JP2004337132A - 苦渋味抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の苦渋味抑制剤は、CFを有効成分としたこれまでにない全く新しい苦渋味抑制剤であり、苦渋味を有する飲食品をはじめとする各種の口腔適用対象物に幅広く応用できる汎用性が高いものである。本発明の苦渋味抑制剤は、香りに何らの影響を与えることなく、その苦味、渋味、えぐみ、収斂味などの口に含んだ際に感じる嫌味を抑え、対象物に良好な風味を与えるものであり、乳児から老人まで幅広い層の嗜好を満足させるに足る作用を有する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラクトース分子がβ−2,1結合で環状に結合して構成される環状イヌロオリゴ糖であるシクロフラクタンを有効成分とする苦渋味抑制剤、苦渋味抑制方法および有効量のシクロフラクタンを配合することにより苦渋味が抑制された口腔適用対象物に関する。より詳しくは、本発明は、苦渋味を有する飲食品をはじめとする各種の口腔適用対象物に対し、有効成分としてシクロフラクタン、中でも7個のフルクトース分子からなる環状イヌロヘプタオースを配合することにより、香りに何らの影響を与えることなく、その苦味、渋味、えぐみ、収斂味などの口に含んだ際に感じる嫌味を抑え、対象物に良好な風味を与えるものである。
【0002】
【従来の技術】
飲食品の苦渋味は嗜好をそそる上でなくてはならぬ味の要素ではあるが、一方、苦渋味が強すぎると不快な味が残り、幼児、子供、病人、老人などから敬遠されがちである。そのため、こういった過度の苦渋味を抑制して飲食しやすい苦渋味含有飲食品を提供し、誰もが好む嗜好性に富んだ飲食品の普及を促すことが期待されている。
このような事情から、従来より飲食品の苦渋味を改善する方法が種々提案されており、そのいくつかを紹介すると、例えば、特許文献1には、茶抽出液に水蒸気賦活炭を作用させ、あるいはβ−シクロデキストリンの存在下に活性炭を作用させて得ることのできる、苦味・渋味がほとんどなく、しかもカフェイン含量の少ない飲食物およびその製造方法が開示されている。また、特許文献2には、糖アルコール類を茶類飲料の製造工程のいずれかの工程で添加することにより、茶類特有の渋味・苦味を緩和した茶類飲料およびその製造方法が開示されている。また、特許文献3には、糖アルコールを0.2〜3重量%含有してなることを特徴とする苦味・渋味が改善された茶飲料が開示されている。また、特許文献4には、甘蔗由来の抽出物を含有した苦味・渋味などを含む呈味の改善された飲食品または口腔用組成物が開示されている。また、特許文献5には、飲料にプロタミンを添加して苦味・渋味を改良する方法が開示されている。また、特許文献6には、コーヒー豆を酵素を用いて加水分解し、不溶物を除去した後、加水分解物を吸着剤と接触させて精製して得られるコーヒー豆加水分解物からなることを特徴とする苦味および/または渋味抑制剤が開示されている。
しかしながら、これまでに提案されたいずれの方法よりも、苦渋味を有する飲食品をはじめとする各種の口腔適用対象物に幅広く応用できる汎用性が高い苦渋味抑制剤が待ち望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−4919号公報
【特許文献2】
特開平11−253102号公報
【特許文献3】
特開平7−274829号公報
【特許文献4】
特開2002−34471号公報
【特許文献5】
特開平6−153875号公報
【特許文献6】
特開2000−321116号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、従来の技術で知られていない新たな物質を有効成分とした、苦渋味を有する飲食品をはじめとする各種の口腔適用対象物に幅広く応用できる汎用性が高い苦渋味抑制剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、フラクトース分子がβ−2,1結合で環状に結合して構成される環状イヌロオリゴ糖であるシクロフラクタンが、苦渋味を有する飲食品をはじめとする各種の口腔適用対象物に対し、苦渋味抑制剤として有効に機能し、香りに何らの影響を与えることなく、その苦渋味を抑制して良好な風味を与える作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
シクロフラクタンの機能性についての知見は現在のところまだわずかである。それらのうち代表的なものを挙げれば、例えば、特開平5−76756号公報には、金属イオンの分析や分離に用いる金属イオン捕捉剤としてシクロフラクタンが有用であることが記載されている。また、特開平7−46956号公報には、シクロフラクタンを添加したパン生地は長期間の冷凍保存が可能であり、シクロフラクタンを添加したパン生地から製造されるパン類はパン体積やクラムの柔らかさに優れることが記載されている。また、特開平7−53347号公報には、シクロフラクタンを有効成分として含有する皮膚化粧料が角質層水分低下に基づく乾燥性皮膚を回復させる効果を有することが記載されている。また、特開平8−133986号公報には、リポソーム凍結乾燥製剤における凍結安定化剤としてシクロフラクタンが有用であることが記載されている。しかしながら、シクロフラクタンが苦渋味を有する口腔適用対象物に対して苦渋味抑制剤として機能することは、これまでに報告された例はなく、また、従来の技術からは想起することができない全く新しい知見である。
