JP2004226800A - 有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で転写ローラを有機感光体に押圧して、該トナー画像を記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法に用いる有機感光体において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する有機感光体。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、画像形成方法、及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機感光体はセレン系感光体、アモルファスシリコン感光体のような無機感光体に比して素材の選択の幅が広いこと、環境適性に優れていること、生産コストが安いこと等の大きなメリットがあり、近年無機感光体に代わって電子写真感光体の主流となっている。
【0003】
他方カールソン法に基づく画像形成方法においては、電子写真感光体上にトナー画像を形成した後、該トナー画像を記録紙に転写し、これを定着して最終画像が形成される。従って前記感光体上に形成されたトナー画像が、いかに優れたものであっても、トナー画像が十分に転写されなければ、良好な最終画像が得られない。
【0004】
前記転写手段として構造が簡単でかつ小型軽量であることからコロナ放電を利用した転写装置が用いられて来た。
【0005】
しかしながら前記転写装置では放電ワイヤーに、例えば5〜10kVの高電圧を印加し、間隙を介して感光体上に放出されるコロナ放電を利用しているため、危険を伴い、取り扱いが厄介であり、特にコロナ放電時オゾン又はNo等の活性ガスを発生して感光体を疲労劣化せしめると言う問題がある。
【0006】
又前記転写装置は長期間使用中に、放電ワイヤーに、紙粉や放電生成物が固着し、放電むらを起し、その結果トナー画像の転写むらを発生させやすいと言う問題もある。
【0007】
そこで前記コロナ放電を利用した転写装置に代わるものとして、例えば、感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写するための転写ローラと、該転写ローラに転写電圧を印加するための転写電源とを有するローラ転写装置が提案されている(特許文献1)。
【0008】
前記公報にはこのようなローラ転写装置を用いた方法によれば、コロナ放電転写法の場合のような活性ガスの発生の問題がなく、又消費電力も少なくてすみ、さらには転写時、記録紙が前記ローラにより感光体に圧接、密着されているため、トナー像の乱れを生ぜず高解像力の画像形成が達成されると記載されている。
【0009】
しかしながら、前記ローラ転写装置を用いた転写方法では転写ローラが常に感光体に押圧された状態で転写が行われるため、感光体表面に異物が付着され易く、特に表面が軟質でかつ表面エネルギーが大きい有機感光体を用いて画像形成を行った場合、異物付着によるポチ故障又は筋故障等の画像欠陥を生じ易い。
【0010】
一方、近年の電子写真方式の画像形成方法は、パソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さから、LEDやレーザを像露光光源とするデジタル方式の画像形成方式が急激に浸透してきた。更に、デジタル画像の精細化を進めて、高画質の電子写真画像を作製する技術が開発されている。例えば、スポット面積の小さいレーザ光で像露光を行い、ドット潜像の密度を上げて、高精細の潜像を形成し、該潜像を小粒径トナーで現像し、高画質の電子写真画像を作製する技術が公開されている。(特許文献2)
このような高画質のデジタル画像の形成に際しては、高感度で且つ温室度環境の変化に対して安定な特性を有する電子写真感光体が要求される。
【0011】
従来、上記のような電子写真感光体の要求を満たすために、有機感光体は、感光層を電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した層構成にし、該電荷輸送層に、分子量500前後の低分子量の電荷輸送物質を多量に含有させた構成にしていた。しかしながら、このような構成の電荷輸送層では、膜質が低下し、表面層の電荷輸送層が異物で汚染されやすい。即ち、前記した転写ローラを用いた転写手段に適用すると、感光体表面が紙粉やトナー組成物で汚染されやすく、その結果、転写むらが発生しやすい。又、転写時の感光体の汚染の結果として、ハーフトーン画像等に画像が消えた白ヌケ等の画像欠陥も発生しやすい。そこで、電荷輸送層中の電荷輸送物質を減量して使用すると、低音低湿環境等で、十分な感度が得られず、文字細り等の鮮鋭性が低下した電子写真画像と成りやすい。
【0012】
又、感光体表面の汚染を防止するために、表面層にフッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体が提案されている(特許文献3)。しかしながら、フッ素系樹脂粒子を含有させた有機感光体は、画像ボケが発生しやすい。又表面層の機械的強度も低下させやすく、前記転写ローラとの併用において、必ずしも良好な電子写真画像を提供し得ていない。
【0013】
【特許文献1】
特開平7−98548号公報
【0014】
【特許文献2】
特開2001−255685号公報
【0015】
【特許文献3】
特開昭63−65449号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような課題を解決するために提案されたものであり、その目的とするところは、トナーの転写手段として、転写ローラを用い、電子写真画像を形成する際に発生しやすいブラックスポット、白ヌケ、転写むら等の画像欠陥を防止し、且つ低温低湿環境下で発生しやすい文字細り等の鮮鋭性低下を防止し、高濃度、高解像力の鮮明な画像が安定して得られる有機感光体、画像形成方法、画像形成装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、本発明の上記課題を解決するためには、有機感光体が転写ローラで圧着されても、記録紙やトナー成分が表面に付着しにくく、又、たとえ付着しても転写性が低下せず、ブラックスポット、白ヌケ、転写むら等の画像欠陥を発生しない表面特性を有していることが重要であることに気付き本発明を完成した。又、このような表面特性を有する有機感光体と特定の押圧条件、特定のトナー形状等を組み合わせ併用することにより、ブラックスポット、白ヌケ、転写むら等の画像欠陥を防止し、且つ低温低湿環境下でも文字細り等を防止して、鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。即ち、有機感光体の表面層となる電荷輸送層に比較的大きい分子量の電荷輸送物質を用いることにより、トナー画像の転写手段として、転写ローラを用いた場合に発生しやすいブラックスポット、白ヌケ、転写むら等の画像欠陥を防止し、且つ低温低湿環境下でも文字細り等を防止して、鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【0018】
本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成される。
1.有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で転写ローラを有機感光体に押圧して、該トナー画像を記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法に用いる有機感光体において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有することを特徴とする有機感光体。
【0019】
2.導電性支持体と電荷発生層の間に中間層を有し、該中間層が無機微粒子(10〜500nm)を含有することを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0020】
3.有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
【0021】
4.有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、前記現像工程で用いるトナーが、形状係数1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
【0022】
5.有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、前記現像工程で用いるトナーが、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であり、該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
【0023】
6.有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、前記現像工程で用いるトナーが、角がないトナー粒子を50個数%以上含有し、該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
【0024】
7.前記転写ローラが多孔性発泡体であることを特徴とする前記3〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0025】
8.前記転写ローラにバイアス電圧をかけることを特徴とする前記3〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0026】
9.前記バイアス電圧が400〜1400Vであることを特徴とする前記8に記載の画像形成方法。
【0027】
10.前記3〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0028】
本発明の構成をさらに具体的に説明する。
本発明の転写ローラを用いた画像形成方法について説明するため、図1に本発明の画像形成方法の1例として、画像形成装置の断面構成図を示す。
【0029】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段、帯電工程)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0030】
感光体への一様帯電の後、像露光手段(像露光工程)としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0031】
ここで本発明の反転現像プロセスとは帯電器(帯電工程)52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0032】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0033】
