JP2021084947A - ポリカーボネート樹脂改質剤、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂改質剤、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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雄介 深町
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【課題】ポリカーボネート樹脂の流動性及び耐衝撃性を向上できるポリカーボネート樹脂改質剤、流動性及び耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する。【解決手段】芳香族ビニル化合物に基づく単位と、シアン化ビニル化合物に基づく単位と、炭素数8以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位とを有する共重合体からなる、ポリカーボネート樹脂改質剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂改質剤、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性に優れる一方、成形時の流動性に劣ることが知られている。
樹脂材料の流動性を向上する方法としては一般的に、樹脂材料の滑剤を添加する方法、樹脂材料を低分子量化する方法が知られている。しかし、ポリカーボネート樹脂に滑剤を添加したりポリカーボネート樹脂を低分子量化したりすると、耐衝撃性が損なわれる。
耐衝撃性及び流動性に優れた樹脂材料として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂等のグラフト共重合体とのポリマーアロイが知られている。
近年、成形品の小型化、薄肉化が進むなか、耐衝撃性及び流動性のさらなる向上が求められる。
特許文献1には、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート系共重合体が、ポリカーボネート樹脂、所定のグラフト共重合体等を含む組成物の流動性改善効果を有することが開示されている。
特開2000−234053号公報
しかし、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート系共重合体による流動性改善効果は十分ではない。また、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート系共重合体の配合量を増やすと、耐衝撃性が低下することがある。
本発明は、ポリカーボネート樹脂の流動性及び耐衝撃性を向上できるポリカーボネート樹脂改質剤、流動性及び耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕芳香族ビニル化合物に基づく単位と、シアン化ビニル化合物に基づく単位と、炭素数8以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位とを有する共重合体からなる、ポリカーボネート樹脂改質剤。
〔2〕ポリカーボネート樹脂と、前記〔1〕のポリカーボネート樹脂改質剤とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕グラフト共重合体をさらに含む、前記〔2〕の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕前記〔2〕又は〔3〕の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形品。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂の流動性及び耐衝撃性を向上できるポリカーボネート樹脂改質剤、流動性及び耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供できる。
実施例2、3、5、6、8、9、11、12、比較例10〜12の260℃でのスパイラル流動長を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの総称である。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
〔ポリカーボネート樹脂改質剤〕
本発明の一態様に係るポリカーボネート樹脂改質剤(以下、「本改質剤」とも記す。)は、芳香族ビニル化合物に基づく単位と、シアン化ビニル化合物に基づく単位と、炭素数8以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「長鎖アルキル(メタ)アクリレート」とも記す。)に基づく単位とを有する共重合体(以下、「共重合体I」とも記す。)からなる。本改質剤をポリカーボネート樹脂に配合することで、ポリカーボネート樹脂単独の場合に比べて、流動性及び耐衝撃性を向上できる。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数は、8以上であり、10以上が好ましく、12以上がより好ましい。炭素数が8以上であれば、流動性及び耐衝撃性の向上効果に優れる。アルキル基の炭素数の上限は、特に限定されない。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、流動性、耐衝撃性の観点では、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
共重合体Iは、必要に応じて、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び長鎖アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他の単量体に基づく単位をさらに有していてもよい。
他の単量体としては、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート等)、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)が挙げられる。
