JP2004205990A - 反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法及び反射防止物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する、非常に微細な微細凹凸パターンを作製する方法を提供する。また、当該微細凹凸パターンを備える反射防止物品を提供する。
【解決手段】微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に、PMAX≦λMINなる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に、PMAX≦λMINなる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射防止性能を有する微細凹凸パターンを作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レリーフホログラムや回折格子のような微細凹凸パターンを物品の表面に設けることによって、当該物品の表面に光学的機能を付与することが知られている。
近年では、精密加工技術の向上に伴って、非常に微細又は複雑な光学的微細パターンが形成されるようになり、物品表面の光学的性質を高度に制御することが可能になってきた。このような非常に微細又は複雑な微細凹凸パターンは、従来の比較的単純なホログラムと比べて凹凸の周期がより小さく、且つ/又は、凹凸の深さがより深く、更に、より高い形状精度が求められる。
【0003】
特許文献1には、繰返し周期が光の波長以下の極めて微細な微細凹凸を物品の表面に設けることによって、表面反射率を減少させる技術が記載されている。この特許文献1には、ガラス製レンズ等の光学物品の表面にフォトレジスト等を塗布し、露光し、現像することによりレジストパターンを形成し、該レジストパターンの露出部を腐食することで、光学物品の表面に一品ごとに直接、微細凹凸を形成することが記載されている。しかしながら、この方法では、非常に生産性が悪い。
【0004】
複製型を利用して光学的機能を有する表面構造を効率良く生産する方法としては、液状の光硬化性樹脂組成物をポリエステルフイルム等の透明な支持体上に塗布して液状の光硬化性樹脂層を形成し、その上に微細凹凸を有するスタンパーを圧接した状態で支持体側から光照射を行って硬化させた後でスタンパーを取り外す、いわゆる2P法(Photo Polymerization法)がある(例えば特許文献2)。
【0005】
しかし、2P法においては、支持体裏面側から光を照射するので支持体が光吸収性を有する場合には硬化不足となる、硬化が完了するまでスタンパーを取り外せないので工程に時間がかかる、光硬化性樹脂層が液状なので圧接したスタンパーとの間に気泡が入り欠陥になりやすい、或いは、硬化した樹脂層からスタンパーを引き剥がす時に樹脂層表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こす等の問題がある。
【0006】
特許文献3には、別の方法として、支持体上に熱成形性を有し固体状の紫外線又は電子線硬化樹脂層を設け、その上にホログラム原版を圧接した後、紫外線又は電子線の照射により樹脂層を硬化させるホログラムの複製方法が記載されている。
【0007】
この方法によれば、樹脂層が固体状なので、塗工後に支持体を巻き取って保存又は運搬することが可能であり、塗工と複製を別工程で行うことができる、スタンパーを引き剥がして光照射を行えるのでスタンパーの圧接と硬化を別工程で行うことができる、スタンパーを引き剥がした後の樹脂層に光を直接照射することで充分に硬化させることができる、光硬化性樹脂層とスタンパーの間に気泡が入り難いので正確にパターン形成できる、光硬化性樹脂層からスタンパーを引き剥がす時に樹脂層表面に糸引きが生じ難い等の利点がある。
【0008】
しかし、特許文献3に記載された方法は、ホログラムを複製するための方法であり、光の波長以下の周期構造を有するもののような極めて微細又は複雑な微細凹凸パターンを精度良く形成するための検討は行なわれていない。
【特許文献1】
特開昭50−70040号公報
【特許文献2】
特公平4−5681号公報
【特許文献3】
特公平3−85103号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する、非常に微細な微細凹凸パターンを効率良く作製する方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第二の目的は、上記方法により作製された、非常に微細で且つ精度の高い微細凹凸パターンを備える反射防止物品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る微細凹凸パターン作製方法は、微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、
支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【0012】
上記方法によれば、光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する微細凹凸パターンを正確に且つ効率良く作製することができる。
【0013】
上記方法の一態様においては、凹凸パターン形成層からスタンパーを取り除いた後に当該凹凸パターン形成層を硬化させることができる。この態様によれば、スタンパーによるエンボス加工のサイクルが短縮される。
【0014】
また、別の態様においては、凹凸パターン受容体は、可撓性の連続支持体上に前記凹凸パターン形成層を設けてなり、当該凹凸パターン受容体を、その一端側から供給しながらスタンパーを圧接することができる。この態様によれば、連続シート状の凹凸パターン受容体を供給しながらエンボス加工を高速で連続して行うことができる。
【0015】
本発明においては、可視光の波長よりも小さい周期構造の微細凹凸パターンを形成するので、凹凸パターン形成層の厚みが0.3〜5μmであれば充分である。
【0016】
硬化性樹脂組成物は、エンボス加工時に充分な熱成形性を得るために、軟化開始温度が50℃以上であることが好ましい。
【0017】
さらに本発明においては、前記方法により作製された微細凹凸パターンのシートをキャビティ内に装着した型を用いて射出成形を行うことにより成形品の表面に微細凹凸パターンを形成する、微細凹凸パターン作製方法が提供される。
【0018】
この方法によれば、射出成形用型の微細凹凸パターン部分を交換することができるので、型の長期使用が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下において本発明を詳しく説明する。本発明は、微細凹凸の最凸部における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、
支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【0020】
(1)微細凹凸パターン
図1は、本発明により作製される微細凹凸パターンの一例(1)を模式的に示す斜視図である。このように微細凹凸パターンが密集した構造は、一般にモスアイ(Moth-eye)構造と呼ばれている。
【0021】
本発明により作製される微細凹凸パターンは、微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立する非常に微細な凹凸パターンである。
【0022】
PMAX≦λMINなる関係が成立する微細凹凸パターンが反射防止効果を発揮するのは、次のような理由による。すなわち、微細凹凸パターンを反射防止物品の表面に設けることによって、外界(空気)との境界部における急激で不連続な屈折率変化を、連続的で漸次推移する屈折率変化に変えることが可能となるため、該物品の表面における光反射が減る。
【0023】
図1〜図3は、支持体の表面に設けられた微細凹凸パターンによって得られる有効屈折率分布を概念的に説明するための図である。先ず、図1は、支持体2の表面に付与された微細凹凸パターン1について、該支持体2が、Z≦0の部分の空間を占め、該支持体の表面、すなわちZ=0におけるXY平面上に、Z軸方向を凹凸方向とする多数の微細凹凸パターン1が配置された状態を示す。
【0024】
微細凹凸パターン1は、図1の如く、その最凸部1tにおける周期をPMAXとしたときに、このPMAXが、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMIN以下としてあるため、微細凹凸パターンの形成面への到達光に対しては、媒質(支持体及び空気)の屈折率に空間的な分布があっても、それは注目する波長以下の大きさの分布であるために、その分布が直接に光に作用せず、平均化されたものとして作用する。従って、平均化された後の屈折率(有効屈折率)が光が進行するに従って連続的に変化するような分布にしておけば、光の反射を低下できる。
【0025】
なお、本発明において最凸部1tにおける周期PMAXとは、隣接しあう微細凹凸の最凸部1t,1t間の距離のうち最大の距離であって、個々の微細凹凸が規則的に配置された周期性ある構成でもよいが、周期性がない(隣接する微細凹凸間の距離が不揃い)構成であってもよい。
【0026】
そして、図1では、直交座標系として、支持体2の表面の包絡面に立てた法線方向にZ軸を、また、それと直交する平面内にX軸、Y軸をとる。そして、今、光が微細凹凸パターンの外部から内部へ入光して、微細凹凸パターンの表面近傍をZ軸の負方向に向かって進行しつつあり、丁度、Z軸座標がzのところに存在するとする。
【0027】
すると、ここのZ=zに居る光にとっては、媒体の屈折率は微細凹凸パターンのために、厳密にはZ=zにおいてZ軸と直交するXY平面内において、分布f(x,y,z)を持つように見える。すなわち、XY平面内において、微細凹凸パターンの断面部分は屈折率nb(1.5程度)、その他の部分、具体的には空気aの部分は屈折率na(1.0程度)となる(図2参照)。
【0028】
ところが実際には、光にとっては、その波長(反射防止の対象となる光の波長が分布を有する場合は、その波長帯域の最小波長λMINを考えればよい。)よりも小さな空間的スケールの屈折率分布は、平均化されたものとして作用する結果、平均化された結果の有効屈折率は、分布f(x,y,z)を前記XY平面内において積分したもの、
【0029】
【数1】
【0030】
となる。その結果、有効屈折率(nef)の分布はzのみの関数nef(z)となる(図3参照)。
【0031】
よって、もしも微細凹凸パターンにおける凸部の断面積が、凹部に向かって連続的に増大するような形状であれば、XY平面における微細凹凸パターン部分と空気部分との面積比がZ軸方向に向かって連続的に変化するため、有効屈折率(nef)はzについての連続関数になる。
【0032】
一方、一般に屈折率n0の媒質から、屈折率n1の媒質に光が入光する場合を考える。今、簡単のために、入射角θ=0°(垂直入射)を考える。但し、入射角は入射面の法線に対する角度とする。この場合、媒質界面での反射率Rは、偏光及び入射光には依存せず、下記の式(2)となる。
【0033】
【数2】
【0034】
従って、有効屈折率のZ方向への変化が連続関数であるということは、Z方向(光の進行方向)に微小距離Δz隔てた2点、Z=zにおける屈折率(nef)をn0、Z=z+Δzにおける屈折率(nef)をn1としたときに、Δz→0ならば、n1→n0となり、よって式(2)より、R→0となる。
【0035】
なお、ここで、より厳密に言うと、物体中での光の波長は、真空中の波長をλ、物体の屈折率をnとしたときに、λ/nとなり、λよりは一般にある程度小となる。但し、物体が空気の場合の屈折率は、n≒1のため、λ/n≒λと考えてよい。但し、微細凹凸パターンに使われる硬化性樹脂組成物は、通常1.5前後の屈折率であるため、屈折率nbの微細凹凸パターン中の波長(λ/nb)は、0.7λ程度となる。この点を考慮すると、微細凹凸パターンにおいて、空気の側の部分(凹部)について見れば、
PMAX≦λMIN
の条件を満たすとき、屈折率平均化による反射率低減効果が期待できる。但し、λMIN/nb≦PMAX≦λMIN
である場合は、微細凹凸パターンの部分(凸部)の寄与について見れば、屈折率平均化による反射率低減効果は、少なくとも完全には期待できない。
【0036】
しかし、それでも、空気部分における寄与のため、全体としては反射防止効果を有する。
【0037】
そして、
PMAX≦λMIN/nb
の条件までも満たす場合は、空気部分及び微細凹凸パターンの部分とも、周期PMAXが最短波長よりも小さいという条件が完全に満たされるため、屈折率平均化による反射防止効果は、より完全となる。
【0038】
具体的には、λMINを可視光波長帯域の下限380nm、nbを仮に1.5とすれば、λMIN/nbは250nm、つまりPMAXは250nm以下とすればよい。
【0039】
図4は、微細凹凸パターン1を、最凸部1tを通る面で切断した縦断面を模式的に示したものである。微細凹凸パターンは、縦断面が、図5の(A)乃至(G)となるような形状であってもよい。また、微細凹凸パターンは、二次元配置の凹凸パターンだけでなく、図6に示すように、直線溝状パターンのように一次元配置の凹凸パターンであってもよい。
【0040】
微細凹凸パターンは、これを凹凸方向と直交する面(XY平面)で切断したと仮定したときに、断面内における微細凹凸パターンの材料部分の断面積占有率が、最凸部(頂上)から最凹部(谷底)に行くに従って漸次増加していく形状、すなわち凹凸パターンの側面の少なくとも一部が、谷底に向かって広がる斜面形状であることが好ましい。特に好ましくは、水平断面の材料部分の断面積占有率が最凸部において0に収束し、最凹部において1に収束する形状とする例えば、図5の(A)、(C)、(F)及び(G)が挙げられる。
【0041】
更に図4に示すように、微細凹凸パターン1は、凸部の頂点1tを有する山側形状1Mtが、最凹部の1bを有する谷側形状1Mbに比べて、より尖った形状であることが好ましい。ここで、山側形状1Mtが谷側形状1Mbよりも「尖った形状」とは、垂直断面で単なる正弦波形状や三角形状等の、山川と谷側が同一となる中立的な形状と比べて、より尖った形状という意味である。すなわち、図4の下段に示す如く、谷側形状1Mbを上下逆さにして、山側形状1Mtと重ねて比較したときに、山側形状1Mtの高さH/2における幅Wtが、谷側形状1Mbの高さH/2における幅Wbよりも小さく、Wt<Wbとなる形状が該当する。なお、山側形状1Mtは微細凹凸パターンの材料が占める部分の形を考え、谷側形状1Mbは微細凹凸パターンの外界が示す部分の形を考える。
【0042】
微細凹凸パターンは、凹凸の高さが高いほど反射防止性能が高いとされており、照射光の波長と同一か又はそれ以上の高さであることが好ましい。そのため、狭く且つ/又は深い微細凹凸パターンを形成するために、周期及び高さの再現性が求められる。
【0043】
(2)凹凸パターン受容体
凹凸パターン受容体は、支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けたものである。この凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層に、スタンパーを圧接してエンボス加工を行うことにより、微細凹凸パターンを賦形することができる。
【0044】
凹凸パターン受容体が可撓性の連続フィルム状である場合には、凹凸パターン受容体を巻き取ってロールストック形態に巻き取り、必要に応じて保管、移動した後で、凹凸パターン受容体をロールストックから巻き戻してエンボス工程に供給しながら、連続的にエンボス加工を行うことができるので、大量生産に非常に適している。
【0045】
(3)支持体
凹凸パターン受容体の支持体は、スタンパーによるエンボス加工時に必要な機械的強度、耐熱性、可撓性等の諸物性と、微細凹凸パターンの最終的な製品形態を考慮して適宜選択される。凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成した後、支持体ごと窓材として用いる場合等には、支持体に透明性が必要となるが、微細凹凸パターンを不透明部分に付す場合等では支持体が不透明であってもよい。
【0046】
透明性を持たせ得る支持体の材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、或いは、ガラス(セラミックスを含む)等が挙げられる。
【0047】
支持体は、凹凸パターン受容体に求められる形態に応じて、可撓性のフィルム又はシート状であってもよいし、剛直なプレート状であってもよい。また、連続フィルム状であってもよいし、枚葉状であってもよい。
【0048】
また、紙等の含浸性ある支持体を用いる場合には、支持体組織内に微細凹凸パターン形成層が含浸した状態で形成されてもよく、このような状態であっても支持体上に設けられた微細凹凸パターン形成層の一形態に含まれる。
【0049】
(4)硬化性樹脂組成物
凹凸パターン形成層の材料である硬化性樹脂組成物としては、塗布、乾燥後に常温(通常10〜35℃程度の範囲)において固体状の塗膜となるものを用いる。ここで「固体状」とは高粘度状態のものを含み、(1)エンボス加工の圧接力に達しない小さな外力を付加されても非流動性であり、形成時の厚みのままで塗膜形状を維持できる形状保持性を有し、(2)凹凸パターン形成層が未硬化状態で凹凸パターン受容体を巻き取ったり積み重ねたりしても凹凸パターン形成層が損傷せず、(3)常温又はそれ以上の温度において、スタンパーの圧接により塑性変形して微細凹凸パターンを賦形することができ、エンボス加工後に常温に戻されたときに再び非流動性となって賦形された微細凹凸パターンの形状を保持できることをいう。
【0050】
凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層は、常温で高粘度又は固体状であることから、エンボス加工前にロールストック形態に巻き取ったり或いは枚葉形態で積み重ねて一時保管及び運搬することが可能であり、ロールストックから供給しながら連続エンボス加工を行うことが可能であり、更には凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接してから取り外した後で硬化させることができる。
【0051】
常温下における巻き取りや運搬等の一般的な取り扱いでは非流動性であり、しかも、同じ常温下でエンボス加工の圧力により塑性流動するような理想的な降伏値を持つ材料は入手困難であることから、通常は、常温下では高粘度又は固体状であり、適切な温度で軟化してエンボス加工可能な熱成形性を発現する硬化性樹脂組成物を用いる。硬化性樹脂組成物の軟化開始温度は50℃以上であることが好ましく、50〜80℃であることが特に好ましい。
【0052】