現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、スチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0034】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0035】
転写工程においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写ローラ(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0036】
転写ローラ58は感光体ドラム50との間隙に転写すべきカラー画像先端が達する直前の記録紙先端が達したときに感光体ドラム50との間で記録紙Pを挟圧するように感光体ドラム50側に移動すると共に、電源580からトナーの帯電と逆極性の直流電圧を印加される。転写ローラ18の押圧力は、ローラ単位長さ当たりの線圧力として5〜500g/cm、ローラ単位面積当たり平均押圧力として25〜1000g/cm2、好ましくは100〜800g/cm2であることが望ましく、記録紙に圧接するニップ幅が0.5〜5mm程度であることが望ましい。また、挟圧する相手側の感光体ドラム50の曲率半径が40mm以上であることが望ましい。又、転写ローラの押圧力はスプリングSで調整する。
【0037】
前記転写ローラ58への直流バイアス電圧は、絶対値で400〜1500Vが好ましく、550〜1300Vがより好ましい。該直流バイアス電圧は定電流電源又は定電圧電源で供給されることが好ましい。前記定電流電源の場合は5〜15μAが好ましい。
【0038】
以上によって記録紙Pは、転写ローラ58から安定して十分に電荷を注入されてトナーの帯電と逆極性の電位に帯電し、クーロン力と転写ローラ58による圧力とによって感光体ドラム50からトナー画像を効率よく転写される。
【0039】
トナー画像を転写された記録紙Pは、上述のように転写ローラ58が作動状態にされるのとほぼ同時に、図示しない電源から交流放電電圧を印加される分離電極(分離器、分離工程)59のコロナ放電作用を受けて、感光体ドラム50から分離され、定着装置(定着工程)60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。
【0040】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段、クリーニング工程)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0041】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0042】
転写ローラの構成
本発明では感光体のトナー画像を記録紙上に転写する方法として、転写ローラを感光体に弾性的に押圧し、かつバイアス電圧印加下にトナー画像の転写が行われる。
【0043】
図2は転写ローラの断面図である。図2に示すように前記転写ローラ58は芯金58−1と、その外周に設けられた導電性弾性部材であるクロルプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム層又はそれらのスポンジ層58−2から成り、好ましくは最外層に0.01〜1μm厚の離型性弗素系樹脂又はシリコーン樹脂層から成る保護層58−3を設けて構成される。
【0044】
前記スポンジ層としては、例えばゴム、多孔性発泡体等から成る弾性体が用いられ、例えば(1)ブリヂストン(株)製イオン導電タイプ、(2)ブリヂストン(株)製電子導電タイプ、(3)トーヨーポリマー(株)製発泡ウレタンルビセルタイプ、(4)住友ゴム工業(株)製イオン導電タイプ、(5)住友ゴム工業(株)製EPDMタイプ、(6)住友ゴム工業(株)製エピクロロヒドリンタイプ、(7)イノアックコーポレーション(株)製ENDURイオン導電タイプ、(8)タイガースポリマー(株)製発泡シリコーンタイプ、(9)北辰工業(株)製発泡ウレタンタイプ、(10)信越ポリマー(株)製発泡シリコーンタイプ等の各種タイプの転写ローラが用いられ、そのうち多孔性発泡タイプが好ましい。
【0045】
本発明の画像形成方法では感光体上のトナー画像の記録紙上への良好な転写を達成するため、前記転写ローラを感光体に対して25g/cm2以上1000g/cm2以下、好ましくは100g/cm2以上800g/cm2以下の押圧力で押圧してトナー画像の転写が行われる。
【0046】
前記押圧力が25g/cm2以上1000g/cm2以下であると、トナー画像の転写が十分となり、また感光体表面へトナーの離型剤が転写されることを防止でき、画像欠陥の発生も防止できる。また、転写ローラの押圧解除の際の衝撃を適正にして、転写ズレによる画像欠陥を防止し、感光体の損傷等も防止できる。
【0047】
又、前記転写ローラに求められる特性としては、例えば反発弾性率、電気抵抗、表面硬度等が重要である。
【0048】
前記転写ローラの反発弾性としては、好ましくは30%以上70%以下である。前記反発弾性が30%以上70%以下であるとトナー画像の転写に十分な感光体への押圧力が得られるから、十分な転写特性が得られ、転写ローラの感光体への押圧又は転写時の衝撃を適正にでき、転写ズレ等の画像欠陥の発生を防止できる。なお前記反発弾性率はJIS K7311で規定する測定法により測定される。
【0049】
又、前記転写ローラはトナー画像転写のためのバイアス電圧印加を可能とするため適度の導電性が必要であり、下記測定法に基づく電気抵抗値は1×103〜1×1013Ωが好ましい。
【0050】
測定法:転写ローラの電気抵抗値は、転写ローラを直径16mm、長さ310mm、肉厚4mmとし、これを直径30mmのアルミニウム素管に170g/cm2の力で押圧した場合、温度20℃、湿度50%の環境下で計った転写ローラの回転軸とアルミニウム素管間の電気抵抗値である。
【0051】
又前記転写ローラはアスカーC硬度計による硬度が好ましくは20度以上70度以下である。アスカーC硬度が20度以上70度以下の硬度を有する転写ローラは、転写が適正に行われ、転写ズレ等の画像欠陥が発生しなくなる。
【0052】
有機感光体の構成
本発明に用いられる有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有することを特徴とする。
【0053】
有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法においては、表面層となる電荷輸送層に、分子量が550〜2000の電荷輸送物質を用いることにより、転写ローラを用いた場合に発生しやすい、トナー成分や紙粉成分の感光体表面への埋め込みを防止でき、ブラックスポットや白ヌケ等の画像欠陥を防止でき、併せて低温低湿かで発生しやすい文字細りを防止することができる。電荷輸送物質の分子量が550未満では、表面層の電荷輸送層にトナー成分や紙粉成分が感光体表面へ埋め込まれやすく、ブラックスポットや白ヌケ等の画像欠陥を発生しやすい。一方、電荷輸送物質の分子量が2000以上では、電荷輸送物質と電荷輸送層のバインダー樹脂との溶解性が悪くなりやすく、感度や帯電能の電子写真特性を劣化させやすい。
【0054】
又、前記分子量の電荷輸送物質は、電荷輸送層に低モル数、即ち電荷輸送層のバインダー樹脂の単位質量当たり、1.0×10−4(mol/g)〜1.0×10−3(mol/g)電荷輸送物質を含有させることにより、電荷輸送層の膜物性を低下させずに、しかも良好な電子写真特性を有する有機感光体を達成できる。更に、電荷輸送層のバインダー樹脂の単位質量当たり、2.0×10−4(mol/g)〜9.0×10−4(mol/g)電荷輸送物質を含有させることがより好ましい。即ち、電荷輸送層に、比較的大きい分子量の電荷輸送物質を、バインダー樹脂の単位質量当たり低モル数で用いることにより、バインダー樹脂と電荷輸送物質の絡み合いを強め、その結果、電荷輸送層の表面が汚染されにくい構造を得ることができる。又、高い分子量の電荷輸送物質を用いた電荷輸送層は、550未満の低分子量の電荷輸送物質を用いた電荷輸送層に比し、転写ローラからの転写電界が高く維持される傾向にあり、たとえ電荷輸送層の表面層がトナー成分や紙粉で汚染されても、トナーの転写性が低下しにくく、転写むらが発生しにくい。
【0055】
本発明の分子量を有する電荷輸送物質としては、ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物又はビス又はトリブタジエン系化合物が好ましい。
【0056】
本発明のビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物とはアニリンの窒素原子に同一化学構造のアリールエテニルフェニル基を2個有する化合物群を云うが、好ましくは下記一般式(1)で示される化合物である。
【0057】
【化1】
【0058】
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0059】
又、一般式(1)のAr1、Ar2の置換、無置換の芳香族基が下記一般式(2)であることをが好ましい。
【0060】
【化2】
【0061】
一般式(2)中、R6〜R17は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、炭素原子数1〜4のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基である。
【0062】
以下に、本発明の好ましいビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の例を挙げるが、本発明は下記の化合物例に限定されない。又、これらの化合物はいずれも立体異性体構造を持つことができる。
【0063】
【化3】
【0064】
【化4】
【0065】
【化5】
【0066】
【化6】
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
一方、ビス又はトリブタジエン系化合物とは窒素原子を介して、ブタジエン構造2個又は3個を対称的に有する化合物を意味し、下記一般式(3)、一般式(4)で示される化合物が好ましい。
【0071】
【化10】
【0072】
一般式(3)中、R1,R2,R3,R4,R5,R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。m2及びn2は0又は1を示す。
【0073】
【化11】
【0074】
一般式(4)中、R7〜R13はそれぞれ同一であっても異なってもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子又は置換していてもよいアリール基を示し、m3及びn3は0又は1を示す。
