JP3547943B2 - 耐面衝撃性に優れた樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐面衝撃性に優れた樹脂組成物に関し、より詳しくは広い温度範囲にわたって耐面衝撃性に優れ、かつ成形加工性に優れた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
電気機器や自動車等は、近年意匠性が重要視されており、使用される材料においてもこのような傾向に対応して機械的性能が高く、軽量で外観の優れたものが要求されてきている。このような要求に応えるために、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる材料分野に属するポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等が使用されたり、スチレン系樹脂においてもハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂が広く使用されるに至っている。その中でABS樹脂は各種の改良方法が開発され、他のエンジニアリングプラスチックに比べて成形性や機械的特性、そして価格のバランスに優れており、特にその樹脂外観の良さから意匠性の重要視される機器ハウジングや自動車の外装または内装部品などに広く使用されている。しかしながら、このような用途にABS樹脂を供して環境温度を変化させた場合、特に氷点下のような低温においては、割れや破壊等の現象が起こりやすく、そのためにABS系材料の使用が制限されることが多かった。
【0003】
また、従来からABS樹脂の耐衝撃性改良については様々な方法が行われてきたが、その殆どがアイゾット衝撃強度またはシャルピー衝撃強度のような、実際に使用される材料片とは、形状、応力方向・速度が大きく異なる試験での数値の改良に向けられており、その結果が必ずしも実際の成型品の割れや破壊等の現象を改善するための方法とは言えなかった。
【0004】
ABS系樹脂は、氷点以上においては比較的高い耐面衝撃性を示すが、それ未満の温度においては脆性的な材料となって破壊され易くなる。その改良方法として、樹脂組成物中のゴム状重合体を増量する方法や、グラフト共重合体や共重合体の分子量を増大させる方法等が挙げられるが、それらの効果が十分でなく、いずれの場合も樹脂の流動性を低下させ、ABS樹脂の特徴である優れた成形加工性を損なうことになる。このようにABS系樹脂組成物においては、広い温度範囲にわたって優れた耐面衝撃性を示し、かつ良好な成形加工性の有るものが得られていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、特定されたゴム状重合体を使用し、特定された形態を有するグラフト共重合体を特定の割合で配合することにより、耐面衝撃特性および成形加工性に優れたABS系樹脂組成物が得られることを見い出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、(A)脂肪族共役ジエン系単量体を必須成分とする単量体または単量体混合物を重合して得られるゴム状重合体5〜70重量%の存在下に、シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物95〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるグラフト共重合体であり、該グラフト共重合体を透過型電子顕微鏡でその断面を観察したときにゴム状重合体部分の総面積[W]と該ゴム状重合体に含まれるオクルージョン部分の総面積[S]との比率が下記式(I)
【数2】
0.15≦[S]/[W]≦0.70 (I)
を満足するような形態の特定されたグラフト共重合体5〜60重量部、および
(B)芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物を重合してなる共重合体95〜40重量部、からなる(ただし、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部とする。)耐面衝撃性に優れた樹脂組成物にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳しく本発明を説明する。
【0008】
本発明におけるグラフト共重合体(A)は、耐衝撃性を付与するための成分である。グラフト共重合体(A)は、脂肪族共役ジエン系単量体を必須成分とする単量体または単量体混合物を重合して得られるゴム状重合体に、シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物を共重合することにより得られるものである。
【0009】
本発明において、グラフト共重合体(A)を構成するゴム状重合体とは、脂肪族共役ジエン系単量体単独、もしくは該脂肪族共役ジエン系単量体と、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体および不飽和カルボン酸エステル系単量体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の他の共重合可能な単量体との混合物を重合して得られるものである。
【0010】
本発明において、ゴム状重合体を得るのに用いられる脂肪族共役ジエン系単量体の例としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられ、耐衝撃性の面から1,3−ブタジエンの使用が好ましい。また、脂肪族共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体の例としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0011】
ゴム状重合体を得るのに使用される脂肪族共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体との使用割合は、脂肪族共役ジエン系単量体30〜100重量部に対し、共重合可能な他の単量体70〜0重量部(合計100重量部)の範囲であることが好ましい。脂肪族共役ジエン系単量体の使用量が30重量部未満の場合には、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下するようになる。
【0012】
このゴム状重合体は、チーグラー系の触媒を用いて上記の単量体を溶液重合し、これを乳化剤と水でホモジナイズドして乳化分散したものや、乳化重合により得られるものを用いてもよく、その製造方法には限定されない。ゴム状重合体の分散粒子径やトルエン可溶分の分子量、ゲル含有率、膨潤度の制御の容易さ、高性能なABS樹脂を製造するための自由度の大きさから乳化重合が最適である。
