JP2000130113A - ラッシュアジャスタ - Google Patents

ラッシュアジャスタ

Info

Publication number
JP2000130113A
JP2000130113A JP10318375A JP31837598A JP2000130113A JP 2000130113 A JP2000130113 A JP 2000130113A JP 10318375 A JP10318375 A JP 10318375A JP 31837598 A JP31837598 A JP 31837598A JP 2000130113 A JP2000130113 A JP 2000130113A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
plunger
nitriding
carburized
lash adjuster
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10318375A
Other languages
English (en)
Inventor
Junji Horikawa
純二 堀川
Katsushi Morizaki
活史 森崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yasunaga Corp
Original Assignee
Yasunaga Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yasunaga Corp filed Critical Yasunaga Corp
Priority to JP10318375A priority Critical patent/JP2000130113A/ja
Publication of JP2000130113A publication Critical patent/JP2000130113A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 内燃機関の動弁機構に使用され、有底円筒状
のボディに摺動自在に嵌入され、ボディと協働して動弁
機構のクリアランスを零に保持するプランジャ手段を備
えるラッシュアジャスタにおいて、耐摩耗性に優れたラ
ッシュアジャスタを提供する。 【解決手段】 少なくともプランジャ手段の球状頭部、
及び、前記プランジャ手段と前記ボディの摺動面には、
浸炭層2の外層に窒化処理層1を備えて成る硬化層が形
成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関等に使用
されるラッシュアジャスタに関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の吸気および排気バルブとカム
やロッカーアームとの間に配設され、クリアランスを自
動的に調節して、バルブ打音による騒音を防止させるラ
ッシュアジャスタが知られており、かかるラッシュアジ
ャスタは、近年、ガソリンエンジンに広く普及されてい
る。図3及び図4は、内燃機関に配設されるラッシュア
ジャスタの一例を示している。
【0003】図3において、ロッカーアーム20の一端
の下面凹部20aにラッシュアジャスタ10を構成する
プランジャキャップ(プランジャ手段)の球状頭部14a
が枢支され、ロッカーアーム20の他端下面はバルブ軸
24に当接している。そして、ロッカーアーム20の上
面中間部位には、カム22がロッカーアーム20とのク
リアランス21を零に保ちつつ摺接し、カム22の回転
に伴ってロッカーアーム20が揺動してバルブ軸24を
押圧し、適宜バルブを開閉している。
【0004】図4は、ラッシュアジャスタ10の断面図
を示している。図4において、有底円筒状のボディ11
にプランジャ(プランジャ手段)12が摺動自在に嵌入さ
れ、プランジャ12の底面とボディ11の底面の間に高
圧室11aが形成されていて、その内部には作動油が充
填されている。プランジャ12は内部に油溜室12a
を、底面に油穴12bを有している。
【0005】そしてプランジャキャップ14は、下縁開
口端がプランジャ12に当接しつつ、下半部がボディ1
1に摺動自在に嵌入され、ボディ11との間に摺動面1
4bが形成されている。プランジャキャップ14の上半
部14cは下半部より小径の円筒状をなし、その球状頭
部14aはボディ11から突出して常時露出している。
