JP2004202844A - 耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、フィルムと繊維状物質の積層体であって、低温でも優れた柔軟性を有し、透湿性が高くかつ吸水性が低く、屋外や光のあたる場所でも使用できる耐候性の優れたエラストマー積層体を提供することにある。
【解決手段】ポリマー構成成分として芳香族ジカルボン酸成分、短鎖グリコール成分および少なくと2種のアルキレンオキシド単位がランダムに繰り返してなるポリエーテルグリコール成分であり、全重量中の4級炭素を有するアルキレンオキシド単位の含有量が10重量%未満であるランダム共重合ポリエーテルグリコール成分を70〜95重量%含有し、かつ紫外線吸収剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマーからなり、吸水率が0.005〜20重量%であり、かつ、透湿度(厚さ30μmで測定)が3,000g/m2・日以上であるポリエステルエラストマーフィルムを繊維状物質からなる基材に積層した積層体。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリマー構成成分として芳香族ジカルボン酸成分、短鎖グリコール成分および少なくと2種のアルキレンオキシド単位がランダムに繰り返してなるポリエーテルグリコール成分であり、全重量中の4級炭素を有するアルキレンオキシド単位の含有量が10重量%未満であるランダム共重合ポリエーテルグリコール成分を70〜95重量%含有し、かつ紫外線吸収剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマーからなり、吸水率が0.005〜20重量%であり、かつ、透湿度(厚さ30μmで測定)が3,000g/m2・日以上であるポリエステルエラストマーフィルムを繊維状物質からなる基材に積層した積層体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟でかつ透湿性の高い積層体に関する。特に低温でも柔軟であり、さらに吸水性が低いエラストマーフィルムを繊維状物質からなる基材に積層した透湿性ならびに吸水した時の層間密着性、耐候性に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、透湿性を必要とする衣料材料、例えば雨天着、ジャケット、保護服、テントなどとして、ポリオレフィンと無機充填材とを配合したシートを延伸して、ポリオレフィンと無機充填材との間で界面剥離を生じさせ、その結果、微細孔を有するシートが公知である。このシートは水蒸気がこの微細孔を通過するが、水はポリオレフィンの撥水性のために微細孔を通過することができないために、シートに透湿性と非透水性を付与することができる。しかし、高い透湿性および通気性を得るために多量の無機充填材を混合すると、シートの強度が小さくなるとの欠点を有する。
【0003】
このような透湿性シートに代えて、繊維物質を特定のコポリエーテルエステルフイルムからなる防水性物質で被覆した柔軟で湿潤時の機械的強度の優れた積層物質が公知である(特開昭59−111847号公報、特表平8−507728号公報)。ここでは、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオールからなる短鎖エステル単位50〜75重量%であり、分子量800〜6,000、C/O原子が2.0〜2.4である長鎖グリコール単位50〜25重量%からなるコポリエーテルエステルフィルムが使用されている。具体的には、短鎖エステル単位としてはポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートおよび長鎖グリコール単位としては分子量1,000〜4,000のポリエチレングリコールが使用されている。このようなポリエチレングリコールを使用したコポリエーテルエステルフイルムは、透湿性に優れるものの吸水性が非常に高くなってしまう。
【0004】
また、透湿性を有しながら、尿などの水分を通さない紙おむつバックシート材料として、芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位をソフトセグメントとしてなるフィルムであって、フィルム厚さ、フィルム透湿度、フィルム透過定数を規定するポリエステルエラストマーシトが提案されている(特開平8−84749号公報および特開平11−80389号公報)。これらのポリエステルエラストマーフィルムは、特定の不織布とヒートプレスにより熱圧着して積層体としている。ここで、ポリエステルエラストマーとしては、ソフトセグメントであるポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位としては、分子量1,000〜2,000のポリテトラメチレングリコールを約32〜75重量%含有する。このようなソフトセグメントを有するポリエステルエラストマーでは、フィルム自体が比較的に柔軟性が低いうえに、不織布との積層において、さらに本来の柔軟性を失う。
【0005】
一方、熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムはその他の熱可塑性樹脂フィルムと同様に耐候性が悪く、屋外で使用する際には経時劣化が問題となる。一般に熱可塑性樹脂フィルムの耐候性を向上させるためには、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤などの耐候剤を配合することが知られている。しかし、フィルムは表面積が大きいこともあり、目標とする耐候性を得るためには多量の耐候剤を配合する必要がある。また、多量の耐候剤を配合すると配合した耐候剤がブリードアウトするといった問題点がある。
【0006】
【特許文献1】
特開昭59−111847号公報
【特許文献2】
特表平8−507728号公報
【特許文献3】
特開平8−84749号公報
【特許文献4】
特開平11−80389号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非常に柔軟でありかつ低温でも安定した特性を示し、さらに高い透湿性を有しかつ吸水した時の層間密着性に優れ、耐候性にも優れた積層体を提供する。特に屋外や光のあたる場所でも使用できる耐候性の優れたエラストマー積層体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討の結果、芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、異なる2種以上のアルキレンオキシド単位からなる共重合ポリエーテルグリコール単位をソフトセグメントとし、さらに、該共重合ポリエーテルグリコール中の各グリコール成分比率、その分子量および熱可塑性ポリエステルエラストマー中に占めるソフトセグメントの割合を組合せて選択することにより、低吸水性であって、かつ、透湿性である熱可塑性ポリエステルエラストマーを見出し、更にこれに耐候剤を配合したポリエステルエラストマーフィルムを繊維状物質からなる基材上に積層することにより、上記課題が解決することを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、(1)繊維状物質からなる基材上に、(2)ポリマー構成成分として下記A、BおよびC成分を含有し、かつ下記条件DおよびEを満足し、かつ紫外線吸収剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物からなり、かつ吸水率(23℃で24時間水中に浸漬した後測定)が0.005〜20重量%であり、かつ透湿度(JIS Z0208の塩化カルシウム法で40℃、90%RH条件により厚さ30μmで測定)が3,000g/m2・日以上である熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムを積層したことを特徴とする耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体である。
