JP2004151472A - 光学フィルム、その製造方法、それを用いた偏光板及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】0.01〜1質量%の微粒子を含有する膜厚1〜15μmの少なくとも1層の表層と、可塑剤及び紫外線吸収剤を主たる添加剤として含有する基層を有する多層構成のセルロースエステルフィルムを用いて、ガス中のほとんどを窒素ガスとし、高周波電圧を、第1の周波数ω1の電圧成分と、該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分として印加する大気圧プラズマ放電処理法により光学フィルムを製造する。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放射型ディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等に有用な光学フィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた偏光板及び表示装置に関する。更に詳しくは、大気圧プラズマ放電処理方法により金属化合物層を形成した光学フィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた偏光板及び表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学レンズ、CRT、コンピュータやワープロの液晶画像表示装置等の分野を中心に、透過率及びコントラストの向上、映り込み低減のために、表面反射を減少させる反射防止技術が従来より提案されている。反射防止技術としては、光学干渉層として屈折率と光学膜厚が適当な値を有する層をいくつか積層することにより、積層体と空気界面における光の反射を減少させることが有効である。
【0003】
従来、このような高機能性の薄膜の形成方法は、塗布に代表される塗膜硬化法か、あるいは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式薄膜形成法等によってなされていた。
【0004】
上記真空を用いた乾式薄膜形成法は、高精度の薄膜が形成出来るため、高性能の薄膜を形成するには好ましい方法である。しかし、乾式薄膜形成法に用いる真空装置は、被処理基材が大きくなると、装置が非常に大型化し、値段も高額になる他、真空排気にも膨大に時間を費やし、生産性が上げられないデメリットが大きい。
【0005】
上記、真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法が公開されており、この方法は大気圧プラズマ放電処理法といわれている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0006】
このような反射防止層は、高屈折率材料としてTiO2、ZrO2、Ta2O5等、また低屈折率材料としてSiO2、MgF2等が積層されており、これまでに提案された反射防止層は、乾式製膜方法と塗布式製膜方法により製造出来る。
【0007】
乾式製膜方法としてはスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法あるいはPVD法があり、光学的機能の観点では乾式製膜方法の方が優れているが、塗布式製膜方法には製造が容易で安価することが可能という利点がある。
【0008】
湿式(塗布式)製膜方法としては、チタンアルコキシドやシランアルコキシドに代表される金属アルコキシドを、支持体の表面に塗布、乾燥、加熱して金属酸化物の膜を形成する方法が行われている。
【0009】
ところで、LCD、PDP、ELD、CRT、蛍光表示管、FEDのような画像表示装置においては、画像表示における発色性の均一性が必要である。使用する反射防止フィルム(低反射積層体)によっては、発色性の均一性が悪かったり、特に黒色や高濃度画像の再現時に表示色と異なる色ムラが見えるケースがあり、改善が望まれていた。
【0010】
これらの色ムラの原因は、光学干渉層の膜厚および屈折率の不均一性によるところが大きいが、乾燥製膜方法においては大面積での均一性が、塗布式製膜方法においては乾燥ムラなどによる小面積での均一性が、問題となることが多い。
【0011】
ところが、大気圧プラズマ放電処理方法では、処理用のガスとしてヘリウムガスやアルゴンガス等の希ガスを多量に使用しているが、これらのガスは高価で、製品のコストを押し上げる要因となっている。そこで、これらの希ガスを用いない大気圧プラズマ放電処理方法が求められていた。
【0012】
窒素ガスを大気圧プラズマ放電処理方法に使用する例として、金属化合物を含むガス雰囲気にヘリウムより分子量の大きい希釈ガスとして窒素を用いた技術が公開されている(例えば、特許文献5参照。)。この技術は、上記の窒素を含む雰囲気中で、対向電極間に放電電流密度が0.2〜300mA/cm2となるようなパルス化された電界を印加するという方法であるが、金属化合物がテトラエトキシシランの場合には窒素ガスを希釈ガスとして使用出来るが、チタンテトライソプロポキシド(以降、TTIPと略すことがある)の場合には、希釈ガスが窒素ガスでは、TTIPの分解反応が激しくなり、電極間でTiO2粒子が生成し、形成した薄膜表面に白化部分が出来易く、窒素ガスの代わりにアルゴンガスを使う必要がある。このように薄膜の種類により窒素以外の希釈ガスに変えなければならないという課題がある。
【0013】
また、大気圧プラズマ放電処理を用いる方法として、処理用ガスを含む雰囲気中で、対向電極間に放電開始時に高圧直流をパルス化した電界によりグロー放電を発生した後、高周波交流パルス波を印加してプラズマを維持させる方法で、立ち上がり時間が早い直流電圧を用い、繰り返し時間の短い高周波電圧を印加することにより、空間に存在する分子に一斉にエネルギーを与えることになり、空間中の電離状態にある分子の絶対数が多く、プラズマ密度が高くなり、薄膜の形成がスムースに行われるとしている。また、ヘリウムより分子量の大きい分子を雰囲気ガスとすることにより電子密度の高い空間を実現出来るとしている(例えば、特許文献6参照。)。
【0014】
通常使用されているセルロースエステルフィルムとしてセルローストリアセテートフィルム(以下、TACフィルムという場合がある)を大気圧プラズマ放電処理を連続的に行い、金属元素含有アルコキシド0.01〜5体積%、アルゴンガス50〜99.99体積%からなるガス雰囲気下で、対向電極間に、電界強度が1〜90kV/cmとなるようにパルス電圧を印加して薄膜形成するとともに、薄膜形成中のTACフィルムの温度を100℃以下に制御することで皺の発生のないフィルムを得ることが出来ることが示されている(例えば、特許文献7参照。)。
【0015】
セルロースエステルフィルムの膜厚が薄くなればなるほど、皺や巻き損じが起こり易く、対策が求められていた。
【0016】
【特許文献1】
特開平11−133205号公報
【0017】
【特許文献2】
特開2000−185362号公報
【0018】
【特許文献3】
特開平11−61406号公報
【0019】
【特許文献4】
特開2000−147209号公報
【0020】
【特許文献5】
特開2000−26632号公報
【0021】
【特許文献6】
特開2002−110397号公報
【0022】
【特許文献7】
特開2002−110397号公報
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、上記の特許文献6の方法によって、窒素ガスを希釈ガスとして用いた場合薄膜形成があまりうまく行かず、例えば、上記特許文献5のように、TTIPではアルゴンでなければならないことがわかった。
【0024】
本発明は上記のような課題に鑑みなされたものであって、本発明の第1の目的は、色ムラのない、特に高濃度画像再現時の色ムラが少なく、視認性、カラー表示が良好な光学フィルムを提供することである。また、第2の目的は、窒素ガスをほとんどを占める雰囲気ガスを使用し、低コストの光学フィルムを提供することにあり、更に第3の目的は、薄手のフィルムでも皺が寄ったり、巻き姿が良好で欠陥のほとんどない光学フィルムを提供することにある。第4の目的は、上記目的の光学フィルムを有する偏光板、及びその偏光板を有する表示装置を提供する。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は、積層し乾燥後の膜厚が1〜15μmの表層に微粒子を0.01〜1質量%含有し、可塑剤と紫外線吸収剤を含有する基層を少なくとも有する多層構成のセルロースエステルフィルムを、薄膜形成ガスを含有するほとんどのガスが窒素ガスの雰囲気中で、第1の電極と第2の電極の間に、第1の周波数ω1の電圧成分と、該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を有する高周波電圧を印加して、積層セルロースエステルフィルムの面に薄膜を形成させて光学フィルムを製造方法であって、窒素ガスを使用することによる低コストで、薄手でも品質の良好な光学フィルム、その光学フィルムを有する偏光板、更にこの偏光板を有する表示装置に関する。
【0026】
本発明は下記の構成よりなる。
(1) 0.01〜1質量%の微粒子を含有し、且つ膜厚1〜15μmの少なくとも1層の表層と、可塑剤及び紫外線吸収剤を主たる添加剤として含有する基層とを有する多層構成のセルロースエステルフィルム(以下、基材ともいう)の上に、直接または他の層を介して薄膜を形成するプラズマ放電処理により薄膜を形成する光学フィルムの製造方法において、該プラズマ放電処理が、大気圧もしくはその近傍の圧力下、2個の電極で構成される対向電極間に大部分を窒素ガスとしたガスを供給し、該対向電極間に高周波電圧を印加することにより、該ガスを励起し、該励起されたガスに、該基材面を直接、または該基材上に設層した他の層の面を晒すことにより薄膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0027】
(2) 前記2個の電極で構成される対向電極が第1電極と第2電極であり、該対向電極間に大部分を窒素ガスとしたガスを供給し、該対向電極間に前記高周波電圧を、第1の周波数ω1の電圧成分とし、また該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分として印加することを特徴とする(1)に記載の光学フィルムの製造方法。
【0028】
(3) 前記第1の周波数ω1の電圧波形および前記第2の周波数ω2の電圧波形がサイン波であることを特徴とする(2)に記載の光学フィルムの製造方法。
【0029】
(4) 前記第1の周波数ω1が、200kHz以下であることを特徴とする(2)または(3)に記載の光学フィルムの製造方法。
【0030】
(5) 前記第2の周波数ω2が、800kHz以上であることを特徴とする(2)乃至(4)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0031】
(6) 前記高周波電圧が、第1の高周波電圧V1および第2の高周波電圧V2を重畳したものであることを特徴とする(2)乃至(5)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0032】
(7) 前記第1の高周波電圧V1、前記第2の高周波電圧V2および放電開始電圧IVとの関係が、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たすことを特徴とする(6)に記載の光学フィルムの製造方法。
【0033】
(8) 前記第1の高周波電圧を前記第1電極に印加し、前記第2の高周波電圧を前記第2電極に印加することを特徴とする(2)乃至(7)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0034】
(9) 前記第1の高周波電圧の電圧波形および前記第2の高周波電圧の電圧波形がサイン波であることを特徴とする(2)乃至(8)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0035】
(10) 前記対向電極間に供給されるガス量の60〜99.9体積%が窒素ガスであることを特徴とする(1)乃至(9)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0036】
(11) 前記薄膜が金属化合物層であることを特徴とする(1)乃至(10)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0037】
(12) 前記ガスが有機金属化合物、金属水素化合物、ハロゲン化金属化合物より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)乃至(11)の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0038】
(13) 前記有機金属化合物が下記一般式(I)で示されるものであることを特徴とする(12)に記載の光学フィルムの製造方法。
【0039】
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。
【0040】
(14) (1)乃至(13)の何れか1項に記載の製造方法により製造したことを特徴とする光学フィルム。
【0041】
(15) (14)に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
(16) (15)に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
【0042】
本発明を詳述する。
先ず、本発明の光学フィルムに用いる多層構成(積層)のセルロースエステルフィルムについて述べる。
【0043】
本発明において、後述のごとく、ドープ調製工程がセルロースエステル溶液調製工程とインライン添加液調製工程に分かれており、それらをインラインで合流し混合してドープを調製することが好ましい。そこで、本発明において、後述の流延ダイに導入する状態のものをドープといい、合流する前のものを基材となるセルロースエステルを含有する液をセルロースエステル溶液、またマット剤や添加剤等を含有するものをインライン添加液ということとする。
【0044】
[多層構成のセルロースエステルフィルムの製造]
本発明の光学フィルムに有用な多層構成のセルロースエステルフィルムの層構成は、基層と少なくとも1層の表層を有する多層構成のフィルムであり、多層構成が3層以上とすることも出来るが、基層の両面に表層を1層ずつ有する3層構成がより好ましい。
【0045】
本発明の光学フィルムに有用な多層構成のセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面、より好ましくは両面の表層には後述の微粒子を含有し、また基層には少なくとも後述の可塑剤及び紫外線吸収剤を含有していることが特徴である。以下、多層構成のセルロースエステルフィルムの製造方法及びそのセルロースエステルフィルムに使用する素材について説明する。
【0046】
図1は3層構成のフィルムの断面を模式的に示したものであり、図中1と3は表層、また2は基層を示している。
【0047】
〔共流延と逐次流延〕
本発明における多層構成のセルロースエステルフィルムは、溶液流延製膜過程において、共流延または逐次流延によりドープを多層に積層して得られるものである。
【0048】
図2は共流延ダイ及び流延して多層構成ウェブ(流延直後はウェブをドープ膜ともいうことがある)を形成したところを表した図である。共流延は図2に示しすように、共流延ダイ10の口金部分11に複数(図2では三つ)の表層用スリット13と15、基層用スリット14を有しており、金属支持体16の上に同時にそれぞれのスリットから表層用ドープ17、基層用ドープ18、及び表層用ドープ19を流延することにより、表層21/基層22/表層23の多層構成のウェブ20を形成する。
【0049】
図3は逐次流延ダイ及び流延された多層構成のウェブを表した図である。逐次流延は、図3に示すように、金属支持体16の上方に複数(図3では三つ)の表層用流延ダイ30、基層用ダイ31及び表層用流延ダイ32を異なった場所に順に設置し、最初に表層用ダイ30から片方の表層となる表層用ドープ33が流延されて表層ドープ膜36を金属支持体16上に形成し、次に基層用ドープ34が基層用ダイ31から表層ドープ膜36の上に基層ドープ膜37を形成し、更に次の表層用ダイ32から表層用ドープ35を流延して表層ドープ膜38を形成することにより、表層/基層/表層の多層構成ウェブ39を形成する。
【0050】
図4は別のタイプの共流延ダイの断面を示した図である。本体中で3層が合流する共流延ダイ50は、基層用のスリット52、表層用のスリット51と53中にそれぞれ、基層用ドープ56、表層用ドープ55と57が導入されており、それが合流スリット58で合流し、層流をなしてスリット54を通過し、金属支持体16の上に3層揃って流延する様式のものである。
【0051】
図2、3及び4で示したような多層構成ウェブの表層が基層より幅広く、基層ウェブを表層ウェブが包み込むように流延するのが好ましい。
【0052】
〔溶液流延製膜法〕
本発明のセルロースエステルフィルムは、溶液流延製膜法により製膜される。ここで、本発明に係わる溶液流延製膜方法について図5を用いて説明する。
【0053】
図5は本発明に係わる溶液流延製膜装置のドープ調製工程を模式的に示した図である。
【0054】
図6は、本発明に係わる溶液流延製膜装置の流延工程から乾燥工程までを模式的に示した図である。
【0055】
以下の工程は3層共流延を例として、代表的な工程を説明する。
▲1▼セルロースエステル溶液調製工程:
図5の紙面上側のドープ調製工程は基層用のものであり、紙面下側のドープ調製工程は表層用のものである。
【0056】
後述のセルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜101中でセルロースエステルや可塑剤等の添加剤を攪拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液100を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う高温溶解方法、冷却して溶解する冷却溶解方法、かなりの高圧で行う高圧溶解方法等種々の溶解方法があるが、本発明においては、高温溶解方法が好ましく用いられる。溶解後セルロースエステル溶液100を送液ポンプ102で濾過器103(フィルタープレス型)で濾過し、ストックタンク104で静置して脱泡し、流延のために送液ポンプ105(加圧型定量ギヤポンプ等が多く用いられる)で溶液を移送し、濾過器106を経て紫外線吸収剤を含有するインライン添加液110と合流する合流管120で混合するために導管108で移送する。基層に使用するドープが、可塑剤及び紫外線吸収剤を含有しているセルロースエステル溶液100の場合には、濾過器106を経た後は流延ダイに直送してもよい。
【0057】
紫外線吸収剤等の添加剤(マット剤以外)を含有するインライン添加液110を、用いる場合には、111〜117で示されるラインで調製し送液する。溶解釜111で添加剤とセルロースエステルを有機溶媒に溶解したインライン添加液をポンプ112で送り、フィルター113で濾過し、必要に応じて切り替え弁119を通して溶解釜111に戻して循環させてもよいが、そのままストックタンク114に貯蔵してもよい。ポンプ115、濾過器116を経て導管117を通して送液する。
【0058】
ここで、濾過について説明する。このセルロースエステル溶液をフィルタープレス用の濾紙などの適当な濾材を用いて濾過する。本発明における濾過材としては、不溶物などを除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題点があり、絶対濾過精度8μm以下の濾材が好ましく、1〜8μmの範囲の濾材がより好ましく、3〜6μmの範囲の濾材が更に好ましい。濾紙としては、例えば市販品の安積濾紙(株)のNo.244や277などを挙げることが出来、好ましく用いられる。更なる濾過の濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(R)等のプラスチック製の濾材やステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過は通常の方法で行うことが出来るが、加圧下で、使用有機溶媒の常圧での沸点以上で、且つ有機溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱または保温しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は使用有機溶媒に依存するが、45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましく、0.3〜1.6MPaであることが好ましく、0.3〜1.2MPaであることがより好ましく、0.3〜1.0MPaであることが更に好ましい。なお、予め溶解釜101内で紫外線吸収剤をセルロースエステル溶液に添加してもよい。
【0059】
▲2▼微粒子を含有するインライン添加液の調製工程
ここでは、表層用のドープに使用する微粒子分散液を含有するインライン添加液について説明する。セルロースエステル溶液に使用する低級アルコール等の有機溶媒、後述の樹脂及び後述のマット剤微粒子を含有する微粒子剤分散液の調製方法は、十分に液中に均一に分散することが出来る方法であれば特に制限ないが、次の方法が好ましい。
【0060】
図5(図5の紙面最も下側)において、微粒子を含有するインライン添加液110Aは、溶解・分散釜111A中で有機溶媒にセルロースエステルを攪拌溶解してセルロースエステル溶液とし、このセルロースエステル溶液に、別にマントンゴーリーン、サンドミル等の分散機(図示していない)で分散した微粒子分散液を加える。ここで、十分攪拌し分散を安定化させ微粒子を含有するインライン添加液110Aとする。このインライン添加液110Aを送液ポンプ112Aで濾過器113Aを通して、必要に応じて、切り替え弁119Aを経て、溶解・分散釜110Aに送って凝集物を除くために何回か同様な操作を繰り返し循環させてもよい。その後、切り替え弁119Aを切り替え、インライン添加液110Aをストックタンク114Aに一時移送して静置脱泡後、送液ポンプ115A(例えば加圧型定量ギヤポンプ)で移送し、濾過器116Aで濾過して導管117Aを経て移送する。また、ストックタンク114Aで静置することなく、送液ポンプ115A、濾過器116A、導管117Aを経て送液してもよい。
【0061】
なお、図5の表層用のセルロースエステル溶液100Aを調製する工程は、101A〜108Aのラインで、上述のセルロースエステル溶液100の101〜108ラインと同様である。101A〜108Aは101〜108に対応している。セルロースエステル溶液100Aと微粒子インライン添加液110Aを合流点120Aで合流させる。
【0062】
なお、101〜108のラインと101A〜108Aのラインを共通として、セルロースエステル100を基層用と表層用にそれぞれ送液して使用することも出来る。
【0063】
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類を挙げることが出来る。
【0064】
(調製方法A)
有機溶媒と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子の分散液とする。
【0065】
(調製方法B)