【0006】そして、高圧室11aに縮設されたスプリ
ング16によって、プランジャ12とプランジャキャッ
プ14が高圧室11aを拡大する方向に付勢されてい
る。なお、プランジャ12の内部にはセパレータ15が
圧入されている。プランジャ12の油穴12bには、ボ
ールスプリング19によって油穴12bを外側から閉塞
する方向に付勢されたボール18が係合し、ボールスプ
リング19とボール18とで弁機構を構成して、油溜室
12aから高圧室11aへのみ作動油を流入させてい
る。
【0007】図3において、スプリング16によって付
勢された球状頭部14aは、クリアランス21が零にな
るまでロッカーアーム20をカム22側に押し上げる。
このとき、油溜室12a内の作動油はボール18と油穴
12b間の隙間を通って高圧室11aに流入する(図
4)。次に、カム22が回転してロッカーアーム20を
押し下げると、バルブ軸24がロッカーアーム20によ
って押圧され、バルブ孔が開かれるとともに、プランジ
ャキャップ14も下方に押圧され、プランジャ12がボ
ディ11内を下方に移動しようとする(図4)。
【0008】ところが、ボール18が油穴12bを閉塞
して高圧室11aに油圧が発生するため、プランジャ1
2は下方に移動できず、ラッシュアジャスタ10はロッ
カーアーム20の支点として作用し、クリアランス21
も零の状態に保たれる。なお、ラッシュアジャスタ10
の作動油は、エンジンの潤滑油の一部が循環されること
によって供給されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ラッシュアジャスタ1
0は上記のような機能を有しているが、エンジンの作動
中はプランジャキャップの球状頭部14aが常にロッカ
ーアーム20の凹部20aに強圧されてこれに摺接し、
さらにプランジャキャップの摺動面14bやプランジャ
12の外面はボディ11の内面と絶えず摺動している。
【0010】そこで、通常のガソリンエンジンに適用さ
れるラッシュアジャスタの球状頭部14aやボディ11
との摺動面14bには浸炭処理を施して表面硬度を向上
させ、耐摩耗性の改善および材料強度の向上が図られて
いる。しかしながら、上記したラッシュアジャスタをデ
ィーゼルエンジンに用いた場合、軽油の燃焼に伴ってエ
ンジン内でパーティクルと呼ばれる多量のカーボン粒子
が発生し易くなり、エンジンの潤滑油に上記カーボン粒
子が不可避的に混入してしまう。そして、この潤滑油が
ラッシュアジャスタの作動油としてこれに供給された場
合、球状頭部14aや摺動面14bに作動油中のカーボ
ン粒子が入り込むことがある。
【0011】これらのカーボン粒子は、部材間の潤滑を
妨げて摩擦を増大させ、さらにカーボン粒子そのものが
研磨剤となって、部材にかじりや異常摩耗を引き起こす
可能性がある。特に、上記球状頭部14aはロッカーア
ーム20に常に押圧されて高い面圧を受けているため、
その一部が激しく摩耗し、いわゆる面荒れと呼ばれる凹
凸が発生するおそれがある。
【0012】そして、上記の異常摩耗や面荒れが発生す
ると、バルブの開閉に伴って騒音や振動が増大するとと
もに、動弁系がスムーズに作動しなくなる。このよう
に、ディーゼルエンジンにラッシュアジャスタを用いた
場合、浸炭処理を施しただけでは、耐摩耗性はなお不十
分な場合がある。一方、浸炭処理に比べて、さらに表面
硬度が高い窒化処理や硬質クロムメッキも知られてい
る。これらの被膜は耐摩耗性を改善するためには有効で
あるものの、被膜を厚くすると大幅なコストアップを招
くという問題がある。従って、実際には薄い被膜処理が
施されているが、被膜にかかる面圧が小さい場合には耐
摩耗性に優れているものの、局部的に大きな面圧がかか
った場合は硬化層が薄く母材が柔らかいため、変形が発
生し、異常摩耗が発生する。
【0013】また、摺動面の潤滑性(なじみ)を向上さ
せて摩耗を防止する方法として、固体潤滑皮膜、リン酸
塩皮膜や、浸硫処理を部材表面に施すことも行われてい
るが、上記したように局部的に高面圧がかかる過酷な条
件下では有効であるとはいえない。本発明は、ラッシュ
アジャスタにおける上記した問題を解決し、耐摩耗性が
特に要求されるディーゼルエンジン等にも用いることが
できるラッシュアジャスタの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、請求項1記載の本発明においては、少なくとも
前記プランジャ手段の球状頭部、及び、前記プランジャ
手段と前記ボディの摺動面には、浸炭層の外層に窒化処
