JP2011116113A - セルロースエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents

セルロースエステルフィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】密着性に優れたセルロースエステルフィルムを提供すること。
更に、上記セルロースエステルフィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】セルロースエステルフィルムの表層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Aと基層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Bが下記の(I)、(II)及び(III)の関係を満たすよう調整し、表層と基層の少なくとも一層に含まれる添加剤を非リン酸エステルとすること。
2.3≦A<2.85 (I)
2.80≦B≦3.0 (II)
A<B (III)
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステルフィルム及びその製造方法に関し、詳しくは、セルロースエステルフィルムの密着性に優れ、強度に優れたセルロースエステルフィルム及びその製造方法に関する。
従来、セルロースエステルフィルムはその強靭性と難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フィルムとして多く用いられている。セルロースエステルフィルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フィルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フィルムの支持体として用いられてきた。
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素又は二色性色素で染色することにより得られる。 多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースエステルフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。この偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、面内のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
一方、光学用途に用いるセルロースエステルフィルムを製造する方法としては、溶液製膜法が広く利用されている。この場合には、製造する際には高速製膜適性を付与する目的で、可塑剤を添加することが好ましい。これは、可塑剤を添加することによって、溶液製膜時の乾燥の際に溶媒を短時間で揮発させることができるためである。しかしながら、通常用いられている可塑剤を含む透明ポリマーフィルムは、例えば、乾燥工程等で高温にて処理しようとすると可塑剤等の添加剤の析出による発煙が生じたり、揮散した油分等が製造機に付着することにより、動作の不具合が生じたり、ポリマーフィルムに汚れが付着して面状故障が発生する場合がある。このため、可塑剤を用いた透明ポリマーフィルムに対する製造条件や処理条件には自ずと制約があった。
例えば、可塑剤としてリン酸エステル系のトリフェニルフォスフェート(TPP)を用いた場合、製造の乾燥過程における揮散が大きく製造ラインを汚してしまうという問題があった。
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)などに代表される画像表示装置の表面に使用される保護フィルムは一般的に耐擦傷性などの物理強度を付与するためにハードコート層が設けられ、更に外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために反射防止膜が積層されていることが多く、保護フィルムとハードコート層との十分な密着性が必要不可欠である。
特許文献1には保護フィルムとハードコート層との密着性を改善するため、片側の表面添加剤量を3〜9%とした面に塗布する、2種以上の溶剤の沸点差を規定する方法が記載されている。
また、特許文献2には塗布加工性の向上を目的として、表層の置換度Aと基層の置換度Bの関係が2.35≦置換度A≦2.85、及び2.75≦置換度B≦2.95であって、かつ置換度A<置換度Bであるセルロースエステルフィルムを用いることが記載されている。
更に、特許文献3にはハードコート層と基層の間で起こる干渉ムラの防止を目的として、置換度が2.7以下のセルロースエステルを有する少なくとも一層の表層と、可塑剤、紫外線吸収剤及び総アシル基置換度2.8以上のセルロースエステルを有する基層とを有する多層構成のセルロースエステルフィルムの該表層上にハードコート層を有することを特徴とするハードコートフィルムが記載されている。
特許文献4には、平面性に優れた防眩性反射防止フィルムの基材フィルムとして、表層にセルロースの混合カルボン酸エステル若しくはジアセチルセルロースを有し、基層に総アシル基置換度2.7以上のトリアセチルセルロースを有するセルロースエステルフィルムが記載されている。
特許文献5には、溶融製膜されたセルロースエステルフィルムとして、表層を構成するセルロースエステルの総アシル基置換度が2.5以下であり、基層を構成するセルロースエステルの総アシル基置換度が2.5以上のものが記載されている。
特開2006−182865号公報 特開2003−103693号公報 特開2005−96095号公報 特開2005−156801号公報 特開2006−290929号公報
しかし、特許文献2〜5には、セルロースエステルフィルムとハードコート層との密着性に関する知見は何ら開示されていない。また、セルロースエステルフィルムとハードコート液との組み合わせによっては密着性が不十分となることもあり、改善が望まれている。
本発明の目的は、上層との密着性に優れたセルロースエステルフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロースエステルフィルムの表層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度と基層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度が特定の関係を満たすよう調整し、表層と基層の少なくとも一層に含まれる添加剤を非リン酸エステルとすることにより、上記課題を解決できることを見出した。より具体的には、表層に用いるセルロースエステルの置換度を下げ、好ましくは表層への可塑剤添加を抑えることでハードコート層との密着性が向上することを見出した。なお、特許文献1は、セルロースエステルフィルムとハードコート層との密着性の改善を目的の1つとしているが、セルロースエステルの置換度と密着性との関連性については何の教示もしていない。
また、本発明者らは、表層と基層とで層形成用のセルロースエステル溶液中の溶剤比を変えることで、密着性が改善することを見出した。
即ち、本発明者らは鋭意検討の結果、上記課題は以下の構成によって解決されることを見出した。
[1]
少なくとも基層と表層とを有するセルロースエステルフィルムであって、
前記表層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Aと前記基層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Bが下記式(I)、(II)及び(III)を満たしており、
表層と基層の少なくとも一層に非リン酸エステル系化合物を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
2.3≦A<2.85 (I)
2.80≦B≦3.0 (II)
A<B (III)
[2]
前記表層におけるセルロースエステルに対する前記非リン酸エステル系化合物の含有率Xと前記基層におけるセルロースエステルに対する前記非リン酸エステル系化合物の含有率YがX<Yの関係を満たし、かつ、Xは0質量%よりも大きいことを特徴とする上記[1]に記載のセルロースエステルフィルム。
[3]
上記[1]又は[2]に記載の少なくとも基層と表層とを有するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
前記基層及び表層を形成するセルロースエステルを含む溶液を流延する工程を有し、
該溶液中に含まれる全溶剤中、前記セルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率が79〜95質量%であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
[4]
前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中の非リン酸エステル系化合物の含有率が、前記セルロースエステルに対して5〜20質量%であることを特徴とする上記[3]に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
[5]
前記流延工程が、前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液と前記表層を形成するセルロースエステルを含む溶液とを共流延する工程であり、
前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中の該セルロースエステルに対する非リン酸系化合物の含有率が5〜20質量%で、かつ表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中の該セルロースエステルに対する添加剤の含有率が5質量%未満であることを特徴とする上記[3]又は[4]に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
[6]
