JP4281304B2 - 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置 - Google Patents

光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4281304B2
JP4281304B2 JP2002213870A JP2002213870A JP4281304B2 JP 4281304 B2 JP4281304 B2 JP 4281304B2 JP 2002213870 A JP2002213870 A JP 2002213870A JP 2002213870 A JP2002213870 A JP 2002213870A JP 4281304 B2 JP4281304 B2 JP 4281304B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
cellulose ester
dope
optical film
surface layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002213870A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003114333A (ja
Inventor
隆 村上
和浩 福田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2002213870A priority Critical patent/JP4281304B2/ja
Publication of JP2003114333A publication Critical patent/JP2003114333A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4281304B2 publication Critical patent/JP4281304B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)
  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層構造を有するセルロースエステルフィルムに金属化合物薄膜を形成させた光学フィルムとその製造方法、また、多層構造を有するセルロースエステルフィルムに大気圧もしくはその近傍の圧力下で金属化合物薄膜を形成させた光学フィルム、その製造方法に関する。更にこれらの光学フィルムから作製された偏光板及び表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、時計や電卓等に使用される液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL等は過酷な環境下で使用されることが多くなって来ている。従って、液晶ディスプレイ等の表示装置に用いられる偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、プラズマディスプレイパネル用前面フィルター、無機ELパネルあるいは有機ELパネル用前面フィルム等の光学フィルムについても、当然過酷な環境下でも特性が変化しないよう、例えば、高温高湿下で劣化のないことや寸法安定性に優れていることなどの耐久性が要求される。
【0003】
従来、このような高機能性の薄膜の形成方法は、塗布に代表される塗膜硬化法か、あるいは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式薄膜形成法等によってなされていた。
【0004】
上記真空を用いた乾式薄膜形成法は、高精度の薄膜が形成出来るため、高性能の薄膜を形成するには好ましい方法である。しかし、乾式薄膜形成法に用いる真空装置は、被処理基材が大きくなると、装置が非常に大型化し、値段も高額になる他、真空排気にも膨大に時間を費やし、生産性が上げられないデメリットが大きい。
【0005】
上記、真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法が特開平11−133205号、特開2000−185362、特開平11−61406号、特開2000−147209、同2000−121804等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。
【0006】
上記のような高機能な薄膜を載せる基材としては従来セルローストリアセテート(以降略してTACとすることがある)フィルムが良好な光透過性及び小さい複屈折を有することなどの利点から用いられて来た。
【0007】
一方、表示装置に使用される偏光板はTACフィルムである偏光板用保護フィルムと偏光膜を貼り合わせて出来ているが、吸水し易い偏光膜をカバーする偏光板用保護フィルムの性質が偏光板の特性に影響を与え、カーナビゲーションのように車内で高温高湿に曝されることによる耐久性が問題となっている。また、一般に使用されている表示装置についても経時での同様な劣化現象が見られる。従って、偏光板用保護フィルムは、上述の高温高湿下で劣化のないことや寸法安定性に優れていることなどの良好な耐湿熱性が当然要求される。TACフィルムの偏光板用保護フィルムには、フィルムに適度な柔軟性を付与するために、TACフィルム中にリン酸エステル等の可塑剤が含有されている。しかしながら、このような偏光板用保護フィルムを使用した偏光板を高温高湿下で使用した場合、薄膜にクラックがはいったり、偏光板用保護フィルムが偏光膜から剥離したり、あるいは偏光板用保護フィルムが着色する等の問題が発生することがあった。
【0008】
このようなTACフィルムに高機能薄膜を付与した光学フィルムはやはり何らかの影響を受け、薄膜が経時劣化する場合が多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような課題に鑑み検討を行ったものであり、本発明の目的は、セルロースエステルフィルムに付与した金属化合物薄膜が、高温高湿のような条件下で長時間放置されたり、何度も繰り返したりした後でも微小なクラックが入ったりせず、また膜はがれを起こさない優れた性質を有する光学フィルムとそれを製造する方法と、更にその光学フィルムを用いた丈夫な偏光板及び表示装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、表層と基層との組成の異なる多層構造のセルロースエステルフィルムに、大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理(以降、単にプラズマ放電処理ということもある)して高機能薄膜を付与した光学フィルムが、従来の光学フィルムと異なり、高温高湿の過酷な条件下の経時で薄膜に微小なクラックの発生もない優れたものであることを見出した。また、上記と同様な多層構造セルロースエステルフィルムに紫外線硬化性樹脂を用いた金属化合物薄膜を付与したものも、若干薄膜の膜厚が厚いという点はあるものの、クラックなどが起こりにくいものであることを見出した。
【0011】
本発明は下記の構成よりなる。
(1) 基層及び表層を有する多層構造のセルロースエステルフィルムを多層溶液流延製膜方法により形成した後、光学フィルムを製造する方法において、組成の異なる基層用ドープと表層用ドープであって、セルロースエステルのアシル置換度が表層用ドープが基層用ドープより低い、基層用ドープと表層用ドープを金属支持体上に共流延または逐次流延により多層のウェブを形成し、該金属支持体から該ウェブを剥離後、乾燥して多層構造のセルロースエステルフィルムを形成した後、該セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の可塑剤含有量が10質量%未満の表層の上に、大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理することにより0.1〜5質量%の炭素含有率を有する金属化合物薄膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(2) (1)に記載の光学フィルムの製造方法において、前記表層の有機化合物添加剤の含有量が10質量%未満であり、前記基層のそれが5〜30質量%で、且つ該表層と該基層との有機化合物添加剤の差が5〜30質量%であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0012】
) 基層及び表層を有する多層構造のセルロースエステルフィルムを多層溶液流延製膜方法により形成した後、光学フィルムを製造する方法において、組成の異なる基層用ドープと表層用ドープであって、セルロースエステルのアシル置換度が表層用ドープが基層用ドープより低い、基層用ドープと表層用ドープを金属支持体上に共流延または逐次流延により多層のウェブを形成し、該金属支持体から該ウェブを剥離後、乾燥して多層構造のセルロースエステルフィルムを形成し、該セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の可塑剤含有量が10質量%未満の表層の上に少なくとも1層の樹脂層を塗設した後、更にその上に大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理することにより0.1〜5質量%の炭素含有率を有する金属化合物薄膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
) 前記反応ガスが水素ガスを0.1〜10体積%含有することを特徴とする(1)乃至)に記載の光学フィルムの製造方法。
) 大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いたプラズマ放電処理が、対向電極間に100kHzを越えた周波数の電圧をかけ、且つ1W/cm以上の電力を供給して行うことを特徴とする(1)乃至()のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
) 金属支持体上でのウェブの流延から剥離までの乾燥時間を30〜120秒とすることを特徴とする(1)乃至()の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
) 基層を形成するドープ中のセルロースエステルの濃度を表層のそれよりも高くして多層構造のセルロースエステルフィルムを形成することを特徴とする(1)乃至()の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法
8) セルロースエステルが、炭素原子数2〜4のアシル基を有し、2.40〜2.98のアシル基の置換度を有し、且つ1.40以上のアセチル基の置換度を有することを特徴とする(1)乃至(7)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(9) 少なくとも一方の表層を形成するドープが微粒子を含有し、且つ基層を形成するドープが微粒子を含有しないか、または表層を形成するドープより微粒子含有率が小さいことを特徴とする(1)乃至(8)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(10) 基層を形成するドープが有機化合物添加剤を含有し、且つ表層を形成するドープが有機化合物添加剤を含有しないか、または基層を形成するドープより有機化合物添加剤の含有率が小さいことを特徴とする(1)乃至(9)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(11) 基層を形成するドープの有機化合物添加剤の固形分中の含有率が、5〜30質量%で、且つ表層を形成するドープの有機化合物添加剤の固形分中の含有率が10質量%未満であることを特徴とする(10)に記載の光学フィルムの製造方法。
(12) 有機化合物添加剤が、紫外線吸収剤または非リン酸エステル系可塑剤で、且つベンゼン環、シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個有することを特徴とする(10)または(11)に記載の光学フィルムの製造方法。
(13) (1)乃至(12)の何れか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
(14) 多層構造のセルロースエステルフィルムが、少なくとも1層の基層とその両面に表層を少なくとも1層づつ有し、全体として少なくとも3層を有することを特徴とする(13)に記載の光学フィルム。
(15) 多層構造のセルロースエステルフィルムの膜厚が10〜60μmであることを特徴とする(13)または(14)に記載の光学フィルム。
(16) 表層の乾燥後の膜厚が1〜15μmであることを特徴とする(13)乃至(15)の何れか1項に記載の光学フィルム。
(17) 表層の微粒子の含有量が0.01〜1.0質量%であり、基層の微粒子の含有量が0.01質量%未満であることを特徴とする(13)乃至(16)の何れか1項に記載の光学フィルム
) 多層構造のセルロースエステルフィルムの透湿度が20〜250g/m・24hr(25℃、90%RH)であることを特徴とする(13)乃至(1)の何れか1項に記載の光学フィルム。
19) (13)乃至(1)の何れか1項に記載の光学フィルムを偏光膜に張り合わせて作製したことを特徴とする偏光板。
(2) (13)乃至(1)の何れか1項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする表示装置。
(2) (19)に記載の偏光板を使用したことを特徴とする表示装置。
【0033】
以下、本発明を詳述する。
【0034】
本発明において、後述のごとく、ドープ調製工程がセルロースエステル溶液調製工程とインライン添加液調製工程に分かれており、それらをインラインで合流し混合してドープを調製することが好ましい。そこで、本発明において、後述の流延ダイに導入する状態のものをドープといい、合流する前のものを基材となるセルロースエステルを含有する液をセルロースエステル溶液、またマット剤等を含有するものをインライン添加液ということとする。
【0035】
〔多層構造のフィルム〕
本発明における多層構造のセルロースエステルフィルムの層構成は少なくとも1層の基層と少なくとも1層の表層を有するもので層数は2層以上で、好ましくは3層以上である。形成された一つの表層あるいは基層が、複数層からなっていてもよい。
【0036】
図1は3層構造のフィルムの断面を模式的に示したものであり、図中1と3は表層、また2は基層を示している。
【0037】
〔共流延と逐次流延〕
本発明における多層構造のセルロースエステルフィルムは、溶液流延製膜過程において、共流延または逐次流延によりドープを多層に積層して得られるものである。
【0038】
図2は共流延ダイ及び流延して多層構造ウェブ(流延直後はウェブをドープ膜ともいうことがある)を形成したところを表した図である。共流延は図2に示しすように、共流延ダイ10の口金部分11に複数(図2では三つ)の表層用スリット13と15、基層用スリット14を有しており、金属支持体16の上に同時にそれぞれのスリットから表層用ドープ17、基層用ドープ18、及び表層用ドープ19を流延することにより、表層21/基層22/表層23の多層構造のウェブ20を形成する。
【0039】
図3は逐次流延ダイ及び流延された多層構造のウェブを表した図である。逐次流延は、図3に示すように、金属支持体16の上方に複数(図3では三つ)の表層用流延ダイ30、基層用ダイ31及び表層用流延ダイ32を異なった場所に順に設置し、最初に表層用ダイ30から片方の表層となる表層用ドープ33が流延されて表層ドープ膜36を金属支持体16上に形成し、次に基層用ドープ34が基層用ダイ31から表層ドープ膜36の上に基層ドープ膜37を形成し、更に次の表層用ダイ32から表層用ドープ35を流延して表層ドープ膜38を形成することにより、表層/基層/表層の多層構造ウェブ39を形成する。
【0040】
図4は別のタイプの共流延ダイの断面を示した図である。本体中で3層が合流する共流延ダイ50は、基層用のスリット52、表層用のスリット51と53中にそれぞれ、基層用ドープ56、表層用ドープ55と57が導入されており、それが合流スリット58で合流し、層流をなしてスリット54を通過し、金属支持体16の上に3層揃って流延する様式のものである。
【0041】
図2、3及び4で示したような多層構造ウェブの表層が基層より幅広く、基層ウェブを表層ウェブが包み込むように流延するのが好ましい。
【0042】
〔溶液流延製膜方法〕
本発明のセルロースエステルフィルムは、溶液流延製膜法により製膜される。ここで、本発明に係わる溶液流延製膜方法について図5を用いて説明する。
【0043】
図5は、本発明に係わる溶液流延製膜装置のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を模式的に示した図である。以下の工程は3層共流延を例として、代表的な工程を説明する。
【0044】
▲1▼セルロースエステル溶液調製工程:
後述のセルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜101中でセルロースエステルや可塑剤等の添加剤を攪拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液100を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う高温溶解方法、冷却して溶解する冷却溶解方法、かなりの高圧で行う高圧溶解方法等種々の溶解方法があるが、本発明においては、高温溶解方法が好ましく用いられる。溶解後セルロースエステル溶液100を送液ポンプ102で濾過器103(フィルタープレス型)で濾過し、ストックタンク104で静置して脱泡し、流延のために送液ポンプ105(加圧型定量ギヤポンプ等が多く用いられる)で溶液を移送し、濾過器106を経てマット剤分散液あるいは紫外線吸収剤添加液等のインライン添加液110と合流する合流管120で混合するために導管108で移送する。基層あるいは表層に使用するドープでマット剤あるいは紫外線吸収剤等の添加剤を含有しない場合には、濾過器106を経た後は流延ダイに直送することが行われる。
【0045】
濾過については、このセルロースエステル溶液をフィルタープレス用の濾紙などの適当な濾材を用いて濾過する。本発明における濾過材としては、不溶物などを除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題点があり、絶対濾過精度8μm以下の濾材が好ましく、1〜8μmの範囲の濾材がより好ましく、3〜6μmの範囲の濾材が更に好ましい。濾紙としては、例えば市販品の安積濾紙(株)のNo.244や277などを挙げることが出来、好ましく用いられる。更なる濾過の濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(R)等のプラスチック製の濾材やステンレス等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過は通常の方法で行うことが出来るが、加圧下で、使用有機溶媒の常圧での沸点以上で、且つ有機溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱または保温しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は使用有機溶媒に依存するが、45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましく、0.3〜1.6MPaであることが好ましく、0.3〜1.2MPaであることがより好ましく、0.3〜1.0MPaであることが更に好ましい。なお、予め溶解釜101内で紫外線吸収剤をセルロースエステル溶液に添加してもよい。
【0046】
▲2▼インライン添加液(主に、微粒子分散液を含有する)調製工程
微粒子分散液を含有するインライン添加液として説明する。セルロースエステル溶液に使用する低級アルコール等の有機溶媒、後述の樹脂及び後述のマット剤微粒子を含有する微粒子剤分散液の調製方法は、十分に液中に均一に分散することが出来る方法であれば特に制限ないが、次の方法が好ましい。
【0047】
溶解釜111中に有機溶媒と後述の樹脂を加え、攪拌溶解して樹脂溶液とし、この樹脂溶液にマット剤微粒子または微粒子分散液を加えて、マントンゴーリーン、サンドミル等の分散機(図示してない)で分散し、それを送液ポンプ112で濾過器113に送って凝集物を除きインライン添加液110とする(何回か同様な操作を繰り返し循環させてもよい)。そしてインライン添加液を切り替え弁119からストックタンク114に移送し、静置脱泡後、送液ポンプ115(例えば加圧型定量ギヤポンプ)で移送し、濾過器116で濾過して導管117で移送する。なお、予め溶解釜111内で紫外線吸収剤をインライン添加液に添加してもよい。
【0048】
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類を挙げることが出来る。
【0049】
(調製方法A)
有機溶媒と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子の分散液とする。
【0050】
(調製方法B)
