本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、偏光板保護フィルムの偏光子と接着する面にプラズマを照射して、表面改質を行う偏光板保護フィルムの製造方法において、膜厚0.003〜0.2μmの重合性モノマーの薄膜を偏光板保護フィルムの基材表面に形成し、その後、前記プラズマを照射する偏光板保護フィルムの製造方法により、ムラなく接着性及び光学特性が得られ、かつ高い耐久接着性を有する偏光板保護フィルムが、作業安全性が高く、環境負荷が少ない条件下で得られることを見出し、本発明に至った。
また、この製造方法に得られた偏光板保護フィルムを用いて、高品位の偏光板及びこれを用いた表示装置を提供することができた。
以下、本発明を詳細に説明する。
《プラズマ処理》
偏光板は広く液晶表示素子として、電卓の表示部やパソコンや液晶テレビ、自動車用のディスプレイに利用されている。前述したように、これらの偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や2色性色素を吸着配向させた偏光子に、トリアセチルセルロース系フィルムを保護フィルムとして貼り合わせた構造を有している。本発明者らは、この保護フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース系フィルム(偏光板保護フィルム)の製造に際し、上記の危険なケン化処理を用いずに、接着強度に優れた偏光板保護フィルム及びこれを用いた偏光板を製造する方法について鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
即ち、本発明では、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や2色性色素を吸着配向させた偏光子に、偏光板保護フィルムを接着貼合して偏光板を製造するに際し、まず偏光板保護フィルムの基材表面に、膜厚0.003〜0.2μmの重合性モノマーの薄膜を形成し、この薄膜面にプラズマを照射して、表面改質を行って本発明の偏光板保護フィルムを得た後、この偏光板保護フィルムと偏光子を接着貼合して本発明の偏光板を製造するものである。
本発明では、このような偏光板保護フィルムの基材の表面改質するため、前記プラズマが大気圧近傍の圧力下で行われる。表面改質とは、偏光板保護フィルムの基材の表面物性を改質して偏光子と接着しやすくすることで、例えば、基材表面の親水性の向上である。
前記プラズマは、酸素ガス濃度が1体積%以下のガス雰囲気下で形成されたプラズマであることが好ましく、また、前記プラズマは、窒素ガス濃度が50体積%以上のガス雰囲気下で形成されたプラズマであることが好ましい。
酸素ガス濃度が1体積%以下、窒素ガス濃度が50体積%以上のガス雰囲気下で形成されたプラズマを用いて、このような表面物性が得られる理由は次のように考えている。すなわち、プラズマによって形成された放電ガスのラジカル種が、モノマーと反応してラジカル重合していくが、その際、酸素ガスは重合阻害となり、重合反応を停止させてしまう。本発明においては、酸素ガス濃度が1体積%を超えると顕著に本発明の効果を消失させることが分かった。すなわち、プラズマ処理において、酸素ガスが含まれると薄膜表面は親水化され難く、偏光子と接着しやすくするためには、酸素ガス濃度を1体積%以下とすることが好ましい。酸素ガスを排除したガス雰囲気下で形成されたプラズマを、偏光子と接着する偏光板保護フィルムの薄膜表面に照射して、適度に粗面化することで、水接触角が大きく低下し、偏光子と接着しやすくなる。
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法では、薄膜形成とプラズマ処理(前処理)により、偏光板保護フィルムの薄膜表面の水接触角が大きく低下してケン化処理が不要となり、ケン化処理に伴う接着性のムラや平面性劣化、作業危険性、環境負荷が改善され、偏光板の生産性が向上する。
この方法は、偏光板保護フィルムの基材としては、トリアセチルセルロースのみでなく、セルロースアセテートプロピオネートフィルムまたはセルロースアセテートブチレートフィルム等のプラスチックフィルムにおいても表面に親水化処理を行うことができる。
本発明では、偏光板保護フィルムは、偏光子に用いられるポリビニルアルコール系フィルムとの接着性を向上させるために、親水性を向上させる必要がある。膜表面の親水性の度合いは様々な尺度で表現されるが、その表面に水滴を垂らしその水滴と表面から形成される接触角で表現するのが便利である。
(接触角)
接触角は一般に、固体、液体とその飽和蒸気を接触させたとき、3層の接触点で液体に引いた折線と固体面のなす角のうち、液体を含む側の角で表される。接触角は、これを形成する固体・液体の表面張力及び固/液界面張力と密接な関係があるが、特には、固体表面の液体による濡れを表す尺度として広く用いられている。本発明においては、プラズマ処理後の偏光板保護フィルムの薄膜表面に、水による濡れによって親水性を測るために、純水を5μl滴下し、接触角測定器(エルマ工業(株)製ゴニオメーター エルマーG1)により温度23℃において、水滴と偏光板保護フィルムの薄膜との接触角を測定する。親水性が高いほど、水による濡れが大きくなるので接触角は小さくなり、本発明においては、プラズマ処理による親水性の向上の基準として、偏光板保護フィルムの偏光子と接する面に純水を用いて測定した時の接触角は40°より小さいことが好ましい。特に好ましくは10〜40°である。
また、プラズマ処理によって、偏光板保護フィルムの薄膜表面の表面粗さを増加し、偏光子との接着強度が増し、良好な偏光板を得ることができる。なお、表面粗さとは、JIS B0601:2001に準じて求めた粗さ曲線の最大断面高さを表す。
偏光板保護フィルムの薄膜をプラズマ処理することによって、表面の水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基等を増加させることができる。これは接触角を低下させて濡れ性を改善するだけでなく、接着性の改善に著しい効果が得られる。中でも水酸基あるいはアミノ基は接着性向上に大きな効果がある。フィルム表面のアミノ基を増加させるには少なくともアンモニアもしくは窒素あるいはさらに水素を含む雰囲気下でプラズマ処理することが望ましい。これらはX線光電子分光法(Xray Photoelectron Spectroscopy:XPS)による表面分析によって調べることができる。
(大気圧プラズマ処理)
本発明に係る偏光板保護フィルムの表面処理に適用できるプラズマ処理、特に大気圧プラズマ処理について説明する。
本発明に適用できるプラズマ処理としては、特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、同2000−121804号公報等に開示されている技術を挙げることができる。
最初に、本発明に有用な大気圧プラズマ処理方法及びその装置について説明する。