前記表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中に含まれる全溶剤中のセルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率C(質量%)と、前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中に含まれる全溶剤中のセルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率D(質量%)が、下記式(IV)及び(V)を満たすことを特徴とする上記[5]に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
83≦C<95 (IV)
79≦D<83 (V)
[7]
前記流延時においてセルロースエステルを含む溶液を10℃以下に冷却された金属支持体上に流延しフィルムを製膜することを特徴とする上記[3]〜[6]のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
[8]
前記表層上に、光重合性多官能モノマーを含む硬化性組成物が硬化したハードコート層を有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のセルロースエステルフィルム。
本発明のセルロースエステルフィルムは、ハードコート層等の他層との密着性とハードコート層塗布後の物理強度を両立するものである。
ハードコート密着性と添加剤の添加量の関係を表す図である。 HC密着性とドープ中のジクロロメタン比率の関係を表す図である。 HC密着性とセルロースアシレートのアセチル置換度の関係を表す図である。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[セルロースエステル]
本発明のセルロースエステルフィルムは、少なくとも基層と表層とを有するセルロースエステルフィルムであって、
表層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Aと基層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Bが下記式(I)、(II)及び(III)を満たしており、
表層と基層の少なくとも一層に含まれる添加剤が非リン酸エステルである。
2.3≦A<2.85 (I)
2.80≦B≦3.0 (II)
A<B (III)
本発明に用いる非リン酸エステル系の添加剤は、低揮発性のため、製造の乾燥工程等で高温にて処理した場合に可塑剤等の添加剤の析出による発煙が生じたり、揮散した油分等が製造機に付着することを抑え、ポリマーフィルムに汚れが付着して面状故障が発生するのを低減することができる。
しかし、非リン酸エステル系の添加剤を用いることでハードコート層等との密着性が低下するものもあるため、ハードコート層がその上に設けられる表層には、基層に用いるセルロースエステルより酢化度の低いセルロースエステルを用いる(上記式(I)〜(III))。表層に酢化度の低いセルロースエステルを用いると、ハードコート層との密着性を大幅に向上できる。ハードコート層は、例えば、光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーと光重合開始剤を有機溶剤中に溶解させたものを前記の表層に塗布後、光照射し架橋させることで得られる。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料綿は発明協会公開技法2001−1745等で公知の木材パルプや綿リンターなどのセルロース原料を用いることができる。また、セルロースエステルは、木材化学180〜190頁(共立出版、右田他、1968年)等に記載の方法で合成することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルが有する重量平均分子量は好ましくは、300,000〜500,000、より好ましくは、330,000〜400,000である。重量平均分子量が300,000未満であると、膜が脆くなりハンドリング不良になる。重量平均分子量は、溶解性が良好で、ドープの粘度が大きくなりすぎないという観点から500,000以下が好ましい。これらの重量平均分子量は、通常のGPC測定によって求めた値であり、測定はメチレンジクロライドに溶解し、PMMA換算した値である。
該セルロースエステルのアシル基は特に制限は無いが、炭素数2〜4のものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基を用いることが好ましく、特にアセチル基が好ましい。なお、本発明におけるアシル基の置換度はASTM D817に従って算出した値を採用することができる。
本発明に用いるセルロースエステルとしては、セルロースアシレートが好ましい。
前述のとおり、表層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Aと基層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Bが、以下の(I)〜(III)を満足する。
2.3≦A<2.85 (I)
2.80≦B≦3.0 (II)
A<B (III)
表層とハードコート層との密着性の観点から、表層のセルロースエステルの総アシル基置換度Aは、2.3以上2.70以下が好ましく、2.35以上2.50以下がより好ましい。又は、特定の可塑剤(例えば、下記の多価アルコールエステル4)などを含む2種以上の可塑剤を併用する場合など、置換度Aは2.75以上2.85以下とすることも好ましく、この場合、置換度Aは2.80以上2.85以下とすることがより好ましい。
基層のセルロースエステルの総アシル基置換度Bが上記(II)式を満足する場合、光学性能や透湿性が望ましい値となる。好ましくは2.80以上2.95以下であり、より好ましくは2.80以上2.90以下である。
[非リン酸エステル系化合物]
前述のように本発明のセルロースエステルフィルムは表層と基層の少なくとも一層に非リン酸エステル系化合物を含む。
非リン酸エステル系化合物は可塑剤として用いることができる。
セルロースエステルフィルムは、一般的に、セルロースアセテートに比較して柔軟性に乏しく、フィルムに曲げ応力やせん断応力がかかると、フィルムに割れ等が生じ易い。また、光学フィルムとして加工する際に、切断部にひびが入りやすく、切り屑が発生しやすい。発生した切り屑は、光学フィルムを汚染し、光学的欠陥の原因となっていた。これらの問題点を改良するため、可塑剤を添加することができる。
非リン酸エステル系化合物としては、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、多価アルコール系、脂肪族二塩基酸エステル系、酢酸エステル系、ポリエステル・エポキシ化エステル系、リシノール酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリエチレングリコール系化合物が挙げられ、多価アルコール系、ポリエステル系が好ましく、ポリエステル系がより好ましい。
リン酸エステル系の可塑剤を用いた場合、製造の乾燥過程における揮散が大きく製造ラインを汚してしまいやすく、発煙を生じることがあり面状故障の原因となる場合がある。
非リン酸エステル系化合物の添加剤として、例えばポリエステル系添加剤は、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸と、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオールと、モノカルボン酸とを含む混合物から得ることができ、両末端が酢酸によって封止された重縮合エステルであるが、これらに限定されない。
また、非リン酸エステル系化合物の添加剤としては、光学性能と透湿性の観点から、ベンゼン環を含む可塑剤が好ましい。本発明では、ベンゼン環を含む可塑剤のみを使用してもよいし、ベンゼン環を含む可塑剤とそれとは別のベンゼン環を含まない可塑剤とを併用してもよい。
非リン酸エステル系化合物の添加剤として、例えば、下記のフタル酸エステル1、多価アルコールエステル1〜4、クエン酸エステル1を挙げることができるが、フタル酸エステル、多価アルコールエステル、クエン酸エステルはこれらに限定されない。
また、非リン酸エステル系化合物の添加剤を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
Figure 2011116113
本発明のセルロースエステルフィルムにおける非リン酸エステル系化合物の含有量は、基層については基層を形成するセルロースエステルに対して、3〜30質量%とすることができ、5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。表層については、表層を形成するセルロースエステルに対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
また、表層における全固形分に対する非リン酸エステル系化合物の含有率X(質量%)と基層における全固形分に対する前記非リン酸エステル系化合物の含有率Y(質量%)がX<Yの関係を満たし、かつ、Xは0質量%よりも大きいことが好ましい。表層の化合物の添加量が少ないほうがハードコート層との密着性高いが、共流延に代表される外層を加える手法を使用した場合、拡散が起きるため0質量%にすることは出来ないためである。
可塑剤として、非リン酸エステル系化合物以外の化合物を更に添加してもよく、非リン酸エステル系化合物と合わせた可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対して、0.5〜40.0質量%、好ましくは1.0質量%〜30.0質量%、より好ましくは3.0質量%〜20.0質量%である。可塑剤の添加量が0.5質量%以上であれば十分な可塑効果が得られ、加工適性が向上する。また、40.0質量%以下であれば長時間経時した場合に、可塑剤の分離溶出を抑え、光学的ムラ、他部品への汚染等が低減するため好ましい。
(添加剤)
