JP4572499B2 - 光学フィルム及びその製造方法、それを用いた偏光板、表示装置 - Google Patents

光学フィルム及びその製造方法、それを用いた偏光板、表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種表示装置に用いられる光学フィルムに関し、特に反射防止フィルムあるいは導電性フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報産業の著しい発達に伴って、各所で表示装置が活用されるようになっている。特に液晶表示装置の発達はめざましく、様々な機器に搭載されるようになった。一方で小型軽量化への要望が益々強まっており、偏光板等の部材についても薄膜化の要求が強まっている。偏光板は通常2枚の偏光板保護フィルムで偏光子をサンドイッチして作られており、偏光板保護フィルムとしてはトリアセチルセルロースなどのセルロースエステルフィルムが好ましく用いられている。
【0003】
しかしながら、偏光板を薄くするために、保護フィルムであるトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を薄くすると透湿性が悪化したり、寸法安定性が低下するといった問題があり、特に40μm未満の薄膜フィルムでは著しい物性低下が起こるために、偏光板に十分な耐久性を付与することが困難であった。
【0004】
一方で偏光板保護フィルムとしてポリエステルを用いることができることは知られている。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが知られているが、ポリエチレンテレフタレートフィルムは透湿性が低く、TACフィルムと比較して寸法安定性に優れるが、鹸化処理ができないため偏光子との接着性に劣るほか、偏光子との貼合の際に接着剤の乾燥性が著しく悪いという問題があった。また、従来、ポリエステルフィルム上に金属酸窒化物層を設けたフィルムでは、クラック、カールが発生するという問題とともに金属酸窒化物層の導電性の低下という問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種表示装置に用いられる光学フィルムとしてのポリエステルフィルム上に金属酸化物層を設けた導電性フィルム、反射防止フィルムにおいて、クラックが著しく低減され、カールも改善され、導電性の低下も少ないフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記構成によって達成される。
【0007】
1)少なくとも芳香族ジカルボン酸、グリコールの反応により製造され、下記平衡含水率が1〜5%であ、スルホン酸またはその塩から選ばれる基を有し、硫黄元素含有量が0.15〜2質量%であるポリエステル樹脂の層を有する基材フィルム上に直接又は他の層を介して大気圧プラズマCVDによって金属酸化物層を設けた膜厚5〜40μm、寸法安定性が±0.5%以内であることを特徴とする光学フィルム。
平衡含水率:ポリエステルフィルム(或いは他のフィルム上に積層されている場合には、基体より引き剥がした該ポリエステル樹脂層フィルム)を23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、サンプルを微量水分計(例えば、三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法で定量して求めた値。
【0011】
)ポリエステル樹脂が全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いは全グリコールに対し1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有するグリコールを用いて製造されることを特徴とする前記1)に記載の光学フィルム。
【0012】
)ポリエステル樹脂が全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸を用いて製造されることを特徴とする前記1)または2)に記載の光学フィルム。
【0013】
)ポリエステル樹脂がポリアルキレングリコールを反応生成物のポリエステル全量に対して0.1〜10質量%用い製造されることを特徴とする前記1)〜)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0014】
)ポリエステル樹脂の主成分がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする前記1)〜)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0015】
)溶融押し出しにより連続的に製膜された長尺状フィルム上に直接又は他の層を介して金属酸化物層を有することを特徴とする前記)または)に記載の光学フィルム。
【0018】
)前記1)〜6)のいずれか1項に記載の光学フィルムを用いることを特徴とする偏光板。
【0019】
)前記)に記載の偏光板を用いることを特徴とする表示装置。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
本発明の光学フィルムはポリエステルフィルムを用いて、その表面に直接又は他の層を介して金属酸化物層を設けたものである。金属酸化物層とは金属酸化物を有する層である。
【0021】
従来のポリエステルフィルムで見られたような前記の問題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは平衡含水率1〜5%のポリエステル樹脂層を有する光学フィルムを用いることによって前記の問題は解決できることを見いだした。
【0022】
本発明においては、平衡含水率1〜5%のポリエステル樹脂層は単独でポリエステルフィルムを形成してもよく、平衡含水率1%未満のポリエステル樹脂層と積層されていてもよく、また他の材質のフィルム上に積層されていてもよく、支持体に用いられる樹脂は特に限定されない。
【0023】
ここで平衡含水率とは、試料の中に平衡状態で含まれる水分量を試料質量に対する百分率で表したものである。具体的な求め方としては、ポリエステルフィルムを(或いは他のフィルム上に積層されている場合には、基体より引き剥がした該ポリエステル樹脂層フィルム)23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、サンプルを微量水分計(例えば、三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法で定量する方法である。
【0024】
ポリエステルは芳香族ジカルボン酸成分をグリコール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、また初めに芳香族ジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとグリコール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のグリコール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いて製造できる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤等を用いて製造される。
【0025】
本発明においては、始めにジカルボン酸のジアルキルエステルを用いた場合でも、また一旦ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル化反応させるエステル化法を用いた場合でも、原料およびその共重合成分に言及する場合、芳香族ジカルボン酸、グリコール換算の量をいうこととする。
【0026】
上記プロセスにおいて、例えば、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いはポリアルキレングリコール等の共重合成分をエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことにより、これらの共重合成分を含んだポリエステル樹脂が得られる。
【0027】
従って、本発明に用いられる平衡含水率1〜5%のポリエステル樹脂層を形成するポリエステル樹脂としては、具体的には少なくとも芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により得られたポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂構造中にスルホン酸またはその塩から選ばれる基を有しているポリエステル樹脂が好ましい。
【0028】
これらのスルホン酸基は、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸またはグリコールを所定量テレフタル酸等のジカルボン酸或いはエチレングリコール等のグリコールの共重合成分として混合し、ポリエステルを製造することにより、ポリエステル樹脂中に導入することが出来る。
【0029】
こうして得られるポリエステル樹脂中に含まれる硫黄元素含有量は0.15〜2質量%であることが好ましい。
【0030】
これら硫黄元素含量が2%を越える場合には、スルホン酸基の含有量が多すぎ、機械的強度が劣ったものとなる場合があり、また0.15%未満では、スルホン酸基数が充分な割合で存在せず、本発明の効果を与えない。
【0031】
ポリエステル樹脂中の硫黄元素は全てがスルホン酸基またはその塩から選ばれる基由来である必要はないが、50%以上、好ましくは80%以上がスルホン酸またはその塩としてポリエステル中に含まれるスルホン酸基に由来するものであることが好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂中の硫黄元素の定量方法は特に限定されないが、例えばICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)により定量出来る。具体的には、試料に炭酸ナトリウムを添加して、1000℃で加熱溶融して得られた分解物に水を加えて水溶液とし、これをセイコー電子工業(株)製SPS−4000を用いて、ICP−AES分析にて求めることが出来る。
【0033】
上記スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸とグリコールの反応により製造される際に用いられる全芳香族ジカルボン酸のうち、1〜10モル%の芳香族ジカルボン酸がスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いは全グリコールのうち、1〜10モル%のグリコールがスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有するグリコールを共重合成分として用いることにより得ることが好ましい。特に、スルホン酸をポリエステルに導入するには、スルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸を、全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%用いて製造することが原料の入手のしやすさ等から見てより好ましい。
【0034】
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂は、更にポリアルキレングリコールを、生成したポリエステルの全量に対して0.1〜10質量%共重合成分として用いて製造されることが好ましい。
【0035】