【0006】
即ち、本発明の苦渋味抑制剤は、請求項1記載の通り、シクロフラクタンを有効成分とするものである。
また、請求項2記載の苦渋味抑制剤は、請求項1記載の苦渋味抑制剤において、シクロフラクタンが環状イヌロヘプタオースである。
また、本発明の苦渋味を有する口腔適用対象物の苦渋味抑制方法は、請求項3記載の通り、有効量のシクロフラクタンを配合することによるものである。
また、請求項4記載の苦渋味抑制方法は、請求項3記載の苦渋味抑制方法において、口腔適用対象物が飲食品である。
また、本発明の口腔適用対象物は、請求項5記載の通り、有効量のシクロフラクタンを配合することにより苦渋味が抑制されたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において苦渋味抑制剤の有効成分として機能するシクロフラクタン(以下「CF」と略称する)とは、フラクトース分子がβ−2,1結合で環状に結合して構成される環状イヌロオリゴ糖を意味し、6個のフルクトース分子からなる環状イヌロヘキサオース(以下「CF6」と略称する)、7個のフルクトース分子からなる環状イヌロヘプタオース(以下「CF7」と略称する)、8個のフルクトース分子からなる環状イヌロオクタオース(以下「CF8」と略称する)などが知られている。これらは全て白色粉末であり、水に対する溶解性が極めて高く、含水有機溶媒などにも若干は溶解する。CFは、例えば、キクイモ、チコリ、ゴボウ、ダリアなどのキク科、ユリ科、アヤメ科、ラン科などの植物の根、根茎から得られる炭水化物の主成分であるイヌリンに、環状イヌロオリゴ糖生成酵素であるシクロイヌロオリゴサッカライド フラクタノトランスフェラーゼ(以下「CFTase」と略称する)を作用させることにより取得することができる。
【0008】
以下にCFの取得方法および精製方法について詳しく記載する。CFの取得に必要なCFTaseは、バチルス マセランス(Bacillus macerans)に属するCFC1(KIM HWA−Young and YONG−JIN CHOI, J. Microbiol. Biotechnol, vl.8, no.3, p.251−257, 1998)、バチルス サーキュランス(Bacillus circulans)に属するOKUMZ 31B(Mishio Kawamura and Takao Uchiyama, Carbohydr Res, vl.260, p.297−304, 1994)、バチルス サーキュランスに属するMCI−2554(Sachiko Kushibe and Kaori Mitsui, Biosci. Biotech. Biochem., vl.59, no.1, p31−34, 1995、特開平7−41500号公報)、パエニバチルス ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)に属するMG−CF6(FERM P−19158)などのCFTase生産微生物を用いて生産させることができる。CFは、このようなCFTase生産微生物をイヌリンを含む培地で培養した後、遠心分離などを用いて除菌し、その培養上清液から取得することができる。また、CFは、CFTase生産微生物の培養上清液から単離した粗CFTaseや高精製CFTaseを別途イヌリンに作用させることで取得することもできる。このような方法にて取得されるCFは、CF6やCF7やCF8などからなるCF混合物であるが、これらは活性炭カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過(川村三志夫、内山喬夫、澱粉科学、第39巻、p.109−116, 1992、KIM HWA−Young et al., J. Microbiol. Biotechnol, vol.6, no.6, p.397−401, 1996)などにより、分離・精製することができる。
【0009】
本発明の苦渋味抑制剤は、上記のような方法にて取得したCF混合物をそのまま有効成分として用いてもよいし、分離・精製した単一CF化合物を用いてもよいし、2種類以上の単一CF化合物を所望する混合比で混合して用いてもよく、いずれの用い方であっても、苦渋味抑制効果を十分発揮することができる。CFの中でも、CF7の苦渋味抑制効果がとりわけ優れているので、苦渋味抑制剤の主成分としてはCF7を用いることが好ましい。
【0010】
本発明の苦渋味抑制剤は、苦渋味を有する各種の口腔適用対象物に有効量を配合することとで、優れた苦渋味抑制効果を発揮する。本発明において、苦渋味を有する口腔適用対象物とは、苦渋味、即ち、苦味、渋味、えぐみ、収斂味などの口に含んだ際に感じる嫌味を有する飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などを意味するが、口腔適用対象物はこれらに限定されるものではない。
【0011】
苦渋味を有する口腔適用対象物の形態は、水溶液や混濁物や乳化物などの液状形態であっても、ゲル状やペースト状の半固形状形態であっても、粉末や顆粒やカプセルやタブレットなどの固形状形態であってもよい。
【0012】