本発明のセルロースエステルフィルムには、上述した非リン酸エステル系化合物の他に、各調製工程において用途に応じた種々の低分子、高分子添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、剥離促進剤、他の可塑剤、赤外吸収剤、マット剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば融点が20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。更にまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースエステル溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースエステル層が多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、基層を形成するセルロースエステルを含む溶液(ドープ)中への非リン酸エステル系化合物の添加量は、該セルロースエステルに対して、3〜30質量%とすることができ、5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中への非リン酸エステル系化合物の添加量は、該セルロースエステルに対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
表層におけるセルロースエステルを含む溶液中の全固形分に対する非リン酸エステル系化合物の含有率Xと基層における前記化合物の含有率YがX<Yの関係を満たすことが好ましい。
基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中、添加剤の含有率はセルロースエステルに対して5〜20質量%であることが好ましく、7〜15質量%であることがより好ましい。
表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中、添加剤の含有率はセルロースエステルに対して5質量%未満であることが好ましく、0〜3質量%であることがより好ましい。
ハードコート層との密着性の観点から、基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中、添加剤の含有率がセルロースエステルに対して5〜20質量%で、かつ表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中、添加剤の含有率がセルロースエステルに対して5%未満であることが好ましい。
(劣化防止剤)
本発明のセルロースエステル溶液には公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、フェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、セルロースエステルに対して、0.05〜5.0質量%であることが好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースエステル溶液には、偏光板又は液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
紫外線吸収剤として具体的には、下記のUV−1〜3を挙げることができるが、添加する紫外線吸収剤はこれらに限定されない。
Figure 2011116113
(レターデーション発現剤)
本発明ではレターデーションを発現するため、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として用いることができる。
少なくとも2つ以上の芳香環を有する化合物は一様配向した場合に光学的に正の1軸性を発現することが好ましい。
少なくとも2つ以上の芳香環を有する化合物の分子量は、300ないし1200であることが好ましく、400ないし1000であることがより好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、光学特性とくにReを好ましい値に制御するには、延伸が有効である。Reの上昇はフィルム面内の屈折率異方性を大きくすることが必要であり、一つの方法が延伸によるポリマーフィルムの主鎖配向の向上である。また、屈折率異方性の大きな化合物を添加剤として用いることで、更にフィルムの屈折率異方性を上昇することが可能である。例えば上記の2つ以上の芳香環を有する化合物は、延伸によりポリマー主鎖が並ぶ力が伝わることで該化合物の配向性も向上し、所望の光学特性に制御することが容易となる。
少なくとも2つの芳香環を有する化合物としては、例えば特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2002−363343号公報に記載の棒状化合物、特開2005−134884及び特開2007−119737号公報に記載の液晶性化合物等が挙げられる。より好ましくは、上記トリアジン化合物又は棒状化合物である。
少なくとも2つの芳香環を有する化合物は2種以上を併用して用いることもできる。
少なくとも2つの芳香環を有する化合物の添加量はセルロースエステルに対して質量比で0.05%以上10%以下が好ましく、0.5%以上8%以下がより好ましく、1%以上5%以下が更に好ましい。
(剥離促進剤)
セルロースエステルフィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。
剥離剤の添加量はセルロースエステルに対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
(高分子量添加剤)
本発明のフィルムには以下の高分子量添加剤を用いてもよい。その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が700以上10000以下のものが好ましい。
高分子量添加剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速めたり、残留溶媒量を低減するために用いられる。
ここで、本発明における高分子量添加剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700以上10000未満であり、更に好ましくは数平均分子量800〜8000であり、より更に好ましくは数平均分子量800〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。このような範囲とすることにより、より相溶性に優れる。
(ポリエステル系ポリマー以外の高分子系添加剤)
高分子系添加剤としては、スチレン系ポリマー及びアクリル系ポリマー及びこれら等の共重合体から選択され、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、アクリル系ポリマー及びスチレン系ポリマーが好ましい。
スチレン系ポリマー
スチレン系ポリマーは、好ましくは、一般式(I)で表される、芳香族ビニル系単量体から得られる構造単位を含む。
一般式(I)
Figure 2011116113
式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表し、Rは全て同一の原子又は基であっても、個々異なる原子又は基であっても、互いに結合して、炭素環又は複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、4−ブロモスチレンなどのハロゲン置換スチレン類;p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレンなどのアルコキシ置換スチレン類;3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸などのビニル安息香酸類;メチル−4−ビニルベンゾエート、エチル−4−ビニルベンゾエートなどのビニル安息香酸エステル類;4−ビニルベンジルアセテート;4−アセトキシスチレン;2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレンなどのアミドスチレン類;3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミンなどのアミノスチレン類;3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレンなどのニトロスチレン類;3−シアノスチレン、4−シアノスチレンなどのシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレンなどのアリールスチレン類、インデン類などが挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
アクリル系ポリマー
アクリル系ポリマーは、好ましくは、一般式(II)で表される、アクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位である。
一般式(II)
Figure 2011116113
式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表す。
当該アクリル酸エステル系単量体の例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、tert−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、アクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(o又はm又はp−トリル)、メタクリル酸(o又はm又はp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、2種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、tert−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが好ましい。
共重合体
共重合体は、一般式(I)で表される芳香族ビニル系単量体及び一般式(II)で表されるアクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位を少なくとも1種含むものが好ましい。
一般式(I)
Figure 2011116113
