JP2004215320A - 電動駆動制御装置、電動駆動制御方法及びそのプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動機械と、電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段91と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段92と、前記電圧飽和変量に対応させて磁極位置を補正する制御変量補正処理手段93とを有する。電動機械の駆動に伴って電圧飽和変量が算出され、電圧飽和変量に対応させて磁極位置が補正されるので、電圧飽和が発生するのを防止することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動駆動制御装置、電動駆動制御方法及びそのプログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両、例えば、電動車両としての電気自動車に搭載され、電動機械としての駆動モータのトルク、すなわち、駆動モータトルクを発生させるようにした電動駆動装置においては、前記駆動モータトルクを駆動輪に伝達して駆動力を発生させるようにしている。
【0003】
また、電動車両としてのハイブリッド型車両に搭載され、エンジンのトルク、すなわち、エンジントルクの一部を第1の電動機械としての発電機(発電機モータ)に、残りを駆動輪に伝達するようにした電動駆動装置においては、サンギヤ、リングギヤ及びキャリヤを備えたプラネタリギヤユニットを有し、前記キャリヤとエンジンとを連結し、リングギヤと駆動輪とを連結し、サンギヤと発電機とを連結し、前記リングギヤ及び第2の電動機械としての駆動モータから出力された回転を駆動輪に伝達して駆動力を発生させるようにしている。
【0004】
そして、発電機及び駆動モータには、回転自在に配設され、N極及びS極の永久磁石から成る磁極対を備えたロータ、該ロータより径方向外方に配設され、U相、V相及びW相のステータコイルを備えたステータ等が配設される。
【0005】
また、前記電気自動車には駆動モータ制御装置が、前記ハイブリッド型車両には発電機制御装置及び駆動モータ制御装置がそれぞれ電動機械制御装置として配設され、該電動機械制御装置において発生させられたU相、V相及びW相のパルス幅変調信号をインバータに送り、該インバータにおいて発生させられた相電流、すなわち、U相、V相及びW相の電流を前記各ステータコイルに供給することによって、前記駆動モータを駆動して駆動モータトルクを発生させたり、発電機を駆動して、発電機のトルク、すなわち、発電機トルクを発生させたりするようになっている。
【0006】
ところで、例えば、前記駆動モータ制御装置においては、ロータにおける磁極対の方向にd軸を、該d軸と直角の方向にq軸をそれぞれ採ったd−q軸モデル上でベクトル制御演算によるフィードバック制御が行われるようになっている。そのために、前記駆動モータ制御装置は、各ステータコイルに供給される電流、ロータの磁極位置、インバータの入口の直流電圧等を検出し、検出された電流、すなわち、検出電流を磁極位置に基づいてd軸電流及びq軸電流に変換し、前記直流電圧等に基づいてd軸電流及びq軸電流の目標値を表すd軸電流指令値及びq軸電流指令値を算出し、d軸電流とd軸電流指令値との偏差、及びq軸電流とq軸電流指令値との偏差が零(0)になるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−130710号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の電動駆動装置においては、前記電流を検出する電流センサ、磁極位置を検出する磁極位置センサ、直流電圧を検出する電圧センサ等の各センサに検出誤差があったり、温度変化に伴って、駆動モータの逆起電圧定数Mif、ステータコイルのインダクタンスLd、Lq、ステータコイルの抵抗Ra等の機器定数が変化したりすると、実現不可能な電流指令値を設定してしまう。
【0009】
その結果、電圧飽和が発生し、駆動モータ目標トルクTM* と実際に発生させられる駆動モータトルクTMとの間にずれが生じてしまい、走行に伴って運転者に違和感を感じさせたり、駆動モータの駆動が困難になったりしてしまう。
【0010】
本発明は、前記従来の電動駆動装置の問題点を解決して、電圧飽和が発生するのを防止することができ、走行に伴って運転者に違和感を感じさせたり、電圧飽和が発生して駆動モータの駆動が困難になったりすることがない電動駆動制御装置、電動駆動制御方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明の電動駆動制御装置においては、電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有する。
【0012】
そして、前記制御変量は電動機械の磁極位置である。
【0013】
本発明の他の電動駆動制御装置においては、電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記出力信号に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有する。
【0014】
そして、前記制御変量は電動機械の磁極位置である。
【0015】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有する。
【0016】
そして、前記制御変量は前記電動機械回転速度である。
【0017】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記出力信号に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有する。
【0018】
そして、前記制御変量は前記電動機械回転速度である。
【0019】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、さらに、前記指令値は電流指令値及び電圧指令値である。
【0020】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、さらに、前記電圧指令値は、非干渉項分の電圧指令値及び積分項分の電圧指令値から成る。
【0021】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、さらに、前記電圧飽和変量算出処理手段は、前記出力信号のオン時間に基づいて電圧飽和変量を算出する。
【0022】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、さらに、前記電動機械回転速度を補正するのに伴って発生させられる電動機械目標トルクが限界の電動機械トルクより大きい場合、出力可能な電動機械トルクに対応する指令値が発生させられる。
【0023】
本発明の更に他の電動駆動制御装置においては、さらに、前記電動機械回転速度を補正するのに伴って、電動機械回転速度が限界の電動機械回転速度より高くなると、電圧制限楕(だ)円の中心の指令値が発生させられる。
【0024】
本発明の電動駆動制御方法においては、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出し、該指令値に基づいて出力信号を算出し、該出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給し、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出し、該電圧飽和変量に対応させて磁極位置を補正する。
【0025】
