JP3382326B2 - 鋳鉄製摺動部材 - Google Patents
鋳鉄製摺動部材Info
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- C22C37/00—Cast-iron alloys
- C22C37/06—Cast-iron alloys containing chromium
- C22C37/08—Cast-iron alloys containing chromium with nickel
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- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F01—MACHINES OR ENGINES IN GENERAL; ENGINE PLANTS IN GENERAL; STEAM ENGINES
- F01L—CYCLICALLY OPERATING VALVES FOR MACHINES OR ENGINES
- F01L1/00—Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear
- F01L1/12—Transmitting gear between valve drive and valve
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- F01L1/16—Silencing impact; Reducing wear
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- F01L1/00—Valve-gear or valve arrangements, e.g. lift-valve gear
- F01L1/02—Valve drive
- F01L1/04—Valve drive by means of cams, camshafts, cam discs, eccentrics or the like
- F01L1/047—Camshafts
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- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16H—GEARING
- F16H53/00—Cams ; Non-rotary cams; or cam-followers, e.g. rollers for gearing mechanisms
- F16H53/02—Single-track cams for single-revolution cycles; Camshafts with such cams
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- Gears, Cams (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は鋳鉄製摺動部材、特に、
高面圧下で使用される摺動部材に関する。 【０００２】 【従来の技術】従来、この種摺動部材として、摺動部で
あるカムの全外周領域またはノーズ部を含む半外周領域
をチル化した内燃機関用鋳鉄製カムシャフトが知られて
いる。 【０００３】 【発明が解決しようとする課題】このようなカムシャフ
トを高面圧下で使用する場合、ノーズ部の耐ピッティン
グ性および耐スカッフィング性が問題となる。 【０００４】この耐ピッティング性および耐スカッフィ
ング性を向上させるためには、ノーズ部のチル組織が、
遊離セメンタイトの析出量が多く、硬さの高い均一微細
組織であること、および鋳造後行われる熱処理温度６０
０℃程度のひずみ取り焼鈍によって基地組織の硬さが低
下しないことが必要である。 【０００５】本発明は前記に鑑み、組成を特定すること
によって前記要求を満たすことのできる摺動部を備えた