これらの成分により、金属酸化物を形成した光学フィルムにおいて、クラックが発生しにくく、この光学フィルムを偏光板保護フィルム等に用いる際の、偏光子との接着性や貼合の際の接着剤の乾燥性等偏光板保護フィルムとしての特性も大きく改善する。
【0036】
本発明に用いるポリエステル樹脂においては、特にポリエステルの主成分がテレフタル酸およびエチレングリコールを用いて得られるポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0037】
本発明においては、後述するが、溶融流延されたフィルムを実質的に一軸で延伸したフィルムが特に好ましく用いられるが、二軸延伸されたものでもよい。このようにして得られたフィルムは特に膜厚に限定がなく、5〜500μmのものが用いられるが、特に膜厚5〜40μmであっても、その上に設けた金属酸化物層にクラックが入りにくく、カールも少ないため好ましく、更に適切な透湿度を有するため、偏光板製造時の接着剤の乾燥性に優れ、偏光子との接着性も良好であった。また本発明のフィルムは膜厚5〜40μmであっても偏光板製造時に皺が入りにくく、偏光子との貼合が容易であった。
【0038】
本発明に用いられるポリエステルの製造に用いられる芳香族ジカルボン酸としては前記テレフタル酸のほか、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などがあり、またこれらの低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を使用することができる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシリレングリコールなどがある。中でもテレフタル酸とエチレングリコールの反応により得られたポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。
【0039】
主成分がポリエチレンテレフタレートであるとは、ポリエチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上の共重合体、あるいはブレンドされている場合は、ポリエチレンテレフタレートを80質量%以上含有していることをいう。
【0040】
本発明において用いられる、ポリエステル中にスルホン酸基を含有させるために用いられるスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、4−ナトリウムスルホ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホフタル酸、4−ナトリウムスルホ−1,5−ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属(例えば、カリウム、リチウムなど)で置換した化合物が用いられる。
【0041】
また、グリコール中にスルホン酸およびその塩から選ばれる基を導入したものを用いてもよいが、ポリエステル中にスルホン酸基を含有させるために好ましい化合物として好ましいのは、前記スルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸である。
【0042】
これらのスルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸成分が製造時に用いられる全芳香族ジカルボン酸の10モル%を越えると延伸性が劣ったり、機械的強度が劣ったものとなる場合があり、また1モル%未満では、所定の平衡含水率が得られない場合がある。
【0043】
更に、本発明に用いられるポリエステルは、ポリアルキレングリコールを共重合成分として含有することが好ましく、前述したように、ポリエステルが反応生成物のポリエステル全量に対してポリアルキレングリコールを0.1〜10質量%用い製造されることが好ましい。また、更に好ましくは0.2〜8質量%である。ポリアルキレングリコールが0.1質量%未満では所定の平衡含水率が得られない場合があり、10質量%を越えるとヤング率が低下し、機械的強度に劣ったものとなる場合がある。
【0044】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが用いられるが、このうちポリエチレングリコールが好ましく、分子量(数平均分子量)としては特に限定されないが300〜20000が好ましく、更に好ましくは600〜10000、特に1000〜5000のものが好ましく用いられる。これらの分子量はGPCを用いることにより測定できる。
【0045】
本発明の光学フィルムに用いられるポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に他の成分が共重合されていてもよいし、他のポリマーがブレンドされていてもよい。
【0046】
上記以外の他の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体として、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)を用いることができる。また製造の際、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸及びヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体)、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、セバシン酸及びダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステルなどのエステル形成可能な誘導体)を全ジカルボン酸の10モル%以下の量で使用してもよい。
【0047】
本発明で使用することができるグリコールとしてはエチレングリコールおよび前記のグリコールの他、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、p,p′−ジヒドロキシフェニルスルフォン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレン(例、エチレン、プロピレン)グリコール、及びp−フェニレンビス(ジメチロールシクロヘキサン)などを挙げることができ、これらは用いられるグリコールの10モル%以下の量で使用してもよい。
【0048】
本発明に用いられるポリエステルは、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。
【0049】
また、本発明に用いられるポリエステルには、フィルムの耐熱性を向上する目的で、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環又はシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。
【0050】
本発明に用いられるポリエステルの固有粘度(Intrinsic Viscosity)は0.35〜0.65の範囲のものが好ましく用いられる。この範囲以下では得られるフィルムの脆弱性が不充分となる場合があり、この範囲を超えると、溶融押し出し時に溶融粘度が大きすぎて平面性が劣化する場合がある。
【0051】
固有粘度の算出はウベローデ型粘度計を用いて行った。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、これにサンプルを溶かして濃度0.2、0.6、1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製する。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零(C→0)に補外し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0052】
また、本発明に用いられるポリエステルはガラス転移温度(Tg)が55℃以上であることが好ましく、更に60℃以上であることが好ましい。55℃未満では得られたフィルムの高温高湿下での寸法安定性に劣る場合がある。Tgは示差走査熱量計で測定するところのベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値として求められたものである。
【0053】
本発明に用いられるポリエステルには、酸化防止剤が含有されていてもよい。
特に、ポリエステルがポリオキシアルキレン基を有する化合物を含む場合に効果が顕著となる。含有させる酸化防止剤はその種類につき特に限定はなく、各種の酸化防止剤を使用することができるが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤を挙げることができる。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の含有量は、通常、ポリエステルに対して0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0054】
本発明で用いられるポリエステルフィルムには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性付与手段としては、特に限定はないが、ポリエステルに不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリエステルの合成時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、或いは界面活性剤等をフィルム表面に塗布する方法等が一般的である。
【0055】
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0056】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0057】
本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。又、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤、特願2000−214134号の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0058】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
【0059】
【化1】
Figure 0004572499
【0060】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
【0061】
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していてよい。
以下に一般式〔1〕で示される紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0062】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN 171、Ciba製)UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN 109、Ciba製)
また本発明において、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
【0063】
【化2】
Figure 0004572499
【0064】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基又は−CO(NH)n-1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0065】