【0075】
以下に、ビス又はトリブタジエン系化合物の電荷輸送物質の化合物例を挙げるが、本発明は下記の化合物例に限定されない。又、これらの化合物の合成法については特開平4−290852号、特開平09−244278号等に記載されている。
【0076】
【化12】
【0077】
【化13】
【0078】
【化14】
【0079】
【化15】
【0080】
【化16】
【0081】
【化17】
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
次に、上記のような電荷輸送物質を用いた有機感光体の層構成について記載する。
【0087】
本発明の有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0088】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0089】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0090】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0091】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0092】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0093】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0094】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0095】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は無機粒子をバインダー樹脂中に分散した中間層が挙げられる。無機粒子の平均粒径は0.01〜1μmが好ましい。特に、表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が好ましい。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0096】
N型半導性微粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質とは、該N型半導性微粒子を絶縁性バインダーに含有させることにより、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性を示さない性質を有するものをいう。
【0097】
ここで、N型半導性粒子の判別方法について説明する。
導電性支持体上に膜厚5μmの中間層(中間層を構成するバインダー樹脂中に粒子を50質量%分散させた分散液を用いて中間層を形成する)を形成する。該中間層に負極性に帯電させて、光減衰特性を評価する。又、正極性に帯電させて同様に光減衰特性を評価する。
【0098】
N型半導性粒子とは、上記評価で、負極性に帯電させた時の光減衰が正極性に帯電させた時の光減衰よりも大きい場合に、中間層に分散された粒子をN型半導性粒子という。
【0099】
前記N型半導性微粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0100】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径において10nm以上500nm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは、15nm〜50nmである。
【0101】
数平均一次粒径の値が前記範囲内にあるN型半導性微粒子を用いた中間層は層内での分散を緻密なものとすることができ、十分な電位安定性、及び黒ポチ発生防止機能を有する。
【0102】
前記N型半導性微粒子の数平均一次粒径は、例えば酸化チタンの場合、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定される。
【0103】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性微粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型のものが最も良い。
【0104】
N型半導性微粒子に行われる疎水化表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理であり、最後に反応性有機ケイ素化合物の表面処理を行うことが好ましい。
【0105】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性微粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0106】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性微粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性微粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性微粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性微粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0107】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0108】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0109】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる結晶構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0110】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0111】
電荷輸送層
本発明で電荷輸送層とは、電荷発生物質等で発生した電荷キャリア(電子又はホール)を輸送する機能を有する層を意味する。
【0112】
本発明の電荷輸送層は分子量550〜2000の電荷輸送物質(CTM)を含有することを特徴とする。該電荷輸送層はCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。又、分子量が550未満又は2000より大きい電荷輸送物質を併用することも可能であるが、本発明外の分子量の電荷輸送物質は本発明内の電荷輸送物質の当モル未満で用いることが好ましい。
【0113】
電荷輸送物質(CTM)としては前記した電荷輸送物質の他に公知の電荷輸送物質を併用して用いることもできる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを併用して、用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0114】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0115】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。又電荷輸送層が表面層となる感光体の場合は、機械的摩耗に強いポリカーボネートが好ましく、このようなポリカーボネートとしては平均分子量が40,000〜25,000のポリカーボネートが好ましい。ここで平均分子量は数平均分子量、重量平均分子量、及び粘度平均分子量のいずれのものでもよい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0116】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0117】
【化22】
【0118】
【化23】
【0119】
【化24】
【0120】
【化25】
【0121】
電荷輸送層は2層以上の層構成にしてもよい。この場合は表面の電荷輸送層が本発明の構成を満たせばよい。
【0122】
中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0123】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお前記スプレー塗布については例えば特開平3−90250号及び特開平3−269238号公報に詳細に記載され、前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0124】
現像用トナーの構成
次に、本発明の現像工程で用いられるトナーについて説明する。
【0125】
本発明のトナー像の形成の為に用いられるトナーは、
▲1▼トナー粒子の形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上、
▲2▼角がないトナー粒子の割合が50個数%以上、
▲3▼トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上。
【0126】
即ち、本発明の画像形成方法では、前記した有機感光体に加え、現像剤のトナーとして、上記▲1▼〜▲3▼の少なくとも1つ以上の条件を満たしたトナーを含有した現像剤を用いて本発明の有機感光体に適用することにより、有機感光体の表面の汚染や亀裂をより効果的に防止し、トナーの転写に転写ローラを用いても、反転現像におけるブラックスポット、白ヌケ、黒ポチ、転写むら等の画像欠陥の発生を防止し、良好な電子写真画像を得ることができる。
【0127】
即ち、トナー自体の形状分布を均一化することにより、感光体表面へのトナー成分の汚染防止が容易になり、転写ローラを用いたときのブラックスポット、白ヌケ、転写むら等の画像欠陥をよりよく防止することができる。
【0128】
又、本発明者等は鋭意検討した結果、角がないトナー粒子ではその表面の平滑性により、感光体表面への紙粉やトナー成分の埋め込みが防止され、トナーの転写に転写ローラを用いても、反転現像におけるブラックスポット、白ヌケ、黒ポチ、転写むら等の画像欠陥の発生を防止し、良好な電子写真画像を得ることができる。
【0129】
又、トナー自体の粒度分布をシャープにすることにより、感光体表面へのトナー成分の汚染防止が容易になり、感光体表面への紙粉やトナー成分の埋め込みが防止され、トナーの転写に転写ローラを用いても、反転現像におけるブラックスポット、白ヌケ、黒ポチ、転写むら等の画像欠陥の発生を防止し、良好な電子写真画像を得ることができる。
【0130】