A:芳香族ジカルボン酸成分
B:短鎖グリコール成分
C:少なくと2種の炭素数2〜10のアルキレンオキシド単位がランダムに繰り返してなる、分子量2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコール成分
D:該熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリエーテルグリコール成分の全重量中、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位が10重量%未満である。
E:該熱可塑性ポリエステルエラストマー中のC成分の含有量が70〜95重量%である。
【0010】
本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体の一実施態様としては、前記C成分が、テトラメチレンオキシド単位とエチレンオキシド単位がモル比60/40〜20/80にて、ランダムに共重合したポリエーテルグリコールであって、分子量が2,200〜3,800であり、熱可塑性ポリエステルエラストマー中、72〜90重量%である熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体がある。
【0011】
また、本発明の別な実施態様としては、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物がヒンダードアミン系光安定剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、23℃で24時間水中に浸漬した際の吸水率が0.005〜20重量%、好ましくは、0.005〜15重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、最も好ましくは、0.01〜7重量%であることを特徴とする。吸水率が20重量%を越えると、成型品が吸湿により変形や膨張する、他の素材と積層した場合に吸湿や水濡れにより剥離強度が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0013】
また、本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、JIS Z0208の塩化カルシウム法で40℃、90%RH条件により、厚さ30μmのフィルムを測定した際の透湿度が、3,000g/m2・日以上であり、好ましくは、4,000g/m2・日以上、より好ましくは、4,500g/m2・日以上、特に好ましくは、4,800g/m2・日以上、最も好ましくは、5,000g/m2・日以上である。透湿度の上限は大きいほど好ましいが、現実的には、約100,000g/m2・日以下である。
【0014】
透湿度を上記範囲にすることにより、本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体は高い透湿性と柔軟性を両立させ、柔軟かつ透湿性の高い積層体として好適に用いることが出来る。
【0015】
以下に、本発明におけるフィルムを構成する熱可塑性ポリエステルエラストマーについて詳細に説明する。
A:芳香族ジカルボン酸成分
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、酸成分は、芳香族ジカルボン酸を主体とする。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などから選ばれる酸の1種もしくは2種以上の組み合わせを用いることが好ましく、これらの中、より好ましくは、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸は全酸成分の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0016】
その他の酸成分としては、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が用いられ、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらの酸はポリエステルエラストマーの融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは10モル%未満である。
【0017】
B:短鎖グリコール成分
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおける短鎖グリコール成分としては、炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。炭素数が1〜25のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキシド誘導体(XはA,S,F)及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。特に好ましくは1,4−ブタンジオールである。
【0018】
C:ランダム共重合ポリエーテルグリコール成分
本発明に使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるソフトセグメントは、炭素数2〜10の異なる2種以上のアルキレン単位のランダムな繰り返しからなる、分子量が2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコールを含む。分子量は、より好ましくは2,400〜3,600、さらに好ましくは2,600〜3,400、特に好ましくは2,800〜3,300、最も好ましくは約2,900〜3,200である。
【0019】
ランダム共重合ポリエーテルグリコール成分としては、-OCH2CH2-(以下、EO成分と略すときがある)、-OCH2CH2CH2-、-OCH2CH2CH2CH2-(以下、THF成分と略すときがある)、-OCH2CH(CH3)-(以下、PO成分と略すときがある)、-OCH2C(CH3)2CH2-などのアルキレンオキシド単位が挙げられる。共重合ポリエーテルグリコール成分としては、好ましくはテトラメチレンオキシド単位(THF成分)とエチレンオキシド単位(EO成分)がランダムに共重合したポリエーテルグリコールがある。
【0020】
ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が2,200未満である場合、十分な柔軟性と成型性を有するポリエステルエラストマーが得られないことがある。また、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が3,800を越える場合は、ポリマー合成時にポリエーテルグリコールと他の原料が相分離し、所望の分子量を有するポリエステルエラストマーが得られないことがある。
