JP4000830B2 - プラズマ放電処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材表面に薄膜を大気圧もしくはその近傍の圧力下で形成するためのプラズマ放電処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学レンズ、CRT、またはコンピュータやワープロの液晶画像表示装置等の分野において、それらの表面の反射によって起こる画像の不鮮明さ等の不具合に対して、透過率の向上、コントラストの向上、映り込み低減のための表面反射を減少させる反射防止技術が、従来より数多く提案されている。提案されている技術として、例えば、光学干渉層の多層積層体の屈折率と光学膜厚を適切な値に調整することにより、この積層体と空気界面における光の反射を減らすことが出来るという反射防止技術が知られている。このような多層積層体は、高屈折率層としてのTiO2、ZrO2、Ta25等や低屈折率材料としてのSiO2、MgF2等の薄膜が積層されたものであり、これらはスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空乾式薄膜製膜法によって製作されたものである。しかし、このような真空乾式薄膜製膜法の真空装置は、処理基材が大きくなるとそれに伴い大型化するため装置が非常に高額となることや、真空度を上げる排気にも非常に時間と費用を費やしたり、更に連続生産が出来ず生産性が低いことなどデメリットが大きい。
【0003】
また、別の反射防止層の作製方法として、チタンアルコキシドやシランアルコキシドに代表される金属アルコキシドを基材の表面に塗布、乾燥、加熱して金属酸化物の膜を作製する方法がある。しかしこの方法では、加熱温度を300℃という高い温度にする必要があり、基材が変形したり平面性が損なわれダメージが大きい。また特開平8−75904号公報に記載されているような加熱温度を100℃程度とした比較的低温で行う方法では、作製に時間がかかり何れにしても問題点が多々あった。
【0004】
近年、これら温度と時間の問題を改善する方法として、特開平9−21902号公報にみられるような高屈折率材料をTi、Zr、TaまたはInのアルコキシドと、分子中に2個以上のアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基またはビニル基等を有する重合可能な官能基化合物を併用することにより低温で作製する方法が提案されている。また、特開平7−209503号公報には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合可能な官能基とアルコキシド基のような加水分解可能な官能基を併せ持つ有機珪素化合物と重合可能な不飽和結合を持つ単量体からの共重合物を主成分とする光学皮膜形成コーティング用組成物が示されており、樹脂成分と無機成分を分子レベルで均一に出来るという技術が提案されており、組成物を基材に塗布した後、100℃で長時間加熱するか、電離放射線照射により重合させて皮膜とする方法が述べられている。
【0005】
この他、特開平8−295846号及び同9−220791号公報にも重合性有機金属化合物及び金属酸化物やシラン化合物組成物を含有する組成物を熱または電離性放射線で硬化する技術が開示されている。更にこの他にも上記のような反応性有機金属化合物は使用しないが、電離性放射線として電子線や紫外線を照射することによって作製する方法が、特開平5−270864号、同5−279598号、同6−11602号、同8−122501号、同8−297201号、同9−21902号及び同9−25350号公報に記載されている。しかし、これらの製膜方法では、有機成分が未反応のまま残存し、それが経時的に徐々に変化していくため、屈折率が変化し次第に反射防止機能が損なわれてしまうことがあった。
【0006】
上記の方法に対して、大気圧またはその近傍の圧力下でプラズマ放電を発生させ、反射防止機能を有する薄膜を製膜する方法が特開平11−133205号、特開2000−185362号、特開平11−61406号、特開2000−147209号、同2000−121804号公報に開示されている。しかしながら、上記記載の方法では、微少面積への製膜は可能であるものの広巾基材への均一な製膜は困難であり、特に屈折率が一定でなければならない、また光学膜厚が均一でなければならない反射防止機能膜等には不向きであった。
【0007】
上記のごとき従来の大気圧プラズマ放電処理法の他の問題として、電極に汚れが付着したり、更に汚れが蓄積してしまうという問題があった。これを解決するための様々な方法が提案されたが、何れも十分なものはなかった。この中で、特開2000−212753号公報では、対向電極のそれぞれの表面に基材を配置する方法が提案されており、電極の汚れを防止することが出来るとしている。しかし、この方法では、常に2枚の基材が必要であるという問題があった。この方法は一見、二つの基材を同時に処理出来、生産効率が高いように見えるが、2枚の基材を同じように処理するためには、極めて高い精度の搬送設備や処理条件設定が必要である。そして、一方の基材の製造ラインにトラブルがある場合には、もう一方のラインも停止しなければならず、多大なメンテナンス負荷を要し、実用的でなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、真空装置を必要とせずまた高温での処理をも行わずに広幅の基材を光束で且つ連続処理が出来、高生産性を有する薄膜を形成する装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成よりなる。
【0010】
1.連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、少なくとも一対の対向電極と該対向電極の間に形成される放電部を有し、該放電部において該対向電極の一方の電極に接しながら該放電部を通過し処理された該基材が再び該対向電極のもう一方の電極に接しながら該放電部に移送するための折り返し移送手段を有し、該放電部において、往復して通過する該基材の間に、該基板の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、且つ該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0011】
2.連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、複数対の対向電極と該対向電極の間に形成される複数の放電部を有し、それぞれの一方の電極に接しながらそれぞれの放電部を通過し処理された該基材を再び該対向電極のそれぞれのもう一方の電極に接しながらそれぞれの放電部に移送するための折り返し移送手段を有し、各放電部において往復して通過する該基材の間に該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、且つ、それぞれの対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0012】
3.連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、一対の対向電極と該対向電極の間に形成される放電部を有し、該放電部において該対向電極の一方の電極に接しながら該放電部を通過し処理された該基材が再び該対向電極のもう一方の電極に接しながら該放電部に移送するための折り返し移送手段を有し、該放電部において往復して通過する該基材の間に、該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、且つ該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0013】
4.対向電極が回転するロール電極であることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0014】
5.連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、少なくとも一つの回転するロール電極とこれに対向する複数の回転するロール電極との間に形成される複数の放電部を有し、該放電部において、対抗するロール電極の一方に接しながら該放電部を通過し処理された該基材が、再び該対抗するロール電極のもう一方に接しながら該放電部を通過し、処理することが可能な移送手段を有し、該放電部において往復して通過する該基材の間に該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、且つ該対向するロール電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
【0015】
6.前記反応ガスを供給する手段が、前記基材の幅と同等以上の幅を有するスリット状、或は、前記基材の幅方向に複数のパイプ状の吹き出し口を並べた構成を有することを特徴とする前記1乃至5の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0016】
7.前記放電部において、往復して通過する前記基材の間へ供給される反応ガスは、該基材の幅方向全体で均一な流量あるいは流速であることを特徴とする前記1乃至6の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0017】
8.前記放電部における対向電極間の間隙は、0.5〜20mmであることを特徴とする前記1乃至の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0018】
9.前記放電部における対向電極間の間隙は、0.5〜5mmであることを特徴とする前記に記載のプラズマ放電処理装置。
【0019】
10.前記電源の周波数が100kHzを超え150MHz以下であることを特徴とする前記1乃至9の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
【0034】
〔プラズマ放電処理装置〕
本発明の大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理する装置を図として例示し説明をするが、本発明におけるプラズマ放電処理装置はこれらに限定されない。
【0035】
図1は、本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置の一例で、ロール電極を用いて基材を往復させて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。この装置は一対のロール電極10Aとロール電極10Bを有し、これらのロール電極10Aと10Bにはプラズマ放電のための電圧を印加出来る電源80が電圧供給手段81と82を介して接続されている。ロール電極10Aと10Bは基材Fを巻き回しながら回転することが出来る回転電極である。放電部100は大気圧もしくはその近傍の圧力下に維持され、反応ガス供給部30から反応ガスGが供給され、放電部100においてプラズマ放電が行われる。前工程または元巻きロールから供給される基材Fは、ガイドロール20によりロール電極10Aに密着され、同期して回転移送され、放電部100で大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスによりプラズマ放電処理が施される。反応ガス供給部30は基材の幅と同等か、あるいはそれよりやや幅が広いスリット状であることが好ましく、あるいはパイプ状の吹き出し口を横に並べて基材の幅同等となるように配置したものでもよく、幅方向全体で均一な流量或いは流速で反応ガスGが放電部100に導入されるようにするのがよい。一旦処理された基材Fは折り返しロール(Uターンロールともいう)11A、11B、11C及び11Dを経て、逆方向に移送されロール電極10Bに抱かれて再び放電部100でプラズマ放電処理が施されガイドロール21を介して巻き取りまたは次工程(何れも図示してない)に移送される。処理後のガスG′は排気口40より排気される。排気口40からの排気流量は反応ガス供給部30からの流量と同等か、やや多いことが好ましい。放電部100のロール電極10A及び10Bの側面側を遮蔽しても、また装置全体を囲い、全体を希ガス或いは反応ガスでみたしてもよい。
【0036】
