JP2004285929A - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents

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岳 桑原
Eiji Ogawa
永司 小川
Shunsuke Takeguchi
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Abstract

【課題】耐スカッフィング性、耐摩耗性に優れ、互いに滑り接触して摺動するカムおよびカムフォロワを有する内燃機関の動弁装置を提供する。
【解決手段】カムシャフト4およびこれと摺動するカムフォロワ3を備える内燃機関の動弁装置1であって、カムシャフト4のカム2およびカムフォロワ3の少なくともいずれかの摺動部分21,31が化学エッチングによる空孔を有していることにより、上記課題を解決する。この空孔は、動弁装置1の作動時に、油だまりとして機能するため、作動時の油膜切れを防ぐ。そのため、接触面圧を調整して耐スカッフィング性、耐摩耗性に優れたカムおよびカムフォロワを有する内燃機関の動弁装置が提供できる。この空孔の合計面積は、摺動部分の面積に対して10〜30%であることが好ましい。空孔は、直径が2μm以上50μm以下であり、深さが1μm以上15μm以下あることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に用いられるカムシャフトおよびその相手部材であるカムフォロワを備える動弁装置に関し、詳しくは、摺動特性に優れる内燃機関の動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関(エンジン)の動弁装置として、カム軸に2種類のカムを備えたカムシャフト、一方のカムと摺動接触(滑り接触)するカムフォロワ(スリッパフォロワ)、および、他方のカムと転がり接触するカムフォロワ(ローラフォロワ)、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
各カムフォロワに摺動特性を付与するために、材料、表面処理・加工法等が検討されている。例えば、転がり接触するカムフォロワの表面処理方法として、その金属表面に(イ)水蒸気処理により被膜を形成する方法、(ロ)リン酸塩被膜処理する方法(例えば、特許文献2、3参照)、(ハ)ショットピーニング(バレル研磨)を行う方法(例えば、特許文献2、4、5参照)等が知られている。
【0004】
このうち、(イ)水蒸気処理により被膜を形成する方法や(ロ)リン酸塩被膜処理する方法によると、金属表面に形成された微細なポーラス状の被膜に油を保持させたり、金属表面に形成された粒子間に油を保持することができる。そうして被膜の潤滑性が向上することにより、カムフォロワの耐摩耗性、耐焼付性を向上させることができる。また、(ハ)ショットピーニングによると、粒子を金属表面にあてて、金属表面に凹凸を形成させることにより、この凹凸に油を保持することができる。このことにより、(イ)、(ロ)の場合と同様に、カムフォロワに潤滑性、耐摩耗性、耐焼付性を付与している。
【0005】
その他、(ニ)カムフォロワの表面にレーザーにより凹部を形成し、この凹部に油を保持させる方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】
特開2001−240948号公報
【特許文献2】
特開昭61−124581号公報
【特許文献3】
特開平10−281257号公報
【特許文献4】
特許第2634496号明細書
【特許文献5】
特開2001−254808号公報、0016段落、0017段落
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(イ)、(ロ)の方法により形成された水蒸気被膜やリン酸塩被膜は、カムフォロワの耐摩耗性等の効果を長時間維持するために、カムフォロワへの密着性が必要とされるとともに、被膜自体の耐摩耗性も必要となる。また、カムフォロワが摺動する際の衝撃や疲労により、被膜が剥離する場合がある。
【0007】
(ハ)の方法により形成されたカムフォロワの金属表面は、加工時に表面全体にグリッドがあたるため、全体的にうねりを持った形状となる。そのため、この処理がされたカムフォロワは、摺動時の初期段階において局部的に金属同士の接触面圧が上昇し、焼き付きや、アブレシブ摩耗を起こしやすい。
【0008】