本発明の電動駆動制御方法のプログラムにおいては、コンピュータを、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段、電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段、並びに前記電圧飽和変量に対応させて磁極位置を補正する制御変量補正処理手段として機能させる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この場合、車両、例えば、電動車両としての電気自動車について説明するが、本発明をハイブリッド型車両に適用することもできる。
【0028】
図1は本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の機能ブロック図である。
【0029】
図において、31は電動機械としての駆動モータ、91は該駆動モータ31のトルクとしての駆動モータトルクTMの目標値を表す駆動モータ目標トルクTM* 及び電動機械回転速度としての駆動モータ回転速度NMに基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段、68は前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段としてのPWM発生器、40は前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を駆動モータ31に供給する電流発生装置としてのインバータ、92は前記駆動モータ31の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段、93は前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段である。
【0030】
次に、電気自動車に搭載された電動駆動制御装置について説明する。
【0031】
図2は本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の概略図、図3は本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置のブロック図、図4は本発明の第1の実施の形態における電圧飽和回避処理部のブロック図、図5は本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の動作を示すメインフローチャート、図6は本発明の第1の実施の形態における位置検出処理のサブルーチンを示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における駆動モータ制御処理手段のサブルーチンを示す図、図8は本発明の第1の実施の形態における電圧制限楕円を示す図、図9は本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の動作を示す図である。
【0032】
図において、31は電動機械としての駆動モータであり、該駆動モータ31としてDCブラシレス駆動モータが使用され、例えば、駆動モータ31は電動車両の駆動軸等に取り付けられる。前記駆動モータ31は、回転自在に配設された図示されないロータ、及び該ロータより径方向外方に配設されたステータを備える。前記ロータは、ロータコア、及び該ロータコアの円周方向における複数箇所に配設された永久磁石を備え、該永久磁石のS極及びN極によって磁極対が構成される。また、前記ステータは、円周方向における複数箇所に、径方向内方に向けて突出させてティースが形成された図示されないステータコア、並びに前記ティースに巻装されたU相、V相及びW相のコイルとしてのステータコイル11〜13を備える。
【0033】
前記ロータの出力軸に、磁極位置θを検出するための磁極位置検出部としてパルス発生型の磁極位置センサ21が配設され、該磁極位置センサ21は、センサ出力として磁極位置信号SGθを発生させ、電動機械制御装置としての駆動モータ制御装置45に送る。
【0034】
そして、前記駆動モータ31を駆動して電動車両を走行させるために、バッテリ14からの直流の電流が電流発生装置としてのインバータ40によって相電流、すなわち、U相、V相及びW相の電流Iu、Iv、Iwに変換され、各相の電流Iu、Iv、Iwはそれぞれ各ステータコイル11〜13に供給される。
【0035】
そのために、前記インバータ40は、6個のスイッチング素子としてのトランジスタTr1〜Tr6を備え、各トランジスタTr1〜Tr6を選択的にオン・オフさせることによって、前記各相の電流Iu、Iv、Iwを発生させることができるようになっている。
【0036】
本実施の形態においては、電流発生装置としてインバータ40を使用するようになっているが、該インバータ40として、2〜6個のスイッチング素子を一つのパッケージに組み込むことによって形成されたIGBT等のパワーモジュールを使用したり、IGBTにドライブ回路等を組み込むことによって形成されたIPMを使用したりすることができる。
【0037】
前記バッテリ14からインバータ40に電流を供給する際の入口側に電圧検出部としての電圧センサ15が配設され、該電圧センサ15は、インバータ40の入口側の直流電圧Vdcを検出し、駆動モータ制御装置45に送る。なお、直流電圧Vdcとしてバッテリ電圧を使用することもでき、その場合、前記バッテリ14に電圧検出部としてバッテリ電圧センサが配設される。
【0038】
なお、前記駆動モータ31、インバータ40、図示されない駆動輪等によって電動駆動装置が構成される。また、17はコンデンサである。
【0039】
ところで、前記ステータコイルはスター結線されているので、各相のうちの二つの相の電流の値が決まると、残りの一つの相の電流の値も決まる。したがって、各相の電流Iu、Iv、Iwを制御するために、例えば、U相及びV相のステータコイルのリード線にU相及びV相の電流Iu、Ivを検出電流iu、ivとして検出する電流検出部としての電流センサ33、34が配設され、該電流センサ33、34は、検出電流iu、ivを駆動モータ制御装置45に送る。
【0040】
前記駆動モータ制御装置45には、コンピュータとして機能する図示されないCPUのほかに、データを記録したり、各種のプログラムを記録したりするためのRAM、ROM等の図示されない記録装置が配設され、前記ROMに電流指令値マップが設定される。
【0041】
そして、前記ROMには、各種のプログラム、データ等が記録されるようになっているが、プログラム、データ等を同じ外部の記録媒体に記録することもできる。その場合、例えば、前記駆動モータ制御装置45にフラッシュメモリを配設し、前記外部の記録媒体から前記プログラム、データ等を読み出してフラッシュメモリに記録する。したがって、外部の記録媒体を交換することによって、前記プログラム、データ等を更新することができる。
【0042】
また、22はアクセル操作部としてのアクセルペダル23に隣接させて配設されたアクセルセンサであり、該アクセルセンサ22によってアクセルペダル23の操作量(踏込量)を表すアクセル開度αが検出される。
【0043】
次に、前記駆動モータ制御装置45の動作について説明する。
【0044】
まず、前記駆動モータ制御装置45の図示されない位置検出処理手段は、位置検出処理を行い、前記磁極位置センサ21から送られた磁極位置信号SGθを読み込み、該磁極位置信号SGθに基づいて磁極位置θを検出する。そのために、前記位置検出処理手段の図示されない回転速度算出処理手段は、回転速度算出処理を行い、前記磁極位置信号SGθに発生させられたパルス間の平均速度を駆動モータ31の電気角速度ωとして算出し、前記位置検出処理手段の図示されない磁極位置算出処理手段は、磁極位置算出処理を行い、前記電気角速度ωに従って磁極位置θを算出する。なお、前記回転速度算出処理手段は、前記電気角速度ωに基づいて駆動モータ回転速度NM
NM=60・ω/2π
も算出する。なお、駆動モータ回転速度NMによって電動機械回転速度が構成される。
【0045】
続いて、前記位置検出処理手段の図示されない磁極位置補正処理手段は、磁極位置補正処理を行い、駆動モータ31の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量λを読み込み、該電圧飽和変量λに基づいて磁極位置θを補正する。