図2は、ベルト電極を用いて基材を往復させて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。この図の装置は、回転電極が二つのサポートロール14Cと14D及び二つのサポートロール14Eと14Fで無限移行する無端のベルト電極13A及びベルト電極13Bを有しているのが特徴である。ベルト電極13Aと13Bの間で平行になっている部分の空間が放電部101となっており、ロール電極を用いる場合よりもより広い放電空間を確保することが出来る。前工程または元巻きロールから供給される基材Fはガイドロール20と折り返しロール11Aによって張力が与えられ、ベルト電極13Aに密着され、ベルト電極13Aと共に同期して移送され放電部101でプラズマ放電処理され、折り返しロール11A、11B、11C及び11Dを経て、同様にベルト電極13Bと共に密着しながら逆方向に放電部101を通り二度目のプラズマ放電処理が施される。処理された基材Fはガイドロール21を経て巻き取りまたは次工程へ移送される。反応ガスGは反応ガス供給部30から放電部101に供給される。処理後のガスG′は排出口40から排出される。放電部の空間をより広くしたい場合は、反応ガスは反応ガス供給部一カ所だけでなく放電部の横から供給部を設け供給してもよい。また、サポートロールは複数設けてもよく、放電部のサポートロールの側面側を遮蔽してもよいし、装置全体を囲って反応ガスで満たしてもよい。ベルト電極13Aまたは13Bに密着している基材Fは張力制御や位置制御を行うことによって、安定な処理が出来る。また、図2を縦型に配置したプラズマ放電処理装置であってもよい。又、意図的にベルト間隔を、搬送方向の前と後ろで変更し、拡げたり狭くすることで得られる薄膜の物性や組成を変化させた傾斜膜を作製することも出来る。
【0037】
図3は、複数のロール電極を用いて基材を往復させて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。前工程または元巻きロールから供給される基材Fは最初にガイドロール22を経て、ロール電極10Cに抱かれ密着して放電部104でプラズマ放電処理が施され、ついで、ガイドロール20Eを経てロール電極10Eに抱かれて密着して放電部105で二度目の処理が施され、ガイドロール20Gを経て、ロール電極10Gで同様に放電部106で三度目の処理が施される。反応ガスG、はそれぞれの反応ガス供給部30C、30E、30Gから供給され、処理後のガスG′はそれぞれ排出口40C、40E、40Gから排出される。処理された基材Fは折り返しロール(Uターンロール)11A、11B、11C、11Dを経て、逆方向に移送され、同様に、ロール電極10H、放電部106で四度目の処理が行われ、ガイドロール21Hを経て、ロール電極10F、放電部105で五度目の処理が行われ、更に、ガイドロール21Fを経て、ロール電極10D、放電部104で六度目の処理が行われる。処理後の基材Fはガイドロール23を経て巻き取りまたは次工程に移送される。図3において、各放電部の反応ガスを同一のものを使用してもよいし、それぞれ別の反応ガスを使用してもよい。別々の反応ガスを用した場合には、異なった薄膜層の積層体が得られる。なお、80C、80E、80Gは何れも電源であり、81C、81E、81G、82C、82E及び82Gは電圧供給手段である。
【0038】
図4は、基材を往復させて処理するロール電極対を連続的につなげて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。図4は独立した電極対を直列に有するもので、それぞれの独立した電極対の放電部で異なった反応ガスを使用すると、それらの異なった薄膜の積層体を得ることが出来る。基材の移送の仕方は図1と同様であるので、詳細は省略する。図中、24、25、26はガイドロール、10Jと10K、10Lと10M、10Nと10P、10Qと10Rはそれぞれ対をなすロール電極である。また107、108、109、110はそれぞれの放電部、30J、30L、30N、30Qはそれぞれガス供給部、40J、40L、40N、40Qはそれぞれガス排出口である。更に80J、80L、80N、80Qはそれぞれの電源、81Jと82J、81Lと82L、81Nと82N、81Qと82Qはそれぞれの対の電圧供給手段である。一つのロール電極対は図2と同様である。
【0039】
図5は、外界と遮断する処理室とその出入口の両側に予備室を有するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。図5は図1と同様なプラズマ放電処理装置を処理室容器71内の処理室70に納め、処理室70の基材Fの出入り口62と63において、外界の空気を遮断するために前記処理室に隣接して予備室60A(入口側)と60B(出口側)を有しているものである。なお、予備室60A及びBの気圧は外界より若干高いことが好ましく、0.3Pa以上高いことが特に好ましい。予備室60A及び60Bに対して処理室70が0.3Pa以上高いことが好ましい。基材F表面に外界の空気が同伴して来るのでこの空気を遮断し、またガスを外部に漏らさないために、入口側の予備室60Aと外界90との境61及び予備室60Aと処理室70との境62に、また処理室70と出口側の予備室60Bとの境63及び予備室60Bと外界との境64に、それぞれ二対のニップロール65及び66が配置されており、これらにより同伴空気が遮断されている。31は処理室70及び予備室60A、60Bへの希ガスの導入口であり、41は排出口である。基材Fのプラズマ放電処理及び移送については図1と同様であるので省略する。予備室は複数設けてもよく、複数設けることにより外気の混入や反応ガス等の漏れ防止の点で好ましく、2〜10室更にあることが好ましい。複数の予備室を有する場合、それぞれの予備室と隣り合う処理室等との気圧をやや低くあるいは高くすることにより効率的に外界との遮断を行うことが出来る。
【0040】
図6は基材を往復させて処理するロール電極対を連続的につなげて処理する別の形態のプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。図6においては独立した電極対を直列に有するものとは異なり、1つの対向電極A1に注目してみるとA1に対して、3つの対向電極B1、B5及びB2が対向して配置され、該電極間に形成されるそれぞれの放電部でプラズマ放電処理がされるタイプのプラズマ放電処理装置である。大気圧もしくはその近傍の圧力下に維持され、反応ガス供給部30から反応ガスGが供給され、放電部100においてプラズマ放電が行われる。
【0041】
装置全体は、複数の対からなる対向電極群A1〜A5と複数の対向電極B1〜B5から構成され、一方の電極A1〜A5のうちの1つに対して対向電極B1〜B5のうちの複数が、又一方の電極B1〜B5のうちの1つからみると電極A1〜A5のうちの複数が対向しそれぞれ放電部100を形成している構造になっているのが特徴である。各々の放電部は、大気圧もしくはその近傍の圧力下に維持され、反応ガス供給部30から反応ガスGが供給され、放電部100においてプラズマ放電が行われる。プラズマ処理を受ける基材は、該対向電極群の一方の電極に接して搬送され、プラズマ放電処理され、折り返し移送手段によって折り返された基材が、再度、対向電極のもう1つに接して搬送されて、基材表面がプラズマ放電処理される。図において、20のガイドロールを通して基材Fが、回転するロール電極B1に接して処理空間にはいると、各折り返しロール11I〜11Aを間に挟みつつ、ロール電極B1、A1、B2、A2・・・と順次、基材が各ロール電極に接しつつ搬送され、各放電部100を通過することで、各ロール電極間に形成された各放電部にてそれぞれプラズマ放電処理を受ける。各折り返しロールを介して同じ放電部で、互いに対向する、一度目とは異なった別の電極に接しつつもう一度基材がプラズマ放電処理を受けることになる。尚80は電源を81、82はそれぞれ対となる電圧供給手段を表している。これらの電極群に対し複数の電源を用いることもできる。この様にして複数の放電部において複数の処理を受けた基材は最終的にはガイドロール21を介してプラズマ放電処理装置から次工程へ送られる。
【0042】
上記したように、大気圧もしくはその近傍の圧力下で処理するプラズマ放電処理装置を例示したが、本発明の特徴は、第1に、放電部において、長尺の基材を連続的に処理出来、一度通して処理した基材を再び同じ放電部に通して往復して処理することにより、処理速度を上げることが出来、生産性を高めることが出来るばかりでなく、形成する薄膜の均一性が向上すること、第2に、装置がコンパクトのため連続してプラズマ放電処理装置を並べることにより、薄膜の積層体を容易に、高品質でしかも安価に作製することが出来ることである。又、複数の放電部で処理することによって膜強度を高めることも出来る。
【0043】
以下上記図を例にとりその特徴、優位性を説明する。
平板電極を用いる装置は処理有効面積が広く、処理効率が高い反面、基材の裏側にもプラズマ放電処理が行われ易く、基材が固定電極に安定して接することが出来ないばかりか、基材の移送と固定電極の間で摩擦を生じ擦り傷が発生するため光学フィルム用には不向きである。図2のベルト電極を使用したプラズマ放電処理装置は、これもベルト電極の長さにもよるが、処理面積が広く効率のよいものであり、本発明において使用し易い装置である。図2は、図1に比べると、処理される基材がベルト電極表面に密着して処理されることにより安定した処理が出来る。ただ、ベルトのような平らな電極の上に基材があるため若干基材が部分的に浮く可能性があり、基材にかかる張力を適切に制御したり、このような場合ベルト電極の裏側に直径の小さめなサポートロールを何本か当てベルト電極に張りを持たせることによって密着の安定性を増すことが出来る。図1のロール電極を使用した装置は、電極に基材が最も密着性がよく、安定した、しかも効率のよい処理が出来るため、本発明において最も好ましい装置である。これらの図示した装置において、折り返しロールがあることが、本発明の一つの特徴である。折り返しロールの本数は一本でも、図示してあるように4本でも、何本あってもよい。好ましくは張力を制御出来るロールあるいは手段を有していることが望ましい。又、折り返す前に別の放電部でプラズマ放電処理されて、紫外線照射等の別の工程と組み合わすことも出来る。
【0044】
また、本発明の装置はコンパクトであり、図3や図4又図6に示したように、対向ロール電極を連続して設けることが出来、より効率を上げることが出来る。図3は複数の対向電極を横に配列したもので、連続的に同一の反応ガスで処理しても、またそれぞれの対向電極のところで異なった反応ガスを使用して処理してもよい。例えば前者の場合には処理速度を高めることが出来ると同時に、より均一な薄膜を形成させることが出来、また後者は異なった薄膜を積層することが出来るというのが特徴である。図4は独立した処理部を有し、一処理が完結して次の処理部に基材が移送されるため、それぞれ異なった反応ガスを使用することにより、設計し易い薄膜積層体を形成することが出来、本発明の積層体を形成するための装置として特に好ましい形である。図5は、図1のプラズマ放電処理装置の全体を囲った処理室であり、また基材に同伴する空気を遮断する予備室を設けたものである。図1〜4においては、この処理室及び予備室が省略されている図となっており、図1が図5となるように何れも同様に処理室と予備室は設けることが出来る。特に図4で異なる反応ガスを用いる場合には、プラズマ放電処理装置各々に設けるのが好ましい。図5において、移送して来る基材に同伴して来る空気はニップロールのような遮断手段により遮断され、且つ処理室の基材の出入り口に、処理室より圧力の若干高いかまたは低い予備室をそれぞれ設けることによって、処理室内への空気の混入を避けることが出来、そのことによって処理効果を上げると同時に処理の均一性を向上させることが出来る。本発明のプラズマ放電処理装置の処理室及び予備室には反応ガス組成と同等な成分のガス、または希ガスのみで予め満たしておくことが望ましい。
【0045】
〔対向電極〕
本発明に使用される電極は、金属等の導電性母材で出来ており、その表面が固体誘電体で被覆されていることが望ましい。固体誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の金属酸化物あるいはチタン酸バリウム等の複合金属酸化物等を挙げることが出来る。特に好ましいものは、セラミックスを溶射後に無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体である。また、電極の金属等の導電性母材としては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等を挙げることが出来るが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、ライニング材としては、珪酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いという点でより好ましく用いられる。
