JP4075572B2 - 画像形成方法、画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機やプリンター等に用いられる画像形成方法、画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用感光体はSe、ヒ素、ヒ素/Se合金、CdS、ZnO等の無機感光体から、公害や製造の容易性等の利点に優れる有機感光体に主体が移り、様々な材料を用いた有機感光体が開発されている。
【0003】
近年では電荷発生と電荷輸送の機能を異なる材料に担当させた機能分離型の感光体が主流となっており、なかでも電荷発生層、電荷輸送層を積層した積層型の有機感光体(以下単に感光体とも云う)が広く用いられている。
【0004】
また、電子写真プロセスに目を向けると潜像画像形成方式は、画像処理の容易さや複合機への展開の容易さから、ハロゲンランプを光源とするアナログ画像形成からLEDやレーザを光源とするデジタル方式の画像形成へと、技術が移行している。
【0005】
かかるデジタル複写機の特徴は電子データ化したものを複写する機能にあり、このためにプリンターとしても使用することができる。デジタル複写機における画像形成方法としては、複数頁にわたる原稿画像をCCDなどの撮像素子で読み取り、当該画像データをメモリに記憶し、当該メモリから画像データを読み出して、画像支持体(記録紙)上に画像を形成する方法を挙げることができる。
【0006】
また、デジタル複写機の他の特徴としては、電子的に両面印字が可能な為に、いわゆる電子RDH(Recirculating Document Handler)を使用することができる(特許文献1)。この電子RDHは、電子的に両面印字を可能としているため、従来の複写機で両面を印字する方式とは異なり、記録紙体の一面を印字したものをストックする必要がなく、記録紙の一面および他面を連続して印字することができる。即ち、デジタルの潜像形成で、トナー像が感光体に形成され、該トナー像が一面に転写・定着された記録紙は、定着工程を通過した直後に、他面の転写工程・定着工程へ搬送される。この結果、熱定着を使用した場合では、定着直後の加熱された高温の記録紙が転写工程に搬送されてくる。この場合、記録紙自体が保有する熱の影響を受け、機械内部の温度が上昇し、感光体の温度が上昇し、室温環境では発生しなかった画像上の問題が表面化しやすい。
【0007】
デジタル方式の画像形成では、露光部分をトナー像とする反転現像が一般的に行われるが、この反転現像で特有の黒ポチが、感光体が高温になると顕在化しやすい。有機感光体の構成は、一般に導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を積層した構成が用いられている。従来、この黒ポチの解決の為には、該中間層に、導電性支持体からの電荷キャリアの注入を防止する技術が開発されてきた。例えば、導電性支持体と感光層の間に中間層を設け、該中間層には酸化チタン粒子を樹脂中に分散した構成を有する電子写真感光体が知られている。又、表面処理を行った酸化チタンを含有させた中間層の技術も知られている。例えば、酸化鉄、酸化タングステンで表面処理された酸化チタン(特許文献2)、アミノ基含有カップリング剤で表面処理された酸化チタン(特許文献3)、有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン(特許文献4)、メチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理された酸化チタン(特許文献5)、金属酸化物、或いは有機化合物で表面処理された樹枝状酸化チタン(特許文献6)を用いた中間層を有する有機感光体が提案されている。
【0008】
しかし、これらの技術を用いても高温高湿等の厳しい環境下では、尚、黒ポチの発生防止が十分でなく、或いは、繰り返し使用に伴う残留電位の上昇、露光部電位の上昇が起こり、画像濃度が十分得られないといった問題が発生している。
【0009】
更に、高温高湿環境下では、導電性支持体から感光層への自由キャリアを防止するため中間層の絶縁性を高め、黒ポチを少なくしていくと、黒ポチとは反対の「白ヌケ」と云う画像欠陥が発生しやすいという問題が見出されている。この白ヌケは反転現像のハーフトーン或いは黒べた画像に現像されない点状或いは線状の画像欠陥をいうが、この現象は有機感光体上への潜像形成時に、像露光部で電荷が消失しない微小部分が発生するためと思われ、前記黒ポチと逆の現象と考えられる。このように有機感光体を用いた画像形成装置では白地に黒の黒ポチ、黒地又はハーフトーンに白の白ヌケといった相反する画像欠陥が発生し、この両方の画像欠陥を解決した有機感光体の開発が必要となってきている。
【0010】
又、デジタル方式の画像形成では、コピーのみならず、オリジナル画像を作製する使用法が多くなり、デジタル方式の電子写真画像形成はより高画質が要求される傾向にある。
【0011】
上記高画質化技術の1つとして、重合トナーを用いた画像形成方法が提案されている(特許文献7)。重合トナーはトナーの形状が球形化することから、トナーの感光体への付着力が大きくなり、トナーの感光体から記録紙への転写性の低下や、クリーニング性が低下するという問題が発生しやすい。転写性、クリーニング性が低下すると単に画像濃度が低下するだけでなく、前記した「白ヌケ」等の画像欠陥を発生しやすい。
【0012】
本発明者等は上記黒ポチと白ヌケを同時に解決するためには、従来の中間層を中心とした検討では不十分であることを見いだし、対象を中間層以外の電荷発生層、電荷輸送層及び現像剤を含めた画像形成方法まで含めて、総合的な検討を行った。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−147547号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平4−303846号公報
【0015】
【特許文献3】
特開平9−96916号公報
【0016】
【特許文献4】
特開平9−258469号公報
【0017】
【特許文献5】
特開平8−328283号公報
【0018】
【特許文献6】
特開平11−344826号公報
【0019】
【特許文献7】
特開2000−214629号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する場合に発生しやすい黒ポチ、白ヌケ等の画像欠陥を発生させず、高画質の電子写真画像を提供できる画像形成方法、画像形成装置及び有機感光体を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について検討した結果、電子RDHを用いて、記録紙に両面画像を形成する場合に、画像形成装置の機内温度の上昇に伴い発生しやすい黒ポチや白ヌケ等の画像欠陥の発生を効果的に防止するには、有機感光体の従来からの中間層の技術に加えて、電荷輸送層の膜質を高温高湿条件でも劣化しない膜質にすることが必要であることを見いだし、本発明を完成した。即ち、導電性支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層等の構成を有する有機感光体では、表面層を形成する電荷輸送層に、立体異性体混合物の電荷輸送物質を用いることにより、膜質が劣化せず、表面に深い傷が発生しにくいようにし、同時にクリーニング性が良好で、感光体を傷つけにくい形状を有するトナーと併用して、電子写真画像を形成することにより、黒ポチ及び白ヌケの相反する画像欠陥を防止でき、且つ、クリーニング部材等との接触摩擦で発生しやすいクラックの発生も防止できることを見いだした。即ち、本発明は以下の構成のいずれかをとることにより、目的を達成出来ることができる。
【0022】
1.電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が前記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0023】
2.電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が前記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、形状係数1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有することを特徴とする画像形成方法。
【0024】
3.電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が前記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、角がないトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とする画像形成方法。
【0025】
4.電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が前記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることを特徴とする画像形成方法。
【0026】
5.電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が前記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、トナー粒子の個数変動係数が27%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0027】
6.前記一般式(1)の化学構造を有する電荷輸送物質の分子量が500以上、1500以下であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0028】
7.前記有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層を有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0029】
8.前記トナーが重合トナーであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0030】
9.前記トナーが前記1〜5に記載の全ての条件を満たしたことを特徴とする前記8に記載の画像形成方法。
【0031】
10.前記トナーの個数平均粒径が3.0〜8.5μmであることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0032】
11.前記1〜10のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0033】
12.電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法に使用される有機感光体において、表面層が立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であることを特徴とする有機感光体。
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の画像形成方法に用いられる有機感光体(以下、単に感光体ともいう)は、表面層が立体異性体混合物である電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であることを特徴とする。
【0035】
即ち、有機感光体の表面層を立体異性体混合物で、電荷輸送性を有する電荷輸送物質を用いた電荷輸送層で構成することにより、白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥が防止され、且つ帯電性や感度等の電子写真特性が良好な有機感光体が得られる。
【0036】
上記のような効果は立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有させた電荷輸送層は、バインダーと電荷輸送物質の相溶性が良好であり、電荷輸送層の膜質及び電子写真特性が向上し、且つ画像形成装置の機内温度が上昇しても、膜質の劣化が小さいことから、トナーの良好な転写性、クリーニング性が維持される為と考えられる。