式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表し、Rは全て同一の原子又は基であっても、個々異なる原子又は基であっても、互いに結合して、炭素環又は複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
一般式(II)
Figure 2011116113
式中R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表す。
また、共重合組成を構成する上記以外の構造として、前記単量体と共重合性に優れたものであることが好ましく、例として、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、3−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、4−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸等の酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類をあげることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。この中で特に、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体が特に好ましい。
(マット剤微粒子)
本発明のセルロースエステルフィルムは、マット剤として微粒子を含有することができる。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lが更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)35頁〜36頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースエステルフィルムにおいても好ましく用いることができる。
(製膜工程)
本発明のフィルムの製造方法は、公知のセルロースエステルフィルムを作製する方法等を広く採用でき、ソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を流延することでフィルムを製造することができる。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及びCOO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
溶液流延時におけるセルロースエステルを含む溶液(ドープ)中に含まれる全溶剤中、セルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率は79〜95質量%であることが好ましく、82〜94質量%がより好ましく、87〜92質量%が最も好ましい。
ドープ中の良溶剤の比率に関しては、良溶剤の比率が多いほどセルロースエステルフィルムとハードコート層との密着性が良好となるが、ガラス板やドラムやバンドに流延する際には、ドープをゲル化することが好ましく、良溶剤の比率が高過ぎるとセルロースエステルがゲル化し難くなるためである。
冷却されたドラム上に流延する際はドープのゲル化のため貧溶剤が一定比率必要であり、良溶剤比率は79質量%以上87質量%未満が好ましく、79質量%以上85質量%未満がより好ましく、79質量%以上83質量%未満が最も好ましい。
基層用ドープと表層用ドープとを共流延する際には基層用ドープ中の良溶剤比率は79質量%以上87質量%未満が好ましく、79質量%以上85質量%未満がより好ましく、79質量%以上83質量%未満が最も好ましい。表層用ドープ中の良溶剤比率は83質量%以上95質量%未満が好ましく、85質量%以上95質量%未満がより好ましく、87質量%以上92質量%未満が最も好ましい。
共流延する場合には、特に、表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中に含まれる全溶剤中のセルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率C(質量%)と、前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中に含まれる全溶剤中のセルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率D(質量%)が、下記式(IV)及び(V)を満たすことが好ましい。
83≦C<95 (IV)
79≦D<83 (V)
上記Cは、更に85≦C<95であることが好ましく、87≦C<92であることがより好ましい。
上記式(IV)及び(V)を満たすことにより、基層となるドープが冷却したドラム上に流延した後ゲル化するため剥ぎ取り可能となり、表層は良溶剤比率を高くすることでハードコート層との密着性を向上することができるためである。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることが更に好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリド(ジクロロメタン)が、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
なお、セルロースエステルに対して良溶剤とは、セルロースエステルが室温(20℃)での質量パーセント濃度で10質量%以上溶ける溶剤であり、例えば、メチレンクロリド、クロロホルム、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。貧溶剤とは、セルロースエステルが室温での質量パーセント濃度で10質量%未満しか溶けない溶剤であり、例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなどが挙げられる。
一般的な方法でセルロースアシレート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温又は高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、前述した任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、更に好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、
熱交換器等を用いて冷却する。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレテートフィルムを製造することができる。
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
溶液流延時においてセルロースエステルを含む溶液を10℃以下に冷却された金属支持体(ドラム又はバンド)上に流延しフィルムを製膜することが好ましい。10℃以下に冷却された金属支持体上に流延することにより、ドープのゲル化を促進することができるためドラム上から剥ぎ取ることができ両面から素早く乾燥できるので、製膜する上で好ましい。冷却温度は、−20度以上0度以下が好ましく、−15度以上−5度以下がより好ましい。
ドープは、流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
(共流延)
本発明のセルロースエステルフィルムは、溶液流延製膜方法により製膜した後、延伸することにより製造したものであることが好ましい。また、複数のドープを共流延により、同時又は逐次で多層のフィルムを製膜することが好ましい。所望のレターデーション値を有するフィルムとすることができるためである。
なお、本発明においては、共流延により2層構造のセルロースエステルフィルムを製膜する場合、金属支持体に接する層を基層、該基層上に設ける層を表層とする。また、3層以上の多層のセルロースエステルフィルムの場合、金属支持体に接する層とそれとは反対側(空気側)の最表面層を表層とし、該2つの表層の間にある層のうち少なくとも1層を基層とする。
本発明では得られたセルロースエステル溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースエステル液を流延してもよい。複数のセルロースエステル溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースエステルを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースエステル溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースエステル溶液の流れを低粘度のセルロースエステル溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースエステル溶液を同時に押出すセルロースエステルフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことにより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースエステル溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースエステル溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースエステル層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースエステル溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明のセルロースエステル溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースエステル溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースエステル溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースエステル溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースエステル溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。