苦渋味を有する飲食品としては、例えば、苦渋味を有する即席食品類(即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズドライ食品など)、炭酸飲料、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)の果汁や果汁飲料や果汁入り清涼飲料、柑橘類の果肉飲料や果粒入り果実飲料、トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アルパラガスなどの野菜を含む野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、タバコなどの嗜好飲料・嗜好品類、パン、マカロニ・スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉・パン粉、ギョーザの皮などの小麦粉製品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子などの菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料などの基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類などの複合調味料・食品類、バター、マーガリン類、マヨネーズ類、植物油などの油脂類、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリームなどの乳・乳製品、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品などの冷凍食品、水産缶詰め・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、つくだ煮類などの水産加工品、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物・煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)などの農産加工品、ベビーフード、ふりかけ・お茶漬けのりなどの市販食品などが挙げられる。苦渋味を有する飲食品は、それ自体が苦渋味を有するものの他、苦渋味を有するフレーバーの添加により苦渋味を付与されたものであってもよい。
【0013】
苦渋味を有する医薬品としては、日本薬局方に収められている医薬品で苦渋味を有するものであれば特に限定されるものではない。その製剤形態としては、例えば、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤・煎剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤などが挙げられる。
【0014】
苦渋味を有する医薬部外品としては、厚生労働大臣が指定した医薬部外品で苦渋味を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、苦渋味を有する内服液剤、健康飲料、消毒剤、消毒保護剤、ビタミン含有保健剤、薬用化粧品、薬用歯磨き、洗口剤、口中清涼剤などが挙げられる。
【0015】
苦渋味を有する化粧品としては、厚生労働省が許可した化粧品で苦渋味を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、苦渋味を有する基礎化粧品、口中洗浄料、芳香化粧品などが挙げられる。
【0016】
本発明の苦渋味抑制剤の作用対象となる口腔適用対象物に含まれる苦渋味成分としては、例えば、カテキン類(エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)など)、カフェイン、ガーリックアシッド、アミノ酸類(アルギニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンなど)、アントシアニジン、ケルセチン、サポニン、α−G−ルチン、ナリンジン、リモニン、α−G−ヘスペリジン、クロロジェニック酸、塩化マグネシウム、各種の塩基性薬物(アロエニン、アルカロイド、プロメタジン、プロプラノロール、ベルベリン、クロルプロマジン、クロルフェニラミン、パパベリン、チアミン、キニーネなど)やその無機酸塩(塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩など)や有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、マレイン酸塩など)、漢方製剤や生薬製剤に用いられるオウレン、センブリ、ケイヒ、クジン、キハダ、コウカ、ダイオウ、オオゴン、オオバク、ギムネマ、ロガイ、イチョウ、クロレラ、なつめなどに由来する苦渋味成分、界面活性剤などとして用いられるアルキル硫酸ナトリウムやモノアルキルリン酸ナトリウムなど、香料などとして用いられるメントール、リナノール、フェニルエチルアルコール、プロピオン酸エチル、ゲラニオール、リナリールアセテート、ベンジルアセテートなど、殺菌剤などとして用いられるメチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど、保湿剤などとして用いられる乳酸や乳酸ナトリウムなど、アルコール変性剤などとして用いられる8−アセチル化ショ糖やプルシンなど、収斂剤などとして用いられる乳酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0017】