理層を備えて成る硬化層が形成されていることを特徴と
するラッシュアジャスタが提供される。
【0015】好ましくは請求項2記載の発明のように、
前記硬化層の最表面の硬度はHv750以上であり、前
記最表面からの有効硬化深さは0.15(mm)以上と
なっているのがよい。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は、プランジャ手段の最表
面に形成された硬度の高い窒化処理層によって耐摩耗性
を著しく向上させ、その下層の浸炭層が窒化処理層に負
荷された荷重を母材に適度に分散させる緩衝作用を有す
るとともに、窒化処理層を支持することにより、窒化処
理層の変形・剥離を防止するものである。
【0017】本発明に係るラッシュアジャスタの形状や
構成は特に限定されず、既に図4を参照して説明したタ
イプのもの、すなわち、プランジャ手段がプランジャキ
ャップとプランジャとに分割されたものでもよく、これ
らが一体に形成されたものでもよい。例えば、図4に示
す前者の場合は、プランジャキャップ14の球状頭部1
4a及びボディ11との摺動面14bに施される表面処
理が従来のものと異なるだけで、形状や構造は従来のも
のと同じでよい。従って、本明細書全体に亘ってプラン
ジャ手段と称する場合には、図4に示したようにプラン
ジャキャップ14とプランジャ12とが分割されたタイ
プのものだけでなく、両者が一体となっているタイプも
含む。
【0018】ボディ11およびプランジャキャップ14
に用いる材料は、後述する浸炭処理を適切に行えるもの
であればよく、例えば、JISに規格するS17C鋼、
SCM415鋼などの、冷間鍛造・浸炭焼き入れが可能
な材料を使用することができる。ここで、窒化処理層お
よび浸炭層から成る硬化層は、図4に示すように、少な
くともプランジャキャップ14の球状頭部14a及び摺
動面14bに形成されていることが必要である。これら
はそれぞれロッカーアーム20やボディ11と摺接・摺
動し、激しく摩耗するおそれがあるからである。なお、
球状頭部14aは、必ずしも頭部全体が半球状をなして
いる必要はなく、少なくともロッカーアーム20の下面
凹部20aと摺接する部分のみが凹部形状に対応して球
状をなしていればよい。
【0019】上記処理は、球状頭部14a及び摺動面1
4bに施せば十分であるが、プランジャキャップ14の
小径上半部14cの外周面に同じ窒化処理層及び浸炭層
を有していても一向に差し支えない。ここで、プランジ
ャキャップとプランジャが一体となっている場合には、
この一体型プランジャがボディ11内面と摺動する部位
を摺動面14bとする。
【0020】なお、球状頭部14a及び摺動面14bの
みに上記処理を行うには、予め他の部分を例えばAl溶
射(メタリコン)、NiやCrのメッキによってマスキ
ングしておけばよい。次に、浸炭層及び窒化処理層の形
成方法について説明する。本発明においては母材の外面
に浸炭層が形成され、その外層に窒化処理層が形成され
ている。
【0021】先ず、浸炭層を形成させるには、プランジ
ャキャップ14の外面を脱脂処理などによって前処理し
た後、必要に応じてその外面の必要箇所をマスキング
し、例えばCO−CO2混合ガス、またはCO−H2−N
2混合ガスから成る浸炭ガス中に試料を装入して(ガス
浸炭法)、2〜3時間保持する。また、Cを含む固体浸
炭材に試料を装入して加熱する固体浸炭法や、例えばN
aCN、またはKCNから成る溶融塩中に試料を浸漬す
る液体浸炭法を用いることもできる。
【0022】浸炭処理温度は、例えばガス浸炭や固体浸
炭では800〜1000℃の範囲に、液体浸炭では70
0〜900℃の範囲にすればよい。浸炭処理直後の浸炭
層の有効硬化深さは特に限定されないが、0.25〜
0.40mmの範囲とするのが好ましい。有効硬化深さ
が0.25mm未満であると、後述する窒化処理の効果
が充分に発揮できず、0.40mmを超えても窒化処理
の効果が飽和して不経済となる。但し、後述する窒化処
理により若干浸炭焼入れした層が焼戻されるので、これ
を考慮して、窒化処理後の窒化層と浸炭層を合わせた硬
化層の有効硬化深さが0.15mmとなるように浸炭時
の有効硬化深さを決めればよい。
【0023】また、浸炭処理直後の浸炭層の表面硬度も
特に限定されないが、Hv650〜800の範囲とする
のが好ましい。Hv650未満であると後述する窒化処
理の効果が充分に発揮できず、Hv800を超えると浸
炭層が割れやすくなるからである。なお、有効硬化深さ