【0013】
本発明で用いるゴム状重合体は、トルエン可溶分の重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは130,000以上である。トルエン可溶分の重量平均分子量が100,000未満では、得られる樹脂組成物の耐面衝撃性が低下する傾向がある。
【0014】
トルエン可溶分の分子量を調節する方法としては、いかなる方法であっても構わないが、重合開始剤の種類および量、重合温度、メルカプタン類等の連鎖移動剤の種類および量等を目的に応じて変更することにより達成できる。
【0015】
また、本発明で用いるゴム状重合体は、ゲル含有率が40重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60重量%以上である。また、膨潤度は15〜50倍であることが好ましく、さらに好ましくは20〜40倍である。ゲル含有率が40重量%未満では、得られる樹脂組成物の耐面衝撃性が低下する傾向にある。さらに膨潤度が15倍未満では、得られる樹脂組成物の耐面衝撃性が低下する傾向があり、また、膨潤度が50倍を超える場合は、得られる樹脂組成物の表面光沢が低下し、意匠性が損なわれる傾向がある。
【0016】
ゴム状重合体のゲル含有率および膨潤度の調整は、公知の方法が利用でき、例えば、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルアジペート等の架橋性単量体の使用、重合温度の調節、開始剤濃度の調節、重合転化率の調節、メルカプタン類等の連鎖移動剤の使用等によって行うことができる。
【0017】
本発明におけるグラフト共重合体(A)は、上記のゴム状重合体にグラフト重合用の単量体混合物を重合させることにより得られるが、本発明においてはグラフト共重合体中におけるゴム状重合体の重量平均粒子径は、150〜400nmであることが好ましく、さらに好ましくは200〜350nmの範囲である。これは、グラフト共重合体における重量平均粒子径が150nm未満では、得られる樹脂組成物の耐面衝撃性と成形性が劣り、一方、400nmを超える場合には耐面衝撃性および表面光沢が低下するようになるためである。
【0018】
なお、ゴム状重合体の分散粒子径の分布には特に制限はなく、分散粒子径の異なるゴム状重合体を2種以上併用してもよい。
【0019】
ゴム状重合体の粒子径の調節は、公知の方法が使用でき、例えば、ゴム状重合体の重合中のアグロメーションによる肥大化、150nm未満の比較的小さなゴム状重合体を予め製造し、これに酸基を含有する共重合体ラテックスや酸、塩を添加して肥大化する方法、撹拌による剪断応力によって肥大化する方法等が利用できる。
【0020】
本発明の樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(A)は、公知のグラフト重合によって製造することが可能である。グラフト重合の方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、あるいはこれら2種以上の組み合わせが使用できるが、ゴム状重合体が乳化重合で容易に製造されることから、乳化重合が最適である。例えば、乳化重合で得られた前記ゴム状重合体に単量体混合物を添加し、公知の方法でグラフト重合される。
【0021】
本発明において用いられるグラフト共重合体(A)においては、形態が特定されるようにゴム状重合体の内部に包括されるグラフトした枝ポリマー、すなわちオクルージョンの部分と、ゴム状重合体部分との断面における面積の比率が重要である。このオクルージョンとゴム状重合体との面積比率は通常の透過型電子顕微鏡写真から特定できる。すなわち、四酸化オスミウムや二酸化ルテニウム等で染色した樹脂組成物の超薄膜を観察し、その断面写真から実際のゴム状重合体およびオクルージョンのサイズおよび個数を測定して求めることができる。実際にはゴム状重合体やオクルージョンのサイズには比較的広い分布があるために、比較的多くのゴム状重合体について測定する必要がある。
【0022】
図1は、本発明において用いられるグラフト共重合体(A)におけるゴム状重合体とそれに含まれるオクルージョンの状態を示す、模式拡大断面図である。図1においては、斜線の部分がゴム状重合体部分を示し、そして複数の円形の白い部分がオクルージョン部分を示す。
【0023】
本発明における形態の特定されたグラフト共重合体(A)においては、このサンプリングした断面写真において、オクルージョン部分を除いたゴム状重合体部分の総面積[W]とオクルージョン部分の総面積[S]との比率が上記式(I)を満足する必要があり、その比率が、上記式(I)の範囲を外れると得られる樹脂組成物の耐面衝撃性が低下するようになる。好ましくは下記式(II)を満足する範囲である。
【0024】
【数3】
0.20≦[S]/[W]≦0.60 (II)
【0025】
グラフト重合に用いられるシアン化ビニル系単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が使用できるが、耐衝撃性の点からアクリロニトリルが好適である。
【0026】
シアン化ビニル系単量体の使用量は、グラフト重合される単量体混合物中、10〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜40重量%である。シアン化ビニル系単量体の使用量が10重量%未満では得られる樹脂組成物の耐面衝撃性が低下し、また、50重量%を超える場合には成形性が悪くなる傾向を示す。
【0027】
また、グラフト重合に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のビニルトルエン類、p−クロルスチレン等のハロゲン化スチレン類、p−t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルナフタレン類等が使用できるが、スチレンまたはα−メチルスチレンの使用が好ましい。これら芳香族ビニル系単量体は、1種でまたは2種以上を併用することができる。
【0028】
芳香族ビニル系単量体の使用量は、グラフトされる単量体混合物中、50〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは60〜85重量%である。芳香族ビニル系単量体の使用量が50重量%未満では成形性が悪くなり、また、90重量%を超えると樹脂の耐面衝撃性が低下するようになる。
