JP4099998B2 - 光学フィルム、防眩性反射防止フィルム、偏光板、表示装置及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム、防眩性反射防止フィルム、偏光板、表示装置及び光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学フィルム、その製造方法、防眩性反射防止フィルム、偏光板及び表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
表示装置の高性能化の為、偏光板、或いは偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、光学補償フィルム、導電性フィルム等の各種光学フィルムの高機能化が求められている。
【0003】
特に、フィルム上に金属酸化物薄膜層を形成した光学フィルムは導電性フィルム又は反射防止フィルム等に好ましく用いられている。
【0004】
携帯電話、車載用などの表示装置が様々な用途に使用されるにしたがって、更なる光学フィルムの耐久性の向上が求められている。
【0005】
また、表示装置の高精細化に伴って、視認性向上が求められている。そのため、表示装置の前面には反射防止フィルムが設けられるようになっている。
【0006】
反射防止層は屈折率の異なる複数の層によって構成されており、特に金属酸化物薄膜層が好ましく用いられている。あるいは透明導電性層として金属酸化物薄膜層が好ましく用いられている。
【0007】
ところが、この金属酸化物薄膜層は通常膜厚0.1μm以下と薄く、均一に作製することは困難であった。
【0008】
特に膜厚が60μmと薄いセルロースエステルフィルム上に金属酸化物薄膜層を形成する場合には、膜厚ムラが起こりやすいという問題があった。
【0009】
特に金属酸化物薄膜層をCVD法で形成する際に問題であり、中でもプラズマCVD法によって金属酸化物薄膜層を形成する場合に発生する膜厚ムラの改善が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、金属酸化物薄膜層の膜厚ムラが少なく、さらに、高温高湿環境下の保存により白化したり、導電性の低下が少ない耐久性に優れた光学フィルム、それを有する視認性に優れた防眩性反射防止フィルム、偏光板、表示装置及び該光学フィルムの製造方法を提供することにある。特にセルロースエステルフィルムの膜厚が薄くても金属酸化物層の膜厚ムラが少なく、耐久性に優れた光学フィルム又はその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0012】
1.ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を含有するセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して、金属酸化物薄膜層を有することを特徴とする光学フィルム。
【0013】
2.ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000以上であることを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
【0014】
3.ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂中のウレタン基成分が0.3〜1.50mmol/gであることを特徴とする前記1又は2に記載の光学フィルム。
【0015】
4.前記セルロースエステルフィルムが分子内に芳香環又はシクロアルキル環を3個以上有する添加剤を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0016】
5.前記セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕が3.0以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0017】
6.セルロースエステルフィルムの膜厚が10〜60μmであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0018】
7.金属酸化物薄膜層がCVD法によって形成されることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0019】
8.前記1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
【0020】
9.前記1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0021】
10.前記1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムを有することを特徴とする表示装置。
【0022】
11.ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を含有するセルロースエステル溶液を支持体上に流延し、剥離したフィルムを少なくとも幅手及び長手方向に張力をかけながら乾燥させて得たセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して、CVD法によって金属酸化物薄膜層を設けることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0023】
12.ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を含有するセルロースエステル溶液を支持体上に流延し、剥離したフィルムを少なくとも幅手及び長手方向に張力をかけながら、残留溶媒量3〜30質量%のときに1.01〜1.5倍に延伸し乾燥させて得たセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して、CVD法によって金属酸化物薄膜層を設けることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0024】
本発明の光学フィルムは、ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂(以下、単にウレタン樹脂ともいう)を含有するセルロースエステルフィルムを用いて、この表面に、直接又は他の層を介して金属酸化物薄膜層を設けた光学フィルムである。
【0025】
金属酸化物薄膜層(以下、単に金属酸化物層、薄膜層ともいう)を形成する方法は特に限定はなく、塗布、蒸着、CVD等の方法で設けることができる。
【0026】
特に好ましい方法は、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下にある電極間隙に反応ガスを供給してプラズマ放電処理することにより薄膜を形成する方法である。
【0027】
このプラズマ放電処理方法は、常圧プラズマ法あるいは大気圧プラズマ放電処理方法とも呼ばれている方法(以下、この大気圧又はその近傍の圧力下のプラズマ放電処理を単にプラズマ放電処理と略すことがある)で、大気圧又はその近傍の圧力下にある対向電極間の間隙に反応ガスを供給して放電することにより発生させたプラズマによって、セルロースエステルフィルム上に薄膜を形成させるものである。
【0028】
しかし、この方法は、薄膜形成速度が著しく早い反面、長尺セルロースエステルフィルム上に連続的に薄膜層を形成する場合に、形成される薄膜層の膜厚ムラが起こりやすいという問題があった。
【0029】
従って、本発明者らは、この問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、前述のポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を含有するセルロースエステルフィルムを用いることによって、薄膜層の膜厚ムラを著しく改善することができることを見い出した。
【0030】
また、特に回転電極に接触させながらあるいは搬送させながら連続的に表面にプラズマ放電処理を行う際に以前に起こっていた放電部でのしわや折れなどによる処理の不均一性がなく、長時間連続的にセルロースエステルフィルムに薄膜層を形成することができ、金属酸化物薄膜層の膜厚ムラが少なく、さらに、高温高湿環境下で保存した場合に白化しなく、導電性の低下が少ない耐久性に優れ、且つ、安定した光学フィルムを得ることができた。
【0031】
以下にさらに詳細に本発明を説明する。
セルロースエステルフィルムに添加するポリエステルを成分として有するウレタン樹脂の重量平均分子量は100,000以上が好ましく、より好ましくは100,000〜500,000である。
【0032】
ポリエステルを成分として有し、重量平均分子量が100,000以上であるウレタン樹脂をセルロースエステルフィルムに含有させると、金属酸化物層の膜厚ムラが少なくなるため好ましい。
【0033】
また、セルロースエステルへの相溶性の点でも前記ウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000〜500,000であることが好ましい。
【0034】
また、本発明において、好ましくはポリエステルを成分とするウレタン樹脂中のウレタン基成分が3.0mmol/g以下であり、0.3〜1.50mmol/gであることが膜厚が均一な金属酸化物層が得られるためより好ましい。
【0035】
3.0mmol/g以下であると、溶媒に対する溶解性に優れ、セルロースエステルに対する相溶性にも優れている。これによって、金属酸化物層の膜厚ムラを少なくすることができたのである。
【0036】
ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂中のウレタン基成分はNMR(日本電子製:Lambda400)で測定することができる。
【0037】
即ち、ウレタン基成分を算出する方法として、ウレタン樹脂を下記の方法にて、NMR測定をし、ウレタン基成分の組成を解析してそこから求めることができる。
【0038】
ウレタン基成分は、ポリエステルを成分として有するウレタン樹脂1g中に含まれるウレタン基のmmol数を求める。
【0039】
ウレタン樹脂のトルエンジイソシアナート(TDI)又はp,p’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等の硬化剤とポリエステル等のポリオールからウレタン基成分を容易に求めることができる。
【0040】
本発明のセルロースエステルフィルム中にウレタン樹脂を含有させることで引き裂き強度が高くなり耐久性があがり好ましく、特に、ポリエステルとトルエンジイソシアナートとを反応させて合成したウレタン樹脂であることが好ましい。
【0041】
該ウレタン樹脂を用いると、金属酸化物層の膜厚ムラが著しく低減されるだけでなく、耐久性が向上し、引き裂き強度が更に高くなり、ブリードアウトも更に抑えることができ、また透明度を高めることができる。さらに透湿性を抑えることもできる。
【0042】
また、ウレタン樹脂としてポリエステルとp,p’−ジフェニルメタンジイソシアナートとを反応させて合成したウレタン樹脂を用いても、引き裂き強度が更に高くなり、ブリードアウトも更に抑えることができ、また透明度を高めることができる。さらに透湿性を抑えることもできる。
【0043】
更に、ウレタン樹脂の合成に用いられるポリエステルは、アジピン酸とエチレングリコールで合成されたものが好ましい。
【0044】
本発明のセルロースエステルフィルム中に、通常ウレタン樹脂を1〜30質量%含有させることができるが、好ましくは10〜30質量%含有することであり、15〜25質量%含有することがより好ましい。
【0045】
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムには、後述する分子内に芳香環又はシクロアルキル環を3個以上有する添加剤を含有することが更に好ましく、これによって、金属酸化物層の膜厚ムラが、さらに改善されるだけでなく金属酸化物層にクラックを入りにくくすることができる。
