3.発明の概要
本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスの完全aveC−ORF又はその実体部分を含む、単離されたポリヌクレオチド分子であって、前記単離ポリヌクレオチド分子が、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体において、生体内でaveC−ORFの下流に位置する次の完全ORFを欠失する、前記単離ポリヌクレオチド分子を提供する。本発明による単離ポリヌクレオチド分子は、好ましくは、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じであるか、あるいは、図1(配列表の配列番号1)のaveC−ORF又はその実体部分のヌクレオチド配列と同じであるヌクレオチド配列を含む。
更に、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号1)に示すaveC−ORF又はその実体部分のヌクレオチド配列に対して、相同なヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。
更に、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によりコードされるアミノ酸配列に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号2)のアミノ酸配列又はその実体部分に対して、相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。
更に、本発明は、AveC相同遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子を提供する。好ましい態様では、前記単離ポリヌクレオチド分子が、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(hygroscopicus)由来のAveC相同遺伝子産物(但し、前記相同遺伝子産物は、配列表の配列番号4のアミノ酸配列又はその実体部分を含む)をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましい態様では、ストレプトミセス・ヒグロスコピカスAveC相同遺伝子産物をコードする本発明の単離ポリヌクレオチド分子は、配列表の配列番号3のヌクレオチド配列又はその実体部分を含む。
更に、本発明は、配列表の配列番号3のストレプトミセス・ヒグロスコピカスのヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。更に、本発明は、配列表の配列番号4のアミノ酸配列を有するストレプトミセス・ヒグロスコピカスAveC相同遺伝子産物に相同なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。
更に、本発明は、図1(配列表の配列番号1)又は配列表の配列番号3のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号1)又は配列表の配列番号3のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に対してハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドを提供する。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORF又はaveC相同ORFを含むポリヌクレオチド分子を含む、組換えクローニングベクター及び発現ベクターを提供する。前記ベクターは、本発明のポリヌクレオチドをクローニング又は発現するのに有用である。非限定的な態様では、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC遺伝子の完全ORFを含むプラスミドpSE186(ATCC209604)を提供する。更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子又は組換えベクターを含む形質転換宿主細胞、及びそれらに由来する新規株又は細胞系を提供する。
更に、本発明は、実質的に精製又は単離された、組換え発現aveC遺伝子産物若しくはAveC相同遺伝子産物、又はそれらの実体部分、及びそれらの相同体を提供する。更に、本発明は、組換え発現ベクター[但し、前記組換え発現ベクターは、AveC遺伝子産物又はAveC相同遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を含み、前記ポリヌクレオチド分子と、宿主細胞中におけるポリヌクレオチド分子の発現を制御する調節要素1又はそれ以上とが、影響を及ぼす関係にある]で形質転換した宿主細胞を、組換えAveC遺伝子産物又はAveC相同遺伝子産物の生成を促す条件下で培養し、その細胞培養物からAveC遺伝子産物又はAveC相同遺伝子産物を回収することを含む、組換えAveC遺伝子産物の製造方法を提供する。
更に、本発明は、野生型aveC対立遺伝子が不活化されており、しかも、突然変異1又はそれ以上を更に含むヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子が発現されるストレプトミセス・アベルミティリスATCC53692株の細胞が、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスATCC53692株の細胞によって生成されるアベルメクチンと比較して、異なる比又は量のアベルメクチンを生成するような前記突然変異ヌクレオチド配列を更に含むこと以外は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と、あるいは、図1(配列表の配列番号1)に記載のストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORFのヌクレオチド配列と同じヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。本発明によれば、前記ポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株と比較して、アベルメクチンの生成において検知可能な変化を示すストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を生成することに用いることができる。好ましい態様では、前記ポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株と比較して、クラス2:1比が減少した状態でアベルメクチンを生成するストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を生成するのに有用である。更に好ましい態様では、前記ポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株と比較して、増加したレベルでアベルメクチンを生成するストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を生成するのに有用である。更に好ましい態様では、前記ポリヌクレオチド分子は、aveC遺伝子が不活性化されているストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を生成するのに有用である。
更に、本発明は、アベルメクチンの生成比及び/又は量を変化させることのできるストレプトミセス・アベルミティリスのAveC−ORFの突然変異を同定する方法を提供する。好ましい態様では、本発明は、(a)天然のaveC対立遺伝子が不活性化されており、しかも、突然変異したAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子が導入されて発現しているストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を決定し;(b)図1(配列表の配列番号1)のORFのヌクレオチド配列、あるいは、それに相同なヌクレオチド配列を有するaveC対立遺伝子のみを代わりに発現すること以外は、工程(a)と同じストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を決定し;そして、(c)工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比とを比較し;工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比とが異なる場合に、アベルメクチンのクラス2:1比を変化させることのできるaveC−ORFの突然変異を同定することを含む、生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させることのできるaveC−ORFの突然変異を同定する方法を提供する。
更に、好ましい態様では、本発明は、(a)天然のaveC対立遺伝子が不活性化されており、しかも、突然変異したAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むか、あるいは、AveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を含むポリヌクレオチド分子が導入されて発現しているストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンの量を決定し;(b)図1(配列表の配列番号1)のORFのヌクレオチド配列、あるいは、それに相同なヌクレオチド配列を有するaveC対立遺伝子のみを代わりに発現すること以外は、工程(a)と同じストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンの量を決定し;そして、(c)工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量とを比較し;工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量とが異なる場合に、アベルメクチンの量を変化させることのできるaveC−ORF又は遺伝子構築物の突然変異を同定することを含む、生成されるアベルメクチンの量を変化させることのできるaveC−ORF又はaveC−ORFを含む遺伝子構築物の突然変異を同定する方法を提供する。好ましい態様では、生成されるアベルメクチンの量は、突然変異によって増加する。
更に、本発明は、アベルメクチン生成が変化したストレプトミセス・アベルミティリスの新規株の製造に有用な組換えベクターを提供する。例えば、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体のAveC遺伝子の部位を標的として、本発明の突然変異ヌクレオチド配列を含む任意のポリヌクレオチド分子を、相同組換えによって、aveC−ORF又はその一部に挿入又は置換するのに使用することのできるベクターを提供する。しかしながら、本発明によれば、本発明と共に提供される本発明の突然変異ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子は、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体中のaveC遺伝子以外の部分に挿入する場合や、あるいは、ストレプトミセス・アベルミティリス細胞中でエピソーム的に維持される場合には、アベルメクチン生合成を調整する機能を果たすこともできる。従って、本発明は、本発明の突然変異ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を含むベクターも提供する。前記ベクターは、ポリヌクレオチド分子を、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体のaveC遺伝子以外の位置に挿入するか、あるいは、エピソーム的に維持するのに用いることができる。好ましい態様では、本発明は、突然変異aveC対立遺伝子をストレプトミセス・アベルミティリス染色体中に挿入することにより、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、クラス2:1比が低いアベルメクチンを生成する細胞の新規株を製造するのに用いることができる遺伝子置換ベクターを提供する。
更に、本発明は、突然変異したaveC対立遺伝子を発現し、しかも、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスの同じ株の細胞と比較して、比及び/又は量が異なるアベルメクチンを生成する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリス新規株の製造方法を提供する。好ましい態様では、本発明は、突然変異したaveC対立遺伝子を発現し、しかも、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスの同じ株の細胞と比較して、クラス2:1比が異なるアベルメクチンを生成する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリス新規株の製造方法であって、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞を、突然変異したaveC対立遺伝子(但し、前記遺伝子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異した対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させる遺伝子産物をコードする)を担持するベクターによって形質転換し、そして、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する株の細胞により生成されるクラス2:1比と比較して、クラス2:1比が異なるアベルメクチンを生成する形質転換細胞を選択することを含む、前記製造方法を提供する。好ましい態様では、前記の新規株の細胞中において、生成されるアベルメクチンのクラス2:1割合が、減少する。
より好ましい態様では、本発明は、異なる量のアベルメクチンを生成する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリス新規株の製造方法であって、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞を、突然変異したaveC対立遺伝子又はaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物(但し、その発現の結果、突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンの量が、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、変化する)を担持するベクターによって形質転換し、そして、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する株の細胞により生成されるアベルメクチンの量と比較して、異なる量のアベルメクチンを生成する形質転換細胞を選択することを含む、前記製造方法を提供する。好ましい態様では、前記の新規株の細胞中において、生成されるアベルメクチンの量が、増加する。
更に、好ましい態様では、本発明は、細胞が、不活性化されたaveC対立遺伝子を含むストレプトミセス・アベルミティリス新規株の製造方法であって、野生型aveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞を、aveC対立遺伝子を不活性化させるベクターで形質転換し、そして、aveC対立遺伝子が不活性化された形質転換細胞を選択することを含む、前記製造方法を提供する。
更に、本発明は、本発明の突然変異したヌクレオチド配列を含む任意のポリヌクレオチド分子又はベクターで形質転換された細胞を含む、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を提供する。好ましい態様では、本発明は、野生型aveC対立遺伝子の代わりに、あるいは、それに加えて、突然変異したaveC対立遺伝子を発現する細胞を含む、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株(ここで、前記新規株の細胞は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、クラス2:1比が異なるアベルメクチンを生成する)を提供する。より好ましい態様では、新規株の細胞が、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、クラス2:1比が減少したアベルメクチンを生成する。前記新規株は、商業的に望ましいアベルメクチン(例えば、ドラメクチン)の大規模生産に有用である。
更に、好ましい態様では、本発明は、野生型aveC対立遺伝子の代わりに、あるいは、それに加えて、突然変異したaveC対立遺伝子又はaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を発現する細胞[但し、前記遺伝子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞により生成されるアベルメクチンの量と比較して、異なる量のアベルメクチンの生成(細胞による)を引き起こす]を含む、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を提供する。好ましい態様では、前記新規細胞は、増加した量のアベルメクチンを生成する。
より好ましい態様では、本発明は、aveC遺伝子が不活性化されている細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を提供する。前記の株は、野生型株とは異なるアベルメクチン(前記株により生成される)のスペクトルと、アベルメクチン生成に影響を与えるaveC遺伝子の標的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発のいずれかを決定する本明細書に記載の相補性スクリーニングアッセイとの両方に有用である。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞(但し、前記細胞は、突然変異したaveC対立遺伝子を発現することなく野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異したaveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させる遺伝子産物をコードする突然変異したaveC対立遺伝子を発現する)を、その細胞によるアベルメクチンの生成を許容又は誘発する条件下で、培養培地中で培養し、そして、培養物からアベルメクチンを回収することを含む、アベルメクチンの製造方法を提供する。好ましい態様では、前記突然変異を発現する細胞によって生成されたアベルメクチンのクラス2:1比が、減少する。この製造方法は、商業的に価値のあるアベルメクチン(例えば、ドラメクチン)の生成における効率の増加を提供する。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞(但し、前記細胞は、突然変異したaveC対立遺伝子又はaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を発現することなく野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチン生成量の変化を引き起こす突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現する)を、その細胞によるアベルメクチンの生成を許容又は誘発する条件下で、培養培地中で培養し、そして、培養物からアベルメクチンを回収することを含む、アベルメクチンの製造方法を提供する。好ましい態様では、前記の突然変異又は遺伝子構築物を発現する細胞によって生成されるアベルメクチンの量が、増加する。
更に、本発明は、本発明の突然変異したaveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株によって生成されるアベルメクチン(ここで、前記アベルメクチンは、突然変異したaveC対立遺伝子を発現することなく野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスの同じ株の細胞により生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と比較して、減少したクラス2:1比で生成される)の新規組成物を提供する。前記の新規アベルメクチン組成物は、発酵培養液中で生成されたものとして存在するか、あるいは、それらから回収されたものであることができるか、そして、それらから部分的に又は実質的に精製したものであることができる。
4.図面の簡単な説明
図1.ストレプトミセス・アベルミティリスaveC−ORFを含むDNA配列(配列表の配列番号1)及び推定されるアミノ酸配列(配列表の配列番号2)。
図2.ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC遺伝子の完全ORFを含むプラスミドベクターpSE186(ATCC209604)。
