JP3503907B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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JP3503907B2
JP3503907B2 JP32810094A JP32810094A JP3503907B2 JP 3503907 B2 JP3503907 B2 JP 3503907B2 JP 32810094 A JP32810094 A JP 32810094A JP 32810094 A JP32810094 A JP 32810094A JP 3503907 B2 JP3503907 B2 JP 3503907B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性、耐衝撃性、及
び成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。さ
らに詳しくは、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体残基を
有するマレイミド系共重合体を含有した熱可塑性樹脂組
成物に関するものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物
は自動車部品、電気・電子部品、事務用機器部品、熱器
具、食器、冷蔵庫部品、浴槽部品、シャワー部品、浄水
器部品、便座等に好ましく用いることが出来る。
【0002】
【従来の技術】従来から、不飽和ジカルボン酸イミド誘
導体残基を有する共重合体の製造方法は知られている
(米国特許第3840499号明細書、米国特許第39
9907号明細書)。但し、このマレイミド系共重合体
は優れた耐熱性を有するものの耐衝撃性、成形性が著し
く劣るものである。
【0003】このため、マレイミド系共重合体にABS
樹脂をブレンドして耐衝撃性を改良した樹脂組成物も知
られているが、依然として耐衝撃性、成形加工性が劣
り、十分ではない(米国特許第3642949号明細
書、米国特許3652726号明細書、特開昭57−9
8536号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、マレイミド
系共重合体にABS樹脂をブレンドして高耐熱、高耐衝
撃でかつ成形加工性に優れた樹脂はいまだ得られておら
ず、これらの性能を兼備した高性能な樹脂の開発が強く
望まれているのが現状である。
【問題点を解決するための手段】
【0005】本発明者らは、上記のマレイミド系共重合
体とABS樹脂の樹脂組成物の欠点を解決するため、鋭
意検討した結果、(A)成分のマレイミド系共重合体、
(B)成分のビニル芳香族系共重合体、及び(C)成分
のグラフト共重合体からなる樹脂組成物において、該樹
脂組成物中の残留金属元素量を2000ppm 以下とする
ことにより、耐熱性、耐衝撃性、及び成形加工性に優れ
た熱可塑性樹脂組成物が得られることを見いだし、本発
明に到達したものである。
【0006】すなわち、従来のABS樹脂は残留金属元
素量が2000ppm を超えても特に物性に悪影響はない
が、本発明の(A)成分のマレイミド系共重合体、
(B)成分のビニル芳香族系共重合体、及び(C)成分
のグラフト共重合体よりなる熱可塑性樹脂組成物は残留
金属により、耐衝撃性、成形加工性が低下することがわ
かり、その残留金属元素について鋭意検討した結果、残
留金属元素量を2000ppm 以下とすることで、耐衝撃
性と成形加工性を大幅に改良できることを見いだしたも
のである。
【0007】すなわち、本発明は、(A)成分:芳香族
ビニル単量体残基、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体残
基、及びこれらと共重合可能なビニル単量体残基(ただ
し、エポキシ基を有する単量体を除く)からなるマレイ
ミド系共重合体5〜50重量部、(B)成分:芳香族ビ
ニル単量体残基、シアン化ビニル単量体残基、及びこれ
らと共重合可能なビニル単量体残基(ただし、エポキシ
基を有する単量体を除く)からなるビニル芳香族系共重
合体0〜50重量部、(C)成分:ゴム状重合体に、芳
香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、及びこれら
と共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物をグ
ラフト重合させたグラフト共重合体10〜50重量部よ
りなる樹脂組成物[但し、(A)成分、(B)成分、及
び(C)成分の合計量は100重量部]で、これらの
(A)、(B)、(C)成分を析出剤を用いて析出する
際(但し硫酸単独で析出する場合を除く)に、ポリマー
100部に対して析出剤中に溶解させる硫酸マグネシウ
