JP2004335210A - 電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムとそれを用いた電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イソシアネート基に対して反応し得る反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させたセパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムである。更に多孔質フィルムに電極を積層して、電極/多孔質フィルム積層体を得、この積層体を電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、カチオン重合させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、多孔質フィルムと電極を接着する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イソシアネート基に対して反応し得る反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなる、電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムと、そのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、電極をセパレータに接着せしめた電池を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等の小型乃携帯電子機器のための電源として、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が広く用いられている。このようなリチウムイオン二次電池は、シート状の正、負電極と、例えば、ポリオレフィン樹脂多孔質フィルムとを積層し、又は捲回して、例えば、金属缶からなる電池容器に仕込んだ後、この電池容器に電解液を注入し、密封、封口するという工程を経て製造される。
【0003】
しかし、近年、上記のような小型乃携帯電子機器の一層の小型化、軽量化への要望が非常に強く、そこで、リチウムイオン二次電池についても、更なる薄型化と軽量化が求められており、従来の金属缶容器に代えて、ラミネートフィルム型の電池容器も用いられるようになっている。
【0004】
このようなラミネートフィルム型の電池容器によれば、従来の金属缶容器に比べて、セパレータと電極の電気的接続を維持するための面圧を電極面に十分に加えることができないので、電池の充放電時の電極活性物質の膨張収縮によって、電極間距離が経時により部分的に大きくなり、電池の内部抵抗が増大して、電池特性が低下するほか、電池内部で抵抗のばらつきが生じることによっても、電池特性が低下するという問題が生じる。
【0005】
また、大面積のシート状電池を製造する場合には、電極間距離を一定に保つことができず、電池内部の抵抗のばらつきによって、電池特性が十分に得られないという問題もあった。
【0006】
そこで、従来、このような問題を解決するために、電解液相、電解液を含有する高分子ゲル層及び高分子固相からなる接着性樹脂層によって電極とセパレータを接合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とするバインダー樹脂溶液をセパレータに塗布した後、これに電極を重ね合わせ、乾燥して、電極積層体を形成し、この電極積層体を電池容器に仕込んだ後、電池容器に電解液を注入して、セパレータに電極を接着した電池を得ることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
更に、電解液を含浸させたセパレータと正、負の電極を多孔性の接着樹脂層で接合して、密着させると共に、上記接着性樹脂層中の貫通孔に電解液を保持させて、セパレータに電極を接着した電池とすることも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかし、このような方法によれば、セパレータと電極との間に十分な接着力を得るためには、接着性樹脂層の厚さを厚くしなければならず、また、接着性樹脂に対する電解液量を多くできないので、得られる電池においては、内部抵抗が高くなり、サイクル特性や高レート放電特性が十分に得られない問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開平10−177865号公報
【特許文献2】特開平10−189054号公報
【特許文献3】特開平10−172606号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、セパレータに電極を接着してなる電池の製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、電極/セパレータ間に十分な接着性を有すると共に、内部抵抗が低く、高レート特性にすぐれた電池を製造するために好適に用いることができるセパレータのための反応性ポリマーを担持させた多孔質フィルムとそのような反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いる電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、イソシアネート基に対して反応し得る反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなることを特徴とする電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムが提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を得、この電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を上記電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、カチオン重合させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、多孔質フィルムと電極を接着することを特徴とする電池の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、イソシアネート基に対して反応し得る反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなるものである。
【0014】
本発明において、基材多孔質フィルムは、膜厚3〜50μmの範囲のものが好ましく用いられる。多孔質フィルムの厚みが3μmよりも薄いときは、強度が不十分であって、電池においてセパレータとして用いるとき、電極が内部短絡を起こすおそれがある。他方、多孔質フィルムの厚みが50μmを越えるときは、そのような多孔質フィルムをセパレータとする電池は電極間距離が大きすぎて、電池の内部抵抗が過大となる。
【0015】
