JP2005030569A - カムフォロア - Google Patents
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Abstract
【課題】 硫酸イオンや硝酸イオンや煤などの不溶解成分の混入による摩耗や寿命低下を防止して長寿命なカムフォロアを安価に提供する。
【解決手段】 内周面に軌道を有するローラ22をニードルを介して外周面に軌道を有するローラ軸21によって回転自在に支持するカムフォロア1において、前記ローラ軸21の素材をβ型チタン合金又はα+β型チタン合金とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 内周面に軌道を有するローラ22をニードルを介して外周面に軌道を有するローラ軸21によって回転自在に支持するカムフォロア1において、前記ローラ軸21の素材をβ型チタン合金又はα+β型チタン合金とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、内燃機関、例えばディーゼルエンジン等、各種エンジンの動弁機構に使用されるカムフォロアの長寿命化に関する。
近年、エンジンのクランクシャフトと共に回転するカムシャフトに固定されたカムの動きをバルブに伝達する動弁機構において、駆動時の摩擦を滑り摩擦から転がり摩擦に変換することによって、摩擦部分の摩擦損失を低く抑えるために、カムフォロアが広く用いられている。
このカムフォロアは、カムのカム面に接するローラの挿入空間を挟んで相対向する一対の支持壁を有するローラ保持部がカムフォロア本体に一体に形成され、前記各支持壁を貫通するローラ軸孔内には、全長にわたって等径に形成されたローラ軸の両端部外周がそれぞれ嵌合され、このローラ軸の中間部に前記ローラがニードルを介して回転自在に支持されている(例えば特許文献1参照)。
このカムフォロアは、カムのカム面に接するローラの挿入空間を挟んで相対向する一対の支持壁を有するローラ保持部がカムフォロア本体に一体に形成され、前記各支持壁を貫通するローラ軸孔内には、全長にわたって等径に形成されたローラ軸の両端部外周がそれぞれ嵌合され、このローラ軸の中間部に前記ローラがニードルを介して回転自在に支持されている(例えば特許文献1参照)。
また、ローラ軸をカムフォロア本体に簡便かつ容易に固定するため、ローラ軸の転走面となる中央部のみに高周波焼入れを施して硬化させ、両端部は未硬化として、各支持壁の軸孔に挿入したローラ軸の端面をかしめることによりローラ軸の端部を拡張して、ローラ軸を軸孔にかしめ固定する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
更に、カムフォロアに使用されるローラやローラ軸のように、使用時に相手部材と転がり接触または滑り接触する摺動部品において、表面の耐久性を向上させるための表面性状の改良に関する各種発明が従来から行われている。
更に、カムフォロアに使用されるローラやローラ軸のように、使用時に相手部材と転がり接触または滑り接触する摺動部品において、表面の耐久性を向上させるための表面性状の改良に関する各種発明が従来から行われている。
例えば、表面性状を変える事により耐久性を向上させる為の技術として、転動面の表面にRmax が0.3〜1.5μmでランダム方向の擦傷を形成すると共に、表層部に490MPa(50kgf/mm2 )以上の残留応力層を形成した軸受転動体に関する技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。
更に、バレル加工により表面に多数の凹みをランダムに形成し、表層部の硬さを内部の硬さに比べて高くすると共に、表層部に圧縮残留応力を生じさせる技術が開示されている(例えば特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照)。
更に、バレル加工により表面に多数の凹みをランダムに形成し、表層部の硬さを内部の硬さに比べて高くすると共に、表層部に圧縮残留応力を生じさせる技術が開示されている(例えば特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照)。
更に、相手部材と接触する表面に表面硬化処理層を設けると共に、圧縮残留応力のピーク値の深さと、せん断応力分布のピーク値の深さとを一致させた軸受が開示されている(例えば特許文献7参照)。
更に、ショット・ピーニング加工により、圧縮残留応力を表面部分で980MPa(100kgf/mm2 )以上とし、表面下300μmの部分で392MPa(40kgf/mm2 )以上とした軸受部品が開示されている(例えば特許文献8参照)。
更に、ショット・ピーニング加工により、圧縮残留応力を表面部分で980MPa(100kgf/mm2 )以上とし、表面下300μmの部分で392MPa(40kgf/mm2 )以上とした軸受部品が開示されている(例えば特許文献8参照)。
更に、表面からの深さが0〜50μmの範囲を表層部とした場合に、この表層部の最大圧縮残留応力が490〜1078MPa(50〜110kgf/mm2 )であり、同じく表層部の硬さがHv830〜Hv960であり、表面粗さの平均波長が25μm以下で、且つ上記表層部の残留オーステナイトの割合が7体積%を越えるものとした転がり摺動部品に関する技術が開示されている(例えば特許文献9参照)。
また、この他にも、軸体の焼戻し温度よりも低い温度で、軸体の外周面をイオン窒化法または物理蒸着法により処理する技術が開示されている。ただし、この方法は非常に高コストである(例えば特許文献10参照)。
実開昭60−88016号公報
特開昭62−7908号公報
特公平1−30008号公報
特開平3−117723号公報
特開平3−117724号公報
特開平3−117725号公報
特開平3−199716号公報
特開平4−54312号公報
特開平5−288257号公報
特開平10−110720号公報
ディーゼルエンジンに組み込まれるカムフォロア装置の場合、このカムフォロア装置に供給される潤滑油中に、軽油の燃焼に伴って発生する「煤」や、その他の不溶解成分が混入している。煤その他の不溶解成分は、潤滑油を劣化させて潤滑不良を引き起こして、転がり面あるいは摺動面を損傷する原因となる。
また、煤その他の不溶解成分は、転がり面あるいは摺動面に介在した場合に研磨材の如き働きをする可能性があり、特に、相手面との接触面圧が高いローラ軸に異常摩耗が発生する虞れがある。
また、煤その他の不溶解成分は、転がり面あるいは摺動面に介在した場合に研磨材の如き働きをする可能性があり、特に、相手面との接触面圧が高いローラ軸に異常摩耗が発生する虞れがある。
さらに近年では、自動車の排出ガスに含まれる二酸化炭素量に対する規制がますます厳しくなっており、燃焼温度を低くして二酸化炭素の発生が抑制されているため、煤の発生量が多くなる傾向にある。
また、燃焼によって発生するNOx(窒素酸化物)が潤滑油中に混入して硝酸イオンとなり、腐食作用によって摩耗の進行を加速する。
また、燃焼によって発生するNOx(窒素酸化物)が潤滑油中に混入して硝酸イオンとなり、腐食作用によって摩耗の進行を加速する。
さらに、燃料中には硫黄が含有されており、燃焼によって発生するSOx(亜硫酸ガス等)が潤滑油中に混入して硫酸イオンを生成するため、潤滑効果が低下すると同時に腐食作用を伴なうことによって摩耗の進行が加速される。
ディーゼルエンジンにおいては、燃料としてガソリンよりも硫黄の含有量が高い軽油を使用するため、ガソリンエンジンの場合よりもローラ軸の摩耗の進行が速くなる。近年では、ディーゼルエンジンのNOx排出量を抑えるため、排出ガスの一部を燃焼室に戻すEGR(Exhaust Gas Recirculation )が使用されることによって潤滑油中の硫酸イオン濃度が増加する傾向にある。
