JP3639901B2 - ラッシュアジャスタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等に使用されるラッシュアジャスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の吸気および排気バルブとカムやロッカーアームとの間に配設され、クリアランスを自動的に調節して、バルブ打音による騒音を防止させるラッシュアジャスタが知られており、かかるラッシュアジャスタは、近年、自動車用エンジンに広く普及されている。図2及び図3は、内燃機関に配設されるラッシュアジャスタの一例を示している。
【0003】
図2において、ロッカーアーム20の一端の下面凹部20aにラッシュアジャスタ10を構成するプランジャキャップ(プランジャ手段)の球状頭部14aが枢支され、ロッカーアーム20の他端下面はバルブ軸24に当接している。そして、ロッカーアーム20の上面中間部位には、カム22がロッカーアーム20とのクリアランス21を零に保ちつつ摺接し、カム22の回転に伴ってロッカーアーム20が揺動してバルブ軸24を押圧し、適宜バルブを開閉している。
【0004】
図3は、ラッシュアジャスタ10の断面図を示している。図3において、有底円筒状のボディ11にプランジャ(プランジャ手段)12が摺動自在に嵌入され、プランジャ12の底面とボディ11の底面の間に高圧室11aが形成されていて、その内部には作動油が充填されている。プランジャ12は内部に油溜室12aを、底面に油穴12bを有している。
【0005】
そしてプランジャキャップ14は、下縁開口端がプランジャ12に当接しつつ、下半部がボディ11に摺動自在に嵌入され、ボディ11との間に摺動面14bが形成されている。プランジャキャップ14の上半部14cは下半部より小径の円筒状をなし、その球状頭部14aはボディ11から突出して常時露出している。
【0006】
そして、高圧室11aに縮設されたスプリング16によって、プランジャ12とプランジャキャップ14が高圧室11aを拡大する方向に付勢されている。なお、プランジャキャップ14の内部にはセパレータ15が圧入されている。
プランジャ12の油穴12bには、ボールスプリング19によって油穴12bを外側から閉塞する方向に付勢されたボール18が係合し、ボールスプリング19とボール18とで一方向弁機構を構成して、油溜室12aから高圧室11aへのみ作動油を流入させている。
【0007】
図2において、スプリング16によって付勢された球状頭部14aは、クリアランス21が零になるまでロッカーアーム20をカム22側に押し上げる。このとき、油溜室12a内の作動油はボール18と油穴12b間の隙間を通って高圧室11aに流入する(図3)。
次に、カム22が回転してロッカーアーム20を押し下げると、バルブ軸24がロッカーアーム20によって押圧され、バルブ孔が開かれるとともに、プランジャキャップ14も下方に押圧され、プランジャ12がボディ11内を下方に移動しようとする(図3)。
【0008】
ところが、ボール18が油穴12bを閉塞して高圧室11aに油圧が発生するため、プランジャ12は下方に移動できず、ラッシュアジャスタ10はロッカーアーム20の支点として作用し、クリアランス21も零の状態に保たれる。
なお、ラッシュアジャスタ10の作動油は、エンジンの潤滑油の一部が循環されることによって供給されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ラッシュアジャスタ10は上記のような機能を有しているが、エンジンの作動中はプランジャキャップの球状頭部14aが常にロッカーアーム20の凹部20aに強圧されてこれに摺接し、さらにプランジャキャップの摺動面14bやプランジャ12の外面はボディ11の内面と絶えず摺動している。
【0010】
そこで、通常のガソリンエンジンに適用されるラッシュアジャスタの球状頭部14aやボディ11との摺動面14bには浸炭焼入れ処理を施して表面硬度を向上させ、耐摩耗性の改善および材料強度の向上が図られている。
しかしながら、上記したラッシュアジャスタをディーゼルエンジンに用いた場合、軽油の燃焼に伴ってエンジン内でパーティクルと呼ばれる多量のカーボン粒子が発生し易くなり、エンジンの潤滑油に上記カーボン粒子が不可避的に混入してしまう。そして、この潤滑油がラッシュアジャスタの作動油としてこれに供給された場合、球状頭部14aや摺動面14bに作動油中のカーボン粒子が入り込むことがある。