【0029】
グラフト重合に用いられる共重合可能な他のビニル系単量体としては、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸イミド化合物が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0030】
グラフト重合に用いることのできる不飽和カルボン酸エステル系重合体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸エステル系単量体は、1種または2種以上を併用することができる。
【0031】
また、グラフトに用いることのできる不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が使用でき、好ましくは無水マレイン酸である。
【0032】
さらにグラフト重合に用いることのできる不飽和ジカルボン酸のイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が使用でき、好ましくはN−フェニルマレイミドである。
【0033】
これらの他の共重合可能な単量体の使用量は、グラフト重合に用いられる単量体混合物中、0〜20重量%の範囲であり、その使用量が20重量%を超えると樹脂の耐面衝撃性が低下するようになる。
【0034】
なお、本発明においては、さらに必要に応じてグリシジルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等の他の単量体を20重量%以下、好ましくは15重量%以下の量を単量体混合物中に併用することも可能である。
【0035】
ゴム状重合体にグラフトさせる単量体混合物の割合は、ゴム状重合体5〜70重量%に対して、単量体混合物95〜30重量%、好ましくはゴム状重合体10〜70重量%に対して単量体混合物90〜30重量%(合計100重量%)の範囲である。ゴム状重合体が5重量%未満では得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下するようになり、また、70重量%を超える場合には必然的にオクルージョンの割合が低下し、耐面衝撃性が低下する。
【0036】
ゴム状重合体に単量体混合物をグラフト重合させる場合、単量体混合物を一度に加えても、また分割添加や連続的に滴下してもよく、特にその添加方法には制限はないが、目的の形態の特定されたグラフト共重合体(A)を製造するためには、単量体混合物の全量または一部を一括で添加する方法が好ましい。この乳化グラフト重合に際しては、通常公知の乳化剤、触媒および開始剤が使用され、その種類や添加量、添加方法については限定されない。
【0037】
このようにして得られたグラフト共重合体(A)は、通常のラテックスからのポリマー回収方法である酸または塩による凝固、乾燥工程により粉末状の固体として回収される。
【0038】
本発明における共重合体(B)は、樹脂に流動性や耐熱性を付与する成分であり、芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物を重合して得られるものである。共重合体(B)の具体例としては、例えば、シアン化ビニル系単量体10〜50重量%、芳香族ビニル系単量体50〜90重量%およびそれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜40重量%(合計100重量%)からなる単量体混合物を重合して得られるアクリロニトリル−スチレン系の共重合体(B−1)、およびマレイミド系単量体15〜65重量%、芳香族ビニル系単量体85〜35重量%およびそれらと共重合可能な他のビニル系重合体0〜35重量%からなる単量体混合物(合計100重量%)を重合して得られるマレイミド−スチレン系の共重合体(B−2)が挙げられる。
【0039】
共重合体(B−1)を得るのに使用されるシアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体およびそれらと共重合可能な他のビニル系単量体は、上記グラフト共重合体(A)の製造に用いられるものと全く同様のものが使用される。これらの単量体は、1種でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0040】
本発明で用いられる共重合体(B−1)の製造に用いられる他のビニル系単量体の使用量は0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%である。他のビニル系単量体の使用量が40重量%を超えると、得られる樹脂組成物の耐面衝撃性や成形加工性が低下するようになる。
【0041】
この共重合体(B−1)の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の方法が使用できる。
【0042】
共重合体(B−2)の製造に用いられるマレイミド系単量体としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−(n−プロピル)マレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−トルイルマレイミド、N−キシリールマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられる。これらのうち、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドが好ましく、特にN−フェニルマレイミドが好ましい。これらのマレイミド系単量体は、1種でまたは2種以上を併用することができる。
【0043】
マレイミド系単量体の使用量は、単量体混合物中、15〜65重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲である。マレイミド系単量体の使用量が15重量%未満の場合には、得られる樹脂組成物の耐熱性が低く、一方、65重量%を超える場合には流動性が著しく低下する。
【0044】
また、共重合体(B−2)の製造に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、グラフト共重合体(A)の製造に使用されるものと同様のものが使用できる。芳香族ビニル系単量体の使用量は、単量体混合物中、35〜85重量%の範囲であり、好ましくは40〜70重量%の範囲である。芳香族ビニル系単量体の使用量が35重量%未満では流動性が劣り、一方、85重量%を超える場合には樹脂組成物の耐熱性が低下するようになる。
【0045】