【0046】
次に、前記駆動モータ制御装置45の図示されない駆動モータ制御処理手段は、駆動モータ制御処理を行い、検出電流iu、iv、iw、磁極位置θ、直流電圧Vdc等に基づいて駆動モータ31を駆動する。
【0047】
そのために、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない電流指令値算出処理手段としてのトルク指令・電流指令変換部は、電流指令値算出処理を行い、d軸電流id及びq軸電流iqの目標値を表すd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* を算出する。そのために、駆動モータ制御装置45の図示されない車速検出処理手段は、車速検出処理を行い、前記駆動モータ回転速度NMに対応する車速Vを検出し、検出された車速Vを、電気自動車の全体の制御を行う図示されない車両制御装置に送る。そして、該車両制御装置の図示されない車両用指令値算出処理手段は、車両用指令値算出処理を行い、前記車速V及びアクセル開度αを読み込み、車速V及びアクセル開度αに基づいて車両要求トルクTO* を算出し、該車両要求トルクTO* に対応させて駆動モータトルクTMの目標値を表す駆動モータ目標トルク(トルク指令値)TM* を発生させ、前記駆動モータ制御装置45に送る。
【0048】
ところで、前記駆動モータ制御装置45においては、ロータにおける磁極対の方向にd軸を、該d軸と直角の方向にq軸をそれぞれ採ったd−q軸モデル上でベクトル制御演算によるフィードバック制御が行われるようになっている。なお、駆動モータトルクTMによって電動機械トルクが、駆動モータ目標トルクTM* によって電動機械目標トルクが構成される。
【0049】
そこで、前記トルク指令・電流指令変換部は、前記直流電圧Vdc、電気角速度ω及び駆動モータ目標トルクTM* を読み込み、前記電流指令値マップを参照して、前記駆動モータ目標トルクTM* に対応するd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* を電流指令値として算出する。また、電流指令値算出処理手段によって第1の指令値算出処理手段が構成され、電流指令値算出処理によって第1の指令値算出処理が構成され、d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* によって第1の指令値が構成される。
【0050】
次に、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない検出電流取得処理手段は、検出電流取得処理を行い、前記検出電流iu、ivを読み込んで取得するとともに、検出電流取得処理手段の演算器35は、前記検出電流iu、ivに基づいて検出電流iw
iw=−iu−iv
を算出することによって取得する。
【0051】
続いて、前記駆動モータ制御処理手段の第1の変換処理手段としての三相二相変換部61は、第1の変換処理としての三相/二相変換を行い、前記磁極位置補正処理によって補正された後の磁極位置Θを読み込み、検出電流iu、iv、iwをそれぞれd軸電流id及びq軸電流iqに変換する。
【0052】
このようにして、d軸電流id及びq軸電流iqが実電流として算出され、d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* が算出されると、前記d軸電流及びq軸電流、並びにd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* に基づいてフィードバック制御が行われる。
【0053】
ところで、例えば、運転者がアクセルペダル23を踏み込んで車両を急発進させようとした場合には、d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* が急激に変動することがあるが、前記検出電流iu、iv、iwのサンプリング周期が長いと、フィードバック制御を行うに当たりゲインを大きくすることができない。そこで、検出電流iu、iv、iwがサンプリングされた後のd軸電流id及びq軸電流iq、本実施の形態においては、一つのサンプリングタイミングだけ後のd軸電流id及びq軸電流iqを予測し、予測されたd軸電流idp及びq軸電流iqp、並びにd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* に基づいて比例積分制御を行い、実質的にサンプリング周期を短くするようにしている。
【0054】
また、d軸電流id及びq軸電流iqを予測するに当たり、例えば、各ステータコイルに供給される電流Iu、Iv、Iwが変化して各ステータコイルのインダクタンスLaが変化すると、それに伴って、予測されたd軸電流idp及びq軸電流iqpに予測電流誤差が発生することがあり、その場合、フィードバック制御によってd軸電流偏差Δid及びq軸電流偏差Δiqを零に近づけるのが困難になり、d軸電流id及びq軸電流iqとd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* との間に定常偏差が発生してしまう。
【0055】
そこで、本実施の形態においては、予測されたd軸電流idp及びq軸電流iqpに基づいて比例制御を行い、実際のd軸電流id及びq軸電流iqに基づいて積分制御を行うようにしている。
【0056】
そのために、d軸電流idは、一方で、駆動モータ制御処理手段の図示されない電流予測処理手段としての電流予測部71に送られ、該電流予測部71において電流予測処理が行われ、所定の数、本実施の形態においては、一つのサンプリングタイミングだけ後のd軸電流idが算出されて予測され、予測されたd軸電流idpが予測電流として、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない予測偏差算出処理手段としての減算器81に送られる。また、前記d軸電流idは、他方で、そのまま、実電流として、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない実偏差算出処理手段としての減算器82に送られる。
【0057】
前記電流予測部71は、乗算器(Ra)d1、減算器d2、乗算器(T/Ld)d3及び加算器d4を備え、現在のサンプリングタイミングをn−1とし、一つ後のサンプリングタイミングをnし、現在のd軸電流idをid(n−1)とし、サンプリング周期をTとし、ステータコイルのd軸上のインダクタンスをLdとし、ステータコイルの抵抗をRaとし、現在の電圧降下Vzdの値をVzd(n−1)としたとき、予測されたd軸電流idpの値id(n)は、
id(n)=id(n−1)+(T/Ld){Vzd(n−1)
−Ra・id(n−1)}
になる。
【0058】
そして、前記減算器81は、予測偏差算出処理を行い、d軸電流idpと前記d軸電流指令値id* との予測偏差としてのd軸電流偏差Δidpを算出し、前記減算器82は、実偏差算出処理を行い、d軸電流idと前記d軸電流指令値id* との実偏差としてのd軸電流偏差Δidを算出し、d軸電流偏差Δidp、Δidを、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない電圧指令値算出処理手段としての電圧指令値算出部78に送る。
【0059】
同様に、q軸電流iqは、一方で、前記電流予測処理手段としての電流予測部72に送られ、該電流予測部72において電流予測処理が行われ、所定の数、本実施の形態においては、一つのサンプリングタイミングだけ後のq軸電流iqが算出されて予測され、予測されたq軸電流iqpが予測電流として、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない予測偏差算出処理手段としての減算器86に送られる。また、前記q軸電流iqは、他方で、そのまま、実電流として、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない実偏差算出処理手段としての減算器87に送られる。