本発明者等は、転写ローラを有する画像形成装置では、画像形成を繰り返した場合には、形が不揃いなトナー粒子、角となる部分を有するトナー粒子、粒径が特に大きい或いは小さいトナーが、感光体表面を汚染させやすく、その結果、感光体表面に電荷がリークしたり、蓄積したりするスポットを形成し、反転現像におけるブラックスポット、白ヌケ、黒ポチ、転写むら等の画像欠陥を発生させやすい傾向ある。この理由については明確ではないが、トナー粒子の形が不揃いである場合には現像装置内部での攪拌等による機械的ストレスを受けやすく、過大なストレスが加わる部分が発生することによって、トナーが破壊され、有機感光体表面に付着し、転写ローラによる押圧により、電荷がリークしたり、蓄積したりするスポットを形成すると考えられる。
【0131】
又、上記▲1▼〜▲3▼の全ての条件を満たしたトナーと前記した有機感光体、即ち、分子量が550〜2000の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を表面層として有する有機感光体と併用することにより、ブラックスポットや黒ポチの画像欠陥を顕著に改善し、鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0132】
又、上記▲1▼〜▲3▼の条件以外に、下記の▲4▼、▲5▼の条件、形状係数のバラツキ、個数粒度分布のバラツキを小さくしたトナーを用いることが、より好ましい。
▲4▼トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下、
▲5▼トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下、
以下、上記▲1▼〜▲5▼のトナーについて説明する。
【0133】
トナーの形状係数(=トナー粒子の形状係数)
トナー粒子の形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0134】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0135】
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0136】
本発明のトナーは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上であり、好ましくは、70個数%以上である。
【0137】
本発明では前記分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する有機感光体上に形成された潜像をこの形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上含有する現像剤により現像することにより、ブラックスポットや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、転写ローラを用いても、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0138】
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、トナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、トナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.2〜1.6にしたトナー粒子を調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。また、いわゆる重合法トナーを調製する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.2〜1.6に調整したトナー粒子を同様に通常のトナーへ添加して調整する方法がある。
【0139】
上記方法の中では重合法トナーが製造方法として簡便である点と、粉砕トナーに比較して表面の均一性に優れる点等で好ましい。該重合法トナー(重合トナーとも云う)とはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要により、その後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要により、その後に行われる粒子同士の融着工程を経て得られるトナーを意味する。
【0140】
重合トナーは原料モノマーを水系で均一に分散した後に重合させトナーを製造することから、トナーの粒度分布、及び形状が均一なトナーが得られる。
【0141】
トナーの形状係数の変動係数(=トナー粒子の形状係数の変動係数)
本発明のトナー粒子の「形状係数の変動係数」は下記式から算出される。
【0142】
変動係数=〔S/K〕×100(%)
〔式中、S1は100個のトナー粒子の形状係数の標準偏差を示し、Kは形状係数の平均値を示す。〕
本発明のトナーは、この形状係数の変動係数が16%以下であり、好ましくは14%以下である。
【0143】
本発明では前記分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する有機感光体上に形成された潜像をこの形状係数の変動係数が16%以下であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、ブラックスポットや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、転写ローラを用いても、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0144】
このトナーの形状係数および形状係数の変動係数を、極めてロットのバラツキなく均一に制御するために、本発明のトナーを構成する樹脂粒子(重合体粒子)を調製(重合)、当該樹脂粒子を融着、形状制御させる工程において、形成されつつあるトナー粒子(着色粒子)の特性をモニタリングしながら適正な工程終了時期を決めてもよい。
【0145】
モニタリングするとは、インラインに測定装置を組み込みその測定結果に基づいて、工程条件の制御をするという意味である。すなわち、形状などの測定をインラインに組み込んで、例えば樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーでは、融着などの工程で逐次サンプリングを実施しながら形状や粒径を測定し、所望の形状になった時点で反応を停止する。
【0146】
モニタリング方法としては、特に限定されるものではないが、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子社製)を使用することができる。本装置は試料液を通過させつつリアルタイムで画像処理を行うことで形状をモニタリングできるため好適である。すなわち、反応場よりポンプなどを使用し、常時モニターし、形状などを測定することを行い、所望の形状などになった時点で反応を停止するものである。
【0147】
トナーの個数変動係数(=トナー粒子の個数変動係数)
本発明のトナー粒子の個数粒度分布および個数変動係数はコールターカウンターTA−あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定されるものである。本発明においてはコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。個数粒度分布とは、粒子径に対するトナー粒子の相対度数を表すものであり、個数平均粒径とは、個数粒度分布におけるメジアン径を表すものである。トナー粒子の「個数粒度分布における個数変動係数」は下記式から算出される。
【0148】
個数変動係数=〔S/Dn〕×100(%)
〔式中、S2は個数粒度分布における標準偏差を示し、Dnは個数平均粒径(μm)を示す。〕
本発明のトナー粒子の個数変動係数は27%以下であり、好ましくは25%以下である。
【0149】
本発明では前記分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する有機感光体上に形成された潜像をトナー粒子の個数変動係数は27%以下であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、ブラックスポットや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、転写ローラを用いても、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0150】
本発明のトナーにおける個数変動係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を風力により分級する方法も使用できるが、個数変動係数をより小さくするためには液中での分級が効果的である。この液中で分級する方法としては、遠心分離機を用い、回転数を制御してトナー粒子径の違いにより生じる沈降速度差に応じてトナー粒子を分別回収し調製する方法がある。
【0151】
特に懸濁重合法によりトナーを製造する場合、個数粒度分布における個数変動係数を27%以下とするためには分級操作が必須である。懸濁重合法では、重合前に重合性単量体を水系媒体中にトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させることが必要である。すなわち、重合性単量体の大きな油滴に対して、ホモミキサーやホモジナイザーなどによる機械的な剪断を繰り返して、トナー粒子程度の大きさまで油滴を小さくすることとなるが、このような機械的な剪断による方法では、得られる油滴の個数粒度分布は広いものとなり、従って、これを重合してなるトナーの粒度分布も広いものとなる。このために分級操作が必須となる。
【0152】
角がないトナー粒子の割合
本発明のトナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが必要とされ、この割合が70個数%以上であることが好ましい。
【0153】
本発明のトナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは70個数%以上とされる。
【0154】
本発明では前記分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する有機感光体上に形成された潜像を角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、ブラックスポットや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、転写ローラを用いても、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0155】