ム、塩化カルシウムまたは硫酸亜鉛の金属化合物の量が
10部以下に制限した析出剤を使用して得られた共重合
体を用いた樹脂組成物であり、かつ該樹脂組成物中の残
留金属元素量を2000ppm 以下である熱可塑性樹脂組
成物とすることによって得られるものである。
【0008】以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物につい
て詳細に述べる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれ
る(A)成分のマレイミド系共重合体について説明す
る。(A)成分を製造するにあたって、第1の製法とし
ては、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸イミド
誘導体、不飽和ジカルボン酸無水物単量体及びこれらと
共重合可能なビニル単量体混合物を共重合させる方法、
第2の製法としては、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカ
ルボン酸無水物単量体及びこれらと共重合可能なビニル
単量体混合物を共重合させた後、この共重合体中の不飽
和ジカルボン酸無水物基をアンモニア、及び/又は第1
級アミンと反応させてイミド基に変換させる方法が挙げ
られ、いずれの方法によってもマレイミド系共重合体を
得ることができる。
【0009】(A)成分を構成する芳香族ビニル単量体
としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトル
エン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレ
ン系単量体及びその置換単量体が挙げられ、これらの中
でスチレンが特に好ましい。
【0010】不飽和ジカルボン酸イミド誘導体として
は、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマ
レイミド、Nーシクロヘキシルマレイミド、N−フェニ
ルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられ
る。これらの中でN−フェニルママレイミドが好まし
い。
【0011】不飽和ジカルボン酸無水物単量体として
は、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニッ
ト酸等の無水物が挙げられ、これらの中でマレイン酸無
水物が特に好ましい。
【0012】これらと共重合可能なビニル単量体として
は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン
化ビニル単量体、メチルアクリル酸エステル、エチルア
クリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアク
リル酸エステル単量体,メチルメタクリル酸エステル、
エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル
単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン
酸単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及
びN−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中
でアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリ
ル酸、メタクリル酸等の単量体が特に好ましい。また、
不飽和ジカルボン酸無水物単量体も第1の製法では共重
合可能なビニル単量体として挙げられ、第2の製法では
イミド基に転化されずに残った不飽和ジカルボン酸無水
物基としても共重合体中に導入することができる。
【0013】(A)成分を製造する第1の製法の場合
は、塊状−懸濁重合、溶液重合、塊状重合を、第2の製
法の場合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合
等公知の重合方法を用いることができる。
【0014】第2の製法で、マレイミド系共重合体を得
るためのイミド化反応に用いるアンモニアや第1級アミ
ンは、無水又は水溶液のいずれの状態でもあってもよ
い。第1級アミンの例としてメチルアミン、エチルアミ
ン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン、及び/
又はアニリン、トルイジン、ナフチルアミン等の芳香族
アミンが挙げられる。これらの中で特にアニリンが好ま
しい。
【0015】イミド化反応は溶液状態又は懸濁状態で行
う場合は通常の反応容器、例えばオートクレーブ等を用
いるのが好ましく、塊状溶融状態で行う場合には、脱揮