【0060】
前記電流予測部72は、乗算器(Ra)q1、減算器q2、乗算器(T/Lq)q3及び加算器q4を備え、現在のサンプリングタイミングをn−1とし、一つ後のサンプリングタイミングをnし、現在のq軸電流iqをiq(n−1)とし、ステータコイルのq軸上のインダクタンスをLqとし、ステータコイルの抵抗をRaとし、現在の電圧降下Vzqの値をVzq(n−1)としたとき、予測されたq軸電流iqpの値iq(n)は、
iq(n)=iq(n−1)+(T/Lq){Vzq(n−1)
−Ra・iq(n−1)}
になる。
【0061】
そして、前記減算器86は、予測偏差算出処理を行い、q軸電流iqpと前記q軸電流指令値iq* との予測偏差としてのq軸電流偏差Δiqpを算出し、前記減算器87は、実偏差算出処理を行い、q軸電流iqと前記q軸電流指令値iq* との実偏差としてのq軸電流偏差Δiqを算出し、q軸電流偏差Δiqp、Δiqを、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない電圧指令値算出処理手段としての電圧指令値算出部79に送る。
【0062】
続いて、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない比例積分演算処理手段としての電圧指令値算出部78、79は、比例積分(PI)演算処理を行、前記電圧指令値算出部78は、電圧指令値算出処理を行い、前記d軸電流偏差Δidp、Δidが零になるように電圧指令値としてのd軸電圧指令値vd* を算出し、前記電圧指令値算出部79は、電圧指令値算出処理を行い、q軸電流偏差Δiqp、Δiqが零になるように電圧指令値としてのq軸電圧指令値vq* を算出する。
【0063】
そのために、電圧指令値算出部78は、比例演算処理手段としての比例演算部83、積分演算処理手段としての積分演算部84、電圧降下算出処理手段としての加算器85、及び電圧算出処理手段としての減算器74を備える。そして、前記比例演算部83において、リミッタd11及びゲイン乗算器(Gpd)d12によって比例演算処理が行われ、d軸電流偏差Δidp及び比例演算用のゲインGpdに基づいて比例項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzdp
Vzdp=Gpd・Δidp
が比例演算値として算出され、前記積分演算部84において、積分器(1/s)d13、リミッタd14及びゲイン乗算器(Gid)d15によって積分演算処理が行われ、d軸電流偏差Δid及び積分演算用のゲインGidに基づいて積分項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzdi
Vzdi=Gid・ΣΔid
が積分演算値として算出され、前記加算器85において電圧降下算出処理が行われ、電圧降下Vzdp、Vzdiが加算されて、電圧降下Vzd
Vzd=Vzdp+Vzdi
=Gpd・Δidp+Gid・ΣΔid
が算出される。なお、前記リミッタd11はd軸電流偏差Δidpが、前記リミッタd14は積分値ΣΔidが発散しないように制限する。
【0064】
また、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない誘起電圧算出処理手段は、誘起電圧算出処理を行い、電気角速度ω及びq軸電流iqpを読み込み、乗算器(Lq)q16及び乗算器(ω)q17によって、前記電気角速度ω、q軸電流iqp及びq軸上のインダクタンスLqに基づいて、q軸電流iqによって誘起される誘起電圧ed
ed=ω・Lq・iq
を算出する。
【0065】
続いて、前記減算器74は、加算器85から送られた電圧降下Vzdから誘起電圧edを減算し、出力電圧としてのd軸電圧指令値vd*
vd* =Vzd−ed
=Vzd−ω・Lq・iq
を算出する。このようにして、d軸電流偏差Δidp、Δidが零になるように、d軸電圧指令値vd* が発生させられ、該d軸電圧指令値vd* が、リミッタd19を介して前記駆動モータ制御装置45の第2の変換処理手段としての二相三相変換部67に送られる。なお、前記リミッタd19は、d軸電圧指令値vd* が発散しないように制限される。
【0066】
一方、前記電圧指令値算出部79は、比例演算処理手段としての比例演算部88、積分演算処理手段としての積分演算部89、電圧降下算出処理手段としての加算器90、及び電圧算出処理手段としての加算器76を備える。そして、前記比例演算部88において、リミッタq11及びゲイン乗算器(Gpq)q12によって比例演算処理が行われ、q軸電流偏差Δiqp及び比例演算用のゲインGpqに基づいて比例項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzqp
Vzqp=Gpq・Δiqp
が比例演算値として算出され、前記積分演算部89において、積分器(1/s)q13、リミッタq14及びゲイン乗算器(Giq)q15によって積分演算処理が行われ、q軸電流偏差Δiq及び積分演算用のゲインGiqに基づいて積分項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzqi
Vzqi=Giq・ΣΔiq
が積分演算値として算出され、前記加算器90において電圧降下算出処理が行われ、電圧降下Vzqp、Vzqiが加算されて、電圧降下Vzq
Vzq=Vzqp+Vzqi
=Gpq・Δiqp+Giq・ΣΔiq
が算出される。なお、前記リミッタq11はq軸電流偏差Δidqが、前記リミッタq14は積分値ΣΔiqが発散しないように制限される。
【0067】
また、前記駆動モータ制御処理手段の図示されない誘起電圧算出処理手段は、誘起電圧算出処理を行い、電気角速度ω及びd軸電流idを読み込み、乗算器(Ld)d16、加算器d17及び乗算器(ω)d18によって、前記電気角速度ω、逆起電圧定数MIf、d軸電流idp及びd軸上のインダクタンスLdに基づいて、d軸電流idによって誘起される誘起電圧eq
eq=ω(MIf+Ld・id)
を算出する。
【0068】
続いて、前記加算器76は、加算器90から送られた電圧降下Vzqに誘起電圧eqを加算し、出力電圧としてのq軸電圧指令値vq*
vq* =Vzq+eq
=Vzq+ω(MIf+Ld・id)
を算出する。このようにして、q軸電流偏差Δiqp、Δiqが零になるように、q軸電圧指令値vq* が発生させられ、該q軸電圧指令値vq* がリミッタq19を介して前記二相三相変換部67に送られる。なお、前記リミッタq19は、q軸電圧指令値vq* が発散しないように制限される。
【0069】
前記電圧指令値算出処理手段によって第2の指令値算出処理手段が構成され、電圧指令値算出処理によって第2の指令値算出処理が構成され、d軸電圧指令値vd* 及びq軸電圧指令値vq* が構成される。また、第1、第2の指令値算出処理手段によって指令値算出処理手段91が構成される。
【0070】
続いて、該二相三相変換部67は、前記d軸電圧指令値vd* 、q軸電圧指令値vq* 及び磁極位置Θを読み込み、第2の変換処理としての二相/三相変換を行い、d軸電圧指令値vd* 及びq軸電圧指令値vq* をU相、V相及びW相の電圧指令値Vu* 、Vv* 、Vw* に変換し、該電圧指令値Vu* 、Vv* 、Vw* を、駆動モータ制御装置45の出力信号算出処理手段としてのPWM発生器68に送る。
【0071】
該PWM発生器68は、出力信号算出処理を行い、前記各相の電圧指令値Vu* 、Vv* 、Vw* 及び前記直流電圧Vdcに基づいて、前記d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* に対応するパルス幅を有する各相のパルス幅変調信号Mu、Mv、Mwを出力信号として発生させ、駆動モータ制御装置45外に配設されたドライブ回路51に送る。
【0072】