本発明の苦渋味抑制剤は、有効成分としてCFを含んでなるものであればどのような形態であってもよく、例えば、粉末状であってもよいし液状であってもよい。また、本発明の苦渋味抑制剤は、他の苦渋味抑制剤、例えば、シクロデキストリンや糖アルコール類などの甘味料などと併用して用いても何ら問題は生じない。他の苦渋味抑制剤と併用した場合には、より優れた苦渋味抑制効果を期待することができる。また、本発明の苦渋味抑制剤は、必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、甘味料などと併用して用いてもよい。抗酸化剤としては、例えば、クエン酸トコフェロール(三栄源・エイ・エフ・アイ社製)などが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン系非界面活性剤などが挙げられる。
【0018】
苦渋味を有する口腔適用対象物への本発明の苦渋味抑制剤の配合方法は特に制限されるものではない。例えば、口腔適用対象物の形態が液状形態や半固形状形態である場合には、その調製段階において本発明の苦渋味抑制剤をそのまま、あるいは水に溶解させた水溶液などとして添加し、均一化することにより行えばよい。また、本発明の苦渋味抑制剤をアルコール水などの含水有機溶媒やエタノールなどの有機溶媒などに分散させた分散液として添加し、充分に攪拌してこれを分散させることも可能である。なお、このようにして得られた調製物を、噴霧乾燥機や凍結乾燥機などを用いて乾燥することで、粉末などの固形状形態としてもよい。また、口腔適用対象物の形態が固形状形態である場合には、その調製段階において本発明の苦渋味抑制剤をそのまま、あるいは水に溶解させた水溶液などとして添加し、均一化することにより行えばよい。また、本発明の苦渋味抑制剤をアルコール水などの含水有機溶媒やエタノールなどの有機溶媒などに分散させた分散液として添加し、充分に混合してこれを分散させることも可能である。水難溶性の口腔適用対象物に本発明の苦渋味抑制剤を配合する場合、必要に応じて口腔適用対象物にアルコール水などの含水有機溶媒やエタノールなどの有機溶媒などを添加してこれを溶解や希釈化し、ここに本発明の苦渋味抑制剤を添加し、充分に攪拌して苦渋味抑制剤を分散させるようにしてもよい。香味野菜類や根菜類などを原料とする飲食品を調製する際には、灰汁抜き工程において本発明の苦渋味抑制剤を添加することが好ましい。
【0019】
苦渋味を有する口腔適用対象物に含まれる苦渋味成分量が明らかな場合、苦渋味成分に対する本発明の苦渋味抑制剤の配合比は、モル濃度比では1:0.05〜100が好ましく、1:0.2〜50がより好ましく、1:1〜10がさらに好ましい。また、重量比では1:0.01〜10が好ましく、1:0.02〜5がより好ましく、1:0.1〜1がさらに好ましい。苦渋味抑制剤の配合比が少なすぎる場合には目的とする苦渋味抑制効果が期待できない恐れがある一方、多すぎる場合には対象物にCFに由来する甘味が付加されることで対象物本来の風味に影響を与える恐れがある。また、多量の苦渋味抑制剤を配合してもある一定の効果以上は得ることができないことがあるので、このような場合には多量の苦渋味抑制剤を配合することは経済的に不利となる。
【0020】
苦渋味を有する口腔適用対象物に対する本発明の苦渋味抑制剤の配合量は、一般的には、最終製品中で0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜5重量%であることがより好ましく、0.1〜1重量%の範囲であることがさらに好ましい。苦渋味抑制剤の配合量が0.01重量%より少ない場合には目的とする苦渋味抑制効果が期待できない恐れがある一方、10重量%を超える場合には対象物にCFに由来する甘味が付加されることで対象物本来の風味に影響を与える恐れがある。また、多量の苦渋味抑制剤を配合してもある一定の効果以上は得ることができないことがあるので、このような場合には多量の苦渋味抑制剤を配合することは経済的に不利となる。
【0021】
本発明のシクロフラクタンを有効成分とする苦渋味抑制剤は、苦渋味を有する口腔適用対象物に対し、香りに何らの影響を与えることなく、その苦味、渋味、えぐみ、収斂味などの口に含んだ際に感じる嫌味を抑え、対象物に良好な風味を与えるものであるが、本発明の苦渋味抑止剤は、苦渋味を抑制するために用いることができる他、苦渋味を楽しむ飲食品などについてその苦渋味を調節するために用いることもできる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
実施例1:苦渋味成分に対するCFの苦渋味抑制効果試験
一般的に飲食品の苦渋味成分として知られているもののうち、エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、カフェイン、ガーリックアシッド、α−G−ルチン、ナリンジン、α−G−ヘスペリジン、クロロジェニック酸、以上10種類を選択し、CFによる苦渋味抑制効果を以下の試験方法に従って調べた。
【0024】
(試験方法)