本発明に係るプラズマ処理法は、大気圧近傍の圧力下で、放電空間(対向電極間)にガスを供給し、該放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに偏光板保護フィルムの薄膜を晒すことにより、表面処理を行うもので、この方法を大気圧プラズマ処理方法(以降、プラズマ処理ということがある)という。プラズマの照射とは、プラズマ処理内に偏光板保護フィルムの薄膜表面を直接晒すものや、プラズマ放電により形成された励起活性種を偏光板保護フィルムの薄膜表面に吹き付ける場合も含まれる。対向電極間で形成する放電空間に印加する高周波電圧は、一つの周波数の高周波であってもよいし、二つあるいはそれ以上の周波数の高周波であってもよい。本発明でいう高周波とは、少なくとも0.5kHz以上の周波数を有するものを言う。本発明ではプラズマ処理装置の少なくとも一つの高周波電源の周波数は50kHz以上、27MHz以下であることが好ましい。
本発明において、大気圧プラズマ処理は、大気圧近傍の圧力下で行われるが、大気圧近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
本発明において、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、高周波電圧により励起する酸素ガス濃度が1体積%以下のガスであることが好ましい。好ましく用いられるガスは、窒素、水素、アルゴン、ヘリウム、一酸化炭素、アンモニアである。
本発明に係る大気圧プラズマ処理は表面処理であるが、高周波電圧により励起する励起ガスとそのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になり薄膜を形成する薄膜形成性ガスを含んでもよい。
1体積%を超える酸素ガス濃度としても、プラズマ照射時間を長くしたり、投入プラズマエネルギーを増大させることで親水性を増加することは可能であるが、照射時間が極めて長くなったり、プラズマエネルギーを増大させると基材フィルムへの熱ダメージ等が発生する場合があり、実質的に使用できない。
酸素ガスは大気中に存在するため、プラズマ生成ガス中に混入される可能性が高く、本発明において最も注意するガスである。
一つの周波数の高周波電圧で処理する場合(1周波数高周波電圧印加方式という場合がある)、または二つの周波数の高周波電圧で処理する場合(2周波数高周波電圧印加方式という場合がある)の電極は全く同じものが使用でき、装置自体は大きな違いはない。異なる点は、高周波電源が二つ、それに付随するフィルターがあること、さらに対向電極の両方の電極から高周波電圧を印加することである。
本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の場合には、対向電極の一方はアース電極、もう片方は印加電極であり、印加電極に高周波電源が接続されており、アース電極にはアースが接地されている。
図を使用して、1周波数高周波電圧印加方式及び2周波数高周波電圧印加方式のそれぞれの方式のプラズマ処理装置(大気圧プラズマ処理装置)を図で説明する。
図1は、本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式のプラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
プラズマ放電容器130の内部にある高周波電圧を印加する印加電極(角筒型電極)136とその下側にある透明樹脂フィルムFを巻き回すロール型アース電極135とで対向電極を形成している。印加電極136は何個並べてもよい。ガスGは、プラズマ放電容器10のガス供給口152から供給され、ガスGを均一化するメッシュを通り、印加電極136の間及び印加電極とプラズマ放電容器131の内壁に沿って通り、対向電極の間の放電空間13をガスGで満たす。高周波電源21により印加電極136に高周波電圧を印加し、放電空間132で励起したガスGに透明樹脂フィルムFが晒され、該透明樹脂フィルムFは表面が改質または薄膜形成される。印加する高周波電圧の周波数は50kHz〜150MHzの範囲である。本発明においては、高周波電圧の周波数は50kHz〜27MHzの範囲が好ましい。
50kHz未満では本発明の効果が得られない。また、150MHzを越える周波数は、放電形成が難しくなり複雑な設備が必要になること、また電位分布発生で不均一処理となり大面積化処理に不向きとなること、等から本発明には適さないと考えられる。
表面が改質または薄膜形成中、電極温度調節手段160から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ処理の際の基材の温度によっては、得られる改質または薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
図2は、本発明に有用な2周波数高周波電圧印加方式のプラズマ処理装置の別の一例を示す概略図である。これは図1と同様にロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との対向電極間(放電空間)132で、透明樹脂フィルムFをプラズマ処理するものである。
ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との間の放電空間(対向電極間)132に、ロール電極(第1電極)135には第1電極141から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型電極群(第2電極)136には第2電源142から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
ロール電極(第1電極)135と第1電源141との間には、第1電源141からの電流がロール電極(第1電極)135に向かって流れるように第1フィルター143が設置されており、該第1フィルターは第1電源141からの電流を通過しにくくし、第2電源142からの電流を通過し易くするように設計されている。また、角筒型電極群(第2電極)136と第2電源142との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター144が設置されており、第2フィルター144は、第2電源142からの電流を通過しにくくし、第1電源141からの電流を通過し易くするように設計されている。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
本発明において、上記のような性質のあるフィルターであれば制限なく使用できる。例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることができる。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用できる。
なお、本発明においては、ロール電極135を第2電極、また角筒型電極群136を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。さらに、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有していればよい。
ガス供給手段150のガス供給装置151で発生させたガスGは、流量を制御して給気口152よりプラズマ処理容器131内に導入する。放電空間132及びプラズマ処理容器131内をガスGで満たす。