また、基材多孔質フィルムは、平均孔径0.01〜5μmの細孔を有し、空孔率が20〜95%の範囲のものが用いられ、好ましくは、30〜90%、最も好ましくは、40〜85%の範囲のものが用いられる。空孔率が余りに低いときは、電池のセパレータとして用いた場合に、イオン伝導経路が少なくなり、十分な電池特性を得ることができない。他方、空孔率が余りに高いときは、電池のセパレータとして用いた場合に、強度が不十分であり、所要の強度を得るためには、基材多孔質フィルムとして厚いものを用いざるを得ず、そうすれば、電池の内部抵抗が高くなるので好ましくない。
【0016】
更に、基材多孔質フィルムは、1500秒/100cc以下、好ましくは、1000秒/100cc以下の通気度を有するものが用いられる。通気度が高すぎるときは、電池のセパレータとして用いた場合に、イオン伝導性が低く、十分な電池特性を得ることができない。また、基材多孔質フィルムの強度は、突刺し強度が1N以上であることが好ましい。突刺し強度が1Nよりも小さいときは、電極間に面圧がかかった際に基材が破断し、内部短絡を引き起こすおそれがあるからである。
【0017】
本発明によれば、基材多孔質フィルムは、上述したような特性を有すれば、特に、限定されるものではないが、耐溶剤性や耐酸化還元性を考慮すれば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムが好適である。しかし、なかでも、加熱されたとき、樹脂が溶融して、細孔が閉塞する性質を有し、その結果、電池に所謂シャットダウン機能を有せしめることができるところから、多孔質フィルムとしては、ポリエチレン樹脂フィルムが特に好適である。ここに、ポリエチレン樹脂には、エチレンのホモポリマーのみならず、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィンとエチレンとのコポリマーを含むものとする。また、本発明によれば、ポリテトラフルオロエチレンやポリイミド等の多孔質フィルムと上記ポリオレフィン樹脂多孔質フィルムとの積層フィルムも、耐熱性にすぐれるところから、基材多孔質フィルムとして、好適に用いられる。
【0018】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、このような基材多孔質フィルムにイソシアネート基に対して反応し得る反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなるものである。
【0019】
本発明において、架橋性ポリマーは、イソシアネート基に対して反応し得る反応性基(以下、イソシアネート反応性基という。)とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有するポリマーをいう。本発明によれば、このような架橋性ポリマーは、好ましくは、イソシアネート反応性基を有するラジカル重合性モノマー(以下、イソシアネート反応性ラジカル重合性モノマーという。)と3−オキセタニル基を有するラジカル重合性モノマー(以下、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーという。)及び/又はエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(以下、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーという。)と他のラジカル重合性モノマーとのラジカル共重合体である。
【0020】
本発明において、上記イソシアネート反応性基は、イソシアネート基と反応し得る活性水素を有する官能基であれば、特に、限定されるものではなく、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、ウレタン基、尿素基等を挙げることができるが、なかでも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基が好ましい。
【0021】
従って、このようなイソシアネート反応性基を有するイソシアネート反応性ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のようなカルボキシル基含有ラジカル共重合性モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のようなヒドロキシル基含有ラジカル共重合性モノマー、特に、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。尚、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又は(メタ)アクリレートを意味する。
【0022】
本発明によれば、イソシアネート反応性基と共にカチオン重合性官能基を有する架橋性ポリマーを得る際に、上記イソシアネート反応性基含有ラジカル重合性モノマーは、全モノマー量の0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%の範囲となるように用いられる。上記イソシアネート反応性基含有ラジカル重合性モノマーが全モノマー量の10重量%よりも多いときは、得られる架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを反応させて、架橋性ポリマーを一部、架橋させたときに、架橋密度が大きく、生成する反応性ポリマーが緻密となって、最終的に得られる電極/多孔質フィルム(セパレータ)接合体において、反応性ポリマーが電解液中で十分に膨潤し難くなるので、特性にすぐれた電池を得ることができない。しかし、反対に、上記イソシアネート反応性基含有ラジカル重合性モノマーが全モノマー量の0.1重量%よりも少ないときは、架橋性ポリマーを部分架橋させた反応性ポリマーの電解液中への溶出、拡散が十分に抑制されず、反応性ポリマーの多くが電解液中に溶出、拡散するので、多孔質フィルムと電極との間に十分な接着を得ることができず、同様に、特性にすぐれた電池を得ることができない。
【0023】
本発明によれば、このようなイソシアネート反応性ラジカル重合性モノマーと共に、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステルを共重合性モノマーとして併用することができる。このような(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0024】
他方、本発明によれば、架橋性ポリマーの有するカチオン重合性官能基は、好ましくは、3−オキセタニル基とエポキシ基(2−オキシラニル基)とから選ばれる少なくとも1種である。従って、特に、本発明によれば、上記架橋性ポリマーは、カチオン重合性官能基として、分子中に複数の3−オキセタニル基を有するポリマーか、及び/又は分子中に複数のエポキシ基を有するポリマーであることが好ましい。
【0025】
特に、本発明によれば、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとして、好ましくは、一般式(I)
【0026】
【化7】
【0027】
(式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2 は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
で表される3−オキセタニル基含有(メタ)アクリレートが用いられる。