さらに本発明に用いられる共重合体(B−2)の製造時に用いられる共重合可能な他のビニル系単量体としては、シアン化ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物およびビニルカルボン酸系単量体等が挙げられる。シアン化ビニル系単量体としては、グラフト共重合体(A)の製造に用いたものと同様のものが使用可能である。アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。メタクリル酸エステル系単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリクロロエチル等が挙げられ、中でもメタクリル酸メチルが好ましい。さらに不飽和ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸、メタコン酸、シトラコン酸等の酸無水物が挙げられ、中でもマレイン酸無水物が好ましい。また、ビニルカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、中でもメタクリル酸が好ましい。これら他のビニル系単量体は、1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
共重合体(B−2)の製造に用いられる他のビニル系単量体の使用量は0〜35重量%、好ましくは0〜25重量%である。他のビニル系単量体の使用量が35重量%を超えると、得られる樹脂組成物の耐面衝撃性、耐熱性、流動性が低下するようになる。
【0047】
さらに本発明における共重合体(B−2)においては、該共重合体中の残存マレイミド系単量体の含有量が0.1重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05重量%以下であり、かつマレイミド系単量体以外の総揮発成分が0.5重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.4重量%以下である。これは、残存マレイミド系単量体の含有量が0.1重量%を超えると該重合体の加工時の熱着色が著しくなったり、ブリードアウト等の外観上の欠点を生じやすくなり、さらに該共重合体中のマレイミド系単量体以外の総揮発分として、構成単位の単量体と重合に用いる有機溶剤、そして所望により使用した重合開始剤、連鎖移動剤の残渣等の総量が0.5重量%を超えると樹脂組成物の耐熱性を低下させるとともに成形加工時にブリードアウトやシルバーストリークを生じる等の問題を起こすようになるためである。
【0048】
また、本発明における共重合体(B−2)は、マレイミド系単量体を構成成分として含む重量平均分子量が200以上1000以下のオリゴマー成分を2〜10重量%含有することが好ましく、さらに好ましくは3〜9重量%の範囲である。該オリゴマー成分の含有量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の溶出曲線より対応する範囲にあるピークの面積と全ピークの面積の比から求めることができる。また、該オリゴマー成分を構成する単量体成分は、GPCにより分離採取してオリゴマー成分の溶出液を乾燥して溶媒を除去した後に元素分析により求めることができる。
【0049】
このオリゴマー成分の構成単位としては、マレイミド系単量体単位が含まれていることが必要であり、マレイミド系単量体単位を含まないオリゴマー成分は樹脂組成物の機械的強度を低下させるようになる。また、このオリゴマー成分としては、重量平均分子量が200以上であり、200に満たないオリゴマー成分は、樹脂組成物の耐熱性を損ねるとともに、成形加工時にシルバーストリークの原因となる。また一方、重量平均分子量が1000を超えるオリゴマー成分は、成形加工性の向上効果がみられない。また、オリゴマー成分の含有量が2重量%に満たない場合には樹脂組成物の成形加工性が劣り、一方、オリゴマー成分の含有量が10重量%を超えると樹脂組成物の耐面衝撃性が低下するようになる。
【0050】
さらに本発明における共重合体(B−2)の固有粘度は、0.3〜1.5dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.2dl/gの範囲である。固有粘度が0.3dl/gに満たない場合には実用的な機械的強度が劣り実際の使用には耐え難く、一方、固有粘度が1.5dl/gを超える場合には溶融時の流動性が悪く、成形加工性が劣ったものとなる。
【0051】
共重合体(B−2)を製造する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の方法を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。また、共重合体(B−2)を製造するに際しては、所望により重合開始剤、連鎖移動剤、熱安定剤等を添加することが可能である。
【0052】
本発明においては、(B)成分として上記の共重合体(B−1)と共重合体(B−2)が好ましく使用されるが、共重合体(B−2)は、得られる樹脂組成物に、さらに高い耐熱性が要求される場合に使用される。共重合体(B)は、1種でまたは2種以上を併用して用いられる。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体(A)5〜60重量部、および共重合体(B)95〜40重量部を合計量が100重量部となるように配合したものである。グラフト共重合体(A)の配合量が5重量部未満では得られる樹脂組成物の耐面衝撃性が不十分であり、一方、その配合量が60重量部を超えると得られる樹脂組成物の耐熱性が低下するようになる。
【0054】
グラフト共重合体としては、上記の形態の特定されたグラフト共重合体(A)だけでなく上記以外の形態の特定されない他のグラフト共重合体(C)を0〜55重量部((A)成分+(B)成分+(C)成分の合計100重量部中)必要に応じて含有することが可能である。具体的には、上記グラフト共重合体(A)と同様にして得られるゴム状重合体5〜70重量%の存在下に、シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物95〜30重量%(合計100重量%)を重合して得られる共重合体である。
【0055】