装置の付いた押出機を用いてもよい。
【0016】イミド化反応の温度は約80〜350℃で
あり、好ましくは100〜300℃である。80℃未満
の場合には反応速度が遅く、反応に長時間を要して実用
的でない。一方350℃を越える場合には重合体の熱分
解による物性低下をきたす。イミド化反応時に触媒を用
いてもよく、その場合は第3級アミン、例えばトリエチ
ルアミン等が好ましく用いられる。
【0017】(A)成分は、芳香族ビニル単量体残基、
不飽和ジカルボン酸イミド誘導体残基、及びこれらと共
重合可能なビニル単量体残基からなるマレイミド系共重
合体であるが、好ましい(A)成分として用いられる芳
香族ビニル単量体は40〜80重量%であり、40重量
%未満では成形性が低下し、80重量%を超えると耐熱
性が低下する。また、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体
残基は好ましくは10〜60重量%であり、10重量%
未満では耐熱性の向上が十分でなく、60重量%を超え
ると組成物の耐衝撃性が大幅に低下する。更に、これら
と共重合可能なビニル単量体残基は好ましくは0〜20
重量%であり、20重量%を超えると(B)成分及び
(C)成分との相溶性が低下して耐衝撃性も低下し、ま
た層剥離も発生し易くなる。
【0018】(A)成分に用いられる芳香族ビニル単量
体はスチレンが好ましく、不飽和ジカルボン酸イミド誘
導体は特に耐熱性の面からNーフェニルマレイミドが適
している。また、これらと共重合可能な芳香族ビニル単
量体は無水マレイン酸、アクリロニトリルが特に好適で
ある。
【0019】次に、(B)成分のビニル芳香族系共重合
体について説明する。本発明の(B)成分は芳香族ビニ
ル単量体残基、シアン化ビニル単量体残基、及びこれら
と共重合可能なビニル単量体残基からなるビニル芳香族
系共重合体である。(B)成分は芳香族ビニル単量体、
シアン化ビニル単量体及びこれらと共重合可能なビニル
単量体を用いて通常の重合方法で製造でき、例えば懸濁
重合、溶液重合、乳化重合等の重合方法が採用できる。
【0020】芳香族ビニル単量体としては、スチレン、
α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチ
レン、クロルスチレン等のスチレン系単量体であり、特
にスチレンが好ましい。シアン化ビニル単量体として
は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、αークロ
ロアクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリ
ルが好ましい。また、これらと共重合可能なビニル単量
体としては、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリ
ル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル
酸エステル単量体、メチルメタクリル酸エステル、エチ
ルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量
体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単
量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、及びN
−ビニルカルバゾ−ル等が挙げられる。これらの中でア
クリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル
酸、及びメタクリル酸等の単量体が特に好ましい。
【0021】(B)成分中の好ましい芳香族ビニル単量
体残基は60〜80重量%であり、60重量%未満では
成形性が低下し、80重量%を超えると耐熱性が低下す
る。また、好ましいシアン化ビニル単量体残基は20〜
40重量%であり、20重量%未満か40重量%を超え
ると(A)成分との相溶性が低下し、組成物の層剥離や
衝撃強度低下の原因となる。更に、好ましいこれらと共
重合可能なビニル単量体残基は0〜20重量%であり、
20重量%を超えると(A)成分及び(C)成分との相
溶性が低下して耐衝撃性も低下し、また層剥離が発生す
る。
【0022】次に、(C)成分のグラフト共重合体につ
いて説明する。本発明の(C)成分のグラフト共重合体
は、ゴム状重合体存在下に、芳香族ビニル単量体、シア
ン化ビニル単量体及びこれらと共重合可能なビニル単量
体からなる単量体混合物をグラフト重合させたものであ
る。
【0023】(C)成分に用いられる芳香族ビニル単量
体は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエ
ン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン
系単量体であり、特にスチレンが好ましい。シアン化ビ
ニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニ
トリル、αークロロアクリロニトリル等がげられ、特に
アクリロニトリルが好ましい。
【0024】ゴム状重合体はブタジエン単独又はこれと
共重合可能なビニル単量体よりなる重合体、あるいはア
クリル酸エステル単独又はこれと共重合可能なビニル単
量体よりなる重合体である。このグラフト共重合体の製
造に当たっては公知のいずれの重合技術も採用可能であ
って、例えば懸濁重合、乳化重合の如き水性不均一重
合、塊状重合、溶液重合及び生成重合体の貧溶媒中での
沈殿不均一重合等並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0025】好ましい(C)成分中の各構成はゴム状重
合体が35〜65重量部であり、35重量部未満では耐
衝撃性が低く、65重量部を超えると成形加工性、耐熱
性が低下する。また、単量体混合物中の好ましい芳香族
ビニル単量体は50〜80重量%であり、50重量%未
満では成形加工性が低下し、80重量%を超えると耐衝
撃性が低下する。更に、好ましいシアン化ビニル単量体
は20〜40重量%であり、20重量%未満か40重量
%を超えるとマレイミド系共重合体(A)との相溶性が
低下し、耐衝撃性が著しく低くなる。また、これらと共
重合可能なビニル単量体は0〜30重量%である。
【0026】ゴム粒径は0.1〜0.6μmの範囲が、
耐衝撃性の面から好ましい。また、グラフト率は20〜
80%で、更に未グラフト共重合体の重量平均分子量が
5万〜20万の範囲であると、耐衝撃性と成形加工性の
バランスが良好である。
【0027】なお、本発明の(C)成分のグラフト重合
においては、一般に全量の単量体がゴム状重合体上にグ
ラフトすることは困難であり、未グラフト共重合体が副
生産される。本発明においては未グラフト共重合体を分
離・除去した真のグラフト共重合体はむろんのこと、未
グラフト共重合体を含有したままのグラフト重合体でも
よく、いずれもグラフト共重合体として取り扱うことが
できる。
【0028】また、樹脂中の残留金属元素量を低減する
ことが重要であるので、(A)成分、(B)成分及び
(C)の各成分を製造する場合は、重合方法のみなら
ず、使用する触媒、乳化剤、析出剤の量や種類、析出方
法に細心の注意が必要である。
【0029】残留金属元素量を2000ppm 以下に低減
する具体的方法としては、析出剤として硫酸や塩酸等の
金属元素を含まない析出剤を使用する方法。また、硫酸
マグネシウムや塩化カルシウム等の金属元素を含む析出
剤を使用する場合は、析出させるポリマー100部に対
して析出剤中に溶解させる硫酸マグネシウムや塩化カル
シウム等の金属化合物の量が10部以下に制限する方法
がある。
【0030】また、析出したポリマーを2回以上水洗す
ること、あるいは析出したウエットケーキを遠心分離、
減圧ロ過することも有効である。
【0031】本発明における(A)成分、(B)成分、
(C)成分の配合比は、(A)成分5〜50重量部、
(B)成分0〜50重量部、(C)成分10〜50重量
部であり、更に好ましい量は(A)成分10〜45重量
部、(B)成分5〜45重量部及び(C)成分15〜4
5重量部で、かつ(A)成分、(B)成分、及び(C)
成分の総量は100重量部である。特に(A)成分は5
重量部未満では耐熱性が充分でなく、50重量部を超え
ると組成物の耐衝撃性及び成形加工性が大幅に低下す
る。また、(B)成分は50重量部を超えると耐熱性が
低下する問題点がある。(C)成分は10重量部未満で
は耐衝撃性が低下し、50重量部を超えると耐熱性及び
成形性が低下する。
【0032】本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る為に
(A)〜(C)成分を混合する方法は特に制限がなく、
公知の手段を使用する事が出来る。その手段として例え
ばバンバリーミキサー、タンブラーミキサー、混合ロー
ル、1軸又は2軸押出機等が挙げられる。混合形態とし
ては通常の溶触混合、マスターペレット等を用いる多段
階溶融混合、溶液中でのブレンド等より樹脂組成物を得
る方法がある。
【0033】また、本発明の組成物に更に安定剤、難燃
剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤及びタルク、
シリカ、クレー、マイカ、炭酸カルシウム等の充填剤を
添加する事も可能である。
【0034】着色剤はABS樹脂に通常使用できるもの
で、酸化チタン、酸化鉄(弁柄)、群青、フタロシアニ
ンブルー、カーボンブラック、チタンイエロー、コバル
トブルー、ペリノン系レッド、キナクリドンレッド、ア
ンスラキノン系レッド等が好ましい。
【0035】本発明の熱可塑性樹脂組成物は耐熱性、耐
