JP2004269772A - 光学フィルム、その製造方法及びその光学フィルムを用いた表示装置 - Google Patents

光学フィルム、その製造方法及びその光学フィルムを用いた表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】膜厚の均一性に優れ、高温で長時間放置してもクラックが入りにくい光学フィルム、その製造方法及びその光学フィルムを用いた反射像のゆがみのない表示装置を提供すること。
【解決手段】チタン化合物を用いて二官能性芳香族カルボン酸のエチレングリコールエステル及び/またはその低重合体を重縮合反応させて得たポリエステルを、ダイから溶融押出し、急冷して、さらに延伸、熱固定処理を施して製造したフィルムの上に、大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有する光学フィルムにおいて、該ポリエステルがリン化合物の少くとも1種を含有し、リン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.6〜4.0であり、かつリン原子が150ppm以下であることを特徴とする光学フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池、液晶画像表示装置、各種ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ、CRT、PDP等に使用される機能性薄膜を有する光学フィルム及びその製造方法、その光学フィルムを有する表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に基材を位置させ、更にガスを存在させて高周波電圧を印加することにより放電プラズマを発生させてプラズマ処理(以下、単に大気圧プラズマ処理ともいう)することにより、基材表面に機能性薄膜を形成することが知られている。
【0003】
基材として、例えばガラス等を用いることにより、ガラス表面に反射防止膜等を形成したレンズやメガネとすることができ、基材として透明フィルムを用い、その表面に反射防止膜を設けることにより、CRTや液晶ディスプレイの表面に設置して視認性を向上させる効果を得ることができる。
【0004】
透明フィルムとしては、ポリエステルフィルムが安価で、防湿性及び強靱性に優れることから、好ましい基材として用いられてきており、その表面に反射防止機能等の機能性薄膜を設けた高付加価値フィルムが市販されている。
【0005】
また、表示装置の高画質化に伴って、視認性を改善するため反射防止層を設けた表示装置が求められており、反射防止層が形成されたフィルム等を表示装置全面に張り付けることが行われている。しかし、この反射防止加工は高価であり、コスト低減のため塗布による反射防止層形成方法等が提案されているが、塗布むら等が生じやすくその改善が求められている。
【0006】
フィルムの材質としては、液晶表示装置ではセルロースエステルフィルムが好ましく用いられているが、裂けやすい等取り扱いにくいという欠点があった。そこで、安価で取り扱い性に優れるポリエステルフィルムを用い、反射防止層を形成する試みが行われているが(例えば、特許文献1参照)、ポリエステルフィルムを用いる場合、形成した層の膜厚むらによる反射光のむらの改善が求められていた。また、高温で長時間放置されると形成した層にクラックが入るという問題や、表示装置の最前面に貼り付けたときの平面性が劣り、反射像がゆがんで見えるという問題があり、その改善が求められていた。
【0007】
また、特開平6−170911号には重合触媒としてチタン化合物を用いたポリエステルフィルムとその製造方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−26632号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、膜厚の均一性に優れ、高温で長時間放置してもクラックが入りにくい光学フィルム、その製造方法及びその光学フィルムを用いた反射像のゆがみのない表示装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0011】
1.触媒としてチタン化合物を用いて二官能性芳香族カルボン酸のエチレングリコールエステル及び/またはその低重合体を重縮合反応させて得たポリエステルを、ダイから溶融押出し、急冷して、所望によりさらに延伸、熱固定処理を施して製造したフィルムの上に、直接または他の層を介して、窒素を主成分とする雰囲気下において大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有する光学フィルムであって、該ポリエステルがリン化合物の少くとも1種を含有し、リン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.6〜4.0であり、かつリン原子が150ppm以下であることを特徴とする光学フィルム。
【0012】
2.リン酸とアルキル基が炭素数で2以上のチタンアルコキサイドとを予め反応させて得られる反応生成物を触媒として使用することを特徴とする前記1記載の光学フィルム。
【0013】
3.反応生成物が、リン酸/チタンアルコキサイドのモル比を2〜4として有機溶媒中で反応して得られたものであることを特徴とする前記2記載の光学フィルム。
【0014】
4.ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の光学フィルム。
【0015】
5.ポリエステルフィルム上に活性線硬化樹脂層を有し、その上に直接または他の層を介して大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の光学フィルム。
【0016】
6.金属化合物層が反射防止層を構成していることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の光学フィルム。
【0017】
7.触媒としてチタン化合物を用いて二官能性芳香族カルボン酸のエチレングリコールエステル及び/またはその低重合体を重縮合反応させて得たポリエステルを、ダイから溶融押出し、急冷して、所望によりさらに延伸、熱固定処理を施して製造したフィルムの上に、直接または他の層を介して、窒素を主成分とする雰囲気下において大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有する光学フィルムの製造方法において、該ポリエステルがリン化合物の少くとも1種を含有し、リン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.6〜4.0であり、かつリン原子が150ppm以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0018】
8.大気圧プラズマ処理が、対向する第1電極と第2電極との間に窒素を主成分とするガスを供給し、該第1電極と該第2電極との間に高周波電圧を印加することにより該ガスを励起し、前記ポリエステルフィルムを励起した該ガスに晒すことにより該ポリエステルフィルム上に金属化合物層を形成させるものであり、かつ、該高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、該第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする前記7記載の光学フィルムの製造方法。
【0019】
9.第1の周波数ωが200kHz以下であり、第2の周波数ωが800kHz以上であることを特徴とする前記8記載の光学フィルムの製造方法。
【0020】
10.前記1〜6のいずれか1項記載の光学フィルムを有することを特徴とする表示装置。
【0021】
本発明を更に詳しく説明する。
本発明者は、ポリエステルの重合触媒にチタン化合物を使用し、ポリエステルに含まれるリン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)を特定の範囲とし、そのポリエステルフィルム上に、直接または他の層を介して、大気圧プラズマ処理(以下単にプラズマ処理ともいう)によって金属化合物層を形成することにより上記問題を解決できることを見い出した。特に幅1m以上のポリエステル支持体上であっても、プラズマ処理によって膜厚の均一性な金属化合物層が形成でき、高温で長時間放置してもクラックが入りにくい光学フィルムを得ることができた。
【0022】
本発明のポリエステルフィルム基材を構成する二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)等である。中でも好ましいポリエステルはPET、PENであり、特に好ましくはPETである。PENとしてはポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。ここでいう構成するものとは、共重合体及びポリマーブレンド物であってもよく、全体に占める構成要素の質量比率が50質量%以上のものを指す。
【0023】
PETはテレフタル酸とエチレングリコール、PENはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールから構成されるが、これらを触媒としてチタン化合物を用いて適当な反応条件下で結合させることによって重合できる。このとき、適当な1種、または2種以上の第3成分を混合してもよい。適当な第3成分としては、2価のエステル形成官能基を有するジカルボン酸、グリコールであればよい。
【0024】
ジカルボン酸の例として次のようなものが挙げられる。イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0025】
また、グリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0026】
本発明に用いられるPET樹脂及びフィルムの固有粘度は0.5〜0.8であることが好ましい。さらに好ましくは0.6〜0.7である。固有粘度が0.5未満だとデラミを起こしやすく、0.8を越えると切断性が悪く好ましくない。また固有粘度の異なるものを混合して使用してもよい。混合して使用する場合、用いる樹脂の固有粘度差が0.1〜0.3であるものを混合したものが好まし、0.15〜0.2がよりことが好ましい。
【0027】
本発明に用いられるポリエステルは従来から知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重合せしめる方法で製造することができる。このエステル交換反応やエステル化反応では公知の触媒を用いることができるが、重合反応触媒としてはチタン化合物、特に有機チタン化合物を用いる必要がある。
【0028】
この有機チタン化合物としては、例えば特開昭63−278927号公報に記載されているものを挙げることができる。さらに説明すると、チタンのアルコキサイドや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてチタンテトラブトキサイド、チタンテトライソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。
【0029】
チタン化合物の使用量は、チタン原子がポリエステル中に7〜120ppm、好ましくは7.5〜75ppmとなる量である。ポリエステル中のチタン原子が7ppm未満では重合反応の時間が長くなり、一方120ppmを超えると重合反応中に熱分解反応が同時に進行するため、重合度が上らなくなり、好ましくない。チタン化合物の添加時期は重合反応初期以前であれば何時でもよく、例えばエステル交換反応開始時より存在せしめてもよいし、また重合反応速度をコントロールする目的で2回以上に分けて添加する方法を用いてもよい。チタン化合物、特に有機チタン化合物は反応系内でさまざまな形に変化するものであり、最終的に生成したポリエステル中には最初に添加したものとは異なった化合物で存在する可能性がある。
【0030】
また、本発明では上記触媒としてリン酸とアルキル基の炭素数が2以上のチタンアルコキサイドとの反応生成物を用いることがより好ましく、これにより良好な色調を有し、同時に溶融熱安定性にも優れたポリエステルを製造することができる。