【0046】
本発明においては、本発明の光学フィルムに用いられるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0以下であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜3.0であり、更に膜厚ムラを低減し、耐久性も改善されるため好ましい。
【0047】
セルロースエステルの平均分子量および分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比を計算することができる。測定条件は以下の通りである。
【0048】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1,000,000の13サンプルによる校正曲線を使用した。
【0049】
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースエステルの膜厚は特に限定はなく通常10〜500μmであり、好ましくは10〜150μmである。
【0050】
中でも金属酸化物薄膜層の膜厚ムラが起きやすい10〜60μmのセルロースエステルフィルムにおいて、著しく本発明の効果が認められ特に好ましく用いられる。
【0051】
ここで、本発明に用いられるセルロースエステルについて述べる。
本発明に有用なセルロースエステルは、セルロースの水酸基を、アシル基、特に炭素原子数が2〜4のアシル基で、総アシル基置換度が2.55〜2.95であるセルロースエステルを使用したものが好ましい。
【0052】
このようなセルロースエステルとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートを挙げることができ、中でもセルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。これらの好ましいセルロースエステルにおいて、アセチル基の置換度が1.6以上であることが特に好ましい。
【0053】
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフなどを挙げることができる。
【0054】
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることができる。特に混酸セルロースエステルの場合には、例えば混酸エステルでは特開平10−45804号公報に記載の方法で反応して得ることができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0055】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0056】
これらセルロースエステルは後述するように一般的に溶液流延製膜法と呼ばれる方法で製造(製膜)される。
【0057】
この方法は、無限に移送する無端の金属ベルト(例えばステンレスベルト)あるいは回転する金属ドラム(例えば鋳鉄で表面をクロムメッキしたドラム)等の流延用金属支持体(以降、単に金属支持体ということもある)上に、加圧ダイからドープ(セルロースエステル溶液のこと)を流延(キャスティング)し、金属支持体上のウェブ(ドープ膜)を金属支持体から剥離し、乾燥させて製造するものである。
【0058】
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセト酢酸メチル等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0059】
剥離する際の剥離張力は250N/m以下であることが好ましく、搬送張力は300N/m以下であることが好ましく、更に好ましくは250N/m以下であることが好ましく、更に好ましくは100〜200N/mである。乾燥工程では、テンターによって幅手方向に張力をかけ延伸しながら乾燥させることが金属酸化物層を有する光学フィルムの耐久性に優れ好ましい。
【0060】
テンターによるセルロースエステルフィルムの延伸倍率は1.01〜1.5倍であることが好ましく、更に好ましくは縦及び横方向に2軸延伸することである。延伸の際の残留溶媒量は3〜30質量%であることが好ましい。これによって更に金属酸化物層の耐久性も改善される。
【0061】
本発明において、ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=〔(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)〕×100
尚、量を測定する際の、加熱処理は、115℃で1時間の加熱処理をすることである。
【0062】
本発明のセルロースエステルフィルムは可塑剤を含有するのが好ましい。
可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを挙げることができる。
【0063】
リン酸エステル系としては、
例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;
フタル酸エステル系としては、
例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等;
トリメリット酸系可塑剤としては、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等;
ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、
例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等;
グリセリンエステルとしては、
例えば、トリアセチン、トリブチリン等;
グリコール酸エステル系としては、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等;
その他のカルボン酸エステルの例としては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルを挙げることができる。これらのうち、リン酸エステル系可塑剤又はグリコール酸エステル系の可塑剤が好ましい。
【0064】
これらの可塑剤を単独あるいは併用するのが好ましい。
また、可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜30質量%であることが好ましい。
【0065】
本発明のセルロースエステルフィルムには、画像表示装置として屋外に置かれた場合等の劣化防止の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることができる。
【0066】
例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0067】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート等を挙げることができ、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン171、チヌビン326(チバ・スペッシャリティ・ケミカル社製)等が市販されており、好ましく用いることができる。
【0068】
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤も本発明のセルロースエステルフィルムに有用なものの一つである。
【0069】
例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができる。
【0070】
本発明の光学フィルムには、紫外線吸収剤として透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤を好ましく用いることができ、中でも、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。また、紫外線吸収剤は製膜工程でブリードアウトしたり、揮発しないものが好ましい。
【0071】
更に、本発明に用いられる可塑剤又は紫外線吸収剤等の添加剤の更に好ましいものとして、非リン酸系で、ベンゼン環、シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個を有する添加剤等を挙げることができる。
【0072】
非リン酸系で、ベンゼン環、シクロヘキシル環及びシクロヘキセン環を分子中に少なくとも3個有する可塑剤を含有するウェブは、その乾燥中に内部から表面へと移動することが少なく表面に集まりにくい。
【0073】
また、非リン酸系で、ベンゼン環、シクロヘキシル環及びシクロヘキセン環を分子中に少なくとも3個有する添加剤を含有するセルロースエステルフィルムは透湿性を改善し、高温高湿度における安定性を増すことができる。
【0074】
非リン酸系の、ベンゼン環、シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環から選ばれる環を少なくとも3個有する添加剤は、ベンゼン環のみを3個以上でも、シクロヘキサン環を3個以上でも、シクロヘキセン環を3個以上でも、また、これらの環が縮合している縮合環であってもよいし、異項環との縮合環を含有していてもよい。
【0075】
本発明においては、縮合環内にあるベンゼン環、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の一つずつの環数を、これらの環の数とする。例えばナフタレン環は2個と数える。これらの環には置換基を有していてもよい。本発明においては、これらの環を分子内に3〜20個あるものが好ましく、更に好ましくは3〜10個である。
【0076】
本発明において、より好ましく用いられるベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環を分子内に少なくとも3個有する添加剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0077】
P−43:ジベンジルフタレート
P−44:ジベンジルイソフタレート
P−45:ジベンジルテレフタレート
P−46:ジフェニルフタレート
P−47:ジフェニルイソフタレート
P−48:ジフェニルテレフタレート
P−49:ジシクロヘキシルフタレート
P−50:ジシクロヘキシルイソフタレート
P−51:ジシクロヘキシルテレフタレート
P−52:フェニルシクロヘキシルイソフタレート
P−53:フェニルシクロヘキシルテレフタレート
P−54:フェニルシクロヘキシルフタレート
P−55:ベンジルシクロヘキシルフタレート
P−56:ベンジルシクロヘキシルテレフタレート
P−57:ベンジルシクロヘキシルイソフタレート
P−58:ジベンジルシクロヘキサンジアセテート
P−59:1,3−シクロヘキサンジメチルジベンゾエート
P−60:1,3−ジベンジルシクロヘキサンジカルボキシレート
P−61:1,2−ジベンジルテトラデヒドロフタレート
P−62:1,2−ジシクロヘキシルテトラヒドロフタレート
P−63:1,3−ジシクロヘキシルシクロヘキシルジカルボキシレート
P−64:グリセリントリベンゾエート
P−65:グリセリントリフェニルアセテート
P−66:アセチルクエン酸トリベンジルアセチル
P−67:クエン酸トリシクロヘキシル
P−68:アビエチン酸メチル
P−69:アビエチン酸エチル
P−70:アビエチン酸ブチル
P−71:デヒドロアビエチン酸メチル
P−72:デヒドロアビエチン酸ブチル
P−73:パラストリン酸メチル
等、またオリゴマー的な低分子重合体として、
P−74:KE−604(荒川化学製)
P−75:KE−85(荒川化学製)
P−76:アラルダイドEPN1139(旭チバ(株)製)
P−77:アラルダイドGY260(旭チバ(株)製)
P−78:ハイラック110H(日立化成(株)製)
P−79:ハイラック111(日立化成(株)製)