ランダムに選んだ男女9名をパネラーとして官能検査を行った。まず、苦渋味成分を含有した水溶液を苦渋味閾値となる濃度で調製した(EC:0.01重量%、ECg:0.015重量%、EGC:0.03重量%、EGCg:0.013重量%、カフェイン:0.025重量%、ガーリックアシッド:0.04重量%、α−G−ルチン:0.12重量%、ナリンジン:0.003重量%、α−G−ヘスペリジン:0.04重量%、クロロジェニック酸:0.02重量%)。この調製液に、(a)苦渋味成分に対してサンプルとしてCF7をモル濃度比が1:1となるように、また、(b)苦渋味成分に対してサンプルとしてCF混合物(組成比はCF6:61.7%、CF7:30.7%、その他:7.6%)をモル濃度比が1:3となるように(CF混合物に含まれるCF7のモル濃度が(a)と同じになるように設定)それぞれ添加し試験液とした。この試験液とサンプルを添加していない対照液の苦渋味を比べて、苦渋味が抑制されているかどうか評価した。なお、1つの試験液・対照液を評価した後は温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0025】
苦渋味に対する抑制効果の評価は以下の5段階評価で行い、それぞれについてパネラー9名の平均値を算出した。そして、対照液の平均値とCF7添加試験液の平均値の間での差異と、対照液の平均値とCF混合物添加試験液の平均値の間での差異について検定を行った。結果を表1に示す。
【0026】
(評価判定基準)
苦渋味がかなり感じられる ・・・・・5点
苦渋味が感じられる ・・・・・4点
苦渋味が少し感じられる ・・・・・3点
苦渋味をあまり感じない ・・・・・2点
苦渋味をまったく感じない ・・・・・1点
【0027】
【表1】
【0028】
表1から明らかなように、苦渋味成分のいずれに対しても、CF7またはCF混合物を添加することにより、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、CFの苦渋味成分に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。また、CF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べて苦渋味抑制効果が若干高まっているが、これはCF混合物に含まれるCF7以外のCF(CF6など)による作用と考えらた。しかしながら、CF7以外のCFの苦渋味抑制効果はわずかであることから、CF7が最も苦渋味抑制効果が優れていることがわかった。
【0029】
実施例2:苦渋味成分に対して添加するCFのモル濃度比の違いによる影響
実施例1で使用した10種類の苦渋味成分に対して添加するCFのモル濃度比を変化させた際の苦渋味抑制効果を以下の試験方法に従って調べた。
【0030】
(試験方法)
ランダムに選んだ男女9名をパネラーとして官能検査を行った。まず、苦渋味成分を含有した水溶液を実施例1に示すとおりの苦渋味閾値となる濃度で調製した(EC:0.01重量%、ECg:0.015重量%、EGC:0.03重量%、EGCg:0.013重量%、カフェイン:0.025重量%、ガーリックアシッド:0.04重量%、α−G−ルチン:0.12重量%、ナリンジン:0.003重量%、α−G−ヘスペリジン:0.04重量%、クロロジェニック酸:0.02重量%)。この調製液に、(a)これらの苦渋味成分に対してサンプルとしてCF7をモル濃度比が1:0.01、1:0.05、1:1、1:10、1:100(重量比で1:0.005、1:0.01、1:0.1、1:1、1:10)となるように、また、(b)これらの苦渋味成分に対してサンプルとしてCF混合物(組成比はCF6:61.7%、CF7:30.7%、その他:7.6%)をモル濃度比が1:0.03、1:0.15、1:3、1:30、1:300(重量比で1:0.015、1:0.03、1:0.3、1:3、1:30)となるように(CF混合物に含まれるCF7のモル濃度が(a)と同じになるように設定)それぞれ添加し試験液とした。この試験液とサンプルを添加していない対照液の苦渋味を比べて、苦渋味成分に対して添加したCFのモル濃度比の違いによる苦渋味抑制効果を評価した。なお、1つの試験液・対照液を評価した後は温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0031】
苦渋味に対する抑制効果の評価は実施例1記載の評価判定基準に基づいて行い、それぞれについてパネラー9名の平均値を算出した。そして、対照液の平均値とCF7添加試験液の平均値の間での差異と、対照液の平均値とCF混合物添加試験液の平均値の間での差異について検定を行った。前者の結果を表2に、後者の結果を表3に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表2から明らかなように、苦渋味成分に対して添加したCF7のモル濃度比が1:0.05(重量比1:0.01)以上の時に苦渋味抑制効果が有意にあらわれた。本試験において、官能的に十分な苦渋味抑制効果が発揮されたのは、苦渋味成分に対して添加したCF7のモル濃度比が1:1(重量比1:0.1)のときであった。苦渋味成分に対して添加したCF7のモル濃度比が1:1および1:10のとき(重量比1:0.1および1:1)ではその効果が若干高まる程度にとどまった。また、CF7をモル濃度比で1:10(重量比1:1)以上添加しても苦渋味抑制効果は向上しなかった。