共流延の場合、置換度の異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。例えば、TAC(トリアセチルセルロース)層/DAC(ジアセチルセルロース)層/TAC層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることも、DAC層/TAC層/DAC層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることも出来る。
また、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースエステルアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。例えば、マット剤は、表層に多く、又は表層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤は表層よりも内部層(基層を含む)に多くいれることができ、内部層のみにいれてもよい。又、内部層と表層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば表層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、内部層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側の表層のみ含有させることも好ましい態様である。
また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、表層に貧溶媒であるアルコールを内部層より多く添加することも好ましい。表層と内部層のTgが異なっていても良く、ハードコート層等との密着性の観点から、表層のTgより内部層のTgが低いことが好ましい。
又、流延時のセルロースエステルを含む溶液の粘度も表層と基層で異なっていても良く、表層の粘度が内部層の粘度よりも小さいことが好ましいが、内部層の粘度が表面層の粘度より小さくてもよい。
(乾燥工程、延伸工程)
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロール群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は70質量%以下であり、より好ましくは10質量%〜50質量%、特に好ましくは12質量%〜35質量%である。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
延伸倍率は、1.05〜1.5であることが好ましく、1.15〜1.4であることがより好ましい。
また、延伸は縦方向に行っても横方向に行っても両方向に行ってもよく、好ましくは少なくとも縦方向に行う。本発明のセルロースエステルフィルムは幅方向に延伸されて得られたものであり、該延伸倍率が、搬送方向に対して垂直な方向に5%以上100%以下であることが好ましい。延伸倍率を5%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率Nx、Ny、Nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。例えば流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大きすぎると、Nzの値が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、例えばテンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。更に、互いに直交する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。光学フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなる。光学フィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ1.2〜2.0倍、0.7〜1.0倍の範囲とすることが好ましい。ここで、一方の方向に対して1.2〜2.0倍に延伸し、直交するもう一方を0.7〜1.0倍にするとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して0.7〜1.0倍の範囲にすることを意味している。
一般に、2軸延伸テンターを用いて幅手方向に1.2〜2.0倍の間隔となるように延伸する場合、その直角方向である長手方向には縮まる力が働く。
したがって、一方向のみに力を与えて続けて延伸すると直角方向の幅は縮まってしまうが、これを幅規制せずに縮まる量に対して、縮まり量を抑制していることを意味しており、その幅規制するクリップやピンの間隔を延伸前に対して0.7〜1.0倍の範囲に規制していることを意味している。このとき、長手方向には、幅手方向への延伸によってフィルムが縮まろうとする力が働いている。長手方向のクリップあるいはピンの間隔をとることによって、長手方向に必要以上の張力がかからないようにしているのである。ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
(熱処理工程)
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行って良いし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けても良い。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
このような処理によりフィルムの収縮率を小さくできる理由は明確ではないが、延伸工程にて延伸される処理を経たフィルムにおいては、延伸方向の残留応力が大きいため、熱処理によって前記残留応力が解消されることにより、熱処理温度以下の領域での収縮力が低減されるものと推定される。
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
熱処理温度が200℃を超えて長時間加熱すると、フィルム中に含まれる可塑剤の飛散量が増大するため問題となる場合がある。
なお前記熱処理工程において、フィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。この収縮を可能な限り抑制しながら熱処理することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましく、幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。更に、フィルムの幅方向及び搬送方向に、それぞれ0.9倍〜1.5倍に延伸することが好ましい。
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られた光学フィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、更に±1度の範囲であることが好ましい。又は、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、更に±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
[加熱水蒸気処理]
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されても良い。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。本発明のセルロースエステルフィルムの製造に用いる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
[セルロースエステルフィルムの表面処理]
セルロースエステルフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましい。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースエステルフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
偏光板の透明保護膜として使用する場合、偏光子との接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースエステルに対する鹸化処理を実施することが特に好ましい。
表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
セルロースエステルフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1乃至3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0モル/リットルの範囲にあることが更に好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることが更に好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。本発明のセルロースエステルフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースエステルフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
(膜厚)
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は20μm〜180μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましく、20μm〜80μmが更に好ましい。膜厚が20μm以上であれば偏光板等に加工する際のハンドリング性や偏光板のカール抑制の点で好ましい。また、本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚むらは、搬送方向及び幅方向のいずれも0〜2%であることが好ましく、0〜1.5%が更に好ましく、0〜1%であることが特に好ましい。