【0037】
本発明の上記のような特性を有する有機感光体は、画像形成装置の機内温度の上昇が大きい画像形成方法、即ち、電子画像に変換された画像情報に基づき、感光体上に第1のデジタル静電潜像を形成し、該静電潜像をトナー像にした後、該トナー像を記録紙の一面に転写・定着した後、該記録紙をストックすることなく直ちに、他面の転写工程・定着工程へ搬送し、前記有機感光体上に形成した第2の電子画像に基づくトナー像を転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法、即ち、本発明の電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法(以後、単に電子RDHを用いて、両面画像を形成するプロセスともいう)に適用することにより、本発明の目的をより顕著に発揮することができる。
【0038】
本発明の立体異性体混合物の最成分の含有率は40〜90質量%であることが好ましい。最成分の含有率が90質量%より大きいと、電荷輸送物質の分散性が劣化し、画像濃度が低下したり、黒ポチが発生しやすく、クラックも発生しやすい。一方、40質量%より小さいと、白ヌケの発生が増加したり、解像度が低下したり、電子写真特性の安定性も損なわれる。
【0039】
立体異性体構造を有する電荷輸送物質の分子量は500以上、1500以下が好ましい。このような分子量が大きい電荷輸送物質を用いることにより、電荷輸送層の膜質の向上を図ることができ、前記した本発明の効果をより顕著にすることができる。
【0040】
即ち、電荷輸送物質に立体異性体混合物で、上記のような分子量が大きい電荷輸送物質を用いることにより、高温高湿下で、電荷輸送層の膜物性を低下させずに、しかも反転現像における黒ポチ、白ヌケ等の画像欠陥を効果的に防止し、更に、良好な電子写真特性を有する有機感光体を達成できる。
【0041】
尚、立体異性体混合物の電荷輸送物質とは同一の化学構造式を有する電荷輸送物質の化合物がその中の原子又は原子団の立体配置を異にすることによって起こる異性構造を持つものを云う。又、本発明の電荷輸送物質とは、電荷発生物質が発生した電荷を輸送できる化合物をいう。
【0042】
本発明の立体異性体混合物の電荷輸送物質としては、ビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物又はビス又はトリブタジエン系化合物が好ましい。
【0043】
本発明のビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物とはアニリンの窒素原子に同一化学構造のアリールエテニルフェニル基を2個有する化合物群を云うが、好ましくは下記一般式(1)で示される化合物であり、更に一般式(2)〜一般式(6)のように、アニリン基のオルト或いはパラ位にアルキル基又はアルコキシ基を有するものが好ましい。
【0044】
【化1】
Figure 0004075572
【0045】
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0046】
【化2】
Figure 0004075572
【0047】
一般式(2)中、R1、R2、R3、R4は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0048】
【化3】
Figure 0004075572
【0049】
一般式(3)中、R1、R2、R3、R4は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0050】
【化4】
Figure 0004075572
【0051】
一般式(4)中、R1、R2、R3は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0052】
【化5】
Figure 0004075572
【0053】
一般式(5)中、R1、R2、R3は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0054】
【化6】
Figure 0004075572
【0055】
一般式(6)中、R1、R2は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
【0056】
又、一般式(1)〜一般式(6)のAr1、Ar2の置換、無置換の芳香族基が下記一般式(7)であることをが好ましい。
【0057】
【化7】
Figure 0004075572
【0058】
一般式(7)中、R6〜R17は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、炭素原子数1〜4のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基である。
【0059】
以下に、本発明の好ましいビス(アリールエテニルフェニル)アニリン系化合物の例を挙げるが、本発明は下記の化合物例に限定されない。又、これらの化合物はいずれも立体異性体構造を持つことができる。
【0060】
【化8】
Figure 0004075572
【0061】
【化9】
Figure 0004075572
【0062】
【化10】
Figure 0004075572
【0063】
【化11】
Figure 0004075572
【0064】
【化12】
Figure 0004075572
【0065】
【化13】
Figure 0004075572
【0066】
【化14】
Figure 0004075572
【0067】
【化15】
Figure 0004075572
【0068】
【化16】
Figure 0004075572
【0069】
【化17】
Figure 0004075572
【0070】
【化18】
Figure 0004075572
【0071】
一方、ビス又はトリブタジエン系化合物とは窒素原子を介して、ブタジエン構造2個又は3個を対称的に有する化合物を意味し、下記一般式(8)、一般式(9)で示される化合物が好ましい。
【0072】
【化19】
Figure 0004075572
【0073】
一般式(8)中、R1,R2,R3,R4,R5,R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。m2及びn2は0又は1を示す。
【0074】
【化20】
Figure 0004075572
【0075】
一般式(9)中、R7〜R13はそれぞれ同一であっても異なってもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子又は置換していてもよいアリール基を示し、m3及びn3は0又は1を示す。
【0076】
以下に、立体異性体構造を有するビス又はトリブタジエン系化合物の電荷輸送物質の化合物例を挙げるが、本発明は下記の化合物例に限定されない。
【0077】
【化21】
Figure 0004075572
【0078】
【化22】
Figure 0004075572
【0079】
【化23】
Figure 0004075572
【0080】
【化24】
Figure 0004075572
【0081】
【化25】
Figure 0004075572
【0082】
【化26】
Figure 0004075572
【0083】
【化27】
Figure 0004075572
【0084】
次に、上記のような電荷輸送物質を用いた有機感光体の層構成について記載する。
【0085】
本発明の有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0086】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0087】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0088】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0089】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0090】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0091】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0092】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0093】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は無機粒子をバインダー樹脂中に分散した中間層が挙げられる。無機粒子の平均粒径は0.01〜1μmが好ましい。特に、表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が好ましい。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0094】
N型半導性微粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質とは、該N型半導性微粒子を絶縁性バインダーに含有させることにより、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性を示さない性質を有するものをいう。
【0095】
ここで、本発明のN型半導性粒子の判別方法について説明する。
導電性支持体上に膜厚5μmの中間層(中間層を構成するバインダー樹脂中に粒子を50質量%分散させた分散液を用いて中間層を形成する)を形成する。該中間層に負極性に帯電させて、光減衰特性を評価する。又、正極性に帯電させて同様に光減衰特性を評価する。
【0096】
N型半導性粒子とは、上記評価で、負極性に帯電させた時の光減衰が正極性に帯電させた時の光減衰よりも大きい場合に、中間層に分散された粒子をN型半導性粒子という。
【0097】
前記N型半導性微粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0098】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径において10nm以上500nm以下の範囲のものが好ましく、より好ましくは10nm〜200nm、特に好ましくは、15nm〜50nmである。
【0099】
数平均一次粒径の値が前記範囲内にあるN型半導性微粒子を用いた中間層は層内での分散を緻密なものとすることができ、十分な電位安定性、及び黒ポチ発生防止機能を有する。
【0100】
前記N型半導性微粒子の数平均一次粒径は、例えば酸化チタンの場合、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定される。
【0101】
本発明に用いられるN型半導性微粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性微粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型のものが最も良い。
【0102】
本発明のN型半導性微粒子に行われる疎水化表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理であり、最後に反応性有機ケイ素化合物の表面処理を行うことが好ましい。
