JP3884651B2 - B2アベルメクチン:b1アベルメクチンの比を指示するストレプトミセス・アベルミティリス遺伝子 - Google Patents

B2アベルメクチン:b1アベルメクチンの比を指示するストレプトミセス・アベルミティリス遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
1. 発明の分野
本発明は、アベルメクチンを産生するための組成物および方法を対象とし、主として動物保健の分野にある。より詳細には、本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)の培養物の発酵によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を調節するために用いうる、AveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド分子、ならびにこのようなヌクレオチド分子のスクリーニングのための組成物および方法に関する。本発明はさらに、産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が調節されるようにaveC遺伝子が変異した、ベクター、形質転換宿主細胞およびS.アベルミティリスの新規変異株に関する。
【0002】
2. 発明の背景
2.1. アベルメクチン
ストレプトミセス属は強力な駆虫作用および殺虫作用を有する、一連の8種類の関連する16員環大環状ラクトンから構成されるアベルメクチン類を含む、多種多様な二次代謝産物を産生する。別個の、しかし密接に関連した8種類の化合物は、A1a、A1b、A2a、A2b、B1a、B1b、B2aおよびB2bと呼ばれている。化合物の「a」シリーズは、C25位の置換基が(S)-sec-ブチル基である天然アベルメクチンを意味し、「b」シリーズはC25位の置換基がイソプロピル基である化合物を意味する。「A」および「B」という名称は、C5位の置換基がそれぞれメトキシ基およびヒドロキシ基であるアベルメクチンを意味する。数字の「1」は二重結合がC22位とC23位に存在するアベルメクチンを意味し、数字の「2」は、C22位に水素を有し、C23位にヒドロキシ基を有するアベルメクチンを意味する。関連するアベルメクチンのうち、B1型のアベルメクチンは最も効果的な駆虫作用および殺虫作用を有するものとして認識されており、このため、商業的に最も望ましいアベルメクチンである。
【0003】
アベルメクチンおよび、S.アベルミティリスの菌株の好気性発酵によるその産生は、米国特許第4,310,519号および第4,429,042号に記載されている。天然のアベルメクチンの生合成は、イソ酪酸およびS-(+)-2-メチル酪酸のCoAチオエステル類似体から内因的に開始されると考えられている。
【0004】
ランダム突然変異誘発による菌株の改良と外因的に入手した脂肪酸の利用の両方を組み合わせることにより、アベルメクチン類似体の効率的産生がもたらされている。分枝鎖2-オキソ酸デヒドロゲナーゼが欠損したS.アベルミティリスの変異株(bkd欠損変異株)は、発酵物に脂肪酸を供給した場合にのみアベルメクチンを産生しうる。分枝鎖デヒドロゲナーゼ活性に欠損のある変異株(例えば、S.アベルミティリス、ATCC 53567株)のスクリーニングおよび分離は、欧州特許(EP)第276103号に記載されている。外因的に入手した脂肪酸の存在下におけるこの種の変異株の発酵によって産生されるのは、用いた脂肪酸に対応する4種類ずつのアベルメクチンのみである。すなわち、S.アベルミティリス(ATCC 53567株)の発酵物にS-(+)-2-メチル酪酸を補充すると天然アベルメクチンA1a、A2a、B1aおよびB2aが産生され、発酵物にイソ酪酸を補充すると天然アベルメクチンA1b、A2b、B1bおよびB2bが産生され、発酵物にシクロペンタンカルボン酸を補充すると4種類の新規シクロペンチルアベルメクチンであるA1、A2、B1およびB2が産生される。
【0005】
他の脂肪酸を加えた場合には新規アベルメクチンが産生される。800種を上回る前駆物質候補のスクリーニングにより、60種を上回る他の新規アベルメクチンが同定されている(例えば、Duttonら、1991、J. Antibiot. 44:357〜365;およびBanksら、1994、Roy. Soc. Chem. 147:16〜26を参照されたい)。さらに、5-O-メチルトランスフェラーゼ活性に欠損のあるS.アベルミティリスの変異株は、本質的にはアベルメクチンB類似体のみを産生する。このため、分枝鎖2-オキソ酸デヒドロゲナーゼ活性および5-O-メチルトランスフェラーゼ活性をいずれも欠くS.アベルミティリス変異株は発酵物への補充に用いた脂肪酸に対応するアベルメクチンBのみを産生する。したがって、この種の二重変異株にS-(+)-2-メチル酪酸を補充すると天然のアベルメクチンB1aおよびB2aのみが産生され、一方、イソ酪酸またはシクロペンタンカルボン酸を補充すると、天然のアベルメクチンB1bおよびB2b、または新規シクロペンチルB1アベルメクチンおよびシクロペンチルB2アベルメクチンがそれぞれ産生される。二重変異株にシクロヘキサンカルボン酸を補充することは、商業的に重要な新規アベルメクチンであるシクロヘキシルアベルメクチンB1(ドラメクチン)を産生するための好ましい方法の一つである。この種の二重変異株、例えばS.アベルミティリス(ATCC 53692株)の分離および特徴は、欧州特許第276103号に記載されている。
【0006】
2.2. アベルメクチン生合成に関与する遺伝子
多くの場合、二次代謝産物の産生に関与する遺伝子および特定の抗生物質をコードする遺伝子は染色体上にクラスター化して認められる。これには例えば、ストレプトミセスポリケチドシンターゼ遺伝子クラスター(PKS)の場合がある(HopwoodおよびSherman、1990、Ann. Rev. Genet. 24:37〜66を参照されたい)。したがって、生合成経路における遺伝子をクローニングするための1つの戦略は、薬剤耐性遺伝子を単離し、続いて染色体の隣接領域をその特定の抗生物質の生合成に関連した他の遺伝子に関して試験することである。重要な代謝産物の生合成に関与する遺伝子をクローニングするためのもう1つの戦略は、変異体の相補性である。例えば、特定の代謝産物を産生しうる生物体由来のDNAライブラリーの一部を非産生性変異体に導入し、形質転換体を代謝産物の産生に関してスクリーニングする。さらに、他のストレプトミセス属に由来するプローブを用いるライブラリーのハイブリダイゼーションも生合成経路における遺伝子の同定およびクローニングのために用いられている。
【0007】
アベルメクチン生合成に関与する遺伝子(ave遺伝子)は、ストレプトミセスの他の二次代謝産物(例えば、PKS)の生合成のために必要な遺伝子のように、染色体上にクラスター化して認められる。アベルメクチン生合成が阻止されているS.アベルミティリス変異株を補完するベクターを用いて数多くのave遺伝子のクローニングが成功している。この種の遺伝子のクローニングは米国特許第5,252,474号に記載されている。さらに、イケダ(Ikeda)ら、1995、J. Antibiot. 48:532〜534は、C22とC23の脱水過程にかかわる染色体領域(aveC)がS.アベルミティリスの4.82KbのBamHI断片に局在すること、およびB2aが単一成分である産生株の産生をもたらすaveC遺伝子の変異に関して記載している。強力な駆虫性化合物であるイベルメクチンはアベルメクチンB2aから化学合成されるため、このようなアベルメクチンB2aの単一成分産生株はイベルメクチンの商業産生のために特に有用であると考えられる。
【0008】
例えばアベルメクチンのB2:B1比を低下させる変異などの、アベルメクチン産生の複雑性を最小化するようなaveC遺伝子における変異の同定により、商業的に重要なアベルメクチンの産生および精製が簡略化されると考えられる。
【0009】
3. 発明の概要
本発明は、S.アベルミティリスの完全なaveC ORFまたはその実質的な部分を含む単離されたポリヌクレオチド分子であって、S.アベルミティリス染色体においてインサイチューのaveC ORFの下流に位置する次の完全なORFを欠く単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。本発明の単離されたポリヌクレオチド分子は、好ましくは、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じ、または図1のaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその実質的な部分と同じであるヌクレオチド配列を含む。本発明はさらに、配列番号:1のヌクレオチド配列またはその縮重変異体を含む単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0010】
本発明はさらに、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と相同な、または図1に示したaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその実質的な部分と相同なヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0011】
本発明はさらに、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列と相同な、または図1のアミノ酸配列(配列番号:2)もしくはその実質的な部分と相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0012】
本発明はさらに、AveC相同体遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。1つの好ましい態様において、単離されたポリヌクレオチド分子は、S.ハイグロスコピカス(S. hygroscopicus)由来のAveC相同体遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含み、相同体遺伝子産物は配列番号:4のアミノ酸配列または実質的な部分を含む。1つの好ましい態様において、S.ハイグロスコピカスのAveC相同体遺伝子産物をコードする本発明の単離されたポリヌクレオチド分子は、配列番号:3のヌクレオチド配列またはその実質的な部分を含む。
【0013】
本発明はさらに、配列番号:3のS.ハイグロスコピカスのヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。本発明はさらに、配列番号:4のアミノ酸配列を有するS.ハイグロスコピカスのAveC相同体遺伝子産物と相同なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0014】
本発明はさらに、図1のヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくは配列番号:3を有するポリヌクレオチド分子とハイブリダイズする、または図1のヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくは配列番号:3の相補物であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド分子を提供する。
【0015】
本発明はさらに、S.アベルミティリスのaveC ORFまたはaveC相同体ORFを含むポリヌクレオチド分子を含む本発明のポリヌクレオチドのクローニングまたは発現に有用な、組換えクローニングベクターおよび発現ベクターを提供する。1つの非制限的な態様において、本発明は、S.アベルミティリスのaveC遺伝子の全ORFを含むプラスミドpSE186(ATCC 209604)を提供する。本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチド分子または組換えベクターを含む形質転換宿主細胞、およびそれに由来する新規細胞株または細胞系を提供する。
【0016】
本発明はさらに、 実質的に精製または単離された、組換え発現がなされたAveC遺伝子産物もしくはAveC相同体遺伝子産物またはそれらの実質的な部分、さらにはそれらの相同体を提供する。本発明はさらに、以下の段階を含む、組換えAveC遺伝子産物の産生のための方法を提供する:組換え発現ベクターがAveC遺伝子産物またはAveC相同体遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を含み、ポリヌクレオチド分子が宿主細胞におけるポリヌクレオチド分子の発現を制御する1つまたは複数の調節因子と機能的に関連している、組換え発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を、組換えAveC遺伝子産物またはAveC相同体遺伝子産物の産生が誘導される条件下で培養する段階;および細胞培養物からAveC遺伝子産物またはAveC相同体遺伝子産物を回収する段階。
【0017】
本発明はさらに、野生型aveC対立遺伝子が不活性化されておりかつ変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を発現するS.アベルミティリスATCC 53692株の細胞が、野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスATCC 53692株の細胞によって産生されるものとは異なる比または量のアベルメクチンを産生するような、1つまたは複数の変異をさらに含む点を除き、S.アベルミティリスAveC対立遺伝子もしくはプラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列もしくはその縮重変異体、または図1に示されたS.アベルミティリスのaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその縮重変異体と同じであるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。本発明によれば、このようなポリヌクレオチド分子を用いて、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株と比べてアベルメクチン産生において検出可能な変化を呈するS.アベルミティリスの新規株を作製することができる。1つの好ましい態様において、このようなポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する菌株によるものと比べて低いクラス2:クラス1比のアベルメクチンを産生するS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用である。1つのさらに好ましい態様において、このようなポリヌクレオチド分子は、単一の野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株と比べてアベルメクチンの産生レベルが高いS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用である。1つのさらに好ましい態様において、このようなポリヌクレオチド分子は、aveC遺伝子が不活性化されたS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用である。
【0018】
本発明は、産生されるアベルメクチンの比および/または量を変化させうるS.アベルミティリスのaveC ORFの変異を同定するための方法を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させうるaveC ORFの変異を同定するための方法を提供する:段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と異なるならばアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させうるaveC ORFの変異が同定されるような、(a)本来のaveC対立遺伝子が不活性化されかつ変異型aveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子が導入されて発現されているS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を決定する段階;(b)野生型aveC対立遺伝子もしくは図1のORF(配列番号:1)またはそれらと相同なヌクレオチド配列のみを発現する、段階(a)と同じS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を決定する段階;および(c)段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と比較する段階。1つの好ましい態様において、アベルメクチンのクラス2:クラス1比は変異によって減少する。
【0019】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、産生されるアベルメクチンの量を変化させうる、aveC ORFまたはaveC ORFを含む遺伝子構築物の変異を同定するための方法を提供する:段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量が段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量とは異なるならばアベルメクチンの量を変化させうるaveC ORFの変異または遺伝子構築物が同定されるような、(a)本来のaveC対立遺伝子が不活性化されかつ変異型aveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子、またはAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を含むポリヌクレオチド分子が導入され発現されている、S.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量を決定する段階;(b)図1のORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)またはそれと相同なヌクレオチド配列を有する単一のaveC対立遺伝子のみを発現する、段階(a)と同じS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量を決定する段階;および(c)段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量を段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量を比較する段階。1つの好ましい態様において、産生されるアベルメクチンの量は変異によって増加する。
【0020】
本発明はさらに、アベルメクチンの産生が変化したS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用な組換えベクターを提供する。例えば、本発明は、相同組換えによるaveC対立遺伝子もしくはORFまたはそれらの一部への挿入またはそれらとの置換を目的として、本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子のいずれかをS.アベルミティリス染色体のaveC遺伝子の部位にターゲティングさせるために用いることができるベクターを提供する。しかし本発明によれば、本明細書で提供する本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子は、S.アベルミティリス染色体のaveC遺伝子以外の部位に挿入された場合、またはS.アベルミティリス細胞にエピソームとして維持された場合にもアベルメクチン生合成を調節する働きをする。したがって、本発明は、ポリヌクレオチド分子をS.アベルミティリス染色体のaveC遺伝子以外の部位に挿入するため、またはエピソームとして維持させるために用いうるベクターである、本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を含むベクターも提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて低いクラス2:クラス1比でアベルメクチンを産生する細胞の新規株を作製することを目的として、変異型aveC対立遺伝子をS.アベルミティリス染色体に挿入するために用いうる遺伝子置換ベクターを提供する。
【0021】
本発明はさらに、以下の段階を含む、変異型aveC対立遺伝子を発現し、野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株と比べて産生されるアベルメクチンの比および/または量が変化している細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、変異型aveC対立遺伝子を発現しかつ野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株の細胞と比べて産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が変化している細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する:野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて変異型対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させる遺伝子産物をコードする変異型aveC対立遺伝子を有するベクターを用いて、S.アベルミティリスの菌株の細胞を形質転換する段階;および、野生型aveC対立遺伝子を発現する菌株の細胞によって産生されるクラス2:クラス1比と比べてクラス2:クラス1比が変化しているアベルメクチンを産生する形質転換細胞を選択する段階。1つの好ましい態様において、新規株の細胞において産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比は減少する。
【0022】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、産生されるアベルメクチンの量が変化した細胞を含むS.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する:発現により、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量の変化がもたらされるaveC対立遺伝子を含む、変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を有するベクターを用いて、S.アベルミティリスの菌株の細胞を形質転換する段階;および、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量と比べて量が変化したアベルメクチンを産生する形質転換細胞を選択する段階。1つの好ましい態様において、新規株の細胞では産生されるアベルメクチンの量が増加する。
【0023】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、不活性化されたaveC対立遺伝子を細胞が含むS.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する:aveC対立遺伝子を不活性化するベクターを用いて、任意のaveC対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞を形質転換する段階;および、aveC対立遺伝子が不活性化された形質転換細胞を選択する段階。
【0024】
本発明はさらに、本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子またはベクターのいずれかによって形質転換がなされた細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて新規株の細胞が産生するアベルメクチンのクラス2:クラス1比が変化している、野生型aveC対立遺伝子に対して代替的または追加的に変異型aveC対立遺伝子を発現する細胞を含むS.アベルミティリスの新規株を提供する。1つのさらに好ましい態様において、新規株の細胞が産生するアベルメクチンのクラス2:クラス1比は、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて低い。このような新規株は、ドラメクチン(doramectin)などの商業的に望ましいアベルメクチンの大規模産生に有用である。
【0025】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量と比べて細胞によって産生されるアベルメクチンの量の変化を引き起こす変異型aveC対立遺伝子またはaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を本来のaveC対立遺伝子に対して代替的または追加的に発現する、S.アベルミティリスの新規株を提供する。1つの好ましい態様において、新規細胞が産生するアベルメクチンの量は増加する。
【0026】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、aveC遺伝子が不活性化された細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を提供する。このような菌株は、これらが産生する、野性株と比べて異なる範囲のアベルメクチンに関して、及びaveC遺伝子の標的突然変異誘発またはランダム突然変異誘発がアベルメクチン産生に影響を及ぼすか否かを判定するための、本明細書に記載された相補性スクリーニングアッセイ法の両方において有用である。
【0027】
本発明はさらに、以下の段階を含む、アベルメクチンを産生するための方法を提供する:細胞が、変異型aveC対立遺伝子を発現せずに野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて、変異型aveC対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させる遺伝子産物をコードする変異型aveC対立遺伝子を発現する、S.アベルミティリスの菌株の細胞を、アベルメクチンの産生が可能となるまたは誘導される条件下で培地中で培養する段階;および、該アベルメクチンを培養物から回収する段階。1つの好ましい態様において、変異を発現する細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比は低くなる。本方法は、ドラメクチンなどの商業的価値のあるアベルメクチンの産生効率を高める。
【0028】