基層の膜厚は20μm〜150μmであることが好ましく、20μm〜80μmがより好ましく、20μm〜60μmが更に好ましい。
表層の膜厚は1μm〜15μmであることが好ましく、1μm〜10μmがより好ましく、2μm〜7μmが更に好ましい。
本発明のセルロースフィルムの層構成としては、「表層/基層」の2層構成や「表層/基層/表層」の3層構成が挙げられ、それぞれ更に他の層を有していてもよい。
(フィルムのレターデーション)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明のセルロースエステルフィルムは偏光板の保護フィルムとして好ましく用いられ、特に、様々な液晶モードに対応した位相差フィルムとしても好ましく用いることができる。本発明の位相差フィルムは本発明のセルロースエステルフィルムを含む。
本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして用いる場合、590nmで測定したReは30〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜100nmのものが更に好ましい。Rthは70〜400nmのものが好ましく、100〜300nmのものがより好ましく、100〜250nmのものが更に好ましい。
セルロースエステルフィルムのより好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
VAモード用としては590nmで測定したReは30〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜100nmのものが更に好ましい。Rthは70〜400nmのものが好ましく、100〜300nmのものがより好ましく、100〜250nmのものが更に好ましい。
TNモード用としては590nmで測定したReは0〜100nmのものが好ましく、20〜90nmのものがより好ましく、50〜80nmのものが更に好ましい。Rthは20〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜120nmのものが更に好ましい。
TNモード用では前記レターデーション値を有するセルロースエステルフィルム上に光学異方性層を塗布して光学補償フィルムとして使用できる。
(フィルムのヘイズ)
本発明のセルロースエステルフィルムのヘイズは、0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることが更に好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、ヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。
(分光特性、分光透過率)
セルロースエステルフィルムの試料13mm×40mmを、25℃、60%RHで分光光度計“U−3210”{(株)日立製作所}にて、波長300〜450nmにおける透過率を測定することができる。傾斜幅は72%の波長−5%の波長で求めることができる。限界波長は、(傾斜幅/2)+5%の波長で表し、吸収端は、透過率0.4%の波長で表すことができる。これより380nm及び350nmの透過率を評価することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、偏光板の液晶セルに面した保護フィルムの対向側に用いる場合には、上記方法により測定した波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることが好ましい。
(ガラス転移温度)
本発明のセルロースエステルフィルムのガラス転移温度は120℃以上が好ましく、更に140℃以上が好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で測定したときにフィルムのガラス転移に由来するベースラインが変化しはじめる温度と再びベースラインに戻る温度との平均値として求めることができる。
また、ガラス転移温度の測定は、以下の動的粘弾性測定装置を用いて求めることもできる。本発明のセルロースエステルフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜250℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とする。
(フィルムの平衡含水率)
本発明のセルロースエステルフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃、80%RHにおける平衡含水率が、0〜4%であることが好ましい。0.1〜3.5%であることがより好ましく、1〜3%であることが特に好ましい。平衡含水率が4%以下であれば、光学補償フィルムの支持体として用いる際に、レターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎることがなく好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースエステルフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”及び“VA−05”{共に三菱化学(株)製}にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
(フィルムの透湿度)
フィルムの透湿度は、JIS Z−0208をもとに、60℃、95%RHの条件において測定することができる。
透湿度は、セルロースエステルフィルムの膜厚が厚ければ小さくなり、膜厚が薄ければ大きくなる。そこで膜厚の異なるサンプルでは、基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、下記数式に従って行うことができる。
数式:80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚(μm)/80(μm)
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁「蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)」に記載の方法を適用することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの透湿度は、400〜2000g/m・24hであることが好ましい。400〜1800g/m・24hであることがより好ましく、400〜1600g/m・24hであることが特に好ましい。透湿度が2000g/m・24h以下であれば、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えるなどの不都合が生じることがなく、好ましい。
(フィルムの寸度変化)
本発明のセルロースエステルフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率、及び90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率が、いずれも0.5%以下であることが好ましい。
より好ましくは0.3%以下であり、更に好ましくは0.15%以下である。
(フィルムの弾性率)
本発明のセルロースエステルフィルムの弾性率は、200〜500kgf/mmであることが好ましく、より好ましくは240〜470kgf/mmであり、更に好ましくは270〜440kgf/mmである。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン(株)製万能引っ張り試験機“STM T50BP”を用い、23℃、70RH%雰囲気中、引張速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
この場合、添加剤の種類や配合量、セルロースエステルの分子量分布やセルロースエステルの種類等を適宜調整することによって厚み方向に分布を有するようなセルロースエステルフィルムを得ることができる。また、それらの一枚のフィルム中に光学異方性部、防眩部、ガスバリア部、耐湿性部などの各種機能性部を有するものも含む。
(ハードコート層)
本発明のセルロースエステルフィルムは、表層上に、ハードコート層を設けることができ、フィルムの硬度を向上させることができる。ハードコート層は、光重合性多官能モノマーと光重合開始剤を有する溶液を表層上に塗布し、硬化させることにより形成することができる。
(光重合性多官能モノマー)
ハードコートに用いられる光集合性多官能モノマーとしてアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類などの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。他にも、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類などがあるが、これらに限定されず単一で使用してもいくつかを併用しても構わない。
(光重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
(塗布溶剤)
塗布溶剤としては各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。また、溶解度パラメータの微調整のために溶剤の混合を行っても良い。
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル(90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがあり、沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがあるが、これらの溶剤に限定されない。
ハードコート層の膜厚は1μm〜15μmであることが好ましく、3μm〜10μmがより好ましい。
[位相差フィルム]
本発明のセルロースエステルフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差板、光学補償フィルム、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、位相差フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明の透明セルロースエステルフィルムを用いることで、Re値及びRth値を自在に制御した位相差フィルムを容易に作製することができる。
