JP2004346148A - マスターバッチ樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ABS系樹脂と特定のマスターバッチ樹脂組成物から耐熱性ABS系樹脂を製造する際、その押出し条件及び得られた樹脂ペレットを成形する際の成形条件の条件幅を広げ、良好な強度、外観を持つ耐熱性ABS系樹脂を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が10万〜16万である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜60質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である可塑剤(d)を0.5〜3質量%からなり、かつ(a)〜(d)が合計で100質量%である樹脂組成物であって、該樹脂組成物の高温側のガラス転移温度が135〜145℃であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】重量平均分子量が10万〜16万である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜60質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である可塑剤(d)を0.5〜3質量%からなり、かつ(a)〜(d)が合計で100質量%である樹脂組成物であって、該樹脂組成物の高温側のガラス転移温度が135〜145℃であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物、及びこれを用いた耐熱性樹脂組成物に関し、特に本発明のマスターバッチ樹脂組成物を用いるこにより、耐熱性ABS系樹脂組成物を簡便かつ効率的に得ることができ、また強度に優れた物性及び良好な外観性より、自動車部品、電気・電子部品、雑貨等の分野に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、マレイミド系共重合体変性の耐熱性ABS樹脂は、マレイミド系共重合体とABS系グラフト共重合体及びAS系共重合体を同時に混練混合し、マレイミド系共重合体変性の耐熱ABS系樹脂を製造していた(例えば特許文献1を参照。)。
この場合、各耐熱レベルに応じて異なった樹脂ペレットを必要とするため、品質管理、在庫管理が煩雑であり、又、マレイミド変性の耐熱性ABS樹脂を得る為の押出条件として混練性の強い2軸押出機を用いないとマレイミド系共重合体の分散性が不十分となり、成形した際の成形品の外観性の低下や衝撃強度の低下等良好な物性が得にくいという欠点があった。
このため、これらの欠点を解消するため、耐熱性マスターバッチ樹脂とABS系樹脂とを混練混合する方法が提案された。しかしながら、これら製造方法では、耐熱性樹脂組成物を得るための押出し条件、樹脂成形体を得る為の成形条件に制限があり、その制限を逸脱すると成形外観の低下、物性の低下を招き、必ずしも十分とは言えなかった。(例えば特許文献2、特許文献3を参照)
【0003】
【特許文献1】
特公平2−41544公報
【特許文献2】
特開平7−316384公報
【特許文献3】
特公平10−36614公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ABS系樹脂と特定のマスターバッチ樹脂組成物から耐熱性ABS系樹脂を製造する際、その押出し条件及び得られた樹脂ペレットを成形する際の成形条件の条件幅を広げ、良好な強度、外観を持つ耐熱性ABS系樹脂を提供することを可能とする耐熱性マスターバッチ樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、重量平均分子量が10万〜16万である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜57質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である可塑剤(d)を0.5〜3質量%からなり、かつ(a)〜(d)が合計で100質量%である樹脂組成物であって、該樹脂組成物の高温側のガラス転移温度が135〜145℃であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物である。
【0006】
また、本発明は、好ましくは芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)が芳香族ビニル単量体40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜60質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる共重合体、ABS系グラフト共重合体(b)がゴム状重合体30〜70質量部の存在下に芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる単量体混合物30〜70質量部をグラフト共重合して得られる共重合体、及びAS系共重合体(c)が芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%およびその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる共重合体であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物である。
【0007】
また本発明は、上記記載のマスターバッチ樹脂組成物10〜70質量%とABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂およびMBS樹脂からなる群から選ばれた一種以上の樹脂30〜90質量%とを混練混合してなる耐熱性樹脂組成物である。
ここでABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂およびMBS樹脂をABS系樹脂と以降は略称する。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のマスターバッチ樹脂組成物に使用する芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)について説明する。
第一の製法として、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体および必要に応じてその他共重合可能なビニル共重合体からなる単量体混合物を共重合させる方法によって、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を得ることができる。
【0009】
第二の製法として、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸無水物及び必要に応じてその他共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物を共重合させた後、アンモニア及び/又は第一級アミンを反応させて酸無水物基をイミド基に変換させる方法が挙げられ、いずれの方法によっても芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を得ることができる。
【0010】
第一の製法及び第二の製法のいずれの製法においても用いる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン単量体が挙げられ、これらの中でも特にスチレンが好ましい。
第一の製法で用いられる不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−アリールマレイミド(アリール基としては、例えばフェニル、クロルフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリブロモフェニル等が挙げられる)等のマレイミド誘導体が挙げられ、これらの中で特にN−フェニルマレイミドが好ましい。又、これらの誘導体は2種以上混合して用いることも出来る。
【0011】
第二の製法で用いられる不飽和ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、これらの中では特に無水マレイン酸が好ましい。