図3.ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORF中に挿入された、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora
erythraea)のermE遺伝子を含む遺伝子置換ベクターpSE186(ATCC209605)。
図4.ストレプトミセス・アベルミティリス由来のアベルメクチンポリケチドシンターゼ遺伝子クラスターのBamHI制限地図、及び同定された5種の重複コスミドクローン(すなわち、pSE65、pSE66、pSE67、pSE68、pSE69)。pSE118とpSE119との関係も示す。
図5.ストレプトミセス・アベルミティリス株により生成された発酵生成物のHPLC分析。ピークの定量は、シクロヘキシルB1の標準量との比較により実施した。シクロヘキシルB2の保持時間は、7.4〜7.7分間;シクロヘキシルB1の保持時間は、11.9〜12.3分間。図5A.不活性aveC−ORFを有するストレプトミセス・アベルミティリスSE180−11株。図5B.pSE186(ATCC209604)で形質転換されたストレプトミセス・アベルミティリスSE180−11株。図5C.pSE187で形質転換されたストレプトミセス・アベルミティリスSE180−11株。図5D.pSE188で形質転換されたストレプトミセス・アベルミティリスSE180−11株。
図6.ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORFでコードされる推定アミノ酸配列(SEC ID NO:2)と、ストレプトミセス・グリセオクロモゲネス(griseochromogenes)由来のaveC相同部分的ORFでコードされる推定アミノ酸配列(配列表の配列番号5)と、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(hygroscopicus)由来のaveC相同ORFでコードされる推定アミノ酸配列(配列表の配列番号4)との比較。太字(bold)のバリン残基が、タンパク質の推定上のスタート部位である。保存されている残基を、3種の全ての配列で相同であれば大文字で示し、3種の配列の内、2つが相同であれば小文字で示す。アミノ酸配列は、約50%の配列一致を含む。
図7.ストレプトミセス・アベルミティリスaveC−ORF中のBsaAI/KpnI部位に挿入された、ストレプトミセス・ヒグロスコピカスaveC相同遺伝子由来の564bpのBsaAI/KpnIフラグメントを含むハイブリッドプラスミド構築物。
5.発明の詳細な説明
本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス由来のAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の同定及び特徴付け、突然変異したAveC遺伝子産物を、アベルメクチン生成におけるそれらの効果に関してスクリーニングするのに用いることのできるストレプトミセス・アベルミティリスの新規株の構成、そして、或る突然変異したAveC遺伝子産物がストレプトミセス・アベルミティリスにより生成されるB1:B2アベルメクチンの比を減少することができるという発見に関する。例えば、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じヌクレオチド配列か、あるいは、図1(配列表の配列番号1)のORFのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に関して、そして、それから誘導される突然変異したヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に関して、後出のセクションに本発明を記載している。しかしながら、本発明に記載の前記原理は、別のポリヌクレオチド分子、例えば、別のストレプトミセス種[例えば、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(hygroscopicus)及びストレプトミセス・グリセオクロモゲネス(griseochromogenes)など]由来のAveC相同遺伝子にも同様に適用することができる。
5.1.ストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド分子
本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスの完全aveC−ORF又はその実体部分を含む単離ポリヌクレオチド分子であって、前記単離ポリヌクレオチド分子が、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体において、生体内でaveC−ORFの下流に位置する次の完全ORFを欠失する、前記単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
本発明の前記の単離ポリヌクレオチド分子は、好ましくは、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じであるか、あるいは、図1(配列表の配列番号1)のORF又はその実体部分のヌクレオチド配列と同じであるヌクレオチド配列を含む。本明細書において、ストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド分子の「実体部分」とは、図1(配列表の配列番号1)に示す完全aveC−ORF配列の少なくとも約70%を含み、しかも、機能的に等価なAveC遺伝子産物をコードする単離ポリヌクレオチド分子を意味する。これに関連して、「機能的に等価な」AveC遺伝子産物は、ストレプトミセス・アベルミティリスATCC53692株(この株では、天然のaveC対立遺伝子が不活性化されている)中で発現した場合に、野生型(ストレプトミセス・アベルミティリスATCC53692株に天然の機能的aveC対立遺伝子)のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスATCC53692株によって生成されるアベルメクチンと実質的に同じ比及び量の生成を引き起こす遺伝子産物として規定される。
aveC−ORFのヌクレオチド配列に加えて、本発明の単離ポリヌクレオチド分子は、更に、ストレプトミセス・アベルミティリスの生体内でaveC遺伝子に天然に隣接しているヌクレオチド配列[例えば、図1(配列表の配列番号1)に示す隣接ヌクレオチド配列]を含むことができる。
本明細書において、用語「ポリヌクレオチド分子」、「ポリヌクレオチド配列」、「コード配列」、「オープンリーディングフレーム」、及び「ORF」は、一本鎖又は二本鎖のいずれかであることができるDNA及びRNA分子を意味することを意図しており、そして、それらは、適当な調節要素の制御下に置かれた場合に、適当な宿主細胞発現系において、AveC遺伝子産物に、あるいは、以下に示すように、AveC相同遺伝子産物に、あるいは、AveC遺伝子産物又はAveC相同遺伝子産物と相同なポリペプチドに、転写及び翻訳(DNA)又は翻訳(RNA)されることができる。コード配列には、原核配列、cDNA配列、ゲノムDNA配列、及び化学的に合成されたDNA及びRNA配列が含まれることができるが、これらに限定されるものではない。
図1(配列表の配列番号1)に示すヌクレオチド配列は、bp位置42、174、177、及び180に、4個の異なるGTGコドンを含む。後出のセクション9に記載されているように、aveC−ORF(図1;配列表の配列番号1)の5’領域に複合的な欠失を構築することにより、それらのコドンのどれがaveC−ORF中でタンパク質発現に関するスタート部位として機能することができるかを規定した。bp42における第1のGTG位置の欠失は、AveC活性を消失しなかった。bp位置174、177、及び180における全てのGTGコドンと一緒の更なる欠失は、AveC活性を無くし、このことは、この領域がタンパク質の発現に必要であることを示している。従って、本発明は、図1(配列表の配列番号1)に示すbp174、177、又は180bpに位置する任意のGTG部位において翻訳を開始する種々の長さのaveC−ORF、及びそれぞれに対する相当するポリペプチドを含む。
更に、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号1)に示すaveC−ORF又はその実体部分のヌクレオチド配列に対して、相同なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を提供する。用語「相同」とは、ストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と相同なポリヌクレオチド分子に関して使用される場合には、以下のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を意味する:
(a)プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じAveC遺伝子産物をコードするか、あるいは、図1(配列表の配列番号1)に示すAveC−ORFのヌクレオチド配列と同じAveC遺伝子産物をコードするが、遺伝子コードの縮重によるヌクレオチド配列に対するサイレント変化1又はそれ以上を含むヌクレオチド配列;又は
(b)プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列をコードするか、あるいは、図1(配列表の配列番号2)に示すアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の相補体に対して、適度なストリンジェントな条件下でハイブリダイズ[すなわち、0.5M−NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM−EDTA中で、65℃で、フィルター結合DNAへハイブリダイゼーションし、そして、0.2×SSC/0.1%SDS中で42℃で洗浄する][Ausubelら(eds.),1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.I,Green Publishing Associates,Inc.,及びJohn Wiley&Sons,Inc.,New York,p2.10.3を参照のこと]し、しかも、先に規定した機能的等価AveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列。
好ましい態様では、相同ポリヌクレオチド分子は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列の相補体に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号1)に示すヌクレオチド配列又はその実体部分の相補体に対して、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ[すなわち、0.5M−NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM−EDTA中で、65℃で、フィルター結合DNAへハイブリダイゼーションし、そして、0.1×SSC/0.1%SDS中で68℃で洗浄する](Ausubelら,1989,前出)し、しかも、先に規定した機能的等価AveC遺伝子産物をコードする。
AveC遺伝子産物及びその潜在的機能的等価物の活性は、後出の実施例に記載のように、発酵生成物をHPLC分析することによって決定することができる。ストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物の機能的等価物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子には、天然に現われるか設計されたかどうかに関わらず、ストレプトミセス・アベルミティリスの別の株に存在する天然に現われるAveC遺伝子、ストレプトミセスの別の種に存在するAveC相同遺伝子、及び突然変異したaveC対立遺伝子が含まれる。
更に、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号2)のアミノ酸配列又はその実体部分に対して、相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。本明細書において、図1(配列表の配列番号2)のアミノ酸配列の「実体部分」とは、図1(配列表の配列番号2)に示すアミノ酸配列の少なくとも約70%を含み、しかも、先に規定した機能的等価AveC遺伝子産物を構成するポリペプチドを意味する。
本明細書において、ストレプトミセス・アベルミティリス由来のAveC遺伝子産物のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を意味する場合の用語「相同」は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によりコードされるか、あるいは、図1(配列表の配列番号2)のアミノ酸配列を有するが、その中のアミノ酸残基1又はそれ以上が、別のアミノ酸残基で保存的に(conservatively)置換されている(前記の保存的置換の結果、先に規定した機能的等価遺伝子産物が生じる)ポリペプチドを意味する。保存的アミノ酸置換は、当業者に周知である。前記の置換を実施するためのルールとしては、「Dayhof,M.D.,1978,Nat.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.,Vol,5,Sup.3」などに記載のものを挙げることができる。より具体的には、保存的なアミノ酸置換は、側鎖の酸度、極性、又は嵩高さの関連するアミノ酸ファミリー内で一般的に起こるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般的に、4種に分類される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)荷電されていない極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。また、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、芳香族アミノ酸としてまとめて分類される。いずれかの特定の基内における1又はそれ以上の置換[例えば、イソロイシン又はバリンによるロイシンの置換、あるいは、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、あるいは、セリンによるトレオニンの置換、あるいは、構造的に関連するアミノ酸残基(例えば、類似する酸度、極性、嵩高さ、又はそれらのいくつかの組合せにおける類似性を有するアミノ酸残基)による任意の別のアミノ酸残基の置換]が、一般的に、ポリペプチドの機能において些細な効果を有するであろう。
更に、本発明は、AveC相同遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド分子を提供する。本明細書において、「AveC相同遺伝子産物」は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によりコードされるアミノ酸配列、あるいは、図1(配列表の配列番号2)に示すアミノ酸配列を含むストレプトミセス・アベルミティリスのAveC遺伝子産物に対して、少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有する遺伝子産物として規定される。限定されない態様では、AveC相同遺伝子産物が、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(欧州出願0298423に記載;寄託FERM BP−1901)由来であり、配列表の配列番号4のアミノ酸配列又はその実体部分を含む。配列表の配列番号4のアミノ酸配列の「実体部分」は、配列表の配列番号4のアミノ酸配列の少なくとも約70%を含み、機能的等価AveC相同体生成物を構成するポリペプチドを意味する。「機能的等価」AveC相同遺伝子産物は、天然aveC相同対立遺伝子が不活性化されているストレプトミセス・ヒグロスコピカス株FERM BP−1901中で発現した場合に、野生型(ストレプトミセス・ヒグロスコピカス株FERM BP−1901に天然の機能的aveC相同対立遺伝子)のみを代わりに発現するストレプトミセス・ヒグロスコピカス株FERM BP−1901によって生成されるミルベマイシンと実質的に同じ比及び量の生成を引き起こす遺伝子産物として規定される。限定されない態様では、ストレプトミセス・ヒグロスコピカスAveC相同遺伝子産物をコードする本発明の単離ポリヌクレオチド分子は、配列表の配列番号3のヌクレオチド配列又はその実体部分を含む。これに関連して、配列表の配列番号3のヌクレオチド配列を含む単離ヌクレオチド分子の「実体部分」は、配列表の配列番号3のヌクレオチド配列の少なくとも70%を含み、直前に規定した機能的等価AveC相同遺伝子産物をコードする単離ポリヌクレオチド分子を意味する。
更に、本発明は、配列表の配列番号3のストレプトミセス・ヒグロスコピカスのヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチド分子を提供する。用語「相同」は、配列表の配列番号3のストレプトミセス・ヒグロスコピカスAveC相同遺伝子産物をコードする配列に相同なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を意味することに用いる場合には、以下のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を意味する:
(a)配列表の配列番号3のヌクレオチド配列又はその実体部分と同じ遺伝子産物をコードするが、遺伝子コードの縮重によるヌクレオチド配列に対するサイレント変化1又はそれ以上を含むヌクレオチド配列;又は
(b)配列表の配列番号4のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の相補体に対して、適度なストリンジェントな条件下でハイブリダイズ[すなわち、0.5M−NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM−EDTA中で、65℃で、フィルター結合DNAへハイブリダイゼーションし、そして、0.2×SSC/0.1%SDS中で42℃で洗浄する](前出のAusubelら参照)し、しかも、先に規定した機能的等価AveC相同遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列。
好ましい態様では、相同ポリヌクレオチド分子が、配列表の配列番号3のAveC相同遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列又はその実体部分の相補体に対して、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ[すなわち、0.5M−NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM−EDTA中で、65℃で、フィルター結合DNAへハイブリダイゼーションし、そして、0.1×SSC/0.1%SDS中で68℃で洗浄する](Ausubelら,1989,前出)し、しかも、先に規定した機能的等価AveC相同遺伝子産物をコードする。
更に、本発明は、ストレプトミセス・ヒグロスコピカスAveC相同遺伝子産物と相同なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。本明細書において、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス由来の配列表の配列番号4のAveC相同遺伝子産物と相同なポリペプチドを意味する場合の用語「相同」は、配列表の配列番号4のアミノ酸配列を有するが、その中のアミノ酸残基1又はそれ以上が、別のアミノ酸残基で保存的に置換されている(前記の保存的置換の結果、先に規定した機能的等価相同遺伝子産物が生じる)ポリペプチドを意味する。
更に、本発明は、図1(配列表の配列番号1)又は配列表の配列番号3のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に対して、あるいは、図1(配列表の配列番号1)又は配列表の配列番号3のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子に対してハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを提供する。前記オリゴヌクレオチドは、長さが、少なくとも約10ヌクレオチド、好ましくは長さ約15〜約30ヌクレオチドであり、そして、高ストリンジェントな条件下で前記ポリヌクレオチド分子の1つとハイブリダイズ(すなわち、6×SSC/0.5%ピロリン酸ナトリウム中で、〜14塩基オリゴに対して〜37℃で、〜17塩基オリゴに対して〜48℃で、〜20塩基オリゴに対して〜55℃で、そして、〜23塩基オリゴに対して〜60℃で洗浄する)する。好ましい態様では、前記オリゴヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチド分子の一つの一部と相補的である。これらのオリゴヌクレオチドは、種々の目的、例えば、遺伝子調節に有用なアンチセンス分子を、あるいは、aveC−又はaveC相同体をコードするポリヌクレオチド分子の増幅におけるプライマーを、コード又は作用させる目的に有用である。