ここに、「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部またはストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。すなわち、図3(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図3(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0156】
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
【0157】
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0158】
また、樹脂粒子を会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーにおいては、融着停止段階では融着粒子表面には多くの凹凸があり、表面は平滑でないが、形状制御工程での温度、攪拌翼の回転数および攪拌時間等の条件を適当なものとすることによって、角がないトナーが得られる。これらの条件は、樹脂粒子の物性により変わるものであるが、例えば、樹脂粒子のガラス転移点温度以上で、より高回転数とすることにより、表面は滑らかとなり、角がないトナーが形成できる。
【0159】
トナー粒子の粒径
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3.0〜8.5μmのものが好ましい。この粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。
【0160】
個数平均粒径が3.0〜8.5μmであることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0161】
本発明のトナーは、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーである。
【0162】
本発明では前記分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する有機感光体上に形成された潜像を相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、ブラックスポットや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、転写ローラを用いても、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0163】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作製されたものである。
〔測定条件〕
(1)アパーチャー:100μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0164】
トナーの製造方法
本発明のトナーは、少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られる重合トナーであることが好ましく、また、少なくとも樹脂粒子を水系媒体中で会合させて得られる重合トナーであることが好ましい。以下、本発明の重合トナー(以後、単にトナーとも云う)を製造する方法について詳細に説明する。
【0165】
本発明の重合トナーは、懸濁重合法や、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合して微粒の重合体粒子(樹脂粒子)を調製し、その後に、有機溶媒、凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を会合する方法で製造することができる。ここで「会合」とは、前記樹脂粒子が複数個融着することをいい、当該樹脂粒子と他の粒子(例えば着色剤粒子)とが融着する場合も含むものとする。
【0166】
尚、本発明で重合トナーとは、トナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0167】
本発明の重合トナーを製造する方法の一例を示せば、重合性単量体中に着色剤や必要に応じて離型剤、荷電制御剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。
【0168】
なお、本発明でいうところの「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。
【0169】
また、本発明の重合トナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させて調製する方法も挙げることができる。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上会合させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時に水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0170】
樹脂を構成する重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0171】
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0172】
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0173】
これら重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0174】
また、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0175】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
【0176】
本発明において優れた樹脂としては、ガラス転移点が20〜90℃のものが好ましく、軟化点が80〜220℃のものが好ましい。ガラス転移点は示差熱量分析方法で測定されるものであり、軟化点は高化式フローテスターで測定することができる。さらに、これら樹脂としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量が数平均分子量(Mn)で1000〜100000、重量平均分子量(Mw)で2000〜1000000のものが好ましい。さらに、分子量分布として、Mw/Mnが1.5〜100、特に1.8〜70のものが好ましい。
【0177】
前記樹脂粒子を水系媒体中で会合させる際に使用される凝集剤としては特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。具体的には、一価の金属として例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属として例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類の金属塩、マンガン、銅等の二価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩等が挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。
【0178】
これらの凝集剤は臨界凝集濃度以上添加することが好ましい。この臨界凝集濃度とは、水性分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加して凝集が発生する濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、乳化された成分および分散剤自体によって大きく変化するものである。例えば、岡村誠三他著「高分子化学 17、601(1960)日本高分子学会編」等に記述されており、詳細な臨界凝集濃度を求めることができる。また、別な手法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ(ゼータ)電位を測定し、この値が変化する塩濃度を臨界凝集濃度として求めることもできる。
【0179】
本発明の凝集剤の添加量は、臨界凝集濃度以上であればよいが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、さらに好ましくは、1.5倍以上添加することがよい。
【0180】
凝集剤と共に使用される「水に対して無限溶解する溶媒」としては、形成される樹脂を溶解させないものが選択される。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、ジオキサン等のエーテル類を挙げることができる。特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。
【0181】
この水に対して無限溶解する溶媒の添加量は、凝集剤を添加した重合体含有分散液に対して1〜100体積%が好ましい。
【0182】
なお、粒子形状を均一化させるためには、着色粒子を調製し、濾過した後に粒子に対して10質量%以上の水が存在したスラリーを流動乾燥させることが好ましいが、この際、特に重合体中に極性基を有するものが好ましい。この理由としては、極性基が存在している重合体に対して、存在している水が多少膨潤する効果を発揮するために、形状の均一化が特に図られやすいからであると考えられる。
【0183】
本発明のトナーは少なくとも樹脂と着色剤を含有するものであるが、必要に応じて定着性改良剤である離型剤や荷電制御剤等を含有することもできる。さらに、上記樹脂と着色剤を主成分とするトナー粒子に対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される外添剤を添加したものであってもよい。
【0184】
本発明のトナーに使用する着色剤としてはカーボンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理する事により強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等を用いる事ができる。
【0185】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同93、同94、同138、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等を用いる事ができ、これらの混合物も用いる事ができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0186】