ディーゼルエンジンにおいては、燃料としてガソリンよりも硫黄の含有量が高い軽油を使用するため、ガソリンエンジンの場合よりもローラ軸の摩耗の進行が速くなる。近年では、ディーゼルエンジンのNOx排出量を抑えるため、排出ガスの一部を燃焼室に戻すEGR(Exhaust Gas Recirculation )が使用されることによって潤滑油中の硫酸イオン濃度が増加する傾向にある。
このようにして、カムフォロアのローラ軸に発生した摩耗が進行すると、ローラ軸の外周面の一部でありカムフォロアを支持するニードルとの接触面に段付摩耗が発生する。そして、上記ローラ軸の外周面に存在する軌道の幅方向端部で、上記ニードルの転動面の端部と接触する部分に応力集中に基づくフレーキングが発生し、上記カムフォロアの回転支持部分の耐久性を損なう。
このような、潤滑油中への混入した硫酸イオンや硝酸イオン、煤等の不溶解成分による摩耗に対しては、前述した従来技術は必ずしも充分な耐久性向上の効果を得られない。例えば、潤滑性を良くするため表面の粗さや微細な形状に工夫を行ったり、ショット・ピーニングによってローラ軸表面の圧縮残留応力を高くしたり硬さを高くしても、腐食作用による摩耗の進行を抑制する効果は得られず、潤滑油中の煤を同時に接触面内に引き込むことになるため、返って摩耗が大きくなる虞れがある。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、ローラ軸の耐摩耗性および耐久性の向上を図ることにより、特に、ディーゼルエンジン用として好適に使用することができる長寿命なカムフォロアを安価に提供することを目的とする。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、ローラ軸の耐摩耗性および耐久性の向上を図ることにより、特に、ディーゼルエンジン用として好適に使用することができる長寿命なカムフォロアを安価に提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内周面に軌道を有するローラをニードルを介して外周面に軌道を有するローラ軸によって回転自在に支持するカムフォロアにおいて、
前記ローラ軸の素材がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記ローラ軸の素材に溶体化処理を行い、350〜600°Cで酸化処理を施したことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記ローラ軸の素材にガス窒化処理を施したことを特徴とする。
前記ローラ軸の素材がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記ローラ軸の素材に溶体化処理を行い、350〜600°Cで酸化処理を施したことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記ローラ軸の素材にガス窒化処理を施したことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ローラ軸の素材に潤滑被膜処理を施したことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記ローラ軸の軸端に焼き戻し処理を施したことを特徴とする。
本発明者等は、内燃機関、特にディーゼルエンジンに用いられるカムフォロアについて、硫酸イオンや硝酸イオン、煤等の不溶解成分等の混入によって生じるローラ軸の摩耗を防止し、上記目的を達成するために鋭意研究を行ってきた。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記ローラ軸の軸端に焼き戻し処理を施したことを特徴とする。
本発明者等は、内燃機関、特にディーゼルエンジンに用いられるカムフォロアについて、硫酸イオンや硝酸イオン、煤等の不溶解成分等の混入によって生じるローラ軸の摩耗を防止し、上記目的を達成するために鋭意研究を行ってきた。
その結果、ローラ軸に耐食性に非常に優れたチタン合金を用いることによって、大幅にカムフォロアの耐久性を向上させることができるという知見を得た。
耐食性および耐摩耗性に優れた材料としては従来からステンレス鋼やセラミックが広く用いられているが、セラミックは靭性が低いため衝撃荷重が負荷されるカムフォロアに用いることは困難である。チタン合金は、ステンレス鋼に比べ耐食性には極めて優れており、靭性についてはステンレス鋼と同等である。
耐食性および耐摩耗性に優れた材料としては従来からステンレス鋼やセラミックが広く用いられているが、セラミックは靭性が低いため衝撃荷重が負荷されるカムフォロアに用いることは困難である。チタン合金は、ステンレス鋼に比べ耐食性には極めて優れており、靭性についてはステンレス鋼と同等である。
ローラ軸として好適なチタン合金としては、熱処理によって高強度が得られるTi−6Al−4V、Ti−3Al−2.5V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo等のα+β型チタン合金、或いはTi−15Mo−5Zr、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−15V−3Sn−3Al−3Cr、Ti−10V−2Fe−3Al、Ti−3Al−8V−6Cr−4Zr、Ti−22V−3Al等のβ型(nearβ型含む)チタン合金がある。
上記チタン合金の中でも、β型チタン合金は高強度であり、しかも溶体化状態での冷間加工性に優れている。また、β型チタン合金の中でも、耐食性に優れたTi−15Mo系のチタン合金を用いることが好ましい、
チタン合金の表面には、ステンレス鋼と同様に安定な不動態膜が形成されており、チタン合金の不動態膜はTiO2 等の酸化物であるが不動態膜を形成するために必要な不動態化電位が低いため、塩酸や硫酸等の非酸化性の酸に対しても優れた耐食性を発揮することができる。
チタン合金の表面には、ステンレス鋼と同様に安定な不動態膜が形成されており、チタン合金の不動態膜はTiO2 等の酸化物であるが不動態膜を形成するために必要な不動態化電位が低いため、塩酸や硫酸等の非酸化性の酸に対しても優れた耐食性を発揮することができる。
なお、チタン合金は溶体化処理を施した後に時効処理を施すことによって硬化できるが、HRC40〜50程度の硬さしか得られず、そのままでは必ずしも充分な耐摩耗性が得られない。このため、時効処理の後に大気中で加熱する酸化処理や、ガス窒化処理、ホウ化処理等の表面硬化処理を施すのが好ましい。表面硬化処理には、CVD法またはPVD法によるTiC或いはTiNのコーティング処理やイオン注入等の表面処理を用いても良い。或いは、二硫化モリブデン、二硫化タングステンまたはフッ素重合体等からなる潤滑性被膜処理を用いても耐摩耗性向上の効果が得られる。
また、チタン合金を700°C以上の高温で酸化処理した場合、表面に生成される酸化物層はルチル型TiO2 が主体となり、酸化物層の厚さが増大すると共に表面粗さも増大するが、一方、チタン合金を350〜600°Cの低温で酸化処理した場合は、表面に形成される酸化物層がルチル型TiO2 やTi3 O等のTiOx酸化物(0<X<2)およびTiとが混在する緻密な層となり、高温で酸化処理した場合と比べて表面粗さが小さくなる。この350〜600°Cという温度はチタン合金を溶体化処理後に行う時効処理の温度と同一温度範囲であるため、酸化処理と時効処理を兼ねることが可能であり、工数増加によるコストアップを防ぐためには表面硬化処理として酸化処理を用いることが好ましい。
以上のようにすれば、耐食性および耐摩耗性に優れたローラ軸を得ることができるが、時効処理を行ったチタン合金は非常に脆く、カムフォロア本体に固定する場合にかしめることができない。
一方、チタン合金は、鉄鋼材料と比較して熱伝導率が非常に小さいため、高周波加熱を用いれば部分加熱を精度良く実施することが可能であり、時効処理後に軌道面に熱影響を与えることなく端部を焼き戻すことができる。