本発明の樹脂組成物には、熱安定性の改良を目的としてヒンダードフェノール系抗酸化剤やホスファイト系安定剤等を、耐候性の改良を目的としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤やヒンダードフェノール系安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を、そして加工性の改良を目的としてエチレンビスステアリルアミド等のアミド系の滑剤や金属石鹸等を単独でまたはこれらを併用して配合することも可能である。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、真空成形等の各種成形加工分野に利用することが可能であり、また、成形品にメッキ処理や真空蒸着処理、スパッタリング処理等の光輝処理を施すことも可能である。
【0057】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下の例中の%および部数は明記しない限りは重量部基準とする。また、以下の参考例、実施例および比較例中での、各種物性の測定は以下の方法により測定した。
【0058】
(1)ゴム状重合体の重量平均粒子径
透過型電子顕微鏡を用いて、300〜400個のゴム状重合体粒子のサイズをカウントし、重量平均粒子径を求めた。
【0059】
(2)ゴム状重合体のトルエン可溶分の重量平均分子量
乾燥したゴム状重合体0.5gをトルエン60mlに30℃で48時間浸漬させた後、100メッシュ金網で不溶分を除去し、トルエン溶液を乾固させた試料をテトラヒドロフランに溶解し(試料濃度2.4mg/ml)、GPC((株)島津製作所、LC−6A)のポリスチレン換算により求めた。
【0060】
(3)ゴム状重合体のゲル含有率、膨潤度
ゴム状重合体を乾燥させた後、その0.5g(W0 )をトルエン60mlに30℃で48時間浸漬させた後、100メッシュ金網で濾別し、不溶分の重量(W1 )を測定した後、乾燥後の重量(W2 )を求め、下式から算出した。
【0061】
【数4】
ゲル含有率(%)=W2 /W0 ×100
【0062】
【数5】
膨潤度(倍)=(W1 −W2 )/W2
【0063】
(4)グラフト共重合体の[S]/[W]比率の測定
樹脂組成物断面を四酸化オスミウムで染色した超薄膜切片を透過型電子顕微鏡で写真撮影した後(倍率70000倍)、100〜120個のゴム状重合体粒子およびオクルージョン部分のサイズをカウントし、ゴム状重合体部分およびオクルージョン部分の総面積を求めて[S]/[W]の比率を算出した。
【0064】
(5)共重合体(B−2)中の残存単量体
ガスクロマトグラフィーにより測定を行った。
【0065】
(6)共重合体(B−2)のオリゴマー成分の組成
上記した元素分析法により求めた。
【0066】
(7)共重合体(B−2)中のオリゴマー成分の含有量と分子量
オリゴマー成分の含有量は、上記した方法により、またそれの分子量はGPCにより、単分散ポリスチレンを標準として測定した。
【0067】
(8)共重合体(B−2)の固有粘度
共重合体をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した値より求めた。
【0068】
(9)アイゾット衝撃強度
ASTM D−256に準拠して測定した。
【0069】
(10)耐面衝撃性
ASTM D−3764に準拠して、(株)島津製作所製、HTM−1型高速衝撃試験機を使用し、測定温度23℃、10℃、−30℃の3条件、ストライカ速度3.3m/秒、ストライカ径1/2インチφ、支持枠3インチφの条件で測定した。
【0070】
(11)メルトフローレート
JIS K7210に従い、10分間あたりの流出量をg数で表示した。
【0071】
(12)ビカット軟化温度
ASTM D−1525(5kgf荷重)に準拠して測定した。
【0072】
(13)表面光沢
ASTM D−523に準拠して測定した。
【0073】
[参考例]
1.ゴム状重合体(D)ラテックスの製造
(1)ゴム状重合体(D−1)ラテックスの製造
10リットルのステンレススチール製オートクレーブ(以下、SUS製オートクレーブと略記。)に、
脱イオン水(以下、単に水と略記。) 145部
ロジン酸カリウム 1.0部
オレイン酸カリウム 1.0部
水酸化ナトリウム 0.05部
硫酸ナトリウム 0.4部
t−ドデシルメルカプタン 0.2部
を仕込み窒素置換した後、
1,3−ブタジエン 125部
を仕込み、60℃に昇温した。次いで、
過硫酸カリウム 0.3部
を水5部に溶解した水溶液を圧入して重合を開始した。重合中は重合温度を65℃にコントロールして、12時間後内圧が4.5kg/cm2 (ゲージ圧)となった時点で未反応の1,3−ブタジエンを回収した。その後、内温を80℃にして1時間保持し、重合を完結して、重量平均粒子径が80nmであるゴムラテックスを得た。
【0074】
この得られたゴムラテックスをガラス製反応器に移し、
上記ゴムラテックス(固形分) 100部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.22部
を仕込み23℃にて15分間十分に撹拌する。その後、
2%硫酸水溶液 40部
を5分かけて滴下し、滴下終了後
10%水酸化ナトリウム水溶液 8部
を添加して、重量平均粒子径が270nm、固形分が34%、トルエン可溶分の重量平均分子量が157,000、ゲル含有率が75重量%、そして膨潤度が41倍であるゴム状重合体(D−1)ラテックスを得た。
【0075】
(2)ゴム状重合体(D−2)ラテックスの製造
10リットルのSUS製オートクレーブに、
水 145部
オレイン酸カリウム 1.5部
ロジン酸カリウム 1.5部
炭酸水素ナトリウム 0.5部
ナトリウムホルムアルデヒド・スルホキシレート 0.2部
t−ドデシルメルカプタン 0.15部
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド 0.2部
を仕込み、窒素置換後、
1,3−ブタジエン 80部
アクリル酸n−ブチル 10部
を添加し、50℃に昇温した。これに、
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0015部
硫酸第一鉄・七水塩 0.0005部
を水5部に溶解した水溶液を添加して重合を開始した。重合中は内温を50℃に保ち、4時間後から、
アクリル酸n−ブチル 10部
を1時間かけて滴下し9時間でほぼ重合は終了し、ゴムラテックスを得た。その後、ゴム状重合体(D−1)ラテックスと同様に酸とアルカリで肥大化処理し、重量平均粒子径が300nm、固形分が34%、トルエン可溶分の重量平均分子量が190,000、含有率が84重量%、そして膨潤度が30倍であるゴム状重合体(D−2)ラテックスを得た。
【0076】
(3)ゴム状重合体(D−3)ラテックスの製造
10リットルのSUS製オートクレーブに、
水 150部
ロジン酸カリウム 2.0部