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては、例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては、例えば、炭素数16までのアルケニル基で、例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。又、アルキル基、アルケニル基、フェニル基へ置換してもよい置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など、ヒドロキシル基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基又はハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
【0066】
以下に一般式〔2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
【0067】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
市販されているものとしては、TINUVIN P、TINUVIN 324、TINUVIN 320、TINUVIN 326、TINUVIN 327、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 770、TINUVIN 780、TINUVIN 144、TINUVIN 120、UVITEX OB(日本チバガイギー(株)製)等から適宜選択して使用することもできる。
【0068】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。また、本発明に用いられるポリエステルフィルムには蛍光増白剤を含有することができる。
【0069】
蛍光増白剤は通常市販されているもの、あるいは新規部室の中から耐光性に基づいて任意に選択することができる。例えば、特開2002−53824の段落番号[0029]〜[0034]に記載のものが挙げられる。一般に蛍光増白剤は約320〜約410nmの波長の光を吸収して、約410〜約500nmの波長の光を放射する性質を有する化合物よりなる。これらの蛍光増白剤で染められた織物は本来の黄色い反射光のほかに、新たに蛍光増白剤により発光される約410〜約500nmの波長の青色光が付加されるため反射光は白色になり、且つ、蛍光効果による分だけ可視光のエネルギーが増加するため、結果として増白されたことになる。
【0070】
蛍光増白剤としては、更に下記一般式〔3〕のものが挙げられる。
【0071】
【化3】
Figure 0004572499
【0072】
式中、R1およびR4は水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、R2およびR3はアルキル基を表す。[A]は置換アリール基または置換エテニル基を表す。一般式〔3〕で表される化合物は、好ましくは下記一般式〔4〕で表される化合物である。
【0073】
【化4】
Figure 0004572499
【0074】
式中、R5およびR7は前記R2と同義の基であり、R6およびR8は前記R3と同義である。nは1または2の整数を表す。これらの化合物は特開平11−29556号記載の方法で合成することができる。一般式〔4〕で表される化合物の具体例は、特開2002−53824の段落番号[0050]〜[0060]に記載されている。
【0075】
これらの蛍光増白剤はクリアハードコート層、支持体、バインダー層のいずれに添加してもよく、2種以上併用することもできる。添加量は層の厚さ、蛍光増白剤の性質、紫外線吸収剤の有無、性質、添加量によって変化するので一義的には決められない。一般的には暑さ50μmの層であれば0.1〜30質量%、好ましくは4〜15質量%で十分である。
【0076】
本発明に用いるポリエステルの合成方法は、特に限定があるわけではなく、前述したように従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒或いは重合反応触媒を用い、或いは耐熱安定剤を添加することができる。この際、共重合成分である金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸類やポリエチレングリコールをエステル交換反応後に添加し、重縮合を行うことが好ましい。また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
【0077】
次に、本発明の光学フィルムに用いられるポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0078】
本発明で用いられるポリエステルフィルムは延伸倍率1.0〜10.0に二軸延伸されたものが用いられ、特に実質的に一軸延伸されたものが好ましく用いられる。実質的に一軸延伸したポリエステルフィルムとは、二軸延伸製膜において、主にどちらか一方向のみに延伸を行うことで得られる。即ち、本発明において、ポリエステルフィルムは一方向の延伸倍率が1.00〜2.5倍、それと直交する方向の延伸倍率が2.5〜10倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであることが好ましく、より好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍、横方向の延伸倍率が2.5〜7倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであり、更に好ましくは縦方向の延伸倍率が1.1〜1.8倍、横方向の延伸倍率が3.0〜6.0倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムである。一方向の延伸倍率を大きくすることが好ましく、延伸倍率の比(縦横いずれかの高い方の延伸倍率/縦横いずれかの低い方の延伸倍率)は2以上であることが好ましく、更に4以上であることが好ましく、6以上であることが好ましい。又、未延伸のものに対して延伸後の面積比て4倍以上に延伸されていることが好ましく、更に好ましくは5〜7倍に延伸されていることが好ましい。
【0079】
上記ポリエステルフィルムを得るには、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されないが、以下の様な方法で行うことができる。この場合、縦方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向)を、横方向とはフィルムの製膜方向と直角方向(幅手方向)のことをいう。
【0080】
先ず、原料のポリエステルをペレット状に成型し、熱風乾燥又は真空乾燥した後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。次いで、得られた未延伸シートを複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸する方法である。
【0081】
次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm(融点)−20℃の温度範囲内で、横延伸し次いで熱固定する。
【0082】
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると巾方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると巾方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
【0083】
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tm−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0084】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0085】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整して決定すればよい。
【0086】
また、上記フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後で帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
【0087】
カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
【0088】
本発明において、上記のようにして製膜されたポリエステルフィルムの面方向においての屈折率は、横方向の屈折率(nTD)と縦方向の屈折率(nMD)との差の絶対値|nTD−nMD|が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.04以下、更に好ましくは0.025以下である。
【0089】
本発明で用いられるポリエステルフィルムの厚みは、通常3〜500μm、好ましくは5〜120μm、更に好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜35μmである。巻き取り前に幅手両端部に膜厚の1〜25%程度の高さのナーリングで、幅0.1〜3cm程度の加工を施すことが好ましい。
【0090】
本発明ので用いられるポリエステルフィルムの面内方向におけるリターデーションR0(nm)は、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが更に好ましい。
【0091】
また、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とフィルムの幅手方向(フィルムの長尺方向)とのなす角度が0°±15°もしくは90°±15°であることが好ましく、更に0°±10°もしくは90°±10°であることが好ましく、より好ましくは0°±5°もしくは90°±5°であることであり、0°±1°もしくは90°±1°であることが更に好ましい。
【0092】
本発明で用いられるポリエステルフィルムは、上記ポリエステルフィルムからなる単独(単層)のフィルムでもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ポリエステルからなる層を少なくとも1層含む、複数の樹脂層からなる多層フィルムとしてもよい。上記ポリエステル層をA、その他の樹脂層をB及びCとすると、例えばA/B、A/B/A、B/A/B、B/A/Cのように構成できる。もちろん4層以上の構成にすることもできる。この様に多層構成にすることで、例えば、強度や水バリアー性の高いフィルムをコア層や外層に積層することにより、複数の機能を同時に付与することができる。
【0093】
上記その他の樹脂層としては、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂(セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート)、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂等でもよく、あるいは前述のポリエステルなどが好ましく用いられる。例えば、スルホン酸基含有ポリエステル層/スルホン酸基を含有しないポリエステル層(例えば、PET)/スルホン酸基含有ポリエステル層といった多層構成とすることもできる。
【0094】
また、滑り性を付与するためマット剤等の微粒子を添加する場合は、最外層のみに添加すれば効果が得られるので、透明性等を劣化させずに機能付与することが可能となる。
