JP2004266127A - 石英治具およびその再生方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フォーカスリング20の内周縁側の第1の領域A1の主面側の表面を、外周縁側の第2の領域A2の表面よりも高く形成し、両者の間に段差を設けたフォーカスリング20を与える。再生時には、消耗したフォーカスリング20の主面の第1の領域の部分に石英材料を滴下して肉盛りし、第1の領域に平坦な表面を形成し、かつ、第2の領域との間の段差を残すように機械研削して再生する。
【選択図】図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路等の半導体装置を製造するためのプラズマ処理技術に係り、特にドライエッチングを行うプラズマ処理装置の石英治具、およびその再生方法、その再生使用方法、そのような石英治具を備えたプラズマ処理装置、およびそのようなプラズマ処理装置を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体の製造にはドライエッチング技術が数多く応用されている。この技術は、プラズマによって活性化した反応ガスを利用して加工を行うものであり、各種応用の方法に関わらず、活性化した反応ガスがチャンバ構成部品の一部に接触し、接触部分が浸食作用を受けることが避けられない。特に消耗が激しいのは、比較的結合エネルギーの高いシリコン酸化膜を加工するドライエッチング装置のチャンバ構成部品である。
【0003】
一方、チャンバ構成部品の材料は、電気的絶縁性、加工特性、不純物濃度などから、石英、アルミアルマイト、シリコン、シリコンカーバイド、カーボン、フッ素ポリマー系材料、各種セラミック材料などが用いられている。これらの材料のうち、いずれの材料を用いても消耗を避けることができない。従って、プラズマ処理装置内の消耗部品は、一定の使用可能期間を設定した管理がなされ、使用可能期間の経過した消耗部品は廃棄して新品に交換される。
【0004】
ここで、チャンバ構成部品の使用可能期間を無視して使用した場合、プラズマ処理装置であれば、プラズマ放電の安定性が失われるという問題がある。チャンバ構成部品は適正な電流パスが得られるように設計されているので、特定パーツの浸食によって新たな電流パスが形成されると、局所的な放電現象が生じるなど、所望の放電状態が得られなくなる。また、チャンバ構成部品の浸食が反応ガス流に影響したり、浸食部分からパーティクルが発生するなどの不具合が生じ、所望の加工特性が得られなくなるという問題もある。
【0005】
しかし、消耗はチャンバ構成部品の一部に限定的に生じるので、使用可能期間の経過により部品全体が廃棄されることはコスト高になり、また資源の有効利用という観点からも効率が悪いという問題がある。
【0006】
そのため、上記ドライエッチング装置のチャンバ構成部品の中でも特に消耗が激しいシールドリングのクリーニングや交換時期を伸長するために、シールドリングを、付着物が付着しやすく、かつ、スパッタされやすい位置に置かれる内部部材と、それ以外の外部部材とに分け、内部部材を付着物が付着しにくく、かつ、スパッタされにくい材料で構成することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−265977号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特許文献1のように、一つの部品を複数に分け、部品点数を増やすと、管理コストが増大するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、チャンバ構成部品の再生処理を可能とし、かつ再生処理を永続的に実施しても加工特性に影響を与えない構成を備えた、プラズマ処理装置の石英治具、およびその再生方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような石英治具を提供する。すなわち本発明の石英治具は、プラズマ処理装置の電極の外周縁部を覆う石英治具であって、内周縁から外側に広がる主面を有し、前記内周縁側に形成されて、平坦な第1の表面を前記主面に有する第1の領域と、前記第1の領域の外側に隣接して前記第1の領域よりも薄肉に形成されて、前記第1の表面よりも低い第2の表面を前記主面に有する第2の領域とを備えていることを特徴とする。
【0011】
前記第1の表面と第2の表面との間の高さの差は0.1〜2mmであることが好ましい。前記石英治具の例として、フォーカスリングまたはシールドリングを挙げることができる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、前記のいずれかの石英治具を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の石英治具の再生方法は、プラズマ処理装置の電極の外周縁部を覆う石英治具であって、内周縁から外側に広がる主面を有するとともに、前記内周縁側の第1の領域と、その外側に隣接する第2の領域とを備える石英治具の再生方法であって、前記石英治具の前記主面の、前記第1の領域の部分に石英材料を肉盛りし、前記第1の領域と前記第2の領域との間に、前記第1の領域から前記第2の領域に向けて低くなる段差を形成する工程と、前記肉盛りした主面を、前記第1の領域に平坦な表面を形成するとともに、前記段差を残すように機械加工して、前記段差を有する主面を備えた石英治具として再生する工程とを具備することを特徴とする。
【0014】
前記再生前の石英治具の例として、前記再生前の石英治具の主面が、前記第1の領域から前記第2の領域にかけて同一の高さの表面を備えているものを挙げることができる。前記再生前の石英治具の他の例として、前記再生前の石英治具の主面が、前記第1の領域と前記第2の領域との間に、前記第1の領域から前記第2の領域に向けて低くなる段差を有するものを挙げることができる。前記プラズマ処理装置は、前記電極および対向電極を有する平行平板型プラズマ処理装置であることが好ましく、前記主面の前記第1の部分と前記他の部分との間に残された段差が、前記半導体基板の処理のために両電極間に供給されるガスの流れを乱さない範囲のものであることが好ましい。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法は、前記いずれかの再生方法で再生した石英治具を装着したプラズマ処理装置を利用して半導体基板を処理することを特徴とする。
【0016】