【0031】
本発明で使用するアルキル基の炭素数が2以上のチタンアルコキサイドとしては例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシド等のチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート等を挙げることができ、なかでも上記のチタンテトラアルコキシドが好ましく、特にチタンテトラブトキシドが好ましい。
【0032】
リン酸と上記のチタンアルコキサイドとの反応は好ましくは有機溶媒中で行われ、有機溶媒としてはリン酸及びチタンアルコサイドを溶解するものが好ましく、酢酸エチル、アセトニトリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メタノール、エタノール等が例示できる。
【0033】
有機溶媒中でのリン酸とチタンアルコキサイドとの反応は、室温、攪拌下で混合するだけで十分進み、反応生成物は白色物として析出し、これを濾取することによって、例えば下記一般式に示されるようなチタン化合物を含有するものが得られる。
【0034】
【化1】
Figure 2004269772
【0035】
ただし、Rは炭素数が2以上のアルキル基を示す。
この反応の際、リン酸/チタンアルコキサイドのモル比は広い範囲をとることができるが、モル比があまり小さいと反応が充分に進行し難くなる傾向があり、大気圧プラズマ処理で形成された薄膜にクラックが入りやすくなる。逆にモル比があまり大きいと、リン酸がチタンアルコキサイドの反応点に対して過剰になりロスが多くなるだけでなく、大気圧プラズマ処理で形成される金属化合物層の膜厚が変動しやすく、すじ状のむらが生じやすくなる傾向がある。このため、リン酸/チタンアルコキサイドのモル比は2〜4が好ましい。
【0036】
本発明において、触媒として添加されるリン酸とチタンアルコキサイドとの反応生成物の添加時期は、二官能性芳香族カルボン酸のエチレングリコールエステル及び/またはその低重合体の重縮合反応の初期の段階までであれば任意の段階でよい。
【0037】
上記反応生成物の添加量は、あまりに少ないと充分な重縮合反応速度が得られず、逆にあまり多すぎても好ましくない。このため、添加量はポリエステルを構成する全酸成分に対してチタン原子換算で5〜40mmol%の範囲が好ましい。
【0038】
また、触媒の添加方法は従来公知の任意の方法を採用することができるが、触媒をグリコール成分のスラリーとして反応系に添加することが望ましい。
【0039】
さらに、本発明では上記触媒としてリン酸とアルキル基の炭素数が2以上のチタンアルコキサイドとの反応生成物を用いることがより好ましく、これにより良好な色調を有し、同時に溶融熱安定性にも優れたポリエステルを製造することができる。
【0040】
詳しくは、
(A)下記一般式(I)で表されるチタン化合物(1)、及び一般式(I)で表されるチタン化合物(1)と下記一般式(II)で表される多価カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2)から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、
(B)下記一般式(III)で表されるリン化合物(3)の少なくとも一種からなるリン化合物成分との反応生成物からなる触媒である。
【0041】
【化2】
Figure 2004269772
【0042】
式中、Rは2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、pは1〜3の整数を表す。
【0043】
【化3】
Figure 2004269772
【0044】
式中、Rは1〜10個の炭素原子を有する脂肪族基または脂環式の二官能基を表す。
【0045】
【化4】
Figure 2004269772
【0046】
式中、mは1または2を表し、qは0または1を表し、Rは未置換または置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基または1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。ただし、mとqとの和は1または2であり、mが2を表す場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。
【0047】
チタン化合物成分(A)と、リン化合物成分(B)との反応生成物において、チタン化合物成分(A)のチタン原子換算モル量(mTi)の、リン化合物成分(B)のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比mTi/mPは1:1〜1:4であることが好ましい。
【0048】
チタン化合物成分(A)のチタン原子換算モル量とは、チタン化合物成分(A)に含まれる各チタン化合物のモル量と、当該チタン化合物の1分子に含まれるチタン原子の個数との積の合計値であり、リン化合物成分(B)のリン原子換算モル量とは、リン化合物成分(B)に含まれる各リン化合物のモル量と、当該リン化合物の1分子に含まれるリン原子の個数との積の合計値である。ただし、式(III)のリン化合物は1分子当たり1個のリン原子を含むものであるから、リン化合物のリン原子換算モル量は当該リン化合物のモル量に等しい。
【0049】
反応モル比mTi/mPが1:1より大きくなると、すなわち、チタン化合物成分(A)の量が過多になると、得られる触媒を用いて得られるポリエステルを用いてその上に大気圧プラズマ処理で形成した光学フィルムを用いた表示装置ではコントラスト等の視認性が低下し、かつすじ状のむらが生じやすくなる。また、反応モル比が、1:4未満になると、すなわちチタン化合物成分(A)の量が過少であってもやはりすじ状のむらが生じやすくなり好ましくない。
【0050】
チタン化合物成分(A)に用いられる一般式(I)で表されるチタン化合物(1)としては、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシド等のチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート等のアルキルチタネートを挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物成分との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドを用いることが好ましく、特にチタンテトラブトキシドを用いることがより好ましい。
【0051】
チタン化合物成分(A)に用いられるチタン化合物(2)は、一般式(I)で表されるチタン化合物(1)と、一般式(II)で表される多価カルボン酸またはその無水物との反応により得られる。一般式(II)で表される多価カルボン酸及びその無水物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物を好ましく用いることができ、特にチタン化合物(1)との反応性がよいコハク酸無水物を用いることが好ましい。
【0052】
チタン化合物(1)と一般式(II)で表される多価カルボン酸またはその無水物との反応は、多価カルボン酸またはその無水物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物(1)を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上、好ましくは30〜150℃で40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお、溶媒としては、式(II)の化合物またはその無水物の一部または全部を溶解し得るものから適宜に選択することができるが、好ましくは、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、キシレン等から選ばれる。
【0053】
この反応におけるチタン化合物(1)と式(II)で表される化合物またはその無水物とのモル比は適宜に選択することができるが、チタン化合物(1)の割合が多過ぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりする傾向があり、逆にチタン化合物(1)の量が少な過ぎると重縮合反応が進みにくくなる傾向があるため、チタン化合物(1)と式(II)の化合物またはその無水物との反応モル比は、(2/1)〜(2/5)とすることが好ましい。この反応によって得られる反応生成物は、そのまま前述のリン化合物(3)との反応に供してもよく、あるいはこれをアセトン、メチルアルコール及び/または酢酸エチル等によって再結晶して精製した後、これをリン化合物(3)と反応させてよい。
【0054】
リン化合物成分(B)に用いられる一般式(III)で表されるリン化合物(3)において、Rで表される炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜20のアルキル基は未置換でも、あるいは1個以上の置換基により置換されていてもよく、この置換基としては、例えば、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシル基及びアミノ基等を包含する。
【0055】
一般式(III)で表されるリン化合物(3)は、例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシルフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸等から選ばれる。
【0056】
チタン化合物成分(A)とリン化合物成分(B)との触媒の調製は、例えば、式(III)で表される少なくとも一種のリン化合物(3)からなる成分(B)と溶媒とを混合して、リン化合物成分(B)の一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分(A)を滴下し、反応系を0〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、加圧下(0.1〜0.5MPa)、常圧下、または減圧下(0.001〜0.1MPa)のいずれであってもよく、通常常圧下が行われる。
【0057】
また上記触媒調製反応に用いられる式(III)で表されるリン化合物成分(B)用溶媒は、リン化合物成分(B)の少なくとも一部を溶解し得る限り格別の制限はないが、例えば、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、及びキシレン等から選ばれた少なくとも一種からなる溶媒が好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同一の化合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0058】
この触媒調製反応において、反応系中のチタン化合物成分(A)とリン化合物成分(B)との配合割合は、得られる触媒に含まれるチタン化合物成分(A)とリン化合物成分との反応生成物において、チタン化合物成分(A)のチタン原子換算モル量(mTi)の、リン化合物成分(B)のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比mTi/mPが1:1〜1:4の範囲になるように設定される。好ましい反応モル比mTi/mPは1:1〜1:3である。
【0059】
チタン化合物成分(A)とリン化合物成分(B)との反応生成物は、それを反応系から遠心沈降処理または濾過等の手段により分離した後、または分離することなくそれをそのままポリエステル製造用触媒として用いてもよく、あるいは、この分離された反応生成物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコール及び/または水等により再結晶し精製した後、この精製物を触媒として用いてもよい。
【0060】
本発明においては、上記のポリエステルを常法によりダイから溶融押出し急冷して、所望により更に少なくとも一軸方向に延伸配向し、そして熱固定することによってフィルムとする。二軸延伸は、例えば逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等の二軸延伸法で行うことができる。