本発明はさらに、以下の段階を含む、アベルメクチンを産生するための方法を提供する:細胞が、変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を発現せずに野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて、変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量の変化を引き起こす変異型aveC対立遺伝子またはaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を発現する、S.アベルミティリスの菌株の細胞を、アベルメクチンの産生が可能となるまたは誘導される条件下で培地中で培養する段階;および該アベルメクチンを培養物から回収する段階。1つの好ましい態様において、変異または遺伝子構築物を発現する細胞によって産生されるアベルメクチンの量は増加する。
【0029】
本発明はさらに、変異型aveC対立遺伝子を発現せずに野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と比べて低いクラス2:クラス1比でアベルメクチンが産生される、本発明の変異型aveC対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株によって産生されるアベルメクチンの新規組成物を提供する。新規アベルメクチン組成物は、発酵培養液中に産生された状態で存在することもでき、またはそこから回収されることができ、かつそこから部分的もしくは実質的に精製されることもできる。
【0030】
5. 発明の詳細な説明
本発明は、ストレプトミセス・アベルミティリス由来のAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の同定および特徴決定、アベルメクチン産生に対する影響に関する変異型aveC遺伝子産物のスクリーニングのために用いうるS.アベルミティリスの新規株の作製、ならびにS.アベルミティリスによって産生されるアベルメクチンB2:アベルメクチンB1の比を低下させうる特定の変異型aveC遺伝子産物の発見に関する。例証のために、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じヌクレオチド配列または図1のORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)を有するポリヌクレオチド分子、ならびにそれに由来する変異型ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子およびそれらの縮重変異体に関して、以下の項において本発明を説明する。しかし、本発明に記載された原理は、特にS.ハイグロスコピカスおよびS.グリセオクロモゲネス(griseochromogenes)などを含む他のストレプトミセス属に由来するaveC相同体遺伝子を含む、他のポリヌクレオチド分子にも同様に適用可能である。
【0031】
5.1. S. アベルミティリス AveC 遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド分子
本発明は、S.アベルミティリスの完全なaveC ORFまたはその実質的な部分を含む単離されたポリヌクレオチド分子であって、S.アベルミティリス染色体においてインサイチューのaveC ORFの下流に位置する次の完全なORFを欠く単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0032】
本発明の単離されたポリヌクレオチド分子は、好ましくは、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じ、または図1のaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその実質的な部分と同じであるヌクレオチド配列を含む。本明細書で用いる、S.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子の「実質的な部分」とは、図1に示された完全なaveC ORF配列(配列番号:1)の少なくとも約70%を含み、機能的に等価なAveC遺伝子産物をコードする、単離されたポリヌクレオチド分子を意味する。この点に関して「機能的に等価な」AveC遺伝子産物は、本来のaveC対立遺伝子が不活性化されたS.アベルミティリスATCC 53692株で発現された場合に、S.アベルミティリスATCC 53692株にとって本来の野生型の機能的なaveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスATCC 53692株によって産生されるものと実質的に同じ比および量のアベルメクチンの産生をもたらす遺伝子産物と定義される。
【0033】
aveC ORFのヌクレオチド配列に加えて、本発明の単離されたポリヌクレオチド分子は、S.アベルミティリスにおいてインサイチューのaveC遺伝子に天然に隣接するヌクレオチド配列、例えば図1に示されたヌクレオチド配列(配列番号:1)に隣接するヌクレオチド配列などをさらに含みうる。
【0034】
本発明はさらに、配列番号:1のヌクレオチド配列またはその縮重変異体を含む、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0035】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド分子」「ポリヌクレオチド配列」「コード配列」「オープンリーディングフレーム」および「ORF」という用語は、適切な調節因子の制御下に置かれた場合に適切な宿主細胞発現系において、AveC遺伝子産物、または、以下に述べるように、AveC相同体遺伝子産物もしくは、AveC遺伝子産物もしくはAveC相同体遺伝子産物と相同なポリペプチドへと、転写および翻訳されうる(DNA)または翻訳されうる(RNA)、一本鎖または二本鎖のいずれでもありうる、DNA分子およびRNA分子の両方を指すことが意図されている。コード配列には、原核生物配列、cDNA配列、ゲノムDNA配列ならびに化学合成されたDNA配列およびRNA配列が非制限的に含まれうる。
【0036】
図1に示されたヌクレオチド配列(配列番号:1)は、42位、174位、177位および180位の塩基にある4つの異なるGTGコドンを含む。以下の第9項に述べる通り、これらのコドンのうちどれがaveC ORFにおけるタンパク質発現のための開始部位であるかを定義する一助として、aveC ORF(図1;配列番号:1)の5'領域に多数の欠失を作製した。42位の塩基にある第1のGTG部位が欠失してもAveC活性は消失しなかった。これに加えて174位、177位および180位の塩基にあるすべてのGTGコドンが欠失するとAveC活性が消失したことから、この領域がタンパク質発現に必要であることが示された。したがって、本発明にはさまざまな長さのaveC ORFが含まれる。
【0037】
本発明はさらに、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と相同な、または図1に示されたaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその実質的な部分と相同なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を提供する。S.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と相同なポリヌクレオチド分子について言及するために用いる場合、「相同な」という用語は、以下のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を意味する:(a)遺伝暗号の縮重性に従ってヌクレオチド配列に1つもしくは複数のサイレントな(silent)変化を含む点を除き、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列と同じAveC遺伝子産物をコードする、もしくは図1に示されたaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)と同じAveC遺伝子産物をコードする(すなわち縮重変異体);または(b)中程度のストリンジェントな条件下、すなわちフィルターに結合したDNAとの0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でのハイブリダイゼーションおよび0.2×SSC/0.1%SDS中、42℃での洗浄により(Ausubelら(編)、1989、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、第I巻、Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc.、New York、p.2.10.3を参照されたい)、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列をコードする、または図1に示されたアミノ酸配列(配列番号:2)をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の相補物とハイブリダイズし、さらに上記で定義された機能的に等価なAveC遺伝子産物をコードする。1つの好ましい態様において、相同なポリヌクレオチド分子は、高度にストリンジェントな条件下、すなわちフィルターに結合したDNAとの0.5M NaHPO4、7%SDS、1mM EDTA中、65℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC/0.1%SDS中、68℃での洗浄(Ausubelら、1989、上記)により、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列の相補物、または図1に示されたaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその実質的な部分の相補物とハイブリダイズし、さらに上記で定義された機能的に等価なAveC遺伝子産物をコードする。
【0038】
AveC遺伝子産物およびその潜在的な機能的等価物の活性は、以下の実施例で説明する通り、発酵産物のHPLC分析によって決定されうる。S.アベルミティリスAveC遺伝子産物の機能的等価物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子には、S.アベルミティリスの他の菌株に存在する天然のaveC遺伝子、ストレプトミセス属の他の種に存在するaveC相同体遺伝子、および天然でも操作されていてもよい変異型aveC対立遺伝子が含まれる。
【0039】
本発明はさらに、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列、または図1のアミノ酸配列(配列番号:2)もしくはその実質的な部分と相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。本明細書で用いる、図1のアミノ酸配列(配列番号:2)の「実質的な部分」とは、図1に示されたアミノ酸配列(配列番号:2)の少なくとも約70%を含み、上記で定義された機能的に等価なAveC遺伝子産物であるポリペプチドを意味する。
【0040】
S.アベルミティリス由来のAveC遺伝子産物のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列に言及するために本明細書で用いる「相同な」という用語は、BLASTPアルゴリズム(GENBANK、NCBI)などの任意の標準的なアミノ酸配列同一性アルゴリズムにより決定された、前記アミノ酸配列のプラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるポリペプチドまたは図1のアミノ酸配列(配列番号:2)とのアミノ酸配列の同一性が少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%であり、このような保存的置換によって上記で定義された機能的に等価な遺伝子産物が生じるような、1つまたは複数のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基によって保存的に置換されている点を除いて図1のアミノ酸配列(配列番号:2)を有するポリペプチドを指す。保存的アミノ酸置換は当技術分野で周知である。このような置換を作製するための規則には、例えばデイホフ(Dayhof, M.D.)、1978、Nat. Biomed. Res. Found.、Washington、D.C.、Vol. 5、Sup. 3によって記載されたものが含まれる。より詳細には、保存的アミノ酸置換は、酸性度または極性について関連するアミノ酸のファミリー内部で一般に起こるものである。遺伝子にコードされたアミノ酸は一般に以下の4つの群に分けられる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンはまとめて芳香族アミノ酸としても分類される。任意の特定の群の内部での1つまたは複数の置換、例えばイソロイシンもしくはバリンによるロイシンの置換、またはグルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、またはセリンによるトレオニンの置換、または構造的に関連したアミノ酸残基、例えば酸性度もしくは極性が類似したもしくはそれらの何らかの組み合わせに類似性のあるアミノ酸残基による任意の他のアミノ酸残基の置換は、一般に、ポリペプチドの機能に有意な影響を及ぼさないと考えられる。
【0041】
本発明はさらに、AveC相同体遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。本明細書で用いる「AveC相同体遺伝子産物」は、BLASTPアルゴリズム(GENBANK、NCBI)などの任意の標準的なアミノ酸配列同一性アルゴリズムにより決定された、プラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列または図1に示されたアミノ酸配列(配列番号:2)を含むS.アベルミティリスのAveC遺伝子産物とのアミノ酸配列の同一性が少なくとも約50%である遺伝子産物として定義される。1つの非制限的な態様において、AveC相同体遺伝子産物はS.ハイグロスコピカス(欧州特許出願第0298423号に記載;寄託番号FERM BP-1901)由来であり、配列番号:4のアミノ酸配列またはその実質的な部分を含む。配列番号:4のアミノ酸配列の「実質的な部分」とは、配列番号:4のアミノ酸配列の少なくとも約70%を含み、機能的に等価なAveC相同体遺伝子産物であるポリペプチドを意味する。「機能的に等価な」AveC相同体遺伝子産物とは、本来のaveC相同体対立遺伝子が不活性化されたS.ハイグロスコピカスFERM BP-1901株で発現された場合に、S.ハイグロスコピカスFERM BP-1901株にとって本来の野生型の機能的なaveC相同体対立遺伝子のみを発現するS.ハイグロスコピカスFERM BP-1901株によって産生されるものと実質的に同じ比および量のミルベマイシンの産生をもたらす遺伝子産物と定義される。1つの非制限的な態様において、S.ハイグロスコピカスAveC相同体遺伝子産物をコードする本発明の単離されたポリヌクレオチド分子は、配列番号:3のヌクレオチド配列またはその実質的な部分を含む。この点に関して、配列番号:3のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子の「実質的な部分」とは、配列番号:3のヌクレオチド配列の少なくとも約70%を含み、すぐ前に定義した機能的に等価なAveC相同体遺伝子産物をコードする、単離されたポリヌクレオチド分子を意味する。
【0042】
本発明はさらに、配列番号:3のS.ハイグロスコピカスヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。配列番号:3のS.ハイグロスコピカスAveC相同体遺伝子産物をコードする配列と相同なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子に言及するために用いる場合、「相同な」という用語は、以下のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を意味する:(a)遺伝暗号の縮重性に従ってヌクレオチド配列に1つまたは複数のサイレントな変化を含む点を除き、配列番号:3のヌクレオチド配列と同じ遺伝子産物をコードする(すなわち縮重変異体);または(b)中程度のストリンジェントな条件下、すなわちフィルターに結合したDNAとの0.5M NaHPO4、7%SDS、1mM EDTA中、65℃でのハイブリダイゼーション、および0.2×SSC/0.1%SDS中、42℃での洗浄により(Ausubelら、上記を参照されたい)、配列番号:4のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の相補物とハイブリダイズし、さらに上記で定義された機能的に等価なAveC相同体遺伝子産物をコードする。1つの好ましい態様において、相同なポリヌクレオチド分子は、高度にストリンジェントな条件下、すなわちフィルターに結合したDNAとの0.5M NaHPO4、7%SDS、1mM EDTA中、65℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC/0.1%SDS中、68℃での洗浄(Ausubelら、1989、上記)により、配列番号:3のAveC相同体遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列の相補物とハイブリダイズし、さらに上記で定義された機能的に等価なAveC相同体遺伝子産物をコードする。
【0043】
本発明はさらに、S.ハイグロスコピカスAveC相同体遺伝子産物と相同なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。S.ハイグロスコピカス由来の配列番号:4のAveC相同体遺伝子産物と相同なポリペプチドに言及するために本明細書で用いる「相同な」という用語は、BLASTPアルゴリズム(GENBANK、NCBI)などの任意の標準的なアミノ酸配列同一性アルゴリズムにより決定された、前記アミノ酸配列の配列番号:4のポリペプチドとのアミノ酸配列の同一性が少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%であり、このような保存的置換によって上記で定義された機能的に等価なAveC相同体遺伝子産物が生じるような、1つまたは複数のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基によって保存的に置換されている点を除いて配列番号:4のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。
【0044】
本発明はさらに、図1(配列番号:1)もしくは配列番号:3のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子、または図1(配列番号:1)もしくは配列番号:3ののヌクレオチド配列の相補物であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを提供する。このようなオリゴヌクレオチドは、少なくとも約10ヌクレオチド長、好ましくは約15ヌクレオチド長〜約30ヌクレオチド長であり、高度にストリンジェントな条件下、すなわち6×SSC/0.5%ピロリン酸ナトリウム中で、14塩基以下のオリゴに関しては37℃前後、17塩基以下のオリゴに関しては48℃前後、20塩基以下のオリゴに関しては55℃前後、及び23塩基以下のオリゴに関しては60℃前後での洗浄により、前記のポリヌクレオチド分子の1つとハイブリダイズする。1つの好ましい態様において、本オリゴヌクレオチドは、前記のポリヌクレオチド分子の1つの一部に対して相補的である。これらのオリゴヌクレオチドは、遺伝子調節において有用なアンチセンス分子、またはaveCもしくはaveC相同体をコードするポリヌクレオチド分子の増幅におけるプライマーをコードする目的、またはそれらとして作用する目的を含む、さまざまな目的に有用である。
【0045】
本明細書に開示されたポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチドを既知の技法とともに用いて、さらにほかのaveC相同体遺伝子を、ストレプトミセス属の他の種または菌株において同定することができる。例えば、図1のS.アベルミティリスのヌクレオチド配列(配列番号:1)の一部、または配列番号:3のS.ハイグロスコピカスのヌクレオチド配列の一部を含むオリゴヌクレオチド分子に検出可能な標識を施して、関心対象の生物体に由来するDNAから作製したゲノムライブラリーのスクリーニングに用いることができる。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは、基準生物(この例ではS.アベルミティリスまたはS.ハイグロスコピカス)と関心対象の生物体との関係に基づいて選択される。さまざまなストリンジェンシー条件に関する必要条件は当業者に周知であり、このような条件はライブラリーおよび標識配列の由来である特定の生物体に応じて予測可能な形で変化すると考えられる。このようなオリゴヌクレオチドは好ましくは少なくとも約15ヌクレオチド長であり、例えば、以下の実施例で述べるものが含まれる。相同体遺伝子の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの標準的な技法を適用することにより、上記およびその他のオリゴヌクレオチドを用いて行うことができるが、リガーゼ連鎖反応などの当技術分野で知られたその他の増幅法を用いることもできる。
【0046】
aveC相同体ヌクレオチド配列を含むものとして同定されたクローンは、機能的なAveC相同体遺伝子産物をコードする能力に関して検査することができる。この目的のためには、クローンを適切なリーディングフレームならびに開始および終結シグナルを同定するための配列解析にかける。代替的または追加的に、クローニングしたDNA配列を適切な発現ベクター、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳のために必要な要素を含むベクターに挿入することができる。以下に述べる通り、プラスミド発現ベクター、バクテリオファージ発現ベクターまたはコスミド発現ベクターなどの細菌系を非制限的に含む種々の宿主/ベクター系のうち任意のものを用いうる。潜在的なaveC相同体コード配列を含むこのようなベクターによって形質転換がなされた適切な宿主細胞を、例えば以下の第7項に述べる通り、続いて発酵産物のHPLC分析などの方法を用いてAveC型活性に関して分析することができる。
【0047】
本明細書に開示するポリヌクレオチド分子の作製および操作は当技術分野の範囲に含まれ、例えば、マニアティス(Maniatis)ら、1989、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning、Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;アウスユーベル(Ausubel)ら、1989、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols In Molecular Biology)」、Greene Publishing Associates & Wiley lnterscience、NY;サムブルック(Sambrook)ら、1989、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;イニス(Innis)ら(編)、1995、「PCRの戦略(PCR Strategies)」、Academic Press, Inc.、San Diego;およびエルリッヒ(Erlich)(編)、1992、「PCR技術(PCR Technology)」、Oxford University Press、New Yorkに記載された組換え法に従って行うことができ、これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる。AveC遺伝子産物またはAveC相同体遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドクローンは、以下の第7項で述べる方法を非制限的に含む、当技術分野で知られた任意の方法を用いて同定されうる。aveCおよびaveC相同体コード配列に関するゲノムDNAライブラリーのスクリーニングは、バクテリオファージライブラリーに関してはベントン(Benton)およびデービス(Davis)、1977、Science 196:180に、プラスミドライブラリーに関してはグルンスタイン(Grunstein)およびホグネス(Hogness)、1975、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、72:3961〜3965に記載された方法などの技法を用いて行うことができる。aveC ORFを含むことが現時点で知られているヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子、例えば、プラスミドpSE186(ATCC 209604)またはプラスミドpSE119(以下の第7項に記載)中のものを、これらのスクリーニング実験におけるプローブとして用いることができる。または、精製されたAveC相同体遺伝子産物の部分的または完全なアミノ酸配列から推定されるヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドプローブを合成することもできる。
【0048】
5.2. 組換え系
5.2.1. クローニングベクターおよび発現ベクター
本発明はさらに、例えばS.アベルミティリスaveC ORFまたは任意のaveC相同体ORFを含む本発明のポリヌクレオチド分子のクローニングまたは発現に有用な組換えクローニングベクターおよび発現ベクターを提供する。1つの非制限的な態様において、本発明は、S.アベルミティリスのaveC遺伝子の完全なORFを含むプラスミドpSE186(ATCC 209604)を提供する。
【0049】
S.アベルミティリス由来のaveC ORF、またはS.アベルミティリス由来のaveC ORFもしくはその一部を含むポリヌクレオチド分子、またはS.アベルミティリスAveC遺伝子産物に関する以下のすべての説明は、明確にまたは文脈によって示されない限り、aveC相同体およびAveC相同体遺伝子産物に関する言及でもある。
【0050】
ストレプトミセスにおける特定的用途のために、例えばファージ、高コピー数プラスミド、低コピー数プラスミドおよび大腸菌-ストレプトミセスシャトルベクターを含む多種多様なベクターが開発されており、これらの任意のものを本発明の実践に用いることができる。薬剤耐性遺伝子もストレプトミセスから数多くクローニングされており、これらの遺伝子のいくつかは選択マーカーとしてベクターに組み込まれている。ストレプトミセスに用いるための現在のベクターの例は、例えばハッチンソン(Hutchinson)、1980、Applied Biochem. Biotech. 16:169〜190に示されている。
【0051】