本発明の石英治具の再生使用方法は、互いに隣接する第1の領域から第2の領域にかけて均一平面状の主面を備えた石英治具をプラズマ処理装置内で使用し、前記主面をプラズマにさらす工程と、前記使用した石英治具の前記主面に石英材料を肉盛りする工程と、前記肉盛りした主面を研削して、前記前記第1の領域から前記第2の領域にかけて均一平面状の主面を備えた石英治具として再生する工程と、前記再生した石英治具を前記プラズマ処理装置内で再使用し、前記主面をプラズマにさらす工程と、前記再使用した石英治具の前記主面の、前記第1の領域の部分に石英材料を肉盛りし、前記第1の領域と前記第2の領域との間に、前記第1の領域から前記第2の領域に向けて低くなる段差を形成する工程と、前記石英治具の段差が形成された主面を、前記第1の領域に平坦な表面が形成されるとともに、前記段差を残すように切削して、段差を有する主面を備えた石英治具として再生する工程とを具備することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下に本発明の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係るプラズマ処理装置を適用したドライエッチング処理を行うプラズマ処理装置の一実施形態の概略構成を示す線図的断面図である。図1に示すように、プラズマ処理装置10は、高周波(RF)プラズマによってシリコン酸化膜などの酸化膜をエッチングする、半導体装置製造用のドライエッチング装置であり、狭ギャップの平行平板構造を有する。被処理物である半導体基板としてのシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wを装着する処理槽(チャンバ)12は、10−6Torr(10−4Pa)程度の真空度まで真空引き可能である。このチャンバ12内にはさまざまな構成部品が設けられている。
【0018】
チャンバ12の上部中央には、エッチングガスを導入可能なガス導入口13が接続された上部電極14が設置されている。チャンバ12の下部中央には、ドライエッチングされるウエハWを固着する静電チャック17を備えた下部電極16が設置されている。下部電極16の外周縁の側面はアルマイト被膜およびフッ素系ポリマーフィルムなどで覆われており、電気絶縁性が維持されている。
【0019】
これらの上部電極14および下部電極16は、互いに平行に対向し、それぞれの対向面は平面状の形状を有している。すなわち、これらの電極は平行平板電極を構成し、高周波電力が印加されることによってその間の空間にプラズマが生成される、プラズマ生成用電極として使用される。
【0020】
上部電極14にはエッチングガスを導入可能なガス導入口13が設けられるとともに、その下面には、図示しない多数のガスノズルが配置されており、電極間の空間にエッチングガスを均一に供給するシャワーノズルの役目を果たす。供給されたエッチングガスは、電極間の空間からチャンバ12の外周部に導かれ、図示しない排気系によって、制御された排気速度で排気される。この結果、電極間の空間に一定圧力のエッチングガス雰囲気が形成される。この一定圧力のエッチングガス雰囲気にプラズマ生成用電極を介して高周波電力が供給されることによって、プラズマが生成される。
【0021】
さらにチャンバ12の外には、上部電極14および下部電極16の両方に高周波電力(RFパワー)を印加するRFパワースプリッター22と、RFパワースプリッター22に接続されるRF電源24とが設置される。これらによってチャンバ12内にRFプラズマが生成され、ドライエッチングが行なわれる。本プラズマ処理装置のRF印加方式は、アノードカップリング方式、カソードカップリング方式、スプリット方式を択一的に選択可能である。本実施形態では、上下部電極両方にRFを印加するスプリット方式を採用した。
【0022】
上部電極14および下部電極16の周囲は、それぞれ上部石英治具18、下部石英治具20により覆われている。上部石英治具18はいわゆるシールドリングであり(以下、「シールドリング18」とする。)、下部石英治具20はいわゆるフォーカスリングであり(以下、「フォーカスリング20」とする。)、ともに平行平板電極間にプラズマを集中させる機能を有している。シールドリング18およびフォーカスリング20は、着脱可能となっている。
【0023】
このシールドリング18の下面、および、フォーカスリング20の上面は、特に、上下の電極14,16の外周縁部に近接した、内周縁付近の下面および上面は、プラズマにさらされ、激しく消耗する。従って、シールドリング18の下面およびフォーカスリング20の上面は、次に説明するように、再生処理を容易にする形状を有している。また、図1に示されたように、シールドリング18の下面とフォーカスリング20の上面は、互いに対向し、その間に、上下の電極間に供給されたエッチングガスがチャンバ12の外周部に導かれる排気経路を形成する。従って、シールドリング18の下面およびフォーカスリング20の上面は、ガスの流れに影響を与えるため、次に説明するように、ガスの流れを乱すことがないような形状を有している。以下、プラズマにさらされて消耗するとともにガスの流れに影響を与える、シールドリング18の下面およびフォーカスリング20の上面を、それぞれの石英治具の「主面」と呼ぶ。
【0024】
次に本発明に係るフォーカスリング20について説明する。図2(a)は本発明に係るフォーカスリング20の平面図であり、図2(b)は図2(a)のフォーカスリング20を、図2(a)中のC−C´線を通る平面で切断した断面を示した縦断面図であり、図2(c)はフォーカスリング20の断面を部分的に拡大した図である。フォーカスリング20は、まず全体的には、内周縁を有し、この内周縁から外側に広がる平板状の形状を有している。そして、図2(b)に示すように、フォーカスリング20の主面である上面は、内周縁(中心)側に、上方に突出した凸部を有している。
【0025】
より詳細には、図2(c)に示すように、内周縁側には、凸部に対応する、平坦な表面を主面に有する第1の領域A1が形成され、その外側に隣接して、やはり平坦な表面を主面に有する第2の領域A2が形成されている。第2の領域A2の表面の高さは第1の領域の表面の高さよりも低く、その間の境界には段差d1が形成されている。この段差d1の大きさは、所定枚数のウエハWの処理、例えばプラズマエッチング処理に晒されて消耗しても、後述する再生操作で容易に再生することができる大きさであり、かつ、ウエハW処理時に電極間に供給される処理ガスの流れを乱すことのない大きさである。
【0026】
また、図2(c)に示されるように、フォーカスリング20の内周縁の側面は、垂直な形状を有している。この側面は、図1に示されたように、フォーカスリングが下部電極16の外周縁部を覆うように装着された際に、下部電極16の外周縁の側面に対向し、その間に所定の幅のギャップを形成する。このギャップの幅を小さくすることにより、下部電極16の側壁がプラズマにさらされてダメージを受けることを防止する。さらに、フォーカスリング20の第1の領域A1内の、内周縁端部の所定範囲の部分A0においては、A1内の他の部分に比較して、主面の表面高さが低く形成されている。
【0027】
この部分は、下部電極16上にウエハWを載置しやすくするために設けられる。すなわち、図1に示されるように、下部電極16の径はウエハWの径よりもわずかに小さいため、載置されたウエハWの外周縁が下部電極16の外側にはみ出す。このはみ出した部分が接触することによって、チッピング等の問題が発生することがないように、A0の部分において、フォーカスリング20の主面の表面は低く形成される。なお、図2(c)では、A0の部分の主面の表面高さとA2の部分の主面の表面高さが同一に表示されている。しかし実際には、この両領域の表面高さが同一であるとは限らない。
【0028】