有機溶媒と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行い、微粒子の分散液とする。別に有機溶媒に少量の樹脂(微粒子に対して分散性がよく、液に適度に粘性を与えるもので、且つセルロースエステルと相溶性のある樹脂、またはセルロースエステル)を加え、攪拌溶解した樹脂溶液を用意する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌し、充分分散し、微粒子の分散液とする。
【0066】
(調製方法C)
有機溶媒に少量の樹脂(微粒子に対して分散性がよく、且つセルロースエステルと相溶性のある樹脂、またはセルロースエステル)を加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で充分に分散をし、微粒子の分散液とする。
【0067】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点に優れている。調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0068】
調製方法A〜Cで分散調製した微粒子の分散液を含有するインライン添加液をセルロースエステル溶液に加えて攪拌しドープとするが、インライン添加液110Aとセルロースエステル溶液100Aをインラインミキサー121Aで合流させて十分混合して微粒子を含有するドープとするのが好ましい。この微粒子を含有するドープに紫外線吸収剤を含有させてもよく、この場合セルロースエステル溶液に添加するのが好ましい。
【0069】
上記調製方法において、二酸化珪素微粒子を有機溶媒と混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%が更に好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、得られるフィルムのヘイズが低く、凝集物がなく好ましい。
【0070】
使用する有機溶媒は、ドープに使用する有機溶媒を用いることが好ましいが、特に限定はない。ドープに使用する低級アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等を挙げることが出来るが、特にエタノールが好ましい。
【0071】
微粒子の分散性を助け、分散性を良好にし、且つセルロースエステルと相溶性の良い樹脂としては、ドープに使用するセルロースエステルでもよいが、特願2001−198450に記載の樹脂が、分散液濾過の際、目詰まりしにくいので好ましく用いることが出来る。例えば、綜研化学(株)で市販しているアクトフロー・シリーズの樹脂等を好ましく用いることが出来る。
【0072】
(分散装置)
上記微粒子を分散する分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどがあげられる。メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作り出す装置である。
【0073】
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が10MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは20MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等を挙げることが出来る。
【0074】
インライン添加液110Aは、ストックタンク114Aでの停滞をなくし、出来たら送液ポンプ115Aも使用しないで、最終濾過器116Aで濾過後はすぐに導管117Aで移送するのが、停滞や送液ポンプによる新たな凝集物の発生を抑制することが出来るので望ましい。
【0075】
微粒子を含有するインライン添加液の濾過器は、インラインミキサーの直前に配置するのが好ましく、例えば濾材交換等に伴い経路から発生する大きな凝集物を送液中の微粒子分散液から、一度の濾過で、比較的大きな異物を確実に除去するための濾材で、前記の絶対濾過精度を有する長期に亘り使用が可能な耐有機溶媒性を有する金属製の濾過器が好ましい。濾材としては、耐久性の観点から金属、特にステンレス鋼が好ましい。目詰まりの観点から60〜80%の空孔率を有していることが好ましい。従って、最も好ましくは、絶対濾過精度30〜60μmであって、かつ空孔率60〜80%の金属製濾材で濾過することであり、これにより、長期に亘り、確実に粗大な異物を除くことが出来好ましい。絶対濾過精度30〜60μmでかつ空孔率60〜80%の金属製濾材としては、例えば、日本精線(株)製ファインポアNFシリーズのNF−10、同NF−12、同NF−13などを挙げることが出来、何れも好ましく用いられる。
【0076】
▲3▼ドープ調製工程:
ここでいうドープ調製工程150及び150Aは、セルロースエステル溶液とインライン添加液をインラインミキサーのような混合機121及び121Aで十分混合しドープとする工程である。
【0077】
150は基層用また150Aは微粒子を含有する表層用のドープの調製工程である。
【0078】
セルロースエステル溶液100または100A及びインライン添加液110または110Aを合流管120または120Aでそれぞれの両液を合流させ、インラインミキサーのような混合機121または121Aで十分に混合して基層用または表層用のドープとする。また。本発明で好ましく使用出来るインラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)を挙げることが出来、好ましく用いることが出来る。
【0079】
後述の共流延ダイには、それぞれの目的に応じて成分を変更し調製したドープを各スリットに供給することになる。基層に用いられるドープの粘度は50〜10,000Pa・s(35℃にて)であることが好ましく、特に50〜1,000Pa・sであることが好ましい。表層に用いられるドープの粘度は0.1〜5,000Pa・sであることが好ましく、5〜1,000Pa・sであることがより好ましく、更に好ましくは10〜500Pa・s、特に好ましくは10〜50Pa・sである。本発明において、表層用ドープの粘度は基層用のそれより低いことが好ましい。
【0080】
以下、本発明に係わるセルロースエステルフィルムの作製の一例を図6を用いて説明する。
【0081】
▲4▼共流延工程:
基層用のドープは共流延ダイ200の202のドープ供給口に導入し、微粒子を含有する表層用ドープは201及び/または203の表層用供給口に導入して共流延するものである。
【0082】
図6は、無限に移送する無端の金属支持体204、例えばステンレススティールベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体204上の流延位置に、共流延ダイ200から例えば3層のドープを共流延する工程である。金属支持体204の表面は鏡面となっていることが望ましい。共流延ダイ200(例えば加圧型共流延ダイ)は口金部分の三つのスリット形状を調製出来、膜厚を均一にし易いため好ましい。共流延ダイとしては前述の図2または図4にしめしたようなものが好ましく使用されるが、これらに限定されない。共流延ダイ200には、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
【0083】
逐次流延の場合には、金属支持体204上に単層用のダイを2基以上ずらせて設け、2種類以上のドープ量を供給して多層ドープ膜を形成する。
【0084】
▲5▼溶媒蒸発工程:
例えば3層構成のウェブ(金属支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)206を金属支持体204上で加熱あるいは冷却して金属支持体204からウェブ206が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ206に風を当てる方法及び/または金属支持体204の裏面から液体または気体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、金属支持体上のウェブ温度がドープで使用されている有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。流延用の金属支持体の表面温度は10〜55℃、溶液の温度は25〜60℃、更に溶液の温度を支持体の温度と同じまたはそれ以上の温度にすることが好ましく、5℃以上の温度に設定することが更に好ましい。溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。支持体の温度の更に好ましい範囲は、使用する有機溶媒に依存するが、20〜55℃、溶液温度の更に好ましい範囲は、35〜45℃である。
【0085】
▲6▼剥離工程:
金属支持体204上で溶媒が蒸発したウェブ206を、剥離位置205で剥離する工程である。剥離されたウェブ206は次の▲7▼の乾燥工程(後述)に送られる。剥離する時点でのウェブ206の残留溶媒量(後述の式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体204上で乾燥させ過ぎて剥離すると、剥離しにくくなったり、途中でウェブ206の一部が剥がれたりする。本発明において、薄手のウェブを金属支持体から剥離する際、平面性の劣化やつれがないように行うには、剥離張力として剥離出来る最低張力から170N/m以内の力で剥離することが好ましく、140N/m以内の力がより好ましい。
【0086】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体204上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。金属支持体204上でのウェブ206の乾燥条件の設定、金属支持体204の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが出来るが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブ206が柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。従って、本発明においては、該金属支持体204上の剥離位置における温度を好ましくは0〜40℃、更に好ましくは10〜30℃である。
【0087】
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を維持するために、金属支持体から剥離する際の残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、より好ましくは80〜150質量%であり、更に好ましくは100〜130質量%である。剥離時のウェブの残留有機溶媒中に含まれる良溶媒の比率は30〜90%が好ましく、更に好ましくは、50〜85%であり、特に好ましくは、60〜80%である。
【0088】
本発明においては、残留溶媒量は下記の式で表わすことが出来る。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量で、この乾燥によって揮発した成分の比率についてはガスクロマトグラフィーによって求めることが出来る。Nは該Mを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。測定はヘッドスペースサンプラーを接続したガスクロマトグラフィーで測定する。本発明では、ヒューレット・パッカード社製ガスクロマトグラフィー5890型SERISIIとヘッドスペースサンプラーHP7694型を使用し、以下の測定条件で行った。
【0089】
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度:150℃
昇温:40℃、5分保持→100℃(8℃/分)
カラム:J&W社製DB−WAX(内径0.32mm、長さ30m)。
【0090】
本発明において、ドープの流延から剥離までのウェブの金属支持体上での乾燥時間は、剥離可能な時間で、且つ120秒以内であることが好ましく、更に30〜120秒が好ましく、更に30〜90秒であることが好ましい。この範囲で剥離したウェブの表面性は良好で、乾燥後のセルロースエステルフィルムに後述の金属化合物薄膜を施した際、平面性に優れ、且つ高温高湿条件下に繰り返し曝した際のクラックもなく優れた光学フィルムを得ることが出来る。
【0091】
▲7▼乾燥工程:
剥離後、一般には、ウェブ206を上下に配置したロール209に交互に通して搬送するロール乾燥装置208及び/またはクリップ等でウェブ206の両端を把持して搬送するテンター装置207を用いてウェブ206を乾燥する。図6では、テンター装置207の後にロール乾燥装置208が配置されている。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃の範囲で行われ、好ましくは110〜160℃で乾燥させることである。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。210は出来上がったセルロースエステルフィルムの巻き取りである。セルロースエステルフィルムの乾燥工程において、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にして巻き取ることがより好ましい。
【0092】
〔多層構成のセルロースエステルフィルムに使用する素材〕
ここで、本発明に係わる多層構成のセルロースエステルフィルムに使用する素材について説明する。
【0093】
〈セルロースエステル〉
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来るが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
【0094】
本発明に係わるセルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。セルロースエステルはアシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
【0095】
本発明のセルロースエステルフィルムに用いることが出来るセルロースエステルには特に限定はないが、総アシル基の置換度が2.40から2.98で、アシル基のうちアセチル基の置換度が1.4以上が好ましく用いられる。
【0096】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
【0097】
本発明に係わるセルロースエステルは、セルローストリアセテートやセルロースジアセテート等のセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートまたはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基あるいはブチレート基が結合したセルロースエステルであることが好ましい。なお、ブチレートは、n−の他にiso−も含む。プロピオネート基の置換度が大きいセルロースアセテートプロピオネートは耐水性が優れる。
【0098】
上記セルロースエステルにおいて、セルローストリアセテートについては、これを溶解する有機溶媒として例えばメチレンクロライドのようなハロゲン系の有機溶媒が使用され、冷却溶解方法のような特殊な溶解方法によればアセトンや酢酸メチルのようなハロゲンがなく沸点の適当な有機溶媒を使用し得る。また、セルロースジアセテート(厳密にはセルローストリアセテートとセルロースジアセテートとの間のアシル基置換度のもの)では使用する有機溶媒もハロゲン系以外のものでも溶解し易くなる。セルロースアセテートプロピオネートのような混合セルロースエステルは、アセトンや酢酸メチルというような有機溶媒に溶解し易く、扱いが容易となる。
【0099】
本発明のセルロースエステルの数平均分子量(測定法は下記)は、70,000〜250,000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く、且つ適度のドープ粘度となり好ましい。更に80,000〜150,000が好ましい。
【0100】
《セルロースエステルの数平均分子量の測定》
高速液体クロマトグラフィーにより下記条件で測定する。
【0101】
溶媒 :アセトン
カラム :MPW×1(東ソー(株)製)
試料濃度 :0.2(質量/体積)%
流量 :1.0ml/分
試料注入量:300μL
標準試料 :ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量188,200)
温度 :23℃。
【0102】
本発明において、表層と基層とで使用するセルロースエステルが同じものであっても、異なったものでもよい。異なる場合、例えば、アシル基置換度が異なるもの、アシル基が異なるもの、数平均分子量が異なるもの等を挙げることが出来る。例えば、特開平8−207210号公報に記載されているような表層のセルロースアセテートのアシル基置換度が2.8以上、基層のそれが2.7以下のものを用いた多層構成のセルロースエステルフィルムも本発明においては、好ましく用いることが出来る。
【0103】
〈有機溶媒〉
セルロースエステルを溶解しセルロースエステル溶液またはドープ形成に有用な有機溶媒として、塩素系有機溶媒のメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることが出来、セルロースエステル、特にセルローストリアセテートの溶解に適している。非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来る。これらの有機溶媒をセルローストリアセテートに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることが出来るので好ましい。セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることも出来るが、メチレンクロライドを使用せずに、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することが出来る。特に酢酸メチルが好ましい。本発明において、上記セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0104】
本発明に係るドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを金属支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとウェブがゲル化し、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので、貧溶媒という。
【0105】
〈添加剤〉
本発明に係わる添加剤としては、特に限定はないが、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤またはレターデーション調整剤等を挙げることが出来る。
【0106】
《可塑剤》
本発明に係わる多層構成のセルロースエステルフィルムにおいて有用な可塑剤としては、特に限定はないが、例えば、リン酸エステル系、フタル酸エステル系、他の芳香族ポリカルボン酸エステル、クエン酸エステル系、グリコール酸エステル系、グリセリンエステル系、脂肪族カルボン酸系エステル等の可塑剤を挙げることが出来る。本発明で有用な可塑剤の例を下記に挙げるが、これらに限定されない。可塑剤はセルロースエステルフィルムに対して1〜20質量%添加することが好ましい。
【0107】
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートあるいは、特開2001−71418公報段落番号〔0024〕の(Ib)に記載されているようなリン酸エステルの連結した化合物等を挙げることが出来る。
【0108】
フタル酸系エステル系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等を挙げることが出来る。
【0109】
クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチルあるいは、特開平11−92574号、同11−124445号、特開2001−48840公報に記載されているものを挙げることが出来る。
【0110】
グリコール酸エステル系系可塑剤としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。
【0111】
脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えば、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジブチル等を挙げることが出来る。
【0112】
グリセリンエステルまたは多価アルコールエステルとしては、例えば、トリアセチン、トリブチリン等を挙げることが出来、更にトリメチロールプロパントリエステル、トリメチロールエタントリエステル、プロピレントリオールトリエステル、1,2,3,4,5−ペンタンペンタオールペンタエステル等については下記化1及び2に示す。
【0113】
【化1】
【0114】
【化2】
【0115】
他の芳香族ポリカルボン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等を挙げることが出来る。
【0116】
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係るセルロースエステルフィルムには、画像表示装置として屋外に置かれた場合等の劣化防止の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることが出来る。例えば380nmにおける透過率が20%未満であることが好ましく、更に好ましくは10%未満であり、特に好ましくは5%未満である。
【0117】
本発明発明に有用な紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されない。
【0118】
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は下記一般式〔1〕で示される化合物の一群である。
【0119】
【化3】
【0120】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5または6員の異項環を表し、R4とR5は閉環して5または6員の炭素環を形成してもよい。また、R1、R2及びR3の何れかが2価の連結基でもう一つの2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール基と結合してもよい。
【0121】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチル−フェノール、2−オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、上記と同様な構造を有する市販品として、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234及びチヌビン326(何れもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等があり、何れも好ましく使用出来る。
【0122】
更に、ベンゾトリアゾール系の窒素原子含有異項環を有する紫外線吸収剤で、且つ、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を分子内に少なくとも3個有しているものを好ましく用いることが出来る。本発明において、可塑剤の項と同様に、ナフタレン環及びベンゾトリアゾールは縮合環であるが、ナフタレンは2個またベンゾトリアゾールは1個と数える。このように窒素原子含有異項環、ベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環が、それぞれ縮合環を形成してもよい。