本発明の組換えベクター、特に発現ベクターは、好ましくは、ポリペプチドの産生のため、本発明のポリヌクレオチド分子に関するコード配列が、コード配列の転写および翻訳のために必要な1つまたは複数の調節因子と機能的に関連しているように構築される。本明細書で用いる「調節因子」という用語には、誘導性および非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、ならびにポリヌクレオチドコード配列の発現の発動または調節に役立つ当技術分野で知られた他の要素をコードするヌクレオチド配列が非制限的に含まれる。また、本明細書で用いられるように、調節因子がコード配列の転写もしくはそのmRNAの翻訳またはその両方を効果的に調節する、または可能にする場合、コード配列は、1つまたは複数の調節因子と「機能的に関連している」。
【0052】
本発明のポリヌクレオチド分子を含むように操作しうる典型的なプラスミドベクターには、例えば、pCR-Blunt、pCR2.1(Invitrogen)、pGEM3Zf(Promega)およびシャトルベクターpWHM3(Varaら、1989、J. Bact. 171:5872〜5881)が含まれる。
【0053】
適切な調節因子と機能的に関連した特定のコード配列を含む組換えベクターを構築するための方法は当技術分野で周知であり、これらは本発明を実践するため用いられうる。これらの方法には、インビトロ組換え法、合成法およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。例えば、マニアティス(Maniatis)ら、1989、上記;アウスユーベル(Ausubel)ら、1989、上記;サムブルック(Sambrook)ら、1989、上記;イニス(Innis)ら、1995、上記;およびエルリッヒ(Erlich)、1992、上記を参照されたい。
【0054】
これらのベクターの調節因子の強度および特異性はさまざまである。用いる宿主/ベクター系に応じて、任意の数多くの適切な転写および翻訳要素を用いることができる。細菌用の転写調節領域またはプロモーターの非制限的な例には、β-galプロモーター、T7プロモーター、TACプロモーター、λ左方向プロモーターおよび右方向プロモーター、trpプロモーターおよびlacプロモーター、trp-lac融合プロモーターが含まれ、特にストレプトミセス用としてはプロモーターermE、melCおよびtipAなどが含まれる。以下の第11項で述べる1つの特定の態様では、サッカロポリスポラ・エリスリア(Saccharopolyspora erythraea)由来の強力な構成性ermEプロモーターに隣接してクローニングされたaveC ORFを含む発現ベクターを作製した。このベクターをS.アベルミティリスの形質転換に用いたところ、その後の発酵産物のHPLC分析により、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株による産生と比べて、産生されるアベルメクチンの力価が上昇していることが示された。
【0055】
融合タンパク質発現ベクターを、AveC遺伝子産物-融合タンパク質を発現させるために用いることができる。精製された融合タンパク質は、AveC遺伝子産物に対する抗血清を産生させるため、AveC遺伝子産物の生化学的特性を試験するため、異なる生化学活性を有するAveC融合タンパク質を組換え作製するため、または発現されたAveC遺伝子産物の同定もしくは精製に役立てるために用いられうる。考えられる融合タンパク質発現ベクターには、β-ガラクトシダーゼおよびtrpE融合物、マルトース結合タンパク質融合物、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合物およびポリヒスチジン融合物(担体領域)をコードする配列が組み入れられたベクターが非制限的に含まれる。1つの代替的な態様では、AveC遺伝子産物またはその一部を、ストレプトミセス属の別の種または菌株、例えばS.ハイグロスコピカスまたはS.グリセオクロモゲネスに由来するAveC相同体遺伝子産物またはその一部と融合させることができる。以下の第12項で述べ、図7に示した1つの特定の態様では、S.アベルミティリスaveC ORFの相同な564bp領域がS.ハイグロスコピカスaveC相同体ORFの564bp領域によって置換されたものを含むキメラ型プラスミドを構築した。このようなハイブリッドベクターをS.アベルミティリス細胞の形質転換に用い、例えば、産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比に対するその影響を評価するために用いることができる。
【0056】
精製のために有用な領域を含むようにAveC融合タンパク質を操作することができる。例えば、AveC-マルトース結合タンパク質融合物はアミロース樹脂を用いて精製されうり、AveC-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質はグルタチオン-アガロースビーズを用いて精製されうり、AveC-ポリヒスチジン融合物は二価ニッケル樹脂を用いて精製されうる。または、担体タンパク質またはペプチドに対する抗体を融合タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー精製のために用いることもできる。例えば、モノクローナル抗体の標的エピトープをコードするヌクレオチド配列を調節因子と機能的に関連するように発現ベクター中に導入し、発現されるエピトープがAveCポリペプチドと融合するように配置することができる。例えば、親水性マーカーペプチドであるFLAG(登録商標)エピトープタグ(International Biotechnologies Inc.)をコードするヌクレオチド配列を、標準的な技法により、例えばAveCポリペプチドのカルボキシ末端に対応する発現ベクター中の箇所に挿入しうる。続いて、市販の抗FLAG(登録商標)抗体を用いて、発現されるAveCポリペプチド-FLAG(登録商標)エピトープ融合産物の検出およびアフィニティー精製を行うことができる。
【0057】
AveC融合タンパク質をコードする発現ベクターを、発現されたAveCポリペプチドが特異的プロテアーゼを用いた処理によって担体領域または融合パートナーから放出されるように、特異的なプロテアーゼ切断部位をコードするポリリンカー配列を含むように操作することも可能である。例えば、融合タンパク質ベクターに、トロンビンまたは第Xa因子切断部位などをコードするDNA配列を含めることができる。
【0058】
発現された遺伝子産物の輸送および分泌を促すために、既知の方法により、発現ベクター中のaveC ORFの上流かつリーディングフレームの内部にシグナル配列を導入することもできる。シグナル配列の非制限的な例には、例えばα因子、免疫グロブリン、外膜タンパク質、ペニシリナーゼ、およびT細胞受容体などが含まれる。
【0059】
本発明のクローニングベクターまたは発現ベクターによる形質転換またはトランスフェクションがなされた宿主細胞の選択に役立つように、レポーター遺伝子産物または他の選択マーカーに関するコード配列をさらに含むようにベクターを操作することもできる。このようなコード配列は、上記の調節因子コード配列と機能的に関連していることが好ましい。本発明において有用なレポーター遺伝子は当技術分野で周知であり、これには例えば、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、xylEおよびチロシナーゼをコードするものなどが含まれる。選択マーカーをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で周知であり、これには抗生物質もしくは代謝拮抗物質に対する耐性を付与する遺伝子産物をコードするもの、または栄養要求性をもたらすものが含まれる。このような配列の例には、例えば、エリスロマイシン、チオストレプトンまたはカナマイシンに対する耐性をコードするものなどが含まれる。
【0060】
5.2.2. 宿主細胞の形質転換
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチド分子または組換えベクターを含む形質転換宿主細胞、およびそれに由来する新規株または細胞系を提供する。本発明の実践において有用な宿主細胞は、好ましくはストレプトミセス細胞であるが、他の原核細胞または真核細胞を用いることもできる。このような形質転換宿主細胞には一般に、例えば、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNAベクターにより形質転換された細菌、または組換えベクターにより形質転換された酵母などの微生物が非制限的に含まれる。
【0061】
本発明のポリヌクレオチド分子はストレプトミセス細胞で機能することを意図しているが、例えば、クローニングまたは発現の目的のために、他の細菌細胞または真核細胞の形質転換に用いることもできる。典型的には、例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)、Rockville、MD、USA(アクセッション番号31343)および販売元(Stratagene)から入手しうるDH5α株などの大腸菌の菌株を用いることができる。好ましい真核生物宿主細胞には酵母細胞が含まれるが、哺乳動物細胞または昆虫細胞も有効に用いうる。
【0062】
本発明の組換え発現ベクターは、好ましくは、実質的に均一な細胞培養物である1つまたは複数の宿主細胞への形質転換またはトランスフェクションに用いられる。発現ベクターは一般に、プロトプラスト形質転換、リン酸カルシウム沈降法、塩化カルシウム処理、微量注入法、電気穿孔法、組換えウイルスとの接触によるトランスフェクション、リポソームを介したトランスフェクション、DEAE-デキストラントランスフェクション、形質導入、接合または微粒子銃法などの既知の技法に従って宿主細胞に導入される。形質転換体の選択は、上記の通り、組換えベクターに付随する抗生物質耐性などの選択マーカーを発現する細胞を選択することなどによる、標準的な手順によって行うことができる。
【0063】
ひとたび発現ベクターが宿主細胞に導入されれば、宿主細胞の染色体またはエピソームにおけるaveCコード配列の組み込みまたは維持を、例えばサザンハイブリダイゼーション分析、制限酵素分析、逆転写酵素PCR(rt-PCR)を含むPCR分析によって、または発現された遺伝子産物を検出するための免疫学的アッセイによって確認することができる。組換えaveCコード配列を含有および/または発現する宿主細胞は、当技術分野で周知の以下の少なくとも4種類の一般的アプローチのいずれかによって同定可能である:(i)DNA-DNA、DNA-RNAまたはRNA-アンチセンスRNAハイブリダイゼーション;(ii)「マーカー」遺伝子機能の存在の検出;(iii)宿主細胞におけるaveC特異的mRNA転写物の発現によって計測される転写レベルの評価;および(iv)例えばイムノアッセイまたはAveC生物活性(例えば、S.アベルミティリス宿主細胞などにおけるAveC活性の指標となる特定の比および量のアベルメクチンの産生)の存在によって計測される、成熟ポリペプチド産物の存在の検出。
【0064】
5.2.3. 組換え AveC 遺伝子産物の発現および特徴決定
ひとたびaveCコード配列が適切な宿主細胞に安定的に導入されれば、形質転換宿主細胞をクローン増殖させ、その結果得られた細胞をAveC遺伝子産物の最大の産生が誘導される条件下で増殖させることができる。このような条件には一般に、細胞を高密度で増殖させることが含まれる。発現ベクターが誘導性プロモーターを含む場合には、例えば、温度変化、栄養分の除去、無償性誘導物質(例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)などの炭水化物類似体)の添加、余剰代謝副産物の蓄積などの適切な誘導条件を、発現を誘導するために必要に応じて用いる。
【0065】
発現されたAveC遺伝子産物が宿主細胞内に保持される場合には、細胞の回収および溶解を行い、例えば4℃などのタンパク質分解が最小化される当技術分野で知られた抽出条件下もしくはプロテアーゼ阻害剤の存在下またはその両方の下で、溶解液由来の産物の単離および精製を行う。発現されたAveC遺伝子産物が宿主細胞から分泌される場合には、栄養分が消費された培養液を単に回収し、それから産物を単離することができる。
【0066】
発現されたAveC遺伝子産物は、以下の方法を非制限的に含む標準的な方法を適宜用いて、細胞溶解液または培地から単離または実質的に精製することができる:硫酸アンモニウム沈殿法、サイズ分画、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、密度勾配遠心およびアフィニティークロマトグラフィー。発現されたAveC遺伝子産物が生物活性を示す場合には、適切なアッセイを用いることにより、精製手順の各段階で調製物の純度の上昇をモニターすることができる。発現されたAveC遺伝子産物が生物活性を示すか否かにかかわらず、サイズ、またはAveCに対して特異的な抗体との反応性、または融合タグの存在に基づいてそれを検出することができる。本明細書で用いる場合、AveC遺伝子産物が「実質的に精製された」とは、産物が特定の調製物におけるタンパク質の約20wt%を上回る割合を占めることをいう。また、本明細書で用いる場合、AveC遺伝子産物が「単離された」とは、産物が特定の調製物におけるタンパク質の少なくとも約80wt%を占めることをいう。
【0067】
したがって、本発明は、プラスミドpSE186(ATCC 209604)AveC遺伝子産物をコードする配列によってコードされるアミノ酸配列、または図1のアミノ酸配列(配列番号:2)もしくはその実質的な部分およびそれらの相同体を含む、組換え発現されて単離または実質的に精製されたS.アベルミティリスAveC遺伝子産物を提供する。
【0068】
本発明はさらに、配列番号:4のアミノ酸配列またはその実質的な部分およびそれらの相同体を含む、組換え発現されて単離または実質的に精製されたS.ハイグロスコピカスAveC相同体遺伝子産物を提供する。
【0069】
本発明はさらに、AveC遺伝子産物を産生するための方法であって、ベクターがAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を含み、そのポリヌクレオチド分子が宿主細胞におけるポリヌクレオチド分子の発現を制御する1つまたは複数の調節因子と機能的に関連している、前記組換え発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を、組換えAveC遺伝子産物の産生が誘導される条件下で培養すること、および細胞培養物からAveC遺伝子産物を回収することを含む方法を提供する。
【0070】
組換え発現されたS.アベルミティリスAveC遺伝子産物は、AveC遺伝子産物の機能を変化させ、それによってアベルメクチン生合成を調節する化合物をスクリーニングする目的、およびAveC遺伝子産物に対する抗体を作製する目的を含む、さまざまな目的に有用である。
【0071】
ひとたび十分な純度のAveC遺伝子産物が得られれば、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー、アミノ酸配列分析、アベルメクチン生合成経路において適切な産物を産生する生物活性を含む標準的な方法によってその特徴を決定することができる。例えば、AveC遺伝子産物のアミノ酸配列は、標準的なペプチド配列決定法を用いて決定しうる。AveC遺伝子産物の疎水性および親水性領域を同定するために、親水性分析(例えば、HoppおよびWoods、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:3824を参照されたい)または類似のソフトウエアアルゴリズムを用いてAveC遺伝子産物の特徴決定をさらに行うことができる。特定の二次構造が推定されるAveC遺伝子産物の領域を同定するために構造分析を行うこともできる。AveC遺伝子産物とその基質との間の相互作用部位のマッピングおよび試験のためには、X線結晶学(Engstrom、1974、Biochem. Exp. Biol. 11:7〜13)、コンピュータモデル化(FletterickおよびZoller(編)、1986、分子生物学における最近の情報交流(Current Communications in Molecular Biology)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)および核磁気共鳴(NMR)などの生物物理学的方法を用いることができる。これらの試験によって得られた情報は、より望ましいアベルメクチン産生特性を有するS.アベルミティリスの新規株を開発する一助として、aveC ORFにおける変異に関して新たな部位を選択するために用いることができる。
【0072】
5.3. AveC 変異株の作製および使用
本発明は、野生型aveC対立遺伝子が不活性化されておりかつ変異型ヌクレオチド配列またはその縮重変異体を含むポリヌクレオチド分子を発現するS.アベルミティリスATCC 53692株の細胞が、野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスATCC 53692株の細胞によって産生されるものとは異なる比または量のアベルメクチンを産生するような、1つまたは複数の変異をさらに含む点を除き、S.アベルミティリスAveC対立遺伝子もしくはその縮重変異体、またはプラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列もしくはその縮重変異体、または図1に示されたS.アベルミティリスのaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその縮重変異体と同じであるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を提供する。
【0073】
本発明によれば、このようなポリヌクレオチド分子を用いて、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株と比べてアベルメクチン産生において検出可能な変化を呈するS.アベルミティリスの新規株を作製することができる。1つの好ましい態様において、このようなポリヌクレオチド分子は、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する菌株によるものと比べて低いクラス2:クラス1比でアベルメクチンを産生するS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用である。1つのさらに好ましい態様において、このようなポリヌクレオチド分子は、単一の野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株と比べてアベルメクチンの産生レベルが高いS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用である。1つのさらに好ましい態様において、このようなポリヌクレオチド分子は、aveC遺伝子が不活性化されたS.アベルミティリスの新規株を作製するために有用である。
【0074】
aveC対立遺伝子またはコード配列に対する変異には、AveC遺伝子産物に1つもしくは複数のアミノ酸欠失、付加もしくは置換を導入する、またはAveC遺伝子産物の切断を引き起こす、またはそれらの任意の組み合わせ、および望ましい結果を生じる、任意の変異が含まれる。このような変異型aveC対立遺伝子配列には、その任意の縮重変異体も含まれるものとする。例えば、本発明は、AveC遺伝子産物における選択された位置で1つのアミノ酸残基が1つの異なるアミノ酸残基によって置換されたものをコードする1つまたは複数の変異をさらに含む、aveC対立遺伝子のヌクレオチド配列もしくはその縮重変異体、またはプラスミドpSE186(ATCC 209604)のAveC遺伝子産物をコードする配列もしくはその縮重変異体、または図1に示されたS.アベルミティリスのヌクレオチド配列(配列番号:1)もしくはその縮重変異体を含むポリヌクレオチド分子を提供する。いくつかの非制限的な態様において(そのいくつかを以下に例示する)、このような置換は、配列番号:2のアミノ酸部位38、48、55、89、99、111、136、138、139、154、179、228、230、238、266、275、289もしくは298またはそれらのいくつかの組み合わせに対応するAveC遺伝子産物の任意のアミノ酸部位で行うことができる。
【0075】
aveCコード配列に対する変異は、誤りの多い(error-prone)PCRの使用、カセット式変異誘発を含む、さまざまな既知の方法のうち任意のものによって加えることができる。例えば、1つまたは複数の制限部位または終止コドンがaveC対立遺伝子またはORFの内部の特定の領域に導入されるような規定された形でaveC対立遺伝子またはORFを改変するために、オリゴヌクレオチド定方向変異誘発を用いることができる。aveC変異をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの大規模ライブラリーを作製するために、ランダム断片化、反復的な変異誘発サイクルおよびヌクレオチドシャフリングを用いる、米国特許第5,605,793号、米国特許第5,830,721号および米国特許第5,837,458号に記載されたものなどの方法を用いることもできる。
【0076】
標的変異(targeted mutation)は、特にAveC遺伝子産物における1つまたは複数の保存アミノ酸残基を改変するために役立てる場合には有用なことがある。例えば、図6に示したS.アベルミティリス(配列番号:2)、S.グリセオクロモゲネス(配列番号:5)およびS.ハイグロスコピカス(配列番号:4)由来のAveC遺伝子産物およびAveC相同体遺伝子産物の推定アミノ酸配列の比較により、これらの種の間でアミノ酸残基が著しく保存されている部位が示される。これらの保存アミノ酸残基の1つまたは複数に変化を引き起こす標的変異誘発は、アベルメクチン産生に関して望ましい変化を示す新規変異株を作製する上で特に有効である。
【0077】
ランダム変異誘発も有用なことがあり、これはS.アベルミティリスの細胞に紫外線もしくはX線を照射すること、またはN-メチル-N'-ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホネート、亜硝酸もしくはナイトロジェンマスタードなどの化学的変異原に曝露させることによって行うことができる。変異誘発法の概説については、例えば、アウスユーベル(Ausubel)、1989、上記を参照されたい。
【0078】
ひとたび変異型ポリヌクレオチド分子が作製されれば、それらがS.アベルミティリスにおけるアベルメクチン生合成を調節しうるか否かを明らかにするためにそのスクリーニングを行う。1つの好ましい態様では、変異型ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子の検査を、aveC遺伝子が不活性化されてaveC陰性(aveC)バックグラウンドを獲得したS.アベルミティリスの菌株を補完させることによって行う。1つの非制限的な方法では、変異型ポリヌクレオチド分子を、形質転換細胞の選択を可能とする1つまたは複数の薬剤耐性遺伝子を好ましくはさらに含むプラスミドである発現プラスミド中に、 1つまたは複数の調節因子と機能的に関連するようにスプライス導入する。続いて、既知の方法を用いてこのベクターをaveC-宿主細胞に形質転換し、形質転換細胞を選択して、アベルメクチン産生が可能となるまたは誘導される条件下で適切な発酵培地中で培養する。続いて、変異型ポリヌクレオチド分子が宿主細胞を補完する能力を明らかにするために、発酵産物をHPLCによって分析する。pSE188、pSE199、pSE231、pSE239およびpSE290〜pSE297を含む、アベルメクチンのB2:B1比を低下させうる変異型ポリヌクレオチド分子を有するいくつかのベクターの例を、以下の第8.3項に示している。
【0079】
本発明は、産生されるアベルメクチンの比および/または量を変化させうるS.アベルミティリスaveC ORFの変異を同定するための方法を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させうるaveC ORFの変異を同定するための方法であって、(a)本来のaveC対立遺伝子が不活性化され、変異型aveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子が導入され発現されているS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を決定すること、(b)野生型aveC対立遺伝子もしくは図1のORF(配列番号:1)またはそれらと相同なヌクレオチド配列のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンクラス2:クラス1比を段階(a)と同じように決定すること、および(c)段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と比較することであって、段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と異なる場合にアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させうるaveC ORFの変異が同定されたことになるような比較、を含む方法を提供する。1つの好ましい態様において、アベルメクチンのクラス2:クラス1比は変異によって減少する。
【0080】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、産生されるアベルメクチンの量を変化させうるaveC ORFの変異またはaveC ORFを含む遺伝子構築物を同定するための方法であって、(a)本来のaveC対立遺伝子が不活性化され、変異型aveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子、またはAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を含むポリヌクレオチド分子が導入され発現されているS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量を決定すること、(b)野生型aveC対立遺伝子またはそれと相同なヌクレオチド配列のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量を段階(a)と同じように決定すること、および(c)段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量を段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量を比較することであって、段階(a)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量が段階(b)のS.アベルミティリス細胞によって産生されるアベルメクチンの量とは異なる場合にアベルメクチンの量を変化させうるaveC ORFの変異または遺伝子構築物が同定されたことになるような比較、を含む方法を提供する。1つの好ましい態様において、産生されるアベルメクチンの量は変異によって増加する。
