JP2003222007A - ラッシュアジャスタ - Google Patents

ラッシュアジャスタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた耐摩耗性を有するラッシュアジャスタ
の提供を目的とする。 【解決手段】 内燃機関の動弁機構に使用され、有底円
筒状のボディ11に摺動自在に嵌入され、前記ボディ1
1と協働して前記動弁機構のクリアランス21を零に保
持するプランジャ手段12,14を備えるラッシュアジ
ャスタ10であって、前記プランジャ手段14の球状頭
部14aには、浸炭層と、この浸炭層の外側に形成さ
れ、窒素を過飽和に固溶したCr層とから成る硬化層を
備えていることを特徴とするラッシュアジャスタ10。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関等に使用
されるラッシュアジャスタに関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の吸気および排気バルブとカム
やロッカーアームとの間に配設され、クリアランスを自
動的に調節して、バルブ打音による騒音を防止させるラ
ッシュアジャスタが知られており、かかるラッシュアジ
ャスタは、近年、自動車用エンジンに広く普及されてい
る。図2及び図3は、内燃機関に配設されるラッシュア
ジャスタの一例を示している。
【0003】図2において、ロッカーアーム20の一端
の下面凹部20aにラッシュアジャスタ10を構成する
プランジャキャップ(プランジャ手段)の球状頭部14a
が枢支され、ロッカーアーム20の他端下面はバルブ軸
24に当接している。そして、ロッカーアーム20の上
面中間部位には、カム22がロッカーアーム20とのク
リアランス21を零に保ちつつ摺接し、カム22の回転
に伴ってロッカーアーム20が揺動してバルブ軸24を
押圧し、適宜バルブを開閉している。
【0004】図3は、ラッシュアジャスタ10の断面図
を示している。図3において、有底円筒状のボディ11
にプランジャ(プランジャ手段)12が摺動自在に嵌入さ
れ、プランジャ12の底面とボディ11の底面の間に高
圧室11aが形成されていて、その内部には作動油が充
填されている。プランジャ12は内部に油溜室12a
を、底面に油穴12bを有している。
【0005】そしてプランジャキャップ14は、下縁開
口端がプランジャ12に当接しつつ、下半部がボディ1
1に摺動自在に嵌入され、ボディ11との間に摺動面1
4bが形成されている。プランジャキャップ14の上半
部14cは下半部より小径の円筒状をなし、その球状頭
部14aはボディ11から突出して常時露出している。
【0006】そして、高圧室11aに縮設されたスプリ
ング16によって、プランジャ12とプランジャキャッ
プ14が高圧室11aを拡大する方向に付勢されてい
る。なお、プランジャキャップ14の内部にはセパレー
タ15が圧入されている。プランジャ12の油穴12b
には、ボールスプリング19によって油穴12bを外側
から閉塞する方向に付勢されたボール18が係合し、ボ
ールスプリング19とボール18とで一方向弁機構を構
成して、油溜室12aから高圧室11aへのみ作動油を
流入させている。
【0007】図2において、スプリング16によって付
勢された球状頭部14aは、クリアランス21が零にな
るまでロッカーアーム20をカム22側に押し上げる。
このとき、油溜室12a内の作動油はボール18と油穴
12b間の隙間を通って高圧室11aに流入する(図
3)。次に、カム22が回転してロッカーアーム20を
押し下げると、バルブ軸24がロッカーアーム20によ
って押圧され、バルブ孔が開かれるとともに、プランジ
ャキャップ14も下方に押圧され、プランジャ12がボ
ディ11内を下方に移動しようとする(図3)。