【0046】
本発明に使用される電極の形状は、図1または2にあるようにロール電極、ベルト電極があるが、これら以外に形状には対向電極となるものであれば制限がなく使用出来る。本発明においてはロール電極がプラズマ放電処理の効率がよく、均一な薄膜が形成し易く、処理される基材の表面の傷の付きにくさから特に好ましい。
【0047】
本発明に使用される電極は必要に応じて加熱あるいは冷却等の温度調整することが望ましい。してもよい。例えば、ベルト電極の場合は、ベルトの裏面から気体で冷却することも出来るが、ロール電極の場合には、ロールの内部に液体を供給することが出来、電極表面の温度及び基材の温度を制御することが出来るので好ましい。温度を与える液体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましい。基材の温度は処理条件によって異なるが、通常、室温〜200℃とすることが好ましく、より好ましくは室温〜120℃とすることである。
【0048】
ベルト電極やロール電極のように、基材が密着して基材と電極とが同期して移送及び回転する場合、その電極の表面は高い平滑性が求められる。平滑性はJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)及び中心線平均表面粗さ(Ra)として表される。本発明に使用するベルト電極及びロール電極の表面粗さのRmaxは10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、特に好ましくは7μm以下である。またRaは0.5μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
【0049】
本発明において、対向電極間の間隙は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的、電極の形状等を考慮して決定される。電極表面同士の距離は、プラズマ放電を均一に発生させるという観点から0.5〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5〜5mmであり、特に好ましくは1mm±0.5mmである。本発明におけるロール電極間の間隙とは対向する電極表面が互いに最も接近している間隔をいう。また、ロール電極の場合には、間隙がロール電極の回転によっても一定であることが望ましい。具体的には、ロールが1回転した時のロール間の間隙の変動が±30%未満であることが好ましく、好ましくは±10%未満で、より好ましくは±5%未満であり、最も好ましくは±0である。ロール電極の間隙の基材の幅方向の変動も上記と同様である。ロール電極の直径は10〜1000mmが好ましく、20〜500mmがより好ましく、30〜300mmが更に好ましい。
【0050】
本発明において、プラズマ放電を行う処理室は、電極と絶縁性の材質のフレームや容器で囲むことが好ましく、電極との絶縁がとれれば金属製のものを用いてもよい。例えば、金属製のものとしては、アルミまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けたものでもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性を持たせたものでもよい。またパイレックス(R)ガラス製の処理容器で装置全体を囲うのも好ましい。この様な外側の囲いではなく、放電部、電極、基材搬送手段等の側面を局部的に囲むことも、反応ガスを適切に放電部に供給したり、排ガスを排気することが出来るため、ガス濃度や組成を一定に出来、プラズマ放電処理を安定して行うことが出来好ましい。
【0051】
本発明におけるプラズマ放電を発生させるための電圧を加える手段は、対向電極の一方の電極に電源を接続し、もう一方の電極にアースを接地して、電圧を印加するようになっている。本発明における電源は、高周波電源が好ましく用いられる。またはパルス電源も使用出来る。電圧を印加し電源より電極に印加する電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧は0.5〜10kV程度が好ましく、また電源周波数としては1kHz〜150MHzに調整するが、特に100kHzを超え13.56MHz以下であると、安定した放電により均一な薄膜が得られ好ましい。その波形はパルス波であってもサイン波であってもよい。また、電極間の放電電流密度は0.01〜500mA/cm2が好ましい。プラズマ放電処理の放電強度は、アーク放電も起こらず安定した効果的な処理を行うには、50W・min/m2以上500W・min/m2未満が好ましい。この範囲でプラズマ放電処理を行うことにより、処理の均一性を有し、ダメージもなく仕上げることが出来る。
【0052】
〔反応ガス〕
本発明のプラズマ放電処理装置に使用する反応ガスについて説明する。
【0053】
本発明において、反応ガスは主に希ガスと反応性ガスの混合ガスを用いるのが特に好ましい。
【0054】
本発明に有用な希ガスの元素としては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来るが、本発明においては、ヘリウム、アルゴンが好ましく、特にアルゴンが好ましい。反応ガス中の希ガスの濃度は、90体積%以上あることが安定したプラズマを発生させるために好ましい。特に90〜99.99体積%が好ましい。希ガスはプラズマ放電を発生するために必要であり、該プラズマ放電中の反応性ガスをイオン化またはラジカル化し、表面処理に寄与する。
【0055】
本発明において、反応性ガスは基材上に作製される機能性薄膜の種類によって様々な物質が用いられる。例えば、反応性ガスとして、有機フッ素化合物を用いることにより反射防止層等に有用な低屈折率層や防汚層を形成することが出来、珪素化合物を用いることにより、反射防止層等に有用な低屈折率層やガスバリア層を形成することも出来る。また、Ti、Zr、Sn、SiあるいはZnのような金属を含有する有機金属化合物を用いることにより、金属酸化物層または金属窒化物層等を形成することが出来、これらは反射防止層等に有用な中屈折率層や高屈折率層を形成することが出来、更には導電層や帯電防止層を形成することも出来る。
【0056】
このように、本発明に有用な反応性ガスの物質として、有機フッ素化合物及び金属化合物を好ましく挙げることが出来る。
【0057】
本発明に好ましく使用する反応性ガスの有機フッ素化合物としては、フッ化炭素やフッ化炭化水素等のガスが好ましく、例えば、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン等のフッ化炭素化合物;1,1−ジフルオロエチレン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等のフッ化炭化水素化合物;ジフルオロジクロロメタン、トリフルオロクロロメタン等のフッ化塩化炭化水素化合物;1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、パーフルオロブタノール等のフッ化アルコール;ビニルトリフルオロアセテート、1,1,1−トリフルオロエチルトリフルオロアセテート等のフッ化カルボン酸エステル;アセチルフルオライド、ヘキサフルオロアセトン、1,1,1−トリフルオロアセトン等のフッ化ケトン等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。有機フッ素化合物がプラズマ放電処理によって、腐食性ガスあるいは有害ガスが発生しないような化合物を選ぶのが好ましいが、それらが発生しない条件を選ぶことも出来る。有機フッ素化合物を本発明に有用な反応性ガスとして使用する場合、常温常圧で有機フッ素化合物が気体であることが目的を遂行するのに最も適切な反応性ガス成分としてそのまま使用出来好ましい。これに対して常温常圧で液体または固体の有機フッ素化合物の場合には、加熱や減圧等の気化装置などの手段により気化して使用すればよく、また適切な有機溶媒に溶解して噴霧あるいは蒸発させて用いてもよい。本発明に有用な有機フッ素化合物は、例えば、本発明の光学フィルムが反射防止フィルムの場合、その低屈折率層を形成することが出来る。
【0058】
反応ガス中に上記の有機フッ素化合物を用いる場合、プラズマ放電処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の有機フッ素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0059】
また、本発明に好ましく用いられる反応性ガスの金属化合物としては、Al、As、Au、B、Bi、Ca、Cd、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Sb、Se、Si、Sn、V、W、Y、ZnまたはZr等の金属化合物または有機金属化合物を挙げることが出来、Al、Ge、In、Sb、Si、Sn、Ti、W、ZnまたはZrが有機金属化合物として好ましく用いられる。
【0060】
これらのうち珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシラン等のアルキルシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の珪素アルコキシド等の有機珪素化合物;モノシラン、ジシラン等の珪素水素化合物;ジクロルシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化珪素化合物;その他オルガノシラン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。本発明においては、これらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。上記の有機珪素化合物は、取り扱い上の観点から珪素アルコキシド、アルキルシラン、有機珪素水素化合物が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、特に有機珪素化合物として珪素アルコキシドが好ましい。
【0061】
本発明に有用な反応性ガスとしての珪素以外の金属化合物としては、特に限定されないが、有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。有機金属化合物の有機成分としてはアルキル基、アルコキシド基、アミノ基が好ましく、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラジメチルアミノチタン等を好ましく挙げることが出来る。またハロゲン化金属化合物としては、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等を挙げることが出来、更に金属水素化合物としては、モノチタン、ジチタン等を挙げることが出来る。本発明においては、チタン系の有機金属化合物を好ましく用いることが出来る。
【0062】
上記有機金属化合物を放電部に導入するには、何れも、常温常圧で、気体、液体または固体の何れの状態のものであっても構わないが、それが液体または固体の場合は、加熱、減圧または超音波照射等の気化装置などの手段により気化させて使用すればよい。本発明においては、気化したり、蒸発させてガス状として使用することが好ましい。常温常圧で液体の有機金属化合物の沸点が200℃以下のもであれば気化を容易に出来るので、本発明の薄膜の製造に好適である。また有機金属化合物が金属アルコキシド、例えばテトラエトキシシランやテトライソプロポキシチタンのような場合、有機溶媒に易溶であるため有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−ヘキサン等に希釈して使用してもよい。有機溶媒は、混合溶媒として使用してもよい。
【0063】
本発明において、有機金属化合物を反応性ガスとして反応ガスに使用する場合、反応ガス中の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。上記金属化合物は同種あるいは異種の金属化合物を数種類混合して使用してもよい。