透明樹脂フィルムFを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール164を経てニップロール165で透明樹脂フィルムに同伴されて来る空気等を遮断し、ロール電極135に接触したまま巻き回しながら角筒型電極群136との間に移送し、ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)132で放電プラズマを発生させる。透明樹脂フィルムFはロール電極135に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスが照射される。透明樹脂フィルムFは、ニップロール166、ガイドロール167を経て、図示してない巻き取り装置で巻き取るか、次工程に移送する。
処理済みの処理排ガスG′は排気口153より排出する。
プラズマ処理中、ロール電極(第1電極)135及び角筒型電極群(第2電極)136を加熱または冷却するために、電極温度調節手段160で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管161を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、165及び166はプラズマ処理容器131と外界とを仕切る仕切板である。
本発明において、印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であってもよいし、連続したサイン波であってもよく、印加電圧波形に限定されないが、ハイパワーの高周波電圧を印加、強固な薄膜を形成させるのにサイン波が好ましい。
本発明では、第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1kHz〜200kHzであり、かつ前記第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz以上であることが好ましい。
その時の電力密度は1〜50W/cm2(ここで、分母のcm2は放電が起こっている面積である。)が好ましく、より好ましくは1.2〜30W/cm2である。
本発明に係るプラズマ処理装置に有用な高周波電源としては、100kHz*(ハイデン研究所製)、200kHz、800kHz、2MHz、13.56MHz、27MHz及び150MHz(何れもパール工業製)等を挙げることができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
本発明においては、このような電圧を印加して、以下に述べる均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ処理装置に採用する必要がある。
図3は、図に示したロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。
図4は、図1、2に示されている角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
なお、角筒型電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール電極35に対向している全角筒型電極面の面積の和で表される。
図4に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
図3及び8において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタンまたはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタンまたはチタン合金が特に好ましい。
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
プラズマ処理容器10または31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細について述べる。
このようなハイパワーの大気圧プラズマによる改質または薄膜形成に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、さらに好ましくは5×10-6/℃以下、さらに好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
金属母材 誘電体
(1)純チタンまたはチタン合金 セラミックス溶射被膜
(2)純チタンまたはチタン合金 ガラスライニング
(3)ステンレススティール セラミックス溶射被膜
(4)ステンレススティール ガラスライニング
(5)セラミックス及び鉄の複合材料 セラミックス溶射被膜
(6)セラミックス及び鉄の複合材料 ガラスライニング
(7)セラミックス及びアルミの複合材料 セラミックス溶射皮膜
(8)セラミックス及びアルミの複合材料 ガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)及び(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタンである。本発明において、チタン合金またはチタン中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタンは、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタンはステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタンの上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。さらに空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜3mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、さらに、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射等がある。さらに封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
本発明に係るプラズマ処理方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、さらに好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、さらに熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、かつ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。さらにJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ処理装置に採用する必要がある。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1〜50W/cm2の電力密度を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させる。好ましくは1.2〜30W/cm2である。
ここで高周波電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質なプラズマ処理が行えるので好ましい。
本発明における放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有することが好ましい。