又、第一の製法及び第二の製法のいずれの製法においても、その他共重合可能なビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニリル等のシアン化ビニル単量体、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等の単量体が挙げられる。
又、第一の製法では無水マレイン酸も挙げられ、第二の製法では、マレイミド基へ転換されずに残った無水マレイン酸基も共重合体中に導入することができる。
【0012】
第二の製法で用いるアンモニアや第一級アミンは無水または水溶液のいずれの状態であってもよく、第一級アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、アニリン、トルイジン、クロルアニリン、メトキシアニリン、トリブロモアニリン等の芳香族アミンが挙げられ、これらの中で特にアニリンが好ましい。
第一の製法の場合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等いずれも公知の重合法を用いることが出来る。第二の製法は、塊状−懸濁重合、溶液重合、塊状重合等を好適に採用できる。
【0013】
芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)は、芳香族ビニル単量体40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜60質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる共重合体が好ましい。不飽和ジカルボン酸イミド誘導体が30質量%未満であると耐熱性の付与効果が低く、AS系共重合体等他の成分との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下を招く。又、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体が60質量を越えると強度が低くなり、AS系共重合体等他成分との相溶性も低下する。より好ましい範囲は、芳香族ビニル単量体45〜65質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体35〜55質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜15質量%である。
【0014】
本発明に用いる芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)は、重量平均分子量10万〜16万の1種の芳香族ビニル−マレイミド系共重合体でもよく、又重量平均分子量が異なる2種以上の芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を組み合わせた混合物で、その混合物の重量平均分子量が10万〜16万の範囲にあるものであればその芳香族ビニル−マレイミド系共重合体の混合物を使用することができる。
【0015】
本発明に用いる芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)としては、重量平均分子量が、好ましくは12万〜15万の範囲である。重量平均分子量16万を越える芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を用いて得られた耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物は、ABS系樹脂への分散性が悪く、耐熱性ABS系樹脂として流動性の低下、外観不良を生じやすく、適用できるABS系樹脂が限定される。又、重量平均分子量が10万未満の芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を用いた場合、そのマスターバッチ樹脂組成物を製造する際、脆いため製造しにくく、耐熱性ABS系樹脂化した際も耐衝撃性に劣る。
【0016】
次に、ABS系グラフト共重合体(b)について説明する。
ABS系グラフト共重合体(b)は、ゴム状重合体の存在化に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じてその他共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物を共重合したグラフト共重合体である。
ゴム状重合体としては、ブタジエン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン単量体が挙げられ、これらの中でも特にスチレンが好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの中では特にアクリロニトリルが好ましい。
【0017】
又、その他共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等の単量体、並びにN−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−アリールマレイミド(アリール基としては、例えばフェニル、クロルフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリブロモフェニル等が挙げられる)等のマレイミド誘導体が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸などの単量体が好ましい。
【0018】
ABS系グラフト共重合体(b)の製法は、ゴム状重合体30〜70質量部の存在下に、芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる単量体混合物30〜70質量部をグラフト共重合して得られることが好ましい。シアン化ビニル共重合体が20質量%未満であると耐薬品性や低下や芳香族ビニルマレイミド系共重合体との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下を招く。又、シアン化ビニル共重合体が35質量%を越えると流動性が低下し、芳香族マレイミド系共重合体との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下も招く。より好ましい範囲は、ゴム状重合体50〜70質量部の存在下に芳香族 ビニル単量体70〜75質量%、シアン化ビニル単量体25〜30質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜5質量%からなる単量体混合物30〜50質量部をグラフト共重合して得られる範囲である。
【0019】
又、グラフト共重合体のグラフト率は、「(ゴム状重合体上にグラフトされている共重合体の質量/ゴム状重合体の質量)×100(%)」で表され、そのグラフト率の範囲は30〜70%が望ましい。グラフト率が30%未満では、ゴム状重合体が凝集しやすくなるために外観不良が出やすくなり、耐衝撃性の低下を招く。70%を越えると成型加工性の低下を招く。より好ましいグラフト率の範囲は40〜60%である。
グラフト重合は公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合のごとき水性不均一重合、塊状重合、溶液重合がある。強度に影響のあるグラフト率を制御しやすい乳化重合が好ましい。
【0020】
次に必要に応じて用いることが出来るAS系共重合体(c)について説明する。AS系共重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じて用いるその他共重合可能なビニル単量体からなる共重合体である。
芳香族ビニル単量体としては、前記のABS系グラフト共重合体(b)で用いられる芳香族ビニル単量体として挙げた同じ単量体種が挙げられ、これらの中でスチレン及びα−メチルスチレンが特に好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、前記のABS系グラフト共重合体(b)の製法で用いられるシアン化ビニル単量体として挙げた同じ単量体種が挙げられ、これらの中で特にアクリロニトリルが好ましい。
その他共重合可能な単量体としては、前記のABS系グラフト共重合体(b)の製法で用いるその他共重合可能なビニル単量体として挙げた同じ単量体種が挙げられる。
【0021】