一方、チタン合金は、鉄鋼材料と比較して熱伝導率が非常に小さいため、高周波加熱を用いれば部分加熱を精度良く実施することが可能であり、時効処理後に軌道面に熱影響を与えることなく端部を焼き戻すことができる。
また、上記目的を達成するために、請求項6に係る発明は、内周面に軌道を有するローラをニードルを介して外周面に軌道を有するローラ軸によって回転自在に支持するカムフォロアにおいて、
前記ローラ軸の素材をオーステナイト系ステンレス鋼として、冷間加工を施すことで完成品軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さをHv300以上、且つ該ローラ軸の最表面硬さと前記ローラの硬さとの比を0.3以上とし、更に、前記ローラ軸端部のビッカース硬さをHv200以上としたことを特徴とする。
前記ローラ軸の素材をオーステナイト系ステンレス鋼として、冷間加工を施すことで完成品軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さをHv300以上、且つ該ローラ軸の最表面硬さと前記ローラの硬さとの比を0.3以上とし、更に、前記ローラ軸端部のビッカース硬さをHv200以上としたことを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項6において、前記ローラ軸の軌道面部の加工率が20%以上であることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項6又は7において、前記ローラ軸の端部及び端面の硬さがHv200以上Hv300以下であることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項6〜8のいずれか一項において、前記ローラ軸の端部の加工率が20%以下であることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項6又は7において、前記ローラ軸の端部及び端面の硬さがHv200以上Hv300以下であることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項6〜8のいずれか一項において、前記ローラ軸の端部の加工率が20%以下であることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項6〜9のいずれか一項において、前記ローラ軸の素材に冷間加工を施し、400°C以上540°C以下で浸炭処理を行ったことを特徴とする。
請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか一項において、各種エンジンに使用されることを特徴とする。
従来から転動装置には、JIS鋼種であるSUJ2が使用されることが多い。しかし、SUJ2は腐食環境下において錆や腐食等に弱く、耐食性が必要とされる場合には、通常ステンレス鋼を用いる場合が多い。
請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか一項において、各種エンジンに使用されることを特徴とする。
従来から転動装置には、JIS鋼種であるSUJ2が使用されることが多い。しかし、SUJ2は腐食環境下において錆や腐食等に弱く、耐食性が必要とされる場合には、通常ステンレス鋼を用いる場合が多い。
転動装置用途に使用されるステンレス鋼として一般的なものに、JIS鋼種であるSUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼がある。マルテンサイト系ステンレス鋼は、他のステンレス鋼と比較して炭素含有量が高いため、硬化熱処理を施すと高い硬度が得られる。しかしながら、耐食性では他のステンレス鋼に劣るため、さらに耐食性を要求される場合には、JIS鋼種であるSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼やJIS鋼種であるSUS430等のフェライト系ステンレス鋼が使用される。
ところが、オーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼等は耐食性に優れるものの、素材のままでは概ねビッカース硬さがHv200以下であり、耐摩耗性や転動疲労寿命を十分に満足することが出来ない。
そこで、これらのステンレス鋼の硬さを向上させるために、冷間加工等で加工硬化をさせて転動装置用途に使用されることがある。特にオーステナイト系ステンレス鋼は加工硬化性が高いため、耐摩耗性や転動疲労寿命を確保しやすい。
そこで、これらのステンレス鋼の硬さを向上させるために、冷間加工等で加工硬化をさせて転動装置用途に使用されることがある。特にオーステナイト系ステンレス鋼は加工硬化性が高いため、耐摩耗性や転動疲労寿命を確保しやすい。
ここで、本発明でいうオーステナイト系ステンレス鋼とは、例えば、日本工業規格JISG4303、米国鉄鋼協会規格AISI13−74、英国規格BS970part4−70若しくは1449part2−75、ドイツ規格DIN17440−72若しくは17224−68等に記載されているオ−ステナイト系ステンレス鋼を指す。これらの中でも特にCr/Ni比が大きい素材の方が加工硬化しやすいため、加工率を少なくして高い硬度が得やすいという利点がある。 ディーゼルエンジン用のタペットローラにおいては、潤滑油中に硫酸イオンや硝酸イオンが含まれる腐食環境下にあるため、摺動部や転動部には腐食摩耗が生ずる。特にタペットローラの場合、ローラ軸が固定されており、常にカム方向からの荷重を受けるため、上記した様な腐食摩耗はローラ軸の荷重負荷圈に発生しやすい。よって、ローラ軸の腐食摩耗を抑制するためにも、少なくともローラ軸をオーステナイト系ステンレス鋼で形成し、さらに冷間加工で加工硬化させることで、軌道面の最表面のビッカース硬さをHv300以上とする必要があり、好ましくはHv350以上とする。
ここで、最表面の硬さとは、完成品の軌道面表面についてビッカース硬さ試験機で測定した値を指す。また、動疲労寿命を最低限確保するために、軌道面表面から0.1mm深さのビッカース硬さ(表面硬さ)についてもHv300以上とする必要があり、より好ましくはHv350以上とする。
軌道面表面から0.1mmの深さとは、ローラ軸に作用する最大せん断応力位置の凡その限界深さである。
軌道面表面から0.1mmの深さとは、ローラ軸に作用する最大せん断応力位置の凡その限界深さである。
また、ローラの硬度がローラ軸の最表面の硬度に比して余りに高すぎると、ローラ軸の腐食摩耗を促進させるといった問題が生じる。例えば、ローラにセラミックスを使用すれば、ローラ自体の腐食摩耗量を減少させることができるものの、ローラ軸の最表面硬度によってはセラミックスとの硬度差が過大となるため、ローラ軸の腐食摩耗量をより増加させてしまう虞れがある。そのため、ローラ軸の最表面の硬度は、ローラの硬度との比率が一定以上になるようにする必要があり、ローラ軸最表面のビッカース硬さは、ローラのビッカース硬さとの比が0.3以上とする。
タペットローラの両端部は、かしめやピン等で支持部材に固定されるため、軸の両端部の硬度が不足していると、軸の緩みや脱落が生ずる虞れがある。さらには、タペットローラはエンジンの回転に同期して回転するカムにより、ローラ軸に対してラジアル方向への上下運動が付与されることから、ローラ軸には繰り返しせん断応力が作用する。
そのため、ローラ軸の支持部材との固定部であるローラ軸端部の硬度は一定以上にしなければならず、ビッカース硬さでHv200以上とする必要がある。なお、かしめ固定を行う場合のローラ軸端部の硬さは、かしめ固定の生産性やコストの面から、Hv200以上Hv300以下とすることが好ましい。
そのため、ローラ軸の支持部材との固定部であるローラ軸端部の硬度は一定以上にしなければならず、ビッカース硬さでHv200以上とする必要がある。なお、かしめ固定を行う場合のローラ軸端部の硬さは、かしめ固定の生産性やコストの面から、Hv200以上Hv300以下とすることが好ましい。