【0103】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性微粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0104】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性微粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性微粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性微粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性微粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0105】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0106】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0107】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0108】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0109】
電荷輸送層
本発明で電荷輸送層とは、電荷発生物質等で発生した電荷キャリア(電子又はホール)を輸送する機能を有する層を意味する。
【0110】
本発明の表面層は、電荷輸送層の機能を有し、且つ電荷輸送物質(CTM)として立体異性体混合物を用い、CTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0111】
電荷輸送物質(CTM)としては前記した立体異性体混合物の電荷輸送物質の他に公知の電荷輸送物質を併用して用いることもできる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを併用して、用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0112】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0113】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。又電荷輸送層が表面層となる感光体の場合は、機械的摩耗に強いポリカーボネートが好ましく、このようなポリカーボネートとしては平均分子量が40,000〜25,000のポリカーボネートが好ましい。ここで平均分子量は数平均分子量、重量平均分子量、及び粘度平均分子量のいずれのものでもよい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0114】
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0115】
【化28】
Figure 0004075572
【0116】
【化29】
Figure 0004075572
【0117】
【化30】
Figure 0004075572
【0118】
【化31】
Figure 0004075572
【0119】
電荷輸送層は2層以上の層構成にしてもよい。この場合は表面の電荷輸送層が本発明の構成を満たせばよい。
【0120】
中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0121】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお前記スプレー塗布については例えば特開平3−90250号及び特開平3−269238号公報に詳細に記載され、前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0122】
次に、本発明のトナー像の形成の為に用いられるトナーについて説明する。
本発明のトナー像の形成の為に用いられるトナーは、
▲1▼トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下、
▲2▼トナー粒子の形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上、
▲3▼角がないトナー粒子の割合が50個数%以上、
▲4▼トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下、
▲5▼トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上である。
【0123】
即ち、本発明では、前記表面層を有する感光体に上記▲1▼〜▲5▼の少なくとも1つ以上の条件を満たしたトナーを含有した現像剤を用いることにより、反転現像における白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、クリーニング性を向上させ、良好な電子写真画像を得ることができる。上記▲1▼〜▲5▼の条件の中でも、▲2▼及び▲5▼の条件が他の▲1▼、▲3▼、▲4▼の条件に比し、本発明の目的をより良く達成する上で、重要である。しかしながら、他の▲1▼、▲3▼、▲4▼の条件も本発明の目的達成に効果を発揮する特性である。特に上記▲1▼〜▲5▼の全ての条件を満たしたトナーと前記表面層を有する感光体、即ち、立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を表面層として有する感光体と併用することにより、白ヌケと黒ポチの相反する画像欠陥を顕著に改善することができる。
【0124】
以下、上記▲1▼〜▲5▼のトナーについて説明する。
トナーの形状係数(=トナー粒子の形状係数)
トナー粒子の形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0125】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0126】
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0127】
本発明のトナーは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上であり、好ましくは、70個数%以上である。
【0128】
本発明では前記立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する表面層を有する有機感光体上に形成された潜像をこの形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合を65個数%以上含有する現像剤により現像することにより、白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、クリーニング性が向上し、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0129】
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、トナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、トナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.2〜1.6にしたトナー粒子を調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。また、いわゆる重合法トナーを調製する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.2〜1.6に調整したトナー粒子を同様に通常のトナーへ添加して調整する方法がある。
【0130】
上記方法の中では重合法トナーが製造方法として簡便である点と、粉砕トナーに比較して表面の均一性に優れる点等で好ましい。該重合法トナー(重合トナーとも云う)とはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要により、その後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要により、その後に行われる粒子同士の融着工程を経て得られるトナーを意味する。
【0131】
重合トナーは原料モノマーを水系で均一に分散した後に重合させトナーを製造することから、トナーの粒度分布、及び形状が均一なトナーが得られる。
【0132】
トナーの形状係数の変動係数(=トナー粒子の形状係数の変動係数)
本発明のトナー粒子の「形状係数の変動係数」は下記式から算出される。
【0133】
変動係数=〔S/K〕×100(%)
〔式中、S1は100個のトナー粒子の形状係数の標準偏差を示し、Kは形状係数の平均値を示す。〕
本発明のトナーは、この形状係数の変動係数が16%以下であり、好ましくは14%以下である。
【0134】
本発明では前記立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する表面層を有する有機感光体上に形成された潜像をこの形状係数の変動係数が16%以下であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、クリーニング性が向上し、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0135】
このトナーの形状係数および形状係数の変動係数を、極めてロットのバラツキなく均一に制御するために、本発明のトナーを構成する樹脂粒子(重合体粒子)を調製(重合)、当該樹脂粒子を融着、形状制御させる工程において、形成されつつあるトナー粒子(着色粒子)の特性をモニタリングしながら適正な工程終了時期を決めてもよい。
【0136】
モニタリングするとは、インラインに測定装置を組み込みその測定結果に基づいて、工程条件の制御をするという意味である。すなわち、形状などの測定をインラインに組み込んで、例えば樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーでは、融着などの工程で逐次サンプリングを実施しながら形状や粒径を測定し、所望の形状になった時点で反応を停止する。
【0137】
モニタリング方法としては、特に限定されるものではないが、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子社製)を使用することができる。本装置は試料液を通過させつつリアルタイムで画像処理を行うことで形状をモニタリングできるため好適である。すなわち、反応場よりポンプなどを使用し、常時モニターし、形状などを測定することを行い、所望の形状などになった時点で反応を停止するものである。
【0138】
トナーの個数変動係数(=トナー粒子の個数変動係数)
本発明のトナー粒子の個数粒度分布および個数変動係数はコールターカウンターTA−あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定されるものである。本発明においてはコールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおいて使用するアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。個数粒度分布とは、粒子径に対するトナー粒子の相対度数を表すものであり、個数平均粒径とは、個数粒度分布におけるメジアン径を表すものである。トナー粒子の「個数粒度分布における個数変動係数」は下記式から算出される。
【0139】
個数変動係数=〔S/Dn〕×100(%)
〔式中、S2は個数粒度分布における標準偏差を示し、Dnは個数平均粒径(μm)を示す。〕
本発明のトナー粒子の個数変動係数は27%以下であり、好ましくは25%以下である。
【0140】
本発明では前記立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する表面層を有する有機感光体上に形成された潜像をトナー粒子の個数変動係数は27%以下であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、クリーニング性が向上し、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0141】
本発明のトナーにおける個数変動係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、トナー粒子を風力により分級する方法も使用できるが、個数変動係数をより小さくするためには液中での分級が効果的である。この液中で分級する方法としては、遠心分離機を用い、回転数を制御してトナー粒子径の違いにより生じる沈降速度差に応じてトナー粒子を分別回収し調製する方法がある。