【0081】
変異を同定するための前記の方法はいずれも、好ましくはシクロヘキサンカルボン酸を補充した発酵培地を用いて行われるが、表1に挙げた脂肪酸前駆体のいずれか1つなどの、他の適切な脂肪酸前駆体を用いることもできる。
【0082】
アベルメクチン産生を望ましい方向に調節する変異型ポリヌクレオチド分子がひとたび同定されれば、ヌクレオチド配列における変異の位置を決定することができる。例えば、変異型aveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子をPCRによって単離し、既知の方法を用いてDNA配列解析にかけることができる。変異型aveC対立遺伝子のDNA配列を野生型aveC対立遺伝子のものと比較することにより、アベルメクチン産生の変化の原因となる変異を決定しうる。本発明の特定的であるが非制限的な態様において、残基55(S55F)、138(S138T)、139(A139T)もしくは230(G230D)のいずれかに単一のアミノ酸置換を含む、または138位(S138T)および139位(A139TまたはA139F)に二重置換を含むS.アベルミティリスAveC遺伝子産物により、産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が変化するようにAveC遺伝子産物の機能に変化が生じており(以下の第8項を参照されたい)、なお、ここに列挙したアミノ酸部位は図1に示されたもの(配列番号:2)に対応している。さらに、以下の7通りの変異の組み合わせはそれぞれアベルメクチンのクラス2:クラス1比を効果的に低下させることが示されている:(1)D48E/A89T;(2)S138T/A139T/G179S;(3)Q38P/L136P/E238D;(4)F99S/S138T/A139T/G179S;(5)A139T/M228T;(6)G111V/P289L;(7)A139T/K154E/Q298H。本明細書で用いる場合、A139Tなどの前記の表記は、一文字表記による本来のアミノ酸残基(この例ではアラニン(A))、ポリペプチドにおける位置(この例では139位(配列番号:2参照されたい))、その後に本来のアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基(この例ではトレオニン(T))を示している。したがって、アミノ酸部位38、48、55、89、99、111、136、138、139、154、179、228、230、238、266、275、289もしくは298(図1参照されたい)またはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数の箇所にアミノ酸置換または欠失を含む変異型S.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子は、本発明に含まれる。
【0083】
1つの好ましい態様において、このような変異は、以下からなる群の1つまたは複数から選択されるアミノ酸置換をコードする:
(a)PまたはPの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された38位のアミノ酸残基Q;
(b)EまたはEの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された48位のアミノ酸残基D;
(c)TまたはTの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された89位のアミノ酸残基A;
(d)SまたはSの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された99位のアミノ酸残基F;
(e)VまたはVの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された111位のアミノ酸残基G;
(f)PまたはPの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された136位のアミノ酸残基L;
(g)TまたはTの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された138位のアミノ酸残基S;
(h)TもしくはFまたはTもしくはFの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された139位のアミノ酸残基A;
(i)EまたはEの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された154位のアミノ酸残基K;
(j)SまたはSの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された179位のアミノ酸残基G;
(k)TまたはTの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された228位のアミノ酸残基M;
(l)DまたはDの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された238位のアミノ酸残基E;
(m)LまたはLの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された289位のアミノ酸残基P;
(n)HまたはHの保存的置換物であるアミノ酸によって置換された298位のアミノ酸残基Q。なお、保存的アミノ酸置換物は上記の第5.1項で定義した通りである。
【0084】
1つのさらに好ましい態様において、このような変異は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基置換の組み合わせである、アミノ酸置換の組み合わせを含む:
(a)アミノ酸残基S138およびA139;
(b)アミノ酸残基D48およびA89;
(c)アミノ酸残基S138、A139およびG179;
(d)アミノ酸残基Q38、L136およびE238;
(e)アミノ酸残基F99、S138、A139およびG179;
(f)アミノ酸残基A139およびM228;
(g)アミノ酸残基G111およびP289;ならびに
(h)アミノ酸残基A139、K154およびQ298。
【0085】
1つのさらに好ましい態様において、本発明に従ってアベルメクチンのクラス2:クラス1比を効果的に低下させるのに有効な、aveC対立遺伝子における変異の具体的な組み合わせは、以下からなる群の1つまたは複数から選択される:
(a)S138T/A139T;
(b)S138T/A139F;
(c)D48E/A89T;
(d)S138T/A139T/G179S;
(e)Q38P/L136P/E238D;
(f)F99S/S138T/A139T/G179S;
(g)A139T/M228T;
(h)G111V/P289L;及び
(i)A139T/K154E/Q298H。
【0086】
本発明はさらに、アベルメクチン産生の変化を引き起こす変異型aveC対立遺伝子を細胞が含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための組成物を提供する。例えば本発明は、本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子のいずれかをS.アベルミティリス染色体のaveC遺伝子部位にターゲティングさせ、相同組換えによりaveC ORFもしくはその一部へ挿入または置換するために用いることができる組換えベクターを提供する。しかし、本発明によると、本明細書で提供する本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子は、S.アベルミティリス染色体のaveC遺伝子以外の部位に挿入された場合、またはS.アベルミティリス細胞にエピソームとして維持された場合にもアベルメクチン生合成を調節する機能を果たす。したがって、本発明は、ポリヌクレオチド分子をS.アベルミティリス染色体のaveC遺伝子以外の部位に挿入するため、またはエピソームとして維持させるために用いうるベクターである、本発明の変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を含むベクターも提供する。
【0087】
1つの好ましい態様において、本発明は、変異型aveC対立遺伝子またはその縮重変異体をS.アベルミティリスの菌株の細胞に導入し、それによってその細胞が野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて低いクラス2:クラス1比でアベルメクチンを産生するS.アベルミティリスの新規株を作製するために用いることができる、遺伝子置換ベクターを提供する。1つの好ましい態様において、その細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比は低くなる。このような遺伝子置換ベクターは、例えばpSE188、pSE199およびpSE231などの、本明細書で提供する発現ベクター中に存在する変異型ポリヌクレオチド分子を用いて構築することができ、これらの発現ベクターの例を以下の第8項に示している。
【0088】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、変異型aveC対立遺伝子またはその縮重変異体をS.アベルミティリスの菌株の細胞に挿入し、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べてアベルメクチンの産生量が変化している細胞からなる新規株を作製するために用いることができるベクターを提供する。1つの好ましい態様において、この細胞によって産生されるアベルメクチンの量は増加する。1つの特異的であるが非制限的な態様において、このようなベクターは、例えばaveC対立遺伝子の上流に位置し、それと機能的に関連しているサッカロポリスポラ・エリスリア由来の強力な構成性ermEプロモーターなどの当技術分野で知られた強力なプロモーターをさらに含む。このようなベクターは以下の実施例11に記載するプラスミドpSE189であってもよく、またはプラスミドpSE189の変異型aveC対立遺伝子を用いて構築することもできる。
【0089】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、S.アベルミティリスの野性株におけるaveC遺伝子の不活性化に有用な遺伝子置換ベクターを提供する。1つの非制限的な態様では、以下の第8.1項で例示するプラスミドpSE180(ATCC 209605)中に存在する変異型ポリヌクレオチド分子を用いて、このような遺伝子置換ベクターを構築することができる(図3)。本発明はさらに、例えば図1に示されたヌクレオチド配列(配列番号:1)に隣接するものを含む、S.アベルミティリス染色体においてインサイチューのaveC遺伝子に自然下で隣接するヌクレオチド配列からなる、またはそれを含むポリヌクレオチド分子を含む遺伝子置換ベクターを提供し、それらのベクターはS.アベルミティリスaveC ORFを欠失させるために用いられうる。
【0090】
本発明はさらに、変異型aveC対立遺伝子を発現し、野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株と比べて産生されるアベルメクチンの比および/または量が変化している細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、変異型aveC対立遺伝子を発現し、野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株の細胞と比べて産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が変化している細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための、以下の段階を含む方法を提供する:野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて変異型対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させる遺伝子産物をコードする変異型aveC対立遺伝子を有するベクターにより、S.アベルミティリスの菌株の細胞を形質転換する段階;および野生型aveC対立遺伝子のみを発現する菌株の細胞によって産生されるクラス2:クラス1比と比べて産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比が変化している形質転換細胞を選択する段階。1つのさらに好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する:aveC対立遺伝子に対する変異が、コードされるAveC遺伝子産物において配列番号:2の38位、48位、55位、89位、99位、111位、136位、138位、139位、154位、179位、228位、230位、238位、266位、275位、289位または298位のアミノ酸残基に対応する1つまたは複数のアミノ酸部位に異なるアミノ酸残基による置換を引き起こし、aveC対立遺伝子がそのように変異したS.アベルミティリス株の細胞が、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じS.アベルミティリス株の細胞によって産生される比とは異なるクラス2:クラス1比のアベルメクチンを産生するような細胞のaveC対立遺伝子に、変異を導入しうるベクターを用いてS.アベルミティリスの菌株の細胞の形質転換を行う段階。1つの好ましい態様において、アベルメクチンのクラス2:クラス1比は減少する。
【0091】
本明細書で用いる場合に、S.アベルミティリス染色体内または本発明のベクターもしくは単離されたポリヌクレオチド分子内のaveC対立遺伝子によってコードされるアミノ酸残基が配列番号:2の特定のアミノ酸残基に「対応する」と言及する場合、またはアミノ酸置換が配列番号:2のアミノ酸残基の特定の番号のものに「対応する」特定の位置で起こると言及する場合、これはAveC遺伝子産物における同じ相対的位置にあるアミノ酸残基に言及することを意図しており、当業者は本明細書の配列番号:2に示されたアミノ酸配列を参照することによってそれを直ちに決定することができる。
【0092】
本発明はさらに、特定の変異をコードするaveC対立遺伝子における特定の変異が、配列番号:1に示された特定のヌクレオチド部位に「対応する」aveC対立遺伝子における特定のヌクレオチド部位にある塩基変化として列挙される、新規株を作製するための方法を提供する。対応するアミノ酸部位に関しては上記と同様に、aveC対立遺伝子におけるヌクレオチド部位が配列番号:1における特定のヌクレオチド部位に「対応する」と言及する場合、これはAveCヌクレオチド配列における同じ相対的位置にあるヌクレオチドに言及することを意図しており、当業者は本明細書の配列番号:1に示されたヌクレオチド配列を参照することによってそれを直ちに決定することができる。
【0093】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、アベルメクチンの産生量が変化した細胞を含むS.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する:発現により、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて、変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量の変化を引き起こす変異型aveC対立遺伝子またはaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を有するベクターによって、S.アベルミティリスの菌株の細胞を形質転換する段階;および野生型aveC対立遺伝子のみを発現する菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量と比べてアベルメクチンの産生量が変化している形質転換細胞を選択する段階。1つの好ましい態様において、形質転換細胞で産生されるアベルメクチンの量は増加する。
【0094】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、以下の段階を含む、細胞が不活性化されたaveC対立遺伝子を含む、S.アベルミティリスの新規株を作製するための方法を提供する:aveC対立遺伝子を不活性化するベクターにより、任意のaveC対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞を形質転換する段階;およびaveC対立遺伝子が不活性化された形質転換細胞を選択する段階。1つの非制限的な好ましい態様では、S.アベルミティリスの菌株の細胞を、変異または異種遺伝子配列によるaveC対立遺伝子の一部の置換によって不活性化されたaveC対立遺伝子を有する遺伝子置換ベクターを用いて形質転換し、本来のaveC対立遺伝子が不活性化されたaveC対立遺伝子によって置換されている形質転換細胞を選択する。aveC対立遺伝子の不活性化は、以下に記載するように、発酵産物のHPLC分析によって決定しうる。以下の第8.1項で説明する1つの特定的ではあるが非制限的な態様において、aveC対立遺伝子は、aveC ORFへのサッカロポリスポラ・エリスリア由来のermE遺伝子の挿入によって不活性化される。
【0095】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチド分子またはベクターのいずれかによって形質転換がなされた細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を提供する。1つの好ましい態様において、本発明は、、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と比べて新規株の細胞が産生するアベルメクチンのクラス2:クラス1比が変化している、野生型aveC対立遺伝子に代わってまたは追加的に変異型aveC対立遺伝子またはその縮重変異体を発現する細胞を含むS.アベルミティリスの新規株を提供する。1つのさらに好ましい態様において、新規細胞によって産生される変化したクラス2:クラス1比は低くなる。このような新規株は、ドラメクチンなどの商業的に望ましいアベルメクチンの大規模産生に有用である。1つのさらに好ましい態様において、本発明は、aveC対立遺伝子において上記に示したものに対応するヌクレオチド部位にある、または別の形でAveC遺伝子産物において前記のアミノ酸置換のいずれかをコードする、前記の変異もしくは変異の組み合わせのいずれかを含む、S.アベルミティリスの細胞を提供する。このような変異は、このような細胞内のプラスミドなどの染色体外要素にも存在しうるが、このような変異はS.アベルミティリス染色体上に位置するaveC対立遺伝子に存在することが好ましい。1つの好ましい態様において、本発明は、菌株において野生型aveC対立遺伝子を発現する同じS.アベルミティリス株の細胞によって産生される比とは異なるクラス2:クラス1比のアベルメクチンを細胞が産生する、配列番号:2の38位、48位、55位、89位、99位、111位、136位、138位、139位、154位、179位、228位、230位、238位、266位、275位、289位または298位のアミノ酸残基に対応する1つまたは複数のアミノ酸部位に置換を有するAveC遺伝子産物をコードする、aveC対立遺伝子における変異を有する細胞を含むストレプトミセス・アベルミティリスの菌株を提供する。
【0096】
本明細書に記載のスクリーニングアッセイの1つの主要な目的は、S.アベルミティリス細胞における発現によって、産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させる、中でも特に低下させる、aveC遺伝子の変異型対立遺伝子を同定することである。1つの好ましい態様において、本発明の変異型aveC対立遺伝子またはその縮重変異体を発現する本発明の新規S.アベルミティリス株の細胞によって産生されるアベルメクチンのB2:B1比は約1.6:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約1:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約0.84:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約0.80:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約0.75:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約0.73:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約0.68:1以下である。1つのさらにより好ましい態様において、この比は約0.67:1以下である。1つのさらに好ましい態様において、この比は約0.57:1以下である。1つのさらにより好ましい態様において、この比は約0.53:1以下である。1つのさらにより好ましい態様において、この比は約0.42:1以下である。1つのさらにより好ましい態様において、この比は約0.40:1以下である。
【0097】
以下に記載する1つの特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを1.6:1未満の比で産生する。以下に記載する1つの異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.94:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらに異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.88:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらに異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.84:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.75:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.73:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.68:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.67:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.57:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.53:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.42:1の比で産生する。以下に記載する1つのさらにより異なる特定の態様において、本発明の新規細胞はシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチンを約0.40:1の比で産生する。
【0098】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は新規株の細胞が野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて変化した量のアベルメクチンを産生するような、変異型aveC対立遺伝子もしくはその縮重変異体またはaveC対立遺伝子もしくはその縮重変異体を野生型aveC対立遺伝子に代わってもしくは追加的に含む遺伝子構築物を発現する細胞を含む、S.アベルミティリスの新規株を提供する。1つの好ましい態様において、新規株が産生するアベルメクチンの量は増加する。1つの非制限的な態様において、遺伝子構築物は、aveC ORFの上流に位置し、それと機能的に関連しているサッカロポリスポラ・エリスリア由来の強力な構成性ermEプロモーターなどの強力なプロモーターをさらに含む。
【0099】
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、aveC遺伝子が不活性化された細胞を含むS.アベルミティリスの新規株を提供する。このような菌株は、野性株と比べて異なる範囲のアベルメクチンが産生されることに関しても、aveC遺伝子の標的変異誘発またはランダム変異誘発がアベルメクチン産生に影響を及ぼすか否かを判定するための相補性スクリーニングアッセイにおいても有用である。以下に記載する1つの特定の態様では、不活性化されたaveC遺伝子を含むようにS.アベルミティリス宿主細胞の遺伝子操作を行った。例えば、遺伝子置換プラスミドpSE180(ATCC 209605)(図3)を用いて以下の実施例で説明するSE180-11株を作製したが、これはaveC翻訳領域へのermE耐性遺伝子の挿入によってS.アベルミティリスaveC遺伝子を不活性化するために作製したものである。
【0100】
本発明はさらに、前記の本発明のポリヌクレオチド分子のいずれかによってコードされる組換え発現された変異型S.アベルミティリスAveC遺伝子産物、およびそれを調製するための方法を提供する。
【0101】
本発明はさらに、以下の段階を含む、アベルメクチンを産生するための方法を提供する:野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて、変異型aveC対立遺伝子を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を変化させる遺伝子産物をコードする変異型aveC対立遺伝子を発現する、S.アベルミティリスの菌株の細胞をアベルメクチンの産生が可能となるまたは誘導される条件下で培地中で培養する段階;および前記アベルメクチンを培養物から回収する段階。1つの好ましい態様において、変異を発現する細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比は減少する。本方法は、ドラメクチンなどの商業的価値のあるアベルメクチンの産生効率を高める。
【0102】
本発明はさらに、変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を発現せずに野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて、変異型aveC対立遺伝子または遺伝子構築物を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンの量の変化を引き起こす変異型aveC対立遺伝子またはaveC対立遺伝子を含む遺伝子構築物を発現する、S.アベルミティリスの菌株をアベルメクチンの産生が可能となるまたは誘導される条件下で培地中で培養する段階;および前記アベルメクチンを培養物から回収する段階を含む方法を提供する。1つの好ましい態様において、変異型aveC対立遺伝子、縮重変異体または遺伝子構築物を発現する細胞によって産生されるアベルメクチンの量は増加する。
【0103】