等樹脂オリゴマー等を好ましく挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、詳細な説明の中や、実施例で示されている他の化合物なども好ましく用いられる。
【0078】
更に、下記の添加剤を挙げることができる。
【0079】
【化1】
Figure 0004099998
【0080】
【化2】
Figure 0004099998
【0081】
これらの添加剤はセルロースエステルフィルムに対して0.2〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%含有することが好ましい。
【0082】
本発明では、セルロースエステルフィルムの動摩擦係数を調整するため、微粒子を添加することが好ましい。
【0083】
微粒子としては、例えば二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができるが、特に架橋高分子微粒子が好ましい。本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0084】
上記のうちでも二酸化珪素が動摩擦係数の調整するのに特に好ましく、またフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。微粒子の一次粒子または二次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルフィルムに対して0.005〜0.5質量%が好ましい。二酸化珪素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
【0085】
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
【0086】
微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は20nm以下が好ましく、好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。これらの微粒子をセルロースエステルフィルム中に添加して、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を形成させることが好ましい。
【0087】
二酸化珪素の微粒子としては日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。
【0088】
これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。
【0089】
この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用できる。酸化ジルコニウムとして、例えばアエロジルR976またはR811(日本アエロジル(株)製)等市販品も使用できる。
【0090】
有機物微粒子として、例えば、シリコーン樹脂として、トスパール103、105、108、120、145、3120、240(東芝シリコーン(株)製)等市販品も使用できる。
【0091】
本発明において、微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子を観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
【0092】
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
【0093】
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/l以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。本発明において、上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
【0094】
見掛比重(g/l)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(l)
本発明に有用な微粒子の分散液を調製する方法とそれをドープに添加する方法としては、例えば以下に示すような三つの方法を挙げることができる。
【0095】
《調製方法A》
有機溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0096】
《調製方法B》
有機溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に有機溶媒に少量のセルロースエステルを加え撹拌溶解した液に微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とし、インラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0097】
《調製方法C》
有機溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0098】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0099】
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を有機溶媒などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。
【0100】
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.5質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、セルロースエステルフィルムの動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点で優れている。
【0101】
分散液に使用される有機溶媒は低級アルコール類が好ましく、低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を挙げることができ、好ましく用いることができる。低級アルコール以外の有機溶媒としては特に限定されないが、ドープ調製時に用いられる有機溶媒が好ましい。例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等がドープ調製時に用いられる。
【0102】
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散には後者がヘイズが低くなるので好ましい。
【0103】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミル等を挙げることができる。
【0104】
また、メディアレス分散機として、超音波型、遠心型、高圧型等があるが、本発明においては高圧型が好ましく、高圧分散装置が好ましい。
【0105】
高圧分散装置は、微粒子と有機溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作り出す装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.6MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0106】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等がある。
【0107】
本発明において、上記微粒子を含有させる際、セルロースエステルフィルムの厚さ方向に均一に分布していることが好ましいが、主に表面近傍に存在するように分布させることがより好ましく、例えば、一つのダイから共流延法により、2種以上のドープを同時に流延し、微粒子を含有するドープを表層側に配置させるようにすることが好ましい。このようにすることによって、ヘイズを減少させ、且つ、動摩擦係数を低めることができる。更に好ましくは3種のドープを使用して表層側の両層に微粒子を含有するドープ配置にさせることが好ましい。
【0108】
本発明のセルロースエステルフィルムの動摩擦係数を調整するため、裏面側に微粒子を含有するバックコート層を設けることが好ましく、また添加する微粒子の大きさや添加量、材質等によって動摩擦係数を調整することができる。
【0109】
本発明に有用なバックコート層に含ませる微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子を挙げることができ、前述のセルロースエステルフィルムに含有させる微粒子、微粒子の粒径、微粒子の見かけ比重、分散方法等ほぼ同様である。
【0110】
バックコート層のバインダーに対する微粒子の添加量は樹脂100質量部に対して、微粒子は0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部が更に好ましく、0.08〜0.2質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数が低くなり、また少ない方がヘイズが低く、凝集物も少なくなる。
【0111】
バックコート層に使用される有機溶媒は特に限定されないが、バックコート層にアンチカール機能を付与することもできるので、セルロースエステルフィルム及びセルロースエステルフィルムの素材の樹脂を溶解させる有機溶媒または膨潤させる有機溶媒が有用である。これらをセルロースエステルフィルムのカール度合、樹脂の種類、混合割合、塗布量等により適宜選べばよい。
【0112】
バックコート層に使用し得る有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムあるいはN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどがある。
【0113】
溶解させない有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノールなどがあるが、有機溶媒としては特にこれらに限定されるものではない。
【0114】
バックコート層塗布組成物の塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、ワイヤーバーコーター、リバースコーター、押し出しコーター等を用いて、塗布液膜厚(ウェット膜厚ということもある)を1〜100μmとすることが好ましく、特に5〜30μmが好ましい。
【0115】
バックコート層に用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル/アクリロニトリルコポリマー、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー等のビニル系ホモポリマーあるいはコポリマー、セルロースニトラート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸および/またはアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステルコポリマー、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレンコポリマー、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレンコポリマー、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートとポリメチルアクリレートの共重合体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に好ましくはセルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
【0116】
以上のようなバックコート層を設けることにより、動摩擦係数を0.9以下にすることができる。
【0117】