硬化性樹脂組成物の軟化開始温度の次の方法によって測定することができる。
すなわち、先ず、硬化性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート等の支持体に塗布し、溶剤を乾燥させて、膜厚2〜5μmの厚みで硬化性樹脂組成物を塗工したシートを作る。次に、熱機械測定装置(Thermo Mechanical Analyzer ; TMA)を用いて、ペネトレーション測定用の荷重棒(通常は、石英製である)を荷重5.0gで上記塗工シートの硬化性樹脂組成物の塗工層側に押し付けながら、0〜150℃、昇温速度5℃/minで加熱する。このペネトレーション試験から荷重棒の沈み曲線を得て、それを外挿することにより、軟化開始温度を求める。
【0053】
硬化性樹脂組成物は、エンボス加工により形成した微細凹凸パターンを固定すると共に、強度等の充分な被膜物性を得るために硬化性を必要とする。硬化性を発揮するための反応としては、例えば、光硬化性、熱硬化性等が挙げられる。光硬化性樹脂組成物は、エンボス加工のプロセス温度よりも低い温度で硬化させることができ、硬化工程でのパターン崩れを起こし難いので好ましい。また、微細凹凸パターンの適用部位に応じて、硬化性樹脂組成物には、支持体と同様に透明性が必要とされる場合がある。
【0054】
硬化性樹脂組成物は、バインダーポリマーに、必要に応じて光硬化性や熱硬化性等の硬化反応を引き起こし、促進し又は調節する成分及び他の成分を配合することにより調製される。
【0055】
バインダーポリマーは、それ自体が硬化性を有しているもの及び有していないもののいずれを用いてもよく、また、2種類以上のバインダーポリマーを組み合わせて用いても良い。バインダーポリマーが硬化性を有しない場合には、硬化性を有するモノマー又はオリゴマーを1種以上使用することで、樹脂組成物に硬化性を付与することができる。
【0056】
バインダーポリマーとしては、基材フィルム等の支持体上に塗布した時に微細凹凸パターンを賦形するのに充分な厚さの皮膜とすることができる成膜性を有すると共に、硬化後において光学物品の用途に応じて、透明性、強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性、可とう性等の一般的性質を満足する微細凹凸パターンの表面構造を形成し得るポリマーを用いる。
【0057】
例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、スチロール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
適当なバインダーポリマーとしては、アクリル樹脂;ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のアクリレート;及び、特公平4−5681号公報に記載されているようなハードセグメントとソフトセグメントを分子内に有する樹脂等が好ましく用いられる。
【0059】
上記の中でも、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、及び、ポリエステルアクリレートは特に好ましい。
【0060】
アクリル樹脂は、分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを重合させるか、又は、そのような(メタ)アクリロイル基含有モノマーの二種以上、或いは、そこにさらにビニルモノマーやアリルモノマー等のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを加えて共重合又はグラフト重合させて得られるポリマーであれば、いずれも使用できる。
【0061】
なお、本明細書中において(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
【0062】
(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状構造を有するモノマー、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート等のカルド構造を有するモノマー、(メタ)アクリロイル変性シリコーン等の離型性を有するモノマー等を挙げることができる。
【0063】
アクリル樹脂を構成する共重合モノマーとして、硬化性を有するモノマー、例えば、エポキシ基を有するモノマー、オキセタン化合物、メチロール基を有するモノマー等の熱硬化性を有するモノマーや、光二量化反応を起こす基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマー等を使用すれば、ポリマーに反応性を付与することができる。
【0064】
アクリル樹脂には、共重合の際のモノマーに光硬化性、熱硬化性等の硬化性を持つ(メタ)アクリレートを使用するほかに、さらに側鎖に官能基を導入して硬化性を付与することもできる。官能基を導入する方法としては、例えば、ウレタン変性、エポキシ変性、エステル変性等の方法がある。
【0065】
アクリル樹脂の中では、特開2000−63459号公報に記載されているようなウレタン変性アクリル樹脂が好ましい。
【0066】
ウレタン変性アクリル樹脂は、例えば、水酸基をもつアクリル樹脂に、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基をもつ(メタ)アクリレートを反応させるか、或いは逆に、イソシアネート基をもつアクリル樹脂に、水酸基をもつ(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロイル基を導入することにより得られる。
【0067】
ウレタンアクリレートは、分子中にウレタン結合と、光重合性を有する(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、いずれも使用できる。ウレタンアクリレートの中では、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレート、又は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレートが好ましい。
【0068】
特に好ましく用いられるウレタンアクリレートとして、特開平2001−329031号公報に記載されているタックフリーな皮膜を与える化合物がある。この化合物は、融点が40℃以上のイソシアネート化合物、特にイソホロンジイソシアネートの3量体と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物が挙げられる。
【0069】
ポリエステルアクリレートは、分子中にエステル結合と、光重合性を有する(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、いずれも使用できる。ポリエステルアクリレートの中では、2個以上の水酸基を有する化合物又は環状エステル化合物と多塩基酸とから合成したポリエステル化合物に、さらに(メタ)アクリロイル基を持つ化合物を反応させて得られるポリエステルアクリレートが好ましい。
【0070】
これらの中でもウレタン変性アクリル樹脂やウレタンアクリレートは、ウレタン結合を多く持っているため凝集力が高く、樹脂組成物の動的貯蔵弾性率を好ましい範囲に調整しやすいので特に好ましい。
【0071】
バインダーポリマーは、ポリスチレン換算重量平均分子量が5,000〜500,000のポリマー成分であることが好ましい。上記分子量が5,000未満の場合には、充分な成膜性が得られないばかりでなく、塗工後に室温で巻取り保管した時にブロッキングを起こし易い。また、上記分子量が500,000を超える場合には軟化しにくいために賦形性が悪くなる。
【0072】
樹脂の分子量が上記範囲にあっても常温で液状のものがあり、そのような樹脂を単独でバインダーポリマーとして用いることはできない。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステル樹脂、エラストマー等では、軟化温度が室温以下の場合もある。その場合は、常温で液状の樹脂を、常温で固体状の材料と混合し、見かけ上固体にすることで、バインダーポリマーとして用いることができる。
【0073】
むしろ、バインダーポリマーは単独で使用するよりも、常温で固体状の軟化温度が高いもの(70〜120℃程度)と、常温で液状の樹脂を混合することによって、耐ブロッキング性を維持し、且つ、適度な熱可塑性を与えて凹凸形成性を良好とすることができる。特に、アクリル樹脂と、ウレタンアクリレートの組み合わせは好ましい。
【0074】
光硬化性を有する微細凹凸パターン形成材料を調製する場合には、上記したようなバインダーポリマーの中から光重合性官能基を有するか又は有しないバインダーポリマーを選び、必要に応じて光重合性官能基を有するモノマーやオリゴマー、光重合開始剤、重合禁止剤等の光硬化系成分を配合し、さらに離型剤、有機金属カップリング剤等の他の成分を配合して調製することができる。以下において、光硬化系成分について説明する。
【0075】
光重合性官能基は、可視光又は紫外線や電子線等の電離放射線を含む放射線により重合反応して分子間に架橋結合を形成し得る官能基であり、光照射により直接活性化して光重合反応を起こすものであってもよいし、光重合性官能基と光重合開始剤を共存させて光照射した時に光重合開始剤から発生した活性種の作用により重合反応が開始、促進されるものであってもよい。光重合性官能基としては、例えば、エチレン性二重結合のような光ラジカル重合反応性を有するものや、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン構造等の光カチオン重合及び光アニオン重合反応性の有するものを例示することができ、その中でも光ラジカル重合性基、特にエチレン性二重結合が好ましい。エチレン性二重結合としては、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0076】
光硬化性樹脂組成物には、光硬化性の付与、当該樹脂組成物の粘度低下、柔軟性の付与、架橋密度の向上のために、光重合性官能基を1つ以上有する(すなわち単官能又は多官能の)モノマー又はオリゴマーを配合してもよい。
【0077】
光カチオン重合反応を利用する場合には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等を使用することができる。
【0078】
モノマー或いはオリゴマーの使用量が少なすぎる場合には、得られる硬化樹脂層の強度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性が不充分となる場合がある。一方、モノマー或いはオリゴマーの使用量が多すぎる場合には、表面タックの増大、ブロッキング、複製時の版取られ等を引き起こす場合がある。かかる観点からモノマー又はオリゴマーは、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に5〜40重量%の割合で配合することが好ましいが、モノマー又はオリゴマーを配合した組成物全体として常温で見かけ上固体になる必要がある。なお、光硬化性樹脂組成物の固形分には、溶剤以外の液状成分も含まれる。
【0079】
光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、バインダーやモノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0080】
光ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、アントラキノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド、α−クロルメチルナフタレン、アントラセン、ヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等がある。
【0081】
光カチオン開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等が挙げられる。
【0082】
光アニオン開始剤としては、例えば、1,10‐ジアミノデカンや4,4’‐トリメチレンジピペリジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト‐アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等を例示することができる。
【0083】
上記光重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.5〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。光重合開始剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。
【0085】
一方、熱硬化性を有する微細凹凸パターン形成材料を調製する場合には、上記したようなバインダーポリマーの中から熱重合性官能基を有するか又は有しないバインダーポリマーを選び、必要に応じて熱重合性官能基を有する成分、熱重合開始剤、硬化剤、安定化剤等の熱硬化系成分を配合し、さらに離型剤、有機金属カップリング剤等の他の成分を配合して調製することができる。以下において、熱硬化系成分について説明する。
【0086】
熱硬化性成分としては、熱によって架橋反応を起こす成分、或いは、ホルムアルデヒドや有機金属キレート剤等の架橋剤を添加することによって架橋反応を起こす成分ならいずれも用いることができる。樹脂系で言えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
【0087】
中でも、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。バインダーポリマーに混合される熱重合性成分としては、分子内に1つのエポキシ基を持つモノマー或いはオリゴマー、或いは分子内に2つ以上のエポキシ基を持つ(すなわち多官能の)エポキシ化合物等を使用することができる。
【0088】
また、分子内に1つ以上のエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基のような重合性不飽和結合を有するモノマー又はオリゴマーを使用すれば、熱硬化性と光硬化性を有する樹脂組成物が得られる。
【0089】
エポキシ基を有するオリゴマー或いはバインダーポリマーの一部としては、エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス−ヒドロキシ−フェニルメタン型エポキシ樹脂、その他の多官能型エポキシ樹脂等を用いることができる。また、これらの樹脂に含まれるエポキシ基の一部を(メタ)アクリロイルに置き換えたものを使用することもできる。
【0090】
さらに、熱硬化性エポキシ化合物と光硬化性成分の併用系では、モノマーとして1つ以上のカルボキシル基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基等の重合性不飽和結合を有する化合物を使用することができる。このような化合物は、1つ以上の水酸基と1つ以上の重合性不飽和結合を有するモノマーと酸無水物とのエステル化反応により得られる。
【0091】
モノマー或いはオリゴマーの使用量が少なすぎる場合には、得られる硬化樹脂層の強度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性が不充分となる場合がある。一方、モノマー或いはオリゴマーの使用量が多すぎる場合には、動的貯蔵弾性率の値が低くなって表面タックの増大、ブロッキング、複製時の版取られ等を引き起こす場合がある。かかる観点からモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量中に5〜40重量%の割合で配合するのが好ましい。なお、熱硬化性樹脂組成物の固形分には、溶剤以外の液状成分も含まれる。
【0092】
熱硬化性樹脂組成物に配合される硬化性成分の重合性官能基がエポキシ基である場合には、通常、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、触媒型硬化剤等の硬化剤を配合する。
【0093】
上記硬化剤は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜20重量%の割合で配合するのが好ましい。硬化剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
以上において特に光硬化系及び熱硬化系の構成成分について説明したが、硬化性樹脂組成物には、当該組成物の硬化方法に合わせて、適宜選択して反応開始剤、硬化剤、安定化剤等の反応硬化系を構成する添加剤を配合することができる。
それらの添加剤は1種のみを単独で用いても良いし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0095】
硬化性樹脂組成物には、離型剤や有機金属カップリング剤等のその他の成分を配合しても良い。
【0096】
硬化性樹脂組成物に離型剤を配合することにより、硬化性樹脂組成物の層に押し付けたスタンパーを取り外す時に樹脂の版取られを防止し、スタンパーを長期間連続して使用(反復エンボス性)することができるようになる。
【0097】
離型剤を配合することで、硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布して形成した塗膜表面の水の接触角が硬化前において90°以上、更に好ましくは100°以上となる場合には、スタンパーからの離型性が良好となる。
【0098】
離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等が何れも使用可能である。
【0099】
特に好ましいのはシリコーン系離型剤であり、ポリシロキサン、変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等がある。
【0100】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、例えばアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、フッ素変性等が挙げられる。一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0101】
シリコーン系アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル変性シリコーンオイルや、ケイ素を含有するモノマーを共重合或いはグラフト化したアクリル樹脂が用いられる。
【0102】