また、上述の各特許文献に記載のカムフォロワは、転がり接触するタイプであるが、カムおよびこれと滑り接触するタイプのカムフォロワは、油による潤滑下において、その摺動に耐え得るよう、極めて優れた摺動特性が求められている。
【0009】
一方、(ニ)の方法によりカムフォロワに凹部を形成した場合には、レーザー光により凹部の周囲に環状に微細な凸部が形成される。この微細な凸部は相手部材と摩擦されやすく、耐久性の面で問題がある。そのため、この微細凸部を形成しにくくするためにカムフォロワ母材に硬質炭素被膜を形成したり、形成された微細凸部を除去するためにレーザー光照射後に研磨を行うことが必要であった。
【0010】
そこで、本発明は、こうした問題点を解決し、上記の水蒸気処理、リン酸塩被膜処理、ショットピーニング等を施したカムフォロワを用いた場合よりも、さらに苛酷な境界潤滑条件下においても、優れた耐摩耗性、耐スカッフィング性を示す滑りタイプのカムフォロワおよびカムを有する内燃機関の動弁装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の内燃機関の動弁装置は、カムシャフトおよびこれと摺動するカムフォロワを備える内燃機関の動弁装置であって、前記カムシャフトのカムおよび前記カムフォロワの少なくともいずれかの摺動部分が化学エッチングによる空孔を有していることに特徴を有する。
【0012】
この発明によれば、カムおよび/またはカムフォロワの摺動部分が有する空孔(化学エッチングによるエッチピット)が、内燃機関の作動時に、油を保持する油だまりとして機能する。そのため、カムおよび/またはカムフォロワ表面の油膜切れを防止し、焼き付きや摩耗の発生を防ぐことができる。その結果、耐スカッフィング性、耐摩耗性を向上させることができる。また、本発明の動弁装置におけるカムおよび/またはカムフォロワは、硬質被膜が形成されていないために膜が剥離し、剥離した部分がアブレシブ摩耗の起点となるような問題がない。さらに、化学エッチングによると、摺動部分が全体的にうねりを持った形状とはならないため、局部的に面圧がかかることがなく、局所的な摩耗等が防止される。そのため、長期間の苛酷な境界潤滑条件下における使用に適した内燃機関の動弁装置を提供できる。また、化学エッチングによると、周囲に微細な凸部が形成されることなく空孔を形成することができ、摺動面に硬質被膜を形成する必要がなく、また、研磨して凸部を除去せずにすむ。そのため、簡便な工程で上述の性能を有する内燃機関の動弁装置を提供できる。
【0013】
上記本発明の内燃機関の動弁装置において、前記空孔の合計面積は、前記摺動部分の面積に対して10〜30%であることに特徴を有する。この発明によれば、空孔が油だまりとして十分に機能するため、各部材の表面を潤滑させることができる。また、相手部材と摺動する部分の面積が十分にあるため、面圧が上昇しにくい。そのため、動弁装置のカムおよび/またはカムフォロワに焼き付きや摩耗が生じにくくなる。
【0014】
上記本発明の内燃機関の動弁装置において、前記空孔は、直径が2μm以上50μm以下であることに特徴を有する。この発明によれば、1の空孔によって摺動する部分の面積が極端に減少することがないため、カムやカムフォロワの表面の摺動部分に焼き付きや摩耗が生じにくくなる。
【0015】
上記本発明の内燃機関の動弁装置において、前記空孔は、深さが1μm以上15μm以下であることに特徴を有する。この発明によれば、カムとカムフォロワの間で繰り返し荷重がかかっても、カムおよびカムフォロワが疲労しにくい。そして、空孔から生ずるクラックによるピッチング摩耗が生じにくくなる。
【0016】
上記本発明の内燃機関の動弁装置において、前記化学エッチングは、リン酸を用いて行われることに特徴を有する。この発明によれば、リン酸を用いることにより、上述の機能を有する空孔を簡便に形成させることができる。なお、化学エッチングは、対象となる部分をエッチング液に浸漬し、取り出した後に洗浄することにより処理が完了するため、従来の各手法に比べて簡便に行うことができる。
【0017】
上記本発明の内燃機関の動弁装置において、化学エッチングがなされる前記カムシャフトと前記カムフォロワとのいずれかの摺動部分は、均一な基地組織からなることに特徴を有する。この発明によれば、均一な基地組織からなる摺動部分が化学エッチングされるため、摺動部分全体に平均的に空孔が形成される。そのため、摺動部分において、油を保持する性能、潤滑性、耐焼付性、耐スカッフィング性、耐摩耗性等に偏りがなく、優れた性能を有するカムおよび/またはカムフォロワが提供される。そのため、長期間の使用に適した内燃機関の動弁装置を提供できる。
【0018】