とは、表面からHv550以上となっている部分までの
深さを示し、表面硬度とは、表面でのビッカース硬度を
示す。
【0024】そして、有効硬化深さの調整は浸炭時間を
変化させて、表面硬度の調整は焼き入れ温度を変化させ
て行えばよい。さらに、浸炭層の表面の酸化膜を酸洗い
によって除去してもよく、また、試料表面をフッ化処理
してもよい。フッ化処理の場合、試料表面の酸化膜がフ
ッ化膜と置換されて酸化を防止し、窒化処理時にはフッ
化膜は活性化膜として作用し、容易に窒化処理を行うこ
とができる。
【0025】そして、例えばNaCN、またはKCNか
ら成る溶融塩中に試料を90分間浸漬して窒化処理層を
形成させればよい(塩浴窒化)。また、NH3ガス中に
試料を装入して2.5〜3.5時間保持するガス窒化法
を用いることもできる。なお窒化処理温度は、例えば5
00〜600℃の範囲とすればよいが、低温ほど窒化処
理時の浸炭焼き入れ硬度の低下が小さいので、500℃
近傍とするのが好ましい。
【0026】窒化処理層の厚さは特に限定されないが、
ガス窒化法を例にとれば、40〜60μmの範囲とする
のが好ましい。厚さが40μm未満であると耐摩耗性の
改善効果が小であり、60μmを超えると耐摩耗性が飽
和して不経済となるだけでなく、窒化処理層が割れやす
くなるからである。また、窒化処理層の表面硬度も特に
限定されないが、ガス窒化法を例にとれば、Hv700
〜1000の範囲とするのが好ましい。Hv700未満
であると耐摩耗性に劣り、Hv1000を超えると窒化
処理層が割れやすくなるからである。
【0027】なお、窒化処理層の厚さは、X線マイクロ
アナライザにより被膜の深さ方向のN強度を測定して判
定するか、または所定のエッチング液により被膜の断面
をエッチングした時に茶色を示す領域を窒化処理層とみ
なして求める。そして、窒化処理層の厚さの調整は窒化
処理時の温度と時間を変化させて行えばよい。
【0028】上述のような被膜構成をとることによっ
て、プランジャ手段の最表面には硬度の高く耐摩耗性に
優れた窒化処理層が形成され、その下層には、窒化処理
層を支持して窒化処理層の変形・剥離を防止し、窒化処
理層に負荷された荷重を母材に適度に分散させる浸炭層
が形成されることになる。但し、窒化処理層と浸炭層は
拡散層であるため両者の界面は明確ではなく、これらを
まとめて硬化層と称する。なお、後述する図1、図2に
おいては、上記の窒化処理層の厚み判定方法によって、
便宜上この界面を設けている。
【0029】そして、この硬化層は、最表面の硬度はH
v750以上であり、かつ硬化層の最表面からの有効硬
化深さは0.15(mm)以上となっていることが好ま
しい。このような場合には、被膜の耐摩耗性・耐かじり
性・耐焼き付き性がさらに向上し、窒化処理層の変形・
剥離の防止効果が大であるとともに、浸炭層による荷重
の緩衝作用により、疲労強度もさらに向上するからであ
る。なお、硬化層は上記の表面硬度と有効硬化深さを有
していれば、個々の窒化処理層と浸炭層の厚みには特に
限定はなく、例えば、浸炭層をより多く形成させ、極最
表面のみ窒化処理層としてもよい。
【0030】なお、窒化処理層の最表面にはFeとNを
含む化合物層(例えばFe2N、Fe4N)が形成されて
いてもよい。この化合物層は窒化処理層と同時に形成さ
れるものと考えられ、セラミックに近い成分からなり、
ポーラスな硬質層となっている。この化合物層は、通常
は4〜10μm程度の厚みを有していて、保油性に富
み、耐焼き付き性を向上させる可能性がある。従って、
ラッシュアジャスタとして使用する際は、上記化合物層
を除去せずにそのまま使用してもよく、また必要に応じ
て除去しても差し支えない。ただし、除去に要するコス
トを考えた場合には、除去せずにそのまま使用すること
が好ましい。なお、本発明においては、この化合物層が
形成されている場合も含めて硬化層とし、その場合、化
合物層の表面を硬化層の最表面とする。
【0031】さらに、窒化処理が終了した後に、各種の
後処理や最終仕上げ処理を行ってもよい。そして、上記
処理を施したプランジャキャップは従来のプランジャキ
ャップと同様にしてボディ11に組み込んでラッシュア
ジャスタ10とすればよい。
【0032】
【実施例】実施例1〜4,比較例1〜10 1.浸炭・窒化処理 C:0.13〜0.20重量%を含む、JIS規格S1
7C鋼から成るプランジャキャップの外面に、炉内CO
2:0.32%としたエンリッチガスを用いたガス浸炭
法によって、処理温度970〜980℃で浸炭層を形成
