JP3745476B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタリック調外観を持ち、耐熱性、耐衝撃性、成形性、および難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位を有する共重合体とアルミニウム粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物に関するものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物は自動車部品、電気・電子部品、事務用機器部品、カーオーディオ部品、携帯電話、熱器具、食器、冷蔵庫部品、浴槽部品、シャワー部品、浄水器部品、便座等に好ましく用いることが出来る。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ABS樹脂にアルミニウム粉を配合し、メタリック調の外観を得る樹脂組成物は知られている(特公昭59−42022号公報)。但し、この樹脂組成物は耐熱性が低く、耐熱性の必要な部品に使用出来ない問題点がある。
【0003】
ABS樹脂の耐熱性を向上させるために、ABS樹脂にα−メチルスチレン系共重合体を配合して耐熱ABS樹脂を製造することが知られているが、この耐熱ABS樹脂にアルミニウム粒子を配合すると、耐衝撃性の低下が大きく、かつ燃焼速度が早く、UL−94HBに合格しない問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、外観が良好なメタリック調で、かつ高耐熱、高衝撃、難燃性に優れた樹脂はいまだ得られておらず、これらの性能を兼備した高性能な樹脂の開発が強く望まれているのが現状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の欠点を解決するため、鋭意検討した結果、特定の組成のマレイミド系共重合体、特定の組成のビニル系共重合体、特定の組成のグラフト重合体と平均粒径20〜80μmで、平均形状比1/2〜1のアルミニウム粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物とし、前記(共)重合体の合計量100重量部に対しアルミニウム粒子0.1〜2重量部とを配合することで上記課題が解決出来ることを見いだした。
【0006】
すなわち、本発明は下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含有してなる組成物で、かつ(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量100重量部に対して、(D)成分が0.1〜2重量部とからなる熱可塑性樹脂組成物である。
(A)成分:芳香族ビニル単量体単位40〜80重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位20〜60重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなるマレイミド系共重合体5〜50重量部、
(B)成分:芳香族ビニル単量体単位60〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位20〜40重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなるビニル系共重合体0〜50重量部、
(C)成分:ゴム状重合体35〜65重量部に、芳香族ビニル単量体60〜80重量%、シアン化ビニル単量体20〜40重量%およびそれらと共重合可能なビニル単量体0〜30重量%からなる単量体混合物35〜65重量部をグラフト重合してなるグラフト重合体20〜50重量部、
(D)成分:平均粒径20〜80μmで、かつ平均形状比1/2〜1のアルミニウム粒子である。
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の最大の特長は、特定の組成のマレイミド系共重合体を耐熱付与成分として使用し、特定の形状のアルミニウム粒子を所定量添加することで外観が良好なメタリック調となり、かつ耐熱性、耐衝撃性、難燃性が非常に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることである。
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物はメタリック調外観、耐熱性、耐衝撃性、難燃性を要求される用途に使用される。例えば自動車部品であるカーオーディオ、スポイラー、ピラーサンルーフフレーム、デフロスターグリル、ランプハウジング等や、電気・電子機器部品、携帯電話機部品、PHS部品、カメラ部品、電子手帳、食器、熱器具、電気冷蔵庫部品、便座、電子レンジ部品、OA機器部品、工業用機械部品等に好適である。
【0009】
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(A)成分のマレイミド系共重合体について説明する。共重合体を構成する芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0010】
芳香族ビニル単量体と不飽和ジカルボン酸イミド誘導体の共重合体は不飽和ジカルボン酸無水物を芳香族ビニル単量体と共重合させた後アンモニア、および/または第1級アミンと反応させてイミド誘導体にしてもよい。さらにはマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等のマレイミド系単量体を直接芳香族ビニル単量体と共重合させても良い。(A)成分に用いられる不飽和ジカルボン酸イミドとしてはNーフェニルマレイミドが好適である。
また、不飽和ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、マレイン酸無水物が特に好ましい。
【0011】
イミド化反応に用いるアンモニアや第1級アミンは無水または水溶液のいずれの状態であってもよく、また第1級アミンの例としてメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミンおよび/またはアニリン、トルイジン、ナフチルアミン等の芳香族アミンが挙げられる。