さらに、ローラ軸を冷間加工により硬化した上、浸炭処理による表面硬化層を設ければさらに長寿命化が期待できる。一般に、オーステナイト系ステンレス鋼の表面にはCr等の酸化物である不動態被膜が形成され、通常の方法で浸炭を行っても、この不動態被膜が炭素原子の浸入を妨げるため、効果的に浸炭処理を行うことができない。放電現象を利用したプラズマ浸炭の手法を用いれば、浸炭は可能ではあるが、放電現象を利用することから、量産性に欠けるという問題点がある。
そこで、一般的には、800°C以上の温度で浸炭処理することにより、表面層に相当量の炭化物又は炭窒化物を析出させて硬化させるしか有効な方法はない。
しかしながら、このような手法では、表面においてCrの炭化物や炭窒化物の析出に伴い、母相のCr含有率が少なくなるため、耐食性は低下するという問題がある。
そこで、上記のような問題点を解決するために、本発明における浸炭方法として、次のような方法が採用される。
しかしながら、このような手法では、表面においてCrの炭化物や炭窒化物の析出に伴い、母相のCr含有率が少なくなるため、耐食性は低下するという問題がある。
そこで、上記のような問題点を解決するために、本発明における浸炭方法として、次のような方法が採用される。
まず、Cr酸化物等で形成される不動態被膜の除去を行うために、浸炭処理を行う前にフッ化処理を行う。フッ化処理を行えば、酸化被膜がフッ化膜へと変化して、極めて活性化するため、効果的に浸炭処理を行うことが可能となる。フッ化処理は、例えば、NF3 (三フッ化窒素)等のフッ素系ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気中で、200°C〜400°C程度に加熱保持する。
浸炭処理の方法は、RXガス又はRXガスとCO2 との混合ガスの雰囲気中で、例えば400°C以上540°C以下に加熱保持するか、あるいはアセチレン又はエチレン等の不飽和炭化水素ガスを用いて133Pa以下の減圧下で同様に400°C以上540°C以下に加熱保持する。浸炭温度の上限を540°Cとしたのは、浸炭処理温度が540°Cを超えた場合、浸炭により浸入した炭素がCr等の炭化物を形成し、耐食性が低下する虞れがあるためである。浸炭温度が540°C以下の場合は、浸入した炭素が炭化物を形成することなく、オーステナイトの面心立方格子のすき間に固溶し、固溶強化及び転位を固着することにより硬化するため、耐食性は殆ど損なわれない。
また、浸炭温度が400°C未満の場合は、炭素の固溶拡散速度が遅く、必要な硬化層厚さを得ようとすると処理時間が長くなり、生産性が低下する虞れがある。以上の理由から浸炭温度は400°C以上540°C以下とすることが好ましく、上記に述べた問題や不都合が生じにくくするためには、460°C以上520°C以下とすることが好ましい。
ここで、RXガスを用いる浸炭処理の場合には、CO2 ガスによるFeの酸化が同時に起こり、浸炭層の上にFe3 O4 からなる黒色の酸化層が形成され、耐食性が低下する。そのため、浸炭処理後には酸洗処理等を施してこれを除去することが好ましい。酸洗処理に用いる処理液には、フッ酸、硝酸、塩酸、硫酸あるいはこれらの混合液等を用いることができる。また、不飽和炭化水素ガスによる浸炭処理の場合には、前述した酸化物の形成が抑制されるため、浸炭処理後にソフトブラストを施す程度でもよい。この方法ではスーティングの発生も抑制できるためより好ましい方法である。
なお、本発明によれば、浸炭処理温度がA1 変態点以下であり、変態を伴わない処理であるため、寸法変化は殆ど無い。そのため、浸炭処理を行う前に所定の形状寸法に加工しておけば、浸炭処理後に旋削、研削、研磨、超仕上げ等の加工を行わなくても完成品として使用できる。もちろんこれらの加工を施してもよく、これらの加工で浸炭処理後に形成される前記の酸化物層を除去できる場合は、必ずしも酸洗処理やソフトブラストを施さなくてもよい。
上記のような処理を施すことで、ローラ軸の表面には安定した硬さが得られ、ローラ軸の軸端部もHv200以上の硬度が確保されるため、優れた耐腐食摩耗性と耐久性を有する。十分な耐腐食摩耗性を確保するためには最表面(浸炭硬化層)の硬さはHv650以上であることが好ましく、より好ましくはHv800以上とする。
硬化層の深さは、耐摩耗性を向上させるのであれば少なくとも10μm以上とする。また、Hv650を超える硬化層深さは生産性の関係から50μm以下とすることが好ましい。また、表面から0.1mm深さのビッカース硬さはHv300以上とすることが好ましい。
硬化層の深さは、耐摩耗性を向上させるのであれば少なくとも10μm以上とする。また、Hv650を超える硬化層深さは生産性の関係から50μm以下とすることが好ましい。また、表面から0.1mm深さのビッカース硬さはHv300以上とすることが好ましい。
次に、ローラ軸の製造方法について、いくつかの好ましい方法について述べる。
ローラ軸の素材には、オ−ステナイト系ステンレス鋼の棒材もしくは管材を使用する。素材には例えば日本工業規格JISG4303等に記載されている条件により固溶化熱処理を施す。固溶化熱処理が施された素材に、目標の寸法及び硬度が得られるまで冷間加工を行う。冷間加工の方法は、冷間引抜き加工の他、ローリング加工等いかなる手法を用いても良い。完成品における表面硬さがHv300以上とするためには、この冷間加工で加工率を20%以上としておくことが好ましい。冷間加工が完了した棒材もしくは管材は、所定の長さに切断し、各部の寸法を目標の寸法となるまで加工を行う。
ローラ軸の素材には、オ−ステナイト系ステンレス鋼の棒材もしくは管材を使用する。素材には例えば日本工業規格JISG4303等に記載されている条件により固溶化熱処理を施す。固溶化熱処理が施された素材に、目標の寸法及び硬度が得られるまで冷間加工を行う。冷間加工の方法は、冷間引抜き加工の他、ローリング加工等いかなる手法を用いても良い。完成品における表面硬さがHv300以上とするためには、この冷間加工で加工率を20%以上としておくことが好ましい。冷間加工が完了した棒材もしくは管材は、所定の長さに切断し、各部の寸法を目標の寸法となるまで加工を行う。
この方法により製造されたローラ軸は、図4に示すように、軸方向にほぼ均一に冷間加工されており、軸方向全体にわたり、少なくとも表面硬さがHv300以上とされている。
ここで、ローラ軸の軸端部を加締め固定する場合は、図5に示すように、ビッカース硬さをHv200以上300以下にすることが好ましく、軸両端部を何らかの方法で硬さを低下させることが好ましい。軸両端部の硬さを低下させるためには、例えば、図6に示すように、冷間加工を施した軸において、完成品の軸両端部に当たる部分を高周波加熱等の短時間部分加熱で軟化させてもよく、また、図7に示すように、冷間加工を施した軸を切断してから、その完成品の両端部にあたる部分のみを高周波加熱等の短時間部分加熱で軟化させてもよい。加熱温度はその素材の再結晶温度以上とし、ビッカース硬さがHv200以上Hv300以下となるように温度と加熱時間を調整する。
ここで、ローラ軸の軸端部を加締め固定する場合は、図5に示すように、ビッカース硬さをHv200以上300以下にすることが好ましく、軸両端部を何らかの方法で硬さを低下させることが好ましい。軸両端部の硬さを低下させるためには、例えば、図6に示すように、冷間加工を施した軸において、完成品の軸両端部に当たる部分を高周波加熱等の短時間部分加熱で軟化させてもよく、また、図7に示すように、冷間加工を施した軸を切断してから、その完成品の両端部にあたる部分のみを高周波加熱等の短時間部分加熱で軟化させてもよい。加熱温度はその素材の再結晶温度以上とし、ビッカース硬さがHv200以上Hv300以下となるように温度と加熱時間を調整する。
高周波加熱では軟化させたい部分のみを加熱させることができるが、熱伝導が生じるために、加熱条件によっては軟化させる必要の無い部分も軟化される場合がある。そこで、軟化させる必要の無い部分には冷却を施してもよい。
