JP4739489B2 - 耐熱性熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱付与効果を持つマレイミド系共重合体とABS系グラフト共重合体及び必要ならばビニル共重合体を単軸押出機等の極めて一般的な混練機においてさえ、均一に混練混合し得る耐衝撃性、耐熱性、流動性の物性バランスに優れた耐熱性熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ABS樹脂等の耐熱性を改良する目的で、マレイミド系共重合体の添加が行われてきた(米国特許第3642949号明細書、米国特許第3652726号明細書、特開昭57−98536号、特開昭57−125241号)。しかし、これらマレイミド系共重合体は溶融粘度が高く、ABS樹脂及び/又はAS系共重合体等と混練混合する場合に、溶融粘度の差が大きく均一に混練りするためには高価で操作性の煩雑な2軸押出機等の特別な混練機を用いないと、得られる耐熱ABS樹脂等の物性が悪かったり、その成形品にシルバー等の不良現象が発生した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、廉価で操作性の容易な単軸押出機等の極めて一般的な混練機においても均一に混練りができて、耐衝撃性、耐熱性、流動性の物性バランスに優れ、しかもその成形品の外観が美麗である耐熱性熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、単軸押出機等の極めて一般的な混練機においてさえ均一に混練りし得る樹脂組成物として、芳香族ビニル単量体と不飽和ジカルボン酸イミド誘導体をある特定量含有し、ある特定の重量平均分子量、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)、溶融粘度、Tg(ガラス転移温度)である(A)マレイミド系共重合体と、ある特定のゴム状重合体に、ある特定の芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及びこれらと共重合可能なビニル単量体とからなる単量体混合物をグラフト共重合してなる(B)ABS系グラフト共重合体とを、また必要ならば、ある特定の芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及びこれらと共重合可能なビニル単量体とからなる単量体混合物からなるビニル共重合体をある特定量含有させることにより、耐衝撃性、耐熱性、流動性の物性バランスに優れ、しかもその成形品の外観が美麗である耐熱性熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を見出した。
【0005】
即ち、本発明を概説すれば、(A)芳香族ビニル単量体30〜70重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体25〜50重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体0〜25重量%、及びこれら単量体と共重合可能なビニル単量体0〜40重量%からなり、その重量平均分子量が100,000〜180,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が2.0〜3.5で、温度280℃、剪断速度1,000Sー1のときの溶融粘度が50〜600Pa・Sで、かつTg(ガラス転移温度)が140〜190℃であるマレイミド系共重合体5〜70重量%、(B)ゴム状重合体5〜80重量部に、芳香族ビニル単量体40〜80重量%、シアン化ビニル単量体15〜40重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜40重量%とからなる単量体混合物20〜95重量部をグラフト共重合してなるABS系グラフト共重合体5〜95重量%、(C)芳香族ビニル単量体40〜80重量%、シアン化ビニル単量体15〜40重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜40重量%とからなるビニル共重合体0〜80重量%を有効成分とする耐熱性熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法である。
【0006】
本発明で用いる(A)マレイミド系共重合体の重量平均分子量及び分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)は100,000〜180,000及び2.0〜3.5であって、重量平均分子量が100,000未満の場合、得られる耐熱性熱可塑性樹脂組成物の機械特性が十分でなくなり、分子量分布が3.5を越えると、機械特性及び耐熱性が十分でなくなる。重量平均分子量が180,000を越える場合、または分子量分布が2.0未満であると、その樹脂組成物の衝撃強度が低くなり、成形品にシルバー等の不良現象が発生する。
【0007】
また本発明で用いる(A)マレイミド系共重合体は、温度280℃、剪断速度1,000Sー1のときの溶融粘度が50〜600Pa・Sである。溶融粘度が50Pa・S未満の場合、耐熱付与効果が低くなる。また溶融粘度が600Pa・Sを越えると、その樹脂組成物の衝撃強度が低くなり、成形品にシルバー等の不良現象が発生する。