【0142】
特に懸濁重合法によりトナーを製造する場合、個数粒度分布における個数変動係数を27%以下とするためには分級操作が必須である。懸濁重合法では、重合前に重合性単量体を水系媒体中にトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させることが必要である。すなわち、重合性単量体の大きな油滴に対して、ホモミキサーやホモジナイザーなどによる機械的な剪断を繰り返して、トナー粒子程度の大きさまで油滴を小さくすることとなるが、このような機械的な剪断による方法では、得られる油滴の個数粒度分布は広いものとなり、従って、これを重合してなるトナーの粒度分布も広いものとなる。このために分級操作が必須となる。
【0143】
角がないトナー粒子の割合
本発明のトナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが必要とされ、この割合が70個数%以上であることが好ましい。
【0144】
本発明のトナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは70個数%以上とされる。
【0145】
本発明では前記立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する表面層を有する有機感光体上に形成された潜像を角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、クリーニング性が向上し、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0146】
ここに、「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部またはストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。すなわち、図2(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図2(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0147】
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
【0148】
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0149】
また、樹脂粒子を会合あるいは融着させることで形成する重合法トナーにおいては、融着停止段階では融着粒子表面には多くの凹凸があり、表面は平滑でないが、形状制御工程での温度、攪拌翼の回転数および攪拌時間等の条件を適当なものとすることによって、角がないトナーが得られる。これらの条件は、樹脂粒子の物性により変わるものであるが、例えば、樹脂粒子のガラス転移点温度以上で、より高回転数とすることにより、表面は滑らかとなり、角がないトナーが形成できる。
【0150】
トナー粒子の粒径
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3.0〜8.5μmのものが好ましい。この粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。
【0151】
個数平均粒径が3.0〜8.5μmであることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0152】
本発明のトナーは、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーである。
【0153】
本発明では前記立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する表面層を有する有機感光体上に形成された潜像を相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーを用いた現像剤により現像することにより、白ヌケや黒ポチ等の画像欠陥の発生を防止し、クリーニング性が向上し、鮮鋭性の良好な電子写真画像が得られる。
【0154】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作製されたものである。
〔測定条件〕
(1)アパーチャー:100μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0155】
トナーの製造方法
本発明のトナーは、少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られる重合トナーであることが好ましく、また、少なくとも樹脂粒子を水系媒体中で会合させて得られる重合トナーであることが好ましい。以下、本発明の重合トナー(以後、単にトナーとも云う)を製造する方法について詳細に説明する。
【0156】
本発明の重合トナーは、懸濁重合法や、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合して微粒の重合体粒子(樹脂粒子)を調製し、その後に、有機溶媒、凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を会合する方法で製造することができる。ここで「会合」とは、前記樹脂粒子が複数個融着することをいい、当該樹脂粒子と他の粒子(例えば着色剤粒子)とが融着する場合も含むものとする。
【0157】
尚、本発明で重合トナーとは、トナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0158】
本発明の重合トナーを製造する方法の一例を示せば、重合性単量体中に着色剤や必要に応じて離型剤、荷電制御剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。
【0159】
なお、本発明でいうところの「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。
【0160】
また、本発明の重合トナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させて調製する方法も挙げることができる。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上会合させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時に水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0161】
樹脂を構成する重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0162】
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0163】
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0164】
これら重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0165】
また、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0166】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
【0167】
本発明において優れた樹脂としては、ガラス転移点が20〜90℃のものが好ましく、軟化点が80〜220℃のものが好ましい。ガラス転移点は示差熱量分析方法で測定されるものであり、軟化点は高化式フローテスターで測定することができる。さらに、これら樹脂としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量が数平均分子量(Mn)で1000〜100000、重量平均分子量(Mw)で2000〜1000000のものが好ましい。さらに、分子量分布として、Mw/Mnが1.5〜100、特に1.8〜70のものが好ましい。
【0168】
前記樹脂粒子を水系媒体中で会合させる際に使用される凝集剤としては特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。具体的には、一価の金属として例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属として例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類の金属塩、マンガン、銅等の二価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩等が挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。
【0169】
これらの凝集剤は臨界凝集濃度以上添加することが好ましい。この臨界凝集濃度とは、水性分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加して凝集が発生する濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、乳化された成分および分散剤自体によって大きく変化するものである。例えば、岡村誠三他著「高分子化学 17、601(1960)日本高分子学会編」等に記述されており、詳細な臨界凝集濃度を求めることができる。また、別な手法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ(ゼータ)電位を測定し、この値が変化する塩濃度を臨界凝集濃度として求めることもできる。
【0170】
本発明の凝集剤の添加量は、臨界凝集濃度以上であればよいが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、さらに好ましくは、1.5倍以上添加することがよい。
【0171】
凝集剤と共に使用される「水に対して無限溶解する溶媒」としては、形成される樹脂を溶解させないものが選択される。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、ジオキサン等のエーテル類を挙げることができる。特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。
【0172】
この水に対して無限溶解する溶媒の添加量は、凝集剤を添加した重合体含有分散液に対して1〜100体積%が好ましい。
【0173】
なお、粒子形状を均一化させるためには、着色粒子を調製し、濾過した後に粒子に対して10質量%以上の水が存在したスラリーを流動乾燥させることが好ましいが、この際、特に重合体中に極性基を有するものが好ましい。この理由としては、極性基が存在している重合体に対して、存在している水が多少膨潤する効果を発揮するために、形状の均一化が特に図られやすいからであると考えられる。
【0174】
本発明のトナーは少なくとも樹脂と着色剤を含有するものであるが、必要に応じて定着性改良剤である離型剤や荷電制御剤等を含有することもできる。さらに、上記樹脂と着色剤を主成分とするトナー粒子に対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される外添剤を添加したものであってもよい。
【0175】
本発明のトナーに使用する着色剤としてはカーボンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理する事により強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等を用いる事ができる。