【0123】
分子内にベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環から選ばれる環を少なくとも3個有する添加剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[6(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール等を挙げることが出来る。また、RUVA−100/110(大塚化学(株)製)、RUVA−206(大塚化学(株)製)、アデカスタブLA−31(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA−51(旭電化工業(株)製)等を挙げることが出来る。特開平6−148430号記載公報の一般式(1)〜(5)で示される紫外線吸収性基を複数有する高分子紫外線吸収剤でもよく、具体的には特開平6−148430号公報記載で示されている紫外線吸収性基を複数有している高分子紫外線吸収剤が1つの分子内にベンゼン環を3つ以上有している紫外線吸収剤として用いられる。
【0124】
高分子紫外線吸収剤として、RUVA−93(大塚化学社製)の反応型紫外線吸収剤を重合した化合物も好ましく用いることが出来る。あるいは、特願2001−122573記載の紫外線吸収剤も好ましく用いられ、特に一般式(1)〜(8)で示される紫外線吸収剤、例えばこの実施例で示されている化10、化11、化13、化15等の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。あるいは特開2000−273437公報記載の一般式(1)で示されている紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0125】
本発明に有用な紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表すことが出来る。
【0126】
【化4】
【0127】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D−基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0128】
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などを挙げることが出来る。また、AまたはYが2価の連結基でもう一つの2−ヒドロキシベンゾフェノン基と二つ以上のベンゾフェノン基を有する化合物となってもよい。更にベンゾフェノンでなく、ベンゾトリアゾール基を有する化合物となってもよい。
【0129】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0130】
上記紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、該紫外線吸収剤を有機溶媒に溶解した紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加しても、セルロースエステル溶液に該紫外線吸収剤を直接添加して溶解させてもよい。また、紫外線吸収剤溶液をインライン添加液に添加してもよい。紫外線吸収剤を溶解する有機溶媒は、溶解するものであれば制限なく使用出来るが、本発明においては紫外線吸収剤をドープに使用する有機溶媒、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソランなどのセルロースエステルに対する良溶媒、または良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒、または良溶媒と貧溶媒との混合有機溶媒に溶解するのが好ましい。紫外線吸収剤の含有量はセルロースエステルフィルムに対して0.01〜5質量%、特に0.5〜3質量%が好ましい。
【0131】
《その他の添加剤》
本発明の光学フィルムには多機能な添加剤を含有していてもよい。多機能な添加剤とは、可塑的機能、透湿性低減機能、紫外線吸収的機能、酸化防止的機能、レターデーション調製機能等の性質を有していているもので、
酸化防止機能を有する添加剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。この酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれ、高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合があり、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒に含まれるのハロゲンやリン酸系可塑剤からのリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0132】
また、他の機能として可塑的機能、透湿性低減機能、リターデーション的機能、紫外線吸収的機能を有している添加剤(あるものは上記機能を一つ以上有している)の一つとして、非リン酸系で、芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環等を分子内に3個以上を有する化合物が好ましく用いられる。これらの添加剤は流延後ウェブが乾燥中、内部から表面へと移動することが少なく表面に集まりにくく、また、セルロースエステルフィルムは透湿性を改善し、高温湿度における安定性を増すことが出来る。このような化合物は、ベンゼン環のみを3個以上でも、シクロヘキサン環を3個以上でも、シクロヘキセン環を3個以上でも、また、これらの環が縮合している縮合環であってもよいし、異項環との縮合環を含有していてもよい。本発明においては、縮合環内にあるベンゼン環、シクロヘキサン環またはシクロヘキセン環の一つずつの環数を、これらの環の数とする。これらの環には置換基を有していてもよい。例えばナフタレン環は2個と数える。本発明においては、これらの環を分子内に3〜20個あるものが好ましく、更に好ましくは3〜10のである。例えば、ジベンジルフタレート、ジベンジルイソフタレート、ジベンジルテレフタレート、ジフェニルフタレート、ジフェニルイソフタレート、ジフェニルテレフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルイソフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート、フェニルシクロヘキシルイソフタレート、フェニルシクロヘキシルテレフタレート、フェニルシクロヘキシルフタレート、ベンジルシクロヘキシルフタレート、ベンジルシクロヘキシルテレフタレート、ベンジルシクロヘキシルイソフタレート、ジベンジルシクロヘキサンジアセテート、1,3−シクロヘキサンジメチルジベンゾエート、1,3−ジベンジルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,2−ジベンジルテトラデヒドロフタレート、1,2−ジシクロヘキシルテトラヒドロフタレート、1,3−ジシクロヘキシルシクロヘキシルジカルボキシレート、グリセリントリベンゾエート、グリセリントリフェニルアセテート、アセチルクエン酸トリベンジルアセチル、クエン酸トリシクロヘキシル、アビエチン酸メチル、アビエチン酸エチル、アビエチン酸ブチル、デヒドロアビエチン酸メチル、デヒドロアビエチン酸ブチル、パラストリン酸メチル等、またオリゴマー的な低分子重合体として、KE−604(荒川化学製)、KE−85(荒川化学製)、アラルダイドEPN1139(旭チバ(株)製)、アラルダイドGY260(旭チバ(株)製)、ハイラック110H(日立化成(株)製)、ハイラック111(日立化成(株)製)等樹脂オリゴマー等を好ましく挙げることが出来、また、トリアジン化合物も好ましく用いることが出来る。
【0133】
また、本発明の光学フィルムに用いられる好ましい多機能の添加剤としては、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を好ましく用いることが出来る。
【0134】
1,3,5−トリアジン環を有する化合物は、中でも、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
【0135】
【化5】
【0136】
一般式(III)において、X1は、単結合、−NR4−、−O−または−S−であり;X2は単結合、−NR5−、−O−または−S−であり;X3は単結合、−NR6−、−O−または−S−であり;R1、R2及びR3はアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基であり;そして、R4、R5及びR6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基である。一般式(III)で表される化合物は、メラミン化合物であることが特に好ましい。
【0137】
メラミン化合物では、一般式(III)において、X1、X2及びX3が、それぞれ、−NR4−、−NR5−及び−NR6−であるか、あるいは、X1、X2及びX3が単結合であり、かつ、R1、R2及びR3が窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基である。−X1−R1、−X2−R2及び−X3−R3は、同一の置換基であることが好ましい。R1、R2及びR3は、アリール基であることが特に好ましい。R4、R5及びR6は、水素原子であることが特に好ましい。
【0138】
上記アルキル基は、環状アルキル基よりも鎖状アルキル基である方が好ましい。分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基の方が好ましい。
【0139】
アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8であることがさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0140】
置換基の具体例としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、エポキシエチルオキシ等の各基)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)等が挙げられる。上記アルケニル基は、環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基である方が好ましい。分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基の方が好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。
【0141】
置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、エポキシエチルオキシ等の各基)またはアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等の各基)が挙げられる。
【0142】
上記アリール基は、フェニル基またはナフチル基であることが好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。アリール基は置換基を有していてもよい。
【0143】
置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルホンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。上記アルキル基は、前述したアルキル基と同義である。
【0144】
アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキル置換スルファモイル基、スルホンアミド基、アルキル置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基とアシル基のアルキル部分も、前述したアルキル基と同義である。
【0145】
上記アルケニル基は、前述したアルケニル基と同義である。
アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシカルボニル基、アルケニル置換スルファモイル基、スルホンアミド基、アルケニル置換カルバモイル基、アミド基、アルケニルチオ基及びアシル基のアルケニル部分も、前述したアルケニル基と同義である。
【0146】
上記アリール基の具体例としては、例えば、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−メトキシフェニル、3,4−ジエトキシフェニル、4−オクチルオキシフェニルまたは4−ドデシルオキシフェニル等の各基が挙げられる。
【0147】
アリールオキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリール置換スルファモイル基、スルホンアミド基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アリールチオ基およびアシル基の部分の例は、上記アリール基と同義である。
【0148】
X1、X2またはX3が−NR−、−O−または−S−である場合の複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。
【0149】
芳香族性を有する複素環基中の複素環としては、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。
【0150】
複素環中のヘテロ原子は、N、SまたはO等の各原子であることが好ましく、N原子であることが特に好ましい。
【0151】
芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、例えば、2−ピリジルまたは4−ピリジル等の各基)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
【0152】
X1、X2またはX3が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。
【0153】
また、複素環基中のヘテロ原子は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O原子、S原子)を有していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の具体例は、上記アリール部分の置換基の具体例と同義である。
【0154】
以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の具体例を示す。
【0155】
【化6】
【0156】
【化7】
【0157】
1,3,5−トリアジン環を有する化合物の分子量は、300〜2000であることが好ましい。該化合物の沸点は、260℃以上であることが好ましい。沸点は、市販の測定装置(例えば、TG/DTA100、セイコー電子工業(株)製)を用いて測定出来る。
【0158】
以下に、1,3,5−トリアジン環を有する化合物の具体例を示す。
なお、以下に示す複数のRは、同一の基を表す。
【0159】
【化8】
【0160】
(1)ブチル、(2)2−メトキシ−2−エトキシエチル、(3)5−ウンデセニル、(4)フェニル、(5)4−エトキシカルボニルフェニル、(6)4−ブトキシフェニル、(7)p−ビフェニリル、(8)4−ピリジル、(9)2−ナフチル、(10)2−メチルフェニル、(11)3,4−ジメトキシフェニル(12)2−フリル、
【0161】
【化9】
【0162】
【化10】
【0163】
(14)フェニル、(15)3−エトキシカルボニルフェニル、(16)3−ブトキシフェニル、(17)m−ビフェニリル、(18)3−フェニルチオフェニル、(19)3−クロロフェニル、(20)3−ベンゾイルフェニル、(21)3−アセトキシフェニル、(22)3−ベンゾイルオキシフェニル、(23)3−フェノキシカルボニルフェニル、(24)3−メトキシフェニル、(25)3−アニリノフェニル、(26)3−イソブチリルアミノフェニル、(27)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(28)3−(3−エチルウレイド)フェニル、(29)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(30)3−メチルフェニル、(31)3−フェノキシフェニル、(32)3−ヒドロキシフェニル、(33)4−エトキシカルボニルフェニル、(34)4−ブトキシフェニル、(35)p−ビフェニリル、(36)4−フェニルチオフェニル、(37)4−クロロフェニル、(38)4−ベンゾイルフェニル、(39)4−アセトキシフェニル、(40)4−ベンゾイルオキシフェニル、(41)4−フェノキシカルボニルフェニル、(42)4−メトキシフェニル、(43)4−アニリノフェニル、(44)4−イソブチリルアミノフェニル、(45)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(46)4−(3−エチルウレイド)フェニル(47)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(48)4−メチルフェニル、(49)4−フェノキシフェニル、(50)4−ヒドロキシフェニル(51)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル、(52)3,4−ジブトキシフェニル、(53)3,4−ジフェニルフェニル、(54)3,4−ジフェニルチオフェニル、(55)3,4−ジクロロフェニル、(56)3,4−ジベンゾイルフェニル、(57)3,4−ジアセトキシフェニル、(58)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル、(59)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル(60)3,4−ジメトキシフェニル、(61)3,4−ジアニリノフェニル(62)3,4−ジメチルフェニル、(63)3,4−ジフェノキシフェニル(64)3,4−ジヒドロキシフェニル、(65)2−ナフチル、(66)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル、(67)3,4,5−トリブトキシフェニル、(68)3,4,5−トリフェニルフェニル、(69)3,4,5−トリフェニルチオフェニル、(70)3,4,5−トリクロロフェニル(71)3,4,5−トリベンゾイルフェニル、(72)3,4,5−トリアセトキシフェニル、(73)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル(74)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル、(75)3,4,5−トリメトキシフェニル、(76)3,4,5−トリアニリノフェニル(77)3,4,5−トリメチルフェニル、(78)3,4,5−トリフェノキシフェニル、(79)3,4,5−トリヒドロキシフェニル、
【0164】
【化11】
【0165】
(80)フェニル、(81)3−エトキシカルボニルフェニル、(82)3−ブトキシフェニル、(83)m−ビフェニリル、(84)3−フェニルチオフェニル、(85)3−クロロフェニル、(86)3−ベンゾイルフェニル、(87)3−アセトキシフェニル、(88)3−ベンゾイルオキシフェニル、(89)3−フェノキシカルボニルフェニル、(90)3−メトキシフェニル、(91)3−アニリノフェニル、(92)3−イソブチリルアミノフェニル、(93)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(94)3−(3−エチルウレイド)フェニル、(95)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(96)3−メチルフェニル、(97)3−フェノキシフェニル、(98)3−ヒドロキシフェニル、(99)4−エトキシカルボニルフェニル、(100)4−ブトキシフェニル、(101)p−ビフェニリル、(102)4−フェニルチオフェニル、(103)4−クロロフェニル、(104)4−ベンゾイルフェニル、(105)4−アセトキシフェニル、(106)4−ベンゾイルオキシフェニル、(107)4−フェノキシカルボニルフェニル、(108)4−メトキシフェニル、(109)4−アニリノフェニル、(110)4−イソブチリルアミノフェニル(111)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(112)4−(3−エチルウレイド)フェニル、(113)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(114)4−メチルフェニル、(115)4−フェノキシフェニル(116)4−ヒドロキシフェニル、(117)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル、(118)3,4−ジブトキシフェニル、(119)3,4−ジフェニルフェニル、(120)3,4−ジフェニルチオフェニル、(121)3,4−ジクロロフェニル、(122)3,4−ジベンゾイルフェニル、(123)3,4−ジアセトキシフェニル、(124)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル、(125)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル、(126)3,4−ジメトキシフェニル、(127)3,4−ジアニリノフェニル、(128)3,4−ジメチルフェニル、(129)3,4−ジフェノキシフェニル、(130)3,4−ジヒドロキシフェニル、(131)2−ナフチル、(132)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル、(133)3,4,5−トリブトキシフェニル、(134)3,4,5−トリフェニルフェニル、(135)3,4,5−トリフェニルチオフェニル、(136)3,4,5−トリクロロフェニル、(137)3,4,5−トリベンゾイルフェニル、(138)3,4,5−トリアセトキシフェニル、(139)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル、(140)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル、(141)3,4,5−トリメトキシフェニル、(142)3,4,5−トリアニリノフェニル、(143)3,4,5−トリメチルフェニル、(144)3,4,5−トリフェノキシフェニル、(145)3,4,5−トリヒドロキシフェニル、
【0166】
【化12】
【0167】
(146)フェニル、(147)4−エトキシカルボニルフェニル、(148)4−ブトキシフェニル、(149)p−ビフェニリル、(150)4−フェニルチオフェニル、(151)4−クロロフェニル、(152)4−ベンゾイルフェニル、(153)4−アセトキシフェニル、(154)4−ベンゾイルオキシフェニル、(155)4−フェノキシカルボニルフェニル、(156)4−メトキシフェニル、(157)4−アニリノフェニル、(158)4−イソブチリルアミノフェニル、(159)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(160)4−(3−エチルウレイド)フェニル、(161)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(162)4−メチルフェニル、(163)4−フェノキシフェニル、(164)4−ヒドロキシフェニル、