また、このようなランダム共重合ポリエーテルグリコールを用いることにより、0℃以下の低温から室温、さらには80℃を越える高温域まで幅広い範囲で、柔軟性や強度および伸度特性の変化の少ない、温度依存性の低いエラストマーが得られる。
【0021】
本発明においては、ランダム共重合ポリエーテルグリコールとすることにより、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの一成分として、EO成分を用いても吸水率の低いエラストマーが得られる。なお、ランダム共重合ポリエーテルグリコールに用いられる成分のうち、EO成分は80〜40モル%であることが好ましく、さらに好ましくは、70モル〜40%、特に好ましくは、60〜40モル%である。EO成分は80モル%を越えると吸水性が高くなり、用途によっては好ましくない場合がある。
【0022】
上記ランダム共重合ポリエーテルグリコールの両末端は、実質的に全てがEO成分由来の水酸基であることが望ましい。この条件を満たすランダム共重合ポリエーテルグリコールとして、たとえばTHFとEOのランダム共重合体であるDC−3000(日本油脂(株)製、分子量3000、THF/EO=50/50(モル比))などが挙げられる。末端がTHF成分由来の水酸基である場合、THF成分のみからなるポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールはいうまでもなく、ランダム共重合ポリエーテルグリコールにおいても末端の閉環反応によりTHFが生成し、副生成物の発生及び臭気の点から好ましくない。
【0023】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ランダム共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分を必要により共重合させても良い。共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分としては、分子量400〜6,000のポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等のポリエーテルグリコール、または炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族グリコールから製造されるポリエステル、例えばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリネオペンチルセバゲート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンアゼレート、ポリ−ε−カプロラクトンなどがある。これらのグリコールは各種特性のバランスにより適切な組み合わせで用いられる。
【0024】
D:上記熱可塑性ポリエステルエラストマーの全ポリエーテルグリコール成分の全重量中に、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位が10重量%未満である。
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーは前述のランダム共重合ポリエーテルグリコールのポリエーテルグリコール成分を含むことが必要であるが、熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリエーテルグリコール成分の全重量中に、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位、例えばネオペンチレンオキシド単位が10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であり、最も好ましくはポリエーテルグリコール成分中に4級炭素を有さない。4級炭素を有するアルキレンオキシド単位を含むポリエステルエラストマーは、過酷な条件での使用中に劣化する恐れがある。なお、ポリエーテルグリコール成分の全重量中、4級炭素を持つアルキレンオキシド単位の重量は、ポリエーテルグリコールの製造原料であるアルキレンオキシド単位を基に算出する。
【0025】
E:上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中の上記構成成分C成分の含有量が70〜95重量%である。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーに用いられるソフトセグメントの含有量は、ランダム共重合ポリエーテルグリコールおよびランダム共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分を合計して、全ポリマー中70〜95重量%である。好ましくは72〜90重量%、さらに好ましくは、75〜90重量%、特に好ましくは、80〜85重量%である。ソフトセグメント含有量が70重量%未満では、所望の表面硬度が達成できない場合があったり、透湿性が低下することがある。また、95重量%を越えると得られるエラストマーのブロック性が低下するため、ポリマーの融点や軟化点が低下する場合がある。
【0026】
通常、熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、柔軟性を高めようとする際には、可塑剤を多く混入する、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメント量を多くする等の方策が採られる。本発明では、高い柔軟性を持たせるためには、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメント量を70〜95重量%と多くして、柔軟性を上げる。
【0027】
しかし、柔軟性を高めようとするあまり、ソフトセグメント量を多くしすぎると、ポリエステルエラストマーが結晶性を保てなくなり、成形性に劣る場合がある。即ち、十分な柔軟性と成型性の両立が重要である。結晶性を確保したまま、ソフトセグメントの量を上げるためにはソフトセグメントの分子量を大きくすることが考えられるが、通常、ソフトセグメントの分子量を大きくすると重合時に相分離し、満足いく分子量の熱可塑性ポリエステルエラストマーが得られ難い。
本発明では、特定の分子量(2,200〜3,800)を有するランダム共重合ポリエーテルグリコールを用いることにより、これらの諸問題を解決した高い柔軟性を持つ熱可塑性ポリエステルエラストマーを得ることが出来る。すなわち、本発明では、分子量2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコールを全ポリマー中、70〜95重量%含有することにより、従来から公知である熱可塑性ポリエステルエラストマーに比べて、優れた透湿性を保持しつつ、吸水率を一定に低い状態としたフィルムが得られる。
【0028】
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおいては、少量に限って、3官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分を含むこともできる。例えば、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、無水ピロメリット酸などを3モル%以下使用できる。3官能以上のポリカルボン酸や全ポリオール成分の合計量は、ポリエステルの全ポリカルボン酸成分およびポリオール成分の合計を100モル%とすると、5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