させた。浸炭層の厚さ(全有効硬化深さ)は浸炭時間を
2〜3時間の間で変化させて調整した。さらに、試料を
70℃の焼き入れ油に浸漬して急冷した。
【0033】次に、上記した浸炭処理材の外面に、前処
理として酸化膜除去処理をした後、塩浴窒化法(実施例
1,2)またはガス窒化法(実施例3,4)によって窒化
処理層を形成させた。塩浴法の場合はNaCN浴に試料
を浸漬して570℃に保持し、ガス窒化法の場合は試料
をフッ化処理した後、窒化処理ガス中で500℃に保持
した。窒化処理層の厚さは窒化処理時間を2〜3時間の
間で変化させて調整した。
【0034】実施例1〜4はいずれも、浸炭処理直後の
浸炭層の有効硬化深さが0.2(mm)で、窒化処理層
は厚さが0.1mmで表面硬度がHv950となってい
る。また、実施例2は窒化処理後、表面をホーニング加
工して平滑化させた。実施例4では、最表層のFeとN
を含む化合物層(厚さ4μm)を除去せずそのまま用い
た。
【0035】なお、比較例2を除く全ての比較例は、有
効硬化深さが0.3(mm)で表面硬度がHv740〜
750の浸炭層を形成させた後、浸炭層の外層にそれぞ
れ表1に記載した各種の表面処理を施した。例えば、比
較例10では、浸炭層の外層に硬質クロムメッキ浴を用
いて、厚さ10μm、表面硬度Hv900〜1000の
硬質クロムメッキ層を形成させた。比較例2の中濃度浸
炭層は有効硬化深さが0.7(mm)で表面硬度がHv
800となっている。中濃度浸炭層とは従来行われてい
る浸炭に比べて、浸炭層の炭素濃度が高いものをいう。 2.処理後の金属組織 上記浸炭および窒化処理を行った試料の断面を研磨・エ
ッチングし、顕微鏡撮影を行った。図1は、断面の金属
組織の顕微鏡写真を示している。図1において、母材3
の外面に浸炭層2が形成され、その外層に窒化処理層1
を有している。さらに、最表面には化合物層1aを有し
ている。
【0036】なお、窒化処理層1および浸炭層2とも
に、拡散処理によって形成されているため、両者の間に
明確な界面は存在しないが、本発明において定義した窒
化処理層1の厚さに基づいて、両者を区別している。 3.硬度プロファイルの測定 上記各処理を施した試料について、試料の表面からの距
離に対するビッカース硬度(Hv)をそれぞれ測定し
て、硬度プロファイルを測定した。その結果を図2に示
す。 4.耐摩耗性評価 上記プランジャキャップをラッシュアジャスタに組み込
み、このラッシュアジャスタを実際のディーゼルエンジ
ンに取付けた。実際のディーゼルエンジンで使用しカー
ボン粒子が多量に混入したエンジンオイルを作動油と
し、最高速連続運転を行った。
【0037】そして、上記エンジンに要求される耐久条
件(回転数、時間等)に応じて試験時間を設定し、プラ
ンジャキャップの球状頭部の面粗さ・かじり・焼き付き
発生の有無およびその程度を面粗さ計によって測定し、
各処理の効果を判断した。要求される耐久終了時間まで
達する前に不具合の発生したものは、途中で試験を打ち
切り、別の供試品に組み替えて試験を行った。
【0038】以上の結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】(1)表1から明らかなように、プランジャ
キャップ外面に浸炭層および窒化処理層を備えた硬化層
が形成されている本発明のラッシュアジャスタは、異常
摩耗が生じなかった。 (2)プランジャキャップ外面に浸炭層のみを形成させた
比較例1,2の場合は、異常摩耗が多量に発生した。 (3)プランジャキャップ外面に浸炭層を形成させ、その
外層に表1に記載した処理を施した比較例3〜7の場合
は、異常摩耗が多量に発生した。 (6)(4)プランジャキャップ外面に浸炭層を形成させ、そ
の外層に表1に記載した処理を施した比較例8〜10の
場合は、異常摩耗が一部に発生した。
【0041】以上のように本発明の優位性は明らかであ
るが、本発明の処理によって耐摩耗性が長時間持続する
原因について、図2を用いてさらに詳しく説明する。図
2において、曲線Aは本発明の実施例3の硬度プロファ
イルを示している。最表面にはHv900を超える極め
て硬度の高い窒化処理層1が形成され、耐摩耗性を向上
させている。そして、その下層の浸炭層2において母材
3に向かって徐々に硬度が低下し、既に述べたように窒
化処理層1に負荷された荷重が浸炭層2に吸収された後
に母材3へ分散する。その結果、上記荷重の吸収・分散
作用がより促進され、窒化処理層1の剥離がさらに防止