前記鋳鉄製摺動部材を提供することを目的とする。 【０００６】 【課題を解決するための手段】本発明に係る鋳鉄製摺動
部材は、３．０重量％≦Ｃ≦３．６重量％、１．６重量
％≦Ｓｉ≦２．４重量％、０．２重量％≦Ｍｎ≦１．５
重量％、０．５重量％≦Ｃｒ≦１．５重量％、１．０重
量％≦Ｎｉ≦３．０重量％、０．５重量％≦Ｍｏ≦１．
０重量％を含有すると共に、Ｂｉ、ＴｅおよびＣｅの三
種から選択される少なくとも一種のチル化促進元素ＥL
を０．０００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量％含有
し、残部がＦｅおよび不可避不純物よりなる鋳鉄より構
成され、摺動部がチル化され、その摺動部以外の部分は
チル化されていないことを特徴とする。 【０００７】 【作用】摺動部材の組成を前記のように特定すると、摺
動部のチル組織が、遊離セメンタイトの析出量が多く、
硬さの高い均一微細組織となる。また基地組織がマルテ
ンサイト化されると共に微細化されるので、その基地組
織が熱処理温度６００℃程度のひずみ取り焼鈍によって
硬さ低下を生じることがない。 【０００８】各化学成分の添加理由および含有量限定理
由は次の通りである。 【０００９】Ｃは、摺動部材の鋳造性を向上し、また摺
動部にチル組織を形成すると共にその品質を良好にする
ために用いられる。ただし、Ｃ含有量がＣ＜３．０重量
％では溶湯の流動性が低下し、一方、Ｃ＞３．６重量％
では黒鉛が晶出し易くなるためチル組織の品質が悪化す
る。 【００１０】Ｓｉは、チル組織の品質を良好にするため
に用いられる。ただし、Ｓｉ含有量がＳｉ＜１．６重量
％ではチル組織の深さが増すため摺動部材の抗折力が低
下し、一方、Ｓｉ＞２．４重量％では、Ｓｉが黒鉛化促
進元素であることから、チル組織の深さが浅くなる。 【００１１】Ｍｎは、チル組織の深さを十分に確保し、
またチル組織および基地組織を均一微細化し、その上黒
鉛の晶出を防止するために用いられる。ただし、Ｍｎ含
有量がＭｎ＜０．２重量％では、溶湯に過冷能を具備さ
せることができないので、チル組織の深さが浅くなると
共にチル組織および基地組織を均一微細化することがで
きず、一方、Ｍｎ＞１．５重量％では溶湯の流動性が低
下する。 【００１２】Ｃｒは、遊離セメンタイトの析出量を増加
させてチル組織の品質を良好にし、また基地組織を強化
するために用いられる。ただし、Ｃｒ含有量がＣｒ＜
０．５重量％では遊離セメンタイトの析出量が少なくな
り、また基地組織を強化することができず、一方、Ｃｒ
＞１．５重量％では、Ｃｒがチル化を促進する作用を有
することから、チル化が摺動部材の全外周領域に及ぶた
めその抗折力が低下し、また機械加工性が悪化する。 【００１３】Ｎｉは、基地組織をマルテンサイト化して
強化するために用いられる。ただし、Ｎｉ含有量がＮｉ
＜１．０重量％では基地組織をマルテンサイト化するこ
とができず、一方、Ｎｉ＞３．０重量％では加工中に摺
動部材に割れが発生する等加工性が低下する。 【００１４】Ｍｏは、遊離セメンタイトの強度を向上さ
せてチル組織の品質を良好にし、また基地組織を強化す
るために用いられる。ただし、Ｍｏ含有量がＭｏ＜０．
５重量％では遊離セメンタイトおよび基地組織を十分に
強化することができず、一方、Ｍｏ＞１．０重量％で
は、ＭｏがＣｒ同様にチル化を促進する作用を有するこ
とから、チル化が摺動部材の全外周領域に及ぶためその
抗折力が低下し、また機械加工性が悪化する。 【００１５】Ｂｉ、ＴｅおよびＣｅは、チル化促進元素
ＥL であって、チル組織の形成に寄与させると共にその
組織を均一微細化し、また黒鉛の晶出を抑制するために
用いられる。これらチル化促進元素ＥL は三種から選択
される少なくとも一種が添加される。したがって、チル
化促進元素ＥL として二種以上を添加する場合、それら
の総量が、０．０００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量
％の範囲に収められる。ただし、ＥL 含有量がＥL ＜
０．０００３重量％ではその添加の意義が失われ、一