上記課題を解決する本発明の内燃機関の動弁装置に用いられるカムは、摺動部分が化学エッチングによる空孔を有していることに特徴を有する。この発明によれば、カムの摺動部分に備えられる空孔が、内燃機関としての作動時に、油を保持する油だまりとして機能するため、この摺動部分の耐スカッフィング性、耐摩耗性を向上させることができる。
【0019】
さらに、上記課題を解決する内燃機関の動弁装置に用いられるカムフォロワは、摺動部分が化学エッチングによる空孔を有していることに特徴を有する。この発明によれば、カムフォロワの摺動部分に備えられる空孔が、内燃機関としての作動時に、油を保持する油だまりとして機能するため、この摺動部分の耐スカッフィング性、耐摩耗性を向上させることができる。
【0020】
また、これらの本発明のカムおよびカムフォロワは、その摺動部分の空孔を上記したような所定の面積率、直径、深さとすることにより、優れた耐スカッフィング性、耐摩耗性を有するものとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の内燃機関の動弁装置について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の内燃機関の動弁装置1において、カムシャフト4が備えるカム2が相手部材であるカムフォロワ3に接触する態様を示す斜視図である。図1(b)は、本発明の内燃機関の動弁装置1が備えるカムシャフト4を示す正面図である。図2(a)は、本発明の摺動部分21に空孔22が形成されたカム2の一例を示す斜視図であり、図2(b)は、本発明の摺動部分31に空孔32が形成されたロッカーアーム9形式のカムフォロワ3の一例を示す斜視図である。なお、カム2およびカムフォロワ3の摺動部分21、31については、摺動面、接触摺動面ともいう。
【0023】
図1(a)に示すように、本発明の内燃機関の動弁装置1は、少なくともカム2およびこれと接触し、摺動するカムフォロワ3を有している。そして、図2に示すように、カム2の摺動面21と、カムフォロワ3の摺動面31との少なくともいずれかが化学エッチングにより処理された微細な空孔22、32を有している。
【0024】
この内燃機関の動弁装置1は、通常、カムシャフト4と2種類のカムフォロワ3、7で構成される(図1(a)参照)。カムシャフト4は、相手部材3、7との接触形態が異なる複数のカム2、6をカム軸5に備えるものであり、対応する相手部材であるカムフォロワ3に滑り接触するカム2と、対応する相手部材であるカムフォロワ7に転がり接触するカム6とを有している(図1(b)参照)。カム2は、カムシャフト4がカム軸5を中心にして回転することによりカムフォロワ3と滑り接触する。カム2と滑り接触するカムフォロワ3は、スリッパフォロワ等とも呼ばれる。カム6と転がり接触するカムフォロワ7は、ローラフォロワ等とも呼ばれる。
【0025】
まず、滑り接触するカムフォロワ3の摺動面31に、化学エッチングにより空孔32を形成した場合について説明する。この摺動面31に形成された数μmピッチの空孔32は、各部材の摺動時に、油だまりとして機能するものである。このように、内燃機関の動弁装置1の作動時に、空孔32が油だまりとして機能するため、接触摺動面31が油を保持し、境界潤滑条件のような過酷な条件下において油膜切れを防止するとともに、焼き付きや摩耗の発生を防ぐものである。そのため、カムフォロワ3の摺動面31は、耐摩耗性、耐スカッフィング性に優れたものとなる。
【0026】
このように、本発明の内燃機関の動弁装置1においては、カムフォロワ3の摺動面31を平滑に維持し、カムフォロワ3の摺動面31に直接空孔32を形成することにより、接触摺動面31において局部的に面圧が上昇することにも耐えられる構造となっている。
【0027】
カムフォロワ3母材の摺動面31の金属組織(基地組織)は、均一に形成されることが好ましい。金属組織を均一にすることにより、化学エッチング処理によって均一に金属表面が腐食され、空孔32が摺動面31に平均的に存在することとなる。従って、空孔32が油だまりとして油を均一に保持するため、耐摩耗性、耐スカッフィング性を向上させることができる。一方、金属組織が均一に形成されていない場合には、化学エッチングによる腐食の程度が各部分によってばらつくこととなり、形成される空孔32の大きさや位置もばらつき、油を保持する機能が摺動面31全体として不均一となるため、耐摩耗性や耐スカッフィング性を良好に向上させることができなくなる。
【0028】