【0012】
イミド化反応を溶液状態または懸濁状態で行う場合は通常の反応容器、例えばオートクレーブ等を用いるのが好ましく、塊状溶融状態で行う場合には、脱揮装置の付いた押出機を用いてもよい。
【0013】
イミド化反応の温度は約80〜350℃であり、好ましくは100〜300℃である。80℃未満の場合には反応速度が遅く、反応に長時間を要して実用的でない。一方、350℃を越える場合には重合体の熱分解による物性低下をきたす。またイミド化反応時に触媒を用いてもよく、その場合は第3級アミン、例えばトリエチルアミン等が好ましく用いられる。
【0014】
なお、これらと共重合可能なビニル単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等の単量体が挙げられ、これらの中で無水マレイン酸が特に好適であり、アルミニウム粒子を配合した場合の耐衝撃性の低下が小さくてすむ。
【0015】
(A)成分のマレイミド系共重合体の芳香族ビニル単量体単位は40〜80重量%であり、好ましくは45〜55重量%である。40重量%未満では成形性が低下し、80重量%を超えると耐熱性が低下して好ましくない。また、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位は20〜60重量%であり、好ましくは45〜55重量%である。20重量%未満では耐熱性の向上が十分でなく、60重量%を超えると熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が大幅に低下する。さらにこれらと共重合可能なビニル単量体単位は0〜20重量%であり0〜10重量%が好ましい。20重量%を超えると(B)成分、(C)成分との相溶性が低下し、耐衝撃性が低下し、層剥離が発生する。
【0016】
次に、(B)成分のビニル系共重合体について説明する。本発明の(B)成分において用いられる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0017】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等があり、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0018】
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、およびN−ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の単量体が特に好ましい。
【0019】
(B)成分も通常の重合方法で製造でき、例えば懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の重合方法が採用できる。
【0020】
(B)成分のビニル系共重合体の芳香族ビニル単量体単位は60〜80重量%であり、65〜75重量%が好ましい。60重量%未満では成形性が低下し、80重量%を超えると耐熱性が低下する。シアン化ビニル単量体単位は20〜40重量%であり、25〜35重量%が好ましい。20重量%未満か40重量%を超えると(A)成分との相溶性が低下し、熱可塑性樹脂組成物の層剥離や衝撃強度低下の原因となる。これらと共重合可能なビニル単量体単位は0〜20重量%であり、0〜10重量%が好ましい。20重量%を超えると(A)成分、(C)成分との相溶性が低下し、耐衝撃性が低下し、層剥離が発生する。
【0021】
次に、(C)成分のグラフト重合体について説明する。本発明の(C)成分は、ゴム状重合体存在下に、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体およびそれらと共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物をグラフト重合させたものである。
【0022】
ゴム状重合体としてはブタジエン単独またはこれと共重合可能なビニル単量体よりなる重合体、例えばブタジエン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、あるいはアクリル酸エステル単独またはこれと共重合可能なビニル単量体よりなるアクリル酸エステル重合体またはその共重合体が挙げられる。このグラフト重合体の製造に当たっては公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合の如き水性不均一重合、塊状重合、溶液重合および生成重合体の貧溶媒中での沈殿不均一重合等、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0023】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0024】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0025】
また、それらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、およびN−ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらの中でアクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の単量体が特に好ましい。
【0026】
(C)成分のグラフト重合体は、ゴム状重合体35〜65重量部に単量体混合物35〜65重量部をグラフト重合したものであり、特にゴム状重合体45〜55重量部が好ましい。35重量部未満では耐衝撃性が低く、65重量部を超えると成形加工性、耐熱性が低下する。また単量体混合物35〜65重量部中の芳香族ビニル単量体は60〜80重量%であり、特に65〜75重量%が好ましい。60重量%未満では成形性が低下し、80重量%を超えると耐衝撃性が低下する。シアン化ビニル単量体は20〜40重量%であり、特に25〜35重量%が好ましい。20重量%未満か40重量%を超えると(A)成分のマレイミド系共重合体との相溶性が低下し、耐衝撃性が著しく低くなる。それらと共重合可能なビニル単量体は0〜30重量%であり、特に0〜20重量%が好ましい。30重量%を超えると、(A)成分、(B)成分との相溶性が低下し、耐衝撃性が低下する。
【0027】