【0061】
本発明においては、ポリエステル中のリン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.6〜4.0であり、かつリン原子が150ppm以下であることが必要である。触媒として用いらるチタン化合物に含まれるリン原子がこの条件を満たさないときは、リン原子を含有させる必要がある。このリン原子を含有させる方法は、ポリエステルにリン化合物を添加することによって達成できる。ここでリン化合物とは化合物中にリンを含有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。具体的には、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸アンモニウム等を挙げることができる。これらのリン化合物は二種以上を併用してもよい。
【0062】
リン化合物の添加量は、ポリエステル中のリン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.5〜4.0、好ましくは0.5〜3.0であり、かつポリエステル中のリン原子の総量が150ppm以下、好ましくは115ppm以下を満足する必要がある。このグラム原子比(P/Ti)が0.5未満では大気圧プラズマ処理で金属化合物層を形成したときにむらが生じやすく、一方4.0を超えると、過剰のリン化合物による副作用、例えば分解作用が生じ、金属化合物層にクラックが入りやすいため好ましくない。
【0063】
リン化合物の添加時期は、ポリエステルの重合反応が実質的に完了した段階からポリマーをダイより溶融押出す迄の段階であり、この間であれば任意に選択できる。また添加は一度に行ってもよいし、2回以上に分割して行ってもよい。添加方法としては、所定量のリン化合物を直接添加する方法、あるいはリン化合物を高濃度含有する、いわゆるマスターポリマー(マスターバッチ)を添加する方法等が挙げられる。すなわち、重合反応末期の溶融ポリエステルにリン化合物の所定量を直接添加する方法、あるいは媒体で希釈したリン化合物の所定量を添加する方法、固体状のポリエステルにリン化合物の所定量を添加し混合する方法あるいはマスターポリマーの所定量を混合する方法、ポリエステルフィルムの溶融押出し時にリン化合物の所定量を溶融混練する方法あるいはマスターポリマーの所定量を溶融混練する方法等を好ましく挙げることができる。
【0064】
本発明に用いられるPETは、従来公知のPETの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒あるいは重合反応触媒を用い、あるいは耐熱安定剤を添加することができる。熱安定剤としては、例えば、リン酸、亜リン酸、及びそれらのエステル化合物が挙げられる。また、合成時の各過程で着色防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、粘度調節剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
【0065】
次に、本発明で用いるポリエステルフィルム基材の製膜方法について説明する。
【0066】
未延伸シートを得る方法及び縦方向に一軸延伸する方法は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、原料のポリエステルをペレット状に成型し、熱風乾燥または真空乾燥した後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。次いで、得られた未延伸シートを複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介してポリエステルのTgからTg+100℃の範囲内に加熱し、縦延伸する方法である。延伸倍率は、通常2.5〜8倍の範囲である。
【0067】
この際、延伸温度を支持体の表裏で温度差を持たせることで巻きぐせをつき難くすることができる。具体的には、縦延伸の加熱時に、赤外線ヒーター等の加熱手段を片面側に設けることで温度をコントロールすることができる。延伸時の温度差は、好ましく0〜40℃、より好ましくは0〜20℃である。温度差が40℃より大きくなると、均一に延伸できずにフィルムの平面性が劣化しやすくなり好ましくない。
【0068】
次に、上記の様にして得られた縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tg+120℃の温度範囲内で、横延伸し、次いで熱固定する。横延伸倍率は通常3〜8倍であり、また、縦、横延伸倍率の比は、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整される。ついで熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tg+180℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。このとき、2つ以上の温度で熱固定されることが好ましい。このように2つ以上の温度で熱固定したフィルムは寸法安定性が向上する。
【0069】
また、本発明で用いる基材は寸法安定性の点で弛緩処理を行うことが好ましい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後に巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は、処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは、処理温度が100〜180℃、更に好ましくは、処理温度が120〜160℃の範囲である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理されたポリエステルフィルムは、好ましい熱寸法変化率のポリエステル基材となる。
【0070】
本発明のポリエステル基材の透明性に関しては、ヘーズが3%以下であることが好ましく、更に好ましくは1%以下である。ヘーズが3%より大きいと光学フィルムに用いられる場合、画像が不鮮明になる。上記ヘーズは、ASTM−D1003−52に従って測定したものである。また上記ヘーズは支持体中の金属含有量を調整することで得られる。
【0071】
更に、大気圧プラズマ処理による機能性薄膜の形成前の何れかの工程でTg〜Tg+180℃の温度範囲で熱処理することにより、更に歩留まりが高く、均一性の高い機能性薄膜を形成することができる。熱処理時間としては、好ましくは0.5〜300秒間である。
【0072】
一般に光学フィルムに用いられるポリエステルフィルムは10〜300μmの膜厚であり、10〜90μmの薄いフィルムが効果的であるが、本発明においては10〜75μmであることが特に好ましい。
【0073】
本発明の光学フィルムは、ポリエステルフィルム上に直接または他の層を介して金属化合物層を形成することを特徴としているが、樹脂硬化層あるいは他の層を介して形成することがより好ましい。上記のようにして得られたポリエステルフィルム上には、熱硬化樹脂層あるいは活性線硬化樹脂層を形成することが好ましく、特に紫外線硬化樹脂層を設けることが好ましい。なお、これらの層を形成する前にポリエステルフィルムの表面をコロナ放電処理またはグロー放電処理することが好ましい。
【0074】
樹脂硬化層は、種々の機能を有していてもよく、例えば、防眩層やクリアハードコート層であってもよい。樹脂硬化層はエチレン性不飽和結合を有するモノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0075】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0076】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0077】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0078】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
【0079】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
【0080】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
【0081】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0082】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0083】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0084】
本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0085】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させるための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cmである。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0086】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0087】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布量は、ウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0088】
硬化樹脂層塗布液には、ブロッキングを防止するために、また耐擦り傷性等を高めるために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもできる。
【0089】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が好ましく用いられる。二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0090】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂、アクリル樹脂、加工ポリスチレン樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0091】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0092】
紫外線硬化樹脂層はJIS−B−0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μmの防眩層であってもよい。また、紫外線硬化樹脂層の屈折率は1.5〜1.7、好ましくは1.52〜1.65であることが好ましい。
【0093】
本発明では、これらの層の上にプラズマ放電処理によって膜厚むらが著しく改善された金属化合物薄膜層を形成することができる。
【0094】
本発明では少なくとも一層の金属化合物薄膜層を窒素雰囲気下の大気圧プラズマ処理によって形成することを特徴としており、2層以上形成する場合には、塗布、スパッタ、蒸着、CVD法によって形成することもできるが、全層が大気圧プラズマ処理によって形成されたものであることが好ましい。
【0095】
本発明の金属化合物層を形成する方法としての大気圧プラズマ処理は、下記のごときプラズマ処理装置を用いることによって行われる。以下に、プラズマ放電処理により金属化合物層を形成する方法を図1、2を用いて説明する。
【0096】
図1は本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ処理装置の一例を示した概略図である。
【0097】
ジェット方式の大気圧プラズマ処理装置は、プラズマ処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図3に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0098】