有機溶媒と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行い、微粒子の分散液とする。別に有機溶媒に少量の樹脂(微粒子に対して分散性がよく、液に適度に粘性を与えるもので、且つセルロースエステルと相溶性のある樹脂、またはセルロースエステル)を加え、攪拌溶解した樹脂溶液を用意する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌し、充分分散し、微粒子の分散液とする。
【0051】
(調製方法C)
有機溶媒に少量の樹脂(微粒子に対して分散性がよく、且つセルロースエステルと相溶性のある樹脂、またはセルロースエステル)を加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で充分に分散をし、微粒子の分散液とする。
【0052】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点に優れている。調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0053】
調製方法A〜Cで分散調製した微粒子の分散液を含有するインライン添加液をセルロースエステル溶液に加えて攪拌しドープとするが、インライン添加液とセルロースエステル溶液をインライン中で合流させ、インラインミキサーで十分混合してドープとするのが好ましい。
【0054】
上記調製方法において、二酸化珪素微粒子を有機溶媒と混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%が更に好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、得られるフィルムのヘイズが低く、凝集物がなく好ましい。
【0055】
使用する有機溶媒は、ドープに使用する有機溶媒を用いることが好ましいが、特に限定はない。ドープに使用する低級アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等を挙げることが出来るが、特にエタノールが好ましい。
【0056】
微粒子の分散性を助け、分散性を良好にし、且つセルロースエステルと相溶性の良い樹脂としては、ドープに使用するセルロースエステルでもよいが、特願2001−198450に記載の樹脂が、分散液濾過の際、目詰まりにくいので好ましく用いることが出来る。例えば、綜研化学(株)で市販しているアクトフロー・シリーズの樹脂等を好ましく用いることが出来る。
【0057】
(分散装置)
上記微粒子を分散する分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどがあげられる。メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作り出す装置である。
【0058】
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が10MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは20MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等を挙げることが出来る。
【0059】
インライン添加液は、最終濾過器116で濾過後は、ストックタンクなどに停滞させることなく、また送液ポンプを介すことなく導管で移送するのが好ましく、一方、導管で移送されて来る前記セルロースエステル溶液100と、合流管120で合流される。それにより両液の停滞や、送液ポンプによる新たな凝集物の発生がなく好ましい。これらの濾過はインラインミキサーの直前に配置されており、例えば濾材交換等に伴い経路から発生する大きな凝集物を送液中の微粒子分散液から、一度の濾過で、比較的大きな異物を確実に除去するための濾材で、前記の絶対濾過精度を有する長期に亘り使用が可能な耐有機溶媒性を有する金属製の濾過器が好ましい。濾材としては、耐久性の観点から金属、特にステンレス鋼が好ましい。目詰まりの観点から60〜80%の空孔率を有していることが好ましい。従って、最も好ましくは、絶対濾過精度30〜60μmであって、かつ空孔率60〜80%の金属製濾材で濾過することであり、これにより、長期に亘り、確実に粗大な異物を除くことが出来好ましい。絶対濾過精度30〜60μmでかつ空孔率60〜80%の金属製濾材としては、例えば、日本精線(株)製ファインポアNFシリーズのNF−10、同NF−12、同NF−13などを挙げることが出来、何れも好ましく用いられる。
【0060】
▲3▼ドープ調製工程:
セルロースエステル溶液100及びインライン添加液110それぞれを送液ポンプ105及び115により移送し濾過器106及び116で濾過した導管108及び117中を移送し合流管120で両液を合流させる。合流した両液は導管内を層状で移送するためそのままでは混合しにくい。そこで、本発明においては、両液を合流後、インラインミキサーのような混合機121で十分に混合しながら次工程▲4▼に移送する。本発明で使用出来るインラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)が好ましい。インラインミキサーを用いる場合、セルロースエステルを高圧下で濃縮溶解したドープに適用することも出来る。
【0061】
上記ドープ調製工程は、微粒子を含有するドープを調製するもので、微粒子を含有する層、例えば共流延ダイの表層用スリットに導入するものである。当然のことながら、微粒子を含有しない層のドープは、上記微粒子の分散液を含むインライン添加液調製工程は使用しいが、微粒子に代えて紫外線吸収剤をインライン添加してもよい。セルロースエステルの種類、濃度、微粒子の有無、微粒子の濃度、有機化合物添加剤の有無、有機化合物の濃度等、このようなドープ調製工程を多層の数だけ(ドープ組成が同じ場合は共用することが出来る)設ける必要がある。後述の共流延ダイには、それぞれの目的に応じて成分を変更し調製したドープを各スリットに供給することになる。基層に用いられるドープの粘度は50〜10,000Pa・s(35℃にて)であることが好ましく、特に50〜1,000Pa・sであることが好ましい。表層に用いられるドープの粘度は0.1〜5,000Pa・sであることが好ましく、5〜1,000Pa・sであることがより好ましく、更に好ましくは10〜500Pa・s、特に好ましくは10〜50Pa・sである。本発明において、表層用ドープの粘度は基層用のそれより低いことが好ましい。
【0062】
図5で説明したドープ調製工程150を調製工程Aとし、例えば調製工程Aで調製されたドープが基層用のドープとすると、該ドープを共流延ダイ200の基層の導入口202に導入し、図示してない同様な調製工程Bと調製工程Cからのそれぞれのドープを、共流延ダイ200の表層ドープ導入口201と203にそれぞれ導入して共流延に供する。ドープ調製工程B及びCはドープ調製工程Aとと同様であってもよく、表層用ドープCの組成が同じであれば一つのドープ調製工程から分割して送液してもよい。
【0063】
図6は本発明に係わる溶液流延製膜装置の流延以降の工程を示した図である。以下、本発明に係わるセルロースエステルフィルムの作製の一例を図6を用いて説明する。
【0064】
▲4▼共流延工程:
上記したように、ドープ調製工程B、A及びCで調製したドープを、それぞれのインラインミキサーで混合調製し、各ドープを共流延ダイ200にそれぞれ導入口201、202及び203を通して導入し、無限に移送する無端の金属支持体204、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体204上の流延位置に、共流延ダイ200から例えば3層のドープを共流延する工程である。金属支持体204の表面は鏡面となっていることが望ましい。共流延ダイ200(例えば加圧型共流延ダイ)は口金部分の三つのスリット形状を調製出来、膜厚を均一にし易いため好ましい。共流延ダイ200には、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。逐次流延の場合には、金属支持体204上に2基以上設け、2種類以上のドープ量を供給して多層ドープ膜を形成する。
【0065】
▲5▼溶媒蒸発工程:
例えば3層構成のウェブ(金属支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)206を金属支持体204上で加熱あるいは冷却して金属支持体204からウェブ206が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ206に風を当てる方法及び/または金属支持体204の裏面から液体または気体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、金属支持体上のウェブ温度がドープで使用されている有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。流延用の金属支持体の表面温度は10〜55℃、溶液の温度は25〜60℃、更に溶液の温度を支持体の温度と同じまたはそれ以上の温度にすることが好ましく、5℃以上の温度に設定することが更に好ましい。溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。支持体の温度の更に好ましい範囲は、使用する有機溶媒に依存するが、20〜55℃、溶液温度の更に好ましい範囲は、35〜45℃である。
【0066】
▲6▼剥離工程:
金属支持体204上で溶媒が蒸発したウェブ206を、剥離位置205で剥離する工程である。剥離されたウェブ206は次工程▲7▼に送られる。剥離する時点でのウェブ206の残留溶媒量(後述の式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体204上で乾燥させ過ぎて剥離すると、剥離しにくくなったり、途中でウェブ206の一部が剥がれたりする。本発明において、薄手のウェブを金属支持体から剥離する際、平面性の劣化やつれがないように行うには、剥離張力として剥離出来る最低張力から170N/m以内の力で剥離することが好ましく、140N/m以内の力がより好ましい。
【0067】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体204上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。金属支持体204上でのウェブ206の乾燥が条件の強弱、金属支持体204の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが出来るが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブ206が柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。従って、本発明においては、該金属支持体204上の剥離位置における温度を好ましくは10〜40℃、更に好ましくは12〜30℃とし、且つ該剥離位置におけるウェブ206の残留溶媒量を10〜120質量%とすることが好ましい。
【0068】
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を維持するために、金属支持体から剥離する際の残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、より好ましくは80〜150質量%であり、更に好ましくは100〜130質量%である。剥離時のウェブの残留有機溶媒中に含まれる良溶媒の比率は30〜90%が好ましく、更に好ましくは、50〜85%であり、特に好ましくは、60〜80%である。
【0069】
本発明においては、残留溶媒量は下記の式で表わすことが出来る。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量で、この乾燥によって揮発した成分の比率についてはガスクロマトグラフィーによって求めることが出来る。Nは該Mを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。測定はヘッドスペースサンプラーを接続したガスクロマトグラフィーで測定する。本発明では、ヒューレット・パッカード社製ガスクロマトグラフィー5890型SERISIIとヘッドスペースサンプラーHP7694型を使用し、以下の測定条件で行った。
【0070】
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度:150℃
昇温:40℃、5分保持→100℃(8℃/分)
カラム:J&W社製DB−WAX(内径0.32mm、長さ30m)。
【0071】
本発明において、ドープの流延から剥離までのウェブの金属支持体上での乾燥時間は120秒以内であることが好ましく、更に30〜120秒が好ましく、更に30〜90秒であることが好ましい。この範囲で剥離したウェブの表面性は良好で、乾燥後のセルロースエステルフィルムに後述の金属化合物薄膜を施した際、平面性に優れ、且つ高温高湿条件下に繰り返し曝した際のクラックもなく優れた光学フィルムを得ることが出来る。
【0072】
▲7▼乾燥工程:
剥離後、一般には、ウェブ206をジグザグに配置したロール209に交互に通して搬送するロール乾燥装置208及び/またはクリップでウェブ206の両端をクリップして搬送するテンター装置207を用いてウェブ206を乾燥する。図6では、テンター装置207の後にロール乾燥装置208が配置されている。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃の範囲で行われ、好ましくは110〜160℃で乾燥させることである。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。210は出来上がったセルロースエステルフィルムの巻き取りである。セルロースエステルフィルムの乾燥工程において、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にして巻き取ることがより好ましい。
【0073】
ここで、本発明に係わる多層構造のセルロースエステルフィルムに使用する素材について説明する。
【0074】
〔セルロースエステル〕
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来るが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
【0075】
本発明に係わるセルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。セルロースエステルはアシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
【0076】
本発明のセルロースエステルフィルムに用いることが出来るセルロースエステルには特に限定はないが、総アシル基の置換度が2.40から2.98で、アシル基のうちアセチル基の置換度が1.4以上が好ましく用いられる。
【0077】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
【0078】
本発明に係わるセルロースエステルは、セルローストリアセテートやセルロースジアセテート等のセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基あるいはブチレート基が結合したセルロースエステルであることが好ましい。なお、ブチレートは、n−の他にiso−も含む。プロピオネート基の置換度が大きいセルロースアセテートプロピオネートは耐水性が優れる。
【0079】
上記セルロースエステルにおいて、セルローストリアセテートについては、これを溶解する有機溶媒として例えばメチレンクロライドのようなハロゲン系の有機溶媒が使用され、冷却溶解方法のような特殊な溶解方法によればアセトンや酢酸メチルのようなハロゲンがなく沸点の適当な有機溶媒を使用し得る。また、セルロースジアセテート(厳密にはセルローストリアセテートとセルロースジアセテートとの間のアシル基置換度のもの)では使用する有機溶媒もハロゲン系以外のものでも溶解し易くなる。セルロースアセテートプロピオネートのような混合セルロースエステルは、アセトンや酢酸メチルというような有機溶媒に溶解し易く、扱いが容易となる。
【0080】
本発明のセルロースエステルの数平均分子量(測定法は下記)は、70,000〜250,000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く、且つ適度のドープ粘度となり好ましい。更に80,000〜150,000が好ましい。
【0081】
《セルロースエステルの数平均分子量の測定》
高速液体クロマトグラフィーにより下記条件で測定する。
【0082】
溶媒 :アセトン
カラム :MPW×1(東ソー(株)製)
試料濃度 :0.2(質量/体積)%
流量 :1.0ml/分
試料注入量:300μL
標準試料 :ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量188,200)
温度 :23℃。
【0083】
本発明において、表層と基層とで使用するセルロースエステルが同じものであっても、異なったものでもよい。異なる場合、例えば、アシル基置換度が異なるもの、アシル基が異なるもの、数平均分子量が異なるもの等を挙げることが出来る。例えば、特開平8−207210号公報に記載されているような表層のセルロースアセテートのアシル基置換度が2.8以上、基層のそれが2.7以下のものを用いた多層構造のセルロースエステルフィルムも本発明においては、好ましく用いることが出来る。
【0084】
〔有機溶媒〕
セルロースエステルを溶解しセルロースエステル溶液またはドープ形成に有用な有機溶媒として、塩素系有機溶媒のメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることが出来、セルロースエステル、特にセルローストリアセテートの溶解に適している。非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来る。これらの有機溶媒をセルローストリアセテートに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることが出来るので好ましい。セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることも出来るが、メチレンクロライドを使用せずに、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することが出来る。特に酢酸メチルが好ましい。本発明において、上記セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0085】
本発明に係るドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを金属支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとウェブがゲル化し、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので、貧溶媒という。
【0086】
〔有機化合物添加剤〕
本発明に係わる有機化合物添加剤としては、特に限定はないが、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤またはレターデーション調整剤等を挙げることが出来る。
【0087】
〈可塑剤〉
本発明に係わる多層構造のセルロースエステルフィルムにおいて有用な可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系、フタル酸エステル系、他の芳香族ポリカルボン酸エステル、クエン酸エステル系、グリコール酸エステル系、グリセリンエステル系、脂肪族カルボン酸系エステル等の可塑剤を挙げることが出来る。本発明で有用な可塑剤の例を下記に挙げるが、これらに限定されない。
【0088】
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、
P−1:トリフェニルホスフェート
P−2:トリクレジルホスフェート
P−3:ビフェニル−ジフェニルホスフェート
P−4:ジメチルエチルホスフェート
P−5:クレジルジフェニルホスフェート
P−6:オクチルジフェニルホスフェート
P−7:ジフェニルビフェニルホスフェート
P−8:トリオクチルホスフェート
P−9:トリブチルホスフェート
あるいは、特開2001−71418公報段落番号〔0024〕の(Ib)に記載されているようなリン酸エステルの連結した化合物等を挙げることが出来る。
【0089】
フタル酸系エステル系可塑剤としては、例えば、
P−10:ジメチルフタレート
P−11:ジエチルフタレート
P−12:ジブチルフタレート
P−13:ジオクチルフタレート
P−14:ジエチルヘキシルフタレート
等を挙げることが出来る。
【0090】
クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、
P−15:クエン酸アセチルトリエチル
P−16:クエン酸アセチルトリブチル
あるいは、特開平11−92574号、同11−124445号、特開2001−48840公報に記載されているものを挙げることが出来る。