共重合体Iを構成する全単位の合計質量に対する芳香族ビニル化合物に基づく単位の割合は、25〜90質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。芳香族ビニル化合物に基づく単位の割合が前記下限値以上であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れ、前記上限値以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形品の剛性がより優れる。
共重合体Iを構成する全単位の合計質量に対するシアン化ビニル化合物に基づく単位の割合は、5〜50質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。シアン化ビニル化合物に基づく単位の割合が前記下限値以上であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形品の靱性がより優れ、前記上限値以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れる。
共重合体Iを構成する全単位の合計質量に対する長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の割合は、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の割合が前記下限値以上であれば、流動性及び耐衝撃性の向上効果がより優れる。
共重合体Iの1分子あたりの炭素数8以上のアルキル基の数は、10〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。炭素数8以上のアルキル基の数が前記下限値以上であれば、流動性及び耐衝撃性の向上効果がより優れる。
炭素数8以上のアルキル基の数は、共重合体Iを構成する全単位の合計質量に対する長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の割合と、共重合体Iの数平均分子量(Mn)から算出される。
共重合体Iを構成する全単位の合計質量に対する芳香族ビニル化合物に基づく単位とシアン化ビニル化合物に基づく単位と長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位との合計質量の割合は、70〜100質量%が好ましく、85〜100質量%がより好ましい。
共重合体Iは、典型的には、グラフト共重合体とは異なる共重合体である。すなわち、共重合体Iは、典型的には、ゴム質重合体を含まず、芳香族ビニル化合物に基づく単位とシアン化ビニル化合物に基づく単位と長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位とを有するランダム共重合体である。共重合体Iは、直鎖状の重合体であってよい。
共重合体Iは、例えば、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物と長鎖アルキル(メタ)アクリレートとを含む単量体混合物を重合して得られる。単量体混合物は、典型的には、ゴム質重合体の非存在下で重合する。
単量体混合物の重合は、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法等の公知の重合法により行うことができる。共重合体Iを製造する際に乳化重合法を適用した場合には、共重合体Iをエマルションとして得ることができる。
単量体混合物を重合する際には、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を添加してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いることができる。
連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン等のチオール、α−メチルスチレンダイマー等を用いることができる。
共重合体Iの質量平均分子量(Mw)は、50,000〜300,000が好ましく、55,000〜200,000がより好ましく、60,000〜150,000がさらに好ましい。共重合体IのMwが前記下限値以上であれば、耐衝撃性の向上効果がより優れ、前記上限値以下であれば、流動性の向上効果がより優れる。
共重合体Iの分子量分布(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.7〜2.4が好ましく、1.8〜2.2がより好ましい。共重合体Iの分子量分布が前記下限値以上であれば、耐衝撃性の向上効果がより優れ、前記上限値以下であれば、流動性の向上効果がより優れる。
共重合体IのMw、Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
共重合体IのMwを調節する方法としては、例えば、連鎖移動剤の使用量を調整する方法、ラジカル重合開始剤の使用量を調整する方法、重合温度を調整する方法、単量体混合物の供給速度を調整する方法等が挙げられる。
共重合体Iの還元粘度は、0.2〜1.0dL/gが好ましく、0.25〜0.9dL/gがより好ましく、0.3〜0.8dL/gがさらに好ましい。共重合体Iの還元粘度が前記下限値以上であれば、耐衝撃性の向上効果がより優れ、前記上限値以下であれば、流動性の向上効果がより優れる。
前記還元粘度は、共重合体Iの0.2gをジメチルホルムアミド100mL中に溶解した溶液について、毛細管粘度計を用いて25℃で測定した還元粘度である。
共重合体Iの還元粘度を調節する方法としては、共重合体IのMwを調節する方法と同様の方法が挙げられる。共重合体Iの分子量が低くなるように調整すれば、還元粘度が低くなる。
共重合体Iのガラス転移温度(Tg)は、−60〜110℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、10〜95℃がさらに好ましい。共重合体IのTgが前記下限値以上であれば、耐熱性がより優れ、前記上限値以下であれば、流動性がより優れる。
共重合体IのTgは、示差走査熱量測定(DSC)により求められる値であり、具体的には、窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度である。
共重合体IのTgを調節する方法としては、共重合体Iを形成する単量体の種類や割合、分子量(Mw、Mn)を調整する方法等が挙げられる。