【0168】
【化13】
【0169】
(165)フェニル、(166)4−エトキシカルボニルフェニル、(167)4−ブトキシフェニル、(168)p−ビフェニリル、(169)4−フェニルチオフェニル、(170)4−クロロフェニル、(171)4−ベンゾイルフェニル、(172)4−アセトキシフェニル、(173)4−ベンゾイルオキシフェニル、(174)4−フェノキシカルボニルフェニル、(175)4−メトキシフェニル、(176)4−アニリノフェニル、(177)4−イソブチリルアミノフェニル、(178)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(179)4−(3−エチルウレイド)フェニル、(180)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(181)4−メチルフェニル、(182)4−フェノキシフェニル、(183)4−ヒドロキシフェニル、
【0170】
【化14】
【0171】
(184)フェニル、(185)4−エトキシカルボニルフェニル、(186)4−ブトキシフェニル、(187)p−ビフェニリル、(188)4−フェニルチオフェニル、(189)4−クロロフェニル、(190)4−ベンゾイルフェニル、(191)4−アセトキシフェニル、(192)4−ベンゾイルオキシフェニル、(193)4−フェノキシカルボニルフェニル、(194)4−メトキシフェニル、(195)4−アニリノフェニル、(196)4−イソブチリルアミノフェニル、(197)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(198)4−(3−エチルウレイド)フェニル、(199)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(200)4−メチルフェニル、(201)4−フェノキシフェニル、(202)4−ヒドロキシフェニル、
【0172】
【化15】
【0173】
(203)フェニル、(204)4−エトキシカルボニルフェニル、(205)4−ブトキシフェニル、(206)p−ビフェニリル、(207)4−フェニルチオフェニル、(208)4−クロロフェニル、(209)4−ベンゾイルフェニル、(210)4−アセトキシフェニル、(211)4−ベンゾイルオキシフェニル、(212)4−フェノキシカルボニルフェニル、(213)4−メトキシフェニル、(214)4−アニリノフェニル、(215)4−イソブチリルアミノフェニル、(216)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(217)4−(3−エチルウレイド)フェニル、(218)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(219)4−メチルフェニル、(220)4−フェノキシフェニル、(221)4−ヒドロキシフェニル、
【0174】
【化16】
【0175】
(222)フェニル、(223)4−ブチルフェニル、(224)4−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(225)4−(5−ノネニル)フェニル、(226)p−ビフェニリル、(227)4−エトキシカルボニルフェニル、(228)4−ブトキシフェニル、(229)4−メチルフェニル、(230)4−クロロフェニル、(231)4−フェニルチオフェニル、(232)4−ベンゾイルフェニル、(233)4−アセトキシフェニル、(234)4−ベンゾイルオキシフェニル、(235)4−フェノキシカルボニルフェニル、(236)4−メトキシフェニル、(237)4−アニリノフェニル、(238)4−イソブチリルアミノフェニル、(239)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(240)4−(3−エチルウレイド)フェニル、(241)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(242)4−フェノキシフェニル、(243)4−ヒドロキシフェニル、(244)3−ブチルフェニル、(245)3−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(246)3−(5−ノネニル)フェニル、(247)m−ビフェニリル、(248)3−エトキシカルボニルフェニル、(249)3−ブトキシフェニル、(250)3−メチルフェニル、(251)3−クロロフェニル、(252)3−フェニルチオフェニル、(253)3−ベンゾイルフェニル、(254)3−アセトキシフェニル、(255)3−ベンゾイルオキシフェニル、(256)3−フェノキシカルボニルフェニル、(257)3−メトキシフェニル、(258)3−アニリノフェニル、(259)3−イソブチリルアミノフェニル、(260)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(261)3−(3−エチルウレイド)フェニル、(262)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(263)3−フェノキシフェニル、(264)3−ヒドロキシフェニル、(265)2−ブチルフェニル、(266)2−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(267)2−(5−ノネニル)フェニル、(268)o−ビフェニリル、(269)2−エトキシカルボニルフェニル、(270)2−ブトキシフェニル、(271)2−メチルフェニル、(272)2−クロロフェニル、(273)2−フェニルチオフェニル、(274)2−ベンゾイルフェニル、(275)2−アセトキシフェニル、(276)2−ベンゾイルオキシフェニル、(277)2−フェノキシカルボニルフェニル、(278)2−メトキシフェニル、(279)2−アニリノフェニル、(280)2−イソブチリルアミノフェニル、(281)2−フェノキシカルボニルアミノフェニル、(282)2−(3−エチルウレイド)フェニル、(283)2−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル、(284)2−フェノキシフェニル、(285)2−ヒドロキシフェニル、(286)3,4−ジブチルフェニル、(287)3,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(288)3,4−ジフェニルフェニル、(289)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル、(290)3,4−ジドデシルオキシフェニル、(291)3,4−ジメチルフェニル、(292)3,4−ジクロロフェニル、(293)3,4−ジベンゾイルフェニル、(294)3,4−ジアセトキシフェニル(295)3,4−ジメトキシフェニル、(296)3,4−ジ−N−メチルアミノフェニル、(297)3,4−ジイソブチリルアミノフェニル、(298)3,4−ジフェノキシフェニル、(299)3,4−ジヒドロキシフェニル(300)3,5−ジブチルフェニル、(301)3,5−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(302)3,5−ジフェニルフェニル(303)3,5−ジエトキシカルボニルフェニル、(304)3,5−ジドデシルオキシフェニル、(305)3,5−ジメチルフェニル、(306)3,5−ジクロロフェニル、(307)3,5−ジベンゾイルフェニル、(308)3,5−ジアセトキシフェニル、(309)3,5−ジメトキシフェニル、(310)3,5−ジ−N−メチルアミノフェニル、(311)3,5−ジイソブチリルアミノフェニル、(312)3,5−ジフェノキシフェニル、(313)3,5−ジヒドロキシフェニル、(314)2,4−ジブチルフェニル、(315)2,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(316)2,4−ジフェニルフェニル、(317)2,4−ジエトキシカルボニルフェニル(318)2,4−ジドデシルオキシフェニル、(319)2,4−ジメチルフェニル、(320)2,4−ジクロロフェニル、(321)2,4−ジベンゾイルフェニル、(322)2,4−ジアセトキシフェニル、(323)2,4−ジメトキシフェニル、(324)2,4−ジ−N−メチルアミノフェニル、(325)2,4−ジイソブチリルアミノフェニル、(326)2,4−ジフェノキシフェニル、(327)2,4−ジヒドロキシフェニル、(328)2,3−ジブチルフェニル、(329)2,3−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(330)2,3−ジフェニルフェニル、(331)2,3−ジエトキシカルボニルフェニル、(332)2,3−ジドデシルオキシフェニル、(333)2,3−ジメチルフェニル、(334)2,3−ジクロロフェニル、(335)2,3−ジベンゾイルフェニル、(336)2,3−ジアセトキシフェニル、(337)2,3−ジメトキシフェニル、(338)2,3−ジ−N−メチルアミノフェニル、(339)2,3−ジイソブチリルアミノフェニル、(340)2,3−ジフェノキシフェニル、(341)2,3−ジヒドロキシフェニル(342)2,6−ジブチルフェニル、(343)2,6−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(344)2,6−ジフェニルフェニル、(345)2,6−ジエトキシカルボニルフェニル、(346)2,6−ジドデシルオキシフェニル、(347)2,6−ジメチルフェニル、(348)2,6−ジクロロフェニル、(349)2,6−ジベンゾイルフェニル、(350)2,6−ジアセトキシフェニル、(351)2,6−ジメトキシフェニル、(352)2,6−ジ−N−メチルアミノフェニル、(353)2,6−ジイソブチリルアミノフェニル、(354)2,6−ジフェノキシフェニル、(355)2,6−ジヒドロキシフェニル、(356)3,4,5−トリブチルフェニル、(357)3,4,5−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(358)3,4,5−トリフェニルフェニル、(359)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル、(360)3,4,5−トリドデシルオキシフェニル、(361)3,4,5−トリメチルフェニル、(362)3,4,5−トリクロロフェニル、(363)3,4,5−トリベンゾイルフェニル、(364)3,4,5−トリアセトキシフェニル、(365)3,4,5−トリメトキシフェニル(366)3,4,5−トリ−N−メチルアミノフェニル、(367)3,4,5−トリイソブチリルアミノフェニル、(368)3,4,5−トリフェノキシフェニル、(369)3,4,5−トリヒドロキシフェニル、(370)2,4,6−トリブチルフェニル、(371)2,4,6−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル、(372)2,4,6−トリフェニルフェニル、(373)2,4,6−トリエトキシカルボニルフェニル、(374)2,4,6−トリドデシルオキシフェニル、(375)2,4,6−トリメチルフェニル(376)2,4,6−トリクロロフェニル、(377)2,4,6−トリベンゾイルフェニル、(378)2,4,6−トリアセトキシフェニル(379)2,4,6−トリメトキシフェニル、(380)2,4,6−トリ−N−メチルアミノフェニル、(381)2,4,6−トリイソブチリルアミノフェニル、(382)2,4,6−トリフェノキシフェニル(383)2,4,6−トリヒドロキシフェニル、(384)ペンタフルオロフェニル、(385)ペンタクロロフェニル、(386)ペンタメトキシフェニル、(387)6−N−メチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル、(388)5−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル、(389)6−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル、(390)5−エトキシ−7−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル、(391)3−メトキシ−2−ナフチル、(392)1−エトキシ−2−ナフチル、(393)6−N−フェニルスルファモイル−8−メトキシ−2−フチル、(394)5−メトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル、(395)1−(4−メチルフェニル)−2−ナフチル、(396)6,8−ジ−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル、(397)6−N−2−アセトキシエチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル、(398)5−アセトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル (399)3−ベンゾイルオキシ−2−ナフチル、(400)5−アセチルアミノ−1−ナフチル(401)2−メトキシ−1−ナフチル(402)4−フェノキシ−1−ナフチル、(403)5−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル、(404)3−N−メチルカルバモイル−4−ヒドロキシ−1−ナフチル、(405)5−メトキシ−6−N−エチルスルファモイル−1−ナフチル、(406)7−テトラデシルオキシ−1−ナフチル、(407)4−(4−メチルフェノキシ)−1−ナフチル、(408)6−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル、(409)3−N,N−ジメチルカルバモイル−4−メトキシ−1−ナフチル、(410)5−メトキシ−6−N−ベンジルスルファモイル−1−ナフチル、(411)3,6−ジ−N−フェニルスルファモイル−1−ナフチル、(412)メチル、(413)エチル、(414)ブチル、(415)オクチル、(416)ドデシル、(417)2−ブトキシ−2−エトキシエチル、(418)ベンジル、(419)4−メトキシベンジル、
【0176】
【化17】
【0177】
(424)メチル、(425)フェニル、(426)ブチル、
【0178】
【化18】
【0179】
(430)メチル、(431)エチル、(432)ブチル、(433)オクチル、(434)ドデシル、(435)2−ブトキシ2−エトキシエチル、(436)ベンジル、(437)4−メトキシベンジル、
【0180】
【化19】
【0181】
【化20】
【0182】
本発明においては、1,3,5−トリアジン環を有する化合物として、メラミンポリマーを用いてもよい。メラミンポリマーは、下記一般式(IV)で示すメラミン化合物とカルボニル化合物との重合反応により合成することが好ましい。
【0183】
【化21】
【0184】
上記合成反応スキームにおいて、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基である。
【0185】
上記アルキル基、アルケニル基、アリール基及び複素環基及びこれらの置換基は前記一般式(I)で説明した各基、それらの置換基と同義である。
【0186】
メラミン化合物とカルボニル化合物との重合反応は、通常のメラミン樹脂(例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂等)の合成方法と同様である。また、市販のメラミンポリマー(メラミン樹脂)を用いてもよい。
【0187】
メラミンポリマーの分子量は、2千〜40万であることが好ましい。メラミンポリマーの繰り返し単位の具体例を以下に示す。
【0188】
【化22】
【0189】
MP−1:R13、R14、R15、R16:CH2OH
MP−2:R13、R14、R15、R16:CH2OCH3
MP−3:R13、R14、R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−4:R13、R14、R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−5:R13、R14、R15、R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−6:R13、R14、R15、R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−7:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2OCH3
MP−8:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2OCH3
MP−9:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2OCH3
MP−10:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2OCH3
MP−11:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2OCH3
MP−12:R13、R14、R16:CH2OCH3;R15:CH2OH
MP−13:R13、R16:CH2OCH3;R14、R15:CH2OH
MP−14:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−i−C4H9
MP−15:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2O−i−C4H9
MP−16:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−17:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2O−i−C4H9
MP−18:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−19:R13、R14、R16:CH2O−i−C4H9;R15:CH2OH
MP−20:R13、R16:CH2O−i−C4H9;R14、R15:CH2OH
MP−21:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−22:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9
MP−23:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−24:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2O−n−C4H9
MP−25:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−26:R13、R14、R16:CH2O−n−C4H9;R15:CH2OH
MP−27:R13、R16:CH2O−n−C4H9;R14、R15:CH2OH
MP−28:R13、R14:CH2OH;R15:CH2OCH3;R16:CH2O−n−C4H9
MP−29:R13、R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2OCH3
MP−30:R13、R16:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9
MP−31:R13:CH2OH;R14、R15:CH2OCH3;R16:CH2O−n−C4H9
MP−32:R13:CH2OH;R14、R16:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9
MP−33:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−34:R13:CH2OH;R14、R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2OCH3
MP−35:R13、R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−36:R13、R16:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9
MP−37:R13:CH2OCH3;R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−38:R13、R16:CH2O−n−C4H9;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH
MP−39:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−40:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2O−n−C4H9
MP−41:R13:CH2OH;R14:CH2O−n−C4H9;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2OCH3
MP−42:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−43:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2O−n−C4H9
MP−44:R13:CH2O−n−C4H9;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−45:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−46:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−47:R13:CH2OH;R14:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2OCH3
MP−48:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−49:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−50:R13:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2NHCOCH=CH2
【0190】
【化23】
【0191】
MP−51:R13、R14、R15、R16:CH2OH
MP−52:R13、R14、R15、R16:CH2OCH3