【0091】
グリコール酸エステル系系可塑剤としては、例えば、
P−17:メチルフタリルメチルグリコレート
P−18:エチルフタリルエチルグリコレート
P−19:プロピルフタリルプロピルグリコレート
P−20:ブチルフタリルブチルグリコレート
P−21:オクチルフタリルオクチルグリコレート
P−22:メチルフタリルエチルグリコレート
P−23:エチルフタリルメチルグリコレート
P−24:エチルフタリルプロピルグリコレート
P−25:プロピルフタリルエチルグリコレート
P−26:メチルフタリルプロピルグリコレート
P−27:メチルフタリルブチルグリコレート
P−28:エチルフタリルブチルグリコレート
P−29:ブチルフタリルメチルグリコレート
P−30:ブチルフタリルエチルグリコレート
P−31:プロピルフタリルブチルグリコレート
P−32:ブチルフタリルプロピルグリコレート
P−33:メチルフタリルオクチルグリコレート
P−34:エチルフタリルオクチルグリコレート
P−35:オクチルフタリルメチルグリコレート
P−36:オクチルフタリルエチルグリコレート
等を挙げることが出来る。
【0092】
脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えば、
P−37:オレイン酸ブチル
P−38:リシノール酸メチルアセチル
P−39:セバシン酸ジブチル
P−40:アジピン酸ジブチル
等を挙げることが出来る。
【0093】
他の芳香族ポリカルボン酸エステル系可塑剤としては、例えば、
P−41:トリメリット酸エステル
P−42:ピロメリット酸エステル
等を挙げることが出来る。
【0094】
更に、本発明における可塑剤の更に好ましいものとして、非リン酸系で、ベンゼン環、シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個を有する可塑剤を挙げることが出来る。非リン酸エステル系で、ベンゼン環、シクロヘキシル環及びシクロヘキセン環を分子中に少なくとも3個有する可塑剤を含有するウェブは、その乾燥中に内部から表面へと移動することが少なく表面に集まりにくい。また、非リン酸系で、ベンゼン環、シクロヘキシル環及びシクロヘキセン環を分子中に少なくとも3個有する可塑剤を含有するセルロースエステルフィルムは透湿性を改善し、高温湿度における安定性を増すことが出来る。非リン酸系の、ベンゼン環、シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環から選ばれる環を少なくとも3個有する可塑剤は、ベンゼン環のみを3個以上でも、シクロヘキサン環を3個以上でも、シクロヘキセン環を3個以上でも、また、これらの環が縮合している縮合環であってもよいし、異項環との縮合環を含有していてもよい。本発明においては、縮合環内にあるベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環の一つずつの環数を、これらの環の数とする。これらの環には置換基を有していてもよい。例えばナフタレン環は2個と数える。本発明においては、これらの環を分子内に3〜20個あるものが好ましく、更に好ましくは3〜10のである。
【0095】
本発明において、より好ましく用いられるベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環を分子内に少なくとも3個有する可塑剤としては、例えば、
P−43:ジベンジルフタレート
P−44:ジベンジルイソフタレート
P−45:ジベンジルテレフタレート
P−46:ジフェニルフタレート
P−47:ジフェニルイソフタレート
P−48:ジフェニルテレフタレート
P−49:ジシクロヘキシルフタレート
P−50:ジシクロヘキシルイソフタレート
P−51:ジシクロヘキシルテレフタレート
P−52:フェニルシクロヘキシルイソフタレート
P−53:フェニルシクロヘキシルテレフタレート
P−54:フェニルシクロヘキシルフタレート
P−55:ベンジルシクロヘキシルフタレート
P−56:ベンジルシクロヘキシルテレフタレート
P−57:ベンジルシクロヘキシルイソフタレート
P−58:ジベンジルシクロヘキサンジアセテート
P−59:1,3−シクロヘキサンジメチルジベンゾエート
P−60:1,3−ジベンジルシクロヘキサンジカルボキシレート
P−61:1,2−ジベンジルテトラデヒドロフタレート
P−62:1,2−ジシクロヘキシルテトラヒドロフタレート
P−63:1,3−ジシクロヘキシルシクロヘキシルジカルボキシレート
P−64:グリセリントリベンゾエート
P−65:グリセリントリフェニルアセテート
P−66:アセチルクエン酸トリベンジルアセチル
P−67:クエン酸トリシクロヘキシル
P−68:アビエチン酸メチル
P−69:アビエチン酸エチル
P−70:アビエチン酸ブチル
P−71:デヒドロアビエチン酸メチル
P−72:デヒドロアビエチン酸ブチル
P−73:パラストリン酸メチル
等、またオリゴマー的な低分子重合体として、
P−74:KE−604(荒川化学製)
P−75:KE−85(荒川化学製)
P−76:アラルダイドEPN1139(旭チバ(株)製)
P−77:アラルダイドGY260(旭チバ(株)製)
P−78:ハイラック110H(日立化成(株)製)
P−79:ハイラック111(日立化成(株)製)
等樹脂オリゴマー等を好ましく挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0096】
更に、下記の可塑剤を挙げることが出来る。
【0097】
【化1】
Figure 0004281304
【0098】
【化2】
Figure 0004281304
【0099】
【化3】
Figure 0004281304
【0100】
なお、上記これらの化合物は、セルロースエステルフィルムにとって可塑剤の機能の他の機能を有してもよい。
【0101】
本発明に用いられる可塑剤は分子内にS(硫黄)を含有しないものであることが望ましい。
【0102】
〈紫外線吸収剤〉
本発明において、有機化合物添加剤として使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾフェノン系、またはベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤等である。特に、これらの中でも不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。また、特開平10−182621号、特開平8−337574号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。フィルムの紫外線吸収能は380nmで透過率10%以下であることが望まれる。より好ましくは透過率6%未満、更に好ましくは透過率0〜4%未満であることが望ましい。
【0103】
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は下記一般式〔1〕で示される化合物の一群である。
【0104】
【化4】
Figure 0004281304
【0105】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5または6員の異項環を表し、R4とR5は閉環して5または6員の炭素環を形成してもよい。また、R1、R2及びR3の何れかが2価の連結基でもう一つの2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール基と結合してもよい。
【0106】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾールUV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチル−フェノール《チヌビン(TINUVIN)171》UV−9:2−オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物《チヌビン(TINUVIN)109》
UV−10:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール《チヌビン234》
等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、上記のチヌビン109、チヌビン171及びチヌビン326は何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の市販品で、好ましく使用出来る。
【0107】
また、本発明に係る紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表すことが出来る。
【0108】
【化5】
Figure 0004281304
【0109】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n-1−D−基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0110】
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などを挙げることが出来る。また、AまたはYが2価の連結基でもう一つの2−ヒドロキシベンゾフェノン基と二つ以上のベンゾフェノン基を有する化合物となってもよい。更にベンゾフェノンでなく、ベンゾトリアゾール基を有する化合物となってもよい。
【0111】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、
UV−11:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−12:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−13:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−14:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0112】
更に、ベンゾトリアゾール系の窒素原子含有異項環を有する紫外線吸収剤で、且つ、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個有しているものを好ましく用いることが出来る。本発明において、可塑剤の項と同様に、ナフタレン環及びベンゾトリアゾールは縮合環であるが、ナフタレンは2個またベンゾトリアゾールは1個と数える。このように窒素原子含有異項環、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環が、それぞれ縮合環を形成してもよい。
【0113】
分子内にベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を少なくとも3個有する有機化合物添加剤としては、例えば、
UV−15:2,2’−メチレンビス[6(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]
UV−16:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール
UV−17:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
UV−18:1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
UV−19:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール
UV−20:RUVA−100/110(大塚化学(株)製)
UV−21:RUVA−206(大塚化学(株)製)
UV−22:アデカスタブLA−31(旭電化工業(株)製)
UV−23:アデカスタブLA−51(旭電化工業(株)製)
等を挙げることが出来る。ここで、UV−20、22及び23について下記に構造式を示す。また、特開平6−148430号記載公報の一般式(1)〜(5)で示される紫外線吸収性基を複数有する高分子紫外線吸収剤でもよく、具体的には特開平6−148430号公報記載のPUV−1−22で示されている紫外線吸収性基を複数有している高分子紫外線吸収剤が1つの分子内にベンゼン環を3つ以上有している紫外線吸収剤として用いられる。
【0114】
高分子紫外線吸収剤として、
UV−24:RUVA−93(大塚化学社製)の反応型紫外線吸収剤を重合した化合物も好ましく用いることが出来る。あるいは、特願2001−122573記載の紫外線吸収剤も好ましく用いられ、特に一般式(1)〜(8)で示される紫外線吸収剤、例えばこの実施例で示されている化10、化11、化13、化15等の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。あるいは特開2000−273437公報記載の一般式(1)で示されている紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0115】
更に、ベンゾトリアゾール系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を下記に例示する。
【0116】
【化6】
Figure 0004281304
【0117】
【化7】
Figure 0004281304
【0118】
【化8】
Figure 0004281304
【0119】
上記紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、該紫外線吸収剤を有機溶媒に溶解した紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加しても、セルロースエステル溶液に該紫外線吸収剤を直接添加して溶解させてもよい。また、紫外線吸収剤溶液をインライン添加液に添加してもよい。紫外線吸収剤を溶解する有機溶媒は、溶解するものであれば制限なく使用出来るが、本発明においては紫外線吸収剤をドープに使用する有機溶媒、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソランなどのセルロースエステルに対する良溶媒、または良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒、または良溶媒と貧溶媒との混合有機溶媒に溶解するのが好ましい。紫外線吸収剤の含有量は0.01〜5質量%、特に0.5〜3質量%が好ましい。
【0120】
〈酸化防止剤〉
有機化合物添加剤の酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。この酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれ、高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合があり、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解を遅らせたり、防いだりする役割を有するので前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0121】
〈レターデーション調整剤〉
レターデーション調整剤は例えば、添加することによりレターデーションを調整出来る化合物であり、また例えば、レターデーションを増加あるいは低減させることが出来る。分子の構造が平面を有するもので、層の中で平行に面配列出来るような有機化合物であり、ディスコティック化合物が代表的な構造である。例えば、ビフェニル、ナフタリン、アントラセン、クロメン、イソクロメン、クマリン、イソクマリン、フラボン、フラボノール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、アウーレン、フルオレン、フルオレノン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等を挙げることが出来るが、これらを更に結合した大きな分子も平面性を有すれば本発明において使用出来る。
【0122】
〔微粒子〕
本発明において使用するマット剤は出来るだけ微粒子のものが好ましい。微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。中でもケイ素を含むものが濁度が低くなる点、また、フィルムのヘイズを小さく出来るので好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどを挙げることが出来る。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmがより好ましく、5〜12nmが更に好ましい。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見かけ比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/Lがより好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の微粒子分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が発生せず好ましい。本発明において、リットルをLで表すこととする。
【0123】
本発明における微粒子の添加量は、セルロースエステルフィルムの表層(表面から10〜15μmまでの深さを意味する)当たり0.01〜0.5質量%が好ましく、0.03〜0.3質量%がより好ましく、0.05〜0.12質量%が更に好ましい。また、微粒子の2次粒径は0.1〜10μmの粒子を含むことが好ましく、更に0.2〜2.5μmの粒子を含むことが好ましく、平均粒径が0.5〜2.5μmであることが好ましい。平均粒径1.1μm、添加量0.12質量%、あるいは平均粒径0.9μm、添加量が0.16質量%、更にあるいは平均粒径が0.8μmで、添加量が0.2質量%であることが好ましい例として挙げることが出来る。表面の動摩擦係数としては0.9以下が好ましく、更に0.4以下が好ましい。
【0124】
本発明に好ましい二酸化珪素の微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものを挙げることが出来、アエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812を好ましく用いることが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、何れも使用することが出来る。
【0125】
ポリマーの微粒子の例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(東芝シリコーン(株)製)を挙げることが出来る。
【0126】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルTT600が本発明のセルロースエステルフィルムの濁度を低くし、且つ摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0127】
二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。本発明において、1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/L以上の微粒子が好ましく、より好ましくは、90〜200g/Lであり、更に好ましくは、100〜200g/Lである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0128】
微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子を観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
【0129】
本発明において、上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
【0130】
見掛比重(g/L)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(L)
〔多層構造のセルロースエステルフィルム〕
本発明の多層構造のセルロースエステルフィルムは、前述のごとく表層用ドープと基層用ドープの組成を異にして共流延または逐次流延によって形成して得られるものである。共流延は品質的に均一性に優れ、また逐次流延は製膜速度が速く生産性に優れている。
【0131】
本発明において、表層用ドープと基層用ドープの組成が異なるというのは、セルロースエステルのアシル基の置換度が異なるような、またセルロースエステルのアシル基が異なっているようなセルロースエステルの性質が異なっているもの、使用する有機溶媒の種類あるいは組成が異なるもの、ドープの固形成分濃度がことなるもの、添加剤の種類や添加量が異なるようなものでもよい。層構成は2層以上あればよく、表層または基層の中でも複数層あってもよい。好ましくは3層で表層2層と基層1層が好ましく、本発明の優れた光学フィルムを作製するに3層あれば充分効果を上げることが出来好ましい。3層の場合の表層の呼び方として、一方の面の表層を表層1、また他の面の表層を表層2とする。なお、表層及び基層の具体的な組成については後述の光学フィルムのところで説明する。