本発明の光学フィルムはセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して金属酸化物層を形成することを特徴としているが、樹脂硬化層あるいは他の層を介して形成することがより好ましい。
【0118】
樹脂硬化層は、種々の機能を有していてもよく、例えば、防眩層やクリアハードコート層であってもよい。樹脂硬化層はエチレン性不飽和モノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。
【0119】
エチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。
【0120】
ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0121】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0122】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0123】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0124】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
【0125】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
【0126】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
【0127】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0128】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0129】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0130】
本発明において使用し得る市販品として、紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0131】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0132】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0133】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
【0134】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0135】
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止するために、また対擦り傷性等を高めるために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもでき、それらの種類としては、前述のマット剤の微粒子とほぼ同様である。
【0136】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005μm〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。
【0137】
紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0138】
紫外線硬化樹脂層は、JIS−B−0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μmの防眩層であってもよい。
【0139】
本発明では、これらの層の上にプラズマ放電処理によって膜厚ムラが著しく改善された金属酸化物薄膜層を形成することができる。
【0140】
このような金属酸化物薄膜層は、例えば、低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層等から構成される低反射性積層体の光学干渉層あるいは透明導電性層等に好ましく用いられる。特に中心線平均表面粗さRaが0.1〜0.5μmの防眩層上に均一に薄膜を形成することができるため好ましい。
【0141】
本発明のセルロースエステルフィルムまたは塗設した層を有するセルロースエステルフィルムは、光学特性として、波長590nmにおける面内レターデーションR0が0〜1000nm、また厚さ方向のレターデーションRtが0〜300nmであることが好ましい。
【0142】
また、波長分散特性として、R0(600)/R0(450)は0.7〜1.3であることが好ましく、特に1.0〜1.3であること好ましい。ここで、R0(450)は波長450nmの光による3次元屈折率測定に基づいた面内リターデーション、R0(600)は波長600nmの光による3次元屈折率測定に基づいた面内リターデーションを表す。
【0143】
すなわち、本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは光学的に等方性であっても位相差板として所定の光学特性を有していてもよい。
【0144】
請求項11の発明はポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を含有するセルロースエステル溶液を支持体上に流延し、剥離したフィルムを少なくとも幅手及び長手方向に張力をかけながら乾燥させて得たセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して、CVD法によって金属酸化物薄膜層を設けることを特徴とする光学フィルムの製造方法であり、請求項12の発明はポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を含有するセルロースエステル溶液を支持体上に流延し、剥離したフィルムを少なくとも幅手及び長手方向に張力をかけながら、残留溶媒量3〜30質量%のときに1.01〜1.5倍に延伸し乾燥させて得たセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して、CVD法によって金属酸化物薄膜層を設けることを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
【0145】
以下に、上記金属酸化物薄膜層の形成する方法を図1、2を用いて説明する。
(金属酸化物薄膜層)
本発明では金属酸化物薄膜層を設ける方法は特に限定されず、塗布、スパッタ、蒸着、CVD法によって形成することができるが、特にCVD中でもプラズマCVDによって形成されたものであることが好ましい。
【0146】
本発明の金属酸化物層を形成する方法としての大気圧もしくはその近傍の圧力下のプラズマ放電処理は、下記のごときプラズマ放電処理装置を用いることによって行われる。
【0147】
図1は、本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【0148】
図1においては、この装置は一対の回転電極10Aと10Bを有し、回転電極10Aと10Bには、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加できる電源80が電圧供給手段81、82を介して接続されている。
【0149】
回転電極10Aと10Bはセルロースエステルフィルムを巻き回しながら搬送するもので、ロール電極もしくはベルト状の電極であることが好ましく、図1ではロール電極を示している。
【0150】
これらの回転電極間の間隙(電極間隙)は放電が行われる場所であり、セルロースエステルフィルムFが搬送できる間隔に設定されいる。この電極間の間隙が放電部50となる。
【0151】
この電極間隙は大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下に維持されており、ここに反応ガス供給部30より反応ガスGが供給され、セルロースエステルフィルムF表面がプラズマ放電処理される。
【0152】
ここで、元巻きロールから巻き出されたセルロースエステルフィルムFまたは前工程から搬送されてくるセルロースエステルフィルムFがガイドロール20を経て、まず、移送方向に回転する回転電極10Aに接しながら移送され、放電部50を通過して、セルロースエステルフィルムFの表面に薄膜が形成される。
【0153】
一旦放電部50から出たセルロースエステルフィルムFは、Uターンロール11A〜11DでUターンされて、今度は、セルロースエステルフィルムFは回転電極10Aと反対方向に回転している回転電極10Bに接しながら移送され、再び前記放電部50を通過して、先ほど薄膜が形成されたセルロースエステルフィルムFの表面に更にプラズマ放電処理され薄膜が形成される。Uターンは通常0.1秒〜1分程度で行なわれる。
【0154】
処理に使用された反応ガスGはガス排出口40より反応後の排ガスG′として排出される。
【0155】
図ではセルロースエステルフィルムF上に形成された薄膜は省略してある。表面に薄膜が形成されたセルロースエステルフィルムFは、ガイドローラ21を介して次工程または巻き取りロール(図示してない)方向に搬送される。
【0156】
従って、セルロースエステルフィルムFは回転電極10A、10Bに密着した状態で放電部50を往復してプラズマ放電処理されることとなる。
【0157】
なお、図示してないが、回転電極10Aと10B、ガイドロール20、21、Uターンロール11A−11D、反応ガス供給部30、ガス排出口40等の装置は外界と遮断するプラズマ放電処理容器内に囲まれて納められていることが好ましい。
【0158】
また、図示してないが、必要に応じて、回転電極10A、と10Bの温度制御をするための温度制御用媒体が循環され、各々の電極表面温度を所定の値に制御するようになっている。
【0159】
図2は本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに有用な回転電極と固定電極を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【0160】
回転電極110とそれに対向して配置された複数の固定電極111を有し、図示されていない元巻きロールまたは前工程からから搬送されて来るセルロースエステルフィルムFがガイドロール120、ニップロール122を経て回転電極110に導かれ、セルロースエステルフィルムFは回転電極110に接した状態で回転電極110の回転と同期しながら移送され、大気圧もしくはその近傍の圧力下にある放電部150に反応ガス発生装置131で調製された反応ガスGが給気管130から供給され、固定電極111に対向しているセルロースエステルフィルム面に薄膜が形成される。
【0161】
回転電極110と固定電極には、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加できる電源180が電圧供給手段181、182を介して接続されている。
【0162】
また、回転電極110、固定電極111、放電部150はプラズマ放電処理容器190で覆われ、外界と遮断されている。処理された排ガスG′は処理室の下部にあるガス排気口140から排出される。
【0163】
プラズマ放電処理されたセルロースエステルフィルムFはニップロール123及びガイドロール121を経て次工程または図示してない巻き取りロールへ搬送される。
【0164】
セルロースエステルフィルムFがプラズマ放電処理容器の出入り部分のニップロール122及び123のところに外界との仕切板124及び125が設けられており、外界からニップロール122と共にセルロースエステルフィルムFに同伴して来る空気を遮断し、また出口においては、反応ガスGまたは排ガスG′が外界に漏れないようになっている、なお、図示してないが、必要に応じて、回転電極110及び固定電極111は温度調節のための温度制御された媒体を循環するようになっている。
【0165】
このように、本発明において、薄膜が形成されるセルロースエステルフィルムは回転電極上で移送しながらプラズマ放電処理されるのが好ましい。
【0166】