【0095】
添加できる微粒子としては特に限定はされないが、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0096】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が好ましく用いられる。二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0097】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0098】
微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0099】
多層フィルムを製造する方法としては、共押し出しによる方法、エクストルージョンラミネートによる方法、ドライラミネーションによる方法などを好ましく用いることができる。
【0100】
本発明において、光学フィルムの表面が導電性を有することが好ましく、表面比抵抗(23℃、25%RH)が1×1012Ω/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは、1×1011Ω/cm2以下、更に好ましくは1×1010Ω/cm2以下である。
【0101】
本発明においては、吸湿性物質又は導電性物質を含有させることにより光学フィルムに導電性を付与することができる。これら導電性を付与させる物質としては、例えば、界面活性剤、導電性ポリマー、無機金属酸化物を挙げることができる。
【0102】
用いることができる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン酸、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等の様なカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むものが好ましい。
【0103】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、脂肪族或いは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環第4アンモニウム塩類、及び脂肪族又は複素環を含むホスホニウム又はスルホニウム塩類等が好ましい。
【0104】
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類等が好ましい。
【0105】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、サポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類)、グリシドール誘導体(例えば、アルケニルコハク酸ポリセリド、アルキルフェノールポリグリセリド)、多価アルコール脂肪酸エステル類等のアルキルエステル類等が好ましい。
【0106】
導電性ポリマーは特に限定されず、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでもよいが、その中でも好ましいのは、アニオン性、カチオン性である。より好ましいのは、アニオン性では、スルホン酸系、カルボン酸系、カチオン性では、3級アミン系、4級アンモニウム系のポリマー又はラテックスである。
【0107】
これらの導電性ポリマーは、例えば、特公昭52−25251号、特開昭51−29923号、特公昭60−48024号記載のアニオン性ポリマー又はラテックス、特公昭57−18176号、同57−56059号、同58−56856号、米国特許第4,118,231号等に記載のカチオン性ポリマー又はラテックスを挙げることができる。
【0108】
例えば、特開2000−33720に記載のプラズマ処理で帯電防止層あるいは導電層を設けることもできる。
【0109】
本発明の光学フィルムは、偏光子の少なくとも1面に張り合わせることで偏光板を構成することもできる。偏光子の他の面は、公知の偏光板保護フィルム(セルロースフィルム、例えばコニカタックKC8UX2MW、KC4UX2MW)を張り合わせてもよいし、本発明の光学フィルムを張り合わせてもよい。本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いると、従来のポリエステルフィルムでは巻き癖が取れず、偏光板とした後もカールが残ってしまったり、強い巻き癖に起因して接着部が剥離しやすいといった問題があったが、本発明の光学フィルムは巻き癖が容易に解消するため、特に偏光板保護フィルムに適している。特に偏光子と貼合する前あるいは後に水あるいは水溶液に浸すあるいは蒸気をあてる等によって容易に巻き癖を解消することができ、平面性に優れた偏光板を提供することができる。又、従来のポリエステルと比較して本発明の光学フィルムは吸湿膨張係数がトリアセチルセルロースに近いため、偏光子の一方にトリアセチルセルロース等のセルロースエステル系偏光板保護フィルム、もう一方に本発明の光学フィルムを用いたハイブリット偏光板であっても、吸湿等によって液晶表示装置に張り付けた偏光板が剥離したり皺が発生しにくく、優れている。
【0110】
本発明の光学フィルムと偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、十分な接着性を持ち、透明で、偏光機能を阻害しないものが好ましく用いられ、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤などが挙げられる。
【0111】
接着性向上のため、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線処理、火炎処理、大気圧ガス中放電プラズマ処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。更に接着性向上の為、下引層を塗設してもよい。下引層としては偏光子との接着性に優れる親水性コロイド層が特に好ましい。
【0112】
例えば、偏光板保護フィルムとして偏光子との接着性を向上させるために特開2000−356714の方法等でプラズマ処理を行うことによって、ポリビニルアルコール系接着剤等を用いた場合の接着性を更に向上させることができる。
【0113】
本発明の光学フィルムは、ポリエステルフィルム上に直接又は他の層を介して金属酸化物層を形成することを特徴としているが、樹脂硬化層あるいは他の層を介して形成することがより好ましい。上記のようにして得られたポリエステルフィルム上には、熱硬化樹脂層あるいは活性線硬化樹脂層を形成することが好ましく、特に紫外線硬化樹脂層を設けることが好ましい。
【0114】
樹脂硬化層は、種々の機能を有していてもよく、例えば、防眩層やクリアハードコート層であってもよい。樹脂硬化層はエチレン性不飽和結合を有するモノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0115】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0116】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0117】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0118】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
【0119】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
【0120】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
【0121】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0122】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0123】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0124】
本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0125】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させるための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0126】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0127】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0128】
硬化樹脂層塗布液には、ブロッキングを防止するために、また対擦り傷性等を高めるために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもでき、それらの種類としては、前述のマット剤の微粒子とほぼ同様である。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005μm〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0129】
紫外線硬化樹脂層はJIS−B−0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であっても、Raが0.1〜1μmの防眩層であってもよい。また、紫外線硬化樹脂層の屈折率は1.5〜1.7、好ましくは1.52〜1.65であることが好ましい。
【0130】
本発明では、これらの層の上にプラズマ放電処理によって膜厚ムラが著しく改善された金属酸化物薄膜層を形成することができる。
【0131】
本発明では金属酸化物薄膜層を設ける方法は特に限定されず、塗布、スパッタ、蒸着、CVD法によって形成することができるが、特にCVD中でもプラズマCVDによって形成されたものであることが好ましい。
【0132】
本発明の金属酸化物層を形成する方法としての大気圧もしくはその近傍の圧力下のプラズマ放電処理は、下記のごときプラズマ放電処理装置を用いることによって行われる。
【0133】
図1は、本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【0134】
図1においては、この装置は一対の回転電極10Aと10Bを有し、回転電極10Aと10Bには、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加できる電源80が電圧供給手段81、82を介して接続されている。
【0135】
回転電極10Aと10Bはポリエステルフィルムを巻き回しながら搬送するもので、ロール電極もしくはベルト状の電極であることが好ましく、図1ではロール電極を示している。
【0136】
これらの回転電極間の間隙(電極間隙)は放電が行われる場所であり、ポリエステルフィルムFが搬送できる間隔に設定されいる。この電極間の間隙が放電部50となる。
【0137】
この電極間隙は大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下に維持されており、ここに反応ガス供給部30より反応ガスGが幅手方向に均一に供給され、ポリエステルフィルムF表面がプラズマ放電処理される。
【0138】
ここで、元巻きロールから巻き出されたポリエステルフィルムFまたは前工程から搬送されてくるポリエステルフィルムFがガイドロール20を経て、まず、移送方向に回転する回転電極10Aに接しながら移送され、放電部50を通過して、ポリエステルフィルムFの表面に薄膜が形成される。