【0132】
本発明において、セルロースエステルフィルムの全膜厚は特に限定されず10〜500μmのものが用いられるが、10〜60μmが好ましく、表層は基層より膜厚は薄く、通常表層の膜厚は1〜15μmであり、好ましくは5〜10μmである。
【0133】
〔樹脂層〕
本発明において、セルロースエステルフィルム上に金属化合物薄膜を形成させる際、セルロースエステルフィルム上に直接またはセルロースエステルフィルムに樹脂層等を設けた後形成させることが出来る。樹脂層は、樹脂を溶解した溶液の塗布液を塗布し、更に乾燥して得られる層をいい、その層に紫外線のような活性線を照射して硬化した樹脂層とすることが好ましい。樹脂層は、光学的に機能を有していても、いなくてもよい。例えば、接着層、帯電防止層、クリアハードコート層、防眩層または下引層があり、いずれも本発明の光学フィルムに好ましく用いられる。
【0134】
樹脂層はエチレン性不飽和モノマー成分を有する樹脂を重合させて硬化して形成したものが好ましく、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を構成成分として含有することが好ましい。特に、活性線硬化樹脂層が好ましい。
【0135】
ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により、重合や架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0136】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151110号等を参照)。
【0137】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号を参照)。
【0138】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0139】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0140】
これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤また光増感剤は該組成物の1〜10質量%添加することが出来るが、2.5〜6質量%であることが好ましい。
【0141】
エチレン性不飽和モノマーを樹脂の成分として含有していてもよく、例えば、エチレン性不飽和二重結合を一つ有するモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。またエチレン性不飽和二重結合を二つ以上有するモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
【0142】
かかる組成の紫外線硬化樹脂は数多く市販されている。市販品としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製);アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)等を挙げることが出来、これら市販のものから適宜選択して利用出来る。
【0143】
本発明に用いられる活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することが出来る。活性線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒は、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用出来る。好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、更に、好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
【0144】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押し出しコーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
【0145】
また、活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
【0146】
紫外線硬化性樹脂塗布層は乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率とから3秒〜2分がより好ましい。
【0147】
こうして得た紫外線硬化性樹脂層に、ブロッキングを防止するため、また対擦り傷性等を高めるために無機あるいは有機の微粒子を加えることが好ましい。例えば、無機微粒子としては二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることが出来、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることが出来、紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜1μmが好ましく0.01〜0.1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部となるように配合することが望ましい。
【0148】
このようにして形成された紫外線硬化樹脂を硬化させた層は膜厚が1〜10μmであることが好ましく、JIS BO601で規定される中心線平均粗さRaが1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μm程度の防眩層であってもよい。
【0149】
〔大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応性ガスを用いるプラズマ放電処理〕
本発明に有用なプラズマ放電処理について述べる。
【0150】
真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、大気圧条件下または大気圧近傍の圧力下でプラズマ放電を発生させ、反射防止機能を有する薄膜を形成する方法が特開平11−133205号、特開2000−185362、特開平11−61406号、特開2000−147209、同2000−121804等に記載されている。
【0151】
更に本出願人は、特願2001−131663において、金属化合物膜を形成する装置及び方法について提案している。
【0152】
ここで、大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いたプラスティックフィルム基材への表面にプラズマ放電処理による金属酸化物膜を形成する装置及び方法について図を用いて説明する。
【0153】
図7は、本発明の薄膜形成方法に用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。図7においては、この装置は一対の回転電極310Aと310Bを有し、回転電極310Aと310Bには、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加出来る電源380が電圧供給手段381、382を介して接続されている。回転電極310Aと310Bはセルロースエステルフィルムを巻き回しながら搬送するもので、ロール電極もしくはベルト状の電極であることが好ましく、図7ではロール電極を示している。これらの回転電極310A、310Bはセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転することが出来、あるいは回転電極自身がドライブロールとして回転してもよい。これらの回転電極間の間隙(電極間隙)は放電が行われる場所であり、セルロースエステルフィルムFが搬送出来る間隔に設定されており、通常1〜50mmである。この電極間の間隙が放電部350となる。この電極間隙は大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下に維持されており、ここに反応ガス供給部330より反応ガスGが供給され、セルロースエステルフィルムF表面がプラズマ放電処理される。ここで、図示してないが元巻きロールから巻き出されたセルロースエステルフィルムFまたは前工程から搬送されてくるセルロースエステルフィルムFがガイドロール320を経て、まず、セルロースエステルフィルムFの移送方向に同期して回転する回転電極310Aに接しながら移送され、放電部350を通過して、セルロースエステルフィルムFの表面に薄膜が形成される。一旦放電部350から出たセルロースエステルフィルムFは、Uターンロール311A〜311DでUターンされて、今度は、セルロースエステルフィルムFは回転電極310Aと反対方向に回転している回転電極310Bに接しながら移送され、再び前記放電部350を通過して、先ほど薄膜が形成されたセルロースエステルフィルムFの表面に更にプラズマ放電処理され薄膜が形成される。処理に使用された反応ガスGはガス排出口340より反応後の排ガスG′として排出される。図ではセルロースエステルフィルムF上に形成された薄膜は省略してある。表面に薄膜が形成されたセルロースエステルフィルムFは、ガイドローラ321を介して次工程または巻き取りロール(図示してない)方向に搬送される。従って、セルロースエステルフィルムFは回転電極310A、310Bに密着した状態で放電部350を往復してプラズマ放電処理されることとなる。なお、図示してないが、回転電極310Aと310B、ガイドロール320、321、Uターンロール311A〜311D、反応ガス供給部330、ガス排出口340等の装置は外界と遮断するプラズマ放電処理容器内に囲まれて納められていることが好ましい。またこれも図示してないが、必要に応じて、回転電極310Aと310Bの表面の温度を制御するための温度制御用媒体が循環されるようになっている。
【0154】
図8には別のプラズマ放電処理装置を示す。図8は本発明の薄膜形成方法に有用な回転電極と固定電極を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。回転電極410とそれに対向して配置された複数の固定電極411を有し、図示されていない元巻きロールまたは前工程からから搬送されて来るセルロースエステルフィルムFがガイドロール420、ニップロール422を経て回転電極410に導かれ、セルロースエステルフィルムFは回転電極410に接した状態で回転電極410の回転と同期しながら移送され、大気圧もしくはその近傍の圧力下にある放電部450に反応ガス発生装置431で調製された反応ガスGが給気管430から供給され、固定電極411に対向しているセルロースエステルフィルム面に薄膜が形成される。回転電極410と固定電極には、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加出来る電源480が電圧供給手段481、482を介して接続されている。また、回転電極410、固定電極411、放電部450はプラズマ放電処理容器490で覆われ、外界と遮断されている。処理に使用された排ガスG′は処理室の下部にあるガス排気口440から排出される。プラズマ放電処理されたセルロースエステルフィルムFはニップロール423及びガイドロール421を経て次工程または図示してない巻き取りロールへ搬送される。セルロースエステルフィルムFがプラズマ放電処理容器の出入り部分のニップロール422及び423のところに外界との仕切板424及び425が設けられており、外界からニップロール422と共にセルロースエステルフィルムFに同伴して来る空気を遮断し、また出口においては、反応ガスGまたは排ガスG′が外界に漏れないようになっている、なお、図示してないが、必要に応じて、回転電極410及び固定電極411は温度調節のための温度制御された媒体を循環するようになっている。なお、回転電極310A、310B及び410、固定電極411は表面が後述の固体誘電体で被覆されていることが好ましい。
【0155】
このように、本発明において、薄膜が形成されるセルロースエステルフィルムは回転電極上で移送しながらプラズマ放電処理されるのが好ましい。
【0156】
本発明の光学フィルムの薄膜を形成する方法において、対向する電極間に、100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力を供給し、反応性ガスを励起してプラズマを発生させることが好ましく、少なくとも100kHzを越えるハイパワーの電界で高周波電圧を印加することによって、緻密で、膜厚均一性の高い高機能性の薄膜を、生産効率高く得ることが出来る。
【0157】
本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数としては、好ましくは200kHz以上、更に好ましくは800kHz以上である。そして、電極間に供給する電力は、より好ましくは1.2W/cm2以上であり、上限値としては、好ましくは50W/cm2以下、更に好ましくは20W/cm2以下である。尚、電極における電圧の印加面積(/cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0158】
また、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
【0159】
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用出来る。
【0160】
本発明においては、このようなハイパワーの電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0161】
このような電極としては、金属母材上に固体誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に固体誘電体を被覆すること、更に好ましくは、対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。固体誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。電極の形状としては平行平板電極でもよいが、後述のロール電極を用いることが好ましい。
【0162】
基材を電極間に載置あるいは電極間を搬送してプラズマに晒す場合には、基材を片方の電極に接して搬送出来るロール電極仕様にするだけでなく、更に固体誘電体表面を研磨仕上げし、回転電極がセルロースエステルフィルムと接する表面は高い平滑性とし、回転電極の表面の表面粗さがJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下である。このようにすることで、固体誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やクラックを無くし、かつポーラスでなく、空隙のない高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることが出来る。
【0163】
また、高温下での金属母材に対する固体誘電体被覆による電極製作において、少なくとも基材と接する側の誘電体を研磨仕上げすること、更に電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であり、そのため製作方法において、母材表面に、応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングする、特に材質としてはホーロー等で知られる溶融法により得られるガラスであることが良く、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密でかつクラック等を発生しない良好な電極が出来る。
【0164】
また、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10体積%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことであり、ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化や紫外線照射による硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0165】
本発明において、電極間隙は、固体誘電体の厚さ、印加電圧や周波数、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電プラズマを発生させるという観点から0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは1±0.5mmである。
【0166】
本発明において、電極は、その裏面側(内側)から、必要に応じて、加熱あるいは冷却することが出来るようになっている。電極がベルトの場合には、その裏面より気体で冷却することも出来るが、ロールを用いた回転電極では内部に媒体を供給して電極表面の温度及びセルロースエステルフィルムの温度を制御することが好ましい。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムの温度は処理条件によって異なるが、室温〜200℃以下が好ましく、より好ましくは室温〜120℃以下である。セルロースエステルフィルムの温度ムラが生じないようにすることが必要である。
【0167】
本発明において、電極間隙の放電部には、ガス発生装置で発生させた反応ガスを流量制御して、反応ガス供給口よりプラズマ放電部に導入される。反応ガスの濃度や流量は適宜調整されるが、セルロースエステルフィルムの搬送速度に対して十分な速度で処理用ガスを電極間隙に供給することが好ましい。放電部でほとんどが反応して薄膜形成に使われるように流量や放電条件を設定することが望ましい。
【0168】
放電部に大気が混入したり、反応ガスが装置外に漏れ出ることを防止するために、電極及び移送中のセルロースエステルフィルムは全体を囲んで外界から遮蔽することが好ましい。本発明において、放電部の気圧は大気圧もしくはその近傍の圧力に維持される。ここで大気圧近傍とは、20〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93〜110kPaが好ましい。
【0169】
プラズマ放電処理容器はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0170】
また、放電部や回転電極の側面部、セルロースエステルフィルム搬送部等の側面を囲むことによって、反応ガスや排ガスを適切に、また均一に放電部に供給したり排気することも出来る。
【0171】
本発明の光学フィルムの薄膜形成方法に係る反応ガスについて説明する。
〈反応ガス〉
本発明の薄膜形成方法を実施するにあたり、使用するガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、希ガス及び/または窒素ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスの混合ガスで、本発明においてこの混合ガスを反応ガスという。反応性ガスは、反応ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0172】
《希ガス、窒素ガス》
本発明の方法で薄膜を形成するための反応ガスは、特に希ガスまたは窒素ガスを含むことが好ましい。つまり、反応ガスは希ガスと後述の反応性ガスとの混合ガスであることが好ましい。ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来るが、本発明においては、中でもヘリウム、アルゴンを好ましく用いることが出来、特にアルゴンが好ましく用いられる。反応ガス中の希ガスまたは窒素ガスの濃度は90%以上であることが安定したプラズマ放電を発生させるために好ましく、90〜99.99体積%であることが望ましい。
【0173】
《反応性ガス》
以降、反射防止層等として有用な金属化合物薄膜や防汚層薄膜の形成に使用し得る反応性ガスについて主に説明する。
【0174】
反射防止層薄膜は、大まかに、低屈折率層薄膜には、フッ素化合物または珪素化合物を使用し、中屈折率層薄膜には、スズまたは低屈折率層薄膜に使用する化合物と高屈折率層薄膜に使用する化合物を併用する場合もあり、高屈折率層薄膜にはチタン化合物やジルコニウム化合物またはタンタル化合物を使用することが出来る。また、フッ素化合物は防汚層薄膜にも使用し得る。
【0175】