【0064】
なお、上記のような有機フッ素化合物及び/または有機金属化合物の反応性ガスに水素、酸素、窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、オゾン、過酸化水素を希ガスに対して0.1〜10体積%混合させて使用してもよく、このように補助的に使用することにより薄膜の硬度を著しく向上させることが出来る。
【0065】
本発明の後述の光学フィルムが、反射防止層を有するフィルムの場合、例えば、有機珪素化合物は低屈折率層を形成するのに適しており、また、チタン系有機金属化合物は高屈折率層を形成するのに適しており、何れも好ましく用いられる。また、これらを混合したガスを用いて、その混合比率を調整することにより屈折率を制御して中屈折率層とすることも出来る。
【0066】
上記反応ガスを用いてプラズマ放電処理で形成された低屈折率層や高屈折率層は、全てではないが主に金属の酸化物からなっていると考えられている。例えば、有機珪素化合物による低屈折率層と有機チタン化合物による高屈折率層の積層体には、低屈折率層が酸化珪素、また高屈折率層が酸化チタンをそれぞれ主成分として有していることが好ましい(ここで本発明において、主成分として有しているとは形成された薄膜中にそのものを50質量%以上有していることをいう)。この際、酸化チタンを主成分とする高屈折率層に微量の酸化珪素が混入してもよいし、また反対に酸化珪素を主成分とする低屈折率層に微量の酸化チタンが混入してもよい。このような混合が起こることにより、各層の密着性(接着性)を改善することも出来る。もちろん、合目的の屈折率に調整するために、あるいは、その他の目的で反応ガス中に主成分以外の有機金属化合物あるいはフッ素含有化合物を混合添加することも出来、反応ガスを反応ガス供給部から供給する前の段階で適宜混合しておくことが好ましい。前述のように、放電部には反応ガスで満たされており、例え同伴空気が若干処理室に入り込んだとしても実際には、微量の空気(酸素や窒素)あるいは水分の影響は無視出来る。なお、処理条件によっては、意図的に反応ガスに空気(酸素あるいは窒素)や水分を添加して処理する場合もある。
【0067】
〔基材〕
次に、本発明に係る基材について説明する。
【0068】
本発明に係わる基材としては、セルロースエステルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、セルロース系フィルム、その他の樹脂フィルム等を挙げることが出来、例えば、セルロースエステルフィルムとしてはセルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート;ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンフタレートフィルム、1,4−ジメチレンシクロヘキシレンテレフタレート、あるいはこれら構成単位のコポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルムとしてはビスフェノールAのポリカーボネートフィルム;ポリスチレンフィルムとしては、シンジオタクティックポリスチレンフィルム;ポリオレフィンフィルムとしてはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム;ポリビニルアルコール系フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム;セルロース系フィルムとしてはセロファン;その他の樹脂フィルムとしては、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等を挙げることが出来る。
【0069】
これらのフィルムの素材を適宜混合して得られたフィルムも好ましく用いることが出来る。例えば、ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品の樹脂を混合したフィルムを用いることも出来る。また、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォンあるいはポリエーテルスルフォン等の固有の複屈折率が高い素材であっても、溶液流延あるいは溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸する条件等を適宜設定することにより、本発明に適した基材を得ることが出来る。本発明においては、上記の記載のフィルムに限定されない。
【0070】
本発明のプラズマ放電処理に適した基材の厚さとしては、10〜1000μm程度のフィルムを好ましく用いることが出来、より好ましくは10〜200μmであり、特に10〜60μmの薄手の基材を好ましく用いることが出来る。
【0071】
本発明において、上記基材としてのフィルムのうちで、セルロースエステルフィルムが特に好ましく用いられる。
【0072】
ここで、本発明に特に有用な基材としてのセルロースエステルフィルムについて述べる。本発明に有用なセルロースエステルフィルムは、セルロースの水酸基を、アシル基、特に炭素原子数が2〜4のアシル基で2.40〜2.98置換したセルロースエステルを使用したものが好ましい。このようなセルロースエステルとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートを挙げることが出来、中でもセルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。これらの好ましいセルロースエステルにおいて、アセチル基の置換度が1.6以上であることが特に好ましい。セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて定法により反応させて得ることが出来る。特に混酸セルロースエステルの場合には、例えば混酸エステルでは特開平10−45804号公報に記載の方法で反応して得ることが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0073】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0074】
これらセルロースエステルは後述するように一般的に溶液流延製膜法と呼ばれる方法で製造(製膜)される。この方法は、無限に移送する無端の金属ベルト(例えばステンレスベルト)あるいは回転する金属ドラム(例えば鋳鉄で表面をクロムメッキしたドラム)等の流延用金属支持体(以降、単に金属支持体ということもある)上に、加圧ダイからドープ(セルロースエステル溶液のこと)を流延(キャスティング)し、金属支持体上のウェブ(ドープ膜)を金属支持体から剥離し、乾燥させて製造するものである。
【0075】
ドープの調製に用いる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等を好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げることが出来る。また、後述の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において金属支持体上に形成されたウェブから溶媒を乾燥させる温度は、ウェブ中の有機溶媒の発泡を防止する観点から、有機溶媒の沸点以下が好ましく、30〜80℃が好ましい。例えば、上記の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40℃)、酢酸メチル(同56℃)、アセトン(同56℃)、酢酸エチル(同76℃)等である。上記の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド及び酢酸メチルが特に好ましく用いられる。ドープには、良溶媒を全有機溶媒に対して50質量%以上含み、良溶媒の他に貧溶媒として、0.1〜30質量%の炭素原子数1〜4のアルコールやシクロヘキサンを含有させることが好ましい。特に好ましくは10〜30質量%で前記アルコールを含むことが好ましい。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等を挙げることが出来、これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。ドープとして、良溶媒70〜95質量%に対してエタノール5〜30質量%が好ましい。これら貧溶媒を含むドープを金属支持体に流延後、金属支持体上でウェブから溶媒の蒸発が始まるとアルコール(貧溶媒)の比率が多くなるに従いウェブがゲル化し、ウェブが丈夫になるので、有機溶媒を多く含んでいても金属支持体から容易に剥離することが出来る。またドープ中の貧溶媒の割合が少ない場合には、セルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0076】
ドープ調製方法としては、主たる有機溶媒の沸点を越した温度で、圧力を高くして溶解する高温溶解法、−100〜−10℃に冷却して溶解する冷却溶解法、更に高圧で溶解する高圧溶解法等があり、いずれも好ましく用いることが出来るが、作業の容易さ、設備がシンプル等の理由から高温溶解法が特に好ましい。
【0077】
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを挙げることが出来る。リン酸エステル系としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;フタル酸エステル系としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等;トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等;グリセリンエステルとしては、トリアセチン、トリブチリン等;グリコール酸エステル系では、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等;その他のカルボン酸エステルの例としては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルを挙げることが出来る。これらのうち、リン酸エステル系可塑剤やグリコール酸エステル系の可塑剤が好ましい。これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%であることが好ましい。
【0078】
本発明に係わるセルロースエステルフィルムには、画像表示装置として屋外に置かれた場合等の劣化防止の観点から紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることが出来る。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などを挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0079】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート等を挙げることが出来、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン171、チヌビン326(チバ・スペッシャリティ・ケミカル社製)等が市販されており、好ましく用いることが出来る。
【0080】
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤も本発明に係わるセルロースエステルフィルムに有用なものの一つである。例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来る。
【0081】
本発明の光学フィルムには、紫外線吸収剤として透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤を好ましく用いることが出来、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0082】