【0139】
一旦放電部50から出たポリエステルフィルムFは、Uターンロール11A〜11DでUターンされて、今度は、ポリエステルフィルムFは回転電極10Aと反対方向に回転している回転電極10Bに接しながら移送され、再び前記放電部50を通過して、先ほど薄膜が形成されたポリエステルフィルムFの表面に更にプラズマ放電処理され薄膜が形成される。Uターンは通常0.1秒〜1分程度で行なわれる。
【0140】
処理に使用された反応ガスGはガス排出口40より反応後の排ガスG′として排出される。排ガスG′に含まれるパーティクルや分解生成物はフィルターや活性炭処理により取り除かれ、希ガスは回収再利用することもできる。
【0141】
図ではポリエステルフィルムF上に形成された薄膜は省略してある。表面に薄膜が形成されたポリエステルフィルムFは、ガイドローラ21を介して次工程または巻き取りロール(図示してない)方向に搬送される。
【0142】
従って、ポリエステルフィルムFは回転電極10A、10Bに密着した状態で放電部50を往復してプラズマ放電処理されることとなる。
【0143】
なお、図示してないが、回転電極10Aと10B、ガイドロール20、21、Uターンロール11A−11D、反応ガス供給部30、ガス排出口40等の装置は外界と遮断するプラズマ放電処理容器内に囲まれて納められていることが好ましい。
【0144】
また、図示してないが、必要に応じて、回転電極10A、と10Bの温度制御をするための温度制御用媒体が循環され、各々の電極表面温度を所定の値に制御するようになっている。通常、常温〜200℃、好ましくは50〜120℃に制御されることが好ましく、特に60〜100℃に制御されることが好ましい。電極表面温度の変動や幅手ムラは±1℃以内であることが好ましく、特に±0.1℃以内であることが好ましい。
【0145】
図2は本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに有用な回転電極と固定電極を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【0146】
回転電極110とそれに対向して配置された複数の固定電極111を有し、図示されていない元巻きロールまたは前工程からから搬送されて来るポリエステルフィルムFがガイドロール120、ニップロール122を経て回転電極110に導かれ、ポリエステルフィルムFは回転電極110に接した状態で回転電極110の回転と同期しながら移送され、大気圧もしくはその近傍の圧力下にある放電部150に反応ガス発生装置131で調製された反応ガスGが給気管130から供給され、固定電極111に対向しているポリエステルフィルム面に薄膜が形成される。
【0147】
回転電極110と固定電極には、プラズマ放電を発生させるための電圧を印加できる電源180が電圧供給手段181、182を介して接続されている。
【0148】
また、回転電極110、固定電極111、放電部150はプラズマ放電処理容器190で覆われ、外界と遮断されている。処理された排ガスG′は処理室の下部にあるガス排気口140から排出される。
【0149】
プラズマ放電処理されたポリエステルフィルムFはニップロール123及びガイドロール121を経て次工程または図示してない巻き取りロールへ搬送される。
【0150】
ポリエステルフィルムFがプラズマ放電処理容器の出入り部分のニップロール122及び123のところに外界との仕切板124及び125が設けられており、外界からニップロール122と共にポリエステルフィルムFに同伴して来る空気を遮断し、また出口においては、反応ガスGまたは排ガスG′が外界に漏れないようになっている。なお、図示してないが、必要に応じて、回転電極110及び固定電極111は温度調節のための温度制御された媒体を循環するようになっており、図1の回転電極10A、10Bと同様に温度制御することができる。
【0151】
このように、本発明において、薄膜が形成されるポリエステルフィルムは回転電極上で移送しながらプラズマ放電処理されるのが好ましい。
【0152】
回転電極がポリエステルフィルムと接する表面は高い平滑性が求められ、回転電極の表面の表面粗さがJIS−B−0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下である。また、回転電極上のゴミ、異物、パーティクル等は形成する薄膜の欠陥の原因となるため、粘着ロール、ブラシ、エアブロア等によって除去することが望まれる。
【0153】
用いられる電極の表面は固体誘電体で被覆されていることが望ましく、特に金属等の導電性母材に対し固体誘電体で被覆されていることが望ましい。固体誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物等を挙げることができる。
【0154】
特に好ましくは、セラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体であることが望ましい。ここで、金属等の導電性母材としては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄、チタン、チタン合金等の金属等を挙げることができるが、加工の観点からステンレスが好ましい。
【0155】
また、ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0156】
本発明において、電極はその裏面側(内側)から、必要に応じて、加熱あるいは冷却することができるようになっている。電極がベルトの場合には、その裏面より気体で冷却することもできるが、ロールを用いた回転電極では内部に媒体を供給して電極表面の温度及びポリエステルフィルムの温度を制御することが好ましい。
【0157】
媒体としては、蒸留水、油特にシリコンオイル等の絶縁性材料が好ましく用いられる。
【0158】
放電処理の際のポリエステルフィルムの温度は処理条件によって異なるが、室温〜200℃以下が好ましく、より好ましくは50〜120℃以下であり、更に好ましくは60〜110℃である。
【0159】
放電処理の際にポリエステルフィルム面の特に幅手方向で温度ムラが生じないようにすることが望ましく、±5℃以内とすることが好ましく、より好ましくは±1℃以内であり、特に好ましくは±0.1℃以内である。
【0160】
本発明において、電極間隙は固体誘電体の厚さ、印加電圧や周波数、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電プラズマを発生させるという観点から0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは1±0.5mmである。
【0161】
本発明において、電極間隙の放電部には、ガス発生装置で発生させた混合ガスを流量制御して、反応ガス供給口よりプラズマ放電部に導入される。反応ガスの濃度や流量は適宜調整されるが、ポリエステルフィルムの搬送速度に対して十分な速度で処理用ガスを電極間隙に供給することが好ましい。例えば、幅手方向1cmあたり0.1〜200L/minの流量で反応ガスを供給することが好ましい。放電部では供給した反応ガスのほとんどが反応して薄膜形成に使われるように流量や放電条件が設定するのが望ましい。
【0162】
放電部に大気が混入したり、反応ガスが装置外に漏れ出ることを防止するために、電極及び移送中のポリエステルフィルムは全体を囲んで外界から遮蔽することが好ましい。本発明において、放電部の気圧は大気圧もしくはその近傍の圧力に維持される。
【0163】
ここで大気圧近傍とは、20〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには、93〜110kPaが好ましい。装置外の大気圧力に対して、放電部がやや陽圧であることが好ましくプラズマ装置外の大気圧力+0.1kPa〜5kPaであることがより好ましい。
【0164】
本発明に有用なプラズマ放電処理装置では、一方の電極は電源に接続して電圧を印加し、もう一方の電極はアースに接地し放電プラズマを発生させることが安定したプラズマを発生させるために好ましい。
【0165】
本発明で用いる高周波電源より電極に印加する電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、印加する周波数は1kHz〜150MHzに調整し、波形をパルス波であってもサイン波としてもよい。特に周波数を100kHzを超えて50MHz以下とすることが好ましい放電部(放電空間)が得られるため好ましい。
【0166】
放電部における放電密度は5〜1000W・min/m2であることが好ましく、特に50〜500W・min/m2であることが望ましい。
【0167】
プラズマ放電処理部はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等で適宜囲まれていることが望ましく、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。また、放電部や回転電極の側面部、ポリエステルフィルム搬送部等の側面を囲むことによって、反応ガスや排ガスを適切に放電部に供給したり排気することもできる。
【0168】
本発明の金属酸化物薄膜層の形成方法に用いる反応ガスについて説明する。
薄膜層を形成するための反応ガスは、窒素もしくは希ガスを含むことが好ましい。つまり、反応ガスは窒素もしくは希ガスと後述の反応性ガスの混合ガスであることが好ましい。ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の各元素を挙げることができるが、本発明においては、中でもヘリウム元素、アルゴン元素を好ましく用いることができる。反応ガス中の希ガスの濃度は90%以上であることが安定したプラズマ放電を発生させるために好ましく、90〜99.99体積%であることが望ましい。希ガスは安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、該プラズマ中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着するなどして薄膜が形成される。
【0169】
本発明では、様々な反応性ガスを用いることによって、様々な機能を持った薄膜をポリエステルフィルム上に形成することができる。例えば、反応性ガスとして、フッ素含有有機化合物、珪素化合物を用いての低屈折率層を形成することもでき、反射防止層に利用することができる。
【0170】
また、有機金属化合物、金属水素化合物、金属ハロゲン化物を用いて、これらの金属酸化物層を形成することができ、これらの層は反射防止層の中屈折率層又は高屈折率層としたり、あるいは導電層又は帯電防止層とすることもできる。
【0171】
また、フッ素含有有機化合物で防汚層や低屈折率層を形成することもでき、珪素化合物でガスバリア層や低屈折率層、防汚層を形成することもできる。本発明は、高、中屈折率層と低屈折率層を交互に多層を積層して形成される反射防止層の形成に特に好ましく用いられる。
【0172】
本発明で形成される金属酸化物層の膜厚としては、1〜1000nmの範囲のものが好ましく得られる。
【0173】
大気圧プラズマ処理では原料ガスにフッ素含有有機化合物を用いることでフッ素化合物含有層を形成することができる。
【0174】