本発明に係わるフォーカスリング20は、従来から同様のプラズマ処理装置で使われていたフォーカスリングと同様の構造を有し、同一の機能を有するものである。しかし、従来のフォーカスリングは、その主面に、第1の領域A1と第2の領域A2との間の段差を有さず、第1の領域A1の表面の高さと第2の領域A2の表面の高さとが同一に形成されていた。後から述べるように、本発明のフォーカスリング20においては、第1の領域A1の表面を第2の領域A2の表面よりも高く形成することにより、同一のフォーカスリングを繰り返し再生して使用することが可能である。
【0029】
具体的には段差d1の値は0.1〜2mmであるのが好ましく、0.3〜1.7mmであるのがさらに好ましい。段差d1の値が前記範囲を下回ると、後から説明する再生処理において肉盛り後の研削加工が困難になるからである。一方、段差d1の値が前記範囲を上回ると、ウエハW処理時の処理ガスの流れを乱し、ウエハW表面全体に均一な処理を施すことができなくなるからである。
【0030】
なお、図2(c)には段差d1が強調して表現されているが、実際には、フォーカスリング20は例えば12mmの厚さを有し、この厚さに比較して、段差d1は小さい。また、上面(主面)全体は、例えば直径300mmの寸法を有し、この寸法に比較して段差d1は極めて小さい。従って、その主面に小さな段差d1を有するとしても、フォーカスリング20は、全体的には、ほぼ一定の厚さを有する平板状であり、また、その主面は、全体的には、ほぼ平坦であると考えられる。
【0031】
また前記第1の領域A1と前記第2の領域A2との幅(径方向の寸法)の比率はA1:A2=1:0.3〜2.0であるのが好ましい。さらに具体的には、例えばA1の幅とA2の幅との合計が75mmの場合、A1の幅は25〜55mmであり、A2の幅は20〜50mmであるのが好ましい。A1の幅が上記範囲を下回ると、ウエハW処理時の処理ガスの流れを乱す。一方、A1の幅が上記範囲を上回ると、再生コストの上昇に繋がる。
【0032】
さらにフォーカスリング20下面側の内周縁には面取加工が施されている。この面取加工は図2(c)に示すように内周縁からE1の幅、E2の高さ、底面となす角度θとなるように形成する。このE1の値は1〜10mmであるのが好ましく、E2の値は3〜8mmであるのが好ましく、θの値は20〜60度であるのが好ましい。
【0033】
図1に示されたように、フォーカスリング20は、フォーカスリング20の内周縁の側面が下部電極16の外周縁の側面に対して小さなギャップを持って対向するようにはめ込むことによって装着する。この時に、フォーカスリング20の下面側の内周縁に面取加工を施しておくことにより、装着を容易にし、装着の際に下部電極16の外周縁の側面の絶縁被膜を傷つけることを防止することができる。
【0034】
また、後から説明する再生処理のための、側面への肉盛りの際に、下面側にまで石英が回り込むことを防止し、下面の研削加工を不要にし、その結果、再生の繰り返しを可能にするためにも、下面の内周縁の面取加工は有効である。この面取り加工がなされた部分を除いては、フォーカスリング20の下面、すなわち、主面に対向する面は、全体的に、平坦な表面を有している。従って、第1の領域A1は第2の領域A2に比較して、厚肉に形成される。ただし、下面の形状は、使用する処理装置に合わせて、様々に変更することが可能である。
【0035】
図2には、フォーカスリング20が完全に同心円状の形状を有し、内周縁側の全体にわたって一定の幅で第1の領域A1が形成されたように示されている。第1の領域A1の幅を一定にすることにより、ガスの流れを均一化し、処理の均一性を高めることが可能である。しかし現実には、例えば、処理対象のウェハWがオリエンテーションフラットを有する場合には、フォーカスリング20にも、それに対応する形状が作られるため、完全な同心円状の形状にはならない。この場合、図2には内周縁全体にわたって同一の幅で形成されるように示されている第1の領域A1も、完全には同一の幅にはならない。しかしその場合にも、全体的には、フォーカスリング20は略同心円状の形状を有し、第1の領域A1の幅も実質的には一定であると考えることができる。
【0036】
次に本発明に係る石英治具としてのシールドリング18について説明する。図3(a)は本発明に係るシールドリング18の平面図であり、図3(b)は図3(a)のシールドリング18を、図3(a)中のD−D´線を通る平面で切断した断面を示した縦断面図であり、図3(c)はシールドリング18の断面を部分的に拡大した図である。シールドリング18も、フォーカスリング20と同様に、全体的には内周縁を有し、内周縁から外側に広がる平板状の形状を有している。そして図3(b)に示すように、シールドリング18の主面である下面は、内周(中心)側に、凸部を有している。より詳細には、図3(c)に示したように、内周縁側には、凸部に対応する、平坦な表面を主面に有する第1の領域B1が形成され、その外側に隣接して、やはり平坦な表面を主面に有する第2の領域B2が形成されている。第2の領域B2の表面の高さは第1の領域B1の表面の高さよりも低く(図3(c)には、第1の領域B1の表面よりも第2の領域B2の表面の方が上方に記されているが、主面である下面を基準に考えれば、第2の領域B1の表面の方が「低い」と言える)、その間の境界には段差d2が形成されている。
【0037】
本発明に係わるシールドリング18は、従来から同様のプラズマ処理装置で使われていたシールドリングと同様の構造を有し、同様の機能を有するものである。しかし、従来のシールドリングは、その主面に、第1の領域B1と第2の領域B2との間の段差を有さず、第1の領域B1の表面の高さと第2の領域B2の表面の高さとが同一に形成されていた。後から述べるように、本発明のシールドリング18においては、第1の領域B1の表面を第2の領域B2の表面よりも高く形成することにより、同一のシールドリングを繰り返し再生して使用することが可能である。
【0038】
この段差d2の大きさは、所定枚数のウエハWの処理、例えばプラズマエッチング処理の間にプラズマに晒されて消耗しても後述する再生操作で容易に再生することができる大きさであり、かつ、ウエハW処理時にチャンバ内に供給される処理ガスの流れを乱すことのない大きさである。具体的には段差d2の値は0.1〜2mmであるのが好ましく、0.3〜1.7mmであるのがさらに好ましい。段差d2の値が前記範囲を下回ると、肉盛り後の研削加工が困難になるからである。一方、段差d2の値が前記範囲を上回ると、ウエハW処理時の処理ガスの流れを乱し、ウエハW表面全体に均一な処理を施すことができなくなるからである。
【0039】
また前記第1の領域B1と前記第2の領域B2との幅(径方向の寸法)の比率はB1:B2=1:0.3〜2.0であるのが好ましい。さらに具体的には、例えばB1の幅とB2の幅との合計が75mmの場合、B1の幅は25〜55mmであり、B2の幅は20〜50mmであるのが好ましい。B1の幅が上記範囲を下回ると、ウエハ処理時の処理ガスの流れを乱す。一方、B1の幅が上記範囲を上回ると、再生コストの上昇に繋がる。
【0040】