本発明に有用な基材としてのセルロースエステルフィルムには、マット剤をセルロースエステルフィルム中に含有させることによって、搬送や巻き取りをし易くすることが出来る。マット剤は出来るだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることが出来る。中でも二酸化珪素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の一次粒子または二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。二酸化珪素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化珪素の微粒子としては日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
【0083】
本発明に有用な基材としてのセルロースエステルフィルムの製膜方法は、上記ドープを、金属支持体、例えばステンレスベルト上に加圧ダイから流延してウェブを形成させ、ウェブの表面側及び金属支持体の裏面側から加熱して有機溶媒を蒸発させて乾燥する。ウェブ表面からは乾球温度30〜80℃、露点温度10℃以下の程度の温風を当て、裏面側からは、同様の温風を当てても、赤外線を照射しても、あるいは主たる有機溶媒の沸点以下の温度の温水を直接当てる方法が行われる。特に裏面加熱は温水加熱が好ましい。剥離点においてステンレスベルトからウェブを剥離し、ロールで引回すロール乾燥機、あるいはウェブの両端を把持して幅保持するか横延伸したりして、ウェブを乾燥し巻き取ることによってセルロースエステルフィルムを製膜することが出来る。剥離する際の後述の残留溶媒量は、乾燥条件により5〜150質量%が望ましく、40〜120質量%が好ましい。巻き取る時の残留溶媒量は、本発明においては、セルロースエステルフィルムの残留溶媒量は2質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%未満であることが特に好ましい。セルロースエステルフィルムのような溶液流延製膜法により製膜して得られる基材は有機溶媒が全て蒸発しきれないで有機溶媒が残存することがあるが、これを残留溶媒量といい、残留溶媒量が少ないほど後のプラズマ放電処理に対する弊害が少なくて済む。残留溶媒量は下記の式で表される。
【0084】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mは残留溶媒量を測定する試料の質量、NはMの試料を110℃で3時間加熱して吸湿しないように室温に戻した質量である。
【0085】
本発明に係わる基材としての光学特性は、面内レターデーションR0が0〜1000nmのもの、厚み方向のレターデーションRtが0〜300nmのものが好ましく、または、波長分散特性のR0(600)/R0(450)が0.7〜1.3であることが好ましく、特に1.0〜1.3であること好ましい。ここで、R0(450)は波長450nmの光による3次元屈折率測定に基づいた面内レターデーション、R0(600)は波長600nmの光による3次元屈折率測定に基づいた面内レターデーションを表す。
【0086】
〔基材の被覆物及び被覆層〕
本発明に係わる基材は、前述のフィルムだけで基材として用いる以外に、前述のフィルム表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等の被覆層を塗設したもの、或いは前述のフィルムに直接、または上記被覆層の上に、防眩層やクリアハードコート層、バックコート層、または帯電防止層等の被覆層を設層したものを基材として用いることが出来る。
【0087】
本発明において有用な被覆層として、不飽和エチレン性モノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層で、活性線硬化性の組成物または熱硬化性の組成物を用いるのが好ましく、特に活性線硬化性組成物を用いるのが好ましい。ここで、活性線硬化組成物とは、不飽和エチレン性モノマーを主として含有する組成物、または不飽和エチレン性基を有する比較的分子量の大きい化合物(通常、樹脂と称する)を含有する組成物で、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などにより硬化層を形成する組成物をいう。活性線硬化性組成物としては、紫外線硬化性組成物や電子線硬化性組成物などが代表的なものとして挙げることが出来、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する組成物でもよい。
【0088】
本発明の被覆物に有用な紫外線硬化性組成物(紫外線硬化性樹脂を含)について述べる。
【0089】
紫外線硬化性組成物に主として含有されている樹脂成分としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0090】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって、特開昭59−151110号公報に記載されているように得ることが出来る。
【0091】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって、特開昭59−151112号公報に記載されているように得ることが出来る。
【0092】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、下記のごとき光重合開始剤を添加して反応させた特開平1−105738号公報に記載のものを挙げることが出来る。光重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等を挙げることが出来、2種以上を併用したものも用いられる。
【0093】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0094】
紫外線硬化性組成物は、光重合開始剤あるいは増感剤を含有し、紫外線により硬化される。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤を使用する際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。
【0095】
紫外線硬化性組成物には、上記樹脂成分を希釈し且つ重合し硬化に関与する成分として不飽和エチレン性基を1〜4個1分子中に有するモノマーを含有させることがある。該モノマーとしては、例えば、不飽和エチレン性基を1個有するモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和エチレン性基を二つ以上有するモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルベンゼン等を挙げることが出来る。紫外線硬化性樹脂について多くの市販品があり、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製);アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)等を挙げることが出来る。このような市販品の紫外線硬化性樹脂を本発明に係わる被覆物として適宜選択して利用出来る。
【0096】
紫外線硬化性組成物を光硬化反応させて皮膜を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域から可視光線領域にかけて光源に対しては、それらの領域に吸収極大を有する増感剤を組成物に含有させることによって使用を可能にすることが出来る。
【0097】
紫外線硬化性組成物は有機溶媒を含有して紫外線硬化性組成物塗布液としてもよく、不飽和エチレン性モノマーを希釈性モノマーとして使用する場合でも、有機溶媒を含有させるのが好ましい。
【0098】
紫外線硬化性組成物塗布液に使用する有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることが出来、適宜選択し、あるいはこれらを混合して使用出来るが、上記のプロピレングリコールモノアルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノアルキルエーテルエステルを5質量%以上含有させることが好ましく、これらを5〜80質量%含有する混合有機溶媒を用いることがより好ましい。
【0099】
紫外線硬化性組成物塗布液を基材に塗布する方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押し出しコーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布の際の液膜厚(ウェット膜厚ともいう)で0.1〜30μmが好ましく、より好ましくは、0.5〜15μmである。
【0100】
紫外線硬化性組成物塗布液を塗布し、乾燥した後、もしくは生乾きの状態で、紫外線光源を上記のエネルギー値程度に照射し硬化反応を行わせる。この時の照射時間は、基材の移送速度、塗布液の組成、塗布厚さ等によって異なるが、概して0.5秒〜5分程度で照射及び硬化が完結することが好ましく、3秒〜2分がより好ましい。
【0101】
硬化した被覆層のブロッキング防止やすり傷防止等のためあるいは防眩層とするために、無機あるいは有機の微粒子を加えることが好ましい。例えば、無機微粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることが出来、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることが出来、これらを紫外線硬化性組成物に加えることが出来る。これらの微粒子粉末の平均粒径は、0.005〜1μmが好ましく、特に0.01〜0.1μmのものが好ましい。紫外線硬化性樹脂と微粒子粉末との割合は、樹脂100質量部に対して、微粒子粉末を0.1〜10質量部となるように配合することが望ましい。このようにして形成された紫外線硬化性被覆層の表面粗さは、目的や種類に応じて異なるが、中心線平均表面粗さRa(前出)として、Raがクリアーハードコート層なら1〜50nm、防眩層なら0.1〜1μm程度が好ましい。このようにして得られた樹脂層表面に、本発明の方法で均一に薄膜を形成することが出来る。
【0102】
〔薄膜、積層体及び光学フィルム〕
本発明において、薄膜の形成は、図5に示したような装置を用いて、対向電極の間隙の放電部で、基材を大気圧もしくはその近傍の圧力下で上記反応ガスによりプラズマ放電処理することによって行われる。本発明における大気圧もしくはその近傍の圧力下でのプラズマ放電処理は、基材の幅が、例えば2000mmもの非常に幅広いものを行うことが出来、また、処理速度を100m/分の速度で行うことも出来る。本発明において、プラズマ放電を開始する際、まず処理室の空気を真空ポンプで引きながら、反応ガスまたは希ガスを処理室に導入して、空気と置換してから放電部に反応ガスを供給し、放電部を満たすのが好ましい。その後基材を移送させて処理を行う。
【0103】
本発明は、図3または4に示したように、多層の薄膜を連続的に設けることが出来る。例えば、プラズマ放電処理して反射防止層を有する光学フィルムを製造する場合、基材表面に連続して、チタンアルコキシドで屈折率が1.6〜2.3の高屈折率層の薄膜を、この上にシランアルコキシド或いは有機フッ素化合物を用いて屈折率が1.3〜1.5の低屈折率層の薄膜を効率的に形成させることが出来る。このような、本発明の方法で多層の薄膜を連続して積層させることにより薄膜各層の間の密着性に優れた積層体を形成させることが出来る。
【0104】
本発明の光学フィルムの積層構成を下記に例示する。ここで、隣接する各層を/を挟んで表示したものであり、左側(基材のおもて面)から順に右側(基材の裏面)へと積層構成を示している。
【0105】
A:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/ハードコート層/基材
B:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/ハードコート層/帯電防止層/基材/粘着層
C:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/中屈折率層/ハードコート層/帯電防止層/基材
D:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/ハードコート層/基材/導電性層/粘着層
E:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/中屈折率層/ハードコート層/基材/帯電防止層/バックコート層/粘着層
F:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/導電性中屈折率層/ハードコート層/基材/バックコート層/粘着層
G:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/ハードコート層/基材/導電性層/粘着層
H:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/中屈折率層/帯電防止剤含有ハードコート層/基材
I:防汚層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/ハードコート層/基材/導電性層/バックコート層
ここで、ハードコート層はクリアハードコート層または防眩層を指している。
【0106】
上記のように、機能層の塗設及び本発明のプラズマ放電処理により様々な組み合わせの積層体を形成することが出来る。図3または4に示したような連続的にプラズマ放電処理をすることにより、上記のような所望の光学フィルムを精度よく得ることが、本発明の特徴である。
【0107】
上記防汚層としては、既にプラズマ放電処理した低屈折率層の表面に、有機フッ素樹脂を0.1〜20nmの膜厚で塗設した層であっても、また有機フッ素化合物を含む反応ガスで本発明のプラズマ放電処理した層であってもよく、表面を有機フッ素化合物で被覆したものを好ましく用いることが出来る。実際的には連続的に低屈折率層形成後に防汚層をプラズマ放電処理することにより形成するのが好ましい。
【0108】
上記低屈折率層としては、有機フッ素化合物を含む反応ガスで本発明のプラズマ放電処理して得られた有機フッ素化合物層あるいはアルコキシシラン等の有機珪素化合物を用いて形成された、主に酸化珪素を有する層が好ましく、高屈折率層としては有機金属化合物を含むガスを大気圧プラズマ放電処理して得られた金属酸化物、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウムなどを有する層である。それぞれの薄膜はこれだけに限定されるものではなく、層構成もこれらに限定されるものではない。
【0109】
上記中屈折率層としては、低屈折率層用反応性ガスと高屈折率層用反応性ガスを適宜混合して屈折率を調整したものでもよく、あるいは例えば重合性基を有する有機化合物を混合したものでもよい。
【0110】
図3のように一対の対向電極の放電部に供給する反応ガスを低屈折率層用の成分とし、次の一対の対向電極の放電部では高屈折率層用の成分を供給するというように交互にすることにより、また、図4のようにそれぞれの独立した処理部に、それぞれの成分の反応ガスを交互に供給することにより、高屈折率層と低屈折率層を交互に有する均一の膜厚の積層体を形成出来ることが本発明の特徴であり、このような連続積層体の形成方法は特に好ましい方法である。
【0111】
膜厚は放電部や反応ガス濃度、基材の搬送速度によって適宜調整することが出来る。
【0112】
本発明のプラズマ放電処理により、基材上に形成した薄膜は片面のみにあるが、巻き取り後、その反対側をプラズマ放電処理するために装置内に通してもよい。帯電防止層を金属酸化物で形成する場合に、帯電防止層または導電性層は、金属酸化物微粒子や架橋カチオンポリマー粒子等の塗布液を膜厚0.1〜2μm程度の層に基材に塗布して形成することが出来るが、本発明のプラズマ放電処理によっても薄膜の導電性層を形成することが出来る。例えば、酸化スズ、酸化インジウムあるいは酸化亜鉛等の金属酸化物の導電性層を形成してもよい。また、特願2000−273066記載の易接着加工、特願2000−80043記載の帯電防止加工等も本発明のプラズマ放電処理を用いて実施することが出来る。
【0113】
本発明のプラズマ放電処理方法による薄膜形成条件は前述プラズマ放電処理装置のところで述べたが、更に、処理するためのその他の条件等について述べる。
【0114】
本発明の薄膜を形成する際、あらかじめ基材を50〜120℃に熱処理してからプラズマ放電処理することにより均一な薄膜を形成し易く、予加熱するのは好ましい方法である。熱処理することにより、吸湿していた基材を乾燥させることが出来、低湿度に維持したままプラズマ放電処理することが好ましい。60%RH未満、より好ましくは40%RHで調湿した基材を吸湿させることなくプラズマ放電処理することが好ましい。含水率は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
【0115】
また、プラズマ放電処理後の基材を50〜130℃の熱処理ゾーンで1〜30分熱処理することにより薄膜を安定化させることが出来、有効な手段である。
【0116】
更に、本発明の多段のプラズマ放電処理により積層体を作製する際、それぞれのプラズマ放電処理前後に処理面に紫外線を照射してもよく、形成した薄膜の基材への密着性(接着性)や安定性を改善することが出来る。紫外線照射光量としては50〜2000mJ/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2未満では効果が十分ではなく、2000mJ/cm2を越えると基材の変形等が生じる恐れがある。
【0117】
本発明で形成される薄膜の膜厚としては、1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0118】
本発明のプラズマ放電処理により形成する薄膜の平均膜厚に対する膜厚偏差は小さく、均一な薄膜を形成することが出来、優れた薄膜形成方法である。薄膜の膜厚偏差は±10%のものを容易に得ることが出来、好ましくは±5%以内、特に±1%以内の均一な薄膜を得ることが出来る。
【0119】
上述の、無機または有機微粒子を含有する組成物塗布液を基材に塗布乾燥し、表面をRaが0.1〜0.5μm程度凹凸表面を有する機能層、例えば防眩層の上に、プラズマ放電処理により均一な膜厚の薄膜を形成することも出来る。例えば、その薄膜が低屈折率層あるいは高屈折率層等の場合、光学干渉層として設けることが出来る。
【0120】
本発明の光学フィルムは本発明のプラズマ放電処理により形成する薄膜及びその積層体により構成される。
【0121】
本発明の光学フィルムとしては、反射防止フィルム、防眩性反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム、導電性フィルム、帯電防止フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム等があるが、これらに限定されない。
【0122】
〔偏光板〕
本発明の方法で作製した光学フィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用であり、公知の方法で偏光板を作製することが出来る。これらの光学フィルムは薄膜の均一性が高いため、各種表示装置に好ましく用いられ、優れた表示性能を得ることが出来る。
【0123】
偏光板は、例えばポリビニルアルコールフィルムにヨウ素や二色性色素を含有させ、縦方向に延伸した偏光子を保護フィルムで両側をサンドイッチしたような構成を有している。本発明の偏光板は、本発明のプラズマ放電処理により作製した積層体の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いることにより、より均一な薄膜を有する積層体の光学フィルムを低コストで生産性よく提供することが出来る。
【0124】
〔画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は特に限定されないが、例えば液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置、無機ELディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置等の各種ディスプレイ装置を挙げることが出来る。本発明の光学フィルムは均一な薄膜が形成されているため、これらの表示装置に用いた場合、ムラのない高い表示品質の表示装置を低コストで提供することが出来る。
【0125】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0126】
〔評価方法〕
〈反射率の測定1(膜厚と偏差)〉
試料の分光反射率を分光光度計U−4000型(日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件で反射率の測定を行った。測定では、試料の観察面の裏面を、目の細かいサンドペーパーを用いて粗面化処理した後、黒色のスプレーを吹きつけ光吸収処理を行い、試料裏面での光の反射を防止した。観察面について、400nm〜700nmの波長での反射率の測定を行った。得られる反射スペクトルデータより、薄膜層の膜厚を算出する。セルロースエステルフィルムの製膜時の幅方向及び長手方向についてそれぞれ10cm間隔で10点を測定して膜厚のバラツキをnm単位で表す。
【0127】
〈反射率の測定2(反射率が0.6%以下となった点の数)〉
上記観察面の裏面を光反射を防止したのち、観察面について同様に反射スペクトルを測定しスペクトルデータから、幅手方向に10点測定を行い、450〜650nmの範囲で反射率が0.6%以下となった点の数をカウントした。
【0128】
〈目視評価(ムラ)〉
幅方向全幅×長手方向50cmの試料を裏面に黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、表面から蛍光灯の反射を観察して反射光のムラについて評価した。
【0129】
◎:ムラが全く認められない
○:わずかにムラが認められる
△:ムラが認められる
×:明らかにムラが認められる。
【0130】
〈目視評価(偏光板のムラ、液晶表示パネルのムラ)〉
偏光板及び液晶表示パネルについて、表面から蛍光灯をあてて観察して反射光のムラについて評価した。基準は上記と同様である。
【0131】
〔基材の作製〕
下記のように基材を準備した。
【0132】
〈ドープ〉
《ドープA》
アエロジル200V 1kg
エタノール 9kg
上記素材をディゾルバ攪拌機で30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行い酸化珪素微粒子分散液を得た。
【0133】
(酸化珪素微粒子添加液Aの調製)
セルローストリアセテート(アセチル置換度:2.7) 6kg
メチレンクロライド 140kg
を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した後、10kgの上記酸化珪素微粒子分散液を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、酸化珪素微粒子添加液Aを調製した。
【0134】
(ドープAの調製)
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
セルローストリアセテート(アセチル置換度:2.7) 100kg
エチルフタリルエチルグリコレート 7kg
チヌビン171 2kg
上記組成物のメチレンクロライドとエタノールを密閉容器に投入し、攪拌しながらセルローストリアセテート、エチルフタリルエチルグリコレート及びチヌビン171を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。このセルローストリアセテートを流延する温度まで温度を下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更にこのセルローストリアセテート溶液100kg当たり酸化珪素微粒子添加液を2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープAを調製した。
【0135】
《ドープB》
(酸化珪素微粒子添加液Bの調製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度:2.0、
プロピオニル基置換度:0.8) 6kg
酢酸メチル 100kg
エタノール 40kg
上記の素材を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化珪素微粒子分散液を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、酸化珪素微粒子添加液Bを調製した。
【0136】
(ドープBの調製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度:2.0、