【0029】
本発明で使用するポリエステルエラストマーは、還元粘度が1.0〜4.0であることが望ましい。還元粘度が1.0以下の場合は機械特性に劣ることがあり、4.0を越えると流動性が悪いため成形性に劣ることがあり、成形材料としての使用範囲が限られてくる。還元粘度はより好ましくは、1.5〜3.7、さらに好ましくはは2.0〜3.4、特に好ましくは2.3〜3.2、特に好ましくは2.5〜3.0である。
【0030】
本発明で使用するポリエステルエラストマーの製造には、公知である任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合法の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことはもちろん望ましいことである。また、ポリエステルの重合後、イソシアネート化合物やエポキシ化合物等で鎖延長してもよい。
【0031】
重合反応に用いる触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、チタン触媒が良好である。特にチタン触媒、詳しくはテトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩などが好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定はしないが、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物、酢酸鉛などの鉛化合物が挙げられる。
【0032】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、紫外線吸収剤を含有する。特に優れた耐候性を付与するためには、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用して配合することが好ましい。また、耐候性を向上させるために添加する紫外線吸収剤および/またはヒンダードアミン系光安定剤の20℃における蒸気圧は1×10-6以下が好ましく、より好ましくは1×10-7以下、特に好ましくは1×10-8以下である。蒸気圧の下限は小さいほど好ましいが、現実的には、1×10-15である。
【0033】
本発明で使用する紫外線吸収剤としては、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどの化合物が挙げられる。ポリエステルエラストマーへの配合量は、0.5重量%〜15重量%が好ましい。更に好ましくは2重量%〜10重量%である。ポリエステルエラストマーへの配合量が0.5重量%より少ない場合は十分な耐候性が得られない。一方、配合量が、15重量%より多いと紫外線吸収剤がブリードアウトし、外観が悪くなる。
【0034】
本発明で使用するヒンダードアミン系光安定剤としては、例えばジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどの化合物が挙げられる。ポリエステルエラストマーへの配合量は、0.5重量%〜15重量%が好ましい。更に好ましくは2重量%〜10重量%である。ポリエステルエラストマーへの配合量が0.5重量%より少ない場合は十分な耐候性が得られない。一方、配合量が、15重量%より多いとヒンダードアミン系光安定剤がブリードアウトし、外観が悪くなる。
【0035】
これらの添加物のポリエステルエラストマーへの配合方法としては、加熱ロール、押出機、バンバリミキサー等の混練機を用いて配合することができる。また、熱可塑性ポリエステルエラストマーを重合する際、エステル交換反応前の原料中または重縮合反応前のオリゴマー中に添加混合することもできる。
【0036】
また得られたポリエステルエラストマーには公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、などの酸化防止剤、ヒンダートアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、ガラス繊維、カーボン繊維シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機質繊維状物質、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如きケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムの如き金属の炭酸塩、その他の各種金属粉などの紛粒状充填剤、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属粉末などの板状充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機・無機の顔料などを一種類以上添加することができる。
【0037】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムに配合するこれら添加剤も20℃における蒸気圧が低いことが好ましい。
【0038】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、従来から知られている溶融成形法や溶液流延法などの製膜技術を使用して製造することができる。
溶融成形法でフィルムを成形するには、Tダイを用いる方法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などの方法がある。これらの方法の中でも厚さムラが小さくできるTダイ法を用いる溶融押出法が好ましい。溶融成形法の条件は、成形方法に応じて適宜選択されるが、例えば、Tダイを用いる溶融成形法では、ポリマー温度が結晶融点以上、分解温度以下の範囲で適宜選択されるが、通常、結晶融点より10〜30℃高い温度範囲で成形される。
【0039】
溶液流延法を用いてフィルムを作製するには、常法に従って行うことができ、例えば、各成分を溶媒に溶解または分散させた液状組成物を、適当な支持体上に流延し、次いで、溶媒を乾燥除去することで行うことができる。支持体としては、特に制限はなく、一般的な溶液流延法で用いられるものが使用され、例えば、ガラス板、金属ドラム、スチールベルト、フッ素樹脂ベルト、金属箔などの平板、ベルトまたはロールなどを挙げることができる。溶剤としては、フェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、四塩化炭素、二塩化エチレン、ヘキサフルオロイソプロパノールなどのハロゲン化溶剤;などを用いることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができる。溶剤中のポリエステルエラストマーの濃度は、製造するフィルム厚に応じて適宜選択されるが、通常、0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%の範囲である。
【0040】
液状組成物を支持体へに流延する方法としては、特に制限されないが、例えば、バーコーダー、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、メイア・バー、ロール・コート、ダイ・コートなどを用いて行うことができる。液状組成物の流延は、スプレー、ハケ、ロール、スピンコート、ディッピングなどで塗布することにより行ってもよい。1回の塗布で所望の膜厚が得られない場合は、繰返し塗布することができる。
【0041】
溶剤の乾燥除去には、特に制限はなく、常法にしたがって行うことができるが、残留溶剤濃度が5%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%とする。乾燥としては、平板またはロール上のフィルムを室温〜100℃、好ましくは室温〜80℃の温度範囲で、残留溶剤濃度が5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下になるまで乾燥する。この場合、乾燥温度が高すぎると、溶剤の揮発に際して、フィルムが発泡する。溶剤の乾燥は、必要に応じて減圧で行うことができる。
【0042】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは未延伸フィルムで用いることができ、また所望により一軸または二軸方向に延伸した延伸フィルムとして用いることができる。また延伸加工後、熱処理を行うことやコロナ放電処理等の表面処理等を行うこともできる。フィルムの厚みは透湿性能に直接的に影響する特性であるが、一般的に0.1〜1,000μm、好ましくは0.5〜200μm、より好ましくは1〜100μm、特に10〜50μmが好ましい。0.1μmより薄いフィルムまたはピンホールなしに工業的に生産することが困難であり、また1,000μmを越える厚みのフィルムは透湿性が十分でない。
【0043】
本発明に使用する(1)繊維状物質からなる基材は、用途に応じて実用上問題ない強度を有し、柔軟性に優れたものであればよく、特に制限されない。このような基材としては、編織布、不織布、紙またはシートが挙げられる。
本発明における編織布は、従来から公知である衣料用、医療用、建築用、工業用など種々の用途において使用される編物または織物をいう。また紙またはシートとは通常、短繊維を使用して梳かれた紙、またはシートをいう。
【0044】
本発明における不織布は、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により、上記原料樹脂を溶融または溶解した後、繊維化かつ不織布に成形する方法、あるいは上記樹脂からなるフィルムを機械的に繊維化した後、不織布に成形する方法等に従って製造したものでもよい。また、ニードルパンチ法、スパンレース法により製造してもよい。特に、柔軟性に優れ、引張強度に優れる積層体を得るには、スパンボンド法によって製造された不織布が好ましい。
【0045】
これらの基材を構成する繊維としては、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜10のα−オレフィンの単独重合体、これらのα−オレフィンの2種以上からなる共重合体、またはこれらのα−オレフィンと他の共重合性単量体との共重合体からなるポリオレフィン樹脂を主成分とする繊維である。ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン樹脂からなる繊維を構成繊維とする不織布が好ましい。
【0046】
ポリエステル繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの長繊維または短繊維からなる不織布が挙げられる。好ましくは、ポリエステル分子繰り返し単位のうちエチレンテレフタレート繰り返し単位が70重量%以上であるポリエステル長繊維からなる不織布が挙げられる。また、ポリエステル短繊維を抄紙したシートであってもよい。さらに熱可塑性ポリエステルエラストマーの繊維からなる不織布やシートであってもかまわない。
【0047】
ナイロン繊維としては、例えばナイロン6、ナイロン66を主体とする長繊維または短繊維からなる不織布などが挙げられる。
【0048】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、通常、10〜22μm程度であり、好ましくは10〜18μmである。基材である不織布の目付量は、3〜100g/m2、好ましくは10〜60g/m2、さらに好ましくは10〜35g/m2である。
基材の厚さは、通常、3〜300μm程度であるが、用途により強度が必要な場合には、さらに厚くすることも可能である。
【0049】
本発明の積層体は、上記した繊維状物質からなる基材と熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムとが積層した積層体であり、フィルムと基材の二層積層体、フィルム/基材/フィルムあるいは基材/フィルム/基材などの三層積層体、さらにはより多層の積層体を挙げることができる。積層体の厚さは、所望される透湿性ならびに吸水性ならびに繊維状物質からなる基材の特性に応じて種々選択される。
【0050】
本発明の積層体の製造方法は、特に制限されないが、例えば熱可塑性ポリエステルエラストマーを溶融押出法によってフィルム化し、該フィルムと繊維状物質からなる基材を熱接着によって積層することができる。フィルムと繊維状物質からなる基材を熱接着することにより接着剤が不要となり、優れた積層体を製造することができる。
【0051】
また、本発明の積層体は、繊維状物質からなる基材の上部に熱可塑性ポリエステルエラストマーからなるフィルムを押出しラミネーションして一体的に積層成形する。押出しラミネーションすることにより成形プロセスを簡略化でき、コスト低減を行うこともできる。
【0052】
このようにして得られたポリエステルエラストマー積層体は、非常に柔軟であって、かつ、低温での温度変化に対して安定した透湿性を示し、さらに吸水性が低いことにより、吸水による物性変化も少ないので医療用途(救急絆創膏、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材、消炎・鎮痛・血行促進等の疾患治療用テープの基材、手術用手袋等)、衛生用途(紙おむつ固定用テープの基材、ナプキン固定用テープ基材)、スポーツ衣料用途、建築材料用途などにおいても大変有用である。特に耐候性が優れることにより、屋外や光のあたる場所でも使用できるので建築材料の用途に好適に使用できる。
【0053】
【実施例】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、これら実施例において、各測定項目は以下の方法に従った。
【0054】
(1)還元粘度
熱可塑性ポリエステルエラストマー0.05gを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40、容量比)に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(2)融点
融点は、上記エラストマーをセイコー電子工業(株)製DSC(示差走査熱量計)SSC/5200にて室温から20℃/分で昇温し、ピーク温度を測定値とした。サンプルはアルミ製のパンに10mg入れ、蓋で密封した。
【0055】
(3)表面硬度
JIS K6253により測定した。
(4)50%伸長応力
ASTM D638により−30℃および23℃において50%伸長応力を測定し、相対比α=(−30℃における50%伸長応力)/(23℃における50%伸長応力)の形で表した。
この値が1に近いほど室温から低温に至る温度変化に対して安定した柔軟性を示す。
【0056】
(5)吸水率
100×100×2mmのテストピースを作製し、このテストピースは100℃、10torr以下で24時間乾燥させた。これを23℃で水中に24時間浸漬した。
吸水率=(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量×100(%)
(6)透湿度
押出成形にて厚さ30μmのフィルムを得た。このフィルムを用いてJIS Z0208に記載の塩化カルシウム法に準じて透湿度を測定した。測定条件は40℃、90%RHで行った。
【0057】
(7)接着強度(水浸漬前後)
押出ラミ加工にて約30μm厚のフィルムと不織布を積層した積層体を用いて、剥離試験を実施した。また、吸水による影響を観察するため、フィルム面を24時間、水に浸した後に剥離試験を実施し、接着強度を○:基材破壊、△:剥離可能、×:自然に剥離、の3ランクで評価した。
【0058】
(8)耐候性
押出成形にて約30μm厚のフィルムを得た。このフィルムをサンシャインウェザーオメーター(SWOM)により200時間促進暴露試験を実施した。促進暴露試験は、温度63℃、全時間光照射、雨有り(水スプレー有)の条件下で実施した。促進暴露試験後のフィルム表面に亀裂が発生しているか否かを観察し、耐候性を○:亀裂なし、△:亀裂あり、×:形状保持せず のランクで評価した。
(9)ブリードアウト
上記の促進暴露試験後のフィルム表面に添加剤の析出がないか観察した。ブリードアウトを○:なし、△:ややあり、×:あり のランクで評価した。
【0059】
ポリエステルエラストマー合成例1(本発明)
ジメチルテレフタレート(DMT)197.4g、1,4−ブタンジオール(BD)153.5g、THF(テトラエチレンオキシド単位)とEO(エチレンオキシド単位)のランダム共重合体DC−3000(日本油脂(株)製、分子量3,000、THF/EO=50/50、モル比)1006.4g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、84重量%)、イルガノックス−1330(日本チバガイギー社製)2.40g、テトラブチルチタネート(TBT)1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで、重合缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、40分間かけて245℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出し、ポリマーAを得た。
【0060】
ポリエステルエラストマー合成例2(本発明)
ジメチルテレフタレート(DMT) 238.6g、1,4−ブタンジオール(BD)198.0g、THFとEOのランダム共重合体DC−3000(日本油脂(株)製、分子量3,000、THF/EO=50/50、モル比)958.2g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、80重量%)、イルガノックス−1330 2.40g、テトラブチルチタネート1.2gを5Lのオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、50分間かけて245℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出し、ポリマーBを得た。
【0061】
ポリエステルエラストマー合成例3(比較例)
DMT197.4g、BD153.5g、PTMG(分子量3,000)1006.4g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、80重量%)、イルガノックス−1330、2.40g、TBT1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーCを得た。
【0062】
ポリエステルエラストマー合成例4(比較例)
DMT198.2g、BD 153.3g、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールブロック共重合体L−64(旭電化(株)製、分子量2,900、PEG/PPG=40/60wt%)1006.5g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、84重量%)、イルガノックス−1330、2.40g、TBT1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーDを得た。
【0063】
ポリエステルエラストマー合成例5(比較例)(特開平2001-172411号公報実施例1の追試)
DMT317.4g、BD245.4g、THFとEOのランダム共重合体(三洋化成(株)製、分子量2,000、THF/EO=70/30、モル比)440.0g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、60重量%)、イルガノックス−1330(チバガイギー社製)1.60g、TBT0.80gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで3時間かけて昇温しエステル交換を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分間かけて245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出した(ポリマーE)。
【0064】
ポリエステルエラストマー合成例6(比較例)(特開平2001-172411号公報実施例4の追試)
DMT211.6g、BD151.6g、THFとEOのランダム共重合体(分子量2,000、THF/EO=50/50(モル比))560.0g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、77重量%)、イルガノックス−1330(チバガイギー社製)1.60g、テトラブチルチタネート(TBT)0.80gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで3時間かけて昇温しエステル交換を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分間かけて245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出した(ポリマーF)。
【0065】
(実施例1および2、比較例1〜4)
上記ポリエステル合成例1および2(本発明における熱)で得られたポリマーAおよびB、合成例3〜6(比較例)で得られたポリマーC〜Fの各々100重量部に対して、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部、ジラウリルチオプロピオネート0.3重量部を配合し、二軸押出機(PCM30mmφ、池貝鉄工(株)製)を用いて、ペレット状に取り出した。
【0066】
上記方法にて得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレットを、幅200mm、スリット間隙0.8mmのTダイを取りつけた30mmφ単軸押出し機((株)プラ技研製)を用いて溶融成形し、厚さ30μmのフィルムを作製した。押出し成形の樹脂温度は各熱可塑性エラストマーの結晶融点より20℃高い温度にした。
また、射出成形(東芝機械(株)製IS80)により100×100×2mmの表面硬度、50%伸長応力および吸水率の測定用テストピースを得た。射出成形の樹脂温度も各熱可塑性エラストマーの結晶融点より20℃高い温度にした。
【0067】
また、不織布として、スパンボンド法によるPETからなる不織布6301A(東洋紡績(株)製、目付量30g/m2)を準備した。上記方法にて得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレットををスリットから溶融押出し、上記不織布と重ねてロール間でラミネートし、積層体(a)〜(f)を得た。得られた積層体の接着状態を知るためフィルムを不織布から剥離させてみた。その結果を下記表2に示す。また、吸水後の接着状態はフィルム面を24時間、水に浸した後、同様に剥離させた。また、得られた積層体を用いて促進暴露試験を実施した。
【0068】
ポリマーの還元粘度、表面硬度(JIS K6253)、50%伸長応力の相対比α、吸水率(%)、透湿度(30μm)(g/m2・日)、積層体の水浸漬前後の接着状態、を下記表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーである合成例1(ポリマーA)および合成例2(ポリマーB)のポリマーから得たフィルムはいずれも、非常に柔軟かつ低温での温度変化に対しても安定した特性を示し、更に透湿性が高くかつ吸水性が低い。
一方、本発明の構成と異なる熱可塑性ポリエステルエラストマーである合成例4(ポリマーD)では低温での柔軟性には優れるが、吸水率が高く、吸水性が問題になる用途には使用しにくい。また、合成例3(ポリマーC)のフィルムでは柔軟性が不足し、特に低温では柔軟性が悪くなり、柔軟性が要求されるフィルムとして使用しにくい。
【0071】
また、合成例5(ポリマーE)および合成例6(ポリマーF)では、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が小さいため含有量をこれ以上に上げられず、柔軟性および透湿性が不足するフィルムしか得られない。
積層体の接着状態は、水浸漬前は積層体(a)〜(d)で良好であったが、水浸漬後は吸水により積層体(d)は接着状態が悪くなった。透湿性、柔軟性と合わせて判断すると積層体(a)および(b)が優れていることがわかる。
【0072】
次に本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーであるポリマーAおよびポリマーBに対して、下記表2に示す配合処方により添加剤を配合し、二軸押出機(PCM30mmφ、池貝鉄工(株)製)を用いて、ペレット状に取り出した。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のペレットを用いて、上記と同様にして、表面硬度(JIS K6253)、50%伸長応力の相対比α、吸水率(%)、透湿度(30μm)(g/m2・日)、積層体の水浸漬前後の接着状態、を評価した。また、得られた積層体の促進暴露試験を実施し、所定時間経過後のフィルム部を観察し評価した。結果を下記表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2における添加剤は次のとおりである。
(1)紫外線吸収剤
UVA-1 : 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール (商品名:チヌビン234、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)2.0×10-10Pa)
UVA-2 : 2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール (商品名:チヌビン327、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)1.1×10-6Pa)
(2)ヒンダードアミン系光安定剤
HALS-1 : ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}] (商品名:キマソーブ944FDL、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)6×10-10Pa)
HALS-2 : コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物 (商品名:チヌビン622LD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)2.5×10-6Pa)
(3)酸化防止剤
AO-1 : ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] (商品名:イルガノックス1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)1.3×10-10Pa)
AO-2 : ジラウリルチオプロピオネート (商品名:ラスミットLG、第一工業製薬製)
【0075】
表2に示すとおり、本発明のA−(1)およびB−(1)のポリエステルエラストマー積層体は耐候性に優れており、また促進暴露試験後にもブリードアウトがないことがわかる。また、優れた柔軟性と透湿性を有し、かつ水に浸漬しても層間の接着力が強い積層体であることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体は、非常に柔軟かつ低温での温度変化に対して安定した特性を示し、さらに吸水性も低い。このような積層体は、医療用途(救急絆創膏、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材、消炎・鎮痛・血行促進等の疾患治療用テープの基材、手術用手袋等)、衛生用途(紙おむつ固定用テープの基材、ナプキン固定用テープ基材)、スポーツ衣料、建築材料などの用途において、有効に利用できる。特に本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、屋外や光のあたる場所でも使用できるので建築材料の用途に好適に使用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟でかつ透湿性の高い積層体に関する。特に低温でも柔軟であり、さらに吸水性が低いエラストマーフィルムを繊維状物質からなる基材に積層した透湿性ならびに吸水した時の層間密着性、耐候性に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、透湿性を必要とする衣料材料、例えば雨天着、ジャケット、保護服、テントなどとして、ポリオレフィンと無機充填材とを配合したシートを延伸して、ポリオレフィンと無機充填材との間で界面剥離を生じさせ、その結果、微細孔を有するシートが公知である。このシートは水蒸気がこの微細孔を通過するが、水はポリオレフィンの撥水性のために微細孔を通過することができないために、シートに透湿性と非透水性を付与することができる。しかし、高い透湿性および通気性を得るために多量の無機充填材を混合すると、シートの強度が小さくなるとの欠点を有する。
【0003】
このような透湿性シートに代えて、繊維物質を特定のコポリエーテルエステルフイルムからなる防水性物質で被覆した柔軟で湿潤時の機械的強度の優れた積層物質が公知である(特開昭59−111847号公報、特表平8−507728号公報)。ここでは、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオールからなる短鎖エステル単位50〜75重量%であり、分子量800〜6,000、C/O原子が2.0〜2.4である長鎖グリコール単位50〜25重量%からなるコポリエーテルエステルフィルムが使用されている。具体的には、短鎖エステル単位としてはポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートおよび長鎖グリコール単位としては分子量1,000〜4,000のポリエチレングリコールが使用されている。このようなポリエチレングリコールを使用したコポリエーテルエステルフイルムは、透湿性に優れるものの吸水性が非常に高くなってしまう。