【0028】
このような3−オキセタニル基含有(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−へキシル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いられ、又は2種以上が併用される。
【0029】
また、本発明によれば、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーとして、好ましくは、一般式(II)
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、R3 は水素原子又はメチル基を示し、R4 は式(1)
【0032】
【化9】
【0033】
又は式(2)
【0034】
【化10】
【0035】
で表されるエポキシ基含有基を示す。)
で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートが用いられる。
【0036】
このようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、具体的には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いられ、又は2種以上が併用される。
【0037】
本発明に従って、イソシアネート反応性ラジカル重合性モノマーと3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーと共重合させる前記他のラジカル重合性モノマーは、好ましくは、一般式(III)
【0038】
【化11】
【0039】
(式中、R5 は水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素原子数2又は3のオキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基)を示し、R6 は炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数1〜6のフッ化アルキル基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
で表される(メタ)アクリレートと一般式(IV)
【0040】
【化12】
【0041】
(式中、R7 はメチル基又はエチル基を示し、R8 は水素原子又はメチル基を示す。)
で表されるビニルエステルから選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
上記一般式(III) で表される(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これら以外にも、例えば、
【0043】
【化13】
【0044】
等を挙げることができる。式中、nは0〜3の整数である。
【0045】
また、上記一般式(IV)で表されるビニルエステルの具体例として、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができる。
【0046】
イソシアネート反応性基と共に3−オキセタニル基及び/又はエポキシ基をそれぞれ複数有する架橋性ポリマーは、上述したように、好ましくは、イソシアネート反応性基含有モノマーと3−オキセタニル基及び/又はエポキシ含有ラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとをラジカル重合開始剤を用いてラジカル共重合させることによって、ラジカル共重合体として得ることができる。このラジカル共重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等、いずれの重合法によってもよいが、重合の容易さ、分子量の調整、後処理等の点から溶液重合や懸濁重合によるのが好ましい。
【0047】
上記ラジカル重合開始剤は、特に、限定されるものではないが、例えば、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルN,N’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が用いられる。また、このラジカル共重合において、必要に応じて、メルカプタン等のような分子量調整剤を用いることができる。
【0048】
本発明によれば、上述したような架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させ、これに電極を積層して、電極/多孔質フィルム積層体とし、これをカチオン重合触媒を含む電解液、好ましくは、カチオン重合触媒を兼ねる電解質を含む電解液中に浸漬して、前記多孔質フィルム上の部分架橋させた架橋性ポリマー、即ち、反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出、拡散させて、カチオン重合によって架橋させ、多孔質フィルムと電極との界面の近傍で電解液をゲル化させることによって、電極と多孔質フィルムを接着させることができる。
【0049】
そこで、本発明によれば、イソシアネート反応性基と共に3−オキセタニル基及び/又はエポキシ基を含有する架橋性ポリマーを得る際に、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーは、その合計量が全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲となるように用いられる。従って、3−オキセタニル基を含有する架橋性ポリマーを得る場合であれば、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーは、全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲で用いられ、同様に、エポキシ基を含有する架橋性ポリマーを得る場合であれば、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーは、全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲で用いられる。
【0050】
また、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーを併用し、これらを他のラジカル重合性モノマーと共重合させて、イソシアネート反応性基と共に3−オキセタニル基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーを得る場合には、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーの合計量のうち、エポキシ基含有ラジカル重合性モノマーの割合が90重量%以下であるように用いられる。
【0051】
3−オキセタニル基含有架橋性ポリマーやエポキシ基含有架橋性ポリマーを得る際に、3−オキセタニル基含有ラジカル重合性モノマーとエポキシ基含有ラジカル重合性モノマーの合計量が全モノマー量の5重量%よりも少ないときは、上述したように、電解液のゲル化に要する架橋性ポリマー量の増大を招くので、得られる電池の性能が低下する。他方、50重量%よりも多いときは、形成されたゲルの電解液の保持性が低下して、得られる電池における電極/セパレータ間の接着性が低下する。