本発明の位相差フィルムは本発明のセルロースエステルフィルム上に少なくとも一種の液晶性化合物を含有する光学異方性層を有する。また、本発明のセルロースエステルフィルムを複数枚積層したり、本発明のセルロースエステルフィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して位相差フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
また、場合により、本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムの支持体として用い、その上に液晶等からなる光学異方性層を設けて位相差フィルムとして使用することもできる。本発明の位相差フィルムに適用される光学異方性層は、例えば、液晶性化合物を含有する組成物から形成してもよいし、複屈折を持つセルロースエステルフィルムから形成してもよいし、本発明のセルロースエステルフィルムから形成してもよい。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物又は棒状液晶性化合物が好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明において前記液晶性化合物として使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(例えば、C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
前記光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。また、ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基の間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子については、特開2001−4387号公報に開示されている。
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子の両側に保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも1枚が本発明のセルロースエステルフィルム又は本発明の位相差フィルムである。すなわち、本発明のフィルムは、偏光板用保護フィルムに用いられる。偏光板は前述の如く、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。セルロ−スエステルフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
特に本発明のフィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムを有することを特徴とする。本発明のフィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明の偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、若しくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明の偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明の偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、更に視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れた表示装置を提供することができる。
〔液晶表示装置〕
本発明の液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を含む液晶表示装置であって、該偏光板のうち少なくとも1枚が本発明の偏光板である。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルが、VAモード又はTNモードの液晶セルであることが好ましく、VAモードセルであることが、本発明のフィルムが前記好ましい範囲のRe及びRthを発現する観点から特に好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(シャープ技報第80号11頁)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(月刊ディスプレイ5月号14頁(1999年))が含まれる。
VAモードの液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。本発明における透過型液晶表示装置の一つの態様では、本発明のフィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
本発明の透過型液晶表示装置の別の態様では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の透明保護フィルムとして、本発明のフィルムからなる光学補償シートが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護フィルムのみに上記の光学補償シートを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の保護フィルムに、上記の光学補償シートを用いてもよい。一方の偏光板のみに上記光学補償シートを使用する場合は、液晶セルのバックライト側偏光板の液晶セル側保護フィルムとして使用するのが特に好ましい。液晶セルへの張り合わせは、本発明のフィルムはVAセル側にすることが好ましい。保護フィルムは通常のセルロースエステルフィルムでも良く、本発明のフィルムより薄いことが好ましい。例えば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
〔実施例1〜30〕
(セルロースアシレートの調製)
表1に記載のアシル基置換度(アセチル基の置換度)の異なるセルロースエステル(セルロースアシレート)を調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の量を調整することでアシル基(アセチル基)の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。更にこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
[セルロースアシレートフィルムの製膜]
以下に示すセルロースアシレートドープを用い、溶液流延法によりフィルムを製膜し、実施例1〜30と比較例1〜8に使用した。
(基層ドープ 実施例1〜30と比較例1〜8)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載の置換度 100質量部
添加剤:表1に記載 表1に記載の量(単位:質量部)
紫外線吸収剤:表1に記載 表1に記載の量(単位:質量部)
溶剤(ジクロロメタン、メタノール、ブタノール) 544質量部
溶剤比(ジクロロメタン/メタノール/ブタノール)表1に記載の比率(質量比)
Figure 2011116113
Figure 2011116113
(表層ドープ 実施例1〜30と比較例1〜8)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載の置換度 100質量部
添加剤:表1に記載 表1に記載の量(単位:質量部)
紫外線吸収剤:表1に記載 表1に記載の量(単位:質量部)
溶剤(ジクロロメタン、メタノール、ブタノール) 572質量部
溶剤比(ジクロロメタン/メタノール/ブタノール 表1に記載の比率(質量比)
(溶液流延法)
上記の組成をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、セルロースアシレートドープを調製した。
なお、実施例1〜30と比較例1〜8は−10℃に冷却された金属支持体上に一つの流延ダイから表層ドープと基層ドープを同時に押し出して共流延しゲル化させて剥ぎ取った後、フィルム搬送時に30〜40℃で乾燥されたものを枠張りして130℃で後乾燥したサンプルである。
なお、表1に記載のポリエステル系添加剤P−1〜12は下記の表3に示すように芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸と、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオールとを含む混合物から得られ、両末端が酢酸によって封止された重縮合エステルである。
Figure 2011116113
Figure 2011116113
Figure 2011116113
ハードコート1〜4は下記の表4に示す組成物であり、UV開始剤1は下に示す構造である。表4において、モノマー1とモノマー2との比率「モノマー1/モノマー2」はモル比であり、モノマー1とモノマー2の合計とUV開始剤の比「モノマー/UV開始剤比」及び溶剤1と溶剤2の比率「溶剤1/溶剤2」は質量比である。また、固形分濃度は質量%である。
Figure 2011116113
ハードコート1〜3に使用している光重合性モノマーは日本化薬(株)のPET30であり、ハードコート4に使用しているモノマーは日本化薬(株)のKAYARAD DPHAである。
Figure 2011116113
UV開始剤1はチバジャパン(株)のIRGACURE127を使用した。
ハードコートの塗布条件は番手8のバーコーターによる手塗布後、100℃で60秒乾燥し窒素0.1%以下の条件でUVを1.5kW 300mJにて照射し硬化させた。ハードコート層の膜厚はいずれも7μmである。
以上のとおり、作製したフィルムに対して以下の評価を行った。評価結果は表2に示した。
(可塑剤量の定量)