着色剤の添加方法としては、乳化重合法で調製した重合体粒子を、凝集剤を添加することで凝集させる段階で添加し重合体を着色する方法や、単量体を重合させる段階で着色剤を添加し、重合し、着色粒子とする方法等を使用することができる。なお、着色剤は重合体を調製する段階で添加する場合はラジカル重合性を阻害しない様に表面をカップリング剤等で処理して使用することが好ましい。
【0187】
さらに、定着性改良剤としての低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよい。
【0188】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0189】
なお、これら荷電制御剤や定着性改良剤の粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
【0190】
本発明のトナーでは、外添剤として無機微粒子や有機微粒子などの微粒子を添加して使用することでより効果を発揮することができる。この理由としては、外添剤の埋没や脱離を効果的に抑制することができるため、その効果が顕著にでるものと推定される。
【0191】
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理の程度としては特に限定されるものでは無いが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり攪拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、下記式により疎水化度が算出される。
【0192】
疎水化度=(a/(a+50))×100
この外添剤の添加量としては、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0193】
いわゆる重合性単量体中に着色剤などのトナー構成成分を分散あるいは溶解したものを水系媒体中に懸濁し、ついで重合せしめてトナーを得る懸濁重合法トナーでは、重合反応を行う反応容器中での媒体の流れを制御することによりトナー粒子の形状を制御することができる。すなわち、形状係数が1.2以上の形状を有するトナー粒子を多く形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを乱流とし、重合が進行して懸濁状態で水系媒体中に存在している油滴が次第に高分子化することで油滴が柔らかい粒子となった時点で、粒子の衝突を行うことで粒子の合一を促進させ、形状が不定形となった粒子が得られる。また、形状係数が1.2より小さいほぼ球形のトナー粒子を形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを層流として、粒子の衝突を避けることによりほぼ球形の粒子が得られる。この方法により、トナー形状の分布を本発明の範囲内に制御できるものである。
【0194】
次に、重合トナーの製造に好ましく用いられる反応装置について説明する。図4および図5は、それぞれ、重合トナー反応装置の一例を示す斜視図および断面図である。図4および図5に示す反応装置において、熱交換用のジャケット1jを外周部に装着した縦型円筒状の攪拌槽2j内の中心部に回転軸3jを垂設し、該回転軸3jに攪拌槽2jの底面に近接させて配設された下段の攪拌翼40jと、より上段に配設された攪拌翼50jとが設けられている。上段の攪拌翼50jは、下段に位置する攪拌翼40jに対して回転方向に先行した交差角αをもって配設されている。本発明のトナーを製造する場合において、交差角αは90度(°)未満であることが好ましい。この交差角αの下限は特に限定されるものでは無いが、5°程度以上であることが好ましく、更に、好ましくは10°以上である。なお、三段構成の攪拌翼を設ける場合には、それぞれ隣接している攪拌翼間で交差角αが90度未満であることが好ましい。
【0195】
このような構成とすることで、上段に配設されている攪拌翼50jによりまず媒体が攪拌され、下側への流れが形成される。ついで、下段に配設された攪拌翼40jにより、上段の攪拌翼50jで形成された流れがさらに下方へ加速されるとともにこの攪拌翼50j自体でも下方への流れが別途形成され、全体として流れが加速されて進行するものと推定される。この結果、乱流として形成された大きなズリ応力を有する流域が形成されるために、得られるトナー粒子の形状を制御できるものと推定される。
【0196】
なお、図4および図5中、矢印は回転方向を示し、7jは上部材料投入口、8jは下部材料投入口、9jは攪拌を有効にするための乱流形成部材である。
【0197】
ここにおいて攪拌翼の形状については、特に限定はないが、方形板状のもの、翼の一部に切り欠きのあるもの、中央部に一つ以上の中孔部分、いわゆるスリットがあるものなどを使用することができる。これらの具体例を図6に記載する。図6(a)に示す攪拌翼5aは中孔部のないもの、同図(b)に示す攪拌翼5bは中央に大きな中孔部6bがあるもの、同図(c)に示す攪拌翼5cは横長の中孔部6c(スリット)があるもの、同図(d)に示す攪拌翼5dは縦長の中孔部6d(スリット)があるものである。また、三段構成の攪拌翼を設ける場合において、上段の攪拌翼に形成される中孔部と、下段の攪拌翼に形成される中孔部とは異なるものであっても、同一のものであってもよい。
【0198】
なお、上記の構成を有する上段と下段の攪拌翼の間隙は特に限定されるものでは無いが、少なくとも攪拌翼の間に間隙を有していることが好ましい。この理由としては明確では無いが、その間隙を通じて媒体の流れが形成されるため、攪拌効率が向上するものと考えられる。但し、間隙としては、静置状態での液面高さに対して0.5〜50%の幅、好ましくは1〜30%の幅である。
【0199】
さらに、攪拌翼の大きさは特に限定されるものでは無いが、全攪拌翼の高さの総和が静置状態での液面高さの50%〜100%、好ましくは60%〜95%である。
【0200】
一方、樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させる重合法トナーでは、融着段階での反応容器内の媒体の流れおよび温度分布を制御することで、さらには融着後の形状制御工程において加熱温度、攪拌回転数、時間を制御することで、トナー全体の形状分布および形状を任意に変化させることができる。
【0201】
すなわち、樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーでは、反応装置内の流れを層流とし、内部の温度分布を均一化することができる攪拌翼および攪拌槽を使用して、融着工程および形状制御工程での温度、回転数、時間を制御することにより、所期の形状係数および均一な形状分布を有するトナーを形成することができる。この理由は、層流を形成させた場で融着させると、凝集および融着が進行している粒子(会合あるいは凝集粒子)に強いストレスが加わらず、かつ流れが加速された層流においては攪拌槽内の温度分布が均一である結果、融着粒子の形状分布が均一になるからであると推定される。さらに、その後の形状制御工程での加熱、攪拌により融着粒子は徐々に球形化し、トナー粒子の形状を任意に制御できる。
【0202】
樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーを製造する際に使用される攪拌槽としては、前述の懸濁重合法と同様のものが使用できる。この場合、攪拌槽内には乱流を形成させるような邪魔板等の障害物を設けないことが必要である。
【0203】
この攪拌翼の形状についても、層流を形成させ、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、図6(c)に示した方形板状のもの等、連続した面により形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
【0204】
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、いずれも好適に使用することができるが、本発明ではキャリアと混合して使用する二成分現像剤として使用することが好ましい。
【0205】
本発明の画像形成方法は、モノクロ又はカラーの複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッタープリンター等の電子写真装置一般に適用しうるものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用しうるものである。
【0206】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0207】
下記のごとくして、感光体を作製した。
感光体1の作製
上記成分を混合溶解して中間層塗布液を調製した。この塗布液を直径80mm、長さ360mmの円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの中間層を形成した。
上記成分を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。チタニルフタロシアニンのCu−Kα特性X線回折スペクトルを測定した結果、ブラッグ角2θの最大ピークが27.2°に認められた。
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(CTM):例示化合物T65(分子量:947) 150g
バインダー:ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(ユーピロンZ300:三菱ガス化学社製) 300g
酸化防止剤(サノールLS2626:三共社製) 1.7g
テトラヒドロフラン(沸点:64.5℃) 2200g
上記成分を混合溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、100℃40分間乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0208】
感光体2〜14の作製
感光体1において、中間層の無機粒子の種類、電荷輸送層の電荷輸送物質及びその量、溶媒、乾燥条件を変えて、感光体2〜14を作製した。
【0209】
【表1】
【0210】
表1中、Hはシリカ・アルミナ処理及びメチルハイドロジェンポリシロキサン処理の表面処理をした酸化チタン(数平均粒径35nm)
Iはシリカ・アルミナ処理及びオクチルトリメトキシシラン処理の表面処理をした酸化チタン(数平均粒径35nm)
Jはシリカ・ジルコニア処理及びメチルトリメトキシシラン処理の表面処理をした酸化チタン(数平均粒径35nm)
Kはシリカ・アルミナ処理及びオクチルトリメトキシシラン処理の表面処理をした酸化亜鉛(数平均粒径180nm)
又、表1中の電荷輸送物質T70、T71は下記の化合物を示す。
【0211】
【化26】
【0212】
現像剤の作製
トナー及び現像剤の作製
(トナー製造例1:乳化重合会合法の例)