該ドライブ回路51は、前記各相のパルス幅変調信号Mu、Mv、Mwを受けて6個のゲート信号を発生させ、該ゲート信号をインバータ40に送る。該インバータ40は、前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwに基づいて、トランジスタTr1〜Tr6をスイッチングして各相の電流Iu、Iv、Iwを発生させ、該各相の電流Iu、Iv、Iwを前記駆動モータ31の各ステータコイルに供給する。
【0073】
このように、駆動モータ目標トルクTM* に基づいてトルク制御が行われ、駆動モータ31が駆動されて電動車両が走行させられる。
【0074】
ところで、駆動モータ31において、各ステータコイルに各相の電流Iu、Iv、Iwを所定の振幅及び位相で供給する場合、抵抗Ra、インダクタンスLd、Lq、逆起電圧等を考慮してインバータ40のトランジスタTr1〜Tr6をスイッチングし、各ステータコイルに所定の電圧Vu、Vv、Vwを印加する必要がある。ところが、電気角速度ωが大きくなり、駆動モータ回転速度NMが高くなるのに伴って、逆起電圧が高くなると、あるバッテリ電圧VB(又は直流電圧Vdc)では、前記各ステータコイルに前記所定の電圧Vu、Vv、Vwを印加することができなくなり、駆動モータ31が、図8に示されるd軸及びq軸から成る回転座標系において、電圧制限楕円で表される出力限界に達してしまう。そして、駆動モータ31が出力限界に達すると、前記比例積分処理手段による比例積分処理が発散してしまう。
【0075】
ここで、前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwが、パルス幅で表されるオン時間が最大になるフルオン状態になるときの指令電圧をVlimとしたとき、
Vlim2 =√(vdlim2 +vqlim2 ) ……(1)
になる。そして、定常状態におけるd軸電圧指令値vdlim及びq軸電圧指令値vqlimは、
vdlim=Ra・idlim−ω・Lq・iqlim ……(2)
vqlim=Ra・iqlim+ω(MIf+Ld・idlim)……(3)
になる。
【0076】
したがって、前記電圧制限楕円は、前記式(1)に式(2)、(3)を代入して抵抗Raが小さいと仮定すると次の式(4)で表すことができ、電圧制限楕円の中心の座標はO(−MIf/Ld,0)となり、長径r1は、
r1=Vlim/(ω・Ld)
となり、
短径r2は、
r2=Vlim/(ω・Lq)
になる。
【0077】
【数1】
【0078】
ところで、前述されたように、駆動モータ31の出力限界は前記電圧制限楕円で表されるので、前記電圧制限楕円より外のd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* を採ることができない。そして、前記電圧制限楕円の中心で表されるd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq*
id* =MIf/Ld
iq* =0
が、電圧飽和に対して最も安全な値になり、前記電圧制限楕円に近い点で表されるd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* ほど電圧飽和によって制御の発散が発生しやすい。したがって、電圧飽和変量λを、指令電圧Vomの大きさ、又は前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwのオン時間によって表すことができる。
【0079】
ところで、前記電流センサ33、34、磁極位置センサ21、電圧センサ15等の各センサに検出誤差があったり、温度変化に伴って、逆起電圧定数MIf、インダクタンスLd、Lq、抵抗Ra等の機器定数が変化したりしたときに、実現不可能なd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* が設定されると、電圧飽和が発生し、駆動モータ目標トルクTM* と実際に発生させられる駆動モータトルクTMとの間にずれが生じて、走行に伴って運転者に違和感を感じさせたり、駆動モータ31の駆動が困難になったりしてしまう。
【0080】
例えば、d軸及びq軸から成る回転座標系においては、図9に示されるように、電流指令値をベクトル長さE及び電流位相βから成るベクトルBで表すことができ、d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* は、
id* =−B・sinβ
iq* =B・cosβ
になる。この場合、前記磁極位置センサ21によって検出された磁極位置θに誤差θeが生じると、d’軸及びq’軸から成る回転座標系が形成され、ステータコイルが電流位相β−θeで通電され、誤差θeだけ回転させられたベクトルBmで表される電流指令値が発生させられてしまう。その結果、ベクトルBmが電圧制限楕円の外に出てしまい、電圧飽和を発生させてしまう。
【0081】
そこで、電圧飽和が発生するのを防止するために、駆動モータ制御装置45に電圧飽和回避処理部25、及び加算器95が配設される。そして、前記電圧飽和回避処理部25は、電圧飽和変量算出処理手段92としての電圧飽和変量算出部43、及び磁極位置補正量算出処理手段としての磁極位置補正量算出部44を備え、前記電圧飽和変量算出部43は、電圧飽和変量算出処理を行い、ノイズの影響を受けない変量、本実施の形態においては、d軸電流指令値id* 、q軸電流指令値iq* 及び電圧降下Vzdi、Vzqiに基づいて電圧飽和変量λを算出し、前記磁極位置補正量算出部44は、磁極位置補正量算出処理を行い、前記電圧飽和変量λに基づいて比例積分演算を行い、磁極位置θを補正するための磁極位置補正量dθを算出する。また、前記加算器95は、磁極位置θに磁極位置補正量dθを加算することによって磁極位置θを補正し、補正された磁極位置Θを算出する。
【0082】
そのために、電圧飽和変量算出部43において、乗算器(Lq)q21、乗算器(ω)q22によって、q軸電流指令値iq* に基づいて、非干渉項分の電圧指令値ω・Lq・iq* が算出され、加算器q23によって、前記非干渉項分の電圧指令値ω・Lq・iq* と積分項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzdiとが加算されてd軸電圧指令値vdf* が算出される。また、乗算器(Ld)d21、加算器d22、乗算器(ω)d23によって、d軸電流指令値id* に基づいて、非干渉項分の電圧指令値ω(MIf+Ld・id* )が算出され、加算器d24によって、前記非干渉項分の電圧指令値ω(MIf+Ld・id* )と積分項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzqiとが加算されてq軸電圧指令値vqf* が算出される。
【0083】
なお、d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* は、電気角速度ωに基づいて算出されるが、電気角速度ωは算出処理上、磁極位置θの誤差を含まないので、本来ノイズの影響を受けない。また、電圧降下Vzdi、Vzqiは、積分演算部84、89による積分演算処理が行われて算出されたものであるので、ノイズの影響を無視することができる。したがって、d軸電圧指令値vdf* 及びq軸電圧指令値vqf* はノイズの影響を受けない。また、d軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* に基づいてd軸電圧指令値vdf* 及びq軸電圧指令値vqf* を算出するようになっているので電圧飽和が発生するのを早く検出することができる。
【0084】
なお、比例項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzdp、Vzqpは、定常状態においてほぼ零であるので、d軸電圧指令値vdf* 及びq軸電圧指令値vqf* を算出する上で無視される。
【0085】
続いて、乗算器d24(x)によって前記d軸電圧指令値vdf* が、乗算器q25によって前記q軸電圧指令値vqf* が二乗され、加算器f1によって値vdf* 2 と値vqf* 2 とが加算されて指令電圧Vom