衝撃性、成形加工性が要求される用途に使用され、例え
ば自動車部品であるドア芯材、インパネコア、スポイラ
ー、ピラーサンルーフフレーム、デフロスターグリル、
ランプハウジング等や、電気・電子機器部品、食器、熱
器具、電気冷蔵庫部品、便座、電子レンジ部品、OA機
器部品、工業用機械部品に好適である。
【0036】以下、本発明を更に実施例により説明する
が、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に
限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の
部、%はいずれも特にことわらない限り重量基準であ
る。
【実施例】
【0037】実施例1〜10及び比較例1〜8 (1)(A)成分の製造 (A)成分の製造−1 撹拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メ
チルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで
置換した後温度を85℃に昇温し、無水マレイン酸40
部とベンゾイルパーオキサイド0.15部をメチルエチ
ルケトン200部に溶解した溶液を8時間で連続的に添
加した。添加後更に3時間温度を85℃に保った。ここ
で得られた共重合体溶液にアニリン38部、トリエチル
アミン0.6部を加え140℃で7時間反応させた。反
応液をベント付き2軸押出機に供給し、脱揮してマレイ
ミド系共重合体を得た。C−13NMR分析より酸無水
物基のイミド基への転化率は92モル%であった。この
マレイミド系共重合体は不飽和ジカルボン酸イミド誘導
体としてのN−フェニルマレイミド単位を52%含む共
重合体であり、これを共重合体A−1とした。
【0038】(A)成分の製造−2 攪拌機を備えたオートクレーブ中にスチレン60部、メ
チルエチルケトン100部を仕込み、系内を窒素ガスで
置換した後温度を100℃に昇温し、温度を保ちながら
充分攪拌を行った。この中にメチルエチルケトン150
部に溶解したNーフェニルマレイミド40部とベンゾイ
ルパオキサイド0.25部を8時間で連続的に添加し
ながら、重合を行った。重合終了後、反応液をベント付
き2軸押出機に供給し、乾燥し、マレイミド系共重合体
を得た。C−13NMR分析よりこの共重合体は不飽和
ジカルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイ
ミド単位を42%含む共重合体であった。これを共重合
体A−2とした。
【0039】(A)成分の製造−3 撹拌機を備えたオートクレーブ中に純水120部、ドデ
シルベンゼンスルフォン酸ナトリウム塩(乳化剤)2
部、スチレン54部、Nーフェニルマレイミド34部、
アクリロニトリル12部、過硫酸ナトリウム(開始剤)
0.5部、およびt−ドデシルメルカプタン(連鎖移動
剤)0.5部を一括仕込み、70℃に昇温して重合を行
った。重合後、硫酸マグネシウム5%水溶液300部を
加えて析出し、脱水、乾燥してマレイミド系共重合体を
得た。C−13NMR分析よりこの共重合体は不飽和ジ
カルボン酸イミド誘導体としてのN−フェニルマレイミ
ド単位を33%含む共重合体であった。これを共重合体
A−3とした。A−1〜A−3の組成分析結果を表−1
に示す。
【0040】
【表1】
【0041】なお、表−1中の省略記号では、Stはス
チレン、NPMIはNーフェニルマレイミド、MAHは
無水マレイン酸、ANはアクリロニトリルを示す。ま
た、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションク
ロマトグラフィー)測定で行い、標準分子量のポリスチ
レンを用いた検量線を作製して求めたポリスチレン換算
の重量平均分子量である。
【0042】(2)(B)成分の製造 撹拌機を備えた反応缶中にスチレン70部、アクリロニ
トリル30部、第三リン酸カルシウム2.5部、t−ド
デシルメルカプタン0.5部、ベンゾイルパーオキサイ
ド0.2部及び水250部を仕込み、70℃に昇温し重
合を開始させた。重合開始から7時間後に更に温度を7
5℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた。重合率は
97%に達した。得られた反応液に5%塩酸水溶液20
0部を添加し析出させ、脱水、乾燥後白色ビーズ状の共
重合体を得た。これを共重合体B−1とした。この共重
合体はスチレン70%、アクリロニトリル30%であっ
た。
【0043】(3)(C)成分の製造 (C)成分の製造−1 撹拌機を備えた反応缶中にポリブタジエンラテックス1
43部(固形分35%重量平均粒径0.25μm、ゲル
含率90%)、ステアリン酸ソーダ1部、ソジウムホル
ムアルデヒドスルホキシレート0.1部、テトラソジウ
ムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.03
部、硫酸第一鉄0.003部、および純水150部を温
度50℃に加熱し、これにスチレン70%およびアクリ
ロニトリル30%よりなる単量体混合物50部、t−ド
デシルメルカプタン0.2部、キユメンハイドロパーオ
キサイド0.15部、を6時間で連続添加し、更に添加
後65℃に昇温し2時間重合した。重合率は97%に達
した。得られたラテックスに酸化防止剤を添加した後、
5%塩化カルシウム水溶液300部を添加して凝固、水
洗、乾燥後白色粉末としてグラフト共重合体を得た。こ
れを共重合体C−1とした。
【0044】(C)成分の製造−2 ラテックスを得るまではグラフト共重合体C−1と同様
に行った。更に、得られたラテックスに5%塩化カルシ
ウム水溶液300部を添加する代わりに5%塩化カルシ
ウム水溶液100部と5%塩酸水溶液200部に替えた
以外はグラフト共重合体C−1と同様に製造を行い、グ
ラフト共重合体C−2を得た。
【0045】(C)成分の製造−3 5%塩化カルシウム水溶液300部を5%塩化カルシウ
ム水溶液10部と5%塩酸水溶液300部に替えた以外
はグラフト共重合体C−1と同様に製造を行い、グラフ
ト共重合体C−3を得た。
【0046】(C)成分の製造−4 5%塩化カルシウム水溶液300部を5%硫酸マグネシ
ウム水溶液300部に替えた以外はグラフト共重合体C
−1と同様に実験を行い、グラフト共重合体C−4を得
た。
【0047】(C)成分の製造−5 5%塩化カルシウム水溶液300部を5%硫酸水溶液2
00部と5%硫酸マグネシウム水溶液100部に替えた
以外はグラフト共重合体C−1と同様に製造を行い、グ
ラフト共重合体C−5を得た。
【0048】(C)成分の製造−6 5%塩化カルシウム水溶液300部を5%硫酸亜鉛水溶
液300部に替えた以外はグラフト共重合体C−1と同
様に製造を行い、グラフト共重合体C−6を得た。
【0049】(C)成分の製造−7 5%塩化カルシウム水溶液300部を5%硫酸亜鉛水溶
液100部と5%硫酸水溶液200部に替えた以外はグ
ラフト共重合体C−1と同様に製造を行い、グラフト共
重合体C−7を得た。
【0050】(A)成分、(B)成分、及び(C)成分
を表−2〜表−4に示す量比でブレンドし、このブレン
ド物を35m/m脱揮装置付き同方向回転2軸押出機を
用いて温度250℃で押出し、ペレット化した。このペ
レットを使用し射出成形機により、温度250℃にて物
性測定用の試験片を作成し、各種物性を測定した。その
結果を表−2〜表−4に示す。
【0051】また、各サンプルの残留金属元素量をエネ
ルギー分散型X線分析計(理学社製ウルトラトレースシ
ステム)及び原子吸光分析計にて定量した。その結果を
表−2〜表−4に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】また、表−4中の熱安定剤(*1)はオク
タデシル−3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオネート(チバガイギー社製IR
GANOX1076)及び滑剤(*2)はエチレン−ビ
ス−ステアリルアマイド(商品名:花王社製 EB−
P)を示す。
【0056】物性測定の試験方法 (1)HDT(熱変形温度):荷重18.6kg/cm2で、
ASTM D−648に準じて測定した。 (2)アイゾット衝撃強度:1/4インチ厚のノッチ付
試験片を用いて、ASTM D−256に準じて測定し
た。 (3)MFR:温度265℃、荷重10kgで、JIS
K−6874に準じて測定した。
【0057】表−2〜表−3に示す結果から明らかなよ
うに、実施例1〜10の組成物は残留金属元素量がすべ
て2000ppm 以下であり、優れた耐熱性、耐衝撃性及
び成形加工性を有している。
【0058】これに対して、表−3に示すように、比較
例1〜比較例2の組成物は、(A)成分のマレイミド系
共重合体を含有しない樹脂組成物であるため、耐熱性が
低い。
【0059】表−4の比較例3〜8は残留金属元素量が
2000ppm を超えているため、実施例に比べて、耐熱
性と耐衝撃性及び成形加工性のバランスが劣っている。
【0060】例えば、実施例1〜実施例8はHDT(熱
変形温度)が110℃前後で、衝撃強度は20kg・cm/c
m 以上でかつMFRは50g/10min 以上である。一方、
比較例3〜比較例7はHDTはほぼ同レベルであるが、
アイゾット衝撃強度は10kg・cm/cm 以下でかつMFR
は35g/10分以下であり、バランスが非常に悪い。
【0061】また、比較例1と比較例2を比較すると、
比較例1の残留金属量は2000ppm を超えており、比
較例2の残留金属量は2000ppm 以下であるのに、ア
イゾット衝撃強度とMFRのバランスは殆ど同じであ