(C)成分のグラフト重合体の製造に当たっては公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合のごとき水性不均一重合、塊状重合、溶液重合および生成重合体の貧溶媒中での沈殿不均一重合等、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0028】
また、ゴム粒径は0.1〜0.6μmの範囲が、耐衝撃性の面から好ましい。さらに、グラフト率は20〜80%で、未グラフト共重合体の重量平均分子量は5万〜20万の範囲であると、耐衝撃性と成形性のバランスが良好である。
【0029】
次に、(D)成分のアルミニウム粒子の金属粉について説明する。アルミニウム粒子の平均粒径は20〜80μm、好ましくは30〜70μmである。平均粒径が20μm未満か、または80μmを超えると耐衝撃性が大幅に低下する。また平均粒径が20μm未満だと燃焼速度が早くなり、UL−94HBに合格することが困難になる。
【0030】
また、アルミニウム粒子の平均形状比は1/2〜1であり、好ましくは1/1.5〜1である。形状比が1/2未満だと、耐衝撃性が大幅に低下する。
【0031】
なお、アルミニウム粒子の形状を表す平均粒径とは、アルミニウム粒子の最長径の算術平均を意味する。そしてアルミニウム粒子の粒径測定は画像処理装置である粒子分布測定器SPICCA−II(商品名、日本アビオニクス(株)製)を用いた。
【0032】
またアルミニウム粒子の平均形状比とは、粒子の最短径と最長径の比、即ち(最短径/最長径)の算術平均である。平均形状比の算出にも粒子分布測定器SPICCA−IIを用いた。
【0033】
前記形状を有するアルミニウム粒子は従来公知の方法、例えば湿式ボールミル法、アトライター法、振動ミル法等の方法を用いて製造出来る。
【0034】
本発明のアルミニウム粒子は金属分100%のままで合成樹脂に配合する事が最善であるが、脂肪酸潤滑剤をアルミニウム粒子100重量部に対して0.1〜3重量部配合しても差し支えない。脂肪酸潤滑剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸等が使用出来る。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含有してなる組成物で、かつ(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量100重量部に対して、(D)成分が0.1〜2重量部とからなるものである。
(A)成分、(B)成分、(C)成分の配合比は、(A)成分5〜50重量部、(B)成分0〜50重量部、(C)成分20〜50重量部である。さらには、(A)成分が10〜45重量部、(B)成分が5〜45重量部、(C)成分が25〜45重量部が好ましい。
また(A)成分が5重量部未満では、耐熱性が充分でなく、50重量部を超えると熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、成形性が大幅に低下する。また(A)成分がない場合は前記のように耐熱性が低下するのみならず、燃焼速度が早くなりアルミニウム粒子を用いるとUL−94HBに合格することが難しくなる。(B)成分が50重量部を超えると耐熱性が低下する問題点がある。(C)成分が20重量部未満では耐衝撃性が低下し、50重量部を超えると耐熱性、成形性が低下する。
【0036】
本発明における(D)成分の配合量は(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して0.1〜2重量部である。特に0.2〜1重量部が好ましく、0.1重量部未満では、外観がメタリック調にならず、2重量部を超えると耐衝撃性が低下し、かつ燃焼速度が早くなり、UL−94HBに合格する事が困難になる。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るために(A)〜(D)成分を混合する方法には特に制限がなく、公知の手段を使用する事が出来る。その手段として例えばバンバリーミキサー、タンブラーミキサー、混合ロール、1軸または2軸押出機等が挙げられる。混合形態としては通常の溶融混合、マスターペレット等を用いる多段階溶融混合、溶液中でのブレンドより組成物を得る方法等がある。
【0038】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物にさらに安定剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤およびタルク、シリカ、クレー、マイカ、炭酸カルシウム等の充填剤を添加することも可能である。
【0039】
着色剤はABS樹脂に通常使用できる酸化チタン、酸化鉄(弁柄)、群青、フタロシアニンブルー、カーボンブラック、チタンイエロー、コバルトブルー、ペリノン系レッド、ペリレン系レッド、キナクリドンレッド、アンスラキノン系レッド等が好ましく用いられる。
【0040】
以下、本発明をさらに実施例により説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の部、%はいずれも特にことわらない限り重量基準である。
【0041】
【実施例】
実施例および比較例
(1)(A)成分の製造−1
撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メチルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後温度を85℃に昇温し、無水マレイン酸40部とベンゾイルパーオキサイド0.15部をメチルエチルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添加した。添加後、さらに3時間温度を85℃に保った。ここで得られた共重合体溶液にアニリン38部、トリエチルアミン0.6部を加え温度140℃で7時間反応させた。反応液をベント付き2軸押出機に供給し、脱揮してマレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析より酸無水物基のイミド基への転化率は92モル%であった。このマレイミド系共重合体は、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を52%含む共重合体でありこれを共重合体A−1とした。