前記高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重畳されたω1のサイン波の波形となる。サイン波の重畳した波形に限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、さらに第3の電圧成分を有していてもよい。しかし、本発明においては、1周波数高周波電圧印加方式と同様に、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方が、より緻密で良質な膜が得られる。
本発明において、放電開始電圧とは、実際のプラズマ処理に使用される放電空間(電極の構成等)及び反応条件(ガス条件等)において放電を起こすことのできる最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種等によって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、プラズマ処理可能な放電を起こし、高品位なプラズマ処理に必要な高密度プラズマを発生することができると推定される。
本発明において、高周波電圧を、放電空間に印加する具体的な方法は、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続したプラズマ処理装置(大気圧プラズマ処理装置)を用いる。
このような二つの高周波電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要であるということが重要な点である。
本発明において、第1電源を用いて第1電極からは1〜200kHz程度の高周波電圧を、また第2電源を用いて第2電極からは800kHz〜15MHzの程度の高周波電圧を印加するのが好ましい。
さらに、本発明のプラズマ処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
V1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たす。さらに好ましくは、
V1>IV>V2
を満たすことである。
高周波及び放電開始電圧の定義、また、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
本発明において、高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができるのである。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
放電ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の希ガス、空気、水素等があり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわないが、窒素ガスを用いることが、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスを用いる場合に比較し、放電ガスの高い経済性を得ることができるため、特に好ましい。放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、70〜100体積%含有することが好ましい。
本発明のプラズマ処理装置(大気圧プラズマ処理装置)に設置する高周波電源は、前述のものと同じであるが、第1電源(高周波電源)と第2電源(高周波電源)とに周波数により下記のように分けられる。
第1電源としは、
高周波電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 100kHz*
A6 パール工業 200kHz
なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
また、第2電源(高周波電源)としては、
高周波電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
上記の対向電極の少なくとも一方の電極が膜厚制御手段を有し、前記対向電極間に、放電ガスを供給するガス供給手段を備えることが好ましい。さらに、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
また、図1、2の電極には金属母材及び誘電体が示されていないが、図3及び4と同様に電極の金属母材に同様な誘電体が被覆されていることはいうまでもない。
《薄膜》
偏光板保護フィルムの基材表面にプラズマを用いて表面処理を行う場合、基材表面にダメージを与えることがある。ダメージが許容範囲であれば改質効果となり接着性に寄与するが、許容範囲を超えると接着性はむしろ低下し、接着不良が発生する。
本発明では、基材表面へのプラズマ照射のダメージを極力抑制し、かつ基材表面に接着性に寄与する表面改質を行う。具体的には、プラズマを照射する前に、表面改質層となり得る薄膜を予め基材表面に設けることで、下層の基材表面に直接、強いプラズマが当たらないようにし、その上にプラズマを照射することで、薄膜表面を接着性に寄与する表面に改質するものである。下層の基材表面はプラズマに晒される頻度が低減するため、ダメージが抑制され、接着不良が発生しずらくなるものと考えられる。
薄膜は、重合性モノマーを含有する。
(重合性モノマー)
重合性モノマーとしては、重合性モノマーによる薄膜形成後、プラズマ処理により基材上に重合皮膜を形成する化合物が用いられる。プラズマ処理で重合皮膜を形成する化合物としては、化学構造や官能基によって重合の度合いが異なり、またプラズマの処理条件によっても差がみられるのでいろいろな特性の皮膜を作製することができる。本発明では、不飽和結合を有する化合物は、飽和化合物よりも重合皮膜の形成速度が速く、しかも膜が強い(傷がつきにくい)ので好ましく用いられる。
本発明において重合性モノマーとしては不飽和結合を有する化合物であれば、プラズマ処理の条件を選択することで使用可能であるが、これらのうち特に好ましい化合物は、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する化合物である。
本発明において重合性モノマーとして好ましく用いられる化合物は、下記一般式Iで表される化合物であり、本発明の目的においては、これらのうちでも特に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エポキシ基から選ばれる置換基を有する化合物が好ましい。
式中、R1、R2は水素、アルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。具体的な化合物の例としては、末端にアセチレン(エチニル)基を持つ化合物としてはアセチレン、プロピン、ブチン−1、ヘキシン−1、オクテン−1、分子内にエチニレン基(−C≡C−)を有する化合物の例としては、ブチン−2、ヘキシン−2、ヘキシン−3及びオクチン−4を挙げることができる。芳香族基を有する化合物の例としては、フェニルアセチレン、3−フェニルプロピン及び4−フェニルブチン−1を挙げることができる。