本発明に有用な反応性ガスとして用いる有機フッ素化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましい。有機フッ素化合物としては、四フッ化炭素、六フッ化炭素、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭素化合物;二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物;更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を挙げることが出来る。これらは単独でも混合して用いてもよい。上記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等を挙げることが出来る。更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることが出来るがこれらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にエチレン性不飽和基を有していても良い。また、上記の化合物は混合して用いても良い。また、本発明に係わる有機フッ素化合物が常温常圧で気体である場合は、反応性ガスの成分としてそのまま使用出来るので最も容易に本発明の方法を遂行することが出来る。しかし、有機フッ素化合物が常温常圧で液体または固体である場合には、気化手段により、例えば加熱、減圧等により気化して使用すればよく、適切な有機溶媒に溶解して用いてもよい。上記有機フッ素化合物は、有害ガスとしてのフッ化水素を生成しないものが好ましく、上記のものは何れも安全に使用し得る。また、有機フッ素化合物ガスを用いることによって、処理面にフッ素含有基を形成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得る撥水膜を得ることが出来、防汚層薄膜に応用出来る。本発明に有用な反応性ガスに有機フッ素化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりセルロースエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしての有機フッ素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0176】
珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。また、上記記載の珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシランなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。
【0177】
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、オルガノシランなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0178】
反応ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0179】
中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜を形成し得る反応性ガス化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、エトラエチルスズ、エトラメチルスズ、二酢酸ジ−n−ブチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、ペンタイソプロポキシタンタルなどから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、導電性層薄膜膜あるいは帯電防止層薄膜、あるいは反射防止層薄膜の中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜として有用な金属化合物層を形成することが出来る。
【0180】
チタン化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。高屈折率層薄膜として有用なチタン化合物は、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、上記記載のチタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトライソプロポキシチタンなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。反応ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中のチタン化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0181】
また、上記記載の反応ガス中に水素ガスを0.1〜10体積%含有させることにより薄膜の硬度を著しく向上させることが出来る。
【0182】
また、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜10体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0183】
更に、分子内に親水性基と重合性不飽和結合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことにより、親水性の重合膜を形成させることも出来る。上記親水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、1級もしくは2級または3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基等を挙げることが出来る。また、ポリエチレングリコール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜を形成することが可能である。上記モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、スチレン
スルホン酸ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルなどを挙げることが出来、2種以上併用することも出来る。
【0184】
上記を含め、反応性ガスに有機金属化合物を使用する場合、例えば、有機金属化合物としてLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含むことが出来る。より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、含金属錯体から選ばれるものが好ましい。
【0185】
上記または上記以外の反応性ガスを適宜選択して、本発明の薄膜形成方法に使用することにより様々な高機能性の薄膜を得ることが出来る。その一例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0186】
電極膜:Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜:SiO2、SiO、Si34、Al23、Al23、Y23
透明導電膜:In23、SnO2
エレクトロクロミック膜:WO3、IrO2、MoO3、V25
蛍光膜:ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜:Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe23、Co、Fe34、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜:Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜:a−Si、Si
反射膜:Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜:ZrC−Zr
選択性透過膜:In23、SnO2
シャドーマスク:Cr
耐摩耗性膜:Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜:Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜:W、Ta、Ti
潤滑膜:MoS2
装飾膜:Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
高屈折率膜:TiO2、ZrO2、Ta25
〔多層構造セルロースエステルフィルムへのプラズマ放電処理による金属化合物薄膜の形成・積層、光学フィルム〕
本発明の光学フィルムの金属化合物薄膜は、上述のような、大気圧もしくはその近傍の圧力下で上述のような反応ガスを用いて金属化合物薄膜を形成するが、本発明に有用な反応ガスを使用することによって、炭素含有率0.1〜5質量%の金属化合物薄膜が形成され、その薄膜はスパッタリングや蒸着などの薄膜形成方法と異なる柔軟性を有し、丈夫さにおいてもそれらの方法によるものより格段に優れていることがわかった。本発明における金属化合物薄膜は0.1〜5質量%の炭素含有率を有していることが好ましい。
【0187】
炭素含有率は、XPS表面分析装置を用いてその値を測定することが出来る。XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本発明においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。測定方法については、後述の実施例にて説明する。
【0188】
セルロースエステルフィルムの上に金属化合物薄膜を有する光学フィルムは、例えば、車等の移動媒体中のナビゲーションシステム等に使用され、過酷な状態においても故障の起こらない安定した製品が求められる。本発明者らはその安定性について鋭意検討し、かなり過酷な条件下でも故障が発生しないための、強制劣化試験を検討していた。例えば、従来型の光学フィルムでは、高温高湿条件と常温常湿の条件を繰り返し曝されることによって、セルロースエステルフィルムの表面近傍の性質によっては、微細な顕微鏡で見えるようなクラックを生じることが判明した。これは本発明者らが以前に試験して来た高温高湿条件に40〜50時間1回テストでは見られなかったものである。本発明者らはこれらのことについて鋭意検討した結果、本発明に係わる多層構造のセルロースエステルフィルムを使用することによって、解決出来ることを見い出した。
【0189】
本発明でいう高温高湿の条件とは、80±3℃、90±3%RHという条件と常温常湿の条件の間をそれぞれ12時間ずつ放置して繰り返しサイクルを10回としたものである。
【0190】
また、密閉状態での高温高湿状態に750時間という過酷な条件において強制劣化処理を行うことにより、従来のセルロースエステルフィルムと金属化合物薄膜との間に膜剥がれが起こることもわかった。これについても本発明の光学フィルムは剥がれることなく安定した製品を供給出来ることを見い出した。
【0191】
通常のセルロースエステルフィルムは単層であり、一つの組成で全てのフィルムの性質を決めることになり、またセルロースエステルフィルムを作製する過程におけるウェブ(フィルム)内での様々な変化により、条件によっても変化し易い。その理由は明らかではないが、例えば、有機溶媒の蒸発に伴い可塑剤等の添加剤の移動により薄膜を形成する面に多く集積されたものによる影響、そこにマット剤がある場合の相乗的な影響、マット剤の量的な影響、透湿性の影響等が考えられる。
【0192】
本発明の光学フィルムに使用する基層用ドープ中のセルロースエステルの濃度を表層用ドープのそれより高くすることによって、金属支持体上での乾燥速度が速くすることが出来好ましいが、単層の場合には、ダイからドープ膜が出ると直ぐにドープ膜表面が固まり形状が不規則になり、ウェブが結果的にシャークスキンといって鮫肌のようになってしまい、均一なフィルムが得られないばかりか、そのようなフィルムを用いると金属化合物薄膜も不均一となり好ましくない。表層用ドープのセルロースエステル濃度を基層より低くすることによって、このような現象が制御され、しかも乾燥速度を速めることが出来る。本発明において、表層用ドープの固形分濃度は5〜30質量%、基層用ドープの固形分濃度は20〜40質量%、更に表層用ドープ濃度と基層のそれとの差は5〜15質量%あることが好ましく、こうすることによって、セルロースエステルフィルムの品質が良好で、生産性が向上し、金属化合物薄膜が均一で、しかも金属化合物薄膜の繰り返し試験でのクラックが全く起こらないことがわかった。
【0193】
本発明の光学フィルムの多層構造のセルロースエステルフィルムに使用する基層のセルロースエステルのアシル基置換度と基層のセルロースエステルのアシル基置換度を変えることにより、形成された金属化合物薄膜との間に好ましい効果が発現することを、本発明者らは見い出した。すなわち、表層のセルロースエステルのアシル基の置換度が低い場合、例えば、基層のセルロースエステルのアシル基の置換度が2.9程度で、表層のそれが2.5程度の場合、基層に対する金属化合物薄膜との親和性が良好で、高温高湿繰り返しにおいてもクラックが発生することなく、接着性が非常に優れている。
【0194】
本発明の光学フィルムの多層構造のセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは炭素原子数が2〜4のアシル基が好ましい。アシル基はアセチル基、プロピオニル基及びブチリル基であり、ブチリル基については分岐していても良い。このよなセルロースエステルは、セルローストリアセテートまたはセルロースジアセテート(あるいはセルローストリアセテートとの間にあるもの)のようなセルロースアセテート、セルロースエステルアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートを好ましく挙げることが出来る。アシル基の置換度は2.40〜2.98で、そのうちアセチル基が1.40以上のものが好ましい。基層と表層のアシル基の種類、組成や比率を代えてもよい。
【0195】
本発明の光学フィルムに使用する多層構造のセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の表層に微粒子を含有していることが好ましく、基層には微粒子を含有してもしなくとも良い。基層に微粒子を含有する場合には、表層における微粒子の濃度よりも基層の濃度が非常に小さいことが良い。また、セルロースエステルフィルムの巻き取り、ロール状に巻いた間のくっつき等から表層の両面に微粒子を含有していることが好ましい。更に大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理する際の電極に接する時の摩擦を少なくし、プラズマ処理を均一に行わせるのに好適で好ましい。特に、フィルム表面と裏面間の動摩擦係数は、JIS K 7125(1987)に準じて測定した場合に、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。微粒子添加量を増やすことによって動摩擦係数は低くすることが出来るが、フィルムのヘイズ値が増加する傾向にあるため、添加量は両者のバランスで決定される。好ましくは多層構造のセルロースエステルフィルムの表層において固形分あたり0.1質量%以上添加することが好ましい。また、フィルム中の可塑剤の含有量が多いと、添加した微粒子の凝集が起こり易く、フィルム故障の原因となったり、ヘイズが増加し易くなる。微粒子含有量が0.1質量%以上、特に0.15質量%以上になるとそれらの現象が顕著となるため、表層における可塑剤含有量は10質量%未満とすることが好ましい。共流延や逐次流延で可塑剤を基層用ドープに含有させて表層用ドープに含有させなくとも、有機溶媒の蒸発中に若干移動が起こりフィルムの表層に可塑剤が10質量%未満存在することがあるが、少ないほど好ましい。微粒子と可塑剤が表層に共存する場合、プラズマ放電処理による金属化合物薄膜の均一な形成に悪影響を及ぼすことがあるばかりでなく、高温高湿繰り返しにおける微細なクラックを起こす可能性が高くなり好ましくない。基層に微粒子が存在していてもよいが、より好ましくは基層に含まれる微粒子の添加量は0.01質量%未満である。
【0196】
本発明の光学フィルムに使用する多層構造のセルロースエステルフィルム中の有機化合物添加剤(主に、可塑剤、紫外線吸収剤)の含有量は、表層には10質量%未満が好ましく、より好ましくは0〜5質量%であり、更に好ましくは0〜2質量%である。また、基層には、5〜30質量%の添加量が好ましく、表層と基層に置ける該有機化合物添加剤の差が5〜30質量%であることが特に好ましい。ドープでは、基層用ドープには該有機化合物添加剤は10質量%以下が好ましく、表層用ドープでは2質量%未満が好ましい。例えば基層用ドープ中に有機化合物添加剤を添加し、3層共流延を行った場合、基層中の有機化合物添加剤の一部は拡散により表層側に移動し、表層においても有機化合物添加剤が検出されることがあるが、特に可塑剤は主に基層に含有させることが好ましい。これにより、高温高湿繰り返しでも微細なクラックが起こらず良好なセルロースエステルフィルムが得られる。
【0197】
更に、本発明の光学フィルムの金属酸化膜薄膜は、前述のように0.2〜5質量%の炭素含有率を有していることにより該薄膜が柔軟性を有しているため、上記のような高温高湿状態における過酷な条件でも、多層構造を有するセルロースエステルフィルムと共に、薄膜の破壊を抑制する役割をしていると思われる。
【0198】
本発明の光学フィルムに使用するセルロースエステルフィルムは表層と基層を有する多層構成のセルロースエステルフィルムであり、特に好ましくは基層の両面に表層を有する3層構成のセルロースエステルフィルムである。基層が複数層から形成されていてもよい。本発明に係わるセルロースエステルフィルムを光学フィルムとする場合の全膜厚は10〜1000μmの範囲で、特に好ましくは10〜60μmである。表層は通常全膜厚の1〜25%程度に相当する厚みを有しており、1〜15μmであることが好ましく、特に5〜10μmであることが好ましい。表面からこの範囲内の膜厚であれば表層が複数の層で形成されていてもよい。
【0199】
このような膜厚の本発明に係わるセルロースエステルフィルムは、20〜250g/m2・24h(25℃、90%RH)の透湿度を有しており、金属化合物薄膜を有する光学フィルムとして、耐湿性を有することが好ましい。ここで、24hは24時間のことである。
【0200】
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは面内レターデーションRoが0〜500nm、膜厚方向のレターデーションRtが0〜300nmを有し、好ましいレターデーションを示す。
【0201】
本発明の光学フィルムは、反射防止フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、導電性フィルム、帯電防止フィルム等の各種光学フィルム、あるいはこれらの機能を複数有するフィルムとして用いることが出来る。
【0202】
〔偏光板〕
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは偏光板保護フィルムとして極めて優れている。偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明においても同様に、本発明のセルロースエステル積層フィルムをアルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる。本発明の光学フィルムとした後に、セルロースエステルフィルムの片面を鹸化処理してもよい。
【0203】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明に係わる多層構造のセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせるが、本発明に係わるセルロースエステルフィルムは透湿性が低く耐久性に優れている。
【0204】
従来のセルロースエステルフィルムに金属化合物薄膜を形成させた光学フィルムを使用した偏光板は前述と同様な高温高湿条件下での耐久性は金属化合物薄膜のクラックや膜剥がれなどの他に、偏光度も変化するということがわかった。これに対して本発明の光学フィルムを使用することによりそのような現象を抑制出来ることを見い出した。
本発明の偏光板を用いた表示装置は耐久性に優れ、長期間にわたってコントラストの高い表示が可能である。
【0205】
〔画像表示装置〕
本発明の光学フィルムあるいは本発明の偏光板を画像表示装置に組み込むことによって、種々の画像表示装置を作製することが出来る。画像表示装置としては、液晶画像表示装置(反射型、半透過型、透過型)、有機電解発光素子、プラズマディスプレー等がある。前述のような高温高湿条件下での強制劣化処理において、画像表示装置についても本発明の光学フィルムまたは偏光板を用いたものは光学フィルム起因の問題は認められなかった。
【0206】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0207】
〔評価方法〕
〈クラック〉
金属化合物薄膜を有する光学フィルム試料を20cm×20cmの大きさに5枚ずつ裁断し用意した。試料を、23±2℃、55±5%RHの環境下で12時間放置した後、80±3℃、90±3%RHの条件に12時間放置し、再び23±2℃、55±5%RHで12時間放置、80±3℃、90±3%RHで12時間放置と交互に繰り返し10回行い、最後に23±2℃、55±5%RHの環境下で12時間放置した後、試料を光学顕微鏡でクラックの状態を観察し、下記のような基準で評価した。
【0208】
A:全くクラックが観察されなかった
B:端に1、2本の短いクラックのような線が観察された
C:端に10本程度短いクラックのような線が観察された
D:端に数十本のやや伸びたクラックと内部にも所々短いクラックが発生し
ていた
E:全面に短めのクラックが多数発生していた
F:全面にクラックが縦横無尽に走っていた。
【0209】
〈膜剥がれ〉