カムフォロワ3の摺動面31の金属組織を均一に形成するためには、その母材に熱処理(浸炭焼入、高周波焼入、油焼入等)を行ったり、焼鈍、焼きならし等を行うことができる。また、金属組織が均一であることは、顕微鏡による組織観察等により確認することができる。
【0029】
このように金属組織を均一に形成したカムフォロワ3の摺動面31には、化学エッチング処理前に表面粗さRa0.05〜0.2μm程度になるまで研磨を行うことが好ましい。このように研磨して表面を平滑にすることにより、エッチピット形成を均一化させることができる。
【0030】
次いで、化学エッチングの態様について説明する。
【0031】
化学エッチング処理によると、後述するように、カムフォロワ3に所定の大きさ(形状)の空孔32を簡便に形成することができる。
【0032】
化学エッチングは、例えば、金属を腐食させる溶液にカムフォロワ3の接触摺動面31を浸漬させることにより行う。金属を腐食させる溶液としては、リン酸溶液、クロム酸溶液、シュウ酸溶液等が用いられるが、このうち、リン酸水溶液が好ましく用いられる。
【0033】
リン酸水溶液による化学エッチング処理後は空孔32の表面に0.1μm程度の薄い被膜が形成されているが、そのままの状態でカムフォロワ3として使用してもよい。エッチングにより空孔32に形成される薄い被膜は軟質であるので、動弁装置を作動させた場合に、初期なじみの段階でこの被膜がほぼ摩耗剥離されてしまうためである。そして、空孔32に薄い被膜が形成されたカムフォロワ3であっても、後述する適正な深さ等を有する空孔32が形成されていれば、良好な保油性を有し、耐摩耗性、耐スカッフ性に優れたものとなる。なお、表面に形成された薄い被膜は、クロム酸などの溶液により除去することが可能である。本発明の内燃機関の動弁装置1に、空孔32から薄い被膜を除去したカムフォロワ3を使用してもよいことはもちろんである。
【0034】
リン酸水溶液による化学エッチングについて具体的に説明する。
【0035】
後述する空孔32の形状を得るためには、化学エッチングに用いるリン酸水溶液の濃度、温度、エッチング処理時間が深く関係する。リン酸水溶液は、濃度が、全酸度20〜50ポイント程度、遊離酸度2〜7ポイント程度のものが用いられる。ここで、全酸度とは、リン酸水溶液10mlをフェノールフタレインを指示薬として0.1mol/l濃度の水酸化ナトリウム液で中和滴定したとき滴定値(ml数)をポイントとしたものをいう。また、遊離酸度とは、ブロムフェノールブルーを指示薬とする同様の中和滴定値(ml数)をポイントとしたものをいう。また、リン酸水溶液は、90〜100℃程度に加熱したものが用いられる。このリン酸溶液に1〜5分程度カムフォロワ3母材を浸漬する。化学エッチング後は、通常、湯洗によりカムフォロワ3母材が洗浄される。
【0036】
リン酸を用いてカムフォロワ3に化学エッチングを施すには、例えば、以下のように行う。SCM415の材質により構成されたバルブリフタ用シム(カムフォロワ)母材に浸炭焼入を行い、均一な組織としたシムを用いる。リン酸水溶液(濃度:全酸度30ポイント、遊離酸度3.5ポイント)を94℃に加熱し、その中にシム母材を5分間浸漬する。その後、リン酸水溶液からシム母材を取り出し、湯洗を行う。
【0037】
次いで、カムフォロワ3の摺動面31に形成した空孔32の形状について説明する。
【0038】
ここで、摺動部分31全体の面積に対する空孔32の合計面積の割合を空孔32の面積率という。空孔32の面積率は、摺動面31に対して、10〜30%とする。空孔32の面積率が30%を超えると、摺動面31における平滑な面、すなわち相手部材であるカム2と摺動する面の面積が減ってしまい、面圧の上昇を招き、焼き付きあるいは摩耗につながる可能性がある。一方、空孔32の面積率が10%以下となると、空孔32が油だまりとして実質的に機能せず、摺動部分を潤滑させる効果が発揮できない。空孔32の面積率は、好ましくは10〜30%未満、より好ましくは15〜25%、最も好ましくは20%程度である。なお、この面積率は、直径5μm以上、深さ2μm以上の空孔32について求めたものである。
【0039】
空孔32の直径は、2μm以上50μm以下とする。空孔32の直径が50μmを超えると、平滑面、すなわち相手と摺動する摺動面積が減ってしまい面圧の上昇を招き、焼き付きあるいは摩耗につながる可能性がある。空孔32の直径は、好ましくは5〜30μm、より好ましくは5〜10μmである。ここで、直径とは、空孔32を円近似した場合の直径をいう。
【0040】
