JP2004347778A - 光学フィルム、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】すじ状の故障が低減されかつ、均一な金属酸化物層を形成でき、さらに、高温高湿条件でも物性変動することのない、また、真空プロセスを必要としない光学フィルムを提供し、更に、液晶表示装置が発生する熱や、使用環境における熱に対して偏光特性が安定した偏光板を提供し、かつ従来と同じ厚みで、表示品位が高く、かつ高輝度で、パネルサイズの大きい液晶表示装置を提供する。
【解決手段】セルロースの残留ヒドロキシル基と、芳香族化合物を共有結合させたセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して主に窒素を含有する大気圧近傍のガス雰囲気下でプラズマ処理によって形成された金属酸化物層を有する光学フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードコート層を有する光学フィルム、該フィルムを有する偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気圧近傍の圧力下において対向電極間にパルス化された電界を印加することによりグロー放電を生じさせ、反応性ガスによりプラズマを生成させ基材表面に機能性薄膜を形成するグロー放電プラズマ処理方法(大気圧プラズマ処理法)についてはよく知られている。
【0003】
大気圧プラズマ処理法は真空プロセスを用いる方法と比較して高真空設備がいらないため安価に機能性膜を基材上に形成できる。
【0004】
しかしながら、反応ガスとして、ヘリウム等の希ガスを用いるとそのメリットが失われてしまう。そのため、ヘリウム等に比べ安価なアルゴンや窒素気体中での安定した処理が可能とする方法として安価な窒素雰囲気でのプラズマ処理法が提案(例えば、特許文献1参照。)されている。しかしながら、窒素雰囲気でのプラズマ処理は、窒素ガスは放電開始電圧が高く高密度で安定なプラズマ状態を維持することがヘリウムよりも難しいため、形成される機能性膜の膜質が十分でなく、ヘリウム等の希ガスを用いた場合に比べ、特性が劣ってしまったり、一方で、膜質をあげるため放電を強くすると均一な膜が得にくい、また、すじ状の故障が発生しやすいなどその改善が求められていた。
【0005】
このため、例えば、2周波印加による大気圧プラズマ法が提案されており、例えば、大気圧近傍の圧力下において対向電極間に高圧電流によるパルス化された電界を印加することによりグロー放電を生じさせ、更に高周波交流パルス波を印加してプラズマを維持させ反応性ガスによりプラズマを生成させ基材表面に機能性薄膜を形成するグロー放電プラズマ処理方法(大気圧プラズマ処理法)が開示されて(例えば、特許文献2参照。)いる。
【0006】
透明性に優れ、光学的に等方性の高いトリアセチルセルロース基材上に上記の様に、大気圧プラズマ処理によって、例えば反射防止層等の機能性層を形成して反射防止フィルム等の光学フィルムを得ることができる(例えば、特許文献3参照。)ことは公知である。
【0007】
しかしながら、前記トリアセチルセルロース等を基材としたフィルムにおいては、最近の厳しい光学的性質や物性に関する要求、例えば、光学的等方性や、特に高温高湿条件での寸度安定性等の物性変動に対する要求を満足することが難しくなってきている。また、製膜時や、その後の機能性層の形成時における、吸湿に起因するしわの発生や、それによるスジ故障等に対しても満足すべき性能を得ることが難しくなってきている。
【0008】
これに対し、セルロースエステルの材料の側からも、(例えば、特許文献4、5参照。)そして特に特許文献3等に記載されているように、セルロースエステルを構成するカルボン酸残基として芳香族基例えばベンゾイル、ナフトイル等のアシル基を有する芳香族セルロースエステルを用いる試みが行われている。
【0009】
このように、従来用いられてきたトリアセチルセルロース等を基材とした光学フィルムの欠点を改善し、すじ状の故障が低減されかつ、均一な金属酸化物層を形成でき、耐久性に優れ、かつ、特に金属酸化物層を形成したときに、最近の厳しい光学的性質の一つとして反射光の色むら等が低減された光学フィルムを得ることのできる光学フィルムに対する要求は依然として大きいものがある。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−181573号公報 (第2〜3頁)
【0011】
【特許文献2】
特開2002−110397号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献3】
特開2002−322201号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【0013】
【特許文献4】
特開2002−179701号公報 (特許請求の範囲、合成例)
【0014】
【特許文献5】
特開2002−241512号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、すじ状の故障が低減されかつ、均一な金属酸化物層を形成できる光学フィルムを提供することであり、さらに、高温高湿条件でも物性変動することのない、また、真空プロセスを必要としないことから大幅なコスト低減が可能な光学フィルムを提供することにある。
【0016】
別の目的は、液晶表示装置が発生する熱や、使用環境における熱に対して偏光特性が安定している偏光板を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、従来と同じ厚みで何の問題も生じることなく、表示品位が高く、かつ高輝度で、パネルサイズの大きい液晶表示装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0019】
1.下記式(1)及び(2)を満足するセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と、前記一般式(1)で表される化合物が共有結合を形成しており、該一般式(1)で表される化合物が共有結合しているヒドロキシル基は、セルロースを構成するグルコース単位が有する3個のヒドロキシル基に対し、0.1〜0.9であり、少なくとも一方の面に、活性線硬化樹脂層を、直接または他の層を介して設けられていることを特徴とする光学フィルム。
【0020】
式(1) 2.1≦A+B≦2.9
式(2) 0≦B≦0.8
〔式中、Aはアセチル基、Bはプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表す。〕
2.少なくとも一つの活性線硬化樹脂層の上に、直接又は他の層を介して酸素原子と窒素原子のうち少なくともいずれか一方と、金属原子とを含んで構成される金属酸化物層が設けられていることを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
【0021】
3.分子内に3個以上の芳香族環を有する化合物を含有することを特徴とする前記2に記載の光学フィルム。
【0022】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0023】
5.主に窒素を含有するガス雰囲気下で、大気圧プラズマ処理により形成された金属酸化物層を有することを特徴とする前記4に記載の偏光板。
【0024】
6.前記4又は5に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
本発明を更に詳しく説明する。本発明のセルロースエステルは、前記のように脂肪酸アシル基と置換もしくは無置換の芳香族基とを有する。ここで置換もしくは無置換の芳香族基としては前記の一般式(1)で表される基があげられる。まず、一般式(1)について説明する。
【0025】
はセルロースアセテートの残留ヒドロキシ基と共有結合が可能な置換基であり、置換基の例としては、グリシジル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、カルボキシル基、ホルミル基、ベンゾイルエステル基が挙げられる。Rは置換基で、置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、グリシジル基、ホルミル基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基およびアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)、が含まれる。上記Rは脂肪族基である。置換基の数は、一個乃至五個であることが好ましく、一個乃至三個であることがより好ましく、一個乃至二個であることがさらに好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基およびウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基およびカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、およびアルコキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基が最も好ましい。
【0026】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチルおよび2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシおよびオクチルオキシが含まれる。
【0027】
上記アルケニル基の炭素原子数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよびイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましい。
【0028】
次に、セルロースの水酸基への芳香族基の置換は、アシル基の場合、一般的には芳香族カルボン酸クラロイドあるいは芳香族カルボン酸から誘導される対称酸無水物及び混合酸無水物を用いる方法等が挙げられる。特に好ましいのは芳香族カルボン酸から誘導した酸無水物を用いる方法(Journal of Applied Polymer Science、Vol.29、3981〜3990(1984)記載)が挙げられる。上記の方法として本発明のセルロースエステル化合物の製造方法としては、セルロース脂肪酸ジエステルを一旦製造したのち、残りの水酸基に前記一般式(1)で表される芳香族化合物と反応させる方法があげられる。セルロース脂肪酸エステルの製造方法自体は周知の方法であるが、これにさらに芳香族基を導入する後段の反応は、該芳香族基の種類によって異なるが好ましくは反応温度0〜120℃、より好ましくは20〜80℃で、反応時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは30〜300分で行われる。上記のいずれの反応も、反応を無溶媒又は溶媒中のいずれで行っても良いが、好ましくは溶媒を用いて行われる。溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサンなどを用いることができる。芳香族ウレタン、チオウレタン結合の形成及び芳香族エポキシ結合形成の場合は、セルロースエステルと前記一般式(1)で表される芳香族化合物を混合し、加熱することで形成されるが、触媒として二ラウリン酸ジブチルすず等のアルキル金属錯体を使用してもよい。(Journal of Applied Polymer Science、Vol.58、1263〜1274(1995)記載)