フッ素含有有機化合物としては、フッ化炭素ガス、フッ化炭化水素ガス等が好ましい。具体的には、フッ素含有有機化合物としては、例えば、四フッ化炭素、六フッ化炭素、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭素化合物;二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物;更に、一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物、アルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体等を挙げることができる。これらは単独でも混合して用いてもよい。上記のフッ化炭化水素ガスとしては、二フッ化メタン、四フッ化エタン、四フッ化プロピレン、三フッ化プロピレン等の各ガスを挙げることができる。更に一塩化三フッ化メタン、一塩化二フッ化メタン、二塩化四フッ化シクロブタン等のフッ化炭化水素化合物のハロゲン化物やアルコール、酸、ケトン等の有機化合物のフッ素置換体を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0175】
また、これらの化合物は分子内にエチレン性不飽和基を有していてもよい。また、上記の化合物は混合して用いてもよい。
【0176】
本発明に有用な反応性ガスにフッ素含有有機化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりポリエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしてのフッ素含有有機化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0177】
また、本発明に好ましく用いられるフッ素含有有機化合物が常温常圧で気体である場合は、反応性ガスの成分としてそのまま使用できる。
【0178】
また、フッ素含有有機化合物が常温常圧で液体または固体である場合には、気化手段により、例えば加熱、減圧等により気化して使用すればよく、適切な有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0179】
本発明に有用な反応性ガスとしての珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シラン、四フッ化珪素などの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、などのアルコキシシラン、オルガノシラン等を用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることができる。あるいは別の有機化合物を添加して膜の物性を変化あるいは制御することもできる。
【0180】
本発明において、反応性ガスとして珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ放電処理によりポリエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしての珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0181】
本発明に有用な反応性ガスとしての有機金属化合物としては、特に限定されないが、Al、As、Au、B、Bi、Sb、Ca、Cd、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Se、Si、Sn、Ti、Zr、Y、V、W、Zn等の金属酸化物を形成するための金属化合物を挙げることができる。
【0182】
例えば、反射防止層の高屈折率層を形成するには、チタン化合物が好ましく、具体的には、例えば、テトラジメチルアミノチタンなどの有機アミノ金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを挙げることができる。
【0183】
本発明において、前記の珪素化合物、有機金属化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、中でも金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0184】
本発明において、反応性ガスとして有機金属化合物を用いる場合、プラズマ放電処理によりポリエステルフィルム上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の反応性ガスとしての有機金属化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。また、珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を放電部へ導入するには、両者は常温常圧で気体、液体または固体いずれの状態であっても使用し得る。気体の場合は、そのまま放電部に導入できるが、液体や固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射、噴霧等の気化手段により気化させて使用することができる。
【0185】
珪素化合物、チタン化合物等の金属化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタンなどのように常温で液体で、且つ、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが本発明の金属酸化物薄膜層の形成する方法に好適である。上記金属アルコキシドは、有機溶媒によって希釈して使用してもよく、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、n−ヘキサンなどの有機溶媒またはこれらの混合有機溶媒を使用することができる。更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、二酸化窒素、一酸化窒素等を0.1〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。
【0186】
以上の方法により酸化珪素、酸化チタン等の非晶性の金属酸化物層を好ましく作製することができる。
【0187】
本発明の光学フィルムは、例えば低屈折率層と高屈折率層を積層した反射防止層を有する光学フィルム又は導電層、帯電防止層を有する光学フィルムである。
【0188】
本発明において、プラズマ放電装置を複数設けることによって、多層の薄膜を連続的に設けることができ、薄膜のムラもなく多層の積層体を形成することができる。
【0189】
例えば、ポリエステルフィルム上に反射防止層を有する光学フィルムを作製する場合、屈折率1.6〜2.6の高屈折率層及び屈折率1.3〜1.5の低屈折率層をポリエステルフィルム表面に連続して積層し、効率的に作製することができる。
【0190】
低屈折率層としては、含フッ素有機化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された含フッ素化合物層、あるいはアルコキシシラン等の有機珪素化合物を用いてプラズマ放電処理により形成された主に酸化ケイ素を有する層が好ましく、高屈折率層としては、有機金属化合物を含むガスをプラズマ放電処理により形成された金属酸化物層、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウムを有する層が好ましい。
【0191】
本発明はこれらに限定されるものではなく、層構成もこれらに限定されるものではない。例えば、最表面にフッ素含有有機化合物ガス存在下で大気圧もしくはその近傍の圧力下でのプラズマ放電処理して防汚層を設けてもよい。あるいは塗布により防汚層を設けてもよい。
【0192】
上記の方法により、本発明においては、多層の薄膜を積層することができ、各層の膜厚ムラもなく、均一な光学フィルムを得ることができる。
【0193】
金属酸化物層等の薄膜の膜厚は、積層体の断面を作製し、透過電子顕微鏡(Transmission Electoron Microscope:以下、TEMと称す)で観察を行うことによって求めることができる。
【0194】
断面の作製は、具体的には積層体を基材と共に電子顕微鏡観察前処理用のエポキシ包埋樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて、厚さ約0.1μmの超薄切片を作製するか、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工装置を用いて、積層体表面にGaイオンビームを集束走査し、厚さ約0.1μmの薄片化した断面を切り出すことで作製することができる。
【0195】
TEMによる観察は倍率として50,000〜500,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラなどに記録する。TEMの加速電圧としては、80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0196】
その他、電子顕微鏡観察技法、および試料作製技法の詳細については「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)、「電子顕微鏡Q&A」(アグネ承風社)をそれぞれ参考にすることができる。適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行なうことが好ましい。画像処理技術の詳細は「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては上記操作が可能なものであれば特に限定はされないが、一例としてMEDIA CYBERNETICS社(USA)製画像解析ソフトImage−Pro PLUSが挙げられる。
【0197】
画像処理を行なうためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって、積層体界面に相当する箇所を抽出し、界面間の幅(Thickness)を計測する。同様にして少なくとも25箇所以上、好ましくは50箇所以上について求めた値から平均膜厚及びその変動を算出することができる。
【0198】
このように、本発明においては様々な機能を有する金属酸化物層を形成した光学フィルムを提供することができる。
【0199】
本発明によって、金属酸化物層のクラックの発生が少なく、カールや巻き癖が改善された光学フィルムを提供することができ、この光学フィルムは高温高湿条件で繰り返し曝されても導電性の低下やあるいは白濁などによる表示品質の劣化も改善された。
【0200】
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして有用であり、これを用いて公知の方法で偏光板を作製することができる。
【0201】
この光学フィルムを有する偏光板や光学フィルムを有する表示装置は視認性に優れており、過酷な環境下であっても優れた表示性能を提供することができたのである。
【0202】
本発明の光学フィルムには必要に応じて、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、導電層、光拡散層、易接着層、防汚層、電磁波遮蔽層を単独であるいは適宜組み合わせて設けることができる。
【0203】
本発明の光学フィルムは反射防止フィルム、帯電防止フィルム、導電フィルム、電磁波遮蔽フィルム、偏光板等の保護フィルム、光学補償フィルム、偏光板、プラズマディスプレイ前面フィルター等に好ましく用いられる。
【0204】
また、本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型液晶表示装置あるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の各種表示装置にも好ましく用いることができる。