回転電極がセルロースエステルフィルムと接する表面は高い平滑性が求められ、回転電極の表面の表面粗さがJIS−B−0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下である。
【0167】
本発明に用いられる電極の表面は固体誘電体で被覆されていることが望ましく、特に金属等の導電性母材に対し固体誘電体で被覆されていることが望ましい。固体誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等を挙げることができる。
【0168】
特に好ましくは、セラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体であることが望ましい。ここで、金属等の導電性母材としては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等を挙げることができるが、加工の観点からステンレスが好ましい。
【0169】
また、ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0170】
本発明において、電極は、その裏面側(内側)から、必要に応じて、加熱あるいは冷却することができるようになっている。電極がベルトの場合には、その裏面より気体で冷却することもできるが、ロールを用いた回転電極では内部に媒体を供給して電極表面の温度及びセルロースエステルフィルムの温度を制御することが好ましい。
【0171】
媒体としては、蒸留水、油特にシリコンオイル等の絶縁性材料が好ましく用いられる。
【0172】
放電処理の際のセルロースエステルフィルムの温度は処理条件によって異なるが、室温〜200℃以下が好ましく、より好ましくは室温〜120℃以下であり、更に好ましくは50〜110℃である。
【0173】
放電処理の際にセルロースエステルフィルム面の特に幅手方向で温度ムラが生じないようにすることが望ましく、±5℃以内とすることが好ましく、より好ましくは±1℃以内であり、特に好ましくは±0.1℃以内である。
【0174】
本発明において、電極間隙は、固体誘電体の厚さ、印加電圧や周波数、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電プラズマを発生させるという観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
【0175】
本発明において、電極間隙の放電部には、ガス発生装置で発生させた混合ガスを流量制御して、反応ガス供給口よりプラズマ放電部に導入される。反応ガスの濃度や流量は適宜調整されるが、セルロースエステルフィルムの搬送速度に対して十分な速度で処理用ガスを電極間隙に供給することが好ましい。放電部では供給した反応ガスのほとんどが反応して薄膜形成に使われるように流量や放電条件が設定するのが望ましい。
【0176】
放電部に大気が混入したり、反応ガスが装置外に漏れ出ることを防止するために、電極及び移送中のセルロースエステルフィルムは全体を囲んで外界から遮蔽することが好ましい。本発明において、放電部の気圧は大気圧もしくはその近傍の圧力に維持される。
【0177】
ここで大気圧近傍とは、20〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93〜110kPaが好ましい。装置外の大気圧力に対して、放電部がやや陽圧であることが好ましくプラズマ装置外の大気圧力+0.1kPa〜5kPaであることがより好ましい。
【0178】
本発明に有用なプラズマ放電処理装置では、一方の電極は電源に接続して電圧を印加し、もう一方の電極はアースに接地し放電プラズマを発生させることが安定したプラズマを発生させるために好ましい。
【0179】
本発明で用いる高周波電源より電極に印加する電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、印加する周波数は1kHz〜150MHzに調整し、波形をパルス波であってもサイン波としてもよい。特に周波数を100kHzを超えて50MHz以下とすることが好ましい放電部(放電空間)が得られるため好ましい。
【0180】
放電部における放電密度は5〜1000W・min/m2であることが好ましく、特に50〜500W・min/m2であることが望ましい。
【0181】
プラズマ放電処理部はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等で適宜囲まれていることが望ましく、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。また、放電部や回転電極の側面部、セルロースエステルフィルム搬送部等の側面を囲むことによって、反応ガスや排ガスを適切に放電部に供給したり排気することもできる。
【0182】
本発明の金属酸化物薄膜層の形成方法に用いる反応ガスについて説明する。
薄膜層を形成するための反応ガスは、窒素もしくは希ガスを含むことが好ましい。
【0183】
つまり、反応ガスは窒素もしくは希ガスと後述の反応性ガスの混合ガスであることが好ましい。
【0184】
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の各元素を挙げることができるが、本発明においては、中でもヘリウム元素、アルゴン元素を好ましく用いることができる。
【0185】
反応ガス中の希ガスの濃度は90%以上であることが安定したプラズマ放電を発生させるために好ましく、90〜99.99体積%であることが望ましい。
【0186】
希ガスは安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、該プラズマ中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着するなどして薄膜が形成される。
【0187】
本発明に有用な反応ガスは、様々な物質の反応性ガスを添加したものを用いることによって、様々な機能を持った薄膜をセルロースエステルフィルム上に形成することができる。
【0188】
例えば、反応性ガスとして、フッ素含有有機化合物、珪素化合物を用いて反射防止層の低屈折率層を形成することもできる。
【0189】
また、Ti、Zr、In、Sn、Zn、Ge、Siあるいはその他の金属を含有する有機金属化合物、金属水素化合物、金属ハロゲン化物を用いて、これらの金属酸化物層(金属酸化物窒化物層も含む)または金属窒化物層等を形成することができ、これらの層は反射防止層の中屈折率層又は高屈折率層としたり、あるいは導電層又は帯電防止層とすることもできる。
【0190】
また、フッ素含有有機化合物で防汚層や低屈折率層を形成することもでき、珪素化合物でガスバリア層や低屈折率層を形成することもできる。本発明は、高、中屈折率層と低屈折率層を交互に多層を積層して形成される反射防止層の形成に特に好ましく用いられる。
【0191】
本発明で形成される金属酸化物層の膜厚としては、1nm〜1000nmの範囲のものが好ましく得られる。
【0192】
大気圧プラズマ処理では原料ガスにフッ素含有有機化合物を用いることでフッ素化合物含有層を形成することもできる。
【0193】
フッ素含有有機化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましい。
【0194】
具体的には、フッ素含有有機化合物としては、例えば、四フッ化炭素、六フッ化炭素、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭素化合物;
二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物;
更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物、アルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体等を挙げることができる。
【0195】
これらは単独でも混合して用いてもよい。上記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等の各ガスを挙げることができる。
【0196】
更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0197】
また、これらの化合物は分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。また、上記の化合物は混合して用いても良い。
【0198】
本発明に有用な反応性ガスにフッ素含有有機化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしてのフッ素含有有機化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいく、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0199】
また、本発明に好ましく用いられるフッ素含有、有機化合物が常温常圧で気体である場合は、反応性ガスの成分としてそのまま使用できる。
【0200】
また、フッ素含有有機化合物が常温常圧で液体または固体である場合には、気化手段により、例えば加熱、減圧等により気化して使用すればよく、適切な有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0201】
本発明に有用な反応性ガスとしての珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シラン、四フッ化珪素などの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、などのアルコキシシラン、オルガノシラン等を用いることが好ましいがこれらに限定されない。
【0202】
また、これらは適宜組み合わせて用いることができる。あるいは別の有機化合物を添加して膜の物性を変化あるいは制御することもできる。
【0203】
本発明において、反応性ガスとして珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしての珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0204】
本発明に有用な反応性ガスとしての有機金属化合物としては、特に限定されないが、Al、As、Au、B、Bi、Sb、Ca、Cd、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Se、Si、Sn、Ti、Zr、Y、V、W、Zn等の金属酸化物を形成するための金属化合物を挙げることができる。
【0205】
例えば、反射防止層の高屈折率層を形成するには、チタン化合物が好ましく、具体的には、例えば、テトラジメチルアミノチタンなどの有機アミノ金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを挙げることができる。
【0206】
本発明において、前記の珪素化合物、有機金属化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、中でも金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0207】
本発明において、反応性ガスとして有機金属化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしての有機金属化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0208】
また、珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を放電部へ導入するには、両者は常温常圧で気体、液体または固体いずれの状態であっても使用し得る。
【0209】