【0008】ところが、ボール18が油穴12bを閉塞
して高圧室11aに油圧が発生するため、プランジャ1
2は下方に移動できず、ラッシュアジャスタ10はロッ
カーアーム20の支点として作用し、クリアランス21
も零の状態に保たれる。なお、ラッシュアジャスタ10
の作動油は、エンジンの潤滑油の一部が循環されること
によって供給されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ラッシュアジャスタ1
0は上記のような機能を有しているが、エンジンの作動
中はプランジャキャップの球状頭部14aが常にロッカ
ーアーム20の凹部20aに強圧されてこれに摺接し、
さらにプランジャキャップの摺動面14bやプランジャ
12の外面はボディ11の内面と絶えず摺動している。
【0010】そこで、通常のガソリンエンジンに適用さ
れるラッシュアジャスタの球状頭部14aやボディ11
との摺動面14bには浸炭焼入れ処理を施して表面硬度
を向上させ、耐摩耗性の改善および材料強度の向上が図
られている。しかしながら、上記したラッシュアジャス
タをディーゼルエンジンに用いた場合、軽油の燃焼に伴
ってエンジン内でパーティクルと呼ばれる多量のカーボ
ン粒子が発生し易くなり、エンジンの潤滑油に上記カー
ボン粒子が不可避的に混入してしまう。そして、この潤
滑油がラッシュアジャスタの作動油としてこれに供給さ
れた場合、球状頭部14aや摺動面14bに作動油中の
カーボン粒子が入り込むことがある。
【0011】これらのカーボン粒子は、部材間の潤滑を
妨げて摩擦を増大させ、さらにカーボン粒子そのものが
研磨剤となって、部材にかじりや異常摩耗を引き起こす
可能性がある。特に、上記球状頭部14aはロッカーア
ーム20に常に押圧されて高い面圧を受けているため、
その一部が激しく摩耗し、いわゆる面荒れと呼ばれる凹
凸が発生するおそれがある。
【0012】そして、上記の異常摩耗や面荒れが発生す
ると、バルブの開閉に伴って騒音や振動が増大するとと
もに、動弁系がスムーズに作動しなくなる。このよう
に、ディーゼルエンジンにラッシュアジャスタを用いた
場合、浸炭焼入れ処理を施しただけでは、耐摩耗性はな
お不十分な場合がある。かかる異常摩耗や面粗れの発生
を抑制するための手段としては、球状頭部14aの形状
(寸法)を大きくし、球状頭部14aに加わる面圧を下
げることがあげられる。しかしながら、その場合、球状
頭部14aおよびラッシュアジャスタ全体が大きくなる
ことでコストが高くなるのみならず、シリンダヘッド内
のレイアウト設計に制約が加わってエンジン自体の性能
の低下を招いてしまう。
【0013】一方、上記した手段の他に、浸炭焼入れ処
理に比べて、さらに表面硬度が高い窒化処理や硬質クロ
ムメッキも知られている。これらの被膜は耐摩耗性を改
善するためには有効であるものの、被膜を厚くすると大
幅なコストアップを招くという問題がある。従って、実
際には薄い被膜処理が施されているが、被膜にかかる面
圧が小さい場合には耐摩耗性に優れているものの、局部
的に大きな面圧がかかった場合は硬化層が薄く母材が柔
らかいため、変形が発生し、異常摩耗が発生する。
【0014】また、摺動面の潤滑性(なじみ)を向上さ
せて摩耗を防止する方法として、固体潤滑皮膜、リン酸
塩皮膜や、浸硫処理を部材表面に施すことも行われてい
るが、上記したように局部的に高面圧がかかる過酷な条
件下では有効であるとはいえない。本発明は、ラッシュ
アジャスタにおける上記した問題を解決し、球状頭部お
よびラッシュアジャスタ全体を大型化することなく、耐
摩耗性が特に要求されるディーゼルエンジン等にも用い
ることができるラッシュアジャスタの提供を目的とす
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、請求項1記載の本発明においては、前記プラン