MP−53:R13、R14、R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−54:R13、R14、R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−55:R13、R14、R15、R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−56:R13、R14、R15、R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−57:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2OCH3
MP−58:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2OCH3
MP−59:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2OCH3
MP−60:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2OCH3
MP−61:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2OCH3
MP−62:R13、R14、R16:CH2OCH3;R15:CH2OH
MP−63:R13、R16:CH2OCH3;R14、R15:CH2OH
MP−64:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−i−C4H9
MP−65:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2O−i−C4H9
MP−66:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−67:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2O−i−C4H9
MP−68:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−69:R13、R14、R16:CH2O−i−C4H9;R15:CH2OH
MP−70:R13、R16:CH2O−i−C4H9;R14、R15:CH2OH
MP−71:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−72:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9
MP−73:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−74:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2O−n−C4H9
MP−75:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−76:R13、R14、R16:CH2O−n−C4H9;R15:CH2OH
MP−77:R13、R16:CH2O−n−C4H9;R14、R15:CH2OH
MP−78:R13、R14:CH2OH;R15:CH2OCH3;R16:CH2O−n−C4H9
MP−79:R13、R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2OCH3
MP−80:R13、R16:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9
MP−81:R13:CH2OH;R14、R15:CH2OCH3;R16:CH2O−n−C4H9
MP−82:R13:CH2OH;R14、R16:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9
MP−83:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15、R16:CH2O−n−C4H9
MP−84:R13:CH2OH;R14、R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2OCH3
MP−85:R13、R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−86:R13、R16:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9
MP−87:R13:CH2OCH3;R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−88:R13、R16:CH2O−n−C4H9;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH
MP−89:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−90:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2O−n−C4H9
MP−91:R13:CH2OH;R14:CH2O−n−C4H9;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2OCH3
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【0192】
【化24】
【0193】
MP−101:R13、R14、R15、R16:CH2OH
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MP−147:R13:CH2OH;R14:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2OCH3
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MP−149:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−150:R13:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2NHCOCH=CH2
【0194】
【化25】
【0195】
MP−151:R13、R14、R15、R16:CH2OH
MP−152:R13、R14、R15、R16:CH2OCH3
MP−153:R13、R14、R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−154:R13、R14、R15、R16:CH2O−n−C4H9
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MP−157:R13、R14、R15:CH2OH;R16:CH2OCH3
MP−158:R13、R14、R16:CH2OH;R15:CH2OCH3
MP−159:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2OCH3
MP−160:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2OCH3
MP−161:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2OCH3
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MP−166:R13、R14:CH2OH;R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−167:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2O−i−C4H9
MP−168:R13:CH2OH;R14、R15、R16:CH2O−i−C4H9
MP−169:R13、R14、R16:CH2O−i−C4H9;R15:CH2OH
MP−170:R13、R16:CH2O−i−C4H9;R14、R15:CH2OH
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MP−174:R13、R16:CH2OH;R14、R15:CH2O−n−C4H9
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MP−186:R13、R16:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9
MP−187:R13:CH2OCH3;R14、R15:CH2OH;R16:CH2O−n−C4H9
MP−188:R13、R16:CH2O−n−C4H9;R14:CH2OCH3;R1 5:CH2OH
MP−189:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−190:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2O−n−C4H9
MP−191:R13:CH2OH;R14:CH2O−n−C4H9;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2OCH3
MP−192:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2O−n−C4H9;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−193:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2O−n−C4H9
MP−194:R13:CH2O−n−C4H9;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−195:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−196:R13:CH2OH;R14:CH2OCH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−197:R13:CH2OH;R14:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2OCH3
MP−198:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R16:CH2NHCOCH=CH2
MP−199:R13:CH2OCH3;R14:CH2OH;R15:CH2NHCOCH=CH2;R16:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
MP−200:R13:CH2NHCO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3;R14:CH2OCH3;R15:CH2OH;R16:CH2NHCOCH=CH2
本発明においては、上記繰り返し単位を二種類以上組み合わせたコポリマーを用いてもよい。二種類以上のホモポリマーまたはコポリマーを併用してもよい。
【0196】
また、二種類以上の1,3,5−トリアジン環を有する化合物を併用してもよい。二種類以上の円盤状化合物(例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物とポルフィリン骨格を有する化合物と)を併用してもよい。
【0197】
これらの添加剤はセルロースエステルフィルムに対して0.2〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%含有することが好ましい。
【0198】
レターデーション調整機能を有するものとして、例えば、添加することによりレターデーションを調整出来る化合物であり、また例えば、レターデーションを増加あるいは低減させることが出来る。分子の構造が平面を有するもので、層の中で平行に面配列出来るような有機化合物であり、ディスコティック化合物が代表的な構造である。例えば、ビフェニル、ナフタリン、アントラセン、クロメン、イソクロメン、クマリン、イソクマリン、フラボン、フラボノール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、アウーレン、フルオレン、フルオレノン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等を挙げることが出来るが、これらを更に結合した大きな分子も平面性を有すれば本発明において使用出来る。
【0199】
〈微粒子〉
本発明において使用するマット剤は出来るだけ微粒子のものが好ましい。微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等の無機微粒子等を挙げることが出来るが、下記の理由から特に二酸化珪素が好ましい。有機化合物の例としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることが出来るが、特に架橋高分子微粒子が好ましい。本発明では、これらに限定されない。
【0200】
これらの中でもケイ素を含むものが濁度が低くなる点、また、フィルムのヘイズを小さく出来るので好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどを挙げることが出来る。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmがより好ましく、5〜12nmが更に好ましい。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見かけ比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/Lがより好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の微粒子分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が発生せず好ましい。本発明において、リットルをLで表すことがある。
【0201】
本発明における微粒子の添加量は、セルロースエステルフィルムの表層(表面から10〜15μmまでの深さを意味する)当たり0.01〜0.5質量%が好ましく、0.03〜0.3質量%がより好ましく、0.05〜0.2質量%が更に好ましい。また、微粒子の2次粒径は0.1〜10μmの粒子を含むことが好ましく、更に0.2〜2.5μmの粒子を含むことが好ましく、平均粒径が0.3〜2.5μmであることが好ましい。表面の動摩擦係数としては0.9以下が好ましく、更に0.4以下が好ましい。
【0202】
本発明に好ましい二酸化珪素の微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものを挙げることが出来、アエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812を好ましく用いることが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、何れも使用することが出来る。
【0203】
ポリマーの微粒子の例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(東芝シリコーン(株)製)を挙げることが出来る。
【0204】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルTT600が本発明のセルロースエステルフィルムの濁度を低くし、且つ摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
【0205】
二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。本発明において、1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/L以上の微粒子が好ましく、より好ましくは、90〜200g/Lであり、更に好ましくは、100〜200g/Lである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0206】
微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子を観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
【0207】
本発明において、上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
【0208】
見掛比重(g/L)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(L)
〔多層構成のセルロースエステルフィルム〕
本発明に有用な多層構成のセルロースエステルフィルムは、前述のごとく表層用ドープと基層用ドープの組成を異にして共流延または逐次流延によって形成して得られるものである。共流延は品質的に均一性に優れ、また逐次流延は製膜速度が速く生産性に優れている。
【0209】
本発明において、表層には微粒子を主に含有し、基層には添加剤として主に可塑剤と紫外線吸収剤を含有している。表層に可塑剤や紫外線吸収剤を含んでいてもよく、また基層に微粒子を含有していてもよいが、表層に含まれる可塑剤または紫外線は基層のそれらの濃度より小さいことが望ましく、また基層に含有する微粒子の濃度は表層のそれより小さいことが望ましい。層構成は2層以上あればよく、表層または基層の中でも複数層あってもよい。好ましくは3層で表層2層と基層1層が好ましく、本発明の優れた光学フィルムを作製するに3層あれば充分効果を上げることが出来好ましい。3層の場合の表層の呼び方として、一方の面の表層を表層1、また他の面の表層を表層2とする。なお、表層及び基層の具体的な組成については後述の光学フィルムのところで説明する。
【0210】
本発明において、セルロースエステルフィルムの全膜厚は特に限定されず10〜500μmのものが用いられるが、10〜60μmが好ましく、表層は基層より膜厚は薄く、通常表層の膜厚は1〜15μmであり、好ましくは5〜10μmである。全体の膜厚、表層及び基層の膜厚はそれぞれ一定であることが望ましく、フィルムの幅手及び長手方向ともに平均膜厚に対して±10%以内、好ましくは±5%以内、更に好ましくは±1%以内の変動であることが望ましい。
【0211】
多層構成のセルロースエステルフィルムは、表層に微粒子を含むことによって、滑りがよく、巻き取り時スムースに巻くことが出来るばかりでなく、巻き取り後のロールの保存中に巻き姿の変化もなく、巻き中に起こるフィルムの欠陥を生ぜず、次工程での加工に全く支障が起こらず、安心して作業を行うことが出来る。単層のセルロースエステルフィルムに微粒子を含有させる場合、しばしばこのような欠陥を生じる場合がある。それを解決するためには、微粒子の濃度を高めればよいが、透明性が劣り、商品となりにくくなる。本発明に有用な多層構成のセルロースエステルフィルムは、透明度を落とすことなく、巻きを安定にすることが出来る。
【0212】
本発明に有用な多層構成のセルロースエステルフィルムは、光透過率(可視光の)90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上、更に94%以上であることが好ましく、またヘイズは1%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5%未満、更に0.1%未満であることが好ましい。特に0%であることが最も好ましい。
【0213】
[光学フィルムの製造]
本発明の光学フィルムは、上記多層構成のセルロースエステルフィルムの表面にそのまま、または他の層を介して、大部分が窒素ガスであるガスの雰囲気で、大気圧プラズマ放電処理方法により金属化合物層の薄膜を形成したフィルムである。具体的には、高周波パルス電圧を印加する大気圧プラズマ放電処理方法でもよいが、特に好ましくは異なる2周波数の高周波電圧を印加する方式の大気圧プラズマ放電処理方法であって、電界波形はサイン波が好ましい。
【0214】
本発明において、多層構成のセルロースエステルフィルム上に、大部分が窒素ガスのガスの雰囲気下で金属化合物(例えばSiOx、SiOxNy等の金属酸化物、金属窒化物)を形成した光学フィルムは、使用するガスの大部分窒素ガスのガス雰囲気で行うことに特徴があり、従来のヘリウムやアルゴン等の希ガスを使用する方式より、格段に安いコストで光学フィルムを得ることが出来るというメリットがある。
【0215】
ガス中に含まれる窒素ガスは60〜99.9体積%であり、好ましくは75〜99.9体積%であり、更に好ましくは90〜99.9体積%である。窒素ガス以外には、アルゴンやヘリウム等の希ガスを含有させてもよく、薄膜を形成するための金属化合物のガスが含有され、更に酸素、水素等の反応を促進させるためのガス(添加ガスまたは補助ガスともいう)等が含有される。
【0216】
ここで、本発明に特に有用な異なる2周波数の高周波電圧を印加する大気圧プラズマ放電処理方法及び装置について説明する。
【0217】
本発明における異なる2周波数の高周波電圧による放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分を有することが好ましい。
【0218】
第1の周波数ω1の高周波電圧と第2の周波数ω2の高周波電圧は別々の高周波電源から、第1の周波数ω1は第1電極へ供給され、第2の周波数ω2の高周波電圧は第2の電極へと供給されることが好ましい。あるいは、同一の電極に第1と第2のそれぞれの高周波電圧を印加してもよく、予め第1の周波数ω1の高周波電圧と第2の周波数ω2の高周波電圧を重ね合わせた高周波電圧を一つの電極に印加してもよい。
【0219】
本発明において、高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
【0220】
前記高周波電圧が、第1周波数ω1の電圧成分と前記第1周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重畳されたω1のサイン波形となる。
【0221】
本発明において、放電開始電圧とは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことの出来る最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種などによって多少変動するが、放電ガス(窒素ガス等)単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0222】
上記のように、高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することが出来ると推定される。特にこのような高周波電圧を対向する電極にれぞれ印加する、すなわちこのような同じ放電空間に両方から印加することが好ましい。
【0223】
本発明において、高周波電圧を対向電極(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に第1の周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に第2の周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した大気圧プラズ放電処理装置を使用する方法である。
