JP2004275174A - 黒酢粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】黒酢に米粉を添加した後、乾燥処理を行うことを特徴とする黒酢粉末の製造方法を提供する。
【効果】本発明の黒酢粉末の製造方法により、吸湿性が低く、ブロッキングすることのない安定した粉末状態を維持する黒酢粉末を供給することができた。また、この黒酢粉末は食品中への分散性に優れ、各種飲食品に配合して利用することが可能である。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、黒酢の粉末化において米粉を利用することを特徴とする黒酢粉末の製造方法であり、黒酢の利用範囲を拡げるものである。
【0002】
【従来の技術】
黒酢は、南九州の伝統的な醸造方法「壺づくり」でつくられる酢である。普通の米酢と相違する点は、薩摩焼の大がめに、こうじと米と水を入れて種酢を加え、和紙で密封し、戸外で太陽熱による自然発酵をさせる点にある。酢になるには約半年を要するが、1〜3年程度で特に味がまろやかとなり、そのままでも飲める程で、健康酢として毎日さかずきに2〜3杯食後に飲用される。(例えば、非特許文献1参照)
【非特許文献1】
健康食品市場の全容p.175−176(1983)
【0003】
原料としては、米(玄米、白米等)及び水を基本とするが、小麦、大麦、玄麦、ヒエ、アワ、キビ、大豆、酵母、こうじ、たね酢等を添加することもある。
【0004】
黒酢の栄養素にはアミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル等があり、特に必須アミノ酸をバランスよく含んでいる。栄養的に優れているだけでなく、酢の香味は大脳の食欲中枢を刺激して食欲を増進させ、同時に消化液の分泌を促して消化吸収をよくする。また酢の殺菌力は非常に強く、ほとんどの菌を死滅することができ、調理に利用する他、胃の中に入ってからも殺菌作用を有するため、腸内細菌のバランスを良くし、有害菌の活動を抑制するといわれている。
【0005】
しかし、黒酢は、特有の発酵臭や酸味を有することから、そのまま飲料や調味料とすることは困難であった。また、安定性や使用性の面からも固形化した黒酢の製造方法が求められていた。例えば、黒酢そのものを凍結乾固させ健康食品とすること(例えば、特許文献1参照)や、黒酢にデキストリン類を添加した後、乾燥処理して製造される黒酢乾燥食品(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−120320号公報
【特許文献2】特開2000−152775号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の製造方法にて得られる黒酢固形物は分散性、安定性の面から必ずしも満足できるものではなかった。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明者らは、分散性、且つ安定性に優れる黒酢固形物、特に黒酢粉末の製造方法を見つけるべく、種々の賦形剤を用いて研究を行った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は黒酢に米粉を添加した後、乾燥処理を行うことを特徴とする黒酢粉末の製造方法を見い出すことにより上記課題を解決するものである。
また更に、上記黒酢の固形分換算量を1とし、その1.5倍量以上の米粉を添加することを特徴とするものである。
【0009】
本発明品を利用することにより、黒酢本来の風味を損なうことなく、分散性、保存安定性に優れた黒酢粉末を提供するに至った。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する「黒酢」とは、南九州の伝統的な醸造方法「壺づくり」でつくられる酢であり、生産地により福山酢、アマン等の名称で扱われている他、原料により玄米黒酢、大麦黒酢等と呼ばれている。原料としては、米(玄米、白米等)及び水を基本とするが、小麦、大麦、玄麦、ヒエ、アワ、キビ、大豆、酵母、こうじ、たね酢等を添加することもある。本発明は、これら黒酢の製法や生産地、名称等を特定するものではなく一般的に黒酢として市販されているものを用いることができる。
【0011】
本発明で使用する「米粉」とは、うるち米やもち米として広く利用されているイネ(アジアイネ)Oryza sativa L.(Gramineae)の種子であるコメ(米)を粉砕し、粉末化としたものであり、この他、アフリカイネ(O.glaberrima Steud.)等の同属植物の種子を用いることもでき、品種,産地、栽培方法等を特定するものではない。一般的に米粉として市販されているものでは、うるち米を水洗、乾燥させてから粉末にした新粉,上新粉、もち米を水洗、乾燥させてから粉末にしたもち粉、もち米を水洗、乾燥、粉末にした後、水びきし、沈殿したものを乾燥させた白玉粉,寒ざらし粉,観心寺粉、もち米を水に浸しておき、これを蒸してから乾燥させ、粉にひいたものが道明寺粉,もち米で餅をつくり、焼き上げ製粉した味甚粉,寒梅粉,落雁粉、うるち米ともち米を混合しただんご粉といったものを用いることができる他、精米処理の際に生ずる米糠も用いることができる。
【0012】
本発明の黒酢粉末の製造方法においては、黒酢の固形分換算量(蒸発残分)を1としてその1.5倍以上の米粉を添加する。米粉の添加量がこれ以下であると混合物がペースト状となり、良好な粉末となりえない。尚、好ましくは米粉の添加量は黒酢固形分の2倍前後とする。
【0013】
また、本発明では必要に応じて賦形剤を添加することができる。例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉等の澱粉類、片栗粉、葛粉、蕨粉、きな粉、大豆粉、小豆粉、黍粉、粟粉、稗粉、そば粉、粉末やまのいも、小麦粉、メリケン粉、小麦胚芽、ふすま、コーンスターチ、モチトウモロコシ、分岐デキストリン、デキストリン、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン、結晶セルロース、水溶性食物繊維、ビール酵母、パン酵母、コラーゲン、乳糖等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。