方、Ｅ L ≧０．００１重量％では摺動部材の全外周領域
がチル化傾向となる。 【００１６】 【実施例】図１，２は、摺動部材としての内燃機関用鋳
鉄製カムシャフト１を示し、摺動部である各カム２のノ
ーズ部３を含む半外周領域Ａがチル化され、したがって
各カム２はチル組織Ｂを有する。摺動部以外の部分、即
ち、各カム２の半外周領域Ａを除く大部分の領域Ｃおよ
びジャーナル部４を含む軸部５はチル化されていない。
図中、６はオイル孔である。 【００１７】本実施例におけるカムシャフト１は、３．
０重量％≦Ｃ≦３．６重量％、１．６重量％≦Ｓｉ≦
２．４重量％、０．２重量％≦Ｍｎ≦１．５重量％、
０．５重量％≦Ｃｒ≦１．５重量％、１．０重量％≦Ｎ
ｉ≦３．０重量％、０．５重量％≦Ｍｏ≦１．０重量％
を含有すると共に、Ｂｉ、ＴｅおよびＣｅの三種から選
択される少なくとも一種のチル化促進元素ＥL を０．０
００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量％含有し、残部が
Ｆｅおよび不可避不純物よりなる鋳鉄より構成される。 【００１８】このようなカムシャフト１は、図３に示す
鋳型７を用いて鋳造される。その鋳型７は上型８と、下
型９と、両型８，９を閉じることによってそれら８，９
に挟持されるオイル孔形成用中子１０とよりなり、その
中子１０周りにカムシャフト成形用キャビティ１１が形
成される。キャビティ１１のカム成形領域１２におい
て、ノーズ部３を含む半外周領域Ａを成形する下型９の
一部はＦｅ系またはＣｕ系冷し金１３より形成されてい
る。 【００１９】鋳鉄組成の溶湯を調製し、その溶湯をキャ
ビティ１１に注入することによってカムシャフト１が鋳
造され、同時にカム２の前記半外周領域Ａが冷し金１３
により急冷されてチル化し、チル組織Ｂが形成される。
鋳造後、カムシャフト１には、熱処理温度を６００℃程
度に設定したひずみ取り焼鈍が施される。 【００２０】表１は、チル化促進元素ＥL としてＢｉを
用いたカムシャフト１の実施例（１）〜（３）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。表中、化学成分において、残部はＦｅ
および不可避不純物よりなり、これは以後の表において
同じである。またノーズ部３の組織において、「チル」
とは均一微細チル組織Ｂを意味し、これは以後の表にお
いて同じである。 【００２１】 【表１】 【００２２】表２は、チル化促進元素ＥL としてＴｅを
用いたカムシャフト１の実施例（４），（５）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。 【００２３】 【表２】 【００２４】表３は、チル化促進元素ＥL としてＣｅを
用いたカムシャフト１の実施例（６），（７）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。 【００２５】 【表３】【００２６】表４は、チル化促進元素ＥL としてＴｅお
よびＣｅの二種を用いたカムシャフト１の実施例
（８），（９）における組成、ノーズ部３の硬さ、ノー
ズ部３の組織および軸部５の硬さを示す。 【００２７】 【表４】 【００２８】表５は、チル化促進元素ＥL としてＢｉ、
ＴｅおよびＣｅの三種を用いたカムシャフト１の実施例
（１０），（１１）における組成、ノーズ部３の硬さ、
ノーズ部３の組織および軸部５の硬さを示す。 【００２９】 【表５】 【００３０】表６は、チル化促進元素ＥL としてＴｅを
用いたカムシャフト１の比較例（１）〜（５）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。 【００３１】 【表６】【００３２】表１〜５に示すように、各化学成分を前記
範囲内に収めたカムシャフト１の実施例（１）〜（１
１）において、各ノーズ部３の硬さＨＲＣはＨＲＣ≧５
４であると共にノーズ部３の組織は均一微細チル組織Ｂ
であり、その上、軸部５の硬さＨＲＣはノーズ部３のそ