短時間加熱に高周波加熱を用いた場合の好ましい冷却方法の一例を図8〜図11に示す。
図中に示されている冷却媒体は液体、気体、固体の何れでもよく、これらの混合体でもよい。また、熱伝導率の高い物質を選択することが好ましい。図8は図6の方法にてローラ軸を製造する場合の、非加熱部の冷却方法である(方法1)。図9は図7の方法にてローラ軸を製造する場合の、非加熱部の冷却方法である(方法2)。
短時間加熱に高周波加熱を用いた場合の好ましい冷却方法の一例を図8〜図11に示す。
図中に示されている冷却媒体は液体、気体、固体の何れでもよく、これらの混合体でもよい。また、熱伝導率の高い物質を選択することが好ましい。図8は図6の方法にてローラ軸を製造する場合の、非加熱部の冷却方法である(方法1)。図9は図7の方法にてローラ軸を製造する場合の、非加熱部の冷却方法である(方法2)。
また、図10及び図11は、図7の方法にてローラ軸を製造する場合の、非加熱部の冷却方法であり、冷却媒体を入れ替えられる構造にしたものである(それぞれ方法3及び方法4とする)。これらはあくまで事例であり、軟化させる必要の無い部分を冷却できる方法であればいずれの方法を用いてもよい。
また、図5に示す様なローラ軸を得る別の方法として、冷間加工の加工度を両端のみ少なくなるようにしてもよい。図12に示す方法では、素材に冷間加工を施す際に、完成品で軌道部に相当する部分のみ加工度を高くして、Hv300以上となるようにし、軸端部に相当する部分は加工度を調整することで、Hv200以上Hv300以下となるようにして、後に旋削等で除去加工を行う(方法5)。
また、図5に示す様なローラ軸を得る別の方法として、冷間加工の加工度を両端のみ少なくなるようにしてもよい。図12に示す方法では、素材に冷間加工を施す際に、完成品で軌道部に相当する部分のみ加工度を高くして、Hv300以上となるようにし、軸端部に相当する部分は加工度を調整することで、Hv200以上Hv300以下となるようにして、後に旋削等で除去加工を行う(方法5)。
なお、この方法は単なる事例であり、このように冷間加工の加工度を部分的に調整することで図5に示すローラ軸が得られるのであれば、いがなる製造方法・順序をとってもよい。
例えば、図13に示すように、素材に冷間加工を施す前に、切断加工で軸を所定長さに加工しておき、それから冷間加工を行ってもよい(方法6)。
また、いずれの方法においても、冷間加工だけでなく、切削、研削、研磨、超仕上げ加工を組み合わせてよい。なお、完成品の転動面の表面粗さはRaで0.2μm以下とされていることが好ましい。
例えば、図13に示すように、素材に冷間加工を施す前に、切断加工で軸を所定長さに加工しておき、それから冷間加工を行ってもよい(方法6)。
また、いずれの方法においても、冷間加工だけでなく、切削、研削、研磨、超仕上げ加工を組み合わせてよい。なお、完成品の転動面の表面粗さはRaで0.2μm以下とされていることが好ましい。
本発明によれば、硫酸イオンや硝酸イオンや煤などの不溶解成分の混入による摩耗や寿命低下を防ぐことができ、特に、ディーゼルエンジン用として好適に使用することができる長寿命なカムフォロアを安価に提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。
先ず、図1を参照して、本発明の第1の態様の実施の形態(請求項1〜5、請求項11に対応)であるカムフォロアを4サイクル内燃機関の動弁機構に用いた場合を説明する。 図1において、カムフォロア1の本体としてのロッカーアーム2は、その長手方向中間部に軸孔3が形成されており、軸孔3に貫通されたロッカー軸4によって、内燃機関の機関本体(図示せず)に回転自在に支持される。ロッカーアーム2の基部には、アジャストボルト11がねじ込まれており、そのねじ込み位置はロックナット12によって固定される。アジャストボルト11の下端には、機関本体(図示せず)に上下摺動可能に支持された機関弁13としての吸気弁または排気弁の上端が当接される。機関弁13は、弁ばね14によって常に閉弁方向(アジャストボルト11との当接方向)へ付勢されている。
先ず、図1を参照して、本発明の第1の態様の実施の形態(請求項1〜5、請求項11に対応)であるカムフォロアを4サイクル内燃機関の動弁機構に用いた場合を説明する。 図1において、カムフォロア1の本体としてのロッカーアーム2は、その長手方向中間部に軸孔3が形成されており、軸孔3に貫通されたロッカー軸4によって、内燃機関の機関本体(図示せず)に回転自在に支持される。ロッカーアーム2の基部には、アジャストボルト11がねじ込まれており、そのねじ込み位置はロックナット12によって固定される。アジャストボルト11の下端には、機関本体(図示せず)に上下摺動可能に支持された機関弁13としての吸気弁または排気弁の上端が当接される。機関弁13は、弁ばね14によって常に閉弁方向(アジャストボルト11との当接方向)へ付勢されている。
ロッカーアーム2の先端部には、ローラ22がローラ軸21を介して回転自在に取り付けられ、ローラ22の外周面は、前記弁ばね14によってカム15に圧接されている。カム15は、クランク軸(図示せず)に連動して回転するカム軸16に一体に形成され、機関本体(図示せず)に回転自在に支持されている。
そして、カム15が回転することによって、ローラ22を介してカム15に当接するロッカーアーム2がロッカー軸4回りに揺動し、機関弁13の開閉動作を行う。
そして、カム15が回転することによって、ローラ22を介してカム15に当接するロッカーアーム2がロッカー軸4回りに揺動し、機関弁13の開閉動作を行う。
次に、図2を参照して、ローラ22およびローラ軸21の取付け構造を具体的に説明する。
図2は、ロッカーアーム2の断面図であるが、ロッカーアーム2の一部であるローラ軸21の支持部材5は断面略コ字状をなしており、平行に延びて互いに対向する2つの支持壁5aを有している。各支持壁5aの間には、ローラ軸21の外周面に備えられた軌道面21aとローラ22の内周面に備えられた軌道面22aとの間に転動自在に配設された複数のニードル23を介してローラ22がローラ軸21に回転自在に支持されている。
図2は、ロッカーアーム2の断面図であるが、ロッカーアーム2の一部であるローラ軸21の支持部材5は断面略コ字状をなしており、平行に延びて互いに対向する2つの支持壁5aを有している。各支持壁5aの間には、ローラ軸21の外周面に備えられた軌道面21aとローラ22の内周面に備えられた軌道面22aとの間に転動自在に配設された複数のニードル23を介してローラ22がローラ軸21に回転自在に支持されている。
ローラ軸21は、両支持壁5aに設けられた軸孔6に嵌入され、ローラ軸21の端面21bが支持壁5aの外面5bと概ね同一面をなしている。この状態で、ローラ軸21の端面21bを打刻することによってローラ軸21の端縁部が拡大し、ローラ軸21は軸孔6に強固にかしめ固定される。なお、ローラ軸21は、軽量化やかしめ加工を容易にするため軸の中心部の肉抜きを行ったり、中空軸とすることもできる。また、かしめ以外の方法で固定しても構わない。
続いて、上記ローラ軸とほぼ同様の軸を用いて耐久試験を行った結果について説明する。表1に、試験に用いた材料名を示す。
続いて、上記ローラ軸とほぼ同様の軸を用いて耐久試験を行った結果について説明する。表1に、試験に用いた材料名を示す。
表1の材料A〜Gを用いて、外径φ8mm、長さ19mmのローラ軸を作製し、耐久試験を行った。チタン合金A〜Eを用いたローラ軸の製造工程としては、下記3種類の方法を用いた。
製造工程I