プラズマ処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの第1の周波数ωの高周波電圧Vが印加され、また第2電極12からは第2電源22からの第2の周波数ωの高周波電圧Vが印加されるようになっている。第1電源21は第2電源22より大きな高周波電圧(V>V)を印加することができ、また第1電源21の第1の周波数ωと第2電源22の第2の周波数ωは、ω<ωの関係にある。
【0099】
第1電極11と第1電源21との間には、第1電源21からの電流21Aが第1電極11に向かって流れるように第1フィルター23が設置されており、第1電源21からの電流21Aをアース側へと通過しにくくし、第2電源22からの電流22Aがアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0100】
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2電源22からの電流22Aが第2電極12に向かって流れるように第2フィルター24が設置されており、第2電源22からの電流22Aをアース側へと通過しにくくし、第1電源21からの電流21Aをアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0101】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、ここでは図示してない(後述の図2に図示してあるような)ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、ここでは図示してない(後述の図2に図示してあるような)電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度むらができるだけ生じないように電極の表面の温度を均等に調節することが望まれる。
【0102】
また、図1に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0103】
ジェット方式の大気圧プラズマ処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることができるので、何回も処理され高速で処理することもできる。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することもできる。
【0104】
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
【0105】
この例の大気圧プラズマ処理装置は、少なくとも、プラズマ処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0106】
図2は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0107】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ωであって高周波電圧Vを、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ωであって高周波電圧Vをかけるようになっている。
【0108】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されている。該第1フィルターは第1電源41からの電流をアース側へと通過しにくくし、第2電源42からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されている。第2フィルター44は、第2電源42からの電流をアース側へと通過しにくくし、第1電源41からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0109】
なお、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V>V)を印加できる能力を有しており、また、周波数はω<ωとなる能力を有している。好ましくはωは1〜200kHz、ωは800kHz〜150MHzである。
【0110】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。放電空間32及びプラズマ放電処理容器31内をガスGで満たす。
【0111】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0112】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。図2では省略しているが、角筒型固定電極群36の間にはガスGの供給口または排ガスG′の排出口が設けられている。
【0113】
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0114】
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0115】
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。即ち、放電中の電極表面の温度を制御するための媒体(水、シリコンオイル等)を循環できるようになっている。
【0116】
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0117】
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有し、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、内部に温度制御された媒体(水、シリコンオイル等)を循環できるようになっている。放電中の電極表面の温度調節が行えるようになっている。
【0118】
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0119】
図2に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0120】
図3及び4において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0121】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料等を挙げることができるが、後述の理由から、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0122】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1nm〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5nm〜2mmである。
【0123】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0124】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0125】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
Figure 2004269772
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0126】
また、第2電源(高周波電源)としては、
Figure 2004269772
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
【0127】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0128】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は、好ましくは1W/cm〜50W/cmであり、更に好ましくは、1.2W/cm〜20W/cmである。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0129】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0130】
このような大気圧プラズマ処理による薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0131】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、さまざまな金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、より好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0132】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
Figure 2004269772
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)及び(e)〜(h)が好ましく、特に(a)が好ましい。
【0133】
本発明において、金属質母材は上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0134】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は70質量%以上であれば問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0135】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としてはアルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0136】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0137】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0138】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0139】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiO)を主成分として含有するものが好ましい。
【0140】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0141】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射等がある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
【0142】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiO(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiO含有量は、XPS(X線光電子スペクトル)により誘電体層の断層を分析することにより測定できる。
【0143】
本発明の光学フィルムの製造方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0144】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0145】
(反応ガス)
本発明の金属化合物薄膜層の形成方法に用いる反応ガスについて説明する。
【0146】
薄膜層を形成するための反応ガスは、主に窒素を含むガスである。すなわち、窒素ガスが50%以上で含有することであり、好ましくは70%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは90〜99.99体積%であることが望ましい。反応ガスには窒素のほかに希ガスが含有していてもよい。
【0147】
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等であり、本発明では、ヘリウム、アルゴン等が窒素に添加されて用いられてもよい。
【0148】
窒素ガスは安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、反応ガスには薄膜を形成するための原料として、反応性ガスが添加される。該プラズマ中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着する等して薄膜が形成される。
【0149】
更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、過酸化水素、オゾン等を0.1〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。
【0150】
本発明に有用な反応ガスは、さまざまな物質の原料ガスを添加したものを用いることによって、さまざまな機能を持った薄膜をポリエステルフィルム上に形成することができる。ここでいう原料ガスとはプラズマ処理により薄膜を形成するためのガスであり、金属化合物層を形成する場合、金属化合物のガスを意味する。金属化合物層としては、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物等を含有する層が挙げられる。
【0151】
本発明に有用な原料ガスとしての有機金属化合物としては、特に限定されないが、Al、As、Au、B、Bi、Sb、Ca、Cd、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Se、Si、Sn、Ti、Zr、Y、V、W、Zn,Ta等の金属酸化物を形成するための金属化合物を挙げることができる。
【0152】
例えばTi、Zr、In、Sn、Zn、Ge、Si、Taあるいはその他の金属を含有する有機金属化合物、金属水素化合物、金属ハロゲン化物、金属錯体を用いて、これらの金属化合物層(金属化合物層、金属酸化物窒化物層も含む)または金属窒化物層等を形成することができ、これらの層は反射防止層の中屈折率層または高屈折率層としたり、あるいは導電層または帯電防止層とすることもできる。
【0153】
また、フッ素含有有機化合物で防汚層や低屈折率層を形成することもでき、珪素化合物でガスバリア層や低屈折率層あるいは防汚層を形成することもできる。本発明は、高、中屈折率層と低屈折率層を交互に多層を積層して形成される反射防止層の形成に特に好ましく用いられる。
【0154】
本発明において、反応性ガスとして有機金属化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりポリエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の原料ガスとしての金属化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜5体積%である。
【0155】
(原料ガス)
原料ガスについてさらに詳細に説明する。
【0156】
反射防止層の高屈折率層を形成するには、チタン化合物、ジルコニウム化合物、タンタル化合物が好ましく、具体的には、例えば、テトラジメチルアミノチタン等の有機アミノ金属化合物、モノチタン、ジチタン等の金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等の金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル等の金属アルコキシド等を挙げることができ、これらを用いて金属化合物層を形成することができる。
【0157】
亜鉛化合物としては、ジンクアセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛等があげられ、錫化合物としては、テトラエチルスズ、テトラメチルスズ、二酢酸ジ−n−ブチルすず、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジブチルすず、二酢酸ジブチルすず、酸化ジブチルすず、二ラウリン酸ジブチルすず、テトラメチルすず、テトラエチルすず、テトラブチルすず、テトラプロピルすず、テトラオクチルすず等の有機錫化合物が好ましく用いられ、インジウム化合物としてはトリエチルインジウム、トリメチルインジウム等が好ましく用いられ、導電層あるいは帯電防止層を形成することができる。
【0158】
(フッ素化合物)
大気圧プラズマ処理では原料ガスにフッ素含有有機化合物を用いることでフッ素化合物含有層を形成することもできる。
【0159】
フッ素含有有機化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましい。
【0160】
具体的には、フッ素含有有機化合物としては、例えば、四フッ化炭素、六フッ化炭素、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭素化合物;
二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物;
更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物、アルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体等を挙げることができる。
【0161】
これらは単独でも混合して用いてもよい。上記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等の各ガスを挙げることができる。
【0162】
更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0163】
また、これらの化合物は分子内にエチレン性不飽和基を有していてもよい。また、上記の化合物は混合して用いてもよい。
【0164】
本発明に有用な反応性ガスにフッ素含有有機化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりポリエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしてのフッ素含有有機化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいく、更に好ましくは、0.01〜5体積%である。
【0165】
また、本発明に好ましく用いられるフッ素含有、有機化合物が常温常圧で気体である場合は、反応性ガスの成分としてそのまま使用できる。
【0166】
また、フッ素含有有機化合物が常温常圧で液体または固体である場合には、気化手段により、例えば加熱、減圧等により気化して使用すればよく、適切な有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0167】
(珪素化合物)
本発明に有用な反応性ガスとしての珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシラン等の有機金属化合物、モノシラン、ジシラン等の金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シラン、四フッ化珪素等の金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、オルガノシラン等、3,3,3−トリフルオロメチルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン類を用いることが好ましいがこれらに限定されない。
【0168】
また、これらは適宜組み合わせて用いることができる。あるいは別の有機化合物を添加して膜の物性を変化あるいは制御することもできる。
【0169】
また、珪素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、タンタル化合物等の金属化合物を放電部へ導入するには、両者は常温常圧で気体、液体または固体いずれの状態であっても使用し得る。
【0170】
気体の場合は、そのまま放電部に導入できるが、液体や固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の気化手段により気化させて使用することができる。この目的のため、市販の気化器が好ましく用いられる。
【0171】
珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン等のように常温で液体で、且つ、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが本発明の金属化合物薄膜層の形成する方法に好適である。上記金属アルコキシドは、有機溶媒によって希釈して使用しても良く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、アセトン等の有機溶媒またはこれらの混合有機溶媒を使用することができる。
【0172】
(好ましい反応ガス組成の例)
表1、表2に好ましい反応ガス組成の一例を示すが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0173】
【表1】
Figure 2004269772
【0174】
【表2】
Figure 2004269772
【0175】
これらはあらかじめ調整されたガスとして放電部に供給してもよいし、放電部近傍で2種以上のガスを混合して下記ガス組成としてもよい。水素、酸素等の添加ガスはあらかじめ窒素もしくは希ガス等によって希釈されたものを放電空間に導入することが、連続製膜の際に薄膜の物性が安定するため好ましい。
【0176】
また、反応ガスは室温〜200℃に加温して放電部に供給されることが好ましく、更に好ましくは50〜150℃であり、更に好ましくは70〜120℃であり、特に90〜110℃であることが好ましい。温度が高いほど得られる金属化合物層が緻密で、硬度に優れた膜が得られるが高過ぎると基材が変形することがある。
【0177】
供給ガスの温度は一定であることが、連続製膜において、膜厚や膜質を安定するために好ましく、温度変動は±10℃以内であることが好ましく、±5℃以内であることが更に好ましく、±1℃以内であることが更に好ましく±0.1℃以内であることが特に好ましい。
【0178】
供給ガスの供給量も一定であることが好ましい。放電部へのガス供給量としては、反応ガス供給量(ml/秒)/放電空間の容積(ml)に対して、10−2〜10(1/秒)とすることができ、適宜調整される。
【0179】
以上の方法により酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等の非晶性の金属化合物層を好ましく作製することができる。また、これらの非晶性の金属化合物層は熱処理により、あるいはレーザー等のエネルギーを与えることによって結晶化させることもできる。
【0180】
(金属化合物層の膜厚)
本発明に係る金属化合物層の膜厚としては、1〜1000nmが好ましく得られる。
【0181】
本発明の光学フィルムは、例えば低屈折率層と高屈折率層を積層した反射防止層を有する光学フィルムまたは導電層、帯電防止層を有する光学フィルム等に好ましく用いることができる。
【0182】
本発明において、プラズマ放電装置を複数設けることによって、多層の薄膜を連続的に設けることができ、薄膜のむらもなく多層の積層体を形成することができる。複数の層を1パスで連続的に形成するためには、各層が所定の薄膜形成速度となるように調整されることが必要である。そのため、各層形成後膜厚を測定するか、反射スペクトルを測定し、その結果に基づいて薄膜形成速度をフィードバック制御することが好ましい。これによって、一定の速度で搬送される基材フィルム上に異なる組成あるいは異なる膜厚の薄膜を1パスで連続的に形成することができる。各層の薄膜形成速度を制御する方法としては、特に限定はないが、放電の印加電圧、電流、周波数、パルス条件等の放電条件、反応ガス中の各成分の比率(窒素濃度、酸素あるいは水素等の添加ガス濃度、種類、原料ガス濃度)、反応ガス供給量、電極間距離、放電部の気圧、基材温度、電極温度、反応ガス温度、放電部の温度、放電面積の変更等があげられるが、これらのみに限定されるものではない。これらの1つ以上の条件を適宜組み合わせることによって、製膜される薄膜の膜質を大きく変えることなく、薄膜形成速度を制御することができる。
【0183】
例えば、ポリエステルフィルム上に反射防止層を有する光学フィルムを作製する場合、屈折率1.6〜2.3の高屈折率層及び屈折率1.3〜1.5の低屈折率層をポリエステルフィルム表面に連続して積層し、効率的に作製することができる。
【0184】
低屈折率層としては、含フッ素有機化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された含フッ素化合物層、あるいはアルコキシシラン等の有機珪素化合物を用いてプラズマ放電処理により形成された主に酸化ケイ素を有する層が好ましく、高屈折率層としては、有機金属化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された金属化合物層、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタルを有する層あるいは窒化チタン等の金属窒化物層が好ましい。
【0185】
本発明はこれらに限定されるものではなく、層構成もこれらに限定されるものではない。例えば、最表面にフッ素含有有機化合物ガス存在下で大気圧もしくはその近傍の圧力下でのプラズマ放電処理して防汚層を設けてもよい。あるいは公知の防汚層、例えばフルオロアルキルシラン等含む組成物を塗設することもできる。
【0186】
上記の方法により、本発明においては、多層の薄膜を積層することができ、各層の膜厚むらもなく、均一な光学フィルムを得ることができる。
【0187】
金属化合物層等の薄膜の膜厚は、積層体の断面を作製し、透過電子顕微鏡(Transmission Electoron Microscope:以下、TEMと称す)で観察を行うことによって求めることができる。
【0188】
断面の作製は、具体的には積層体を基材と共に電子顕微鏡観察前処理用のエポキシ包埋樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて、厚さ約80nmの超薄切片を作製するか、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置を用いて、積層体表面にGaイオンビームを集束走査し、厚さ約100nmの薄片化した断面を切り出すことで作製することができる。
【0189】
TEMによる観察は倍率として50,000〜500,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラ等に記録する。
【0190】
TEMの加速電圧としては、80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0191】
その他、電子顕微鏡観察技法、及び試料作製技法の詳細については「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)、「電子顕微鏡Q&A」(アグネ承風社)をそれぞれ参考にすることができる。
【0192】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行なうことが好ましい。
【0193】
画像処理技術の詳細は「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にでき、画像処理プログラムまたは装置としては上記操作が可能なものであれば特に限定はされないが、一例としてMEDIA CYBERNETICS社(USA)製画像解析ソフトImage−Pro PLUSが挙げられる。
【0194】
画像処理を行なうためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナ等でデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調等を必要に応じ施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって、積層体界面に相当する箇所を抽出し、界面間の幅(Thickness)を計測する。
【0195】
同様にして少なくとも25箇所以上好ましくは50箇所以上について求めた値から平均膜厚及びその変動を算出することができる。
【0196】
このように、本発明においてはさまざまな機能を有する金属化合物層を形成した光学フィルムを提供することができる。
【0197】
この光学フィルムを有する偏光板や光学フィルムを有する表示装置は視認性に優れており、過酷な環境下であっても優れた表示性能を提供することができるのである。
【0198】
本発明の光学フィルムには必要に応じて、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、導電層、光拡散層、易接着層、防汚層、電磁波遮蔽層を単独であるいは適宜組み合わせて設けることができる。
【0199】
本発明の光学フィルムは反射防止フィルム、帯電防止フィルム、導電フィルム、電磁波遮蔽フィルム、偏光板等の保護フィルム、プラズマディスプレイ前面フィルター等に好ましく用いられる。本発明の光学フィルムは特に反射防止フィルム、導電フィルムとして有用である。
【0200】
また、本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型液晶表示装置あるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いることができる。
【0201】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0202】
実施例
〔ポリエステルフィルムの作製〕
(ポリエステルフィルム1)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物にチタンテトラブトキサイド(TBT)0.0111部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率が98%となった時点で、反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温290℃)にて重合反応を行ってポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。
【0203】
このポリエチレン−2,6−ナフタレート100部にフェニルホスホン酸0.0104部を添加し、V型ブレンダーにて混合した後、170℃にて5時間乾燥処理を行った。その後常法に従ってダイより溶融押出し、急冷して厚さ800μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に140℃で4.0倍、横方向に155℃で5.0倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で10秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0204】
(ポリエステルフィルム2)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、酢酸マンガン4水塩0.019部及び酢酸カリウム0.0025部を反応器に仕込み、内温を145℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率が95%となった時点でトリメチルホスフェート0.0108部を添加し、更に平均粒径0.25μmの二酸化ケイ素のエチレングリコールスラリー(二酸化ケイ素の10質量%/エチレングリコールスラリー)0.5部を添加した。そして十分攪拌した後、チタンテトラブトキサイド0.00876部を添加した。次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温290℃)にて重合反応を行い、固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートを得た。次いでこの溶融状態のポリエチレンテレフタレート100部にトリメチルホスフェート0.00438部を添加し、十分攪拌した後、ポリエチレンテレフタレートを得た。
【0205】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って、乾燥、溶融押出し、急冷して厚さ360μmの未延伸フィルムを作製し、次いで該未延伸フィルムを縦方向に90℃で3倍、横方向に105℃で3倍の逐次二軸延伸を行い、更に230℃で10秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。この際、横延伸前の一軸延伸フィルムに次の組成の塗液をロールコート法でフィルムの一表面に塗布した。
【0206】
〈フィルム表面に塗布した塗液の組成〉
アクリル樹脂(日本純薬(株)製ジュリマーAT−510)の3.0質量%溶
液 80.0部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(日本油脂(株)製NS240)
の3.0質量%溶液 20.0部
(ポリエステルフィルム3)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部及びチタンテトライソプロポキシド0.0293部を反応器に仕込み、内温を145℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率が97%となった時点で正リン酸0.00253部を添加し、十分攪拌した。次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温290℃)にて重合反応を行い、ポリエチレンテレフタレート(A)を得た。
【0207】
一方溶融状態のポリエチレンテレフタレート(A)に正リン酸1.008部を添加し、十分攪拌した後、固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレート(B)を得た。
【0208】
これらのポリエチレンテレフタレート(A)、(B)を常法にて乾燥した後ポリエチレンテレフタレート(A)0.8部とポリエチレンテレフタレート(B)99.2部を十分混合し、常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0209】
(ポリエステルフィルム4)
テレフタル酸のビス−β−ヒドロキシエチルエステル100部、テレフタル酸65部及びエチレングリコール29部の混合物を210〜230℃でエステル化反応を行った。反応により生成する水の留出量が13部となった時点で反応終了とし、反応生成物100部当り0.0067部の酢酸チタンを添加した後十分攪拌して、反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温285℃)にて重合反応を行ってポリエチレンテレフタレートを得た。
【0210】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出しする際、ポリエチレンテレフタレート100部当り亜リン酸0.00769部を添加し、急冷して厚さ330μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.6倍、横方向に105℃で3.7倍に逐次二軸延伸を行い、更に220℃で10秒間熱固定を行って厚さ25.0μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0211】
(ポリエステルフィルム5)
チタンテトラブトキシド10部を酢酸エチル100部に室温で溶解し、この溶液に、室温、攪拌下でリン酸5.7部を滴下した。直ちに白色沈殿が生成するとともに発熱が起こり、発熱が収まるまで30分間攪拌下で放置した後、沈殿を濾取し、この析出物(触媒)をエチレングリコールの10質量%スラリーとした。
【0212】
テレフタル酸ジメチル194部、エチレングリコール124部及び酢酸マンガン4水塩0.06部を精留塔付き反応層に入れ、常法に従ってエステル交換反応を行い、理論量のメタノールを留出させた。次いで反応生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、安定剤としてトリメチルホスフェート0.04部、さらに重縮合触媒として上記触媒スラリーをテレフタル酸ジメチルに対して、チタンとして20mmol%を加え、温度285℃、常圧で30分、更に4kPaの減圧下で15分反応を進行させた後、系内を徐々に減圧にし、撹拌下110分間反応させた。最終内温は285℃、最終内圧は49Paであった。
【0213】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0214】
(ポリエステルフィルム6)
ポリエステルフィルム5の作製において、リン酸5.7部を8.6部に変更した以外は同様にしてポリエステルフィルム6を得た。
【0215】
(ポリエステルフィルム7)
ポリエステルフィルム5の作製において、リン酸5.7部を8.6部に、触媒スラリーをテレフタル酸ジメチルに対して、チタンとして30mmol%に変更した以外は同様にしてポリエステルフィルム7を得た。
【0216】
(ポリエステルフィルム8)
エチレングリコール2.5質量部に無水コハク酸0.4質量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7質量部を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水コハク酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15質量部を加え、析出物をNo.5ろ紙で濾過し、採取し、これを100℃で2時間乾燥した。
【0217】
次に、エチレングリコール131質量部中にフェニルホスホン酸3.6質量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5質量部に、さらにエチレングリコール40質量部を加えた後、これに上記チタン化合物5.0質量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒(A)の白色スラリーを得た。
【0218】
テレフタル酸166質量部とエチレングリコール75質量部とを240℃においてエステル化反応させ、次いで得られた反応生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、重縮合触媒として上記触媒(A)スラリーをテレフタル酸の量を基準として、チタン原子量換算で10ミリモル%及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002質量部を加え、得られた反応系を温度285℃、常圧で30分間加熱し、さらに上記温度において4.0kPaの減圧下で15分間加熱して反応を進行させた後、反応系内を徐々に減圧にし、上記温度において撹拌しながら110分間加熱して反応を完了させた。このときの最終内温は285℃、最終内圧は49.3Paであった。
【0219】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0220】
(ポリエステルフィルム9)
エチレングリコール2.5質量部中に無水コハク酸0.4質量部を溶解し、この溶液中にチタンテトラブトキシド0.7質量部(無水コハク酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持して、チタンテトラブトキシドと無水コハク酸とを反応熟成させた。その後この反応系を常温に冷却し、それにアセトン15質量部を加え、生成した析出物をNo.5ろ紙で濾取し、100℃で2時間乾燥し、チタン化合物を得た。
【0221】
次に、エチレングリコール129質量部中に3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸2.8質量部を混合し、これを120℃で10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5質量部に、さらにエチレングリコール40質量部を加え、これに上記チタン化合物5.0質量部を溶解させ、この反応系を撹拌しながら120℃で60分間加熱して、微黄色透明の触媒溶液を得た。
【0222】
テレフタル酸166質量部とエチレングリコール75質量部とを240℃において、エステル化反応させ、次いで得られた生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、重縮合触媒として上記触媒溶液をテレフタル酸の量を基準として、チタン原子量換算で20ミリモル%、及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002質量部を加え、得られた反応系を温度285℃、常圧において30分間加熱し、さらに4.0kPaの減圧下で15分加熱して反応を進行させた。次に上記反応温度において、反応系内を徐々に減圧にし、撹拌下110分間加熱して反応させた。フラスコ中の最終温度は285℃であり最終内圧は49.3Paであった。
【0223】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0224】
(ポリエステルフィルム10)
エチレングリコール2.5質量部中に無水コハク酸0.4質量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7質量部(無水コハク酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この混合物を空気中、常圧下、80℃に60分間保持して、無水コハク酸とチタンテトラブトキシドとを反応熟成させた。この反応混合物を常温に冷却した後、それにアセトン15質量部を加え、形成された析出物をNo.5ろ紙で濾取し、それを100℃で2時間乾燥し、チタン化合物を得た。
【0225】
次に、エチレングリコール136質量部中にジフェニルホスフィン酸2.6質量部を混合し、この混合物を120℃で10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液141.2質量部に、さらにエチレングリコール40質量部を加え、この混合物に上記チタン化合物5.0質量部を溶解させて反応系を調製し、この反応系を120℃で60分間撹拌して、チタン化合物とジフェニルホスフィン酸とを反応させて微黄色透明の触媒溶液を得た。
【0226】
テレフタル酸166質量部とエチレングリコール75質量部とを240℃においてエステル化反応させ、次いで得られたエステル化生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、これに重縮合触媒として上記触媒溶液をテレフタル酸の量を基準として、チタン原子量換算で20ミリモル%及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002質量部を加えて反応系を調製し、この反応系を285℃、常圧で30分加熱し、さらに前記温度において、4.0kPaの減圧下で15分間加熱して反応を進行させ、次に反応系内を徐々に減圧にし、前記反応温度において撹拌下、110分間反応させた。反応系の最終温度は285℃であり、最終内圧は49.3Paであった。
【0227】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0228】
(ポリエステルフィルム11)
トリメチレングリコール2.5質量部中に無水コハク酸0.4質量部を溶解し、この溶液中に、チタンテトラブトキシド0.7質量部(無水コハク酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応混合物を、空気中、常圧下、80℃に60分間保持して、無水コハク酸とチタンテトラブトキシドとを反応熟成させた。その後この反応混合物を常温に冷却し、それにアセトン15質量部を加え、生成した析出物をNo.5ろ紙で濾取し、100℃で2時間乾燥し、チタン化合物を得た。
【0229】
次に、トリメチレングリコール131質量部中にフェニルホスホン酸3.6質量部を混合し、この混合物を120℃で10分間加熱して溶解した。このトリメチレングリコール溶液134.5質量部に、さらにトリメチレングリコール40質量部を加え、これに上記チタン化合物5.0質量部を溶解し、この反応系を120℃で60分間、加熱しながら撹拌して、フェニルホスホン酸とチタン化合物とを反応させ、この反応生成物、すなわち触媒を含む白色スラリーを得た。
【0230】
テレフタル酸166質量部とトリメチレングリコール92質量部とを240℃においてエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、これに、重縮合触媒として上記触媒スラリーをテレフタル酸のモル量を基準として、チタン原子のモル量換算で10ミリモル%及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002質量部を加えて反応系を調製した。この反応系を250℃、常圧で30分間加熱し、さらに前記温度において、4.0kPaの減圧下で、15分間加熱して反応を進行させた。次に、反応系内を、前記温度において徐々に減圧にし、撹拌下で110分加熱して反応させた。反応系の最終温度は250℃であり、最終内圧は49.3Paであった。
【0231】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0232】
(ポリエステルフィルム12)
ポリエステルフィルム4の作製において亜リン酸0.00769部を添加しないこと以外は全く同様にして二軸配向フィルムを作製した。
【0233】
(ポリエステルフィルム13)
ポリエステルフィルム4の作製において亜リン酸0.00769部を正リン酸0.0459部に変更する以外は同様にして二軸配向フィルムを作製した。
【0234】
(ポリエステルフィルム14)
ポリエステルフィルム4の作製において酢酸チタン0.0067部を0.0113部に変更し、ポリエチレンテレフタレートを得た。
【0235】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出しする際、ポリエチレンテレフタレート100部当り亜リン酸0.0427部を添加してポリエステルフィルム4の作製と同様にして厚さ25.0μmの二軸配向フィルムを得た。
【0236】
(ポリエステルフィルム15)
触媒としてチタンテトラブトキシドとリン酸との反応生成物の代わりにTBTのみを用い、触媒の添加量をテレフタル酸ジメチルに対してチタン原子換算で20mmol%となるようスラリーを添加した以外は、ポリエステルフィルム5と同様にしてポリエステルフィルム15を得た。
【0237】
(ポリエステルフィルム16)
ポリエステルフィルム8の作製において、フェニルホスホン酸3.6質量部を0.9部に変更した以外は同様にしてポリエステルフィルム16を得た。
【0238】
(ポリエステルフィルム17)
テレフタル酸ジメチル194質量部、エチレングリコール124質量部及び酢酸カルシウム0.12質量部を精留塔付き反応槽に投入し、220℃においてエステル交換反応を行い、生成した理論量のメタノールを留出除去した後、この反応混合物にリン酸0.09質量部を加えて第1段階の反応を終了した。次いで前記反応混合物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、この反応混合物に、重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドをテレフタル酸ジメチルの量を基準として、チタン原子量換算で20ミリモル%、及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002質量部を加えた。
【0239】
この反応系を温度285℃、常圧で30分加熱しさらに前記温度において4.0kPaの減圧下で15分加熱して反応を進行させた後、反応系内を徐々に減圧にし、前記温度において撹拌下110分間加熱して反応を完了させた。フラスコ内の最終温度は285℃、最終内圧は49.3Paであった。
【0240】
このポリエチレンテレフタレートを常法に従って溶融押出し、急冷して厚さ560μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.5倍、横方向に110℃で4倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で7秒間熱固定を行って厚さ40μmの二軸配向フィルムを作製した。
【0241】
(ポリエステルフィルム18)
テレフタル酸ジメチル78質量部及びエチレングリコール50質量部を酢酸マグネシウム二水和物0.05質量部を触媒として、常法に従いエステル交換反応した後、二酸化ゲルマニウムを0.01質量部を添加した。次いで、フェニルホスホン酸ジメチルエステル0.15質量部を添加した後、重合縮反応槽に移し、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して、133.3Paの減圧下、290℃で常法に従い重縮合反応を行なった。ポリエステルを溶融押出製膜して未延伸フィルムを得た後、常法に従って二軸延伸して厚さ40μmのポリエステルフィルム18を得た。
【0242】
(ポリエステル中のTi、Pの定量)
上記作製したポリエステルの所定量を塩酸と硝酸の混酸で分解し、イットリウム溶液を添加し定容とした後、JIS G1258に基づいてイットリウム内標準法により、誘導結合プラズマ発光分光法を用いてTi、P量を測定し、グラム原子比(P/Ti)を算出した。その結果を表3に示す。
【0243】
〔光学フィルムの作製〕
上記で得られたポリエステルフィルム1〜18に下記の方法でハードコート層を塗設し、その上に大気圧プラズマ処理により金属化合物層を形成し、それぞれ光学フィルム1〜18を作製した。
【0244】
(ハードコート層の塗設)
ポリエステルフィルム1〜18の上に、下記のハードコート層(紫外線硬化樹脂層)用塗布液を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線を150mJ/cm照射して塗布層を硬化させ、厚さ3μmのハードコート層(屈折率1.5)を形成した。
【0245】
〈ハードコート層塗布液の組成物〉
Figure 2004269772
(金属酸化物(酸化珪素)層の形成)
下記のプラズマ処理装置を用いて、大気圧プラズマ処理により、上記のポリエステルフィルム上に設けられたハードコート層(紫外線硬化樹脂層)上に金属化合物層を形成した。
【0246】
(プラズマ放電処理装置)
〈電極の作製〉
図2に示したプラズマ処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体で被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0247】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、アルミナ溶射膜を被覆し、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10−4で、耐熱温度は260℃であった。
【0248】
一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと同じである。
【0249】
この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして20本配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×20本(電極の数)=12000cmであった。
【0250】
対抗電極間より反応ガスの導入と使用済みガスの排気を交互に行った。
プラズマ処理装置には、固定電極側に、連続周波数13.56MHz、0.8kV/mmの高周波電圧(パール工業社製高周波電源)を供給し、ロール電極側には、連続周波数100kHz、8kV/mmの高周波電圧(ハイデン研究所製高周波電源)を供給した。また、ロール電極は、ドライブを用いてポリエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0251】
なお、固定電極とロール電極の間隙は1mm、反応ガスの圧力は大気圧+1kPaとして行った。プラズマ放電処理に用いた反応ガス(酸化珪素層形成用反応ガス)の組成を以下に記す。尚、反応ガス中の液体成分は気化器によって蒸気とし、加温しながら放電部に供給した。
【0252】
(反射防止層の形成)
上記作製した、ハードコート層を有するポリエステルフィルム上に、下記の反応ガスを用い、前記プラズマ処理装置によりプラズマ処理を行い、ハードコート層側に反射防止層を形成して光学フィルムを作製した。
【0253】
〈反射防止層の層構成、層の膜厚、反応ガスの種類〉
Figure 2004269772
ハードコート層上に、第1酸化チタン層、第1酸化珪素層、第2酸化チタン層、第2酸化珪素層の順に設けた。
【0254】
〈反応ガスの種類〉
また、反射防止層の形成に用いた反応ガスを以下に示す。
【0255】
(反応ガスA):酸化チタン層(高屈折率層)形成用
窒素 98.95体積%
反応ガス(水素ガス) 1体積%
反応ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気) 0.05体積%
(反応ガスB):酸化珪素層(低屈折率層1)形成用
窒素 96.95体積%
反応ガス(酸素ガス) 3体積%
反応ガス(テトラエトキシシラン蒸気) 0.05体積%
(反応ガスC):酸化珪素層(低屈折率層2)形成用
窒素 98.9体積%
反応ガス(水素ガス) 1.0体積%
反応ガス(メチルトリエトキシシラン蒸気) 0.1体積%
〔光学フィルムの評価〕
得られた光学フィルムについて下記のように、クラック及び膜厚均一性を評価した。その結果を表3に示す。
【0256】
(クラック)
光学フィルムを90℃、ドライで500時間処理し、表面に形成された金属化合物層に発生したクラックを目視及び顕微鏡で観察し、下記のようにランク評価した。
【0257】
◎:クラックはほとんど認められず、透明性に優れる
○:クラックは認められるが、白濁はない
△:クラックが認められ、僅かに白濁している(実用不可)
×:著しくクラックが入り、白濁している(実用不可)
本発明では、◎、○が実用可のレベルである。
【0258】
(膜厚均一性)
光学フィルムの断面を透過電子顕微鏡により観察し、第1酸化珪素層の膜厚を測定した。測定個所は光学フィルム1m×1mの範囲について25点選んだ。測定基準は以下の通り。
【0259】
◎:膜厚の標準偏差が0.5nm未満
○:膜厚の標準偏差が0.5nm以上1nm未満
△:膜厚の標準偏差が1nm以上1.5nm未満
×:膜厚の標準偏差が1.5nm以上
得られた結果を表3に示す。なお、第1酸化珪素層の膜厚が変動すると反射光の色むらとなりやすく、△以上は実用可能レベルである。
【0260】
【表3】
Figure 2004269772
【0261】
表3から、本発明の光学フィルムは、膜厚の均一性に優れ、クラックが入りにくい光学フィルムであることが分かる。
【0262】
〔表示装置の評価〕
作製した光学フィルム1〜18(反射防止フィルム)を市販のプラズマディスプレイパネル(PDP−503HD、パイオニア(株)製)の最前面に接着剤で貼り付けて、それぞれ表示装置1〜18を作製した。得られた表示装置を、床から75cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部にパルック蛍光灯(FL40SS・ELW/37型、3波長域発光形、長波長側のピーク発光波長は610nm、37W、松下電器産業(株)製)2本を1セットとして、1.5m間隔で8セット配置した。このとき評価者が表示装置正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に前記蛍光灯がくるように配置し、蛍光灯の写り込みを下記のようにランク評価した。その結果を表4に示す。
【0263】
◎:近くの蛍光灯の写り込みまでゆがみもなく、気にならない
○:近くの蛍光灯の写り込みがややゆがんで見えるが、気にならない
△:遠くの蛍光灯の写り込みもややゆがんで、気になる
×:遠くの蛍光灯の写り込みもゆがんで見え、気になる
本発明では、×は改善が求められるレベルである。
【0264】
【表4】
Figure 2004269772
【0265】
表4より、本発明の反射防止フィルムを用いた表示装置は、比較に対して優れていることが明らかである。
【0266】
【発明の効果】
本発明により、膜厚の均一性に優れ、高温で長時間放置してもクラックが入りにくい光学フィルム、その製造方法及びその光学フィルムを用いた反射像のゆがみのない表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ処理装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 大気圧プラズマ処理装置
11 第1電極
12 第2電極
20 電圧印加手段
21 第1電源
22 第2電源

Claims (10)

  1. 触媒としてチタン化合物を用いて二官能性芳香族カルボン酸のエチレングリコールエステル及び/またはその低重合体を重縮合反応させて得たポリエステルを、ダイから溶融押出し、急冷して、所望によりさらに延伸、熱固定処理を施して製造したフィルムの上に、直接または他の層を介して、窒素を主成分とする雰囲気下において大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有する光学フィルムであって、該ポリエステルがリン化合物の少くとも1種を含有し、リン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.6〜4.0であり、かつリン原子が150ppm以下であることを特徴とする光学フィルム。
  2. リン酸とアルキル基が炭素数で2以上のチタンアルコキサイドとを予め反応させて得られる反応生成物を触媒として使用することを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
  3. 反応生成物が、リン酸/チタンアルコキサイドのモル比を2〜4として有機溶媒中で反応して得られたものであることを特徴とする請求項2記載の光学フィルム。
  4. ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の光学フィルム。
  5. ポリエステルフィルム上に活性線硬化樹脂層を有し、その上に直接または他の層を介して大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光学フィルム。
  6. 金属化合物層が反射防止層を構成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の光学フィルム。
  7. 触媒としてチタン化合物を用いて二官能性芳香族カルボン酸のエチレングリコールエステル及び/またはその低重合体を重縮合反応させて得たポリエステルを、ダイから溶融押出し、急冷して、所望によりさらに延伸、熱固定処理を施して製造したフィルムの上に、直接または他の層を介して、窒素を主成分とする雰囲気下において大気圧プラズマ処理によって形成された金属化合物層を有する光学フィルムの製造方法において、該ポリエステルがリン化合物の少くとも1種を含有し、リン原子とチタン原子のグラム原子比(P/Ti)が0.6〜4.0であり、かつリン原子が150ppm以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  8. 大気圧プラズマ処理が、対向する第1電極と第2電極との間に窒素を主成分とするガスを供給し、該第1電極と該第2電極との間に高周波電圧を印加することにより該ガスを励起し、ポリエステルフィルムを励起した該ガスに晒すことにより該ポリエステルフィルム上に金属化合物層を形成させるものであり、かつ、該高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、該第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする請求項7記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 第1の周波数ωが200kHz以下であり、第2の周波数ωが800kHz以上であることを特徴とする請求項8記載の光学フィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項記載の光学フィルムを有することを特徴とする表示装置。
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