【0042】
(2)(A)成分の製造−2
撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メチルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後温度を100℃に昇温し、温度を保ちながら充分撹拌を行った。この中にメチルエチルケトン150部に溶解したN−フェニルマレイミド40部とベンゾイルパーオキサイド0.25部を8時間で連続的に添加しながら、重合を行った。重合終了後、反応液をベント付き2軸押出機に供給し、乾燥し、マレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析よりこの共重合体は、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を42%含む共重合であった。これを共重合体A−2とした。
【0043】
(3)(A)成分の製造−3
撹拌機を備えたオートクレーブ中に純水120部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム塩(乳化剤)2部、スチレン54部、N−フェニルマレイミド34部、アクリロニトリル12部、過硫酸ナトリウム(開始剤)0.5部、およびt−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)0.5部を一括仕込み、温度70℃に昇温して重合を行った。重合後、硫酸マグネシウム5%水溶液300部を加えて析出し、脱水、乾燥してマレイミド系共重合体を得た。C−13NMR分析よりこの共重合体は不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミド単位を33%含む共重合体であった。これを共重合体A−3とした。A−1〜A−3の組成分析の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、表1にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量を示した。GPC測定には、昭和電工株式会社製「SHODEXGPC SYSTEM−21」を用い、標準分子量のポリスチレンを用いて作製した検量線を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
また、表1中のSTはスチレンを、NPMIはN−フェニルマレイミドを、MAHは無水マレイン酸を、ANはアクリロニトリルを表す。
【0046】
(4)(B)成分の製造−1
撹拌機を備えた反応缶中にスチレン70部、アクリロニトリル30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデシルメルカブタン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部および水250部を仕込み、温度70℃に昇温し重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は97%に達した。得られた反応液に5%塩酸水溶液200部を添加し析出させ、脱水、乾燥後白色ビーズ状の共重合体を得た。これを共重合体B−1とした。
【0047】
(5)(B)成分の製造−2
撹拌機を備えた反応缶中にα−メチルスチレン70部、アクリロニトリル30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ドデシルメルカブタン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部および水250部を仕込み、温度70℃に昇温し重合を開始させた。重合開始から7時間後に温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は98%であった。得られた反応液に5%塩酸水溶液を200部添加し析出させ、脱水、乾燥後白色ビーズの共重合体を得た。これを共重合体B−2とした。
【0048】
(6)(C)成分の製造−1
撹拌機を備えた反応缶中にポリブタジエンラテックス143部(固形分35%、重量平均粒径0.25μm、ゲル含率90%)、ステアリン酸ソーダ1部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.03部、硫酸第一鉄0.003部、および純水150部を温度50℃に加熱し、これにスチレン70%およびアクリロニトリル30%よりなる単量体混合物50部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、キユメンハイドロパーオキサイド0.15部、を6時間で連続添加し、さらに添加後温度65℃に昇温し2時間重合した。重合率は97%に達した。得られたラテックスに酸化防止剤(Irganox1076)1部を添加した後、5%硫酸水溶液200部と5%硫酸マグネシウム水溶液100部を加えて析出し、水洗、乾燥し重合体C−1とした。
【0049】
(7)(D)成分として用いたアルミニウム粒子の平均粒径および平均形状比を表2示す。
【0050】
【表2】
【0051】
(A)成分から(D)成分を表3〜表6に示す量比でブレンドし、このブレンド物を35m/m脱揮装置付き同方向回転2軸押出機にて温度250℃で押出し、ペレット化した。このペレットを使用し射出成形機により、温度250℃にて物性測定用の試験片を作成し、各種物性を測定した。その結果を表3〜表6に付記した。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
また、表3〜表6に示した物性測定の試験方法は下記の方法で行った。
1)アイゾット(IZOD)衝撃強度:ASTM D−256に準じ、厚み1/4インチのノッチ付試験片を使用して測定した。
2)熱変形温度(HDT):ASTM D−648に準じて、1/4インチ厚の試験片を使用し、荷重18.6kg/cm2で測定した。
3)メルトフローレート(MFR):JIS K−6874に準じ、温度265℃、10kg荷重で測定した。
4)外観評価:127×127×2mm角板を川口鉄工(株)製K−125射出成形機(型締力125TON)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で成形し、その射出成形試験片の外観を以下の様に評価した。