上記シリコーン系離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0103】
離型剤は、硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜30重量%の割合で配合するのが好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、スタンパーと硬化性樹脂層の離型性が不十分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身及び近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
【0104】
硬化性樹脂組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0105】
有機金属カップリング剤は、硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜15重量%の割合で配合するのが好ましい。有機金属カップリング剤の割合が上記範囲未満では、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与効果が不充分である。一方、有機金属カップリング剤の割合が上記範囲を超えると、組成物の安定性、成膜性が損なわれるおそれがある。
【0106】
凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接した時の賦形性、凹凸パターン形成層からスタンパー取り外した後の形状保持性を向上させるための方法としては、例えば、ウレタン結合を多く持つポリマーやオリゴマーのように凝集力の高い樹脂をバインダー樹脂として用いる方法、有機溶媒にコロイド状に分散させることが可能な無機微粒子(例えば金属酸化物微粒子)、その中でも好ましくは嵩高い微粒子を硬化性樹脂組成物に添加する方法、或いは、微粒子同士で又はバインダーポリマー等の硬化性成分との間で共有結合等の化学結合を形成し得る微粒子を硬化性樹脂組成物に添加する方法、さらには、上記方法のうち2以上の任意の組み合わせが効果的である。
【0107】
無機微粒子は、塗膜に充分な透明性を確保するために、いわゆる超微粒子サイズのものを用いる。ここで「超微粒子」とはサブミクロンオーダーの粒子のことであり、一般的に「微粒子」と呼ばれている数μmから数100μmの粒子径を有する粒子よりも粒子径の小さいものを意味している。本発明において用いられる無機微粒子の具体的なサイズは、硬化性樹脂組成物が適用される光学物品の用途及びグレードによっても相違するが、一般的には一次粒子径が1nm〜300nmの範囲のものを用いるのが好ましい。一次粒子径が1nm未満では、樹脂組成物のクリープ特性を充分に向上させることが困難になり、一方、一次粒子径が300nmを超えると、樹脂の透明性が損なわれ光学用物品の用途によっては透明性が不充分となる場合がある。
【0108】
無機微粒子の具体例としては、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3等の金属酸化物微粒子を挙げることができ、これらの中から上記したようにコロイド状分散可能で且つサブミクロンオーダーの粒子サイズを有するものを選択して用いるのが好ましく、特に、コロイダルシリカ(SiO2)微粒子を用いるのが好ましい。
【0109】
無機微粒子は、硬化性樹脂組成物の固形分全量中に1〜70重量%の割合で配合するのが好ましく、1〜50重量%の割合で配合するのが特に好ましい。無機微粒子の割合が1重量%未満では、樹脂組成物のクリープ特性を充分に向上させることが困難になり、一方、無機微粒子の割合が70重量%を超えると、脆質性が顕著になり、露光硬化後に充分な強度や表面硬度が得られにくくなる。
【0110】
無機微粒子は、どのような形状であってもよいが、針状等の嵩高い形状のものが好ましい。針状微粒子としては、例えば、太さが5〜20nmで、長さが40〜300nmのものを用いることができる。
【0111】
微粒子同士で又はバインダーポリマー等の硬化性成分との間で共有結合等の化学結合を形成させるため、表面に(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基を導入した無機微粒子を使用することができる。
【0112】
硬化性樹脂組成物は、通常、希釈溶剤を用いて塗布液の状態に調製し、凹凸パターン形成層の形成に用いる。上記したような各材料を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、またはそれらの混合溶剤に溶解、分散することにより、塗布液を調製することができる。塗布液は、通常、固形分濃度が10〜50重量%程度となるように調節される。
【0113】
(5)凹凸パターン受容体の作製
上記硬化性樹脂組成物を基材フィルム等の支持体の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させて微細凹凸パターン形成層を形成することにより、凹凸パターン受容体が作製される。
【0114】
微細凹凸パターンは光の波長以下の周期構造をもつ非常に微細なパターンであることから、凹凸パターン形成層の厚さは、通常0.3〜5μm程度で充分であり、0.5〜3μmの範囲であることが好ましい。
【0115】
凹凸パターン形成層は、実用上乾燥したと認められる程度の溶剤の混入は許容される。一般的に、凹凸パターン形成層中の溶剤の残留量が5重量%以下であれば、乾燥状態とみなすことができる。作製した凹凸パターン受容体は再び巻き取られてロールストックとされ、保存又は運搬される。
【0116】
連続フィルム状の凹凸パターン受容体を作製する一例を示すと、先ず、ポリエチレンテレフタレート等の連続プラスチックからなる基材フィルム(支持体)をロールストックから繰り出す。繰り出した基材フィルムの上に、光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成材料をグラビアコーターを用いて塗布し、次いで、組成物に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて微細凹凸パターン形成層を形成してタイプの凹凸パターン受容体を作製する。上記グラビアコーター以外の塗工機としては、例えばロールコーター、カーテンコーター、フローコーター、リップコーター、ドクターブレードコーター等も使用できる。
【0117】
支持体に微細凹凸パターン形成層を塗工する前後に、或いは、微細凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成する前後に、必要に応じてアンカー層やオーバーコート層等の他の層を形成してもよい。
【0118】
(6)スタンパー
スタンパーとしては、微細凹凸形状を最初に造形した原型は用いずに、該原型から1回、或いは2回以上の型取・反転による複製工程を経て作製した複製型を用いるのが好ましい。つまり、最初に一旦、原型(これを原版、或いはマザー版とも呼ぶ)を作製した後、この原型から複製型を作製する複製操作を1回又は2回以上行い、その結果、得られた複製型(これを本版、或いはマスター版とも呼ぶ)をスタンパーとして使用する。この様な複製型のスタンパーは原型から容易に再作製できるので、工業的生産性、コスト等に優れており、例えば、スタンパーが傷ついた場合の交換が容易である。
【0119】
賦形型の元となる原型としては、必要な微細凹凸が形成されているものであれば、その作製方法には基本的には特に限定はなく、生産性、コスト等を考慮して適宜なものを使用すれば良い。原型の作製は、微細凹凸を賦形する為の凹凸形状を最初に造形する工程であり、半導体分野等に於ける微細加工技術、すなわち、光(電子ビームを含む)をパターン形成に利用する所謂露光法を利用できる。但し、半導体の場合は、凹凸形状はその側面が通常垂直面で良く、本発明の如く斜面にする必要は特に無いため、本発明では、山側が谷側よりも尖った形状となる様な斜面が形成できる様にして微細加工する。
【0120】
露光法に該当する微細加工技術としては、例えば、電子線描画法を利用できる。この方法による作製方法の一例を示せば、石英ガラス上にクロム膜(1100Å厚)を成膜後、更にスピンコートにてレジストを4000Å厚に塗布した後、電子線描画装置にて周期300nmのメッシュ状の描画データを用いて描画し、現像液を用い現像処理を施す。描画条件は5〜8μC/cm2である。これにより、描画データの斜線領域に対応する領域が現像により開口する。次いで、レジストの開口から露出している金属クロム膜を、塩素系のガスを用いてドライエッチングして、これを開口する。尚、金属クロム膜のドライエッチングにはUnaxis社製ドライエッチング装置「VERSALOCK7000」が使用できる。次いで、レジストと金属クロム膜を耐エッチング層として、フッ素系のガスを用いて石英ガラスのドライエッチングを行えば、所望の微細凹凸形状が得られる。尚、加工用素材(石英ガラス)のドライエッチングには、日本真空株式会社製「MEPS−6025D」が使用できる。
【0121】
また、レジスト膜へのパターン形成に際しては、電子線描画法の他の露光法として、レーザ描画法も利用できる。レーザ描画法では、ホログラム、回折格子等の作製等に利用されているレーザ干渉法が利用できる。回折格子の場合は、一次元的配置であるが、角度を変えて多重露光すれば、二次元配置も可能となる。
【0122】
この方法による作製方法の一例を示せば、ガラス表面にレジスト(シプレイ社製のフォトレジスト「S1805」等)をスピンコートした後、2方向露光を角度を変えて2回行う。1回の露光量は80〜200mJである。これを20〜505%に希釈した現像液(例えば、シプレイ社製の「Developer CONC」等)で現像すれば、所望の微細凹凸形状が得られる。
【0123】
尚、上記レーザ干渉法では、得られる微細凹凸は、通常規則的配置となるが、これに対して、前記電子線描画法では、予め所定の描画パターン情報を記憶装置にデジタルデータとして記憶しておき、該描画パターン情報により、走査する電子線のON、OFF、乃至は強弱を変調する。その為、規則配置の他にも、不規則配置も可能である。また、レーザ描画法及び電子線描画法には各々長所、短所が有る為、設計諸元、目的、生産性等を考慮の上、適宜な手法及び条件を選択する。
【0124】
次に、上記原型からスタンパーとして使用する複製型を作製する方法としては、電鋳法や2P法等の公知の方法がある。
【0125】
電鋳法の場合、原型にニッケル等の金属めっきを行って、めっき層を剥がせば金属製の複製型を作製できる。或いは、この複製型にもう一度めっきして、再度複製した型をスタンパーとするなど、2以上の多数回の複製操作を経てスタンパーを作製しても良い。尚、スタンパーの形態としては、板状、シート状、ブロック状等があり得、反射防止物品の形状、用途等に応じて適宜選択すればよい。尚、スタンパーは、上記ニッケルの如き金属性でも良いが、シリコーン樹脂等の樹脂製のものを使用しても良い。例えば、樹脂からなるシート状で連続帯状も可能なスタンパーである。
【0126】
尚、1回の複製操作で、微細凹凸の山と谷が逆転するので、複製操作の回数によっては、最初の原型では目的とする微細凹凸とは逆凹凸形状として造形しておく場合もある。
【0127】
2P法の場合、原型に紫外線等の電離放射線硬化型の樹脂を滴下し、フィルム等の可撓性のある基材を圧接するか、或いは逆に、基材に樹脂を滴下し、原型をその上から圧接する。その後、フィルム側から紫外線等の電離放射線を照射して樹脂を硬化させ、フィルムを剥離することにより、凹凸パターンをもつフィルムが得られる。
【0128】
別の方法としては、本発明のような常温で固体の硬化性樹脂を用い、後述する微細凹凸パターンの作製方法と同様にしてスタンパーを作製してもよい。さらに、上記の方法を組み合わせて、複数の複製操作を続けて行なってスタンパーを作製することも可能である。
【0129】
(7)微細凹凸パターンの作製
凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層の表面にスタンパーを圧接して微細凹凸パターンを形成した後、凹凸パターン形成層を露光又は加熱等の適切な方法で硬化させることにより、微細凹凸パターンを作製することができる。
【0130】
図7は、連続シート状の凹凸パターン受容体を用いて、微細凹凸パターンを連続生産する方法の一例を示した図である。図7において、連続シート状の凹凸パターン受容体3は、ロールストック4から巻き戻され、支持ローラ5により搬送されてエンボス工程に供給される。エンボス工程内の搬送路上には、作製すべき微細凹凸パターンを反転させたキャビティ形状を有するスタンパー6を周面に装着した金属ローラー7aとペーパーロール7bよりなる一対のエンボスローラー7が設置されている。凹凸パターン受容体がエンボスローラーの間を通過する時に、凹凸パターン形成層にスタンパーが圧接され、微細凹凸パターン1が形成される。
【0131】
多くの場合、凹凸パターン形成層は、常温ではスタンパーの圧接により賦形できるほどの塑性を有していないので、通常は、微細凹凸パターン形成層を適切な温度に加熱して軟化させた状態でスタンパーを圧接することにより、スタンパーのキャビティ内の隅々まで入り込ませる。
【0132】
スタンパーによる圧接前に凹凸パターン形成層を予熱しても良いが、生産性の点からエンボスローラーを加熱して熱ロールを行なうことが好ましい。熱ロールは、例えば、熱ロール温度100〜200℃、プレス圧5×103〜5×106Paで行なう。この範囲のプレス条件でエンボス加工を行う場合には、凹凸パターン形成層の樹脂温度が60〜80℃の温度域内又はその付近の温度に調節される。
【0133】
熱ロール温度が高すぎる場合には、エンボス加工を高速で行うことができるが、基材フィルムのダメージが大きくなる。また、熱ロール温度が低すぎる場合には、樹脂温度を上昇させるのに時間がかかるので、エンボス工程が遅くなる。
【0134】
エンボス加工は片面エンボスで十分であるが、両面エンボスでもよい。エンボスに当たっては、エンボスロールの温度設定が重要であり、エンボス形状を再現する観点からは比較的高温で、比較的高い圧力でエンボスするのが好ましいが、エンボス版への付着を防止するためには比較的低い圧力でエンボスするのが好ましく、全く逆の関係となる。また、有効に作用する熱容量から考えた場合は、複製するフイルムの搬送速度も重要である。樹脂組成物のエンボスロールへの付着を低減するためには、離型剤の選定も重要である。
【0135】
連続シート状の凹凸パターン受容体がエンボスローラーの間を通過すると、エンボスローラーは、連続シート状凹凸パターン受容体の供給速度に合わせて回転し、凹凸パターン形成層上にエンボス加工が繰り返され、微細凹凸パターン1が連続的に賦形される。
【0136】
凹凸パターン受容体がエンボスローラーの間を通過すると、凹凸パターン形成層の微細凹凸パターンが賦形された部分はスタンパーから引き剥がされ、硬化工程が行われる。凹凸パターン形成層が光硬化性樹脂からなる場合には光照射により、また、凹凸パターン形成層が熱硬化性樹脂からなる場合には加熱により硬化させる。
【0137】
この例では、光硬化性樹脂からなる凹凸パターン形成層を、照射源8を用いて光硬化させる。硬化に用いる光としては、高エネルギー電離放射線及び紫外線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。
【0138】
光照射や加熱等による凹凸パターン形成層の硬化は、スタンパーを圧接したままの状態で行なっても良いが、スタンパーを外した後で硬化を行うことにより、圧接工程と硬化工程を独立並行して行うことが好ましい。圧接工程と硬化工程を分離することにより、スタンパーの稼働率が高くなり、しかも、凹凸パターン形成層の表面に直接且つ均一に光照射を行うことにより硬化作業の効率も上がるので、生産性が高い。
【0139】
もしも2P法で同様の微細凹凸パターンを作製する場合には、液状の高い硬化性樹脂組成物を用いるので、塗布工程とスタンパーによる圧接工程を連続して行なわなければならず、さらに、スタンパーを圧接した状態で光照射等による一次硬化を同時に行う必要がある。特に、2P法ではスタンパーを圧接した状態で光照射等による一次硬化を行うため、高速で均一に賦形処理を行うことが困難である。また、2P法では、流動性の高い凹凸パターン形成層に形成した微細凹凸パターンの形状を保持する目的で、凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接した状態で一次硬化(予備照射、予備加熱)させるが、スタンパーのキャビティ内で完全に硬化させると、スタンパーからはがし難くなり、賦形処理の速度が落ちる。
【0140】
これに対して本発明の方法は、常温で固体状の硬化性樹脂組成物を用いるので、2P法により生じる不都合はなく、ロールストックから凹凸パターン受容体を高速で連続的に供給する大量生産が可能である。
【0141】
硬化後、微細凹凸パターンの上には、必要に応じて、さらに耐擦傷性や耐汚染性を高めるための透明保護膜や接着剤層を付加してもよい。
【0142】
図7の方法で得られた連続シート状の微細凹凸パターンは、再び巻き取ってロールストック9としてもよいし、枚葉状に切断してもよい。
【0143】
図8は、連続シート状の凹凸パターン受容体を用いて微細凹凸パターンを連続生産する別の方法を示した図である。図8において、連続シート状の凹凸パターン受容体3は、ロールストック4から巻き戻され、支持ローラ5により搬送されてエンボス工程に供給される。
【0144】
エンボス工程内の搬送路上には、作製すべき微細凹凸パターンを反転させたキャビティ形状を有するスタンパー6を360度全周に渡って装着した金属ローラー7aと、凹凸パターン受容体3が金属ローラー7aと密着する段階の前半(好ましくは密着を開始した直後)の位置において凹凸パターン受容体3を金属ローラー7aに押しつける圧接ローラー7cと、凹凸パターン受容体3が金属ローラー7aと密着する段階の後半(好ましくは密着が終了する直前)において凹凸パターン受容体3を金属ローラー7aに押しつける圧接ローラー7dよりなる一組のエンボスローラー7が設置されている。
【0145】
金属ローラー7aの回転軸は、凹凸パターン受容体3の搬送路の高さからオフセットされている。そのため、微細凹凸パターン受容体3は、金属ローラーの周面と線接触するのではなく、面接触し、スタンパー6による賦形を充分に行うことができる。凹凸パターン受容体3の搬送路と金属ローラー7aの高低差は、凹凸パターン受容体3が、金属ローラー7aの周面と広い面積で接触できるように調節することが好ましい。
【0146】
凹凸パターン形成層を加熱により軟化したい場合には、金属ローラー7a又は前半部の圧接ローラー7c、或いは、その両方を加熱して熱ロールを行なうことができる。この場合の熱ロール温度、プレス圧、凹凸パターン形成層の樹脂温度等の条件は、上述した図6と同様である。