シールドリング18の上面、すなわち、主面に対向する面の外周縁部には、凸部が形成されている。この凸部は、図1に示されるように、上部電極14の外周縁部を覆うように装着する際に、チャンバ12の上部の内壁に設けられた凹部にはめ込んで、位置を規定するためのものである。この外縁部の凸部は、同一の処理装置において使用する従来のシールドリングにも設けられており、プラズマにさらされて消耗される部分でもないし、ガスの流れに影響を与えることもない。すなわち、主面の内周縁側に設けられた凸部とは異なり、この外周縁部の凸部は、本発明のシールドリング18を特徴づけるものではない。
【0041】
この外周縁部の凸部を除いては、シールドリング18の上面側は、全体的に、平坦な表面を有している。従って、凸部が上面に形成された外周縁部を除いて、第2の領域B2は第1の領域B1に比較して薄肉に形成される。ただし、上面の形状は、使用する処理装置に合わせて、様々に変更することが可能である。なお、図3(c)には段差d2が強調して表現されているが、実際には、主面(下面)全体の寸法に比較して段差d2は極めて小さい。従って、上面に凸部が形成された外周縁部を除いては、シールドリング18も、フォーカスリング20と同様に、全体的には、ほぼ一定の厚さを有する平板状であり、また、その主面は、全体的に、ほぼ平坦であると考えられる。
【0042】
図3には、シールドリング18が完全に同心円状の形状を有し、内周縁側の全体にわたって一定の幅で第1の領域B1が形成されたように示されている。第1の領域B1の幅を一定にすることにより、ガスの流れを均一化し、処理の均一性を高めることが可能である。現実には、完全な同心円状の形状にはならない場合もあるが、その場合にも、全体的には、フォーカスリング20は略同心円状の形状を有し、第1の領域B1の幅は実質的には一定である。
【0043】
次に、本発明に係る石英治具の再生方法について説明する。図4は本発明の石英治具の再生方法の処理の流れを示したフローチャートであり、図5は再生作業の途中の状態を示した石英治具の縦断面図である。本実施形態では石英治具として本発明に係る前記フォーカスリング20を再生する場合について説明する。フォーカスリング20の再生を行うには、まず、所定枚数のウエハWの処理に使用され、プラズマに晒されて消耗した欠損部について石英材料の補充、すなわち穴埋めを行う(ステップ1)。
【0044】
具体的には、例えばプラズマエッチングに使用されたフォーカスリング20では、図5(a)に示すように、プラズマにさらされる主面である上面の、下部電極16の外周縁に近接する、内周縁近傍に欠損部19bが生じやすい。そのため再生処理の最初の段階では欠損部19bに対して補充を行う(ステップ1)。
【0045】
補充の方法としては、特に限定されないが、例えば図5(a)に示すように、直径1mmの棒状の石英材料30を酸水素火炎バーナー40で加熱しながら溶融し、目視で確認しながら欠損部19bに滴下することにより、石英材料30で欠損部19bを補充する。かくして図5(b)のように、欠損部19bへの石英材料30の補充が完了する。この石英材料の補充は欠損部19bが形成された部分についてのみ行う。
【0046】
しかし、欠損部19bへの石英材料の補充のみによっては、再使用が可能な寸法精度を得ることができない。そこで、欠損部19bへの補充が完了したら、必要な部分に、一旦、余分に石英材料を肉盛り(ステップ2)してから、機械加工を行うことにより、必要な寸法精度を有する石英治具に再生する。
【0047】
この肉盛りは、図5(c)に示すようにフォーカスリング20のうち、プラズマ処理で消耗されやすい部分およびその周辺について行う。具体的にはフォーカスリング20の内周縁の側面181と、内周縁側の第1の領域A1の上面182について肉盛りを行う。肉盛りの方法は前記ステップ1の欠損部19bへの補充と同様に、一例として、加熱して溶融した石英材料を滴下する方法で肉盛りすることができる。
【0048】
肉盛りは、第1の領域A1の上面182においては、フォーカスリング20の厚さが所望する最終的な厚さより幾分厚くなるまで行う。このとき最終的な厚さより厚さΔdだけ加算した厚さになるまで肉盛りを行うとすると、Δdの値は、後述する成形加工により再現性よく第1の領域A1を形成可能な厚さであり、かつ、過度の材料と工数とを必要としない厚さである。具体的にはΔdの厚さはΔd=0.3〜3.0mmであるのが好ましい。Δdが前記範囲を下回ると成形加工が困難となり、またΔdが前記範囲を上回ると、無駄な製造コストの上昇を招く。
【0049】
なお、内周縁の側壁においては、下面側に面取加工がなされているため、図5(c)に模式的に示されたように、下面にまで回り込むことなく肉盛りを行うことができる。これにより、次に行う機械加工における下面の加工を不要にすることができる。
【0050】
前記肉盛りが完了した後、フォーカスリング20のアニーリングを行って加熱による熱歪を取り除く(ステップ3)。次いでアニーリングが完了したフォーカスリング20について機械加工を施して第1の領域A1を形成する(ステップ4)。
【0051】
すなわち、第1の領域A1の上面182を研削加工し、肉盛り時に形成された微小な表面凹凸を解消して平坦な表面を得る(平面出し)とともに、第1の領域A1の厚さを所要の値にする。また、内周縁の側面を研削加工し、垂直な側面を得るとともに、内周縁の径を所定の値にする。そして、面取部の研削を行って、所定の面取形状を得る。
【0052】
さらにフォーカスリング20内周縁側上面の端部183を研削加工して、表面高さが低くされた端部A0を形成する。かくして図5(d)に示したような縦断面を備えたフォーカスリング20が得られる。なお、この時、前述のように、下面側に面取加工がなされていることにより下面には回り込まないように肉盛りを行うことができるので、下面の研削加工を行う必要は無い。面取部への肉盛り量が多く、下面の表面よりもさらに下側に突出する場合があったとしても、面取部の研削加工によって削り取ることができる。下面の研削加工を不要にすることにより、再生処理の過程で、第2の領域A2の部分の厚さが減少することを防止することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、フォーカスリング20の消耗部分に石英材料30を補充し、次いで肉盛りし、しかる後に機械研削して、内周縁側が厚くなった形状のフォーカスリングとして再生する。消耗の激しい上面の内周縁側を所定の形状に再生することにより非常に長い期間、すなわち、他の原因で使用不能とならない限りにおいては半永久的に再生使用することができる。従って、処理装置の継続的な運転のために必要な交換部品の個数を削減し、コストの削減と資源の有効活用とを可能にする。
【0054】
従来、激しく消耗されるフォーカスリングに対してこのような再生処理は行われていなかった。また、第1の領域A1の表面の高さと第2の領域A2の表面の高さとが同一に形成された従来のフォーカスリングでは、同様の手順で再生を行ったとしても、後から述べるように、再生可能な回数は極めて少なかった。
【0055】
なお、上記の説明ではフォーカスリング20を再生する場合を例にして説明したが、実質的な内容はシールドリング18を再生する場合も殆ど同じである。また、上記実施形態では、最初から内周縁側が厚肉に形成された段差付き形状の断面凸形の石英治具を再生する場合について説明したが、次の第2の実施形態で説明するように、最初は均一平面状の上面を備えた従来型の石英治具を使用し、再生段階で断面凸形の段差付き形状に作り変えてもよい。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、本発明の再生方法で再生した石英治具の再生使用方法について説明する。図6は本再生使用方法の処理の流れを示したフローチャートであり、図7および図8は本再生使用方法に係る石英治具の縦断面図である。
