JP2004123831A - 光硬化性樹脂組成物、微細凹凸パターン転写箔、光学物品、スタンパー及び微細凹凸パターンの形成方法 - Google Patents
光硬化性樹脂組成物、微細凹凸パターン転写箔、光学物品、スタンパー及び微細凹凸パターンの形成方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】必須成分として(A)アクリル樹脂と(B)光重重合性官能基およびウレタン結合を分子中に有するウレタンアクリレートと、(C)金属アルコキシドの重縮合物を含有することを特徴とし、光学物品の微細凹凸パターンを形成するために用いられることを特徴とする、光硬化性樹脂組成物である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化前においては微細凹凸パターンの形成能及びその他の加工適性に優れると共に、強度、耐熱性、柔軟性、或いは他の諸点において優れた硬化後物性を有する塗膜を形成することが可能な光硬化性樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いて微細凹凸パターンを形成する方法、及び、当該樹脂組成物を用いた転写箔、光学物品及びスタンパーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光硬化性樹脂組成物を、例えば、支持体上に塗工して光硬化性樹脂層を形成し、この光硬化性樹脂層の表面に微細凹凸パターンを付与した後、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により露光して該樹脂層を硬化させ、形成された凹凸パターン面に反射層として金属蒸着膜のような光反射性の層或いは該樹脂層と屈折率が異なる層を積層することにより、回折格子やレリーフホログラム等の光学物品が作製され、各種のカードや証券等の装飾や偽造防止の目的に使用されている。
【0003】
このような光学的機能を発揮する微細凹凸パターンを有する樹脂層を形成する方法の一つとして、液状の光硬化性樹脂組成物をポリエステルフイルム等の透明な支持体上に塗布して液状の光硬化性樹脂層を形成し、その上に微細凹凸を有するスタンパーを圧接した状態で支持体側から光照射を行って硬化させた後でスタンパーを取り外す、いわゆる2P法(Photo Polymer法)がある。しかし、この方法においては、支持体裏面側から光を照射するので支持体が光吸収性を有する場合には硬化不足となる、硬化が完了するまでスタンパーを取り外せないので工程に時間がかかる、光硬化性樹脂層が液状なので圧接したスタンパーとの間に気泡が入り欠陥になりやすい、或いは、硬化した樹脂層からスタンパーを引き剥がす時に樹脂層表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こす等の問題がある。
【0004】
別の方法としては、室温で高粘度又は固体の光硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布して光硬化性樹脂層を形成し、その上にスタンパーを圧接し引き剥がした後で光照射を行って硬化させる方法がある(特公平5−46063号、特公平6−85103号)。この方法によれば、光硬化性樹脂層に光を直接照射するので充分に硬化させることができる、光硬化性樹脂組成物が高粘度又は固体なので、塗工後に支持体を巻き取って保存又は運搬することが可能であり、塗工と複製を別工程で行うことができる、スタンパーを引き剥がして光照射を行えるのでスタンパーの圧接と硬化を別工程で行うことができる、光硬化性樹脂層とスタンパーの間に気泡が入り難いので正確にパターン形成できる、光硬化性樹脂層からスタンパーを引き剥がす時に樹脂層表面に糸引きが生じ難い等の利点がある。
【0005】
しかし、室温で高粘度又は固体の光硬化性樹脂組成物を用いる方法においては、未硬化の樹脂層からスタンパーを引き剥がすためスタンパーのキャビティ内に光硬化性樹脂組成物の一部が付着して残りやすい(版取られ現象)、複製すべき凹凸パターンが微細になるほどスタンパーのキャビティ内に光硬化性樹脂組成物が流れ込み難くなるため正確に賦型できない、未硬化の樹脂層からスタンパーを引き剥がした後で光照射するので硬化が完了するまでの間にパターン崩れを引き起こし易い等の問題がある。
【0006】
また、光硬化性樹脂組成物の塗膜に微細凹凸パターンを付与し、硬化させて得られた硬化樹脂層には、回折格子やレリーフホログラム等の光学物品としての使用に耐え得る諸物性、例えば、強度、硬度、耐熱性、耐久性(耐摩耗性、耐擦傷性、耐薬品性、耐水性等)、基材に対する密着性、さらには、基材の屈曲性や伸縮に対する追随性等が要求される。
【0007】
特開2000−63459号には、嵩高い基を有するウレタン変性アクリル系樹脂と離型剤とを必須成分として含有する光硬化性樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は、現在知られている材料の中では、上述したような硬化前及び硬化後に求められる諸性能を、ある程度満足し得るものである。
【0008】
しかしながら、微細凹凸パターンを応用した光学物品の用途拡大に伴って、その材料となる光硬化性樹脂組成物には、上記したような硬化前及び硬化後の諸物性に関して、さらに優れた性能が求められている。
【0009】
特に、耐熱性に関しては、例えば、微細凹凸パターンを光学物品に設けて200℃以上の温度で加熱処理する場合や、高温に曝される環境、又は、熱と圧力が同時に加わる環境の下でも、光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成した微細凹凸パターンが変形又は消失しないことが求められる。
【0010】
また、耐久性に関しては、例えば、プラスチックカードの表面にホログラムとして機能する微細凹凸パターンを設ける場合や、前記カード上のホログラム表面に付着した汚れをアルコールやアセトン等の有機溶剤で擦り取る場合や、前記カードを高温高湿度下に放置したり或いは水につけたりする場合が想定されることから、光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成した微細凹凸パターンには、摩耗し易い環境の下で摩擦等の機械的外力が加わったとしても傷ついたり或いは削れたりしないような耐摩耗性又は耐擦傷性、有機溶剤によって溶出しない耐薬品性、及び、水分の影響で変形しない耐水性等の耐久性が求められる。
【0011】
上記特開2000−63459号に記載された樹脂組成物をもってしても、このような近年の用途拡大に対応し得る充分な性能を有する光学的微細凹凸パターンを形成することは難しい。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、硬化前においては微細凹凸パターンの形成能及びその他の加工適性に優れると共に、硬化後においては強度、耐熱性、柔軟性、或いは他の諸点において優れた塗膜物性が得られる光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第二の目的は、微細凹凸パターン形成材料に求められる諸性能のうち、特に硬化後における微細凹凸パターンの耐熱性及び耐久性に優れており、具体的には、高温環境下でも変形又は消失がない耐熱性を備え、且つ、耐摩耗性、耐擦傷性、耐薬品性及び耐水性等の耐久性にも優れる微細凹凸パターンを形成できる光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第三の目的は、上記光硬化性樹脂組成物を用いる微細凹凸パターン形成方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第四の目的は、上記の光硬化性樹脂組成物及び微細凹凸パターン形成方法を利用した微細凹凸パターン転写箔、微細凹凸パターンを有する光学物品及びスタンパーを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために提供される本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、必須成分として(A)アクリル樹脂と、(B)光重合性官能基およびウレタン結合を分子中に有するウレタンアクリレートと、(C)金属アルコキシドの重縮合物を含有することを特徴とする。
【0017】
上記本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、金属アルコキシドの重縮合物(C)が含有されているので、(C)の化合物が加熱によって架橋し、ネットワークを形成する等の効果によって、樹脂の耐熱性および耐久性を向上させることができる。
【0018】