【0011】
これらのカーボン粒子は、部材間の潤滑を妨げて摩擦を増大させ、さらにカーボン粒子そのものが研磨剤となって、部材にかじりや異常摩耗を引き起こす可能性がある。特に、上記球状頭部14aはロッカーアーム20に常に押圧されて高い面圧を受けているため、その一部が激しく摩耗し、いわゆる面荒れと呼ばれる凹凸が発生するおそれがある。
【0012】
そして、上記の異常摩耗や面荒れが発生すると、バルブの開閉に伴って騒音や振動が増大するとともに、動弁系がスムーズに作動しなくなる。
このように、ディーゼルエンジンにラッシュアジャスタを用いた場合、浸炭焼入れ処理を施しただけでは、耐摩耗性はなお不十分な場合がある。
かかる異常摩耗や面粗れの発生を抑制するための手段としては、球状頭部14aの形状(寸法)を大きくし、球状頭部14aに加わる面圧を下げることがあげられる。しかしながら、その場合、球状頭部14aおよびラッシュアジャスタ全体が大きくなることでコストが高くなるのみならず、シリンダヘッド内のレイアウト設計に制約が加わってエンジン自体の性能の低下を招いてしまう。
【0013】
一方、上記した手段の他に、浸炭焼入れ処理に比べて、さらに表面硬度が高い窒化処理や硬質クロムメッキも知られている。これらの被膜は耐摩耗性を改善するためには有効であるものの、被膜を厚くすると大幅なコストアップを招くという問題がある。従って、実際には薄い被膜処理が施されているが、被膜にかかる面圧が小さい場合には耐摩耗性に優れているものの、局部的に大きな面圧がかかった場合は硬化層が薄く母材が柔らかいため、変形が発生し、異常摩耗が発生する。
【0014】
また、摺動面の潤滑性(なじみ)を向上させて摩耗を防止する方法として、固体潤滑皮膜、リン酸塩皮膜や、浸硫処理を部材表面に施すことも行われているが、上記したように局部的に高面圧がかかる過酷な条件下では有効であるとはいえない。
本発明は、ラッシュアジャスタにおける上記した問題を解決し、球状頭部およびラッシュアジャスタ全体を大型化することなく、耐摩耗性が特に要求されるディーゼルエンジン等にも用いることができるラッシュアジャスタの提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の本発明においては、前記プランジャ手段の球状頭部には、浸炭層と、この浸炭層に形成され、窒素を過飽和に固溶したCr層とから成る硬化層を備えていることを特徴とするラッシュアジャスタが提供される。
【0016】
好ましくは請求項2記載の発明のように、前記硬化層は、有効硬化深さ0.2〜0.5mmの前記浸炭層と厚み0.005〜0.020mmの前記窒素を過飽和に固溶したCr層とから成り、かつ、最表面の硬度がHv1500以上となっているのがよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のラッシュアジャスタは、プランジャ手段の球状頭部の最表面に形成された、硬度の高い、窒素を過飽和に固溶したCr層(以下、N過飽和Cr層という)によって耐摩耗性を著しく向上させ、その下層の浸炭層が過飽和Cr層に負荷された荷重を母材に適度に分散させる緩衝作用を有するとともに、N過飽和Cr層を支持することにより、N過飽和Cr層の変形・剥離を防止するものである。
【0018】
本発明に係るラッシュアジャスタの形状や構成は特に限定されず、既に図3を参照して説明したタイプのもの、すなわち、プランジャ手段がプランジャキャップとプランジャとに分割されたものでもよく、これらが一体に形成されたものでもよい。例えば、図3に示す前者の場合は、プランジャキャップ14の球状頭部14aに施される表面処理が従来のものと異なるだけで、形状や構造は従来のものと同じでよい。従って、本明細書全体に亘ってプランジャ手段と称する場合には、図3に示したようにプランジャキャップ14とプランジャ12とが分割されたタイプのものだけでなく、両者が一体となっているタイプも含む。
【0019】
ボディ11およびプランジャキャップ14に用いる材料は、後述する浸炭焼入れ処理を適切に行えるものであればよく、例えば、JISに規格するS17C鋼、SCM415鋼などの、冷間鍛造・浸炭焼き入れが可能な材料を使用することができる。