また、表3から明らかなように、苦渋味成分に対して添加したCF混合物のモル濃度比が1:0.15(重量比1:0.03)以上の時に苦渋味抑制効果が有意にあらわれた。本試験において、官能的に十分な苦渋味抑制効果が発揮されたのは、苦渋味成分に対して添加したCF混合物のモル濃度比が1:3(重量比1:0.3)のときであった。苦渋味成分に対して添加したCF混合物のモル濃度比が1:3および1:30のとき(重量比1:0.3および1:3)ではその効果が若干高まる程度にとどまった。また、CF混合物をモル濃度比で1:30(重量比1:3)以上添加しても苦渋味抑制効果は向上しなかった。
また、CF7に比べてCF混合物を添加した場合、苦渋味抑制効果が若干高まっているが、これはCF混合物に含まれるCF7以外のCF(CF6など)による作用と考えられた。しかしながら、CF7以外のCFの苦渋味抑制効果はわずかであることから、CF7が最も苦渋味抑制効果が優れていることがわかった。
【0035】
実施例3:紅茶に対するCFの苦渋味抑制効果試験
紅茶を用いてCFによる苦渋味抑制効果を以下の試験方法に従って調べた。
(試験方法)
ランダムに選んだ男女9名をパネラーとして官能検査を行った。試験液の調製方法について以下に示す。水900mlを80℃まで加熱し、これに紅茶(ヌワヤレモンティー)30gを加え6分間抽出した。これを30メッシュのストレーナーで茶殻を除去し、30℃以下まで冷却した後、濾紙濾過(工業用濾紙No.26:ADVANTEC社製、捕集粒子径=3μm)により清澄化を行い、抽出液800mlを得た。この紅茶抽出液を飲用濃度(カテキン濃度50mg%)となるようにイオン交換水で希釈し、L−アスコルビン酸を0.03重量%となるように添加したあと、重曹でpH6.1〜6.3の範囲に調整し調合液とした。この調合液を3分量にし、(a)1分量にCF7を0.1重量%添加してよく攪拌したもの、(b)1分量にCF混合物(組成比はCF6:61.7%、CF7:30.7%、その他:7.6%)を0.3重量%添加してよく攪拌したもの(CF混合物に含まれるCF7のモル濃度が(a)と同じになるように設定)の2種類を試験液とした。残りの1分量にはCFを添加せず対照液とした。これらを80℃以上の温度条件下でホットパック充填を行い、その後、レトルト殺菌にて、121℃、10分間(F0=10以上)の殺菌を行った。これらを室温に冷却後、試験に供し、紅茶に由来する苦渋味に対する抑制効果を評価した。なお、1つの試験液・対照液を評価した後は温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0036】
苦渋味に対する抑制効果の評価は実施例1記載の評価判定基準に基づいて行い、それぞれについてパネラー9名の平均値を算出した。そして、対照液の平均値とCF7添加試験液の平均値の間での差異と、対照液の平均値とCF混合物添加試験液の平均値の間での差異について検定を行った。結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4から明らかなように、紅茶に対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、紅茶に由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、紅茶本来の香りが維持されていた。
【0039】
実施例4:烏龍茶に対するCFの苦渋味抑制効果試験
烏龍茶を用いてCFによる苦渋味抑制効果を以下の試験方法に従って調べた。
(試験方法)
ランダムに選んだ男女9名をパネラーとして官能検査を行った。試験液については、実施例3における紅茶(ヌワヤレモンティー)を烏龍茶(ウーロンG)に変更した以外は実施例3と同様の方法で調製した。そして、試験液と対照液について、烏龍茶に由来する苦渋味に対する抑制効果を評価した。なお、1つの試験液・対照液を評価した後は温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0040】
苦渋味に対する抑制効果の評価は実施例1記載の評価判定基準に基づいて行い、それぞれについてパネラー9名の平均値を算出した。そして、対照液の平均値とCF7添加試験液の平均値の間での差異と、対照液の平均値とCF混合物添加試験液の平均値の間での差異について検定を行った。結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
表5から明らかなように、烏龍茶に対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、烏龍茶に由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、烏龍茶本来の香りが維持されていた。
【0043】
実施例5:緑茶に対するCFの苦渋味抑制効果試験
緑茶を用いてCFによる苦渋味抑制効果を以下の試験方法に従って調べた。
(試験方法)