水酸化カリウム 0.1部
硫酸ナトリウム 0.3部
t−ドデシルメルカプタン 0.2部
過硫酸カリウム 0.3部
1,3−ブタジエン 100部
を仕込み、50℃で重合を開始した。さらに重合転化率に応じて反応温度を上げ、最終的には70℃で、合計75時間重合を行い最後に未反応の1,3−ブタジエンを除去した後80℃で1時間保持し、重合を完結した。得られたゴム状重合体(D−3)ラテックスは、固形分が38%、重量平均粒子径が280nm、トルエン可溶分の重量平均分子量が218,000、ゲル含有率が82%、そして膨潤度が23倍であった。
【0077】
(4)ゴム状重合体(D−4)ラテックスの製造
10リットルのSUS製オートクレーブ中に、
水 145部
ロジン酸カリウム 1.0部
オレイン酸化カリウム 1.0部
水酸化ナトリウム 0.05部
硫酸ナトリウム 0.4部
t−ドデシルメルカプタン 0.8部
を仕込み、窒素置換した後、
1,3−ブタジエン 100部
を仕込み、60℃に昇温した。次いで、
過硫酸カリウム 0.3部
を水5部に溶解した水溶液を圧入して重合を開始した。重合中は重合温度を65℃にコントロールして、16時間後内圧が1.0kg/cm2 (ゲージ圧)となった時点で未反応の1,3−ブタジエンを回収した。その後、内温を80℃にして1時間保持し、重合を完結してゴムラテックスを得た。この得られたゴムラテックスをゴム状重合体(D−1)ラテックスと同様な方法で酸およびアルカリ処理を行って肥大化し、重量平均粒子径が260nm、固形分が40%、トルエン可溶分の重量平均分子量が86,000、ゲル含有率が70重量%、膨潤度が45倍であるゴム状重合体(D−4)ラテックスを得た。
【0078】
(5)ゴム状重合体(D−5)ラテックスの製造
10リットルのSUS製オートクレーブ中に、
水 145部
ロジン酸カリウム 1.0部
オレイン酸化カリウム 1.0部
水酸化ナトリウム 0.05部
硫酸ナトリウム 0.4部
t−ドデシルメルカプタン 0.1部
を仕込み、窒素置換した後、
1,3−ブタジエン 100部
を仕込み、60℃に昇温した。次いで、
過硫酸カリウム 0.3部
を水5部に溶解した水溶液を圧入して重合を開始した。重合中は重合温度を65℃にコントロールして、14時間後内圧が1.0kg/cm2 (ゲージ圧)となった時点で未反応の1,3−ブタジエンを回収した。その後、内温を80℃にして1時間保持し、重合を完結してゴムラテックスを得た。この得られたゴムラテックスをゴム状重合体(D−1)ラテックスと同様な方法で酸およびアルカリ処理を行って肥大化し、重量平均粒子径が240nm、固形分が41%、トルエン可溶分の重量平均分子量が155,000、ゲル含有率が93%、そして膨潤度が11倍であるゴム状重合体(D−5)を得た。
【0079】
2.グラフト共重合体(A)の製造
(1)グラフト共重合体(A−1)の製造
10リットルのガラス製反応器に、
脱イオン水(ゴム重合体ラテックスの水も含む) 145部
ゴム状重合体(D−1)ラテックス(固形分) 45部
ロジン酸カリウム 1部
デキストローズ 0.3部
アクリロニトリル 9部
スチレン 21部
t−ドデシルメルカプタン 0.2部
クメンヒドロパーオキシド 0.12部
を仕込み、内温を60℃に昇温した。これに、
ピロリン酸ナトリウム 0.1部
硫酸第一鉄・七水塩 0.005部
水 5部
からなる水溶液を添加して重合を開始した。重合発熱が無くなってから内温を65℃に冷却し、その時点から
アクリロニトリル 7部
スチレン 18部
t−ドデシルメルカプタン 0.3部
からなる混合物を50分かけて反応器内に供給した。供給開始後20分に、クメンヒドロパーオキシド0.2部を添加し、再び重合を開始した。滴下終了後、1時間保持して冷却した。得られたラテックスを75℃に昇温した該ラテックスの2倍量の0.5%硫酸水溶液中に投入して凝固した。水洗、脱水を繰り返した後、最後に乾燥させて乳白色粉末であるグラフト共重合体(A−1)を得た。
【0080】
(2)グラフト共重合体(A−2)〜(A−5)の製造
グラフト共重合体(A−1)の製造において、用いるゴム状重合体(D−1)ラテックスの代わりにゴム状重合体(D−2)〜(D−5)ラテックスを使用した他は、グラフト共重合体(A−1)の製造と同様にして重合を行い、乳白色粉末であるグラフト共重合体(A−2)〜(A−5)を得た。
【0081】
(3)グラフト共重合体(A−6)の製造
10リットルのガラス製反応器に、
水(ゴムプラスチック中の水も含む) 145部
ゴム状重合体(D−3)ラテックス(固形分) 60部
ロジン酸カリウム 0.5部
デキストローズ 0.3部
アクリロニトリル 13部
スチレン 27部
t−ドデシルメルカプタン 0.3部
クメンヒドロパーオキシド 0.18部
を仕込み、内温を60℃に昇温した。これに、
ピロリン酸ナトリウム 0.1部
硫酸第一鉄・七水塩 0.005部
水 5部
からなる水溶液を添加して重合を開始した。発熱が無くなってから、クメンヒドロパーオキシド0.1部を添加した後1時間保持して冷却した。得られたラテックスを65℃に昇温した該ラテックスの2倍量の0.4%硫酸水溶液中に投入し、その後90℃に昇温して凝固した。水洗、脱水を繰り返した後、最後に乾燥させて乳白色粉末であるグラフト共重合体(A−6)を得た。
【0082】
(4)グラフト共重合体(A−7)の製造
10リットルのガラス製反応器に、
水(ゴムラテックス中の水も含む) 145部
ゴム状重合体(D−1)ラテックス(固形分) 45部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
ロンガリット 0.2部
アクリロニトリル 9部
スチレン 21部
t−ドデシルメルカプタン 0.2部
クメンヒドロパーオキシド 0.12部
を仕込み、内温を60℃に昇温した。これに、
エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄・七水塩 0.0003部
水 5部
からなる水溶液を添加して重合を開始した。重合発熱が無くなってから内温を65℃にし、その時点から
アクリロニトリル 5部
スチレン 15部
N−フェニルマレイミド 5部
t−ドデシルメルカプタン 0.3部
クメンヒドロパーオキシド 0.2部
からなる混合物を60分かけて反応器内に供給し、再び重合を開始した。滴下終了後、1時間保持して冷却した。得られたラテックスを85℃に昇温した該ラテックスの2倍量の4%硫酸マグネシウム水溶液中に投入して凝固した。水洗、脱水を繰り返した後、最後に乾燥させて乳白色粉末であるグラフト共重合体(A−7)を得た。
【0083】
(5)グラフト共重合体(A−8)の製造