50mlの密閉出来るガラス容器中に、50cm2の光学フィルム試料を入れ、密閉しない状態で80±3℃、90±3%RHの条件下で24時間放置した後、密閉し、80±3℃、90±3%RH条件下で750時間強制劣化させた後の光学フィルム試料の膜剥がれ状態を下記のレベルにランクわけして評価した。
【0210】
A:全く膜剥がれがなかった
B:端に1カ所極小さな膜剥がれらしい所があった
C:端にほんの少し膜剥がれが観察された
D:端に多数の膜剥がれ箇所が観察された
E:端から中央にかけて膜剥がれが広がっていた
F:ほとんど全体が剥がれていた。
【0211】
〈透湿度〉
金属化合物薄膜を形成する前のセルロースエステルフィルムについて、JISZ 0208に記載の方法により、25℃、90%RHの条件で測定し、面積1m2当たり24時間(h)で蒸発する水分量(g)として算出し、下記のレベルで評価した。
【0212】
A:230g/m2・24h未満
B:230g/m2・24h以上、250g/m2・24h未満
C:250g/m2・24h以上、260g/m2・24h未満
D:260g/m2・24h〜280g/m2・24h
E:280g/m2・24h超。
【0213】
〈動摩擦係数〉
JIS−K−7125(1987)に準じ、セルロースエステルフィルムを100×250mmの大きさに2枚切り出し、表裏を互いに接触するように重ね、200gの錘を載せ、接触面積を80mm×200mm、移動速度を100mm/分として錘と接している側のフィルムを錘と共に水平方向に引っ張り、錘を移動するのに必要な平均荷重(F)を測定し、下記式より動摩擦係数を求めた。表3中、A面/B面というのは、A面とB面を接触させたことを表したものである。
【0214】
動摩擦係数=F/(錘の質量)
〈ヘイズ〉
ASTM D1003−52に従って光学フィルム試料1枚のヘイズを測定した。
【0215】
〈偏光板保存性〉
偏光膜と金属化合物薄膜を有する光学フィルムを貼り合わせた偏光板について、先ず、平行透過率と直行透過率を測定し、下記式にしたがって偏光度を算出した。その後各々の偏光板を60±3℃、90±3%の条件下で750時間の強制劣化後、再度平行透過率と直行透過率を測定し、下記式に従って偏光度を算出した。偏光度変化量を下記式により求めた。
【0216】
偏光度P=〔{(H0−H90)/(H0+H90)}/2〕×100
偏光度変化量=P0−P750
0 :平行透過率
90 :直行透過率
0 :強制劣化前の偏光度
750:強制劣化750時間後の偏光度
◎:偏光度変化率10%未満
○:偏光度変化率10%以上、25%未満
×:偏光度変化率25%以上。
【0217】
〈屈折率、膜厚、平均反射率の測定〉
光学フィルムの薄膜の分光反射率は分光光度計U−4000型(日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件にて反射率の測定を行った。測定は、観察側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止して、反射率(400nm−700nmの波長について)の測定を行った。該スペクトルのλ/4値より光学膜厚を算出し、それを基に屈折率を算出した。また、反射スペクトルの結果から膜厚を算出した。また、450〜650nmの平均反射率を求めた。
【0218】
〈金属化合物薄膜の炭素含有率の測定〉
XPS表面分析装置として、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定をおこなう前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去した。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Krなどが利用出来る。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、炭素含有率の値を原子数濃度(atomic concentration)として求めた。定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にした。
【0219】
実施例1
〔ドープD−1〜D−19調製〕
本発明において、ダイから流延するドープをドープ(D)といい、インライン添加液を混合する前の溶液をセルロースエステル溶液(CS)という。
【0220】
本実施例1で使用するセルロースエステルを下記に示す。
CE1:リンター綿から合成されたTAC(アセチル基置換度2.90、数平均分子量120,000)85質量部と木材パルプから合成されたTAC(アセチル基置換度2.91、数平均分子量90,000)15質量部の混合物
CE2:リンター綿から合成されたTAC(アセチル基置換度2.58、
数平均分子量100,000)
CE3:セルロースアセテートプロピオネート(CAP)
(アセチル基置換度1.94、プロピオニル基置換度0.7、
数平均分子量75,000)
《セルロースエステル溶液CS−1〜CS−19の調製》
セルロースエステル (表1または2に記載の種類と質量部を添加)
メチレンクロライドまたは酢酸メチル(表1または2に記載の質量部を添加)
エタノール (表1または2に記載の質量部を添加)
可塑剤 (表1または2に記載の種類、質量部添加または未添加)
以上を密閉型の溶解釜に投入し、攪拌しながら70℃で完全に溶解し、冷却後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過してセルロースエステル溶液CS−1〜CS−19とした。
【0221】
《インライン添加液IA−1〜IA−19の調製》
まず、インライン添加液に使用する二酸化珪素微粒子分散液A及びBの調製を行った。
【0222】
〈二酸化珪素微粒子分散液Aの調製〉
アエロジル200V(一次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/L)10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、衝突型分散機のマントンゴーリン(ゴーリン社製)で分散を行い、二酸化珪素微粒子分散液Aを得た。
【0223】
〈二酸化珪素微粒子分散液Bの調製〉
アエロジルR972V(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/L)10質量部
エタノール 90質量部
以上を上記と同様に二酸化珪素微粒子分散液Bを得た。
【0224】
〈インライン添加液IA−1〜IA−19の調製〉
樹脂 (表1または2に記載の種類、質量部を添加)
紫外線吸収剤 (表1または2に記載の種類、質量部を添加)
メチレンクロライドまたは酢酸メチル(表1または2に記載の質量部を添加)
エタノール (表1または2に記載の質量部を添加)
二酸化珪素微粒子分散液 (表1または2に記載の種類、質量部を添加)
以上を密閉型の溶解釜に投入し、加熱、攪拌しながら完全に溶解させた後、アドバンテック東洋(株)製のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−pps(10Nと20N)で濾過し、更にここに二酸化珪素微粒子分散液を添加して濾過し、インライン添加液IA−1〜IA−19とした。なお、表1及び2において、二酸化珪素微粒子分散液をSiO2分散液と略してある。
【0225】
〈ドープD−1〜D−19の調製〉
上記各セルロースエステル溶液及び各インライン添加液を番号が合うように(CS−1とIA−1のように)それぞれ製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNF(絶対濾過精度50μm)で濾過し、セルロースエステル溶液100質量部に対してインライン添加液を2質量部になるように合流管で合流させ、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合してドープD−1〜D−19を形成した(ドープはダイに導入する直前で混合調製した)。なお、本実施例では3層構成のセルロースエステルフィルムを作製するため、二つの表層用ドープ調製ラインと一つの基層用ドープ調製ラインを用いた。但し比較試料では基層用ドープラインだけを用いた。なお、表1と2は続きの表である。
【0226】
【表1】
Figure 0004281304
【0227】
【表2】
Figure 0004281304
【0228】
〔セルロースエステルフィルム1〜7及びH1〜3の作製〕
上記で調製したドープD−1〜D−19を表3に示すように二つの表層用ドープラインと基層用ドープラインから、それぞれの表層用ダイまたは基層用ダイに各ドープを表3に示したような組み合わせで、且つ乾燥後の層膜厚が40μm、表層膜厚が5μm、基層膜厚が30μmとなるように導入し、1500mm幅のステンレスベルト上に共流延を行った(表層は基層より若干広目に流延した)。ステンレスベルトの温度を33℃とし、ベルト面(この面をB面とする)側に表層1、空気側の面(この面をA面とする)に表層2のとなるようにした。ステンレスベルト上で、積層されたウェブを表3に記載した金属支持体上乾燥時間蒸発させた後、ステンレスベルト上からウェブを剥離した。剥離したウェブを1480mm幅に両端をスリッターで裁ち落とし、このウェブをテンター乾燥機に導入し、両端をクリップで把持して幅方向に1.05倍延伸しながら90℃で乾燥させ、次いで120℃の各乾燥ゾーンを有するロール乾燥機内に配置された多数のロールを通して搬送させながら乾燥を終了させセルロースエステルフィルムを作製した。更にこのセルロースエステルフィルムの両端を裁ち落とし1350mm幅フィルムとし、このフィルムの両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して、巻長は4000mのセルロースエステルフィルム試料No.1〜7及びH1〜H3を得た。セルロースエステルフィルムの全膜厚は40μmであり、断面の電子顕微鏡写真により表層1、基層及び表層2のそれぞれの膜厚は5μm、30μm及び5μmであった。
【0229】
【表3】
Figure 0004281304
【0230】
ここで、表1、2において、MCはメチレンクロライド、MAは酢酸メチル、EtOHはエタノールである。
【0231】
実施例2
〔光学フィルム試料の作製〕
実施例1で作製したセルロースエステルフィルム試料No.1〜7及びH1〜H3について、試料No.1〜4及びH1のB面側の表層の上に下記ハードコート層または防眩層を別々に塗設したセルロースエステルフィルム試料No.1T〜4T、H1T及びこれらの層を塗設しないセルロースエステルフィルム試料1〜7及びH1〜H3を表4のように用意した。
【0232】
〈クリアハードコート層の塗設、塗設層1〉
下記のクリアハードコート層塗布組成物を上記で作製したセルロースエステルフィルムB面側にウェット膜厚で13μmとなるように押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線照射し、乾燥膜厚で4μmの中心線平均粗さ(Ra)15nmのクリアハードコート層(塗設層1)を設けた。
(クリアハードコート層塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分20質量部
ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
〈防眩層の塗設、塗設層2〉
下記の防眩層塗布組成物を上記で作製したセルロースエステルフィルムB面側に下記の防眩層塗布組成物をウェット膜厚で10μmとなるように押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線照射し、乾燥膜厚で3μmの防眩層(中心線平均粗さ(Ra)0.3μm)(塗設層2)を設けた。
【0233】
《防眩層塗布組成物》
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
サイリシア431(平均粒径2.5μm、(富士シリシア化学(株)製))2.5質量部
アエロジルR972V(平均粒径16nm) 2質量部
以上を高速攪拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で攪拌し、その後衝突型分散機(マントンゴーリン、ゴーリン(株)製)で分散した後、下記の成分を添加した。
【0234】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分20質量部
ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部
〔大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理による金属化合物薄膜の形成〕
図8のようなプラズマ放電処理装置を用いて連続的に、大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理を行い、光学フィルム1〜7、1T〜4T、H1〜H3及びH1Tを作製した。
【0235】
ここで、ロール電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax、5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極を製作しアース(接地)した。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向電極群とした。この図8に示したような装置を直列に並べ、金属化合物層を連続して交互に重ねて形成させ光学フィルム1〜7、1T〜4T、H1〜H3及びH1Tを得た。
【0236】
〈放電条件〉
放電出力を15W/cm2とし、また、対向電極間の間隙を1.5mmとし、その間隙における反応ガスの圧力を102kPaとした。なお、プラズマ放電処理の電源は、日本電子(株)製高周波電源JRF−10000(周波数13.56MHz)を使用した。
【0237】
〈反応性ガス〉
プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。
【0238】
《酸化チタン薄膜形成用反応ガス組成・・高屈折率層用》
希ガス(アルゴン) 98.9体積%
反応性ガス(水素ガス) 0.8体積%
反応性ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)) 0.3体積%
《酸化珪素薄膜形成用反応ガス組成・・低屈折率層用》希ガス(アルゴン) 98.25体積%
反応性ガス(水素ガス) 1.5体積%
反応性ガス(テトラメトキシシラン蒸気(アルゴンガスにてバブリング))0.25体積%
上記条件にて、セルロースエステルフィルム試料No.1〜7、H1〜3及び塗設層1または2を有する1T〜4T、H1TのそれぞれのB面に連続的に大気圧プラズマ処理し、セルロースエステルフィルム上にまたはクリアハードコート層あるいは防眩層上に、順に酸化チタン層、酸化珪素層、酸化チタン層、酸化珪素層の4層の重層形成し反射防止層被膜を有する光学フィルム試料1〜7、H1〜H3、1T〜4T及びH1Tを得た。
【0239】
それぞれの試料につき、下記のごとき屈折率、膜厚の測定、更に炭素含有率を測定した。
【0240】
《屈折率・膜厚の結果》
上記測定の結果、順に高屈折率層(屈折率2.2、膜厚13nm)、低屈折率層(屈折率1.46、膜厚35nm)、高屈折率層(屈折率2.2、膜厚122nm)、低屈折率層(屈折率1.46、膜厚88nm)であった。
【0241】
《炭素含有率の結果》
何れの試料の炭素含有率は、順に、高屈折率層が0.4〜0.6質量%、低屈折率層が0.3〜0.5質量%、高屈折率層が0.4〜0.6質量%及び低屈折率層が0.3〜0.5質量%であった。
【0242】
以上の光学フィルム試料1〜7、H1〜H3、1T〜4T及びH1Tについて、クラック及び膜剥がれについて評価を行った。更に、これらに使用したセルロースエステルフィルムの透湿度、動摩擦係数、ヘイズについて測定した。結果を表4に示す。表中*印の2T、4Tのヘイズ値は防眩層も含んでいる値で参考値である。
【0243】
【表4】
Figure 0004281304
【0244】
(結果)
微粒子について、表層に添加し、基層には添加しないか、または極僅か添加し、また有機化合物添加剤については、逆に表層に添加しないか、または極僅か添加し、基層に添加した3層構造のセルロースエステルフィルムは、ヘイズは小さくしかも、透湿度も小さく、動摩擦係数も適度で光学フィルム用のセルロースエステルフィルムとして適していた。比較例は単層で微粒子も有機化合物添加剤を共に含有しており、ヘイズ、透湿度、動摩擦係数共に劣っていた。
【0245】
かかる3層構造の表層と基層とで組成の異なるセルロースエステルフィルムを使用した光学フィルムの高温高湿〜常温常湿繰り返し条件でのクラックの発生もなく、また高温高湿環境下に長時間放置しても膜剥がれが起こらず優れていた。これに対して単層のセルロースエステルフィルムを使用したものは何れも劣っていた。
【0246】
実施例3
〔偏光板の作製〕
光学フィルム1T〜4T及びH1Tについて、A面側を60℃の2mol/LのNaOH水溶液に90秒浸漬後、その後常温水で水洗して、80℃で乾燥しそれぞれの片面鹸化処理した光学フィルムを得た。
【0247】
前記光学フィルムの基材フィルムとして用いたセルロースエステルフィルム試料1〜7、H1〜H3についても同様に片面鹸化処理を行った。
【0248】
別に120μmの厚さのポリビニルアルコールをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に長尺方向に延伸した偏光膜を用意した。この偏光膜の片面に、上記鹸化処理した光学フィルムの鹸化処理面を、完全鹸化型のポリビニルアルコール5質量%水溶液粘着剤で貼り合わせ同様に反対の面には鹸化されたセルロースエステルフィルムを貼り合わせ、偏光板1T〜4T及びH1Tを得た。偏光板を上記保存性の評価を行い、結果を表5に示した。
【0249】
〔液晶画像表示装置〕
市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J 型名 LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離した。ここに実施例2で作製した偏光板試料の偏光方向を合わせて液晶表示パネルに張り付けた。強制劣化を行った偏光板試料を用いて、それぞれの液晶表示パネルについて、目視にて視認性を評価し、結果を表5に示した。
【0250】
【表5】
Figure 0004281304
【0251】
(結果)
本発明の表層と基層の組成の異なる積層構造を有するセルロースエステルフィルムを使用し、大気圧もしくはその近傍の圧力下、反応ガスを用いてプラズマ放電処理した光学フィルムを用いて作製した偏光板は、高温高湿環境下に保存しても変化がなく安定した偏光板を提供出来る。比較例の偏光板は偏光板の端の方に偏光機能がなくなり非常に劣っていた。また、この本発明の偏光板を使用した液晶表示パネルは、反射光の写り込みがほとんどなく、高いコントラストが維持されており、視認性が良好であることが確認された。これに対して比較例の偏光板はコントラストが低下し、反射光の写り込みが気になり、視認性が悪かった。
【0252】
【発明の効果】
表層用ドープと基層用ドープの組成の異なった複数のドープを、共流延または逐次流延して形成したセルロースエステルフィルムの上に、大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いプラズマ放電処理により金属化合物薄膜を形成した光学フィルムは、高温高湿条件下、サイクル処理または長時間処理をおこなっても安定した優れた光学フィルムを提供出来る。また、高温高湿条件下で安定な偏光板、画像表示装置も提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】3層構造のフィルムの断面を模式的に示したものである。
【図2】共流延ダイ及び流延して多層構造ウェブ(流延直後はウェブをドープ膜ともいう)を形成したところを表した図である。
【図3】逐次流延ダイ及び流延された多層構造のウェブを表した図である。
【図4】別のタイプの共流延ダイの断面を示した図である。
【図5】溶液流延製膜装置のドープ調製工程、流延工程、及び乾燥工程を模式的に示した図である。
【図6】溶液流延製膜装置の流延以降の工程を示した図である。
【図7】プラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【図8】別のプラズマ放電処理装置を示す図である。
【符号の説明】
10 共流延ダイ
11 口金部分
13、15 表層用スリット
14 基層用スリット
16 金属支持体
17、19 表層用ドープ
18 基層用ドープ
20 多層構造ウェブ
100 セルロースエステル溶液
101 溶解釜
102、105、112、115 送液ポンプ
103 濾過器
104、114 ストックタンク
106、113、116 濾過器
108、117 導管
110 インライン添加液
120 合流管
121 混合機
200 共流延ダイ
201、202、203 導入口
204 金属支持体
205 剥離位置
206 ウェブ
207 テンター装置
208 ロール乾燥装置
210 セルロースエステルフィルム
410 回転電極
411 固定電極
430 給気間
431 反応ガス発生装置
440 ガス排気口
450 放電部
480 電源
490 プラズマ放電処理容器
F セルロースエステルフィルム
G 反応ガス
G′ 排ガス