気体の場合は、そのまま放電部に導入できるが、液体や固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の気化手段により気化させて使用することができる。
【0210】
珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなどのように常温で液体で、且つ、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが本発明の金属酸化物薄膜層の形成する方法に好適である。上記金属アルコキシドは、有機溶媒によって希釈して使用しても良く、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒またはこれらの混合有機溶媒を使用することができる。
【0211】
更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、二酸化窒素、一酸化窒素等を0.1〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。
【0212】
以上の方法により酸化珪素、酸化チタン等の非晶性の金属酸化物層を好ましく作製することができる。
【0213】
本発明の光学フィルムは、例えば低屈折率層と高屈折率層を積層した反射防止層を有する光学フィルム又は導電層、帯電防止層を有する光学フィルム等に好ましく用いることができる。
【0214】
本発明において、プラズマ放電装置を複数設けることによって、多層の薄膜を連続的に設けることができ、薄膜のムラもなく多層の積層体を形成することができる。
【0215】
例えば、セルロースエステルフィルム上に反射防止層を有する光学フィルムを作製する場合、屈折率1.6〜2.3の高屈折率層及び屈折率1.3〜1.5の低屈折率層をセルロースエステルフィルム表面に連続して積層し、効率的に作製することができる。
【0216】
低屈折率層としては、含フッ素有機化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された含フッ素化合物層、あるいはアルコキシシラン等の有機珪素化合物を用いてプラズマ放電処理により形成された主に酸化ケイ素を有する層が好ましく、高屈折率層としては、有機金属化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された金属酸化物層、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウムを有する層が好ましい。
【0217】
上述した薄膜化の方法があるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、層構成もこれらに限定されるものではない。例えば、最表面にフッ素含有有機化合物ガス存在下で大気圧もしくはその近傍の圧力下でのプラズマ放電処理して防汚層を設けてもよい。
【0218】
上記の方法により、本発明においては、多層の薄膜を積層することができ、各層の膜厚ムラもなく、均一な光学フィルムを得ることができる。
【0219】
金属酸化物層等の薄膜の膜厚は、積層体の断面を作製し、透過電子顕微鏡(Transmission Electoron Microscope:以下、TEMと称す)で観察を行うことによって求めることができる。
【0220】
断面の作製は、具体的には積層体を基材と共に電子顕微鏡観察前処理用のエポキシ包埋樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて、厚さ約80nmの超薄切片を作製するか、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置を用いて、積層体表面にGaイオンビームを集束走査し、厚さ約100nmの薄片化した断面を切り出すことで作製することができる。
【0221】
TEMによる観察は倍率として50,000〜500,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラなどに記録する。
【0222】
TEMの加速電圧としては、80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0223】
その他、電子顕微鏡観察技法、および試料作製技法の詳細については「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)、「電子顕微鏡Q&A」(アグネ承風社)をそれぞれ参考にすることができる。
【0224】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行なうことが好ましい。
【0225】
画像処理技術の詳細は「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては上記操作が可能なものであれば特に限定はされないが、一例としてMEDIA CYBERNETICS社(USA)製画像解析ソフトImage−Pro PLUSが挙げられる。
【0226】
画像処理を行なうためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって、積層体界面に相当する箇所を抽出し、界面間の幅(Thickness)を計測する。
【0227】
同様にして少なくとも25箇所以上好ましくは50箇所以上について求めた値から平均膜厚及びその変動を算出することができる。
【0228】
このように、本発明においては様々な機能を有する金属酸化物層を形成した光学フィルムを提供することができる。
【0229】
本発明によって、金属酸化物層の膜厚ムラが著しく改善された光学フィルムを提供することができ、この光学フィルムは高温高湿条件で繰り返し曝されても導電性の低下やあるいは白濁などによる表示品質の劣化が改善された。
【0230】
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして有用であり、これを用いて公知の方法で偏光板を作製することができる。
【0231】
この光学フィルムを有する偏光板や光学フィルムを有する表示装置は視認性に優れており、過酷な環境下であっても優れた表示性能を提供することができたのである。
【0232】
本発明の光学フィルムは反射防止フィルム、帯電防止フィルム、導電フィルム、電磁波遮蔽フィルム、偏光板等の保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、プラズマディスプレイ前面フィルター等に好ましく用いられる。
【0233】
また、本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型液晶表示装置あるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の各種表示装置にも好ましく用いることができる。
【0234】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0235】
実施例1
以下の様にしてトリアセチルセルロースを作製した。
【0236】
〈トリアセチルセルロースの作製〉
(TAC1)
セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、40℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で30分間ケン化熟成し、トリアセチルセルロースを得た。これを10質量倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で150分間撹拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.9の精製トリアセチルセルロースTAC1を得た。このトリアセチルセルロースはMnが92,000、Mwが240,000、Mw/Mnは2.7であった。
【0237】
(TAC2)
同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)を調整し、セルロースエステルの重合度が低下しないようにしながらエステル化反応を行った。35℃で前処理活性化をし、攪拌しながら発熱による温度上昇を十分に抑制しながらエステル化反応を行った。
【0238】
更に反応停止の際にも温度上昇が起こらないように十分に攪拌、冷却しながらゆっくりと中和処理し、セルロースエステル主鎖の分解を抑制しながらアセチル置換度2.9の精製トリアセチルセルロースTAC2を得た。得られたトリアセチルセルロースはMnが100,000、Mwが180,000、Mw/Mnは1.8であった。
【0239】
(TAC3)
TAC2に対して、処理量を半分とし、同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)を調整し、セルロースエステルの重合度が低下しないようにしながらエステル化反応を行った。セルロースエステル主鎖の分解を抑制しながらアセチル置換度2.9の精製トリアセチルセルロースTAC3を得た。得られたトリアセチルセルロースはMnが110,000、Mwが154,000、Mw/Mnは1.4であった。
【0240】
(TAC4)
セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、40℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で180分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液20質量部で中和した後、63℃で30分間ケン化熟成し、トリアセチルセルロースを得た。これを20質量倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で120分間撹拌した後、濾過、乾燥させて、アセチル置換度2.9の精製トリアセチルセルロースTAC4を得た。得られたトリアセチルセルロースはMnが95,000、Mwが323,000、Mw/Mnは3.4であった。
【0241】
(TAC5)
セルロース原料として針葉樹木材パルプ100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、40℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で240分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液20質量部で中和した後、63℃で30分間ケン化熟成し、トリアセチルセルロースを得た。これを20質量倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で120分間撹拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.9の精製トリアセチルセルロースTAC5を得た。得られたトリアセチルセルロースはMnが60,000、Mwが274,000、Mw/Mnは4.6であった。
【0242】
〈ウレタン樹脂〉
表1記載のポリエステルを成分として有するウレタン樹脂を用いた。そのウレタン基成分は下記の方法で求めた。
【0243】
〈ウレタン基成分〉
1H−NMR測定による積分値より算出することができる。
【0244】
−TDI′−(アジピン酸−エチレングリコール)n−TDI′−を有するポリウレタン樹脂を分析する場合を下記に示す。
【0245】
TDI′:TDIと反応して得られるウレタン結合基部分
試料を重アセトンに溶解させ、1H−NMR測定を行う。
ケミカルシフトにおいて、
7.0〜8.8ppm:TDIの芳香族由来のピーク
4.2〜4.4ppm:エチレングリコール由来のピーク
1.5〜1.7ppm及び2.3〜2.5ppm:アジピン酸の由来のピークと帰属し、各ピークの積分値よりモル組成比を求め、ウレタン基成分を算出した。
【0246】
MDIから得られるポリエステルを成分として有するウレタン樹脂についても同様にしてウレタン基成分を求めた。
【0247】
〈ウレタン樹脂の重量平均分子量〉