【0176】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同93、同94、同138、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等を用いる事ができ、これらの混合物も用いる事ができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0177】
着色剤の添加方法としては、乳化重合法で調製した重合体粒子を、凝集剤を添加することで凝集させる段階で添加し重合体を着色する方法や、単量体を重合させる段階で着色剤を添加し、重合し、着色粒子とする方法等を使用することができる。なお、着色剤は重合体を調製する段階で添加する場合はラジカル重合性を阻害しない様に表面をカップリング剤等で処理して使用することが好ましい。
【0178】
さらに、定着性改良剤としての低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよい。
【0179】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0180】
なお、これら荷電制御剤や定着性改良剤の粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
【0181】
本発明のトナーでは、外添剤として無機微粒子や有機微粒子などの微粒子を添加して使用することでより効果を発揮することができる。この理由としては、外添剤の埋没や脱離を効果的に抑制することができるため、その効果が顕著にでるものと推定される。
【0182】
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理の程度としては特に限定されるものでは無いが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり攪拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、下記式により疎水化度が算出される。
【0183】
疎水化度=(a/(a+50))×100
この外添剤の添加量としては、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0184】
いわゆる重合性単量体中に着色剤などのトナー構成成分を分散あるいは溶解したものを水系媒体中に懸濁し、ついで重合せしめてトナーを得る懸濁重合法トナーでは、重合反応を行う反応容器中での媒体の流れを制御することによりトナー粒子の形状を制御することができる。すなわち、形状係数が1.2以上の形状を有するトナー粒子を多く形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを乱流とし、重合が進行して懸濁状態で水系媒体中に存在している油滴が次第に高分子化することで油滴が柔らかい粒子となった時点で、粒子の衝突を行うことで粒子の合一を促進させ、形状が不定形となった粒子が得られる。また、形状係数が1.2より小さいほぼ球形のトナー粒子を形成させる場合には、反応容器中での媒体の流れを層流として、粒子の衝突を避けることによりほぼ球形の粒子が得られる。この方法により、トナー形状の分布を本発明の範囲内に制御できるものである。
【0185】
次に、重合トナーの製造に好ましく用いられる反応装置について説明する。図3および図4は、それぞれ、重合トナー反応装置の一例を示す斜視図および断面図である。図3および図4に示す反応装置において、熱交換用のジャケット1jを外周部に装着した縦型円筒状の攪拌槽2j内の中心部に回転軸3jを垂設し、該回転軸3jに攪拌槽2jの底面に近接させて配設された下段の攪拌翼40jと、より上段に配設された攪拌翼50jとが設けられている。上段の攪拌翼50jは、下段に位置する攪拌翼40jに対して回転方向に先行した交差角αをもって配設されている。本発明のトナーを製造する場合において、交差角αは90度(°)未満であることが好ましい。この交差角αの下限は特に限定されるものでは無いが、5°程度以上であることが好ましく、更に、好ましくは10°以上である。なお、三段構成の攪拌翼を設ける場合には、それぞれ隣接している攪拌翼間で交差角αが90度未満であることが好ましい。
【0186】
このような構成とすることで、上段に配設されている攪拌翼50jによりまず媒体が攪拌され、下側への流れが形成される。ついで、下段に配設された攪拌翼40jにより、上段の攪拌翼50jで形成された流れがさらに下方へ加速されるとともにこの攪拌翼50j自体でも下方への流れが別途形成され、全体として流れが加速されて進行するものと推定される。この結果、乱流として形成された大きなズリ応力を有する流域が形成されるために、得られるトナー粒子の形状を制御できるものと推定される。
【0187】
なお、図3および図4中、矢印は回転方向を示し、7jは上部材料投入口、8jは下部材料投入口、9jは攪拌を有効にするための乱流形成部材である。
【0188】
ここにおいて攪拌翼の形状については、特に限定はないが、方形板状のもの、翼の一部に切り欠きのあるもの、中央部に一つ以上の中孔部分、いわゆるスリットがあるものなどを使用することができる。これらの具体例を図5に記載する。図5(a)に示す攪拌翼5aは中孔部のないもの、同図(b)に示す攪拌翼5bは中央に大きな中孔部6bがあるもの、同図(c)に示す攪拌翼5cは横長の中孔部6c(スリット)があるもの、同図(d)に示す攪拌翼5dは縦長の中孔部6d(スリット)があるものである。また、三段構成の攪拌翼を設ける場合において、上段の攪拌翼に形成される中孔部と、下段の攪拌翼に形成される中孔部とは異なるものであっても、同一のものであってもよい。
【0189】
なお、上記の構成を有する上段と下段の攪拌翼の間隙は特に限定されるものでは無いが、少なくとも攪拌翼の間に間隙を有していることが好ましい。この理由としては明確では無いが、その間隙を通じて媒体の流れが形成されるため、攪拌効率が向上するものと考えられる。但し、間隙としては、静置状態での液面高さに対して0.5〜50%の幅、好ましくは1〜30%の幅である。
【0190】
さらに、攪拌翼の大きさは特に限定されるものでは無いが、全攪拌翼の高さの総和が静置状態での液面高さの50%〜100%、好ましくは60%〜95%である。
【0191】
一方、樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させる重合法トナーでは、融着段階での反応容器内の媒体の流れおよび温度分布を制御することで、さらには融着後の形状制御工程において加熱温度、攪拌回転数、時間を制御することで、トナー全体の形状分布および形状を任意に変化させることができる。
【0192】
すなわち、樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーでは、反応装置内の流れを層流とし、内部の温度分布を均一化することができる攪拌翼および攪拌槽を使用して、融着工程および形状制御工程での温度、回転数、時間を制御することにより、所期の形状係数および均一な形状分布を有するトナーを形成することができる。この理由は、層流を形成させた場で融着させると、凝集および融着が進行している粒子(会合あるいは凝集粒子)に強いストレスが加わらず、かつ流れが加速された層流においては攪拌槽内の温度分布が均一である結果、融着粒子の形状分布が均一になるからであると推定される。さらに、その後の形状制御工程での加熱、攪拌により融着粒子は徐々に球形化し、トナー粒子の形状を任意に制御できる。
【0193】
樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーを製造する際に使用される攪拌槽としては、前述の懸濁重合法と同様のものが使用できる。この場合、攪拌槽内には乱流を形成させるような邪魔板等の障害物を設けないことが必要である。
【0194】
この攪拌翼の形状についても、層流を形成させ、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、図5(c)に示した方形板状のもの等、連続した面により形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
【0195】
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、いずれも好適に使用することができるが、本発明ではキャリアと混合して使用する二成分現像剤として使用することが好ましい。
【0196】
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
図1は、本発明の電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法に、好適に使用することができる画像形成装置(デジタル複写機)の全体構成を示す図である。
【0197】
この図1において、デジタル複写機は、画像読み取り部A、画像処理部B、画像記憶部C、画像形成部Dで構成される。前記画像読み取り部Aが読み取り手段に、画像処理部Bが画像処理手段に、画像記憶部Cが画像データ記憶手段に、また、前記画像形成部Dが画像形成手段に相当する。
【0198】
画像読み取り部Aにおいて、原稿121は原稿台ガラス(以下プラテンガラスと略記する)122上に記載され、図示を省略したガイドレール上を移動するキャリッジに設けられたハロゲン光源123によって照明される。一対のミラー124,125が設けられた可動ミラーユニット126は、前記スライドレール上を移動し、前記キャリッジに設けられているミラー127との組合せで、プラテンガラス122上の原稿121からの反射光即ち光学像を、レンズ読み取りユニット128へ導出する。前記レンズ読み取りユニット128は結像レンズ129及びCCDラインセンサ130から構成される。前記ミラー124,125,127により反射伝達された原稿121上の画像に対応する光学像は、前記結像レンズ129により収束され、CCDラインセンサ130の受光面に結像され、前記CCDラインセンサ130によりライン上の光学像が順次電気信号に光電変換される。
【0199】
操作部28に設けられたコピーボタンを押すと、図示を省略したモーターによって連動して駆動されるハロゲン光源123とミラー127が設けられているキャリッジと可動ミラーユニット126との動きにより1頁分の原稿の画像情報はCCDラインセンサ130に読み取られる。プラテンガラス122上に1枚ずつ置かれた原稿121は以上のように順次読み取られてそれぞれ1頁分の画像データとして出力される。
【0200】
前記画像読み取り部Aで読み取りられた原稿画像の画像信号即ち画像データは、後述する画像処理部Bにおいて、濃度変換、フィルタ処理、変倍処理、γ補正などの各種画像処理が施された後、画像記憶部Cを経て画像形成部Dに出力される。画像形成部Dは、電子写真技術を用いたレーザプリンタにより、入力された画像データに応じて記録紙上に画像形成を行う。
【0201】
即ち、画像形成部Dでは、図示しない半導体レーザで発生されるレーザビームを画像信号に基づいて変調する。かかるレーザビームを駆動モータ141により回転されるポリゴンミラー142で回転走査させ、図示しないfθレンズを経て、反射ミラー143により光路を曲げて、感光体ドラム151の表面上に投射させ、一様に帯電された感光体ドラム151上に静電潜像を形成する。ここに、感光体ドラム151としては、環境保護、無公害の観点から有機感光体からなることが好ましい。
【0202】
更に、この感光体ドラム151を一様に帯電させるための帯電器(帯電工程でもある)152、現像器(現像工程でもある)153、転写極(転写工程でもある)157、分離極(分離工程でもある)158、クリーニング装置(クリーニング工程でもある)159、定着装置(定着工程でもある)160が備えられており、感光体ドラム151上に形成された静電潜像が前記現像器153によって現像されてトナー像となり、更に、前記トナー像が記録紙上に転写され、定着されて、原稿の複写像が得られるようにされている。
【0203】
記録紙は各サイズ毎にカセット171〜174にストックされており、記録紙サイズの指示に従って対応するカセット171〜174から記録紙が取り出され、複数の搬送ローラや搬送ベルトを含んで構成される記録紙搬送機構175とによって感光体ドラム151に供給される。