【0205】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0206】
実施例1
〔ポリエステルの合成〕
(ポリエステルA)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール64質量部に酢酸カルシウム水和物0.1質量部を添加し、常法によりエステル交換反応を行なった。得られた生成物に、5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)39質量部(7モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)5.8質量部(5質量%/生成したポリエステル)、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.13質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、40Paで重合を行ない、ポリエステルAを得た。
【0207】
以下に示す方法に従って固有粘度を求めた。その結果、固有粘度は0.50であった。固有粘度については、ウベローデ型粘度計を用いて以下の手順で算出した。質量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、サンプルを溶かして濃度0.2、0.6、1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製した。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、式[ηsp/C]を濃度零に補外(C→0)し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0208】
(ポリエステルB)
添加量を5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)22質量部(4モル%/全ジカルボン酸成分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量3000)12.2質量部(10.5質量%/生成したポリエステル)に変更した以外は、上記と同様にしてポリエステルBを得た。また同様に測定した固有粘度は0.55であった。
【0209】
(ポリエステルC)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部、ジエチレングリコール2質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、80Paで重合を行い、固有粘度0.65のポリエステルCを得た。
【0210】
〔基材フィルムの作製〕
(基材フィルム1)
ポリエステルBのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、85℃で縦方向に1.2倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0211】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、95℃で横方向に4.5倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、更に第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ35μmのポリエステルフィルム(基材フィルム1)を作製した。巻き取りの直前に両端部に高さ5μm、幅1cmのナーリング加工を施した。
【0212】
(基材フィルム2)
ポリエステルAのペレットを150℃で8時間真空乾燥した後、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、90℃で縦方向に4.0倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0213】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、100℃で横方向に1.2倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、更に第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に2%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ35μmのポリエステルフィルム(基材フィルム2)を作製した。
【0214】
(基材フィルム3)
ポリエステルAとポリエステルCのペレットを質量比で3:7になるようにタンブラー型混合機で混合し、150℃で8時間真空乾燥した。また、ポリエステルBのペレットも150℃で8時間真空乾燥した。ポリエステルAとポリエステルCの混合物及びポリエステルBを2台の押出機を用いて285℃で溶融押出し、マルチマニホールドダイを用いてシート状に押し出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この時各層の厚みの比は1:1となるようにした。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、95℃で縦方向に1.05倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0215】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、105℃で横方向に4.0倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、更に第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ30μmのポリエステルフィルム(基材フィルム3)を作製した。
【0216】
(基材フィルム4)
ポリエステルCのペレットを150℃で8時間真空乾燥し、押出機を用いて290℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、95℃で縦方向に1.2倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0217】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、105℃で横方向に4.5倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、更に第一熱固定ゾーン150℃で10秒間熱固定し、第二熱固定ゾーン180℃で15秒間熱固定して、次いで160℃で横(幅手)方向に5%弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ30μmのポリエステルフィルム(基材フィルム4)を作製した。
【0218】
以上のようにして得られた基材フィルム1〜4について、下記の方法で平衡含水率、寸法安定性、透湿性を評価した。結果を表1に示した。
【0219】
〈平衡含水率〉
フィルムサンプルを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、表面の水分をふき取り、サンプルを微量水分計(例えば、三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で水分を乾燥・気化させた後、カールフィッシャー法により定量した。
【0220】
〈寸法安定性〉
フィルムを80℃、90%RHで1000時間処理した前後の、フィルムの面内の屈折率が最大の方向について、寸法変化率を求め評価した。収縮方向をマイナス、伸び方向を+とした。
【0221】
〈透湿性〉
温度25℃、湿度90%RHにおける透湿性はJIS Z0208により求めた。
【0222】
【表1】
Figure 0004572499
【0223】
〔光学フィルムの作製〕
この基材フィルムに大気圧プラズマ処理によって膜厚0.1μmの酸化錫層を形成し、光学フィルム1〜4を得た。
【0224】
大気圧プラズマ放電処理は図2記載の装置を使用した。ロール電極には、内部にシリコンオイルを循環させることによる冷却機能を有するステンレス製ジャケットロール母材を用いた。
【0225】
これにセラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その上にテトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させて封孔処理を行いRmax、1μmの誘電体を有するロール電極を製作しアース(接地)した。
【0226】
一方、対向電極としては、中空のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、相対する電極群とした。プラズマ放電処理装置の電源は、日本電子製高周波電源を使用し、連続周波数を2MHzとし、2W/cm2の電力を供給した。但し、ロール電極は、ドライブを用いてポリエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。ロール電極の表面温度は70℃とした。
【0227】
なお、電極間隙は1.6mm、反応ガスの圧力を大気圧に対して+1kPaとして、反応ガス温度は85℃として、膜厚0.1μmの金属酸化物層を形成した。プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。
【0228】
(酸化錫層形成用反応ガス)
不活性ガス(ヘリウム) 99.4体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.3体積%
反応ガス(テトラブチル錫蒸気) 0.3体積%
得られた光学フィルム1〜4について、クラック、カール、白濁、導電性、接着性を評価した。なお導電性は表面比抵抗値の変化で評価した。結果を表2に示す。
【0229】
〈クラック〉
光学フィルム試料を80±3℃、90±2%RHの条件に12時間放置し、23±2℃、55±5%RHで12時間放置した後、試料を光学顕微鏡でクラックの状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0230】
◎:クラックがほとんど認められない
○:短いクラックが認められる
△:全面に短いクラックが多数発生している
×:全面に無数のクラックが認められる
〈カール〉
ロール状に巻き取ったフィルムを23±2℃、55%RH下で24時間調湿し、該試料を長手方向2mm、幅手方向50mmに切断し、その試料小片を23±2℃、55%RH下で24時間調湿した後、曲率スケールを用いて、該試料と合致するカーブを有する曲率半径(1/m)を確認し、その曲率半径を該試料のカール値とした。
【0231】
◎:カール値 10未満
○:カール値 10〜20未満
△:カール値 20〜25未満
×:カール値 25以上
〈白濁〉
各光学フィルムを80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下で6時間処理した後、23℃、55%RH雰囲気に18時間放置した。これを合計30回繰り返して処理した後、金属酸化物層側を目視によって白濁の状態を観察した。評価は、白濁が全く認められないものを1とし、著しい白濁を起こしているものを5とし、その間のランクの状態を2〜4とした5段階評価を行った。なお、白濁は細かいクラックが入ったためと考えられる。
【0232】
〈表面比抵抗値変化〉