ジャ手段の球状頭部には、浸炭層と、この浸炭層の外側
に形成され、窒素を過飽和に固溶したCr層とから成る
硬化層を備えていることを特徴とするラッシュアジャス
タが提供される。
【0016】好ましくは請求項2記載の発明のように、
前記硬化層は、有効硬化深さ0.2〜0.5mmの前記
浸炭層と厚み0.005〜0.020mmの前記窒素を
過飽和に固溶したCr層とから成り、かつ、最表面の硬
度がHv1500以上となっているのがよい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のラッシュアジャスタは、
プランジャ手段の球状頭部の最表面に形成された、硬度
の高い、窒素を過飽和に固溶したCr層(以下、N過飽
和Cr層という)によって耐摩耗性を著しく向上させ、
その下層の浸炭層が過飽和Cr層に負荷された荷重を母
材に適度に分散させる緩衝作用を有するとともに、N過
飽和Cr層を支持することにより、N過飽和Cr層の変
形・剥離を防止するものである。
【0018】本発明に係るラッシュアジャスタの形状や
構成は特に限定されず、既に図3を参照して説明したタ
イプのもの、すなわち、プランジャ手段がプランジャキ
ャップとプランジャとに分割されたものでもよく、これ
らが一体に形成されたものでもよい。例えば、図3に示
す前者の場合は、プランジャキャップ14の球状頭部1
4aに施される表面処理が従来のものと異なるだけで、
形状や構造は従来のものと同じでよい。従って、本明細
書全体に亘ってプランジャ手段と称する場合には、図3
に示したようにプランジャキャップ14とプランジャ1
2とが分割されたタイプのものだけでなく、両者が一体
となっているタイプも含む。
【0019】ボディ11およびプランジャキャップ14
に用いる材料は、後述する浸炭焼入れ処理を適切に行え
るものであればよく、例えば、JISに規格するS17
C鋼、SCM415鋼などの、冷間鍛造・浸炭焼き入れ
が可能な材料を使用することができる。ここで、N過飽
和Cr層および浸炭層から成る硬化層は、図3に示すよ
うに、少なくともプランジャキャップ14の球状頭部1
4aに形成されていることが必要である。球状頭部14
aはロッカーアーム20と摺接・摺動し、激しく摩耗す
るおそれがあるからである。なお、球状頭部14aは、
必ずしも頭部全体が半球状をなしている必要はなく、少
なくともロッカーアーム20の下面凹部20aと摺接す
る部分のみが凹部形状に対応して球状をなしていればよ
い。
【0020】上記処理は、球状頭部14aに施せば十分
であるが、プランジャキャップ14の小径上半部14c
の外周面に同じN過飽和Cr層及び浸炭層を有していて
も一向に差し支えない。なお、球状頭部14aのみに上
記処理を行うには、プランジャキャップ14をマスキン
グ治具に取付ける等の方法があげられる。
【0021】次に、浸炭層及びN過飽和Cr層の形成方
法について説明する。本発明においては母材の外面に浸
炭層が形成され、浸炭層の外側にN過飽和Cr層が形成
されている。先ず、浸炭層を形成させるには、プランジ
ャキャップ14の外面を脱脂処理などによって前処理し
た後、必要に応じてその外面の必要箇所をマスキング
し、例えばCO−CO2混合ガス、またはCO−H2−N
2混合ガスから成る浸炭ガス中に試料を装入して(ガス
浸炭法)、2〜3時間保持する。
【0022】また、Cを含む固体浸炭材に試料を装入し
て加熱する固体浸炭法や、例えばNaCN、またはKC
Nから成る溶融塩中に試料を浸漬する液体浸炭法を用い
ることもできる。浸炭処理温度は、例えばガス浸炭や固
体浸炭では800〜1000℃の範囲に、液体浸炭では
700〜900℃の範囲にすればよい。
【0023】そして、上記した浸炭処理が施されたプラ
ンジャキャップに焼入れ処理を施し、所定の浸炭層が形