【0052】
本発明において、架橋性ポリマーは、その重量平均分子量が10000以上であることが好ましい。架橋性ポリマーの重量平均分子量が10000よりも小さいときは、電解液をゲル化するために多量の架橋性ポリマーを必要とするので、得られる電池の特性を低下させる。他方、架橋性ポリマーの重量平均分子量の上限は、特に制限されるものではないが、電解液をゲルとして保持し得るように、300万程度であり、好ましくは、250万程度である。特に、本発明によれば、架橋性ポリマーは、重量平均分子量が100000〜2000000の範囲にあるのが好ましい。
【0053】
本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、上述したような架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーとして、基材多孔質フィルムに担持させたものである。
【0054】
このように、イソシアネート反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させて、反応性ポリマーとし、これを多孔質フィルムに担持させるには、特に、限定されるものではないが、例えば、架橋性ポリマーを溶液とし、この溶液に多官能イソシアネートを所定量、即ち、架橋性ポリマーを一部、架橋させるに足りる量を配合し、これを基材多孔質フィルムに担持させた後、例えば、適宜の温度に加熱して、上記架橋性ポリマーを上記多官能イソシアネートと反応させ、架橋性ポリマーの有する官能基(例えば、ヒドロキシル基やカルボキシル基のような活性水素基)と反応させ、架橋性ポリマーを一部、架橋させればよく、このようにして、本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得る。
【0055】
本発明によれば、このようにして、架橋性ポリマーを部分架橋させてなる反応性ポリマーは、5〜80%の範囲の不溶分率を有することが望ましい。ここに、上記不溶分率とは、後述するように、部分架橋した反応性ポリマーを担持させた多孔質フィルムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(容量比1/1)混合溶媒に室温で攪拌下に2時間浸漬した後、更に、エチルメチルカーボネートに浸漬したときに多孔質フィルム上に残存する反応性ポリマーの割合をいう。
【0056】
5〜80%の範囲の不溶分率を有する反応性ポリマーを得るには、限定されるものではないが、通常、架橋性ポリマーの有するイソシアネート反応性基1モル部に対して、多官能イソシアネートの有するイソシアネート基が0.1〜10モル部、好ましくは、0.3〜5モル部、特に好ましくは、0.5〜3モル部となるように、適宜の溶媒中で架橋性ポリマーと多官能イソシアネートを混合し、好ましくは、基材多孔質フィルムに塗布し、乾燥させた後、加熱して、得られる反応性ポリマーが特性的に安定化するまで、架橋性ポリマーの架橋反応を行わせることによって得ることができる。
【0057】
本発明によれば、得られる反応性ポリマーが上記不溶分率を有する限りは、架橋性ポリマー中のイソシアネート反応性基をすべて、イソシアネート基と反応させる必要は必ずしもない。加熱硬化温度やそのための時間は、用いる架橋性ポリマーや多官能イソシアネートによるが、実験によってこれら反応条件を定めることができる。通常、50℃の温度で48時間、加熱、反応させれば、架橋反応を完結させて、上記不溶分率を有し、特性的に安定した反応性ポリマーを得ることができる。
【0058】
反応性ポリマーの不溶分率が5%よりも少ないときは、このような反応性ポリマーを担持させた多孔質フィルムに電極を圧着して、電極/多孔質フィルム積層体とし、これを電解液に浸漬したとき、反応性ポリマーの多くが電解液中に溶出、拡散して、反応性ポリマーを更にカチオン重合させ、架橋させても、電極と多孔質フィルムとの間に有効な接着を得ることができない。他方、反応性ポリマーの不溶分率が80%よりも多いときは、電極/多孔質フィルム積層体とし、これを電解液に浸漬したとき、反応性ポリマーの膨潤性が低く、得られる電極/多孔質フィルム接合体を有する電池が高い内部抵抗を有することとなり、電池特性に好ましくない。特に、本発明によれば、反応性ポリマーの不溶分率は、好ましくは、10〜60%の範囲であり、最も好ましくは、10〜40%の範囲である。
【0059】
本発明において、多官能イソシアネートは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート等の芳香族、芳香脂肪族、脂環族、脂肪族の多官能イソシアネート類等、及びこれらイソシアネートの多量化イソシアネート類が用いられるが、ジイソシアネートにトリメチロールプロパンのようなポリオールを付加させてなる所謂イソシアネートアダクト体も好ましく用いられる。
【0060】
このように、本発明に従って、架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを反応させて、その一部を反応、架橋させることによって得られる反応生成物、即ち、反応性ポリマーは、電解液に浸漬されたときにも、電解液中への溶出、拡散が抑制される。従って、このような5〜80%の不溶分率を有する反応性ポリマーを多孔質フィルムに担持させ、これに電極を積層して、電極/多孔質フィルム積層体とし、これを電池容器内に仕込んだ後、この電池容器にカチオン重合触媒を含む電解質を含む電解液を注入すれば、多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記電極/多孔質フィルム積層体における反応性ポリマーの一部のみが電解液中で膨潤し、又は電解液中に溶出して、そのカチオン重合性官能基によって、電解液中のカチオン重合触媒、好ましくは、カチオン重合触媒を兼ねる電解質によって更にカチオン重合し、電解液をゲル化して、電極を多孔質フィルムに密着性よく強固に接着し、かくして、電極/多孔質フィルム(即ち、得られる電池におけるセパレータ)接合体を得ることができる。
【0061】
ここに、本発明によれば、反応性ポリマーは、5〜80%の不溶分率を有するように、予め、部分架橋されている。従って、電解液中に浸漬されても、電解液中への溶出、拡散が防止され、又は低減されて、電極と多孔質フィルムとの接着に有効に用いられるので、比較的少量の反応性ポリマーの使用によって、電極と多孔質フィルムとを安定して、しかも、より強固に接着することができる。
【0062】
更に、部分架橋させた反応性ポリマーを担持させた多孔質フィルムにおいては、反応性ポリマーは、カチオン重合触媒の不存在下では、それ以上は、反応、架橋せず、安定であって、長期間にわたって保存しても、変質することがない。
【0063】
本発明において、架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させた反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させるには、上述したように、架橋性ポリマーと多官能イソシアネートとを含む溶液を基材多孔質フィルムに担持させた後、加熱して、上記架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させればよいが、しかし、特に、この方法に限定されるものではない。