れに比べて低く保たれている。 【００３３】表６に示すように、カムシャフト１の比較
例（１）〜（５）におけるチル組織はＴｅ含有に伴い微
細化されるが、比較例（１），（２）は、Ｃｒ、Ｎｉお
よびＭｏ含有量が前記範囲を逸脱しているので、基地組
織の強化を図れず、したがってノーズ部の硬さＨＲＣが
不均一となる。さらにＴｅ含有量が比較的多いので、カ
ムシャフト１の全外周領域がチル化傾向となる。 【００３４】カムシャフト１の比較例（３），（４）は
ＮｉおよびＭｏ含有量が、また比較例（５）はＭｏ含有
量がそれぞれ前記範囲を逸脱しているので、基地組織の
強化を図れず、したがってノーズ部の硬さＨＲＣが不均
一で、且つ低くなる。 【００３５】次に、カムシャフト１の実施例（５）をエ
ンジンの動弁系に組込んで、そのカム２の摺動特性を調
べた。動弁系としては、そのロッカアームにおけるカム
との摺擦部をスリッパ面形成体より構成したスリッパタ
イプ動弁系と、スリッパ面形成体をローラに代えたロー
ラタイプ動弁系が用いられた。 【００３６】スリッパ面形成体は、２．４重量％Ｃ、
０．８重量％Ｓｉ、０．５重量％Ｐ、０．３重量％Ｍ
ｎ、１３重量％Ｃｒ、２．８重量％Ｍｏ、０．１３重量
％Ｗ、０．１３重量％Ｖ、１．４重量％Ｎｉおよび残部
Ｆｅよりなる鋳鉄より構成され、またローラは高炭素ク
ロム軸受鋼（ＪＩＳ ＳＵＪ２）より構成された。さら
に、各カム２の外周面には、ロッカアームとのなじみ性
を良好にするため公知の表面処理、例えば水蒸気処理が
施されている。 【００３７】スリッパタイプ動弁系においては、各カム
２のスカッフィングが問題となるので、エンジン回転数
を４３００rpm に設定し、また各カム２におけるノーズ
部３に作用する面圧を変えて、ノーズ部３の耐スカッフ
ィング性を調べたところ、面圧１００kgｆ／mm2 におい
てもノーズ部３にはスカッフィングの発生が認められな
かった。 【００３８】一方、ローラタイプ動弁系においては、各
カム２のピッティングが問題となるので、エンジン回転
数を２０００rpm に設定し、また各カム２におけるノー
ズ部３に作用する面圧を変えて、ノーズ部３の耐ピッテ
ィング性を調べたところ、面圧１８０kgｆ／mm2 におい
てもノーズ部３にはピッティングの発生が認められなか
った。 【００３９】これらの事実から、実施例（５）に係るカ
ムシャフト１は、高面圧下において優れた摺動特性を発
揮することが判る。 【００４０】なお、本発明はカムシャフトに限らず、他
の摺動部材にも当然に適用される。 【００４１】 【発明の効果】本発明によれば、組成を前記のように特
定し、また摺動部をチル化すると共にその摺動部以外の
部分をチル化しないことによって、優れた耐スカッフィ
ング性および耐ピッティング性を有する等、摺動特性の
良好な鋳鉄製摺動部材を提供することができる。
高面圧下で使用される摺動部材に関する。 【０００２】 【従来の技術】従来、この種摺動部材として、摺動部で
あるカムの全外周領域またはノーズ部を含む半外周領域
をチル化した内燃機関用鋳鉄製カムシャフトが知られて
いる。 【０００３】 【発明が解決しようとする課題】このようなカムシャフ
トを高面圧下で使用する場合、ノーズ部の耐ピッティン
グ性および耐スカッフィング性が問題となる。 【０００４】この耐ピッティング性および耐スカッフィ
ング性を向上させるためには、ノーズ部のチル組織が、
遊離セメンタイトの析出量が多く、硬さの高い均一微細
組織であること、および鋳造後行われる熱処理温度６０
０℃程度のひずみ取り焼鈍によって基地組織の硬さが低
下しないことが必要である。 【０００５】本発明は前記に鑑み、組成を特定すること
によって前記要求を満たすことのできる摺動部を備えた
前記鋳鉄製摺動部材を提供することを目的とする。 【０００６】 【課題を解決するための手段】本発明に係る鋳鉄製摺動
部材は、３．０重量％≦Ｃ≦３．６重量％、１．６重量
％≦Ｓｉ≦２．４重量％、０．２重量％≦Ｍｎ≦１．５
重量％、０．５重量％≦Ｃｒ≦１．５重量％、１．０重
量％≦Ｎｉ≦３．０重量％、０．５重量％≦Ｍｏ≦１．
０重量％を含有すると共に、Ｂｉ、ＴｅおよびＣｅの三