本発明はさらに、野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じ菌株の細胞と比べて変異型aveC対立遺伝子またはその縮重変異体を発現するS.アベルミティリスの菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比を低下させる遺伝子産物をコードする変異型aveC対立遺伝子またはその縮重変異体を発現するS.アベルミティリスの菌株によって産生されるアベルメクチンの新規組成物を提供し、新規組成物中におけるアベルメクチンは野生型aveC対立遺伝子のみを発現するS.アベルミティリスの同じ菌株の細胞によって産生されるアベルメクチンのクラス2:クラス1比と比べて低いクラス2:クラス1比で産生される。新規アベルメクチン組成物は、枯渇した発酵培養液中に産生された状態で存在することができ、またはそこから回収されることもできる。新規アベルメクチン組成物は、硫酸アンモニウム沈殿、透析、サイズ分画、イオン交換クロマトグラフィー、HPLCなどによる既知の生化学的精製法により、培養液から部分的または実質的に精製することができる。
【0104】
5.4. アベルメクチンの用途
アベルメクチンは、駆虫薬、外寄生生物撲滅薬、殺虫薬および殺ダニ剤として特に有用な、強い活性のある抗寄生虫薬である。本発明の方法に従って産生されたアベルメクチン化合物は、これらのいずれの目的にも有用である。例えば、本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物は、ヒトの種々の疾患または状態、特に当技術分野で知られた寄生虫感染症によって引き起こされる疾患または状態を治療するために有用である。例えば、イケダ(Ikeda)およびオオムラ(Omura)、1997、Chem. Rev. 97(7):2591〜2609を参照されたい。より詳細には、本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物は、ヒト、家畜、ブタ、ヒツジ、家禽、ウマまたはウシを感染させうる寄生性線虫などの内部寄生体によって引き起こされる種々の疾患または状態の治療に有効である。
【0105】
より詳細には、本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物は、ヒトならびにさまざまな種の動物を感染させる線虫類に対して有効である。このような線虫類には、十二指腸虫(Ancylostoma)、鈎虫(Necator)、回虫(Ascaris)、糞線虫(Strongyloides)、旋毛虫(Trichinella)、毛頭虫(Capillaria)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、イヌ糸状虫(Dirofilaria)などの消化管寄生虫、ならびに、フィラリアならびに糞線虫(Strongyloides)および旋毛虫(Trichinella)腸管外状態(extract intestinal state)などの血液または他の組織もしくは臓器に認められる寄生虫が含まれる。
【0106】
本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物は、例えば、マダニ、ダニ、シラミ、ノミ、クロバエ、刺咬性昆虫、またはウシおよびウマに罹患する移動性の双翅目昆虫の幼虫によって引き起こされる哺乳類および鳥類への節足動物侵入症を含む、治療外寄生生物感染症の治療にも有用である。
【0107】
本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物は、例えば、ゴキブリ、イガ、カツオブシムシおよびイエバエといった家庭内害虫、ならびにハダニ、アリマキ、毛虫といった貯蔵穀物および農業用植物の害虫、およびバッタなどの直翅目昆虫に対する殺虫薬としても有用である。
【0108】
本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物によって治療しうる動物には、ヒツジ、ウシ、ウマ、シカ、ヤギ、ブタ、家禽を含む鳥類ならびにイヌおよびネコが含まれる。
【0109】
本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物は、意図する特定の用途、治療しようとする宿主動物の個々の種、およびかかわっている寄生虫または昆虫に応じた適切な製剤の形で投与される。殺寄生虫薬として用いる場合には、本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物をカプセル剤、丸薬、錠剤または水薬の形態で経口投与することができ、または注入もしくは注射、またはインプラントとして投与することもできる。このような製剤は標準的な獣医学の診療行為に準拠した通常の様式で調製される。すなわち、カプセル剤、丸薬または錠剤は、有効成分を、デンプン、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどの崩壊剤および/または結合剤を追加的に含む適した微粒希釈剤または担体と混合することによって調製しうる。水薬製剤は有効成分を分散剤または湿潤剤などとともに水溶液中に分散させることによって調製しうる。注射用製剤は滅菌溶液の形態に調製することができ、これには溶液を血液と等張にするのに十分な塩および/またはグルコースなどの他の物質を含めることができる。
【0110】
このような製剤は、有効化合物の重量の点では、治療しようとする患者または宿主動物の種、感染症の重症度および種類、ならびに宿主の体重に応じてさまざまであると考えられる。一般に、経口投与の場合には、患者または動物の体重1kg当たり約0.001〜10mgの用量の有効化合物を単回投与または1〜5日の期間にわたる分割投与として投与すれば十分であると考えられる。しかし、臨床症状に基づいて医師または獣医が判断して、さらに高い用量または低い用量が適応とされる場合もあると考えられる。
【0111】
別の選択肢として、本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物を動物の飼料に混ぜて投与することもでき、この目的のために通常の動物飼料と混合するための濃縮飼料添加物またはプレミックスを調製することもできる。
【0112】
殺虫薬として、および農作物の害虫を処理するために用いる場合には、本発明に従って産生されるアベルメクチン化合物を、標準的な農業の実務作業に従って噴霧剤、粉剤、乳濁剤などとして適用することができる。
【0113】
6. 実施例:ストレプトミセス・アベルミティリスの発酵および B2 アベルメクチン: B1 アベルメクチンの分析
分枝鎖2-オキソ酸デヒドロゲナーゼおよび5-O-メチルトランスフェラーゼ活性の両方を欠く菌株は、発酵培地に脂肪酸を補充しなければアベルメクチンを産生しない。本実施例は、このような変異株において種々の異なる脂肪酸の存在下で生合成を開始させると、広範囲にわたるB2:B1比のアベルメクチンが得られることを示す。
【0114】
6.1. 材料および方法
ストレプトミセス・アベルミティリスATCC 53692株は、デンプン(Nadex、Laing National)‐20g;ファルマメディア(Pharmamedia)(Trader's Protein、Memphis、TN)‐15g;アーダマインpH(Ardamine pH)(Yeast Products Inc.)‐5g;炭酸カルシウム‐1gを含む播種培地中に調製した全ブロス(broth)として-70℃で保存した。水道水で最終容量を1リットルに調整し、pHを7.2に調整して、培地を121℃で25分間、加圧滅菌した。
【0115】
上記の調製物を解凍した懸濁液2mlを、同じ培地50mlを含むフラスコへの接種に用いた。180rpmに設定した回転振盪器上で28℃にて48時間インキュベートした後、デンプン‐80g;炭酸カルシウム‐7g;ファルマメディア(Pharmamedia)‐5g;リン酸水素二カリウム‐1g;硫酸マグネシウム‐1g;グルタミン酸‐0.6g;硫酸第一鉄・七水和物‐0.01g;硫酸亜鉛‐0.001g;硫酸マンガン‐0.001gを含む産生培地50mlを含むフラスコに、ブロス2mlを接種した。水道水で最終容量を1リットルに調整し、pHを7.2に調整して、培地を121℃で25分間、加圧滅菌した。
【0116】
種々のカルボン酸基質(表1参照されたい)をメタノール中に溶解し、接種24時間後に発酵培地に添加して、最終濃度を0.2g/リットルとした。発酵培地を28℃で14日間インキュベートした後 、培養液を遠心し(2,500rpmで2分間)、上清を廃棄した。菌糸体ペレットをアセトン(15ml)で、続いてジクロロメタン(30ml)で抽出し、有機相を分離して濾過した後、蒸発によって乾燥させた。残留物をメタノール(1ml)中に採取し、240nmに設定した走査型ダイオードアレイ検出器を装着したヒューレットパッカード(Hewlett-Packard)1090A型液体クロマトグラフ装置を用いたHPLCによって分析した。用いたカラムは、40℃に維持したベックマンウルトラスフィア(Beckman Ultrasphere)C-18、5μm、4.6mm×25cmカラムであった。上記のメタノール溶液25μlをカラム上に注いだ。溶出はメタノール対水が80:20から95:5までの直線勾配により、0.85/ml・分で40分間かけて行った。検出器の反応を較正するために2種類の標準濃度のシクロヘキシルB1を用い、B2およびB1アベルメクチンの曲線下の面積を計測した。
【0117】
6.2. 結果
B2およびB1アベルメクチンに関して得られたHPLC滞留時間、および2:1比を表1に示す。
【0118】
【表1】
Figure 0003884651
【0119】
表1に示したデータではB2アベルメクチン:B1アベルメクチン産物比が極めて広範囲にわたることが示されており、このことは供給する脂肪酸側鎖出発ユニットの性質に応じて、クラス2化合物のクラス1化合物への脱水性転換の結果にかなりの差異があることを示している。これは、AveCタンパク質の変化に起因するB2:B1比の変化が個々の基質に対して特異的でありうることを示す。したがって、個々の基質で得られたB2:B1比に変化を示す変異株のスクリーニングは、その基質の存在下で行う必要がある。以下に続く実施例では、スクリーニング用基質としてシクロヘキサンカルボン酸を用いる。しかし、この基質は単にその能力を例示するために用いるものであり、本発明の適用可能性を限定するためのものではない。
【0120】
7. 実施例: aveC 遺伝子の単離
本実施例では、AveC遺伝子産物をコードするストレプトミセス・アベルミティリスの染色体領域の単離および特徴決定について述べる。以下に示すように、産生されるシクロヘキシル-B1アベルメクチンに対するシクロヘキシル-B2アベルメクチン(B2:B1)の比を改変しうるものとしてaveC遺伝子を単離した。
【0121】
7.1. 材料および方法
7.1.1. DNA 単離のためのストレプトミセスの増殖
ストレプトミセスの増殖に関しては以下の方法に従った。S.アベルミティリスATCC 31272株の単一コロニー(2番目の単一コロニー分離株)を、ディフコ(Difco)酵母抽出物‐5g;ディフコ(Difco)バクトペプトン‐5g;デキストロース‐2.5g;MOPS‐5g;ディフコ(Difco )バクトアガー‐15gを含む1/2濃度のYPD-6上で単離した。最終容量をdHOで1リットルに調整し、pHを7.0に調整して、培地を121℃で25分間、加圧滅菌した。
【0122】
上記の培地中で増殖した菌糸体を、25mm×150mmチューブに入れた10mlのTSB培地(1リットルのdHO中に、Difco Tryptic Soy Broth‐30g、121℃で25分間加圧滅菌した)への接種に用い、これを振盪(300rpm)しながら48〜72時間28℃で保温した。
【0123】
7.1.2. ストレプトミセス由来の染色体 DNA の単離
上記のように増殖させた菌糸体のアリコート(0.25mlまたは0.5ml)を1.5mlの微小遠心管に入れ、12,000×g、60秒の遠心分離によって細胞を濃縮した。上清を廃棄し、細胞を2mg/mlリゾチームを含む0.25mlのTSE緩衝液(20mlの1.5Mスクロース、2.5mlの1M Tris-HCl、pH 8.0、2.5mlの1M EDTA、pH 8.0および75mlのdHO)中に再懸濁した。試料を37℃で振盪しながら20分間インキュベートし、オートジェン540(AutoGen 540)(登録商標)自動核酸分離装置(Integrated Separation Systems、Natick、MA)に投入し、サイクル159(Cycle 159)(付属ソフトウエア)を製造者の指示に従って用いてゲノムDNAを単離した。
【0124】
または、5mlの菌糸体を17mm×100mmチューブに入れ、3,000rpm、5分間の遠心分離によって細胞を濃縮し、上清を除去した。細胞を1mlのTSE緩衝液中に再懸濁し、3,000rpm、5分間の遠心分離によって濃縮した上で上清を除去した。2mg/mlリゾチームを含む1mlのTSE緩衝液中に細胞を再懸濁し、37℃で振盪しながら30〜60分間インキュベートした。インキュベート後に0.5mlの10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加し、溶菌が完了するまで細胞を37℃でインキュベートした。溶解液を65℃で10分間インキュベートし、室温に冷却した後に2本の1.5ml エッペンドルフ(Eppendorf)チューブに分け、0.5mlのフェノール/クロロホルム(0.5M Tris、pH 8.0であらかじめ平衡化した50%フェノール;50%クロロホルム)で1回抽出した。水相を採取し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で2〜5回抽出した。1/10倍容量の3M酢酸ナトリウム、pH 4.8を添加し、混合物を氷上で10分間インキュベートし、混合物を15,000rpm、5℃で10分間遠心した上で上清を採取して新たなチューブに移し、それに1倍容量のイソプロパノールを添加して、DNAを沈殿させた。続いて、上清及びイソプロパノールの混合物を氷上で20分間インキュベートし、15,000rpm、5℃で20分間遠心した上で上清を除去し、DNAペレットを70%エタノールで1回洗浄した。ペレットが乾燥した後にDNAをTE緩衝液(10mM Tris、1mM EDTA、pH 8.0)中に再懸濁した。
【0125】
7.1.3. ストレプトミセス由来のプラスミド DNA の単離
菌糸体のアリコート(1.0ml)を1.5mlの微小遠心管に入れ、12,000×g、60秒の遠心分離によって細胞を濃縮した。上清を廃棄し、細胞を1.0mlの10.3%スクロース中に再懸濁し、12,000×g、60秒間の遠心分離によって濃縮した上で、上清を廃棄した。続いて、2mg/mlリゾチームを含む0.25mlのTSE緩衝液中に細胞を再懸濁し、37℃で振盪しながら20分間インキュベートし、オートジェン540(AutoGen 540)(登録商標)自動核酸分離装置に投入した。サイクル159(Cycle 159)(付属ソフトウエア)を製造者の指示に従って用いて、プラスミドDNAを単離した。
【0126】
または、1.5mlの菌糸体を1.5mlの微小遠心管に入れ、12,000×g、60秒の遠心分離によって細胞を濃縮した。上清を廃棄し、細胞を1.0mlの10.3%スクロース中に再懸濁し、12,000×g、60秒間の遠心分離によって濃縮した上で、上清を廃棄した。2mg/mlリゾチームを含む0.5mlのTSE緩衝液中に細胞を再懸濁し、37℃で15〜30分間インキュベートした。インキュベート後に0.25mlのアルカリSDS(0.3N NaOH、2%SDS)を添加し、細胞を55℃で15〜30分間または溶液が透明になるまでインキュベートした。酢酸ナトリウム(0.1ml、3M、pH 4.8)をDNA溶液に加えた後、これを氷上で10分間インキュベートした。DNA試料を14,000rpm、5℃で10分間遠心した。上清を採取して新しいチューブに移し、0.2mlのフェノール:クロロホルム(50%フェノール:50%クロロホルム)を添加してゆっくりと混合した。DNA溶液を14,000rpm、5℃で10分間遠心し、上層を新たなエッペンドルフチューブに移した。イソプロパノール(0.75ml)を添加し、溶液をゆっくりと混合した後に室温で20分間インキュベートした。DNA溶液を14,000rpm、5℃で15分間遠心し、上清を除去した上でDNAペレットを70%エタノールで洗浄し、乾燥させてTE緩衝液中に再懸濁した。
【0127】
7.1.4. 大腸菌由来のプラスミド DNA の単離
形質転換がなされた単一の大腸菌コロニーを5mlのルリア-ベルターニ(LB)培地(1リットルdHO中に、バクトトリプトン‐10g、バクト酵母抽出物‐5gおよびNaCl‐10g、pH 7.0、121℃で25分間加圧滅菌し、100μg/mlアンピシリンを補充したもの)中に接種した。培養物を一晩インキュベートし、1mlのアリコートを1.5ml微小遠心管に入れた。培養試料をオートジェン540(AutoGen 540)(登録商標)自動核酸分離装置に投入し、サイクル159(Cycle 159)(付属ソフトウエア)を製造者の指示に従って用いてプラスミドDNAを単離した。
【0128】
7.1.5. S. アベルミティリスのプロトプラストの調製および形質転換
S.アベルミティリスの単一コロニーを1/2濃度のYPD-6上で単離した。菌糸体を25mm×150mmチューブに入れた10mlのTSB培地への接種に用い、これを振盪(300rpm)しながら28℃で48時間インキュベートした。1mlの菌糸体を50mlのYEME培地への接種に用いた。YEME培地は1リットル当たり以下のものを含む:ディフコ酵母抽出物‐3g;ディフコバクトペプトン‐5g;ディフコ麦芽エキス‐3g;スクロース‐300g。121℃で25分間加圧滅菌した後に以下のものを添加した:2.5M MgCl・6HO(121℃で25分間、別に加圧滅菌した)‐2ml;およびグリシン(20%)(濾過滅菌した)‐25ml。
【0129】
菌糸体を30℃で48〜72時間増殖させ、50ml遠心管(Falcon)内で3,000rpm、20分間の遠心分離によって回収した。上清を廃棄し、スクロース‐205g;KSO‐0.25g;MgCl・6HO‐2.02g;HO‐600ml;KPO(0.5%)‐10ml;微量元素溶液*‐20ml;CaCl2・2HO(3.68%)‐100ml;およびMES緩衝液(1.0M、pH 6.5)‐10mlを含むP緩衝液中に菌糸体を再懸濁した(*微量元素溶液は1リットル当たり以下のものを含む:ZnCl‐40mg;FeCl・6HO‐200mg;CuCl・2HO‐10mg;MnCl・4HO‐10mg;NaBO・10HO‐10mg;(NH)MoO24・4HO‐10mg)。pHを6.5に調整し、最終容量を1リットルに調整した上で、培地を0.45ミクロンフィルターで濾過した。
【0130】
菌糸体を3,000rpm、20分間の遠心分離によって沈殿させ、上清を廃棄して、2mg/mlリゾチームを含む20mlのP緩衝液中に菌糸体を再懸濁した。菌糸体を35℃で振盪しながら15分間インキュベートし、プロトプラスト形成の程度を判断するために顕微鏡下で観察した。プロトプラスト形成が完了した時点で、プロトプラストを8,000rpmで10分間遠心した。上清を除去し、プロトプラストを10mlのP緩衝液中に再懸濁した。プロトプラストを8,000rpmで10分間遠心して上清を除去し、プロトプラストを2mlのP緩衝液中に再懸濁して、約1×10個のプロトプラストを2.0mlの低温貯蔵バイアル(Nalgene)に分配した。
【0131】
1×10個のプロトプラストを含むバイアルを8,000rpmで10分間遠心し、上清を除去してプロトプラストを0.1mlのP緩衝液中に再懸濁した。2〜5μgの形質転換用DNAをプロトプラストに添加し、その直後に0.5mlのT作業緩衝液を添加した。T緩衝塩基は以下のものを含む:PEG-1000(Sigma)‐25g;スクロース‐2.5g;HO‐83ml。1N NaOH(濾過滅菌した)でpHを8.8に調整し、T緩衝塩基を濾過滅菌して4℃で保存した。使用日と同じ日に作成したT作業緩衝液は、T緩衝塩基‐8.3ml;KPO(4mM)‐1.0ml;CaCl・2HO(5M)‐0.2ml;およびTES(1M、pH 8)‐0.5mlとした。T作業緩衝液の各成分は個別に濾過滅菌した。
【0132】
T緩衝液をプロトプラストに添加して20秒以内に1.0mlのP緩衝液も添加し、プロトプラストを8,000rpmで10分間遠心した。上清を廃棄し、プロトプラストを0.1mlのP緩衝液中に再懸濁した。続いて、スクロース‐205g;KSO‐0.25g;MgCl・6HO‐10.12g;グルコース‐10g;ディフコ(Difco)カザミノ酸‐0.1g;ディフコ酵母抽出物‐5g;ディフコオートミールアガー‐3g;ディフコバクトアガー‐22g;dHO‐800mlを含むRM14培地上にプロトプラストを播いた。溶液は121℃で25分間加圧滅菌した。加圧滅菌後に以下の滅菌貯蔵液を添加した:KPO(0.5%)‐10ml;CaCl・2HO(5M)‐5ml;L-プロリン(20%)‐15ml;MES緩衝液(1.0M、pH 6.5)‐10ml;微量元素溶液(上記と同じ)‐2ml;シクロヘキシミド貯蔵液(25mg/ml)‐40ml;および1N NaOH‐2ml。25mlのRM14培地を各プレートに均等に分け、使用の24時間前にプレートを乾燥させた。
【0133】
プロトプラストを湿度95%にて30℃で20〜24時間インキュベートした。チオストレプトン耐性形質転換体を選別するために、125μg/mlのチオストレプトンを含む1mlのオーバーレイ緩衝液をRM14再生プレート上に均等に広げた。オーバーレイ緩衝液は100ml当たり以下のものを含む:スクロース‐10.3g;微量元素溶液(上記と同じ)‐0.2ml;およびMES(1M、pH 6.5)‐1ml。チオストレプトン耐性(Thior)コロニーが現れるまで、プロトプラストを湿度95%にて30℃で7〜14日間インキュベートした。。
【0134】
7.1.6. ストレプトミセス・リビダンスのプロトプラストの形質転換
いくつかのケースでは、S.リビダンス(S. lividans)TK64株(John Innes Institute、Norwich、UKにより提供)を形質転換に用いた。S.リビダンスの増殖、プロトプラスト形成および形質転換のための方法および組成は、ホプウッド(Hopwood)ら、1985、「ストレプトミセスの遺伝子操作、実験マニュアル(Genetic Manipulation of Streptomyces、Laboratory Manual)」、John Innes Foundation、Norwich、U.K.に記載されており、そこに記載されている通りに行った。上記の第7.1.3項における記載の通りに、S.リビダンス形質転換体からプラスミドDNAを単離した。
【0135】
7.1.7. S. アベルミティリス株の発酵分析
1/2濃度のYPD-6上で4〜7日間増殖させたS.アベルミティリス菌糸体を、8mlの予備培地および2個の5mm径ガラスビーズを含む1×6インチのチューブに接種した。予備培地は、可溶性デンプン(希薄加熱デンプンまたはKOSO、日本コーンスターチ株式会社(Japan Corn Starch Co.)、名古屋)‐20g/L;ファルマミディア(Pharmamedia)‐15g/L;アーダマインpH(Ardamine pH)‐5g/L(Champlain Ind.、Clifton、NJ);CaCO‐2g/L;2×bcfa(「bcfa」は分枝鎖脂肪酸を表す)を含み、培地中に最終濃度50ppmの2-(+/-)-メチル酪酸、60ppmのイソ酪酸および20ppmのイソ吉草酸を含む。pHを7.2に調整し、培地を121℃で25分間、加圧滅菌した。
【0136】
チューブを17゜の角度で215rpm、29℃で3日間振盪した。播種培養物の2mlのアリコートを、デンプン(希薄加熱デンプンまたはKOSO)‐160g/L;ニュートリソイ(Nutrisoy)(Archer Daniels Midland、Decatur、IL)‐10g/L;アーダマインpH(Ardamine pH)‐10g/L;KHPO‐2g/L;MgSO・4HO‐2g/L;FeSO・7HO‐0.02g/L;MnCl‐0.002g/L;ZnSO・7HO‐0.002g/L;CaCO‐14g/L;2×bcfa(上記の通り);およびシクロヘキサンカルボン酸(CHC)(pH 7.0の20%溶液として調製)‐800ppmを含む25mlの産生培地を含む、300mlの三角フラスコへの接種に用いた。pHを6.9に調製し、培地を121℃で25分間、加熱滅菌した。
【0137】
接種後にフラスコを200rpmで振盪しながら29℃で12日間インキュベートした。インキュベート後に2mlの試料をフラスコから採取し、8mlのメタノールで希釈して混合し、混合物を1,250×gで10分間遠心してペレット片とした。その後ベックマンウルトラスフィア(Beckman Ultrasphere)ODSカラム(25cm×内径4.6mm)を流速0.75ml/分で用い、240nmの吸光度により検出するHPLCによって上澄みを定量した。移動相は86/8.9/5.1のメタノール/水/アセトニトリルとした。
【0138】
7.1.8. S. アベルミティリス PKS 遺伝子の単離
S.アベルミティリス(ATCC 31272、SC-2)染色体DNAのコスミドライブラリーを調製し、サッカロポリスポラ・エリスリア(Saccharopolyspora erythraea)ポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子の断片から作製したケトシンターゼ(KS)プローブとハイブリダイズさせた。コスミドライブラリーの調製に関する詳細な説明は、サムブルック(Sambrook)ら、1989、上記に記載されている。ストレプトミセス染色体DNAライブラリーの調製に関する詳細な説明は、ホプウッド(Hopwood)ら、1985、上記に記載されている。ケトシンターゼとハイブリダイズする領域を含むコスミドクローンを、pEX26(Dr. P. Leadlay、Cambridge、UKにより寄贈)由来の2.7Kb NdeI/Eco47III断片とのハイブリダイゼーションによって同定した。約5ngのpEX26をNdeIおよびEco47IIIを用いて消化した。反応混合物を0.8%シープラーク(SeaPlaque)GTGアガロースゲル(FMC BioProducts、Rockland、ME)にロードした。2.7KbのNdeI/Eco47III断片を電気泳動後にゲルから切り出し、ファーストプロトコール(Fast Protocol)を用いてエピセンターテクノロジーズ(Epicentre Technologies)社のGELase(登録商標)を使用し、ゲルからDNAを回収した。BRLニック翻訳システム(BRL Life Technologies, Inc.、Gaithersburg、MD)を業者の指示に従って用い、2.7KbのNdeI/Eco47III断片を[α-32P]dCTP(デオキシシチジン5'-リン酸、テトラ(トリエチルアンモニウム)塩、[α-32P]-](NEN-Dupont、Boston、MA)で標識した。典型的には0.05mlの容量中で反応を行った。5μlの停止緩衝液を添加した後に、G-25セファデックスクイックスピン(Sephadex Quick Spin)(登録商標)カラム(Boehringer Mannheim)を業者の指示に従って用いて、取り込まれなかったヌクレオチドから標識DNAを分離した。