ランダムに選んだ男女9名をパネラーとして官能検査を行った。試験液の調製方法について以下に示す。水900mlを60℃まで加熱し、これに緑茶(ゴールド)30gを加え6分間抽出した。実施例3と同様にして茶殻の除去、冷却、清澄化を行い、緑茶抽出液760mlを得た。この緑茶抽出液を飲用濃度(カテキン濃度60mg%)となるようにイオン交換水で希釈し、L−アスコルビン酸を0.03重量%となるように添加したあと、重曹でpH6.1〜6.3の範囲に調整し、調合液とした。この調合液を3分量にし、(a)1分量にCF7を0.1重量%添加してよく攪拌したもの、(b)1分量にCF混合物(組成比はCF6:61.7%、CF7:30.7%、その他:7.6%)を0.3重量%添加してよく攪拌したもの(CF混合物に含まれるCF7のモル濃度が(a)と同じになるように設定)の2種類を試験液とした。残りの1分量にはCFを添加せず対照液とした。充填、殺菌工程は実施例3と同様の方法で行い、室温に冷却後、試験に供し、緑茶に由来する苦渋味に対する抑制効果を評価した。なお、1つの試験液・対照液を評価した後は温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0044】
苦渋味に対する抑制効果の評価は実施例1記載の評価判定基準に基づいて行い、それぞれについてパネラー9名の平均値を算出した。そして、対照液の平均値とCF7添加試験液の平均値の間での差異と、対照液の平均値とCF混合物添加試験液の平均値の間での差異について検定を行った。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】
【0046】
表6から明らかなように、緑茶に対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、緑茶に由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、緑茶本来の香りが維持されていた。
【0047】
実施例6:コーヒーに対するCFの苦渋味抑制効果試験
ブラックコーヒーを用いてCFによる苦渋味抑制効果を以下の試験方法に従って調べた。
(試験方法)
ランダムに選んだ男女9名をパネラーとして官能検査を行った。市販のブラックコーヒー(ブラックボトル無糖:ダイドードリンコ社の商品名)に、(a)CF7を0.1重量%添加してよく攪拌したもの、(b)CF混合物(組成比はCF6:61.7%、CF7:30.7%、その他:7.6%)を0.3重量%添加してよく攪拌したもの(CF混合物に含まれるCF7のモル濃度が(a)と同じになるように設定)の2種類を試験液とした。また、CFを添加しないものを対照液とした。これらを用いてコーヒーに由来する苦渋味に対する抑制効果を評価した。なお、1つの試験液・対照液を評価した後は温湯で口中をすすぎ、30分以上経過してから次の評価を行った。
【0048】
苦渋味に対する抑制効果の評価は実施例1記載の評価判定基準に基づいて行い、それぞれについてパネラー9名の平均値を算出した。そして、対照液の平均値とCF7添加試験液の平均値の間での差異と、対照液の平均値とCF混合物添加試験液の平均値の間での差異について検定を行った。結果を表7に示す。
【0049】
【表7】
【0050】
表7から明らかなように、コーヒーに対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、コーヒーに由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、コーヒー本来の香りが維持されていた。
【0051】
実施例7:グレープフルーツジュースに対するCFの苦渋味抑制効果試験
市販のグレープフルーツジュース(サンキスト グレープフルーツジュース 濃縮還元100%:サンキスト社の商品名)を用いてCFによる苦渋味抑制効果を実施例6と同様にして調べた。結果を表8に示す。
【0052】
【表8】
【0053】
表8から明らかなように、グレープフルーツジュースに対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、グレープフルーツジュースに由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、グレープフルーツジュース本来の香りが維持されていた。
【0054】
実施例8:果肉入りグレープフルーツジュースに対するCFの苦渋味抑制効果試験
市販の果肉入りグレープフルーツジュース(ゴクリ:サントリー社の商品名)を用いてCFによる苦渋味抑制効果を実施例6と同様にして調べた。結果を表9に示す。
【0055】
【表9】
【0056】
表9から明らかなように、果肉入りグレープフルーツジュースに対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、果肉入りグレープフルーツジュースに由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、果肉入りグレープフルーツジュース本来の香りが維持されていた。
【0057】
実施例9:赤ワインに対するCFの苦渋味抑制効果試験
市販の赤ワイン(デリカメゾン赤・ライトタイプ:サントリー社の商品名)を用いてCFによる苦渋味抑制効果を実施例6と同様にして調べた。結果を表10に示す。
【0058】
【表10】
【0059】
表10から明らかなように、赤ワインに対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、赤ワインに由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、赤ワイン本来の香りが維持されていた。