評価A:外観ムラなし
評価B:外観若干ムラあり
評価C:外観ムラが目立つ
5)燃焼速度:UL−94に準拠し、試験片は125×13×3.2mmを用いて行った。
6)UL−94HB合否判定:燃焼速度40mm/分以下であれば合格と判定し、燃焼速度40mm/分を超えた場合は不合格と判定した。
【0057】
表3〜表4に示す結果から明らかなように、実施例1〜8の組成物は優れたメタリック調の外観を有し、かつ優れた耐熱性、耐衝撃性、難燃性(UL−94HB合格レベル)を有している。
【0058】
これに対して、表4に示すように、比較例1〜比較例4の組成物は、(A)成分のマレイミド系共重合体を用いないと、耐熱性が低く、燃焼速度が早くなりUL−94HBに合格しなくなる。また比較例1〜比較例4ではアルミニウム粒子のD−1、D−2,D−3,D−5を使用しても衝撃強度、燃焼速度に差が認められないことから、アルミニウム粒子の平均粒径および平均形成比の差異が認められなかった。
【0059】
表5の比較例5〜7はアルミニウム粒子の平均粒径が20〜80μm、または平均形状比が1/2〜1の範囲外であるため、実施例に比べて、耐衝撃性が劣っている。また、比較例5で使用しているアルミニウム粒子D−1は平均粒径が15μmで、20μm未満であるために燃焼速度も早く、UL−94HBに合格しないと判断される。
【0060】
比較例1〜4では(A)成分のマレイミド系共重合体を含まないので、アルミニウム粒子の平均粒径、平均形状比がそれぞれ20〜80μm、1/2〜1の範囲外、範囲内でも、耐衝撃性、燃焼速度には差異が認められなかった。しかしながら、(A)成分を含んだ比較例5〜7では、アルミニウム粒子の平均粒径、平均形状比が規定の範囲を外れると耐衝撃性が低下し、さらに比較例5で開示したとおり平均粒径が小さいと燃焼速度も早くなり、(A)成分を含む場合には特異的にアルミニウム粒子の粒径と形状比が重要である。
【0061】
表5の比較例8は使用しているアルミニウム粒子が3重量部と多い為に、耐衝撃性が低下し、かつ燃焼速度が早く、UL−94HBに合格しないと判断される。
【0062】
表5の比較例9、比較例10はアルミニウム粒子(D−1)の平均粒径が15μmであるために実施例4、実施例5と比較すると、熱変形温度(HDT)は110℃前後で同じであるが、衝撃強度は9kg・cm/cm であり、7kg・cm/cm 低く、燃焼速度も42〜43mm/分で実施例よりも約7〜8mm/分早く、燃え易くなっている。
【0063】
表6の比較例11は(A)成分のマレイミド系共重合体の配合量が55部と多いために、熱変形温度(HDT)は高いものの、耐衝撃性、成形性(MFR)が低下している。
【0064】
比較例12は(B)成分のビニル系共重合体が70重量部と多く、(C)成分のグラフト重合体が少ないために耐衝撃性、耐熱性が低下している。
【0065】
比較例13は(C)成分のグラフト重合体が60重量部と多いために、耐熱性、成形性(MFR)が低下している。
【0066】
比較例14は(A)成分のマレイミド系共重合体が含まれておらず、かつ(B)成分のビニル系共重合体がα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体であるために、HDTは比較例1〜4よりは高いものの実施例1〜8より耐熱性が低く、また耐衝撃性も低く、燃焼速度が早くUL−94HBに合格しないと判断される。
【0067】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は特定の組成のマレイミド共重合体、ビニル系共重合体、グラフト重合体および特定の粒子形状を有するアルミニウム粒子を含有する樹脂組成物で、この樹脂組成物は耐熱性、耐衝撃性および難燃性に優れている。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これらの性能が要求される、自動車部品、オーディオ部品、電気・電子部品、事務用機器部品、携帯電話、熱器具、食器、冷蔵庫部品、浴槽部品、シャワー部品、浄水機部品、便座等の材料として特に有効に適用できるものである。
Claims (3)
- 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含有してなる組成物で、かつ(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量100重量部に対して、(D)成分が0.1〜2重量部とからなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(A)成分:芳香族ビニル単量体単位40〜80重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位20〜60重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなるマレイミド系共重合体5〜50重量部、
(B)成分:芳香族ビニル単量体単位60〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位20〜40重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜20重量%とからなるビニル系共重合体0〜50重量部、
(C)成分:ゴム状重合体35〜65重量部に、芳香族ビニル単量体60〜80重量%、シアン化ビニル単量体20〜40重量%およびそれらと共重合可能なビニル単量体0〜30重量%からなる単量体混合物35〜65重量部をグラフト重合してなるグラフト重合体20〜50重量部、
(D)成分:平均粒径20〜80μmで、かつ平均形状比1/2〜1のアルミニウム粒子。 - (A)成分の芳香族ビニル単量体単位がスチレンで、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体単位がN−フェニルマレイミドで、かつこれらと共重合可能なビニル単量体単位が無水マレイン酸であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
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