AS系共重合体(c)は、芳香族ビニル単量体単位65〜80質量%、シアン化ビニル単量体単位20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体単位0〜10質量%からなる共重合体が好ましい。この範囲を逸脱すると、他成分との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下を招く。より好ましい範囲は、芳香族ビニル単量体68〜78質量%、シアン化ビニル単量体22〜32質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%である。
AS系共重合体(c)は、通常の重合方法で製造できる。例えば塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の重合方法が挙げられる。
【0022】
添加する滑剤の種類の好ましい具体例としては、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ひまし油等ABS系樹脂との相溶性が比較的良好なもので、かつ融点が50℃〜150℃のものが必須である。
好ましい滑剤として、脂肪酸の炭素数がC16以上である脂肪酸アミド類、ヒマシ硬化脂肪酸類、脂肪酸の炭素数がC16以上である脂肪酸エステル類である等が挙げられる。
融点が50℃より低いの滑剤を使用すると耐熱性の低下が大きく、かつ成形時の金型汚染を生じやすくなるため好ましくない。
又融点が150℃を越えると流動性の向上効果が低いのであり好ましくない。
添加する範囲は0.5〜3質量%であり、0.5質量%以下では、本発明のマスターバッチ樹脂組成物のABS系樹脂への分散性が低くなり、外観性が悪くなったり、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体の添加量が制限され、十分な耐熱付与効果が得られない。又、3質量%を越えると耐熱の低下が大きく、かつ成形時の金型汚染を生じやすくなるため好ましくない。
【0023】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物は、高温側のガラス転移温度(本発明のマスターバッチ樹脂組成物が有する最も高いガラス転移温度)が135〜145℃の範囲である。高温側ガラス転移温度が135℃未満では、マスターバッチ樹脂組成物の耐熱性が低いため、所望の耐熱ABS系樹脂を得るために高価格なマスターバッチ樹脂組成物の添加量を多く必要とするため、経済的でない。又、145℃を越える場合、マスターバッチ樹脂組成物を添加して耐熱ABS系樹脂を得る為の押出条件及び得られた耐熱ABS系樹脂をインジェクション成形する際の成形条件に制限があり、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体をABS系樹脂へ良好に分散するために押出機、成形機のシリンダー温度を高く設定するとABS系共重合体中のゴム状重合体が熱劣化し、強度の低下を招く。又、それを防ぐため、押出機、成形機のシリンダー温度を低く設定すると芳香族ビニル−マレイミド系共重合体のABS系樹脂への分散が不十分となり、外観不良を発生しやすい。
【0024】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物の組成は、芳香族−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜57質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である可塑剤を0.5〜3質量%からなる樹脂組成物である。
芳香族−マレイミド系共重合体(a)が40質量%未満であるとマスターバッチ樹脂組成物としての耐熱性が不十分である。又、芳香族−マレイミド系共重合体が60質量%を越えると耐熱性マスターバッチ樹脂を製造する際、脆くなりすぎ、製造しがたく、衝撃強度あるいは成形性が低下して良好な物性が得られない。
【0025】
ABS系樹脂としては、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、耐熱ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン)、AES樹脂(アクリロニトリル−EPDM−スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン)樹脂及びMBS樹脂(メチルメタクルリレート−ブタジエン−スチレン)等が挙げられる。
【0026】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物とABS系樹脂の混練混合の手段として、単軸押出機及び二軸押出機を好適に用いることが出来る。特に本発明のマスターバッチ樹脂組成物を用いると混練性の弱い単軸押出機を使用してもABS系樹脂への分散性は良好である。又、押出機にて混練する前の予備混合には、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサー等の公知の装置を用いることが出来る。
【0027】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物や、それとABS系樹脂を混練混合してなる耐熱性樹脂組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、ガラス繊維、カーボン繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等を目的に合わせて添加することができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中の部、%はいずれも質量基準で表した。
【0029】
(1)原料樹脂
(イ)芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)
以下に使用したマレイミド系共重合体(a)の参考例を示す。
参考例1(共重合体SMI−1の製造)
攪拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、α−メチルスチレンダイマー0.1部、メチルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度を85℃に昇温し、無水マレイン酸40部とベンゾイルパーオキサイド0.15部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添加した。添加後、更に3時間温度を85℃に保った。粘稠な反応液の一部をサンプリングしてしてガスクロマトグラフイーにより未反応単量体の定量を行った結果、重合率はスチレン99%、無水マレイン酸98%であった。ここで得られた共重合体溶液にアニリン38部、トリエチルアミン0.6部を加え140℃で7時間反応させた。反応液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮してマレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析より無水マレイン基のイミド基への転化率は93%であった。このマレイミド系共重合体は不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を51%含む共重合体であり、これをSMI−1とした。ゲルパーミエーション(GPC)分析より、ポリスチレン換算の重量平均分子量は140,000であった。
【0030】
参考例2(共重合体SMI−2の製造)
α−メチルスチレンダイマー1.5部を用いた以外は製造例1と同様な方法でN−フェニルマレイミド単位51%、スチレン単位47%、無水マレイン酸単位2%からなる重量平均分子量70,000の共重合体を得た。これを共重合体SMI−2とした。
【0031】
参考例3(共重合体SMI−3の製造)
α−メチルスチレンダイマー0.2部を用いた以外は製造例1と同様な方法でN−フェニルマレイミド単位51%、スチレン単位47%、無水マレイン酸単位2%からなる重量平均分子量120,000の共重合体を得た。これを共重合体SMI−3とした。
【0032】
参考例4(共重合体SMI−4の製造)
α−メチルスチレンダイマー0.02部を用いた以外は製造例1と同様な方法でN−フェニルマレイミド単位51%、スチレン単位47%、無水マレイン酸単位2%からなる重量平均分子量190,000の共重合体を得た。これを共重合体SMI−4とした。