プロピオニル基置換度:0.8) 100kg
酢酸メチル 290kg
エタノール 85kg
トリフェニルフォスフェート 8kg
エチルフタリルエチルグリコレート 4kg
チヌビン109 2kg
酢酸メチルとエタノールを密閉容器に投入し、攪拌しながら素材を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合した。このセルロースプロピオネート溶液を流延する温度まで温度を下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、セルロースプロピオネート溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更に溶液100kgあたり酸化珪素微粒子添加液Bを2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープBを調製した。
【0137】
《ドープC》
(酸化珪素微粒子添加液Cの調製)
セルローストリアセテート(アセチル置換度:2.88) 6kg
メチレンクロライド 140kg
を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化珪素分散液を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、酸化珪素微粒子添加液Cを調製した。
【0138】
(ドープCの調製)
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
トリアセチルセルロース(アセチル置換度:2.88) 100kg
トリフェニルフォスフェート 8kg
エチルフタリルエチルグリコレート 4kg
チヌビン326 0.4kg
チヌビン109 0.9kg
チヌビン171 0.9kg
上記組成物のメチレンクロライドとエタノールを密閉容器に投入し、攪拌しながら素材を投入し、加熱、撹拌しながら、完全に溶解、混合し、セルローストリアセテート溶液を調製した。このセルローストリアセテートを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更にセルローストリアセテート溶液100kgあたり酸化珪素微粒子添加液Cを2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープCを調製した。
【0139】
《セルロースエステルフィルム》
上記で調製したドープA、B及びCを用いて下記のようにしてセルロースエステルフィルム1〜3を作製した。なお、作製したセルロースエステルフィルムロールの幅を1300mm、ロール長さを2500mとした。
【0140】
(セルロースエステルフィルム1の作製)
ドープAを濾過した後、温度を35℃としたドープAを加圧ダイから、無限移行する無端のステンレスベルト上に流延した。ウェブの表面側から乾燥風で加熱し、またステンレスベルトの裏面から38℃の温水で加熱し、残留溶媒量35質量%でウェブをステンレスベルトから剥離した。
【0141】
剥離後、ウェブの両端をクリップで把持し幅保持をしながら100℃で乾燥させた後、クリップからウェブを解放後、ロール搬送しながら120℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施して、膜厚60μmのセルロースエステルフィルム1を作製した。
【0142】
(セルロースエステルフィルム2及び3の作製)
ドープAをドープBに代え、膜厚50μmとした以外はセルロースエステルフィルム1と同様にセルロースエステルフィルム2を作製した。また、ドープAをドープCに代え、膜厚40μmとした以外はセルロースエステルフィルム1と同様にセルロースエステルフィルム3を作製した。
【0143】
〈基材〉
セルロースエステルフィルム1〜3を用いて、下記のようにして基材1〜9とした。
【0144】
《基材1》
セルロースエステルフィルム1をそのまま(何も加工しないで)基材1とした。
【0145】
《基材2》
セルロースエステルフィルム1のB面側(ステンレスベルトにウェブが接していた側のフィルムの面をB面と定義する)に下記のクリアハードコート層塗布組成物を液膜厚が13μmとなるように押し出しコーターで塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線照射し、乾燥膜厚で3μmの中心線平均表面粗さ(Ra)13nmのクリアハードコート層を設け、基材2とした。
【0146】
Figure 0004000830
【0147】
《基材3》
セルロースエステルフィルム1のB面に下記の防眩層塗布組成物を液膜厚が13μmとなるように押し出しコーターで塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線照射し、乾燥膜厚で5μmの防眩層(中心線平均表面粗さ(Ra)0.3μm)を設け、基材3とした。
【0148】
Figure 0004000830
以上を高速攪拌機(TKホモミキサー、特殊機化工業(株)製)で攪拌し、その後マントンゴーリン衝突型分散機(高圧分散装置、ゴーリン社製)で分散した後、下記の成分を添加し、防眩層塗布組成物を調製した。
【0149】
Figure 0004000830
【0150】
《基材4〜6》
上記の基材1〜3のセルロースエステルフィルム1をセルロースエステルフィルム2に変更した以外は同様にして基材4〜6とした。
【0151】
《基材7》
セルロースエステルフィルム3のA面側(ステンレスベルト上でのウェブの空気側のフィルム面をA面と定義する)下記バックコート層塗布組成物を液膜厚13μmとなるように押し出しコーターで塗布し、乾燥温度80℃で乾燥し、バックコート層を設け、基材7とした。
【0152】
Figure 0004000830
【0153】
《基材8》
セルロースエステルフィルム3のA面に上記のバックコート層を基材7と同様に塗設し、その後、B面側に上記クリアハードコート層を基材2と同様に設け、基材8とした。
【0154】
《基材9》
セルロースエステルフィルム3のA面に上記のバックコート層を基材7と同様に塗設し、その後、B面側に上記防眩層を基材3と同様に設け、基材9とした。
【0155】
上記の基材1〜9とそれに使用した使用セルロースエステルフィルム1〜3について下記表1に層構成をまとめた。
【0156】
【表1】
Figure 0004000830
【0157】
実施例1
《光学フィルム1〜3の作製》
基材1、4及び7のB面に、図5に示したような装置を用いて放電部における圧力を100kPaとして下記高屈折率形成用反応ガスを用いプラズマ放電処理を行った。図5の予備室の圧力を処理室より0.3Pa低くして、何れにもアルゴンガスを導入し満たし、放電部には反応ガス供給部から下記の組成の反応ガスを供給し、排気口から処理後のガスを排気した。予備室の圧力は外界に対して0.3Pa高くした。対向電極のロール電極は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケットロール母材(冷却機能は図1には図示していない)で出来ており、ロールの外周にはセラミック溶射によりアルミナを1mm被覆し、その後テトラメトキシシランの有機溶媒溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させて封孔処理を行った固体誘電体を有するものである。ロール電極の一方をアースに接地した。ロール電極の間隙を1.5mmとし、放電プラズマ発生に用いる使用電源には日本電子(株)製の高周波電源JRF−10000で13.56MHzに設定し、放電密度を300W・min/m2としてプラズマ放電処理を行い、基材のB面側に膜厚約100nmとなるように高屈折率層を形成し、光学フィルム1〜3を作製した。なお、ロール電極はラインドライブモータと同期させて回転させた。評価方法に示した幅手方向及び長手方向の高屈折率層の反射率を測定して膜厚とその偏差を評価し、また評価方法に示した膜厚ムラを目視で評価し、結果を表2に示した。
【0158】
(高屈折率層形成用反応ガス組成)
希ガス:アルゴン 98.8体積%
反応性ガス:テトライソプロポキシチタン蒸気
(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング) 0.2体積%
水素ガス 1体積%
比較例1
プラズマ放電処理を図7の装置を使用し、一方向に基材を移送させた以外は実施例1と同様に行った。図7はロール電極を用い一方向に通過する基材を処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。図7において、一対の対向ロール電極10S及び10Tを有し、これらのロール電極10S及び10Tには放電のための電圧を印加出来る高周波電源80Sが電圧供給手段81Sと82Sを介して接続されている。ロール電極10S及び10Tは基材FT及びFSをそれぞれ別々に巻き回しながら回転することが出来る回転電極である。放電部100Sには大気圧もしくはその近傍の圧力下に維持され、反応ガス供給部30Sから反応ガスGが供給され放電部100Sにおいてプラズマ放電が行われる。前工程または元巻きから供給される基材FSはガイドロール20Sによりロール電極10Sに密着され、同期して回転移送され、放電部100Sで大気圧もしくはその近傍の圧力下で反応ガスによりプラズマ放電処理が施される。もう一方の電極10Tにおいても、同様に基材FTも処理される。図7には基材の折り返しはなく、ロール電極10S及び10Tを別々の基材FSとFTを移送し、基材FSとFTはそれぞれが同じ放電部において同時に処理される。21Sと21Tは送り出す側のガイドロールである。処理後の反応ガスは排出口40Sから排出される。
【0159】
比較例1はこのように、一方通過の基材を処理するものである。図示してないが図5のような処理室と予備室を有している。基材1、4及び7を用いて、装置として図7を使用したこと以外は実施例1と同様に連続的に基材のB面側に膜厚約100nmとなるように高屈折率層を形成し、光学フィルム11〜13を作製した。実施例1と比較して膜厚形成速度が遅かったため、約半分の速度で基材を搬送して処理しなければならなかった。
【0160】
評価方法に示した幅手方向及び長手方向の高屈折率層の反射率から膜厚及びその偏差を測定し、また評価方法に示した膜厚ムラを目視で評価し、結果を表2に示した。
【0161】
【表2】
Figure 0004000830
【0162】
(結果)
本発明の方法は、比較例と比べて約2倍の速度で処理することが出来た。これに対して、光学フィルム11〜13は処理ムラがあり、反射率による膜厚のムラも大きく本発明に対して何れも劣っていた。
【0163】
実施例2
基材2、3、5、6、8及び9を用い、図5のプラズマ放電処理装置を5個直列につないだ図4に示したような連続積層プラズマ放電処理装置を用いて、表面に複数の薄膜を形成した積層体の光学フィルムを下記のようにして作製した。該基材のB面側に(基材2、5、8はクリアハードコート層の上に各屈折率層を形成し、また基材3、6、9は防眩層の上に各屈折率層を形成)ロール電極の放電部側にして下記条件で、100kPaの圧力下で順に、低屈折率層用反応ガス、高屈折率層形成用反応ガス、低屈折率層形成用反応ガス、高屈折率層形成用反応ガス及び低屈折率層用反応ガスを用いてプラズマ放電処理を、基材/低屈折率層1(膜厚20nm)/高屈折率層1(膜厚23nm)/低屈折率層2(膜厚25nm)/高屈折率層2(膜厚95nm)/低屈折率層3(膜厚88nm)になるように連続的に行った。なお、低屈折率層、高屈折率層のそれぞれの膜厚が上記のようになるように放電条件、放電部をそれぞれ調節して行った。高屈折率層形成用反応ガス及び低屈折率層形成用反応ガスはそれぞれの回数共同じ組成のものを使用した。対向ロール電極、高周波数電源、周波数及び放電密度の条件を実施例1と基本的に同様にした。使用した高屈折率層用反応ガス組成物は屈折率が1.90となるように、また低屈折率層用反応ガス組成物は屈折率が1.46となるように配合されている。上記のようにプラズマ放電処理し、基材2、3、5、6、8及び9を用い、光学フィルム4〜9を作製した。
【0164】
上記で得られた積層体の光学フィルムを前記評価方法の反射率の測定を行い、反射率が0.6%以下となった点(反射率の測定2)の評価、及び目視による反射光のムラの評価を行い、結果を表3に示した。
【0165】
(高屈折率層形成用反応ガス組成)
希ガス:アルゴン 98.8体積%
反応性ガス:テトライソプロポキシチタン蒸気