上記重縮合物(C)は、金属アルコキシドの加水分解による部分重縮合により得られる。重縮合物(C)としては、金属アルコキシドモノマーが、少なくとも3単位以上重合した重縮合物であることが好ましい。重縮合物(C)としては、反応性および安定性の観点から、ケイ素を含む金属アルコキシドの重縮合によって調製された、アルコキシ基を有する部分重縮合物、又はアルミニウムを含む金属アルコキシドの重縮合によって調製された、アルコキシ基を有する部分重縮合物、又はケイ素を含む金属アルコキシドの重縮合物とアルミニウムを含む金属アルコキシドの重縮合物の混合物を使用するのが特に好ましい。
【0019】
上記本発明の光硬化性樹脂組成物において、アクリル樹脂のポリスチレン換算分子量は、5000〜600000の範囲であることが好ましい。上記のアクリル樹脂を配合することによって、硬化前において室温で高粘度または固体状の熱成形性を有する塗膜を形成できる成膜性、スタンパーを剥離した後でも型崩れしにくい形状維持性、及び基材フィルム上に光硬化性樹脂層を形成した中間積層体をロール状に巻きとって一時的に貯蔵することのできる耐ブロッキング性を付与することができる。
【0020】
また、上記アクリル樹脂が分子中に少なくとも1個の光重合性官能基を有する場合には、硬化後の強度、硬度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性等の諸物性に優れた樹脂組成物となる。
【0021】
上記本発明の光硬化性樹脂組成物において、ウレタンアクリレートを含有することで、微細凹凸パターンのスタンパーを押圧し、凹凸パターンを形成する際の柔軟性、賦型再現性に優れる。硬化後の強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性の観点で、上記ウレタンアクリレートは分子中に少なくとも3個の光重合性官能基を有することが好ましい。
【0022】
上記本発明の光硬化性樹脂組成物には、硬化後の強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性を向上させるために、光重合性官能基を有するモノマー及び/またはオリゴマーを配合することができる。
【0023】
次に、上記課題を達成するために提供される本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。
【0024】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、優れた離型性を有する上記光硬化性樹脂に対し離型剤を必須成分として配合することにより、さらに離型性を改善しているので、光硬化性樹脂組成物の層に押し付けたスタンパーを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離することができ、且つ、剥離の際にスタンパー内に樹脂の一部が残らないので反復エンボス性にも優れており、微細凹凸パターンの精度及び連続生産性の点で特に優れている。
【0025】
シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる上記光硬化性樹脂と組み合わせた時にスタンパーからの離型性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなるので好ましい。
【0026】
次に、本発明に係る第一の微細凹凸パターン形成方法は、支持体上に少なくとも前記本発明に係る光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該微細凹凸パターン形成層を硬化させることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る第一の微細凹凸パターン形成方法によれば、以上述べたところから明らかなように、精度が高く且つ硬化後物性に優れた微細凹凸パターンを連続大量生産することが可能である。
【0028】
特に、微細凹凸パターン形成層はスタンパーを剥離してから、必要に応じてロールストックに巻き取って保管運搬し、再び巻き戻して光照射により微細凹凸パターンを硬化させることが可能であり、連続生産性に優れている。
【0029】
次に、本発明に係る第2の微細凹凸パターン形成方法は、支持体上に少なくとも前記本発明に係る光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成し、スタンパーから剥離する前に当該微細凹凸パターン形成層を反応硬化させることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る第2の微細凹凸パターン形成方法によれば、微細凹凸パターン形成層にスタンパーを圧接しながら反応硬化することにより、凹凸パターン形状の再現性を高めることができる。
【0031】
前記微細凹凸パターン形成方法の一態様においては、前記本発明に係る光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成層を転写可能に設けた微細凹凸パターン転写箔を用い、当該微細凹凸パターン転写箔の支持体上で硬化させた微細凹凸パターン形成層を第二の支持体上に転写することが可能である。この方法によれば、複雑な表面形状の物品等の直接エンボス加工を行うことが困難な物品の表面や、ロール状に巻き取ることができないガラス、プラスチック、金属板等の支持体に、微細凹凸パターンを連続転写によって形成することが可能である。
【0032】
また、本発明によれば、光硬化性樹脂組成物の硬化物であって、該硬化物の表面に微細凹凸パターンが形成されている光学物品を得ることができ、レリーフホログラムや回折格子の微細凹凸パターンを複製できることは言うまでもなく、より高度な光学的機能を有する複雑な微細凹凸パターン、例えば、全光線及び/又は特定の波長の光の反射、透過、散乱、偏光、集光又は干渉の少なくとも一つを制御する光学素子や、情報記録素子等の微細凹凸パターンであっても精度良く且つエンボス加工により大量連続生産することが可能である。
【0033】
さらに本発明によれば、非常に高い精度で微細凹凸パターンを形成できるので、光学物品に付与すべき微細凹凸パターンを型にして相補的な凹凸パターンを複製し、これをスタンパーとして使用することが可能である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下において本発明を詳しく説明する。本発明に係る光硬化性樹脂組成物は光学物品の微細凹凸パターンを形成するために用いられる材料であって、必須成分として、(A)アクリル樹脂と、(B)光重合性官能基およびウレタン結合を分子中に有するウレタンアクリレートと、(C)金属アルコキシドの重縮合物を含有することを特徴としている。
【0035】
さらに必要に応じて本発明に係る光硬化性樹脂組成物には、光重合性官能基を有するモノマー及び/またはオリゴマー、離型剤、光重合開始剤、重合禁止剤等の他の成分を配合することができる。
【0036】
本発明において使用されるアクリル樹脂は、硬化前において室温で高粘度または固体状の熱成形性を有する塗膜を形成できる成膜性、スタンパーを剥離した後でも型崩れしにくい形状維持性、及び基材フィルム上に光硬化性樹脂層を形成した中間積層体をロール状に巻きとって一時的に貯蔵することのできる耐ブロッキング性を付与するために使用される。
【0037】
アクリル樹脂は、一般的な(メタ)アクリレートモノマーを重合させて得られるポリマー、或いは、(メタ)アクリレートモノマーとビニルモノマーまたはアリルモノマー等の(メタ)アクリレートモノマーと共重合することのできるモノマーとを重合させて得られるポリマーであれば、いずれも使用できる。
【0038】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のモノマー、ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン等のモノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
なお、本明細書中において(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
【0040】
本発明においては、光重合性官能基を有する樹脂の中から、基材フィルム等の支持体上に塗布した時に、微細凹凸パターンを賦形するのに充分な厚さの皮膜とすることができる成膜性及びスタンパーを押圧して微細凹凸パターンを賦形することができる柔軟性、クリープ性を有すると共に、光硬化後において光学物品の用途に応じて、透明性、強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性、可とう性等の一般的性質を満足する微細凹凸パターンの表面構造を形成し得るものを適宜選択し、バインダー樹脂として用いる。
【0041】
また、上記アクリル樹脂が分子中に少なくとも1個の光重合性官能基を有する場合には、硬化後の強度、硬度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性等の諸物性に優れた樹脂組成物となるので好ましい。
【0042】