空孔32の深さは、1μm以上15μm以下とする。空孔32の深さが15μmを超えると、カムフォロワ3は、カム2との摺動時に発生する繰り返し荷重による疲労に耐えることができない。そのため、カムフォロワ3は、空孔32を基点とした微細クラックが発生し易く、ピッチング摩耗が生じやすくなる。空孔32の深さは、好ましくは2〜10μm、より好ましくは2〜5μmである。ここで、深さとは、空孔32の最も深い位置から摺動面31までの距離をいう。
【0041】
図3は、本発明のカムフォロワ3に形成された空孔(エッチピット)32を有する摺動面31の表面状態を示す電子顕微鏡写真(1500倍)である。図4は、本発明のカムフォロワ3に形成された空孔(エッチピット)32を有する摺動面31の切断面を示す電子顕微鏡写真(1500倍)である。これらの図からわかるように、本発明のカムフォロワ3は、上述の所定の直径、深さを有する空孔が形成されている。
【0042】
以上説明したように、本発明のカムフォロワ3は、化学エッチングによる所定の空孔32を有することにより、耐摩耗性、耐スカッフィング性に優れたものとなる。カムフォロワ3としては、種々の金属材料を用いることができ、特に限定されないが、具体的には、鉄系鋳鉄材、鉄鋼材、鉄系焼結材等を用いることができる。また、カムフォロワ3は、バルブリフタ形式、ロッカーアーム形式のいずれにも使用することができ、また、バルブリフタ用シムや、タペット、シフタ、図2(b)に示すようなロッカーアーム9用スリッパチップ3のいずれにも使用することができる。
【0043】
上述のカムフォロワ3への化学エッチングを本発明の内燃機関の動弁装置1に用いられるカム2の摺動面21に施し、所定の空孔22を形成することにより、同様に耐摩耗性、耐スカッフィング性を向上させる作用が得られる。そして、カム2としては、種々の金属材料を用いることができ、特に限定されないが、具体的には、鉄系鋳鉄材、鉄鋼材、鉄系焼結材等を用いることができる。カム2を備えるカムシャフト4は、カムロブ部材2とシャフト部材5とが分割された形式、カムロブ部材2とシャフト部材5とが一体化した形式のどちらにも使用することができる。
【0044】
本発明の内燃機関の動弁装置1は、上述したカムフォロワ3または上述したカム2の少なくともいずれかを備えている。そのため、内燃機関の動弁装置1を作動させたときに、滑り接触するカム2およびカムフォロワ3のうちの少なくとも一方が良好に油を保持し、各部材にスカッフィングや焼き付きが生じにくく、耐久性、耐摩耗性に優れたものとなる。もちろん、本発明の内燃機関の動弁装置1は、カムフォロワ3およびカム2のそれぞれの摺動面に化学エッチングによる空孔を備えていてもよい。
【0045】
【実施例】
以下に、実施例と比較例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
SCM415を平板形状とし、浸炭焼入を行い、均一な組織の試験片母材とした。この試験片母材を95℃に加熱したリン酸水溶液(濃度:全酸度35ポイント、遊離酸度3.5ポイント)の中に3分間浸漬し、湯洗により洗浄した。このようにエッチングされた試験片は、エッチピット(空孔)の面積率が15〜25%であり、その直径が3〜10μm程度であり、深さが1〜5μm程度であった。
【0047】
(実施例2,3)
実施例1と同様の材料からなる試験片母材を表1に示す条件で化学エッチングすることにより、各試験片を得た。その結果、各試験片は、表1に示す面積率、直径、深さを有する空孔が形成されていた。
【0048】
(比較例1)
実施例1と同様の材料からなる試験片母材を表面研磨することにより、表面粗さRa0.1μmとした試験片を得た。
【0049】
(比較例2)
実施例1と同様の材料からなる試験片母材を水蒸気処理することにより試験片を得た。
【0050】
(比較例3)
実施例1と同様の材料からなる試験片母材をショットブラスト処理することにより試験片を得た。
【0051】
(比較例4,5)
実施例1と同様の材料からなる試験片母材を表1に示す条件で化学エッチングすることにより、各試験片を得た。その結果、各試験片は、表1に示す面積率、直径、深さを有する空孔が形成されていた。
【0052】
(評価方法および結果)
アムスラー型摩耗試験機を用いて耐スカッフィング性の評価を行った。図5に示すように、各実施例および各比較例の試験片を固定片81とし、別の鉄系焼結材からなるφ36×幅5mmの回転片82を所定の荷重83をかけて試験を行った。試験は、所定の荷重を500MPaから始めてスカッフが発生するまで40MPaずつ増加させ、試験片81にスカッフが発生したときの荷重をスカッフ限界面圧として表1、図6に示した。なお、潤滑油は10W−30エンジンオイルとし、この潤滑油温度を110℃とし、回転数を1500rpmと一定として試験を行った。