されることになる。このことは、以下の比較例10を参
照すれば明らかである。
【0042】比較例10を示す曲線Bにおいて、硬度の
高いCrメッキ層30と浸炭層31の間の界面32にお
いて、硬度が急激に低下している。この結果、比較例1
0では初期の耐摩耗性こそ本発明と同等であるものの、
上記界面32近傍からCrメッキ層30が剥離し、時間
とともに異常摩耗が発生するようになる。 実施例5〜7、8〜10 実施例1〜4と同様にして、浸炭・窒化処理材を製造
し、耐摩耗性を評価した。浸炭層の有効硬化深さは処理
時間を2〜3時間の間で変えて、浸炭層の表面硬度は焼
き入れ温度を900〜1000℃の間で変えて調整し
た。窒化処理はガス窒化法で行い、窒化処理層の厚さは
処理時間を2.5〜3.5時間の間で変えて行った。な
お、硬化層の最表面の硬度が実質的に同一なものを実施
例5〜7に、この硬化層の最表面からの有効硬化深さが
実質的に同一なものを実施例8〜10に選んだ。
【0043】以上の結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】(1)表2から明らかなように、実施例6及
び7は異常摩耗が全く発生せず、実施例5に比べて耐摩
耗性がさらに優れたものとなっている。このようなこと
から、本発明の硬化層の有効硬化深さを0.15mm以
上とするのがより好ましいことがわかる。 (2)実施例9及び10は異常摩耗が全く発生せず、実施
例8に比べて耐摩耗性がさらに優れたものとなってい
る。このようなことから、本発明の硬化層の表面硬度を
Hv750以上とするのがより好ましいことがわかる。
【0046】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、ラッシュアジャスタの表面には浸炭層と窒化処
理層から成る硬化層が形成され、最表層には硬度が高く
耐摩耗性に優れ、さらに初期なじみ、すべり性のよい窒
化処理層を有しているため、ラッシュアジャスタの耐焼
き付き性の向上、異常摩耗の低減を図ることができる。
【0047】さらに、硬度が高い窒化処理層と母材の間
に、それらの中間の硬度を有する浸炭層が介在し、母材
に向かって硬度が急激に低下することがないので、窒化
処理層に負荷された荷重は浸炭層に吸収された後に母材
へ分散し、窒化処理層の変形・破損を防止できる。特
に、高い面圧を受け、負荷荷重の大きいラッシュアジャ
スタの球状頭部ではこの効果が大きく、従来のラッシュ
アジャスタに比べて、ディーゼルエンジンのような過酷
な摩耗環境下においても耐摩耗性を大幅に向上させるこ
とができる。
【0048】そして、窒化処理層の下層には、窒化処理
層に比べて硬度が低いものの母材の深部まで硬化処理を
施すことが可能な浸炭層が形成され、コスト上厚膜化が
困難な窒化処理層を支持し、表面処理に要するコストを
大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプランジャキャップ断面の金属組織を
表す図面代用写真である。
【図2】プランジャキャップに表面処理を施した場合の
硬度プロファイルを示す関係図である。
【図3】ラッシュアジャスタを内燃機関に組み込んだ状
態を示す断面図である。
【図4】ラッシュアジャスタを示す断面図である。
【符号の説明】
1 窒化処理層 1a 化合物層 2 浸炭層 3 母材 10 ラッシュアジャスタ 11 ボディ 12 プランジャ 14 プランジャキャップ 14a プランジャキャップの球状頭部 14b プランジャキャップの摺動面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G016 AA06 AA19 BB18 BB29 BB30 BB34 BB36 CA11 CA13 CA19 CA52 EA02 EA24 FA18 FA20 GA00 GA02

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の動弁機構に使用され、有底円
    筒状のボディに摺動自在に嵌入され、前記ボディと協働
    して前記動弁機構のクリアランスを零に保持するプラン
    ジャ手段を備えるラッシュアジャスタであって、 少なくとも前記プランジャ手段の球状頭部、及び、前記
    プランジャ手段と前記ボディの摺動面には、浸炭層の外
    層に窒化処理層を備えて成る硬化層が形成されているこ
    とを特徴とするラッシュアジャスタ。
  2. 【請求項2】 前記硬化層の最表面の硬度はHv750