【0139】
約1,800個のコスミドクローンをコロニーハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。サッカロポリスポラ・エリスリア(Sacc. erythraea)KSプローブと強くハイブリダイズした10個のクローンが同定された。コスミドDNAを含む大腸菌コロニーをLB液体培地中で増殖させ、オートジェン540(AutoGen 540)(登録商標)自動核酸分離装置内にある各培養物から、サイクル3(Cycle 3)(付属ソフトウエア)を製造者の指示に従って用いて、コスミドDNAを単離した。制限酵素マッピングおよびサザンブロットハイブリダイゼーション分析により、クローンのうち5つが重複する染色体領域を含むことが明らかになった。重複するコスミドの分析およびハイブリダイゼーションにより、5つのコスミド(すなわち、pSE65、pSE66、pSE67、pSE68、pSE69)のS.アベルミティリスのゲノムBamHI制限酵素地図を作成した(図4)。
【0140】
7.1.9. アベルメクチン B2 :アベルメクチン B1 比を調節する DNA の同定、および aveC ORF の同定
pSE66コスミドクローンに由来するサブクローニングされた断片を、AveC変異株におけるアベルメクチンB2:アベルメクチンB1比を調節する能力に関して試験するために、以下の方法を用いた。pSE66(5μg)をSacIおよびBamHIで消化した。反応混合物を0.8%シープラーク(SeaPlaque)GTGアガロースゲル(FMC BioProducts、Rockland、ME)にロードし、2.9KbのSacI/BamHI断片を電気泳動後にゲルから切り出し、GELase(登録商標)(Epicentre Technologies)をファーストプロトコール(Fast Protocol)にて用いてゲルからDNAを回収した。約5μgのシャトルベクターpWHM3(Varaら、1989、J. Bacteriol. 171:5872〜5881)をSacIおよびBamHIで消化した。約0.5ngの2.9Kb挿入物および0.5μgの消化したpWHM3を混合し、業者の指示に従い、リガーゼ(New England Biolabs, Inc.、Beverly、MA)1単位とともに総容量20μlにおいて15℃で一晩インキュベートした。インキュベート後に5μlの連結混合物を70℃で10分間インキュベートし、室温に冷却した上で、製造者の指示に従ってコンピテント大腸菌DH5α細胞(BRL)の形質転換に用いた。
【0141】
プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、2.9KbのSacI/BamHI挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE119と命名した。
【0142】
S.アベルミティリス1100-SC38株(Pfizer社自社株)のプロトプラストを調製し、上記の第7.1.5項における記載の通りにpSE119による形質転換を行った。1100-SC38株は、シクロヘキサンカルボン酸を補充した際にアベルメクチンシクロヘキシル-B1型と比べてアベルメクチンシクロヘキシル-B2型を著しく多く産生する変異株である(B2:B1比が約30:1)。S.アベルミティリスのプロトプラストの形質転換に用いたpSE119は、大腸菌GM2163株(Dr. B. J. Bachmann、Curator、E. coli Genetic Stock Center、Yale Universityから入手)、大腸菌DM1株(BRL)またはS.リビダンスTK64株のいずれかから単離した。1100-SC38株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、発酵産物のHPLC分析によって分析した。pSE119を含むS.アベルミティリス1100-SC38株の形質転換体は、アベルメクチンシクロヘキシル-B2:シクロヘキシル-B1が約3.7:1という異なる比を産生した(表2)。
【0143】
pSE119はあるAveC変異株においてアベルメクチンB2:アベルメクチンB1比を調節しうることが確認されているため、挿入DNAの配列決定を行った。プラスミドDNA単離キット(Qiagen、valencia、CA)を製造者の指示に従って用いて約10μgのpSE119を単離し、ABI 373A自動DNAシークエンサー(Perkin Elmer、Foster City、CA)を用いて配列を決定した。配列データのアセンブルおよび編集は遺伝子コンピュータグループプログラム(Genetic Computer Group program)(GCG、Madison、WI)を用いて行った。DNA配列およびaveC ORFは図1に示されている(配列番号:1)。
【0144】
pSE118と命名した新たなプラスミドを以下の通りに構築した。約5μgのpSE66をSphIおよびBamHIで消化した。反応混合物を0.8%シープラーク(SeaPlaque)GTGアガロースゲル(FMC BioProducts)にロードし、2.8KbのSphI/BamHI断片を電気泳動後にゲルから切り出し、GELase(登録商標)(Epicentre Technologies)をファーストプロトコール(Fast Protocol)にて用いて、ゲルからDNAを回収した。約5μgのシャトルベクターpWHM3をSphIおよびBamHIで消化した。約0.5μgの2.8Kb挿入物および0.5μgの消化したpWHM3を混合し、業者の指示に従い、リガーゼ(New England Biolabs)1単位とともに総容量20μlにおいて15℃で一晩インキュベートした。インキュベート後に5μlの連結混合物を70℃で10分間インキュベートし、室温に冷却した上で、製造者の指示に従ってコンピテント大腸菌DH5α細胞(BRL)の形質転換に用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、2.8KbのSphI/BamHI挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE118と命名した。pSE118およびpSE119における挿入DNAは、約838ヌクレオチドが重複する(図4)。
【0145】
上記のpSE118により、S.アベルミティリス1100-SC38株のプロトプラストの形質転換を行った。1100-SC38株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、発酵産物のHPLC分析によって分析した。pSE118を含むS.アベルミティリス1100-SC38株の形質転換体では、1100-SC38株と比べて、アベルメクチンシクロヘキシル-B2:アベルメクチンシクロヘキシル-B1の比は変化していなかった(表2)。
【0146】
7.1.10. S. アベルミティリス染色体 DNA 由来の aveC 遺伝子の PCR 増幅
上記のようにして得たaveCヌクレオチド配列に基づいて設計したプライマーを用いたPCR増幅により、aveC ORFを含む約1.2Kbの断片をS.アベルミティリス染色体DNAから単離した。PCRプライマーはジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc.)(Texas)により入手した。右方向プライマーは
Figure 0003884651
とし、左方向プライマーは
Figure 0003884651
とした。PCR反応は、ディープベント(Deep Vent)(登録商標)ポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて製造者により提供された緩衝液中で行い、最終容量100μl中における300μM dNTP、10%グリセロール、200pmolの各プライマー、0.1μgのテンプレートおよび2.5単位の酵素の存在下で、パーキンエルマー・シータス(Perkin-Elmer Cetus)サーマルサイクラーを用いて行った。最初のサイクルの加熱プロフィールは、95℃ 5分間(変性段階)、60℃ 2分間(アニーリングの段階)および72℃ 2分間(伸長段階)とした。続く24サイクルでは、変性段階を45秒間に短縮し、アニーリングの段階を1分間に短縮した以外は同様の加熱プロフィールを用いた。
【0147】
1%アガロースゲルにてPCR産物の電気泳動を行ったところ、約1.2Kbに単一のDNAバンドが検出された。このDNAをゲルから精製し、製造者の指示に従い、ベクター対挿入物のモル比を1:10として25ngの線状平滑末端pCR-Bluntベクター(Invitrogen)と連結させた。製造者の指示に従って、連結混合物をワンショット(One Shot)(登録商標)コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen)の形質転換に用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、1.2Kbの挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE179と命名した。
【0148】
BamHI/XbaIによる消化によってpSE179から挿入DNAを単離し、電気泳動後によって分離した上でゲルから精製し、総DNA濃度1μgにてベクター-挿入物のモル比を1:5として、同じくBamHI/XbaIで消化したシャトルベクターpWHM3と連結させた。製造者の指示に従い、連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞の形質転換に用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、約1.2Kbの挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE186(図2、ATCC 209604)と命名したこのプラスミドを大腸菌DM1株に形質転換し、アンピシリン耐性形質転換体からプラスミドDNAを単離した。
【0149】
7.2. 結果
pSE119から得た2.9KbのSacI/BamHI断片は、S.アベルミティリス1100-SC38株に形質転換すると、B2アベルメクチン:B1アベルメクチン産生の比を著しく変化させることが確認された。S.アベルミティリス1100-SC38株のB2:B1比は通常は約30:1であるが、2.9Kb SacI/BamHI断片を含むベクターにより形質転換されるとB2アベルメクチン:B1アベルメクチンの比は約3.7:1に低下した。形質転換体の培養物の発酵後分析により、形質転換DNAの存在が立証された。
【0150】
2.9KbのpSE119断片の配列を決定したところ、B2産物のみを産生するように別の箇所ですでに変異させたPstI/SphI断片を含む(Ikedaら、1995、上記)、約0.9KbのORFが同定された(図1)(配列番号:1)。このORFまたはこれに対応する推定ポリペプチドと既知のデータベース(GenEMBL、SWISS-PROT)との比較では、既知のDNAまたはタンパク質配列との強い相同性は認められなかった。
【0151】
表2は、種々のプラスミドにより形質転換されたS.アベルミティリス1100-SC38株の発酵分析を示している。
【0152】
【表2】
Figure 0003884651
【0153】
8. 実施例: S. アベルミティリス AveC 変異株の作製
本実施例では、上記の組成物および方法を用いたいくつかの異なるS.アベルミティリスAveC変異株の作製について述べる。ストレプトミセスの遺伝子に変異を導入するための一般的な説明は、キーザー(Kieser)およびホプウッド(Hopwood)、1991、Meth. Enzym. 204:430〜458に記載されている。より詳細な説明は、アンザイ(Anzai)ら、1988、J. Antibiot. XLI(2):226-233およびステュッツマン-エングウォール(Stutzman-Engwall)ら、1992、J. Bacteriol. 174(1):144〜154に示されている。これらの参考文献はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0154】
8.1. S.アベルミティリスaveC遺伝子の不活性化
以下に記載するいくつかの方法を用いて、不活性化されたaveC遺伝子を含むAveC変異株を作製した。
【0155】
第1の方法では、pSE119(上記の第7.1.9項で説明したプラスミド)中のaveC遺伝子の内部の640bpのSphI/PstI断片を、サッカロポリスポラ・エリスリア由来のermE遺伝子(エリスロマイシン耐性に関するもの)により置換した。BglIIおよびEcoRIによる制限酵素消化によってpIJ4026(John Innes Institute、Norwich、U.Kにより提供;Bibbら、1985、Gene 41:357〜368も参照のこと)からermE遺伝子を単離し、電気泳動を行ってゲルから精製した。この約1.7Kbの断片をBamHIおよびEcoRIで消化したpGEM7Zf(Promega)中に連結し、連結混合物を製造者の指示に従ってコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、約1.7Kbの挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE27と命名した。
【0156】
pSE118(上記の第7.1.9項で説明)をSphIおよびBamHIで消化し、消化産物の電気泳動を行って約2.8KbのSphI/BamHI挿入物をゲルから精製した。pSE119をPstIおよびEcoRIで消化し、消化産物の電気泳動を行って約1.5KbのPstI/EcoRI挿入物をゲルから精製した。シャトルベクターpWHM3はBamHIおよびEcoRIで消化した。pSE27はPstIおよびSphIで消化し、消化産物をの電気泳動を行って約1.7KbのPstI/SphI挿入物をゲルから精製した。4つの断片のすべて(すなわち、約2.8Kb、約1.5Kb、約7.2Kb、約1.7Kb)を四通りに互いに連結させた。製造者の指示に従って、連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE180(図3;ATCC 209605)と命名した。
【0157】
pSE180をS.リビダンスTK64株に形質転換し、チオストレプトンおよびエリスロマイシンに対する耐性によって形質転換コロニーを同定した。pSE180をS.リビダンスから単離し、S.アベルミティリスのプロトプラストの形質転換に用いた。4種のチオストレプトン耐性S.アベルミティリス形質転換体を同定し、プロトプラストを調製して、非選択条件下でRM14培地上に播いた。プロトプラストが再生した後に、不活性化されたaveC遺伝子の染色体への組み込み、および遊離レプリコンの消失を示す、エリスロマイシン耐性の存在及びチオストレプトン耐性の欠如に関して、単一コロニーをスクリーニングした。Erm Thio形質転換体を1つ同定し、SE180-11株と命名した。SE180-11株から全染色体DNAを単離し、制限酵素BamHI、HindIII、PstIまたはSphIによって消化し、0.8%アガロースゲル上での電気泳動によって分離させた後にナイロン膜に移し、ermEプローブとハイブリダイズさせた。これらの分析により、ermE耐性遺伝子の染色体への組み込みと同時に640bpのPstI/SphI断片の欠失が二重交差事象によって起こったことが示された。SE180-11株の発酵産物のHPLC分析により、通常のアベルメクチンは産生されていないことが示された(図5A)。
【0158】
aveC遺伝子を不活性化するための第2の方法では、S.アベルミティリスSE180-11株の染色体から1.7KbのermE遺伝子を除去し、aveC遺伝子に640bp PstI/SphIの欠失が生じさせた。遺伝子置換プラスミドは以下のように構築した:pSE180をXbaIで部分的に消化し、約11.4Kbの断片をゲルから精製した。約11.4Kbのバンドは1.7KbのermE耐性遺伝子が欠如している。その後DNAを連結し、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE184と命名したこのプラスミドを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離した。このプラスミドをS.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体からプロトプラストを調製し、単一コロニーとしてRM14上に播いた。プロトプラストが再生した後に、不活性化されたaveC遺伝子の染色体の組み込みおよびermE遺伝子を含む遊離レプリコンの消失を示す、エリスロマイシン耐性およびチオストレプトン耐性の両方の欠如に関して、単一コロニーをスクリーニングした。Erm Thio形質転換体を1つ同定し、SE184-1-13株と命名した。SE184-1-13株の発酵分析により、通常のアベルメクチンは産生されておらず、SE184-1-13株がSE180-11株と同じ発酵プロフィールを有することが示された。
【0159】
aveC遺伝子を不活性化するための第3の方法では、PCRを用いて471位のヌクレオチドCの後に2つのGを付加することによって染色体aveC遺伝子にフレームシフトを導入し、それによってBspE1部位を作製した。作製したBspE1部位の存在は遺伝子置換事象の検出に有用であった。aveC遺伝子にフレームシフト変異を導入するためのPCRプライマーを設計し、ジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc)から供給された。右方向プライマーは
Figure 0003884651
とし、左方向プライマーは
Figure 0003884651
とした。PCR条件は上記の第7.1.10項に記載した通りとした。666bpのPCR産物をSphIで消化し、それぞれ278bpおよび388bp2つの断片を得た。388bの断片をゲルから精製した。
【0160】
遺伝子置換プラスミドは以下の通りに構築した:シャトルベクターpWHM3をEcoRIおよびBamHIで消化した。pSE119をBamHIおよびSphIで消化し、消化産物の電気泳動を行って約840bpの断片をゲルから精製した。pSE119はEcoRIおよびXmnIで消化し、消化産物の電気泳動を行って約1.7Kbの断片をゲルから精製した。4つの断片のすべて(すなわち、約7.2Kb、約840bp、約1.7Kbおよび388bp)を四通りに連結させた。製造者の指示に従って、連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析およびDNA配列解析によって確認した。pSE185と命名したこのプラスミドを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離した。このプラスミドをS.アベルミティリス1100-SC38株のプロトプラストの形質転換に用いた。1100-SC38株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、発酵産物のHPLC分析によって分析した。S.アベルミティリス1100-SC38株に形質転換した場合、pSE185はB2アベルメクチン:B1アベルメクチン比を有意に変化させなかった(表2)。
【0161】
pSE185をS.アベルミティリスのプロトプラストの形質転換に用いて、染色体のaveC遺伝子中にフレームシフト変異を作製した。チオストレプトン耐性形質転換体からプロトプラストを調製し、単一のコロニーとしてRM14上に播いた。プロトプラストが再生した後に、単一コロニーを、チオストレプトン耐性が存在しない点に関してスクリーニングした。チオストレプトン感受性コロニーから染色体DNAを単離し、染色体に組み込まれたフレームシフト変異の存在に関してPCRによってスクリーニングした。aveCヌクレオチド配列に基づいてPCRプライマーを設計し、ジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc.)(Texas)から入手した。右方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
、左方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とし、PCR条件は上記の第7.1.10項に記載された通りとした。得られたPCR産物は543bpであり、BspE1で消化すると368bp、96bpおよび79bpの3つの断片が認められ、このことから不活性化されたaveC遺伝子の染色体への組み込み、および遊離レプリコンの消失が示された。
【0162】
aveC遺伝子中にフレームシフト変異を含むS.アベルミティリス変異株の発酵分析により、通常のアベルメクチンは産生されておらず、これらの変異株がSE180-11株およびSE184-1-13株と同じ発酵HPLCプロフィールを有することが示された。ThiosST形質転換体を1つ同定し、SE185-5a株と命名した。
【0163】
さらに、520位のヌクレオチドをGからAに変化させ、トリプトファン(W)をコードする116位のコドンを終止コドンに変化させるaveC遺伝子における変異を作製した。この変異を有するS.アベルミティリス株は通常のアベルメクチンを産生せず、SE180-11株、SE184-1-13株およびSE18S-5a株と同じ発酵プロフィールを有していた。
【0164】
さらに、(i)970位のヌクレオチドをGからAに変化させ、266位のアミノ酸をグリシン(G)からアスパラギン酸(D)に変化させる、および(ii)996位のヌクレオチドをTからCに変化させ、275位のアミノ酸をチロシン(Y)からヒスチジン(H)に変化させる、両方の変化を生じるaveC遺伝子における変異を作製した。これらの変異(G256D/Y275H)を有するS.アベルミティリス株は通常のアベルメクチンを産生せず、SE180-11株、SE184-1-13株およびSE18S-5a株と同じ発酵プロフィールを有した。
【0165】
S.アベルミティリスaveC不活性化変異株であるSE180-11、SE184-1-13、5E185-5aおよび本明細書で提供する他の株により、aveC遺伝子における他の変異の影響を評価するためのスクリーニング法が提供される。aveC遺伝子の野生型コピーを含むpSE186を大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離した。このpSE186 DNAをS.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析した。イントランスの(in trans)機能的aveC遺伝子の存在により、SE180-11株は通常のアベルメクチン産生能を回復した(図5B)。
【0166】
8.2. クラス B2 B1 比を変化させる aveC 遺伝子における変異の分析
上記のように、不活性型aveC遺伝子を含むS.アベルミティリスSE180-11株は、機能的aveC遺伝子を含むプラスミド(pSE186)の形質転換によって補完された。以下に記載するように、SE180-11株を、aveC遺伝子における他の変異の特徴決定のための宿主株としても用いた。
【0167】
染色体DNAを1100-SC38株から単離し、aveC遺伝子のPCR増幅用のテンプレートとして用いた。aveCヌクレオチド配列に基づいて設計したプライマーを用いたPCR増幅により、1.2KbのORFを単離した。右方向プライマーは配列番号:6、左方向プライマーは配列番号:7とした(上記の第7.1.10項を参照されたい)。PCRおよびサブクローニングの条件は第7.1.10項に記載した通りとした。1.2KbのORFのDNA配列解析により、337位のヌクレオチドをCからTに変化させ、55位のアミノ酸をセリン(S)からフェニルアラニン(F)に変化させるaveC遺伝子における変異が示された。このS55F変異を含むaveC遺伝子をpWHM3中にサブクローニングしてpSE187と命名したプラスミドを作製し、S.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析した。アミノ酸残基55の変化(S55F)をコードするaveC遺伝子により、SE180-11株は通常のアベルメクチン産生能を回復した(図5C)。しかし、pSE186により形質転換されたSE180-11株ではシクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1比が約1.6:1であったのに対して(表3)、B2: B1比は約26:1であり、これはこの単一の変異(S55F)が、シクロヘキシル-B1に対してシクロヘキシル-B2の産生量を相対的に調節することを示している。
【0168】
862位のヌクレオチドをGからAに変化させ、230位のアミノ酸をグリシン(G)からアスパラギン酸(D)に変化させる、aveC遺伝子におけるもう1つの変異が同定された。この変異(G230D)を有するS.アベルミティリス株は約30:1のB2:B1比でアベルメクチンを産生した。
【0169】
8.3. B2 B1 比を低下させる変異
シクロヘキシル-B1に対してシクロヘキシル-B2の産生量を相対的に低下させるいくつかの変異を以下の通りに作製した。
【0170】
588位のヌクレオチドをGからAに変化させ、139位のアミノ酸をアラニン(A)からトレオニン(T)に変化させる、aveC遺伝子における変異が同定された。このA139T変異を含むaveC遺伝子をpWHM3中にサブクローニングして、pSE188と命名したプラスミドを作製し、S.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析した。アミノ酸残基139の変化(A139T)をコードする変異型aveC遺伝子によって、SE180-11株は通常のアベルメクチン産生能を回復した(図5D)。しかし、B2:B1比は約0.94:1であり、これはこの変異がシクロヘキシル-B1に対してシクロヘキシル-B2の産生量を相対的に減少させることを示す。上記の変異の結果と同様に、公表されている結果では、aveC遺伝子の不活性化またはB1型と対比してのB2型アベルメクチン産生の増加のいずれかのみが示されていたことから、この結果は予想外であった(表3)。
【0171】