【0204】
片面コピーの場合はカセットから順次取り出される記録紙の片面に、トナー像が順次転写、定着されて記録紙排出トレイ176上に排出される。
【0205】
両面コピーの場合は片面にトナー像が転写、定着されて送りだされた記録紙が記録紙搬送路中の定着装置160直後に配置された第1の切替え爪177(図中の破線の位置)により下方に方向転換され両面複写ユニット(Auto Duplex Unit,以下ADUと略記する)へと案内される。記録紙搬送路中の第2の切替え爪180(図中の破線の位置)は記録紙を右方向へ通過させ次に反転ローラー181が逆転すると同時に第2の切替え爪を図中の実線の位置に切り換える。この結果記録紙は表裏逆転された後反転搬送路183を経てカセット171、172からの給紙と同様に感光体ドラム151へと給送される。原稿裏面の画像データは画像記憶部Cから読み出されて記録紙裏面に順次画像形成されて両面コピーが得られる。
【0206】
また、図1に示すデジタル複写機には、前記プラテンガラス122上に読み取り原稿121を自動搬送する自動原稿送り装置81が、前記画像読み取り部Aに設けられている。前記自動原稿送り装置81は、原稿セット台82上に読み取り原稿を複数枚重ねてセットし、コピーボタンを押すと、この原稿の各ページを順次給送して順番にプラテンガラス122上の所定位置に自動搬送するとともに、読み取りの終了した原稿121をプラテンガラス122上から取除いて原稿排出トレー94上に排出するものである。
【0207】
更に、前記自動原稿送り装置81は、前記のように原稿の片面に画像の記された片面原稿121を順次送り出して読み取る他、両面原稿を1枚取り出してプラテンガラス122上に送り込んで片面の画像読み取りを終えると前記原稿を逆方向に移動させ、反転ガイドと反転ローラーからなる反転部で方向を転換して原稿を裏返してプラテンガラス122の所定位置に送り込み原稿裏面の画像情報を読み取りできるようにされている。
【0208】
前記説明したような原稿の自動搬送のために、原稿セット台82上の原稿を1枚づつ送り出す給紙ローラ83と、駆動ローラ84及び従動ローラ92と、前記駆動ローラ84及び従動ローラ92によって巻回し駆動されるベルト86と、ガイド板89と反転ローラー90と図示されないソレノイドで駆動される切り換えガイド88を含む反転部と原稿排出ローラー87が設けられている。
【0209】
このような自動原稿送り装置を用いると両面原稿でも片面原稿でも順次プラテンガラス122上の所定の読み取り位置に原稿121を自動的に送りだして読み取り画像信号として出力させることが出来る。
【0210】
本発明で、電子RDH(Recirculating Document Handler)を用いて記録紙に両面画像を形成する画像形成方法とは、従来のアナログ複写機で両面を画像形成する方式とは異なり、記録紙の一面に画像形成したものをストックする必要がなく、直ちに記録紙の他面に連続して画像形成し両面画像を形成することを云う。即ち、電子画像に変換された画像情報に基づき、感光体上に第1のデジタル静電潜像を形成し、該静電潜像をトナー像にした後、該トナー像を記録紙の一面に転写・定着した後、該記録紙をストックすることなく直ちに、他面の転写工程・定着工程へ搬送し、前記有機感光体上に形成された第2の電子画像に基づくトナー像を転写・定着し、両面画像を形成することを意味する。
【0211】
又、上記画像形成装置において、感光体と、現像器、帯電器、転写極、分離極及びクリーニング装置の少なくとも1つが一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジを形成してもよい。
【0212】
本発明の有機感光体及び画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジは電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0213】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。文中の「部」は質量部を表す。
【0214】
実施例1
合成例1(例示化合物T20の合成例)
【0215】
【化32】
Figure 0004075572
【0216】
上記式で表される化合物10gをオキシ塩化リン32gに溶解させ、50℃まで加熱しジメチルホルムアミド22mlを少しずつ滴下した(発熱し40〜70℃になる)。反応液を90℃前後にコントロールしながら、15時間撹拌した。40℃まで放冷した後、余分なオキシ塩化リンを十分に加水分解し析出した結晶をろ別し、水で懸濁して洗浄し、洗液が中性になるまで洗浄を繰り返し下記構造式で表されるビスホルミル化合物9.25g(77%)を得た。
【0217】
【化33】
Figure 0004075572
【0218】
上記得られたビスホルミル化合物2gと、下記構造式で表されるホスホネート化合物4.3gをジメチルホルムアミド20mlに溶解した。反応液を20℃前後に保ちながら、ナトリウムメトキシド1.0gを少しずつ添加した(発熱有り)。4時間撹拌後、水30mlを加え常法により精製処理を行って黄色結晶3.3g(81%)を得た。この化合物を、元素分析及び質量分析を行ったところ、下記表1のような結果となり例示化合物T20であることが確認された。
【0219】
【化34】
Figure 0004075572
【0220】
元素分析(C5349N)
【0221】
【表1】
Figure 0004075572
【0222】
質量分析(C5349N)
Mw(計算値)=699
Mw+(実測値)=699
上記の合成で得られたT20の化合物をT20−1とする。このT20−1は下記液体クロマトグラフィ(HPCL)の測定結果cis−cis/cis−trans/trans−trans混合比が1.1/2.2/1.0であった。尚、T20cis−cis、T20trans−trans、T20cis−transの構造式を下記に示す。
【0223】
液体クロマトグラフィの測定条件
測定機:島津LC6A(島津製作所製)
カラム:CLC−SIL(島津製作所製)
検出波長:290nm
移動相:n−ヘキサン/ジオキサン=10〜500/1
移動相の流速:約1ml/min
サンプル(T20)溶媒:n−ヘキサン/ジオキサン=10/1
サンプル(T20):3mg/溶媒10ml
【0224】
【化35】
Figure 0004075572
【0225】
上記で得られたT20−1を液体クロマトグラフィを用いてcis−cis体、cis−trans体、trans−trans体に分離した化合物も得た。これらcis−cis体のT20をT20c−c、cis−trans体のT20をT20c−t、trans−trans体のT20をT20t−tとする。T20−1とT20c−c、T20c−t、T20t−tの4つの化合物を用い、混合比を変えて、表2に示す如くcis−cis/cis−trans/trans−transの混合比を持つT20−2〜T20−8の化合物を作製した。
【0226】
感光体1の作製
〈中間層〉
酸化チタンSMT500SAS(1回目:シリカ・アルミナ処理、2回目:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理:酸化チタン粒径35nm:テイカ社製) 300部
ポリアミド樹脂 CM8000(東レ社製) 100部
メタノール 1000部
酸化チタン、ポリアミド樹脂、メタノールを同一容器中に加え超音波ホモジナイザーを用いて分散し、中間層用の塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、4μmの乾燥膜厚で中間層を設けた。
【0227】
〈電荷発生層〉
Y型チタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折の最大ピーク角度が2θで27.3) 60部
シリコーン変性ブチラール樹脂(X−40−1211M:信越化学社製)700部
2−ブタノン 2000部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0228】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(T20−1) 225部
ポリカーボネート(粘度平均分子量20,000) 300部
酸化防止剤(例示化合物1−3) 6部
ジクロロメタン 2000部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚24μmの電荷輸送層を形成し、感光体1を作製した。
【0229】
感光体2〜9の作製
感光体1で用いた電荷輸送物質(T20−1)をT20−2〜T20−8、T20t−tに代え、異性体混合比を表2のように変えた以外は感光体1と同様にして感光体2〜9を作製した。
【0230】
【表2】
Figure 0004075572
【0231】
トナー及び現像剤の作製
(トナー製造例1:乳化重合会合法の例)
n−ドデシル硫酸ナトリウム0.90kgと純水10.0リットルを入れ攪拌溶解した。この溶液に、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、1時間よく攪拌した後に、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。このものを「着色剤分散液1」とする。
【0232】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgとイオン交換水4.0リットルとからなる溶液を「アニオン界面活性剤溶液A」とする。
【0233】
ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgとイオン交換水4.0リットルとからなる溶液を「ノニオン界面活性剤溶液B」とする。
【0234】
過硫酸カリウム223.8gをイオン交換水12.0リットルに溶解した溶液を「開始剤溶液C」とする。
【0235】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた容積100リットルのGL(グラスライニング)反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒子径=120nm/固形分濃度=29.9%)3.41kgと「アニオン界面活性剤溶液A」全量と「ノニオン界面活性剤溶液B」全量とを入れ、攪拌を開始した。次いで、イオン交換水44.0リットルを加えた。
【0236】
加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、「開始剤溶液C」全量を滴下して加えた。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン12.1kgとアクリル酸n−ブチル2.88kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン548gとを滴下しながら投入した。滴下終了後、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱攪拌を行った。ついで、液温度を40℃以下に冷却し攪拌を停止し、ポールフィルターで濾過してラテックスを得た。これを「ラテックス−A」とする。
【0237】
なお、ラテックス−A中の樹脂粒子のガラス転移温度は57℃、軟化点は121℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.27万、重量平均粒径は120nmであった。
【0238】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換純水4.0リットルに溶解した溶液を「アニオン界面活性剤溶液D」とする。
【0239】
また、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgをイオン交換水4.0リットルに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液E」とする。
【0240】
過硫酸カリウム(関東化学社製)200.7gをイオン交換水12.0リットルに溶解した溶液を「開始剤溶液F」とする。