成される。浸炭焼入れ処理直後の浸炭層の有効硬化深さ
は特に限定されないが、0.20〜0.50mmの範囲
とするのが好ましい。有効硬化深さが0.20mm未満
であると、後述するN過飽和Cr層の効果が充分に発揮
できず、また0.50mmを超えて厚くしてもN過飽和
Cr層の効果が飽和して不経済となる。
【0024】また、浸炭焼入れ処理直後の浸炭層の表面
硬度も特に限定されないが、Hv650〜800の範囲
とするのが好ましい。Hv650未満であると後述する
N過飽和Cr層の効果が充分に発揮できず、Hv800
を超えると浸炭層が割れやすくなるからである。なお、
有効硬化深さとは、表面からHv550以上となってい
る部分までの深さを示し、表面硬度とは、表面でのビッ
カース硬度を示す。
【0025】そして、有効硬化深さの調整は浸炭時間を
変化させて行なえばよく、また表面硬度の調整は焼き入
れ温度あるいは焼戻し温度を変化させて行えばよい。次
に、浸炭層の外側にN過飽和Cr層を形成する。なお、
N過飽和Cr層を形成するに先立って、必要に応じて、
浸炭層の表面から、例えばアルカリもしくは有機溶剤に
よる洗浄またはアルコールによる拭き取り等により、油
脂および異物を除去し、さらに、浸炭層の表面の酸化膜
を酸洗いまたはイオンエッチングにより除去する。
【0026】N過飽和Cr層は、窒素を過飽和に固溶し
たCr層であって、かつ、非晶質であり、非平衡状態に
あるCr層ということができる。かかるN過飽和Cr層
は、非平衡状態にある膜を容易に成膜することが可能
な、反応性スパッタリング法により形成することができ
る。具体的には、真空チャンバ内に設けられた一対の電
極の一方にプランジャキャップを配置し、他方に金属C
rからなるターゲット材を配置する。そして、真空チャ
ンバ内を真空ポンプで排気してから、不活性ガスとして
Arガス及び反応性ガスとして窒素ガスを導入し、真空
ポンプ内を真空度が10-2〜10-3Torrの低真空状態と
する。その後、これらの電極間に直流高電圧を印加し、
グロー放電により発生した不活性ガスイオンによりター
ゲット材のCr元素をスパッタリングする。このときス
パッタされたCr元素は、窒素ガスと反応しながらプラ
ンジャキャップ表面に堆積し、かくしてN過飽和Cr層
が形成される。
【0027】N過飽和Cr層の厚さは特に限定されない
が、5〜20μmの範囲とするのが好ましい。厚さが5
μm未満であると耐摩耗性の改善効果が小であり、20
μmを超えると耐摩耗性が飽和して不経済となるだけで
なく、N過飽和Cr層が割れやすくなるからである。な
お、N過飽和Cr層の厚さの調整は直流高電圧の印加時
間を変化させて行えばよい。
【0028】また、N過飽和Cr層の表面硬度も特に限
定されないが、Hv1500〜2000の範囲とするの
が好ましい。Hv1500未満であると耐摩耗性に劣
り、Hv2000を超えるとN過飽和Cr層が割れやす
くなるからである。なお、N過飽和Cr層の表面硬度の
調整は、N過飽和Cr層を形成する際にチャンバ内の窒
素ガス濃度を調整することにより、Cr層に固溶するN
量を変化させて行なえばよい。
【0029】上述のような被膜構成をとることによっ
て、プランジャ手段の最表面には高硬度で耐摩耗性に優
れたN過飽和Cr層が形成され、その下層には、N過飽
和Cr層を支持してN過飽和Cr層の変形・剥離を防止
し、N過飽和Cr層に負荷された荷重を母材に適度に分
散させる浸炭層が形成されることになる。本明細書にお
いては、これらN過飽和Cr層及び浸炭層をまとめて硬
化層と称する。
【0030】そして、この硬化層は、最表面の硬度はH
v1500以上であることが好ましい。このような場合
には、被膜の耐摩耗性・耐かじり性・耐焼き付き性がさ
らに向上し、N過飽和Cr層の変形・剥離の防止効果が
大であるとともに、浸炭層による荷重の緩衝作用によ