【0008】
本発明で用いる(A)マレイミド系共重合体は、Tg(ガラス転移温度)が140〜190℃であることが必要である。好ましくは、Tgは150〜190℃である。Tgが140℃未満であると、耐熱付与効果が低くなる。また、Tgが190℃を越えると、得られる樹脂組成物の衝撃強度が低くなり、成形品にシルバー等の不良現象が発生する。
【0009】
本発明で用いる(A)マレイミド系共重合体は、芳香族ビニル単量体成分30〜70重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分25〜50重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体成分0〜25重量%、及びこれら単量体と共重合可能なビニル単量体成分0〜40重量%からなる。好ましくは、芳香族ビニル単量体成分40〜65重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分30〜50重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体成分0〜10重量%、及びこれら単量体と共重合可能なビニル単量体成分0〜20重量%からなることである。芳香族ビニル単量体成分が30重量%未満あるいは不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分が50重量%を越えると、樹脂組成物の衝撃強度が低くなり、その成形品にシルバー等の不良現象が発生する。また、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分が25重量%未満あるいは芳香族ビニル単量体成分が70重量%を越えると耐熱付与効果が低くなる。更に、不飽和ジカルボン酸無水物単量体成分が25重量%を越えると、熱安定性が低くなる。
【0010】
本発明で用いる(A)マレイミド系共重合体中の芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン単量体及びその置換体が挙げられ、これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0011】
不飽和ジカルボン酸イミド誘導体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等のマレイミド系単量体が挙げられ、これらの中でN−フェニルマレイミドが特に好ましい。また、不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、マレイン酸無水物が特に好ましい。
【0012】
上記の単量体と共重合可能なビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル、ブチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体、アクリル酸アミド及びメタクリル酸アミド等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いるマレイミド系共重合体の製造方法としては、芳香族ビニル単量体、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体、及び必要に応じて用いる不飽和ジカルボン酸無水物単量体、これら単量体と共重合可能なビニル単量体を公知の方法で直接共重合してもよいし、不飽和ジカルボン酸無水物単量体を芳香族ビニル単量体、及びこれら単量体と共重合可能なビニル単量体と共重合させた後、アンモニア及び/又は第1級アミンと反応させて不飽和ジカルボン酸イミド誘導体にしてもよい。しかしながらこれら共重合体を製造する方法としては後者、すなわち不飽和ジカルボン酸無水物単量体を芳香族ビニル単量体、及びこれら単量体と共重合可能なビニル単量体と共重合させた後にイミド化する方法が、共重合性及び経済性の点でより好ましい。なお、イミド化反応に用いる第1級アミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロへキシルアミン、デシルアミン、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン、クロロフェニルアミン、ジクロロフェニルアミン、ブロモフェニルアミン、ジブロモフェニルアミン等が挙げられ、これらの中でアニリンが特に好ましい。
【0014】
イミド化反応は、オートクレーブを用いて溶液状態、塊状状態あるいは懸濁状態で反応を行うことができる。また、スクリュー押出機等の溶融混練装置を用いて、溶融状態で反応を行うことも可能である。
イミド化における溶液反応に用いられる溶媒は任意であり、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等が例示される。
イミド化の反応温度は50〜350℃の範囲が好ましく、100〜300℃の範囲が特に好ましい。
【0015】
イミド化反応は触媒の存在を必ずしも必要としないが、用いるならばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の第3級アミンが好適である。