Vom=√(vdf* 2 +vqf* 2 )
が算出される。そして、駆動モータ制御装置45の図示されない許容電圧算出処理手段は、許容電圧算出処理を行い、直流電圧Vdcを読み込み、該直流電圧Vdcに基づいて電圧飽和が発生しない許容電圧を算出する。前記電圧飽和変量算出部43は、許容電圧を読み込み、該許容電圧を前記指令電圧Vomの目標値を表す指令電圧制限値Vom*
Vom* =√((2/3)Vdc)
として設定し、減算器f2によって、指令電圧Vomと指令電圧制限値Vom* との偏差ΔVom
ΔVom=Vom−Vom*
を算出する。また、電圧飽和変量算出部43は、電圧飽和変量λ
λ=ΔVom
を算出する。なお、指令電圧制限値Vom* を理論値としているが、実際には、実験によって求められ、電流制御が安定する指令電圧Vomの上限値を使用するのが好ましい。
【0086】
このようにして、電圧飽和変量λが算出されると、磁極位置補正量算出部44において、前記偏差ΔVomに基づいて、ゲイン乗算器(Gp)h1によって比例成分Gp・ΔVomが算出され、リミッタh2によって比例成分Gp・ΔVomが制限され、零以下の値を採ると零にされる。また、積分器(1/s)h3によって偏差ΔVomが積分され、積分値ΣΔVomが算出され、ゲイン乗算器(Gi)h4によって積分成分Gi・ΣΔVomが算出され、リミッタh5によって積分成分Gi・ΣΔVomが制限され、零以下の値を採るとクリアされる。
【0087】
続いて、加算器h6によって比例成分Gp・ΔVomと積分成分Gi・ΣΔVomとが加算され、磁極位置補正量dθ
dθ=Gp・ΔVom+Gi・ΣΔVom
が算出される。
【0088】
このようにして、磁極位置補正量dθが算出されると、該磁極位置補正量dθは、磁極位置θを正方向及び逆方向のうちのいずれの方向に補正するかを決定するために、回転方向決定処理手段としての回転方向決定部98に送られる。該回転方向決定部98は、駆動モータ31が駆動モータトルクTMを発生させる力行状態にあるか、外部からトルクを受ける回生状態にあるかを判断し、駆動モータ31が力行状態にある場合、磁極位置θが逆方向に補正されるように磁極位置補正量dθを決定し、駆動モータ31が回生状態にある場合、磁極位置θが正方向に補正されるように磁極位置補正量dθを決定する。
【0089】
続いて、前記加算器95は、磁極位置θに磁極位置補正量dθを加算し、磁極位置θを補正して磁極位置Θを算出する。なお、前記磁極位置補正量算出部44及び加算器95によって磁極位置補正処理手段が構成される。また、該磁極位置補正処理手段によって制御変量補正処理手段が構成され、磁極位置補正処理によって制御変量補正処理93が構成され、磁極位置θによって制御変量が構成される。
【0090】
このように、電圧飽和変量λが算出され、偏差ΔVomに対応させて磁極位置θが電圧飽和に対して安全側に補正されるので、磁極位置センサ21として磁極位置θに発生する誤差θeが大きいセンサを使用しても、電圧飽和が発生するのを防止することができる。したがって、電気自動車の走行に伴って運転者に違和感を感じさせたり、電圧飽和が発生して駆動モータ31の駆動が困難になったりすることがない。
【0091】
また、非干渉項分の電圧指令値ω・Lq・iq* 、ω(MIf+Ld・id* )、及び積分項分の電圧指令値を表す電圧降下Vzdi、Vzqiに基づいて電圧飽和変量λが算出されるので、ノイズの影響を受けることなく、電圧飽和が発生するのを確実に防止することができる。
【0092】
次に、図5のフローチャートについて説明する。
ステップS1 位置検出処理を行う。
ステップS2 駆動モータ制御処理を行い、処理を終了する。
【0093】
次に、図6のフローチャートについて説明する。
ステップS1−1 駆動モータ回転速度算出処理を行う。
ステップS1−2 磁極位置算出処理を行う。
ステップS1−3 磁極位置補正処理を行い、リターンする。
【0094】
次に、図7のフローチャートについて説明する。
ステップS2−1 電流指令値算出処理を行う。
ステップS2−2 検出電流取得処理を行う。
ステップS2−3 三相二相変換処理を行う。
ステップS2−4 比例積分演算処理を行う。
ステップS2−5 二相三相変換処理を行う。
ステップS2−6 出力信号算出処理を行う。
ステップS2−7 電圧飽和変量算出処理を行い、リターンする。
【0095】
次に、電圧飽和変量λを、指令電圧Vomの大きさ、又は前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwのオン時間によって表すようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0096】
図10は本発明の第2の実施の形態における電動駆動制御装置のブロック図、図11は本発明の第2の実施の形態における電圧飽和回避処理部のブロック図、図12は本発明の第2の実施の形態における位置検出処理のサブルーチンを示す図、図13は本発明の第2の実施の形態における電動駆動制御装置の動作を示す図、図14は本発明の第2の実施の形態における電流指令値マップを示す図、図15は本発明の第2の実施の形態における電流位相指令値マップを示す図、図16は本発明の第2の実施の形態における電流指令値を変化させる動作を説明する図である。
【0097】
本実施の形態においては、駆動モータ制御処理の動作については、第1の実施の形態と同じであるので、駆動モータ制御処理の動作については説明を省略し、位置検出処理の動作についてだけ説明する。
【0098】
この場合、駆動モータ制御装置45(図2)の図示されない位置検出処理手段は、位置検出処理を行い、磁極位置検出部としての磁極位置センサ21から送られたセンサ出力としての磁極位置信号SGθを読み込み、該磁極位置信号SGθに基づいて磁極位置θを検出する。そのために、前記位置検出処理手段の図示されない回転速度算出処理手段は、回転速度算出処理を行い、前記磁極位置信号SGθに発生させられたパルス間の平均速度を電動機械としての駆動モータ31の電気角速度ωとして算出し、前記位置検出処理手段の図示されない回転速度補正処理手段は、回転速度補正処理を行い、電圧飽和変量λを読み込み、該電圧飽和変量λに基づいて電気角速度ωを補正する。
【0099】
なお、62は駆動モータ制御処理手段の電流指令値算出処理手段としてのトルク指令・電流指令変換部であり、該トルク指令・電流指令変換部62は、前記直流電圧Vdc、補正された電気角速度Ω及び駆動モータ目標トルクTM* を読み込み、電気角速度Ωを駆動モータ回転速度NMに変換し、前記電流指令値マップを参照して、前記駆動モータ目標トルクTM* に対応するd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* を電流指令値として算出する。
【0100】
ところで、磁極位置センサ21においては、前記磁極位置信号SGθに発生させられたパルス間の平均速度を駆動モータ31の電気角速度ωとして算出し、検出するようにしている。この場合、駆動モータ31が振動する等によって速度変動が大きい場合に、検出される電気角速度ωに誤差ωeが発生すると、電圧飽和が発生することがある。例えば、電気角速度ωが低いと判断してベクトルB1が表される電流指令値を選択したときに、実際の角速度が高い場合には、所定の駆動モータ目標トルクTM* で表される等トルク曲線上においてベクトルB2で表される電流指令値を選択しないと、電圧飽和が発生してしまう。なお、L1は電気電気角速度ωが低いと判断したときの電圧飽和楕円、L2は実際の電気角速度ωによる電圧飽和楕円である。
【0101】
そこで、前記電圧飽和が発生するのを防止するために、パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwのオン時間Tu、Tv、Twに基づいて電圧飽和変量λを算出し、前述されたように、該電圧飽和変量λに基づいて電気角速度ωを補正するようにしている。
【0102】