り、疲労強度もさらに向上するからである。さらに、N
過飽和Cr層を形成した後に、各種の後処理や最終仕上
げ処理を行ってもよい。そして、上記処理を施したプラ
ンジャキャップは従来のプランジャキャップと同様にし
てボディ11に組み込んでラッシュアジャスタ10とす
ればよい。
【0031】
【実施例】実施例1,2,比較例1〜10 1.浸炭及び反応性スパッタリング処理 C:0.13〜0.20重量%を含む、JIS規格S1
7C鋼から成るプランジャキャップの外面に、炉内CO
2:0.32%としたエンリッチガスを用いたガス浸炭
法によって、処理温度970〜980℃で浸炭層を形成
させた。浸炭層の厚さ(全有効硬化深さ)は浸炭時間を
2〜3時間の間で変化させて調整した。さらに、試料を
70℃の焼き入れ油に浸漬して急冷した。
【0032】次に、上記した浸炭焼入れ処理材の外面
に、前処理として酸化膜除去処理をした後、反応性スパ
ッタリング法によってN過飽和Cr層を形成させた。N
過飽和Cr層の厚さは高電圧印加時間を変化させて調整
した。なお、実施例1,2はいずれも、浸炭焼入れ処理
直後の浸炭層の有効硬化深さが0.2mmである。
【0033】また、比較例2を除く全ての比較例は、有
効硬化深さが0.3mmで表面硬度がHv740〜75
0の浸炭層を形成させた後、浸炭層の外層にそれぞれ表
2に記載した各種の表面処理を施した。例えば、比較例
10では、浸炭層の外層に硬質クロムメッキ浴を用い
て、厚さ10μm、表面硬度Hv900〜1000の硬
質クロムメッキ層を形成させた。比較例2の中濃度浸炭
層は有効硬化深さが0.7mmで表面硬度がHv800
となっている。中濃度浸炭層とは従来行われている浸炭
に比べて、浸炭層の炭素濃度が高いものをいう。
【0034】2.処理後の金属組織 上記浸炭および反応性スパッタリング処理を行った実施
例1の試料の断面を研磨・エッチングし、顕微鏡撮影を
2つの倍率にて行ない、それらの結果を図1(a),
(b)に示した。 3.表面硬度の測定 実施例1及び比較例1の試料について、試料表面のビッ
カ−ス硬度(Hv)を測定し、その結果を表2に示し
た。
【0035】4.耐摩耗性評価 上記プランジャキャップをラッシュアジャスタに組み込
み、このラッシュアジャスタを実際のディーゼルエンジ
ンに取付けた。実際のディーゼルエンジンで使用しカー
ボン粒子が多量に混入したエンジンオイルを作動油と
し、最高速連続運転を行った。
【0036】そして、上記エンジンに要求される耐久条
件(回転数、時間等)に応じて試験時間を設定し、プラ
ンジャキャップの球状頭部の面粗さ・かじり・焼き付き
発生の有無およびその程度を面粗さ計によって測定し、
各処理の効果を判断した。要求される耐久終了時間まで
達する前に不具合の発生したものは、途中で試験を打ち
切り、別の供試品に組み替えて試験を行った。
【0037】以上の結果を表2に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】(1)表1及び2から明らかなように、プラ
ンジャキャップ外面に浸炭層およびN過飽和Cr層を備
えた、表面硬度(Hv)が1500以上の硬化層が形成
されている本発明のラッシュアジャスタは、異常摩耗が
生じなかった。ただし、実施例1の試料では、異常摩耗
は発生しなかったが、N過飽和Cr層の厚みが、耐摩耗
性試験が終了した時点において、光学顕微鏡で確認する
ことが困難な程薄くなっていた。したがって、N過飽和
Cr層の厚みは、5μm以上であることが好ましい。
【0041】(2)プランジャキャップ外面に浸炭層のみ
を形成させた比較例1,2の場合は、異常摩耗が多量に
発生した。 (3)プランジャキャップ外面に浸炭層を形成させ、その
外層に表2に記載した処理を施した比較例3〜7の場合