更なるaveC相同遺伝子は、本明細書に記載のポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチドを、公知の技術と関連させて使用することによって、ストレプトミセスの別の種又は株中で同定することができる。例えば、図1(配列表の配列番号1)のストレプトミセス・アベルミティリスのヌクレオチド配列の一部、又は配列表の配列番号3のストレプトミセス・ヒグロスコピカスのヌクレオチド配列の一部を含むオリゴヌクレオチド分子を、検出可能に標識化し、そして、興味ある生物由来のDNAから構成されるゲノムライブラリーをスクリーニングすることに使用することができる。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは、参考生物(本実施例では、ストレプトミセス・アベルミティリス又はストレプトミセス・ヒグロスコピカス)と興味ある生物との関係に基づいて選択する。種々のストリンジェンシー条件に対する要求は、当業者に周知であり、前記条件は、ライブラリー及び標識配列を提供する特定の生物に従って、予想可能に変化する。前記オリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも約15ヌクレオチドであることが好ましく、例えば、後出の実施例に記載のものを挙げることができる。相同遺伝子の増幅は、これらの及び別のオリゴヌクレオチドを使用し、標準的技術[例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)]を適用することによって実施することができるが、当業界で公知の他の増幅技術(例えば、リガーゼ鎖反応)も用いることができる。
aveC相同ヌクレオチド配列を含むと確認されたクローンを、機能的AveC相同遺伝子産物をコードする能力に関して試験することができる。この目的のために、前記クローンを、配列分析して、適当なリーディングフレーム、並びに開始及び終止信号を確認する。あるいは、又は更に、クローン化したDNA配列を適当な発現ベクター(すなわち、挿入したタンパク質コード配列の転写及び翻訳に必要な要素を含むベクター)中に挿入することができる。多様な宿主/ベクター系のいずれも、以下のとおりに用いることができ、以下に限定するものではないが、細菌に関する系、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、又はコスミド発現ベクターが含まれる。次に、潜在的なaveC相同体をコードする配列を含む前記ベクターで形質転換された適当な宿主細胞を、例えば、後出のセクション7に記載のとおりに、発酵生成物をHPLC分析する方法を用いて、AveC−タイプ活性に関して分析することができる。
本明細書で開示するポリヌクレオチド分子の生成及び操作は、当業者の技術の範囲内であり、例えば、Maniatisら,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Ausubelら,1989,Current Protocols In Molecular Biology,Greene Publishing Associates & Wiley Interscience,NY;Sambrookら,1989,Molecular
Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Innisら(eds),1995,PCR Strategies,Academic Press,Inc.,San Diego;及びErlich(ed),1992,PCR Technology,Oxford University Press,New
York(これらのすべては引用により、本明細書中に組込まれる)に記載の組換え技術に従って実施することができる。AveC遺伝子産物又はAveC相同遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドクローンは、当業者に公知の任意の方法(例えば、これに限定されないが、後出のセクション7に記載の方法)を用いて同定することができる。ゲノムDNAライブラリーは、例えば、バクテリオファージライブラリーに関しては、Benton and Davis,1977,Science,196:180及びプラスミドライブラリーに関しては、Grunstein and Hogness,1975,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,72:3961−3965に記載の技術を用いて、aveC及びaveC相同体をコードする配列に関してスクリーニングすることができる。aveC−ORFを含むことが知られているヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子[例えば、プラスミドpSE186(ATCC209604)又はプラスミドpSE119(後出のセクション7に記載)に存在する]は、それらのスクリーニング実験においてプローブとして使用することができる。あるいは、精製されたAveC相同遺伝子産物のアミノ酸配列の一部又は全体から推定されるヌクレオチド配列に相当するオリゴヌクレオチドプローブを合成することができる。
5.2.組換え系
5.2.1.クローニング及び発現ベクター
更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子(例えば、ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORF又は任意のaveC相同体ORFを含む)のクローニング又は発現に有用な、組換えクローニングベクター及び発現ベクターを供給する。非限定的な態様では、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスのaveC遺伝子の完全ORFを含むプラスミドpSE186(ATCC
209604)を提供する。
ストレプトミセス・アベルミティリス由来のaveC−ORF、又はストレプトミセス・アベルミティリス由来のaveC−ORF若しくはその一部を含むポリヌクレオチド分子、又はストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物に関する以下の全ての記載は、特に断わらない限り、aveC相同体及びAveC相同遺伝子産物も意味する。
多様な種々のベクター、例えば、ファージ、高コピー数のプラスミド、低コピー数のプラスミド、及びE.coli−ストレプトミセスシャトルベクターなどが、ストレプトミセスにおける特定の使用のために開発されて来ており、そして、それらのいずれもが本発明の実施に使用することができる。また、多くの薬物耐性遺伝子がストレプトミセスからクローン化されており、それらの遺伝子のいくつかが選択マーカーとしてベクター中に組込まれている。ストレプトミセス中で使用するための現行のベクターの例が、他の場所(Hutchinson,1980,Applied Biochem.Biotech.16:169−190)に存在する。
本発明の組換えベクター(特に発現ベクター)は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチド分子のためのコード配列が、ポリペプチドを生成するためのコード配列の転写及び翻訳のために必要な調節要素1個以上と有効に関連して存在するよう構成される。本明細書において、用語「調節要素」には、以下に限定することなく、誘発性及び非誘発性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、並び他の要素をコードするヌクレオチド配列が含まれる。なお、前記の他の要素とは、ポリヌクレオチドをコードする配列の発現を誘導及び/又は調節するのに使用される当業者に公知の別の要素である。また、本明細書において、前記のコード配列は、調節要素1以上と「有効に関連」しており、ここで、前記調節要素は、前記コード配列の転写又はそのmRNAの翻訳、あるいはその両方を、有効に調節及び許容する。
本発明のポリヌクレオチド分子を含むように設計することができる典型的なプラスミドベクターとしては、多くの別のものの中で、pCR−Blunt、pCR2.1(Invitrogen)、pGEM3Zf(Promega)、及びシャトルベクターpWHM3(Varaら,1989,J.Bact.171:5872−5881)を挙げることができる。
適当な調節要素と有効に関連する特定のコード配列を含む組換えベクターの構築方法は、当業者に周知であり、それらを本発明の実施に用いることができる。これらの方法としては、例えば、イン・ビトロ組換え技術、合成技術、及びイン・ビボ遺伝的組換えを挙げることができる。例えば、Maniatisら,1989(前出);Ausubelら,1989(前出);Sambrookら,1989(前出);及びErlich,1992(前出)に記載の技術を参照されたい。
これらのベクターの調節要素は、強度(strength)及び特異性において変化させることができる。用いる宿主/ベクター系によって、多くの適当な転写及び翻訳要素の全てを使用することができる。細菌に関する転写調節領域又はプロモーターの非限定的な例としては、β−galプロモーター、T7プロモーター、TACプロモーター、λレフト及びライトプロモーター、trp及びlacプロモーター、trp−lac融合プロモーターを挙げることができ、ストレプトミセスに関してより具体的には、プロモーターermE、melC、及びtipAなどを挙げることができる。後出のセクション11に記載の特定の態様では、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora
erythraea)由来の強力な構成的ermEプロモーターに隣接してクローン化したAveC−ORFを含む発現ベクターを生成した。前記ベクターをストレプトミセス・アベルミティリス中に形質転換し、続いて発酵生成物をHPLC分析したところ、代わりに野生型aveC対立遺伝子を発現する同じ株によって生成されるアベルメクチンと比較して、生成されたアベルメクチンの量が増えていることが明らかになった。
融合タンパク質発現ベクターを、AveC遺伝子産物−融合タンパク質を発現するために使用することができる。精製された融合タンパク質は、AveC遺伝子産物に対する抗血清を生じせしめるために、AveC遺伝子産物の生化学特性を研究するために、種々の生化学活性を有するAveC融合タンパク質を構築するために、あるいは、発現されたAveC遺伝子産物の同定又は精製を助けるために、使用することができる。可能な融合タンパク質発現ベクターとしては、以下に限定されるものでなく、β−ガラクトシダーゼ及びtrpE融合体、マルトース結合タンパク質融合体、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合体、及びポリヒスチジン融合体(キャリヤー領域)をコードする配列が組込まれているベクターを含む。別の態様では、AveC遺伝子産物又はその一部を、ストレプトミセスの別の種又は株[例えば、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス又はストレプトミセス・グリセオクロモゲネス(griseochromogenes)]由来のAveC相同遺伝子産物又はその一部と融合させることができる。特に好ましい態様が、後出のセクション12に記載されており、図7に記載されている。キメラプラスミドは、ストレプトミセス・アベルミティリスAveC−ORFの相同な564bp領域に換えて、ストレプトミセス・ヒグロスコピカスaveC相同ORFの564bp領域を含むように構築した。前記ハイブリッドベクターは、ストレプトミセス・アベルミティリス細胞に形質転換し、そして、それらの効果(例えば、生成されるアベルメクチンのクラス2:1比における効果)に関して試験することができる。
AveC融合タンパク質は、精製のために有用な領域を含むように構築することができる。例えば、AveC−マルトース−結合タンパク質融合体を、アミロース樹脂を用いて精製することができ;AveC−グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質を、グルタチオン−アガロースビーズを用いて精製することができ;そして、AveC−ポリヒスチジン融合体を、2価のニッケル樹脂を用いて精製することができる。あるいは、担体タンパク質又はペプチドに対する抗体を、融合タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー精製に使用することができる。例えば、モノクローナル抗体の標的エピトープをコードするヌクレオチド配列を、調節要素と有効に関連する発現ベクター中に構築し、そして発現されるエピトープがAveCポリペプチドに融合するように位置決定することができる。例えば、親水性マーカーペプチドであるFLAGTMエピトープタグ(International Biotechnologies,Inc.)をコードするヌクレオチド配列は、標準技術により、相当する位置(例えば、AveCポリペプチドのカルボキシル末端)で発現ベクター中に挿入することができる。次に、発現したAveCポリペプチド−FLAGTMエピトープ融合生成物を検出し、そして市販の抗−FLAGTM抗体を用いてアフィニティー精製することができる。
また、AveC融合タンパク質をコードする発現ベクターは、特定のプロテアーゼ切断部位をコードするポリリンカー配列を含むよう構築することができ、その結果、発現したAveCポリペプチドは、特定のプロテアーゼによる処理により担持領域又は融合パートナーから開放されることができる。例えば、融合タンパク質ベクターは、特には、トロンビン又はXa因子切断部位をコードするDNA配列を含むことができる。
aveC−ORFの上流に(aveC−ORFとリーディングフレームとなるように)存在するシグナル配列は、公知の方法により、発現される遺伝子産物の転送(トラフィキング)及び分泌を指図するために、発現ベクター中に構築することができる。シグナル配列の非制限的な例としては、特には、α−因子、免疫グロブリン、外層膜タンパク質、ペニシリナーゼ、及びT−細胞受容体由来のものを挙げることができる。
本発明のクローニング又は発現ベクターにより形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選択を助けるために、ベクターを、更にレポーター遺伝子産物又は他の選択マーカーのためのコード配列を含むように構築することができる。そのようなコード配列は、前記の調節要素をコードする配列と有効に関連して存在することが好ましい。本発明において有用なレポーター遺伝子は、当業界において周知であり、例えば、特には、緑色螢光タンパク質、ルシフェラーゼ、xylE、及びチロシナーゼをコードするものを挙げることができる。選択マーカーをコードするヌクレオチド配列は、当業界において周知であり、抗生物質又は抗−代謝物に対する耐性を付与する遺伝子産物をコードするか、あるいは、栄養要求性必要条件を供給するものが含まれる。前記配列の例には、特には、エリスロマイシン、チオストレプトン、又はカナマイシンに対する耐性をコードするものが含まれる。
5.2.2.宿主細胞の形質転換
更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子又は組換えベクターを含む形質転換された宿主細胞、及びそれらから誘導される新規株又は細胞系を供給する。本発明の実施において有用な宿主細胞は、好ましくは、ストレプトミセス細胞であるが、但し、他の原核細胞又は真核細胞も使用することができる。典型的には、前記の形質転換された宿主細胞としては、以下に限定されずに、特には、微生物、例えば、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、若しくはコスミドDNAベクターにより形質転換された細菌、又は組換えベクターで形質転換された酵母が含まれる。
本発明のポリヌクレオチド分子は、ストレプトミセス細胞において機能するよう意図されるが、しかしまた、例えば、クローニング又は発現目的のために、他の細菌又は真核細胞中に形質転換されることができる。典型的には、E.coliの株、例えば、DH5α株[American Type Culture Collection(ATCC),Rockville,MD,USA(受託番号31343)又は市場(Stratagene)から入手することができる]を使用することができる。好ましい真核宿主細胞としては、酵母細胞を挙げることができるが、哺乳類細胞又は昆虫細胞も効果的に使用することができる。
本発明の組換え発現ベクターは、好ましくは、実質的に均質の細胞培養物の宿主細胞1個以上を形質転換又はトランスフェクトする。発現ベクターは、一般的に、公知技術(例えば、プロトプラスト形質転換、リン酸カルシウム沈殿、塩化カルシウム処理、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、組換えウィルスとの接触によるトランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、DEAE−デキストラントランスフェクション、トランスダクション、接合、又はマイクロプロジェクティル衝撃)に従って、宿主細胞中に導入する。形質転換体の選択は、標準的手順、例えば、選択マーカー(例えば、前記のように、組換えベクターと関連する耐抗生物質性)を発現する細胞に関する選択により実施することができる。
発現ベクターが宿主細胞中に導入されているならば、宿主細胞染色体における又はエピソームにおける、aveCコード配列の組込み及び維持を、標準的技術、例えば、サザンハイブリダイゼーション分析、制限酵素分析、PCR分析[逆転写酵素PCR(rt−PCR)を含む]により、あるいは、予測される遺伝子産物を検出する免疫学的アッセイにより確かめることができる。組換えaveCコード配列を含む及び/又は発現する宿主細胞は、少なくとも4種の当業界で周知の一般的アプローチのいずれかによって同定することができる:(i)DNA−DNA,DNA−RNA、又はRNA−アンチセンスRNAハイブリダイゼーション;(ii)「マーカー」遺伝子機能の存在の検出;(iii) 宿主細胞におけるaveC−特異的mRNA転写体の発現により測定されるような転写のレベルの評価;及び(iv)例えば、イムノアッセイにより、又はAveC生物学的活性(例えば、例えばストレプトミセス・アベルミティリス宿主細胞におけるAveC活性を啓示する、アベルメクチン生産の特異的な割合及び量)の存在によって測定される成熟ポリペプチド生成物の存在の検出。
5.2.3.組換えAveC遺伝子産物の発現及び特徴付け
aveCコード配列が適当な宿主細胞中に安定して導入されているならば、形質転換された細胞宿主がクローン的に増殖され、そしてその得られる細胞は、aveC遺伝子産物の最大生成の助けとなる条件下で増殖させることができる。前記条件は、典型的には、細胞の高密度への増殖が含まれる。発現ベクターが誘発性プロモーターを含む場合、適当な誘発条件、例えば、温度シフト、栄養物の消耗、余計な誘発物質[例えば、炭水化物の類似体、例えばイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)]の添加、又は過剰代謝副生成物の蓄積などが、発現を誘発する必要がある場合に使用される。
発現されたAveC遺伝子産物が宿主細胞内に保持される場合、細胞を、収穫及び溶解し、そしてその溶解物から、タンパク質分解を最少にするための当業界で公知の抽出条件(例えば、4℃で、又はプロテアーゼ阻害剤の存在下で、あるいはその両方)において、生成物を単離及び精製する。発現されたAveC遺伝子産物が宿主細胞から分泌される場合、消耗された栄養培地を単純に収集し、そしてそれから生成物を単離することができる。
発現されたAveC遺伝子産物は、所望により、標準的方法、例えば、以下に限定するものでないが、以下の方法(すなわち、硫酸アンモニウム沈殿、サイズ分別、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、密度遠心分離、及びアフィニティークロマトグラフィー)の任意の組み合わせを用いて、細胞溶解物又は培養培地から単離又は実質的に精製することができる。発現されたAveC遺伝子産物が生物学的活性を示す場合、適切なアッセイを用いることによって、調製物の上昇する純度を、精製手順の各工程で観視することができる。発現されたAveC遺伝子産物が生物学的活性を示すか示さないにかかわらず、例えば、サイズにより、あるいは、さもなければAveCに対して特異的な抗体との反応性に基づいて、あるいは、融合タグの存在により検出することができる。
従って、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列を、あるいは、図1(配列表の配列番号2)のアミノ酸配列又はその実体部分を含む組み換え発現したストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物、及びその相同体を提供する。
更に、本発明は、配列表の配列番号4のアミノ酸配列又はその実体部分を含む組み換え発現したストレプトミセス・ヒグロスコピカスAveC相同遺伝子産物及びその相同体を提供する。
更に、本発明は、組換え発現ベクター[前記ベクターは、AveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を含み、前記ポリヌクレオチド分子は、宿主細胞中における前記ポリヌクレオチド分子の発現を制御する調節要素1種以上と有効な関係がある]で形質転換した宿主細胞を、組換えAveC遺伝子産物の生成を促す条件下で培養し、そしてその細胞培養物からAveC遺伝子産物を回収することを含む、AveC遺伝子産物の製造方法を提供する。