光重合性官能基は、可視光又は紫外線や電子線等の電離放射線を含む不可視光により重合反応し、バインダー樹脂の分子間に架橋結合を形成し得る官能基であり、光照射により直接活性化して光重合反応する狭義の光重合性官能基であってもよいし、光重合性官能基と光重合開始剤を共存させて光照射した時に光重合開始剤から発生した活性種の作用により重合反応が開始、促進される広義の光重合性官能基であってもよい。光重合性官能基としては、例えば、エチレン性二重結合のような光ラジカル重合反応性を有するものや、エポキシ基等の環状エーテル基のような光カチオン重合及び光アニオン重合反応性の有するものを例示することができ、その中でもエチレン性二重結合が好ましい。エチレン性二重結合は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のいずれでもよく、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。充分な架橋性を得るためには、バインダー樹脂は一分子中に少なくとも2つの光重合性官能基を有することが好ましい。
【0043】
アクリル樹脂に重合性官能基を導入するには、重合性官能基を主鎖部分に有するモノマーを共重合させてもよいし、主鎖部分を共重合により形成した後で変性反応により重合性官能基を側鎖部分に導入しても良い。側鎖に導入する場合には、ウレタン結合、エポキシ結合、エステル結合などのいずれの結合を重合性官能基として導入してもよいが、樹脂に可とう性を付与するためにはウレタン変性させるのが好ましい。
【0044】
アクリル樹脂の中では、下記式1で表されるウレタン変性アクリル樹脂が好ましい。
【0045】
【化1】
【0046】
(式中、Zはウレタン変性アクリル樹脂を改質するための基を表し、好ましくは嵩高い環状構造の基である。R1は夫々互いに独立して水素原子又はメチル基を表し、R2はC1〜C20の炭化水素基を表し、X及びYは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。l(エル)とmとnとo(オー)とpの合計を100とした場合に、lは0〜90、mは0〜80、nは0〜50、o+pは10〜80、pは0〜40の整数である。)
上記式1におけるZは、上記のウレタン変性アクリル樹脂を改質するために導入することができ、例えばフェニル基、ナフチル基等の芳香族環或いはピリジン等の複素芳香族環を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル変性シリコーンオイル又は樹脂、ビニル変性シリコーンオイル又は樹脂等の重合性二重結合基を有するシリコーンオイル又は樹脂、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アルコシキプロピルトリメトキシシラン等のケイ素含有基を有する(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素含有基を有する(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等のかさ高い構造を有する(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクトン等の環状親水性基を有するビニルモノマーを用いて導入することができる。Zとしては、上記のうちから選ばれた1種又は2種以上を導入することができる。
【0047】
上記式1のウレタン変性アクリル系樹脂の好ましい1例としては、メチルメタクリレート0〜90モルと、嵩高い基を有するビニルモノマー0〜80モルとメタクリル酸0〜50モルと2−ヒドロキシエチルメタクリレート10〜80モルとを共重合して得られるアクリル共重合体であって、該共重合体中に存在している水酸基にメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2−イソシアネートエチルメタクリレート)を反応させて得られる樹脂を例示することができる。
【0048】
上記メタクリロイルオキシエチルイソシアネートは共重合体中に存在している全ての水酸基に反応している必要はなく、共重合体中の2−ヒドロキシエチルメタクリレート単位の水酸基の少なくとも10モル%以上、好ましくは50モル%以上がメタクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応していればよい。上記の2−ヒドロキシエチルメタクリレートに代えて又は併用して、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーも使用することができる。
【0049】
上記のウレタン変性アクリル系樹脂は、前記共重合体を溶解可能な溶剤、例えば、トルエン、ケトン、セロソルブアセテート、ジメチルスルホキサイド等の溶媒に溶解させ、この溶液を撹拌しながら、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを滴下及び反応させることにより、イソシアネート基がアクリル系樹脂の水酸基と反応してウレタン結合を生じ、該ウレタン結合を介して樹脂中にメタクリロイル基を導入することができる。この際使用するメタクリロイルオキシエチルイソシアネートの使用量は、アクリル系樹脂の水酸基とイソシアネート基との比率で水酸基1モル当たりイソシアネート基0.1〜5モル、好ましくは0.5〜3モルの範囲になる量である。尚、上記樹脂中の水酸基よりも当量以上のメタクリロイルオキシエチルイソシアネートを使用する場合には、該メタクリロイルオキシエチルイソシアネートは樹脂中のカルボキシル基とも反応して−CONH−CH2CH2−の連結を生じることもあり得る。
【0050】
以上の例は、前記構造式において、全てのR1及びR2がメチル基であり、X及びYがエチレン基である場合であるが、本発明は、これらに限定されず、6個のR1は夫々独立して水素原子又はメチル基であってもよく、更にR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−又はtert−ブチル基、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のベンジル基等が挙げられ、X及びYの具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ジエチレン基、ジプロピレン基等が挙げられる。上記の嵩高い環状構造の基Zを有するモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の如く、5員環、6員環或いはそれ以上の嵩高い基を有するモノマーであることが好ましい。
【0051】
上記本発明の光硬化性樹脂組成物において、ウレタンアクリレートを含有することで、微細凹凸パターンのスタンパーを押圧し、凹凸パターンを形成する際の柔軟性、賦型再現性に優れる。
【0052】
ウレタンアクリレートは、分子中にウレタン結合と、光重合性を有する(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、いずれも使用できる。ウレタンアクリレートの中では、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレート、又は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレートが好ましい。
【0053】
ウレタンアクリレートの合成に用いる2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニレンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
また、下記式2a乃至2gで表されるイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0055】
【化2】
【0056】
ウレタンアクリレートの合成に用いる2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセリン、その他、数々のポリシロキサンポリオール、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリ(アルキルアクリレート)ポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0057】
ウレタンアクリレートの合成に用いる1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及び、イソシアヌル酸オキシエチルジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
以上説明したウレタンアクリレートは、特開平3−19842号に記載の反応条件で上記の各成分を反応させることにより製造することができる。
【0059】
別のウレタンアクリレートとしては、特開2001−329031号に記載されている、乾燥しただけの未硬化状態でもタックフリーな活性エネルギー線硬化性組成物を例示することができる。このタックフリーな組成物は、融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、融点が40℃以上のものを含有する。上記融点が40℃以上のイソシアネート化合物としては、非芳香族性炭化水素環に結合したイソシアネート基を有する化合物、特にイソホロンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1(モル比)の反応生成物が好ましい。上記(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸や、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0060】
硬化後の強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性の観点で、上記ウレタンアクリレートは分子中に少なくとも3個の光重合性官能基を有することが好ましい。
【0061】
上記本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、金属アルコキシドの重縮合物(C)を配合することにより、(C)の化合物が加熱によって架橋し、ネットワークを形成する等の効果によって、樹脂の耐熱性および耐久性を向上させることができる。
【0062】
無機のネットワークを形成するための熱は、紫外線等の活性エネルギー線照射に伴う熱であってもよく、または、反応硬化後に50℃〜80℃の熱で硬化する工程を設けても良い。
【0063】
上記金属アルコキシドの重縮合物(C)は、下記一般式で表される金属アルコキシドを加水分解して調製することができる。
【0064】
【化3】
【0065】
(Rは炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基またはカルボキシル基、R’は炭素数1〜10のアルキル基、Mは金属原子、m+nは金属原子Mの価数である)
【0066】
金属原子Mとしては、例えば、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニア、スズ等が挙げられる。反応性および安定性の観点から、ケイ素又はアルミニウムが特に好ましい。
【0067】
Rとしては、炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基またはカルボキシル基が挙げられる。特に、ビニル基または(メタ)アクリロイル基を使用した場合には、活性エネルギー線の照射によって、光重合性官能基を有するバインダー樹脂と反応することができるため、より耐久性、耐熱性の高い樹脂組成物となる。
【0068】
上記金属アルコキシドの重縮合物(C)は、アルコキシ基を有するものが好ましい。アルコキシ基を有する場合は、加熱によりさらに縮合反応を起こし、結合を形成することができる。また、バインダー中の水酸基とも脱水縮合によって架橋構造を形成することができる。
【0069】
上記金属アルコキシドの重縮合物(C)は、金属アルコキシドモノマーの重合による繰り返し単位数が2〜20であることが好ましい。より好ましくは、繰り返し単位数が3〜12である。繰り返し単位が2以下である場合には、相溶性の観点で好ましくなく、繰り返し単位が13以上である場合には、反応部位が相対的に少なくなるため、好ましくない。繰り返し単位数が2〜20の重縮合物は通常オリゴマー体として扱われる。
【0070】
また、金属アルコキシドの重縮合物(C)は、全量が反応したと仮定した場合の固形分を基準として、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に、0.1〜30重量%の割合で配合するのが好ましい。金属アルコキシドの重縮合物(C)の割合が0.1重量%未満では、ネットワークを形成することが困難となり、30重量%以上では、反応性が高く保存安定性が低くなる。
【0071】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、組成物の粘度を低下させたり、柔軟性を付与したり、架橋密度を高めるために単官能または多官能のモノマー又はオリゴマーを配合してもよい。
【0072】
単官能モノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
多官能のモノマー又はオリゴマーとしては、例えば、2官能のモノマー、オリゴマーとしてはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等、3官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等、4官能のモノマー、オリゴマーとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ、5官能以上のモノマー、オリゴマーとしてはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
単官能、多官能のモノマー又はオリゴマーとしては、上記の(メタ)アクリレート類のほか、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリル、ジアリルフタレート、ジメタクリルフタレート、ジアリルイソフタレート等のアリル化合物を用いることもできる。
【0075】
モノマー又はオリゴマーは、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に5〜50重量%の割合で配合するのが好ましい。モノマー或いはオリゴマーの割合が上記範囲未満では、得られる硬化樹脂層の強度、耐熱性、耐擦傷性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性が十分とはいえず、一方、モノマー或いはオリゴマーの使用量が上記範囲を超えると表面のタックが高くなり、ブロッキングを引き起こしたり、ホログラム等の複製時に版(プレススタンパー)に材料が一部残る(版取られ)ことにより反復エンボス性が低下する等の点で好ましくない。
【0076】
本発明の光硬化性樹脂組成物には離型剤を配合してもよい。本発明の光硬化性樹脂組成物に離型剤を配合することにより、光硬化性樹脂層にプレススタンパーを押し付けて取り外す時に樹脂の版取られを防止し、プレススタンパーを長期間連続して使用(反復エンボス性)することができるようになる。
【0077】
離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス、フッ素系、リン酸エステル系の界面活性剤、シリコーン等が何れも使用可能である。
【0078】
特に好ましいのはシリコーン系離型剤であり、水の接触角を90°以上として型からの離型性を非常に高くすることができる。シリコーン系離型剤には、ポリシロキサン、変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等がある。
【0079】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端を変性したものであり、例えばアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、フッ素変性等が挙げられる。一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0080】
シリコーン系アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル変性シリコーンオイルや、ケイ素を含有するモノマーを共重合或いはグラフト化したアクリル樹脂が用いられる。
【0081】
上記シリコーン系離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0082】
上記離型剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量中に0.1〜30重量%の割合で配合するのが好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、プレススタンパーと光硬化性樹脂層の離型性が不十分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身及び近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
【0083】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、バインダーやモノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0084】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン等のベンゾイン系化合物;アントラキノン、メチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン等のフェニルケトン系化合物;ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド等のスルフィド系化合物;α−クロルメチルナフタレン、;アントラセン;及びヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0085】
光カチオン開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等が挙げられる。
【0086】
光アニオン重合開始剤としては、例えば、1,10‐ジアミノデカンや4,4’‐トリメチレンジピペリジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト‐アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等を例示することができる。
【0087】
上記光重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.5〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。光重合開始剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、光硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。
【0089】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、通常、希釈溶剤(主溶剤)を用いて塗布液の状態に調製し、微細凹凸パターンの形成に用いる。上記したような各材料を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、またはそれらの混合溶剤に溶解、分散することにより、本発明に係る光硬化性樹脂組成物としての塗布液を調製することができる。塗布液は、通常、固形分濃度が10〜50重量%程度となるように調節される。
【0090】
(微細凹凸パターン形成方法)
本発明に係る光硬化性樹脂組成物を基材フィルム等の支持体の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させて微細凹凸パターン形成材料の層(微細凹凸パターン形成層)を形成して凹凸パターン受容体を作製し、当該凹凸パターン受容体の微細凹凸パターン形成層表面にスタンパーを圧接してエンボス加工を行い、微細凹凸パターン形成層を露光又は加熱等の適切な方法で反応硬化させることにより、光学的機能を有する微細凹凸パターンを形成することができ、光学物品やスタンパーとして利用できる。
【0091】
支持体に微細凹凸パターン形成層を塗工する前後に、或いは、微細凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成する前後に、必要に応じてアンカー層、剥離層、金属薄膜層、オーバーコート層、感圧又は感熱接着剤層等の他の層を形成してもよい。
【0092】
微細凹凸パターン形成層は、スタンパーをとりはずした後で露光、加熱する方法と、スタンパーを圧接した状態で反応硬化させる方法がある。
【0093】
前者の方法においては、微細凹凸パターン形成層を硬化工程に移す前にスタンパーをとりはずすため、凹凸パターンを形成した後に巻きとって保管し、別の場所で露光硬化することが可能である。また、凹凸パターンを形成した面に直接露光することができるので、基材が照射する活性エネルギー線に対して不透明であってもよい。また、凹凸パターンから引き剥がす際に、表面に生じる糸引き状の荒れや割れ、欠け等が少ない。
【0094】
後者の方法においては、微細凹凸パターン形成層をスタンパ−からひきはがす前に反応硬化させるため、凹凸パターンの再現性に優れている。
【0095】
また、本発明では、上記微細凹凸パターン形成材料が成膜性及び耐ブロッキング性に優れていることを利用し、基材フィルム上に微細凹凸パターン形成層を形成した中間積層体をロール状に巻き取って一時的に貯蔵し、別の場所へ運搬して巻き戻し、スタンピング及び硬化を行うことも可能である。
【0096】
さらにスタンピング及び硬化を行った中間積層体をロール状に巻き取って一時的に貯蔵し、別の場所へ運搬し巻き戻し、必要に応じて追加の光又は熱硬化工程を行って充分に硬化させたり、或いは、必要に応じて微細凹凸パターンの上に金属薄膜、オーバーコート層、感圧又は感熱接着剤層等を形成することが可能である。
【0097】
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化に用いる光としては、高エネルギー電離放射線及び紫外線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。
【0098】
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いる微細凹凸パターン形成方法を、レリーフホログラムを例にとって具体的に説明する。先ず、光硬化性樹脂組成物を、金属板、紙、ポリエチレンテレフタレート等の基材に塗布又は含浸し、次いで組成物中に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて光硬化性樹脂層を基材上に形成する。そして、この光硬化性樹脂層に、例えば、プレススタンパーを用いて所望のホログラムレリーフのパターニング(エンボス加工)行なう。
【0099】
ホログラムパターンのエンボス加工は、例えば、レーザー光を用いて作った母型から引き続き作成したプレススタンパーを周面に装着した金属ロ−ルとペーパーロールよりなる1対のエンボスローラーを使用して通常の方法で、例えば、50〜150℃、10〜50kg/cm2の圧力で行う。なお、複製装置のエンボスローラーとしては、樹脂製版によりマスターホログラムから複製ホログラムを作成し、これをシリンダー上に貼り付けたものも使用できる。
【0100】
エンボス加工は片面エンボスで十分であるが、両面エンボスでもよい。エンボスに当たっては、エンボスロールの温度設定が重要であり、エンボス形状を再現する観点からは比較的高温で、比較的高い圧力でエンボスするのが好ましいが、エンボス版への付着を防止するためには比較的低い圧力でエンボスするのが好ましく、全く逆の関係となる。また、有効に作用する熱容量から考えた場合は、複製するフイルムの搬送速度も重要である。樹脂組成物のエンボスロールへの付着を低減するためには、上述した離型剤の選定も重要である。
【0101】
光硬化性樹脂層にエンボス加工を行い、スタンパーから剥がした後、紫外線や電子線等を照射して樹脂層を光硬化させる。ホログラムには、光硬化させた樹脂層に反射層を設ける必要がある。反射層として光を反射する不透明金属薄膜を用いると不透明タイプのホログラムとなり、透明で且つホログラム層と屈折率差がある物質を用いた反射層を設ける場合は透明タイプとなるが、どちらも使用できる。金属薄膜からなる反射層は、昇華、真空蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気メッキ等の公知の方法で形成可能である。
【0102】
ホログラムを形成する金属薄膜としては、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属及びその酸化物、窒化物等を単独若しくは2種類以上組み合わせてからなり、化学蒸着や物理蒸着等の方法で形成できる。上記金属薄膜の中でもAl、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、望ましくは20〜200nmの範囲である。
【0103】
透明タイプのホログラムを形成する薄膜は、ホログラム効果を発現できる光透過性のものであれば、いかなる材質のものも使用できる。例えば、ホログラム形成層(光硬化性樹脂層)の樹脂と屈折率の異なる透明材料を用いることができる。この場合の屈折率は、ホログラム形成層の樹脂の屈折率より大きくても小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.5以上であり、1.0以上が最適である。透明タイプのホログラムを形成する薄膜としては、金属性透明反射膜がある。好適に使用される透明タイプ反射層としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)等が挙げられる。
【0104】
また、例えば、高屈折率フィラーを分散した塗工液の塗工、金や銀のコロイド溶液の塗工、ゾルゲル反応に代表される有機金属化合物の加水分解重縮合反応による塗膜形成等により形成される、高屈折率材料膜を使用することもできる。
【0105】
凹凸パターン受容体は、微細凹凸パターンの表面構造を付与すべき最終製品であってもよいが、中間的な転写媒体であってもよい。すなわち本発明においては、上記光硬化性樹脂組成物を第一の支持体に塗布して微細凹凸パターン形成層を形成することで転写箔を作製し、この転写箔の微細凹凸パターン形成層に微細凹凸パターンを形成し、当該微細凹凸パターン形成層を反応硬化させた後で、第二の支持体(最終製品)上に転写することが可能である。転写箔を用いる場合には、最終製品の表面に直接エンボス加工を行う必要が無い、或いは、転写箔上に予め微細凹凸パターンを大量連続形成することができる等の利点があり、例えば、複雑な表面形状の物品等の直接エンボス加工を行うことが困難な物品の表面や、ロール状に巻き取ることができないガラス、プラスチック、金属板等の支持体に、微細凹凸パターンを連続転写によって形成することも可能である。
【0106】
本発明において微細凹凸パターン転写箔は、第一の支持体上に、少なくとも上記本発明の光硬化性樹脂組成物からなり、且つ、第一の支持体から剥離して第二の支持体に転写することが可能な状態で微細凹凸パターンが予め形成された微細凹凸パターン形成層が設けられている積層体であり、必要に応じて、上記微細凹凸パターン形成層に加えて剥離層、反射層、接着剤層或いはその他の層の1又は2以上を設けることができる。例えば、転写箔として、支持体上に剥離層、予め微細凹凸パターンを形成した微細凹凸パターン形成層(光硬化性樹脂組成物層)、反射層(微細凹凸パターン形成層とは屈折率の異なる層)、及び、接着剤層を順次積層した構成としてもよい。さらに、必要に応じて、接着剤層上に、フィルム又は離型紙を設けた構成としてもよい。
【0107】
転写箔を作製する場合の支持体としては、通常、可撓性のある基材フィルムが用いられ、強度や耐熱性等の点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルムが適しているが、プラスチックフィルムに限られず、また、可撓性が無くてもよく、金属板や紙等の他の材質を支持体として利用してもよい。また、紙等の含浸性ある支持体を用いる場合には、支持体組織内に微細凹凸パターン形成層が含浸した状態で形成されてもよく、このような状態であっても支持体上に設けられた微細凹凸パターン形成層の一形態に含まれる。また、ホログラム等の微細凹凸パターンの大量生産性を考慮して基材フィルムとして連続フィルムを用いてもよいが、枚葉状の基材フィルムを用いてもよい。
【0108】
剥離層は、転写箔の剥離性や箔切れ性を向上させる目的で微細凹凸パターン形成層の下層に必要に応じて設けられ、転写箔から何らかの被転写面(第二の支持体)に微細凹凸パターン形成層と共に転写された後は最表面になる層である。剥離層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の中から1種のみ選んで単独で又は2種以上を選んで混合して用いることができる。または、微細凹凸パターン形成層に使用する本発明の光硬化性樹脂組成物に、上記の剥離性材料を添加剤として添加したものも、剥離層として用いることができる。
【0109】
反射層は、例えばレリーフホログラムを形成する場合に微細凹凸パターン上に設けられる。反射層は透明タイプ又は不透明タイプのいずれでもよく、上述したような金属薄膜又は高屈折率膜で形成できる。
【0110】
また、接着剤層は、微細凹凸パターン形成層の転写性、及び、転写後における被転写面に対する密着性を向上させる目的で、或いは、エンボス加工後の微細凹凸パターン形成層の表面を反射膜や保護膜で被覆する場合には、これらの層に対する密着性を向上させる目的で微細凹凸パターン形成層の最表面に設けられ、微細凹凸パターン形成層と共に転写された後は最下層となる層である。
【0111】
接着剤層は、公知の感熱性接着樹脂、感圧性接着樹脂、二液硬化型接着剤、光硬化型接着剤の中から適宜選んで使用できる。感熱性接着樹脂としては、例えば、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム系;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系;ポリイソブチルエーテル等のポリビニルエーテル系;ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系;ポリアクリルアミド、ポリメチロールアクリルアミド等のポリアミド系;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系;ポリビニルブチラール、酢酸ビニル/アクリル酸オクチル、酢酸ビニル/アクリル酸ブチル、塩化ビニリデン/アクリル酸ブチル等の他のビニル系;ポリスチレン等の芳香族ビニル系;及びポリ塩化オレフィン等が挙げられ、これらの中から1種のみ選んで単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
レリーフホログラム転写箔の作成手順の一例を、以下に説明する。先ず、ポリエチレンテレフタレート等の連続プラスチックからなる基材フィルムをロールストックから繰り出す。繰り出した基材フィルムの上に剥離剤の塗工液をグラビアコーターを用いて塗布し、次いで、前記塗工液に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて、剥離層を形成する。この剥離層の上に、引き続き光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成材料をグラビアコーターを用いて塗布し、次いで、組成物に含まれている有機溶剤が飛散する温度、例えば、l00〜165℃に設定した加熱炉内に0.1〜1分間程度導いて乾燥させて微細凹凸パターン形成層を形成して転写箔を作製する。上記グラビアコーター以外の塗工機としては、例えばロールコーター、カーテンコーター、フローコーター、リップコーター、ドクターブレードコーター等も使用できる。微細凹凸パターン形成層の厚さは、通常0.1〜5.0μm程度である。作製した転写箔1は再び巻き取られてロールストックとされ、保存又は運搬される。
【0113】
次に、前記転写箔をロールストックから繰り出し、微細凹凸パターン形成層の表面にレリーフホログラムのスタンパーを圧接してエンボス加工を行い、微細凹凸パターン(図示せず)を形成する。
【0114】
ホログラムパターンのエンボス加工は、例えば、レーザー光や電子線を用いて作った母型から引き続き作成したスタンパーを周面に装着した金属ロ−ルとペーパーロールよりなる1対のエンボスローラーを使用して通常の方法で、例えば、熱ロール温度50〜200℃、プレス10〜50kg/cm2で行う。熱ロール温度を上記範囲より高くすると、エンボス加工を高速で行うことができるが、基材フィルムのダメージが大きくなる。また、熱ロール温度を上記範囲より低くすると、樹脂温度を上昇させるのに時間がかかるので、エンボス工程が遅くなる。なお、複製装置のエンボスローラーとしては、樹脂製版によりマスターホログラムから複製ホログラムを作成し、これをシリンダー上に貼り付けたものも使用できる。
【0115】
この場合も、片面又は両面にエンボス加工を行うことが可能である。光硬化性樹脂層にエンボス加工を行い、スタンパーから剥がした後、光を照射して樹脂層を硬化させる。硬化に用いる光としては、上述したように高エネルギー電離放射線及び紫外線が挙げられる。
【0116】
硬化後、微細凹凸パターンの上には、必要に応じて、さらに金属蒸着層や高屈折率材料層等の反射膜や、耐擦傷性や耐汚染性を高めるための透明保護膜を形成してもよい。また、微細凹凸パターン形成層の上に反射膜や保護膜等の層を付加する場合には、さらにその上に接着剤層を付加してもよい。
【0117】
このようにして微細凹凸パターン形成層の上に、微細凹凸パターンを形成し硬化させた転写箔は、再び巻き取られてロールストックとされ、保存又は運搬される。
【0118】
次に、微細凹凸パターンを形成した転写箔をロールストックから繰り出し、その微細凹凸パターン形成層の上に、第二の支持体の被転写面を向き合わせて重ね合せ、ホログラムを転写しようとする部分の転写箔を基材フィルム側から加圧ローラや加圧板で加熱・加圧して溶融接着させた後、転写箔を剥離することにより、微細凹凸パターンを有する微細凹凸パターン形成層が第二の支持体上に転写される。転写の際の温度及び圧力は、加圧方式(ロール式、スタンピング式)及び加圧時間等の加圧方法に関する要因のほか、支持体の材質と溶融温度、感熱接着剤の溶融温度、感熱接着剤と支持体材質の密着性等の要因によって条件が大きく異なってくるため、適宜調節する。
【0119】
このようにして、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなると共に、レリーフホログラムの微細凹凸パターンを形成した表面構造を有する硬化樹脂層を備えた光学物品が得られる。
【0120】
(光学物品)
本発明によれば、上記レリーフホログラムと同様の方法により又は上記方法を必要に応じて修正して、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなると共に、様々な光学的機能を有する微細凹凸パターンを形成した表面構造を有する硬化樹脂層を備えた光学物品を作製することが可能である。
【0121】