先ず、素材から所定の形状寸法に旋削加工および研削加工を行った後、溶体化処理を施した。溶体化処理の条件としては、α+β型チタン合金である記号Aは900°C〜1050°Cの温度で1〜2時間、β型チタン合金である記号B〜Eについては700°C〜850°Cの温度で1〜2時間、真空中で加熱した後水冷を行った。なお、溶体化処理の雰囲気としては、不活性ガス(Ar等)や大気中で行っても同様の効果が得られる。続いて、外周面に研磨仕上げを施し、時効処理と酸化処理を兼ねて、350°C〜500°Cの温度で10〜60時間、大気中で加熱保持した後炉冷を行った。さらに、軸端から約2mmまでの部分を高周波加熱によって焼戻しを行い、Hv300以下の硬さになるよう調整して実験に用いた。
製造工程I
先ず、素材から所定の形状寸法に旋削加工および研削加工を行った後、溶体化処理を施した。溶体化処理の条件としては、α+β型チタン合金である記号Aは900°C〜1050°Cの温度で1〜2時間、β型チタン合金である記号B〜Eについては700°C〜850°Cの温度で1〜2時間、真空中で加熱した後水冷を行った。なお、溶体化処理の雰囲気としては、不活性ガス(Ar等)や大気中で行っても同様の効果が得られる。続いて、外周面に研磨仕上げを施し、時効処理と酸化処理を兼ねて、350°C〜500°Cの温度で10〜60時間、大気中で加熱保持した後炉冷を行った。さらに、軸端から約2mmまでの部分を高周波加熱によって焼戻しを行い、Hv300以下の硬さになるよう調整して実験に用いた。
製造工程II
素材から所定の形状寸法に旋削加工および研削加工を行った後ガス窒化処理を施し、引き続き溶体化処理、時効処理および端部高周波焼戻しの熱処理を行い、最後に研磨仕上げを施して実験に用いた。
ガス窒化処理は、溶体化処理温度以上の温度で行うと結晶粒が粗大化して転がり疲労強度が低下する虞れがあり、また、温度が低すぎると均一な窒化層が得られ難くなるため、溶体化処理温度よりも低い温度で行うことが好ましい。本実施形態例においては、α+β型チタン合金の場合は700°C〜850°C、β型チタン合金の場合は500°C〜650°Cの温度範囲で5〜10時間の窒化処理を施した。また、溶体化処理については、雰囲気としてArガスを用いた以外は製造工程Iと同じ条件で行った。時効処理、端部の高周波焼戻し処理についても製造工程Iと同じ条件範囲である。
素材から所定の形状寸法に旋削加工および研削加工を行った後ガス窒化処理を施し、引き続き溶体化処理、時効処理および端部高周波焼戻しの熱処理を行い、最後に研磨仕上げを施して実験に用いた。
ガス窒化処理は、溶体化処理温度以上の温度で行うと結晶粒が粗大化して転がり疲労強度が低下する虞れがあり、また、温度が低すぎると均一な窒化層が得られ難くなるため、溶体化処理温度よりも低い温度で行うことが好ましい。本実施形態例においては、α+β型チタン合金の場合は700°C〜850°C、β型チタン合金の場合は500°C〜650°Cの温度範囲で5〜10時間の窒化処理を施した。また、溶体化処理については、雰囲気としてArガスを用いた以外は製造工程Iと同じ条件で行った。時効処理、端部の高周波焼戻し処理についても製造工程Iと同じ条件範囲である。
製造工程III
素材から所定の形状寸法に旋削加工を行った後溶体化処理、時効処理および端部高周波焼戻しの熱処理を行い、続いて研削加工および研磨によって仕上げを施した後、最後に潤滑被膜処理を施して実験に用いた。溶体化処理を大気中で行った以外の熱処理条件は、製造工程Iと同じ条件範囲である。潤滑被膜処理としては、官能基を有するフッ素重合体の被膜処理を用いた。
素材から所定の形状寸法に旋削加工を行った後溶体化処理、時効処理および端部高周波焼戻しの熱処理を行い、続いて研削加工および研磨によって仕上げを施した後、最後に潤滑被膜処理を施して実験に用いた。溶体化処理を大気中で行った以外の熱処理条件は、製造工程Iと同じ条件範囲である。潤滑被膜処理としては、官能基を有するフッ素重合体の被膜処理を用いた。
なお、比較例として用いた記号FおよびGの材料を用いたローラ軸の作製は、素材から所定の形状寸法に旋削加工を行った後熱処理を施し、さらに仕上研削を行った。なお、熱処理としては、高周波焼入れを施した後、焼戻しを施している。高周波焼入れは、周波数30kHz、電圧10kV、電流10Aの条件で行い、焼戻しは、423K〜453Kの温度で2時間保持する条件で行った。
以上の様に作製した試験片について、図3に示す試験装置による耐久試験を行った。
この試験装置は、モータ(図示せず)により回転する主軸30に取り付けた駆動ローラ31の外周面に、支持部材5に取り付けたローラ22の外周面を押し当てる構造となっている。ローラ22は、上記の様に作製した試験片であるローラ軸21によってニードル(外径φ2.5mm、長さ12mm)23を介して回転自在に支持されている。この様にして、実際のカムフォロアと略同等の構造をなしている。
この試験装置は、モータ(図示せず)により回転する主軸30に取り付けた駆動ローラ31の外周面に、支持部材5に取り付けたローラ22の外周面を押し当てる構造となっている。ローラ22は、上記の様に作製した試験片であるローラ軸21によってニードル(外径φ2.5mm、長さ12mm)23を介して回転自在に支持されている。この様にして、実際のカムフォロアと略同等の構造をなしている。
そして、支持部材5より荷重を加えながら主軸30を回転させることにより、駆動ローラ31の回転に伴なってローラ22が回転し、そのローラ22を支持する試験片であるローラ軸21の耐久試験を行うことができる。
試験条件としては、ラジアル荷重2500N、回転速度10000min-1で、煤および硫酸を混入したエンジンオイルを跳ね掛けることにより供給しながら耐久試験を行った。評価は、試験開始から20時間後の摩耗量を測定することによって行った。摩耗量の測定は、ローラ軸21、ニードル23およびローラ22から構成される試験部のラジアル方向にわたる隙間を測定することによって摩耗量とした。
試験結果を表2に示す。なお、摩耗量は、従来例であるNo.17の摩耗量を1として、それぞれの比で示している。
試験条件としては、ラジアル荷重2500N、回転速度10000min-1で、煤および硫酸を混入したエンジンオイルを跳ね掛けることにより供給しながら耐久試験を行った。評価は、試験開始から20時間後の摩耗量を測定することによって行った。摩耗量の測定は、ローラ軸21、ニードル23およびローラ22から構成される試験部のラジアル方向にわたる隙間を測定することによって摩耗量とした。
試験結果を表2に示す。なお、摩耗量は、従来例であるNo.17の摩耗量を1として、それぞれの比で示している。
表2から明らかなように、本発明例であるNo.1〜No.15のローラ軸は、試験後にも殆んど摩耗が認められなかった。
これに対し、比較例であるNo.16は、軸受用鋼としては耐食性に優れているマルテンサイト系ステンレス鋼であるが、チタン合金と比べると耐食性に劣るため、摩耗量低減の効果が小さい。
上記試験結果から明らかなように、本発明のカムフォロアは、煤等の不溶解成分の混入だけでなく酸が混入した厳しい潤滑条件下においても、優れた耐摩耗性を有していることが分る。
これに対し、比較例であるNo.16は、軸受用鋼としては耐食性に優れているマルテンサイト系ステンレス鋼であるが、チタン合金と比べると耐食性に劣るため、摩耗量低減の効果が小さい。
上記試験結果から明らかなように、本発明のカムフォロアは、煤等の不溶解成分の混入だけでなく酸が混入した厳しい潤滑条件下においても、優れた耐摩耗性を有していることが分る。
次に、本発明の第2の態様の実施の形態(請求項6〜11に対応)であるカムフォロアを説明する。なお、この実施の形態のカムフォロアについてもその基本的構造は上記第1の態様の実施の形態と同様であるため、図1及び図2を流用して説明する。
このカムフォロアは、ローラ軸21の素材がオーステナイト系ステンレス鋼とされ、冷間加工を施すことで完成品軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さがHv300以上、且つ該ローラ軸21の最表面硬さとローラ22の硬さとの比が0.3以上とされ、更に、ローラ軸21の端部のビッカース硬さがHv200以上とされている。