【0057】
本再生使用方法では、均一平面状の上面(主面)を備えた、従来型のフォーカスリングを最初使用し、所定枚数のウエハWを処理後、1回目の再生を行って再び平面状の上面を備えたフォーカスリングに再生し、2回目の使用に供する。次いで2回目の使用で所定枚数の処理後2回目の再生を行う。このときの再生では、前記第1の実施形態で示したように、上面に段差が形成された凸形断面を備えたフォーカスリングとして再生し、3回目の使用に供する。その3回目の使用以後は凸形断面を備えたフォーカスリングとして再生と使用とを繰り返し、再生不能な状態に消耗するまで使用し続ける。
【0058】
即ち、最初に図7(a)にその断面を示すような、内周縁端部のA0部分を除いて段差を持たない、均一な平面状の上面185を備えたフォーカスリング21を用意し、これを前記プラズマ処理装置10にセットする(ステップ1)。この状態でウエハWの処理、例えばプラズマエッチング処理を所定枚数のウエハWについて行う(ステップ2)。前記所定枚数のウエハWの処理によりフォーカスリング21の上面185の内周縁の近傍部が図7(b)のように削られ、欠損部23bが生じる。そこで、次の工程で前記欠損部23bに図5(a)に示したのと同様に加熱溶融した石英材料30を滴下して補充する(ステップ3)。
【0059】
更にフォーカスリング21内周縁上面の欠損部23bおよび側面184に余分に加熱溶融した石英材料を滴下して、図7(c)に示すように肉盛部分30aを形成する(ステップ4)。次いでアニーリングして(ステップ5)肉盛り時の熱歪を除去した後、前記肉盛部分30aを機械研削して成形加工し(ステップ6)、図7(d)に示したように、段差を持たない均一平面状の上面185を備えた略新品の形状になるように再生する。このときフォーカスリング21の上面全面を研削して均一平面状に成形するため、フォーカスリング21全体の厚さが0.1〜0.3mm程度薄くなる。図7(d)に示したように、再生されたフォーカスリング20は前記欠損部23bが石英材料30で補充されている。
【0060】
次に、前記のようにして再生したフォーカスリング21を再び前記プラズマ処理装置にセットし(ステップ7)、前記と同様にして複数枚のウエハWについて処理を繰り返す(ステップ8)。
【0061】
ウエハWの処理枚数の積算値が所定値に到達したら、フォーカスリング20の再生可否を点検する(ステップ9)。例えば割れやヒビ、変形や大規模な欠損がなく、上面185の内周縁近傍部の消耗部分の補充程度で再使用できる場合には、再生可能と判断する。一方、前記割れやヒビ、変形や大規模な欠損等により消耗部分の単純な補充程度では再使用できない場合には再生不可と判断する。
【0062】
再生可能と判断した場合、図7(e)に示す欠損部23dに、前記と同様に加熱溶融した石英材料を滴下して補充し(ステップ10)、更に上面185および内周縁側面に溶融した石英材料30を滴下して肉盛りし、図7(f)に示すように肉盛部分30bを形成する(ステップ11)。
【0063】
この時、第1回目の再生時(図7(c))とは異なり、上面185において、欠損部のみではなく、内周縁側の所定の幅の第1の領域A1にわたって肉盛りを行う。ただし、上面の全面にわたって肉盛りを行うのではなく、所定の幅の領域のみに肉盛りを行うため、肉盛りを行った第1の領域A1と、その外側に隣接する、肉盛りを行っていない第2の領域A2との間に段差が形成される。
【0064】
次いで、アニーリングして熱歪を取り除き(ステップ12)、しかる後にフォーカスリング21の肉盛り部分30bを機械研削して成形加工する(ステップ13)。このとき、フォーカスリング21上面の第1の領域A1の表面高さが、第2の領域A2の表面高さと同じになる前に機械研削を止め、図7(g)に示すように厚肉の第1の領域A1と薄肉の第2の領域A2とを形成する。
【0065】
すなわち、肉盛り時に形成された、第1の領域A1と第2の領域A2との間の段差が残された状態で研削を終える。このように、第2の領域A2の表面高さが第1の領域A1の表面高さよりもの低い範囲で研削を終えるので、第2の領域A2が削られて厚さが減少することはない。前述のように、第1回目の再生においては、フォーカスリング21の上面の全面が削られ、全体的に厚さが減少している。従って、第1の領域A1の厚さが、第1回目の再生において減少する以前の、新品の時の厚さと同じになるように研削を行えば、第2の領域A2の表面高さに比較して高い表面高さを保った状態で、第1の領域A1の研削を終えることができる。
【0066】
このように段差のついた凸形状の断面を有するフォーカスリング21が形成されたら、このフォーカスリング21を再び前記プラズマ処理装置にセットし(ステップ7)、前記と同様にしてウエハWの使用に供する(ステップ8)。
【0067】
以下、同様に、再生したフォーカスリング21をプラズマ処理装置10にセットし(ステップ7)、所定枚数のウエハWの処理を行い(ステップ8,9/図7(h))、欠損部を石英材料で補充し、上面185の第1の領域A1および内周縁の側面184に肉盛りし(ステップ10,11/図8(i))、肉盛り部分を研削加工することにより上面に段差を有する形状に成形して再生し(ステップ12,13/図8(j))、さらに使用、補充、肉盛り、および再生するループを繰り返す(図8(k)〜図8(m)…)。即ち、3回目の処理以降は、実質的に図7(g)〜図8(i)の操作が繰り返し行われ、使用と再生とが繰り返される。
【0068】
一方、ステップ9でフォーカスリング21の再生不可と判断された場合には、それ以上のフォーカスリング21の再生は行わず、廃棄する(ステップ14)。処理装置には、新品のフォーカスリング21をセットして(ステップ1)、以下、前記ステップ2以降と同様の手順で操作を行う。
【0069】
以上のように、本実施形態では、最初、内周縁端部のA0の部分を除いて第1の領域から第2の領域にかけて段差を持たない均一平面状の上面を備えたフォーカスリング21を使用して処理した後、上面の全体を研削して全体的に厚さの減少した、平坦な上面を有するフォーカスリングとして再生し、2回目の使用に供する。2回目の使用で消耗したあと、消耗部に石英材料を補充し、内周縁側の第1の領域に肉盛りを行って、第2の領域との間に段差を形成し、この段差が残された状態に成形して上面に段差を有するフォーカスリングとして再生し、3回目の使用に供する。それ以後の再生においては、2回目再生において形成された段差を維持した形状に再生して、繰り返し使用する。最初の使用では上面が段差を持たない均一平面状のフォーカスリングを用いるので比較的安価なコストのものを使用できる。また最初の再生では上面が段差を持たない均一平面状のフォーカスリングとして再生するので、簡単な機械研削のみで済み、再生費用を安価に抑えることができる。
【0070】