ここで、N過飽和Cr層および浸炭層から成る硬化層は、図3に示すように、少なくともプランジャキャップ14の球状頭部14aに形成されていることが必要である。球状頭部14aはロッカーアーム20と摺接・摺動し、激しく摩耗するおそれがあるからである。なお、球状頭部14aは、必ずしも頭部全体が半球状をなしている必要はなく、少なくともロッカーアーム20の下面凹部20aと摺接する部分のみが凹部形状に対応して球状をなしていればよい。
【0020】
上記処理は、球状頭部14aに施せば十分であるが、プランジャキャップ14の小径上半部14cの外周面に同じN過飽和Cr層及び浸炭層を有していても一向に差し支えない。
なお、球状頭部14aのみに上記処理を行うには、プランジャキャップ14をマスキング治具に取付ける等の方法があげられる。
【0021】
次に、浸炭層及びN過飽和Cr層の形成方法について説明する。本発明においては母材の外面に浸炭層が形成され、浸炭層の外側にN過飽和Cr層が形成されている。
先ず、浸炭層を形成させるには、プランジャキャップ14の外面を脱脂処理などによって前処理した後、必要に応じてその外面の必要箇所をマスキングし、例えばCO−CO2混合ガス、またはCO−H2−N2混合ガスから成る浸炭ガス中に試料を装入して(ガス浸炭法)、2〜3時間保持する。
【0022】
また、Cを含む固体浸炭材に試料を装入して加熱する固体浸炭法や、例えばNaCN、またはKCNから成る溶融塩中に試料を浸漬する液体浸炭法を用いることもできる。
浸炭処理温度は、例えばガス浸炭や固体浸炭では800〜1000℃の範囲に、液体浸炭では700〜900℃の範囲にすればよい。
【0023】
そして、上記した浸炭処理が施されたプランジャキャップに焼入れ処理を施し、所定の浸炭層が形成される。
浸炭焼入れ処理直後の浸炭層の有効硬化深さは特に限定されないが、0.20〜0.50mmの範囲とするのが好ましい。有効硬化深さが0.20mm未満であると、後述するN過飽和Cr層の効果が充分に発揮できず、また0.50mmを超えて厚くしてもN過飽和Cr層の効果が飽和して不経済となる。
【0024】
また、浸炭焼入れ処理直後の浸炭層の表面硬度も特に限定されないが、Hv650〜800の範囲とするのが好ましい。Hv650未満であると後述するN過飽和Cr層の効果が充分に発揮できず、Hv800を超えると浸炭層が割れやすくなるからである。
なお、有効硬化深さとは、表面からHv550以上となっている部分までの深さを示し、表面硬度とは、表面でのビッカース硬度を示す。
【0025】
そして、有効硬化深さの調整は浸炭時間を変化させて行なえばよく、また表面硬度の調整は焼き入れ温度あるいは焼戻し温度を変化させて行えばよい。
次に、浸炭層の外側にN過飽和Cr層を形成する。
なお、N過飽和Cr層を形成するに先立って、必要に応じて、浸炭層の表面から、例えばアルカリもしくは有機溶剤による洗浄またはアルコールによる拭き取り等により、油脂および異物を除去し、さらに、浸炭層の表面の酸化膜を酸洗いまたはイオンエッチングにより除去する。
【0026】
N過飽和Cr層は、窒素を過飽和に固溶したCr層であって、かつ、非晶質であり、非平衡状態にあるCr層ということができる。かかるN過飽和Cr層は、非平衡状態にある膜を容易に成膜することが可能な、反応性スパッタリング法により形成することができる。具体的には、真空チャンバ内に設けられた一対の電極の一方にプランジャキャップを配置し、他方に金属Crからなるターゲット材を配置する。そして、真空チャンバ内を真空ポンプで排気してから、不活性ガスとしてArガス及び反応性ガスとして窒素ガスを導入し、真空ポンプ内を真空度が10-2〜10-3Torrの低真空状態とする。その後、これらの電極間に直流高電圧を印加し、グロー放電により発生した不活性ガスイオンによりターゲット材のCr元素をスパッタリングする。このときスパッタされたCr元素は、窒素ガスと反応しながらプランジャキャップ表面に堆積し、かくしてN過飽和Cr層が形成される。
【0027】
N過飽和Cr層の厚さは特に限定されないが、5〜20μmの範囲とするのが好ましい。厚さが5μm未満であると耐摩耗性の改善効果が小であり、20μmを超えると耐摩耗性が飽和して不経済となるだけでなく、N過飽和Cr層が割れやすくなるからである。なお、N過飽和Cr層の厚さの調整は直流高電圧の印加時間を変化させて行えばよい。