    以上であり、前記最表面からの有効硬化深さは0.15
    (mm)以上となっていることを特徴とする請求項1記
    載のラッシュアジャスタ。
JP10318375A 1998-10-21 1998-10-21 ラッシュアジャスタ Pending JP2000130113A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10318375A JP2000130113A (ja) 1998-10-21 1998-10-21 ラッシュアジャスタ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10318375A JP2000130113A (ja) 1998-10-21 1998-10-21 ラッシュアジャスタ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000130113A true JP2000130113A (ja) 2000-05-09

Family

ID=18098456

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10318375A Pending JP2000130113A (ja) 1998-10-21 1998-10-21 ラッシュアジャスタ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000130113A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010013941A (ja) * 2008-07-01 2010-01-21 Toyota Central R&D Labs Inc 内燃機関及びその動弁機構

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010013941A (ja) * 2008-07-01 2010-01-21 Toyota Central R&D Labs Inc 内燃機関及びその動弁機構

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7246586B2 (en) Wear-resistant coating and process for producing it
US20070224349A1 (en) Wear-Resistant Coating and Method for Producing Same
US20060046060A1 (en) Wear-resistant coating and process for producing it
KR100540962B1 (ko) 활주 부재 및 그 제조 방법
JP4269443B2 (ja) 摺動部材の表面処理方法及び該方法を用いた摺動部材の表面平滑化方法
KR20060049014A (ko) 밸브 리프터와, 그 형성 및 가공 방법
JP2002031212A (ja) 転がり摺動部品
EP1076112A1 (en) TI alloy poppet valve and surface treatment thereof
JP2007262535A (ja) 耐摩耗性チタン部材
JP3639901B2 (ja) ラッシュアジャスタ
JP2000130113A (ja) ラッシュアジャスタ
JPS6113064A (ja) 内燃機関用ピストンリング
JP3728491B2 (ja) カムフォロワ
JP3524978B2 (ja) カムフォロワ用ローラ
JP2000320674A (ja) 低フリクション摩擦材およびその製造方法
JPH06212914A (ja) 低摩擦の動弁装置
JPH01106909A (ja) アルミニウム合金製バルブリフタ
JP3239610B2 (ja) ピストン/ピストンリングアッセンブリ
JP3546933B2 (ja) シムレスバルブリフタとその製造方法
JP2001329807A (ja) エンジンの動弁機構用カムフォロア装置
JP2004176848A (ja) 非晶質硬質炭素被覆部材と鉄系部材の組み合わせ
JP2006097759A (ja) 軸受装置
JPH07119420A (ja) チタン又はチタン合金製エンジンバルブの表面処理方法
JP4037143B2 (ja) 摺動部材及びその製造方法
JPS59183007A (ja) ころがり式ロツカア−ム