【0241】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100リットルのGL反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒子径=120nm/固形分濃度 29.9%)3.41kgと「アニオン界面活性剤溶液D」全量と「ノニオン界面活性剤溶液E」全量とを入れ、攪拌を開始した。
【0242】
次いで、イオン交換水44.0リットルを投入した。加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、「開始剤溶液F」を添加した。ついで、スチレン11.0kgとアクリル酸n−ブチル4.00kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン9.02gとをあらかじめ混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱攪拌を行った。さらに、液温度を80℃±2℃に上げて、12時間加熱攪拌を行った。液温度を40℃以下に冷却し攪拌を停止した。ポールフィルターで濾過し、この濾液を「ラテックス−B」とする。
【0243】
なお、ラテックス−B中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、分子量分布は、重量平均分子量=24.5万、重量平均粒径は110nmであった。
【0244】
塩析剤としての塩化ナトリウム5.36kgをイオン交換水20.0リットルに溶解した溶液を「塩化ナトリウム溶液G」とする。
【0245】
フッ素系ノニオン界面活性剤1.00gをイオン交換水1.00リットルに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液H」とする。
【0246】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、粒径および形状のモニタリング装置を付けた100リットルのSUS反応釜(図3に示した構成の反応装置,交差角αは25°)に、上記で作製したラテックス−A=20.0kgとラテックス−B=5.2kgと着色剤分散液1=0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ攪拌した。ついで、40℃に加温し、塩化ナトリウム溶液G、イソプロパノール(関東化学社製)6.00kg、ノニオン界面活性剤溶液Hをこの順に添加した。その後、10分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで60分で昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間加熱攪拌して塩析/融着させながら粒径成長させた(塩析/融着工程)。次に純水2.1リットルを添加して粒径成長を停止させ、融着粒子分散液を作製した。
【0247】
温度センサー、冷却管、粒径および形状のモニタリング装置を付けた5リットルの反応容器(図3に示した構成の反応装置,交差角αは20°)に、上記で作製した融着粒子分散液5.0kgを入れ、液温度85℃±2℃にて、0.5〜15時間加熱攪拌して形状制御した(形状制御工程)。その後、40℃以下に冷却し攪拌を停止した。次に遠心分離機を用いて、遠心沈降法により液中にて分級を行い、目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液とする。ついで、ヌッチェを用いて、会合液よりウェットケーキ状の非球形状粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。この非球形状粒子をフラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度60℃にて乾燥させ、ついで流動層乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させた。得られた着色粒子の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して乳化重合会合法によるトナーを得た。
【0248】
前記塩析/融着工程および形状制御工程のモニタリングにおいて、攪拌回転数、および加熱時間を制御することにより、形状および形状係数の変動係数を制御し、さらに液中分級により、粒径および粒度分布の変動係数を任意に調整して、表3に示す形状特性および粒度分布特性を有するトナー粒子からなるトナー1〜16を得た。
【0249】
【表3】
Figure 0004075572
【0250】
〔現像剤の製造〕
トナー1〜16の各々10質量部と、スチレン−メタクリレート共重合体で被覆した45μmフェライトキャリア100質量部とを混合することにより、評価用の現像剤1〜16を製造した。
【0251】
評価
上記感光体1〜9と現像剤1〜16を表4のように組み合わせ、評価機としてコニカ社製デジタル複写機Konica7075(コロナ帯電、レーザ露光、反転現像、静電転写、爪分離、ブレードクリーニング、クリーニングローラ、電子RDHを用いて、両面画像を形成するプロセスを有する)を用い評価した。クリーニング性及び画像評価は、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4中性紙に両面コピーして行った。複写条件は最も厳しいと思われる高温高湿環境(30℃80%RH)にて連続20万枚コピー行い、評価を行った。但し、コピー開始前に、感光体表面にセッティングパウダーをまぶし、感光体とクリーニングブレードをなじませた後20万枚の両面コピーを行った。評価項目及び評価基準を下記に示す。
【0252】
【表4】
Figure 0004075572
【0253】
評価項目及び評価基準
画像濃度(マクベス社製反射濃度計「RD−918」を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。初期と20万枚コピー後の両方で評価)
◎:初期と20万枚コピー後の両方共1.2以上(良好)
○:初期と20万枚コピー後の両方共1.0以上(実用上問題ないレベル)
×:初期と20万枚コピー後の少なくとも一方が1.0未満(実用上問題となるレベル)
カブリ:ベタ白画像濃度で判定
マクベス社製反射濃度計「RD−918」を用いて、印字されていないコピー用紙(白紙)の濃度を20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均値を白紙濃度とする。次に、画像形成がなされた評価用紙の白地部分を同様に20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
【0254】
◎:初期と20万枚コピー後の両方共0.005以下(良好)
○:初期と20万枚コピー後の両方共0.01以下(実用上問題ないレベル)
×:初期と20万枚コピー後の少なくとも一方が0.01より大(明らかに、実用上問題あり)
解像度(文字画像の判別容易性で判定)
上記20万枚のコピー後に、3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0255】
◎:3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能(良好)
○:3ポイントは一部判読不能、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能(実用上問題ないレベル)
×:3ポイントは殆ど判読不能、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能
クリーニング性(10万及び20万枚コピー終了後にA3紙に連続10枚複写を行い、ベタ白部でのクリーニング不良の発生の有無で判定)
◎:20万枚までトナーのすり抜け発生なし(良好)
○:10万枚までトナーのすり抜け発生なし(実用上問題ないレベル)
×:10万枚未満でトナーのすり抜け発生(実用上問題となるレベル)
白ヌケ(上記20万枚コピー後、更にハーフトーン画像100枚を作製して評価)
白ヌケの評価は、周期性が感光体の周期と一致し、長径が0.4mm以上の白ヌケがA4紙当たり何個あるかで判定した。
【0256】
◎:0.4mm以上の白ヌケ頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上の白ヌケ頻度:4個/A4以上、19個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題ないレベル)
×:0.4mm以上の白ヌケ頻度:20個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題となるレベル)
黒ポチ(上記20万枚コピー後、更にベタ白のコピー画像100枚を作製して評価)
黒ポチについては、周期性が感光体の周期と一致し、目視できる黒ポチが、A4サイズ当たり何個あるかで判定した。
【0257】
◎:0.4mm以上の黒ポチ頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上の黒ポチ頻度:4個/A4以上、19個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題ないレベル)
×:0.4mm以上の黒ポチ頻度:20個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題となるレベル)
クラック
前記連続20万枚の両面コピー後、Konica7075を30℃80%RHの環境下で、感光体を搭載したまま、電源をoffにし、2日間放置した。感光体周辺の部材はこの間動作を停止しているだけの状態、即ち、クリーニングブレード、クリーニングローラ、現像剤搬送体等の部材は、感光体に当接したままにした。その後、感光体の表面を観察し、クラックの発生の有無を観察、画像だし(画像上にクラックの発生に伴う筋状の画像が出現しているかを検出)も行った。
【0258】
◎:クラック及び筋状の画像欠陥の発生なし(良好)
◯:微細なクラックの発生はあるが、筋状の画像欠陥の発生は見られない(実用上、問題なし)
×:クラックが発生し、筋状の画像欠陥も発生している(実用上、問題あり)
その他評価条件
尚、上記Konica7075を用いたその他の評価条件は下記の条件に設定した。
【0259】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
780nmの半導体レーザを露光光源とした
転写条件
転写極;コロナ帯電方式
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(N/m)となるように重り荷重方式で当接した。
【0260】
クリーニングローラ:表面が発泡性ウレタン樹脂で被覆されたローラを用いた。
【0261】
評価結果を表5に示した。
【0262】
【表5】
Figure 0004075572
【0263】
表5から明らかなように、電子RDHを用いて両面コピーを行う画像形成方法の評価において、本発明の有機感光体とトナーを用いた組み合わせNo.1〜15、17〜23は白ヌケ、黒ポチ、クリーニング性等の各評価が実用上問題のないレベル以上であるのに対し、本発明外の組み合わせNo.16(トナーが本発明外)は、白ヌケ、クリーニング性の劣化が著しく、解像度が低下している。No.24(感光体が本発明外)は白ヌケ、黒ポチの発生が著しく、クラックも発生し、解像度が低下している。又、No.25(トナー及び感光体が本発明外)は白ヌケ及び黒ポチ共発生しており、クラックも発生し、クリーニング性も劣化し、解像度が低下している。又、本発明の有機感光体とトナーを用いた組み合わせNo.1〜15、17〜23の中でも、立体異性体混合物中に占める最多異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を表面層として有する感光体を用いた組み合わせNo.1〜15、17、19〜21は含有率が37.5及び92.5の感光体を用いた組み合わせNo.18、22、23に比し、改良効果が勝っている。又、トナーは前記▲2▼及び▲5▼の条件を満たした組み合わせNo.1〜3、5〜7、10、11、19〜21等が▲2▼及び▲5▼の両方の条件を満たしていない組み合わせNo.4、8、9、12〜15等に対し効果が勝っている。特に、前記▲1▼〜▲5▼の全ての条件を満たしたトナーと、立体異性体混合物中に占める最多異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を表面層として有する感光体とを併用した、組み合わせNo.1〜3及び19〜21は白ヌケ、黒ポチの両画像欠陥が顕著に改善されておりクリーニング性も良好で、、画像濃度や解像度等の評価も優れていることが見出される。