前記の組み替え発現ストレプトミセス・アベルミティリスAVEc遺伝子産物は、種々の目的(例えば、AveC遺伝子生成機能を変化させ、それにより、アベルメクチン生合成を調整する化合物をスクリーニングする目的、及びAveC遺伝子産物に対する抗体を生じさせる目的)に有用である。
充分な純度のAveC遺伝子産物が得られれば、それを、標準的方法(例えば、SDS−PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー、アミノ酸配列分析、アベルメクチン生合成経路における適当な生成物の生成における生物学的活性など)によって特徴付けることができる。例えば、AveC遺伝子産物のアミノ酸配列を、標準的ペプチド配列決定技術を用いて決定することができる。更に、AveC遺伝子産物の疎水性及び親水性領域を同定するために、AveC遺伝子産物を、親水性分析(例えば、Hopp and Woods,1981,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 78:3824を参照されたい)、又は類似ソフトウェアアルゴリズムを用いて特徴付けることができる。特定の二次構造を想定するAveC遺伝子産物の領域を同定するために、構造分析を実施することができる。AveC遺伝子産物とその基質との間の相互作用の部位をマッピング及び研究するために、生物物理学的方法、例えばX線結晶学(Engstrom,1974,Biochem.Exp.Biol.11:7−13)、コンピューターモデリング(Fletterick and Zoller(eds),1986,Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)、及び核磁気共鳴(NMR)を使用することができる。それらの研究から得られる情報は、より所望するアベルメクチン生成特徴を有するストレプトミセス・アベルミティリスの新菌株の開発を助けるために、AveCのORFにおける突然変異のための新規部位を選択するために使用することができる。
5.3.AveC突然変異体の構成及び使用
本発明は、突然変異1又はそれ以上を更に含む(そのため、野生型aveC対立遺伝子が不活性化されており、しかも、突然変異したヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子が発現しているストレプトミセス・アベルミティリス株ATCC53692の細胞が、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリス株ATCC53692の細胞によって生成されるものと異なる割合及び量でアベルメクチンを生成する)こと以外は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のストレプトミセス・アベルミティリスのAveC遺伝子産物をコードする配列と、あるいは、図1(配列表の配列番号1)に示すストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORFのヌクレオチド配列と同じであるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。
本発明によれば、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株と比較して、アベルメクチン生成における検出可能な変化を示すS.アベルメクチンの新規株を製造するために、前記ポリヌクレオチド分子を用いることができる。好ましい態様では、前記ポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株と比較して、減少したクラス2:1比でアベルメクチンを生成するS.アベルメクチンの新規株を製造することに有用である。更に好ましい態様では、前記ポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株と比較して、増加したレベルでアベルメクチンを生成するS.アベルメクチンの新規株を製造することに有用である。更に好ましい態様では、前記ポリヌクレオチド分子は、aveC遺伝子が不活性化されているストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を製造することに有用である。
aveCコード配列に対する突然変異には、AveC遺伝子産物にアミノ酸の欠失、付加、又は置換を起こさせるか、あるいは、AveC遺伝子産物のトランケーション(truncation)を引き起こし(又はそれらの任意の組み合わせ)、しかも、所望の結果が得られる任意の突然変異が含まれる。例えば、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列、又は図1(配列表の配列番号1)に示すストレプトミセス・アベルミティリスのAveC−ORFのヌクレオチド配列を含むが、更に、AveC遺伝子産物中の選択した位置において或るアミノ酸残基が別のアミノ酸残基によって置換されることをコードする突然変異1又はそれ以上を含む、ポリヌクレオチド分子を提供する。後に例示するいくつかの非限定的な態様では、前記置換を、55、138、139、又は230のアミノ酸位置、又はそれらのいくつかの組み合わせにおいて実施することができる。
aveCコード配列に対する突然変異は、種々公知の方法によって(例えば、エラー傾向PCR又はカセット突然変異誘発を用いることによって)、実施することができる。例えば、オリゴヌクレオチド演出(directed)突然変異誘発を、明らかにされた方法(例えば、制限部位又は終始コドン1以上をAveC−ORF配列中の特定の領域に導入する方法)で、aveC−ORF配列を変化させることに用いることができる。例えば、米国特許5605793に記載の方法(ランダムフラグメンテーション、突然変異誘発の繰り返しサイクル、及びヌクレオチドシャッフリングを含む)も、aveC突然変異をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの大きなライブラリーを形成することに用いることができる。
標的突然変異は、有用であることができ、特に、AveC遺伝子産物における保存されたアミノ酸残基1以上を変化させるためにそれらを役立たせる場合に有用である。例えば、図6に示すように、AveC遺伝子産物の推定アミノ酸配列と、ストレプトミセス・アベルミティリス(配列表の配列番号2)、ストレプトミセス・グリセオクロモゲネス(配列表の配列番号5)、及びストレプトミセス・ヒグロスコピカス(配列表の配列番号4)由来のAveC相同遺伝子産物との比較は、それらの種の間のアミノ酸残基の重要な保存の位置を明らかにする。これらの保存されたアミノ酸残基1個以上において変化をもたらす標的突然変異誘発は、アベルメクチン生成において所望の変化を示す新規変異株を製造することに特に有効であることができる。
また、ランダム突然変異誘発も、有用であることができ、そして紫外線若しくはX線、又は化学的突然変異誘発物質(例えば、N−メチル−N′−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネート、亜硝酸、又は窒素マスタード)にストレプトミセス・アベルミティリスの細胞をさらすことによって実施することができる。例えば、突然変異誘発技術の参考用に、Ausubel,1989(前出)を参照されたい。
突然変異したポリヌクレオチド分子が生成したならば、それらをスクリーニングして、それらがストレプトミセス・アベルミティリスにおけるアベルメクチン生合成を調整できるか否かを決定する。好ましい態様では、突然変異したヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を、aveC遺伝子が不活性化することによりaveC陰性(aveC’)背景(aveC negative background)を示すストレプトミセス・アベルミティリス株における補完(complementing)によって試験する。非限定的な方法では、突然変異したポリヌクレオチド分子を、調節要素1種以上と有効に関連する発現プラスミド(このプラスミドは、形質転換した細胞を選択可能な薬剤耐性遺伝子1種以上も含むことが好ましい)中にスプライスさせる。次に、このベクターを、公知技術を用いてaveC宿主細胞中に形質転換させ、そして形質転換した細胞を、適当な発酵培地中で、アベルメクチン生成を許容又は誘発する条件下で、選択及び培養する。次に、発酵生成物を、HPLCによって分析して、突然変異したポリヌクレオチド分子が宿主細胞を補完する能力を決定する。アベルメクチンのB2:B1比を減少させることのできる突然変異したポリヌクレオチド分子を担持するいくつかのベクター(例えば、pSE188、pSE199、及びpSE231)を、後出のセクション8.3に例示する。
本発明は、生成されるアベルメクチンの比及び/又は量を変えることのできるストレプトミセス・アベルミティリスのaveC−ORFにおける突然変異の同定方法を提供する。好ましい態様では、本発明は、(a)天然のaveC対立遺伝子が不活性化されており、しかも、突然変異したAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子が導入されて発現しているストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を決定し;(b)図1(配列表の配列番号1)のORFのヌクレオチド配列、あるいは、それに相同なヌクレオチド配列を有するaveC対立遺伝子のみを代わりに発現すること以外は、工程(a)と同じストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を決定し;そして、(c)工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比とを比較し;工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比とが異なる場合に、アベルメクチンのクラス2:1比を変化させることのできるaveC−ORFの突然変異を同定することを含む、生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させることのできるaveC−ORFの突然変異を同定する方法を提供する。好ましい態様では、突然変異によってアベルメクチンのクラス2:1比が減少する。
更に好ましい態様では、本発明は、(a)天然のaveC対立遺伝子が不活性化されており、しかも、突然変異したAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むか、あるいは、AveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を含むポリヌクレオチド分子が導入されて発現しているストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンの量を決定し;(b)図1(配列表の配列番号1)のORFのヌクレオチド配列、あるいは、それに相同なヌクレオチド配列を有するaveC対立遺伝子のみを代わりに発現すること以外は、工程(a)と同じストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンの量を決定し;そして、(c)工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量とを比較し;工程(a)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量と、工程(b)のストレプトミセス・アベルミティリス細胞によって生成されるアベルメクチンの量とが異なる場合に、アベルメクチンの量を変化させることのできるaveC−ORF又は遺伝子構築物の突然変異を同定することを含む、生成されるアベルメクチンの量を変化させることのできるaveC−ORF又はaveC−ORFを含む遺伝子構築物の突然変異を同定する方法を提供する。
突然変異を同定するための前記の全ての方法は、発酵培養培地(好ましくは、シクロヘキサンカルボン酸を補充した発酵培養培地)を用いることによって実施するが、別の適当な脂肪酸前駆体(例えば、表1に挙げた脂肪酸前駆体)も用いることができる。
所望の方向のアベルメクチン生成を調整する突然変異されたポリヌクレオチド分子が同定されているならば、そのヌクレオチド配列における突然変異の位置を決定することができる。例えば、突然変異したAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を、PCRによって単離し、そして公知の方法を用いてDNA配列分析を行うことができる。突然変異したaveC対立遺伝子のDNA配列と、野生型aveC対立遺伝子のDNA配列とを比較することによって、アベルメクチン生成における変化に関する突然変異反応性を決定することができる。具体的であるが非限定的な本発明の態様では、55(S55F)、138(S138T)、139(A139T)、若しくは230(G230G)の任意の残基における単独のアミノ酸の置換、又は138(S138T)及び139(A139T)位置における二重置換のいずれかを含むストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物は、AveC遺伝子産物の機能における変化を生じた。例えば、生成されるクラス2:1アベルメクチンの比が変わった(後出のセクション8を参照されたい)。従って、55、138、139、又は230のアミノ酸残基1以上又はそれらの任意の組み合わせにおけるアミノ酸置換を含む突然変異したストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子は、本発明に含まれる。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株(その細胞は、アベルメクチン生成を変化させる結果となる突然変異aveC対立遺伝子を含む)を製造するための組成物を提供する。例えば、本発明は、本発明の突然変異ヌクレオチド配列を含む全てのポリヌクレオチド分子を、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体のAveC遺伝子の部位に向かわせることにより、相同組換えによるaveC−ORF又はその一部を挿入又は置換するのに使用することのできる組み換えベクターを提供する。しかしながら、本発明によれば、これと共に提供された本発明の突然変異ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子は、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体中のaveC遺伝子以外の部位に挿入された場合、あるいは、ストレプトミセス・アベルミティリス細胞中でエピソーム的に維持された場合に、アベルメクチン生合成を調整するように機能することもできる。従って、本発明は、本発明の突然変異ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を含むベクターも提供する。前記ベクターは、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体中のaveC遺伝子以外の部位にポリヌクレオチド分子を挿入するために、あるいは、エピソーム的に維持するために用いることができる。
好ましい態様では、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスの株の細胞中に突然変異したaveC対立遺伝子を挿入して、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株(その細胞は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、異なるクラス2:1比でアベルメクチンを生成する)を生成するのに用いることができる遺伝子置換ベクターを提供する。好ましい態様では、前記細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比が減少する。前記遺伝子置換ベクターは、これと共に提供される発現ベクター、例えばpSE188、pSE199、及びpSE231(これらの発現ベクターは、後出のセクション8.3中に例示されている)中に存在する突然変異したポリヌクレオチド分子を用いて構築することができる。
更に好ましい態様では、本発明は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、異なる量のアベルメクチンを生成する新規株を生成するために、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞中に突然変異したaveC対立遺伝子を挿入するのに用いることのできるベクターを提供する。好ましい態様では、前記細胞によって生成されるアベルメクチンの量が増加する。具体的であるが非限定的な態様では、前記ベクターは、更に、当業者に公知の強力なプロモーター、例えば、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)由来の強力な構成的ermEプロモーター(これは、aveC−ORFの上流に位置し、そしてaveC−ORFと有効に関連している)を含む。前記ベクターは、プラスミドpSE189(後出の実施例11に記載)であることができるか、あるいは、プラスミドpSE189の突然変異したaveC対立遺伝子を用いて構築することができる。
更に好ましい態様では、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリスの野生型株におけるaveC遺伝子を不活性化することに有用な遺伝子置換ベクターを提供する。非限定的な態様では、前記遺伝子置換ベクターを、プラスミドpSE180(ATCC209605)[これは、後出のセクション8.1で例示されている(図3)]中に存在する突然変異したポリヌクレオチド分子を用いて構築することができる。更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス染色体において、生体内でAveC遺伝子に天然に隣接するヌクレオチド配列[例えば、図1(配列表の配列番号1)に示す隣接ヌクレオチド配列]からなるか、あるいは、それを含むポリヌクレオチド分子を含む遺伝子置換ベクターを提供する。このベクターは、ストレプトミセス・アベルミティリスaveC−ORFを欠失させることに用いることができる。
更に、本発明は、突然変異したaveC対立遺伝子を発現し、しかも、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスの同じ株と比較して異なる比及び/又は量でアベルメクチンを生成する細胞を含む、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株の製造方法を提供する。好ましい態様では、本発明は、突然変異したaveC対立遺伝子を発現し、しかも、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスの同じ株の細胞と比較して、クラス2:1比が異なるアベルメクチンを生成する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリス新規株の製造方法であって、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞を、突然変異したaveC対立遺伝子(但し、前記遺伝子は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異したaveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させる遺伝子産物をコードする)を担持するベクターによって形質転換し、そして、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する株の細胞により生成されるクラス2:1比と比較して、クラス2:1比が異なるアベルメクチンを生成する形質転換細胞を選択することを含む、前記製造方法を提供する。好ましい態様では、アベルメクチンの変化したクラス2:1比が、減少する。
更に好ましい態様では、本発明は、異なる量のアベルメクチンを生成する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリス新規株の製造方法であって、
ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞を、突然変異したaveC対立遺伝子又はaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物(但し、その発現の結果、突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンの量が、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、変化する)を担持するベクターによって形質転換し、そして、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する株の細胞により生成されるアベルメクチンの量と比較して、異なる量のアベルメクチンを生成する形質転換細胞を選択することを含む、前記製造方法を提供する。好ましい態様では、形質転換細胞において生成されるアベルメクチンの量が、増加する。