グラフト共重合体(A−6)の製造において、ゴム状重合体(D−3)ラテックスに代えて、ゴム状重合体(D−1)ラテックスを使用した以外はグラフト共重合体(A−6)の製造と同様にして乳白色粉末であるグラフト共重合体(A−8)を得た。
【0084】
(6)グラフト共重合体(A−9)の製造
10リットルのガラス製反応器に、
水(ゴムラテックス中の水も含む) 145部
ゴム状重合体(D−1)ラテックス(固形分) 45部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
ロンガリット 0.2部
メタクリル酸メチル 27部
アクリル酸エチル 3部
t−ドデシルメルカプタン 0.2部
クメンヒドロパーオキシド 0.12部
を仕込み、内温を60℃に昇温した。これに、
エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄・七水塩 0.0003部
水 5部
からなる水溶液を添加して重合を開始した。重合発熱が無くなってから内温を65℃にし、その時点から
メタクリル酸メチル 23部
アクリル酸エチル 2部
t−ドデシルメルカプタン 0.3部
クメンヒドロパーオキシド 0.2部
からなる混合物を60分かけて反応器内に供給し、再び重合を開始した。滴下終了後1時間保持して冷却した。得られたラテックスを85℃に昇温した該ラテックスの2倍量の4%硫酸マグネシウム水溶液中に投入して凝固した。水洗、脱水を繰り返した後、最後に乾燥させて乳白色粉末であるグラフト共重合体(A−9)を得た。
【0085】
3.共重合体(B)の製造
(1)共重合体(B−1−1)の製造
10リットルのSUS製オートクレーブに、
水 150部
アクリロニトリル 30部
スチレン 70部
アゾビスイソブチロニトリル 0.2部
t−ドデシルメルカプタン 0.4部
ポリビニルアルコール 0.8部
を仕込み、激しく撹拌した。系内の分散状態を確認した後、75℃に昇温し3時間重合を行った。冷却後、脱水、洗浄、乾燥して白色粒状の共重合体(B−1−1)を得た。この共重合体(B−1−1)のメルトフローレートは、3.6g/10分(200℃、5kgf)であった。
【0086】
(2)共重合体(B−1−2)の製造
10リットルのSUS製オートクレーブに、
水 150部
アクリロニトリル 20部
スチレン 50部
メタクリル酸メチル 30部
アゾビスイソブチロニトリル 0.15部
t−ドデシルメルカプタン 0.28部
ポリビニルアルコール 0.8部
を仕込み共重合体(B−1−1)と同様にして重合を行い、白色粒状の共重合体(B−1−2)を得た。この共重合体(B−1−2)のメルトフローレートは、1.8g/10分(200℃、5kgf)であった。
【0087】
(3)共重合体(B−2−1)の製造
窒素置換した20リットルの撹拌装置を備えた反応重合器に、
N−フェニルマレイミド 20部
スチレン 55部
アクリロニトリル 25部
メチルエチルケトン 25部
1,1′−アゾビス(シクロヘキサン
−1−カルボニトリル) 0.01部
t−ドデシルメルカプタン 0.05部
を連続的に供給し、110℃に重合器内の温度を一定に保持しながら、平均滞在時間が2時間になるように、重合反応器の底部に備えたギヤポンプにより重合反応液を連続的に抜き取り、引き続き該重合反応液を150℃に保持した熱交換器で約20分滞在させた。その後、シリンダー温度230℃の2ベントタイプ二軸押出機に導入し、第一ベント部を大気圧、第二ベント部を20torrの減圧下で揮発成分を脱揮し、押出機より吐出したストランドをペレタイザーでペレット化し、マレイミド系共重合体(B−2−1)を得た。得られた共重合体(B−2−1)の物性の測定結果を表1に示した。
【0088】
(4)共重合体(B−2−2)の製造
共重合体(B−2−1)の製造において、供給する重合原料を
N−シクロヘキシルマレイミド 20部
スチレン 50部
メタクリル酸メチル 30部
メチルエチルケトン 25部
1,1′−アゾビス(シクロヘキサン
−1−カルボニトリル) 0.02部
t−ドデシルメルカプタン 0.05部
とした以外は、共重合体(B−2−1)の製造と同様にして重合を行い、共重合体(B−2−2)を得た。得られた共重合体(B−2−2)の物性の測定結果を表1に示した。
【0089】
(5)共重合体(B−2−3)の製造
マレイミド系共重合体(B−2−1)の製造において、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)の量を0.18部に、t−ドデシルメルカプタンの量を0.22部に変更した以外は、共重合体(B−2−1)の製造と同様にして重合を行い、共重合体(B−2−3)を得た。得られた共重合体(B−2−3)の物性の測定結果を表1に示した。
【0090】
(6)共重合体(B−2−4)の製造
共重合体(B−2−1)の製造において、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)の量を0.001部に、そしてt−ドデシルメルカプタンの量を0.005部に変更し、重合反応器の温度を150℃とした以外は、共重合体(B−2−1)の製造と同様にして重合を行い、共重合体(B−2−4)を得た。得られた共重合体(B−2−4)の物性の測定結果を表1に示した。
【0091】
(7)共重合体(B−2−5)の製造
共重合体(B−2−1)の製造において、仕込み組成をアクリロニトリル30部、スチレン60部およびN−フェニルマレイミド10部に変更した以外は、共重合体(B−2−1)の製造と同様に行い、共重合体(B−2−5)を得た。得られた共重合体(B−2−5)の物性の測定結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
4.グラフト共重合体(C)の製造
(1)グラフト共重合体(C−1)の製造
10リットルのガラス製反応器に、
水(ゴムプラスチック中の水も含む) 150部
ゴム状重合体(D−3)ラテックス(固形分) 60部
ロジン酸カリウム 0.5部
デキストローズ 0.3部
ピロリン酸ナトリウム 0.1部
硫酸第一鉄・七水塩 0.005部
を仕込み、内温を65℃に昇温した。これに、
アクリロニトリル 13部
スチレン 27部
t−ドデシルメルカプタン 0.3部
クメンヒドロパーオキシド 0.18部
からなる混合物を150分かけて滴下して重合を開始した。滴下終了後、クメンヒドロパーオキシド0.1部を添加した後1時間保持して冷却した。得られたラテックスを65℃に昇温した該ラテックスの2倍量の0.4%硫酸水溶液中に投入し、その後90℃に昇温して凝固した。水洗、脱水を繰り返した後、最後に乾燥させて乳白色粉末であるグラフト共重合体(C−1)を得た。