【0064】
例えば、上記架橋性ポリマーの溶液を多孔質フィルムに塗布し、乾燥させた後、この架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを接触させてもよく、また、架橋性ポリマーを溶媒中で多官能イソシアネートと反応させて、一部、架橋させ、反応性ポリマーとした後、この反応性ポリマーを含む溶液を剥離性シートに塗布し、乾燥させた後、基材多孔質フィルムに転写してもよい。
【0065】
次に、このようにして得られる反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いる本発明による電池の製造方法について説明する。
【0066】
先ず、電極を上記反応性ポリマー担持多孔質フィルムに積層し、又は捲回して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を得、次いで、この積層体を金属缶やラミネートフィルム等からなる電池容器内に仕込み、端子の溶接等が必要な場合にはこれを行った後、この電池容器内にカチオン重合触媒を溶解させた電解液を所定量注入し、電池容器を密封、封口して、反応性ポリマー担持多孔質フィルムに担持させた反応性ポリマーを少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にてその少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出、拡散させて、カチオン重合によって架橋させ、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、電極を多孔質フィルムと接着し、かくして、多孔質フィルムをセパレータとし、このセパレータに電極が強固に接着された電池を得ることができる。
【0067】
本発明においては、反応性ポリマーは、そのカチオン重合による架橋によって、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて電解液をゲル化させて、電極と多孔質フィルムとを接着するように機能する。
【0068】
本発明において、反応性ポリマーは、その構造や多孔質フィルムへの担持量、カチオン重合触媒の種類や量にもよるが、常温においてもカチオン重合させ、架橋させることもできるが、しかし、加熱することによって、カチオン重合を促進することができる。この場合、電池を構成する材料の耐熱性や生産性との兼ね合いにもよるが、通常、40〜100℃程度の温度で0.5〜24時間程度加熱すればよい。また、電極を多孔質フィルムに接着させるに足る量のポリマーを膨潤させ、又は溶出、拡散させるために、電池容器内に電解液を注入した後、常温で数時間程度、放置してもよい。
【0069】
本発明において、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体は、反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極が積層されておればよく、従って、電池の構造や形態に応じて、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体として、例えば、負極/多孔質フィルム/正極、負極/多孔質フィルム/正極/多孔質フィルム等が用いられる。
【0070】
上記電解液は、電解質塩を適宜の溶媒に溶解してなる溶液である。上記電解質塩としては、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等アルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、第三級又は第四級アンモニウム塩等をカチオン成分とし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸等の無機酸、カルボン酸、有機スルホン酸又はフッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とする塩を用いることができる。これらのなかでは、特に、アルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩が好ましく用いられる。
【0071】
このようなアルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩の具体例としては、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム等のテトラフルオロホウ酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のへキサフルオロリン酸アルカリ金属、トリフルオロ酢酸リチウム等のトリフルオロ酢酸アルカリ金属、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のトリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属を挙げることができる。
【0072】
特に、本発明に従って、リチウムイオン二次電池を得る場合には、電解質塩ととしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム等が好適に用いられる。
【0073】
更に、本発明において用いる上記電解質塩のための溶媒としては、上記電解質塩を溶解するものであればどのようなものでも用いることができるが、非水系の溶媒としては、エチレンカーポネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類や、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類や、ジメチルカーボネート、ジエチルカーポネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状エステル類を単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0074】
また、上記電解質塩は、用いる溶媒の種類や量に応じて適宜に決定されるが、通常、得られるゲル電解質において、1〜50重量%の濃度となる量が用いられる。
【0075】
本発明において、カチオン重合触媒としては、オニウム塩が好ましく用いられる。そのようなオニウム塩として、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、ヨードニウム塩等のカチオン成分と、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、過塩素酸塩等のアニオン成分とからなるオニウム塩を挙げることができる。
【0076】