Claims (21)

  1. 基層及び表層を有する多層構造のセルロースエステルフィルムを多層溶液流延製膜方法により形成した後、光学フィルムを製造する方法において、組成の異なる基層用ドープと表層用ドープであって、セルロースエステルのアシル置換度が表層用ドープが基層用ドープより低い、基層用ドープと表層用ドープを金属支持体上に共流延または逐次流延により多層のウェブを形成し、該金属支持体から該ウェブを剥離後、乾燥して多層構造のセルロースエステルフィルムを形成した後、該セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の可塑剤含有量が10質量%未満の表層の上に、大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理することにより0.1〜5質量%の炭素含有率を有する金属化合物薄膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 請求項1に記載の光学フィルムの製造方法において、前記表層の有機化合物添加剤の含有量が10質量%未満であり、前記基層のそれが5〜30質量%で、且つ該表層と該基層との有機化合物添加剤の差が5〜30質量%であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  3. 基層及び表層を有する多層構造のセルロースエステルフィルムを多層溶液流延製膜方法により形成した後、光学フィルムを製造する方法において、組成の異なる基層用ドープと表層用ドープであって、セルロースエステルのアシル置換度が表層用ドープが基層用ドープより低い、基層用ドープと表層用ドープを金属支持体上に共流延または逐次流延により多層のウェブを形成し、該金属支持体から該ウェブを剥離後、乾燥して多層構造のセルロースエステルフィルムを形成し、該セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の可塑剤含有量が10質量%未満の表層の上に少なくとも1層の樹脂層を塗設した後、更にその上に大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いてプラズマ放電処理することにより0.1〜5質量%の炭素含有率を有する金属化合物薄膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  4. 前記反応ガスが水素ガスを0.1〜10体積%含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスを用いたプラズマ放電処理が、対向電極間に100kHzを越えた周波数の電圧をかけ、且つ1W/cm 以上の電力を供給して行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 金属支持体上でのウェブの流延から剥離までの乾燥時間を30〜120秒とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 基層を形成するドープ中のセルロースエステルの濃度を表層のそれよりも高くして多層構造のセルロースエステルフィルムを形成することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. セルロースエステルが、炭素原子数2〜4のアシル基を有し、2.40〜2.98のアシル基の置換度を有し、且つ1.40以上のアセチル基の置換度を有することを特徴とする請求項17の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 少なくとも一方の表層を形成するドープが微粒子を含有し、且つ基層を形成するドープが微粒子を含有しないか、または表層を形成するドープより微粒子含有率が小さいことを特徴とする請求項18の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  10. 基層を形成するドープが有機化合物添加剤を含有し、且つ表層を形成するドープが有機化合物添加剤を含有しないか、または基層を形成するドープより有機化合物添加剤の含有率が小さいことを特徴とする請求項19の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  11. 基層を形成するドープの有機化合物添加剤の固形分中の含有率が、5〜30質量%で、且つ表層を形成するドープの有機化合物添加剤の固形分中の含有率が10質量%未満であることを特徴とする請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
  12. 有機化合物添加剤が、紫外線吸収剤または非リン酸エステル系可塑剤で、且つベンゼン環、シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個有することを特徴とする請求項10または11に記載の光学フィルムの製造方法。
  13. 請求項112の何れか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
  14. 多層構造のセルロースエステルフィルムが、少なくとも1層の基層とその両面に表層を少なくとも1層づつ有し、全体として少なくとも3層を有することを特徴とする請求項13に記載の光学フィルム。
  15. 多層構造のセルロースエステルフィルムの膜厚が10〜60μmであることを特徴とする請求項13または14に記載の光学フィルム。
  16. 表層の乾燥後の膜厚が1〜15μmであることを特徴とする請求項1315の何れか1項に記載の光学フィルム。
  17. 表層の微粒子の含有量が0.01〜1.0質量%であり、基層の微粒子の含有量が0.01質量%未満であることを特徴とする請求項1316の何れか1項に記載の光学フィルム。
  18. 多層構造のセルロースエステルフィルムの透湿度が20〜250g/m ・24hr(25℃、90%RH)であることを特徴とする請求項13〜17の何れか1項に記載の光学フィルム。
  19. 請求項13〜18の何れか1項に記載の光学フィルムを偏光膜に張り合わせて作製したことを特徴とする偏光板。
  20. 請求項13〜18の何れか1項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする表示装置。
  21. 請求項19に記載の偏光板を使用したことを特徴とする表示装置。
JP2002213870A 2001-07-31 2002-07-23 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置 Expired - Fee Related JP4281304B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002213870A JP4281304B2 (ja) 2001-07-31 2002-07-23 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001-231594 2001-07-31
JP2001231594 2001-07-31
JP2002213870A JP4281304B2 (ja) 2001-07-31 2002-07-23 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003114333A JP2003114333A (ja) 2003-04-18
JP4281304B2 true JP4281304B2 (ja) 2009-06-17