この場合、駆動モータ制御装置45に電圧飽和回避処理部26及び加算器49が配設される。前記電圧飽和回避処理部26は、電圧飽和変量算出処理手段92としての電圧飽和変量算出部47、及び回転速度補正量算出処理手段としての回転速度補正量算出部48を備え、前記電圧飽和変量算出部47は、電圧飽和変量算出処理を行い、磁極位置θに誤差eが生じるのに伴って発生するノイズの影響を受けない変量、本実施の形態においては、前記パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwのオン時間Tu、Tv、Twを読み込み、該オン時間Tu、Tv、Twに基づいて電圧飽和変量λを算出し、前記回転速度補正量算出部48は、回転速度補正量算出処理を行い、前記電圧飽和変量λに基づいて比例積分演算を行い、電気電気角速度ωを補正するための電気角速度補正量dωを算出する。また、前記加算器49は、電気角速度ωに電気角速度補正量dωを加算することによって電気角速度ωを補正し、補正された電気角速度Ωを算出する。
【0103】
そのために、電圧飽和変量算出部47において、選択処理手段としてのセレクタg1は、選択処理を行い、所定のサンプリング周期Tでオン時間Tu、Tv、Twを読み込み、オン時間Tu、Tv、Twのうちの最大のオン時間Tmaxを選択する。また、前記電圧飽和変量算出部47は、パルス幅変調信号Mu、Mv、Mwのフルオン状態のオン時間をTfonとしたとき、オン時間Tfonの近傍の値を、目標値を表すオン時間制限値T* として設定し、減算器f2によって、オン時間Tmaxとオン時間制限値T* との偏差ΔT
ΔT=Tmax−T*
を算出する。また、電圧飽和変量算出部47は、電圧飽和変量λ
λ=ΔT
を算出する。
【0104】
このようにして、電圧飽和変量λが算出されると、磁極位置補正量算出部44において、前記偏差ΔTに基づいて、ゲイン乗算器(Gp)h1によって比例成分Gp・ΔTが算出され、リミッタh2によって比例成分Gp・ΔTが制限され、零以下の値を採ると零にされる。また、積分器h3(1/s)によって偏差ΔTが積分され、積分値ΣΔTが算出され、ゲイン乗算器(Gi)h4によって積分成分Gi・ΣΔTが算出され、リミッタh5によって積分成分Gi・ΣΔTが制限され、零以下の値を採るとクリアされる。
【0105】
続いて、加算器h6によって比例成分Gp・ΔTと積分成分Gi・ΣΔTとが加算され、電気角速度補正量dω
dω=Gp・ΔT+Gi・ΣΔT
が算出される。
【0106】
このようにして、電気角速度補正量dωが算出されると、加算器49は、電気角速度ωに電気角速度補正量dωを加算し、電気角速度ωを補正して電気角速度Ωを算出する。なお、前記回転速度補正量算出部48及び加算器49によって電気角速度補正処理手段が構成される。また、該電気角速度補正処理手段によって制御変量補正処理手段93(図1)が構成され、電気角速度補正処理によって制御変量補正処理が構成され、電気角速度ωによって制御変量が構成される。
【0107】
このように、電圧飽和変量λが算出され、偏差ΔTが小さくなり、電圧飽和変量λが大きくなると、電気角速度ωが偏差ΔT及び電圧飽和変量λに対応させて補正されるので、磁極位置センサ21として電気角速度ωの誤差が大きいセンサを使用したり、速度変動が大きい駆動モータ31を使用したりしても、電圧飽和が発生するのを防止することができる。したがって、電気自動車の走行に伴って運転者に違和感を感じさせたり、電圧飽和が発生して駆動モータ31の駆動が困難になったりすることがない。
【0108】
しかも、オン時間制限値T* が直流電圧Vdcに依存しないので、作業を簡素化することができる。
【0109】
なお、本実施の形態においては、オン時間Tu、Tv、Twのうちの最大のオン時間Tmaxを選択し、オン時間Tmaxとオン時間制限値T* との偏差ΔTを算出するようなっているが、オン時間Tu、Tv、Twのうちの最大のものをTmaxとし、次に大きいものをTmdlとし、最小のものをTminとしたとき、重み係数をρ1〜ρ3として、オン時間Tcul
Tcul=ρ1・Tmax+ρ2・Tmdl+ρ3・Tmin
を算出し、オン時間Tculとオン時間制限値T* との偏差ΔTを算出することもできる。
【0110】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1−11 駆動モータ回転速度算出処理を行う。
ステップS1−12 駆動モータ回転速度補正処理を行う。
ステップS1−13 磁極位置算出処理を行い、リターンする。
【0111】
ところで、前記駆動モータ31において所定の駆動モータトルクTMを発生させるために、駆動モータ制御装置45のROMに、図14に示されるような、ベクトル長さを表す電流指令値マップ、図15に示されるような電流位相指令値マップが設定される。なお、電流指令値マップ及び電流位相指令値マップに代えてd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* の電流指令値マップを備えることもできる。なお、図14には、直流電圧Vdcが42〔V〕である場合の電流指令値マップが示され、該電流指令値マップに、駆動モータ目標トルクTM* 及び駆動モータ回転速度NMに対応させて電流指令値が記録され、前記電流位相指令値マップに、駆動モータ目標トルクTM* 及び駆動モータ回転速度NMに対応させて電流位相指令値が記録される。
【0112】
例えば、直流電圧Vdcが42〔V〕であり、駆動モータ回転速度NMが4000〔rpm〕であり、駆動モータ目標トルクTM* が50〔Nm〕である場合、ベクトル長さを表す電流指令値は338〔A〕、電流位相指令値は51〔°〕になる。電流指令値マップ及び電流位相指令値マップには、電圧制限楕円内において駆動モータ目標トルクTM* が50〔Nm〕の等トルク曲線上にあり、かつ、電流指令値が最小になるものが記録される。このように、電流指令値を最小とすることによって、駆動モータ31を効率よく駆動することができる。
【0113】
また、中間の駆動モータ回転速度NM及び駆動モータ目標トルクTM* に対応する電流指令値及び電流位相指令値は、線形補間によって算出される。そして、所定の直流電圧Vdc及び所定の駆動モータ回転速度NMにおいては、駆動モータトルクTMに限界があるので、限界の駆動モータトルクTM、すなわち、限界トルクより大きい駆動モータ目標トルクTM* が発生させられたときのために、出力可能な駆動モータトルクTMに対応する電流指令値及び電流位相指令値が前記電流指令値マップ及び電流位相指令値マップに記録される。したがって、例えば、直流電圧Vdcが42〔V〕であり、駆動モータ回転速度NMが6000〔rpm〕であり、駆動モータ目標トルクTM* が90〔Nm〕である場合、電流指令値算出処理において、出力可能な駆動モータトルクTMに対応する電流指令値及び電流位相指令値として510〔A〕及び75〔°〕が設定される。したがって、実際に出力される駆動モータトルクTMは50〔Nm〕になる。
【0114】
また、通常、駆動モータ回転速度NMの最大値NMmaxを10000〔rpm〕とした場合、最大値NMmaxを超える駆動モータ回転速度NM、例えば、11000〔rpm〕である場合には、電圧制限楕円の中心に位置する電流指令値及び電流位相指令値が前記電流指令値マップ及び電流位相指令値マップに記録される。したがって、例えば、直流電圧Vdcが42〔V〕であり、駆動モータ回転速度NMが11000〔rpm〕である場合、電流指令値及び電流位相指令値として300〔A〕及び90〔°〕が設定される。
【0115】
このような電流指令値マップ及び電流位相指令値マップが設定されるので、直流電圧Vdcが42〔V〕であり、駆動モータ回転速度NMが4000〔rpm〕であり、駆動モータ目標トルクTM* が50〔Nm〕である場合に、前記回転速度補正処理において電気角速度ωを補正すると、電流指令値を表すベクトルBは、まず、50〔Nm〕の等トルク曲線LTM1に沿って矢印A方向に移動し、それでも電圧飽和変量λが高く、電圧飽和が発生する可能性が高いと、点p1(電流指令値及び電流位相指令値として510〔A〕及び75〔°〕が設定される。)から駆動モータ31の最大出力ラインLmaxに沿って駆動モータ回転速度NMを高くしながら矢印B方向に移動し、例えば、30〔Nm〕の等トルク曲線LTM2上の点p2(電流指令値及び電流位相指令値として360〔A〕及び75〔°〕が設定される。)に移動する。