種から選択される少なくとも一種のチル化促進元素ＥL
を０．０００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量％含有
し、残部がＦｅおよび不可避不純物よりなる鋳鉄より構
成され、摺動部がチル化され、その摺動部以外の部分は
チル化されていないことを特徴とする。 【０００７】 【作用】摺動部材の組成を前記のように特定すると、摺
動部のチル組織が、遊離セメンタイトの析出量が多く、
硬さの高い均一微細組織となる。また基地組織がマルテ
ンサイト化されると共に微細化されるので、その基地組
織が熱処理温度６００℃程度のひずみ取り焼鈍によって
硬さ低下を生じることがない。 【０００８】各化学成分の添加理由および含有量限定理
由は次の通りである。 【０００９】Ｃは、摺動部材の鋳造性を向上し、また摺
動部にチル組織を形成すると共にその品質を良好にする
ために用いられる。ただし、Ｃ含有量がＣ＜３．０重量
％では溶湯の流動性が低下し、一方、Ｃ＞３．６重量％
では黒鉛が晶出し易くなるためチル組織の品質が悪化す
る。 【００１０】Ｓｉは、チル組織の品質を良好にするため
に用いられる。ただし、Ｓｉ含有量がＳｉ＜１．６重量
％ではチル組織の深さが増すため摺動部材の抗折力が低
下し、一方、Ｓｉ＞２．４重量％では、Ｓｉが黒鉛化促
進元素であることから、チル組織の深さが浅くなる。 【００１１】Ｍｎは、チル組織の深さを十分に確保し、
またチル組織および基地組織を均一微細化し、その上黒
鉛の晶出を防止するために用いられる。ただし、Ｍｎ含
有量がＭｎ＜０．２重量％では、溶湯に過冷能を具備さ
せることができないので、チル組織の深さが浅くなると
共にチル組織および基地組織を均一微細化することがで
きず、一方、Ｍｎ＞１．５重量％では溶湯の流動性が低
下する。 【００１２】Ｃｒは、遊離セメンタイトの析出量を増加
させてチル組織の品質を良好にし、また基地組織を強化
するために用いられる。ただし、Ｃｒ含有量がＣｒ＜
０．５重量％では遊離セメンタイトの析出量が少なくな
り、また基地組織を強化することができず、一方、Ｃｒ
＞１．５重量％では、Ｃｒがチル化を促進する作用を有
することから、チル化が摺動部材の全外周領域に及ぶた
めその抗折力が低下し、また機械加工性が悪化する。 【００１３】Ｎｉは、基地組織をマルテンサイト化して
強化するために用いられる。ただし、Ｎｉ含有量がＮｉ
＜１．０重量％では基地組織をマルテンサイト化するこ
とができず、一方、Ｎｉ＞３．０重量％では加工中に摺
動部材に割れが発生する等加工性が低下する。 【００１４】Ｍｏは、遊離セメンタイトの強度を向上さ
せてチル組織の品質を良好にし、また基地組織を強化す
るために用いられる。ただし、Ｍｏ含有量がＭｏ＜０．
５重量％では遊離セメンタイトおよび基地組織を十分に
強化することができず、一方、Ｍｏ＞１．０重量％で
は、ＭｏがＣｒ同様にチル化を促進する作用を有するこ
とから、チル化が摺動部材の全外周領域に及ぶためその
抗折力が低下し、また機械加工性が悪化する。 【００１５】Ｂｉ、ＴｅおよびＣｅは、チル化促進元素
ＥL であって、チル組織の形成に寄与させると共にその
組織を均一微細化し、また黒鉛の晶出を抑制するために
用いられる。これらチル化促進元素ＥL は三種から選択
される少なくとも一種が添加される。したがって、チル
化促進元素ＥL として二種以上を添加する場合、それら
の総量が、０．０００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量
％の範囲に収められる。ただし、ＥL 含有量がＥL ＜
０．０００３重量％ではその添加の意義が失われ、一
方、Ｅ L ≧０．００１重量％では摺動部材の全外周領域
がチル化傾向となる。 【００１６】 【実施例】図１，２は、摺動部材としての内燃機関用鋳
鉄製カムシャフト１を示し、摺動部である各カム２のノ
ーズ部３を含む半外周領域Ａがチル化され、したがって
各カム２はチル組織Ｂを有する。摺動部以外の部分、即
ち、各カム２の半外周領域Ａを除く大部分の領域Ｃおよ