【0028】
また、N過飽和Cr層の表面硬度も特に限定されないが、Hv1500〜2000の範囲とするのが好ましい。Hv1500未満であると耐摩耗性に劣り、Hv2000を超えるとN過飽和Cr層が割れやすくなるからである。なお、N過飽和Cr層の表面硬度の調整は、N過飽和Cr層を形成する際にチャンバ内の窒素ガス濃度を調整することにより、Cr層に固溶するN量を変化させて行なえばよい。
【0029】
上述のような被膜構成をとることによって、プランジャ手段の最表面には高硬度で耐摩耗性に優れたN過飽和Cr層が形成され、その下層には、N過飽和Cr層を支持してN過飽和Cr層の変形・剥離を防止し、N過飽和Cr層に負荷された荷重を母材に適度に分散させる浸炭層が形成されることになる。本明細書においては、これらN過飽和Cr層及び浸炭層をまとめて硬化層と称する。
【0030】
そして、この硬化層は、最表面の硬度はHv1500以上であることが好ましい。このような場合には、被膜の耐摩耗性・耐かじり性・耐焼き付き性がさらに向上し、N過飽和Cr層の変形・剥離の防止効果が大であるとともに、浸炭層による荷重の緩衝作用により、疲労強度もさらに向上するからである。
さらに、N過飽和Cr層を形成した後に、各種の後処理や最終仕上げ処理を行ってもよい。そして、上記処理を施したプランジャキャップは従来のプランジャキャップと同様にしてボディ11に組み込んでラッシュアジャスタ10とすればよい。
【0031】
【実施例】
実施例1,2,比較例1〜10
1.浸炭及び反応性スパッタリング処理
C:0.13〜0.20重量%を含む、JIS規格S17C鋼から成るプランジャキャップの外面に、炉内CO2:0.32%としたエンリッチガスを用いたガス浸炭法によって、処理温度970〜980℃で浸炭層を形成させた。浸炭層の厚さ(全有効硬化深さ)は浸炭時間を2〜3時間の間で変化させて調整した。さらに、試料を70℃の焼き入れ油に浸漬して急冷した。
【0032】
次に、上記した浸炭焼入れ処理材の外面に、前処理として酸化膜除去処理をした後、反応性スパッタリング法によってN過飽和Cr層を形成させた。N過飽和Cr層の厚さは高電圧印加時間を変化させて調整した。
なお、実施例1,2はいずれも、浸炭焼入れ処理直後の浸炭層の有効硬化深さが0.2mmである。
【0033】
また、比較例2を除く全ての比較例は、有効硬化深さが0.3mmで表面硬度がHv740〜750の浸炭層を形成させた後、浸炭層の外層にそれぞれ表2に記載した各種の表面処理を施した。例えば、比較例10では、浸炭層の外層に硬質クロムメッキ浴を用いて、厚さ10μm、表面硬度Hv900〜1000の硬質クロムメッキ層を形成させた。比較例2の中濃度浸炭層は有効硬化深さが0.7mmで表面硬度がHv800となっている。中濃度浸炭層とは従来行われている浸炭に比べて、浸炭層の炭素濃度が高いものをいう。
【0034】
2.処理後の金属組織
上記浸炭および反応性スパッタリング処理を行った実施例1の試料の断面を研磨・エッチングし、顕微鏡撮影を2つの倍率にて行ない、それらの結果を図1(a),(b)に示した。
3.表面硬度の測定
実施例1及び比較例1の試料について、試料表面のビッカ−ス硬度(Hv)を測定し、その結果を表2に示した。
【0035】
4.耐摩耗性評価
上記プランジャキャップをラッシュアジャスタに組み込み、このラッシュアジャスタを実際のディーゼルエンジンに取付けた。実際のディーゼルエンジンで使用しカーボン粒子が多量に混入したエンジンオイルを作動油とし、最高速連続運転を行った。
【0036】
そして、上記エンジンに要求される耐久条件(回転数、時間等)に応じて試験時間を設定し、プランジャキャップの球状頭部の面粗さ・かじり・焼き付き発生の有無およびその程度を面粗さ計によって測定し、各処理の効果を判断した。
要求される耐久終了時間まで達する前に不具合の発生したものは、途中で試験を打ち切り、別の供試品に組み替えて試験を行った。
【0037】
以上の結果を表2に示した。
【0038】
【表1】
Figure 0003639901
【0039】
【表2】
Figure 0003639901
【0040】