1回目の、全体的な厚さの減少が減少する再生方法では、欠損部の補充は行われたとしても、再生使用可能な回数は制限される。すなわち、厚さの減少が繰り返されると、内周縁部においては、下部電極の側面が露出し、絶縁皮膜が損傷を受け、異常放電を引き起こす。また、全体的な厚さが減少することにより、ウエハW処理のためのガスの流れに変化が発生し、処理特性が変化する。さらに、フォーカスリング自体の強度低下にもつながる。もちろん、このような全体の厚さが減少する再生処理を実施できる回数は、1回のみに限られるわけではなく、装置およびフォーカスリングの形状によっては、複数回可能な場合もある。むしろ、全体の厚さが減少する再生処理を1回行っただけでは、厚さの減少量が小さすぎて、第1の領域A1に肉盛りした後に新品と同じ厚さになるまで研削した場合に、研削工程のばらつきによって、第2の領域A2の表面にまで研削がおよぶこともある。このような場合には、厚さの減少量が所定の値に達するまで、全体の厚さが減少する再生を複数回繰り返してから、段差を形成する再生処理を行うことが好ましい。しかし通常は、全体の厚さが減少する再生処理が実施できる回数は2,3回程度に制限される。
【0071】
これに対して、2回目以降行う、上面(主面)の内周縁側に肉盛りを行い、段差を有する形状に再生する方法では、厚さの減少が起きないため、半永久的に再生と使用を繰り返すことが可能である。すなわち、内周縁側の第1の領域においては、肉盛りと研削とによって、所定の厚さ(新品の時の厚さ)を維持し、上部電極に対する損傷を防止することができる。また、外側の第2の領域においても、第1回目の再生によっては薄くなるものの、第2回以降の再生では研削が行われず、それ以上の厚さの減少は起きない。このため、処理ガスの流れの変化や、機械強度の低下を防止することができる。
【0072】
なお、第2の領域は、処理装置内での使用においても高い密度のプラズマにさらされることはなく、顕著な損傷は起きない。従って、再生時に研削が行われなければ、使用および再生を繰り返しても、厚さが継続的に減少することは無い。現実には、図6に示されたように、単一のフォーカスリングの使用と再生とを繰り返すのではなく、2枚のフォーカスリングを組とし、一方のフォーカスリングを再生している間には他方のフォーカスリングを処理装置にセットして、連続的な運転を可能にする。
【0073】
本実施形態では、最初に均一平面状の上面を備えた従来型の石英治具を使用し、再生段階で段差付き形状に作り変える場合を例にして説明したが、最初から段差付き形状の石英治具を使用してもよい。その場合には、図7(g)〜図8(i)の操作が繰り返されることになる。
【0074】
(実施例)
以下、本発明のプラズマ処理装置をドライエッチング装置として適用した実施例について図面を参照して説明する。プラズマ処理装置は前記図1に示したものと同じ装置を使用した。本実施例では、上下電極にRFを印加するスプリット方式を採用した。石英治具の表面形状は図2、図3に示したとおりである。本実施例では、図2および図3に示したように、それぞれの主面に円周状の凸部を有する石英治具(フォーカスリングおよびシールドリング)を用いた。凸部が設けられる第1の領域の幅は、それぞれの内周縁から35mmとし、また段差は1mmとした。また、フォーカスリング20に対しては、設置面(下面)の内周縁端部に2Rの面取加工を施した。本実施例によって、本発明のプラズマ処理装置を用いて二酸化シリコン膜のドライエッチング加工を実施した。
【0075】
図9は処理対象のウエハWの構造を示した縦断面図である。図9に示すとおり、ウエハWの構成は、シリコン基板S1上に二酸化シリコン膜S2が1.0μmの厚さに形成されており、さらにその上にフォトレジストによるマスクパターンMを1.2μmの厚さに形成した。マスクには0.30μm径のホール形状Hを開口したものを用いた。ドライエッチング用の処理ガスとしてはCF4 ,CHF3 のエッチャントガスおよびArの希釈ガスを用いた。プラズマの生成条件を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
また、このときのエッチング特性データを表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
次に、本発明の石英治具の再生処理を施した。ここで、シールドリング18、フォーカスリング20ともに積算RF放電時間で300時間使用したものを用いて行った。シールドリング18およびフォーカスリング20の付着異物を除去した後、主面(シールドリング18の下面、フォーカスリング20の上面)の内周縁側の第1領域のおよび内周縁側の側面に石英材料30の肉盛りを施し、熱歪みをアニーリングで除去した後、研削加工を行った。この再生処理によれば、第2の領域の外側の第2の領域の表面に研削加工が及ばないことから、未使用状態と同等の形状に回復させることができた。
【0080】
次に、再生処理を施したシールドリング18およびフォーカスリング20を再度前記プラズマ処理装置10に取り付け、図9に示したのと同一のウエハW断面構造、前記表1と同一のエッチング条件にてエッチング特性を測定した。エッチング特性の結果を前記表2に併記した。
【0081】
石英治具(シールドリング18およびフォーカスリング20)の再生前後でのエッチング特性差は、日常の特性変動範囲内に収まる程度であり、量産使用に全く問題のない水準であった。また再生石英治具の使用により、パーティクルの発生などの不具合も生じなかった。
【0082】
なお、使用したシールドリング、フォーカスリングの主面の凸部は、図7(f)、(g)に示されたように、平坦な主面の内周縁側の領域(第1領域)に石英材料の肉盛りを行って、外側の領域(第2領域)との間に段差を形成し、この段差を残すように研削を行うことによって形成した。第1領域の幅は、一定にすることを目標にしたのではあるが、実験的には、手作業で肉盛りを行ったので、第1領域の幅には±1〜2mm程度の、比較的大きなばらつきが発生した。すなわち、第1領域の幅は厳密には一定になっていない。しかしこの場合でも、表2に示されたように、従来の段差を持たないシールドリング、フォーカスリングを使用した場合に対して遜色ない、良好な特性が得られた。上記の程度のばらつきが存在する場合であっても、例えばガスの流れを乱すことにより、処理の均一性を劣化させるには至っていないと判断できる。この意味においては、上記の程度のばらつきが存在する場合であっても、実質的には、一定の幅であるとみなすことができる。
【0083】
以上、1回再生した石英治具の例を示したが、本石英治具の構成であれば、再生回数を重ねても、下部電極の側壁露出による異常放電などの不具合も効果的に回避できるので、永続的な再生および使用が実現できる。
【0084】
また、本実施例では、フォーカスリング20の下部電極挿入口にR2の面取りを施したが、面取りはこの形状に限られるものではなく、下部電極16挿入口から漸次拡大延設された拡大部を備えていれば、下部電極16へのダメージを回避することができる。
【0085】
(比較実験)
次に、本発明の作用を明らかにするために行った比較実験について説明する。本実験では前記図1に示したプラズマ処理装置を使用した。
【0086】