(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング) 0.2体積%
水素ガス 1体積%
(低屈折率層形成用反応ガス組成)
希ガス:アルゴン 98.2体積%
反応性ガス:テトラメトキシシラン蒸気
(加熱した液体にアルゴンガスをバブリング) 0.3体積%
水素ガス 1.5体積%
比較例2
図7で示した装置が連続的に5個直列した装置(図5のような処理室と予備室を有している)を用いた以外は実施例2と同様に、基材2、3、5、6、8及び9の上に積層体を形成し、光学フィルム14〜19を作製した。
【0166】
上記で得られた積層体の光学フィルムを450〜650nmの反射率及び目視による反射光のムラの評価を行い、結果を表3に示した。図8は本発明の光学フィルム8の400〜700nmの反射率のスペクトルグラフを一例として示した図であるが、その他のスペクトルグラフは省略した。
【0167】
【表3】
Figure 0004000830
【0168】
(結果)
表3から、本発明の方法で製造された薄膜を有する積層体は、目的の膜厚の薄膜が均一に形成出来るため反射率が極めて低く、本発明の光学フィルム4〜9はは450〜650nmの波長領域において、何れも図8のごとく反射率0.6%以下で、しかもほとんど平らで波長によるムラが認められなかった。また目視によるムラも何れも全くなかった。これに対して、比較例の光学フィルム14〜19は図示してないが、しかも450〜650nmの範囲内で反射率が0.6%以上を示す測定点があり、ムラが目立った。目視においてもムラが観察された。また、プラズマ放電処理速度も本発明に対して約1/2に遅くしても、薄膜の膜厚が目標になかなか到達出来なかった。
【0169】
実施例3及び比較例3
実施例2及び比較例2で作製した積層体の光学フィルム8と9及び18と19を偏光板保護フィルムとして用いて、以下に述べる方法に従って偏光板8、9、18と19を作製し、評価を行った。
【0170】
〈偏光膜の作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃で縦方向に倍率5倍に一軸延伸した。これをヨウ素0.075質量部、ヨウ化カリウム5質量部、水100質量部からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6質量部、ホウ酸7.5質量部、水100質量部からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
【0171】
〈偏光板の作製〉
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と各偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0172】
工程1:実施例2及び比較例2で作製した光学フィルム8、9、18及び19をそれぞれ長手方向30cm及び巾手方向18cmの大きさに各2枚切り出し、2mol/lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。低屈折率層の面には、剥離性の保護フィルムを張り付けて処理を行った。
【0173】
工程2:上記偏光膜を長手方向30cm、幅手方向18cmの大きさに光学フィルムの数だけ切りだし、完全鹸化ポリビニルアルコール2質量%含有する水性接着剤槽中に1〜2秒間それぞれの偏光膜を浸漬した。
【0174】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1で処理したそれぞれの光学フィルムのA面側に貼り合わせ、更に偏光膜のもう一方の面に使用した同一の光学フィルムを接着剤と接する様に貼り合わせ(低屈折率層が外側となるように貼り合わせ)偏光膜をサンドウィッチ型に積層体とした。
【0175】
工程4:上記積層体中の過剰の接着剤と気泡を取り除くために、ハンドローラで20〜30N/cm2の圧力で、ローラスピードは約2m/分で工程3で積層押し且つ絞り出し圧着して貼り合わせた。
【0176】
工程5:工程4で圧着した積層体を80℃の乾燥機中で2分間乾燥処理し、偏光板8、9、18及び19を作製した。
【0177】
〈液晶表示パネル(液晶表示装置)〉
市販のNEC製カラー液晶ディスプレイ、MultiSync LCD1525J、型名LA−1529HMの液晶画像表示パネルの最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせて上記偏光板8、9、18及び19を張り付け液晶表示パネル8、9、18及び19を作製し、結果を表4に示した。
【0178】
偏光板及び液晶表示パネルについて、目視でムラの評価を行い、前述のムラの評価の基準で同様に評価し、表4に示した。
【0179】
【表4】
Figure 0004000830
【0180】
(結果)
本発明の偏光板及び偏光板を用いた液晶表示パネルは、ムラ、特に干渉模様のような色の付いたムラがなく優れた偏光板及び液晶表示パネルを得、品質の高いものとして提供出来ることがわかった。これに対して、比較例の偏光板及び液晶表示パネルはムラが多く、特に色の付いたムラが表示性能を劣化させ、実用として提供出来るものではなかった。
【0181】
【発明の効果】
本発明により、均一な薄膜を高い製膜速度で効率的に生産性よく作るプラズマ放電装置及びその装置で薄膜を形成する方法を提供出来る。これにより膜厚均一な高品質な光学フィルム、偏光板及び画像表示装置を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロール電極を用いて基材を往復させて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。
【図2】ベルト電極を用いて基材を往復させて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。
【図3】複数のロール電極を用いて基材を往復させて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。
【図4】基材を往復させて処理するロール電極対を連続的につなげて処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。
【図5】外界と遮断する処理室とその出入口の両側に予備室を有するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。
【図6】基材を往復させて処理するロール電極対を連続的につなげて処理するプラズマ放電処理装置の別の1態様を模式的に示した図である。
【図7】ロール電極を用い一方向に通過する基材を処理するプラズマ放電処理装置を模式的に示した図である。
【図8】本発明の光学フィルムの400〜700nmの反射率スペクトルグラフを一例として示した図である。
【符号の説明】
F、FS、ST 基材
G 反応ガス
G′ 処理後のガス
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G ロール電極
A1〜A5,B1〜B5 ロール電極
11A、11B、11C、11D、11E、11F、11G、11H、11I
折り返しロール(Uターンロール)
13A、13B ベルト電極
14C、14D、14E、14F サポートロール
20、20C、20E、20G、21、22、23 ガイドロール
30、30C、30E、30G 反応ガス供給部
31 ガス導入口
40、40C、40E、40G 排出口
60A、60B 予備室
65、66 ニップロール
70 処理室
71 処理室容器
80、80C、80E、80G 電源
81、81D、81H、81F、81J 電圧供給手段
100、100S、100T、101 放電部

Claims (10)

  1. 連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、
    少なくとも一対の対向電極と該対向電極の間に形成される放電部を有し、
    該放電部において該対向電極の一方の電極に接しながら該放電部を通過し処理された該基材が再び該対向電極のもう一方の電極に接しながら該放電部に移送するための折り返し移送手段を有し、
    該放電部において、往復して通過する該基材の間へ、該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、
    且つ該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
  2. 連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、
    複数対の対向電極と該対向電極の間に形成される複数の放電部を有し、
    それぞれの一方の電極に接しながらそれぞれの放電部を通過し処理された該基材を再び該対向電極のそれぞれのもう一方の電極に接しながらそれぞれの放電部に移送するための折り返し移送手段を有し、
    各放電部において、往復して通過する該基材の間へ、該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、
    且つ、それぞれの対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
  3. 連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、
    一対の対向電極と該対向電極の間に形成される放電部を有し、
    該放電部において該対向電極の一方の電極に接しながら該放電部を通過し処理された該基材が再び該対向電極のもう一方の電極に接しながら該放電部に移送するための折り返し移送手段を有し、
    該放電部において、往復して通過する該基材の間へ、該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、
    且つ該対向電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
  4. 対向電極が回転するロール電極であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
  5. 連続的に移送する基材の表面を大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理するプラズマ放電処理装置であって、
    少なくとも一つの回転するロール電極とこれに対向する複数の回転するロール電極との間に形成される複数の放電部を有し、
    該放電部において、対抗するロール電極の一方に接しながら該放電部を通過し処理された該基材が、再び該対抗するロール電極のもう一方に接しながら該放電部を通過し、処理することが可能な移送手段を有し、
    該放電部において往復して通過する該基材の間に該基材の移送方向と平行な方向に流れる大気圧またはその近傍の圧力の反応ガスを供給する手段及び処理後の排ガスを排出する手段を有し、
    且つ該対向するロール電極間に電圧を印加してプラズマ放電を発生させる手段を有することを特徴とするプラズマ放電処理装置。
  6. 前記反応ガスを供給する手段が、前記基材の幅と同等以上の幅を有するスリット状、或は、前記基材の幅方向に複数のパイプ状の吹き出し口を並べた構成を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
  7. 前記放電部において、往復して通過する前記基材の間へ供給される反応ガスは、該基材の幅方向全体で均一な流量あるいは流速であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
  8. 前記放電部における対向電極間の間隙は、0.5〜20mmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
  9. 前記放電部における対向電極間の間隙は、0.5〜5mmであることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ放電処理装置。
  10. 前記電源の周波数が100kHzを超え150MHz以下であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装置。
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