n−ドデシル硫酸ナトリウム0.90kgと純水10.0リットルを入れ攪拌溶解した。この溶液に、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、1時間よく攪拌した後に、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。このものを「着色剤分散液1」とする。
【0213】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgとイオン交換水4.0リットルとからなる溶液を「アニオン界面活性剤溶液A」とする。
【0214】
ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgとイオン交換水4.0リットルとからなる溶液を「ノニオン界面活性剤溶液B」とする。
【0215】
過硫酸カリウム223.8gをイオン交換水12.0リットルに溶解した溶液を「開始剤溶液C」とする。
【0216】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた容積100リットルのGL(グラスライニング)反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒子径=120nm/固形分濃度=29.9%)3.41kgと「アニオン界面活性剤溶液A」全量と「ノニオン界面活性剤溶液B」全量とを入れ、攪拌を開始した。次いで、イオン交換水44.0リットルを加えた。
【0217】
加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、「開始剤溶液C」全量を滴下して加えた。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン12.1kgとアクリル酸n−ブチル2.88kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン548gとを滴下しながら投入した。滴下終了後、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱攪拌を行った。ついで、液温度を40℃以下に冷却し攪拌を停止し、ポールフィルターで濾過してラテックスを得た。これを「ラテックス−A」とする。
【0218】
なお、ラテックス−A中の樹脂粒子のガラス転移温度は57℃、軟化点は121℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.27万、重量平均粒径は120nmであった。
【0219】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換純水4.0リットルに溶解した溶液を「アニオン界面活性剤溶液D」とする。
【0220】
また、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgをイオン交換水4.0リットルに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液E」とする。
【0221】
過硫酸カリウム(関東化学社製)200.7gをイオン交換水12.0リットルに溶解した溶液を「開始剤溶液F」とする。
【0222】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100リットルのGL反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒子径=120nm/固形分濃度 29.9%)3.41kgと「アニオン界面活性剤溶液D」全量と「ノニオン界面活性剤溶液E」全量とを入れ、攪拌を開始した。
【0223】
次いで、イオン交換水44.0リットルを投入した。加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、「開始剤溶液F」を添加した。ついで、スチレン11.0kgとアクリル酸n−ブチル4.00kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン9.02gとをあらかじめ混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱攪拌を行った。さらに、液温度を80℃±2℃に上げて、12時間加熱攪拌を行った。液温度を40℃以下に冷却し攪拌を停止した。ポールフィルターで濾過し、この濾液を「ラテックス−B」とする。
【0224】
なお、ラテックス−B中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、分子量分布は、重量平均分子量=24.5万、重量平均粒径は110nmであった。
【0225】
塩析剤としての塩化ナトリウム5.36kgをイオン交換水20.0リットルに溶解した溶液を「塩化ナトリウム溶液G」とする。
【0226】
フッ素系ノニオン界面活性剤1.00gをイオン交換水1.00リットルに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液H」とする。
【0227】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、粒径および形状のモニタリング装置を付けた100リットルのSUS反応釜(図5に示した構成の反応装置,交差角αは25°)に、上記で作製したラテックス−A=20.0kgとラテックス−B=5.2kgと着色剤分散液1=0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ攪拌した。ついで、40℃に加温し、塩化ナトリウム溶液G、イソプロパノール(関東化学社製)6.00kg、ノニオン界面活性剤溶液Hをこの順に添加した。その後、10分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで60分で昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間加熱攪拌して塩析/融着させながら粒径成長させた(塩析/融着工程)。次に純水2.1リットルを添加して粒径成長を停止させ、融着粒子分散液を作製した。
【0228】
温度センサー、冷却管、粒径および形状のモニタリング装置を付けた5リットルの反応容器(図5に示した構成の反応装置,交差角αは20°)に、上記で作製した融着粒子分散液5.0kgを入れ、液温度85℃±2℃にて、0.5〜15時間加熱攪拌して形状制御した(形状制御工程)。その後、40℃以下に冷却し攪拌を停止した。次に遠心分離機を用いて、遠心沈降法により液中にて分級を行い、目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液とする。ついで、ヌッチェを用いて、会合液よりウェットケーキ状の非球形状粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。この非球形状粒子をフラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度60℃にて乾燥させ、ついで流動層乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させた。得られた着色粒子の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して乳化重合会合法によるトナーを得た。
【0229】
前記塩析/融着工程および形状制御工程のモニタリングにおいて、攪拌回転数、および加熱時間を制御することにより、形状および形状係数の変動係数を制御し、さらに液中分級により、粒径および粒度分布の変動係数を任意に調製して、表2に示す形状特性および粒度分布特性を有するトナー粒子からなるトナー1〜10を得た。
【0230】
【表2】
【0231】
〔現像剤の製造〕
トナー1〜10の各々10質量部と、スチレン−メタクリレート共重合体で被覆した45μmフェライトキャリア100質量部とを混合することにより、評価用の現像剤1〜10を製造した。
【0232】
評価1(現像剤を固定した評価)
以上のようにして得た感光体1〜14、現像剤(トナー)及び転写極に、下記構成のNo.1又はNo.2の転写ローラを組み込んだコニカ(株)製の反転現像方式デジタル複写機「Konica7050」の改造機を用い、表3のように各条件を組み合わせて装着し、高温高湿(30℃80%RH)と低温低湿(10℃20%RH)の環境下で、それぞれ評価項目を変えて評価した。
【0233】
転写ローラNo.1:住友ゴム工業(株)製イオン導電タイプ、硬度36(アスカーC硬度)、電気抵抗7.5×107Ω、平均気泡径80μm(単泡)。
【0234】
転写ローラNo.2:日東工業(株)製カーボンブラック含有ルビセル(ポリウレンタン系発泡タイプ)、硬度30(アスカーC硬度)、電気抵抗2×108Ω、平均気泡径20μm(連泡)。
【0235】
前記転写ローラNo.1及びNo.2の押圧力、バイアス電圧は、表3、表4のように変化させた。
【0236】
評価1(現像剤を固定した評価)
評価条件
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電目標:−750V
感光体の線速:280mm/sec
露光条件
露光部電位目標:−50〜−150Vにする露光量に設定。
【0237】
露光ビーム:ドット密度800dpi(dpiとは2.54cm当たりのドット数)の像露光を行った。レーザビームスポット面積:0.8×10−9m2、レーザは780nmの半導体レーザを使用
分離条件:交流バイアスを印可した分離電極の分離手段を用いた
クリーニング:ゴム弾性ブレードを用い、感光体への当接角度:20°、当接荷重:20(g/cm)になるように調整した。
【0238】
評価項目及び評価方法
評価は、高温高湿(30℃80%RH)の環境下で、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて5万枚の複写を行い、1000枚毎にハーフトーン、ベタ白画像、ベタ黒画像を複写し、ブラックスポット、白ヌケ、黒ポチを評価した。
【0239】
ブラックスポット
ハーフトーン画像に、周期性が感光体の周期と一致し、ブラックスポット(苺状のスポット画像)がA4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0240】
◎:0.4mm以上のブラックスポットの発生頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上のブラックスポットの発生頻度:4個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×:0.4mm以上のブラックスポットの発生頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