る。この事と先の実施例から、マレイミド系共重合体が
樹脂組成物中に含まれる場合のみ、残留金属量を200
0ppm 以下にすると、耐熱性と耐衝撃性と成形加工性の
バランスが著しく向上する。
【0062】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物はマレイミ
ド系共重合体とグラフト共重合体よりなる樹脂組成物
で、かつ残留金属元素量を2000ppm 以下とすること
によって耐熱性、耐衝撃性及び成形加工性に優れるもの
となる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これらの性能
が要求される、自動車部品、電気・電子部品、事務用機
器部品、熱器具、食器、冷蔵庫部品、浴槽部品、シャワ
ー部品、浄水機部品、便座等の材料として特に有効に適
用できるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 51/04 C08L 51/04 55/02 55/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)成分:芳香族ビニル単量体残基、
    不飽和ジカルボン酸イミド誘導体残基、及びこれらと共
    重合可能なビニル単量体残基(ただし、エポキシ基を有
    する単量体を除く)からなるマレイミド系共重合体5〜
    50重量部、 (B)成分:芳香族ビニル単量体残基、シアン化ビニル
    単量体残基、及びこれらと共重合 可能なビニル単量体残基(ただし、エポキシ基を有する
    単量体を除く)からなるビニル芳香族系共重合体0〜5
    0重量部、 (C)成分:ゴム状重合体に、芳香族ビニル単量体、シ
    アン化ビニル単量体、及びこれらと共重合可能なビニル
    単量体からなる単量体混合物をグラフト重合させたグラ
    フト共重合体10〜50重量部よりなる樹脂組成物〔但
    し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量は
    100重量部〕で、これらの(A)、(B)、(C)成
    分を析出剤を用いて析出する際(但し硫酸単独で析出す
    る場合を除く)に、ポリマー100部に対して析出剤中
    に溶解させる硫酸マグネシウム、塩化カルシウムまたは
    硫酸亜鉛の金属化合物の量が10部以下(但し、0は含
    まない)に制限した析出剤を使用して得られた共重合体
    を用いた樹脂組成物であり、かつ該樹脂組成物中の残留
    金属元素量が115ppm以上2000ppm以下であ
    る熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の樹脂組成物が、(A)成
    分:芳香族ビニル単量体残基40〜80重量%、不飽和
    ジカルボン酸イミド誘導体残基10〜60重量%、及び
    これらと共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%
    からなるマレイミド系共重合体5〜50重量部、(B)
    成分:芳香族ビニル単量体残基60〜80重量%、シア
    ン化ビニル単量体残基20〜40重量%、及びこれらと
    共重合可能なビニル単量体残基0〜20重量%からなる
    ビニル芳香族系共重合体0〜50重量部、(C)成分:
    ゴム状重合体35〜65重量部に、芳香族ビニル単量体
    50〜80重量%、シアン化ビニル単量体20〜40重
    量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜30
    重量%からなる単量体混合物35〜65重量部をグラフ
    ト重合させたグラフト共重合体10〜50重量部よりな
    、これらの(A)、(B)、(C)成分を析出剤を用
    いて析出する際(但し硫酸単独で析出する場合を除く)
    に、ポリマー100部に対して析出剤中に溶解させる硫
    酸マグネシウム、塩化カルシウムまたは硫酸亜鉛の金属
    化合物の量が10部以下(但し、0は含まない)に制限
    した析出剤を使用して得られた共重合体を用いた樹脂組
    成物であり、かつ該樹脂組成物中の残留金属元素量が1
    15ppm以上2000ppm以下であることを特徴と
    する請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の残留金属元素がマグネシ
    ウム、カルシウム、又は亜鉛からなる1種以上の金属で
    あることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成
    物。
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