(1)表1及び2から明らかなように、プランジャキャップ外面に浸炭層およびN過飽和Cr層を備えた、表面硬度(Hv)が1500以上の硬化層が形成されている本発明のラッシュアジャスタは、異常摩耗が生じなかった。ただし、実施例1の試料では、異常摩耗は発生しなかったが、N過飽和Cr層の厚みが、耐摩耗性試験が終了した時点において、光学顕微鏡で確認することが困難な程薄くなっていた。したがって、N過飽和Cr層の厚みは、5μm以上であることが好ましい。
【0041】
(2)プランジャキャップ外面に浸炭層のみを形成させた比較例1,2の場合は、異常摩耗が多量に発生した。
(3)プランジャキャップ外面に浸炭層を形成させ、その外層に表2に記載した処理を施した比較例3〜7の場合は、異常摩耗が多量に発生した。
(4)プランジャキャップ外面に浸炭層を形成させ、その外層に表2に記載した処理を施した比較例8〜10の場合は、異常摩耗が一部に発生した。
【0042】
以上のように本発明の優位性は明らかであるが、本発明の処理によって耐摩耗性が長時間持続する原因について、図1を用いてさらに詳しく説明する。
図1に示されるように、実施例1においては、母材3の外面に浸炭層2が形成され、その外側に厚み5μmのN過飽和Cr層1が形成されている。N過飽和Cr層1は、表1に示したように、Hv1500を超える極めて硬度の高い層であり、プランジャキャップの耐摩耗性を向上させている。そして、その下層の浸炭層2においては母材3に向かって徐々に硬度が低下しており、既に述べたよう、にN過飽和Cr層1に負荷された荷重は浸炭層2に吸収された後に母材3へ分散する。その結果、上記荷重の吸収・分散作用がより促進され、N過飽和Cr層1の剥離がさらに防止されることになる。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、ラッシュアジャスタの表面には浸炭層とN過飽和Cr層から成る硬化層が形成され、最表層には硬度が高く耐摩耗性に優れ、さらに初期なじみ、すべり性のよいN過飽和Cr層を有しているため、ラッシュアジャスタの耐焼き付き性の向上、異常摩耗の低減を図ることができる。
【0044】
さらに、硬度が高いN過飽和Cr層と母材の間に、それらの中間の硬度を有する浸炭層が介在し、母材に向かって硬度が急激に低下することがないので、N過飽和Cr層に負荷された荷重は浸炭層に吸収された後に母材へ分散し、N過飽和Cr層の変形・破損を防止できる。特に、高い面圧を受け、負荷荷重の大きいラッシュアジャスタの球状頭部ではこの効果が大きく、従来のラッシュアジャスタに比べて、ディーゼルエンジンのような過酷な摩耗環境下においても耐摩耗性を大幅に向上させることができる。
【0045】
そして、N過飽和Cr層の下層には、N過飽和Cr層に比べて硬度が低いものの母材の深部まで硬化処理を施すことが可能な浸炭層が形成され、コスト上厚膜化が困難なN過飽和Cr層を支持し、表面処理に要するコストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプランジャキャップ断面の金属組織を表す図面代用写真である。
【図2】ラッシュアジャスタを内燃機関に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図3】ラッシュアジャスタを示す断面図である。
【符号の説明】
1 N過飽和Cr層
2 浸炭層
3 母材
10 ラッシュアジャスタ
11 ボディ
12 プランジャ
14 プランジャキャップ
14a プランジャキャップの球状頭部
14b プランジャキャップの摺動面

Claims (2)

  1. 内燃機関の動弁機構に使用され、有底円筒状のボディに摺動自在に嵌入され、前記ボディと協働して前記動弁機構のクリアランスを零に保持するプランジャ手段を備えるラッシュアジャスタであって、
    前記プランジャ手段の球状頭部には、浸炭層と、この浸炭層に形成され、窒素を過飽和に固溶したCr層とから成る硬化層を備えていることを特徴とするラッシュアジャスタ。
  2. 前記硬化層は、有効硬化深さ0.2〜0.5mmの前記浸炭層と厚み0.005〜0.020mmの前記窒素を過飽和に固溶したCr層とから成り、かつ、最表面の硬度がHv1500以上であることを特徴とする請求項1記載のラッシュアジャスタ。
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