まず本発明と比較するために、従来型の均一平面状の主面を備えたシールドリングおよびフォーカスリングを前記プラズマ処理装置10内に装着して反応性プラズマを発生させ、ウエハWの処理を実施した。具体的には、反応性プラズマをシリコン酸化膜S2のドライエッチング加工に適用した。ウエハWの縦断面図は図9に示す通りである。また、プラズマの生成条件は前記表1に示した通りである。
【0087】
以上の条件でプラズマ処理装置によるウエハWの処理を実施した。図10(a)は使用前の従来型のシールドリング118の縦断面図であり、図10(b)は積算RF放電時間300時間までの使用後の消耗したシールドリング118の縦断面図である。また図10(c)は使用前のフォーカスリング120の縦断面図であり、図10(d)は積算RF放電時間300時間までの使用後の消耗したフォーカスリング120の縦断面図である。
【0088】
シールドリング118では、図10(b)に示したように、内周縁の側面118aにおいて水平方向に浸食が進み、浸食量が最大でΔiとなった。このときの水平方向の浸食速度は35nm/minであった。フォーカスリング120では図10(d)に示したとおり、上面の内周縁近傍の特定部位のみが垂直方向に浸食された。浸食された部位は下部電極およびその上に載置されたウエハWの外周縁部を包囲する領域であり、ウエハW表面加工時にプラズマに晒される領域に相当する。フォーカスリング120の垂直方向の浸食速度は55nm/minであった。
【0089】
シールドリング118の浸食許容量は水平方向に1mmであり、これを越えるまで消耗したシールドリング118を使用すると、この消耗したシールドリング118がパーティクル源となる。よって、シールドリング118の使用寿命は積算RF放電時間に換算すると、450〜500時間程度となる。またフォーカスリング120の浸食許容量は垂直方向に1mmである。フォーカスリング120の浸食は円周状の溝として形成され、内側に土手状の石英未消耗部が残される。
【0090】
浸食量が1mmに及ぶと、土手状の石英未消耗部の機械的強度が不足し、図10(e)に示したように、局所的に欠損部120aが生じる。フォーカスリング120の内周縁の側面が欠損すると、下部電極の側壁がプラズマに晒される。その結果、絶縁被覆が損傷し、異常放電が生じやすくなる。従って、フォーカスリング120の使用寿命は積算RF放電時間に換算すると、300時間程度となる。
【0091】
管理寿命に達したシールドリング、フォーカスリング等の石英治具を、石英の肉盛りと研削加工とを施すことにより再生処理を行った。従来型のシールドリング118の縦断面図は、図10(a)に示すものであり、従来型のフォーカスリング120の縦断面図は、図10(c)に示すものである。図10(a)および図10(c)に示したような、従来型の、主面が均一平面状の石英治具の場合には、機械研削により平面出しするときでも研削が表面全体に及ぶ。そのため、従来型の場合、シールドリング118、フォーカスリング120の石英治具全体の厚さが減少する。通常の研削作業において、1回の研削で失われる石英治具の厚さは加工公差を含めて0.3mmであった。
【0092】
この場合、特に重要なのは、フォーカスリングの厚さ減少である。フォーカスリングは下部電極の側壁を保護するという機能もあり、薄肉化した場合、この機能が果たせなくなる。従って、従来型のフォーカスリング120やシールドリング118等の石英治具の再生処理して使用できる回数は最大でも2回であり、0.6mmまでの薄肉化が使用限度となる。
【0093】
次に本発明に係る石英治具について実験した。本発明に係る石英治具(シールドリング、フォーカスリング)は図2および図3に示した縦断面を備えている。それぞれ内周縁から35mmまでの円周状の領域が、その主面に凸部が形成された第1領域となっている。本例の場合、それぞれの主面における、この第1領域とその外側の第2領域との間のは段差は0.3〜3.0mmであった。この本発明の石英治具は、第1の領域の主面側の表面高さを、第2の領域の表面高さよりも、この段差分だけ高くした。このため、再生処理における石英の肉盛り後の平面出し(機械研削による成形加工)の工程において、面積的に大部分を占める第2領域には研削の影響が及ばない。よって、再生を重ねても石英治具全体の厚さが減少することはない。また、再生処理時に専用治具等を用いる必要がなく、従来の工程や道具のままで製造できるので、再生処理にかかるコストも低く抑えられる。
【0094】
ここで図11に、本発明の石英治具をプラズマ処理装置に取り付け、エッチング特性を測定した結果を示した。図11(a)は第1の領域と第2の領域との間の段差の値と、二酸化シリコン酸化膜エッチレートおよびシリコンエッチレートとの関係をそれぞれ示したグラフであり、図11(b)は段差と0.30μm径ホールの加工変換差との関係を示したグラフである。これらはシリコン酸化膜エッチングに最も重要なエッチング特性である。前記表1で示したプロセス条件の場合、段差が0〜3mmの間でエッチングの加工特性に変化がないことが分かった。
【0095】
一方、ガスの流れの影響は、Ar希釈プロセスよりもHe希釈プロセスでより観測されやすい。そこで表3に示したプロセス条件でも、同様の加工特性を調査した。
【0096】
【表3】
【0097】
前記加工特性の調査結果を図示したのが図12である。図12(a)は第1の領域と第2の領域との段差の値と、二酸化シリコン酸化膜エッチレートおよびシリコンエッチレートとの関係をそれぞれ示したグラフであり、図12(b)は段差と0.30μm径ホールの加工変換差との関係を示したグラフである。調査の結果、図12(a),(b)に示すとおり、段差が大きくなるにつれて、二酸化シリコンエッチレート、シリコンエッチレート、および加工変換差が増大する傾向となることが判明した。0.30μm径ホールの加工変換差を10%以内に留めるには、段差は2mm以下とした方がよいことが分かる。
【0098】
以上より、各種プロセスで加工特性に影響を与えない段差として2mm以下が望ましいことが判明した。また最低段差は0.1mm以上あれば研削加工精度上可能であるが、加工公差を加味して、安定的、永続的に研削加工による再生を実施するには0.3mm以上あることがより望ましい。
【0099】
以上示したとおり、本発明の石英治具は、消耗部分を含む領域が凸形状となっているので、再生および使用を永続的に継続でき、ランニングコストが削減できるとともに資源利用の効率が向上する。また、図2(b)に示したように、フォーカスリング20には、設置面(下面)の内周縁下部に面取加工を施してある。
【0100】
フォーカスリング20の脱着時に下部電極16を傷つけることがないため、下部電極16の寿命を伸長させることもできる。
【0101】
以上、本発明をドライエッチング装置として用いられるプラズマ処理装置に適用した実施例を示したが、勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、この他にもさまざまなプラズマ処理装置に適用可能である。例えばCVD装置においても、チャンバ内の構成部品の表面に付着した堆積物を除去するためのプラズマエッチング処理が行われることが一般的である。このプラズマエッチング処理によって石英部品が損傷を受けるため本発明の適用が有効である。
【0102】