びジャーナル部４を含む軸部５はチル化されていない。
図中、６はオイル孔である。 【００１７】本実施例におけるカムシャフト１は、３．
０重量％≦Ｃ≦３．６重量％、１．６重量％≦Ｓｉ≦
２．４重量％、０．２重量％≦Ｍｎ≦１．５重量％、
０．５重量％≦Ｃｒ≦１．５重量％、１．０重量％≦Ｎ
ｉ≦３．０重量％、０．５重量％≦Ｍｏ≦１．０重量％
を含有すると共に、Ｂｉ、ＴｅおよびＣｅの三種から選
択される少なくとも一種のチル化促進元素ＥL を０．０
００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量％含有し、残部が
Ｆｅおよび不可避不純物よりなる鋳鉄より構成される。 【００１８】このようなカムシャフト１は、図３に示す
鋳型７を用いて鋳造される。その鋳型７は上型８と、下
型９と、両型８，９を閉じることによってそれら８，９
に挟持されるオイル孔形成用中子１０とよりなり、その
中子１０周りにカムシャフト成形用キャビティ１１が形
成される。キャビティ１１のカム成形領域１２におい
て、ノーズ部３を含む半外周領域Ａを成形する下型９の
一部はＦｅ系またはＣｕ系冷し金１３より形成されてい
る。 【００１９】鋳鉄組成の溶湯を調製し、その溶湯をキャ
ビティ１１に注入することによってカムシャフト１が鋳
造され、同時にカム２の前記半外周領域Ａが冷し金１３
により急冷されてチル化し、チル組織Ｂが形成される。
鋳造後、カムシャフト１には、熱処理温度を６００℃程
度に設定したひずみ取り焼鈍が施される。 【００２０】表１は、チル化促進元素ＥL としてＢｉを
用いたカムシャフト１の実施例（１）〜（３）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。表中、化学成分において、残部はＦｅ
および不可避不純物よりなり、これは以後の表において
同じである。またノーズ部３の組織において、「チル」
とは均一微細チル組織Ｂを意味し、これは以後の表にお
いて同じである。 【００２１】 【表１】 【００２２】表２は、チル化促進元素ＥL としてＴｅを
用いたカムシャフト１の実施例（４），（５）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。 【００２３】 【表２】 【００２４】表３は、チル化促進元素ＥL としてＣｅを
用いたカムシャフト１の実施例（６），（７）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。 【００２５】 【表３】【００２６】表４は、チル化促進元素ＥL としてＴｅお
よびＣｅの二種を用いたカムシャフト１の実施例
（８），（９）における組成、ノーズ部３の硬さ、ノー
ズ部３の組織および軸部５の硬さを示す。 【００２７】 【表４】 【００２８】表５は、チル化促進元素ＥL としてＢｉ、
ＴｅおよびＣｅの三種を用いたカムシャフト１の実施例
（１０），（１１）における組成、ノーズ部３の硬さ、
ノーズ部３の組織および軸部５の硬さを示す。 【００２９】 【表５】 【００３０】表６は、チル化促進元素ＥL としてＴｅを
用いたカムシャフト１の比較例（１）〜（５）における
組成、ノーズ部３の硬さ、ノーズ部３の組織および軸部
５の硬さを示す。 【００３１】 【表６】【００３２】表１〜５に示すように、各化学成分を前記
範囲内に収めたカムシャフト１の実施例（１）〜（１
１）において、各ノーズ部３の硬さＨＲＣはＨＲＣ≧５
４であると共にノーズ部３の組織は均一微細チル組織Ｂ
であり、その上、軸部５の硬さＨＲＣはノーズ部３のそ
れに比べて低く保たれている。 【００３３】表６に示すように、カムシャフト１の比較
例（１）〜（５）におけるチル組織はＴｅ含有に伴い微
細化されるが、比較例（１），（２）は、Ｃｒ、Ｎｉお
よびＭｏ含有量が前記範囲を逸脱しているので、基地組
織の強化を図れず、したがってノーズ部の硬さＨＲＣが
不均一となる。さらにＴｅ含有量が比較的多いので、カ
ムシャフト１の全外周領域がチル化傾向となる。 【００３４】カムシャフト１の比較例（３），（４）は