白ヌケ
ベタ黒画像に、周期性が感光体の周期と一致し、目視できる白ヌケが、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0241】
◎:0.4mm以上の白ヌケ頻度:全ての複写画像が5個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上の白ヌケ頻度:6個/A4以上、20個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×:0.4mm以上の白ヌケ頻度:21個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
黒ポチ
ベタ白画像に、周期性が感光体の周期と一致し、目視できる黒ポチが、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0242】
◎:0.4mm以上の黒ポチ頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上の黒ポチ頻度:4個/A4以上、10個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×:0.4mm以上の黒ポチ頻度:11個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
画像むら
画像濃度0.5付近のハーフトン画像で、トナーの転写不良による画像むらの発生の有無を観察した。
【0243】
◎:ハーフトーン画像の濃度差が0.03未満で小さい(良好)
◯:ハーフトーン画像の濃度差が0.03〜0.06(実用上問題なし)
×:ハーフトーン画像の濃度差が0.06より大きい(実用上問題あり)
文字細り、カブリ、画像濃度の評価
低温低湿(10℃20%RH)の環境下で、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて5万枚の複写を行い、1万枚毎に、線画像、ベタ白画像、ベタ黒画像を複写し、文字細り、カブリ、画像濃度を評価した。カブリ、画像濃度はマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。
【0244】
文字細り
0.1mm、0.2mm幅の線画像が印刷されたオリジナル画像を複写し、評価した。
【0245】
◎:複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の75%以上で再現されている:良好
○:複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の40%〜74%で再現されている:実用上問題ないレベル
×:複写画像の線幅がオリジナル画像の線幅の39%以下、又は線幅が切断されている:実用上問題となるレベル
カブリ
◎:カブリの発生なし
○:相対濃度(複写していないA4紙の濃度を0.00とする)で、0.01未満のカブリの発生が時々ある:実用上問題ないレベル
×:相対濃度で、0.02以上のカブリの発生がある:実用上問題となるレベル
画像濃度
相対濃度(複写していないA4紙の濃度を0.00とする)で評価した
◎:1.2以上:良好
○:1.2未満〜0.8:実用上問題ないレベル
×:0.8未満:実用上問題となるレベル
(鮮鋭性)
画像の鮮鋭性は、低温低湿(10℃20%RH)、高温高湿(30℃80%RH)の両環境において画像を出し、文字潰れで評価した。3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0246】
◎:3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能
○:3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×:3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
【0247】
【表3】
【0248】
表3より、本発明の分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有する有機感光体と25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で転写ローラを用いた組み合わせでは(組み合わせNo.1〜12)ブラックスポット、白ヌケ、黒ポチ、画像むら等の画像欠陥が防止され、文字細り、カブリ、画像濃度の評価も良好であり、鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。特に分子量が800〜1800の範囲にあり、転写ローラの押圧力が100g/cm2〜800g/cm2の範囲にある組み合わせ(組み合わせNo.2〜4、9、10)は全評価項目で、良好な評価を達成している。一方、転写ローラの押圧力が20g/cm2の組み合わせNo.13では転写不良による画像むらが発生し、鮮鋭性が劣化し、転写ローラの押圧力が1100g/cm2の組み合わせNo.14では、ブラックスポット、白ヌケが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、分子量が533の電荷輸送物質を用いた感光体の組み合わせNo.15では、ブラックスポット、白ヌケ及び文字細りの評価が低下しており、鮮鋭性が劣化しており、分子量が2366の電荷輸送物質を用いた感光体の組み合わせNo.16では、電荷輸送物質の分散性が悪く、白ヌケ、文字細り、カブリの評価が低下し、鮮鋭性が劣化している。
【0249】
評価2(現像剤を変化させた評価)
感光体、現像剤、転写ローラの条件を、表4のように組み合わせ(組み合わせNo.21〜40)、コニカ社製デジタル複写機Konica7050改造機(反転現像プロセスを用いている)に装着し、評価1と同様の評価方法及び評価基準で評価した。
【0250】
【表4】
【0251】
表4より、本発明の感光体を用い、25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で転写ローラを用いた場合でも、トナーの形状係数、個数基準の粒度分布や角がないトナー粒子の含有率により、本発明の効果に影響を与えることを示している。即ち、下記の条件を多く満たしたトナーを用いた場合に、改善効果が大きいことが見出される。又、下記▲1▼〜▲3▼の条件を1つも満たしていない組み合わせNo.28はブラックスポットの発生が多く、鮮鋭性が劣化している。
▲1▼トナー粒子の形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上、
▲2▼角がないトナー粒子の割合が50個数%以上、
▲3▼トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上。
【0252】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、高温高湿で発生しやすい画像欠陥と低温低湿環境で発生しやすい画像欠陥を防止し、鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【図2】転写ローラの断面図である。
【図3】(a)は、角のないトナー粒子の投影像を示す説明図であり、(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示す説明図である。
【図4】重合トナー反応装置の一例を示す斜視図である。
【図5】重合トナー反応装置の一例を示す断面図である。
【図6】攪拌翼の形状の具体例を示す概略図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写ローラ
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (10)
- 有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で転写ローラを有機感光体に押圧して、該トナー画像を記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法に用いる有機感光体において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有することを特徴とする有機感光体。
- 導電性支持体と電荷発生層の間に中間層を有し、該中間層が無機微粒子(10〜500nm)を含有することを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
- 有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
- 有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、前記現像工程で用いるトナーが、形状係数1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
- 有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、前記現像工程で用いるトナーが、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であり、該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
- 有機感光体上に形成された静電潜像を現像工程でトナー画像を形成し、該トナー画像を転写ローラを用いて記録紙に転写し、その後分離工程、定着工程を経て電子写真画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の積層構造を有し、該電荷輸送層が分子量550〜2000の電荷輸送物質を含有し、前記現像工程で用いるトナーが、角がないトナー粒子を50個数%以上含有し、該有機感光体に25g/cm2以上1000g/cm2以下の押圧力で前記転写ローラを押圧してトナー画像を記録紙に転写することを特徴とする画像形成方法。
- 前記転写ローラが多孔性発泡体であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 前記転写ローラにバイアス電圧をかけることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 前記バイアス電圧が400〜1400Vであることを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
- 請求項3〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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