一般式Iで表される化合物がO、N、F、Cl、Br、Si、Sから選ばれる原子を含んでいる場合の例としては、含酸素アセチレン系化合物、例えば3−メチル−1−ブチン−3−オール及び3−フェニル−1−ブチン−3−オール;含ケイ素アセチレン系化合物、例えば1−ブチン−3−オールのO−トリメチルシリル化物(HC≡C−CH(CH3)−O−Si(CH3)3)及び3−フェニル−1−プロピン−3−オールのO−トリメチルシリル化物(HC≡C−CH(C6H5)−O−Si(CH3)3)等を挙げることができる。
不飽和結合を有する化合物としてはエチレン性不飽和化合物を含むが、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ジオキセン、1,4−ジオキシンが好ましく、特に下記IIで表される化合物が好ましい。
式中、R1〜R6は水素、アルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。nは0〜4の整数を表す。
また、置換基を有するエチレン性化合物としては、下記一般式IIIで表される化合物が好ましい。
式中、R1〜R3は水素、アルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。XはCH2またはCH−Yを表す。Yはヒドロキシル基、エポキシ基、複素環基、脂環式炭化水素基、アルキル基を表す。nは0〜4の整数を表す。
複素環式エチレン性不飽和化合物の例としては、モルホリン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート等、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート[例えば、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等]、アルキルフェノキシエチル(メタ)アクリレート[例えば、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等]、フェノキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート[例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等]、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等]、シクロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等]、アラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等]、脂環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、3−アクリロキシグリセリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)クリレート、N,N,N−トリメチルN−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド等]、エポキシ基含有(メタ)アクリレート[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート]、ハロゲン含有(メタ)アクリレート[例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等]等が含まれる。Yはヒドロキシル基、エポキシ基が特に接着性の面で特に好ましい。
下記一般式IVで表される2官能性以上の化合物も好ましく用いることができる。
式中、R1〜R3は水素、アルキル基を表し、アルキル基は置換基を有してもよい。Raは水素、ヒドロキシル基を表し、nは1から3の整数を表す。
具体的な化合物として2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等]、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等)付加物のジ(メタ)アクリレート[例えば、2,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート等]、架橋脂環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート[例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート等]、2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物[例えば、2,2−ビス(グリシジルオキシフェニル)プロパンの(メタ)アクリル酸付加物等]等が含まれる。n=3の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレート等例示できる。これらエチレン性不飽和化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらエチレン性不飽和化合物のなかでも、酸素原子を有する置換基、例えば、水酸基、カルボキシル基及びエポキシ基等を含む化合物を含む薄膜(重合皮膜)は偏光子との接着性が良好であり、またプラズマ処理のエネルギーが小さくでも重合被膜が形成できる点で好ましく、そのため処理時間を短くできるので生産性を上げることが可能となる。また水酸基、カルボキシル基及びエポキシ基等の親水性基を含む不飽和化合物で形成した重合被膜は偏光子と接着した時に気泡が入り難く、均一な接着面が得られたことは予想外であった。推測であるが表面エネルギーと膜の柔軟性によるものと考えている。特に好ましい化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに、一分子中に2個以上の不飽和結合を有する多官能は架橋構造を形成するため、さらに好ましい。具体例としては、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)等が挙げられる。
また、これらの重合性モノマーを複数供給して共重合体を形成させることも架橋構造を形成しやすくなり好ましい。さらに、重合反応を促進させるため、重合開始剤を重合性モノマーと同時に供給してもよい。
(薄膜の形成)
重合性モノマーを含有する薄膜の形成方法は特に限定されないが、コーターダイスやロールコーター、ワイヤーバー等の一般的な塗工装置を用いる方法、スプレーやミスト発生器等の液滴を吹き付ける方法、一旦原料を気化させて原料を含むガスを基材表面に接触させて基材表面で結露させることで層を形成する方法でもよい。本発明では0.1μm以下の薄膜を均一に形成することが必要なため、ミスト発生器または気化させて結露させる方法がより好ましく利用できる。
基材表面に形成された薄膜が重合性モノマーを含有する場合は、その後のプラズマ照射により重合(プラズマ重合)し、硬化した膜を形成する。
基材表面に設ける薄膜の膜厚は、0.003〜0.2μmであることが必要である。膜厚が0.003μm未満では、接着のムラが発生し、接着性が不十分である。膜厚が0.2μmを超えると、基材表面にプラズマのエネルギーが十分与えられず、重合反応が膜内部まで十分行き届かず、重合が不十分となり、膜はがれや耐久性能が劣化する等の問題が生じる。プラズマ照射時間を長くしてプラズマのエネルギーを十分与えようとすると、薄膜の原料消費量が多くコストアップとなり生産性を悪化させる、また光学特性に影響が出てくるため、好ましくない。