ＮｉおよびＭｏ含有量が、また比較例（５）はＭｏ含有
量がそれぞれ前記範囲を逸脱しているので、基地組織の
強化を図れず、したがってノーズ部の硬さＨＲＣが不均
一で、且つ低くなる。 【００３５】次に、カムシャフト１の実施例（５）をエ
ンジンの動弁系に組込んで、そのカム２の摺動特性を調
べた。動弁系としては、そのロッカアームにおけるカム
との摺擦部をスリッパ面形成体より構成したスリッパタ
イプ動弁系と、スリッパ面形成体をローラに代えたロー
ラタイプ動弁系が用いられた。 【００３６】スリッパ面形成体は、２．４重量％Ｃ、
０．８重量％Ｓｉ、０．５重量％Ｐ、０．３重量％Ｍ
ｎ、１３重量％Ｃｒ、２．８重量％Ｍｏ、０．１３重量
％Ｗ、０．１３重量％Ｖ、１．４重量％Ｎｉおよび残部
Ｆｅよりなる鋳鉄より構成され、またローラは高炭素ク
ロム軸受鋼（ＪＩＳ ＳＵＪ２）より構成された。さら
に、各カム２の外周面には、ロッカアームとのなじみ性
を良好にするため公知の表面処理、例えば水蒸気処理が
施されている。 【００３７】スリッパタイプ動弁系においては、各カム
２のスカッフィングが問題となるので、エンジン回転数
を４３００rpm に設定し、また各カム２におけるノーズ
部３に作用する面圧を変えて、ノーズ部３の耐スカッフ
ィング性を調べたところ、面圧１００kgｆ／mm2 におい
てもノーズ部３にはスカッフィングの発生が認められな
かった。 【００３８】一方、ローラタイプ動弁系においては、各
カム２のピッティングが問題となるので、エンジン回転
数を２０００rpm に設定し、また各カム２におけるノー
ズ部３に作用する面圧を変えて、ノーズ部３の耐ピッテ
ィング性を調べたところ、面圧１８０kgｆ／mm2 におい
てもノーズ部３にはピッティングの発生が認められなか
った。 【００３９】これらの事実から、実施例（５）に係るカ
ムシャフト１は、高面圧下において優れた摺動特性を発
揮することが判る。 【００４０】なお、本発明はカムシャフトに限らず、他
の摺動部材にも当然に適用される。 【００４１】 【発明の効果】本発明によれば、組成を前記のように特
定し、また摺動部をチル化すると共にその摺動部以外の
部分をチル化しないことによって、優れた耐スカッフィ
ング性および耐ピッティング性を有する等、摺動特性の
良好な鋳鉄製摺動部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】カムシャフトの要部斜視図である。
【図２】図１の２−２線断面図である。
【図３】鋳型の要部断面図である。
【符号の説明】
１ カムシャフト（摺動部材）
２ カム（摺動部）
Ｂ チル組織
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 昭48−59026（ＪＰ，Ａ)
特開 昭63−118049（ＪＰ，Ａ)
特開 平４−354847（ＪＰ，Ａ)
特開 平７−54096（ＪＰ，Ａ)
特開 平６−116677（ＪＰ，Ａ)
(58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名)
F01L 1/04
C22C 37/00
C22C 37/08
F16H 53/02
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 ３．０重量％≦Ｃ≦３．６重量％、１．
６重量％≦Ｓｉ≦２．４重量％、０．２重量％≦Ｍｎ≦
１．５重量％、０．５重量％≦Ｃｒ≦１．５重量％、
１．０重量％≦Ｎｉ≦３．０重量％、０．５重量％≦Ｍ
ｏ≦１．０重量％を含有すると共に、Ｂｉ、Ｔｅおよび
Ｃｅの三種から選択される少なくとも一種のチル化促進
元素ＥL を０．０００３重量％≦ＥL ＜０．００１重量
％含有し、残部がＦｅおよび不可避不純物よりなる鋳鉄
より構成され、摺動部がチル化され、その摺動部以外の
部分はチル化されていないことを特徴とする鋳鉄製摺動
部材。
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