【0033】
上記の使用したマレイミド系共重合体(a)の成分組成比とゲルパーミエーションクロマトグラフー(GPC)測定による重量平均分子量を表1に示す。
【0034】
尚、GPC測定は以下のうな条件で実施した。
装 置;Shodex製、「SYSTEM−21」
カラム;PLgel MIXED−B
温 度;40℃
溶 媒;テトラヒドロフラン
検 出;RI
濃 度;0.2%
注入量;100μl
検量線;標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換して各種平均分子量を求めた。
【0035】
【表1】
【0036】
(ロ)ABS系グラフト共重合体(b)
以下に使用したABS系グラフト共重合体(b)の参考例を示す。
参考例5(ABS系グラフト共重合体G−1の製造)
攪拌機を備えた反応缶中にポリブタジエンラッテクス114部(固形分35%、重量平均径0.3μm、ゲル含有率90%)、スチレン−ブタジエンラテックス15部(固形分67%、重量平均径0.5μm、ゲル含有率15%)、ステアリン酸ソーダ1部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.01部、硫酸第一鉄0.005部、及び純水150部を仕込み、温度を50℃に加熱し、これにスチレン70%及びアクリロニトリル30%よりなる単量体混合物50部、t−ドデシルメルカプタン1.0部、キュメンハイドロパーオキサイド0.15部を6時間かけて連続添加し、更に添加後65℃に昇温し2時間重合した。重合率は97%に達した。得られたラテックスにイルガノックス1076(チバスペシャリティケミカル社製)を0.3部添加した後、5%塩化カルシウム水溶液300部を添加して凝固、水洗、乾燥後白色粉末としてグラフト共重合体を得た。これを共重合体G−1とした。
上記の使用したABS系グラフト共重合体(b)の成分組成比、グラフト率を表2に示す。
【0037】
本発明のグラフト共重合体のグラフト率は、次の方法で求めた。
グラフト共重合体ラテックス約20gをメタノール100mlで析出、凝固させ、凝固物を濾紙を用いて吸引濾過する。濾過物は真空乾燥機で24時間、室温で乾燥させる。得られた試料の約1.2gを100ml三角フラスコに取り、メチルエチルケトン(MEK)30gを加えた後、温度23℃で24時間攪拌し、その後遠心分離器機でメチルエチルケトン(MEK)に対する不溶分の分離を実施し、遠心分離操作後30分静置した。この遠心分離器の操作条件を次の通り設定した。
温度:−9℃
回転数:20,000rpm
時間:60分
遠心分離させた溶液の上澄液と沈殿物とを分離し、沈殿物は真空乾燥機で乾燥し、不溶分Xとした。さらに、この不溶分の試料を用いてケルダール窒素法によって定量したアクリロニトリル単量体の質量Yと熱分解ガスクロマトグラフィーにより定量したスチレン単量体の質量Zを求め、
グラフト率(%)=100×(Y+Z)/{X−(Y+Z)}の式から計算した。
【0038】
【表2】
【0039】
(ハ)AS系共重合体(c)
以下に使用したAS系共重合体(c)の参考例を示す。
参考例6(AS系共重合体AS−1の製造)
攪拌機を備えた反応缶中にスチレン70部、アクリロニトリル30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデシルメルカプタン0.35部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部及び水250部を仕込み、70℃に昇温し重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を簡潔させた。重合率は97%に達した。得られた反応液に5%塩酸水溶液200部を添加し析出させ、脱水、乾燥後白色ビーズ状の共重合体を得た。これを共重合体AS−1とした。
上記の使用したAS系共重合体(c)の成分組成比とGPC測定による重量平均分子量を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
(2)マスターバッチ樹脂組成物の製造方法
マスターバッチ樹脂組成物を作成するために東芝機械(株)製2軸押出機TEM−35B(スクリュー系37mm、L/D=32)にて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpm、原料フィード量20kg/hrの条件にて混練混合を実施した。尚、可塑剤を使用する場合は、花王社製カオーワックスEB−P(エチレンビスステアリン酸アマイド:融点143℃)、花王社製カオーワックス85(硬化ひまし油P:融点86℃)、花王社製エキセパールS(ステアリルステアレートS:融点62℃)、花王社製マンニトール(マンニトール花王:融点168℃)、花王社製エキセパールBS(ブチルステアレート:融点23℃)を用いた。
【0042】
作成したマスターバッチ樹脂組成物の配合比、高温側のガラス転移温度を表4及び表5に示す。ガラス転移温度及び滑剤の剤の融点はDSC測定機「DSC−220C」(セイコー電子(株)社製)にて測定した。
測マスターバッチ樹脂は予めプレスして厚さ5mmの薄板上に成形してから測定に用いた。滑剤は10mgを精秤して用いた。
測定条件は以下のとおりである。
温度範囲:室温〜200℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素気流化
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
マスターバッチ樹脂組成物とABS系樹脂を混練混合してなる耐熱性樹脂組成物を製造する際に、ABS系樹脂として市販のABS樹脂「デンカGR−2000」を用いた
【0046】
(3)マスターバッチ樹脂組成物で変性された耐熱性樹脂組成物の製造方法
耐熱性樹脂組成物作成のための混練混合は、池貝鉄工所製単軸押出機FS40−28(スクリュー径40mm、L/D=32)にて、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量20kg/hrの条件で製造した。
【0047】
【実施例1〜5及び比較例1〜7】
本発明に従って作成した耐熱性樹脂組成物の配合比とその物性を実施例1〜5及び比較例1〜7として、表6及び表7に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
なお、各種の物性測定試験方法は下記の条件で行った。
1)シャルピー衝撃強度:厚み4.0mm、幅10.0mmでノッチ付きのISO多目的射出成形試験片を用いてISO179に準じて測定した。
2)VSP(ビカット軟化点):厚み4.0mmの試験片を用いて荷重50NでISO306に準じて測定した。
3)MFR:温度265℃、荷重98Nで、ISO1133に準じて測定した。
4)外観性評価は、縦90mm、横55mm、厚さ2mmのプレートを使用した。この成形品のゲートは横側面の中心に設置されている。
【0051】
プレートの成形は川口鉄工社K−125を用い、以下の成形条件で行った。
シリンダー設定温度:210℃
射出圧力:最小充填圧力+5kg/cm2G
射出速度:70%
金型温度:50℃
【0052】
マスターバッチ樹脂組成物がABS樹脂中に均一に分散していない場合、ヘアライン状の外観不良が発生する。
この不良現象が一目で確認できるのを×、不良減少を凝視して確認できるのを△、不良現象がなく、外観良好なものを○とした。
【0053】
【発明の効果】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物は、ABS系樹脂へ容易に分散性させることができ、これを用いて得られた耐熱性ABS系樹脂は、特にインジェクション成形において成形条件幅を広く取ることができ、外観性良好な製品が得られる。又、マスターバッチ樹脂組成物の製造に用いる芳香族ビニル−マレイミド系樹脂を規定することにより、優れた物性バランスを有する耐熱性ABS系樹脂が得られる。このことより、従来から耐熱性ABS系樹脂が用いられてきた自動車部品、電気・電子部品、家電製品、雑貨等の分野へ優れた品質の製品を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物、及びこれを用いた耐熱性樹脂組成物に関し、特に本発明のマスターバッチ樹脂組成物を用いるこにより、耐熱性ABS系樹脂組成物を簡便かつ効率的に得ることができ、また強度に優れた物性及び良好な外観性より、自動車部品、電気・電子部品、雑貨等の分野に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、マレイミド系共重合体変性の耐熱性ABS樹脂は、マレイミド系共重合体とABS系グラフト共重合体及びAS系共重合体を同時に混練混合し、マレイミド系共重合体変性の耐熱ABS系樹脂を製造していた(例えば特許文献1を参照。)。