更に好ましい態様では、本発明は、野生型aveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリスの株の細胞を、aveC対立遺伝子を不活性化するベクターで形質転換し、そしてaveC対立遺伝子が不活性化されている形質転換細胞を選択することを含む、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株(その細胞は、不活性化したaveC対立遺伝子を含む)の製造方法を提供する。好ましいが非限定的な態様では、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞を、突然変異によって、あるいは、異種遺伝子配列によるaveC対立遺伝子の一部の置換によって不活性化されたaveC対立遺伝子を担持する遺伝子置換ベクターで形質転換し、そして形質転換細胞(その細胞の天然aveC対立遺伝子は、不活性化aveC対立遺伝子で置換されている)を選択する。aveC対立遺伝子の不活性化は、発酵生成物のHPLC分析(後出)によって決定することができる。後出のセクション8.1に記載の具体的であるが非限定的な態様では、aveC−ORF中に、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)由来のermE遺伝子を挿入することによって、aveC対立遺伝子を不活性化する。
更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド分子又はベクターのいずれかで形質転換された細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を提供する。好ましい態様では、本発明は、野生型aveC対立遺伝子の代わりに、又は野生型aveC対立遺伝子に加えて、突然変異したaveC対立遺伝子を発現する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリスの新規株(ここで、前記新規株の細胞は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と比較して、異なるクラス2:1比でアベルメクチンを生成する)を提供する。好ましい態様では、前記の新規細胞によって生成される異なったクラス2:1比が、減少する。前記の新規株は、商業的に望ましいアベルメクチン(例えば、ドラメクチン)の大規模生産に有用である。
本明細書に記載のスクリーニングアッセイの第1の目的は、ストレプトミセス・アベルミティリス細胞中で発現することによって、生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させる(特には、減少させる)aveC遺伝子の突然変異した対立遺伝子を同定することにある。好ましい態様では、生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を減少させる突然変異したaveC対立遺伝子を発現している本発明のストレプトミセス・アベルミティリスの新規株の細胞によって生成されるB2:B1アベルメクチンの比は、1.6:1未満〜約0:1の間であり;より好ましい態様では、前記割合は、約1:1〜約0:1の間であり;そして最も好ましい態様では、前記割合は、約0.84:1〜約0:1である。後出の具体的な態様では、本発明の新規細胞は、1.6:1未満の比で、シクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1アベルメクチンを生成する。別の後出の具体的な態様では、本発明の新規細胞は、約0.94:1の比で、シクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1アベルメクチンを生成する。更に別の後出の具体的な態様では、本発明の新規細胞は、約0.88:1の割合で、シクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1アベルメクチンを生成する。更に別の後出の具体的な態様では、本発明の新規細胞は、約0.84:1の割合で、シクロヘキシル2:シクロヘキシルB1アベルメクチンを生成する。
更に好ましい態様では、本発明は、野生型aveC対立遺伝子に代えて、あるいは、野生型aveC対立遺伝子に加えて、突然変異したaveC対立遺伝子又はaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物(これにより、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、異なる量で、前記の新規株の細胞がアベルメクチンを生成する)を発現する細胞を含む、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規菌株を提供する。好ましい態様では、前記の新規株は、アベルメクチンを増加した量で生成する。非限定的な態様では、前記の遺伝子構築物は、更に、強力なプロモーター(例えば、aveC−ORFの上流に位置し、そしてaveC−ORFと有効に関連している、サッカロポリスポラ・エリスラエア由来の強力な構成的ermEプロモーター)を含む。
更に好ましい態様では、本発明は、aveC遺伝子が不活性化されている細胞を含有する、ストレプトミセス・アベルミティリスの新規株を提供する。前記株は、野生型株とは異なるアベルメクチン(前記株により生成される)のスペクトルと、アベルメクチン生成に影響を与えるaveC遺伝子の標的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発のいずれかを決定する本明細書に記載の相補性スクリーニングアッセイとの両方に有用である。後出の具体的態様では、ストレプトミセス・アベルミティリス宿主細胞を、不活性化aveC遺伝子を含有するように遺伝子的に設計した。例えば、aveCコード領域中にermE耐性遺伝子を挿入することによってストレプトミセス・アベルミティリスaveC遺伝子が不活性化するように構築した遺伝子置換プラスミドpSE180(ATCC209605)(図3)を用いて、株SE180−11(後出の実施例に記載)を生成した。
更に、本発明は、本発明の任意の前記ポリヌクレオチド分子でコードされ、組換え発現し、突然変異した、ストレプトミセス・アベルミティリスAveC遺伝子産物、及びその製造方法を提供する。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞(但し、前記細胞は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異したaveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を変化させる遺伝子産物をコードする突然変異したaveC対立遺伝子を発現する)を、その細胞によるアベルメクチンの生成を許容又は誘発する条件下で、培養培地中で培養し、そして、培養物からアベルメクチンを回収することを含む、アベルメクチンの製造方法を提供する。好ましい態様では、突然変異したaveC対立遺伝子を発現する細胞により培養物中で生成されるアベルメクチンのクラス2:1比が、減少する。この製造方法は、商業的に価値のあるアベルメクチン(例えば、ドラメクチン)の生成における効率の増加を提供する。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞(但し、前記細胞は、突然変異したaveC対立遺伝子又はaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を発現することなく野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチン生成量の変化を引き起こす突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現する)を、その細胞によるアベルメクチンの生成を許容又は誘発する条件下で、培養培地中で培養し、そして、培養物からアベルメクチンを回収することを含む、アベルメクチンの製造方法を提供する。好ましい態様では、突然変異したaveC対立遺伝子又は遺伝子構築物を発現する細胞により培養物中で生成されるアベルメクチンの量が、増加する。
更に、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス株(但し、前記株は、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じ株の細胞と比較して、突然変異したaveC対立遺伝子を発現するストレプトミセス・アベルミティリス株の細胞によって生成されるアベルメクチンのクラス2:1比を減少させる遺伝子産物をコードする突然変異したaveC対立遺伝子を発現する)により生成されたアベルメクチンの新規組成物であって、前記新規組成物中の前記アベルメクチンが、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現するストレプトミセス・アベルミティリスの同じ株の細胞により生成されるアベルメクチンのクラス2:1比と比較して、減少したクラス2:1比で生成される、前記組成物を提供する。前記新規アベルメクチン組成物は、消耗された発酵培養液中で生成されたものとして存在することができるか、あるいは、それらから収集することができる。前記新規アベルメクチン組成物は、公知の生化学的精製技法(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、透析、サイズ分別、イオン交換クロマトグラフィー、HPLCなど)によって、培養液から部分的に又は実質的に精製することができる。
5.4.アベルメクチンの使用
アベルメクチンは、駆虫剤(anthelmintic)、外部殺虫剤(ectoparasiticide)、殺虫剤(insecticide)、及びダニ駆虫剤(acaricide)としての特別な利用性を有する高活性の抗寄生生物剤である。そして本発明の方法によって生成されるアベルメクチン化合物は、それらの目的のすべてに有用である。例えば、本発明によって生成されるアベルメクチンは、ヒトにおける種々の疾患又は状態を治療するために(特に、前記の疾患又は状態が、当業界で公知の寄生生物感染により引き起こされる場合に)有用である。例えば、Ikeda及びOmura,1997,Chem.Rev.,97(7):2591−2609を参照されたい。より具体的には、本発明に従って調製されるアベルメクチン化合物は、ヒト、家畜、ブタ、ヒツジ、家禽、ウマ、又はウシに感染することができる内部寄生生物(例えば、寄生性線虫)により引き起こされる種々の疾患及び状態の治療において効果的である。
より具体的には、本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物は、ヒトに感染する線虫及び種々の動物種に感染する線虫に効果的である。前記線虫としては、胃腸寄生生物[例えば、アンシロストマ(Ancylostoma)、ネカトール(Necator)、アスカリス(Ascaris)、ストロンギロイデス(Strongyloides)、トリキネラ(Trichinella)、カピラリア(Capillaria)、トリクリス(Trichuris)、エンテロビウス(Enterobius)、ジロフィラリア(Dirofilaria)]、及び血液又は他の組織若しくは器官に見出される寄生生物[例えば、フィラリア属の虫(filarial worm)、並びにストロンギロイデス及びトリキネラの抽出腸状態]を含む。
また、本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物は、外部寄生生物感染[例えば、特には、マダニ、ダニ、シラミ、ノミ、ハエ(blowfly)、刺傷昆虫、あるいは、牛及び馬に影響することができる移動性双翅類幼虫により引き起こされる、哺乳類及び鳥類の節足動物侵入]の治療においても有用である。
また、本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物は、屋内害虫(例えば、特には、ゴキブリ、蛾、カーペットビートル、及びイエバエ)、並びに保存穀物及び農作物を害する昆虫[例えば、クモダニ(spider mite)、アリマキ、イモムシ、及び直翅類(例えば、特にはバッタ)]に対する殺虫剤としても有用である。
本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物により処理されることのできる動物には、ヒツジ、ウシ、ウマ、シカ、ヤギ、ブタ、鳥(家禽を含む)、並びに犬及びネコが含まれる。
本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物は、意図された特定の使用、治療される宿主動物の個々の種、及び関連する寄生生物又は昆虫に適切な製剤中で投与される。殺寄生生物剤(parasiticide)としての使用のためには、本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物を、カプセル、ボーラス、錠剤、又は液体飲剤の形で経口投与することもできるし、あるいは、ポア−オン(pour−on)として、注射により、又は移植物として投与することもできる。前記製剤は、標準的獣医学的手法に従って、通常の方法で調製される。従って、活性成分と微細に分割された適当な希釈剤又は担体とを混合し、更に、崩壊剤及び/又は結合剤(例えば、スターチ、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウムなど)を含むことによって、前記カプセル、ボーラス、又は錠剤を調製することができる。飲用製剤は、分散又は湿潤剤などと共に、活性成分を水溶液中に分散させることによって調製することができる。注射用製剤は、溶液を血液と等張にするための他の物質(例えば、充分な塩及び/又はグルコース)を含むことができる無菌溶液の形態で調製することができる。
前記製剤は、患者、又は処理される宿主動物の種類、感染の重篤度及びタイプ、並びに宿主の体重によって、活性化合物の重量に関して変化するであろう。一般的に、経口投与のためには、1〜5日間に対する単独投与量又は分割投与量として、患者又は動物体重1kg当たり約0.001〜10mgの活性化合物の用量が満足のいくものであろう。しかしながら、臨床学的症状に基づいて、例えば医者又は獣医が決定するような、より高いか又はより低い投与量範囲が示される場合が存在する。
あるいは、本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物を、動物飼料と組み合わせて投与することができ、そしてこの目的のために、通常の動物用飼料と共に混合するための、濃縮された飼料添加物又はプレミックスを調製することができる。
殺虫剤としての使用、及び農業用害虫の処理用に、本発明に従って調製されたアベルメクチン化合物を、標準的農業手法に従って、噴霧、微粉末、及びエマルジョンなどとして適用することができる。
6.実施例:ストレプトミセス・アベルミチリスの発酵及びB2:B1アベルメクチン分析
分枝鎖2−オキソ酸デヒドロゲナーゼ活性及び5−O−メチルトランスフェラーゼ活性の両方を欠いている菌株は、発酵培地に脂肪酸が補充されていない場合に、アベルメクチンを生産しない。本実施例は、かかる突然変異体において生合成が種々の脂肪酸の存在下で開始される場合に、広範囲のB2:B1比のアベルメクチンを得ることができることを証明するものである。
6.1.材料及び方法
ストレプトミセス・アベルミチリスATCC53692を、スターチ(Starch)[ナデックス(Nadex),レイン・ナショナル(Laing National)]20g;ファーマメディア(Pharmamedia)[トレーダーズ・プロテイン(Trader’s Protein),テネシー州メンフィス]15g;アルダミンpH(Ardamine pH)[イースト・プロダクツ社(Yeast Products Inc.)]5g;炭酸カルシウム1gからなる種培地中に調製した完全ブロスとして−70℃で保存した。最終容量は、生水(tap water)で1リットルに調整し、pHは7.2に調整し、そして培地を121℃で25分間オートクレーブ処理した。
前記調製物の解凍した懸濁液2mLを、同じ培地50mLを含むフラスコに接種するのに用いた。180rpmのロータリーシェーカーで28℃のインキュベーションを48時間行った後、ブロス2mLを、スターチ80g;炭酸カルシウム7g;ファーマメディア5g;リン酸水素二カリウム1g;硫酸マグネシウム1g;グルタミン酸0.6g;硫酸第一鉄七水化物0.01g;硫酸亜鉛0.001g;硫酸第一マンガン0.001gからなる生産培地50mLを含むフラスコに接種するのに用いた。最終容量は、生水で1リットルに調整し、pHは7.2に調整し、そして培地を121℃で25分間オートクレーブ処理した。
種々のカルボン酸基質(表1を参照)をメタノールに溶かし、最終濃度が0.2g/Lとなるように接種の24時間後に発酵ブロスに添加した。この発酵ブロスを28℃で14日間インキュベートした後、ブロスを遠心処理(2,500rpmで2分間)し、上澄み液を捨てた。この菌糸体ペレットをアセトン(15mL)、次いでジクロロメタン(30mL)で抽出し、有機相を分離、濾過し、次いで蒸発乾固した。この残渣をメタノール(1mL)中に取り、スキャンニング・ダイオード−アレー検出器セットを備えたヒューレット−パッカード(Hewlett−Packard)1090A液体クロマトグラフを用いたHPLCにより240nmで分析した。使用したカラムは、40℃で保持したベックマン・ウルトラスフフィアー(Beckman Ultrasphere)C−18、5μm、4.6mmx25cmカラムであった。前記メタノール溶液25μLをカラムに注入した。溶出は、80:20〜95:5のメタノール−水のリニアーグラジエントを40分間にわたり0.85/mL minで実施した。2つの標準濃度のシクロヘキシルB1を用いて検出器応答をキャリブレーションし、B2及びB1アベルメクチンに対する曲線下の面積を測定した。
6.2.結果
B2及びB1アベルメクチンについて観察されたHPLCのリテンションタイム、及び2:1の比を表1に示す。
表1に示したデータは、B2:B1アベルメクチンの生産量の比が非常に広範囲であることを証明するものであり、このことは、供給した脂肪酸側鎖スターターユニットの性質に応じてクラス2の化合物からクラス1の化合物への脱水転換(dehydrative conversion)の結果にかなりの差が生じることを示している。このことは、AveCタンパク質に対する変性(alterations)から生じるB2:B1の比の変化が特定の基質に特異的であることができることを示している。従って、特定の基質を用いて得られるB2:B1比に変化を示す突然変異体のスクリーニングは、当該基質の存在下に実施されることが必要である。下記の引き続きの実施例では、スクリーニング基質としてシクロヘキサンカルボン酸を用いている。しかしながら、この基質は単に可能性を例示するために用いるに過ぎず、本発明の適用性を限定しようとするものではない。
7.実施例:aveC遺伝子の単離
本実施例は、AveC遺伝子産物をコードするストレプトミセス・アベルミチリス染色体の領域の単離及び特徴付けを述べるものである。以下に示すように、aveC遺伝子は、生産されるシクロヘキシル−B2対シクロヘキシル−B1(B2:B1)アベルメクチンの比を変えることができるものとして同定された。
7.1.材料及び方法
7.1.1.DNA単離のためのストレプトミセスの増殖
ストレプトミセスの増殖を行うため、以下の方法に従った。ストレプトミセス・アベルミチリスATCC31272の単一コロニー(単一コロニー単離物#2)を、ディフコ・イースト・エキストラクト(Difco Yeast Extract)5g;ディフコ・バクト−ペプトン(Difco Bacto−peptone)5g;デキストロース2.5g;MOPS5g;ディフコ・バクト・アガー(Difco Bacto agar)15gを含む1/2強度のYPD−6上で単離した。最終容量は、dH2Oで1リットルに調整し、pHは7.0に調整し、そして培地を121℃で25分間オートクレーブ処理した。
前記培地で増殖した菌糸体を、25mmx150mmの試験管中のTSB培地[1リットルのdH2O中、ディフコ・トリプティック・ソイ・ブロス(Difco Tryptic Soy Broth)30g、121℃で25分間オートクレーブ処理]10mLに接種し、振とう(300rpm)しながら28℃で48〜72時間保持した。
7.1.2.ストレプトミセスからの染色体DNA単離
前記のように増殖させた菌糸体のアリコート(0.25mL又は0.5mL)を1.5mLの微小遠沈管に入れ、12,000xgで60秒間の遠心処理により細胞を濃縮した。この上澄みを捨て、細胞を、2mg/mLのリゾチームを含むTSEバッファー[1.5Mショ糖20mL,1Mトリス−HCl(pH8.0)2.5mL,1M EDTA(pH8.0)2.5mL,及びdH2O75mL]0.25mL中に再懸濁させた。このサンプルを振とうしながら37℃で20分間インキュベートし、オートゲン(AutoGen)540TM自動核酸単離装置[インテグレイティド・セパレーション・システム(Integrated Separation System),マサッチューセッツ州ネイティック(Natick)]にかけ、そしてサイクル(Cycle)159(装置ソフトウェアー)を製造業者の取扱説明書に従って用いてゲノムDNAを分離した。