本発明のマレイミド系共重合体は、従来より知られている乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法のいずれの方法によって得られたものであっても良いし、またこれらの重合法の複合化した技術によるものでも良いが、溶液重合法によるものが好ましい。また、回分法重合、連続重合どちらの重合法によるものでもかまわない。
【0016】
本発明で用いる(B)ABS系グラフト共重合体は、ゴム状重合体5〜80重量部に、芳香族ビニル単量体40〜80重量%、シアン化ビニル単量体15〜40重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜40重量%とからなる単量体混合物20〜95重量部を公知の重合方法によりグラフト共重合したものからなる。ゴム状重合体が5重量部未満すなわち単量体混合物が95重量部を越えると得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、単量体混合物が20重量部未満すなわちゴム状重合体が80重量部を越えると、その樹脂組成物の耐熱性および成形加工性が低下する。また、単量体混合物中の芳香族ビニル単量体が40重量%未満では樹脂組成物の成形加工性が低下し、80重量%を越えると耐熱性が低下してしまう。更に、単量体混合物中のシアン化ビニル単量体が15重量%未満か40重量%を越えると(A)成分との相溶性が低下し、本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物の層剥離や衝撃強度低下の原因となる。
【0017】
本発明で用いる(B)ABS系グラフト共重合体中の芳香族ビニル単量体としては、前述と同様のスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン単量体及びその置換体が挙げられ、これらの中でスチレンが特に好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等があり、これらの中でアクリロニトリルが特に好ましい。
上記の単量体と共重合可能なビニル単量体としては、前述と同様のメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等があり、これらを単独で、あるいは併用して用いることができる。ただし、ここでメチル(メタ)アクリレートとはメチルアクリレートあるいはメチルメタクリレートを示すものである。
【0018】
ゴム状重合体の具体例としては、ブタジエン重合体、ブタジエンと共重合可能なビニル単量体との共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブタジエンと芳香族ビニルとのブロック共重合体、アクリル酸エステル重合体およびアクリル酸エステルとこれと共重合可能なビニル単量体との共重合体等が用いられる。
本発明で用いる(B)ABS系グラフト共重合体の製造方法については特に制限はなく、例えば芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及びこれらと共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物をゴム状重合体にグラフト重合させることにより製造することができる。具体的には、従来より知られている乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等のいずれの方法によって得られたものであっても良いし、またこれらの重合法を複合化した技術によるものでも良い。
尚、上記の単量体混合物をゴム状重合体にグラフト重合させた(B)ABS系グラフト共重合体は、未グラフト共重合体を含有していても良い。
【0019】
本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物の(C)ビニル共重合体は必須ではないが、物性バランスを考える場合、80重量%以下で含有させることができる。
本発明で用いる(C)ビニル共重合体は、芳香族ビニル単量体40〜80重量%、シアン化ビニル単量体15〜40重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜40重量%とからなる。芳香族ビニル単量体が40重量%未満では得られる樹脂組成物の成形加工性が低下し、80重量%を越えると耐熱性が低下してしまう。更に、シアン化ビニル単量体が15重量%未満か40重量%を越えると(A)成分との相溶性が低下し、本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物の層剥離や衝撃強度低下の原因となる。
本発明で用いる(C)ビニル共重合体中の芳香族ビニル単量体としては、前述と同様のスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン単量体及びその置換体が挙げられ、これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0020】
シアン化ビニル単量体としては、前述と同様のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等があり、これらの中でアクリロニトリルが特に好ましい。
