から茶色に変わったことから、重合が開始したと考えられる。重合反応はインキュベータ内で25℃で4時間行った。
重合終了後、テフロンセルから基板を取り出して純水で洗浄し、1MのEDTA 4Na水溶液(1mL)に一晩浸漬させ残存銅(Cu2+)を除去した。さらに、2M塩化ナトリウム水溶液(1mL)に6時間、続けて0.5wt%のTriton X−100水溶液に3時間浸漬して、タンパク質を除去した。その後、純水で洗浄しN2ガスで乾燥させた。
以上のとおり、分子−分子間相互作用を利用して標的タンパク質をSAM表面に結合させても、分子インプリントポリマーの作製が可能であることが明らかとなった。
参考例8: プラズモニックチップを用いた蛍光測定と増強効果
上記参考例3(4)でモールド2を用いて作製したAgベースのプラズモニックチップ(5×10×0.5mm)を20分間UV−O3処理した後、2wt%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)と1wt%酢酸を含む水溶液(10μL)を滴下し、40℃で1.5時間反応させた。反応後、純水とエタノールをかけ流して洗浄し、80℃ホットプレート上で2時間焼成した。このアミノ化プラズモニック微小反応板上に10mMビオチン−NHSと10mM DMAPのDMSO溶液(10μL)を滴下し、カバーガラスをかけ、25℃で1時間反応させた後、DMSOで洗浄して反応板上にビオチンを導入した。
ビオチン導入プラズモニック微小反応板を反応内蔵チップにセットし、蛍光顕微鏡用ユニットを取り付けた小型自動分注・反応・計測装置(システム・インスツルメンツ社製,図16)により蛍光測定を行った。蛍光顕微鏡用ユニットの構成は以下の通りである。
カメラ: ZYLA(Olympus社製)
対物レンズ: ×5
露光時間: 0.1秒
Cy5用蛍光フィルター: Exciter:608〜648nm,Emitter:672〜712nm
まず、1mg/ml BSA含有PBS溶液(100μL)をピペットに吸い上げてブロッキングし、次いで150μLのPBSで4回洗浄した後、蛍光強度F0を測定した。次いで、Cy5ラベル化ストレプトアビジンを1mg/mL BSA含有PBS溶液に溶解した濃度100ng/mL(1.88nM)の溶液(100μL)をピペットに吸い上げて5分間インキュベーションした後、150μLのPBSで4回洗浄し、蛍光強度Fを測定した。結果を図14と図15に示す。
図14に示すように、反応内蔵チップによるプラズモニック反応板の蛍光測定が可能であり、また周期構造内では周期構造外に比べて蛍光強度が強く、明るいことが確認された。プラズモニックチップ3枚について同様の実験を行い、周期構造内と周期構造外でその蛍光強度を比較したところ、図15に示すように周期構造内では蛍光強度は約9倍大きく、周期構造による蛍光増強効果が確認された。
参考例9: プラズモニックチップを用いた蛍光測定
(1) シランカップリング反応によるチップ表面へのNH2基とSH基の導入
Ti/Ag/Au/Ti/SiO2プラズモニックチップをエタノールと純水で洗浄した。厚さ0.2mmのシリコンシートをプラズモニックチップの大きさに合わせて切り、中央に直径7mm程度の穴を空けたものをプラズモニックチップの周期構造内が見えるように貼り付けた。次に0.1wt% 3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および0.1wt% (3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランを含む水溶液(100μL)を中央部の穴に滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(2) 縮合反応によるチップ表面へのBr基の導入
上記(1)で得られた表面NH2,SH化プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、5mM 2−ブロモイソブチリックアシッド(1eq),7.5mM 4−(4と6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド n水和物(DMT−MM)(1.5eq)の混合水溶液(100μL)をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(3) マレイミドとチオールのカップリング反応によるPEGリンカーの導入
上記(2)で得られた表面Br,NH2化プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、2mM MAL−dPEG(登録商標)4−NHSエステル水溶液(100μL)をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(4) アミンカップリング反応によるジスルフィドの導入
上記(3)で得られた表面Br,NHSエステル化プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、1mMピリジルチジオエチルアミン塩酸塩水溶液(100μL)をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(5) ジスルフィド交換反応によるチオール化AFPの導入
上記(4)で得られた表面Br,ジスルフィド化プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、100nMチオール−AFP リン酸緩衝液(pH7.4)溶液(100μL)をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(6) ジスルフィド交換によるAFPのキャッピング
上記(5)で得られた表面Br,チオール−AFP化プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、5mMヒドロキシエチルピリジルジスルフィド水溶液をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(7) 表面開始AGET ATRPによるポリマー薄膜の作製
上記(6)で得られた表面Br,AFP化プラズモニックチップを、NS共通摺合三角フラスコ(50mL,24/40のセプタム用)内に入れ、2mMピロリジルアクリレート、30mM MPC、8mM MBAA、0.5mM CuBr2および1mM 2,2’−ビピリジルの混合水溶液(120μL)をシリコンシート内の穴に滴下させ、セプタムでふたをし、脱気窒素置換を5回行った。0.25mM L−アスコルビン酸水溶液(30μL)をシリンジにて滴下し、脱気窒素置換を5回行い、SI−AGET−ATRPを開始した。重合は25℃で1時間行った。重合後、チップを純水で洗浄し、50mM EDTA−4Na水溶液をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間静置して銅を除去した。プレポリマー溶液の組成を表7に示す。