これに代えて、菌糸体5mLを17mmx100mmの試験管に入れ、細胞を3,000rpmで5分間の遠心処理によって濃縮し、その上澄みを除去した。細胞をTSEバッファー1mL中に再懸濁させ、3,000rpmで5分間の遠心処理によって濃縮し、その上澄みを除去した。細胞を、2mg/mLのリゾチームを含むTSEバッファー1mL中に再懸濁させ、振とうしながら37℃で30〜60分間インキュベートした。インキュベーション後、10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.5mLを添加し、溶解(lysis)が完了するまで細胞を37℃でインキュベートした。そのライセートを65℃で10分間インキュベートし、室温まで冷却し、1.5mL容のエッペンドルフ(Eppendorf)管2本に分けて入れ、フェノール/クロロホルム[0.5Mトリス(pH8.0)で予め平衡化した50%フェノール;50%クロロホルム]0.5mLで1回(1x)抽出した。その水性相を取り出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で2〜5回(2〜5x)抽出した。1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)を添加することによりDNAを沈殿させ、この混合物を氷上で10分間インキュベートし、この混合物を5℃で15,000rpmで10分間の遠心処理を行い、その上澄みを清潔な試験管に取り出し、そこに1容量のイソプロパノールを添加した。次いで、その上澄みとイソプロパノールとの混合物を、氷上で20分間インキュベートし、5℃で15,000rpmで20分間の遠心処理を行い、その上澄みを除去し、そしてDNAペレットを70%エタノールで1回(1x)洗浄した。ペレットを乾燥させた後、DNAをTEバッファー[10mMトリス,1mM EDTA(pH8.0)]中に再懸濁させた。
7.1.3.ストレプトミセスからのプラスミドDNA単離
菌糸体のアリコート(1.0mL)を1.5mL容の微小遠沈管に入れ、12,000xgで60秒間の遠心処理により細胞を濃縮した。この上澄みを捨て、細胞を、10.3%ショ糖1.0mL中に再懸濁させ、12,000xgで60秒間の遠心処理により濃縮し、その上澄みを捨てた。次いで、細胞を、2mg/mLのリゾチームを含むTSEバッファー中に再懸濁させ、振とうしながら37℃で20分間インキュベートし、オートゲン540TM自動核酸単離装置にかけた。サイクル106(装置ソフトウェアー)を製造業者の取扱説明書に従って用いてプラスミドDNAを分離した。
これに代えて、菌糸体1.5mLを1.5mL容の微小遠沈管に入れ、12,000xgで60秒間の遠心処理により細胞を濃縮した。この上澄みを捨て、細胞を、10.3%ショ糖1.0mL中に再懸濁させ、12,000xgで60秒間の遠心処理により濃縮し、その上澄みを捨てた。細胞を、2mg/mLのリゾチームを含むTSEバッファー0.5mL中に再懸濁させ、37℃で15〜30分間インキュベートした。インキュベーション後、アルカリ性SDS(0.3N−NaOH,2%SDS)0.25mLを添加し、細胞を、55℃で15〜30分間、あるいは、溶液が透明になるまでインキュベートした。酢酸ナトリウム(0.1mL,3M,pH4.8)をこのDNA溶液に添加し、次いで、氷上で10分間インキュベートした。このDNAサンプルを、5℃で14,000rpmで10分間の遠心処理を行った。その上澄みを清潔な試験管に取り出し、そこにフェノール:クロロホルム(50%フェノール:50%クロロホルム)0.2mLを添加し、穏やかに混合した。このDNA溶液を、5℃で14,000rpmで10分間遠心処理し、その上層を清潔なエッペンドルフ管に取り出した。イソプロパノール(0.75mL)を添加し、この溶液を穏やかに混合し、次いで室温で20分間インキュベートした。このDNA溶液を、5℃で14,000rpmで15分間遠心処理し、その上澄みを除去し、DNAペレットを70%エタノールで洗浄し、乾燥させ、TEバッファー中に再懸濁させた。
7.1.4.大腸菌(E.coli)からのプラスミドDNA単離
形質転換した単一の大腸菌コロニーを、ルリア−ベルタニ(Luria−Bertani)(LB)培地[dH2O1リットル中、バクト−トリプトン(Bacto−Tryptone)10g、バクト−イースト・エキストラクト(Bacto−Yeast extract)5g、及びNaCl10g(pH7.0),121℃で25分間オートクレーブ処理,及び100μg/mLアンピシリンを補充]5mLに接種した。この培養物を一晩インキュベートし、1mLアリコートを1.5mL容の微小遠沈管に入れた。この培養サンプルを、オートゲン540TM自動核酸単離装置にかけ、サイクル3(装置ソフトウェアー)を製造業者の取扱説明書に従って用いてプラスミドDNAを単離した。
7.1.5.ストレプトミセス・アベルミチリスのプロトプラストの調製及び形質転換
ストレプトミセス・アベルミチリスの単一のコロニーを、1/2強度のYPD−6上で単離した。その菌糸体を、25mmx150mm試験管中のTSB培地10mLに接種し、次いで、振とう(300rpm)しながら28℃で48時間インキュベートした。菌糸体1mLをYEME培地50mLに接種した。YEME培地は、1リットル当たり、ディフコ・イースト・エキストラクト3g;ディフコ・バクト−ペプトン5g;ディフコ・モルト・エキストラクト(Difco
Malt Extract)3g;シュークロース(Sucrose)300gを含んでいる。121℃で25分間オートクレーブ処理した後、次の成分を添加した:2.5M−MgCl2・6H2O(別途、121℃で25分間オートクレーブ処理済み)2mL;及びグリシン(20%)(濾過滅菌済み)25mL。
菌糸体を30℃で48〜72時間増殖させ、3,000rpmで20分間の遠心処理により50mL容の遠沈管[ファルコン(Falcon)]に集めた。上澄みを捨て、菌糸体をPバッファー中に再懸濁させた。Pバッファーは、ショ糖205g;K2SO40.25g;MgCl2・6H2O2.02g;H2O600mL;K2PO4(0.5%)10mL;微量元素溶液20mL;CaCl2・2H2O(3.68%)100mL;及びMESバッファー(1.0M,pH6.5)10mLを含んでいる(微量元素溶液は1リットル当たり、ZnCl240mg;FeCl3・6H2O200mg;CuCl2・2H2O10mg;MnCl2・4H2O10mg;Na2B4O7・10H2O10mg;(NH4)6Mo7O24・4H2O10mgを含んでいる)。pHは6.5に調整し、最終容量は1リットルに調整し、そして培地は0.45ミクロンフィルターで熱濾過した。
菌糸体を3,000rpmで20分間でペレット化し、上澄みを捨て、菌糸体を2mg/mLのリゾチームを含むPバッファー20mL中に再懸濁させた。この菌糸体を、振とうしながら35℃で15分間インキュベートし、プロトプラスト形成の程度を顕微鏡で測定して調べた。プロトプラスト形成が完了した時、プロトプラストを8,000rpmで10分間の遠心処理に付した。上澄みを除去し、プロトプラストをPバッファー10mL中に再懸濁させた。プロトプラストを、8,000rpmで10分間遠心処理し、上澄みを除去し、プロトプラストをPバッファー2mL中に再懸濁させ、そして約1x109個のプロトプラストを、2.0mL容の極低温用バイアル瓶[ナルジェン(Nalgene)]に分配した。
1x109個のプロトプラストを含むバイアル瓶を8,000rpmで10分間遠心処理し、上澄みを除去し、プロトプラストをPバッファー0.1mL中に再懸濁させた。2〜5μgの形質転換DNAをプロトプラストに添加し、その後直ちにワーキングTバッファー0.5mLを添加した。Tバッファーベースは、PEG−1000[シグマ(Sigma)]25g;ショ糖2.5g;H2O83mLを含んでいる。pHは1N−NaOH(濾過滅菌済み)を用いて8.8に調整し、そしてTバッファーベースを濾過滅菌して4℃で保存した。使用当日に調製したワーキングTバッファーは、Tバッファーベース8.3mL;K2PO4(4mM)1.0mL;CaCl2・2H2O(5M)0.2mL;及びTES(1M、pH8)0.5mLであった。ワーキングTバッファーの各成分は個々に濾過滅菌した。
プロトプラストにTバッファーを添加して20秒以内に、Pバッファー1.0mLも添加し、そしてプロトプラストを8,000rpmで10分間遠心処理した。上澄みを捨て、プロトプラストをPバッファー0.1mL中に再懸濁させた。次いで、プロトプラストをRM14培地で平板培養(plate)した。このRM14培地は、ショ糖205g;K2SO40.25g;MgCl2・6H2O10.12g;グルコース10g;ディフコ・キャスアミノ・アシッズ(Difco Casamino Acids)0.1g;ディフコ・イースト・エキストラクト5g;ディフコ・オートミール・アガー(Difco Oatmeal Agar)3g;ディフコ・バクト・アガー(Difco Bacto Agar)22g;dH2O800mLを含んでいる。この溶液を121℃で25分間オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理後、以下の滅菌ストックを添加した:K2PO4(0.5%)10mL;CaCl2・2H2O(5M)5mL;L−プロリン(20%)15mL;MESバッファー(1.0M,pH6.5)10mL;微量元素溶液(前記に同じ)2mL;シクロヘキシミド・ストック(25mg/mL)40mL;及び1N−NaOH2mL。RM14培地25mLをプレ−ト当たりに分取し、プレートを使用前24時間乾燥させた。
プロトプラストを湿度95%、30℃で20〜24時間インキュベートした。チオストレプトン耐性の形質転換体を選択するため、125μg/mLのチオストレプトンを含むオーバーレイバッファー1mLをRM14再生プレート上に均一になるように広げた。オーバーレイバッファーは、100mL当たり、ショ糖10.3g;微量元素溶液(前記に同じ)0.2mL;及びMES(1M,pH6.5)1mLを含んでいる。このプロトプラストを、チオストレプトン耐性(Thior)コロニーが見えてくるまで、湿度95%、30℃で7〜14日間インキュベートした。
7.1.6.ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)プロトプラストの形質転換
ストレプトミセス・リビダンスTK64[ジョン・インズ・インスティチュート(John Innes Institute)、ノーリッジ(Norwich)、英国(U.K)により供給]を、ある場合に形質転換に用いた。ストレプトミセス・リビダンスの増殖、プロトプラスト形成、及び形質転換のための方法及び構成は、Hopwoodら,1985年,Genetic Manipulation of Streptomyces、A Laboratory Manual,John Innes Foundation、ノーリッジ,英国に記載されており、その本に記載のように実施した。前記セクション7.1.3に記載のように、プラスミドDNAをストレプトミセス・リビダンス形質転換体から分離した。
7.1.7.ストレプトミセス・アベルミチリス菌株の発酵分析
1/2強度のYPD−6で4〜7日間増殖させたストレプトミセス・アベルミチリスの菌糸体を、プレフォーム培地8mL及び2個の5mmガラスビーズを含む1x6インチの試験管に接種した。プレフォーム培地は、可溶性デンプン[弱く煮た(thin boiled)デンプン又はコソ(KOSO);ジャパン・コーン・スターチ社(Japan Corn Starch Co.),名古屋]20g/L;ファーマメディア15g/L;アルダミン(Ardamine)pH5g/L[シャンプラン・インド.(Champlain Ind.)、クリフトン(Clifton)、ニュージャージー州(NJ)];CaCO32g/L;培地中の最終濃度50ppmの2−(+/−)−メチル酪酸、60ppmのイソ酪酸、及び20ppmのイソ吉草酸を含有する2xbcfa(「bcfa」とは、分枝鎖の脂肪酸をいう)を含んでいる。pHを7.2に調整し、培地を121℃で25分間オートクレーブ処理した。
試験管を17゜の角度にして215rpmにおいて29℃で3日間振とうした。この種培養液の2mLアリコートを、生産培地25mLを含む300mL容のアーレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに接種した。この生産培地は、デンプン[弱く煮たデンプンまたはコソ]160g/L;ニュトリソイ(Nutrisoy)[アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archar Daniels Midland)、デカーチャー(Decatur)、イリノイ州(IL)]10g/L;アルダミンpH10g/L;K2HPO42g/L;MgSO4・4H2O2g/L;FeSO4・7H2O0.02g/L;MnCl20.002g/L;ZnSO4・7H2O0.002g/L;CaCO314g/L;2xbcfa(前記に同じ);及びシクロヘキサンカルボン酸(CHC)(pH7.0の20%溶液として調製済み)800ppmを含んでいる。pHを6.9に調整し、培地を121℃で25分間オートクレーブ処理した。
接種後、フラスコを200rpmで振とうしながら29℃で12日間インキュベートした。インキュベーション後、サンプル2mLをフラスコから取り出し、メタノール8mLで希釈し、混合し、この混合物を1,250xgで10分間遠心処理して破片をペレット化した。次いで、この上澄みを、ベックマン・ウルトラスフィアODSカラム(25cmx直径4.6mm)を用いて、流速0.75mL/min及び240nm吸収による検出でHPLCによって分析した。移動相は、86/8.9/5.1のメタノール/水/アセトニトリルであった。
7.1.8.ストレプトミセス・アベルミチリスPKS遺伝子の単離
ストレプトミセス・アベルミチリス(ATCC31272,SC−2)染色体DNAのコスミドライブラリーを調製し、サッカロポリスポラ・エリスレア(Saccharopolyspora erythraea)ポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子のフラグメントから調製したケトシンターゼ(KS)プローブとハイブリッドした。コスミドライブラリーの調製の詳細な記述は、前記のサムブルック(Sambrook)等,1989年に見いだすことができる。ストレプトミセス染色体DNAライブラリーの調製の詳細な記述は、前記のホップウッド等,1985年に示されている。ケトシンターゼ−ハイブリッド形成領域を含むコスミドクローンは、[ドクター・ピー.リードレイ(Dr.P.Leadlay),ケンブリッジ,英国から親切に供給された]pEX26由来の2.7KbのNdeI/Eco47IIIフラグメントへのハイブリダイゼーションによって同定した。約5ngのpEX26は、NdeI及びEco47IIIを用いて消化した。この反応混合物を、0.8%シープラーク(SeaPlaque)GTGアガロースゲル[FMCバイオプロダクツ(BioProducts),ロックランド(Rockland),メイン州(ME)]にかけた。電気泳動の後、ゲルから2.7KbのNdeI/Eco47IIIフラグメントを切り出し、ファースト・プロトコル(Fast Protocol)を用いたエピセンター・テクノロジーズ(Epicentre Technologies)からのGELアーゼ(GELaseTM)を用いてDNAをゲルから回収した。この2.7KbのNdeI/Eco47IIIフラグメントに、BRLニック・トランスレーション・システム(Nick Translation System)[BRLライフ・テクノロジーズ社(BRL Life Technologies,Inc.),ゲテルスバーグ(Gaithersburg),メリーランド州(MD)]を用い製造業者の取扱説明書に従って、[α−32P]dCTP[デオキシシチジン5’−トリホスフェート,テトラ(トリエチルアンモニウム)塩,[α−32P]−][NEN−デュポン(NEN−Dupont),ボストン,マサチューセッツ州]でラベル付与した。典型的な反応は、0.05mL容量で実施した。ストップバッファー5μL添加後、G−25セファデックス・クイック・スピン(Sephadex Quick SpinTM)カラム[ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)]を用い製造業者の取扱説明書に従って、取り込まれなかったヌクレオチドからラベル付きのDNAを分離した。
約1,800個のコスミドクローンを、コロニーハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。サッカロポリスポラ・エリスレアKSプローブに強くハイブリダイズする10個のクローンを同定した。コスミドDNAを含有する大腸菌コロニーをLB液体培地で増殖させ、そしてオートゲン540TM自動核酸単離装置で、サイクル3(装置ソフトウェアー)を製造業者の取扱説明書に従って用いて、各培養物からコスミドDNAを単離した。制限エンドヌクレアーゼマッピング及びサザンブロットハイブリダイゼーション分析によって、5個のクローンが部分的に重なり合う染色体領域を含んでいることが示された。5個のコスミド(すなわち、pSE65、pSE66、pSE67、pSE68、pSE69)のストレプトミセス・アベルミチリスのゲノムBamHI制限地図を、部分的に重なり合うコスミド及びハイブリダイゼーションの分析によって作成した(図4)。
7.1.9.アベルメクチンB2:B1比を調節するDNAの同定及びaveC−ORFの同定
以下の方法を用いて、pSE66コスミドクローンから得られたサブクローン化フラグメントを、AveC突然変異体におけるアベルメクチンのB2:B1比を調節する能力について試験した。pSE66(5μg)をSacI及びBamHIで消化した。反応混合物を0.8%シープラーク(SeaplaqueTM)GTGアガロースゲル(FMCバイオプロダクツ)にかけ、電気泳動の後、ゲルから2.9KbのSacI/BamHIフラグメントを切り出し、ファースト・プロトコルを用いたGELアーゼ(GELaseTM)(エピセンター・テクノロジーズ)を用いてDNAをゲルから回収した。約5μgのシャトルベクターpWHM3[バラ(Vara)等,1989年,ジェイ.バクテリオル.(J.Bacteriol.)171:5872−5881]を、SacI及びBamHIで消化した。約0.5μgの2.9Kbインサート及び0.5μgの消化されたpWHM3を一緒にして混合し、1単位のリガーゼ[ニューイングランド・バイオラブズ社(New England Biolabs,Inc.),ベバリー(Beverly),マサチューセッツ州]と、総容量20μLにして、製造業者の取扱説明書に従い、15℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、5μLの連結混合物は70℃で10分間インキュベートし、室温まで冷却し、製造業者の取扱説明書に従い、コンピテント大腸菌DH5α細胞(BRL)を形質転換するのに用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から分離し、制限分析によって2.9KbのSacI/BamHIインサートの存在を確認した。このプラスミドは、pSE119として表示した。
ストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38(ファイザー自社菌株)のプロトプラストを調製し、前記セクション7.1.5に記載のpSE119を用いて形質転換した。菌株1100−SC38は、シクロヘキサンカルボン酸を補充した場合にアベルメクチンシクロヘキシル−B1型に比べ有意に多量のアベルメクチンシクロヘキシル−B2型を生産する(約30:1のB2:B1)突然変異体である。ストレプトミセス・アベルミチリスのプロトプラストを形質転換するために用いたpSE119は、大腸菌株GM2163[ドクター・ビー.ジェイ.バックマン(Dr.B.J.Bachmann),キュレーター(Curator),イー.コリ・ジェネティック・ストック・センター(E.coli Genetic Stock Center),エール大学]、大腸菌株DM1(BRL)、又はストレプトミセス・リビダンス菌株TK64から分離したものである。菌株1100−SC38のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、発酵生産物のHPLC分析によって分析した。pSE119を含有するストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38の形質転換体は、約3.7:1の変化比のアベルメクチンシクロヘキシル−B2:シクロヘキシル−B1を生産した(表2)。
pSE119は、AveC突然変異体におけるアベルメクチンB2:B1の比を調節できるということが確かめられた後、インサートDNAの配列を決定した。約10μgのpSE119を、プラスミドDNA単離キット[キアジェン(Qiagen),バレンシア(Valencia),カリフォルニア州(CA)]を製造業者の取扱説明書に従って用いて分離し、ABI373A自動DNAシークェンサー(Automated DNA Sequencer)[パーキン・エルマー(Perkin Elmer),フォスターシティ(Foster City),カリフォルニア州]を用いて配列を決定した。配列データは、ジェネティック・コンピューター・グループ・プログラムス(Genetic Computer Group programs)[GCG,マディソン(Madison),ウィスコンシン州(WI)]を用いてアセンブルし編集した。DNA配列及びaveC−ORFは、図1(配列表の配列番号1)に示す。