【0014】
黒酢はそのまま使用することができるが、あらかじめ濃縮処理を施しても良い。この際、蒸発残分が10%以上となるまで濃縮させるのが好ましい。
【0015】
黒酢と米粉の混合物の乾燥方法は、通常行われうる乾燥方法を用いることができるが、特に凍結乾燥が風味が損なわれることもなく好ましい。この後、必要に応じ、粉砕処理を行うことができる。
【0016】
本発明により得られる黒酢粉末の応用しうる剤型・形態は任意であり、粉末状の他、顆粒状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、グミ状、ガム状、キャンディー状、丸剤、錠剤状、棒状、板状、液状、クリーム状、軟膏状、シート状等の剤型・形態をとることができる。
【0017】
本発明において得られる黒酢粉末は、そのまま食品、健康食品、調味料として利用できる他、各種飲食品へ配合することができる。配合量としては特に規定するものではなく、飲食品の種類、品質、期待される作用の程度によって若干異なるが、通常、製剤全量中、固形分換算して、0.01質量%以上(以下、%で表わす)、好ましくは1.0%以上が良い。
【0018】
飲食品類としては、口腔用組成物(ガム、キャンデー等)やかまぼこ、ちくわ等の加工水産ねり製品、ソーセージ、ハム等の畜産製品、洋菓子類、和菓子類、生めん、中華めん、ゆでめん、ソバ等のめん類、ソース、醤油、タレ、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレー粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、漬物、そう菜、ふりかけ、又は各種野菜・果実の缶詰・瓶詰等加工野菜・果実類、チーズ、バター、ヨーグルト等乳製品、みそ汁、スープ、果実ジュース、野菜ジュース、乳清飲料、清涼飲料、酒類等の飲料、その他、健康食品等が挙げられ、一般的な飲食品類への使用が可能である。また、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等への使用も可能である。
【0019】
尚、本発明において得られる黒酢粉末品、更にこれを配合した飲食品は、黒酢本来の効果及び風味を損なわない範囲内で、飲食品類に使用される成分や添加剤を併用して製造することができる。
【0020】
【実施例】
以下に、製造例、試験例、処方例を挙げて説明するが、本発明がこれらに制約されるものではない。
【0021】
(製造例1)
黒酢100kg(蒸発残分1.31%)を蒸発残分が約10%となるまで減圧濃縮し、95℃にて3時間滅菌処理を行う。この黒酢濃縮物13.1kgに対して米粉2.62kgを添加し凍結乾燥処理を行う。更に必要に応じ、粉砕処理を行い黒酢粉末を約4.0kg得る。
【0022】
(製造例2)
玄米黒酢100kg(蒸発残分2.12%)を蒸発残分が約10%となるまで減圧濃縮し、90℃にて3時間滅菌処理を行う。この黒酢濃縮物21.2kgに対して米粉4.24kgを添加し凍結乾燥処理を行う。更に必要に応じ、粉砕処理を行い黒酢粉末を約6.0kg得る。
【0023】
(製造例3)
玄米黒酢100kg(蒸発残分2.12%)を蒸発残分が約10%となるまで減圧濃縮し、90℃にて3時間滅菌処理を行う。この黒酢濃縮物21.2kgに対して米粉4.24kg、タピオカ澱粉1.06kgを添加し凍結乾燥処理を行う。更に必要に応じ、粉砕処理を行い黒酢粉末を約7.0kg得る。
【0024】
(試験1)各種賦形剤による黒酢粉末の製造
(試験方法)
本発明における主要成分である米粉と、一般的に用いられる賦形剤を用いて黒酢粉末の製造方法の評価を行った。
比較例として本発明において使用する米粉の代わりに、各種賦形剤を用い、前記製造例2の製造方法にて黒酢粉末の製造を行った。賦形剤としては、タピオカ澱粉、コーンスターチ、モチトウモロコシ、分岐デキストリン、β−サイクロデキストリン(β−CD)、結晶セルロース、水溶性植物繊維を使用した。
また、米粉と他の賦形剤の混合物も使用した。混合物としては米粉と水溶性食物繊維を1:1にて混合したものを用い同様に製造を行った。
各製造方法及び製造物の評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(試験結果)
表1の通り、本発明の米粉を用いた製造方法においてのみ、吸湿性が低く、ブロッキングすることのない安定した粉末状態を維持する黒酢粉末を供給することができた。
【0027】
(試験2)安全性試験
(1)急性毒性試験
製造例1〜2によって得られた黒酢粉末を試験前、4時間絶食させたddy系マウス(雄性及び雌性,1群5匹,5週齢)に2,000mg/kg量経口投与し、毒性症状の発現、程度等を経時的に観察した。その結果、すべてのマウスにおいて14日間何等異状を認めず、又、解剖の結果も異状がなかった。よって、LD50は2,000mg/kg以上と判定された。
【0028】
(処方例)各種飲食品への応用
処方例は各製品の製造における常法により製造したもので良く、配合量のみを示した。又、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
いずれの飲食品においても本発明の製造方法にて得られた黒酢粉末は良好な分散性を発揮し、かつ黒酢本来の風味、効果を失うことはなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明は黒酢に米粉を添加した後、乾燥処理を行うことを特徴とする黒酢粉末の製造方法を提供することにより、吸湿性が低く、ブロッキングすることのない安定した粉末状態を維持する黒酢粉末を供給することができた。また、この黒酢粉末は食品中への分散性に優れ、各種飲食品に配合して利用することが可能である。
Claims (2)
- 黒酢に米粉を添加した後、乾燥処理を行うことを特徴とする黒酢粉末の製造方法。
- 黒酢の固形分換算量を1とし、その1.5倍量以上の米粉を添加することを特徴とする請求項第1項記載の黒酢粉末の製造方法。
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