上記の単量体と共重合可能なビニル単量体としては、前述と同様のメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等があり、これらを単独で、あるいは併用して用いることができる。
本発明で用いる(C)ビニル共重合体の製造方法については特に制限はなく、例えば乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等の重合方法が採用できる。
【0021】
本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物は、(A)マレイミド系共重合体5〜70重量%、(B)ABS系グラフト共重合体5〜95重量%、および(C)ビニル共重合体0〜80重量%を有効成分とする。
本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物中の(A)マレイミド系共重合体が5重量%未満では、得られる樹脂組成物の耐熱性が不十分であり、70重量%を越えると衝撃強度および成形加工性が低くなる。マレイミド系共重合体の特に好ましい範囲は10〜50重量%である。
本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物中の(B)ABS系グラフト共重合体が5重量%未満では、得られる樹脂組成物の衝撃強度が低く、95重量%を越えると耐熱性および成形加工性が低下する。ABS系グラフト共重合体の特に好ましい範囲は20〜90重量%である。
本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物中の(C)ビニル共重合体が80重量%を越えると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下する。ビニル共重合体の特に好ましい範囲は0〜60重量%である。
【0022】
(A)マレイミド系共重合体と(B)ABS系グラフト共重合体の混合、および更に必要に応じて用いる(C)ビニル共重合体の混合は、単軸押出機等の極めて一般的な混練機においてさえ均一に混練りし得る。
本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲内で用途に応じて他の添加剤あるいは改質剤を加えて組成物とすることが可能である。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0024】
【参考例1】
(A)マレイミド系共重合体の製造
撹拌機を備えたオートクレーブ中にメチルエチルケトン15.0kg、スチレン10.0kg、α−メチルスチレンダイマー0.014kgを仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度80℃に加熱した。これに、無水マレイン酸3.87kg、ベンゾイルパーオキサイド0.040kgをメチルエチルケトン6.0kgに溶解した溶液を10時間で添加した。添加後、更に2時間、温度80℃に保った。この反応液にメチルエチルケトン20.0kgを加え室温まで冷却した。これを激しく撹拌しながらメタノール110.0kgに注ぎ、濾別後乾燥し白色粉末状の重合体を得た。この重合体10.0kg、トリエチルアミン0.1kgをオートクレーブ中でメチルエチルケトン23.0kgに溶解し、これにアニリン3.07kgを加え、130℃で7時間イミド化反応を行った。反応溶液を室温まで冷却し、激しく撹拌したメタノール100.0kgに注ぎ、濾別後乾燥しマレイミド系共重合体(a−1)を得た。他のマレイミド系共重合体(a−2〜7)も表1に示す仕込み組成で、ほぼ同様な条件により作成した。これらを表2に示す。尚、マレイミド系共重合体の分子量、分子量分布及び溶融粘度とTgの測定方法は次の通りである。
【0025】
分子量及び分子量分布:GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ−)法にてポリスチレン換算の値で求めた。
溶融粘度:CAPIROGRAPH−1B(東洋精機製)により、温度280℃、剪断速度1,000S-1の条件で測定した。
Tg(ガラス転移温度):JIS K−7121に従い、DSC(示差走査熱量測定)装置により測定した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【参考例2】
(B)ABS系グラフト共重合体の製造
ポリブタジエンラテックス8.12kg(固形分50重量%、平均粒径0.35μm)、ステアリン酸ソーダ100g、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート10g、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド3g、硫酸第一鉄0.3g及び水20kgを65℃に加熱し、これにスチレン69.4重量%、アクリロニトリル30.6重量%からなる単量体混合物5.94kg、t−ドデシルメルカプタン30g、キュメンハイドロパーオキサイド20gを4時間で連続添加し、更に添加終了後65℃で2時間重合した(重合率96%)。得られたラテックスに酸化防止剤を添加した後、塩化カルシウムで凝固し水洗、乾燥後白色粉末状のABS系グラフト共重合体(b−1)を得た。