上記の実施例では、円形状の半導体ウエハを処理する処理装置に装着するフォーカスリングおよびシールドリングに本発明を適用した例を示した。この場合には、フォーカスリングおよびシールドリングは、同心円状の形状を有する。しかし、本発明の石英部品の形状は同心円状のものに限定されるものではない。例えば液晶表示装置用の角形基板を処理する装置においては、角形の形状のものが使用される。
【0103】
上記の実施例では、上部電極と下部電極からなる平行平板電極の両方に高周波電力を印加してプラズマを生成するプラズマ処理装置の、上部電極、下部電極それぞれの外周縁部を覆う石英治具に、本発明の石英治具およびその再生方法、再生使用方法適用した例を示した。このように平行平板電極の外周縁部を覆う治具の、主面の内周縁部は、プラズマにさらされて激しく消耗するため、本発明を適用する効果が高い。特に、プラズマ生成のために高周波電力を印加する側の電極、上記実施例のスプリット方式の場合には上部電極、下部電極の両方、アノードカップリング方式の場合には上部(アノード)電極、カソードカップリング方式の場合には下部(カソード)電極の外周縁部を覆う治具は、高周波電力が印加された電極に誘起されるバイアス電圧によって加速されたイオンの照射を受けるため、さらに激しく損傷を受ける。このため、本発明が特に好適に適用される。いうまでもなく、本発明の適用対象は、平行平板型プラズマ処理装置の上部および下部電極の外周縁部を覆う治具に限られるわけではない。例えば、ECR(Electro Cyclotron Resonance)形プラズマ処理装置や、ICP(Inductively Coupled Plasma)型プラズマ処理装置のように、平行平板型装置の上部電極に対応する電極を持たないプラズマ処理装置の場合にも、処理対象物を載置する下部電極には、バイアス電圧を制御するために、高周波電力が印加されることが一般的である。従って、この場合にも、下部電極の外周縁部を覆う治具に対して、本発明の石英治具およびその再生方法、再生使用方法が好適に適用できる。
【0104】
【発明の効果】
本発明では、プラズマ処理装置において、浸食作用を受ける構成部品が石英で構成されており、かつ、プラズマにさらされる主面の侵食作用を受ける領域の表面が、浸食作用を受けない領域の表面と比較して高くなるように形成されている。これにより、プラズマ処理装置内での使用によって浸食を受けても、浸食作用を受ける領域の表面への肉盛りおよび研削によって容易に繰り返し、再生し、再使用することができる。そのため装置のランニングコストを低下させることができ、かつ資源の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるプラズマ処理装置の線図的断面図である。
【図2】本発明に係るフォーカスリングの平面図および縦断面図である。
【図3】本発明に係るシールドリングの平面図および縦断面図である。
【図4】本発明の石英治具の再生方法のフローチャートである。
【図5】本発明に係る石英治具の再生途中の縦断面図である。
【図6】本発明の石英治具の再生使用方法のフローチャートである。
【図7】本発明の再生使用方法に係る石英治具の縦断面図である。
【図8】本発明の再生使用方法に係る石英治具の縦断面図である。
【図9】本発明に係る半導体の縦断面図である。
【図10】消耗した従来型のシールドリングおよびフォーカスリングの縦断面図である。
【図11】石英治具表面に形成した段差とエッチング特性との関係を示したグラフである。
【図12】石英治具表面に形成した段差とエッチング特性との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
10…プラズマ処理装置
12…チャンバ
14…上部電極
16…下部電極
18…シールドリング
20…フォーカスリング
22…RFパワースプリッター
24…RF電源
A1…第1の領域
A2…第2の領域
B1…第1の領域
B2…第2の領域
W…ウエハ
Claims (9)
- プラズマ処理装置の電極の外周縁部を覆う石英治具であって、内周縁から外側に広がる主面を有し、前記内周縁側に形成されて、平坦な第1の表面を前記主面に有する第1の領域と、前記第1の領域の外側に隣接して前記第1の領域よりも薄肉に形成されて、前記第1の表面よりも低い第2の表面を前記主面に有する第2の領域とを備えていることを特徴とする石英治具。
- 前記第1の表面と第2の表面との間の高さの差は0.1〜2mmであることを特徴とする請求項1に記載の石英治具。
- 請求項1または2に記載された石英治具を備えたプラズマ処理装置。
- プラズマ処理装置の電極の外周縁部を覆う石英治具であって、内周縁から外側に広がる主面を有するとともに、前記内周縁側の第1の領域と、その外側に隣接する第2の領域とを備える石英治具の再生方法であって、
前記石英治具の前記主面の、前記第1の領域の部分に石英材料を肉盛りし、前記第1の領域と前記第2の領域との間に、前記第1の領域から前記第2の領域に向けて低くなる段差を形成する工程と、
前記肉盛りした主面を、前記第1の領域に平坦な表面を形成するとともに、前記段差を残すように機械加工して、前記段差を有する主面を備えた石英治具として再生する工程と
を具備することを特徴とする石英治具の再生方法。 - 前記再生前の石英治具の主面が、前記第1の領域から前記第2の領域にかけて同一の高さの表面を備えていることを特徴とする請求項4に記載の石英治具の再生方法。
- 前記再生前の石英治具の主面が、前記第1の領域と前記第2の領域との間に、前記第1の領域から前記第2の領域に向けて低くなる段差を有することを特徴とする請求項4に記載の石英治具の再生方法。
- 前記プラズマ処理装置は、前記電極および対向電極を有する平行平板型プラズマ処理装置であり、前記主面の前記第1の領域と前記第2の領域との間に残された段差が、前記半導体基板の処理のために両電極間に供給されるガスの流れを乱さない範囲のものであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の石英治具の再生方法。
- 前記請求項4乃至7のいずれか一項記載の再生方法で再生した石英治具を装着したプラズマ処理装置を利用して半導体基板を処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 互いに隣接する第1の領域から第2の領域にかけて均一平面状の主面を備えた石英治具をプラズマ処理装置内で使用し、前記主面をプラズマにさらす工程と、
前記使用した石英治具の前記主面に石英材料を肉盛りする工程と、
前記肉盛りした主面を研削して、前記前記第1の領域から前記第2の領域にかけて均一平面状の主面を備えた石英治具として再生する工程と、
前記再生した石英治具を前記プラズマ処理装置内で再使用し、前記主面をプラズマにさらす工程と、
前記再使用した石英治具の前記主面の、前記第1の領域の部分に石英材料を肉盛りし、前記第1の領域と前記第2の領域との間に、前記第1の領域から前記第2の領域に向けて低くなる段差を形成する工程と、
前記石英治具の段差が形成された主面を、前記第1の領域に平坦な表面が形成されるとともに、前記段差を残すように切削して、段差を有する主面を備えた石英治具として再生する工程と
を具備することを特徴とする石英治具の再生使用方法。
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