【0053】
表1および図6に示されるように、本発明の実施例による各試験片は、スカッフ限界面圧が極めて高く、耐スカッフィング性に優れたものである。一方、比較例による各試験片は、スカッフ限界面圧が低いため、実機エンジンに用いた場合に、耐スカッフィング性、耐摩耗性が劣ったものとなり、長期の使用には耐えられないものであった。
【0054】
【表1】
Figure 2004285929
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の内燃機関の動弁装置によれば、カムおよび/またはカムフォロワの摺動部分が有する空孔(化学エッチングによるエッチピット)が、内燃機関の作動時に、油を保持する油だまりとして機能する。そのため、カムおよび/またはカムフォロワ表面の油膜切れを防止し、焼付や摩耗の発生を防ぐことができる。その結果、耐スカッフィング性、耐摩耗性を向上させることができる。また、本発明の動弁装置におけるカムおよび/またはカムフォロワは、硬質被膜が形成されていないために、膜が剥離して剥離部分がアブレッシブ摩耗の起点となるような問題がない。なお、リン酸水溶液により化学エッチングした場合には、カムおよび/またはカムフォロワ表面に被膜が形成されるが、この被膜は軟質であり、動弁装置の作動初期段階で剥離されてほぼ無くなるため、従来のような問題はない。さらに、摺動部分が全体的にうねりを持った表面性状とはならないため、局部的に面圧がかかることがなく、局所的な摩耗等が防止される。そのため、長期間の苛酷な境界潤滑条件下における使用に適した内燃機関の動弁装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の動弁装置の一態様を示す斜視図である。
【図2】本発明のカムおよびカムフォロワの一態様を示す斜視図である。
【図3】本発明のカムフォロワの摺動面を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明のカムフォロワの表面付近の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例および比較例の評価に使用したアムスラー型摩耗試験機の原理図である。
【図6】本発明の実施例1〜3および比較例1〜5で得られた試験片のスカッフィング限界面圧の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内燃機関の動弁装置
2 カム(滑り接触用)
21 カムの摺動面
22 カムの空孔
3 カムフォロワ(滑り接触用)
31 カムフォロワの摺動面
32 カムフォロワの空孔
4 カムシャフト
5 カム軸
6 カム(転がり接触用)
7 カムフォロワ(転がり接触用)
81 固定片(試験片)
82 回転片
83 負荷荷重
9 ロッカーアーム

Claims (8)

  1. カムシャフトおよびこれと摺動するカムフォロワを備える内燃機関の動弁装置であって、
    前記カムシャフトのカムおよび前記カムフォロワの少なくともいずれかの摺動部分が化学エッチングによる空孔を有していることを特徴とする内燃機関の動弁装置。
  2. 前記空孔の合計面積は、前記摺動部分の面積に対して10〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の動弁装置。
  3. 前記空孔は、直径が2μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の動弁装置。
  4. 前記空孔は、深さが1μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  5. 前記化学エッチングは、リン酸を用いて行われることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  6. 化学エッチングがなされる前記カムシャフトと前記カムフォロワとのいずれかの摺動部分は、均一な基地組織からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関の動弁装置。
  7. 摺動部分が化学エッチングによる空孔を有していることを特徴とする内燃機関の動弁装置に用いられるカム。
  8. 摺動部分が化学エッチングによる空孔を有していることを特徴とする内燃機関の動弁装置に用いられるカムフォロワ。
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