ポリブタジエンラテックス11.96kg、スチレン70.2重量%とアクリロニトリル29.8重量%からなる単量体混合物4.02kgを用いた以外はb−1の場合と同様にグラフト重合させ、ABS系グラフト共重合体(b−2)を得た。
ポリブタジエンラテックス16.40kg、スチレン70.4重量%とアクリロニトリル29.6重量%からなる単量体混合物1.80kgを用いた以外はb−1の場合と同様にグラフト重合させ、ABS系グラフト共重合体(b−3)を得た。
ポリブタジエンラテックス0.68kgに、スチレン69.8重量%とアクリロニトリル30.2重量%からなる単量体混合物9.66kgを用いた以外はb−1の場合と同様にグラフト重合させ、ABS系グラフト共重合体(b−4)を得た。
ポリブタジエンラテックス7.96kgに、スチレン92.0重量%とアクリロニトリル8.0重量%からなる単量体混合物6.02kgを用いた以外はb−1の場合と同様にグラフト重合させ、ABS系グラフト共重合体(b−5)を得た。
【0029】
【参考例3】
(C)ビニル共重合体の製造
スチレン7.02kg、アクリロニトリル2.98kg、第三リン酸カルシウム250g、t−ドデシルメルカプタン50g、ベンゾイルパーオキサイド20g及び水25kgを70℃に加熱し重合を開始した。重合開始から7時間後に、温度を75℃に昇温して3時間保ち重合を完結させた(重合率97%)。得られた反応液を塩酸にて中和し、脱水、乾燥後白色ビーズ状のビニル共重合体(c−1)を得た。
(B)ABS系グラフト共重合体および(C)ビニル共重合体の溶融粘度をCAPIROGRAPH−1B(東洋精機製)により、温度280℃、剪断速度1,000S−1の条件で測定した。また、それぞれの仕込み組成及び最終組成も併せて表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
【実施例1〜5】
表4に示した配合割合で全量8kgになるように、(A)マレイミド系共重合体、(B)ABS系グラフト共重合体、および(C)ビニル共重合体を、20リットルヘンシェルに投入しブレンド後、VS40m/m押出機(田辺プラスチック機械製、単軸押出機)にて、温度260℃で押出しペレット化した。このペレットを使用し、射出成形機により試験片を作成し、IZOD衝撃、Vicat軟化点を測定するとともに、成形品外観を評価した。結果は表4に示す。
【0032】
【比較例1〜10】
表5,6に示した配合割合で全量8kgになるように、(A)マレイミド系共重合体、(B)ABS系グラフト共重合体、および(C)ビニル共重合体を、20リットルヘンシェルに投入しブレンド後、VS40m/m押出機(田辺プラスチック機械製、単軸押出機)にて、温度260℃で押出しペレット化した。このペレットを使用し、射出成形機により試験片を作成し、IZOD衝撃、Vicat軟化点を測定するとともに、成形品外観を評価した。結果は表5,6に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
尚、表4〜6の各種評価方法は次の通りである。
耐熱性:ASTM D−1525に従い、成形温度250℃で成形した厚さ3.2mmの射出成形品を用い、Vicat軟化点(49N荷重)を測定した。
衝撃強度:ASTM D−256に従い、成形温度250℃で成形した厚さ6.4mmの射出成形品を用い、ノッチ付きIZOD衝撃強度を相対湿度50%、雰囲気温度23℃で測定した。
成形品外観:射出成形機(川口鉄工、K−125−I)により、プレート(9cm×5cm)を成形温度250℃で成形し、外観を以下のように評価した。
○:成形不良が見られない。
×:シルバー等の成形不良が見られる。
【0037】
比較例1,2は、(A)マレイミド系共重合体の溶融粘度及びTgの値が範囲外。更に、比較例1は(A)マレイミド系共重合体中の不飽和ジカルボン酸イミド誘導体の含有量が50重量%を越えており、衝撃強度が低く、成形品にシルバー等の不良現象が発生する。また、比較例2は芳香族ビニル単量体の含有量が70重量%を越えており、耐熱性が低くなる。
比較例3は、重量平均分子量及び分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が範囲外で、衝撃強度が低く、成形品の外観が悪くなっている。比較例4は、重量平均分子量が範囲外で、衝撃強度が低くなっている。比較例5は、重量平均分子量及び分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が範囲外で、衝撃強度が低く、耐熱性も低くなっている。
比較例6,7は、(B)ABS系グラフト共重合体中のゴム状重合体の含有量が範囲外で、比較例6は成形品の外観が悪く、比較例7は衝撃強度が低い。また、比較例8は(B)ABS系グラフト共重合体中の単量体混合物の芳香族ビニル単量体の含有量が範囲外で、衝撃強度が低く、成形品にシルバー等の不良現象が発生する。
比較例9,10は、(A)マレイミド系共重合体の含有量が範囲外で、比較例9は耐熱性が低く、成形品の外観が悪くなっている。比較例10は衝撃強度が低い。
【0038】