A139T変異がB2:B1比をよりB1が有意な方向に変化させたことから、アミノ酸138位でセリンの代わりにトレオニンをコードする変異を作製した。すなわち、pSE186をEcoRIで消化し、EcoRIで消化したpGEM3Zf(Promega)中にサブクローニングした。pSE186aと命名したこのプラスミドをApaIおよびKpnIで消化し、DNA断片をアガロースゲルで分離して、約3.8Kbおよび約0.4Kbの2つの断片をゲルから精製した。pSE186由来の約1.2Kbの挿入DNAを、585位のヌクレオチドに単一の塩基変化を導入するためのPCRテンプレートとして用いた。585位のヌクレオチドに変異を導入するためのPCRプライマーを設計し、ジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc.)(Texas)から入手した。右方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とし、左方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とした。PCR反応はアドバンテージ(Advantage)GCゲノムPCRキット(Clonetech Laboratories、Palo Alto、CA)を製造者により提供された緩衝液中で用い、最終容量50μl中にて200μM dNTP、200pmolの各プライマー、50ngのテンプレートDNA、1.0M GC-Meltおよび1単位のクレンタック(KlenTaq)ポリメラーゼミックスの存在下で行った。加熱プロフィールは、最初のサイクルを94℃ 1分間、続いて94℃ 30秒間および68℃ 2分間を25サイクル、ならびに68℃ 3分間を1サイクルとした。295bpのPCR産物をApaIおよびKpnIで消化して254bp断片を遊離させ、これを電気泳動によって分離させてゲルから精製した。3つの断片のすべて(約3.8Kb、約0.4Kbおよび254bp)を三者間連結によって互いに連結させた。連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE198と命名した。
【0172】
pSE198をEcoRIで消化し、EcoRIで消化したpWHM3中にサブクローニングして、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析およびDNA配列解析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離して、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE199と命名したこのプラスミドをS.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析した。アミノ酸残基138での変化(S138T)をコードする変異型aveC遺伝子の存在により、SE180-11株はアベルメクチン産生能を回復した。しかし、B2:B1比は0.88:1であり、これはこの変異がシクロヘキシル-B1に対するシクロヘキシル-B2の産生量を相対的に減少させることを示している(表3)。このB2:B1比は、上記のpSE188によるSE180-11株の形質転換によって生じるA139T変異で認められる0.94:1という比よりもはるかに低い。
【0173】
138位および139位のアミノ酸の両方にトレオニンを導入するために別の変異を作製した。pSE186由来の約1.2Kbの挿入DNAをPCRテンプレートとして用いた。585位および588位のヌクレオチドに変異を導入するためのPCRプライマーを設計し、ジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc.)(Texas)から入手した。右方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とし、左方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とした。PCR反応は、直前の項に記載した通りの条件を用いて行った。449bpのPCR産物をApaIおよびKpnIで消化して254bp断片を遊離させ、これを電気泳動によって分離させてゲルから精製した。pSE186aをApaIおよびKpnIで消化し、DNA断片をアガロースゲルで分離して、約3.8Kbおよび約0.4Kbの2つの断片をゲルから精製した。3つの断片のすべて(約3.8Kb、約0.4Kbおよび254bp)を三者間連結によって互いに連結させ、連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE230と命名した。
【0174】
pSE230をEcoRIで消化し、EcoRIで消化したpWHM3中にクローニングして大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析およびDNA配列解析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離して、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE231と命名したこのプラスミドをS.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵によって分析した。S138T/A139Tをコードする二重変異型aveC遺伝子の存在により、SE180-11株は通常のアベルメクチン産生能を回復した。しかし、B2:B1比は0.84:1であり、これはこの変異が、上記のpSE188またはpSE199によるSE180-11株の形質転換体における減少を上回って、シクロヘキシル-B1と対比したシクロヘキシル-B2の産生量をさらに減少させることを示している(表3)。
【0175】
シクロヘキシル-B1と対比したシクロヘキシル-B2の産生量をさらに減少させるために、別の変異を作製した。S138T/A139T変異がB2:B1比をよりB1が優位な方向に変化させたことから、アミノ酸138位にトレオニンを導入し、アミノ酸139位にフェニルアラニンを導入するための変異を作製した。pSE186由来の約1.2Kbの挿入DNAをPCRテンプレートとして用いた。585位(TがAに変化)、588位(GがTに変化)および589位(CがTに変化)のヌクレオチドに変異を導入するためのPCRプライマーを設計し、ジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc.)(Texas)から入手した。右方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とし、左方向PCRプライマーは
Figure 0003884651
とした。PCR反応はアドバンテージ(Advantage)GCゲノムPCRキット(Clonetech Laboratories、Palo Alto、CA)を製造者により提供された緩衝液中で用い、最終容量50μl中にて200μM dNTP、200pmolの各プライマー、50ngのテンプレートDNA、1.1mM酢酸マグネシウム、1.0M GC-Meltおよび1単位のTth DNAポリメラーゼの存在下で行った。加熱プロフィールは、最初のサイクルを94℃ 1分間、続いて94℃ 30秒間および68℃ 2分間を25サイクル、ならびに68℃ 3分間を1サイクルとした。449bpのPCR産物をApaIおよびKpnIで消化して254bp断片を遊離させ、これを電気泳動によって分離させてゲルから精製した。3つの断片のすべて(約3.8Kb、約0.4Kbおよび254bp)を三者間連結によって互いに連結させた。連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをpSE238と命名した。
【0176】
pSE238をEcoRIで消化し、EcoRIで消化したpWHM3中にサブクローニングして、大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析およびDNA配列解析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離して、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE239と命名したこのプラスミドをS.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析した。S138T/A139Fをコードする二重変異型aveC遺伝子の存在により、SE180-11株は通常のアベルメクチン産生能を回復した。しかし、B2:B1比は0.75:1であり、これはこの変異が、上記のpSE188、pSE199またはpSE231によるSE180-11株の形質転換体における減少を上回って、シクロヘキシル-B1と対比したシクロヘキシル-B2の産生量をさらに減少させることを示している(表3)。
【0177】
【表3】
Figure 0003884651
【0178】
シクロヘキシル-B1と対比したシクロヘキシル-B2の産生量をさらに減少させるために、ステンマー(Stemmer)、1994、Nature 370:389〜391;およびステンマー(Stemmer)、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10747〜10751に記載され、米国特許第5605793号、第5811238号、第5830721号および第5837458号にもさらに記載されている、DNAシャフリング技術を用いて別の変異を作製した。
【0179】
変異型aveC遺伝子を含む、DNAがシャフリングされたプラスミドをコンピテントdam dcm大腸菌細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、S.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、産生されるアベルメクチンのシクロヘキシル-B2:シクロヘキシル-B1比が1:1以下という条件でスクリーニングした。1:1以下のB2:B1比でアベルメクチンを産生するSE180-11形質転換体由来のプラスミドDNAのDNA配列を決定した。
【0180】
シクロヘキシル-B1と対比したシクロヘキシル-B2の産生量が減少している8種類の形質転換体が同定された。これらの形質転換体で得られたB2:B1比のうち最も低かったものは04:1であった(表4)。8種の形質転換体のそれぞれからプラスミドDNAを単離し、aveC遺伝子における変異を同定するためにDNA配列を決定した。変異は以下の通りである。
【0181】
pSE290は、317位のヌクレオチドにTからA、353位のヌクレオチドにCからA、438位のヌクレオチドにGからA、及び1155位のヌクレオチドにTからAという4つのヌクレオチド変異を含む。317位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は48位のアミノ酸をDからEに変化させ、438位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は89位のアミノ酸をAからTに変化させる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.42:1であった(表4)。
【0182】
pSE291は、272位のヌクレオチドにおいてGからA、585位のヌクレオチドにおいてTからA、588位のヌクレオチドにおいてGからA、及び708位のヌクレオチドにおいてGからAという4つのヌクレオチド変異を含む。585位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は138位のアミノ酸をSからTに変化させ、588位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は139位のアミノ酸をAからTに変化させ、708位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は179位のアミノ酸をGからSに変化させる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.57:1であった(表4)。
【0183】
pSE292は、pSE290と同じ4つのヌクレオチド変異を含む。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.40:1であった(表4)。
【0184】
pSE293は、24位のヌクレオチドにおいてAからG、286位のヌクレオチドにおいてAからC、497位のヌクレオチドにおいてTからC、554位のヌクレオチドにおいてCからT、580位のヌクレオチドにおいてTからC、及び886位のヌクレオチドにおいてAからTという6つのヌクレオチド変異を含む。286位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は38位のアミノ酸をQからPに変化させ、580位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は136位のアミノ酸をLからPに変化させ、886位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は238位のアミノ酸をEからDに変化させる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.68:1であった(表4)。
【0185】
pSE294は、469位のヌクレオチドにおいてTからC、585位のヌクレオチドにおいてTからA、588位のヌクレオチドにおいてGからA、708位のヌクレオチドにおいてGからA、833位のヌクレオチドにおいてCからT、及び1184位のヌクレオチドにおいてGからAという6つのヌクレオチド変異を含む。さらに、173位、174位および175位のヌクレオチドは欠失している。469位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は99位のアミノ酸をFからSに変化させ、585位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は138位のアミノ酸をSからTに変化させ、588位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は139位のアミノ酸をAからTに変化させ、708位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は179位のアミノ酸をGからSに変化させる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.53:1であった(表4)。
【0186】
pSE295は、588位のヌクレオチドにおいてGからA、及び856位のヌクレオチドにおいてTからCという2つのヌクレオチド変異を含む。588位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は139位のアミノ酸をAからTに変化させ、856位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は228位のアミノ酸をMからTに変化させる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.80:1であった(表4)。
【0187】
pSE296は、155位のヌクレオチドにおいてTからC、505位のヌクレオチドにおいてGからT、1039位のヌクレオチドにおいてCからT、1202位のヌクレオチドにおいてCからT、及び1210位のヌクレオチドにおいてTからCという5つのヌクレオチド変異を含む。505位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は111位のアミノ酸をGからVに変化させ、1039位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は289位のアミノ酸をPからLに変化させうる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.73:1であった(表4)。
【0188】
pSE297は、377位のヌクレオチドにおいてGからT、588位のヌクレオチドにおいてGからA、633位のヌクレオチドにおいてAからG、及び1067位のヌクレオチドにおいてAからTという4つのヌクレオチド変異を含む。588位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は139位のアミノ酸をAからTに変化させ、633位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は154位のアミノ酸をKからEに変化させ、1067位のヌクレオチドでのヌクレオチド変化は298位のアミノ酸をQからHに変化させる。このプラスミドを有する細胞によって産生されるB2:B1比は0.67:1であった(表4)。
【0189】
【表4】
Figure 0003884651
【0190】
9. 実施例: 5' 欠失変異株の作製
上記の第5.1項で説明した通り、図1に示されたS.アベルミティリスのヌクレオチド配列(配列番号:1)は、開始部位の可能性がある42位、174位、177位および180位の塩基に4つの異なるGTGコドンを含む。この項では、これらのコドンのうちどれがaveC ORFにおけるタンパク質発現の開始部位として機能するかを明らかにする一助とするための、aveC ORF(図1;配列番号:1)の5'領域における多数の欠失体の作製に関して記載する。
【0191】
5'末端にさまざまな欠失のあるaveC遺伝子の断片をPCR増幅によってS.アベルミティリス染色体DNAから単離した。aveC DNA配列に基づいてPCRプライマーを設計し、ジェノシスバイオテクノロジーズ社(Genosys Biotechnologies, Inc)から入手した。右方向プライマーは
Figure 0003884651
とした。左方向プライマーは
Figure 0003884651
とした。PCR反応は上記の第8.3項における記載の通りに行った。
【0192】
PCR産物を1%アガロースゲル中での電気泳動によって分離し、約1.0Kbまたは約1.1Kbの単一のDNAバンドを検出した。PCR産物をゲルから精製し、製造者の指示に従い、ベクター対挿入物のモル比を1:10として25ngの線状pCR2.1ベクター(Invitrogen)と連結させた。製造者の指示に従って、連結混合物をワンショット(One Shot)(登録商標)コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen)の形質転換に用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、挿入物の存在を制限酵素処理分析およびDNA配列解析によって確認した。これらのプラスミドをpSE190(プライマーD1F1により入手)、pSE191(プライマーD1F2により入手)、pSE192(プライマーD1F3により入手)およびpSE193(プライマーD2F2により入手)と命名した。
【0193】
挿入DNAをそれぞれBamHI/XbaIで消化し、電気泳動によって分離させてゲルから精製して、総DNA濃度1μgにてベクター対挿入物のモル比を1:5として、BamHI/XbaIで消化したシャトルベクターpWHM3と個別に連結させた。連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞の形質転換に用いた。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE194(D1F1)、pSE195(D1F2)、pSE196(D1F3)およびpSE197(D2F2)と命名したこれらのプラスミドをそれぞれ別個に大腸菌DM1株に形質転換し、アンピシリン耐性形質転換体からプラスミドDNAを単離して、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。このDNAをS.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定し、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析して、どのGTG部位がaveCの発現に必要であるかを決定した。この結果、いずれも42位のGTG部位が欠失しているものの174、177および180位の3つのGTG部位を含むpSE194、pSE195およびpSE196のそれぞれは、SE180-11株に形質転換すると通常のアベルメクチン産生が回復したことから、42位にあるGTG部位を除去してもAveC活性には影響を与えないことが示された。4つのGTG部位がすべて欠失したpSE197によりSE180-11株を形質転換しても通常のアベルメクチン産生は回復しなかった(表5)。
【0194】
【表5】
Figure 0003884651
【0195】
10. 実施例: S. ハイグロスコピカスおよび S. グリセオクロモゲネス由来の aveC 相同体のクローニング
本発明により、アベルメクチンまたはミルベマイシンを産生する他のストレプトミセス種由来のaveC相同体遺伝子の同定およびクローニングが可能となる。その例として、S.ハイグロスコピカス(FERM BP-1901)ゲノムDNAのコスミドライブラリーを上記のS.アベルミティリス由来の1.2Kb aveCプローブとハイブリダイズさせた。強くハイブリダイズするいくつかのコスミドクローンが同定された。これらのコスミドから染色体DNAを単離し、aveCプローブとハイブリダイズした4.9KbのKpnI断片を同定した。このDNAの配列を決定し、S.アベルミティリスのaveC ORFと明らかな相同性を有するORF(配列番号:3)を同定した。S.ハイグロスコピカスaveC相同体ORFから推定されるアミノ酸配列(配列番号:4)を図6に示している。
【0196】
さらに、S.グリセオクロモゲネスゲノムDNAのコスミドライブラリーを上記のS.アベルミティリス由来の1.2Kb aveCプローブとハイブリダイズさせた。強くハイブリダイズするいくつかのコスミドクローンが同定された。これらのコスミドから染色体DNAを単離し、aveCプローブとハイブリダイズした5.4KbのPstI断片を同定した。このDNAの配列を決定し、S.アベルミティリスのaveC ORFと有意な相同性を有するaveC相同体のORFの一部を同定した。推定されるアミノ酸配列(配列番号:5)を図6に示している。
【0197】
S.ハイグロスコピカスおよびS.グリセオクロモゲネス由来のDNA配列およびアミノ酸配列の解析により、これらの領域がお互いにかつS.アベルミティリスaveC ORFとも有意な相同性(アミノ酸レベルで約50%の配列同一性)を有し、AveC遺伝子産物を共有することが示された(図6)。
【0198】
11. 実施例: ermE プロモーターの後方に aveC 遺伝子を有するプラスミドの構築
pSE186由来の1.2KbのaveC ORFを、シャトルベクターpWHM3のKpnI/BamHI部位に300bpのermEプロモーターがKpnI/BamHI断片として挿入されているシャトルベクターpWHM3であるpSE34中にサブクローニングした(Wardら、1986、Mol. Gen. Genet. 203:468〜478を参照されたい)。pSE186をBamHIおよびHindIIIで消化し、消化産物を電気泳動によって分離させて1.2Kbの断片をアガロースゲルから単離し、BamHIおよびHindIIIで消化したpSE34と連結させた。製造者の指示に従って連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、1.2Kb挿入物の存在を制限酵素処理分析によって確認した。pSE189と命名したこのプラスミドを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離した。pSE189により、S.アベルミティリス1100-SC38株のプロトプラストの形質転換を行った。1100-SC38株チオストレプトン耐性形質転換体を単離し、発酵産物のHPLC分析により分析した。
【0199】
pSE189を含むS.アベルミティリス1100-SC38株の形質転換体では、1100-SC38株の場合と比べて(約34:1)、産生されるアベルメクチンシクロヘキシル-B2:アベルメクチンシクロヘキシル-B1の比が変化し(約3:1)、pSE119により形質転換された1100-SC38株と比べてアベルメクチン総産生量が約2.4倍に増加した(表6)。
【0200】
野生型S.アベルミティリス株のプロトプラストにもpSE189を形質転換した。チオストレプトン耐性形質転換体を単離し、発酵産物のHPLC分析によって分析した。pSE189により形質転換された野生型S.アベルミティリスによって産生されるアベルメクチンの総量は、pSE119により形質転換された野生型S.アベルミティリスと比べて約2.2倍に増加した(表6)。
【0201】
【表6】
Figure 0003884651
【0202】
12. 実施例: S. アベルミティリス aveC ORF および S. ハイグロスコピカス aveC 相同 体の双方に由来する配列を含むキメラ型プラスミド
S.ハイグロスコピカスaveC相同体の564bp部分によってS.アベルミティリスaveC ORFの564bpの相同部分が置換されたものを含む、pSE350と命名したハイブリッドプラスミドを以下の通りに作製した(図7)。pSE350は、両方の配列に保存されているBsaAI制限部位(aveC 225位)およびS.アベルミティリスaveC遺伝子に存在するKpnI制限部位(aveC 810位)を用いて作製した。右方向プライマー
Figure 0003884651
および左方向プライマー
Figure 0003884651
(Genosys Biotechnologiesにより供給)を用い、上記の第7.1.10項に記載したPCR条件を用いたPCRにより、KpnI部位をS.ハイグロスコピカスDNA中に導入した。PCR産物をBsaAIおよびKpnIで消化し、1%アガロースゲル中での電気泳動によって断片を分離させ、564bpのBsaAI/KpnI断片をゲルから単離した。pSE179(上記の第7.1.10項に記載)をKpnIおよびHindIIIで消化し、1%アガロースゲル中での電気泳動によって断片を分離させ、約4.5Kbの断片をゲルから単離した。pSE179をHindIIIおよびBsaAIで消化し、1%アガロースゲル中での電気泳動によって断片を分離させ、0.2KbのBsaAI/HindIII断片をゲルから単離した。約4.5KbのHindIII/KpnI断片、約0.2KbのBsaAI/HindIII断片およびS.ハイグロスコピカス由来の564bpのBsaAI/KpnI断片を三者間連結によって互いに連結させ、連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離し、正しい挿入物の存在をKpnIおよびAvaIを用いる制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドをHindIIIおよびXbaIで消化して1.2Kb挿入物を遊離させ、続いてこれをHindIIIおよびXbaIで消化したpWHM3と連結させた。連結混合物をコンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離して、正しい挿入物の存在をHindIIIおよびAvaIを用いる制限酵素処理分析によって確認した。このプラスミドDNAを大腸菌DM1株に形質転換し、プラスミドDNAをアンピシリン耐性形質転換体から単離して、正しい挿入物の存在を制限酵素処理分析およびDNA配列解析によって確認した。このプラスミドをpSE350と命名し、S.アベルミティリスSE180-11株のプロトプラストの形質転換に用いた。SE180-11株のチオストレプトン耐性形質転換体を単離し、エリスロマイシン耐性の存在を判定して、Thior Ermr形質転換体を発酵産物のHPLC分析によって分析した。この結果、S.アベルミティリス/S.ハイグロスコピカスのハイブリッドプラスミドを含む形質転換体の平均B2:B1比は約109:1であることが示された(表7)。
【0203】
【表7】
Figure 0003884651