pSE118と表示する新規なプラスミドは、以下のように構築した。約5μgのpSE66をSphI及びBamHIを用いて消化した。この反応混合物を0.8%シープラークGTGアガロースゲル(FMCバイオプロダクツ)にかけ、2.8KbのSphI/BamHIフラグメントを電気泳動の後にゲルから切り出し、ファースト・プロトコルを用いたGELアーゼ(GELaseTM)(エピセンター・テクノロジーズ)を用いてDNAをゲルから回収した。約5μgのシャトルベクターpWHM3を、SphI及びBamHIで消化した。約0.5μgの2.8Kbインサート及び0.5μgの消化されたpWHM3を一緒にして混合し、1単位のリガーゼ(ニューイングランド・バイオラブス社)と、総容量20μLにして、製造業者の取扱説明書に従い、15℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、5μLの連結混合物は70℃で10分間インキュベートし、室温まで冷却し、製造業者の取扱説明書に従い、コンピテント大腸菌DH5α細胞を形質転換するのに用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、制限分析によって2.8KbのSphI/BamHIインサートの存在を確認した。このプラスミドは、pSE118として表示した。pSE118及びpSE119中のインサートDNAは、約838個のヌクレオチドによって部分的に重なっている(図4)。
ストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38のプロトプラストを前記のpSE118で形質転換した。菌株1100−SC38のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、発酵生産物のHPLC分析によって分析した。pSE118を含有するストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38の形質転換体は、菌株1100−SC38と比較して、アベルメクチンシクロヘキシル−B2:アベルメクチンシクロヘキシル−B1の比における変化がなかった(表2)。
7.1.10.ストレプトミセス・アベルミチリス染色体DNA由来のaveC遺伝子のPCR増幅
aveC−ORFを含有する〜1.2Kbのフラグメントを、先に得られたaveCヌクレオチド配列に基づいて設計されたプライマーを用いてPCR増幅することにより、ストレプトミセス・アベルミチリス染色体DNAから分離した。PCRプライマーは、ジェノシス・バイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies、Inc.),テキサス(Texas)から供給を受けた。右向き(rightward)のプライマーは、5’−TCACGAAACCGGACACAC−3’(配列表の配列番号6)であり、左向き(leftward)のプライマーは、5’−CATGATCGCTGAACCGAG−3’(配列表の配列番号7)であった。PCR反応は、製造業者により供給されたバッファー中ディープ・ベント(Deep VentTM)ポリメラーゼ(ニューイングランド・バイオラブス社)を用い、300μMのdNTP、10%グリセロール、200ビコモルの各プライマー、0.1μgの鋳型、及び2.5単位の酵素の存在下に、最終容量100μで、パーキン−エルマー・シータス(Perkin−Elmer Cetus)サーマルサイクラーを用いて実施した。最初のサイクルの熱履歴は、95℃で5分間(変性工程)、60℃で2分間(アニーリング工程)、及び72℃で2分間(伸長工程)であった。引き続きの24サイクルは、変性工程を45秒間に短縮し及びアニーリング工程を1分間に短縮した以外は、同様の熱履歴であった。
このPCR生成物を1%アガロースゲル中で電気泳動させ、〜1.2Kbの単一のDNAバンドを検出した。このDNAをゲルから精製し、製造業者の取扱説明書に従い、25ngの線状化された(linearized)ブラントのpCR−ブラント(Blunt)ベクター[インビトロジェン(Invitrogen)]と、1:10のベクター対インサートのモル比で連結した。この連結混合物を用いて、製造業者の取扱説明書に従い、ワン・ショット(One ShotTM)コンピテント(Competent)大腸菌細胞(インビトロジェン)を形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、〜1.2Kbのインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドをpSE179と表示した。
pSE179由来のインサートDNAをBamHI/XbaIで消化して単離し、電気泳動によって分離し、ゲルから精製し、そして同様にBamHI/XbaIで消化しておいたシャトルベクターpWHM3と、全DNA濃度1μgにおいて、1:5のベクター対インサートのモル比で連結した。この連結混合物を用いて、製造業者の取扱説明書に従い、コンピテント大腸菌DH5α細胞を形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、〜1.2Kbのインサートの存在を制限分析によって確認した。pSE186(図2,ATCC209604)と表示したこのプラスミドを、大腸菌DM1中に形質転換し、そしてプラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離した。
7.2.結果
pSE119由来の2.9KbのSacI/BamHIフラグメントは、ストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38中に形質転換された場合、有意にB2:B1アベルメクチン生産の比を変化させることが確認された。ストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38は、通常、約30:1のB2:B1比を有しているが、2.9KbのSacI/BamHIフラグメントを含むベクターで形質転換された場合、B2:B1アベルメクチンの比が約3.7:1まで減少した。形質転換体培養物の発酵後分析により、形質転換DNAの存在が確認された。
2.9KbのpSE119フラグメントの配列を決定し、〜0.9KbのORFを同定した(図1)(配列表の配列番号1)。これは、予め他で突然変異処理を受け、B2生産物のみを生産するPstI/SphIフラグメントを包含している[イケダ(Ikeda)等,1995年,前記]。このORF又はその対応する推定ポリペプチドの、既知のデータベース(GenEMBL,SWISS−PROT)に照らした比較では、既知のDNA又はタンパク質配列との強い相同性はいずれも示されなかった。
表2は、種々のプラスミドにより形質転換されたストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38の発酵分析を示す。
8.実施例:ストレプトミセス・アベルミチリスAveC突然変異体の構築
本実施例では、前記の組成及び方法を用いた数種の異なるストレプトミセス・アベルミチリスAveC突然変異体の構築を述べる。ストレプトミセスの遺伝子に突然変異を導入するための技法の一般的な記載は、キーサー(Kieser)及びホップウッド,1991年,Meth.Enzym.,204:430−458にある。一層詳細な記載は、アンザイ(Anzai)ら,1988年,J.Antibiot.,XLI(2):226−233及びストゥツマン−エングウォール(Stutzman−Engwall)ら,1992年,J.Bacteriol.,174(1):144−154により提供される。これらの参考文献は、その全体を参考のため本明細書に引用する。
8.1.ストレプトミセス・アベルミチリスaveC遺伝子の不活性化
不活性化されたaveC遺伝子を含有するAveC突然変異体を、以下に記載のように、いくつかの方法を用いて構築した。
最初の方法では、pSE119(前記セクション7.1.9に記載のプラスミド)中のaveC遺伝子に内在する640bpのSphI/PstIフラグメントをサッカロポリスポラ・エリスレア由来の(エリスロマイシン耐性に対する)ermE遺伝子と置き換えた。ermE遺伝子は、BglII及びEcoRIによる制限酵素消化、それに続く電気泳動によってpIJ4026[ジョン・インズ・インスティチュート,ノーリッジ,英国により供給された;ビブ(Bibb)等,1985年,Gene,41:357−368も参照]から単離し、そしてゲルから精製した。〜1.7Kbのフラグメントを、BamHI及びEcoRIで消化しておいたpGEM7Zf[プロメガ(Promega)]中に連結し、この連結混合物を、製造業者の取扱説明書に従い、コンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、〜1.7Kbのインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドをpSE27と表示した。
pSE118(前記セクション7.1.9に記載)をSphI及びBamHIで消化し、その消化産物を電気泳動して、〜2.8KbのSphI/BamHIインサートをゲルから精製した。pSE119をPstI及びEcoRIで消化し、その消化産物を電気泳動して、〜1.5KbのPstI/EcoRIインサートをゲルから精製した。シャトルベクターpWHM3をBamHI及びEcoRIで消化した。pSE27をPstI及びSphIで消化し、その消化物を電気泳動して、〜1.7KbのPstI/SphIインサートをゲルから精製した。4つのフラグメント(すなわち、〜2.8Kb、〜1.5Kb、〜7.2Kb、〜1.7Kb)すべてを、4通りの連結法により、一緒に連結した。この連結混合物を、製造業者の取扱説明書に従い、コンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドをpSE180(図3;ATCC209605)と表示した。
pSE180をストレプトミセス・リビダンス菌株TK64中に形質転換し、形質転換したコロニーをチオストレプトン及びエリスロマイシンに対する耐性により同定した。pSE180をストレプトミセス・リビダンスから単離し、ストレプトミセス・アベルミチリスのプロトプラストを形質転換するのに用いた。4つのチオストレプトン耐性のストレプトミセス・アベルミチリス形質転換体を同定し、それらのプロトプラストを調製し、RM14培地上で非選択的条件下に平板培養した。プロトプラストが再生した後、不活性化されたaveC遺伝子の染色体組込み及び自由レプリコンの欠損を示す、エリスロマイシン耐性の存在及びチオストレプトン耐性の不在について、単一のコロニーをスクリーニングした。1つのErmrThios形質転換体を同定し、菌株SE180−11と表示した。染色体DNAの全体を、菌株SE180−11から単離し、制限酵素BamHI、HindIII、PstI、又はSphIを用いて消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動することによって分離し、ナイロン製の膜に移し、ermEプローブにハイブリダイズさせた。これらの分析により、ermE耐性遺伝子の染色体組込み、及び640bpのPstI/SphIフラグメントの付随的欠失が二重の交差事象により引き起こされたことが示された。菌株SE180−11の発酵生産物のHPLC分析は、通常の(normal)アベルメクチンがもはや生産されないということを示した(図5A)。
aveC遺伝子を不活性化する第二の方法では、ストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11の染色体から、aveC遺伝子中に640bpのPstI/SphI欠失を残して、1.7KbのermE遺伝子を取り出した。遺伝子置き換えプラスミドを以下のように構築した。すなわち、pSE180をXbaIで部分的に消化し、〜11.4Kbのフラグメントをゲルから精製した。この〜11.4Kbのバンドは、1.7KbのermE耐性遺伝子を欠いている。次いで、このDNAを連結し、大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このpSE184と表示したプラスミドを大腸菌DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離した。このプラスミドを用いて、ストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。プロトプラストは、菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体から調製し、RM14培地上で単一のコロニーとして平板培養した。プロトプラストを再生した後、不活性化されたaveC遺伝子の染色体組込み及びermE遺伝子を含有する自由レプリコンの欠損を示す、エリスロマイシン耐性及びチオストレプトン耐性の両方の不在について、単一のコロニーをスクリーニングした。1つのErmsThios形質転換体を同定し、SE184−1−13と表示した。SE184−1−13の発酵分析によって、通常のアベルメクチンが生産されないこと及びSE184−1−13がSE180−11と同じ発酵の特徴を有していることが示された。
aveC遺伝子を不活性化する第三の方法では、PCRを用いてnt位471のCの後ろに2個のGを付加してBspE1部位を作ることにより、染色体aveC遺伝子中にフレームシフトを導入した。作られたBspE1部位の存在は、遺伝子置き換え事象を検出するのに有効であった。PCRプライマーは、フレームシフト突然変異をaveC遺伝子中に導入するように設計し、これは、ジェノシス・バイオテクノロジーズ社により供給された。右向きのプライマーは、5’−GGTTCCGGATGCCGTTCTCG−3’(配列表の配列番号8)であり、左向きのプライマーは、5’−AACTCCGGTCGACTCCCCTTC−3’(配列表の配列番号9)であった。PCR条件は、前記セクション7.1.10に記載の通りであった。その666bpPCR産物をSphIで消化し、それぞれ278bp及び388bpの2つのフラグメントを得た。388bpのフラグメントをゲルから精製した。
遺伝子置き換えプラスミドを以下のように構築した。すなわち、シャトルベクターpWHM3をEcoRI及びBamHIで消化した。pSE119をBamHI及びSphIを用いて消化し、その消化産物を電気泳動し、〜840bpのフラグメントをゲルから精製した。pSE119をEcoRI及びXmnIで消化し、その消化産物を電気泳動によって分離し、〜1.7Kbのフラグメントをゲルから精製した。4つのフラグメント(すなわち、〜7.2Kb、〜840bp、〜1.7Kb、及び388bp)すべてを、4通りの連結法で一緒に連結した。この連結混合物を、コンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析及びDNA配列分析によって確認した。このpSE185と表示したプラスミドを大腸菌DM1中に形質転換し、アンピシリン耐性の形質転換体からプラスミドDNAを単離した。このプラスミドを用いてストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38のプロトプラストを形質転換した。菌株1100−SC38のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、発酵生産物のHPLC分析によって分析した。pSE185は、ストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38中に形質転換された場合、B2:B1アベルメクチンの比を有意に変えなかった(表2)。
pSE185を用いてストレプトミセス・アベルミチリスのプロトプラストを形質転換し、染色体aveC遺伝子にフレームシフト突然変異を引き起こした。チオストレプトン耐性の形質転換体からプロトスラストを調製し、RM14上で単一のコロニーとして平板培養した。プロトプラストを再生した後、チオストレプトン耐性の不在について、単一のコロニーをスクリーニングした。チオストレプトン感受性コロニーから染色体DNAを単離し、染色体中に組込まれたフレームシフト突然変異の存在についてPCRによりスクリーニングした。このPCRプライマーは、aveCヌクレオチド配列に基づいて設計し、ジェノシス・バイオテクノロジーズ社(テキサス)により供給された。右向きのPCRプライマーは、5’−GCAAGGATACGGGGACTAC−3’(配列表の配列番号10)であり、左向きのプライマーは、5’−GAACCGACCGCCTGATAC−3’(配列表の配列番号11)であり、PCR条件は前記セクション7.1.10に記載の通りであった。得られたPCR産物は543bpであり、BspE1で消化した場合、不活性化されたaveC遺伝子の染色体組込み及び自由レプリコンの欠損を示す、368bp、96bp、及び79bpの3つのフラグメントが観察された。
aveC遺伝子中にフレームシフト突然変異を含有するストレプトミセス・アベルミチリス突然変異体の発酵分析は、通常のアベルメクチンがもはや生産されないこと、及びこれらの突然変異体が菌株SE180−11及びSE184−1−13と同じ発酵HPLCの特徴を有していることを示した。1つのThios突然変異体を同定し、菌株SE185−5aと表示した。
更に、nt位520をGからAに変え、この結果、位116でトリプトファン(W)をコードするコドンを終止コドンに変える、aveC遺伝子における突然変異を行った。この突然変異を持ったストレプトミセス・アベルミチリス菌株は、通常のアベルメクチンを生産せず、そして菌株SE180−11、SE184−1−13、及びSE185−5aと同じ発酵の特徴を有していた。
さらに、(i)位256でアミノ酸をグリシン(G)からアスパラギン酸(D)に変える、nt位970でのGからAへの変更、及び(ii)位275でアミノ酸をチロシン(Y)からヒスチジン(H)に変える、nt位996でのTからCへの変更の両方を行うaveC遺伝子における突然変異を行った。これらの突然変異(G256D/Y275H)を持ったストレプトミセス・アベルミチリス菌株は、通常のアベルメクチンを生産せず、そして菌株SE180−11、SE184−1−13、及びSE185−5aと同じ発酵の特徴を有していた。
ストレプトミセス・アベルミチリスのaveC不活性化突然変異体菌株SE180−11、SE184−1−13、SE185−5a、及び本明細書で記載した他の菌株は、aveC遺伝子中の他の突然変異の影響を評価するためのスクリーニングツールを提供する。aveC遺伝子の野生型のコピーを含んでいるpSE186を、大腸菌DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離した。このpSE186DNAを用いてストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、ThiorErmr形質転換体を発酵生産物のHPLC分析によって分析した。機能的なaveC遺伝子[イン・トランス(in trans)]の存在により、菌株SE180−11は通常のアベルメクチン生産を回復することができた(図5B)。
8.2.クラスB2:B1の比を変えるaveC遺伝子における突然変異の分析
前記のように、不活性なaveC遺伝子を含有するストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11は、機能的なaveC遺伝子(pSE186)を含有するプラスミドを用いて形質転換することにより補完した。菌株SE180−11も、下記のように、aveC遺伝子における他の突然変異を特徴付けるために宿主菌株として用いた。
染色体DNAを菌株1100−SC38から単離し、aveC遺伝子のPCR増幅のための鋳型として用いた。1.2KbのORFを、aveCヌクレオチド配列を基礎として設計したプライマーを用いたPCR増幅によって単離した。右向きのプライマーは、配列表の配列番号6であり、左向きのプライマーは、配列表の配列番号7であった(前記セクション7.1.10参照)。PCR及びサブクローニング条件は、セクション7.1.10に記載の通りであった。1.2KbのORFのDNA配列分析は、nt位337をCからTに変えるaveC遺伝子における突然変異であって、位55のアミノ酸をセリン(S)からフェニルアラニン(F)に変える突然変異を示している。S55F突然変異を含有するaveC遺伝子をpWHM3中にサブクローニングしてpSE187と表示したプラスミドを形成し、これを用いてストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、ThiorErmr形質転換体を発酵生産物のHPLC分析によって分析した。アミノ酸残基55(S55F)における変化をコードするaveC遺伝子の存在により、菌株SE180−11は通常のアベルメクチン生産を回復することができた(図5C)。しかしながら、そのシクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1の比は、約1.6:1のB2:B1の比を有する、pSE186を用いて形質転換した菌株SE180−11と比較して、約26:1であり(表3)、このことは、単一の突然変異(S55F)がシクロヘキシル−B1に対して生産されるシクロヘキシル−B2の量を調節していることを示している。
nt位862をGからAに変える、aveC遺伝子における別の突然変異であって、位230のアミノ酸をグリシン(G)からアスパラギン酸(D)に変える突然変異を同定した。この突然変異(G230D)を有するストレプトミセス・アベルミチリス菌株は、約30:1のB2:B1比でアベルメクチンを生産する。
8.3.B2:B1比を低下させる突然変異
シクロヘキシル−B1に対して生産されるシクロヘキシル−B2の量を低下させる数種の突然変異を、以下のように構築した。