下記の測定条件で分子量分布を測定し、ウレタン樹脂の重量平均分子量を求めた。
【0248】
(分子量分布測定)
GPC測定により求めた。測定条件を以下に示す。
【0249】
カラム:TOSOH TSKgel GMHXL×2本
流速:1.0ml/min
検出:UV(254nm)
溶離液:THF
注入量:100ul(試料濃度 約0.3%THF溶液)
検量線:標準ポリスチレン、へキシルベンゼン
【0250】
【表1】
Figure 0004099998
【0251】
(ドープA1の調製)
下記素材を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。
【0252】
ドープを静置して流延する温度まで下げて、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して2回濾過し、ドープA1を調製した。
【0253】
Figure 0004099998
以上をディゾルバーで30分間混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0254】
添加剤A
Figure 0004099998
ドープA1に添加したウレタン樹脂1をウレタン樹脂2〜10に変更した以外は同様にしてドープA2〜ドープA10を調製した。
【0255】
ドープA1に添加した添加剤Aを添加剤Bに変更した以外は同様にしてドープB1を調製した。
【0256】
添加剤B
ジシクロヘキシルフタレート 10質量部
(芳香環1個/シクロヘキサン環2個)
2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン 0.5質量部
2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン 0.5質量部
ドープA1に添加した添加剤Aを添加剤Bに変更し、ウレタン樹脂1をウレタン樹脂11に変更した以外は同様にしてドープB11を調製した。
【0257】
ドープB11に添加したウレタン樹脂11をウレタン樹脂12〜20に変更した以外は同様にしてドープB12〜ドープB20を調製した。
【0258】
ドープA1に添加した添加剤Aを添加剤Cに変更した以外は同様にしてドープC1を調製した。
【0259】
添加剤C:
トリメチロールプロパンと安息香酸とのエステル 10質量部
(芳香環3個)
チヌビン328(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5質量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5質量部
ドープA1に添加した添加剤Aを添加剤Dに変更した以外は同様にしてドープD1を調製した。
【0260】
添加剤D:
トリフェニルホスフェート 10質量部
チヌビン328(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5質量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5質量部
(ドープD2の調製)
下記素材を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。
【0261】
ドープを静置して流延する温度まで下げて、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して2回濾過し、ドープD2を調製した。
【0262】
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
トリアセチルセルロース(TAC2) 100質量部
酸化ケイ素分散液(下記参照) 1質量部
添加剤D
トリアセチルセルロース(TAC2)をトリアセチルセルロース(TAC5)に変更した以外は同様にしてドープD3を調製した。
【0263】
ベルト流延装置を用い、35℃のドープA1を30℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能になるまで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からフィルムを剥離した。ステンレスバンド支持体から剥離した後、幅手両端部をテンターで把持し、TD方向(幅手方向)、MD方向(長手方向)に張力をかけながら表に記載の延伸倍率となるように90℃で、現像溶媒量15%の時に延伸させた後、幅把持を解放し、更に多数のロールで搬送させながら122℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ8μmのナーリング加工を施して、膜厚60μmのセルロースエステルフィルム1を作製した。フィルム幅は1300mm、巻き取り長は2500mとした。
【0264】
セルロースエステルフィルム1の作製において、延伸条件を表2、3のように替えた以外は同様にして、膜厚60μmのセルロースエステルフィルム2、3を作製した。
【0265】
同様にドープ及び延伸倍率を表に記載のように変更した以外はセルロースエステルフィルム1と同様にしてセルロースエステルフィルム4〜27を作製した。
【0266】
このセルロースエステルフィルム1〜27上に下記の方法で酸化錫層を形成し、帯電防止層とし、光学フィルム1〜27を得た。
【0267】
〈金属酸化物薄膜層の形成〉
大気圧プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に金属酸化物層を形成した。大気圧プラズマ放電処理は図1記載の装置を使用した。ロール電極には、シリコンオイルを循環させることによる冷却機能を有するステンレス製ジャケットロール母材を用いた。
【0268】
これにセラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その上にテトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させて封孔処理を行いRmax、1μm誘電体を有するロール電極を製作しアース(接地)した。
【0269】
一方、対向電極としては、中空のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、相対する電極群とした。プラズマ放電処理装置の電源は、日本電子製高周波電源を使用し、連続周波数を13.56MHzとし、4W/cm2の電力を供給した。但し、ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0270】
なお、電極間隙は2mm、反応ガスの圧力を大気圧に対して+1kPaとして膜厚0.1μmの金属酸化物層を形成した。プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。
【0271】
(金属酸化物層(酸化錫層)形成用反応ガス)
不活性ガス(ヘリウム) 99.4体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.3体積%
反応ガス(テトラブチル錫蒸気) 0.3体積%
得られた金属酸化物層の膜厚ムラを各フィルムについて求めた。
【0272】
《膜厚ムラ(膜厚の変動)》
セルロースエステルフィルム表面に形成された金属酸化物層の平均膜厚は、積層体の断面を作製し、透過電子顕微鏡(Transmission Electoron Microscope:以下、TEMと称す)で観察を行うことによって求めた。
【0273】
断面の作製は、積層体を基材と共に電子顕微鏡観察前処理用のエポキシ包埋樹脂に包埋し、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置により、積層体表面にGaイオンビームを集束走査し、厚さ約100nmの薄片化した断面を切り出し作製した。
【0274】
TEMによる観察は倍率として50,000〜500,000倍にて明視野像を観察、記録した。5cm×50cmの範囲について任意の25箇所について求めた値から膜厚の最大値と最小値との差(nm)を膜厚ムラ(膜厚の変動)として求めた。
【0275】
《表面比抵抗変化》
(1)光学フィルムを23℃、30%RHの条件のもとで、6時間調湿した後、同条件で金属酸化物層表面の表面比抵抗値を絶縁抵抗測定器(川口電気社製VE−30型)で測定した。
【0276】
(2)反復高温多湿処理後の表面比抵抗値の変化:80℃、90%RHの条件で、6時間曝した後、23℃、30%RHの条件に18時間調湿した。同様に高温多湿処理を10回繰り返した後、23℃、30%RHの条件のもとで、6時間調湿した後、同条件で金属酸化物層表面の表面比抵抗値を絶縁抵抗測定器(川口電気社製VE−30型)で測定し、下記の基準で評価して結果を表2に示した。
【0277】
◎:表面比抵抗値は1010Ω/cm2未満でほとんど変化なし
○:表面比抵抗値はわずかに増加したが、1011Ω/cm2レベルで問題ない
△:表面比抵抗値は増加したが1012Ω/cm2未満であり、問題ない
×:表面比抵抗値は1012Ω/cm2以上〜5×1012Ω/cm2未満に増加した
××:表面比抵抗値は5×1012Ω/cm2以上に著しく増加した。
【0278】
【表2】
Figure 0004099998
【0279】
表2から明らかなように、本発明の光学フィルムは金属酸化物層の膜厚変動(膜厚ムラ)が少なく、又、高温高湿処理の繰り返しによる表面比抵抗の変動が少なく良好な値を示したが、比較の光学フィルムは表面比抵抗値の増加により帯電防止性の低下が認められた。
【0280】
実施例2
(ドープE1の調製)
下記素材を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。
【0281】
ドープを静置して流延する温度まで下げて、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して2回濾過し、ドープE1を調製した。
【0282】
Figure 0004099998
以上をディゾルバーで30分間混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0283】
添加剤E:
3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと安息香酸とのエステル
(芳香環3個) 10質量部
チヌビン326(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.3質量部
チヌビン171(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.3質量部
チヌビン109(チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 0.3質量部
ドープE1に添加したウレタン樹脂1をウレタン樹脂2〜20に変更した以外は同様にしてドープE2〜ドープE20を調製した。
【0284】
ドープE1で使用したTAC3をTAC4に変更し、ウレタン樹脂を1、2、3、11、12に各々変更した以外は同様にしてドープF1、F2、F3、F11、F12を調製した。
【0285】
ドープE1で使用したTAC3をTAC2に変更し、ウレタン樹脂を1、2、3、11、12に各々変更した以外は同様にしてドープG1、G2、G3、G11、G12を調製した。
【0286】
ドープE1で使用したTAC3をTAC1に変更し、ウレタン樹脂を1、2、3、11、12に各々変更した以外は同様にしてドープH1、H2、H3、H11、H12を調製した。
【0287】
ドープE1で使用したTAC3をTAC6(セルロースアセテートプロピオネート)(アセチル置換度1.9)、(プロピオニル基置換度0.7)、Mw/Mn2.2)に変更し、ウレタン樹脂を1、2、3、11、12に各々変更した以外は同様にしてドープI1、I2、I3、I11、I12を作製した。
【0288】
ドープE1で使用したTAC3をTAC5に変更し、ウレタン樹脂を1、2、3、11、12に各々変更した以外は同様にしてドープJ1、J2、J3、J11、J12を作製した。