【0224】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、前記対向電極間に、放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。また、ガス排気手段を有することも好ましい。
【0225】
また、電極、第1電源またはそれらの間の何れかには第1フィルターを、また電極、第2電源またはそれらの間の何れかには第2フィルターを接続することが好ましく、第1フィルターは該第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第2電源からの周波数の電流を通過し易くし、また、第2フィルターはその逆で、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくくし、該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするというそれぞれのフィルターには機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過し易いとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0226】
更に、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加出来る能力を有していることが好ましい。
【0227】
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たす。更に好ましくは、
V1>IV>V2
を満たすことである。
【0228】
高周波および放電開始電圧の定義、また、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
【0229】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0230】
高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0231】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0232】
なお、上記測定に使用する高周波プローブとオシロスコープの位置関係については後述の図1に示してある。
【0233】
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来るのである。
【0234】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0235】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、サイン波でもパルスでもよいが、サイン波が好ましい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0236】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。第2電源の電界波形はサイン波が好ましい。
【0237】
このような二つの電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要であるということが本発明の重要な点である。
【0238】
本発明において、前記第1フィルターは、前記第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、且つ前記第2電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっており、また前記第2フィルターは、該第2電源からの周波数の電流を通過しにくく、且つ該第1電源からの周波数の電流を通過し易くするようになっている。本発明において、かかる性質のあるフィルターであれば制限無く使用出来る。
【0239】
例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることが出来る。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用出来る。
【0240】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、該対向電極間に導入した少なくとも放電ガスと薄膜形成性ガスをプラズマ状態とし、該対向電極間に静置あるいは移送される基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基材の上に薄膜を形成させるものである。また他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基材(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基材の上に薄膜を形成させるジェット方式の装置がある。
【0241】
図7は本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0242】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図7では図示していない(後述の図9に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0243】
プラズマ放電処理装置310は、第1電極311と第2電極312から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極311からは第1電源321からの第1の周波数ω1の高周波電圧V1が印加され、また第2電極312からは第2電源322からの第2の周波数ω2の高周波電圧V2が印加されるようになっている。第1電源321は第2電源322より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加出来る能力を有していればよく、また第1電源321の第1の周波数ω1は第2電源322の第2の周波数ω2より小さな能力を有していればよい。
【0244】
第1電極311と第1電源321との間には、第1電源321からの電流が第1電極311に向かって流れるように第1フィルター323が設置されており、第1電源321からの電流を通過しにくくし、第2電源322からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0245】
また、第2電極312と第2電源322との間には、第2電源322からの電流が第2電極312に向かって流れるように第2フィルター324が設置されており、第2電源322からの電流を通過しにくくし、第1電源321からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0246】
第1電極311と第2電極312との対向電極間(放電空間)313に、ここでは図示していない(後述の図8に図示してあるような)ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極311と第2電極312から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示していない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置314付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、ここでは図示していない(後述の図2に図示してあるような)電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0247】
また、図7に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。325及び326は高周波プローブであり、327及び328はオシロスコープである。
【0248】
ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることが出来るので、何回も処理され高速で処理することも出来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することも出来る。
【0249】
図8は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0250】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段340、ガス供給手段350、電極温度調節手段360を有している装置である。
【0251】
図8は、ロール電極(第1電極)335と角筒型電極群(第2電極)336との対向電極間(放電空間)332で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0252】
ロール電極(第1電極)335と角筒型電極群(第2電極)336との間の放電空間(対向電極間)332に、ロール電極(第1電極)335には第1電源341から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型電極群(第2電極)336には第2電源342から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0253】
ロール電極(第1電極)335と第1電源341との間には、第1電源341からの電流がロール電極(第1電極)335に向かって流れるように第1フィルター343が設置されており、該第1フィルターは第1電源341からの電流を通過しにくくし、第2電源342からの電流を通過し易くするように設計されている。また、角筒型電極群(第2電極)336と第2電源342との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター344が設置されており、第2フィルター344は、第2電源342からの電流を通過しにくくし、第1電源341からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0254】
なお、本発明においては、ロール電極335を第2電極、また角筒型電極群336を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。更に、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加出来る能力を有していればよい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有していればよい。
【0255】
ガス供給手段350のガス供給装置351で発生させたガスGは、流量を制御して給気口352よりプラズマ放電処理容器331内に導入する。放電空間332及びプラズマ放電処理容器331内をガスGで満たす。
【0256】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール364を経てニップロール365で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール電極335に接触したまま巻き回しながら角筒型電極群336との間に移送し、ロール電極(第1電極)335と角筒型電極群(第2電極)336との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)332で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール電極335に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール366、ガイドロール367を経て、図示していない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0257】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口353より排出する。
薄膜形成中、ロール電極(第1電極)335及び角筒型電極群(第2電極)336を加熱または冷却するために、電極温度調節手段360で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管361を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、365及び366はプラズマ放電処理容器331と外界とを仕切る仕切板である。
【0258】
図9は、図8に示したロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0259】
図9において、ロール電極335aは導電性の金属質母材335Aとその上に誘電体335Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて、ロール電極表面温度を一定に且つ均一に制御するための液体を循環させるようになっており、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0260】
図10は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0261】
図10において、角筒型電極336aは、導電性の金属質母材336Aに対し、図9同様の誘電体336Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、角筒型電極表面温度を一定且つ均一に制御するための液体を循環させるようになっており、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0262】
なお、角筒型電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール電極335に対向している全角筒型電極面の面積の和で表される。対向電極の対向面はほぼ並行でも、また±10°以内なら傾けてもよい。
【0263】
図8に示した角筒型電極336aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0264】
図9及び10において、ロール電極335a及び角筒型電極336aは、それぞれ導電性の金属質母材335A及び336Aの上に誘電体35B及び336Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1〜3mm程度の被覆があればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0265】
導電性の金属質母材335A及び336Aとしては、チタンまたはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理由からはチタンまたはチタン合金が特に好ましい。
【0266】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。また、幅手方向での距離の変動は±10%未満、好ましくは±5%未満、更に好ましくは±1%未満であることが好ましい。
【0267】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0268】
プラズマ放電処理容器331はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能であり、電磁波をシールドするためにも好ましい。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図7において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0269】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 100kHz*
A6 パール工業 200kHz
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0270】
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0271】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は1〜50W/cm2が好ましい。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0272】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0273】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0274】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0275】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)および(e)〜(h)が好ましく、特に、(a)が好ましい。
【0276】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0277】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタンはステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0278】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0279】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0280】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0281】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0282】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0283】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0284】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0285】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0286】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0287】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0288】
〈放電処理用のガス〉
次に、放電空間に供給するガス(放電処理用の)について説明する。
【0289】
ガスは、主に放電ガスおよび薄膜形成ガスからなる。放電ガスと薄膜形成ガスは混合して供給してもよいし、別々に供給してもかまわない。また、放電ガスを放電空間に供給し、薄膜形成ガスは励起した放電ガスに薄膜を形成する処理空間に供給してもよい。
【0290】
放電ガスとは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことの出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働く。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本発明において用いる放電ガスは窒素であり、放電ガスの60〜100体積%が窒素ガスであることが好ましい。このとき、放電ガスとして窒素以外の放電ガスとしては、希ガスまたは酸素を含有していてもよい。また、放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0291】
薄膜形成ガスとは、放電ガスからのエネルギーを受け取って、それ自身は励起して活性となり、基材上に化学的に堆積して薄膜を形成する原料のことである。
【0292】
次に、本発明に使用する薄膜を形成する混合ガスについて説明する。使用する混合ガスは、基本的に放電ガスと薄膜形成性ガスの混合ガスである。更に添加ガスを加えることもある。混合ガス中、放電ガスを90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0293】
本発明に使用する薄膜形成性ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。
【0294】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来る。またアルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子に置換したものでもよい。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0295】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0296】
なお、具体的な有機金属化合物については後述する。
本発明において、放電空間に供給するガスには、放電ガス、薄膜形成性ガスの他に、薄膜形成の反応を促進する補助ガスまたは添加ガスを混合してもよい。添加ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等を挙げることが出来るが、酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量は混合ガスに対して0.01〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0297】
上記形成された酸化物または複合化合物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0298】
本発明において、薄膜形成性ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン化金属、金属水素化合物の金属としては、特に限定されないが、Al、As、Au、B、Bi、Ca、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Ir、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Sb、Se、Si、Sn、Ti、Ta、Zn、Zr、Y、V、W等を挙げることが出来る。
【0299】
例えば、Ti、Zr、In、Sn、Zn、Ge、Si、Taあるいはその他の金属を含有する有機金属化合物、金属水素化合物、金属ハロゲン化物、金属錯体を用いて、本発明の薄膜形成方法で、これらの金属酸化物層(金属酸化物窒化物層も含む)または金属窒化物層等を形成することが出来、下記のような高機能性の薄膜を売ることが出来る。本発明に有用な薄膜の例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0300】
電極膜 Au、Al、Ag、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜 SiO2、SiO、Si3N4、Al2O3、Al2O3、Y2O3
透明導電膜 In2O3、SnO2
エレクトロクロミック膜 WO3、IrO2、MoO3、V2O5
蛍光膜 ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜 Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe2O3、Co、Fe3O4、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜 Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜 a−Si、Si