nt位588をGからAに変える、aveC遺伝子における突然変異であって、位139のアミノ酸をアラニン(A)からスレオニン(T)に変える突然変異を同定した。このA139T突然変異を含有するaveC遺伝子をpWHM3中にサブクローニングしてpSE188と表示したプラスミドを形成し、これを用いてストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、ThiorErmr形質転換体を発酵生産物のHPLC分析によって分析した。アミノ酸残基139(A139T)における変化をコードする、突然変異aveC遺伝子の存在により、菌株SE180−11はアベルメクチン生産を回復することができた(図5D)。しかしながら、そのB2:B1の比は、約0.94:1であり、このことは、この突然変異がシクロヘキシル−B1に対して生産されるシクロヘキシル−B2の量を低下させることを示している。この結果は予期できないものであった。なぜならば、刊行物に記載されている結果、並びに前記の突然変異の結果は、aveC遺伝子の不活性化またはアベルメクチンのB1型に対するB2型の生産の増加を示していたに過ぎないからである。
A139T突然変異は、B2:B1の比をより有利なB1方向に変えたので、アミノ酸位138でセリンの代わりにスレオニンをコードする突然変異が構築された。このように、pSE186をEcoRIで消化し、EcoRIで消化されているpGEM3Zf(プロメガ)中にクローニングした。このpSE186aと表示したプラスミドをApaI及びKpnIで消化し、そのDNAフラグメントをアガロースゲルで分離し、そして〜3.8Kb及び〜0.4Kbの2つのフラグメントをゲルから精製した。pSE186由来の〜1.2KbのインサートDNAをPCR鋳型として用いて、nt位585に単一の塩基変化を導入した。このPCRプライマーは、nt位585に突然変異を導入するように設計し、ジェノシス・バイオテクノロジーズ社(テキサス)により供給を受けた。右向きのPCRプライマーは、5’−GGGGGCGGGCCCGGGTGCGGAGGCGGAAATGCCCCTGGCGACG−3’(配列表の配列番号12)であり、左向きのPCRプライマーは、5’−GGAACCGACCGCCTGATACA−3’(配列表の配列番号13)であった。PCR反応は、アドバンテージGCゲノムPCRキット(Advantage GC genomic PCR kit)[クローンテック・ラボラトリーズ(Clonetech Laboratories),パロ・アルト(Palo Alto ),カリフォルニア州]を用いて、製造業者によって供給されたバッファー中、200μMのdNTPs、200ピコモルの各プライマー、50ngの鋳型DNA、1.0MのGC−メルト(GC−Melt)及び1ユニットのクレンタック・ポリメラーゼ・ミックス(KlenTaq Polymerase Mix)の存在下に最終容量50μLで実施した。最初のサイクルの熱履歴は、94℃で1分間であり、それに続いて94℃で30秒間及び68℃で2分間の25サイクル、そして68℃で3分間の1サイクルであった。295bpのPCR産物をApaI及びKpnIを用いて消化して254bpフラグメントを放出させ、これを電気泳動により分離しそしてゲルから精製した。3個のフラグメント(〜3.8Kb、〜0.4Kb及び254bp)すべてを3通りの連結法で一緒に連結した。この連結混合物を、コンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドをpSE198と表示した。
pSE198をEcoRIで消化し、EcoRIで消化されているpWHM3中にクローニングし、そして大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析及びDNA配列分析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、そして正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このpSE199と表示したプラスミドを用いて、ストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、そしてThiorErmr形質転換体を発酵生産物のHPLC分析によって分析した。アミノ酸残基138(S138T)における変化をコードする、突然変異aveC遺伝子の存在により、菌株SE180−11は通常のアベルメクチン生産を回復することができた。しかしながら、そのB2:B1の比は、約0.88:1であり、このことは、この突然変異がシクロヘキシル−B1に対して生産されるシクロヘキシル−B2の量を低下させることを示している(表3)。このB2:B1の比は、前記の、pSE188を用いた菌株SE180−11の形質転換により形成されたA139T突然変異について観察された0.94:1の比より低くさえある。
アミノ酸位138及び139の両方にスレオニンを導入するように、別の突然変異を構築した。pSE186由来の〜1.2KbのインサートDNAをPCR鋳型として用いた。PCRプライマーは、nt位585及び588に突然変異を導入するように設計し、ジェノシス・バイオテクノロジーズ社(テキサス)により供給を受けた。右向きのPCRプライマーは、5’−GGGGGCGGGCCCGGGTGCGGAGGCGGAAATGCCGCTGGCGACGACC−3’(配列表の配列番号14)であり、左向きのPCRプライマーは、5’−GGAACATCACGGCATTCACC−3’(配列表の配列番号15)であった。PCR反応は、本セクションにおいて直前に記載した条件を用いて実施した。449bpのPCR産物をApaI及びKpnIを用いて消化して254bpのフラグメントを放出させ、これを電気泳動により分離しそしてゲルから精製した。pSE186aをApaI及びKpnIを用いて消化し、そのDNAフラグメントをアガロースゲルで分離し、そして〜3.8Kb及び〜0.4Kbの2つのフラグメントをゲルから精製した。3つのフラグメント(〜3.8Kb、〜0.4Kb及び254bp)すべてを3通りの連結法で一緒に連結し、この連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドをpSE230と表示した。
pSE230をEcoRIで消化し、EcoRIで消化されているpWHM3中にクローニングし、そして大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析及びDNA配列分析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、そして正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドをpSE231と表示し、このプラスミドを用いて、ストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、そしてThiorErmr形質転換体を発酵によって分析した。S138T/A139Tをコードする、二重に突然変異されたaveC遺伝子の存在により、菌株SE180−11は通常のアベルメクチン生産を回復することができた。しかしながら、そのB2:B1の比は、約0.84:1であり、このことは、この突然変異が、前記のpSE188またはpSE199を用いた菌株SE180−11の形質転換によりもたらされた低下よりさらに、シクロヘキシル−B1に対して生産されるシクロヘキシル−B2の量を低下させることを示している(表3)。
これらの結果は、クラス2のアベルメクチンに対してより商業的に望ましいクラス1の生産を増加させる結果をもたらす、aveC遺伝子における特異的な突然変異を示す最初のものである。
9.実施例:5’欠失突然変異体の構築
前記セクション5.1において説明したように、図1に示したストレプトミセス・アベルミチリスのヌクレオチド配列(配列表の配列番号1)は、潜在的な開始位置であるbp位42、174、177及び180において4つの異なるGTGコドンを含んでいる。本セクションは、aveC−ORF(図1;配列表の配列番号1)の5’領域の複数の欠失の構成を説明し、これらのコドンのうちどれがタンパク質発現のためのaveC−ORFにおける開始位置として機能することができたかを規定するのに資するものである。
5’末端において種々に欠失したaveC遺伝子のフラグメントを、PCR増幅によりストレプトミセス・アベルミチリスの染色体DNAから単離した。PCRプライマーは、aveCのDNA配列に基づいて設計し、これは、ジェノシス・バイオテクノロジーズ社により供給を受けた。右向きのプライマーは、5'−AACCCATCCGAGCCGCTC−3'(配列表の配列番号16)(D1F1);5'−TCGGCCTGCCAACGAAC−3'(配列表の配列番号17)(D1F2);5'−CCAACGAACGTGTAGTAG−3'(配列表の配列番号18)(D1F3);及び5'−TGCAGGCGTACGTGTTCAGC―3'(配列表の配列番号19)(D2F2);であった。左向きのプライマーは、5'−CATGATCGCTGAACCGA−3'(配列表の配列番号20);5'−CATGATCGCTGAACCGAGGA−3'(配列表の配列番号21);及び5'−AGGAGTGTGGTGCGTCTGGA―3'(配配列表の配列番号22)であった。このPCR反応は前記セクション8.3に記載の通りに実施した。
このPCR産物を1%アガロースゲル中での電気泳動により分離し、〜1.0Kbまたは〜1.1Kbの単一のDNAバンドを検出した。このPCR産物をゲルから精製し、25ngの線状化されたpCR2.1ベクター(インビトロジェン)と1:10モルのベクター対インサートの比で、製造業者の取扱説明書に従って連結した。この連結混合物を用いて、製造業者の取扱説明書に従い、ワン・ショット(One ShotTM)コンピテント(Competent)大腸菌細胞(インビトロジェン)を形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、インサートの存在を制限分析及びDNA配列分析によって確認した。これらのプラスミドをpSE190(プライマーD1F1を用いて得られた)、pSE191(プライマーD1F2を用いて得られた)、pSE192(プライマーD1F3を用いて得られた)、及びpSE193(プライマーD2F2を用いて得られた)と表示した。
これらのインサートDNAをそれぞれBamHI/XbaIで消化し、電気泳動により分離し、ゲルから精製し、そして別々に、BamHI/XbaIで消化されているシャトルベクターpWHM3と、1:5のベクター対インサートのモル比で総DNA濃度1μgにして連結した。この連結混合物を用いてコンピテント大腸菌DH5α細胞を形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から分離し、インサートの存在を制限分析によって確認した。これらのプラスミドは、pSE194(D1F1)、pSE195(D1F2)、pSE196(D1F3)及びpSE197(D2F2)と表示し、それぞれを別々に大腸菌菌株DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在を制限分析によって確認した。このDNAを用いてストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、そしてThiorErmr形質転換体を発酵生産物のHPLC分析によって分析し、どのGTG部位がaveC発現に必要であるかを特定した。この結果は、それぞれ位42においてGTG部位を欠いているが位174、位177及び位180においてはすべてが3つのGTG部位を含んでいるpSE194、pSE195及びpSE196は、それぞれがSE180−11中に形質転換された場合に通常のアベルメクチン生産を回復することができたので、位42のGTGコドンを、aveC発現に影響を与えることなしに除去することができるということを示している。通常のアベルメクチン生産は、菌株SE180−11を、4つのGTG部位のすべてを欠いているpSE197で形質転換した場合には、回復がなかった(表4)。
10.実施例:ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(S.hygroscopicus)及びストレプトミセス・グリセオクロモゲネス(S.griseochromogenes)由来のaveC相同体のクローニング
本発明は、他のアベルメクチンまたはミルベマイシン(milbemycin)を生産するストレプトミセスの種由来のaveC相同遺伝子を同定しそしてクローニングすることを可能にするものである。例えば、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(FERM BP−1901)のコスミドライブラリーを、前記ストレプトミセス・アベルミチリス由来の1.2KbのaveCプローブとハイブリダイズさせた。強くハイブリダイズしたいくつかのコスミドクローンを同定した。染色体DNAをこれらのコスミドから分離し、aveCプローブとハイブリッドした4.9KbのKpnIフラグメントを同定した。このDNAの配列を決定し、ストレプトミセス・アベルミチリスのaveC−ORFと有意な相同性を持つORF(配列表の配列番号3)を同定した。ストレプトミセス・ヒグロスコピカスのaveC相同ORFから推定されたアミノ酸配列(配列表の配列番号4)を図6に示す。
更に、ストレプトミセス・グリセオクロモゲネスのゲノムDNAのコスミドライブラリーを、前記したストレプトミセス・アベルミチリス由来の1.2KbのaveCプローブとハイブリダイズした。強くハイブリダイズしたいくつかのコスミドクローンを同定した。染色体DNAをこれらのコスミドから分離し、aveCプローブとハイブリダイズした5.4KbのPstIフラグメントを同定した。このDNAの配列を決定し、ストレプトミセス・アベルミチリスのaveC−ORFと有意な相同性を持つaveC相同体の部分的ORFを同定した。推定された部分的アミノ酸配列(配列表の配列番号5)を図6に示す。
ストレプトミセス・ヒグロスコピカス及びストレプトミセス・グリセオクロモゲネス由来のaveC相同体のDNA及びアミノ酸配列分析は、これらの領域が、両方とも互いに対して及びストレプトミセス・アベルミチリスのaveC−ORF及びAveC遺伝子産物に対して有意な相同性(アミノ酸レベルで〜50%の配列一致)を共有していることを示している(図6)。
11.実施例:ermEプロモーターの後にaveC遺伝子を用いたプラスミドの構築
pSE186由来の1.2KbのaveC−ORFを、pWHM3のKpnI/BamHI部位中にKpnI/BamHIフラグメントとしてインサートされた300bpのermEプロモーターを有するシャトルベクターpWHM3であるpSE34中にサブクローニングした[ウォード(Ward)ら,1986年,Mol.Gen.Genet.,203:468−478参照]。pSE186をBamHI及びHindIIIで消化し、その消化産物を電気泳動により分離し、そして1.2Kbフラグメントをアガロースゲルから分離し、BamHI及びHindIIIで消化されているpSE34と連結した。この連結混合物を、製造業者の取扱説明書に従い、コンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、1.2Kbのインサートの存在を制限分析によって確認した。このプラスミドは、pSE189と表示し、大腸菌DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離した。ストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38のプロトプラストをpSE189を用いて形質転換した。菌株1100−SC38のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、発酵生産物のHPLC分析によって分析した。
pSE189を含有するストレプトミセス・アベルミチリス菌株1100−SC38の形質転換体は、生産されるアベルメクチン・シクロヘキシル−B2:アベルメクチン・シクロヘキシル−B1の比(約3:1)において菌株1100−SC38(約34:1)と比較して変化が生じ、アベルメクチンの総生産量が、pSE119を用いて形質転換された菌株1100−SC38と比べ約2.4倍増加した(表5)。
pSE189を、同様に、野生型のストレプトミセス・アベルミチリス菌株のプロトプラスト中に形質転換した。チオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、発酵生産物のHPLC分析によって分析した。pSE189を用いて形質転換された野生型のストレプトミセス・アベルミチリスにより生産されたアベルメクチン総量は、pSE119を用いて形質転換された野生型のストレプトミセス・アベルミチリスに比べて約2.2倍増加した(表5)。
12.実施例:ストレプトミセス・アベルミチリスのaveC−ORF及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのaveC相同体の両方に由来する配列を含んでいるキメラプラスミド
ストレプトミセス・アベルミチリスのaveC−ORFの564bp相同性部分をストレプトミセス・ヒグロスコピカスのaveC相同体の564bp部分に置き換えて含んでいる、pSE350と表示したハイブリッドプラスミド(図7)を、以下のように構築した。pSE350は、両方の配列中に保存されているBsaAI制限部位(aveC位225)、及びストレプトミセス・アベルミチリスのaveC遺伝子中に存在するKpnI制限部位(aveC位810)を用いて構築した。KpnI部位は、前記セクション7.1.10に記載のPCR条件を用い、右向きのプライマー5’−CTTCAGGTGTACGTGTTCG−3’(配列表の配列番号23)及び左向きのプライマー5’−GAACTGGTACCAGTGCCC−3’(配列表の配列番号24)(ジェノシス・バイオテクノロジーズ社により供給された)を用いたPCRによって、ストレプトミセス・ヒグロスコピカスのDNA中に導入した。このPCR産物をBsaAI及びKpnIで消化し、そのフラグメントを1%アガロースゲル中の電気泳動により分離し、そして564bpのBsaAI/KpnIフラグメントをゲルから分離した。pSE179(前記セクション7.1.10に記載)をKpnI及びHindIIIで消化し、そのフラグメントを1%アガロースゲル中の電気泳動により分離し、そして〜4.5Kbのフラグメントをゲルから分離した。pSE179をHindIII及びBsaAIで消化し、そのフラグメントを1%アガロースゲル中の電気泳動により分離し、そして〜0.2KbのBsaAI/HindIIIフラグメントをゲルから分離した。ストレプトミセス・ヒグロスコピカス由来の〜4.5KbのHindIII/KpnIフラグメント、〜0.2KbのBsaAI/HindIIIフラグメント及び564bpのBsaAI/KpnIフラグメントを3通りの連結法で一緒に連結し、この連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在をKpnI及びAvaIを用いた制限分析によって確認した。このプラスミドをHindIII及びXbaIで消化して、1.2Kbのインサートを放出させ、次いでこのインサートを、HindIII及びXbaIで消化しておいたpWHM3と連結した。この連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から単離し、正しいインサートの存在をHindIII及びAvaIを用いた制限分析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1中に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性の形質転換体から分離し、正しいインサートの存在を制限分析及びDNA配列分析によって確認した。このプラスミドをpSE350と表示し、これを用いてストレプトミセス・アベルミチリス菌株SE180−11のプロトプラストを形質転換した。菌株SE180−11のチオストレプトン耐性の形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を確認し、そしてThiorErmr形質転換体を発酵生産物のHPLC分析によって分析した。その結果は、ストレプトミセス・アベルミチリス/ストレプトミセス・ヒグロスコピカスのハイブリッドプラスミドを含有する形質転換体は平均で約109:1のB2:B1比を有していることを示している。
生物学的材料の寄託
下記の生物学的材料を、米国、20852、メリーランド州、ロックビル(Rockville)、パークローン・ドライブ(Parklawn Drive)12301在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)に、1998年1月29日に寄託し、下記の受託番号を付与された。
プラスミド 受託番号
プラスミドpSE180 209605
プラスミドpSE186 209604
前記したすべての特許、特許出願及び刊行物は、その全体を参考までに本明細書に引用するものである。
本発明は、本明細書に記した特定の態様により発明の範囲を限定することを意図するものではなく、これらの態様は本発明の個々の観点の単独の説明を意図して設けたものであり、機能的に等価な方法及び要素は本発明の範囲内にある。実際、本明細書に示し記載した態様の他に、本発明の種々の態様があることは、本明細書の記載内容及び添付の図面から当業者には明白なことであろう。かかる態様が、請求の範囲内に包含されることは意図するところである。