【0204】
生物材料の寄託
以下の生物材料を1998年1月29日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)、12301 Parklawn Drive、Rockville、MD、20852、USAに寄託し、以下のアクセッション番号の指定を受けた:
Figure 0003884651
【0205】
以上に引用したすべての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0206】
本発明の範囲は本明細書で記載した特定の態様によっては制限されず、それらは本発明の個々の面を単に例示したものであり、機能的に等価な方法および組成物も本発明の範囲に含まれる。実際に、以上の説明および添付の図面によって、当業者には本明細書で提示および記載したものに加えて本発明のさまざまな変更が明らかになると考えられる。このような変更も添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 S.アベルミティリスaveC ORFを含むDNA配列(配列番号:1)および推定アミノ酸配列(配列番号:2)である。
【図2】 S.アベルミティリスのaveC遺伝子の全ORFを含むプラスミドベクターpSE186(ATCC 209604)である。
【図3】 S.アベルミティリスのaveC ORF中に挿入されたサッカロポリスポラ・エリスリア(Sacc. erythraea)のermE遺伝子を含む、遺伝子置換ベクターpSE180(ATCC 209605)である。
【図4】 S.アベルミティリス由来のアベルメクチンポリケチドシンターゼ遺伝子クラスターのBamHI制限酵素地図を、重複する同定された5つのコスミドクローン(すなわち、pSE65、pSE66、pSE67、pSE68、pSE69)とともに示すものである。pSE118およびpSE119の関連も示している。
【図5Aから図5D】 S.アベルミティリス菌株によって産生された発酵産物のHPLC分析である。ピークの定量化は標準量のシクロヘキシルB1との比較によって行った。シクロヘキシルB2の滞留時間は7.4分〜7.7分、シクロヘキシルB1の滞留時間は11.9分〜12.3分であった。図5Aは、不活性化aveC ORFを有するS.アベルミティリスSE180-11株である。図5Bは、pSE186(ATCC 209604)により形質転換されたS.アベルミティリスSE180-11株である。図5Cは、pSE187により形質転換されたS.アベルミティリスSE180-11株である。図5Dは、pSE188により形質転換されたS.アベルミティリスSE180-11株である。
【図6】 S.アベルミティリスのaveC ORF(配列番号:2)、S.グリセオクロモゲネス(S. griseochromogenes)由来のaveC相同体の部分ORF(配列番号:5)およびS.ハイグロスコピカス由来のaveC相同体ORF(配列番号:4)によってコードされる推定アミノ酸配列の比較である。太字のバリン残基はタンパク質の推定開始部位である。保存された残基を、3つの配列すべてにおける相同性に関しては大文字で示し、3つの配列中2つにおける相同性に関しては小文字で示している。アミノ酸配列は、約50%の配列同一性を有する。
【図7】 S.アベルミティリスaveC ORF中のBsaAI/KpnI部位に挿入されたS.ハイグロスコピカスaveC相同体遺伝子由来の564bp BsaAI/KpnI断片を含む、ハイブリッドプラスミド構築物である。

Claims (45)

  1. S.アベルミティリスaveC対立遺伝子、プラスミドpSE186(ATCC
    209604)のS.アベルミティリスAveC遺伝子産物をコードする配列、もしくは、図1に示されたS.アベルミティリスのaveC ORFのヌクレオチド配列(配列番号:1)、または、それらの縮重変異体と、以下の変異を有する点を除いて同じであるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、
    当該ポリヌクレオチド分子は、配列番号:2において、少なくとも以下の1つ又は複数のアミノ酸置換を与える変異を含み、
    (a)D48E/A89T;
    (b)S138T/A139T/G179S;
    (c)Q38P/L136P/E238D;
    (d)F99S/S138T/A139T/G179S;
    (e)A139T/M228T;
    (f)G111V/P289L;及び
    (g)A139T/K154E/Q298H
    野生型aveC対立遺伝子のみを発現するストレプトミセス・アベルミティリスATCC 53692株の細胞と比較して、当該野生型aveC対立遺伝子が不活性化されておりかつ前記変異型ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を発現するストレプトミセス・アベルミティリスATCC
    53692株の細胞が、減少したシクロヘキシルB2アベルメクチン:シクロヘキシルB1アベルメクチン比のアベルメクチンを産生する
    ポリヌクレオチド分子。
  2. D48E/A89TをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の317位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、および配列番号:1の438位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  3. 配列番号:1の353位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのCからAへの塩基変化、および配列番号:1の1155位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化をさらに含む、請求項2記載のポリヌクレオチド分子。
  4. S138T/A139T/G179SをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の585位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、および配列番号:1の708位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  5. 配列番号:1の272位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化をさらに含む、請求項4記載のポリヌクレオチド分子。
  6. Q38P/L136P/E238DをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の286位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのAからCへの塩基変化、配列番号:1の580位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、および配列番号:1の886位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのAからTへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  7. 配列番号:1の24位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのAからGへの塩基変化、配列番号:1の497位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、および配列番号:1の554位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化をさらに含む、請求項6記載のポリヌクレオチド分子。
  8. F99S/S138T/A139T/G179SをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の173位、174位および175位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位での3塩基対欠失、配列番号:1の469位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、配列番号:1の585位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、ならびに配列番号:1の708位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  9. 配列番号:1の833位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化、および配列番号:1の1184位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化をさらに含む、請求項8記載のポリヌクレオチド分子。
  10. A139T/M228TをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、および配列番号:1の856位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  11. G111V/P289LをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の505位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからTへの塩基変化、および配列番号:1の1039位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  12. 配列番号:1の155位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、配列番号:1の1202位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化、および配列番号:1の1210位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化をさらに含む、請求項11記載のポリヌクレオチド分子。
  13. A139T/K154E/Q298HをコードするaveC配列における変異が、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、配列番号:1の633位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのAからGへの塩基変化、および配列番号:1の1067位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのAからTへの塩基変化を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド分子。
  14. 配列番号:1の377位のヌクレオチドに対応するヌクレオチド部位でのGからTへの塩基変化をさらに含む、請求項13記載のポリヌクレオチド分子。
  15. 請求項1記載のポリヌクレオチド分子を含む組換えベクター。
  16. 請求項1記載のポリヌクレオチド分子または請求項15記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
  17. ストレプトミセス細胞である、請求項16記載の宿主細胞。
  18. S.アベルミティリス新規株の作製方法であって、
    S.アベルミティリスの菌株の細胞において、配列番号:2における以下の(a)から(g)の各アミノ酸置換の組み合わせから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸置換の組み合わせをコードするようにaveC対立遺伝子を変異させ、当該aveC対立遺伝子が変異しているS.アベルミティリス株の細胞において、野生型aveC対立遺伝子のみを代わりに発現する同じS.アベルミティリス株の細胞によって産生されるシクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1比より減少したシクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1比のアベルメクチンを産生させる作製方法:
    (a)D48E/A89T;
    (b)S138T/A139T/G179S;
    (c)Q38P/L136P/E238D;
    (d)F99S/S138T/A139T/G179S;
    (e)A139T/M228T;
    (f)G111V/P289L;および
    (g)A139T/K154E/Q298H。
  19. D48E/A89TをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の317位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、および配列番号:1の438位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  20. 配列番号:1の353位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからAへの塩基変化、および配列番号:1の1155位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化を導入する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。
  21. S138T/A139T/G179SをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の585位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、および配列番号:1の708位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  22. 配列番号:1の272位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を導入する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
  23. Q38P/L136P/E238DをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の286位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからCへの塩基変化、配列番号:1の580位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、および配列番号:1の886位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからTへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  24. 配列番号:1の24位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからGへの塩基変化、配列番号:1の497位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、および配列番号:1の554位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化を導入する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
  25. F99S/S138T/A139T/G179SをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の173位、174位および175位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位での3塩基対欠失、配列番号:1の469位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、配列番号:1の585位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、ならびに配列番号:1の708位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  26. 配列番号:1の833位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化、および配列番号:1の1184位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を導入する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
  27. A139T/M228TをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、および配列番号:1の856位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  28. G111V/P289LをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の505位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからTへの塩基変化、および配列番号:1の1039位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  29. 配列番号:1の155位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、配列番号:1の1202位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化、および配列番号:1の1210位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化を導入する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
  30. A139T/K154E/Q298HをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、配列番号:1の633位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからGへの塩基変化、および配列番号:1の1067位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからTへの塩基変化を含む、請求項18記載の方法。
  31. 配列番号:1の377位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからTへの塩基変化を導入する段階をさらに含む、請求項30記載の方法。
  32. 配列番号:2において、少なくとも以下の1つ又は複数のアミノ酸置換を有するAveC遺伝子産物をコードする変異型aveC対立遺伝子を有するストレプトミセス・アベルミティリス細胞であって、
    (a)D48E/A89T;
    (b)S138T/A139T/G179S;
    (c)Q38P/L136P/E238D;
    (d)F99S/S138T/A139T/G179S;
    (e)A139T/M228T;
    (f)G111V/P289L;及び
    (g)A139T/K154E/Q298H
    野生型aveC対立遺伝子のみを発現する同じS.アベルミティリス株の細胞によって産生される比より減少したシクロヘキシルB2:シクロヘキシルB1比のアベルメクチンを産生する細胞。
  33. D48E/A89TをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の317位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、および配列番号:1の438位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  34. D48E/A89TをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の353位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからAへの塩基変化、および配列番号:1の1155位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化をさらに含む、請求項33記載のS.アベルミティリス細胞。
  35. S138T/A139T/G179SをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の585位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、および配列番号:1の708位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  36. S138T/A139T/G179SをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の272位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化をさらに含む、請求項35記載のS.アベルミティリス細胞。
  37. Q38P/L136P/E238DをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の286位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからCへの塩基変化、配列番号:1の580位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、および配列番号:1の886位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからTへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  38. Q38P/L136P/E238DをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の24位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからGへの塩基変化、配列番号:1の497位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、および配列番号:1の554位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化をさらに含む、請求項37記載のS.アベルミティリス細胞。
  39. F99S/S138T/A139T/G179SをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の173位、174位および175位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位での3塩基対欠失、配列番号:1の469位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、配列番号:1の585位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからAへの塩基変化、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、ならびに配列番号:1の708位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  40. F99S/S138T/A139T/G179SをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の833位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化、および配列番号:1の1184位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化をさらに含む、請求項39記載のS.アベルミティリス細胞。
  41. A139T/M228TをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、および配列番号:1の856位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  42. G111V/P289LをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の505位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからTへの塩基変化、および配列番号:1の1039位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  43. G111V/P289LをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の155位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化、配列番号:1の1202位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのCからTへの塩基変化、および配列番号:1の1210位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのTからCへの塩基変化をさらに含む、請求項42記載のS.アベルミティリス細胞。
  44. A139T/K154E/Q298HをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の588位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからAへの塩基変化、配列番号:1の633位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからGへの塩基変化、および配列番号:1の1067位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのAからTへの塩基変化を含む、請求項32記載のS.アベルミティリス細胞。
  45. A139T/K154E/Q298HをコードするaveC対立遺伝子における変異が、配列番号:1の377位のヌクレオチドに対応するaveC対立遺伝子中のヌクレオチド部位でのGからTへの塩基変化をさらに含む、請求項44記載のS.アベルミティリス細胞。
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