【0060】
実施例10:ビールに対するCFの苦渋味抑制効果試験
市販のビール(キリンラガー:キリンビール社の商品名)を用いてCFによる苦渋味抑制効果を実施例6と同様にして調べた。結果を表11に示す。
【0061】
【表11】
【0062】
表11から明らかなように、ビールに対してCF7を添加してもCF混合物を添加しても、無添加の対照液に比べて苦渋味が有意に抑制され、ビールに由来する苦渋味に対する苦渋味抑制効果が十分発揮された。さらにCF混合物を添加した場合、CF7を添加した場合に比べてその効果が若干高まることがわかった。なお、試験液の香りは対照液の香りと何ら違いはなく、ビール本来の香りが維持されていた。
【0063】
実施例11:苦渋味を抑制したグレープフルーツゼリー
果糖ブドウ糖液糖 7g
1/5グレープフルーツ濃縮果汁 6g
クエン酸 0.10g
クエン酸ナトリウム 0.10g
グレープフルーツフレーバー 0.10g
ジェランガム 0.12g
キサンタンガム 0.04g
CF7 0.10g
上記成分をイオン交換水で加温しながら完全に溶解し、全量を100gとした。これをカップ容器に注ぎ、ヒートシールで蓋をして冷却し、苦渋味を抑制したグレープフルーツゼリーを作製した。
【0064】
実施例12:苦渋味を抑制したマーマレードジャム
オレンジ果皮 1kg
砂糖 500g
クエン酸 2g
CF7 0.1g
上記成分を常法に従い煮詰めて、苦渋味を抑制したマーマレードジャムを作製した。
【0065】
実施例13:苦渋味を抑制した液剤
キニーネ 0.02g
ショ糖 0.03g
パラオキシ安息香酸ブチル 0.01g
エマノーンCH60K(花王社の商品名) 0.20g
酢酸d−α−トコフェロール 0.20g
CF7 0.10g
上記成分を混合したものにクエン酸緩衝液を加えてpH5.5に調整し、これにイオン交換水を全量100mlとなるように加え、常法に従い苦渋味を抑制した液剤を作製した。
【0066】
実施例14:苦渋味を抑制した薬用歯磨き
第2リン酸カルシウム・2H2O 45g
無水ケイ酸 2g
ソルビトール 15g
カルボキシメチルセルロース 1.5g
モノラウリルリン酸ナトリウム 2g
CF7 0.1g
香味剤 適量
上記成分をイオン交換水に溶解し、常法に従い苦渋味を抑制した薬用歯磨きを作製した。
【0067】
実施例15:苦渋味を抑制した口中洗浄料
エタノール 15g
ソルビトール 10g
サッカリンナトリウム 0.15g
L−メントール 0.10g
ラウリル硫酸ナトリウム 0.10g
CF7 0.10g
上記成分をイオン交換水に溶解し、常法に従い苦渋味を抑制した口中洗浄料を作製した。
【0068】
参考例:CFの製造方法
イヌリン1%、イーストエキストラクト0.2%、硝酸ナトリウム0.5%、硫酸マグネシウム0.05%、塩化カリウム0.05%、リン酸1カリウム0.05%、塩化第二鉄0.001%を含んだ培地150mlをpH7.5に調整して、120度15分間蒸気滅菌した。この滅菌した培地にパエニバチルス ポリミキサMG−CF6(FERM P−19158)を1白金耳接種し、200rpm、35℃で72時間振とう培養した。培養終了後遠心分離により菌体を除去し、培養上清液を得た。得られた培養上清100mlを一夜20mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて透析し、得られた透析液を粗酵素液とした。これに最終濃度が10%となるようにイヌリンを加え、40℃で60時間反応させた。得られた反応液を加熱し酵素を失活させた後、pHを4.5に調整しインベルターゼ(生化学工業社製)を添加した。この反応溶液を50℃で24時間インキュベーション後、酵素を加熱失活させ活性炭カラムクロマトグラフィーに供した。カラムを蒸留水で洗浄後、30%エタノール水溶液で溶出させた。溶出液を減圧濃縮後、凍結乾燥してCF混合物(組成比はCF6:61.7%、CF7:30.7%、その他:7.6%)を得た。このCF混合物を少量の70%エタノール水溶液に溶解し、同濃度のエタノール水溶液で平衡化したQAE−トーヨーパールカラムに供しCF6とCF7を分離し、凍結乾燥してこれらの純品の粉末を得た。
【0069】
【発明の効果】
本発明の苦渋味抑制剤は、CFを有効成分としたこれまでにない全く新しい苦渋味抑制剤であり、苦渋味を有する飲食品をはじめとする各種の口腔適用対象物に幅広く応用できる汎用性が高いものである。本発明の苦渋味抑制剤は、香りに何らの影響を与えることなく、その苦味、渋味、えぐみ、収斂味などの口に含んだ際に感じる嫌味を抑え、対象物に良好な風味を与えるものであり、乳児から老人まで幅広い層の嗜好を満足させるに足る作用を有する。
Claims (5)
- シクロフラクタンを有効成分とする苦渋味抑制剤。
- シクロフラクタンが環状イヌロヘプタオースである請求項1記載の苦渋味抑制剤。
- 有効量のシクロフラクタンを配合することによる苦渋味を有する口腔適用対象物の苦渋味抑制方法。
- 口腔適用対象物が飲食品である請求項3記載の苦渋味抑制方法。
- 有効量のシクロフラクタンを配合することにより苦渋味が抑制された口腔適用対象物。
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