は、異常摩耗が多量に発生した。 (4)プランジャキャップ外面に浸炭層を形成させ、その
外層に表2に記載した処理を施した比較例8〜10の場
合は、異常摩耗が一部に発生した。
【0042】以上のように本発明の優位性は明らかであ
るが、本発明の処理によって耐摩耗性が長時間持続する
原因について、図1を用いてさらに詳しく説明する。図
1に示されるように、実施例1においては、母材3の外
面に浸炭層2が形成され、その外側に厚み5μmのN過
飽和Cr層1が形成されている。N過飽和Cr層1は、
表1に示したように、Hv1500を超える極めて硬度
の高い層であり、プランジャキャップの耐摩耗性を向上
させている。そして、その下層の浸炭層2においては母
材3に向かって徐々に硬度が低下しており、既に述べた
よう、にN過飽和Cr層1に負荷された荷重は浸炭層2
に吸収された後に母材3へ分散する。その結果、上記荷
重の吸収・分散作用がより促進され、N過飽和Cr層1
の剥離がさらに防止されることになる。
【0043】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、ラッシュアジャスタの表面には浸炭層とN過飽
和Cr層から成る硬化層が形成され、最表層には硬度が
高く耐摩耗性に優れ、さらに初期なじみ、すべり性のよ
いN過飽和Cr層を有しているため、ラッシュアジャス
タの耐焼き付き性の向上、異常摩耗の低減を図ることが
できる。
【0044】さらに、硬度が高いN過飽和Cr層と母材
の間に、それらの中間の硬度を有する浸炭層が介在し、
母材に向かって硬度が急激に低下することがないので、
N過飽和Cr層に負荷された荷重は浸炭層に吸収された
後に母材へ分散し、N過飽和Cr層の変形・破損を防止
できる。特に、高い面圧を受け、負荷荷重の大きいラッ
シュアジャスタの球状頭部ではこの効果が大きく、従来
のラッシュアジャスタに比べて、ディーゼルエンジンの
ような過酷な摩耗環境下においても耐摩耗性を大幅に向
上させることができる。
【0045】そして、N過飽和Cr層の下層には、N過
飽和Cr層に比べて硬度が低いものの母材の深部まで硬
化処理を施すことが可能な浸炭層が形成され、コスト上
厚膜化が困難なN過飽和Cr層を支持し、表面処理に要
するコストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプランジャキャップ断面の金属組織を
表す図面代用写真である。
【図2】ラッシュアジャスタを内燃機関に組み込んだ状
態を示す断面図である。
【図3】ラッシュアジャスタを示す断面図である。
【符号の説明】
1 N過飽和Cr層 2 浸炭層 3 母材 10 ラッシュアジャスタ 11 ボディ 12 プランジャ 14 プランジャキャップ 14a プランジャキャップの球状頭部 14b プランジャキャップの摺動面

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の動弁機構に使用され、有底円
    筒状のボディに摺動自在に嵌入され、前記ボディと協働
    して前記動弁機構のクリアランスを零に保持するプラン
    ジャ手段を備えるラッシュアジャスタであって、 前記プランジャ手段の球状頭部には、浸炭層と、この浸
    炭層の外側に形成され、窒素を過飽和に固溶したCr層
    とから成る硬化層を備えていることを特徴とするラッシ
    ュアジャスタ。
  2. 【請求項2】 前記硬化層は、有効硬化深さ0.2〜
    0.5mmの前記浸炭層と厚み0.005〜0.020
    mmの前記窒素を過飽和に固溶したCr層とから成り、
    かつ、最表面の硬度がHv1500以上であることを特
    徴とする請求項1記載のラッシュアジャスタ。
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