【0147】
また、後半部の圧接ローラー7dを必要に応じて冷却ロールとすることで、軟化した凹凸パターン形成層を冷却し、エンボス加工後の形状維持性を改善することができる。
【0148】
凹凸パターン受容体3の凹凸パターン形成層は、スタンパーに圧接されている状態で光照射や加熱等により予備的に半硬化させてもよい。凹凸パターン形成層を予備硬化させると、スタンパーを剥がした後、本硬化を行なうまでの間の型崩れが生じにくくなり、形状維持性を改善することができる。この例では、光硬化性樹脂からなる凹凸パターン形成層を照射源10により予備硬化させる。
【0149】
凹凸パターン受容体3が金属ローラー7aと後半の圧接ローラー7dの間を通過すると、凹凸パターン形成層の微細凹凸パターン1が賦形された部分はスタンパーから引き剥がされ、硬化工程において光照射や加熱等により硬化させる。この例では、光硬化性樹脂からなる凹凸パターン形成層を、照射源8を用いて硬化させる。
【0150】
(8)微細凹凸パターンの利用
本発明により得られる微細凹凸パターンは、微細凹凸パターンが賦形された層(微細凹凸パターン層)を支持体上に設けた厚みの薄い製品であり、反射防止機能を備えている。これを、反射防止フィルム、反射防止板として用い、反射防止性能を付与したい物品の表面に積層又は配置して反射防止物品を作製することができる。
【0151】
また、本発明の方法によれば非常に高い精度で微細凹凸パターンを複製できるので、反射防止作用を有する微細凹凸パターンの原型から相補的な微細凹凸パターンを作製し、これをエンボス加工や射出成形の型として用いて反射防止作用を有する微細凹凸パターンを複製することができる。
【0152】
射出成形に利用する場合には、本発明の方法により得られる微細凹凸パターンのシートを、例えば、射出成形用の型のキャビティ内に装着し、射出成形を行うことで、成形品の表面に微細凹凸パターンを形成することができる。この方法により、例えば、携帯電話の窓材等のプラスチック製の反射防止物品を成形することができる。
【0153】
射出成形の型は、樹脂で埋まったり、変形を起こして使えなくなることがあるが、型の作製には時間がかかり、高価である。特に型内面の微細凹凸パターンの部分は高い精度が求められるため、この部分の僅かな損傷により型が使用不可能になる。これに対し、本発明の方法により得られる微細凹凸パターンのシートを、型の微細凹凸パターン部分として用い、射出成形を数回行なうごとに微細凹凸パターンシートを交換することで、型の長期使用が可能となり、射出成形品を安価に製造することができる。
【0154】
(9)反射防止物品
微細凹凸パターンシートの貼着や微細凹凸パターンシートを用いる射出成形等の方法で作製した反射防止物品の形状は、三次元形状、板、シート等任意であり、用途も特に限定されるものではない。その反射防止表面の微細凹凸は、極めて微細であるが故に、汚れや傷等の損傷を避けるために、微細凹凸は好ましくは外面には露出させず、内面に設けられる用途、或いは、装置内部に設けられる用途等が好適である。
【0155】
反射防止物品の例としては、携帯電話等の各種機器に於ける情報表示部の窓材がある。これら表示部では、LCD等の表示パネルの前面に、板や成形品等となった樹脂製の窓材が配置される。窓材としての反射防止物品は、外側は露出する為に傷や汚れへの耐性の点で微細凹凸は設けず、内側(裏面側)に該微細凹凸を設けたものとするのが好ましい。尚、情報表示部は、LCD等の表示パネル以外に、時計に代表される機械式アナログメータ等の様な機械的手段で表示するものでもよく、これらの窓材でも良い。
【0156】
尚、窓材は、平板状もあるが、組み付けやデザイン上の観点から周囲に突起等を有する物もある。
【0157】
尚、上記のような窓付き情報表示部を有する機器としては、携帯電話、時計の他にも、パーソナルコンピュータ、電子手帳等のPDA乃至は携帯情報端末、電卓、或いは、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、MDプレーヤ、半導体メモリ方式音楽プレーヤ等の各種携帯型音楽プレーヤ、或いは、ビデオテープレコーダ、ICレコーダ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ラベルプリンタ等の電子機器、或いは、電気炊飯器、電気ポット、洗濯機等の電気製品がある。
【0158】
また、板状やシート状の反射防止物品に於いては、透明タッチパネル等に使用する透明板等の透明な基材が挙げられる。透明タッチパネルは、表示部に入力機能を付加するものであるが、該製品組立上、LCD,CRT等の表示パネルと別物品として組み付けるので、表示パネルと透明タッチパネル間に空隙が残り、光反射が生じる。そこで、透明タッチパネルの裏面側を成す透明な基材を、その裏面を本発明特有の微細凹凸を設けた反射防止物品をすれば、光反射が防げる。
【0159】
尚、透明タッチパネルは、例えば、電子手帳等のPDA乃至は携帯情報端末(機器)、或いは、カーナビゲーションシステム、POS(販売時点情報管理)端末、携帯型オーダー入力端末、ATM(現金自動預金支払兼用機)、ファクシミリ、固定電話端末、携帯電話機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、パソコン、パソコン用ディスプレイ、テレビジョン受像機、テレビ用モニターディスプレイ、券売機、計測機器、電卓、電子楽器等の電子機器、複写機、ECR(金銭登録機)等の事務器、或いは、洗濯機、電子レンジ等の電気製品に使用される。
【0160】
また、反射防止物品の用途としては各種光学素子等も挙げられる。例えば、写真機のレンズ、写真機のファインダの窓材、眼鏡のレンズ、オーバーヘッドプロジェクタのフレネルレンズ、光センサの光入力窓、望遠鏡のレンズ、或いは、CD、DVD等の光ディスクのピックアップレンズ、レーザ装置の出力窓、等が挙げられる。
【0161】
【実施例】
1.凹凸パターン形成用材料の調製
(1)凹凸パターン形成用材料1
a)ウレタン変性アクリルポリマーの製造
冷却器、滴下ロート及び温度計付きの2リットルの四つ口フラスコに、トルエン40g及びメチルエチルケトン40gをアゾ系の重合開始剤と共に仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート22.4g、メチルメタクリレート53.4g、イソボルニルメタクリレート13.9g、トルエン30g、及び、メチルエチルケトン20gの混合液を滴下ロートを経て、約2時間かけて滴下させながら100〜110℃の温度下で8時間反応させた後、室温まで冷却した。これに、2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工製、カレンズMOI)27.8g、トルエン20g及びメチルエチルケトン20gの混合液を加えて、ラウリン酸ジブチル錫を触媒として付加反応させた。反応生成物のIR分析により、2,200cm-1の吸収ピークの消失を確認し、反応を終了した。
【0162】
得られたウレタン変性アクリルポリマー溶液の固形分は40.3重量%、分子量はポリスチレン換算で30,000、炭素間二重結合(C=C)の導入量は12.5%であった。
【0163】
b)光硬化性樹脂組成物の調製
上記ウレタン変性アクリルポリマー溶液及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例1の凹凸パターン形成用材料1を調製した。
【0164】
<凹凸パターン形成用材料1>
・ウレタン変性アクリルポリマー溶液:58重量部(固形分基準)
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製):25重量部
・コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスIPA−ST−UP、日産化学工業製):7.5重量部(固形分基準)
・シリコーンレジン(商品名:X−21−3056、信越化学工業製):5重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ):4重量部
(2)凹凸パターン形成用材料2
実施例1で製造したウレタン変性アクリルポリマー溶液及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例2の凹凸パターン形成用材料2を調製した。
【0165】
<凹凸パターン形成用材料2>
・ウレタン変性アクリルポリマー溶液:43重量部(固形分基準)
・アクリル系グラフトポリマー溶液(商品名:ケミトリーL−40M、綜研化学製):30重量部
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製):18重量部
・シリコーンレジン(商品名:X−21−3056、信越化学工業製):5重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ):4重量部
(3)比較例の凹凸パターン形成用材料C1
実施例1で製造したウレタン変性アクリルポリマー溶液及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、凹凸パターン形成用材料C1を調製した。
【0166】
<凹凸パターン形成用材料C1>
・ウレタン変性アクリルポリマー溶液:67重量部(固形分基準)
・多官能オリゴマー(商品名KAYARAD DPHA、日本化薬製):28重量部
・シリコーンレジン(商品名:X−21−3056、信越化学工業製):1重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ):4重量部
2.複製用マスター版の作製
<マスター版(1)>
152.4mm(6インチ)角で6.35mm厚の合成石英の一面に金属クロム膜を形成したフォトマスク用の基板を用意し、その金属クロム膜上にポジ型のEBレジスト(商品名「ZEP7000」、日本ゼオン(株)製)をスピンコートしてレジスト層を形成した後、電子線描画装置にて縦横の周期300nmのメッシュ状の描画データを用いて描画し、所定の現像液を用い現像処理を施した。
その結果、描画データのメッシュ開口領域に対応する領域が現像により開口したレジストパターン層が形成された。次いで、該レジストパターン層の開口部から露出している金属クロム膜を塩素系ガスを用いてドライエッチングして、該金属クロム膜を開口した。なお、金属クロム膜のドライエッチングにはUnaxis社製ドライエッチング装置「VERSALOCK 7000」を用いた。
【0167】
次いで、レジストパターン層と金属クロム層を耐エッチング層として、フッ素系ガスを用いて基板のドライエッチングを行い、凸部の山側が凹部の谷側よりも尖った所望の微細凹凸形状が形成された原型(マザー版)を得た。なお、基板のドライエッチングには、日本真空(株)製「MEPS-6025D」を用いた。
【0168】
キャビティ内面の形状は、高さHMINが250nm、周期PMAXが300nmの凸部が、図1の如く多数、縦横に正方格子状に規則正しく配列し、山側が谷側よりも尖った形状(高さH/2に於ける山側の幅Wt100nm、谷側の幅Wb200nm)の微細凹凸形状であった。
【0169】
次に、この原型から、電気めっき法によって、厚さ80μmのニッケルめっきプレートからなるシート状の複製型(マスター版(1))を作製し、スタンパーとして用いた。これは、谷側が山側よりも尖った形状を持つ。
【0170】
<マスター版(2)>
スタンパーとして用いるマスター版の複製を、原型から1回の複製操作で直接行なうのではなく、2回の複製操作で行なった。具体的には、上記マスター版(1)を複製型として、マスター版(1)の場合と同様に、電気めっき法によって厚さ80μmのニッケルめっきプレートからなるシート状のマスター版(2)を作製し、これをスタンパーとした。
【0171】
マスター版(2)のキャビティ形状は、マスター版(1)の微細凹凸パターン形状と同様であるが、個々の微細凹凸は正逆反転しており、山側が谷側よりも尖った形状であった。
【0172】
<樹脂製マスター版(3)及び(4)>
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材の片面に、2P法によって、表面に所定の微細凹凸を有する微細凹凸層を形成し、樹脂製のマスター版(3)及び(4)とした。
【0173】
具体的には、前記基材の片面に紫外線硬化型の電離放射線硬化性樹脂をポッティングした後、その樹脂塊の上からマスター版(1)を押しつけて樹脂を版面に行き渡らせ、圧着させたままの状態で基材側から高圧水銀灯で紫外線を照射して樹脂を光重合により硬化させた後、マスター版(1)を剥がし、シート状の樹脂製マスター版(3)を得た。硬化後の樹脂膜厚は2μmであった。同様の方法で、マスター版(2)から作製した樹脂製マスター版(4)を作製した。
【0174】
3.実施例1、2
(1)複製テスト
厚み25μm、幅650mm、長さ3000mのポリエチレンテレフタレートのロール状フィルム(ダイヤホイルT600E、U−36(商品名):三菱ポリエステルフィルム製)のロール状フィルムに、グラビアコーターによって、上記凹凸パターン形成用材料1又は2を塗布し、次いで100℃に設定した加熱炉内で約30秒間乾燥させ、凹凸パターン形成層を形成して巻き取った。塗布量は、2g/m2であった。巻き取ったフィルムにブロッキングは起きていなかった。
【0175】
凹凸パターン形成層を形成した巻取り体を、微細凹凸パターンエンボス機のロールストックに設置した。マスター版(1)を金属ロールに巻きつけ、5kg/cm2、温度130〜150℃のヒートローラーで押圧することにより、微細凹凸パターンを形成した。エンボス速度を1m/min、3m/min、5m/minとして行った。低速の場合は温度を低めに調節し、高速の場合は高めに調節した。いずれの場合も、樹脂がマスター版に十分流れ込むことを、フィルムの裏面から確認し、また、樹脂がマスター版に移行しないような条件を選定することが必要である。
【0176】
マスター版(4)についても、同様のエンボスを行った。
【0177】
エンボス後、パターンから剥離して、続く紫外線照射ゾーンに導き、積算露光量が800mJになるような条件で硬化させ、巻き取った。
(2)反射率測定
得られた微細凹凸パターンフィルムの裏面を遮光し、5°の入射角から可視光を入射し、その反対光の反射率(波長650nm)を測定した。反射率の値を表に示す(単位%)。
【0178】
エンボスを形成していないフィルムの反射率は、3.0%以上であり、凹凸パターンを形成することによって、反射防止性能を付与することができた。
【0179】
【表1】
【0180】
実施例で作製した微細凹凸パターンをAFMによって観察した。いずれも、谷側よりも山側の方が尖っており、周期300nm、高さ200nm以上の規則的な凹凸が形成されていた。
【0181】
4.比較例1
凹凸パターン形成用材料C1とマスター版(1)及び(4)を用いて、実施例1と同様の方法で微細凹凸パターンの複製テストを行ったところ、同じ条件ではマスター版へ樹脂が移行してしまい、エンボスをすることができなかった。
【0182】
そこでマスター版(1)を用い、マスター版へ樹脂が移行しないような温度条件として、100℃にヒートロールを調整して速度5m/minエンボスを行ったところ、反射率は1.2%であった。ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、反射率は低減されており、反射防止の効果が認められるが、実施例で作製したフィルムよりは反射率が高かった。実施例よりも反射率が高かった原因は、ヒートロールの温度が低くなったために凹凸パターン形成用材料がマスター版の内部へ充分に流れ込まなくなったためと考えられる。
【0183】
凹凸パターンをAFMで観察した結果、高さが125nm、周期300nmの凹凸であることが確認された。
【0184】
5.実施例3
実施例1の複製テストと同様の方法で、凹凸パターン形成用材料1を用いて凹凸パターン形成層を作製した巻取り体に、マスター版(2)を用いて微細凹凸パターンを形成し、微細凹凸パターンのシートを作製した。マスター版(3)についても、同様の複製テストを行った。
【0185】
複製品の凹凸パターンをAFMで観察したところ、いずれも、山側よりも谷側の方が尖った形状であった。
【0186】
続いて、得られた微細凹凸パターンのシートを射出成形機の金型部に貼り付け、ポリメチルメタクリレート樹脂を溶融させて射出成形を行い、微細凹凸パターンを持つアクリル樹脂成形品を得た。射出成形開始前と、10回の射出成形を行った後で微細凹凸パターンシートの凹凸の高さをAFMで調べたところ、いずれのシートも高さの変化は5%以内であり、射出成形時に耐熱性があることが確認された。
【0187】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明に係る微細凹凸パターン作成方法によれば、光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する微細凹凸パターンを正確に且つ効率良く作製することができる。
【0188】
特に、本発明の方法は、連続フィルム状の凹凸パターン受容体を用い、連続エンボス加工を行うことが可能であり、反射防止性能を発揮する微細凹凸パターンを高速で大量生産する方法として適しており、反射防止物品に広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により作製される微細凹凸パターンの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】微細凹凸パターンによって得られる有効屈折率の分布を概念的に説明するための図である。
【図3】微細凹凸パターンによって得られる有効屈折率の分布を概念的に説明するための図である。
【図4】微細凹凸パターンの縦断面を模式的に示した図である。
【図5】微細凹凸パターンの形状の例示である。
【図6】微細凹凸パターンの形状の例示である。
【図7】本発明に係る微細凹凸パターン作成方法の一例を説明するための図である。
【図8】本発明に係る微細凹凸パターン作成方法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…微細凹凸パターン
2…支持体
3…凹凸パターン受容体
4…ロールストック
5…支持ローラー
6…スタンパー
7a…金属ローラー
7b…ペーパーローラー
7c…圧接ローラー
7d…圧接ローラー
8…照射源
9…ロールストック
10…照射源(予備硬化)
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射防止性能を有する微細凹凸パターンを作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レリーフホログラムや回折格子のような微細凹凸パターンを物品の表面に設けることによって、当該物品の表面に光学的機能を付与することが知られている。
近年では、精密加工技術の向上に伴って、非常に微細又は複雑な光学的微細パターンが形成されるようになり、物品表面の光学的性質を高度に制御することが可能になってきた。このような非常に微細又は複雑な微細凹凸パターンは、従来の比較的単純なホログラムと比べて凹凸の周期がより小さく、且つ/又は、凹凸の深さがより深く、更に、より高い形状精度が求められる。
【0003】
特許文献1には、繰返し周期が光の波長以下の極めて微細な微細凹凸を物品の表面に設けることによって、表面反射率を減少させる技術が記載されている。この特許文献1には、ガラス製レンズ等の光学物品の表面にフォトレジスト等を塗布し、露光し、現像することによりレジストパターンを形成し、該レジストパターンの露出部を腐食することで、光学物品の表面に一品ごとに直接、微細凹凸を形成することが記載されている。しかしながら、この方法では、非常に生産性が悪い。
【0004】
複製型を利用して光学的機能を有する表面構造を効率良く生産する方法としては、液状の光硬化性樹脂組成物をポリエステルフイルム等の透明な支持体上に塗布して液状の光硬化性樹脂層を形成し、その上に微細凹凸を有するスタンパーを圧接した状態で支持体側から光照射を行って硬化させた後でスタンパーを取り外す、いわゆる2P法(Photo Polymerization法)がある(例えば特許文献2)。
【0005】
しかし、2P法においては、支持体裏面側から光を照射するので支持体が光吸収性を有する場合には硬化不足となる、硬化が完了するまでスタンパーを取り外せないので工程に時間がかかる、光硬化性樹脂層が液状なので圧接したスタンパーとの間に気泡が入り欠陥になりやすい、或いは、硬化した樹脂層からスタンパーを引き剥がす時に樹脂層表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こす等の問題がある。
【0006】
特許文献3には、別の方法として、支持体上に熱成形性を有し固体状の紫外線又は電子線硬化樹脂層を設け、その上にホログラム原版を圧接した後、紫外線又は電子線の照射により樹脂層を硬化させるホログラムの複製方法が記載されている。
【0007】
この方法によれば、樹脂層が固体状なので、塗工後に支持体を巻き取って保存又は運搬することが可能であり、塗工と複製を別工程で行うことができる、スタンパーを引き剥がして光照射を行えるのでスタンパーの圧接と硬化を別工程で行うことができる、スタンパーを引き剥がした後の樹脂層に光を直接照射することで充分に硬化させることができる、光硬化性樹脂層とスタンパーの間に気泡が入り難いので正確にパターン形成できる、光硬化性樹脂層からスタンパーを引き剥がす時に樹脂層表面に糸引きが生じ難い等の利点がある。
【0008】
しかし、特許文献3に記載された方法は、ホログラムを複製するための方法であり、光の波長以下の周期構造を有するもののような極めて微細又は複雑な微細凹凸パターンを精度良く形成するための検討は行なわれていない。
【特許文献1】
特開昭50−70040号公報
【特許文献2】
特公平4−5681号公報
【特許文献3】
特公平3−85103号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する、非常に微細な微細凹凸パターンを効率良く作製する方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第二の目的は、上記方法により作製された、非常に微細で且つ精度の高い微細凹凸パターンを備える反射防止物品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る微細凹凸パターン作製方法は、微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、
支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【0012】
上記方法によれば、光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する微細凹凸パターンを正確に且つ効率良く作製することができる。
【0013】
上記方法の一態様においては、凹凸パターン形成層からスタンパーを取り除いた後に当該凹凸パターン形成層を硬化させることができる。この態様によれば、スタンパーによるエンボス加工のサイクルが短縮される。
【0014】
また、別の態様においては、凹凸パターン受容体は、可撓性の連続支持体上に前記凹凸パターン形成層を設けてなり、当該凹凸パターン受容体を、その一端側から供給しながらスタンパーを圧接することができる。この態様によれば、連続シート状の凹凸パターン受容体を供給しながらエンボス加工を高速で連続して行うことができる。
【0015】
本発明においては、可視光の波長よりも小さい周期構造の微細凹凸パターンを形成するので、凹凸パターン形成層の厚みが0.3〜5μmであれば充分である。
【0016】
硬化性樹脂組成物は、エンボス加工時に充分な熱成形性を得るために、軟化開始温度が50℃以上であることが好ましい。
【0017】
さらに本発明においては、前記方法により作製された微細凹凸パターンのシートをキャビティ内に装着した型を用いて射出成形を行うことにより成形品の表面に微細凹凸パターンを形成する、微細凹凸パターン作製方法が提供される。
【0018】
この方法によれば、射出成形用型の微細凹凸パターン部分を交換することができるので、型の長期使用が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下において本発明を詳しく説明する。本発明は、微細凹凸の最凸部における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、
支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【0020】
(1)微細凹凸パターン
図1は、本発明により作製される微細凹凸パターンの一例(1)を模式的に示す斜視図である。このように微細凹凸パターンが密集した構造は、一般にモスアイ(Moth-eye)構造と呼ばれている。
【0021】
本発明により作製される微細凹凸パターンは、微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立する非常に微細な凹凸パターンである。
【0022】
PMAX≦λMINなる関係が成立する微細凹凸パターンが反射防止効果を発揮するのは、次のような理由による。すなわち、微細凹凸パターンを反射防止物品の表面に設けることによって、外界(空気)との境界部における急激で不連続な屈折率変化を、連続的で漸次推移する屈折率変化に変えることが可能となるため、該物品の表面における光反射が減る。
【0023】
図1〜図3は、支持体の表面に設けられた微細凹凸パターンによって得られる有効屈折率分布を概念的に説明するための図である。先ず、図1は、支持体2の表面に付与された微細凹凸パターン1について、該支持体2が、Z≦0の部分の空間を占め、該支持体の表面、すなわちZ=0におけるXY平面上に、Z軸方向を凹凸方向とする多数の微細凹凸パターン1が配置された状態を示す。
【0024】
微細凹凸パターン1は、図1の如く、その最凸部1tにおける周期をPMAXとしたときに、このPMAXが、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMIN以下としてあるため、微細凹凸パターンの形成面への到達光に対しては、媒質(支持体及び空気)の屈折率に空間的な分布があっても、それは注目する波長以下の大きさの分布であるために、その分布が直接に光に作用せず、平均化されたものとして作用する。従って、平均化された後の屈折率(有効屈折率)が光が進行するに従って連続的に変化するような分布にしておけば、光の反射を低下できる。
【0025】
なお、本発明において最凸部1tにおける周期PMAXとは、隣接しあう微細凹凸の最凸部1t,1t間の距離のうち最大の距離であって、個々の微細凹凸が規則的に配置された周期性ある構成でもよいが、周期性がない(隣接する微細凹凸間の距離が不揃い)構成であってもよい。
【0026】
そして、図1では、直交座標系として、支持体2の表面の包絡面に立てた法線方向にZ軸を、また、それと直交する平面内にX軸、Y軸をとる。そして、今、光が微細凹凸パターンの外部から内部へ入光して、微細凹凸パターンの表面近傍をZ軸の負方向に向かって進行しつつあり、丁度、Z軸座標がzのところに存在するとする。
【0027】
すると、ここのZ=zに居る光にとっては、媒体の屈折率は微細凹凸パターンのために、厳密にはZ=zにおいてZ軸と直交するXY平面内において、分布f(x,y,z)を持つように見える。すなわち、XY平面内において、微細凹凸パターンの断面部分は屈折率nb(1.5程度)、その他の部分、具体的には空気aの部分は屈折率na(1.0程度)となる(図2参照)。
【0028】
ところが実際には、光にとっては、その波長(反射防止の対象となる光の波長が分布を有する場合は、その波長帯域の最小波長λMINを考えればよい。)よりも小さな空間的スケールの屈折率分布は、平均化されたものとして作用する結果、平均化された結果の有効屈折率は、分布f(x,y,z)を前記XY平面内において積分したもの、
【0029】
【数1】
【0030】
となる。その結果、有効屈折率(nef)の分布はzのみの関数nef(z)となる(図3参照)。
【0031】
よって、もしも微細凹凸パターンにおける凸部の断面積が、凹部に向かって連続的に増大するような形状であれば、XY平面における微細凹凸パターン部分と空気部分との面積比がZ軸方向に向かって連続的に変化するため、有効屈折率(nef)はzについての連続関数になる。
【0032】
一方、一般に屈折率n0の媒質から、屈折率n1の媒質に光が入光する場合を考える。今、簡単のために、入射角θ=0°(垂直入射)を考える。但し、入射角は入射面の法線に対する角度とする。この場合、媒質界面での反射率Rは、偏光及び入射光には依存せず、下記の式(2)となる。
【0033】
【数2】
【0034】
従って、有効屈折率のZ方向への変化が連続関数であるということは、Z方向(光の進行方向)に微小距離Δz隔てた2点、Z=zにおける屈折率(nef)をn0、Z=z+Δzにおける屈折率(nef)をn1としたときに、Δz→0ならば、n1→n0となり、よって式(2)より、R→0となる。
【0035】
なお、ここで、より厳密に言うと、物体中での光の波長は、真空中の波長をλ、物体の屈折率をnとしたときに、λ/nとなり、λよりは一般にある程度小となる。但し、物体が空気の場合の屈折率は、n≒1のため、λ/n≒λと考えてよい。但し、微細凹凸パターンに使われる硬化性樹脂組成物は、通常1.5前後の屈折率であるため、屈折率nbの微細凹凸パターン中の波長(λ/nb)は、0.7λ程度となる。この点を考慮すると、微細凹凸パターンにおいて、空気の側の部分(凹部)について見れば、
PMAX≦λMIN
の条件を満たすとき、屈折率平均化による反射率低減効果が期待できる。但し、λMIN/nb≦PMAX≦λMIN
である場合は、微細凹凸パターンの部分(凸部)の寄与について見れば、屈折率平均化による反射率低減効果は、少なくとも完全には期待できない。
【0036】
しかし、それでも、空気部分における寄与のため、全体としては反射防止効果を有する。
【0037】
そして、
PMAX≦λMIN/nb
の条件までも満たす場合は、空気部分及び微細凹凸パターンの部分とも、周期PMAXが最短波長よりも小さいという条件が完全に満たされるため、屈折率平均化による反射防止効果は、より完全となる。
【0038】
具体的には、λMINを可視光波長帯域の下限380nm、nbを仮に1.5とすれば、λMIN/nbは250nm、つまりPMAXは250nm以下とすればよい。
【0039】
図4は、微細凹凸パターン1を、最凸部1tを通る面で切断した縦断面を模式的に示したものである。微細凹凸パターンは、縦断面が、図5の(A)乃至(G)となるような形状であってもよい。また、微細凹凸パターンは、二次元配置の凹凸パターンだけでなく、図6に示すように、直線溝状パターンのように一次元配置の凹凸パターンであってもよい。
【0040】
微細凹凸パターンは、これを凹凸方向と直交する面(XY平面)で切断したと仮定したときに、断面内における微細凹凸パターンの材料部分の断面積占有率が、最凸部(頂上)から最凹部(谷底)に行くに従って漸次増加していく形状、すなわち凹凸パターンの側面の少なくとも一部が、谷底に向かって広がる斜面形状であることが好ましい。特に好ましくは、水平断面の材料部分の断面積占有率が最凸部において0に収束し、最凹部において1に収束する形状とする例えば、図5の(A)、(C)、(F)及び(G)が挙げられる。
【0041】
更に図4に示すように、微細凹凸パターン1は、凸部の頂点1tを有する山側形状1Mtが、最凹部の1bを有する谷側形状1Mbに比べて、より尖った形状であることが好ましい。ここで、山側形状1Mtが谷側形状1Mbよりも「尖った形状」とは、垂直断面で単なる正弦波形状や三角形状等の、山川と谷側が同一となる中立的な形状と比べて、より尖った形状という意味である。すなわち、図4の下段に示す如く、谷側形状1Mbを上下逆さにして、山側形状1Mtと重ねて比較したときに、山側形状1Mtの高さH/2における幅Wtが、谷側形状1Mbの高さH/2における幅Wbよりも小さく、Wt<Wbとなる形状が該当する。なお、山側形状1Mtは微細凹凸パターンの材料が占める部分の形を考え、谷側形状1Mbは微細凹凸パターンの外界が示す部分の形を考える。
【0042】
微細凹凸パターンは、凹凸の高さが高いほど反射防止性能が高いとされており、照射光の波長と同一か又はそれ以上の高さであることが好ましい。そのため、狭く且つ/又は深い微細凹凸パターンを形成するために、周期及び高さの再現性が求められる。
【0043】
(2)凹凸パターン受容体
凹凸パターン受容体は、支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けたものである。この凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層に、スタンパーを圧接してエンボス加工を行うことにより、微細凹凸パターンを賦形することができる。
【0044】
凹凸パターン受容体が可撓性の連続フィルム状である場合には、凹凸パターン受容体を巻き取ってロールストック形態に巻き取り、必要に応じて保管、移動した後で、凹凸パターン受容体をロールストックから巻き戻してエンボス工程に供給しながら、連続的にエンボス加工を行うことができるので、大量生産に非常に適している。
【0045】
(3)支持体
凹凸パターン受容体の支持体は、スタンパーによるエンボス加工時に必要な機械的強度、耐熱性、可撓性等の諸物性と、微細凹凸パターンの最終的な製品形態を考慮して適宜選択される。凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成した後、支持体ごと窓材として用いる場合等には、支持体に透明性が必要となるが、微細凹凸パターンを不透明部分に付す場合等では支持体が不透明であってもよい。
【0046】
透明性を持たせ得る支持体の材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、或いは、ガラス(セラミックスを含む)等が挙げられる。
【0047】
支持体は、凹凸パターン受容体に求められる形態に応じて、可撓性のフィルム又はシート状であってもよいし、剛直なプレート状であってもよい。また、連続フィルム状であってもよいし、枚葉状であってもよい。
【0048】
また、紙等の含浸性ある支持体を用いる場合には、支持体組織内に微細凹凸パターン形成層が含浸した状態で形成されてもよく、このような状態であっても支持体上に設けられた微細凹凸パターン形成層の一形態に含まれる。
【0049】
(4)硬化性樹脂組成物
凹凸パターン形成層の材料である硬化性樹脂組成物としては、塗布、乾燥後に常温(通常10〜35℃程度の範囲)において固体状の塗膜となるものを用いる。ここで「固体状」とは高粘度状態のものを含み、(1)エンボス加工の圧接力に達しない小さな外力を付加されても非流動性であり、形成時の厚みのままで塗膜形状を維持できる形状保持性を有し、(2)凹凸パターン形成層が未硬化状態で凹凸パターン受容体を巻き取ったり積み重ねたりしても凹凸パターン形成層が損傷せず、(3)常温又はそれ以上の温度において、スタンパーの圧接により塑性変形して微細凹凸パターンを賦形することができ、エンボス加工後に常温に戻されたときに再び非流動性となって賦形された微細凹凸パターンの形状を保持できることをいう。
【0050】
凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層は、常温で高粘度又は固体状であることから、エンボス加工前にロールストック形態に巻き取ったり或いは枚葉形態で積み重ねて一時保管及び運搬することが可能であり、ロールストックから供給しながら連続エンボス加工を行うことが可能であり、更には凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接してから取り外した後で硬化させることができる。
【0051】
常温下における巻き取りや運搬等の一般的な取り扱いでは非流動性であり、しかも、同じ常温下でエンボス加工の圧力により塑性流動するような理想的な降伏値を持つ材料は入手困難であることから、通常は、常温下では高粘度又は固体状であり、適切な温度で軟化してエンボス加工可能な熱成形性を発現する硬化性樹脂組成物を用いる。硬化性樹脂組成物の軟化開始温度は50℃以上であることが好ましく、50〜80℃であることが特に好ましい。
【0052】
硬化性樹脂組成物の軟化開始温度の次の方法によって測定することができる。
すなわち、先ず、硬化性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート等の支持体に塗布し、溶剤を乾燥させて、膜厚2〜5μmの厚みで硬化性樹脂組成物を塗工したシートを作る。次に、熱機械測定装置(Thermo Mechanical Analyzer ; TMA)を用いて、ペネトレーション測定用の荷重棒(通常は、石英製である)を荷重5.0gで上記塗工シートの硬化性樹脂組成物の塗工層側に押し付けながら、0〜150℃、昇温速度5℃/minで加熱する。このペネトレーション試験から荷重棒の沈み曲線を得て、それを外挿することにより、軟化開始温度を求める。
【0053】
硬化性樹脂組成物は、エンボス加工により形成した微細凹凸パターンを固定すると共に、強度等の充分な被膜物性を得るために硬化性を必要とする。硬化性を発揮するための反応としては、例えば、光硬化性、熱硬化性等が挙げられる。光硬化性樹脂組成物は、エンボス加工のプロセス温度よりも低い温度で硬化させることができ、硬化工程でのパターン崩れを起こし難いので好ましい。また、微細凹凸パターンの適用部位に応じて、硬化性樹脂組成物には、支持体と同様に透明性が必要とされる場合がある。