従来、エンボス加工で複製されているホログラムの凹凸パターンは、幅(ピッチ)が約500〜1500nm及び幅に対する深さ(深さ/幅)が1/3以下程度であるものが一般的である。本発明によれば、このような凹凸パターンを複製できることは言うまでもなく、より高度な光学的機能を有する複雑な微細凹凸パターン、例えば、凹凸パターンの幅(ピッチ)が約200nm以下であったり、或いは、幅に対する深さ(深さ/幅)が1/2以上であるパターンを複製する場合でも、スタンパーの圧接時にキャビティ内に微細凹凸パターン形成材料を充分に流し込むことができ、スタンパーを引き剥がす時に版取られを起こさず、スタンパーを取り除いた後のパターン崩れも起こし難いため、微細凹凸パターンを精度良く且つエンボス加工により大量連続生産することが可能である。
【0122】
本発明の微細凹凸パターン形成材料を用いるエンボス加工により作製される光学物品としては、(1)セキュリティ用途で使用されるレリーフホログラムや回折格子、例えばクレジットカード、IDカード、商品券、紙幣等に付されるものや、(2)グラフィックアーツ及び意匠用途で使用されるレリーフホログラムや回折格子、例えば、いわゆるプリクラ等のアミューズメント商品又は景品、包装、葉書・封書、ノベルティグッズ等に付されるものや、(3)全光線及び/又は特定の波長の光の反射、透過、散乱、偏光、集光又は干渉の少なくとも一つを制御する光学素子、例えば、反射板、散乱板、偏光板、レンズ、波長選択素子、反射防止板、複屈折波長板、サブ波長構造を持つ光学素子等の光学素子等として用いられるものや、(4)情報記録素子、例えば、情報記録ホログラム、光カード、光ディスク等として用いられるもの等を挙げることができる。
【0123】
本発明は、レリーフホログラムや回折格子以上に複雑又は精密に光を制御する用途に適用可能であるが、レリーフホログラムや回折格子に適用する場合にも、ただ単に明るいホログラムを得るだけでなく、複雑なデザインをもつレリーフホログラムや回折格子を形成できる。
【0124】
さらに本発明によれば、非常に高い精度で微細凹凸パターンを形成できるので、光学物品に付与すべき微細凹凸パターンを型にして相補的な凹凸パターンを複製し、これをスタンパーとして使用することが可能である。
【0125】
【実施例】
(実施例1)
(1)バインダー樹脂(A)の製造
冷却器、滴下ロート及び温度計付きの2リットルのフラスコに、トルエン40g、メチルエチルケトン40gをアゾ系の重合開始剤と共に仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20.8g、メチルメタクリレート39.0g、イソボルニルメタクリレート45.0g、トルエン20g、及び、メチルエチルケトン20gの混合液を滴下ロートで滴下させながら100℃の温度下で8時間反応させた後、室温まで冷却した。これに、2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工製、カレンズMOI)23.4g、トルエン20g及びメチルエチルケトン20gの混合液を加えて、ラウリン酸ジブチル錫を触媒として付加反応させた。反応生成物のIR分析により、イソシアネートの吸収ピークの消失を確認し、反応を終了した。得られた樹脂溶液の固形分は38.2重量%、分子量はポリスチレン換算で30,000、炭素間二重結合(C=C)の導入量は12.5%であった。
【0126】
(2)光硬化性樹脂組成物の調製
上記バインダー樹脂(A)及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例1の光硬化性樹脂組成物1を調製した。
【0127】
<光硬化性樹脂組成物1>
・バインダー樹脂(A)(固形分基準):80重量部
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製) 20重量部
・ケイ素を含む金属アルコキシドの部分重縮合物(商品名:X−12−2400E、信越化学工業製)25重量部
・シリコーン系離型剤(商品名:X−21−3056、信越化学工業製)1重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ製)3重量部
【0128】
(実施例2)
実施例1で製造したバインダー樹脂(A)及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例2の光硬化性樹脂組成物2を調製した。
<光硬化性樹脂組成物2>
・バインダー樹脂(A)(固形分基準):80重量部
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製) 20重量部
・ケイ素を含む金属アルコキシドの部分重縮合物(商品名:MS51、三菱化学製)30重量部
・シリコーン系離型剤(商品名:X−21−3056、信越化学工業製)1重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ製)3重量部
【0129】
(実施例3)
(1)アルミニウムを含む金属アルコキシドの部分重縮合物(B)の製造
フラスコに、アルミニウムの金属アルコキシド(商品名:ALCH、川研ファインケミカル製)を50gとり、0.01規定の塩酸を6.5g加え、室温で6時間混合した。続いて、40.8gのアセト酢酸エチルを滴下し、60℃で3時間加熱した。得られた重縮合物は、27Al−NMRにより、アルミニウム−酸素−アルミニウムの結合が生成しており、2量体以上になっていることを確認した。
【0130】
上記重縮合物(B)、実施例1で製造したバインダー樹脂(A)及びその他の成分を下記配合割合で混合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分濃度を20重量%に調節し、本実施例3の光硬化性樹脂組成物3を調製した。
<光硬化性樹脂組成物3>
・バインダー樹脂(A)(固形分基準):80重量部
・ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−1700B、日本合成化学工業製) 10重量部
・反応性モノマー(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬製)10重量部
・アルミニウムを含む金属アルコキシドの重縮合物(B)7.5重量部
・シリコーン系離型剤(商品名:X−21−3056、信越化学工業製)1重量部
・光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ製)3重量部
【0131】
(比較例1)
上記実施例1において、ケイ素を含む金属アルコキシドの部分重縮合物を配合しなかった他は全て同様にして、比較例の光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0132】
(実施例4)
ラベルタイプ微細凹凸パターンシートの作製
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を各々、厚さ50μmの片面易接着性処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアホイルT600E U−36、三菱ポリエステルフィルム製)の易接着性処理面上にグラビアコーターで塗工し、100℃で乾燥して溶剤を揮発させて、乾燥時塗工量が2g/m2の複製用感光性フィルムを形成した。この複製用感光性フィルムは、比較例で得られた樹脂組成物を用いて作製したものを含め、いずれも表面タックはなく、巻取り状態でブロッキングを起こさないものであった。
【0133】
次に、複製装置のエンボスローラーに、電子線描画により形成した母型から作製した、回折格子A(ピッチ0.5μm、深さ0.3μmの凹凸パターン)および光学素子B(ピッチ0.3μm、深さ0.2μmの凹凸パターン)の2種類の絵柄を有するプレススタンパーを設置した。複製用感光性フィルムを、当該複製装置の給紙側にセットし、加熱ローラーを150℃に設定して加熱プレスし、エンボスローラーから剥離して、微細凹凸パターンを形成した。複製品は、比較例で得られた樹脂組成物を用いて作製したものを含め、いずれも版取られを起こさず、スタンパー形状の深さに対して90%以上の複製率であることを、タッピングAFM(原子間力顕微鏡)により確認した。
【0134】
次に、高圧水銀灯により紫外線を照射して、複製用感光性フィルムを光硬化させ、引き続き、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着して、回折格子フィルム(微細凹凸パターンシート)を作製した。回折格子フィルムは、比較例で得られた樹脂組成物を用いて作製したものを含め、いずれも光沢があり、光沢が暗くなっている部分や欠けている部分等はなく、良好であった。
【0135】
(実施例5)
硬化後の耐摩耗性
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を各々、厚さ50μmの片面易接着性処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイアホイルT600E U−36、三菱ポリエステルフィルム製)の易接着性処理面上にグラビアコーターで塗工し、100℃で乾燥して溶剤を揮発させて、乾燥時塗工量が2g/m2の複製用感光性フィルムを形成した。