このカムフォロアは、ローラ軸21の素材がオーステナイト系ステンレス鋼とされ、冷間加工を施すことで完成品軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さがHv300以上、且つ該ローラ軸21の最表面硬さとローラ22の硬さとの比が0.3以上とされ、更に、ローラ軸21の端部のビッカース硬さがHv200以上とされている。
また、ローラ軸21はかしめ固定を行う場合においては、両端部がHv200以上Hv300以下とされている。なお、軽量化のため又は加締め加工を容易にするために、中心部を肉抜き状としてもよいし中空軸としてもよい。また、加締め以外の方法(ピン止め等)でローラ軸21を容易に固定できる場合は、ローラ軸21端部の上限硬度は制限する必要はない。
次に、表3のステンレス鋼及び軸受鋼を用いて、外径φ12mm、長さ22mmのローラ軸を作製し、耐久試験を行った。
次に、表3のステンレス鋼及び軸受鋼を用いて、外径φ12mm、長さ22mmのローラ軸を作製し、耐久試験を行った。
ローラ軸は、素材に日本工業規格JISG4303等に記載されている条件により固溶化熱処理を施し、上記した方法5(図12参照)にて加工成形を行った。また、ローラ軸に軸受鋼を使用したものでは所定の形状に加工した後に、840°C程度で軌道面のみ高周波焼入れを行い、160°Cで2時間の条件で焼戻しを行った。熱処理後には仕上げ加工を施した。
次に、図3と同様の試験装置を使用してローラ軸の耐久試験を行った。
ローラ22は、試験片であるローラ軸21によって、ニードル(外径φ3mm、長さ14mm)23を介して回転自在に支持され、実際のカムフォロアと概略同等の構造をなしている。そして、支持部材5より荷重を加えながら主軸30を回転させることにより、駆動ローラ31の回転に伴ってローラ22が回転し、そのロ−ラ22を支持する試験片であるローラ軸21の耐久試験を行った。
ローラ22は、試験片であるローラ軸21によって、ニードル(外径φ3mm、長さ14mm)23を介して回転自在に支持され、実際のカムフォロアと概略同等の構造をなしている。そして、支持部材5より荷重を加えながら主軸30を回転させることにより、駆動ローラ31の回転に伴ってローラ22が回転し、そのロ−ラ22を支持する試験片であるローラ軸21の耐久試験を行った。
試験条件は次の通りである。
試験条件
ローラ回転速度:6000min-1
ラジアル荷重:500N
潤滑油:硫酸イオン、硝酸イオン、煤その他の不溶解成分が混入したエンジンオイル
潤滑油pH:2〜3
潤滑油温度:120°C
試験時間:300時間
表3に、使用した鋼種、軌道面及び軸端部の冷間加工率、軌道面の表面と最表面及び軸端面のビッカース硬さ、軌道面最表面のローラ硬さとの比、そして試験後に測定をした摩耗量比と目視観察の結果を併せて示す。
試験条件
ローラ回転速度:6000min-1
ラジアル荷重:500N
潤滑油:硫酸イオン、硝酸イオン、煤その他の不溶解成分が混入したエンジンオイル
潤滑油pH:2〜3
潤滑油温度:120°C
試験時間:300時間
表3に、使用した鋼種、軌道面及び軸端部の冷間加工率、軌道面の表面と最表面及び軸端面のビッカース硬さ、軌道面最表面のローラ硬さとの比、そして試験後に測定をした摩耗量比と目視観察の結果を併せて示す。
冷間加工率は、素材における棒材または管材の外径A、冷間加工後の外径Bとした場合、
冷間加工率=((A−B)/A)×100
で算出される。
図14に硬さの測定位置について説明した図を示す。硬さ試験にはいずれもビッカース硬さ試験機を用い、測定荷重を500gとして測定を行つた。
表面硬さは、完成品軌道面表面から0.1mm深さ位置について硬さ測定を行った硬さの測定位置は、軌道面両端部とその中央部の3点について、各2回ずつ測定を行い、その平均値を測定値とした。
冷間加工率=((A−B)/A)×100
で算出される。
図14に硬さの測定位置について説明した図を示す。硬さ試験にはいずれもビッカース硬さ試験機を用い、測定荷重を500gとして測定を行つた。
表面硬さは、完成品軌道面表面から0.1mm深さ位置について硬さ測定を行った硬さの測定位置は、軌道面両端部とその中央部の3点について、各2回ずつ測定を行い、その平均値を測定値とした。
最表面の硬さは、完成品軌道面の表面について、軌道面両端部とその中央部で各2点ずつ合計6点測定を行い、その平均値を測定値とした。また、ローラ硬さは、ローラ表面のビッカース硬さを5点測定し、その平均硬さを測定値とした。 軸端部の硬さは、ローラ軸21を支持部材5に固定したときに、支持部材5の内方端面と接する部分の表面から0.1mm深さで2点、芯部で1点、そして、ローラ軸21の両側端面の表面から0.1mm深さにおいて任意の2点測定を行い、それぞれ両端面について測定を行うため、測定点は合計10点としその平均値を測定値とした。表4にこれらの硬さの測定位置を整理したものを示す。
試験終了後に、ローラ軸の最大荷重位置における軸方向の摩耗深さを、表面形状測定機にて測定行い、軌道面の摩耗面積を求めた。剥離が生じていた軸の場合は摩耗量を求めなかった。ローラ軸を金属顕微鏡で観察し、剥離等の有無について観察も行った。試験は3回行い、摩耗面積はそれぞれの試験結果の平均値を算出した。また、摩耗面積は従来材であるJIS規格のSUJ2を用いた比較例7の摩耗面積を1として、それぞれの比で示している。
また、目視検査の結果については、一つでも剥離等の損傷が認められたものは×、認められなかったものは○で示している。上記した試験条件で試験を行った結果、従来材であるSUJ2を使用し、軌道面部のみを高周波焼入れを行った比較例7では、ローラ軸荷重負荷圈において腐食摩耗が激しく発生していた。
試験結果を表3に併せて示す。
試験結果を表3に併せて示す。
表3から判るように、その結果、軌道面部の冷間加工率が20%を超える各実施例1〜10は、軌道面の表面硬さ及び最表面硬さがHv300を超えるために、耐腐食摩耗性に優れ、転動寿命も十分に確保されている。また、軸端部も冷間加工率が20%未満であれば、ビッカース硬さがHv300以下となることがわかる。
冷間加工を施さず、表面硬さ及び最表面硬さがHv200を下回る比較例1は、それぞれの硬さが不十分なため耐摩耗性に劣ることと、軸のせん断強度が不足していることにより、軸の折損が生じた。
冷間加工を施さず、表面硬さ及び最表面硬さがHv200を下回る比較例1は、それぞれの硬さが不十分なため耐摩耗性に劣ることと、軸のせん断強度が不足していることにより、軸の折損が生じた。
また、表面硬さ及び最表面硬さがHv300を上回るものの、軸端部の硬さがHv200を下回る比較例2では、軸端部の強度が不足しているために軸の折損が生じた。
冷間加工率が低く、表面硬さがHv300に満たなかった比較例3では、軌道面に剥離を生じていた。
同じく冷間加工率が低く、表面硬さ及び最表面硬さがHv300に満たなかった比較例4では、従来例であるSUJ2と比較して、耐摩耗性は向上するものの、各実施例ほどの耐摩耗性は得られなかった。
冷間加工率が低く、表面硬さがHv300に満たなかった比較例3では、軌道面に剥離を生じていた。
同じく冷間加工率が低く、表面硬さ及び最表面硬さがHv300に満たなかった比較例4では、従来例であるSUJ2と比較して、耐摩耗性は向上するものの、各実施例ほどの耐摩耗性は得られなかった。
素材にフェライト系ステンレス鋼であるSUS430を用いた比較例5は、冷間加工を施しても、加工硬化しにくく、表面及び最表面のビッカース硬さがHv300を下回ったため、十分な耐摩耗性は得られなかった。
また、比較例6は実施例10と同じローラ軸を用い、ローラの材質、硬度を変更したものであるが、ローラ軸の最表面硬さはHv300を上回るものの、ローラとの硬度比が0.3を下回るために耐摩耗性向上効果が十分に得られなかった。
次に、表5のステンレス鋼及び軸受鋼を用いて、外径φ12mm、長さ22mmのローラ軸を作製し、冷間加工後に浸炭処理を施して耐久試験を行った。