しかし、本発明によれば、上述した電解質塩のなかでも、特に、テトラフルオロホウ酸リチウムとへキサフルオロリン酸リチウムは、それ自体、カチオン重合触媒しても機能するので、電解質塩を兼ねるものとして好ましく用いられる。この場合、テトラフルオロホウ酸リチウムとへキサフルオロリン酸リチウムは、いずれかを単独で用いてもよく、また、両方を併用してもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、本発明による電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルムは、複数のイソシアネート反応性基と複数のカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなるものである。
【0078】
従って、このような反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体とし、これを電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を上記電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、カチオン重合させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させることによって、多孔質フィルムと電極を強固に接着させて、電極/多孔質フィルム接合体を得ることができる。
【0079】
ここに、本発明の反応性ポリマー担持多孔質フィルムによれば、反応性ポリマーが予め、一部、架橋されているので、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体が電解液中への浸漬時に、反応性ポリマーが電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体からの電解液中への溶出、拡散が抑制されると共に、反応性ポリマーが膨潤し、その結果、少量の反応性ポリマーを用いることによって、電極を多孔質フィルム(セパレータ)に接着することができると共に、多孔質フィルムがイオン透過性にすぐれて、セパレータとしてよく機能する。また、反応性ポリマーが電解液に過度に溶出、拡散して、電解液に有害な影響を与えることもない。
【0080】
かくして、本発明によれば、電極/セパレータ間に強固な接着を有する電極/セパレータ接合体を電池の製造過程においてその場で形成しつつ、内部抵抗が低く、高レート特性にすぐれた電池を容易に得ることができる。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、基材多孔質フィルムの物性と電池特性は以下のようにして評価した。
【0082】
(多孔質フィルムの厚み)
1/10000mmシックネスゲージによる測定と多孔質フィルムの断面の10000倍走査型電子頭微鏡写真に基づいて求めた。
(多孔質フィルムの空孔率)
多孔質フィルムの単位面積S(cm2)当たりの重量W(g)、平均厚みt(cm)及び多孔質フィルムを構成する樹脂の密度d(g/cm3)から下式にて算出した。
【0083】
空孔率(%)=(1−(100W/S/t/d))×100
(多孔質フィルムの通気度)
JIS P 8117に準拠して求めた。
(突き刺し強度)
カトーテック(株)製圧縮試験磯KES−G5を用いて突き刺し試験を行った。測定により得られた荷重変位曲線から最大荷重を読みとり、突き刺し強度とした。針は直径1.0mm、先端の曲率半径0.5mmのものを用いて、2cm/秒の速度で行った。
【0084】
(反応性ポリマーの不溶分率)
既知の量Aの反応性ポリマーを担持させた反応性ポリマー担持多孔質フィルムを秤量して、その重量Bを測定した。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1容量比)の混合溶媒に室温で2時間浸漬した後、エチルメチルカーボネートに浸漬して、洗浄し、風乾した。この後、このように処理した反応性ポリマー担持多孔質フィルムを秤量して、その重量Cを測定した。反応性ポリマーの不溶分率は次式
【0085】
【数1】
【0086】
から求めた。
【0087】
参考例1
(電極シートの調製)
正極活物質であるコバルト酸リチウム(日本化学工業(株)製セルシードC−10)85重量部と導電助剤であるアセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)10重量部とバインダーであるフッ化ビニリデン樹脂(呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#1120)5重量部を混合し、これを固形分濃度15重量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリーとした。このスラリーを厚み20μmのアルミニウム箔(集電体)上に塗工して厚み200μmに塗布し、80℃で1時間、120℃で2時間乾燥した後、ロールプレスにて加圧して、活物質層の厚みが100μmの正極シートを調製した。
【0088】
また、負極活物質であるメソカーボンマイクロビーズ(大阪ガスケミカル(株)製MCMB6−28)80重量部と導電助剤であるアセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)10重量部とバインダーであるフッ化ビニリデン樹脂(呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#1120)10重量部を混合し、これを固形分濃度15重量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリーとした。このスラリーを厚み20μmの銅箔(集電体)上に塗工して厚み200μmに塗布し、80℃で1時間乾燥し、120℃で2時間乾燥した後、ロールプレスにて加圧して、活物質層の厚みが100μmの負極シートを調製した。
【0089】
(参照電池の作製)
厚さ16μm、空孔率40%、通気度300秒/100cc、突き刺し強度3.0N)のポリエチレン樹脂製の多孔質フィルム(セパレータ)を用意した。前記参考例1で得た負極シート、上記多孔質フィルム及び前記参考例1で得た正極シートをこの順序に積層し、これをアルミニウムラミネートパッケージに仕込んだ後、パッケージ内に1.0モル/L濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(重量比1/1)混合溶媒からなる電解液を注入し、次いで、パッケージを封口して、リチウムイオン二次電池を組み立てた。この電池について、0.2CmAのレートにて3回充放電を行った後に0.2CmAで充電し、この後、2CmAで放電して、2CmA放電容量Aを求めた。
【0090】
(実施例又は比較例による電池の放電特性)
以下の実施例又は比較例にて得られたラミネートシール型リチウムイオン二次電池について、0.2CmAのレートにて3回充放電を行った後に0.2CmAで充電し、この後、2CmAで放電して、2CmA放電容量Bを求め、上記参照電池の放電容量Aに対する放電容量Bの百分比(%)にて電池特性を評価した。
【0091】
製造例1
(架橋性ポリマーA(重量平均分子量308000、ヒドロキシエチルメタクリレートモノマー成分5重量%及び3−オキセタニル基含有モノマー成分25重量%)の製造)
還流冷却管を装備した500mL容量の三つ口フラスコにメチルメタクリレート56.0g、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート20.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.0g、酢酸エチル158.0g、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.18gを投入し、窒素ガスを導入しながら、30分間攪拌混合した後、温度70℃でラジカル重合を行なった。