Family

ID=26619664

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002213870A Expired - Fee Related JP4281304B2 (ja) 2001-07-31 2002-07-23 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4281304B2 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI383191B (zh) * 2004-05-07 2013-01-21 Fujifilm Corp 液晶顯示裝置
JP4677781B2 (ja) * 2004-12-27 2011-04-27 コニカミノルタオプト株式会社 ハードコートフィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置
JP4699783B2 (ja) 2005-03-22 2011-06-15 富士フイルム株式会社 セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5181673B2 (ja) 2005-08-30 2013-04-10 コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 液晶表示装置
US7854864B2 (en) 2006-04-28 2010-12-21 Konica Minolta Opto, Inc. Method for manufacturing an optical film having a convexoconcave structure
JP5558653B2 (ja) * 2006-12-12 2014-07-23 神東塗料株式会社 カチオン性電着塗料組成物
JP2011116113A (ja) * 2009-11-09 2011-06-16 Fujifilm Corp セルロースエステルフィルム及びその製造方法
JP2011132496A (ja) * 2009-11-25 2011-07-07 Fujifilm Corp プラスチックフィルム、その製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5879157B2 (ja) * 2011-03-07 2016-03-08 富士フイルム株式会社 光学フィルム、積層体、位相差フィルム、偏光板及び光学フィルムの製造方法
JP5720401B2 (ja) * 2011-04-27 2015-05-20 コニカミノルタ株式会社 セルロースアセテート積層フィルム、偏光板、及び液晶表示装置
JP5720431B2 (ja) * 2011-06-20 2015-05-20 コニカミノルタ株式会社 位相差フィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置
JP5776824B2 (ja) * 2014-07-17 2015-09-09 コニカミノルタ株式会社 セルロースアシレートフィルムの製造方法
JP6360819B2 (ja) * 2015-09-30 2018-07-18 富士フイルム株式会社 セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、積層体、偏光板、及び液晶表示装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003114333A (ja) 2003-04-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7407686B2 (en) Optical film, polarizing plate and display device utilising the film, and production method of optical film
US20030072891A1 (en) Thin film forming method, optical film, polarizing film and image display method
JP4281304B2 (ja) 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置
JPWO2002048428A1 (ja) 薄膜形成方法、薄膜を有する物品、光学フィルム、誘電体被覆電極およびプラズマ放電処理装置
JP4000830B2 (ja) プラズマ放電処理装置
JP2009025604A (ja) 偏光板保護フィルム、その製造方法及び製造装置、並びに偏光板、その製造方法及び表示装置
JP2003201570A (ja) 大気圧プラズマ処理装置、大気圧プラズマ処理方法及びそれを用いて作製した長尺フィルム
JP2002339075A (ja) 長尺基材の表面処理方法及びその方法により製造された光学フィルム
JP4099998B2 (ja) 光学フィルム、防眩性反射防止フィルム、偏光板、表示装置及び光学フィルムの製造方法
JP4556357B2 (ja) 低反射偏光板及びそれを用いた表示装置
JP4325183B2 (ja) プラズマ放電処理装置及びプラズマ放電処理方法
JP2005096095A (ja) ハードコートフィルム及びその製造方法
JP2004258348A (ja) 防汚処理された光学フィルムおよび該光学フィルムを表面に有する画像表示装置
JP2003121602A (ja) 光学フィルム及びその製造方法
JP4196686B2 (ja) 光学フィルムの製造方法
JP2003231765A (ja) 反射防止フィルムの製造方法、その方法で製造された反射防止フィルム及びそれを用いた偏光板
JP2003053882A (ja) 光学フィルム、その製造方法、反射防止フィルム、偏光板
JP4400064B2 (ja) 光学フィルムの製造方法
JP2004151472A (ja) 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置
JP2002228803A (ja) 低反射積層体の製造方法及び低反射積層体
JP4110777B2 (ja) 積層体とそれを用いた楕円偏光板及び表示装置
JP4470426B2 (ja) 光学フィルムの製造方法
JP2004347778A (ja) 光学フィルム、偏光板およびそれを用いた液晶表示装置
JP2004177459A (ja) 光学フィルム、その製造方法、偏光板及び表示装置
JP2005003704A (ja) 積層体とそれを用いた楕円偏光板及び表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050621

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080818

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080826

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081021

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081118

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090121

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090224

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090309

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120327

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120327

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130327

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140327

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees