以下において本発明を詳しく説明する。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表す。
本発明に係る光硬化性樹脂は、水酸基を有する構成単位を主鎖骨格に含む重合体(a)と、少なくとも1つの水酸基と1つの光重合性官能基を有する重合性化合物(c)とが、少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(b)を介して結合していることを特徴とする。
すなわち、この光硬化性樹脂は、前記イソシアネート化合物(b)の1分子内に含まれるイソシアネート基の1つが、前記重合体(a)の主鎖にぶら下がるペンダント構造に含まれる水酸基とウレタン結合すると共に、このイソシアネート化合物(b)の同じ分子内に含まれる別のイソシアネート基が、前記重合性化合物(c)の水酸基とウレタン結合した構造である。従って、この光硬化性樹脂は、重合体(a)に含まれる個々の水酸基に対して、2つのウレタン結合を介して、少なくとも1つ(好ましくは2以上)の光重合性官能基を導入したものであり、その分子内に多量のウレタン結合構造と多量の光重合性官能基を含有させることができる。
この光硬化性樹脂を主成分とする光硬化性樹脂組成物は、何らかの被塗布面に塗布し必要に応じて乾燥させることで、室温で高粘度又は固体状の熱成形性を有する塗膜を形成することができる。この塗膜は液状ではないので、スタンパーを圧接する際に気泡が入り難い。また、この塗膜は熱可塑性に優れていることからスタンパーを圧接しながら必要に応じて加熱するとスタンパーのキャビティ内の隅々にまで流れ込み、正確に賦型される。さらに、この光硬化性樹脂組成物は離型性及び形状維持性に優れており、硬化前にスタンパーを引き剥がす場合でも表面荒れや版取られを起こさず、引き剥がした後で放置しても型崩れを起こさない。また、この光硬化性樹脂組成物はタック性が弱いので、この光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成層を有する微細凹凸パターン受容体を、硬化前に巻き取ったり又は積み重ねたとしてもブロッキングを起こし難い。このように、本発明に係る光硬化性樹脂を主成分とする光硬化性樹脂組成物からなる塗膜は、硬化前における微細凹凸パターン形成能及び加工適性に優れている。
しかも、この塗膜を硬化させることによって得られる微細凹凸パターン形成層は、強度、硬度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、被塗布面(代表的には基材)に対する密着性、基材の屈曲や伸縮に追随できる可とう性等の諸物性にも優れている。
特に、上記重合性化合物(c)として一分子内に光重合性官能基を2つ以上有するものを用いる場合には、重合体(a)の水酸基1つ当たり光重合性官能基が2つ以上導入されるので、架橋密度が非常に大きくなり、硬化後の諸物性を向上させる効果が高い。
硬化後の諸物性の中でも、とりわけ耐熱性及び耐久性(耐摩耗性、耐薬品性、耐水性)が架橋密度の増大によって向上する。例えば、耐熱性の向上によって微細凹凸パターンを高温環境下、特に熱と圧力が同時に加わるような厳しい環境下に曝す場合でも変形及び消失が起き難くなり、耐摩耗性及び耐擦傷性の向上によって、ホログラム等の微細凹凸パターンをクレジットカードの表面のように機械的外力に曝され易い場所に設ける場合でも摩耗や傷がつき難くなり、或いは、耐薬品性の向上によって、ホログラム等の微細凹凸パターンの表面を溶剤で拭き取る場合でも溶出し難くなる。
この光硬化性樹脂は、少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(b)と少なくとも1つの水酸基と1つの光重合性官能基を有する重合性化合物(c)とを反応させた付加物(b−c)を、水酸基を有する構成単位を主鎖骨格に含む重合体(a)に反応させることによって合成することが可能である。
前記重合体(a)における水酸基を有する構成単位とは、重合体(a)の主鎖にぶら下がるペンダント構造に水酸基を有する構成単位(ペンダント構造が水酸基そのものである場合を含む)のことをいい、イソシアネート化合物(b)を介して光重合性官能基を導入するための成分である。従って、水酸基を有する構成単位の含有割合は、光硬化性樹脂に要求される光重合性の程度を考慮して調節される。
水酸基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用されるモノマーとしては、エチレン性不飽和結合含有基と水酸基を有する化合物を使用することができる。
水酸基を有する構成単位としては、下記式(1)で表される構成単位が好ましい。
(式中、R1は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは単結合又は2価の原子団を示す。)
式(1)中に含まれるR1は、水素又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル等が例示され
る。
式(1)中に含まれるXの構造は特に限定されず、主鎖に水酸基を直接結合させる単結合であっても良いし、何らかの2価の原子団であってもよい。2価の原子団としては、分岐、脂肪族炭素環、芳香族炭素環又は置換基を有していてもよいアルキレン基、或いは、エステル基、アミド基、エーテル基、アルキレンオキシド鎖等の化学構造を含む炭化水素鎖を例示することができる。
2価の原子団Xの分子鎖を短くすると架橋が密になるので、樹脂組成物に高硬度が求められる場合に有効であり、逆に、この分子鎖を長くすると、この水酸基の部分にイソシアネート化合物(b)を介して導入した光重合性官能基が動き易くなり、反応性が高くなるので、柔軟で強度のある樹脂が得られる。
式(1)で表される構成単位としては、2価の原子団Xがエステル基を含んでいる下記式(1a)で表される構成単位が好ましい。2価の原子団Xの分子鎖の長さ考慮すると、R2の炭素原子数は1〜8であることが好ましい。
(式中、R1は上記式(1)と同じであり、R2は分岐、脂肪族炭素環、芳香族炭素環又は置換基を有していてもよいアルキレン基である。)
式(1)の構成単位を導入するために使用されるモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有アクリルアミド;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル等のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸エステル;ビニルアルコール、ビニルフェノール等を例示することができる。
重合体(a)の主鎖骨格には、水酸基を有する構成単位が必須単位として含まれるが、主鎖骨格に他の構成単位が含まれていても良い。他の構成単位としては、例えば、アルキル基等の有機基或いはカルボキシル基等の酸性官能基を有する構成単位がある。このような他の構成単位を主鎖骨格に導入するために使用されるモノマーとしてアクリル系化合物やオレフィン系化合物のようなエチレン性不飽和結合を含有する化合物を用いることができる。
アクリル系化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基又はその他の酸性官能基を含有するアクリル系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキルアクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート;2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルコキシアルキルアクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコールアクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;その他、アクリロニトリル、ジメチルアクリルアミド、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の離型性を有するモノマーも挙げることができる。
また、オレフィン系化合物の具体例としては、2−カルボキシ−1−ブテン、2−カルボキシ−1−ペンテン、2−カルボキシ−1−ヘキセン、2−カルボキシ−1−へプテン等のカルボキシル基又はその他の酸性官能基を含有するオレフィン系化合物を挙げることができる。
特に、嵩高い基を有する構成単位は、その構造自体の耐熱性が高いので、硬化後の樹脂のガラス転移温度を高くするために有効である。嵩高い基を有する構成単位を重合体の主鎖へと導入するために使用されるモノマーとしては、エチレン性不飽和結合含有基と嵩高い基を有するアクリル系化合物が好ましく用いられ、具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、4−ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクトン等の環状構造を有するモノマーを例示することができる。
また、N−フェニルマレイミド等の光二量化反応を起こす官能基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等の光カチオン重合を起こす官能基を有するモノマーを、構成単位として用いることができる。
水酸基を有する構成単位や嵩高い基を有する構成単位、及びその他の構成単位を形成する共重合モノマーは、各々例示したものを単独でも、また2種以上を混合して使用しても良い。
重合体(a)中に含まれる水酸基を有する構成単位の量は、要求される光重合性の程度に応えるべく調節され、重合体の主鎖を形成するための共重合モノマーの総使用量(総仕込み量)に対する水酸基含有モノマーの仕込み量の割合で表す時に、通常は5〜90モル%、特に10〜60モル%含有することが好ましい。水酸基を有する構成単位の割合が少なすぎる場合には、最終的に光硬化性樹脂に導入される光重合性官能基の量が少なくなるために架橋密度が不充分となり易く、さらには光重合性官能基の導入に伴い形成されるウレタン結合構造の量も少なくなるため、当該光硬化性樹脂は硬化前の熱可塑性及び硬化後の柔軟性が不充分となり易い。一方、水酸基を有する構成単位の割合が多すぎる場合には、合成時にゲル化する等の不都合がある。
嵩高い基を有する構成単位は、主に、光硬化性樹脂の硬化前の熱可塑性及び硬化後の柔軟性を考慮して調節され、重合体の主鎖を形成するための共重合モノマーの総使用量(総仕込み量)に対する嵩高い基を含有するモノマーの仕込み量の割合で表す時に、通常は0〜90モル%、特に5〜80モル%含有することが好ましい。嵩高い基を有する構成単位の割合が少なすぎる場合には、最終的に得られる光硬化性樹脂の硬化前の耐ブロッキング性及び硬化後の耐熱性が不充分となり易い。一方、嵩高い基を有する構成単位の割合が多すぎる場合には、最終的に得られる光硬化性樹脂の硬化前の熱可塑性が低下するという不都合がある。
上記重合体(a)としては、例えば下記式(2)
(式中、Zは光硬化性樹脂を改質するための基を表し、好ましくは嵩高い環状構造の基である。R3は夫々互いに独立して水素原子又はメチル基を表し、R4は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R5は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。l(エル)とmとnとo(オー)の合計を100とした場合に、lは0〜90、mは0〜80、nは0〜50、oは5〜90の整数である。)で表される構造の重合体を例示することができる。
この式(2)で表される重合体の中で好ましい1例としては、メチルメタクリレート0〜90モルと、嵩高い基を有するビニル系又はアクリル系モノマー(例えばイソボルニルメタクリレート)0〜80モルとメタクリル酸0〜50モルと2−ヒドロキシエチルメタクリレート10〜80モルとを共重合して得られるものを例示することができる。
前記イソシアネート化合物(b)とは、一分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有して前記重合体(a)及び前記重合性化合物(c)の各々の水酸基とウレタン結合することができるイソシアネート化合物をいい、そのようなイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニレンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、下記式(3a)乃至(3g)で表されるイソシアネート化合物を使用することもできる。
これらのイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、イソホロンジイソシアネートは下記式(4)で表される化合物であり、樹脂の柔軟性や隣接する層との密着性の観点から好ましく用いられる。
前記重合性化合物(c)は、前記重合体(a)に導入すべき1又は2以上の光重合性官能基、及び、前記イソシアネート化合物(b)のイソシアネート基とウレタン結合を形成するための水酸基を有する化合物である。
重合性化合物(c)における光重合性官能基とは、光照射により重合反応し、光硬化性樹脂の分子間に架橋結合を形成し得る官能基であり、光照射により直接活性化して光重合反応するものであってもよいし、光重合性官能基と光重合開始剤を共存させて光照射した時に光重合開始剤から発生した活性種の作用により重合反応が開始、促進されるものであってもよい。なお本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、放射線も含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。
光重合性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合(代表的にはエチレン性二重結合)のような光ラジカル重合反応性を有するもの、エポキシ基等の環状エーテル基のような光カチオン重合反応性を有するもの、光アニオン重合反応性を有するもの、及び、光二量化反応性を有するもの等が該当する。その中でもエチレン性二重結合が好ましい。エチレン性二重結合は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のいずれでもよく、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
水酸基と共に(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリロイル基を1つのみ有する化合物;及び、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、イソシアヌル酸オキシエチルジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類のような(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物が例示できる。
これらの中でも、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物は、重合体(a)に含まれる個々の水酸基に対して複数の(メタ)アクリロイル基を導入できるので、光硬化性樹脂の架橋密度を充分に高めることができ、好ましい。
本発明に係る光硬化性樹脂を製造する際に、重合体(a)、イソシアネート化合物(b)及び重合性化合物(c)を一度に混合して反応させると、イソシアネート化合物(b)の一分子内に複数存在する全てのイソシアネート基が、重合体(a)とだけ又は重合性化合物(c)とだけ反応する副反応が起こり易いので、上記した通りの分子構造を得ることが難しい。そのため、本発明に係る光硬化性樹脂を製造するためには、先ず、水酸基を有する構成単位を主鎖骨格に含む重合体(a)、及び、イソシアネート化合物(b)と重合性化合物(c)の付加物(b−c)とを各々別個に製造し、それから前記重合体(a)に付加物(b−c)を反応させることが好ましい。
前記重合体(a)を製造するために用いられる重合用溶媒としては、水酸基、アミノ基等の活性水素を有しない溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸−3−メトキシブチル等が挙げられ、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等も用いることができる。
重合体(a)を製造するために用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものを使用することができる。その具体例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のニトリル系アゾ化合物(ニトリル系アゾ系重合開始剤);ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等の非ニトリル系アゾ化合物(非ニトリル系アゾ系重合開始剤);t−ヘキシルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニックペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1'−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物(パーオキサイド系重合開始剤);および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を使用する場合には、これと還元剤とを組み合わせてレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
重合体(a)の製造においては、重量平均分子量を調節するために分子量調節剤を使用することができ、例えば、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
重合体(a)は、ランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってよい。ランダム共重合体を製造する場合には、前記の各モノマー、触媒からなる配合組成物を、溶剤を入れた重合槽中に80〜110℃の温度条件で2〜5時間
かけて滴下し、熟成させることにより重合させることが可能であり、重合体(a
)が得られる。
イソシアネート化合物(b)と重合性化合物(c)とを反応させて得られる付加物(b−c)は、その分子内に、重合体(a)の水酸基と反応してウレタン結合を形成し得るイソシアネート基が1つ残っていれば充分である。従って、イソシアネート化合物(b)としてジイソシアネート化合物を用い、重合性化合物(c)として分子内に水酸基を1つだけ有する化合物を用いる場合には、イソシアネート化合物(b)と重合性化合物(c)の仕込み量を等モル前後とし、約1:1モルの付加物を調製することが好ましい。
イソシアネート化合物(b)に対する重合性化合物(c)の付加量が多すぎる場合にはイソシアネート基が消費され過ぎてしまうので、重合体(a)の水酸基と反応できない副生物が増加するという不都合がある。一方、イソシアネート化合物(b)に対する重合性化合物(c)の付加量が少な過ぎる場合には付加物(b−c)の収率が下がるという不都合がある。
前記重合体(a)と付加物(b−c)との反応は、前記重合体(a)を溶解可能な溶剤、例えば、トルエン、ケトン、セロソルブアセテート、ジメチルスルフォキサイド等の溶媒に溶解させ、この溶液を撹拌しながら、付加物(b−c)を滴下及び反応させることにより、付加物(b−c)中のイソシアネート基が重合体(a)の水酸基と反応してウレタン結合を生じ、該ウレタン結合及び付加物(b−c)中のウレタン結合を介して重合体(a)中に光重合性官能基を導入することができる。この際に使用する付加物(b−c)の使用量は、重合体(a)の水酸基を有する構成単位と付加物(b−c)との比率で、水酸基を有する構成単位1モル当たり付加物(b−c)が0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モルの範囲になる量である。尚、上記重合体(a)中の水酸基よりも当量以上の付加物(b−c)を使用する場合で重合体(a)にカルボキシル基が含まれる場合には、該付加物(b−c)は重合体(a)中のカルボキシル基とも反応してアミド結合を生じることもあり得る。
本発明においては、重合体(a)の水酸基に対し付加物(b−c)が全てウレタン結合して光硬化性樹脂を形成し、且つ、重合体(a)の水酸基に結合していない付加物(b−c)や重合性化合物(c)が反応生成物中に混在していないことが好ましいが、これらの付加物(b−c)や重合性化合物(c)は、光重合性官能基を複数有するモノマーとして機能し、本発明に係る光硬化性樹脂との間で架橋結合を形成し得るので、ある程度の量であれば光硬化性樹脂と共存していてもよく、硬化時に架橋密度を高めて硬化樹脂層の塗膜物性を向上させる効果が得られる。従って、重合体(a)に付加物(b−c)を反応させる方法で得られる光硬化性樹脂は、副生物又は未反応体による悪影響が少ないため、これらが混在したままの状態でも凹凸パターン形成材料として利用可能であり、精製の手間が省ける点で有利である。
本発明に係る光硬化性樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量が10,000〜500,000であることが好ましい。上記分子量が10,000未満の場合には、充分な成膜性が得られないばかりでなく、塗工後に室温で巻取り保管した時にブロッキングを起こし易い。また、上記分子量が500,000を超える場合には軟化しにくいために賦型性が悪くなる。
次に、本発明に係る光硬化性樹脂組成物について説明する。本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、上記本発明に係る光硬化性樹脂と、離型剤とを必須成分として含有する。
本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含有される光硬化性樹脂は、上述したように硬化前には優れた凹凸パターン形成能と加工適性を発揮すると共に、硬化後には優れた塗膜物性を発揮する。そのため本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、非常に複雑な微細凹凸パターンでも精度良く複製することができ、複製の際に連続生産性にも優れ、さらには、強度、硬度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、被塗布面(代表的には基材)に対する密着性、基材の屈曲や伸縮に追随できる可とう性等の諸物性に優れた微細凹凸パターン形成層を形成することができる。
特に、重合性化合物(c)として一分子内に光重合性官能基を2つ以上有するものを用いる場合には、上記したように光硬化性樹脂に多量の光重合性官能基が導入されるので、光硬化性樹脂組成物の架橋密度が非常に大きくなり、硬化後の諸物性を向上させる効果が高い。
硬化後の諸物性の中でも、とりわけ耐熱性及び耐久性(耐摩耗性、耐薬品性、耐水性)が架橋密度の増大によって向上し、高熱、摩擦又は溶剤に曝されても、微細凹凸パターンの変形、消失、損傷が起こり難い。
また、本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、優れた離型性を有する上記光硬化性樹脂に対し離型剤を必須成分として配合することにより、さらに離型性を改善しているので、光硬化性樹脂組成物の層に押し付けたスタンパーを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離することができ、且つ、剥離の際にスタンパー内に樹脂の一部が残らないので反復エンボス性にも優れており、微細凹凸パターンの精度及び連続生産性の点で特に優れている。
離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系の界面活性剤等が何れも使用可能である。
シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる上記光硬化性樹脂と組み合わせた時にスタンパーからの離型性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性又は変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当する。
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
変性シリコーンオイルは樹脂との適度な相溶性があるため好ましい。特に、光硬化性樹脂又は光硬化性樹脂組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、硬化樹脂層中に化学結合よって固定されるので、当該硬化樹脂層の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の光硬化性樹脂組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く離型性に優れており、表面にブリードアウトしても樹脂との密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
シリコーン系アクリル樹脂は、上記(メタ)アクリロイル変性シリコーンオイルの他にも、ケイ素を含有するモノマーを共重合或いはグラフト化したアクリル樹脂を用いることができる。
上記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
離型剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜30重量%の割合で配合するのが好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、スタンパーと光硬化性樹脂層の離型性が不充分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身及び近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
本発明に係る光硬化性樹脂組成物に、有機溶媒にコロイド状に分散させることが可能な無機微粒子を含有させる場合には、賦型性、形状維持性及び離型性が向上する点から好ましい。
有機溶媒にコロイド状に分散させることが可能な無機微粒子としては、無機微粒子の一部が水酸化物になっており水が吸着して水和した構造をとっていると、光硬化性樹脂組成物の希釈溶剤である有機溶媒中でコロイド状の形態に分散させやすいので好ましい。また、無機微粒子の表面を疎水化処理すると、コロイド状に分散させやすくなる。無機微粒子は、例えば、有機アミンや有機カルボン酸などの有機低分子成分で表面処理することにより疎水性を付与することができる。
また、無機微粒子は、塗膜に充分な透明性を確保するために、いわゆる超微粒子サイズのものを用いる。ここで「超微粒子」とはサブミクロンオーダーの粒子のことであり、一般的に「微粒子」と呼ばれている数μmから数100μmの粒子径を有する粒子よりも粒子径の小さいものを意味している。本発明において用いられる無機微粒子の具体的なサイズは、光硬化性樹脂組成物が適用される光学物品の用途及びグレードによっても相違するが、一般的には一次粒子径が1nm〜300nmの範囲のものを用いるのが好ましい。一次粒子径が1nm未満では、樹脂組成物の賦型性、形状維持性及び離型性を充分に向上させることが困難になり、一方、一次粒子径が300nmを超えると、樹脂の透明性が損なわれ光学用物品の用途によっては透明性が不充分となる場合がある。
無機微粒子の具体例としては、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al2O3等の金属酸化物微粒子を挙げることができ、これらの中から上記したようにコロイド状分散が可能で且つサブミクロンオーダーの粒子サイズを有するものを選択して用いるのが好ましく、特に、コロイダルシリカ(SiO2)微粒子を用いるのが好ましい。
無機微粒子は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に1〜70重量%の割合で配合するのが好ましく、1〜50重量%の割合で配合するのが特に好ましい。無機微粒子の割合が1重量%未満では、樹脂組成物の賦型性、形状維持性及び離型性を充分に向上させることが困難になり、一方、無機微粒子の割合が70重量%を超えると、脆質性が顕著になり、露光硬化後に充分な強度や表面硬度が得られにくくなる。
無機微粒子は、どのような形状であってもよいが、針状等の嵩高い形状のものが好ましい。針状微粒子としては、例えば、太さが5〜20nmで、長さが40〜300nmのものを用いることができる。
無機微粒子の表面に(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基を導入し、これを用いる場合には、微粒子同士で又は光硬化性樹脂の硬化性成分との間で共有結合等の化学結合を形成させることができるので、塗膜の諸物性、特に強度及び硬度が向上する。
このような無機微粒子を光硬化性樹脂組成物に配合する場合には、当該光硬化性樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層にプレススタンパーを押圧して微細凹凸パターンを賦形し、スタンパーを取り外した後の露光工程や蒸着工程等のプロセス途中で、樹脂組成物自身の弾性により微細凹凸パターンが丸みを帯びて型崩れするのを防ぐことができる。また、上記無機微粒子を配合することにより光硬化性樹脂組成物の離型性が向上し、光硬化性樹脂層に押圧したスタンパーを取り外すときにスタンパーのキャビティ内面に樹脂組成物が付着しにくくなる。
これにより、従来から要求されている程度の凹凸の幅(ピッチ)が約10μm以下又は凹凸の深さが2μm以下の微細凹凸パターンを精度良く複製できることは言うまでもなく、より高度な光学的機能を有する複雑な微細凹凸パターン、例えば、凹凸パターンの幅(ピッチ)が約200nm以下であったり、或いは、幅に対する深さ(深さ/幅)が1/2以上であるパターンを複製する場合でも、スタンパーの圧接時にキャビティ内の隅々にまで微細凹凸パターン形成材料を流し込むことができ、スタンパーを引き剥がす時に版取られを起こさず、スタンパーを取り除いた後のパターン崩れも起こし難いため、微細凹凸パターンを精度良く且つエンボス加工により大量連続生産することが可能になる。
さらには、無機微粒子には光硬化性樹脂組成物のタック性を軽減する効果もあり、基材フィルムに光硬化性樹脂層を形成しプレススタンパーを押圧する前の中間積層体をロール状に巻き取ってもブロッキングを生じにくくなるという利点がある。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、光硬化性樹脂組成物の硬化前又は硬化後の物性を調節する目的で、補助的なバインダー成分、例えば、非反応性又は架橋反応性のバインダーポリマー、或いは、単官能又は多官能の光重合性モノマー又はオリゴマーを配合しても良い。架橋反応性のバインダー成分を補助的に用いる場合には、通常、上記光硬化性樹脂と同じ反応形式のものが用いられ、例えば、光硬化性樹脂が光ラジカル重合性であれば、補助的バインダー成分も光ラジカル重合性のものが組み合わされる。
多官能のモノマー又は多官能オリゴマー、すなわち光重合性官能基を一分子内に2つ以上有するモノマー又はオリゴマーは、光硬化性樹脂組成物の架橋密度をさらに高める目的で好適に用いられる。
光ラジカル重合性を有する2官能のモノマー、オリゴマーとしてはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等;3官能のモノマー、オリゴマーとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等;4官能のモノマー、オリゴマーとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能以上の光ラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしてはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等;その他にも、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマー;フォスファゼン骨格、アダマンタン骨格、カルド骨格、ノルボルネン骨格等の嵩高い構造を持つモノマー又はオリゴマー等が挙げられる。官能基数は特に限定されるものではないが、官能基数が3より小さいと耐熱性が低下する傾向があり、又、20以上では柔軟性が低下する傾向があるため、特に3〜20官能のものが好ましい。
多官能の光ラジカル重合性モノマー又はオリゴマーとしては、上記の(メタ)アクリレート類のほか、ジビニルベンゼン等のビニル化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリル、ジアリルフタレート、ジメタクリルフタレート、ジアリルイソフタレート等のアリル化合物を用いることもできる。
光カチオン重合反応を利用する場合には、分子内に一つ以上のエポキシ基を有するモノマー、分子内に一つ以上のエポキシ基と一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オキセタン化合物等を使用することができる。
上記モノマー或いはオリゴマーの使用量は、前記光硬化性樹脂100重量部当たり約5〜80重量部の範囲、好ましくは約10〜40重量部の範囲で使用する。モノマー或いはオリゴマーの使用量が上記範囲未満では、得られる硬化樹脂層の強度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性を向上させるためには充分でない場合が多い。一方、モノマー或いはオリゴマーの使用量が上記範囲を超えると表面のタックが高くなり、ブロッキングを引き起こしたり、ホログラム等の複製時に版(プレススタンパー)に材料が一部残る(版取られ)ことにより反復エンボス性が低下する等の問題を来たし易い。
本発明に係る光硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに光重合開始剤、重合禁止剤や、有機金属カップリング剤等の他の成分を配合して調製することができる。
光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、バインダーやモノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる。
光ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、アントラキノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド、α−クロルメチルナフタレン、アントラセン、ヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等がある。
光カチオン開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等が挙げられる。
光アニオン開始剤としては、例えば、1,10‐ジアミノデカンや4,4'‐トリメチレンジピペリジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト‐アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等を例示することができる。
上記光重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.5〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。光重合開始剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。
光硬化性樹脂組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアクリルシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;及び、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメ
タクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
上記有機金属カップリング剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜15重量%の割合で配合するのが好ましい。有機金属カップリング剤の割合が上記範囲未満では、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与効果が不充分である。一方、有機金属カップリング剤の割合が上記範囲を超えると、組成物の安定性、成膜性が損なわれるおそれがある。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、通常、希釈溶剤を用いて塗布液の状態に調製し、微細凹凸パターンの形成に用いる。上記したような各材料を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、またはそれらの混合溶剤に溶解、分散することにより、本発明に係る光硬化性樹脂組成物の塗布液を調製することができる。塗布液は、通常、固形分濃度が10〜50重量%
程度となるように調節される。
なお、光硬化性樹脂組成物を調製する際に、重合体(a)に付加物(b−c)を反応させる方法で得られた光硬化性樹脂を用いる場合には、上述したように副生物又は未反応体による悪影響が少ないため、重合体(a)に付加物(b−c)を反応させた反応液をそのまま他の材料と混合して光硬化性樹脂組成物を調製してもよく、遊離の付加物(b−c)や未反応の重合性化合物(c)が光硬化性樹脂組成物中に混在していても、これらは多官能モノマーとして機能し、架橋密度を向上させる効果が得られる。
以上のようにして得られる光硬化性樹脂組成物を基材フィルム等の支持体の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させて光硬化性樹脂組成物の層(微細凹凸パターン形成層)を形成して凹凸パターン受容体を作製し、当該凹凸パターン受容体の微細凹凸パターン形成層表面にスタンパーを圧接してエンボス加工を行い、微細凹凸パターン形成層を露光して硬化させることにより、光学的機能を有する微細凹凸パターンを形成することができ、光学物品やスタンパーとして利用できる。
また、この光硬化性樹脂組成物により、上述したような高度な光学的機能を有する複雑な微細凹凸パターンを精度良く且つエンボス加工により大量連続生産することが可能になる。
以下において上記光硬化性樹脂組成物を用いる微細凹凸パターン形成方法、微細凹凸パターン転写箔について述べる。
支持体に、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を支持体上に塗工して微細凹凸パターン形成層を形成する前後、或いは、微細凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成する前後に、必要に応じて支持体又は微細凹凸パターン形成層の上にアンカー層、剥離層、金属薄膜層、オーバーコート層、感圧又は感熱接着剤層等の他の層を形成してもよい。
微細凹凸パターン形成層は、スタンパーを圧接した状態で硬化させてもよいが、スタンパーを取り外した後で露光、加熱することも可能である。後者の方法は、微細凹凸パターン形成層を硬化工程に移す前にスタンパーを取り外し、取り外したスタンパーはエンボス工程で連続使用できるので連続生産性に優れている。
また、本発明では、上記光硬化性樹脂組成物が成膜性及び離型性に優れていることを利用し、基材フィルム上に微細凹凸パターン形成層を形成した中間積層体をロール状に巻き取って一時的に貯蔵し、別の場所へ運搬して巻き戻し、スタンピング及び硬化を行うことも可能である。
さらにスタンピング及び硬化を行った中間積層体をロール状に巻き取って一時的に貯蔵し、別の場所へ運搬し巻き戻し、必要に応じて追加の光硬化工程を行って充分に硬化させたり、或いは、必要に応じて金属薄膜、オーバーコート層、感圧又は感熱接着剤層等を形成することが可能である。
凹凸パターン受容体は、微細凹凸パターンの表面構造を付与すべき最終製品であってもよいが、中間的な転写媒体であってもよい。すなわち本発明においては、上記光硬化性樹脂組成物を第一の支持体に塗布して微細凹凸パターン形成層を形成することで転写箔(凹凸パターン受容体)を作製し、この転写箔の微細凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成し、当該微細凹凸パターン形成層を硬化させた後で、第二の支持体(最終製品)上に転写することが可能である。転写箔を用いる場合には、最終製品の表面に直接エンボス加工を行う必要が無い、或いは、転写箔上に予め微細凹凸パターンを大量連続形成することができる等の利点があり、例えば、複雑な表面形状の物品等の直接エンボス加工を行うことが困難な物品の表面や、ロール状に巻き取ることができないガラス、プラスチック、金属板等の支持体に、微細凹凸パターンを連続転写によって形成することも可能である。
本発明において微細凹凸パターン転写箔は、第一の支持体上に、少なくとも本発明に係る前記光硬化性樹脂組成物からなり、且つ、第一の支持体から剥離して第二の支持体に転写することが可能な状態で微細凹凸パターン形成層が設けられている積層体であり、必要に応じて、上記微細凹凸パターン形成層に加えて剥離層、反射層、接着剤層或いはその他の層の1又は2以上を設けることができる。例えば図1に示すように、転写箔1は、支持体2上に剥離層3、微細凹凸パターン形成層4、反射層5、及び、接着剤層6を順次積層した構成としてもよい。
転写箔を作製する場合の支持体としては、通常、可撓性のある基材フィルムが用いられ、強度や耐熱性等の点でポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムが適しているが、プラスチックフィルムに限られず、また、可撓性が無くてもよく、金属板や紙等の他の材質を支持体として利用してもよい。また、紙等の含浸性ある支持体を用いる場合には、支持体組織内に微細凹凸パターン形成層が含浸した状態で形成されてもよく、このような状態であっても支持体上に設けられた微細凹凸パターン形成層の一形態に含まれる。また、ホログラム等の微細凹凸パターンの大量生産性を考慮して基材フィルムとして連続フィルムを用いてもよいが、枚葉状の基材フィルムを用いてもよい。
剥離層は、転写箔の剥離性や箔切れ性を向上させる目的で微細凹凸パターン形成層の下層に必要に応じて設けられ、転写箔から何らかの被転写面(第二の支持体)に微細凹凸パターン形成層と共に転写された後は最表面になる層である。剥離層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の中から1種のみ選んで単独で又は2種以上を選んで混合して用いることができる。または、微細凹凸パターン形成層に使用する本発明の光硬化性樹脂組成物に、これらを添加剤として添加したものも、剥離層として用いることができる。
反射層は、例えばレリーフホログラムを形成する場合に微細凹凸パターン上に設けられる。反射層は、金属薄膜、又は、高屈折率材料の塗工液を用いて形成した高屈折率膜で形成できる。
金属薄膜は、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属及びその酸化物、窒化物、硫化物等を単独若しくは2種類以上組み合わせた混合物からなり、化学蒸着や物理蒸着等の方法で形成できる。また、高屈折率材料膜は、例えば、高屈折率フィラーを分散した塗工液の塗工、金や銀のコロイド溶液の塗工、ゾルゲル反応に代表される有機金属化合物の加水分解重縮合反応による塗膜形成等により形成できる。
また、接着剤層は、微細凹凸パターン形成層の転写性、及び、転写後における被転写面に対する密着性を向上させる目的で、或いは、エンボス加工後の微細凹凸パターン形成層の表面を反射膜や保護膜で被覆する場合には、これらの層に対する密着性を向上させる目的で微細凹凸パターン形成層の最表面に設けられ、微細凹凸パターン形成層と共に転写された後は最下層となる層である。
接着剤層としては、感熱性接着性樹脂として公知のものを使用できる。例えば、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム系;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系;ポリイソブチルエーテル等のポリビニルエーテル系;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系;ポリアクリルアミド、ポリメチロールアクリルアミド等のポリアミド系;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系;ポリビニルブチラール、酢酸ビニル/アクリル酸オクチル、酢酸ビニル/アクリル酸ブチル、塩化ビニリデン/アクリル酸ブチル等の他のビニル系;ポリスチレン等の芳香族ビニル系;及びポリ塩化オレフィン等が挙げられ、これらの中から1種のみ選んで単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の微細凹凸パターン形成方法を、レリーフホログラムの転写箔を例にとって具体的に説明する。なお、使用される符号は図1を参照するためのものである。先ず、ポリエチレンテレフタレート等の連続プラスチックからなる基材フィルム2をロールストックから繰り出す。繰り出した基材フィルムの上に剥離剤の塗工液をロールコーターを用いて塗布し、次いで、前記塗工液に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて、剥離層3を形成する。この剥離層3の上に、引き続き光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成材料をロールコーターを用いて塗布し、次いで、組成物に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉10内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて微細凹凸パターン形成層4を形成して転写箔1を作製する。上記ロールコーター以外の塗工機としては、例えばカーテンコーター、フローコーター、リップコーター、ドクターブレードコーター、グラビアコーター等も使用できる。微細凹凸パターン形成層の厚さは、通常0.1〜5.0μm程度である。作製した転写箔1は再び巻き取られてロールストックとされ、保存又は運搬される。
次に、転写箔1をロールストックから繰り出し、微細凹凸パターン形成層の表面にレリーフホログラムのスタンパーを圧接してエンボス加工を行い、微細凹凸パターン(図示せず)を形成する。