【0116】
ところで、前記点p2にいても電圧飽和変量λが高く、電圧飽和が発生する可能性が高いと、ベクトルBは、更に矢印C方向に移動する。この場合、点p2における駆動モータ回転速度NMは10000〔rpm〕であるので、電流指令値及び電流位相指令値として電圧制限楕円の中心Oの300〔A〕及び90〔°〕が設定される。
【0117】
このように、電流指令値マップ及び電流位相指令値マップを使用することによって、駆動モータトルクTMの変動をできる限り少なくして自動弱め界磁制御を行うことができる。
【0118】
前記第1の実施の形態においては、電圧飽和変量λに基づいて磁極位置θを補正するようになっているが、電圧飽和変量λに基づいて電気角速度ωを補正することもできる。また、第2の実施の形態においては、電圧飽和変量λに基づいて電気角速度ωを補正するようになっているが、電圧飽和変量λに基づいて磁極位置θを補正することもできる。
【0119】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0120】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、電動駆動制御装置においては、電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有する。
【0121】
そして、前記制御変量は電動機械の磁極位置である。
【0122】
この場合、電動機械の駆動に伴って電圧飽和変量が算出され、電圧飽和変量に対応させて磁極位置が補正されるので、電圧飽和が発生するのを防止することができる。したがって、電動車両の走行に伴って運転者に違和感を感じさせたり、電圧飽和が発生して電動機械の駆動が困難になったりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電圧飽和回避処理部のブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の動作を示すメインフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態における位置検出処理のサブルーチンを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における駆動モータ制御処理手段のサブルーチンを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における電圧制限楕円を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における電動駆動制御装置の動作を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における電動駆動制御装置のブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における電圧飽和回避処理部のブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における位置検出処理のサブルーチンを示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における電動駆動制御装置の動作を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における電流指令値マップを示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における電流位相指令値マップを示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における電流指令値を変化させる動作を説明する図である。
【符号の説明】
31 駆動モータ
40 インバータ
45 駆動モータ制御装置
68 PWM発生器
91 指令値算出処理手段
92 電圧飽和変量算出処理手段
93 制御変量補正処理手段
Claims (11)
- 電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有するとともに、前記制御変量は電動機械の磁極位置であることを特徴とする電動駆動制御装置。
- 電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記出力信号に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有するとともに、前記制御変量は電動機械の磁極位置であることを特徴とする電動駆動制御装置。
- 電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有するとともに、前記制御変量は前記電動機械回転速度であることを特徴とする電動駆動制御装置。
- 電動機械と、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段と、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段と、前記出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給する電流発生装置と、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記出力信号に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段と、前記電圧飽和変量に対応させて制御変量を補正する制御変量補正処理手段とを有するとともに、前記制御変量は前記電動機械回転速度であることを特徴とする電動駆動制御装置。
- 前記指令値は電流指令値及び電圧指令値である請求項1又は3に記載の電動駆動制御装置。
- 前記電圧指令値は、非干渉項分の電圧指令値及び積分項分の電圧指令値から成る請求項5に記載の電動駆動制御装置。
- 前記電圧飽和変量算出処理手段は、前記出力信号のオン時間に基づいて電圧飽和変量を算出する請求項2又は4に記載の電動駆動制御装置。
- 前記電動機械回転速度を補正するのに伴って発生させられる電動機械目標トルクが限界の電動機械トルクより大きい場合、出力可能な電動機械トルクに対応する指令値が発生させられる請求項3又は4に記載の電動駆動制御装置。
- 前記電動機械回転速度を補正するのに伴って、電動機械回転速度が限界の電動機械回転速度より高くなると、電圧制限楕円の中心の指令値が発生させられる請求項3又は4に記載の電動駆動制御装置。
- 電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出し、該指令値に基づいて出力信号を算出し、該出力信号に基づいて電流を発生させ、該電流を電動機械に供給し、前記電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出し、該電圧飽和変量に対応させて磁極位置を補正することを特徴とする電動駆動制御方法。
- コンピュータを、電動機械トルクの目標値を表す電動機械目標トルク及び電動機械回転速度に基づいて指令値を算出する指令値算出処理手段、前記指令値に基づいて出力信号を算出する出力信号算出処理手段、電動機械の駆動に伴って電圧飽和が発生する度合いに対応して変化する電圧飽和変量を前記指令値に基づいて算出する電圧飽和変量算出処理手段、並びに前記電圧飽和変量に対応させて磁極位置を補正する制御変量補正処理手段として機能させることを特徴とする電動駆動制御方法のプログラム。
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