反射膜 Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜 ZrC−Zr
選択性透過膜 In2O3、SnO2
反射防止膜、ハーフミラー膜 SiO2、TiO2、SnO2、SiOxNy、SiN、TiN、TiOxNy、SiOxCy
シャドーマスク Cr
耐摩耗性膜 Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜 Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜 W、Ta、Ti
潤滑膜 MoS2
装飾膜 Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
ここで、上記の高機能膜のうち反射防止膜(層)及び反射防止膜を積層した反射防止フィルムについて詳細に説明する。
【0301】
本発明に係る高機能膜のうちの反射防止フィルムの反射防止層は中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層それぞれの薄膜が積層されたもの、あるいは高屈折率層と低屈折率層を積層されたものである。
【0302】
本発明に係る反射防止層薄膜形成性ガスの高屈折率層を形成するチタン化合物、中屈折率層あるいは高屈折率層を形成する錫化合物、低屈折率層を形成する珪素化合物について述べる。反射防止層を有する反射防止フィルムは、各屈折率層を基材上に直接または他の層を介して積層して得られるものであるが、積層は、例えば、図4〜7のような大気圧プラズマ放電処理装置を、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に3層を積層するために、直列に3基並べて連続的に処理することが出来、この連続的積層処理は品質の安定や生産性の向上等から本発明の薄膜の形成に適している。また積層せずに、1層処理ごと、処理後巻き取り、逐次処理して積層してもよい。本発明において、反射防止層の上に防汚層を設ける場合には、上記のプラズマ放電処理装置を更にもう1基続けて設置し、4基並べて最後に防汚層を積層してもよい。また、反射防止層を設ける前に、基材の上にその他の層として、予めハードコート層や防眩層を塗布によって設けてもよく、また、その裏側に予めバックコート層を塗布によって設けてもよい。これらは全て1パス(一回通し)で連続的に形成することが好ましい。
【0303】
本発明に係る反射防止フィルムの各層を形成するガスには、適切な屈折率を得ることの出来る化合物であれば制限なく使用出来るが、本発明において、高屈折率層を形成するガスとしてはチタン化合物を、中屈折率層を形成するガスとしては錫化合物またはチタン化合物と珪素化合物の混合物(または高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層と低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を、また低屈折率層を形成するガスとしては珪素化合物、フッ素化合物、あるいは珪素化合物とフッ素化合物の混合物を好ましく用いることが出来る。これらの化合物を屈折率を調節するために、2種以上を混合して使用してもよい。
【0304】
本発明に有用な錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、ジブチルジエトキシ錫、ブチル錫トリス(2,4−ペンタンジオナート)、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、エチルエトキシ錫、メチルメトキシ錫、イソプロピルイソプロポキシ錫、ジブチル錫ジアセタート、テトラブトキシ錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、ジブチリロキシ錫、ジエチル錫、テトラブチル錫、錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫(2,4−ペンタンジオナート)、ジメチル錫ジ(2,4−ペンタンジオナート)、ジアセトメチルアセタート錫、ジアセトキシ錫、ジブトキシジアセトキシ錫、ジアセトオキシ錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることが出来、また、亜鉛アセトアセトナート、または亜鉛(2,4−ペンタンジオナート)、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジエトキシ亜鉛等の亜鉛化合物も本発明において、好ましく用いることが出来る。また、これらの薄膜形成性ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1011Ω/cm2以下に下げることが出来るため、帯電防止層としても有用である。また、ドープによって透明導電層とすることも出来る。
【0305】
本発明に有用なチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、また、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリメチルインジウム、テトライソプロポキシタンタル、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。またこれらの薄膜形成性ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来る。
【0306】
本発明に有用な珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。これらの薄膜形成性ガスを2種以上を同時に混合して使用することが出来る。また、屈折率の微調整にこれら錫化合物、チタン化合物、珪素化合物を適宜2種以上同時に混合して使用してもよい。
【0307】
また、防汚層あるいは低屈折率層を形成するためのガスとして、フッ素化合物と珪素化合物の混合物とフルオロシラン化合物のようなフッ素と珪素を有する化合物のガスが有用である。フッ素化合物としては、有機フッ素化合物として、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等を好ましく用いることが出来る。フッ化炭素ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタン等を挙げることが出来る。前記のフッ化炭化水素ガスとしては、例えば、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン等を挙げることが出来る。更に、例えば、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロシクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やトリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール等のフルオロアルコール、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸等のフッ素化脂肪酸、ヘキサフルオロアセトン等のフッ素化ケトン等の有機フッ素化合物を用いることが出来るが、これらに限定されない。また、これらの化合物が分子内にフッ素化エチレン性不飽和基を有していても良い。
【0308】
また、珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセトアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。
【0309】
更に、本発明において防汚層薄膜形成ガスとして、フッ素と珪素を有する化合物も好ましく用いることが出来る。例えば、テトラ(トリフルオロメチル)シラン、テトラ(ペンタフルオロエチル)シラン、テトラ(セプタフルオロプロピル)シラン、ジメチルジ(トリフルオロメチル)シラン、ジエチルジ(ペンタフルオロエチル)シラン、テトラ(トリフルオロメトキシ)シラン、テトラ(ペンタフルオロエトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、ビニルトリ(トリフルオロメチル)シラン、トリパーフルオロメチルアクリロイルオキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロシラン化合物を挙げることが出来、これらの化合物を2種以上混合して使用してもよい。また重合性のシランモノマーのオリゴマーも使用出来る。
【0310】
上記フッ素化合物、珪素化合物、フッ素及び珪素を有する化合物を適宜2種以上混合して使用してもよい。
【0311】
かかる防汚層を形成するフッ素化合物及び珪素化合物の混合ガス、またフッ素及び珪素を有する化合物を用いることによって、防汚層(防汚層の表面)の表面エネルギーを低くし、撥水性も兼ね備えた薄膜を得ることが出来る。特に純水の接触角として70〜180°の撥水性を有する防汚層を形成することが出来る。
【0312】
原料化合物が気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。あるいは溶媒によって希釈して使用されても良く、この場合、希ガス中へ気化器等により気化して混合ガスに使用すればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサン、アセトンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。特に、これらのみに限定されない。
【0313】
薄膜形成性ガス(原料化合物)について、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、混合ガス中の含有率は、0.01〜10体積%で有することが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。
【0314】
なお、中屈折率層については、上記珪素化合物、上記チタン化合物または上記錫化合物を、目標とする屈折率に合わせて適宜混合することによっても得ることが出来る。
【0315】
なお、各屈折率層の好ましい屈折率と膜厚は、例えば、3層構成の反射防止層の場合、中屈折率層の酸化錫層では屈折率として1.6〜1.8、また膜厚として50〜70nm程度、高屈折率層の酸化チタン層では屈折率として1.9〜2.4、また膜厚として80〜120nm程度、低屈折率層の酸化珪素層では屈折率として1.3〜1.5、また膜厚として80〜120nm程度である。低屈折率層の上には1〜30nmの防汚層を有機シラン化合物を用いて塗布またはプラズマ放電処理法等により、形成することが出来る。
【0316】
これらはあらかじめ調整されたガスとして放電空間に供給してもよいし、放電空間近傍で2種以上のガスを混合してもよい。水素、酸素等の添加ガスはあらかじめ窒素もしくは希ガスなどによって希釈されたものを放電空間に導入することが、連続製膜の際に薄膜の物性が安定するため好ましい。
【0317】
また、ガスは室温〜200℃に加温して放電空間に供給されることが好ましく、更に好ましくは50〜150℃であり、更に好ましくは70〜120℃であり、特に90〜110℃であることが好ましい。温度が高いほど得られる金属酸化物層が緻密で、硬度に優れた膜が得られるが高すぎると基材が変形することがある。
【0318】
供給ガスの温度は一定であることが、連続製膜において、膜厚や膜質を安定するために好ましく、温度変動は±10℃以内であることが好ましく、±5℃以内であることが更に好ましく、±1℃以内であることが更に好ましく±0.1℃以内であることが特に好ましい。供給ガスの供給量も一定であることが好ましい。放電空間へのガス供給量としては、反応ガス供給量(ml/秒)/放電空間の容積(ml)に対して、10−2〜104(l/秒)とすることが出来、適宜調整される。
【0319】
以上の方法により酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等の非晶性の金属酸化物層、あるいは酸化窒化珪素、酸化窒化チタン等の金属酸化窒化物層、金属窒化物層を好ましく作製することが出来る。これらは炭素を0〜5原子濃度%程度含有させることも出来、防汚性を持たせるため、更に炭素の含有量を多くすることも出来る。また、これらの非晶性の金属化合物層は熱処理により、あるいはレーザーなどのエネルギーを与えることによって結晶化させることも出来る。
【0320】
〔その他の層〕
本発明において、セルロースエステルフィルム上に金属化合物薄膜を形成させる際、セルロースエステルフィルム上に直接またはセルロースエステルフィルムにその他の層(ここでは樹脂コート層とする)を設けた後形成させることが出来る。樹脂コート層は、樹脂を溶解した溶液の塗布液を塗布し、更に乾燥して得られる層をいい、その層に紫外線のような活性線を照射して硬化した樹脂コート層とすることが好ましい。樹脂コート層は、光学的に機能を有していても、いなくてもよい。例えば、接着層、帯電防止層、クリアハードコート層、防眩層または下引層、バックコート層があり、いずれも本発明の光学フィルムに好ましく用いられる。
【0321】
樹脂コート層はエチレン性不飽和モノマー成分を有する樹脂を重合させて硬化して形成したものが好ましく、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を構成成分として含有することが好ましい。特に好ましくは活性線硬化樹脂コート層である。
【0322】
ここで、活性線硬化樹脂コート層とは紫外線や電子線のような活性線照射により、重合や架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0323】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0324】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151110号等を参照)。
【0325】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号を参照)。
【0326】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0327】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0328】
これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤また光増感剤は該組成物の1〜10質量%添加することが出来るが、2.5〜6質量%であることが好ましい。
【0329】
エチレン性不飽和モノマーを樹脂の成分として含有していてもよく、例えば、エチレン性不飽和二重結合を一つ有するモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。またエチレン性不飽和二重結合を二つ以上有するモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
【0330】
かかる組成の紫外線硬化樹脂は数多く市販されている。市販品としては、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製);アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)等を挙げることが出来、これら市販のものから適宜選択して利用出来る。
【0331】
本発明に用いられる紫外線硬化樹脂コート層は公知の方法で塗設することが出来る。
【0332】
紫外線硬化樹脂コート層を塗設する際の溶媒は、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用出来る。好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、更に、好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
【0333】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押し出しコーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。乾燥後の膜厚としては1〜10μmが好ましい。
【0334】
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
【0335】
紫外線硬化性樹脂塗布層は乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.1秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率、生産性とから0.1秒〜10秒がより好ましい。
【0336】
こうして得た紫外線硬化性樹脂コート層に、ブロッキングを防止するため、また対擦り傷性等を高めるために、あるいは防眩性を付与するために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることも出来、それらの種類としては、前述の微粒子と同様である。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが好ましい。また、紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0337】
このようにして形成された紫外線硬化樹脂を硬化させた層は膜厚が1〜10μmであることが好ましく、JIS BO601で規定される中心線平均粗さRaが1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μm程度の防眩層であってもよい。
【0338】
また、紫外線硬化樹脂層は2層以上を重ねて塗設することも出来、より硬度や耐摩擦性に優れたハードコート層を形成することが出来る。ハードコート層は鉛筆硬度で2H以上であることが好ましく、特に3H〜6Hであることが好ましい。また、必要に応じてセルロースエステルフィルムの両面にハードコート層を塗設することも出来る。
【0339】
本発明の光学フィルムは反射防止フィルム、帯電防止フィルム、位相差フィルム、導電性フィルム、電磁波遮蔽フィルム、偏光板等の保護フィルム、光学補償フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、偏光板、プラズマディスプレイ前面フィルター等に好ましく用いられる。特に複数の金属酸化物層を形成する反射防止フィルムに有用である。
【0340】
光学フィルムの性質の一つとして、色ムラについて若干詳しく述べることとする。
【0341】
反射防止フィルム(低反射積層体)の薄膜面の色を、L*a*b*値のa*値およびb*値の絶対値、及び反射防止フィルムの複数の測定点で測定したL*a*b*値より求めたΔEの値を得ることによって測定出来る。このΔEを一定値以下とすることで、色ムラのない、特に高濃度画像再現時の色ムラが少なく、視認性、カラー表示の良好な反射防止フィルムを有する画像表示装置が得られる。
【0342】
反射防止フィルムの色ムラは、主に光学干渉層の膜厚ムラに起因する色ムラで、膜厚ムラを抑制することで改善することが知られている。
【0343】
本発明のL*a*b*値は、JIS Z 8722に記載の拡散照明垂直受光の条件で測定し、JIS Z 8729に記載のCIE LABに順じて求めた値である。反射スペクトル測定は測定する試料の正反射成分を測定するため、光トラップを使用しない条件で測定する。測定面積は測定点の間隔から、3mm2〜50mm2が好ましい。L*a*b*値は2度視野、C光源として求める。
【0344】
測定する試料は、正確な反射スペクトルを測定するために処理を施す。試料の処理は、反射防止フィルムを透過した光が測定台などに反射して測定されることを防ぐため、試料のセルロースエステルフィルムの反射防止層が設けられていない面を、370nmから730nmにおける透過率が10%未満、好ましくは1%未満となるように黒色に着色する。更に、黒色の試料台上に試料を置いて測定する。
【0345】
L*a*b*の値の好ましい範囲は、それぞれ0<L*<15、0<a*<20、−30<b*<0であり、更に好ましくは3<L*<8、10<a*<20、−30<b*<−15である。
【0346】
またa*とb*の値は、b*=−1.5×a*±5の範囲となることが色調として好ましい。
【0347】
ΔEはJIS Z 8730に記載のΔE*abに準じ求められる。
測定点は、任意の測定点Aとその測定点1から1cm離れた任意の測定点Bとした場合、測定点Aと測定点Bの色差ΔEが3以内であることが好ましい。これにより色ムラのない、特に高濃度画像再現時の色ムラが少なく、視認性、カラー表示の良好な表示画像が得られる。また、任意の測定点Cとその測定点Cから10cm離れた任意の測定点Dとした場合、測定点Cと測定点Dの色差ΔEが5以内であることが好ましい。これにより、対角線の長さが25.4cm以上の中型から大型の画像表示装置に反射防止フィルムを用いた場合の表示画像の均一性が良好となる。最も好ましくは、測定点Aと測定点Bの色差ΔEが3以内、且つ測定点Cと測定点Dの色差ΔEが5以内である。
【0348】
〔偏光板〕
本発明に係わる光学フィルムは偏光板保護フィルムとして極めて優れている。偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明においても同様に、本発明の光学フィルムの多層構成のセルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる。本発明の光学フィルムとした後に、多層構成のセルロースエステルフィルムの片面を鹸化処理してもよい。
【0349】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明に係わる多層構造のセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0350】
従来のセルロースエステルフィルムに金属化合物薄膜を形成させた光学フィルムを使用した偏光板は前述と同様な高温高湿条件下での耐久性は金属化合物薄膜のクラックや膜剥がれなどの他に、偏光度も変化するということがわかった。これに対して本発明の光学フィルムを使用することによりそのような現象を抑制出来ることを見い出した。
【0351】
本発明の偏光板を用いた表示装置は耐久性に優れ、長期間にわたってコントラストの高い表示が可能である。
【0352】
〔表示装置〕
本発明の光学フィルム及び偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられ、PDP、FED、有機ELD、無機ELD等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
【0353】
【実施例】
本発明を以下の実施例で詳しく示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0354】
実施例1
〔ドープA〜Gの調製〕
〈微粒子添加液の調製〉
《二酸化珪素微粒子分散液の調製》
アエロジルR972V(微粒子) 1質量部
エタノール 9質量部
上記アエロジルR972Vとエタノールをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、二酸化珪素微粒子分散液を得た。