【0289】
ドープE1で使用したTAC3をTAC1〜TAC6に変更し、ウレタン樹脂を添加しなかった以外は同様にしてドープK1〜K6を調製した。
【0290】
ドープD1で使用したTAC2をTAC1〜TAC6に変更し、ウレタン樹脂を添加しなかった以外は同様にしてドープL1〜L6を調製した。
【0291】
ベルト流延装置を用い、33℃のドープE1を33℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能になるまで乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からフィルムを剥離した。ステンレスバンド支持体から剥離した後、幅手両端部をテンターで把持して張力を与え、TD方向(幅手方向)に1.10倍、MD方向(長手方向)に1.05倍となるように表3、4記載の延伸倍率となるように90℃、残留溶媒3〜5%で、延伸させた後、幅把持を解放し、更に多数のロールで搬送させながら122℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ8μmのナーリング加工を施して、膜厚40μmのセルロースエステルフィルム30を作製した。フィルム幅は1300mm、巻き取り長は2500mとした。
【0292】
セルロースエステルフィルム30の作製において、ドープを表3、4のように替えた以外は同様にして、膜厚40μmのセルロースエステルフィルム31〜86を作製した。
【0293】
次に、光学フィルム56作製の延伸の際の残留溶媒量を2%にした以外は、光学フィルム56の作製と同様にしてセルロースエステルフィルムを87を作製し、これを用いて光学フィルム87を作製した。
【0294】
更に、光学フィルム56の作製におけるセルロースエステルフィルムの延伸時の残留溶媒を40%にした以外は光学フィルム56の作製と同様にして光学フィルム88を作製した。
【0295】
紫外線硬化樹脂層の形成
上記作製した各々のセルロースエステルフィルム(30〜88)の一方の面に下記にしたがって表3、4に記載の組み合わせで紫外線硬化樹脂層(防眩層1又は防眩層2)を形成した。
【0296】
防眩層1
Figure 0004099998
を溶媒(酢酸エチル)にてホモジナイザーにより混合して揮発分濃度50%の均質な分散液を調製した。
【0297】
これをセルロースエステルフィルムにダイコートし、90℃で2分間乾燥させた後、110mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ膜厚3μmの防眩層1を形成した。
【0298】
防眩層2
Figure 0004099998
これをセルロースエステルフィルムにダイコートし、90℃で2分間乾燥させた後、110mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ膜厚3μmの防眩層2を形成した。
【0299】
〈金属酸化物層の形成〉
実施例1で使用したプラズマ処理装置を用いて、前記紫外線硬化樹脂層(防眩層1又は2)を設けた上記セルロースエステルフィルム(30〜88)の紫外線硬化樹脂層の上に、第1酸化チタン層(屈折率2.15、平均膜厚15nm)、第1酸化珪素層(屈折率1.46、平均膜厚33nm)、第2酸化チタン層(屈折率2.15、平均膜厚119nm)、第2酸化珪素層(屈折率1.46、平均膜厚86nm)を順に形成し、表3、4記載の光学フィルム30〜88を作製した。プラズマ放電処理装置の電源は、日本電子製高周波電源を使用し、連続周波数を13.56MHzとし、放電電極に対し6W/cm2の電力を供給した。ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0300】
なお、電極間隙は2mm、反応ガスの圧力は大気圧+1kPaとして行った。プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。
【0301】
(酸化チタン層(高屈折率層)形成用反応ガス)
不活性ガス(ヘリウム) 99.4体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.3体積%
反応ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気) 0.3体積%
(酸化珪素層(低屈折率層)形成用反応ガス)
不活性ガス(ヘリウム) 99.4体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.3体積%
反応ガス(テトラエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
(膜厚ムラの評価)
第1の酸化チタン層を形成した光学フィルムについて実施例1と同様に膜厚測定を行い、5cm×5cmの範囲について任意の25箇所について求めた値から膜厚の最大値と最小値との差(nm)を膜厚ムラとして求めた。
【0302】
(平均反射率の測定)
分光光度計(日立製作所製U−4000型)を用い、反射防止層が塗布されていない側の面(バックコート層が塗設されている面)を粗面化した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、裏面での光の反射を防止して5度の正反射の条件にて450〜650nmにおける各反射率を測定し、その平均反射率を求めた。
【0303】
(耐久性評価)
各光学フィルムを80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下で6時間処理した後、23℃、55%RH雰囲気に18時間放置した。これを合計30回繰り返して処理した後、金属酸化物層側を目視によって白濁の状態を観察した。評価は、白濁が全く認められないものを1とし、著しい白濁を起こしているものを5とし、その間のランクの状態を2〜4とした5段階評価を行った。
【0304】
(目視評価)
光学フィルム30〜88を用いて、偏光板、液晶表示装置を以下のように作製し、目視で反射光むらを評価した。
【0305】
〔偏光板の作製〕
〈偏光膜の作製〉
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
【0306】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と光学フィルム、セルロースエステルフィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。セルロースエステルフィルムは各々の光学フィルムの支持体として使用されているものを用いてそれぞれ偏光板とした。
【0307】
〈偏光板の作製〉
工程1:光学フィルム30に用いられているセルロースエステルフィルム(反射防止層及び防眩層なし)を、60℃の2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
【0308】
一方、光学フィルム30の反射防止層の面を剥離性のポリエステルフィルムを貼り付けてアルカリから保護しながら上記鹸化処理を行った。
【0309】
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0310】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて、更に光学フィルム30の反射防止層が外側になるように積層し、配置した。
【0311】
工程4:ハンドローラーで工程3で積層した偏光膜と偏光板用保護フィルム試料との積層物の端から過剰の接着剤及び気泡を取り除き貼り合わせた。ハンドローラーの圧力は20〜30N/cm2、ローラースピードは約2m/分とした。
【0312】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜と偏光板用保護フィルムを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板30を作製した。
【0313】
ついで、光学フィルム30に代えて光学フィルム31〜88についてそれぞれ偏光板を作製した。
【0314】
〈液晶パネルの作製及び目視評価〉
18.1型TFT型カラー液晶ディスプレーLL−T1811W(シャープ(株)製)の偏光板を剥がし、液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらない様に互いに直交するように貼りつけ、18.1型TFTカラー液晶ディスプレーを作製した。画面を黒表示として、表面の反射光むらを目視で評価した。
【0315】
◎:反射光の色むらはわからず、黒がしまって見える
○:わずかに反射光の色むらが認識される
△:反射光の色むらが認識されるが実用上問題ないレベル
×:反射光の色むらがかなり気になる。
【0316】
評価結果を以下の表に示した。
【0317】
【表3】
Figure 0004099998
【0318】
【表4】
Figure 0004099998
【0319】
表の結果から明らかなように、本発明の光学フィルムは形成した金属酸化物層の膜厚ムラが小さく、反射率も低く、高温高湿の繰り返し処理によっても白く濁って見えることもなく耐久性に優れることが確認された。特にセルロースエステルのMw/Mn比が3.0以下のセルロースエステルを用いた場合、あるいは張力をかけて延伸したセルロースエステルフィルムを用いた時、優れていた。
【0320】
特に光学フィルム56、87、88の結果から延伸の際の残留溶媒量が3〜30%の範囲で延伸したものが優れていた。
【0321】
また、本発明の光学フィルムを用いて作製された偏光板及びその偏光板を用いた表示装置について、目視評価した結果、本発明の光学フィルムは反射光の色むらが著しく低減され、黒がしまって、良好な視認性を有していることが確認された。
【0322】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による、光学フィルム、それを有する視認性に優れた防眩性反射防止フィルム、偏光板、表示装置及び該光学フィルムの製造方法は、金属酸化物薄膜層の膜厚ムラが少なく、さらに、高温高湿環境下で経時で白化したり、導電性の低下が少ない耐久性に優れた効果を有する。
【0323】
特にセルロースエステルフィルムの膜厚が薄くても金属酸化物層の膜厚ムラが少なく、耐久性に優れた光学フィルム又はその製造方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに有用な回転電極と固定電極を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
F セルロースエステルフィルム
G 反応ガス
G′ 排ガス
10A、10B、110 回転電極
11A、11B、11C、11D Uターンロール
20、21 ガイドロール
30 反応ガス供給部
40、140 ガス排気口
50、150 放電部
80、180 電源
81、82、181、182 電圧供給手段
110 回転電極
111 固定電極
120、121 ガイドロール
122、123 ニップロール
124、125 仕切板
130 給気管
131 反応ガス発生装置
190 プラズマ放電処理容器

Claims (4)

  1. ポリエステルをウレタン樹脂中に化学結合した状態として有し、重量平均分子量が100,000以上であるウレタン樹脂を含有するセルロースエステルフィルム上に直接又は他の層を介して、金属酸化物薄膜層を有することを特徴とする光学フィルム。
  2. 請求項1に記載の光学フィルムを有することを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
  3. 請求項1に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
  4. 請求項1に記載の光学フィルムを有することを特徴とする表示装置。
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