実施例及び比較例の結果から、本発明の耐熱性熱可塑性樹脂組成物中の(A)マレイミド系共重合体が芳香族ビニル単量体成分30〜70重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分25〜50重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体成分0〜25重量%、及びこれら単量体と共重合可能なビニル単量体成分0〜40重量%からなり、その重量平均分子量が100,000〜180,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が2.0〜3.5で、温度280℃、剪断速度1,000Sー1のときの溶融粘度が50〜600Pa・Sで、かつTg(ガラス転移温度)が140〜190℃であり、それ自体の含有量が3〜70重量%であり、(B)ABS系グラフト共重合体が、ゴム状重合体5〜80重量部に、芳香族ビニル単量体40〜80重量%、シアン化ビニル単量体15〜40重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜40重量%とからなる単量体混合物20〜95重量部をグラフト共重合してなり、それ自体の含有量が5〜97重量%であり、必要に応じて(C)芳香族ビニル単量体40〜80重量%、シアン化ビニル単量体15〜40重量%及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜40重量%とからなるビニル共重合体が0〜80重量%であるときにのみ、単軸押出機等の極めて一般的な混練機で混練混合しても、耐衝撃性、耐熱性、流動性の物性バランスに優れた組成物が得られる。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、単軸押出機等の極めて一般的な混練機によっても、得られる耐熱性熱可塑性樹脂組成物が、耐衝撃性、耐熱性、流動性の物性バランスに優れ、しかもその成形品の外観が美麗であり、経済的にも極めて有用である。
Claims (2)
- (A)芳香族ビニル単量体成分55.5〜57.8重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分41.4〜41.6重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体成分0.6〜0.8重量%、及びシアン化ビニル単量体成分0〜2.3重量%からなり、その重量平均分子量が143,000〜146,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が2.18〜2.20で、温度280℃、剪断速度1,000S-1のときの溶融粘度が320〜350Pa・Sで、かつTg(ガラス転移温度)が165〜166℃であるマレイミド系共重合体20〜50重量%、(B)ブタジエン系ゴム状重合体42.1〜62.2重量部に、芳香族ビニル単量体69.8〜70.6重量%、シアン化ビニル単量体29.4〜30.2重量%とからなる単量体混合物37.8〜57.9重量部をグラフト共重合してなり、溶融粘度が温度280℃、剪断速度1,000S- 1 のとき210〜280Pa・SであるABS系グラフト共重合体30〜50重量%、(C)芳香族ビニル単量体40〜70.4重量%、シアン化ビニル単量体15〜29.6重量%とからなる単量体混合物を共重合してなり、溶融粘度が温度280℃、剪断速度1,000S- 1 のとき30〜100Pa・Sであるビニル共重合体25〜50重量%を有効成分とすることを特徴とする耐熱性熱可塑性樹脂組成物。
- (A)芳香族ビニル単量体成分55.5〜57.8重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体成分41.4〜41.6重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体成分0.6〜0.8重量%、及びシアン化ビニル単量体成分0〜2.3重量%からなり、その重量平均分子量が143,000〜146,000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が2.18〜2.20で、温度280℃、剪断速度1,000S-1のときの溶融粘度が320〜350Pa・Sで、かつTg(ガラス転移温度)が165〜166℃であるマレイミド系共重合体20〜50重量%、(B)ブタジエン系ゴム状重合体42.1〜62.2重量部に、芳香族ビニル単量体69.8〜70.6重量%、シアン化ビニル単量体29.4〜30.2重量%とからなる単量体混合物37.8〜57.9重量部をグラフト共重合してなり、溶融粘度が温度280℃、剪断速度1,000S- 1 のとき210〜280Pa・SであるABS系グラフト共重合体30〜50重量%、(C)芳香族ビニル単量体40〜70.4重量%、シアン化ビニル単量体15〜29.6重量%とからなる単量体混合物を共重合してなり、溶融粘度が温度280℃、剪断速度1,000S- 1 のとき30〜100Pa・Sであるビニル共重合体25〜50重量%を有効成分とすることを特徴とする耐熱性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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