【0094】
(2)グラフト共重合体(C−2)の製造
グラフト共重合体(C−1)の製造において、ゴム状重合体(D−3)ラテックスの代りに、ゴム状重合体(D−1)ラテックスを使用した以外はグラフト共重合体(C−1)の製造と同様にして乳白色粉末であるグラフト共重合体(C−2)を得た。
【0095】
(3)グラフト共重合体(C−3)の製造
10リットルのガラス製反応器に、
水(ゴムプラスチック中の水も含む) 145部
ゴム共重合体(D−1)ラテックス(固形分) 30部
ロジン酸カリウム 0.5部
デキストローズ 0.3部
アクリロニトリル 18部
スチレン 42部
N−フェニルマレイミド 10部
t−ドデシルメルカプタン 0.35部
クメンヒドロパーオキシド 0.3部
を仕込み、内温を60℃に昇温した。これに、
ピロリン酸ナトリウム 0.1部
硫酸第一鉄・七水塩 0.005部
水 5部
からなる水溶液を添加して重合を開始した。発熱が無くなってから、クメンヒドロパーオキシド0.1部を添加した後1時間保持して冷却した。得られたラテックスを65℃に昇温した該ラテックスの2倍量の0.4%硫酸水溶液中に投入し、その後90℃に昇温して凝固した。水洗、脱水を繰り返した後、最後に乾燥させて乳白色粉末であるグラフト共重合体(C−3)を得た。
【0096】
[実施例1〜8、比較例1〜2]
グラフト共重合体(A−1)〜(A−6)、共重合体(B−1−1)〜(B−1−2)およびグラフト共重合体(C−1)を表2に示した割合で配合しヘンシェルミキサーで十分混合した後、二軸押出機でシリンダー温度200℃でペレット化して樹脂組成物を得た。これらのペレットを2オンス射出成形機にてシリンダー温度200℃、金型温度60℃の条件で各種測定用試片を作製し、各評価に供した。
表2に得られた樹脂組成物の性能評価結果を示した。
【0097】
【表2】
【0098】
[実施例9〜15、比較例3〜6]
グラフト共重合体(A−1)および(A−7)〜(A−9)、共重合体(B−2−1)〜(B−2−5)ならびにグラフト共重合体(C−2)〜(C−3)を表3に示した割合で配合し、それぞれの配合物100部に対して、フェノール系熱安定剤(川口化学工業(株)製、アンテージW−400)0.2部およびホスファイト系安定剤(旭電化工業(株)製、アデカスタブC)0.2部を加えてヘンシェルミキサーで十分混合した後、二軸押出機でシリンダー温度250℃でペレット化して樹脂組成物を得た。これらのペレットを2オンス射出成形機にてシリンダー温度260℃、金型温度60℃の条件で各種の物性測定用試片を作製し、各評価に供した。
表3に得られた樹脂組成物の性能評価結果を示した。
【0099】
【表3】
【0100】
図2〜5に本発明の実施例3、9および比較例1、3で得られた樹脂組成物の断面を四酸化オスミウムで染色した超薄膜切片の透過型電子顕微鏡写真を示した。図2〜5において円形(図面では染色されて黒色に観測される)がゴム状重合体粒子を示し、その粒子の中の白い円形の部分がオクルージョン部分を示す。
【0101】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、広い温度条件下において優れた耐面衝撃性を有するとともに、優れた耐熱性、成形加工性、樹脂外観を有しているために、種々の分野、例えば自動車やOA機器、電気・電子機器等の用途に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いられるグラフト共重合体(A)およびグラフト共重合体(C)におけるゴム状重合体とオクルージョンの状態を示す模式拡大断面図である。
【図2】実施例3で得られた樹脂組成物の電子顕微鏡写真である(倍率70000倍)。
【図3】実施例9で得られた樹脂組成物の電子顕微鏡写真である(倍率70000倍)。
【図4】比較例1で得られた樹脂組成物の電子顕微鏡写真である(倍率70000倍)。
【図5】比較例3で得られた樹脂組成物の電子顕微鏡写真である(倍率70000倍)。
Claims (5)
- (A)脂肪族共役ジエン系単量体を必須成分とする単量体または単量体混合物を重合して得られるゴム状重合体5〜70重量%の存在下に、シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物95〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるグラフト共重合体であり、該グラフト共重合体を透過型電子顕微鏡でその断面を観察したときにゴム状重合体部分の総面積[W]と該ゴム状重合体に含まれるオクルージョン部分の総面積[S]との比率が下記式(I)
(B)芳香族ビニル系単量体を必須成分とする単量体混合物を重合してなる共重合体95〜40重量部、からなる(ただし、(A)成分と(B)成分の合計を100重量部とする。)耐面衝撃性に優れた樹脂組成物。 - 共重合体(B)がシアン化ビニル系単量体10〜50重量%、芳香族ビニル系単量体50〜90重量%およびそれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜40重量%からなる単量体混合物(合計100重量%)を重合してなる共重合体(B−1)であることを特徴とする請求項1記載の耐面衝撃性に優れた樹脂組成物。
- 共重合体(B)がマレイミド系単量体15〜65重量%、芳香族ビニル系単量体85〜35重量%およびそれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜35重量%からなる単量体混合物(合計重量100重量%)を重合してなる共重合体(B−2)であることを特徴とする請求項1記載の耐面衝撃性に優れた樹脂組成物。
- 共重合体(B−2)が該共重合体中の残存マレイミド系単量体の含有量が0.1重量%以下で、かつマレイミド系単量体以外の総揮発分が0.5重量%以下であり、該共重合体中のマレイミド系単量体単位を構成成分として含む分子量が200以上1000以下のオリゴマー成分の含有量が2〜10重量%であり、該共重合体の固有粘度が0.3〜1.5dl/gであることを特徴とする請求項3記載の耐面衝撃性に優れた樹脂組成物。
- 請求項1記載のグラフト共重合体(A)以外の形態の特定されないグラフト共重合体(C)が(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計量100重量部中0〜55重量部含有されてなることを特徴とする請求項1記載の耐面衝撃性に優れた樹脂組成物。
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