反復高温多湿処理後の表面比抵抗値の変化:80℃、90%RHの条件で、6時間曝した後、23℃、30%RHの条件に18時間調湿した。同様に高温多湿処理を10回繰り返した後、23℃、30%RHの条件のもとで、6時間調湿した後、同条件で金属酸化物層表面の表面比抵抗値を絶縁抵抗測定器(川口電気社製VE・30型)で測定し、下記の基準で評価して結果を表2に示した。
【0233】
◎:表面比抵抗値は1010Ω/cm2未満でほとんど変化なし
○:表面比抵抗値はわずかに増加したが、1011Ω/cm2レベルで問題ない
△:表面比抵抗値は増加したが1012Ω/cm2未満であり、問題ない
×:表面比抵抗値は1012Ω/cm2以上、5×1012Ω/cm2未満に増加した
××:表面比抵抗値は5×1012Ω/cm2以上に著しく増加した。
【0234】
表2から明らかなように、本発明の光学フィルムは高温高湿処理の繰り返しによる表面比抵抗の変動が少なく良好な値を示したが、比較の光学フィルムは表面比抵抗値の増加により帯電防止性の低下が認められた。
【0235】
〈接着性〉
JIS−K−5400に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には塗布面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個つくった。この上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数で評価した。
【0236】
◎:100 密着性が高く優れている
○:95〜99 若干剥離するが実用上問題がないレベル
△:80〜94 剥離が目立ち実用上問題がある
×:80未満 剥離が著しく実用上使用できない。
【0237】
【表2】
Figure 0004572499
【0238】
光学フィルム1〜3はクラックが少なく、カールも軽減され、接着性にも優れ、導電性も安定していることが確認された。
【0239】
実施例2
実施例1で形成した基材フィルム及び光学フィルムの上にクリアハードコート層(CHC)又は防眩層(AG)を塗設し、その上に実施例1で用いたプラズマ処理装置を用いて下記反射防止層を形成した。基材フィルム及び光学フィルムは下記の塗布層を設ける前にコロナ放電処理で濡れ性を改善した後、塗布した。光学フィルムは酸化錫層の上にクリアハードコート層または防眩層を形成した。
【0240】
防眩層(AG)
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂 100部
(ユニデック17−806(大日本インキ(株)製))
平均粒子径3.5μmの球状架橋ポリスチレン微粒子 5部
平均粒子径16nmの合成シリカ微粒子 7部
コロネートL(ポリイソシアネート化合物:日本ポリウレタン(株)製)1部
光重合開始剤(イルガキュア184 チバガイギー社社製) 3部
上記を溶媒(酢酸エチル)にてホモジナイザーにより混合して、揮発分濃度60%の均質な分散液を調製した。
【0241】
これを基材フィルムにワイヤーバーコートし、90℃で2分間乾燥させた後、130mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、膜厚3μmの防眩層1を形成した。
【0242】
クリアハードコート層(CHC)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20部
光重合開始剤(イルガキュア184 チバガイギー社製) 4部
酢酸エチル 50部
メチルエチルケトン 50部
イソプロピルアルコール 50部
これを基材フィルムにワイヤーバーコートし、90℃で2分間乾燥させた後、130mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、膜厚3μmのクリアハードコート層(CHC)を形成した。
【0243】
〈金属酸化物層の形成〉
上記基材フィルム上に設けた紫外線硬化樹脂層(AG又はCHC)の上に、実施例1で使用した大気圧プラズマ処理装置を用いて、第1酸化チタン層(屈折率2.15、平均膜厚15nm)、第1酸化珪素層(屈折率1.46、平均膜厚33nm)、第2酸化チタン層(屈折率2.15、平均膜厚119nm)、第2酸化珪素層(屈折率1.46、平均膜厚86nm)を順に形成した。第2酸化珪素層の表面は下記、酸化珪素層形成用反応ガス2にて表面処理を行った。
【0244】
プラズマ放電処理装置の電源は、パール工業製高周波電源を使用し、連続周波数を2MHzとし、放電電極に対し2W/cm2の電力を供給した。ロール電極はドライブを用いてポリエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。なお、電極間隙は1.4mm、反応ガスの圧力は大気圧+1kPa、反応ガスの温度は80℃として行った。プラズマ放電処理に用いた反応ガスの組成を以下に記す。
【0245】
(酸化チタン層(高屈折率層)形成用反応ガス)
不活性ガス(ヘリウム) 99.4体積%
反応ガス(水素ガス) 0.3体積%
反応ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気) 0.3体積%
(酸化珪素層(低屈折率層)形成用反応ガス)
不活性ガス(ヘリウム) 99.4体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.3体積%
反応ガス(テトラエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
(酸化珪素層(低屈折率層)形成用反応ガス2)
不活性ガス(ヘリウム) 99.8体積%
反応ガス(CF4) 0.2体積%
得られた反射防止フィルムの評価結果を表3に示す。
【0246】
本発明の光学フィルムは、クラックが発生しにくく、カールも少なく、巻き癖も解消しやすいため、表示装置の最前面などの平面部に貼り付けるのに適していた。それに対して、比較の光学フィルムはクラックが入りやすく、カールも大きく、巻き癖が解消しにくいため、貼り付けの際に皺が入りやすいという問題があった。
【0247】
〈平均反射率の測定〉
分光光度計(日立製作所製U−4000型)を用い、反射防止層が設けられていない側の面を粗面化した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、裏面での光の反射を防止して5度の正反射の条件にて450〜650nmにおける各反射率を測定し、その平均反射率を求めた。
【0248】
【表3】
Figure 0004572499
【0249】
実施例3
〔偏光子の作製〕
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し50℃で4倍に延伸し偏光子を作製した。
【0250】
〔偏光板及び表示装置の作製〕
実施例2の反射防止フィルムの反射防止層を有する面の裏面側に、春日電機(株)製コロナ放電処理装置(HFS−202)を用いて、12W・min/m2の条件で易接着処理を施した。同様にそれぞれの反射防止フィルムで用いられるポリエステルフィルム(基材フィルム)の一方の面にコロナ処理を施した。
【0251】
前記で作製した偏光子の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として、前記反射防止フィルム及びポリエステルフィルムの易接着処理を施した面側が偏光子側となるようにして貼合し、偏光板を作製した。この時、反射防止フィルムのフィルム面内での屈折率の最大方向が偏光子の偏光軸に平行になるように張り合わせた。
【0252】
次に市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏向方向を合わせた上記で作製した偏光板を各々貼り付けた。
【0253】
作製した液晶表示パネルについて、ルーペを用いて観察したところ本発明の偏光板を用いた液晶表示パネルでは反射防止層のクラックの増加は認められなかったが、一方、比較の偏光板を用いた液晶表示パネルではクラックの発生が観察された。比較の偏光板の方がほこりが付着しやすかった。
【0254】
【発明の効果】
各種表示装置に用いられる光学フィルムとしてのポリエステルフィルム上に金属酸化物層を設けた導電性フィルム、反射防止フィルムにおいて、クラックが著しく低減され、カールも改善され、導電性の低下も少ないフィルムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【図2】 本発明の金属酸化物薄膜層を形成するのに有用な回転電極と固定電極を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
F ポリエステルフィルム
G 反応ガス
G′ 排ガス
10A、10B、110 回転電極
11A、11B、11C、11D Uターンロール
20、21 ガイドロール
30 反応ガス供給部
40、140 ガス排気口
50、150 放電部
80、180 電源
81、82、181、182 電圧供給手段
111 固定電極
120、121 ガイドロール
122、123 ニップロール
124、125 仕切板
130 給気管
131 反応ガス発生装置
190 プラズマ放電処理容器

Claims (8)

  1. 少なくとも芳香族ジカルボン酸、グリコールの反応により製造され、下記平衡含水率が1〜5%であり、スルホン酸またはその塩から選ばれる基を有し、硫黄元素含有量が0.15〜2質量%であるポリエステル樹脂の層を有する基材フィルム上に直接又は他の層を介して大気圧プラズマCVDによって金属酸化物層を設けた膜厚5〜40μm、寸法安定性が±0.5%以内であることを特徴とする光学フィルム。
    平衡含水率:ポリエステルフィルム(或いは他のフィルム上に積層されている場合には、基体より引き剥がした該ポリエステル樹脂層フィルム)を23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬させ、しかる後、サンプルを微量水分計(例えば、三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて温度150℃で、水分を乾燥・気化させた後カールフィッシャー法で定量して求めた値。
  2. ポリエステル樹脂が全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸或いは全グリコールに対し1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有するグリコールを用いて製造されることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. ポリエステル樹脂が全芳香族ジカルボン酸に対し1〜10モル%のスルホン酸およびその塩から選ばれる基を有する芳香族ジカルボン酸を用いて製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4. ポリエステル樹脂がポリアルキレングリコールを反応生成物のポリエステル全量に対して0.1〜10質量%用い製造されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  5. ポリエステル樹脂の主成分がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  6. 溶融押し出しにより連続的に製膜された長尺状フィルム上に直接又は他の層を介して金属酸化物層を有することを特徴とする請求項4または5に記載の光学フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムを用いることを特徴とする偏光板。
  8. 請求項7に記載の偏光板を用いることを特徴とする表示装置。
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