【0054】
硬化性樹脂組成物は、バインダーポリマーに、必要に応じて光硬化性や熱硬化性等の硬化反応を引き起こし、促進し又は調節する成分及び他の成分を配合することにより調製される。
【0055】
バインダーポリマーは、それ自体が硬化性を有しているもの及び有していないもののいずれを用いてもよく、また、2種類以上のバインダーポリマーを組み合わせて用いても良い。バインダーポリマーが硬化性を有しない場合には、硬化性を有するモノマー又はオリゴマーを1種以上使用することで、樹脂組成物に硬化性を付与することができる。
【0056】
バインダーポリマーとしては、基材フィルム等の支持体上に塗布した時に微細凹凸パターンを賦形するのに充分な厚さの皮膜とすることができる成膜性を有すると共に、硬化後において光学物品の用途に応じて、透明性、強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性、可とう性等の一般的性質を満足する微細凹凸パターンの表面構造を形成し得るポリマーを用いる。
【0057】
例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、スチロール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
適当なバインダーポリマーとしては、アクリル樹脂;ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のアクリレート;及び、特公平4−5681号公報に記載されているようなハードセグメントとソフトセグメントを分子内に有する樹脂等が好ましく用いられる。
【0059】
上記の中でも、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、及び、ポリエステルアクリレートは特に好ましい。
【0060】
アクリル樹脂は、分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを重合させるか、又は、そのような(メタ)アクリロイル基含有モノマーの二種以上、或いは、そこにさらにビニルモノマーやアリルモノマー等のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを加えて共重合又はグラフト重合させて得られるポリマーであれば、いずれも使用できる。
【0061】
なお、本明細書中において(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
【0062】
(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状構造を有するモノマー、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート等のカルド構造を有するモノマー、(メタ)アクリロイル変性シリコーン等の離型性を有するモノマー等を挙げることができる。
【0063】
アクリル樹脂を構成する共重合モノマーとして、硬化性を有するモノマー、例えば、エポキシ基を有するモノマー、オキセタン化合物、メチロール基を有するモノマー等の熱硬化性を有するモノマーや、光二量化反応を起こす基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマー等を使用すれば、ポリマーに反応性を付与することができる。
【0064】
アクリル樹脂には、共重合の際のモノマーに光硬化性、熱硬化性等の硬化性を持つ(メタ)アクリレートを使用するほかに、さらに側鎖に官能基を導入して硬化性を付与することもできる。官能基を導入する方法としては、例えば、ウレタン変性、エポキシ変性、エステル変性等の方法がある。
【0065】
アクリル樹脂の中では、特開2000−63459号公報に記載されているようなウレタン変性アクリル樹脂が好ましい。
【0066】
ウレタン変性アクリル樹脂は、例えば、水酸基をもつアクリル樹脂に、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基をもつ(メタ)アクリレートを反応させるか、或いは逆に、イソシアネート基をもつアクリル樹脂に、水酸基をもつ(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロイル基を導入することにより得られる。
【0067】
ウレタンアクリレートは、分子中にウレタン結合と、光重合性を有する(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、いずれも使用できる。ウレタンアクリレートの中では、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレート、又は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレートが好ましい。
【0068】
特に好ましく用いられるウレタンアクリレートとして、特開平2001−329031号公報に記載されているタックフリーな皮膜を与える化合物がある。この化合物は、融点が40℃以上のイソシアネート化合物、特にイソホロンジイソシアネートの3量体と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物が挙げられる。
【0069】
ポリエステルアクリレートは、分子中にエステル結合と、光重合性を有する(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、いずれも使用できる。ポリエステルアクリレートの中では、2個以上の水酸基を有する化合物又は環状エステル化合物と多塩基酸とから合成したポリエステル化合物に、さらに(メタ)アクリロイル基を持つ化合物を反応させて得られるポリエステルアクリレートが好ましい。
【0070】
これらの中でもウレタン変性アクリル樹脂やウレタンアクリレートは、ウレタン結合を多く持っているため凝集力が高く、樹脂組成物の動的貯蔵弾性率を好ましい範囲に調整しやすいので特に好ましい。
【0071】
バインダーポリマーは、ポリスチレン換算重量平均分子量が5,000〜500,000のポリマー成分であることが好ましい。上記分子量が5,000未満の場合には、充分な成膜性が得られないばかりでなく、塗工後に室温で巻取り保管した時にブロッキングを起こし易い。また、上記分子量が500,000を超える場合には軟化しにくいために賦形性が悪くなる。
【0072】
樹脂の分子量が上記範囲にあっても常温で液状のものがあり、そのような樹脂を単独でバインダーポリマーとして用いることはできない。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステル樹脂、エラストマー等では、軟化温度が室温以下の場合もある。その場合は、常温で液状の樹脂を、常温で固体状の材料と混合し、見かけ上固体にすることで、バインダーポリマーとして用いることができる。
【0073】
むしろ、バインダーポリマーは単独で使用するよりも、常温で固体状の軟化温度が高いもの(70〜120℃程度)と、常温で液状の樹脂を混合することによって、耐ブロッキング性を維持し、且つ、適度な熱可塑性を与えて凹凸形成性を良好とすることができる。特に、アクリル樹脂と、ウレタンアクリレートの組み合わせは好ましい。
【0074】
光硬化性を有する微細凹凸パターン形成材料を調製する場合には、上記したようなバインダーポリマーの中から光重合性官能基を有するか又は有しないバインダーポリマーを選び、必要に応じて光重合性官能基を有するモノマーやオリゴマー、光重合開始剤、重合禁止剤等の光硬化系成分を配合し、さらに離型剤、有機金属カップリング剤等の他の成分を配合して調製することができる。以下において、光硬化系成分について説明する。
【0075】
光重合性官能基は、可視光又は紫外線や電子線等の電離放射線を含む放射線により重合反応して分子間に架橋結合を形成し得る官能基であり、光照射により直接活性化して光重合反応を起こすものであってもよいし、光重合性官能基と光重合開始剤を共存させて光照射した時に光重合開始剤から発生した活性種の作用により重合反応が開始、促進されるものであってもよい。光重合性官能基としては、例えば、エチレン性二重結合のような光ラジカル重合反応性を有するものや、グリシジル基、脂環式エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン構造等の光カチオン重合及び光アニオン重合反応性の有するものを例示することができ、その中でも光ラジカル重合性基、特にエチレン性二重結合が好ましい。エチレン性二重結合としては、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0076】
光硬化性樹脂組成物には、光硬化性の付与、当該樹脂組成物の粘度低下、柔軟性の付与、架橋密度の向上のために、光重合性官能基を1つ以上有する(すなわち単官能又は多官能の)モノマー又はオリゴマーを配合してもよい。
【0077】
光カチオン重合反応を利用する場合には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等を使用することができる。
【0078】
モノマー或いはオリゴマーの使用量が少なすぎる場合には、得られる硬化樹脂層の強度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性が不充分となる場合がある。一方、モノマー或いはオリゴマーの使用量が多すぎる場合には、表面タックの増大、ブロッキング、複製時の版取られ等を引き起こす場合がある。かかる観点からモノマー又はオリゴマーは、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に5〜40重量%の割合で配合することが好ましいが、モノマー又はオリゴマーを配合した組成物全体として常温で見かけ上固体になる必要がある。なお、光硬化性樹脂組成物の固形分には、溶剤以外の液状成分も含まれる。
【0079】
光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、バインダーやモノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0080】
光ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、アントラキノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド、α−クロルメチルナフタレン、アントラセン、ヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等がある。
【0081】
光カチオン開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等が挙げられる。
【0082】
光アニオン開始剤としては、例えば、1,10‐ジアミノデカンや4,4’‐トリメチレンジピペリジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト‐アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等を例示することができる。
【0083】
上記光重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.5〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。光重合開始剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。
【0085】
一方、熱硬化性を有する微細凹凸パターン形成材料を調製する場合には、上記したようなバインダーポリマーの中から熱重合性官能基を有するか又は有しないバインダーポリマーを選び、必要に応じて熱重合性官能基を有する成分、熱重合開始剤、硬化剤、安定化剤等の熱硬化系成分を配合し、さらに離型剤、有機金属カップリング剤等の他の成分を配合して調製することができる。以下において、熱硬化系成分について説明する。
【0086】
熱硬化性成分としては、熱によって架橋反応を起こす成分、或いは、ホルムアルデヒドや有機金属キレート剤等の架橋剤を添加することによって架橋反応を起こす成分ならいずれも用いることができる。樹脂系で言えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
【0087】
中でも、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。バインダーポリマーに混合される熱重合性成分としては、分子内に1つのエポキシ基を持つモノマー或いはオリゴマー、或いは分子内に2つ以上のエポキシ基を持つ(すなわち多官能の)エポキシ化合物等を使用することができる。
【0088】
また、分子内に1つ以上のエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基のような重合性不飽和結合を有するモノマー又はオリゴマーを使用すれば、熱硬化性と光硬化性を有する樹脂組成物が得られる。
【0089】
エポキシ基を有するオリゴマー或いはバインダーポリマーの一部としては、エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス−ヒドロキシ−フェニルメタン型エポキシ樹脂、その他の多官能型エポキシ樹脂等を用いることができる。また、これらの樹脂に含まれるエポキシ基の一部を(メタ)アクリロイルに置き換えたものを使用することもできる。
【0090】
さらに、熱硬化性エポキシ化合物と光硬化性成分の併用系では、モノマーとして1つ以上のカルボキシル基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基等の重合性不飽和結合を有する化合物を使用することができる。このような化合物は、1つ以上の水酸基と1つ以上の重合性不飽和結合を有するモノマーと酸無水物とのエステル化反応により得られる。
【0091】
モノマー或いはオリゴマーの使用量が少なすぎる場合には、得られる硬化樹脂層の強度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性が不充分となる場合がある。一方、モノマー或いはオリゴマーの使用量が多すぎる場合には、動的貯蔵弾性率の値が低くなって表面タックの増大、ブロッキング、複製時の版取られ等を引き起こす場合がある。かかる観点からモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量中に5〜40重量%の割合で配合するのが好ましい。なお、熱硬化性樹脂組成物の固形分には、溶剤以外の液状成分も含まれる。
【0092】
熱硬化性樹脂組成物に配合される硬化性成分の重合性官能基がエポキシ基である場合には、通常、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、触媒型硬化剤等の硬化剤を配合する。
【0093】
上記硬化剤は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜20重量%の割合で配合するのが好ましい。硬化剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
以上において特に光硬化系及び熱硬化系の構成成分について説明したが、硬化性樹脂組成物には、当該組成物の硬化方法に合わせて、適宜選択して反応開始剤、硬化剤、安定化剤等の反応硬化系を構成する添加剤を配合することができる。
それらの添加剤は1種のみを単独で用いても良いし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0095】
硬化性樹脂組成物には、離型剤や有機金属カップリング剤等のその他の成分を配合しても良い。
【0096】
硬化性樹脂組成物に離型剤を配合することにより、硬化性樹脂組成物の層に押し付けたスタンパーを取り外す時に樹脂の版取られを防止し、スタンパーを長期間連続して使用(反復エンボス性)することができるようになる。
【0097】
離型剤を配合することで、硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布して形成した塗膜表面の水の接触角が硬化前において90°以上、更に好ましくは100°以上となる場合には、スタンパーからの離型性が良好となる。
【0098】
離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等が何れも使用可能である。
【0099】
特に好ましいのはシリコーン系離型剤であり、ポリシロキサン、変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等がある。
【0100】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、例えばアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、フッ素変性等が挙げられる。一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0101】
シリコーン系アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル変性シリコーンオイルや、ケイ素を含有するモノマーを共重合或いはグラフト化したアクリル樹脂が用いられる。
【0102】
上記シリコーン系離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0103】
離型剤は、硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜30重量%の割合で配合するのが好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、スタンパーと硬化性樹脂層の離型性が不十分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身及び近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
【0104】
硬化性樹脂組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0105】