ハードコート層を設ける前のセルロースエステルフィルムの評価として、フィルム表面(表層)の可塑剤量の定量はTOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)により行った。TOF−SIMSの測定は、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMS(商品名)を用いて、フィルム表面に存在する可塑剤に起因するフラグメントを検出することで観察することができる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書 二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。
例えば、ポリエステル系添加剤を用いたフィルムについては、ポリエステル系添加剤の添加量が11質量部であるフィルムと0質量部であるフィルムの表面から検出されるポリエステル系添加剤のジオール末端に由来する二次イオンの強度から検量線を作成し、表層の含有量を算出した。
(密着評価方法)
JIS K 5600に準処した碁盤目試験を行った。具体的にはハードコート塗布&UV硬化後のサンプル表面上に1mm間隔で縦横に11本の切れ込みを入れて1mm角の碁盤目を100個作った。この上にセロハンテープ及びマイラーテープを貼り付け、素早く剥がし剥がれた箇所を目視観察により密着評価した。サンプルは密着評価前に温度25℃湿度60%の部屋で2時間以上調湿した後に評価した。
切れ込みを入れる前にXeを24時間照射後に密着評価した結果が表1中の耐光24h密着結果であり、Xeを48時間照射後に密着評価した結果が耐光48h密着結果である。Xe照射行わずに密着評価した結果が初期密着評価である。
密着性 ○:剥がれ箇所0〜10マス
密着性 △:剥がれ箇所11〜49マス
密着性 ×:剥がれ箇所50マス〜99マス
密着性 ××:剥がれ箇所100マス以上(テープを貼った部分全部)
Xeの照射にはスガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いた。
(鉛筆硬度評価法)
ハードコート層を設けたフィルムを25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆で引っ掻きを5回繰り返し、4回以上傷が無いまでの硬度をOKと測定した。なお、JIS K 5400で定義される傷は塗膜の破れ、塗膜のすり傷であり、塗膜のへこみは対象としないと記載されているが、ここでは、塗膜のへこみも含めて傷と判断している。数字が大きいほど、高硬度を示す。
実施例1,8と比較例の1,4のサンプルにハードコートを塗布したフィルム偏光板加工したものを液晶パネルに実装し酢化度の低い綿を表層に共流延したものとそうでないものを比較したところ両サンプルの間に差なく性能上問題ないことを確認した。
〔実施例31〕
以下に示すセルロースアシレートドープを用い、15〜18℃に冷却されたガラス板上に流延後1分レベリングし70℃で6分乾燥させた後にガラス板上から剥ぎ取って枠貼りし、後乾燥をまず100℃で10分、次に140℃で20分行いセルロースアシレートフィルムを得た。ハードコート1とセルロースアシレートフィルムの密着性を前記密着評価方法により評価した。評価結果を図1に示した。評価結果中の初期の結果は調湿のみ行ったハードコートフィルムの密着評価結果であり、耐光と記載の結果はハードコートフィルムに前記Xe照射を24時間行った後の密着評価結果である。
セルロースアシレート樹脂:アセチル基置換度2.85 100質量部
添加剤:P−11 図1中記載
紫外線吸収剤:UV−1 2.0質量部
溶剤(ジクロロメタン、メタノール、ブタノール) 593質量部
溶剤比(ジクロロメタン/メタノール/ブタノール) 79/20/1
図1に示すように非リン酸エステル系化合物の添加量が少ないほど密着は良好である。
また共流延を行う場合も基層から非リン酸エステル系化合物の拡散が起き、表面の非リン酸エステル系化合物が測定される。
〔実施例32〕
以下に示すセルロースアシレートドープを用いること以外は実施例31と同じ条件でガラス板流延しフィルムを製膜して、ハードコート1とセルロースアシレートフィルムの密着性を前記密着評価方法により評価した。評価結果を図2に示した。評価結果中の初期と耐光の結果は実施例31と同様に密着評価した結果である。
セルロースアシレート樹脂:アセチル基置換度2.85 100質量部
添加剤:P−11 11質量部
紫外線吸収剤:UV−1 2.0質量部
溶剤(ジクロロメタン、メタノール) 593質量部
溶剤比(ジクロロメタン/メタノール) 図2中に記載の塩化メチレン比率
図2に示すようにドープ中の塩化メチレン(ジクロロメタン)比が多いほど密着性良好であるが、ガラス板やバンド流延する際には塩化メチレン比が高過ぎるとセルロースアシレートの溶解性が落ちることや支持体上から剥ぐことが難しくなるため、87質量%以上92質量%未満が最も好ましいことがわかる。
冷却されたドラム上に流延する際はドープのゲル化が必要になるため貧溶剤が一定比率必要であり、良溶剤比率は79質量%以上83質量%未満が最も好ましい。
共流延する際には基層ドープ中の良溶剤比率は79質量%以上83質量%未満が最も好ましく、表層ドープ中の良溶剤比率は87質量%以上92質量%未満が最も好ましい。
〔実施例33〕
以下に示すセルロースアシレートドープを用いること以外は実施例31と同じ条件でガラス板流延しフィルムを製膜して、ハードコート1とセルロースアシレートフィルムの密着性を前記密着評価方法により評価した。評価結果を図3に示した。評価結果中の初期と耐光の結果は実施例31と同様に密着評価した結果である。
セルロースアシレート樹脂:アセチル基置換度は図3中記載 100質量部
添加剤:P−11 11質量部
紫外線吸収剤:UV−1 2.0質量部
溶剤(ジクロロメタン、メタノール、ブタノール) 593質量部
溶剤比(ジクロロメタン/メタノール/ブタノール) 79/20/1
図3に示すようにセルロースアシレートのアセチル置換度が低いほど密着性良好となる。したがって、表層に用いるセルロースアシレートの置換度は低い方が好ましい。ただし、冷却時のゲル化特性や必要とするベース物性、光学性能の点から基層の用いるセルロースアシレートの置換度は2.80〜3.0が好ましい。

Claims (8)

  1. 少なくとも基層と表層とを有するセルロースエステルフィルムであって、
    前記表層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Aと前記基層におけるセルロースエステルの総アシル基置換度Bが下記式(I)、(II)及び(III)を満たしており、
    表層と基層の少なくとも一層に非リン酸エステル系化合物を含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
    2.3≦A<2.85 (I)
    2.80≦B≦3.0 (II)
    A<B (III)
  2. 前記表層におけるセルロースエステルに対する前記非リン酸エステル系化合物の含有率Xと前記基層におけるセルロースエステルに対する前記非リン酸エステル系化合物の含有率YがX<Yの関係を満たし、かつ、Xは0質量%よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の少なくとも基層と表層とを有するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、
    前記基層及び表層を形成するセルロースエステルを含む溶液を流延する工程を有し、
    該溶液中に含まれる全溶剤中、前記セルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率が79〜95質量%であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
  4. 前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中の非リン酸エステル系化合物の含有率が、前記セルロースエステルに対して5〜20質量%であることを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  5. 前記流延工程が、前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液と前記表層を形成するセルロースエステルを含む溶液とを共流延する工程であり、
    前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中の該セルロースエステルに対する非リン酸系化合物の含有率が5〜20質量%で、且つ表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中の該セルロースエステルに対する添加剤の含有率が5質量%未満であることを特徴とする請求項3又は4に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  6. 前記表層を形成するセルロースエステルを含む溶液中に含まれる全溶剤中のセルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率C(質量%)と、前記基層を形成するセルロースエステルを含む溶液中に含まれる全溶剤中のセルロースエステルに対して良溶剤として働く溶剤の比率D(質量%)が、下記式(IV)及び(V)を満たすことを特徴とする請求項5に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
    83≦C<95 (IV)
    79≦D<83 (V)
  7. 前記流延時においてセルロースエステルを含む溶液を10℃以下に冷却された金属支持体上に流延しフィルムを製膜することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  8. 前記表層上に、光重合性多官能モノマーを含む硬化性組成物が硬化したハードコート層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースエステルフィルム。
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