【0092】
約1時間経過したとき、ラジカル重合が進行して、反応混合物の粘度が上昇し始めた。そのまま、8時間重合を続けた後、約40℃まで冷却し、再び、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.18gを加え、70℃に再度加熱して、更に、8時間後重合を行なった。この後、約40℃まで冷却し、酢酸エチル295gを加え、全体が均一になるまで攪拌混合して、架橋性ポリマーAの酢酸エチル溶液(濃度15重量%)を得た。
【0093】
次に、この架橋性ポリマー溶液100gを高速ミキサーで攪拌しながら、600mLのメタノール中に投入して、架橋性ポリマーを析出させた。この架橋性ポリマーを濾別し、メタノールによる洗浄を数回繰り返した後、乾燥管に入れ、液体窒素を気化させた乾燥窒素ガス(露点温度−150℃以下)をこれに流通して乾燥させた後、更に、デシケータ中で6時間真空乾燥して、架橋性ポリマーAを得た。このようにして得られた架橋性ポリマーAは純白色粉状で、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は308000、数平均分子量は155000であった。
【0094】
製造例2
(架橋性ポリマーB(重量平均分子量314000、ヒドロキシエチルメタクリレートモノマー成分2重量%及び3−オキセタニル基含有モノマー成分25重量%)の製造)
製造例1と同様にして、メチルメタクリレート58.4g、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート20.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1.6g、酢酸エチル158g、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.20gを投入し、窒素ガスを導入しながら、30分間攪拌混合した後、70℃でラジカル重合を行った。
【0095】
約1時間経過したとき、ラジカル重合が進行して、反応混合物の粘度が上昇し始めた。そのまま、8時間重合を続けた後、約40℃まで冷却し、再び、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.20gを加え、70℃に再度加熱して、更に、8時間後重合を行った。この後、約40℃まで冷却し、酢酸エチル295gを加え、全体が均一になるまで攪拌混合して、架橋性ポリマーBの酢酸エチル溶液(濃度15重量%)を得た。
【0096】
この後、製造例1と全く同様にして、得られた架橋性ポリマーを析出、濾別、乾燥させて、架橋性ポリマーBを得た。このようにして得られた架橋性ポリマーBは純白色粉状で、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は314000、数平均分子量は160000であった。
【0097】
製造例3
(架橋性ポリマーC(重量平均分子量347000、ヒドロキシエチルメタクリレートモノマー成分5重量%及び3−オキセタニル基含有モノマー成分20重量%)の製造)
製造例1と同様にして、メチルメタクリレート48.0g、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート32.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.0g、酢酸エチル158g、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.16gを投入し、窒素ガスを導入しながら、30分間攪拌混合した後、70℃でラジカル重合を行った。
【0098】
約1時間経過したとき、ラジカル重合が進行して、反応混合物の粘度が上昇し始めた。そのまま、8時間重合を続けた後、約40℃まで冷却し、再び、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル0.16gを加え、70℃に再度加熱して、更に、8時間後重合を行った。この後、約40℃まで冷却し、酢酸エチル295gを加え、全体が均一になるまで攪拌混合して、架橋性ポリマーCの酢酸エチル溶液(濃度15重量%)を得た。
【0099】
この後、製造例1と全く同様にして、得られた架橋性ポリマーを析出、濾別、乾燥させて、架橋性ポリマーCを得た。このようにして得られた架橋性ポリマーCは純白色粉状で、GPCによる分子量測定の結果、重量平均分子量は347000、数平均分子量は166000であった。
【0100】
実施例1
架橋性ポリマーA10gを酢酸エチル90gに加え、室温で攪拌して、均一な架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマー溶液に架橋剤として多官能イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダククト体、酢酸エチル溶液、固形分25%、日本ポリウレタン工業(株)製コロネートHL)1.02gを加え、室温で攪拌して溶解させた。
【0101】
このようにして得られた架橋剤を含む架橋性ポリマーの溶液を基材ポリエチレン樹脂多孔質フィルム(膜厚16μm、空孔率40%、通気度300秒/100cc、突刺し強度3.0N)の両面にワイヤーバー(#20)にて塗工した後、50℃で加熱乾燥して、酢酸エチルを揮散させ、かくして、片面当たりの塗布厚み2.5μm、塗布密度3.0g/m2 で架橋性ポリマーを担持させてなる架橋性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。次いで、この架橋性ポリマー担持多孔質フィルムを50℃の恒温器に48時間投入して、多孔質フィルムに担持させた上記架橋性ポリマー中のヒドロキシエチルメタクリレート成分を上記架橋剤(多官能イソシアネート)と反応させ、上記架橋性ポリマーを一部、架橋させて、かくして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は35%であった。
【0102】
前記参考例1で得た負極シート、上記反応性ポリマー担持多孔質フィルム及び前記参考例1で得た正極シートをこの順序に積層し、温度80℃、圧力5kg/cm2 で1分間プレス圧着して、セパレータ/電極積層体を得た。アルミニウムラミネートパッケージ内にこのセパレータ/電極積層体を仕込み、1.0モル/L濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(重量比1/1)混合溶媒からなる電解液を注入した後、パッケージを封口した。この後、70℃で7時間加熱して、上記反応性ポリマーをカチオン重合させ、架橋させて、電極シートを多孔質フィルム(セパレータ)に接触すると共に、電解液を一部、ゲル化させて、ラミネートシール型電池を得た。
【0103】
この電池の2CmA放電容量は、参照電池の放電容量の95%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.30N/cm、負極では0.15N/cmであった。