【0355】
メチレンクロライド 140質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.89) 6質量部
別に、密閉容器にメチレンクロライドを投入し、加熱、撹拌しながらセルローストリアセテートを投入して、攪拌を続け、完全に溶解したら濾過し、これに10質量部の二酸化珪素微粒子分散液を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0356】
〈ドープA〜Fの調製〉
《セルロースエステル溶液1の調製》
メチレンクロライド 450質量部
エタノール 50質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.89) 100質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 5質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 1質量部
E−4 1質量部
【0357】
【化26】
【0358】
以上を密閉型の溶解釜に上記メチレンクロライドとエタノールを投入し、攪拌しながら上記セルローストリアセテート、TPP、BDP及びE−4を投入して、攪拌しながら60℃で完全に溶解させ、冷却後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244で濾過し、セルロースエステル溶液1を調製した。
【0359】
このセルロースエステル溶液1に、乾燥後のフィルム中の微粒子含有量が表1に記載の通りになるように、上記微粒子添加液を添加量を調整して、インラインミキサーのスタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)で添加しながら混合し、ドープA〜Fを作製した。
【0360】
〈ドープGの調製〉
メチレンクロライド 405質量部
エタノール 45質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.89) 100質量部
TPP 11質量部
BDP 2質量部
E−4 1.5質量部
密閉型の溶解釜に上記有機溶媒を投入し、更に攪拌しながらセルローストリアセテート、TPP、BDP及びE−4を投入し攪拌しながら60℃で完全に溶解させ、冷却後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244で濾過し、ドープGを調製した。
【0361】
【表1】
【0362】
〔多層構成セルロースエステルフィルム1〜18の作製〕
上記で調製したドープA〜Gを二つの表層用ドープラインと基層用ドープラインから、それぞれの表層用ダイまたは基層用ダイに各ドープを表2に示したような組み合わせで、且つ乾燥後の層膜厚が表2記載のようになるように導入し、1700mm幅の無限走行する無端のステンレススティールベルト上に共流延を行った(表層は基層より若干広目に流延した)。ステンレススティールベルトの温度を35℃とし、ベルト面(この面をB面とする)側に表層1、空気側の面(この面をA面とする)に表層2となるようにした。ステンレススティールベルト上で溶媒を蒸発させ、ステンレススティールベルト上からウェブを剥離した。剥離したウェブを1480mm幅に両端をスリッターで裁ち落とし、このウェブをテンター乾燥機に導入し、両端をクリップで把持して幅方向に1.05倍延伸しながら90℃で乾燥させ、次いで125℃の各乾燥ゾーンを有するロール乾燥機内に上下に配置された多数のロールを交互に通して搬送させながら乾燥を終了させ多層構成のセルロースエステルフィルムを作製した。更にこのセルロースエステルフィルムの両端を裁ち落とし1350mm幅フィルムとし、このフィルムの両端に幅10mm、高さ8μmのナーリング加工を施して、巻長は3000mの多層構成のセルロースエステルフィルム1〜18を得た。但し、セルロースエステルフィルム7、14及び18は同一ドープの積層であって、実質的には単層と同じである。
【0363】
〔単層セルロースエステルフィルム19〜21の作製〕
上記で調製したドープA、E及びGを、単層用のダイに乾燥後の膜厚が表2になるようにドープラインに導入して、上記と同様のステンレススティールベルトに溶液流延製膜し、以降は上記多層構成セルロースエステルフィルムの作製と同様に行い、単層のセルロースエステルフィルム19〜21を得た。
【0364】
〔評価〕
〈ヘイズ〉
ヘイズの測定はT−2600DA(東京電色(株)製)を用いて測定し、下記のレベル分けにより評価した。
【0365】
◎:0.1%未満
○:0.1%以上、0.5%未満
△:0.5%以上、1.0%未満
×:1.0%以上
【0366】
【表2】
【0367】
〔ハードコート層を塗設したセルロースエステルフィルム1〜21の作製〕
前述の方法で作製した多層構成及び単層のセルロースエステルフィルム1〜21に下記のハードコート層1(クリアハードコート層)またはハードコート層2(防眩層)を塗設した。
【0368】
〈ハードコート層1の塗設〉
下記のクリアハードコート層塗布組成物を上記で作製したセルロースエステルフィルム1〜3、5〜9、11〜15及び17〜21のB面側にウェット膜厚で13μmとなるように押出コーターにより塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を照射し、乾燥膜厚で6μmの中心線平均粗さ(Ra)0.01μmのハードコート層1を設けた。
【0369】
〈ハードコート層2の塗設〉
上記で作製したセルロースエステルフィルム4、10及び16のB面側に下記のハードコート層2塗布組成物をウェット膜厚で10μmとなるように押出コーターにより塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線を照射し、乾燥膜厚で2μmのハードコート層2(防眩層)(中心線平均粗さ(Ra)0.3μm)を設けた。
【0370】
以上を高速攪拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で攪拌して分散した後、下記の成分を添加しハードコート層2塗布組成物を調製した。
【0371】
〔光学フィルム1〜21の作製〕
セルロースエステルフィルム1〜21のハードコート層の上に、大気圧プラズマ放電処理方法により下記の目標膜厚100nmの金属酸化物層(酸化珪素層)を設け光学フィルム1〜21を作製した。
【0372】
〈電極の作製〉
前述の図8のプラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体で被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0373】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、ロール径1000mmφとなるようにした。その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。最終的な誘電体の空隙率(貫通性のある空隙率)はほぼ0体積%、このときの誘電体層のSiOx含有率は75mol%、また、最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10−4で、耐熱温度は260℃であった。
【0374】
一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと、誘電体表面のRmax、誘電体層のSiOx含有率、また誘電体の膜厚と比誘電率、金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差、更に電極の耐熱温度は、第1電極とほぼ同じ物性値に仕上がった。
【0375】
この角筒型電極をロール電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして25本配置した。角筒型電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cm2であった。
【0376】
〔反射防止層の形成〕
図8に示した大気圧プラズマ放電処理装置を使用し、上記で作製した2個の電極の電極間隙を1mmとし、放電空間に下記ガスを供給し、作製したセルロースエステルフィルム1〜21のハードコート層の上に、第1電極に第1の高周波電源として前述のA4(50kHz)を使用し、高周波電圧10kV/mm及び出力密度1W/cm2で、また、第2電極に第2電源として前述のB3(13.56MHz)を使用し、高周波電圧0.8kV/mm及び出力密度を10W/cm2でそれぞれ印加してプラズマ放電を行って酸化チタンを主成分とする薄膜及び酸化珪素を主成分とする薄膜を形成し、光学フィルム1〜21を作製した。このときの窒素ガスの放電開始電圧は3.7kV/mmであった。なお、下記薄膜形成ガスは窒素ガス中で気化器によって蒸気とし、加温しながら放電空間に供給した。また、ロール電極はドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送を同期して回転させた。両電極を80℃になるように調節保温して行った。
【0377】
〈酸化チタン層形成用ガス組成〉
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜形成性ガス:テトライソプロポキシチタン 0.5体積%
添加ガス:酸素 1.0体積%
〈酸化珪素層形成用ガス組成〉
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン 0.5体積%
添加ガス:酸素 1.0体積%
セルロースエステルフィルムのハードコート層1または2の上に、順に酸化チタン層、酸化珪素層、酸化チタン層、酸化珪素層を設けた。それぞれの層は順に屈折率2.1、膜厚15nm、屈折率1.46、膜厚33nm、屈折率2.1、膜厚119nm、屈折率1.46膜厚86nmとした。
【0378】
〔評価〕
〈光学フィルムの巻き状態〉
薄膜を形成した光学フィルムを1500mの長さで巻き取り機で巻き取り、巻きロールを空調のない倉庫で1ヶ月間保存して巻き姿を観察した。なお、巻き姿については、
イ)巻きロールを横から観察した際、巻かれている1層ごとフィルムの端が完全に丸くなって乱れない状態になっているか、少しでも円がゆがんでいないか、巻きがゆるんでいないか?
ロ)巻きロールの表面から見て、巻きの内側のフィルムと密着して透明になっているような所はないか?
ハ)巻きロールの表面から見て、凸凹がないか?
等を観察し、下記のレベルで評価した。
【0379】
《巻き状態評価レベル》
◎:巻き状態の変形等は全くなかった
○:巻き状態の極わずか変形や透明な部分が見られる
△:巻き状態がやや悪い
×:巻きが部分的にゆがみがあり、表面も凸凹が見られる。
【0380】
〈ΔEの測定〉
《L*a*b*値の測定》
光学フィルムのL*a*b*値は、色彩色度計CM−2022(ミノルタ製)を用い、SCI(正反射光込み)方式で測定した分光反射率から求めた。サンプルは、測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理(370nmから730nmにおける透過率が10%未満)を行い、黒色の台上にて測定した。
【0381】
《ΔEおよび平均L*a*b*値の測定》
1cm間隔で50cm×50cmの範囲で100点のL*a*b*値を測定し、1cm間隔で隣接する2点間のΔEの最大値ΔEを求めた。
【0382】
なお、ΔEを求めるために、測定した100点のL*a*b*値のa*とb*が、下記式1の範囲にあるかどうか確認した。
【0383】
b*=−1.5×a*±5
〈反射率の測定〉
各試料の分光反射率は分光光度計U−4000型(日立製作所(株)製)を用いて、5度正反射の条件にて、450nm〜650nmの平均反射率の測定を行った。測定は、観察側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止して、反射率の測定を行った。
【0384】
本発明の光学フィルム2〜5、9〜12、16〜17及び比較光学フィルム1、6〜8、13〜15、18〜21について評価した結果を表3に示す。
【0385】
【表3】
【0386】
(結果)
本発明の光学フィルムは、ΔEが小さく色ムラが少なく、巻き易く、巻きの状態で長期間保存中に変形しないことがわかった。これに対して本発明以外の光学フィルムは、反射率は本発明のものと同じであるが、ΔEが大きく色ムラが肉眼でもわかる程度にあった。
【0387】
実施例2
図8の装置を3基直列に連結して光学フィルム(反射防止フィルム)を作製した。実施例1で作製したハードコート層を有するセルロースエステルフィルム、3、5、10、12及び17を使用し、ハードコート層の上に1基目の大気圧プラズマ放電処理装置で中屈折率層を形成し、続いて、中屈折率層の上に2基目の同様の装置で高屈折率層を積層して形成し、更に続いて、高屈折率層の上に3基目の同様な装置で低屈折率層を積層して形成し、基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の光学フィルム23、24、26、27及び28を作製した。
【0388】
第1電極と第2電極は実施例1と同様なものを使用し、電極間隙を1mmとした。
【0389】
中屈折率層:錫化合物(屈折率1.7、膜厚70nm)
高屈折率層:チタン化合物(屈折率2.1、膜厚100nm)
低屈折率層:珪素化合物(屈折率1.46、膜厚90nm)
〈中屈折率層用ガス組成物〉
放電ガス:窒素 99.4体積%
薄膜形成性ガス:ジブチルジアセトキシ錫 0.1体積%
添加ガス:酸素 0.5体積%
比較例1
前記ハードコート塗設済みのセルロースエステルフィルム1、7、21を使用し、角筒型電極を印加電極とし、ロール電極をアース電極として、高周波電源をA4(50kHz、10kV/mm)を用い、更にフィルターを除いた以外は実施例2と同様に行い、光学フィルム22、25及び29を作製した。
【0390】
作製した光学フィルム22〜29を用いて下記のごとく偏光板及び液晶表示装置を作製した。
【0391】
〔偏光板の作製〕
(a)偏光膜の作製
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺の偏光膜を得た。
【0392】
(b)偏光板の作製
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と光学フィルム22〜29とを貼り合わせて偏光板1〜8を作製した。
【0393】
工程1:光学フィルム22〜29の各フィルムを2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。金属酸化物層を設けた面にはあらかじめ剥離性の保護フィルム(ポリエチレン製)を張り付けてアルカリ液から保護した。
【0394】
また、同上光学フィルムに使用したものと同じセルロースエステルフィルムを別途用意し1、3、5、7、10、12、17及び21の各フィルムを2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
【0395】
工程2:前述の偏光膜を固形分2質量%の完全鹸化ポリビニルアルコールの水性接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0396】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1でアルカリ処理した光学フィルム22〜29のアルカリ鹸化処理した面と、上記のアルカリ鹸化処理したセルロースエステルフィルムフィルム1、3、5、7、10、12、17及び21の片面を、表4に示したように番号同士があうように前記偏光膜を挟み込むように貼り積層した。
【0397】
工程4:2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/分の速度で張り合わせた。このとき気泡が入らないように注意して実施した。
【0398】
工程5:80℃の乾燥機中にて工程4で作製した試料を3分間乾燥処理して、各偏光板1〜8を作製した。
【0399】
〔液晶表示装置の作製〕
市販の液晶表示パネル(NEC製カラー液晶ディスプレイMultiSyncLCD1525J:型名LA−1529HM)の観察側の偏光板を注意深く剥離し、上記で作製した偏光板1〜8の各々を、金属酸化物層を外側にして偏光方向を合わせて張り付け液晶表示装置1〜8を各々作製した。
【0400】
〔評価〕
〈光学フィルムの巻き状態・反射率・ΔEの評価〉
実施例1の評価と同様に行った。
【0401】
〈視認性の評価〉
液晶表示パネル(液晶表示装置)を目視観察し、視認性を下記のようにランク評価した。
【0402】
◎:黒がしまって見え、鮮明であり、反射光の色ムラは認められない
○:黒がしまって見え、鮮明であるが、わずかに反射光の色ムラが認められる
△:黒のしまりがなく、鮮明さがやや低く、反射光の色ムラが認められる
×:黒のしまりがなく、鮮明さが低く、反射光の色ムラが気になる
光学フィルム22〜29、液晶表示装置1〜8について評価し結果を表4に示した。
【0403】
【表4】
【0404】
(結果)
本発明の光学フィルムは巻き状態が良好で、反射率が小さく、ΔEも小さく色ムラもなく、液晶表示板での視認性も良好であった。これに対して、本発明以外の光学フィルムは巻き状態が悪く、反射率とΔE共に大きく色ムラが確認出来た。液晶表示板での視認性も悪かった。本発明の光学フィルムの製造の際に、大気圧プラズマ放電処理方法の2周波数の高周波電圧を印加することによって、窒素ガスを使用しても薄膜の形成は良好で、コストが安く、しかも品質面でも良好な光学フィルムが得られることがわかった。
【0405】
【発明の効果】
色ムラのない、特に高濃度画像再現時の色ムラが少なく、視認性、カラー表示が良好な光学フィルムを、窒素ガスをほとんどを占める雰囲気ガスを使用した大気圧プラズマ放電処理方法により、低コストの光学フィルムを提供することが出来る。また、巻き姿が良好で欠陥のない光学フィルムを提供することが出来る。そして本発明の光学フィルムを有する偏光板を使用することにより視認性の優れた表示装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】3層構成のフィルムの断面を模式的に示したものである。
【図2】共流延ダイ及び流延して多層構成ウェブを形成したところを表した図である。
【図3】逐次流延ダイ及び流延された多層構成のウェブを表した図である。
【図4】別のタイプの共流延ダイの断面を示した図である。
【図5】本発明に係わる溶液流延製膜装置のドープ調製工程を模式的に示した図である。
【図6】本発明に係わる溶液流延製膜装置の流延工程から乾燥工程までを模式的に示した図である。
【図7】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図8】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図9】図8に示したロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図10】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
332 放電空間
335 ロール電極(第1電極)
336 角筒型電極群(第2電極)
341 第1電源
342 第2電源
343 第1フィルター
344 第2フィルター
Claims (16)
- 0.01〜1質量%の微粒子を含有し、且つ膜厚1〜15μmの少なくとも1層の表層と、可塑剤及び紫外線吸収剤を主たる添加剤として含有する基層とを有する多層構成のセルロースエステルフィルム(以下、基材ともいう)の上に、直接または他の層を介して薄膜を形成するプラズマ放電処理により薄膜を形成する光学フィルムの製造方法において、該プラズマ放電処理が、大気圧もしくはその近傍の圧力下、2個の電極で構成される対向電極間に大部分を窒素ガスとしたガスを供給し、該対向電極間に高周波電圧を印加することにより、該ガスを励起し、該励起されたガスに、該基材面を直接、または該基材上に設層した他の層の面を晒すことにより薄膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
- 前記2個の電極で構成される対向電極が第1電極と第2電極であり、該対向電極間に大部分を窒素ガスとしたガスを供給し、該対向電極間に前記高周波電圧を、第1の周波数ω1の電圧成分とし、また該第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分として印加することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記第1の周波数ω1の電圧波形および前記第2の周波数ω2の電圧波形がサイン波であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記第1の周波数ω1が、200kHz以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記第2の周波数ω2が、800kHz以上であることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記高周波電圧が、第1の高周波電圧V1および第2の高周波電圧V2を重畳したものであることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記第1の高周波電圧V1、前記第2の高周波電圧V2および放電開始電圧IVとの関係が、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たすことを特徴とする請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。 - 前記第1の高周波電圧を前記第1電極に印加し、前記第2の高周波電圧を前記第2電極に印加することを特徴とする請求項2乃至7の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記第1の高周波電圧の電圧波形および前記第2の高周波電圧の電圧波形がサイン波であることを特徴とする請求項2乃至8の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記対向電極間に供給されるガス量の60〜99.9体積%が窒素ガスであることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記薄膜が金属化合物層であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記ガスが有機金属化合物、金属水素化合物、ハロゲン化金属化合物より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記有機金属化合物が下記一般式(I)で示されるものであることを特徴とする請求項12に記載の光学フィルムの製造方法。
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。 - 請求項1乃至13の何れか1項に記載の製造方法により製造したことを特徴とする光学フィルム。
- 請求項14に記載の光学フィルムを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項15に記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。
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