芳香族基の置換度は、残存する水酸基に対して0.9以下、好ましくは0.1〜0.9である。0.9を越える場合は、該セルロースエステルの溶媒への溶解度が低下し、ヘイズの増加が発生する等光学特性の著しい劣化が見られる。また、芳香族導入による疎水性の増加で、接触角が増大し、偏光板化する時の鹸化特性が著しく劣化する。一方0.1未満の場合はフィルム自体の吸湿が大きくなり、しわの発生や、それに伴うスジ故障に対応できない。
【0029】
以下に一般式(1)で表わされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定するものではない。
【0030】
【化2】
Figure 2004347778
【0031】
【化3】
Figure 2004347778
【0032】
一般式(1)の化合物の添加量としては特に限定されないが、フィルム強度、平面性の点からは基質ポリマーに対し1〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは15〜55質量%である。
【0033】
本発明に用いられるセルロースエステルは、フィルム強度の観点から、重合度250〜400、炭素数4以下のアシル基の平均置換度2.0〜2.9が好ましく、平均置換度2.35〜2.9%が更に好ましい。
【0034】
セルロースエステルは、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることができる。特に綿花リンター(以下、単にリンターということがある)から合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることが好ましい。
【0035】
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムの製造は、セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液を塗布、乾燥して行われる。ドープ液には必要に応じて各種添加剤を混合することができる。
【0036】
ドープ液中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これ等を両立する濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは15〜25質量%である。
【0037】
本発明のドープ液に用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。
【0038】
本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの平均酢化度55%では良溶剤になり、平均酢化度60%では貧溶剤となってしまう。
【0039】
本発明に用いられる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類等が挙げられる。
【0040】
また、本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0041】
上記記載のドープ液を調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0042】
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は、外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0043】
溶剤を添加した後の加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ溶剤が沸騰しない範囲の温度が、セルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃が更に好ましい。また、圧力は、設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0044】
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾材を用いて濾過する。濾材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾材の目詰まりが発生しやすいという問題点がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの範囲の濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
【0045】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(R)等のプラスチック製の濾材やステンレス等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
【0046】
ドープ液の濾過は通常の方法で行うことができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい濾過の温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃が更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6×10Pa以下であることが好ましく、1.2×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが更に好ましい。
【0047】
流延(キャスト)工程における支持体は、無端ベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は0℃〜溶剤の沸点未満の温度が好ましい。温度が高い方が乾燥速度が速くできるが、あまり高過ぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜50℃であり、5〜30℃がさらに好ましい。支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水バットを支持体に接触させる方法がある。温水バットを用いる方が、熱の伝達が効率的に行われ、支持体の温度が一定になる間での時間が短く、好ましい。温風を用いる場合は、目的の温度よりも高い温度の風を使う必要があることがある。
【0048】
光学フィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜120%が好ましく、更に好ましくは20〜40%または60〜120%であり、特に好ましくは20〜30%または70〜115%である。
【0049】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。残留溶媒量=((加熱処理前のフィルム質量−加熱処理後のフィルム質量)/加熱処理後のフィルム質量)×100(%)尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間加熱することをいう。
【0050】
また、光学フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましく、更に0.5質量%以下が好ましい。
【0051】
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、テンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。
【0052】
支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多いところで、テンター方式で幅保持または延伸を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため好ましい。フィルムを乾燥させる手段は、特に制限なく、熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で段階的に高くしていくことが好ましく、寸法安定性を良くするためには50〜140℃で行うことがさらに好ましい。
【0053】
光学フィルムの膜厚は、薄い方が出来上がった偏光板が薄くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が容易になるため好ましいが、薄過ぎると、透湿度や、引き裂き強度等が劣化する。これ等を両立する光学フィルムの膜厚は、10〜65μmが好ましく、20〜60μmが更に好ましく、35〜50μmが特に好ましい。
【0054】
本発明の光学フィルムは、高い透明性、透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材に用いられるのが好ましい。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等が挙げられる。本発明の光学フィルムは、上記記載の中でも偏光板、偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。
【0055】
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムをアルカリ鹸化処理した後に、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ鹸化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、光学フィルムを高温の強アルカリ液中に浸ける処理のことをいう。
【0056】
本発明において、上記のようにして製造された光学フィルムの面内方向におけるレターデーションR0(nm)は小さいほど良く、100nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。或いは、位相差フィルムとして用いる場合は、R0(nm)は20〜1000nmのものが好ましく用いられる。
【0057】
レターデーションR0を求めるには、自動複屈折率計を用いてセルロースエステルフィルムを590nmの波長において3次元屈折率測定を行い、遅相軸角θ1及び屈折率Nx、Nyを求め、下記式に従って面内方向のレターデーションR0を算出する。
【0058】
R0=(Nx−Ny)×d式中、Nxはフィルムの製膜方向に平行な方向におけるフィルムの屈折率、Nyは製膜方向に垂直な方向におけるフィルムの屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。
【0059】
本発明の光学フィルムの製膜方向(長手方向に相当する)と、フィルムの遅相軸とのなす角度θ0が0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。特に偏光板保護フィルムとして用いる場合に、得られる偏光板の偏光度向上に寄与する。ここで遅相軸とは、フィルム面内の屈折率が最も高くなる方向である。
【0060】
本発明の光学フィルムには、必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤、染料等の添加剤を添加してもよい。
【0061】
本発明では、可塑剤機能を有する多価アルコールエステルと従来の可塑剤を併用することができる。従来の可塑剤の使用量は、ゼロまたは多価アルコールエステルを使用しないときに比べ少ない量が好ましく、具体的にはセルロースエステルに対して0〜30質量%が好ましく、0〜25質量%が更に好ましく、特に好ましくは0〜20質量%である。
【0062】
本発明に用いることのできる可塑剤としては特に限定されないが、例えばリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤等を好ましく用いることができる。リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、グリコレート系可塑剤ではブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。これ等の可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0063】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明においては、特に370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0064】
本発明のセルロースエステルフィルムに添加される紫外線吸収剤は、分子内に芳香族環を2つ以上有する紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0065】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例として、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のTINUVIN109、171、326、327、328等を好ましく用いることができるが、本発明はこれ等に限定されるものではない。
【0066】
紫外線吸収剤は単独で用いてもよいし、2種以上の混合物であってもよい。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0067】
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコール、メチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0068】
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0質量%が好ましく、0.6〜2.0質量%がさらに好ましい。
【0069】
本発明には必要に応じてマット剤として酸化珪素等の微粒子を加えてもよい。マット剤微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
【0070】
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、平均径の小さい方は透明性に優れるため、本発明においては、微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは7〜20nmである。
【0071】
酸化珪素の微粒子としては特に限定されないが、例えばアエロジル(株)製のAEROSIL200、200V、300、R972、R972V、R972CF、R974、R202、R805、R812、OX50、TT600等が挙げられ、好ましくはAEROSIL 200、200V、R972、R972V、R974、R202、R805、R812等が挙げられる。
【0072】
各種添加剤はセルロースエステルが溶解しているドープ液にバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特にマット剤は濾材への負荷を減らすために一部または全量をインライン添加することが好ましい。
【0073】
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性を良くするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは3〜5質量部である。
【0074】
本発明において、セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液と、各種添加剤と少量のセルロースエステルとを溶解させた溶液をインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサーが好ましく用いられる。インラインミキサーを用いる場合、高圧下で濃縮溶解することが好ましく、加圧容器の種類は特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、圧力計、温度計等の計器類を適宜配設するのが好ましい。
【0075】
本発明では、光学フィルム上に直接または金属酸化物層等の上に活性線硬化樹脂層を形成することが特徴であり。本発明でいう活性線硬化樹脂層とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。また、具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0076】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
【0077】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
【0078】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
【0079】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。
【0080】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
【0081】
また、モノマーが液晶性を有していても良い。本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
【0082】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することが出来る。紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cmである。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することが出来る。
【0083】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0084】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、製膜で用いられる公知の方法を適用することができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
【0085】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0086】
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止するために、また対擦り傷性等を高めるために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることも出来、それらの種類としては、前述のマット剤の微粒子とほぼ同様である。これらの微粒子粉末の一次平均粒径としては、0.005〜1μmが好ましく0.01〜0.1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部となるように配合することが望ましい。
【0087】
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μm程度の防眩層であってもよい。
【0088】
本発明では、紫外線硬化樹脂層等の上に金属酸化物層を形成することが特徴であり。このようにして形成された金属酸化物層を用いると、ピンホール欠陥が少ないという特徴が得られることが判った。経時でもピンホールは増加しないことも大きな効果である。
【0089】
これらの金属酸化物層は、低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層等の反射防止層として有用であり、あるいは導電性層や帯電防止層等として好ましく用いられる。
【0090】
本発明に係る金属酸化物層を形成する方法としては、塗布により金属酸化物層を設けても良いが、大気圧もしくはその近傍の圧力下におけるプラズマ放電処理が好ましく用いられる。
【0091】
請求項5では、光学フィルムが、大気圧プラズマ処理によって形成された金属酸化物層を有することが特徴である。
【0092】
以下、本発明で用いることのできるプラズマ処理について説明する。本発明において、前記反射防止フィルムとするには、前記セルロースエステルフィルムに直接或いは他の層を介して主として窒素を含有する大気圧近傍のガス雰囲気下で、金属化合物を含有する反応ガスを用いてプラズマCVD処理によって金属酸化物層を形成する。
【0093】
プラズマCVD法としては、例えば特開平11−181573号、特開2000−26632号、同2002−110397号等に記載の方法等公知の方法をもちいることができるが、本発明において、特に主として窒素を含有する大気圧近傍のプラズマ放電処理によって金属酸化物層を形成するには、以下に詳説する2周波電源を用いる方法が特に好ましく用いられる。
【0094】
以下に、本発明に係わるプラズマ放電処理により金属酸化物層を形成する方法を図1、2を用いて説明する。
【0095】
図1は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0096】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0097】
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの周波数ω、電界強度V、電流Iの第1の高周波電界が印加され、また第2電極12からは第2電源22からの周波数ω、電界強度V、電流Iの第2の高周波電界が印加されるようになっている。第1電源21は第2電源22より高い高周波電界強度(V>V)を印加出来、また第1電源21の第1の周波数ωは第2電源22の第2の周波数ωより低い周波数を印加出来る。
【0098】
第1電極11と第1電源21との間には、第1フィルタ23が設置されており、第1電源21から第1電極11への電流を通過しやすくし、第2電源22からの電流をアースして、第2電源22から第1電源21への電流が通過しにくくなるように設計されている。
【0099】
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2フィルター24が設置されており、第2電源22から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源21からの電流をアースして、第1電源21から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0100】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、後述の図2に図示してあるようなガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電界を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、後述の図2に図示してあるような電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0101】
また、図1に前述の高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波電圧プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0102】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることが出来るので、何回も処理され高速で処理することも出来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することも出来る。
【0103】
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0104】
本発明で好ましく用いられる気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0105】
図2は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0106】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω、電界強度V、電流Iの第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ωであって高周波電圧V、電流Iの第2の高周波電界をかけるようになっている。
【0107】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されており、該第1フィルターは第1電源41からの電流がアース側へ通過しにくくし、第2電源42からの電流がアース側に通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42からの電流がアース側へ通過しにくくし、第1電源41からの電流をアース側に通過し易くするように設計されている。
【0108】
なお、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V>V)を印加することが好ましい。また、周波数はω<ωとなる能力を有している。
【0109】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。図では配管等は示していないが、角筒型固定電極群36の間隙より放電空間32へとガスGが供給され、同様に角筒型固定電極群36の間隙より処理排ガスG′を排出する。
【0110】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0111】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0112】
図3は、図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0113】
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて電極表面の温度を均一に制御するための媒体が循環できるようになっている。
【0114】
図4は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0115】
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有し、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の電極表面の温度を調節できるようになっている。
【0116】
なお、角筒型固定電極は、上記ロール電極に対向して複数本設置することができ、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0117】
図4に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0118】
図3及び4において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は膜厚で0.5〜4mmが好ましく、特に1〜2mmが好ましい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0119】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料等を挙げることが出来るが、後述の理由から、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0120】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1nm〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5nm〜2mmである。
【0121】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0122】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0123】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
Figure 2004347778
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0124】
また、第2電源(高周波電源)としては、
Figure 2004347778
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0125】
本発明においては、このような電圧を印加して、安定したグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用することが望まれる。
【0126】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は1〜50W/cmが好ましい。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0127】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0128】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0129】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0130】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
Figure 2004347778
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)および(e)〜(h)が好ましく、特に、(a)が好ましい。
【0131】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0132】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0133】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0134】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0135】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655号に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0136】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0137】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0138】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0139】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0140】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPS(X線光電子スペクトル)により誘電体層の断層を分析することにより測定できる。
【0141】
本発明の光学フィルムの製造方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0142】
また、基材と接する側の誘電体の表面と、接している基材の裏面との間の動摩擦係数は1.5以下であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜1.2であり、更に好ましくは0.01〜0.9であり、更に好ましくは0.01〜0.7である。
【0143】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150〜500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0144】
本発明の金属酸化物薄膜層の形成方法に用いる反応ガスについて説明する。薄膜層を形成するための反応ガスは、主に窒素を含むガスである。すなわち、窒素ガスが50%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは70%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは90体積%〜99.99体積%であることが望ましい。反応ガスには窒素のほかに希ガスが含有していてもよい。
【0145】
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等であり、本発明では、ヘリウム、アルゴン等が窒素に添加されて用いられてもよい。
【0146】
窒素ガスは安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、反応ガスには薄膜を形成するための原料として、反応性ガスが添加される。該プラズマ中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着するなどして薄膜が形成される。
【0147】
更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、過酸化水素、オゾン等を0.1体積%〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。これらは適宜選択される。
【0148】
本発明の薄膜形成方法を実施するにあたり、使用するガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、窒素ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスの混合ガスで、本発明においてこの混合ガスを反応ガスという。反応性ガスは、反応ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0149】
光学フィルムとしての反射防止フィルムにおける、反射防止層は、通常、基材よりも屈折率の高い高屈折率の層と基材よりも屈折率の低い低屈折率の層を組み合わせることにより達成される。構成の例としては、単層、多層の各種知られているが、多層のものとしては基材側から高屈折率層と低屈折率層の2層から成る構成や、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材等よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)、高屈折率層、低屈折率層の順に積層することや、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層以上を積層すること等が提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を設けることが好ましい。
【0150】
基材面に(中屈折率層を設ける場合もある)高屈折率層、その上に低屈折率層を順に積層し、高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚を光の波長に対し所定の値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましく、屈折率と膜厚は、分光反射率の測定より計算して算出し得る。
【0151】
例えば、反射防止フィルムの低屈折率層は、珪素化合物、又は珪素化合物とフッ素化合物の混合物、又はフッ素系化合物の層が好ましく用いられる。
【0152】
高屈折率層としてはチタン化合物を、中屈折率層形成用としては錫化合物又はチタン化合物と珪素化合物の混合物(又は高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層、低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を用いることが出来る。
【0153】
上記低屈折率層や中屈折率層、高屈折率層等の金属化合物薄膜の形成に使用し得る反応性ガスについて、以降、主に説明する。
【0154】
反射防止層薄膜は、大まかに、低屈折率層薄膜には、フッ素化合物または珪素化合物を使用し、中屈折率層薄膜には、スズまたは低屈折率層薄膜に使用する化合物と高屈折率層薄膜に使用する化合物を併用する場合もあり、高屈折率層薄膜にはチタン化合物やジルコニウム化合物またはタンタル化合物を使用することが出来る。また、フッ素化合物は防汚層薄膜にも使用し得る。
【0155】
本発明に有用な反応性ガスとして用いる有機フッ素化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましい。有機フッ素化合物としては、四フッ化炭素、六フッ化炭素、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭素化合物;二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物;更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を挙げることが出来る。これらは単独でも混合して用いてもよい。上記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等を挙げることが出来る。更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。また、上記の化合物は混合して用いても良い。また、本発明に係わる有機フッ素化合物が常温常圧で気体である場合は、反応性ガスの成分としてそのまま使用出来るので最も容易に本発明の方法を遂行することが出来る。しかし、有機フッ素化合物が常温常圧で液体または固体である場合には、気化手段により、例えば加熱、減圧等により気化して使用すればよく、適切な有機溶媒に溶解して用いてもよい。上記有機フッ素化合物は、有害ガスとしてのフッ化水素を生成しないものが好ましく、上記のものは何れも安全に使用し得る。また、有機フッ素化合物ガスを用いることによって、処理面にフッ素含有基を形成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得る撥水膜を得ることが出来、防汚層薄膜に応用出来る。本発明に有用な反応性ガスに有機フッ素化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしての有機フッ素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0156】
珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。また、上記記載の珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシランなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。
【0157】
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、オルガノシラン、含フッ素有機シラン化合物などを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0158】
反応ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0159】
中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜を形成し得る反応性ガス化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、エトラエチルスズ、エトラメチルスズ、二酢酸ジ−n−ブチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、ペンタイソプロポキシタンタルなどから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、導電性層薄膜膜あるいは帯電防止層薄膜、あるいは反射防止層薄膜の中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜として有用な金属酸化物層を形成することが出来る。
【0160】
チタン化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。高屈折率層薄膜として有用なチタン化合物は、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、上記記載のチタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトライソプロポキシチタンなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。反応ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中のチタン化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0161】
また、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜10体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0162】
本発明に係わる金属酸化物層は、大気圧プラズマCVDにおいて、有機金属化合物、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含む有機金属化合物を反応性ガスとして用い形成される金属酸化物層である。反応性ガスのうち、より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、含金属錯体から選ばれるものが好ましい。
【0163】
上記または上記以外の反応性ガスを適宜選択して、本発明の薄膜形成方法に使用することにより前記の低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層のほか、様々な高機能性の薄膜を得ることも出来る。その一例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0164】
電極膜:Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜:SiO、SiO、Si、Al、Al、Y
透明導電膜:In、SnO
エレクトロクロミック膜:WO、IrO、MoO、V
蛍光膜:ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜:Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe、Co、Fe、Cr、SiO、AlO
超導電膜:Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜:a−Si、Si
反射膜:Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜:ZrC−Zr
選択性透過膜:In、SnO
反射防止膜:SiO、TiO、SnO
シャドーマスク:Cr
耐摩耗性膜:Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜:Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜:W、Ta、Ti
潤滑膜:MoS
装飾膜:Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
高屈折率膜:TiO、ZrO、Ta
本発明の光学フィルムの金属化合物薄膜は、上述のような、大気圧もしくはその近傍の圧力下で上述のような反応ガスを用いて金属化合物薄膜を形成する。
【0165】
薄膜の膜厚としては、前記のように、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0166】
本発明の方法で形成される薄膜はスパッタリングや蒸着などの薄膜形成方法と異なる柔軟性を有し、丈夫さにおいてもそれらの方法によるものより格段に優れている。
【0167】
更に、本発明の光学フィルムには窒素を用いた大気圧プラズマ処理によって分子内に親水性基と重合性不飽和結合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことにより、必要に応じて親水性の重合膜を形成させることも出来る。上記親水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、1級もしくは2級または3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基等を挙げることが出来る。また、ポリエチレングリコール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜を形成することが可能である。上記モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルなどを挙げることが出来、2種以上併用することも出来る。
【0168】
本発明に係わる積層膜の形成方法により、反射防止フィルムを作製する場合、電磁波遮蔽効果を有する層を設けてもよい。電磁波遮蔽効果を有する層の表面比抵抗は0.01〜500Ω/□、より好ましくは0.01〜10Ω/□である。透過率を低下させないため透明導電層を用いることが好ましい。
【0169】
透明導電層としては、金属層、導電性ポリマー層等を挙げるこができるが、前記酸化スズ、ITO等の金属酸化物層等も上記の表面比抵抗とすれば、もちいることができる。
【0170】
透明導電層を形成する金属としては、例えば銀、パラジウム、金、白金、ロジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、錫、タングステン、イリジウム、鉛単独もしくはこれらの2種以上の合金を挙げることができるが、好ましくは銀、パラジウム、金、白金、ロジウム単独もしくはこれらの合金である。この中で銀とパラジウムの合金が好ましく、このとき銀の含有率は60質量%乃至99質量%が好ましく、80質量%乃至98質量%が更に好ましい。金属層の膜厚は1〜100nmが好ましく、5〜40nmが更に好ましく、10〜30nmが最も好ましい。膜厚が1nm未満では電磁波遮蔽効果が乏しく、100nmを超えると可視光線の透過率が低下する。透明導電層を形成する金属酸化物としては、例えば酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ITO、IZO、ATOなどを挙げることができる。この膜厚は20〜1000nmが好ましい。さらに好ましくは40〜100nmである。
【0171】
これら金属透明導電層と酸化物透明導電層を合わせて用いるのも好ましい。また、同一層内に金属と導電性金属酸化物が共存することも好ましい。金属層の保護、酸化劣化防止および可視光線の透過率を高めるために透明酸化物層を積層することができる。この透明酸化物層は導電性があってもなくてもかまわない。透明酸化物層としては例えば2〜4価金属の酸化物、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金属アルコキサイド化合物等の薄膜が挙げられる。透明導電層、透明酸化物層を形成する方法としては特に制限はなく、任意の加工処理方法を選択することが可能である。例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法あるいはPVD法、該当する金属あるいは金属酸化物の超微粒子の塗布、金属シートの接着等いずれの公知技術も用いることが可能である。
【0172】
また、基材上に、その他の層として、赤外遮蔽効果を有する層を別に設けてもよい。前記の染料をこの層に含有してもよい。750nmから1100nmまでの赤外線が最も問題であり、この領域に対し遮蔽効果を有することが好ましい。赤外線遮蔽効果を付与するには透明プラスチック支持体に近赤外吸収性化合物を混合する方法も用いることができる。例えば銅原子を含有する樹脂組成物(特開平6−118228号公報)、銅化合物、リン化合物を含有する樹脂組成物(特開昭62−5190号公報)、銅化合物、チオ尿素誘導体を含有する樹脂組成物(特開平6−73197号公報)、タングステン系化合物を含有する樹脂組成物(米国特許第3,647,729号公報)などを形成することによって容易に製造できる。銀を透明上に成膜する方法は、電磁遮蔽に加えて赤外線遮蔽効果を持たせることができる。
【0173】
本発明においては、表面にアンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することも好ましい。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0174】
本発明には、ハードコート層、潤滑層、防汚層、帯電防止層あるいは中間層を設けることも好ましい。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シロキサン系のポリマー、オリゴマーまたはモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。シリカ系のフィラーをハードコート層に添加することもできる。反射防止膜の最表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、反射防止膜表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例、シリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤またはその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0175】
反射防止膜の最表面に設けた有機基を有する酸化珪素の膜は防汚層として作用し、反射防止層の表面エネルギーを下げ、親水性、親油性の汚れを付きにくくするものである。防汚層の厚さは2nm〜100nm、好ましくは5nm〜30nmである。表面の純水での接触角は70〜180°が好ましく、さらに好ましくは80〜160°である。
【0176】
本発明に係わる反射防止フィルムの分光反射率は分光光度計により測定を行うが、基材フィルムの上の反射防止層の反対側を(観察側の裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行ってから、400〜700nmの波長について反射光を測定する。反射率は400〜700nmの波長における平均値が0.4%以下であることが好ましく、最低の反射率は0.2%未満であることが好ましく、測定波長の範囲内において、反射率がほぼ平坦な反射スペクトルを有することが好ましく、反射光のムラがないことが好ましい。或いは、反射光としてやや青〜紫色の色味を有しているものが好まれる。
【0177】
偏光板は、本発明に係わる反射防止フィルムをもちいて、一般的な方法で作製することが出来る。先ず、セルロースエステルフィルムと反射防止フィルムをアルカリケン化処理し水洗し乾燥しておく、一方、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、長さ方向に一軸延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて上記フィルムの鹸化された面を貼り合わせることによって偏光板を得ることが出来る。
【0178】
この偏光板を作製する過程において、鹸化処理したセルロースエステルフィルムの何れかの面、また反射防止フィルムの反射防止層のある面の反対面を貼り合わせる際、本発明に係るセルロースエステルフィルム及び本発明の反射防止フィルムを使用することによって、貼り合わせを良好に行うことが出来、また貼り合わせたフィルムが剥離することもなく安定した偏光板を得ることが出来る。
【0179】
本発明の光学フィルム或いは反射防止フィルムは、偏光板用保護フィルムとして液晶ディスプレイにもちいられる他、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種表示装置に好ましくもちいることができる。
【0180】
本発明の偏光板及び本発明の表示装置について説明する。本発明の偏光板に用いる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理してポリエンを配向させたものを用いることができる。そして、本発明の偏光板が、少なくとも液晶セルのセル側の表面側に設けられる。以上により、本発明の液晶表示装置を得ることが出来る。本発明の偏光板は、液晶表示用装置に用いられるのが好ましい。
【0181】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明の態様を具体的に説明するが、本発明はこれ等に限定されない。
【0182】
実施例1
(例示化合物8から合成されるセルロースエステル)
300mlのフラスコに、アセチル置換度2.15のセルロースエステル25g(0.1mol)とジクロロメタン150mlとテトラヒドロフラン50mlを加え完溶させる。例示化合物8、16.9g(0.075mol)とピリジン5.6g(0.075mol)、ジメチルアミノピリジン0.5gを入れ、30℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応液を、攪拌しながらメタノール1000mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル1とする。収量29.7g(89%)。置換度をNMRより求めた結果、0.75であった。
【0183】
実施例2
(例示化合物1から合成されるセルロースエステル)
冷却管、攪拌機、温度計の付いた300ml三ッ口フラスコに、アセチル置換度2.33のセルロースエステル25g(0.1mol)とジクロロメタン100mlを加え溶解させた、次に例示化合物1、9.0g(0.055mol)を入れ、5時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却しジクロロメタン50mlを加えた後、攪拌しながらメタノール500mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル2とする。収量31.7g(90%)。置換度をNMRより求めた結果、0.65であった。
【0184】
実施例3
(例示化合物12から合成されるセルロースエステル)
冷却管、攪拌機、温度計の付いた300ml三ッ口フラスコに、アセチル置換度2.85のセルロースエステル25g(0.1mol)とジクロロメタン100mlを加え溶解させた、次に例示化合物12、4.3g(0.025mol)と二ラウリン酸ジブチルすずを入れ、5時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却しジクロロメタン50mlを加えた後、攪拌しながらメタノール500mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル3とする。収量25.2g(93%)。置換度をNMRより求めた結果、0.14であった。
【0185】
実施例4
(例示化合物26から合成されるセルロースエステル)
冷却管、攪拌機、温度計の付いた300ml三ッ口フラスコに、アセチル置換度2.0、プロピル置換度0.55のセルロースエステル25g(0.1mol)とジクロロメタン100mlを加え溶解させた、次に例示化合物26、13.1g(0.055mol)を入れ、5時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却しジクロロメタン50mlを加えた後、攪拌しながらメタノール500mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル4とする。収量29.4g(92%)。置換度をNMRより求めた結果、0.45であった。
【0186】
実施例5
(例示化合物6から合成されるセルロースエステル)
冷却管、攪拌機、温度計の付いた300ml三ッ口フラスコに化合物6、10.5g(0.055mol)と無水トリフルオロ酢酸11.6g(0.055mol)を入れ、50℃で30分間攪拌溶解した。次いで、アセチル置換度2.35のセルロースエステル25g(0.1mol)とジクロロメタン50mlを加え5時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却しジクロロメタン50mlを加えた後、攪拌しながらメタノール500mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル5とする。収量29.2g(79%)。置換度をNMRより求めた結果、0.6であった。
【0187】
比較例1
(例示化合物8から合成されるセルロースエステル)
300mlのフラスコに、アセチル置換度1.5のセルロースエステル24g(0.1mol)とジクロロメタン150mlとテトラヒドロフラン50mlを加え完溶させる。例示化合物8、33.8g(0.15mol)とピリジン11.2g(0.15mol)、ジメチルアミノピリジン0.5gを入れ、30℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応液を、攪拌しながらメタノール1000mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル6とする。収量29.7g(90%)。置換度をNMRより求めた結果、1.4であった。
【0188】
比較例2
(例示化合物8から合成されるセルロースエステル)
300mlのフラスコに、アセチル置換度1.9のセルロースエステル24g(0.1mol)とジクロロメタン150mlとテトラヒドロフラン50mlを加え完溶させる。例示化合物8、24.8g(0.11mol)とピリジン8.21g(0.11mol)、ジメチルアミノピリジン0.4gを入れ、30℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応液を、攪拌しながらメタノール1000mlにゆっくり注ぎ込んで再沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、乾燥することにより標記の目的物を得た。これをセルロースエステル7とする。収量28.7g(85%)。置換度をNMRより求めた結果、1.0であった。
【0189】
実施例6
セルロースエステル1 160kg
トリフェニルフォスフェート 8kg
ジクロロメタン 770kg
エタノール 65kg
TINUVIN 109 0.8kg
TINUVIN 171 0.8kg
TINUVIN 326 0.8kg
以上を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してドープ液を作製した。次いで、ベルト流延装置を用い、ドープ液を33℃、1500mm幅のステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスバンドの温度は25℃に制御した。ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフイルム中の残留溶媒量が25%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力127N/mで、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムは、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥させ、膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムのサンプル101を得た。
【0190】
セルロースエステルを表1記載のものに変更以外は上記と同様の方法でサンプル102〜107を作製した。サンプル101〜107について各種物性値を算出した。その結果を表1に示す。
【0191】
〈レターデーションR0、遅相軸角θ1〉
自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、作製したサンプル101〜107を23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長において3次元屈折率測定を行い、遅相軸角θ0(°)及び屈折率Nx、Nyを求めた。前記式に従って面内方向のレターデーションR0を算出した。
【0192】
〈透過率、ヘイズ(濁度)〉
東京電色(株)製TURBIDITY METER T−2600DAで測定した。
【0193】
〈接触角の測定〉
接触角測定用液として、試薬特級ヨウ化メチレン及び純水を使用し、23℃、55%RHに調湿したクリーンルームで、支持体表面にシュリンジから一滴を乗せ、接触角測定器(FIBLO社製)を使用して滴下3秒後の接触角を測定した。
【0194】
〈溶解性〉
セルロースエステル(フィルム)1gを10mlのジクロロメタン中に入れ、1時間後の溶解状態を目視にて確認し、以下のとおり判定した。
○:溶け残りが確認できない
△:溶け残りが50%未満
×:溶け残りが50%以上
【0195】
【表1】
Figure 2004347778
【0196】
表1からわかるように、本発明の光学フィルムは溶媒への溶解性が良好であり、ヘイズ等の光学特性にも優れていることがわかる。また、サンプル106等芳香族置換度の大きいセルロースエステルを使用した光学フィルムは、ヘイズ等の光学特性、溶解性が劣化している。また、接触角が増大し、鹸化特性が劣化していることもわかる。
【0197】
実施例7
上記作製したサンプル101〜106に、下記に従って、活性線硬化樹脂層を所定の膜厚となるように続けて形成し、さらにその上に後述の大気圧プラズマ処理によって金属酸化物層を連続して積層した。
【0198】
〈活性線硬化樹脂層の塗設〉
下記の活性線硬化樹脂層塗布組成物を上記で作製したセルロースエステルフィルムB面側(溶液流延製膜工程でステンレスベルト支持体に接している面をB面、その反対側の面をA面とする)に押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cmで紫外線照射し、膜厚3μmの活性線硬化樹脂層(中心線平均粗さ(Ra)0.2μm)を設けた。
【0199】
(活性線硬化樹脂層塗布組成物)
Figure 2004347778
〔大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理による金属酸化物層(反射防止層)の形成〕
前記活性線硬化樹脂層を設けたサンプル101〜106及びTAC(アセチル置換度2.9のセルロースアセテートを使用して実施例6の方法で作製したサンプル)それぞれを用いて、活性線硬化樹脂層(紫外線硬化樹脂層)上に以下のように金属酸化物層を形成した。
【0200】
〈金属酸化物層の形成〉
大気圧プラズマ放電処理による金属酸化物層の形成には、下記のプラズマ放電処理装置を用いた。
【0201】
〈プラズマ放電処理装置〉
(電極の作製)
図2に示したプラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体で被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0202】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、アルミナ溶射膜を被覆し、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10−4で、耐熱温度は260℃であった。
【0203】
一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと同じである。
【0204】
この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして25本配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cmであった。
【0205】
対向電極間より以下に示す反応ガスを導入し、使用済みガスの排気を行いつつ、上記作製した、活性線硬化樹脂層を有する各セルロースエステルフィルム上に、金属酸化物層を以下に示す順次4層の構成で形成し反射防止層とした(それぞれの膜厚については以下に示した)。
【0206】
尚、プラズマ放電処理装置には、固定電極側に、連続周波数13.56MHz、0.8kV/mmの高周波電圧(パール工業社製高周波電源)を供給し、ロール電極側には、連続周波数100kHz、8kV/mmの高周波電圧(ハイデン研究所製高周波電源)を供給した。また、ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0207】
なお、固定電極とロール電極の間隙は1mm、反応ガスの圧力は大気圧+1kPaとして行った。金属酸化物層を形成する為にプラズマ放電処理に用いた反応ガス(酸化珪素層形成用反応ガス)の組成を以下に記す。尚、反応ガス中の液体成分は気化器によって蒸気とし、加温しながら放電部に供給した。
【0208】
Figure 2004347778
ハードコート層上に、第1酸化チタン層、第1酸化珪素層、第2酸化チタン層、第2酸化珪素層の順に設けた。
【0209】
〈反応ガスの種類〉
反射防止層の形成に用いた反応ガスを以下に示す。
【0210】
(反応ガスA):酸化チタン層(高屈折率層)形成用
窒素 68.7体積%
アルゴン 30体積%
反応ガス(酸素ガス) 1体積%
反応ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気) 0.3体積%
(反応ガスB):酸化珪素層(低屈折率層)形成用
窒素 98.7体積%
反応ガス(酸素ガス) 1体積%
反応ガス(テトラエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
(反応ガスC):酸化珪素層(低屈折率層)形成用
窒素 99.2体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.5体積%
反応ガス(メチルトリエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
反射防止層を形成したフィルムを光学フィルム1〜7とした。
【0211】
得られた各光学フィルムについて、以下の評価を行った。
〈評価〉
(すじ故障)
長時間連続的に製膜した各サンプルについて、すじ状のむらの有無を目視で評価した。
◎ すじ状のむらは確認できない。
○ わずかにすじ状のむらが認められる。
△ 弱いすじ状のむらが認められる。
× 明らかにすじ状のむらが認められる。
【0212】
作製した光学フィルム1〜7のL値、ΔE(反射光ムラ)、反射率を下記方法で測定した。
【0213】
(L値の測定)
光学フィルムのL値は、色彩色度計CM−2022(ミノルタ製)を用い、SCI(正反射光込み)方式で測定した分光反射率から求めた。サンプルは、測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理(370nmから730nmにおける透過率が10%未満)を行い、黒色の台上にて測定した。
【0214】
(ΔE(反射光ムラ)の測定)
作製した光学フィルムサンプルから、1cm間隔で10cm×10cmの範囲で100点のL値を測定し、1cm間隔で隣接する2点間のΔEの最大値を求めた。
【0215】
(反射率)
値の測定のために色彩色度計CM−2022(ミノルタ製)を用い、SCI(正反射光込み)方式で測定した450nmから650nmの範囲の分光反射率の平均値を求めた。
【0216】
また、作製した光学フィルム1〜7について、高温高湿処理(80℃、90%RH、500時間処理)後、スチールウール(表面耐摩耗性)、クラック、密着性(碁盤目試験)試験を行った。
【0217】
(表面耐摩耗性)
#0000スチールウールに1平方センチメートルあたり0.1kgの加重をかけて積層体フィルムの表面を10往復した後の、スチールウール往復方向の1センチメートルあたりの傷の発生本数で評価した。
【0218】
○:傷発生ほとんどない
×:傷が見られる
(クラック)
光学フィルムそれぞれを前記高温高湿処理後、フィルム端部より10cmの部分のフィルム表面に形成された金属酸化物層(反射防止層)に発生したクラックを目視及び顕微鏡で観察した。評価ランクは以下の通りである。
【0219】
◎:クラックはほとんど認められず、透明性に優れる
○:クラックは認められるが、白濁はない
△:クラックが認められ、僅かに白濁している
×:著しくクラックが入り、白濁している
(密着性(碁盤目試験))
光学フィルムそれぞれを前記高温高湿処理後、JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には塗布面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個つくった。この上にセロハンテープを張り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数をmとしm/100として表した。
【0220】
以上の評価を行った結果を以下に示す。
【0221】
【表2】
Figure 2004347778
【0222】
表2より明らかなように、本発明に係わる光学フィルムはすじ状の故障が低減されかつ、反射光ムラが小さく、さらに高温高湿条件で保存した後も、表面物性や、反射防止膜の密着性が良好であり安定した性能を有することがわかる。
【0223】
〔偏光板の作製〕
光学フィルム1〜7について、A面側(溶液流延製膜工程でステンレスベルト支持体に接している面をB面、その反対側の面をA面とする)を60℃の2mol/LのNaOH水溶液に90秒浸漬後、その後常温水で水洗して、80℃で乾燥しそれぞれの片面鹸化処理した光学フィルムを得た。
【0224】
前記光学フィルムの基材フィルムとして用いたサンプル101〜106及びTACについても同様に片面鹸化処理を行った。
【0225】
別に120μmの厚さのポリビニルアルコールをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に長尺方向に延伸した偏光膜を用意した。この偏光膜の片面に、上記鹸化処理した光学フィルム1〜7の鹸化処理面を、完全鹸化型のポリビニルアルコール5質量%水溶液粘着剤で貼り合わせ同様に反対の面にはそれぞれの光学フィルム1〜7の基材フィルムである鹸化されたサンプル101〜106及びTACについても同様に片面鹸化処理を行った。TACを貼り合わせ、偏光板1T〜7Tを得た。
【0226】
〔液晶画像表示装置〕
市販の液晶表示パネル(NEC製カラー液晶ディスプレイ;MultiSync LCD1525J:型名LA−1529HM)の観察側の偏光板を注意深く剥離し、上記で作製した偏光板1T〜7Tの各々を、金属酸化物層を外側にして偏光方向を合わせて張り付け液晶表示パネル1〜7を各々作製した。
【0227】
上記作製した各液晶表示パネル1〜7について、液晶表示パネル(液晶表示装置)を目視観察し、視認性の評価を行ったところ、本発明に係わる光学フィルムを用いた偏光板を有する液晶表示パネルについては、黒がしまって見え、鮮明であり、反射光の色むらは認められないか、ほとんど認められないが、比較となる光学フィルムを用いたものについては、黒のしまりがややなく、鮮明さが低く、反射光の色むらが認められる結果であった。
【0228】
【発明の効果】
本発明により、均一な金属酸化物層を形成でき、すじ状の故障、クラック等が低減されかつ、反射光ムラが小さく、且つ、さらに、高温高湿条件でも物性が変動することなく、液晶表示パネルにしたときに、優れた視認性を示す光学フィルムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
30 プラズマ放電処理装置
40 電圧印加手段
50 ガス供給手段
60 電極温度調節手段

Claims (6)

  1. 下記式(1)及び(2)を満足するセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と、下記一般式(1)で表される化合物が共有結合を形成しており、該一般式(1)で表される化合物が共有結合しているヒドロキシル基は、セルロースを構成するグルコース単位が有する3個のヒドロキシル基に対し、0.1〜0.9であり、少なくとも一方の面に、活性線硬化樹脂層を、直接または他の層を介して設けられていることを特徴とする光学フィルム。
    式(1) 2.1≦A+B≦2.9
    式(2) 0≦B≦0.8
    〔式中、Aはアセチル基、Bはプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表す。〕
    Figure 2004347778
    〔式中Rはセルロースエステルの残留ヒドロキシ基と共有結合が形成可能な置換基を表す。Rは水素原子、または置換基を表す。nは0または1〜5の整数を表す。nが2以上の時、互いに連結して縮合多環を形成してもよい。〕
  2. 少なくとも一つの活性線硬化樹脂層の上に、直接又は他の層を介して酸素原子と窒素原子のうち少なくともいずれか一方と、金属原子とを含んで構成される金属酸化物層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 分子内に3個以上の芳香族環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
  5. 主に窒素を含有するガス雰囲気下で、大気圧プラズマ処理により形成された金属酸化物層を有することを特徴とする請求項4に記載の偏光板。
  6. 請求項4又は5に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
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