【0264】
実施例2
合成例1(例示化合物T83の合成例)
【0265】
【化36】
Figure 0004075572
【0266】
上記式で表される化合物10gをジメチルホルムアミド40mlに溶解させ、40℃まで加熱しオキシ塩化リン9.2gを少しずつ滴下した(発熱し40〜70℃になる)。反応液を70℃前後にコントロールしながら、3時間撹拌した。40℃まで放冷した後余分なオキシ塩化リンを十分に加水分解し析出した結晶をろ別し、水で懸濁して洗浄し、洗液が中性になるまで洗浄を繰り返し下記構造式で表されるビスホルミル化合物9.25g(85%)を得た。
【0267】
【化37】
Figure 0004075572
【0268】
上記得られたビスホルミル化合物4gと、シンナミルトリホスホニウムブロミド9.3gをテトラヒドロフラン50mlに溶解した。反応液を20℃前後に保ちながら、ナトリウムメトキシド1.7gを少しずつ添加した(発熱有り)。2時間撹拌後、水30mlを加え常法により精製処理を行って黄色結晶3.37g(62%)を得た。この化合物を、元素分析及び質量分析を行ったところ、下記表6のような結果となり例示化合物T83であることが確認された。
【0269】
元素分析(C56402
【0270】
【表6】
Figure 0004075572
【0271】
質量分析(C56402
Mw(計算値)=740
Mw+(実測値)=740
上記の合成で得られたT83の化合物をT83−1とする。このT83−1は下記液体クロマトグラフィ(HPCL)の測定結果cis−cis/cis−trans/trans−trans混合比が1.7/3.0/1.0であった。尚、T83cis−cis、T83trans−transの構造式を下記に示す。
【0272】
液体クロマトグラフィの測定条件
測定機:島津LC6A(島津製作所製)
カラム:CLC−SIL(島津製作所製)
検出波長:290nm
移動相:n−ヘキサン/ジオキサン=10〜500/1
移動相の流速:約1ml/min
サンプル(T83)溶媒:n−ヘキサン/ジオキサン=10/1
サンプル(T83):3mg/溶媒10ml
【0273】
【化38】
Figure 0004075572
【0274】
上記で得られたT83−1を液体クロマトグラフィを用いてcis−cis体、cis−trans体、trans−trans体に分離した化合物も得た。これらcis−cis体のT83をT83c−c、cis−trans体のT83をT83c−t、trans−trans体のT83をT83t−tとする。T83−1とT83c−c、T83c−t、T83t−tの4つの化合物を用い、混合比を変えて、表7に示す如くcis−cis/cis−trans/trans−transの混合比を持つT83−2〜T83−8の化合物を作製した。
【0275】
感光体10〜18の作製
感光体1〜9のT20−1〜T20−8、T20t−tをT83−1〜T83−8、T83c−cに代えた以外は同様にして感光体10〜18を作製した。
【0276】
【表7】
Figure 0004075572
【0277】
評価
上記感光体10〜18と現像剤1〜16を表8のように組み合わせ、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表9に記載する。
【0278】
【表8】
Figure 0004075572
【0279】
【表9】
Figure 0004075572
【0280】
表9から明らかなように、電子RDHを用いて両面コピーを行う画像形成方法の評価において、本発明の有機感光体とトナーを用いた組み合わせNo.31〜45、47〜53は白ヌケ、黒ポチ、クリーニング性等の各評価が実用上問題のないレベル以上であるのに対し、本発明外の組み合わせNo.46(トナーが本発明外)は、白ヌケ、クリーニング性の劣化が著しく、解像度が低下している。No.54(感光体が本発明外)は白ヌケ、黒ポチの発生が著しく、クラックも発生し、解像度が低下している。又、No.55(トナー及び感光体が本発明外)は白ヌケ及び黒ポチ共発生しており、クラックも発生し、クリーニング性も劣化し、解像度が低下している。又、本発明の有機感光体とトナーを用いた組み合わせNo.31〜45、47〜53の中でも、立体異性体混合物中に占める最多異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を表面層として有する感光体を用いた組み合わせNo.31〜45、47、49〜51は含有率が37.5及び92.5の感光体を用いた組み合わせNo.48、52、53に比し、改良効果が勝っている。又、トナーは前記▲2▼及び▲5▼の条件を満たした組み合わせNo.31〜33、35〜37、40、41、49〜51等が▲2▼及び▲5▼の両方の条件を満たしていない組み合わせNo.34、38、39、42〜45等に対し、効果が勝っている。特に、前記▲1▼〜▲5▼の全ての条件を満たしたトナーと、立体異性体混合物中に占める最多異性体成分の含有率が40〜90質量%である電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を表面層として有する感光体とを併用した、組み合わせNo.31〜33及び49〜51は白ヌケ、黒ポチの両画像欠陥が顕著に改善されておりクリーニング性も良好で、、画像濃度や解像度等の評価も優れていることが見出される。
【0281】
【発明の効果】
上記の実施例から明らかなように、本発明の有機感光体とトナーを組み合わせた画像形成方法は、感光体周辺の温湿度の変化が激しい電子RDHを用いた両面画像形成の画像形成方法に用いても、白ヌケや黒ポチ等の相反する画像欠陥の発生を防止し、クラックの発生も起こさず、クリーニング性に優れ、解像度が良好な電子写真画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法に、好適に使用することができる画像形成装置(デジタル複写機)の全体構成を示す図である。
【図2】(a)は、角のないトナー粒子の投影像を示す説明図であり、(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示す説明図である。
【図3】重合トナー反応装置の一例を示す斜視図である。
【図4】重合トナー反応装置の一例を示す断面図である。
【図5】攪拌翼の形状の具体例を示す概略図である。
【符号の説明】
A 画像読み取り部
B 画像処理部
C 画像記憶部
D 画像形成部
28 操作部
81 自動原稿送り装置
82 原稿セット台
83 給紙ローラ
84 駆動ローラ
86 ベルト
87 原稿排出ローラー
88 切り換えガイド
89 ガイド板
90 反転ローラー
92 従動ローラ
94 原稿排出トレー
121 原稿
122 原稿台ガラス(プラテンガラス)
123 ハロゲン光源
124 ミラー
125 ミラー
126 可動ミラーユニット
127 ミラー
128 レンズ読み取りユニット
129 結像レンズ
130 CCDラインセンサ
141 駆動モータ
142 ポリゴンミラー
143 反射ミラー
151 感光体ドラム
152 帯電器
153 現像器
157 転写極
158 分離極
159 クリーニング装置
160 定着装置
171〜174 カセット
175 記録紙搬送機構
176 記録紙排出トレイ
177 第1の切替え爪
180 第2の切替え爪
181 反転ローラー
183 後反転搬送路

Claims (11)

  1. 電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が下記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下であることを特徴とする画像形成方法。
    Figure 0004075572
    一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
  2. 電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が下記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、形状係数1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有することを特徴とする画像形成方法。
    Figure 0004075572
    一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
  3. 電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が下記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、角がないトナー粒子を50個数%以上含有することを特徴とする画像形成方法。
    Figure 0004075572
    一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
  4. 電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が下記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることを特徴とする画像形成方法。
    Figure 0004075572
    一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
  5. 電子RDHを用いて、有機感光体上に形成されたトナー像を記録紙に転写・定着し、両面画像を形成する画像形成方法において、該有機感光体は、表面層が下記一般式(1)の化学構造を有し、最異性体成分の含有率が40〜90質量%の立体異性体混合物の電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、該トナー像の形成に用いられるトナーは、トナー粒子の個数変動係数が27%以下であることを特徴とする画像形成方法。
    Figure 0004075572
    一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5は各々水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。Ar1は水素原子又は置換、無置換の芳香族基、Ar2は置換、無置換の芳香族基を示す。
  6. 前記一般式(1)の化学構造を有する電荷輸送物質の分子量が500以上、1500以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  7. 前記有機感光体が導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  8. 前記トナーが重合トナーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  9. 前記トナーが請求項1〜5に記載の全ての条件を満たしたことを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
  10. 前記トナーの個数平均粒径が3.0〜8.5μmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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