有機金属カップリング剤は、硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜15重量%の割合で配合するのが好ましい。有機金属カップリング剤の割合が上記範囲未満では、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与効果が不充分である。一方、有機金属カップリング剤の割合が上記範囲を超えると、組成物の安定性、成膜性が損なわれるおそれがある。
【0106】
凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接した時の賦形性、凹凸パターン形成層からスタンパー取り外した後の形状保持性を向上させるための方法としては、例えば、ウレタン結合を多く持つポリマーやオリゴマーのように凝集力の高い樹脂をバインダー樹脂として用いる方法、有機溶媒にコロイド状に分散させることが可能な無機微粒子(例えば金属酸化物微粒子)、その中でも好ましくは嵩高い微粒子を硬化性樹脂組成物に添加する方法、或いは、微粒子同士で又はバインダーポリマー等の硬化性成分との間で共有結合等の化学結合を形成し得る微粒子を硬化性樹脂組成物に添加する方法、さらには、上記方法のうち2以上の任意の組み合わせが効果的である。
【0107】
無機微粒子は、塗膜に充分な透明性を確保するために、いわゆる超微粒子サイズのものを用いる。ここで「超微粒子」とはサブミクロンオーダーの粒子のことであり、一般的に「微粒子」と呼ばれている数μmから数100μmの粒子径を有する粒子よりも粒子径の小さいものを意味している。本発明において用いられる無機微粒子の具体的なサイズは、硬化性樹脂組成物が適用される光学物品の用途及びグレードによっても相違するが、一般的には一次粒子径が1nm〜300nmの範囲のものを用いるのが好ましい。一次粒子径が1nm未満では、樹脂組成物のクリープ特性を充分に向上させることが困難になり、一方、一次粒子径が300nmを超えると、樹脂の透明性が損なわれ光学用物品の用途によっては透明性が不充分となる場合がある。
【0108】
無機微粒子の具体例としては、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3等の金属酸化物微粒子を挙げることができ、これらの中から上記したようにコロイド状分散可能で且つサブミクロンオーダーの粒子サイズを有するものを選択して用いるのが好ましく、特に、コロイダルシリカ(SiO2)微粒子を用いるのが好ましい。
【0109】
無機微粒子は、硬化性樹脂組成物の固形分全量中に1〜70重量%の割合で配合するのが好ましく、1〜50重量%の割合で配合するのが特に好ましい。無機微粒子の割合が1重量%未満では、樹脂組成物のクリープ特性を充分に向上させることが困難になり、一方、無機微粒子の割合が70重量%を超えると、脆質性が顕著になり、露光硬化後に充分な強度や表面硬度が得られにくくなる。
【0110】
無機微粒子は、どのような形状であってもよいが、針状等の嵩高い形状のものが好ましい。針状微粒子としては、例えば、太さが5〜20nmで、長さが40〜300nmのものを用いることができる。
【0111】
微粒子同士で又はバインダーポリマー等の硬化性成分との間で共有結合等の化学結合を形成させるため、表面に(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基を導入した無機微粒子を使用することができる。
【0112】
硬化性樹脂組成物は、通常、希釈溶剤を用いて塗布液の状態に調製し、凹凸パターン形成層の形成に用いる。上記したような各材料を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、またはそれらの混合溶剤に溶解、分散することにより、塗布液を調製することができる。塗布液は、通常、固形分濃度が10〜50重量%程度となるように調節される。
【0113】
(5)凹凸パターン受容体の作製
上記硬化性樹脂組成物を基材フィルム等の支持体の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させて微細凹凸パターン形成層を形成することにより、凹凸パターン受容体が作製される。
【0114】
微細凹凸パターンは光の波長以下の周期構造をもつ非常に微細なパターンであることから、凹凸パターン形成層の厚さは、通常0.3〜5μm程度で充分であり、0.5〜3μmの範囲であることが好ましい。
【0115】
凹凸パターン形成層は、実用上乾燥したと認められる程度の溶剤の混入は許容される。一般的に、凹凸パターン形成層中の溶剤の残留量が5重量%以下であれば、乾燥状態とみなすことができる。作製した凹凸パターン受容体は再び巻き取られてロールストックとされ、保存又は運搬される。
【0116】
連続フィルム状の凹凸パターン受容体を作製する一例を示すと、先ず、ポリエチレンテレフタレート等の連続プラスチックからなる基材フィルム(支持体)をロールストックから繰り出す。繰り出した基材フィルムの上に、光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成材料をグラビアコーターを用いて塗布し、次いで、組成物に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて微細凹凸パターン形成層を形成してタイプの凹凸パターン受容体を作製する。上記グラビアコーター以外の塗工機としては、例えばロールコーター、カーテンコーター、フローコーター、リップコーター、ドクターブレードコーター等も使用できる。
【0117】
支持体に微細凹凸パターン形成層を塗工する前後に、或いは、微細凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成する前後に、必要に応じてアンカー層やオーバーコート層等の他の層を形成してもよい。
【0118】
(6)スタンパー
スタンパーとしては、微細凹凸形状を最初に造形した原型は用いずに、該原型から1回、或いは2回以上の型取・反転による複製工程を経て作製した複製型を用いるのが好ましい。つまり、最初に一旦、原型(これを原版、或いはマザー版とも呼ぶ)を作製した後、この原型から複製型を作製する複製操作を1回又は2回以上行い、その結果、得られた複製型(これを本版、或いはマスター版とも呼ぶ)をスタンパーとして使用する。この様な複製型のスタンパーは原型から容易に再作製できるので、工業的生産性、コスト等に優れており、例えば、スタンパーが傷ついた場合の交換が容易である。
【0119】
賦形型の元となる原型としては、必要な微細凹凸が形成されているものであれば、その作製方法には基本的には特に限定はなく、生産性、コスト等を考慮して適宜なものを使用すれば良い。原型の作製は、微細凹凸を賦形する為の凹凸形状を最初に造形する工程であり、半導体分野等に於ける微細加工技術、すなわち、光(電子ビームを含む)をパターン形成に利用する所謂露光法を利用できる。但し、半導体の場合は、凹凸形状はその側面が通常垂直面で良く、本発明の如く斜面にする必要は特に無いため、本発明では、山側が谷側よりも尖った形状となる様な斜面が形成できる様にして微細加工する。
【0120】
露光法に該当する微細加工技術としては、例えば、電子線描画法を利用できる。この方法による作製方法の一例を示せば、石英ガラス上にクロム膜(1100Å厚)を成膜後、更にスピンコートにてレジストを4000Å厚に塗布した後、電子線描画装置にて周期300nmのメッシュ状の描画データを用いて描画し、現像液を用い現像処理を施す。描画条件は5〜8μC/cm2である。これにより、描画データの斜線領域に対応する領域が現像により開口する。次いで、レジストの開口から露出している金属クロム膜を、塩素系のガスを用いてドライエッチングして、これを開口する。尚、金属クロム膜のドライエッチングにはUnaxis社製ドライエッチング装置「VERSALOCK7000」が使用できる。次いで、レジストと金属クロム膜を耐エッチング層として、フッ素系のガスを用いて石英ガラスのドライエッチングを行えば、所望の微細凹凸形状が得られる。尚、加工用素材(石英ガラス)のドライエッチングには、日本真空株式会社製「MEPS−6025D」が使用できる。
【0121】
また、レジスト膜へのパターン形成に際しては、電子線描画法の他の露光法として、レーザ描画法も利用できる。レーザ描画法では、ホログラム、回折格子等の作製等に利用されているレーザ干渉法が利用できる。回折格子の場合は、一次元的配置であるが、角度を変えて多重露光すれば、二次元配置も可能となる。
【0122】
この方法による作製方法の一例を示せば、ガラス表面にレジスト(シプレイ社製のフォトレジスト「S1805」等)をスピンコートした後、2方向露光を角度を変えて2回行う。1回の露光量は80〜200mJである。これを20〜505%に希釈した現像液(例えば、シプレイ社製の「Developer CONC」等)で現像すれば、所望の微細凹凸形状が得られる。
【0123】
尚、上記レーザ干渉法では、得られる微細凹凸は、通常規則的配置となるが、これに対して、前記電子線描画法では、予め所定の描画パターン情報を記憶装置にデジタルデータとして記憶しておき、該描画パターン情報により、走査する電子線のON、OFF、乃至は強弱を変調する。その為、規則配置の他にも、不規則配置も可能である。また、レーザ描画法及び電子線描画法には各々長所、短所が有る為、設計諸元、目的、生産性等を考慮の上、適宜な手法及び条件を選択する。
【0124】
次に、上記原型からスタンパーとして使用する複製型を作製する方法としては、電鋳法や2P法等の公知の方法がある。
【0125】
電鋳法の場合、原型にニッケル等の金属めっきを行って、めっき層を剥がせば金属製の複製型を作製できる。或いは、この複製型にもう一度めっきして、再度複製した型をスタンパーとするなど、2以上の多数回の複製操作を経てスタンパーを作製しても良い。尚、スタンパーの形態としては、板状、シート状、ブロック状等があり得、反射防止物品の形状、用途等に応じて適宜選択すればよい。尚、スタンパーは、上記ニッケルの如き金属性でも良いが、シリコーン樹脂等の樹脂製のものを使用しても良い。例えば、樹脂からなるシート状で連続帯状も可能なスタンパーである。
【0126】
尚、1回の複製操作で、微細凹凸の山と谷が逆転するので、複製操作の回数によっては、最初の原型では目的とする微細凹凸とは逆凹凸形状として造形しておく場合もある。
【0127】
2P法の場合、原型に紫外線等の電離放射線硬化型の樹脂を滴下し、フィルム等の可撓性のある基材を圧接するか、或いは逆に、基材に樹脂を滴下し、原型をその上から圧接する。その後、フィルム側から紫外線等の電離放射線を照射して樹脂を硬化させ、フィルムを剥離することにより、凹凸パターンをもつフィルムが得られる。
【0128】
別の方法としては、本発明のような常温で固体の硬化性樹脂を用い、後述する微細凹凸パターンの作製方法と同様にしてスタンパーを作製してもよい。さらに、上記の方法を組み合わせて、複数の複製操作を続けて行なってスタンパーを作製することも可能である。
【0129】
(7)微細凹凸パターンの作製
凹凸パターン受容体の凹凸パターン形成層の表面にスタンパーを圧接して微細凹凸パターンを形成した後、凹凸パターン形成層を露光又は加熱等の適切な方法で硬化させることにより、微細凹凸パターンを作製することができる。
【0130】
図7は、連続シート状の凹凸パターン受容体を用いて、微細凹凸パターンを連続生産する方法の一例を示した図である。図7において、連続シート状の凹凸パターン受容体3は、ロールストック4から巻き戻され、支持ローラ5により搬送されてエンボス工程に供給される。エンボス工程内の搬送路上には、作製すべき微細凹凸パターンを反転させたキャビティ形状を有するスタンパー6を周面に装着した金属ローラー7aとペーパーロール7bよりなる一対のエンボスローラー7が設置されている。凹凸パターン受容体がエンボスローラーの間を通過する時に、凹凸パターン形成層にスタンパーが圧接され、微細凹凸パターン1が形成される。
【0131】
多くの場合、凹凸パターン形成層は、常温ではスタンパーの圧接により賦形できるほどの塑性を有していないので、通常は、微細凹凸パターン形成層を適切な温度に加熱して軟化させた状態でスタンパーを圧接することにより、スタンパーのキャビティ内の隅々まで入り込ませる。
【0132】
スタンパーによる圧接前に凹凸パターン形成層を予熱しても良いが、生産性の点からエンボスローラーを加熱して熱ロールを行なうことが好ましい。熱ロールは、例えば、熱ロール温度100〜200℃、プレス圧5×103〜5×106Paで行なう。この範囲のプレス条件でエンボス加工を行う場合には、凹凸パターン形成層の樹脂温度が60〜80℃の温度域内又はその付近の温度に調節される。
【0133】
熱ロール温度が高すぎる場合には、エンボス加工を高速で行うことができるが、基材フィルムのダメージが大きくなる。また、熱ロール温度が低すぎる場合には、樹脂温度を上昇させるのに時間がかかるので、エンボス工程が遅くなる。
【0134】
エンボス加工は片面エンボスで十分であるが、両面エンボスでもよい。エンボスに当たっては、エンボスロールの温度設定が重要であり、エンボス形状を再現する観点からは比較的高温で、比較的高い圧力でエンボスするのが好ましいが、エンボス版への付着を防止するためには比較的低い圧力でエンボスするのが好ましく、全く逆の関係となる。また、有効に作用する熱容量から考えた場合は、複製するフイルムの搬送速度も重要である。樹脂組成物のエンボスロールへの付着を低減するためには、離型剤の選定も重要である。
【0135】
連続シート状の凹凸パターン受容体がエンボスローラーの間を通過すると、エンボスローラーは、連続シート状凹凸パターン受容体の供給速度に合わせて回転し、凹凸パターン形成層上にエンボス加工が繰り返され、微細凹凸パターン1が連続的に賦形される。
【0136】
凹凸パターン受容体がエンボスローラーの間を通過すると、凹凸パターン形成層の微細凹凸パターンが賦形された部分はスタンパーから引き剥がされ、硬化工程が行われる。凹凸パターン形成層が光硬化性樹脂からなる場合には光照射により、また、凹凸パターン形成層が熱硬化性樹脂からなる場合には加熱により硬化させる。
【0137】
この例では、光硬化性樹脂からなる凹凸パターン形成層を、照射源8を用いて光硬化させる。硬化に用いる光としては、高エネルギー電離放射線及び紫外線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。
【0138】
光照射や加熱等による凹凸パターン形成層の硬化は、スタンパーを圧接したままの状態で行なっても良いが、スタンパーを外した後で硬化を行うことにより、圧接工程と硬化工程を独立並行して行うことが好ましい。圧接工程と硬化工程を分離することにより、スタンパーの稼働率が高くなり、しかも、凹凸パターン形成層の表面に直接且つ均一に光照射を行うことにより硬化作業の効率も上がるので、生産性が高い。
【0139】
もしも2P法で同様の微細凹凸パターンを作製する場合には、液状の高い硬化性樹脂組成物を用いるので、塗布工程とスタンパーによる圧接工程を連続して行なわなければならず、さらに、スタンパーを圧接した状態で光照射等による一次硬化を同時に行う必要がある。特に、2P法ではスタンパーを圧接した状態で光照射等による一次硬化を行うため、高速で均一に賦形処理を行うことが困難である。また、2P法では、流動性の高い凹凸パターン形成層に形成した微細凹凸パターンの形状を保持する目的で、凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接した状態で一次硬化(予備照射、予備加熱)させるが、スタンパーのキャビティ内で完全に硬化させると、スタンパーからはがし難くなり、賦形処理の速度が落ちる。
【0140】
これに対して本発明の方法は、常温で固体状の硬化性樹脂組成物を用いるので、2P法により生じる不都合はなく、ロールストックから凹凸パターン受容体を高速で連続的に供給する大量生産が可能である。
【0141】
硬化後、微細凹凸パターンの上には、必要に応じて、さらに耐擦傷性や耐汚染性を高めるための透明保護膜や接着剤層を付加してもよい。
【0142】
図7の方法で得られた連続シート状の微細凹凸パターンは、再び巻き取ってロールストック9としてもよいし、枚葉状に切断してもよい。
【0143】
図8は、連続シート状の凹凸パターン受容体を用いて微細凹凸パターンを連続生産する別の方法を示した図である。図8において、連続シート状の凹凸パターン受容体3は、ロールストック4から巻き戻され、支持ローラ5により搬送されてエンボス工程に供給される。
【0144】
エンボス工程内の搬送路上には、作製すべき微細凹凸パターンを反転させたキャビティ形状を有するスタンパー6を360度全周に渡って装着した金属ローラー7aと、凹凸パターン受容体3が金属ローラー7aと密着する段階の前半(好ましくは密着を開始した直後)の位置において凹凸パターン受容体3を金属ローラー7aに押しつける圧接ローラー7cと、凹凸パターン受容体3が金属ローラー7aと密着する段階の後半(好ましくは密着が終了する直前)において凹凸パターン受容体3を金属ローラー7aに押しつける圧接ローラー7dよりなる一組のエンボスローラー7が設置されている。
【0145】
金属ローラー7aの回転軸は、凹凸パターン受容体3の搬送路の高さからオフセットされている。そのため、微細凹凸パターン受容体3は、金属ローラーの周面と線接触するのではなく、面接触し、スタンパー6による賦形を充分に行うことができる。凹凸パターン受容体3の搬送路と金属ローラー7aの高低差は、凹凸パターン受容体3が、金属ローラー7aの周面と広い面積で接触できるように調節することが好ましい。
【0146】
凹凸パターン形成層を加熱により軟化したい場合には、金属ローラー7a又は前半部の圧接ローラー7c、或いは、その両方を加熱して熱ロールを行なうことができる。この場合の熱ロール温度、プレス圧、凹凸パターン形成層の樹脂温度等の条件は、上述した図6と同様である。
【0147】
また、後半部の圧接ローラー7dを必要に応じて冷却ロールとすることで、軟化した凹凸パターン形成層を冷却し、エンボス加工後の形状維持性を改善することができる。
【0148】
凹凸パターン受容体3の凹凸パターン形成層は、スタンパーに圧接されている状態で光照射や加熱等により予備的に半硬化させてもよい。凹凸パターン形成層を予備硬化させると、スタンパーを剥がした後、本硬化を行なうまでの間の型崩れが生じにくくなり、形状維持性を改善することができる。この例では、光硬化性樹脂からなる凹凸パターン形成層を照射源10により予備硬化させる。
【0149】
凹凸パターン受容体3が金属ローラー7aと後半の圧接ローラー7dの間を通過すると、凹凸パターン形成層の微細凹凸パターン1が賦形された部分はスタンパーから引き剥がされ、硬化工程において光照射や加熱等により硬化させる。この例では、光硬化性樹脂からなる凹凸パターン形成層を、照射源8を用いて硬化させる。
【0150】
(8)微細凹凸パターンの利用
本発明により得られる微細凹凸パターンは、微細凹凸パターンが賦形された層(微細凹凸パターン層)を支持体上に設けた厚みの薄い製品であり、反射防止機能を備えている。これを、反射防止フィルム、反射防止板として用い、反射防止性能を付与したい物品の表面に積層又は配置して反射防止物品を作製することができる。