共重合体Iのメルトボリュームフローレイト(MVR)は、20cm/10分以上が好ましい。MVRが20cm/10分以上であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が優れる。MVRの上限は特に限定されない。
共重合体IのMVRは、ISO 1133に準拠し、温度190℃、荷重2.2kgで測定される。
共重合体IのMVRを調節する方法としては、共重合体IのMwを調節する方法と同様の方法が挙げられる。共重合体Iの分子量が低くなるように調整すれば、MVRが大きくなる。
本改質剤を構成する共重合体Iは、1種のみでもよく、単量体組成や物性等が異なる2種以上であってもよい。
本改質剤は、ポリカーボネート樹脂の改質剤として用いられる。本改質剤をポリカーボネート樹脂に配合することで、ポリカーボネート樹脂単独の場合に比べて、流動性及び耐衝撃性を向上できる。
本改質剤を、ポリカーボネート樹脂とグラフト共重合体とのポリマーアロイの改質剤として用いることもできる。前記ポリマーアロイに本改質剤を配合することで、前記ポリマーアロイ単独の場合に比べて、流動性及び耐衝撃性を向上できる。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の一態様に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と、本改質剤とを含む。
本態様の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体をさらに含むことが好ましい。
本態様の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、ポリカーボネート樹脂、本改質剤及びグラフト共重合体以外の他の樹脂をさらに含んでいてもよい。
本態様の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでいてもよい。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有する樹脂である。
ポリカーボネート樹脂としては、特に限定されず、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族−芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステルカーボネート樹脂等が挙げられる。これらのポリカーボネート樹脂は、末端がR−CO−基又はR’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。これらのポリカーボネート樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネート樹脂としては、耐衝撃性、耐熱性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般式−(−O−X−O−C(=O)−)−で示される構成単位を有する重合体である。前記一般式におけるXは、1以上の芳香環を有する炭化水素基、又は前記炭化水素基にヘテロ原子又はヘテロ結合を導入した基である。Xにおいて、Xに隣接する酸素原子に直接結合する原子は、芳香環を構成する炭素原子である。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、ジヒドロキシジアリール化合物とカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法により反応させることにより得られる。
ジヒドロキシジアリール化合物は、2個のヒドロキシ基と2個のアリール基とを有する化合物である。ジヒドロキシジアリール化合物の代表例として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが挙げられる。ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ジヒドロキシジアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルファイド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等が挙げられる。ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールエーテル類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールエーテル類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルファイド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルファイド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホキシド類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホン類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。これらジヒドロキシジアリール化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ジヒドロキシジアリール化合物に加えて、ヒドロキシ基を3個以上有する3価以上のフェノール化合物を併用してもよい。3価以上のフェノールとしては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−(4,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)−プロパン等が挙げられる。これら3価以上のフェノール化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル又はハロホルメート等が例示される。