この場合、各耐熱レベルに応じて異なった樹脂ペレットを必要とするため、品質管理、在庫管理が煩雑であり、又、マレイミド変性の耐熱性ABS樹脂を得る為の押出条件として混練性の強い2軸押出機を用いないとマレイミド系共重合体の分散性が不十分となり、成形した際の成形品の外観性の低下や衝撃強度の低下等良好な物性が得にくいという欠点があった。
このため、これらの欠点を解消するため、耐熱性マスターバッチ樹脂とABS系樹脂とを混練混合する方法が提案された。しかしながら、これら製造方法では、耐熱性樹脂組成物を得るための押出し条件、樹脂成形体を得る為の成形条件に制限があり、その制限を逸脱すると成形外観の低下、物性の低下を招き、必ずしも十分とは言えなかった。(例えば特許文献2、特許文献3を参照)
【0003】
【特許文献1】
特公平2−41544公報
【特許文献2】
特開平7−316384公報
【特許文献3】
特公平10−36614公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ABS系樹脂と特定のマスターバッチ樹脂組成物から耐熱性ABS系樹脂を製造する際、その押出し条件及び得られた樹脂ペレットを成形する際の成形条件の条件幅を広げ、良好な強度、外観を持つ耐熱性ABS系樹脂を提供することを可能とする耐熱性マスターバッチ樹脂組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、重量平均分子量が10万〜16万である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜57質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である可塑剤(d)を0.5〜3質量%からなり、かつ(a)〜(d)が合計で100質量%である樹脂組成物であって、該樹脂組成物の高温側のガラス転移温度が135〜145℃であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物である。
【0006】
また、本発明は、好ましくは芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)が芳香族ビニル単量体40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜60質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる共重合体、ABS系グラフト共重合体(b)がゴム状重合体30〜70質量部の存在下に芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる単量体混合物30〜70質量部をグラフト共重合して得られる共重合体、及びAS系共重合体(c)が芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%およびその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる共重合体であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物である。
【0007】
また本発明は、上記記載のマスターバッチ樹脂組成物10〜70質量%とABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂およびMBS樹脂からなる群から選ばれた一種以上の樹脂30〜90質量%とを混練混合してなる耐熱性樹脂組成物である。
ここでABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂およびMBS樹脂をABS系樹脂と以降は略称する。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のマスターバッチ樹脂組成物に使用する芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)について説明する。
第一の製法として、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体および必要に応じてその他共重合可能なビニル共重合体からなる単量体混合物を共重合させる方法によって、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を得ることができる。
【0009】
第二の製法として、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸無水物及び必要に応じてその他共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物を共重合させた後、アンモニア及び/又は第一級アミンを反応させて酸無水物基をイミド基に変換させる方法が挙げられ、いずれの方法によっても芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を得ることができる。
【0010】
第一の製法及び第二の製法のいずれの製法においても用いる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン単量体が挙げられ、これらの中でも特にスチレンが好ましい。
第一の製法で用いられる不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−アリールマレイミド(アリール基としては、例えばフェニル、クロルフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリブロモフェニル等が挙げられる)等のマレイミド誘導体が挙げられ、これらの中で特にN−フェニルマレイミドが好ましい。又、これらの誘導体は2種以上混合して用いることも出来る。
【0011】
第二の製法で用いられる不飽和ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、これらの中では特に無水マレイン酸が好ましい。
又、第一の製法及び第二の製法のいずれの製法においても、その他共重合可能なビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニリル等のシアン化ビニル単量体、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等の単量体が挙げられる。
又、第一の製法では無水マレイン酸も挙げられ、第二の製法では、マレイミド基へ転換されずに残った無水マレイン酸基も共重合体中に導入することができる。
【0012】
第二の製法で用いるアンモニアや第一級アミンは無水または水溶液のいずれの状態であってもよく、第一級アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、アニリン、トルイジン、クロルアニリン、メトキシアニリン、トリブロモアニリン等の芳香族アミンが挙げられ、これらの中で特にアニリンが好ましい。
第一の製法の場合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等いずれも公知の重合法を用いることが出来る。第二の製法は、塊状−懸濁重合、溶液重合、塊状重合等を好適に採用できる。
【0013】
芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)は、芳香族ビニル単量体40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜60質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる共重合体が好ましい。不飽和ジカルボン酸イミド誘導体が30質量%未満であると耐熱性の付与効果が低く、AS系共重合体等他の成分との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下を招く。又、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体が60質量を越えると強度が低くなり、AS系共重合体等他成分との相溶性も低下する。より好ましい範囲は、芳香族ビニル単量体45〜65質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体35〜55質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜15質量%である。
【0014】
本発明に用いる芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)は、重量平均分子量10万〜16万の1種の芳香族ビニル−マレイミド系共重合体でもよく、又重量平均分子量が異なる2種以上の芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を組み合わせた混合物で、その混合物の重量平均分子量が10万〜16万の範囲にあるものであればその芳香族ビニル−マレイミド系共重合体の混合物を使用することができる。
【0015】
本発明に用いる芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)としては、重量平均分子量が、好ましくは12万〜15万の範囲である。重量平均分子量16万を越える芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を用いて得られた耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物は、ABS系樹脂への分散性が悪く、耐熱性ABS系樹脂として流動性の低下、外観不良を生じやすく、適用できるABS系樹脂が限定される。又、重量平均分子量が10万未満の芳香族ビニル−マレイミド系共重合体を用いた場合、そのマスターバッチ樹脂組成物を製造する際、脆いため製造しにくく、耐熱性ABS系樹脂化した際も耐衝撃性に劣る。
【0016】
次に、ABS系グラフト共重合体(b)について説明する。
ABS系グラフト共重合体(b)は、ゴム状重合体の存在化に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じてその他共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物を共重合したグラフト共重合体である。
ゴム状重合体としては、ブタジエン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン単量体が挙げられ、これらの中でも特にスチレンが好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの中では特にアクリロニトリルが好ましい。
【0017】
又、その他共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等の単量体、並びにN−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−アリールマレイミド(アリール基としては、例えばフェニル、クロルフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリブロモフェニル等が挙げられる)等のマレイミド誘導体が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸などの単量体が好ましい。
【0018】
ABS系グラフト共重合体(b)の製法は、ゴム状重合体30〜70質量部の存在下に、芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる単量体混合物30〜70質量部をグラフト共重合して得られることが好ましい。シアン化ビニル共重合体が20質量%未満であると耐薬品性や低下や芳香族ビニルマレイミド系共重合体との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下を招く。又、シアン化ビニル共重合体が35質量%を越えると流動性が低下し、芳香族マレイミド系共重合体との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下も招く。より好ましい範囲は、ゴム状重合体50〜70質量部の存在下に芳香族 ビニル単量体70〜75質量%、シアン化ビニル単量体25〜30質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜5質量%からなる単量体混合物30〜50質量部をグラフト共重合して得られる範囲である。
【0019】
又、グラフト共重合体のグラフト率は、「(ゴム状重合体上にグラフトされている共重合体の質量/ゴム状重合体の質量)×100(%)」で表され、そのグラフト率の範囲は30〜70%が望ましい。グラフト率が30%未満では、ゴム状重合体が凝集しやすくなるために外観不良が出やすくなり、耐衝撃性の低下を招く。70%を越えると成型加工性の低下を招く。より好ましいグラフト率の範囲は40〜60%である。
グラフト重合は公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合のごとき水性不均一重合、塊状重合、溶液重合がある。強度に影響のあるグラフト率を制御しやすい乳化重合が好ましい。
【0020】
次に必要に応じて用いることが出来るAS系共重合体(c)について説明する。AS系共重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じて用いるその他共重合可能なビニル単量体からなる共重合体である。
芳香族ビニル単量体としては、前記のABS系グラフト共重合体(b)で用いられる芳香族ビニル単量体として挙げた同じ単量体種が挙げられ、これらの中でスチレン及びα−メチルスチレンが特に好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、前記のABS系グラフト共重合体(b)の製法で用いられるシアン化ビニル単量体として挙げた同じ単量体種が挙げられ、これらの中で特にアクリロニトリルが好ましい。
その他共重合可能な単量体としては、前記のABS系グラフト共重合体(b)の製法で用いるその他共重合可能なビニル単量体として挙げた同じ単量体種が挙げられる。
【0021】
AS系共重合体(c)は、芳香族ビニル単量体単位65〜80質量%、シアン化ビニル単量体単位20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体単位0〜10質量%からなる共重合体が好ましい。この範囲を逸脱すると、他成分との相溶性が劣り、耐衝撃性の低下を招く。より好ましい範囲は、芳香族ビニル単量体68〜78質量%、シアン化ビニル単量体22〜32質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%である。
AS系共重合体(c)は、通常の重合方法で製造できる。例えば塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の重合方法が挙げられる。
【0022】
添加する滑剤の種類の好ましい具体例としては、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ひまし油等ABS系樹脂との相溶性が比較的良好なもので、かつ融点が50℃〜150℃のものが必須である。
好ましい滑剤として、脂肪酸の炭素数がC16以上である脂肪酸アミド類、ヒマシ硬化脂肪酸類、脂肪酸の炭素数がC16以上である脂肪酸エステル類である等が挙げられる。
融点が50℃より低いの滑剤を使用すると耐熱性の低下が大きく、かつ成形時の金型汚染を生じやすくなるため好ましくない。
又融点が150℃を越えると流動性の向上効果が低いのであり好ましくない。
添加する範囲は0.5〜3質量%であり、0.5質量%以下では、本発明のマスターバッチ樹脂組成物のABS系樹脂への分散性が低くなり、外観性が悪くなったり、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体の添加量が制限され、十分な耐熱付与効果が得られない。又、3質量%を越えると耐熱の低下が大きく、かつ成形時の金型汚染を生じやすくなるため好ましくない。
【0023】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物は、高温側のガラス転移温度(本発明のマスターバッチ樹脂組成物が有する最も高いガラス転移温度)が135〜145℃の範囲である。高温側ガラス転移温度が135℃未満では、マスターバッチ樹脂組成物の耐熱性が低いため、所望の耐熱ABS系樹脂を得るために高価格なマスターバッチ樹脂組成物の添加量を多く必要とするため、経済的でない。又、145℃を越える場合、マスターバッチ樹脂組成物を添加して耐熱ABS系樹脂を得る為の押出条件及び得られた耐熱ABS系樹脂をインジェクション成形する際の成形条件に制限があり、芳香族ビニル−マレイミド系共重合体をABS系樹脂へ良好に分散するために押出機、成形機のシリンダー温度を高く設定するとABS系共重合体中のゴム状重合体が熱劣化し、強度の低下を招く。又、それを防ぐため、押出機、成形機のシリンダー温度を低く設定すると芳香族ビニル−マレイミド系共重合体のABS系樹脂への分散が不十分となり、外観不良を発生しやすい。
【0024】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物の組成は、芳香族−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜57質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である可塑剤を0.5〜3質量%からなる樹脂組成物である。
芳香族−マレイミド系共重合体(a)が40質量%未満であるとマスターバッチ樹脂組成物としての耐熱性が不十分である。又、芳香族−マレイミド系共重合体が60質量%を越えると耐熱性マスターバッチ樹脂を製造する際、脆くなりすぎ、製造しがたく、衝撃強度あるいは成形性が低下して良好な物性が得られない。
【0025】
ABS系樹脂としては、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、耐熱ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン)、AES樹脂(アクリロニトリル−EPDM−スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン)樹脂及びMBS樹脂(メチルメタクルリレート−ブタジエン−スチレン)等が挙げられる。
【0026】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物とABS系樹脂の混練混合の手段として、単軸押出機及び二軸押出機を好適に用いることが出来る。特に本発明のマスターバッチ樹脂組成物を用いると混練性の弱い単軸押出機を使用してもABS系樹脂への分散性は良好である。又、押出機にて混練する前の予備混合には、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサー等の公知の装置を用いることが出来る。
【0027】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物や、それとABS系樹脂を混練混合してなる耐熱性樹脂組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、ガラス繊維、カーボン繊維、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等を目的に合わせて添加することができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中の部、%はいずれも質量基準で表した。
【0029】
(1)原料樹脂
(イ)芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)
以下に使用したマレイミド系共重合体(a)の参考例を示す。
参考例1(共重合体SMI−1の製造)
攪拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、α−メチルスチレンダイマー0.1部、メチルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度を85℃に昇温し、無水マレイン酸40部とベンゾイルパーオキサイド0.15部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添加した。添加後、更に3時間温度を85℃に保った。粘稠な反応液の一部をサンプリングしてしてガスクロマトグラフイーにより未反応単量体の定量を行った結果、重合率はスチレン99%、無水マレイン酸98%であった。ここで得られた共重合体溶液にアニリン38部、トリエチルアミン0.6部を加え140℃で7時間反応させた。反応液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮してマレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析より無水マレイン基のイミド基への転化率は93%であった。このマレイミド系共重合体は不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を51%含む共重合体であり、これをSMI−1とした。ゲルパーミエーション(GPC)分析より、ポリスチレン換算の重量平均分子量は140,000であった。
【0030】
参考例2(共重合体SMI−2の製造)
α−メチルスチレンダイマー1.5部を用いた以外は製造例1と同様な方法でN−フェニルマレイミド単位51%、スチレン単位47%、無水マレイン酸単位2%からなる重量平均分子量70,000の共重合体を得た。これを共重合体SMI−2とした。
【0031】
参考例3(共重合体SMI−3の製造)
α−メチルスチレンダイマー0.2部を用いた以外は製造例1と同様な方法でN−フェニルマレイミド単位51%、スチレン単位47%、無水マレイン酸単位2%からなる重量平均分子量120,000の共重合体を得た。これを共重合体SMI−3とした。
【0032】
参考例4(共重合体SMI−4の製造)
α−メチルスチレンダイマー0.02部を用いた以外は製造例1と同様な方法でN−フェニルマレイミド単位51%、スチレン単位47%、無水マレイン酸単位2%からなる重量平均分子量190,000の共重合体を得た。これを共重合体SMI−4とした。
【0033】
上記の使用したマレイミド系共重合体(a)の成分組成比とゲルパーミエーションクロマトグラフー(GPC)測定による重量平均分子量を表1に示す。
【0034】
尚、GPC測定は以下のうな条件で実施した。
装 置;Shodex製、「SYSTEM−21」
カラム;PLgel MIXED−B
温 度;40℃
溶 媒;テトラヒドロフラン
検 出;RI
濃 度;0.2%
注入量;100μl
検量線;標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換して各種平均分子量を求めた。
【0035】
【表1】
【0036】
(ロ)ABS系グラフト共重合体(b)
以下に使用したABS系グラフト共重合体(b)の参考例を示す。
参考例5(ABS系グラフト共重合体G−1の製造)
攪拌機を備えた反応缶中にポリブタジエンラッテクス114部(固形分35%、重量平均径0.3μm、ゲル含有率90%)、スチレン−ブタジエンラテックス15部(固形分67%、重量平均径0.5μm、ゲル含有率15%)、ステアリン酸ソーダ1部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.01部、硫酸第一鉄0.005部、及び純水150部を仕込み、温度を50℃に加熱し、これにスチレン70%及びアクリロニトリル30%よりなる単量体混合物50部、t−ドデシルメルカプタン1.0部、キュメンハイドロパーオキサイド0.15部を6時間かけて連続添加し、更に添加後65℃に昇温し2時間重合した。重合率は97%に達した。得られたラテックスにイルガノックス1076(チバスペシャリティケミカル社製)を0.3部添加した後、5%塩化カルシウム水溶液300部を添加して凝固、水洗、乾燥後白色粉末としてグラフト共重合体を得た。これを共重合体G−1とした。
上記の使用したABS系グラフト共重合体(b)の成分組成比、グラフト率を表2に示す。
【0037】
本発明のグラフト共重合体のグラフト率は、次の方法で求めた。
グラフト共重合体ラテックス約20gをメタノール100mlで析出、凝固させ、凝固物を濾紙を用いて吸引濾過する。濾過物は真空乾燥機で24時間、室温で乾燥させる。得られた試料の約1.2gを100ml三角フラスコに取り、メチルエチルケトン(MEK)30gを加えた後、温度23℃で24時間攪拌し、その後遠心分離器機でメチルエチルケトン(MEK)に対する不溶分の分離を実施し、遠心分離操作後30分静置した。この遠心分離器の操作条件を次の通り設定した。
温度:−9℃
回転数:20,000rpm
時間:60分
遠心分離させた溶液の上澄液と沈殿物とを分離し、沈殿物は真空乾燥機で乾燥し、不溶分Xとした。さらに、この不溶分の試料を用いてケルダール窒素法によって定量したアクリロニトリル単量体の質量Yと熱分解ガスクロマトグラフィーにより定量したスチレン単量体の質量Zを求め、
グラフト率(%)=100×(Y+Z)/{X−(Y+Z)}の式から計算した。
【0038】
【表2】
【0039】
(ハ)AS系共重合体(c)
以下に使用したAS系共重合体(c)の参考例を示す。
参考例6(AS系共重合体AS−1の製造)
攪拌機を備えた反応缶中にスチレン70部、アクリロニトリル30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデシルメルカプタン0.35部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部及び水250部を仕込み、70℃に昇温し重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を簡潔させた。重合率は97%に達した。得られた反応液に5%塩酸水溶液200部を添加し析出させ、脱水、乾燥後白色ビーズ状の共重合体を得た。これを共重合体AS−1とした。
上記の使用したAS系共重合体(c)の成分組成比とGPC測定による重量平均分子量を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
(2)マスターバッチ樹脂組成物の製造方法
マスターバッチ樹脂組成物を作成するために東芝機械(株)製2軸押出機TEM−35B(スクリュー系37mm、L/D=32)にて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpm、原料フィード量20kg/hrの条件にて混練混合を実施した。尚、可塑剤を使用する場合は、花王社製カオーワックスEB−P(エチレンビスステアリン酸アマイド:融点143℃)、花王社製カオーワックス85(硬化ひまし油P:融点86℃)、花王社製エキセパールS(ステアリルステアレートS:融点62℃)、花王社製マンニトール(マンニトール花王:融点168℃)、花王社製エキセパールBS(ブチルステアレート:融点23℃)を用いた。
【0042】
作成したマスターバッチ樹脂組成物の配合比、高温側のガラス転移温度を表4及び表5に示す。ガラス転移温度及び滑剤の剤の融点はDSC測定機「DSC−220C」(セイコー電子(株)社製)にて測定した。
測マスターバッチ樹脂は予めプレスして厚さ5mmの薄板上に成形してから測定に用いた。滑剤は10mgを精秤して用いた。
測定条件は以下のとおりである。
温度範囲:室温〜200℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素気流化
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
マスターバッチ樹脂組成物とABS系樹脂を混練混合してなる耐熱性樹脂組成物を製造する際に、ABS系樹脂として市販のABS樹脂「デンカGR−2000」を用いた
【0046】
(3)マスターバッチ樹脂組成物で変性された耐熱性樹脂組成物の製造方法
耐熱性樹脂組成物作成のための混練混合は、池貝鉄工所製単軸押出機FS40−28(スクリュー径40mm、L/D=32)にて、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量20kg/hrの条件で製造した。
【0047】
【実施例1〜5及び比較例1〜7】
本発明に従って作成した耐熱性樹脂組成物の配合比とその物性を実施例1〜5及び比較例1〜7として、表6及び表7に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
なお、各種の物性測定試験方法は下記の条件で行った。
1)シャルピー衝撃強度:厚み4.0mm、幅10.0mmでノッチ付きのISO多目的射出成形試験片を用いてISO179に準じて測定した。
2)VSP(ビカット軟化点):厚み4.0mmの試験片を用いて荷重50NでISO306に準じて測定した。
3)MFR:温度265℃、荷重98Nで、ISO1133に準じて測定した。
4)外観性評価は、縦90mm、横55mm、厚さ2mmのプレートを使用した。この成形品のゲートは横側面の中心に設置されている。
【0051】
プレートの成形は川口鉄工社K−125を用い、以下の成形条件で行った。
シリンダー設定温度:210℃
射出圧力:最小充填圧力+5kg/cm2G
射出速度:70%
金型温度:50℃
【0052】
マスターバッチ樹脂組成物がABS樹脂中に均一に分散していない場合、ヘアライン状の外観不良が発生する。
この不良現象が一目で確認できるのを×、不良減少を凝視して確認できるのを△、不良現象がなく、外観良好なものを○とした。
【0053】
【発明の効果】
本発明のマスターバッチ樹脂組成物は、ABS系樹脂へ容易に分散性させることができ、これを用いて得られた耐熱性ABS系樹脂は、特にインジェクション成形において成形条件幅を広く取ることができ、外観性良好な製品が得られる。又、マスターバッチ樹脂組成物の製造に用いる芳香族ビニル−マレイミド系樹脂を規定することにより、優れた物性バランスを有する耐熱性ABS系樹脂が得られる。このことより、従来から耐熱性ABS系樹脂が用いられてきた自動車部品、電気・電子部品、家電製品、雑貨等の分野へ優れた品質の製品を提供できる。
Claims (4)
- 重量平均分子量が10万〜16万である芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)40〜60質量%、ABS系グラフト共重合体(b)20〜57質量%、AS系共重合体(c)0〜40質量%、及び融点が50〜150℃である滑剤(d)を0.5〜3質量%からなり、かつ(a)〜(d)が合計で100質量%である樹脂組成物であって、該樹脂組成物の高温側のガラス転移温度が135〜145℃であることを特徴とする樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物。
- 滑剤(d)が脂肪酸の炭素数がC16以上である脂肪酸アミド類、ヒマシ硬化脂肪酸類及び脂肪酸エステル類から選ばれた一種以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物。
- 芳香族ビニル−マレイミド系共重合体(a)が芳香族ビニル単量体40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体30〜60質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる共重合体、ABS系グラフト共重合体(b)がゴム状重合体30〜70質量部の存在下に芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%及びその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる単量体混合物30〜70質量部をグラフト共重合して得られる共重合体、及びAS系共重合体(c)が芳香族ビニル単量体65〜80質量%、シアン化ビニル単量体20〜35質量%およびその他共重合可能なビニル単量体0〜10質量%からなる共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれかに記載の樹脂の耐熱性を改良するためのマスターバッチ樹脂組成物10〜70質量%とABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂およびMBS樹脂からなる群から選ばれた一種以上の樹脂30〜90質量%とを混練混合してなる耐熱性樹脂組成物。
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