(8) MIP内からのThiol−AFPの除去
上記(7)で得られたポリマー薄膜作製プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に50mM TCEP−100mM酢酸バッファ(pH5.0)溶液(100μL)を滴下し、25℃で6時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。さらに、還元したポリマー薄膜作製プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、330mM NaClと0.33wt% SDSの混合水溶液(100μL)を滴下し、25℃で1時間静置した。1時間後、純水で洗浄した。
(9) ジスルフィド交換によるNH2基の導入
上記(8)で得られたAFP−MIP修飾プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、1mMピリジルジチオエチルアミン塩酸塩水溶液(100μL)をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(10) アミンカップリング反応によるAlexa647とBHQ−3の導入
上記(9)で得られた表面NH2基導入AFP−MIP修飾プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、蛍光レポーター化合物であるAlexa Fluor(登録商標)647 NHSエステルを20μMと、消光剤であるBHQ−3カルボン酸を5μM含む7.5%DMSO 10mMリン酸緩衝液(pH7.4)溶液(100μL)をピペットマンにて滴下し、25℃で1時間反応させた。反応後、純水で洗浄した。
(11) AFP結合実験
上記(10)で得られたAFP−MIP修飾プラズモニックチップ上のシリコンシートの穴の中に、10mMリン酸緩衝液(pH7.4,30μL)を滴下し、丸型カバーガラスを被せ、蛍光顕微鏡にてBackground測定を行った(測定値:F0)。続いて、濃度62.5pM、125pM、250pM、500pMまたは1000pMのAFPの10mMリン酸緩衝液(pH7.4)溶液(20μL)をそれぞれ20分間反応させ、以下の条件で蛍光強度を測定した(測定値:F)。
蛍光顕微鏡: IX−73(Olympus社製)
カメラ: U−HGLGPS(Olympus社製)
対物レンズ: ×10
露光時間 :プラズモニックチップ0.5秒
Cy5用蛍光フィルタ: Exciter:608−648 nm,Emitter:672〜712nm
測定結果を図17に示す。図17に示す結果の通り、APF濃度が0の場合は消光剤であるBHQ−3により蛍光化合物Alexa647の蛍光が消されてしまっているが、AFPがMIP膜に結合することによって、AFP濃度依存的にAlexa647の蛍光が回復して蛍光強度が高まった。このように、MIPの特異的認識空間内に消光剤と蛍光レポーター化合物を結合させることにより、標的タンパク質の定量が可能であることが分かった。

Claims (6)

  1. 標的タンパク質に対する特異的認識空間を有する分子インプリントポリマーを製造するための方法であって、
    上記標的タンパク質を構成する分子の反応性基(1)を介して、末端にビニルモノマー基を有し且つ末端以外の部分に切断性基(1)を有する機能性モノマー(I)を複数結合させる工程(ここで、上記切断性基(1)は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基を示す);
    上記標的タンパク質を構成する分子の反応性基(2)を介して、末端にビニルモノマー基を有し且つ末端以外の部分に切断性基(2)を有する機能性モノマー(II)を複数結合させる工程(ここで、上記切断性基(2)は、ジスルフィド結合基、イミノ結合基、ボロン酸cisジオールエステル基、またはカルボン酸エステル基であって、上記切断性基(1)とは異なる基を示す);
    基材上に自己組織化単分子膜を形成する工程;
    上記自己組織化単分子膜の表面へ、上記標的タンパク質を結合させる工程;
    ビニルモノマーを添加し、上記機能性モノマー(I)および上記機能性モノマー(II)のビニルモノマー基と共重合させる工程;
    少なくとも上記切断性基(1)および切断性基(2)を切断することにより、上記標的タンパク質を除去する工程;
    上記切断性基(1)を切断することにより生成する基に、上記反応性基(1)と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させるか、または、上記切断性基(2)を切断することにより生成する基に、上記反応性基(2)と相互作用するポストインプリンティング化合物を複数結合させる工程;および、
    上記切断性基(1)を切断することにより生成する基または上記切断性基(2)を切断することにより生成する基であって、上記ポストインプリンティング化合物を結合させなかった基に、蛍光レポーター化合物を複数結合させる工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 上記反応性基(1)または反応性基(2)としてアミノ基を利用し、当該アミノ基に2−イミノチオランを反応させることによりチオール基を導入し、当該チオール基に上記機能性モノマー(I)または機能性モノマー(II)を結合させる請求項1に記載の方法。
  3. 特異的認識空間に挿入される標的タンパク質を構成するアミノ酸残基の反応性基(1)または反応性基(2)と相互作用するポストインプリンティング化合物が特異的認識空間内に複数導入されており、且つ、
    蛍光レポーター化合物が特異的認識空間内に複数導入されていることを特徴とする分子インプリントポリマー。
  4. ベース基板、表面プラズモン共鳴光を発生し得る金属からなる金属層、消光抑制層をこの順で含み、
    上記ベース基板、金属層および消光抑制層の表面には複数の凹部からなる周期構造が形成されており、
    上記周期構造上に、請求項3に記載の分子インプリントポリマーが形成されていることを特徴とするプラズモニックチップ。
  5. 直径2mm以上、6mm以下の円形孔を通過可能な形状を有する請求項4に記載のプラズモニックチップ。
  6. 試料中における上記標的タンパク質を検出する方法であって、
    請求項3に記載の分子インプリントポリマー、または請求項4もしくは請求項5に記載のプラズモニックチップの分子インプリントポリマーと、上記試料を接触させる工程、および、
    上記分子インプリントポリマーと上記試料との接触による蛍光強度の変化を測定する工程を含むことを特徴とする方法。
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