カーボネート前駆体の具体例としては、ホスゲン、ジフェニルカーボーネート、2価フェノールのジハロホルメート及びこれらの混合物が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に際しては、前記ジヒドロキシジアリール化合物及び前記カーボネート前駆体に加えて、分子量調整剤、分岐剤、反応を促進するための触媒等を使用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、粘度平均分子量が互いに異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、特に限定されるものではないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)は、通常10,000〜40,000が好ましく、12,000〜35,000がより好ましく、15,000〜30,000が特に好ましい。粘度平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性が良好であり、前記範囲の上限値以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が良好である。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値である。前記極限粘度[η]は、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式(1)により求めた値である。
Figure 2021084947
(グラフト共重合体)
グラフト共重合体は、粒子状のゴム質重合体の存在下にビニル系単量体をグラフト重合させることにより得られる共重合体である。グラフト共重合体は、粒子状のゴム質重合体からなる幹ポリマーにビニル系単量体の重合体からなる枝ポリマーが結合したグラフト物と、ビニル系単量体の重合体からなる非グラフト物とを含む。
グラフト共重合体としては、ゴム質重合体20質量%以上90質量%以下の存在下にビニル系単量体80質量%以下10質量%以上(但し、ゴム質重合体とビニル系単量体との合計を100質量%とする。)をグラフト重合させたものが好ましく、ゴム質重合体30質量%以上70質量%以下の存在下にビニル系単量体70質量%以下30質量%以上をグラフト重合させたものがより好ましい。ゴム質重合体の割合が前記下限値以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性がより優れ、前記上限値以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れる。
グラフト共重合体を構成するゴム質重合体としては、例えば、ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴム、アクリル系ゴム、オレフィン系ゴム等が挙げられる。
ブタジエン系ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。
イソプレン系ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。
アクリルゴムとしては、ポリアクリル酸ブチル等が挙げられる。
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
前記ゴム質重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム質重合体のなかでも、成形品の塗装性がより高くなることから、ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムが好ましい。
前記ゴム質重合体が2種以上である場合には、コア−シェル構造を形成した粒子状のゴム質重合体であってもよい。例えば、ゴム質重合体は、ポリブタジエンがコア、ポリアクリル酸エステルがシェルのコア−シェル粒子でもよい。
ゴム質重合体は、ゲル含有量が40質量%以上99質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。ゴム質重合体のゲル含有量が前記範囲内であれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性、特に耐衝撃性を向上させることができる。
ゴム質重合体のゲル含有量は、下記の方法により測定される。
例えば、ゴム質重合体がブタジエン系ゴムの場合、ゴム質重合体の固形物の任意の質量[W1](g)を秤量し、室温(23℃)で24時間、トルエンに浸漬する。その溶液を100メッシュ金網でろ過し、金網上に残った不溶分を回収し、60℃で24時間乾燥した後の質量[W2](g)を秤量し、下記式(2)よりゲル含有量(単位:質量%)を求める。
ゲル含有量(単位:質量%)=[W2]/[W1]×100・・・(2)
ゴム質重合体がブタジエン系ゴム以外のゴム質重合体である場合も、同様の方法によりゲル含有量を測定できる。ゴム質重合体の溶解に用いる溶媒は、ゴム質重合体の種類によって任意に変えることができ、ゴム質重合体がジエン系ゴム、オレフィン系ゴムの場合は、トルエンを使用することが好ましく、ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合は、アセトンを用いることが好ましい。また、任意に加熱して測定してもよい。
ゴム状重合体は、膨潤度が1以上80以下であることが好ましく、5以上50以下であることがより好ましく、10以上45以下であることが特に好ましい。ゴム質重合体の膨潤度が前記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が良好である。
ゴム状重合体の膨潤度は、下記の方法により測定される。
例えば、ゴム状重合体がブタジエン系ゴムの場合、前記したゲル含有量の測定方法と同様の手順にてゴム質重合体をトルエンに浸漬する。その溶液を100メッシュ金網でろ過し、金網上に残った不溶分を回収し、その質量[W3](g)を秤量する。その後、不溶分を60℃で24時間乾燥した後の質量[W2](g)を秤量し、下記式(3)より膨潤度を求める。
膨潤度=[W3]/[W2]・・・(3)
ゴム質重合体がブタジエン系ゴム以外のゴム質重合体である場合も、同様の方法により膨潤度を測定できる。膨潤度の測定においてゴム質重合体の溶解に用いる溶媒は、ゲル含有量の測定と同様に、ゴム質重合体の種類によって任意に変えることができ、ゴム質重合体がジエン系ゴム、オレフィン系ゴムの場合は、トルエンを使用することが好ましく、ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合は、アセトンを用いることが好ましい。また、任意に加熱して測定してもよい。