また、比較例6は実施例10と同じローラ軸を用い、ローラの材質、硬度を変更したものであるが、ローラ軸の最表面硬さはHv300を上回るものの、ローラとの硬度比が0.3を下回るために耐摩耗性向上効果が十分に得られなかった。
次に、表5のステンレス鋼及び軸受鋼を用いて、外径φ12mm、長さ22mmのローラ軸を作製し、冷間加工後に浸炭処理を施して耐久試験を行った。
ローラ軸は、素材に日本工業規格JISG4303等に記載されている条件により固溶化熱処理を施し、上記した方法5(図12参照)にて加工成形を行った。加工成形後には研削、研磨加工等を施し所定の形状に加工し、その後、浸炭処理を行いローラ軸最表面は高硬度化されている。浸炭処理は以下の条件A又はBで行った。浸炭処理後には、条件Aの場合は酸洗を行い、条件Bの場合はソフトブラストを行った。
条件A
(1)フッ化処理:NF3 とN2 の混合ガス中に200〜300°Cで20〜60分保持する。
(2)浸炭処理:RXガスとCO2 の混合ガス中に460〜520°Cで20〜40時間保持する。
条件B
(1)フッ化処理:NF3 とN2 の混合ガス中に200〜300°Cで20〜60分保持する。
(2)浸炭処理:アセチレンガスを混合しながら39.9Paの減圧下で460〜520°Cで20〜40時間保持する。
(1)フッ化処理:NF3 とN2 の混合ガス中に200〜300°Cで20〜60分保持する。
(2)浸炭処理:RXガスとCO2 の混合ガス中に460〜520°Cで20〜40時間保持する。
条件B
(1)フッ化処理:NF3 とN2 の混合ガス中に200〜300°Cで20〜60分保持する。
(2)浸炭処理:アセチレンガスを混合しながら39.9Paの減圧下で460〜520°Cで20〜40時間保持する。
なお、比較例3は従来から良く用いられているJIS鋼種であるSUJ2を使用したものであり、所定の形状に加工を施した後に硬化熱処理を行う。硬化熱処理は840°C程度で軌道面のみ高周波焼入れを行い、焼戻しを160°Cで2時間施した。
表5に、使用した鋼種、熱処理方法(浸炭処理の条件)、軌道面及び軸端部の冷間加工率、軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さ、軸端面のビッカース硬さ、試験後に測定をした摩耗量比と目視観察の結果について併せて示す。ビッカース硬さの測定方法については、上記同様の方法で行った。摩耗量の測定及び目視観察の方法も上記同様である。
表5に、使用した鋼種、熱処理方法(浸炭処理の条件)、軌道面及び軸端部の冷間加工率、軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さ、軸端面のビッカース硬さ、試験後に測定をした摩耗量比と目視観察の結果について併せて示す。ビッカース硬さの測定方法については、上記同様の方法で行った。摩耗量の測定及び目視観察の方法も上記同様である。
試験条件は次の通りである。
試験条件
ローラ回転速度:8000min-1
ラジアル荷重:1500N
潤滑油:硫酸イオン、硝酸イオン、煤その他の不溶解成分が混入したエンジンオイル
潤滑油pH:2〜3
潤滑油温度:120°C
試験時間:300時間
表5に示された試験結果によれば、本発明の実施例1〜12は従来例であるSUJ2を用いた比較例3よりも耐摩耗性に優れ、なおかつ耐久寿命も十分満足していることがわかる。
試験条件
ローラ回転速度:8000min-1
ラジアル荷重:1500N
潤滑油:硫酸イオン、硝酸イオン、煤その他の不溶解成分が混入したエンジンオイル
潤滑油pH:2〜3
潤滑油温度:120°C
試験時間:300時間
表5に示された試験結果によれば、本発明の実施例1〜12は従来例であるSUJ2を用いた比較例3よりも耐摩耗性に優れ、なおかつ耐久寿命も十分満足していることがわかる。
比較例1は、表面硬さ、最表面硬さ共に本発明の硬さの下限値を下回ったものであり、試験後のローラ軸軌道面に剥離が生じていた。
比較例2は、最表面硬さはHv650を上回るものの、表面硬さがHv300を下回るものであり、比較例1と同様にローラ軸軌道面に剥離が生じていた。
以上のように、本実施形態のローラ軸は、硫酸イオンや硝酸イオンや煤などの不溶解成分が混入した厳しい潤滑条件下においても優れた耐摩耗性および寿命を有しているのが確認できた。
比較例2は、最表面硬さはHv650を上回るものの、表面硬さがHv300を下回るものであり、比較例1と同様にローラ軸軌道面に剥離が生じていた。
以上のように、本実施形態のローラ軸は、硫酸イオンや硝酸イオンや煤などの不溶解成分が混入した厳しい潤滑条件下においても優れた耐摩耗性および寿命を有しているのが確認できた。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記各実施の形態においては、ロッカーアーム2の先端部にローラ22が取り付けられている構造を示しているが、例えばバルブリフターなど、他の如何なる構造のカムフォロアにおいても適用することが可能である。
例えば、上記各実施の形態においては、ロッカーアーム2の先端部にローラ22が取り付けられている構造を示しているが、例えばバルブリフターなど、他の如何なる構造のカムフォロアにおいても適用することが可能である。
1 カムフォロア
21 ローラ軸
22 ローラ
23 ニードル
21 ローラ軸
22 ローラ
23 ニードル
Claims (11)
- 内周面に軌道を有するローラをニードルを介して外周面に軌道を有するローラ軸によって回転自在に支持するカムフォロアにおいて、
前記ローラ軸の素材がβ型チタン合金又はα+β型チタン合金であることを特徴とするカムフォロア。 - 前記ローラ軸の素材に溶体化処理を行い、350〜600°Cで酸化処理を施したことを特徴とする請求項1に記載したカムフォロア。
- 前記ローラ軸の素材にガス窒化処理を施したことを特徴とする請求項1又は2に記載したカムフォロア。
- 前記ローラ軸の素材に潤滑被膜処理を施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載したカムフォロア。
- 前記ローラ軸の軸端に焼き戻し処理を施したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載したカムフォロア。
- 内周面に軌道を有するローラをニードルを介して外周面に軌道を有するローラ軸によって回転自在に支持するカムフォロアにおいて、
前記ローラ軸の素材をオーステナイト系ステンレス鋼として、冷間加工を施すことで完成品軌道面の表面及び最表面のビッカース硬さをHv300以上、且つ該ローラ軸の最表面硬さと前記ローラの硬さとの比を0.3以上とし、更に、前記ローラ軸端部のビッカース硬さをHv200以上としたことを特徴とするカムフォロア。 - 前記ローラ軸の軌道面部の加工率が20%以上であることを特徴とする請求項6に記載したカムフォロア。
- 前記ローラ軸の端部及び端面の硬さがHv200以上Hv300以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載したカムフォロア。
- 前記ローラ軸の端部の加工率が20%以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載したカムフォロア。
- 前記ローラ軸の素材に冷間加工を施し、400°C以上540°C以下で浸炭処理を行ったことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載したカムフォロア。
- 各種エンジンに使用される請求項1〜10のいずれか一項に記載したカムフォロア。
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- 2003-07-11 JP JP2003273665A patent/JP2005030569A/ja active Pending
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