ホログラムパターンのエンボス加工は、例えば、レーザー光や電子線を用いて作った母型から引き続き作成したスタンパーを周面に装着した金属ロ−ルとペーパーロールよりなる1対のエンボスローラーを使用して通常の方法で、例えば、熱ロール温度100〜200℃、プレス圧5×103〜5×106Paで行う。この範囲のプレス条件でエンボス加工を行う場合には、微細凹凸パターン形成層の樹脂温度が60〜80℃の温度域内又はその付近の温度に調節され、エンボス加工に適している。熱ロール温度を上記範囲より高くすると、エンボス加工を高速で行うことができるが、基材フィルムのダメージが大きくなる。また、熱ロール温度を上記範囲より低くすると、樹脂温度を上昇させるのに時間がかかるので、エンボス工程が遅くなる。なお、複製装置のエンボスローラーとしては、樹脂製版によりマスターホログラムから複製ホログラムを作成し、これをシリンダー上に貼り付けたものも使用できる。
エンボス加工は片面エンボスで充分であるが、両面エンボスでもよい。エンボスに当たっては、エンボスロールの温度設定が重要であり、エンボス形状を再現する観点からは比較的高温で、比較的高い圧力でエンボスするのが好ましいが、エンボス版への付着を防止するためには比較的低い圧力でエンボスするのが好ましく、全く逆の関係となる。また、有効に作用する熱容量から考えた場合は、複製するフイルムの搬送速度も重要である。光硬化性樹脂組成物のエンボスロールへの付着を低減するためには、上述した離型剤の選定も重要である。
光硬化性樹脂層にエンボス加工を行い、スタンパーから剥がした後、光を照射して樹脂層を硬化させる。硬化に用いる光としては、高エネルギー電離放射線及び紫外線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。
硬化後、微細凹凸パターンの上には、必要に応じて、さらに金属蒸着層のような反射膜や、耐擦傷性や耐汚染性を高めるための透明保護膜を形成してもよい。また、微細凹凸パターン形成層の上に反射膜や保護膜等の層を付加する場合には、さらにその上に接着剤層を付加してもよい。
光硬化させた樹脂層には反射膜を設ける必要がある。反射膜として光を反射する金属薄膜を用いると不透明タイプのホログラムとなり、透明な物質でホログラム層と屈折率差がある反射膜を設ける場合は透明タイプとなるが、どちらも使用できる。反射膜等の金属薄膜は、昇華、真空蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気メッキ等の公知の方法で形成可能である。
不透明タイプのホログラムを形成する金属薄膜としては、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属及びその酸化物、窒化物等を単独若しくは2種類以上組み合わせて形成される薄膜を用いることができる。上記金属薄膜の中でもAl、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、望ましくは20〜200nmの範囲である。
透明タイプのホログラムを形成する薄膜は、ホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材質のものも使用できる。例えば、微細凹凸パターン形成層の樹脂と屈折率の異なる透明材料を用いることができる。この場合の屈折率は、ホログラム形成層の樹脂の屈折率より大きくても小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が特に好ましい。また、上記以外の透明タイプには、20nm以下の金属性反射膜がある。好適に使用される透明タイプ反射層としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)等が挙げられる。
このようにして微細凹凸パターン形成層の上に、微細凹凸パターンを形成し硬化させた転写箔は、再び巻き取られてロールストックとされ、保存又は運搬される。
次に、微細凹凸パターンを形成した転写箔をロールストックから繰り出し、その微細凹凸パターン形成層の上に、第二の支持体の被転写面を向き合わせて重ね合せ、ホログラムを転写しようとする部分の転写箔を基材フィルム側から加圧ローラや加圧板で加熱・加圧して溶融接着させた後、転写箔を剥離することにより、微細凹凸パターンを有する微細凹凸パターン形成層が第二の支持体上に転写される。転写の際の温度及び圧力は、加圧方式(ロール式、スタンピング式)及び加圧時間等の加圧方法に関する要因のほか、支持体の材質と溶融温度、感熱接着剤の溶融温度、感熱接着剤と支持体材質の密着性等の要因によって条件が大きく異なってくるため、適宜調節する。
このようにして、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなると共に、レリーフホログラムの微細凹凸パターンが形成された表面構造を有する硬化樹脂層を備えた光学物品が得られる。
本発明によれば、上記レリーフホログラムと同様の方法により又は上記方法を必要に応じて修正して、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなると共に、様々な光学的機能を有する微細凹凸パターンが形成された表面構造を有する硬化樹脂層を備えた光学物品を作製することが可能である。
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いるエンボス加工により作製される光学物品としては、(1)セキュリティ用途で使用されるレリーフホログラムや回折格子、例えばクレジットカード、IDカード、商品券、紙幣等に付されるものや、(2)グラフィックアーツ及び意匠用途で使用されるレリーフホログラムや回折格子、例えば、いわゆるプリクラ等のアミューズメント商品又は景品、包装、葉書・封書、ノベルティグッズ等に付されるものや、(3)全光線及び/又は特定の波長の光の反射、透過、散乱、偏光、集光又は干渉の少なくとも一つを制御する光学素子、例えば、反射板、散乱板、偏光板、レンズ、波長選択素子、反射防止板、複屈折波長板、サブ波長構造を持つ光学素子等の光学素子等として用いられるものや、(4)情報記録素子、例えば、情報記録ホログラム、光カード、光ディスク等として用いられるもの等を挙げることができる。
本発明は、レリーフホログラムや回折格子以上に複雑又は精密に光を制御する用途に適用可能であるが、レリーフホログラムや回折格子に適用する場合にも、ただ単に明るいホログラムを得るだけでなく、複雑なデザインをもつレリーフホログラムや回折格子を形成できる。
さらに本発明によれば、非常に高い精度で微細凹凸パターンを形成できるので、光学物品に付与すべき微細凹凸パターンを型にして相補的な凹凸パターンを複製し、これをスタンパーとして使用することが可能である。