【0136】
続いて、フィルムに高圧水銀灯により積算露光量が600mJ/cm2になるように紫外線を照射した。得られた硬化フィルムは、JIS K−7204に基づき、テーバー摩耗試験を行った。摩耗輪はCS−10を使用し、荷重を250gとした。試験開始前と200回転後のヘイズ値(%)を測定し、曇度をヘイズ値の差で評価した。ヘイズ値は、JIS K−7105に基づく。結果を第1表に示す。
【0137】
(実施例6)
(1)微細凹凸パターン転写箔シートの作成
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60、東レ製)に、剥離性のニス(商品名:ハクリニス45−3、昭和インク工業所製)をグラビアコート法で塗工し、100℃で乾燥して溶剤を揮発させて、乾燥膜厚が1g/m2の剥離層を形成した。この剥離層面に、前記各実施例及び比較例の光硬化性樹脂組成物を各々、グラビアコーターで塗工し、100℃で乾燥して溶剤を揮発させて乾燥膜厚が2g/m2の複製用感光性フィルムを形成した。
【0138】
次に、複製装置のエンボスローラーに、レーザー光を用いて作った母型から作成したプレススタンパーを設置し、複製用感光性フィルムを当該複製装置の給紙側にセットし、150℃で加熱プレスして微細な凹凸パターンを形成させた。次に、水銀灯より発生した紫外線を照射して複製用感光性フィルムを光硬化させ、引き続き、真空蒸着法により酸化チタンを蒸着して反射型の透明レリーフホログラムを作成した。この表面に、塩化ビニル系/酢酸ビニル感熱接着剤をグラビアコートで塗工し、100℃で乾燥して溶剤を揮発させて乾燥膜厚が1g/m2の接着剤層を形成し、微細凹凸パターン転写箔シートを得た。
【0139】
(2)プラスチックカード表面の耐摩耗性
微細凹凸パターン転写箔の接着層に、サーマルヘッドプリンターを用いて昇華転写リボンにより転写染色して絵柄を形成した。塩化ビニル製カードに、上記転写箔をラミネーターによりラミネートして、基材フィルムを剥離した。
得られたカードを、JIS K‐7204に基づき、テーバー摩耗試験を行った。摩耗輪にはCS−10を使用し、荷重を500gとした。絵柄が傷つくまで回転させた。2000回以上持つものを良好(○)、2000回に満たないものを不良(×)とした。結果を第1表に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
【発明の効果】
本発明により、硬化前においては微細凹凸パターン形成能及びその他の加工適性に優れると共に、硬化後においては、耐熱性、及び耐久性、すなわち、耐磨耗性、耐擦傷性、耐薬品性、耐水性等に優れた微細凹凸パターンを形成できる光硬化性樹脂組成物が得られた。
【0142】
また、上記の光硬化性樹脂組成物により、スタンパーとの剥離性が優れ、且つ、剥離後の微細凹凸パターンの保持性に優れることから、その後の光硬化によって再現性、作業性の良い作製方法が可能となった。
【0143】
さらに、上記の光硬化性樹脂組成物及び微細凹凸パターン形成方法を利用し、微細凹凸パターン転写箔、微細凹凸パターンを有する光学物品及びスタンパーを提供することが可能となった。
Claims (25)
- 必須成分として、(A)アクリル樹脂と、(B)光重合性官能基およびウレタン結合を分子中に有するウレタンアクリレートと、(C)金属アルコキシドの重縮合物を含有することを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
- (C)の金属アルコキシドの重縮合物が、金属アルコキシドモノマーが2〜20単位重合した重縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (C)の金属アルコキシドの重縮合物が、金属アルコキシドモノマーが3〜12単位重合した重縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (C)の化合物が、ケイ素を含む金属アルコキシドの重縮合により調製された、アルコキシ基を有する部分重縮合物であることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (C)の化合物が、アルミニウムを含む金属アルコキシドの重縮合により調製された、アルコキシ基を有する部分重縮合物であることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (C)の化合物が、ケイ素を含む金属アルコキシドの重縮合物とアルミニウムを含む金属アルコキシドの重縮合物の混合物であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (A)のアクリル樹脂のポリスチレン換算分子量が、5000〜600000であることを特徴とする、請求項1乃至6に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (A)のアクリル樹脂が、分子中に少なくとも1個の光重合性官能基を有するアクリルポリマーである、請求項1乃至7に記載の光硬化性樹脂組成物。
- (B)のウレタンアクリレートが、光重合性官能基を分子中に3個以上有することを特徴とする、請求項1乃至8に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 離型剤を含有することを特徴とする、請求項1乃至9に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 離型剤が、シリコーン系離型剤であることを特徴とする、請求項10に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 光重合性官能基を有するモノマー及び/またはオリゴマーを含有することを特徴とする、請求項1乃至11に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 微細凹凸パターンを形成するために用いられることを特徴とする、請求項1乃至12に記載の光硬化性樹脂組成物。
- 支持体上に少なくとも前記請求項1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、当該微細凹凸パターン形成層を反応硬化させることを特徴とする、微細凹凸パターン形成方法。
- 支持体上に少なくとも前記請求項1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターン形成層を設けた凹凸パターン受容体を用意し、その表面にスタンパーを圧接して凹凸パターンを形成した後、スタンパーをはずす前に当該微細凹凸パターン形成層を反応硬化させることを特徴とする、微細凹凸パターン形成方法。
- 支持体上に、少なくとも前記1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる微細凹凸パターンが予め形成された微細凹凸パターン形成層が転写可能に設けられていることを特徴とする、微細凹凸パターン転写箔。
- 前記支持体上に、少なくとも剥離層、前記微細凹凸パターンが予め形成された微細凹凸パターン形成層、前記微細凹凸パターン形成層とは屈折率の異なる反射層、及び、接着剤層を順次積層してなることを特徴とする、請求項16に記載の微細凹凸パターン転写箔。
- 前記支持体上に、少なくとも剥離層、前記微細凹凸パターンが予め形成された微細凹凸パターン形成層、前記微細凹凸パターン形成層とは屈折率の異なる反射層、接着剤層、及び、フィルム又は離型紙を順次積層してなることを特徴とする、請求項16に記載の微細凹凸パターン転写箔。
- 反射層が透明であることを特徴とする請求項16乃至18に記載の微細凹凸パターン転写箔。
- 接着剤層がヒートシール型接着剤層であることを特徴とする請求項17、19に記載の微細凹凸パターン転写箔。
- 前記請求項1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物からなると共に、該硬化物の表面に微細凹凸パターンが形成されている光学物品。
- 前記微細凹凸パターンがレリーフ型ホログラム又は回折格子である、請求項21に記載の光学物品。
- 前記微細凹凸パターンが全光線および/または特定波長の光の反射、透過、散乱、偏光、集光または干渉の少なくとも一つを制御する光学素子である、請求項21に記載の光学物品。
- 前記微細凹凸パターンが情報を記録する構造である、請求項21に記載の光学物品。
- 前記請求項1乃至13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化物からなると共に光学物品の微細凹凸パターンに相補的なパターンが形成された表面構造を備えることを特徴とする、スタンパー。
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