薄膜は多層にしてもよく、プラズマ処理した基材表面にプラズマ処理によってさらに薄膜を形成してもよい。
《偏光板保護フィルムの基材》
本発明で用いられる偏光板保護フィルムの基材は特に限定はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート、等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。あるいはこれらの樹脂を積層したフィルムであっても混合したフィルムであってもよい。
特に、セルロースアセテートフィルム、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルムを好ましく用いることができる。これらのセルロースエステルは単独でも混合して使用することもできる。
さらに、ベース強度の観点から、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%が好ましく用いられ、さらに好ましいのは、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートである。
セルローストリアセテートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることが好ましい。ベルトやドラムからの剥離性がもし問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性がよい綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用すれば生産性が高く好ましい。
木材パルプから合成されたセルローストリアセテートを混合し用いた場合、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、85質量%で用いることがさらに好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
偏光板保護フィルムではフィルム表面の滑り性を改善するため、微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物または有機化合物が挙げられる。
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステルフィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは、16〜5nmであり、特に好ましくは、12〜5nmである。
微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子を観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、さらに好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
本発明において、上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
(調製方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
(調製方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
(調製方法C)
溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点に優れている。調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
(分散方法)
二酸化珪素微粒子を溶剤等と混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミル等が挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型等があるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態等特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8MPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは19.6MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
また、本発明に係る微粒子を含む層を流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性の点で好ましい。
本発明に係る偏光板保護フィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材等に使用されるが、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
以下に一般式〔1〕で示される紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
また本発明に係る紫外線吸収剤のひとつであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n-1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基等を表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子等、ヒドロキシ基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)等が挙げられる。
以下に一般式〔2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−8:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
また、特開平6−148430号記載の紫外線吸収剤も好ましく用いることができる。
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れており、特に不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。これら紫外線吸収剤添加液の添加方法としては、下記に記載の方法が挙げられる。
(添加方法A)
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してから直接ドープ組成中に添加する。
(添加方法B)
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶剤に紫外線吸収剤と少量のセルロースエステルを溶解してからインラインミキサーでドープに添加する。
添加方法Bの方が、紫外線吸収剤の添加量を容易に調整できるため、生産性に優れていて好ましい。
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件等により一様ではないが、通常はセルロースエステルフィルム1m2当り、0.2〜5.0gが好ましく、0.4〜1.5gがさらに好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
本発明に係る偏光板保護フィルムの膜厚について説明する。
膜厚が薄すぎると、偏光板の保護フィルムとしての強度が不足し、偏光板の寸法安定性や湿熱での保存安定性が悪化する。膜厚が厚いと偏光板が厚くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が困難になる。これらを両立するセルロースエステル積層フィルムの膜厚は20〜200μmで、好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは40〜80μmである。
セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
セルロースエステルフィルムを製造するには先ずセルロースエステルを溶媒に溶解させたいわゆるドープ液を調製し、これを無端のベルト上に流延し、剥離・乾燥する方法を用いる。
セルロースエステルが溶解しているドープ液とは、セルロースエステルが溶剤(溶媒)に溶解している状態であり、前記ドープ液には、可塑剤等の添加剤を加えてもよく、もちろん、必要によりこの他の添加剤を加えることもできる。ドープ液中のセルロースエステルの濃度としては、10〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは、18〜25質量%である。
本発明で用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、さらに好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が70〜95質量%であり、貧溶剤が30〜5質量%である。
本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤に該当する。
本発明に用いられる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
上記記載のドープ液を調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法が好ましく用いられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
また、セルローストリアセテート等のセルロースエステルをメチレンクロライド等のハロゲン系溶媒を使用せずに、酢酸メチル及び/またはアセトンあるいは酢酸メチルとエタノール等の溶媒とともに−20℃以下に冷却後、加温する冷却溶解法を用いて調製したものでも好ましく用いられる。
本発明ではドープ液を調製する際に、プラズマ処理されたセルロースエステルフィルムの断裁片等を原料のセルロースエステルとして、あるいはその一部として用いることができる。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、70〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器等で冷却し、これを製膜に供する。このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行う方が、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、0〜35℃の支持体上に流延するほうが、ドープをゲル化させ剥離限界時間を短縮できるため好ましく、5〜20℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。剥離限界時間とは透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体上にある時間をいう。剥離限界時間は短い方が生産性に優れていて好ましい。
流延(キャスト)される側の支持体の表面温度は、10〜55℃、溶液の温度は、25〜60℃、さらに溶液の温度を支持体の温度より高くするのが好ましく、5℃以上に設定するのがさらに好ましい。溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
支持体の温度のさらに好ましい範囲は、20〜40℃、溶液温度のさらに好ましい範囲は、35〜45℃である。
また、剥離部の支持体温度を10〜40℃、さらに好ましくは、15〜30℃にすることでフィルムと支持体との密着力を低減できるので、剥離しやすくなり好ましい。
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を得るためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜100%が好ましく、さらに好ましくは、20〜40%または60〜80%であり、特に好ましくは、20〜30%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量[%]=(加熱処理前質量−加熱処理後の質量)/(加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の、加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常200〜250N/mで剥離が行われるが、セルロースエステルの単位質量あたりの紫外線吸収剤の含有量が多く、かつ、従来よりも薄膜化されているセルロースエステルフィルムの場合は、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜170N/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜140N/mで剥離することである。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましい、さらに好ましくは、0.5質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が好ましく用いられる。液晶表示部材用としては、ピンテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましい。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
また、必要に応じて、複数のドープ液を共流延することにより作製した、積層構造を有するセルロースエステルフィルムを用いることもできる。
共流延とは、異なったダイを通じて2層または3層構成にする逐次多層流延方法、2つまたは3つのスリットを有するダイ内で合流させ2層または3層構成にする同時多層流延方法、逐次流延方式等があるが生産性の観点からは同時流延方式が好ましい。共流延により積層フィルムを製造する方法は例えば特開平10−235664号、同11−216732号、特願2000−23905号に記載されている。
セルロースエステルフィルムには可塑剤を含有されるのが好ましい。用いることのできる可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。リン酸エステル系の可塑剤と凝固点20℃以下の可塑剤を併用することが寸法安定性、耐水性に優れるため特に好ましい。凝固点20℃以下の可塑剤としては、凝固点が20℃以下であれば特に限定されず、例えば、上記可塑剤の中から選ぶことができる。具体的には、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができる。これらの可塑剤を単独あるいは併用するのが好ましい。