ゴム質重合体の平均粒子径は特に制限されないが、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。前記平均粒子径は、染色剤によりゴム質重合体を染色したグラフト共重合体を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影し、得られた画像を画像解析処理して測定した数平均粒子径である。ゴム質重合体の平均粒子径を測定するための試料は、グラフト共重合体単体でもよいし、グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物でもよい。
なお、グラフト共重合体にする前のゴム質重合体の平均粒子径は、光学的な方法、例えば、レーザ回折散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
レーザ回折散乱法、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定できる。動的光散乱法により測定されるゴム質重合体の体積平均粒子径は、0.1μm以上0.7μm以下が好ましく、0.18μm以上0.48μm以下であることがより好ましい。
グラフト共重合体を形成するビニル系単量体としては、ゴム質重合体にグラフト重合可能なものであればよく、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、アクリル系化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。これら単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物はそれぞれ前記と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
アクリル系化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。アクリル系化合物としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
グラフト共重合体を形成するビニル系単量体としては、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性がより優れることから、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との混合物が好ましい。
シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との混合物における各単量体の割合は、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との合計を100質量%とした際、シアン化ビニル化合物が10〜60質量%、芳香族ビニル化合物が40〜90質量%であることが好ましく、シアン化ビニル化合物が15〜55質量%、芳香族ビニル化合物が45〜85質量%であることがより好ましく、シアン化ビニル化合物が20〜50質量%、芳香族ビニル化合物が50〜80質量%であることがさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の割合が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れ、前記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れる。
シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との組み合わせは、アクリロニトリルとスチレンの組み合わせが好ましい。
グラフト共重合体のアセトン可溶分の質量平均分子量は、10,000〜500,000が好ましく、20,000〜400,000がより好ましく、30,000〜300,000がさらに好ましい。グラフト共重合体のアセトン可溶分の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れ、前記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れる。
グラフト共重合体のアセトン可溶分の質量平均分子量(Mw)は、以下の方法により測定される。
グラフト共重合体をアセトン中で攪拌し、得られたアセトン可溶分をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、その溶液を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置に導入して測定する。分子量が既知の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を利用してアセトン可溶分の分子量を測定し、質量基準の平均分子量を算出する。
なお、グラフト共重合体の構造を詳細に特定することは容易ではない。したがって、グラフト共重合体については、その構造または特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。
グラフト共重合体が容易に得られることから、グラフト重合は、乳化重合法を適用することが好ましい。通常、ゴム質重合体は、水中に乳化分散したエマルションの形態で得られるから、ゴム質重合体エマルションにビニル系単量体を添加してグラフト重合すればよい。
グラフト重合の際には、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤を添加してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を用いることができる。
連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン等のチオール、α−メチルスチレンダイマー等を用いることができる。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用できる。
熱可塑性樹脂組成物がグラフト共重合体を含む場合、本改質剤とグラフト共重合体は、それらが混ざり合った樹脂の形態で供されてもよい。
熱可塑性樹脂組成物がグラフト共重合体を含む場合、熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂中に本改質剤が分散し、本改質剤中にグラフト共重合体が分散するモルフォロジーを形成していることを、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認している。
(他の樹脂)
他の樹脂としては、共重合体I以外のビニル系重合体、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これら他の樹脂は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記その他の樹脂が相溶化剤又は官能基により変性された樹脂であってもよい。
共重合体I以外のビニル系重合体としては、芳香族ビニル化合物に基づく単位と、シアン化ビニル化合物に基づく単位とを有し、長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位とを有さない共重合体(以下、「共重合体II」とも記す。)、メタクリレートに基づく単位を有するメタクリル系重合体等が挙げられる。
(添加剤)
添加剤としては、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等)、難燃剤(ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン化合物等)、ドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤、カップリング剤、耐加水分解防止剤等が挙げられる。これら添加剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(各成分の含有量)
ポリカーボネート樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の全ての樹脂成分の合計を100質量部とした際、40〜99質量部が好ましく、45〜95質量部がより好ましく、50〜90質量部がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂の含有割合が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐熱性がより優れ、前記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、耐衝撃性がより優れる。
「全ての樹脂成分の合計」は、ポリカーボネート樹脂、本改質剤、グラフト共重合体及び他の樹脂の合計である。
本改質剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の全ての樹脂成分の合計を100質量部とした際、1〜60質量部が好ましく、2〜55質量部がより好ましく、3〜50質量部がさらに好ましい。本改質剤の含有割合が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、耐衝撃性がより優れ、前記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐熱性がより優れる。
本改質剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物1t(トン)当たりの長鎖アルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の量(以下、「長鎖アルキル(メタ)アクリレート濃度」とも記す。)が、0.1モル/t以上となる量が好ましい。長鎖アルキル(メタ)アクリレート濃度が0.1モル/t以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性がより優れる。
熱可塑性樹脂組成物がグラフト共重合体を含む場合、グラフト共重合体の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の全ての樹脂成分の合計を100質量部とした際、1〜50質量部が好ましく、3〜45質量部がより好ましく、5〜40質量部がさらに好ましい。グラフト共重合体の含有割合が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、機械的強度がより優れ、前記上限値以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐熱性がより優れる。
熱可塑性樹脂組成物が添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂組成物中の全ての樹脂成分の合計を100質量部とした際、0.01質量部以上5質量部の範囲内である。
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本態様の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂と本改質剤とを混合する。これにより得た混合物を、溶融混練機を用いて溶融混練し、押出機から吐出するストランドを冷却し、裁断して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得る。
本態様の熱可塑性樹脂組成物がグラフト共重合体を含有する場合には、ポリカーボネート樹脂と本改質剤とを混合する際に、グラフト共重合体を加えればよい。
溶融混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール等を使用できる。溶融混練機のなかでも、混練性に優れることから、二軸押出機が好ましい。溶融混練機においては、必要に応じて、サイドフィードなどにより、その他の樹脂、添加剤を添加してもよい。
溶融混練の際の加熱温度は、150℃以上300℃以下の範囲内にすることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、熱可塑性樹脂組成物のリサイクル材、熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品のリサイクル材を、得られる熱可塑性樹脂組成物の物性を損なわない範囲で添加してもよい。
(作用効果)
本態様の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と本改質剤とを含むため、流動性及び耐衝撃性に優れる。流動性に優れることから、成形性に優れ、大型で複雑な形状の成形品の作製にも容易に対応できる。
また、本態様の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含むため、耐熱性が高い傾向にある。
〔成形品〕
本発明の一態様に係る成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を含む。
本態様の成形品は、例えば、前記熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得られる。
成形品を得るための成形方法としては、射出成形法、ブロー成形法、シート成形法、真空成形法等が挙げられる。前記成形法のなかでも、量産性に優れることから、射出成形が好適である。また、本態様の熱可塑性樹脂組成物は流動性が高い傾向にあるため、射出成形に適している。
本態様の成形品は、熱可塑性樹脂組成物を含むため、耐衝撃性に優れる。
本態様の成形品は、様々な用途に適用可能である。例えば、本態様の成形品は、車輌用部品、家庭電化製品用部品、事務機器用部品等に好適である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
なお、以下において、「部」は「質量部」のことであり、「%」は「質量%」のことである。
以下の例において、共重合体の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、東ソー株式会社製のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー装置(GPC装置)を用いて測定した。分子量測定においては、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて重合体試料を溶解し、その重合体試料をGPC装置に導入した。分子量が既知の標準ポリスチレンによって予め得た検量線を利用して重合体試料のポリスチレン換算の分子量を測定し、Mw、Mn及びMw/Mnを求めた。
共重合体の還元粘度は、重合体試料0.2gをジメチルホルムアミド100mL中に溶解して溶液を調製し、その溶液について、ウベローデ粘度計を使用して25℃で測定した。
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度を求めた。
共重合体のMVRは、メルトインデクサ(株式会社東洋精機製作所製、「F−F01」)を用い、ISO 1133に従い、シリンダ温度190℃、荷重2.2kgで測定した。
ゴム質重合体の膨潤度は、以下の手順で測定した。ラテックス状のゴム状重合体に硫酸を加えて凝固し、得られた固形物を水洗したのち、室温(23℃)で24時間真空乾燥した。乾燥後の固形物の1.0gを秤量し、室温(23℃)にてトルエンに浸漬した。24時間後、このトルエン溶液を100メッシュ金網でろ過し、不溶分を回収し、その質量[W3](g)を秤量した。その後、不溶分を60℃で24時間乾燥した後の質量[W2](g)を秤量し、下記式(3)より膨潤度を求めた。
膨潤度=[W3]/[W2]・・・(3)
体積平均粒子径は、日機装(株)製動的光散乱式粒子径・粒度分布測定装置ナノトラックUPA−EX150を用い、動的光散乱法により測定した。
[ポリカーボネート樹脂]
PC:芳香族ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS2000F、粘度平均分子量(Mv):約22,000。
[グラフト共重合体]
<製造例1:ABSの製造>
(ゴム状重合体の製造)
耐圧容器に1,3−ブタジエン100部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、過硫酸カリウム0.12部、オレイン酸カリウム3.3部、水酸化カルシウム0.1部及び純水150部を仕込み、65℃の昇温した後、重合を開始した。重合を12時間で終了させたジエン系ゴムラテックスは固形分25%、体積平均粒子径80nm、膨潤度24であった。
(ゴム状重合体の凝集、肥大化)
上記ジエン系ゴムラテックス100部に酢酸1.9部を加え、10分間撹拌混合した後、10%水酸化カリウム水溶液15部を加えて、固形分34%、膨潤度24、体積平均粒子径300nmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。
(グラフト重合体の製造)
ステンレス容器に上記肥大化ジエン系ゴムラテックス65部(固形分)、不均化ロジン酸カリウム塩0.6部及びスチレン25部及びアクリロニトリル10部からなる単量体混合物を加え、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイドを用いるとともに還元剤として硫酸第一鉄を用いるレドックス触媒系によって、65℃で重合を開始し、グラフト重合体ラテックスを得た。このグラフト重合体ラテックス100部(固形分)当りにフェノール系酸化防止剤1部とホスファイト系酸化防止剤2部を加えた後、硫酸を用いて凝固、脱水、乾燥し、グラフト重合体を得た。このグラフト重合体におけるゴム状重合体の膨潤度は24、体積平均粒子径は310nm、ゴム状重合体の含有量は65%、アセトン可溶分の数平均分子量は36,000であった。
[共重合体]
<製造例2:SAN−1の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した5Lガラス製反応器に、水170部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)0.18部、アクリロニトリル(AN)23.75部、スチレン(ST)71.25部、n−ラウリルメタクリレート(LMA)5部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.6部、高分子懸濁分散剤0.05部、硫酸ナトリウム0.5部を仕込み、攪拌し、反応器内が懸濁状態であることを確認した。この後、反応器の内温を75℃に昇温し、反応による発熱が生じるまで内温75℃にて保持し、発熱を確認後、内温を95℃に昇温した。1時間保持し、室温まで冷却した。これにより得られた懸濁液を脱水、乾燥して共重合体(SAN−1)を得た。得られた共重合体のMw、Mn、Mw/Mn、還元粘度、Tg、配合量とMnから算出した1分子中のアルキル基数、MVRを表1に示す。
<製造例3〜15:SAN−2〜SAN−14の製造>
反応器に仕込む単量体の種類と配合量を表1に示すようにした以外は製造例1と同様にして共重合体(SAN−2〜SAN−14)を得た。得られた共重合体のMw、Mn、Mw/Mn、還元粘度、Tg、配合量とMnから算出した1分子中のアルキル基数、MVRを表1に示す。
Figure 2021084947
表1中、アルキル(メタ)アクリレートは以下のものを使用した。
BA:n−ブチルアクリレート。
LA:ラウリルアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートL−A)。
LMA:ラウリルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトエステルL)。
SA:ステアリルアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートS−A)。
SMA:ステアリルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトエステルS)。
[滑剤]
MgST:ステアリン酸マグネシウム。
CaST:ステアリン酸カルシウム。
SL900:理研ビタミン株式会社製、リケマールSL900、ステアリン酸ステアリル。
(実施例1〜12、比較例1〜12)
前記の各成分を表2〜3に示す配合割合で混合し、得られた混合物を、シリンダの加熱温度を250℃に設定した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30α)に導入し、溶融混練した。二軸押出機の先端に取り付けられたダイスから溶融樹脂を吐出してストランドを形成し、そのストランドを冷却し、冷却したストランドを、ペレタイザを用いてペレット化した。これにより、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
[評価]
各例の熱可塑性樹脂組成物のペレットを、2オンス射出成形機(東芝機械株式会社製)を用い、成形温度250℃の条件にて成形して各種の試験片を得た。その試験片を使用し、シャルピー衝撃強度、MVR、スパイラルフロー(260℃又は280℃)を、下記方法により測定した。測定結果を表2〜3に示す。
<シャルピー衝撃強度>
ISO 179−1に従い、23℃の環境下でシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度の値が大きい程、耐衝撃性に優れる。
<MVR>
熱可塑性樹脂組成物のMVRは、メルトインデックサ(株式会社東洋精機製作所製、「F−F01」)を用い、ISO 1133に準拠し、シリンダ温度220℃、荷重10kgで測定した。
<スパイラルフロー>
シリンダ温度260℃又は280℃、金型温度60℃、射出圧力100MPa、射出時間2秒、保圧時間8秒、冷却時間15秒、溶融樹脂計量値20〜35mm、成形サイクル26.5秒の条件で、熱可塑性樹脂組成物のペレットを85トン射出成形機(株式会社日本製鋼所製、「J85AD−110H)を用いて、断面肉厚2mm、幅15mmの渦巻状の成形品が得られる金型(スパイラルフロー金型)に射出成形した。スパイラルフロー金型は、中心にゲートがあり、外へ向かって渦巻状に樹脂が流れていく形状の金型である。
得られた成形品(260℃又は280℃スパイラルフロー成形品)のスパイラル流動長(mm)を測定した。スパイラル流動長が長いほど流動性(スパイラルフロー)に優れることを意味する。
図1に、実施例2、3、5、6、8、9、11、12、比較例10〜12の260℃でのスパイラル流動長を示す。これら各例は、共重合体の種類のみ異なる。
図1中、グラフの横軸の「重合中変性量」は、各例で用いた共重合体(SAN)におけるANとST、アルキル(メタ)アクリレートの合計100部に含まれるアルキル(メタ)アクリレートの割合(部)を示す。「メタクリレートL」は、アルキル(メタ)アクリレートがLMAである例(実施例2、3)の結果を示す。「メタクリレートS」は、アルキル(メタ)アクリレートがSMAである例(実施例5、6)の結果を示す。「アクリレートL」は、アルキル(メタ)アクリレートがLAである例(実施例8、9)の結果を示す。「アクリレートS」は、アルキル(メタ)アクリレートがSAである例(実施例11、12)の結果を示す。「ブチルアクリレート」は、アルキル(メタ)アクリレートがBAである例(比較例10〜12)の結果を示す。
図1から、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数が8以上であることで、アルキル基の炭素数が4である場合に比べ、流動性向上効果に優れることがわかる。
Figure 2021084947
Figure 2021084947
比較例6におけるSAN−14の一部又は全部を、長鎖アルキル(メタ)アクリレートが導入されたSAN−1〜SAN−8に置換した実施例1〜12は、比較例1に比べて、流動性及び耐衝撃性に優れていた。
比較例1で用いたSAN−14よりも低分子量のSANを用いた比較例2は、比較例1に比べ、流動性に優れるものの、耐衝撃性に劣っていた。
比較例1の組成に滑剤を加えた比較例3〜8は、比較例1に比べ、流動性に優れるものの、耐衝撃性に劣っていた。
比較例1で用いたSAN−14をSAN−9に置換した比較例9は、比較例1に比べ、流動性及び耐衝撃性に優れるものの、耐衝撃性は実施例1〜12に比べて劣っていた。
SAN−9にブチルアクリレートを導入したSAN−10〜SAN−12を用いた比較例10〜12は、比較例9に比べ、流動性に優れるものの、耐衝撃性は比較例9と同等かそれよりも劣っていた。

Claims (4)

  1. 芳香族ビニル化合物に基づく単位と、シアン化ビニル化合物に基づく単位と、炭素数8以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位とを有する共重合体からなる、ポリカーボネート樹脂改質剤。
  2. ポリカーボネート樹脂と、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂改質剤とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
  3. グラフト共重合体をさらに含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形品。
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