【0104】
実施例2
実施例1において、架橋性ポリマーAに代えて、架橋性ポリマーBを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は15%であった。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ラミネートシール型電池を得た。この電池の2CmA放電容量は、参照電池の放電容量の97%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.22N/cm、負極では0.09N/cmであった。
【0105】
実施例3
実施例1において、架橋性ポリマーAに代えて、架橋性ポリマーCを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応性ポリマー担持多孔質フィルムを得た。この反応性ポリマー担持多孔質フィルムにおいて、反応性ポリマーの不溶分率は22%であった。次に、この反応性ポリマー担持多孔質フィルムを用いて、実施例1と同様にして、ラミネートシール型電池を得た。この電池の2CmA放電容量は、参照電池の放電容量の96%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.28N/cm、負極では0.12N/cmであった。
【0106】
比較例 I
ポリ(フッ化ビニリデン/へキサフルオロプロピレン)共重合体(エルフアトケム製カイナー(Kynar)2801)10gをN−メチル−2−ピロリドン90gに溶解させて、10重量%濃度のポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液をポリエチレン樹脂多孔質フィルム(膜厚16μm、空孔率40%、通気度300秒/100cc、突刺し強度3.0N)の両面にワイヤーバー(#20)にて塗工した後、60℃で加熱乾燥して、N−メチル−2−ピロリドンを揮散させ、かくして、両面にポリ(フッ化ビニリデン/へキサフルオロプロピレン)共重合体を担持させたポリエチレン樹脂多孔質フィルムを得た。
【0107】
前記参考例1で得た負極シート、上記ポリ(フッ化ビニリデン/へキサフルオロプロピレン)共重合体を担持させた多孔質フィルム及び前記参考例1で得た正極シートをこの順序に積層し、温度80℃、圧力5kg/cm2 で1分間プレス圧着して、セパレータ/電極積層体を得た。アルミニウムラミネートパッケージ内にこのセパレータ/電極積層体を仕込み、1.0モル/L濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(重量比1/1)混合溶媒からなる電解液を注入した後、パッケージを封口して、ラミネートシール型電池を得た。
【0108】
この電池の2CmA放電容量は、参照電池の放電容量の70%であった。また、この電池を分解して、電極とセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.20N/cm、負極では0.09N/cmであった。
【0109】
比較例2
比較例1において、ポリ(フッ化ビニリデン/へキサフルオロプロピレン)共重合体溶液の濃度を5重量%とした以外は、比較例1と同様にして、ラミネートシール型電池を得た。この電池の2CmA放電容量は、参照電池の放電容量の93%であった。また、この電池を分解して、電極シートとセパレータとの間の接着力を測定したところ、正極では0.05N/cm、負極では0.0N/cmであった。
Claims (13)
- イソシアネート基に対して反応し得る反応性基とカチオン重合性官能基とを分子中にそれぞれ複数有する架橋性ポリマーを多官能イソシアネートと反応させ、一部、架橋させてなる反応性ポリマーを基材多孔質フィルムに担持させてなることを特徴とする電池用セパレータのための反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- カチオン重合性官能基が3−オキセタニル基とエポキシ基とから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- 架橋性ポリマーが3−オキセタニル基を有するラジカル重合性モノマーとエポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとから選ばれる少なくとも1種のカチオン重合性官能基を有するラジカル重合性モノマーとイソシアネート基に対して反応し得る反応性基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとのラジカル共重合体である請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- 架橋性ポリマーが全モノマー量に基づいて3−オキセタニル基を有するラジカル重合性モノマー及び/又はエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー5〜50重量%とイソシアネート基に対して反応し得る反応性基を有するラジカル重合性モノマー0.1〜10重量%と他のラジカル重合性モノマーとのラジカル共重合体である請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- 反応性ポリマーが不溶分率5〜80%を有するものである請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- イソシアネート基に対して反応し得る反応性基を有するラジカル重合性モノマーがヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである請求項3又は4に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- 基材多孔質フィルムが厚み3〜50μm、空孔率20〜95%のものである請求項1に記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルム。
- 請求項1から10のいずれかに記載の反応性ポリマー担持多孔質フィルムに電極を積層して、電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を得、この電極/反応性ポリマー担持多孔質フィルム積層体を電池容器内に仕込んだ後、カチオン重合触媒を含む電解液を上記電池容器内に注入して、少なくとも多孔質フィルムと電極との界面の近傍にて、上記反応性ポリマーの少なくとも一部を電解液中で膨潤させ、又は電解液中に溶出させ、カチオン重合させて、電解液の少なくとも一部をゲル化させて、多孔質フィルムと電極を接着することを特徴とする電池の製造方法。
- カチオン重合触媒がオニウム塩である請求項11に記載の電池の製造方法。
- 電解液がカチオン重合触媒を兼ねる電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム及びテトラフルオロホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項11に記載の電池の製造方法。
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