【0151】
また、本発明の方法によれば非常に高い精度で微細凹凸パターンを複製できるので、反射防止作用を有する微細凹凸パターンの原型から相補的な微細凹凸パターンを作製し、これをエンボス加工や射出成形の型として用いて反射防止作用を有する微細凹凸パターンを複製することができる。
【0152】
射出成形に利用する場合には、本発明の方法により得られる微細凹凸パターンのシートを、例えば、射出成形用の型のキャビティ内に装着し、射出成形を行うことで、成形品の表面に微細凹凸パターンを形成することができる。この方法により、例えば、携帯電話の窓材等のプラスチック製の反射防止物品を成形することができる。
【0153】
射出成形の型は、樹脂で埋まったり、変形を起こして使えなくなることがあるが、型の作製には時間がかかり、高価である。特に型内面の微細凹凸パターンの部分は高い精度が求められるため、この部分の僅かな損傷により型が使用不可能になる。これに対し、本発明の方法により得られる微細凹凸パターンのシートを、型の微細凹凸パターン部分として用い、射出成形を数回行なうごとに微細凹凸パターンシートを交換することで、型の長期使用が可能となり、射出成形品を安価に製造することができる。
【0154】
(9)反射防止物品
微細凹凸パターンシートの貼着や微細凹凸パターンシートを用いる射出成形等の方法で作製した反射防止物品の形状は、三次元形状、板、シート等任意であり、用途も特に限定されるものではない。その反射防止表面の微細凹凸は、極めて微細であるが故に、汚れや傷等の損傷を避けるために、微細凹凸は好ましくは外面には露出させず、内面に設けられる用途、或いは、装置内部に設けられる用途等が好適である。
【0155】
反射防止物品の例としては、携帯電話等の各種機器に於ける情報表示部の窓材がある。これら表示部では、LCD等の表示パネルの前面に、板や成形品等となった樹脂製の窓材が配置される。窓材としての反射防止物品は、外側は露出する為に傷や汚れへの耐性の点で微細凹凸は設けず、内側(裏面側)に該微細凹凸を設けたものとするのが好ましい。尚、情報表示部は、LCD等の表示パネル以外に、時計に代表される機械式アナログメータ等の様な機械的手段で表示するものでもよく、これらの窓材でも良い。
【0156】
尚、窓材は、平板状もあるが、組み付けやデザイン上の観点から周囲に突起等を有する物もある。
【0157】
尚、上記のような窓付き情報表示部を有する機器としては、携帯電話、時計の他にも、パーソナルコンピュータ、電子手帳等のPDA乃至は携帯情報端末、電卓、或いは、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、MDプレーヤ、半導体メモリ方式音楽プレーヤ等の各種携帯型音楽プレーヤ、或いは、ビデオテープレコーダ、ICレコーダ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ラベルプリンタ等の電子機器、或いは、電気炊飯器、電気ポット、洗濯機等の電気製品がある。
【0158】
また、板状やシート状の反射防止物品に於いては、透明タッチパネル等に使用する透明板等の透明な基材が挙げられる。透明タッチパネルは、表示部に入力機能を付加するものであるが、該製品組立上、LCD,CRT等の表示パネルと別物品として組み付けるので、表示パネルと透明タッチパネル間に空隙が残り、光反射が生じる。そこで、透明タッチパネルの裏面側を成す透明な基材を、その裏面を本発明特有の微細凹凸を設けた反射防止物品をすれば、光反射が防げる。
【0159】
尚、透明タッチパネルは、例えば、電子手帳等のPDA乃至は携帯情報端末(機器)、或いは、カーナビゲーションシステム、POS(販売時点情報管理)端末、携帯型オーダー入力端末、ATM(現金自動預金支払兼用機)、ファクシミリ、固定電話端末、携帯電話機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、パソコン、パソコン用ディスプレイ、テレビジョン受像機、テレビ用モニターディスプレイ、券売機、計測機器、電卓、電子楽器等の電子機器、複写機、ECR(金銭登録機)等の事務器、或いは、洗濯機、電子レンジ等の電気製品に使用される。
【0160】
また、反射防止物品の用途としては各種光学素子等も挙げられる。例えば、写真機のレンズ、写真機のファインダの窓材、眼鏡のレンズ、オーバーヘッドプロジェクタのフレネルレンズ、光センサの光入力窓、望遠鏡のレンズ、或いは、CD、DVD等の光ディスクのピックアップレンズ、レーザ装置の出力窓、等が挙げられる。
【0161】
【実施例】
1.凹凸パターン形成用材料の調製
(1)凹凸パターン形成用材料1
a)ウレタン変性アクリルポリマーの製造
冷却器、滴下ロート及び温度計付きの2リットルの四つ口フラスコに、トルエン40g及びメチルエチルケトン40gをアゾ系の重合開始剤と共に仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート22.4g、メチルメタクリレート53.4g、イソボルニルメタクリレート13.9g、トルエン30g、及び、メチルエチルケトン20gの混合液を滴下ロートを経て、約2時間かけて滴下させながら100〜110℃の温度下で8時間反応させた後、室温まで冷却した。これに、2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工製、カレンズMOI)27.8g、トルエン20g及びメチルエチルケトン20gの混合液を加えて、ラウリン酸ジブチル錫を触媒として付加反応させた。反応生成物のIR分析により、2,200cm-1の吸収ピークの消失を確認し、反応を終了した。
【0162】
得られたウレタン変性アクリルポリマー溶液の固形分は40.3重量%、分子量はポリスチレン換算で30,000、炭素間二重結合(C=C)の導入量は12.5%であった。
【0163】
b)光硬化性樹脂組成物の調製
上記ウレタン変性アクリルポリマー溶液及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例1の凹凸パターン形成用材料1を調製した。
【0164】
<凹凸パターン形成用材料1>
・ウレタン変性アクリルポリマー溶液:58重量部(固形分基準)
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製):25重量部
・コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスIPA−ST−UP、日産化学工業製):7.5重量部(固形分基準)
・シリコーンレジン(商品名:X−21−3056、信越化学工業製):5重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ):4重量部
(2)凹凸パターン形成用材料2
実施例1で製造したウレタン変性アクリルポリマー溶液及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例2の凹凸パターン形成用材料2を調製した。
【0165】
<凹凸パターン形成用材料2>
・ウレタン変性アクリルポリマー溶液:43重量部(固形分基準)
・アクリル系グラフトポリマー溶液(商品名:ケミトリーL−40M、綜研化学製):30重量部
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製):18重量部
・シリコーンレジン(商品名:X−21−3056、信越化学工業製):5重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ):4重量部
(3)比較例の凹凸パターン形成用材料C1
実施例1で製造したウレタン変性アクリルポリマー溶液及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、凹凸パターン形成用材料C1を調製した。
【0166】
<凹凸パターン形成用材料C1>
・ウレタン変性アクリルポリマー溶液:67重量部(固形分基準)
・多官能オリゴマー(商品名KAYARAD DPHA、日本化薬製):28重量部
・シリコーンレジン(商品名:X−21−3056、信越化学工業製):1重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ):4重量部
2.複製用マスター版の作製
<マスター版(1)>
152.4mm(6インチ)角で6.35mm厚の合成石英の一面に金属クロム膜を形成したフォトマスク用の基板を用意し、その金属クロム膜上にポジ型のEBレジスト(商品名「ZEP7000」、日本ゼオン(株)製)をスピンコートしてレジスト層を形成した後、電子線描画装置にて縦横の周期300nmのメッシュ状の描画データを用いて描画し、所定の現像液を用い現像処理を施した。
その結果、描画データのメッシュ開口領域に対応する領域が現像により開口したレジストパターン層が形成された。次いで、該レジストパターン層の開口部から露出している金属クロム膜を塩素系ガスを用いてドライエッチングして、該金属クロム膜を開口した。なお、金属クロム膜のドライエッチングにはUnaxis社製ドライエッチング装置「VERSALOCK 7000」を用いた。
【0167】
次いで、レジストパターン層と金属クロム層を耐エッチング層として、フッ素系ガスを用いて基板のドライエッチングを行い、凸部の山側が凹部の谷側よりも尖った所望の微細凹凸形状が形成された原型(マザー版)を得た。なお、基板のドライエッチングには、日本真空(株)製「MEPS-6025D」を用いた。
【0168】
キャビティ内面の形状は、高さHMINが250nm、周期PMAXが300nmの凸部が、図1の如く多数、縦横に正方格子状に規則正しく配列し、山側が谷側よりも尖った形状(高さH/2に於ける山側の幅Wt100nm、谷側の幅Wb200nm)の微細凹凸形状であった。
【0169】
次に、この原型から、電気めっき法によって、厚さ80μmのニッケルめっきプレートからなるシート状の複製型(マスター版(1))を作製し、スタンパーとして用いた。これは、谷側が山側よりも尖った形状を持つ。
【0170】
<マスター版(2)>
スタンパーとして用いるマスター版の複製を、原型から1回の複製操作で直接行なうのではなく、2回の複製操作で行なった。具体的には、上記マスター版(1)を複製型として、マスター版(1)の場合と同様に、電気めっき法によって厚さ80μmのニッケルめっきプレートからなるシート状のマスター版(2)を作製し、これをスタンパーとした。
【0171】
マスター版(2)のキャビティ形状は、マスター版(1)の微細凹凸パターン形状と同様であるが、個々の微細凹凸は正逆反転しており、山側が谷側よりも尖った形状であった。
【0172】
<樹脂製マスター版(3)及び(4)>
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材の片面に、2P法によって、表面に所定の微細凹凸を有する微細凹凸層を形成し、樹脂製のマスター版(3)及び(4)とした。
【0173】
具体的には、前記基材の片面に紫外線硬化型の電離放射線硬化性樹脂をポッティングした後、その樹脂塊の上からマスター版(1)を押しつけて樹脂を版面に行き渡らせ、圧着させたままの状態で基材側から高圧水銀灯で紫外線を照射して樹脂を光重合により硬化させた後、マスター版(1)を剥がし、シート状の樹脂製マスター版(3)を得た。硬化後の樹脂膜厚は2μmであった。同様の方法で、マスター版(2)から作製した樹脂製マスター版(4)を作製した。
【0174】
3.実施例1、2
(1)複製テスト
厚み25μm、幅650mm、長さ3000mのポリエチレンテレフタレートのロール状フィルム(ダイヤホイルT600E、U−36(商品名):三菱ポリエステルフィルム製)のロール状フィルムに、グラビアコーターによって、上記凹凸パターン形成用材料1又は2を塗布し、次いで100℃に設定した加熱炉内で約30秒間乾燥させ、凹凸パターン形成層を形成して巻き取った。塗布量は、2g/m2であった。巻き取ったフィルムにブロッキングは起きていなかった。
【0175】
凹凸パターン形成層を形成した巻取り体を、微細凹凸パターンエンボス機のロールストックに設置した。マスター版(1)を金属ロールに巻きつけ、5kg/cm2、温度130〜150℃のヒートローラーで押圧することにより、微細凹凸パターンを形成した。エンボス速度を1m/min、3m/min、5m/minとして行った。低速の場合は温度を低めに調節し、高速の場合は高めに調節した。いずれの場合も、樹脂がマスター版に十分流れ込むことを、フィルムの裏面から確認し、また、樹脂がマスター版に移行しないような条件を選定することが必要である。
【0176】
マスター版(4)についても、同様のエンボスを行った。
【0177】
エンボス後、パターンから剥離して、続く紫外線照射ゾーンに導き、積算露光量が800mJになるような条件で硬化させ、巻き取った。
(2)反射率測定
得られた微細凹凸パターンフィルムの裏面を遮光し、5°の入射角から可視光を入射し、その反対光の反射率(波長650nm)を測定した。反射率の値を表に示す(単位%)。
【0178】
エンボスを形成していないフィルムの反射率は、3.0%以上であり、凹凸パターンを形成することによって、反射防止性能を付与することができた。
【0179】
【表1】
【0180】
実施例で作製した微細凹凸パターンをAFMによって観察した。いずれも、谷側よりも山側の方が尖っており、周期300nm、高さ200nm以上の規則的な凹凸が形成されていた。
【0181】
4.比較例1
凹凸パターン形成用材料C1とマスター版(1)及び(4)を用いて、実施例1と同様の方法で微細凹凸パターンの複製テストを行ったところ、同じ条件ではマスター版へ樹脂が移行してしまい、エンボスをすることができなかった。
【0182】
そこでマスター版(1)を用い、マスター版へ樹脂が移行しないような温度条件として、100℃にヒートロールを調整して速度5m/minエンボスを行ったところ、反射率は1.2%であった。ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、反射率は低減されており、反射防止の効果が認められるが、実施例で作製したフィルムよりは反射率が高かった。実施例よりも反射率が高かった原因は、ヒートロールの温度が低くなったために凹凸パターン形成用材料がマスター版の内部へ充分に流れ込まなくなったためと考えられる。
【0183】
凹凸パターンをAFMで観察した結果、高さが125nm、周期300nmの凹凸であることが確認された。
【0184】
5.実施例3
実施例1の複製テストと同様の方法で、凹凸パターン形成用材料1を用いて凹凸パターン形成層を作製した巻取り体に、マスター版(2)を用いて微細凹凸パターンを形成し、微細凹凸パターンのシートを作製した。マスター版(3)についても、同様の複製テストを行った。
【0185】
複製品の凹凸パターンをAFMで観察したところ、いずれも、山側よりも谷側の方が尖った形状であった。
【0186】
続いて、得られた微細凹凸パターンのシートを射出成形機の金型部に貼り付け、ポリメチルメタクリレート樹脂を溶融させて射出成形を行い、微細凹凸パターンを持つアクリル樹脂成形品を得た。射出成形開始前と、10回の射出成形を行った後で微細凹凸パターンシートの凹凸の高さをAFMで調べたところ、いずれのシートも高さの変化は5%以内であり、射出成形時に耐熱性があることが確認された。
【0187】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明に係る微細凹凸パターン作成方法によれば、光の波長よりも小さい周期構造により反射防止性能を発揮する微細凹凸パターンを正確に且つ効率良く作製することができる。
【0188】
特に、本発明の方法は、連続フィルム状の凹凸パターン受容体を用い、連続エンボス加工を行うことが可能であり、反射防止性能を発揮する微細凹凸パターンを高速で大量生産する方法として適しており、反射防止物品に広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により作製される微細凹凸パターンの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】微細凹凸パターンによって得られる有効屈折率の分布を概念的に説明するための図である。
【図3】微細凹凸パターンによって得られる有効屈折率の分布を概念的に説明するための図である。
【図4】微細凹凸パターンの縦断面を模式的に示した図である。
【図5】微細凹凸パターンの形状の例示である。
【図6】微細凹凸パターンの形状の例示である。
【図7】本発明に係る微細凹凸パターン作成方法の一例を説明するための図である。
【図8】本発明に係る微細凹凸パターン作成方法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…微細凹凸パターン
2…支持体
3…凹凸パターン受容体
4…ロールストック
5…支持ローラー
6…スタンパー
7a…金属ローラー
7b…ペーパーローラー
7c…圧接ローラー
7d…圧接ローラー
8…照射源
9…ロールストック
10…照射源(予備硬化)
Claims (8)
- 微細凹凸の頂点における周期PMAXと、可視光の波長帯域の真空中における最小波長λMINとの間に
PMAX≦λMIN
なる関係が成立し、反射防止性能を有する微細凹凸パターンの作製方法であって、
支持体上に固体状の硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする、微細凹凸パターン作製方法。 - 前記凹凸パターン形成層からスタンパーを取り除いた後に当該凹凸パターン形成層を硬化させる、請求項1に記載の微細凹凸パターン作製方法。
- 前記凹凸パターン受容体は、可撓性の連続支持体上に前記凹凸パターン形成層を設けてなり、当該凹凸パターン受容体を、その一端側から供給しながらスタンパーを圧接する、請求項1又は2に記載の微細凹凸パターン作製方法。
- 前記凹凸パターン形成層の厚みが0.3〜5μmである、請求項1乃至3のいずれかに記載の微細凹凸パターン作製方法。
- 前記硬化性樹脂組成物の軟化開始温度が50℃以上である、請求項1乃至4のいずれかに記載の微細凹凸パターン作製方法。
- モスアイ構造の微細凹凸パターンを作製する、請求項1乃至5のいずれかに記載の微細凹凸パターン作製方法。
- 前記請求項1乃至6のいずれかに記載の方法により作製された微細凹凸パターンのシートをキャビティ内に装着した型を用いて射出成形を行うことにより成形品の表面に微細凹凸パターンを形成する、微細凹凸パターン作製方法。
- 前記請求項1乃至7のいずれかに記載の方法により作製された微細凹凸パターンを備える、反射防止物品。
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