凝固点とは、共立出版株式会社出版の化学大事典に記載されている真の凝固点を凝固点としている。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して30質量%程度まで添加することができるが、1〜15質量%が好ましい。液晶表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15質量%がさらに好ましく、特に好ましくは、7〜12質量%である。
またセルロースエステルに対して凝固点が20℃以下の可塑剤の含有量は1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは、3〜7質量%である。
全可塑剤のうち凝固点が20℃以下の可塑剤の占める割合は多い方が、セルロースエステルフィルムの柔軟性が良化し加工性に優れるため好ましい。また、可塑剤の全てが凝固点20℃以下の可塑剤であることが最も好ましい。
偏光板保護フィルムの薄膜の偏光子と貼合する面にプラズマを照射し、プラズマを照射した面にプロテクトフィルムを貼合した後、ロール状に巻き取ることが好ましい。これはプラズマ処理により、偏光板保護フィルムの薄膜の表面が親水化され、ロール状に巻き取るとくっつきの恐れがあること、及びプラズマ処理の効果を維持したいからである。
プロテクトフィルムは、薄膜の偏光子と貼合する面をカバーする目的で用いられる。プロテクトフィルムとして用いられるフィルムの材質は、特に制限されるものではなく、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルムが好ましく、特にポリエステル系フィルムが好ましい。
ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
また、プラズマ処理の効果は時間の経過と共に弱くなることがあるため、偏光板保護フィルムの薄膜の偏光子と貼合する面をプラズマ処理した後、半年以内に偏光子と貼合することが好ましく、1ヶ月以内に貼合することがより好ましく、最も好ましくは貼合の数時間前〜直前にプラズマ処理することが望ましい。
《偏光板保護フィルムの製造装置》
上記偏光板保護フィルムの製造には、各処理が可能な機能を有する偏光板保護フィルムの製造装置を用いる。
具体的には、
1.膜厚0.003〜0.2μmの重合性モノマーの薄膜を偏光板保護フィルムの偏光子と接着する基材表面に形成する薄膜形成装置と、薄膜形成後、前記基材表面にプラズマを照射するプラズマ処理装置とを有する偏光板保護フィルムの製造装置において、前記プラズマ処理装置は、プラズマを照射して表面改質を行うように前記プラズマの照射ができる偏光板保護フィルムの製造装置。
2.前記プラズマ処理装置は、酸素ガス濃度が1体積%以下のガス雰囲気下で形成されたプラズマを照射できる偏光板保護フィルムの製造装置。
3.前記プラズマ処理装置は、窒素ガス濃度が50体積%以上のガス雰囲気下で形成されたプラズマを照射できる偏光板保護フィルムの製造装置。
4.前記プラズマを照射した面にプロテクトフィルムを貼合した後、ロール状に巻き取るための巻き取り装置を有する偏光板保護フィルムの製造装置。
《偏光板の作製》
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、偏光板保護フィルムの偏光子と接着する面にプラズマを照射して、表面改質を行う偏光板保護フィルムの製造方法において、膜厚0.003〜0.2μmの重合性モノマーの薄膜を偏光板保護フィルムの基材表面に形成し、その後、前記プラズマを照射する。偏光子と接着する偏光板保護フィルム上に設けた薄膜の上に、酸素ガス濃度が1体積%以下、窒素ガス濃度が50体積%以上のガス雰囲気下で形成されたプラズマを照射する。偏光板の製造では、偏光板保護フィルムの薄膜表面の親水性が大きくなるため、親水化のためのケン化処理工程なしで、プラズマ処理した偏光板保護フィルムの薄膜表面と、第2の薄膜または粘着層を介して偏光子を貼合し偏光板を作製する。
(第2の薄膜または粘着層)
第2の薄膜または粘着層に用いる接着剤や粘着剤は、従来公知の接着剤や粘着剤等が使用できできる。接着剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等ビニル系ラテックス等を用いることができる。粘着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール系ポリマー、合成ゴムのポリマー性材料のように、応力緩和性に優れる透明な粘着剤が挙げられる。前記接着剤や粘着剤は、偏光子表面に塗布して第2の薄膜または粘着層を設け、偏光板保護フィルムの薄膜に貼り合わせることが好ましい。第2の薄膜または粘着層の厚みは、特に制限されず適宜決定できるが、一般に接着力や薄型化等の点より、例えば1〜500μm、好ましくは2〜200μm、特に好ましくは5〜100μmである。なお、第2の薄膜または粘着層には、必要に応じて、石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、アルキド系樹脂等の粘着付与剤、フタル酸エステル、リン酸エステル、塩化パラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン等の軟化剤、またはその他の各種充填剤や老化防止剤等、従来公知の添加剤を適宜配合してもよい。
また、第2の薄膜または粘着層は、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、さらに高品質で耐久性に優れる画像表示装置を形成する点等から、吸湿率が低く、耐熱性に優れる第2の薄膜または粘着層であることが好ましい。また、第2の薄膜または粘着層に微粒子を含有させて、光拡散性を示す第2の薄膜または粘着層としてもよい。
偏光板の作製は、例えば、下記工程1〜4に従って、偏光子と偏光板保護フィルムの薄膜とを貼り合わせて偏光板を作製することができる。
工程1:前述の偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
工程2:工程1で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それをプラズマ処理した偏光板保護フィルムで挟み込んで、積層配置する。
工程3:2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で貼合する。このとき気泡が入らないように注意する。
工程4:80℃の乾燥機中にて工程3で作製した試料を2分間乾燥処理し、本発明の偏光板を作製する。
《表示装置》
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することができる。本発明の偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特にVA型液晶表示装置に好ましく用いられる。
画面が30型以上の大画面のVA型液晶表示装置では、色むらや波打ちむらが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。