JP2001234023A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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JP2001234023A
JP2001234023A JP2000042150A JP2000042150A JP2001234023A JP 2001234023 A JP2001234023 A JP 2001234023A JP 2000042150 A JP2000042150 A JP 2000042150A JP 2000042150 A JP2000042150 A JP 2000042150A JP 2001234023 A JP2001234023 A JP 2001234023A
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Kinya Kurokawa
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性、耐衝撃性、摺動性、成形性及び耐汚
染性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ること。 【解決手段】 特定の割合で不飽和ジカルボン酸イミド
単量体単位を含有するマレイミド系共重合体、特定のグ
ラフト共重合体、及び特定の分子量を持つポリオルガノ
シロキサン化合物を必須成分とし、これらを特定の割合
で配合した熱可塑性樹脂組成物とすることによって得る
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性、耐衝撃
性、成形性、摺動性、寸法安定性、及び耐汚染性に優れ
た熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、特定
の割合で不飽和ジカルボン酸イミド単量体単位を含有す
る共重合体、特定のグラフト共重合体、及び特定の分子
量のポリオルガノシロキサン化合物を必須成分とする熱
可塑性樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成
物は自動車部品、カーオーディオ部品、電気・電子部
品、事務用機器部品等におけるボタン、スイッチ、スラ
イド部の部品や、コピー機、ファクシミリ(機)の給紙
トレイ、ソーター等に好適である。
【0002】
【従来の技術】従来から、不飽和ジカルボン酸イミド単
量体単位を含有する共重合体の製造方法は知られている
(米国特許第3840499号明細書、米国特許第39
9907号明細書)。しかしながら、これら共重合体は
耐熱性は高いが耐衝撃性に劣るので、該共重合体にAB
S樹脂をブレンドして耐衝撃性を改良した樹脂組成物も
知られている(米国特許第3642949号明細書、米
国特許3652726号明細書、特開昭57−9853
6号公報、特開昭57−125241号公報)。
【0003】しかしながら、不飽和ジカルボン酸イミド
単量体単位を含有する共重合体とABS樹脂をブレンド
した樹脂組成物(以下マレイミド系ABS樹脂と呼ぶ)
は耐熱性は高いが、摺動性はABS樹脂と同様に劣る問
題点がある。また、摺動性を改良するためにABS樹脂
及びマレイミド系ABS系樹脂にシリコンオイルをブレ
ンドした樹脂組成物は、摺動性は向上するものの、シリ
コンオイルが成形品表面から滲み出て、接触している他
の成形品にブレンドしたシリコンオイルが付着し相手材
を汚染してしまう場合がある。なお、このような汚染が
生じないことを耐汚染性が優れると称する。
【0004】また、従来からポリアセタールは摺動性が
優れていることは知られていたが、結晶性樹脂であるた
めに寸法安定性が低くく、反り、変形が起こり易いの
で、成形品の組立時に勘合不良が起こり易い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記で述べたように、
耐熱性、耐衝撃性、摺動性、及び耐汚染性に優れ、かつ
寸法安定性にも優れた樹脂組成物はいまだ得られておら
ず、これらの性能を兼備した高性能な樹脂の開発が強く
望まれているのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者らは、耐
熱性、耐衝撃性、摺動性で耐汚染性にも優れ、かつ寸法
安定性にも優れた樹脂組成物の開発を目的に鋭意検討し
た結果、特定の割合で不飽和ジカルボン酸イミド単量体
単位を含有する共重合体、特定のグラフト共重合体、特
定の分子量を持つポリオルガノシロキサン化合物を特定
の割合で配合した場合に上記目的を達成できることを見
いだし、本発明に達した。
【0007】即ち、本発明は、(A)成分:芳香族ビニ
ル単量体単位40〜80質量%、不飽和ジカルボン酸イ
ミド単量体単位10〜60質量%、不飽和ジカルボン酸
無水物単量体単位0〜20質量%、及びこれらと共重合
可能なビニル単量体単位0〜20質量%からなるマレイ
ミド系共重合体5〜50質量%、 (B)成分:ゴム状重合体35〜65質量部に、芳香族
ビニル単量体60〜80質量%、シアン化ビニル単量体
20〜40質量%、及びこれらと共重合可能なビニル単
量体0〜20質量%からなる単量体混合物35〜65質
量部をグラフト重合させたグラフト共重合体10〜50
質量%、 (C)成分:芳香族ビニル単量体単位60〜80質量
%、シアン化ビニル単量体単位20〜40質量%、及び
これらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20質量%
からなるビニル芳香族系共重合体0〜50質量%、の
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量10
0質量部に対して (D)成分:一般式化2で示される重量平均分子量が5
0万以上であるポリオルガノシロキサン化合物1〜5質
量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物である。
【0008】
【化2】 (ただし、R1〜R4は水素、メチル基、フェニル基、ビ
ニル基、水酸基、主鎖の炭素数10以下のエポキシ末端
基、主鎖の炭素数10以下のアミン末端基から選択され
る)
【0009】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(A)成分
のマレイミド系共重合体について説明する。共重合体を
構成する芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−
メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレ
ン、クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、
これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0010】不飽和ジカルボン酸イミド単量体として
は、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマ
レイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニ
ルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等のマレイミド
系単量体が挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸無水
物単量体としてはマレイン酸、イタコン酸、シトラコン
酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、マレイン酸無
水物が特に好ましい。
【0011】上記の単量体と共重合可能なビニル単量体
としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−
クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、メ
チルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、
ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量
体、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸
エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル
酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリ
ル酸アミド及びメタクリル酸アミド等が挙げられる。
【0012】マレイミド系共重合体としては、これら芳
香族ビニル単量体と不飽和ジカルボン酸イミド単量体、
さらに必要に応じて不飽和ジカルボン酸無水物及び/又
はビニル単量体を用いて直接共重合させたものでもよい
し、不飽和ジカルボン酸無水物単量体を芳香族ビニル単
量体及び必要に応じてこれら単量体と共重合可能なビニ
ル単量体と共重合させた後、アンモニア及び/又は第1
級アミンと反応させてイミド単量体にしてもよい。しか
しながらこれら共重合体を製造する方法としては後者、
即ち不飽和ジカルボン酸無水物単量体を芳香族ビニル単
量体等と共重合させた後にイミド化する方法が、共重合
性及び経済性の点でより好ましい。
【0013】前記の後者のイミド化反応に用いるアンモ
ニアや第1級アミンは無水又は水溶液のいずれの状態で
もあってよく、また第1級アミンの例としてメチルアミ
ン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキル
アミン及び/又はアニリン、トルイジン、ナフチルアミ
ン等の芳香族アミンが挙げられる。
【0014】イミド化反応は溶液状態又は懸濁状態で行
う場合は通常の反応容器、例えばオートクレーブ等を用
いるのが好ましく、塊状溶融状態で行う場合には、脱揮
装置の付いた押出機を用いてもよい。
【0015】イミド化反応の温度は約80〜350℃で
あり、好ましくは100〜300℃である。80℃未満
の場合には反応速度が遅く、反応に長時間を要して実用
的でない。一方350℃を越える場合には重合体の熱分
解による物性低下をきたす。イミド化反応時に触媒を用
いてもよく、その場合は第3級アミン、例えばトリエチ
ルアミン等が好ましく用いられる。
【0016】(A)成分に用いられる芳香族ビニル単量
体単位量は40〜80質量%であり、40質量%未満で
は熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、80質量%
を超えると耐熱性が低下する。好適には、45〜75質
量%である。不飽和ジカルボン酸イミド単量体単位量は
10〜60質量%であり、10質量%未満では熱可塑性
樹脂組成物の耐熱性の向上が充分でなく、60質量%を
超えると耐衝撃性が大幅に低下する。不飽和ジカルボン
酸イミ単量体単位量は25〜55質量%が特に好適であ
る。 また、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位量は
0〜20質量%であり、20質量%を超えると熱可塑性
樹脂組成物の耐衝撃性及び耐熱性が低下する。
【0017】次に、(B)成分のグラフト共重合体につ
いて説明する。ゴム状重合体はブタジエン単独又はこれ
と共重合可能なビニル単量体よりなるゴム状弾性体を呈
する重合体、あるいはアクリル酸エステル単独又はこれ
と共重合可能なビニル単量体よりなるゴム状弾性体を呈
する重合体が挙げられる。
【0018】ゴム状重合体で用いられるアクリル酸エス
テルとしては、ブチルアクリレート、エチルアクリレー
ト、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレ
ート、オクチルアクリレート等のアクリル酸エステルが
挙げられる。これと共重合可能なビニル単量体として
は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等
の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、メチルメタク
リレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレー
ト等のメタクリル酸エステル単量体、エチレン、プロピ
レン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテンなどのオ
レフィン単量体等が挙げられる。
【0019】(B)成分に用いられる芳香族ビニル単量
体は スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエ
ン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン
系単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。シアン
化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等が挙げら
れ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0020】また、これらと共重合可能なビニル単量体
としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル
酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸
エステル単量体,メチルメタクリル酸エステル、エチル
メタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量
体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単
量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN
−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中でア
クリル酸エステル、及びメタクリル酸エステル、アクリ
ル酸、メタクリル酸等の単量体が好ましい。
【0021】(B)成分は、ゴム状重合体35〜65質
量部存在下に、芳香族ビニル単量体60〜80質量%、
シアン化ビニル単量体20〜40質量%及びこれらと共
重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる単量体
混合物35〜65質量部をグラフト重合させたものであ
る。
【0022】ゴム状重合体が35質量部未満か、単量体
混合物が65質量部を超えると耐衝撃性が低下する。ま
た、ゴム状重合体が65質量部を超えるか、単量体混合
物が35質量部未満だと成形性が低下する。そして、単
量体混合物中の芳香族ビニル単量体が60質量%未満か
80質量%を超えると(A)成分との相溶性が低下し、
熱可塑性樹脂組成物の層剥離や衝撃強度低下の原因とな
る。同様にシアン化ビニル単量体が20質量%未満か4
0質量%を超えると(A)成分との相溶性が低下し、熱
可塑性樹脂組成物の層剥離や衝撃強度低下の原因とな
る。
【0023】このグラフト共重合体の製造に当たっては
公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸
濁重合、乳化重合の如き水性不均一重合、塊状重合、溶
液重合及び生成重合体の貧溶媒中での沈殿不均一重合
等、並びにこれらの組合せが挙げられる。ゴム状重合体
のゴム粒径は、体積平均粒径で0.1〜0.6μmの範
囲が、耐衝撃性の面から好ましい。また、グラフト率は
20〜80%で、未グラフト共重合体の重量平均分子量
は5万〜20万の範囲であると、耐衝撃性と成形性のバ
ランスが良好である。
【0024】次に、(C)成分のビニル芳香族系共重合
体について説明する。本発明の(C)成分において用い
られる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メ
チルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、
クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、特に
スチレンが好ましい。
【0025】シアン化ビニル単量体としては、アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニ
トリル等があり、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0026】また、これらと共重合可能なビニル単量体
としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル
酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸
エステル単量体,メチルメタクリル酸エステル、エチル
メタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量
体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単
量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN
−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中でア
クリル酸エステル、及びメタクリル酸エステル、アクリ
ル酸、メタクリル酸等の単量体が好ましい。(C)成分
も通常の重合方法で製造でき、例えば懸濁重合、溶液重
合、乳化重合等の重合方法が採用できる。
【0027】(C)成分中の芳香族ビニル単量体単位量
は60〜80質量%であり、特に68〜78質量%が望
ましい。また、シアン化ビニル単量体単位量は20〜4
0質量%であり、特に22〜32質量%が望ましい。芳
香族ビニル単量体単位量が60質量%未満か80質量%
を超える場合、又はシアン化ビニル単量体単位量が20
質量%未満か40質量%を超えると(A)成分との相溶
性が低下し、熱可塑性樹脂組成物の層剥離や衝撃強度低
下の原因となる。
【0028】次に、本発明の(D)成分のポリオルガノ
シロキサン化合物について説明する。ポリオルガノシロ
キサン化合物としては、一般式化3に示されるものであ
る。
【化3】 (ただし、R1〜R4は水素、メチル基、フェニル基、ビ
ニル基、水酸基、主鎖の炭素数10以下のエポキシ末端
基、主鎖の炭素数10以下のアミン末端基から選択され
る。)
【0029】(D)成分であるポリオルガノシロキサン
化合物の重量平均分子量は50万以下であると耐汚染性
の改良が充分でなく、特に70万から150万が好適で
ある。
【0030】(D)成分であるポリオルガノシロキサン
化合物の構造は一般化式3に示す通りであるが、特にR
1とR2がCH3で、R3とR4がCH=CH2である構造を
有する化合物を用いた場合に、本発明の熱可塑性樹脂組
成物の耐衝撃性が高く好適である。好ましくはポリオル
ガノシロキサン化合物は未加流の生ゴムである。
【0031】本発明における熱可塑性樹脂組成物を構成
する(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)
成分の配合割合は、(A)成分、(B)成分、(C)成
分の合計量100質量部に対して(D)成分1〜5質量
部である。さらに、(A)成分、(B)成分、(C)成
分の合計量100質量部に対して(A)成分が5〜50
質量%、好ましくは10〜45質量%(B)成分10〜
50質量%、好ましくは10〜45質量%(C)成分0
〜50質量%、好ましくは10〜45質量%である。
【0032】(A)成分が5質量%未満では、耐熱性が
充分でなく、50質量%を超えると熱可塑性樹脂組成物
の耐衝撃性、成形性が大幅に低下する。また、(B)成
分が10質量%未満では耐衝撃性が低下し、50質量%
を超えると耐熱性、成形性が低下する。(C)成分は5
0質量%を超えると耐熱性が低下する問題点がある。ま
た、(D)成分が(A)成分、(B)成分、(C)成分
の合計量100質量部に対して1質量部未満では摺動性
が充分でなく、5質量部を超えると、耐熱性が低下する
【0033】本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るために
(A)〜(D)成分を混合する方法には特に制限がな
く、公知の手段を使用することが出来る。その手段とし
て例えばバンバリーミキサー、タンブラーミキサー、混
合ロール、一軸又は二軸押出機等が挙げられる。混合形
態としては通常の溶触混合、マスターペレット等を用い
る多段階溶融混合、溶液中でのブレンドより熱可塑性樹
脂組成物を得る方法がある。
【0034】また、本発明の熱可塑性樹脂組成物にさら
に安定剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色
剤及びタルク、シリカ、クレー、マイカ、炭酸カルシウ
ム等の充填剤を添加することも可能である。以下本発明
をさらに実施例により説明するが、本発明はその主旨を
越えない限り、以下の実施例に限定されるものではな
い。なお、実施例、比較例中の部、%はいずれも特にこ
とわりのない限り質量基準である。
【0035】
【実施例】実施例1〜10及び比較例1〜8 (1)(A)成分の製造−1 撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メ
チルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで
置換した後温度を85℃に昇温し、無水マレイン酸40
部とベンゾイルパ−オキサイド0.15部をメチルエチ
ルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添
加した。添加後さらに3時間温度を85℃に保った。こ
こで得られた共重合体溶液にアニリン38部、トリエチ
ルアミン0.6部を加え温度140℃で7時間反応させ
た。反応液をベント付き二軸押出機に供給し、脱揮して
マレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析より
酸無水物基のイミド基への転化率は92モル%であっ
た。このマレイミド系共重合体は不飽和ジカルボン酸イ
ミド単量体としてのN−フェニルマレイミド単位を52
%含む共重合体でありこれを共重合体A−1とした。他
のマレイミド系共重合体(A−2〜A−3)もアニリン
の添加量を調整することによる、無水マレイン酸のイミ
ド基への添加率を調整したこと以外はA−1と同様な方
法で作成した。
【0036】(2)(A)成分の製造−2 撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メ
チルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで
置換した後温度を100℃に昇温し、温度を保ちながら
充分撹拌を行った。この中にメチルエチルケトン150
部に溶解したNーフェニルマレイミド40部とベンゾイ
ルパ−オキサイド0.25部を8時間で連続的に添加し
ながら、重合を行った。重合終了後、反応液をベント付
き二軸押出機に供給し、乾燥し、マレイミド系共重合体
を得た。C−13NMR分析よりこの共重合体は不飽和
ジカルボン酸イミド単量体としてのN−フェニルマレイ
ミド単位を42%含む共重合であった。これを共重合体
A−4とした。表1にA−1〜A−4の単量体の組成分
析結果及び重量平均分子量を示す。
【0037】
【表1】
【0038】なお、表中のSTはスチレン、NPMIは
N−フェニルマレイミド、MAHは無水マレイン酸を示
す。また、重量平均分子量の測定は後記するGPC(ゲ
ルパーミエイションクロマトグラフィ)測定条件で行っ
た。
【0039】(3)(B)成分の製造 撹拌機を備えた反応缶中にポリブタジエンラテックス1
43部(固形分35%重量平均粒径0.25μm、ゲル
含率90%)、ステアリン酸ソーダ1部、ソジウムホル
ムアルデヒドスルホキシレ−ト0.1部、テトラソジウ
ムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.03
部、硫酸第一鉄0.003部、及び純水150部を温度
50℃に加熱し、これにスチレン70%及びアクリロニ
トリル30%よりなる単量体混合物50部、t−ドデシ
ルメルカブタン0.2部、キユメンハイドロパーオキサ
イド0.15部を6時間で連続添加し、さらに添加後温
度65℃に昇温し2時間重合した。重合率は97%に達
した。得られたラテックスに酸化防止剤を添加した後、
塩化カルシウムで凝固、水洗、乾燥後白色粉末としてグ
ラフト共重合体を得た。これを共重合体B−1とした。
【0040】次にB−1のグラフト率と未グラフト共重
合体の分子量を測定するために、B−1を3gとり、メ
チルエチルケトン100ml溶液に膨潤させて温度23
℃で24時間攪拌し、遠心分離した上澄み溶液中の未グ
ラフトのスチレン−アクリロニトリル共重合体の分子量
をGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ)に
て測定したところ、重量平均分子量は8.2万であっ
た。また、遠心分離で沈降した沈殿物を真空乾燥機で乾
燥し、不溶分Xとした。さらに、この不溶分の試料を用
いてケルダール窒素法によって定量したアクリロニトリ
ル単量体の重量Yと熱分解ガスクロマトグラフィーによ
り定量したスチレン単量体の重量Zを求め、グラフト率
(%)=100×(Y+Z)/{X−(Y+Z)}式か
ら計算して求めたグラフト率は33%であった。
【0041】(4)(C)成分の製造 撹拌機を備えた反応缶中にスチレン70部、アクリロニ
トリ30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデ
シルメルカブタン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド
0.2部及び水250部を仕込み、温度70℃に昇温し
重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75
℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は9
7%に達した。得られた反応液を塩酸にて中和し、脱
水、乾燥後白色ビーズ状の共重合体を得た。なお、この
共重合体の重量平均分子量を測定したところ11.5万
であった。これを共重合体C−1とした。
【0042】(5)(D)成分:ポリオルガノシロキサ
ン化合物 用いたD−1〜D−7のポリオルガノシロキサン化合物
の構造、及び重量平均分子量を表2に示す。重量平均分
子量はGPC法にて測定した。
【0043】
【表2】
【0044】なお、(A)成分、(B)成分の未グラフ
トAS共重合体、(C)成分、及び(D)成分の重量平
均分子量は、得られた重合体を充分に精製・乾燥後に分
析試料として用い、下記のGPCによる測定条件で測定
した。 装置:SYSTEM−21(RI)(昭和電工社製) 検量線:標準ポリスチレンを用いて作製 流速:1.0ml/min 濃度:2.0mg/ml カラム:PLgel MIXED−B(PL社製) 温度:40℃ 溶離液:テトラハイドロフラン
【0045】(A)成分から(D)成分を表3〜表5に
示す量比でブレンドし、このブレンド物を35m/m脱
揮装置付き同方向回転二軸押出機にて温度250℃で押
出し、ペレット化した。このペレットを使用し射出成形
機により、温度250℃にて物性測定用の試験片を作成
し、各種物性を測定した。その結果も表3〜表5に示
す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】なお、各種の物性測定試験方法は下記の条
件で行った。 1)アイゾット衝撃強度:厚み6.4mmのノッチ付き
の射出成形試験片を用いてASTM−D256に準じて
測定した。 2)VSP(ビカット軟化点):厚み3.2mmの射出
成形試験片を用いて、荷重49NでJIS K−720
6に準じて測定した。 3)MFR:温度220℃、荷重98Nで、ASTM
D−6874に準じて測定した。 4)動摩擦係数: 試験機:協和界面化学(株)FACE DFPM−S型 試験片形状: 固定側;10×10×2mmの射出成形試験片 可動側;127×63.5×2mmの射出成形試験片 試験条件: 摩擦速度;180mm/min 荷重;100g 試験場所;温度23℃、湿度50%RHの標準状態 5)耐汚染性:初期光沢としてSPCC鋼(100×1
00×2mm)の光沢を予め測定した。次に、本発明の
熱可塑性樹脂組成物の射出成形した角板(100×10
0×2mm)をSPCC鋼(100×100×2mm)
の上に乗せ、さらに5kgの重りを載せ、温度90℃×
300時間加熱後、室温まで冷却しSPCC鋼の光沢を
測定し、試験後光沢とした。初期光沢と試験後光沢との
光沢の変化から評価を行う。評価の基準は表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】表3〜表4に示す結果から明らかなよう
に、実施例1〜10の熱可塑性樹脂組成物は動摩擦係数
が0.05以下で摺動性に優れ、かつ耐汚染性に優れて
おり、しかも優れた耐熱性、耐衝撃性、成形性を有して
いる。
【0052】これに対して、表4に示すように、比較例
1〜2の熱可塑性樹脂組成物はマレイミド系共重合体中
の無水マレイン酸量が20質量%を超えているために耐
衝撃性に劣り、また、耐熱性も劣る。
【0053】表5に示した比較例3の熱可塑性樹脂組成
物は、ポリオルガノシロキサン化合物を含んでいないの
で、摺動性特性を発現せず、摺動性が劣るものとなって
いる。
【0054】比較例4〜比較例7の熱可塑性樹脂組成物
は、ポリオルガノシロキサン化合物のスチレン換算の重
量平均分子量が50万未満であるために、耐汚染性に劣
る。
【0055】比較例8の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオ
ルガノシロキサン化合物の添加量が本発明の範囲外であ
るために耐熱性が劣る。
【0056】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物は特定のマ
レイミド共重合体とこれに相溶する特定な組成のグラフ
ト共重合体、ビニル芳香族系共重合体、及び特定のポリ
オルガノシロキサン化合物を配合することによって、耐
熱性、耐衝撃性、成形性、摺動性、及び耐汚染性に優れ
ている。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これらの性能
が要求される、自動車部品、カーオーディオ部品、電気
・電子部品、事務用機器部品等におけるボタン、スイッ
チ、スライド部品や、コピー機、ファクシミリ(機)の
給紙トレー、ソーターに好ましく用いることが出来る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)成分:芳香族ビニル単量体単位40
    〜80質量%、不飽和ジカルボン酸イミド単量体単位1
    0〜60質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位
    0〜20質量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量
    体単位0〜20質量%からなるマレイミド系共重合体5
    〜50質量%、 (B)成分:ゴム状重合体35〜65質量部に、芳香族
    ビニル単量体60〜80質量%、シアン化ビニル単量体
    20〜40質量%、及びこれらと共重合可能なビニル単
    量体0〜20質量%からなる単量体混合物35〜65質
    量部をグラフト重合させたグラフト共重合体10〜50
    質量%、 (C)成分:芳香族ビニル単量体単位60〜80質量
    %、シアン化ビニル単量体単位20〜40質量%、及び
    これらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20質量%
    からなるビニル芳香族系共重合体0〜50質量%、の
    (A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量10
    0質量部に対して (D)成分:一般式化1で示される重量平均分子量が5
    0万以上であるポリオルガノシロキサン化合物1〜5質
    量部を含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成
    物。 【化1】 (ただし、R1〜R4は水素、メチル基、フェニル基、ビ
    ニル基、水酸基、主鎖の炭素数10以下のエポキシ末端
    基、主鎖の炭素数10以下のアミン末端基から選択され
    る)
  2. 【請求項2】(D)成分の化式1のR1とR2がCH
    3で、R3とR4がCH=CH2であることを特徴とする請
    求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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