【0004】
また、透湿性を有しながら、尿などの水分を通さない紙おむつバックシート材料として、芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位をソフトセグメントとしてなるフィルムであって、フィルム厚さ、フィルム透湿度、フィルム透過定数を規定するポリエステルエラストマーシトが提案されている(特開平8−84749号公報および特開平11−80389号公報)。これらのポリエステルエラストマーフィルムは、特定の不織布とヒートプレスにより熱圧着して積層体としている。ここで、ポリエステルエラストマーとしては、ソフトセグメントであるポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位としては、分子量1,000〜2,000のポリテトラメチレングリコールを約32〜75重量%含有する。このようなソフトセグメントを有するポリエステルエラストマーでは、フィルム自体が比較的に柔軟性が低いうえに、不織布との積層において、さらに本来の柔軟性を失う。
【0005】
一方、熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムはその他の熱可塑性樹脂フィルムと同様に耐候性が悪く、屋外で使用する際には経時劣化が問題となる。一般に熱可塑性樹脂フィルムの耐候性を向上させるためには、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤などの耐候剤を配合することが知られている。しかし、フィルムは表面積が大きいこともあり、目標とする耐候性を得るためには多量の耐候剤を配合する必要がある。また、多量の耐候剤を配合すると配合した耐候剤がブリードアウトするといった問題点がある。
【0006】
【特許文献1】
特開昭59−111847号公報
【特許文献2】
特表平8−507728号公報
【特許文献3】
特開平8−84749号公報
【特許文献4】
特開平11−80389号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非常に柔軟でありかつ低温でも安定した特性を示し、さらに高い透湿性を有しかつ吸水した時の層間密着性に優れ、耐候性にも優れた積層体を提供する。特に屋外や光のあたる場所でも使用できる耐候性の優れたエラストマー積層体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々鋭意検討の結果、芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、異なる2種以上のアルキレンオキシド単位からなる共重合ポリエーテルグリコール単位をソフトセグメントとし、さらに、該共重合ポリエーテルグリコール中の各グリコール成分比率、その分子量および熱可塑性ポリエステルエラストマー中に占めるソフトセグメントの割合を組合せて選択することにより、低吸水性であって、かつ、透湿性である熱可塑性ポリエステルエラストマーを見出し、更にこれに耐候剤を配合したポリエステルエラストマーフィルムを繊維状物質からなる基材上に積層することにより、上記課題が解決することを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、(1)繊維状物質からなる基材上に、(2)ポリマー構成成分として下記A、BおよびC成分を含有し、かつ下記条件DおよびEを満足し、かつ紫外線吸収剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物からなり、かつ吸水率(23℃で24時間水中に浸漬した後測定)が0.005〜20重量%であり、かつ透湿度(JIS Z0208の塩化カルシウム法で40℃、90%RH条件により厚さ30μmで測定)が3,000g/m2・日以上である熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムを積層したことを特徴とする耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体である。
A:芳香族ジカルボン酸成分
B:短鎖グリコール成分
C:少なくと2種の炭素数2〜10のアルキレンオキシド単位がランダムに繰り返してなる、分子量2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコール成分
D:該熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリエーテルグリコール成分の全重量中、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位が10重量%未満である。
E:該熱可塑性ポリエステルエラストマー中のC成分の含有量が70〜95重量%である。
【0010】
本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体の一実施態様としては、前記C成分が、テトラメチレンオキシド単位とエチレンオキシド単位がモル比60/40〜20/80にて、ランダムに共重合したポリエーテルグリコールであって、分子量が2,200〜3,800であり、熱可塑性ポリエステルエラストマー中、72〜90重量%である熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体がある。
【0011】
また、本発明の別な実施態様としては、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物がヒンダードアミン系光安定剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、23℃で24時間水中に浸漬した際の吸水率が0.005〜20重量%、好ましくは、0.005〜15重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、最も好ましくは、0.01〜7重量%であることを特徴とする。吸水率が20重量%を越えると、成型品が吸湿により変形や膨張する、他の素材と積層した場合に吸湿や水濡れにより剥離強度が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0013】
また、本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、JIS Z0208の塩化カルシウム法で40℃、90%RH条件により、厚さ30μmのフィルムを測定した際の透湿度が、3,000g/m2・日以上であり、好ましくは、4,000g/m2・日以上、より好ましくは、4,500g/m2・日以上、特に好ましくは、4,800g/m2・日以上、最も好ましくは、5,000g/m2・日以上である。透湿度の上限は大きいほど好ましいが、現実的には、約100,000g/m2・日以下である。
【0014】
透湿度を上記範囲にすることにより、本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体は高い透湿性と柔軟性を両立させ、柔軟かつ透湿性の高い積層体として好適に用いることが出来る。
【0015】
以下に、本発明におけるフィルムを構成する熱可塑性ポリエステルエラストマーについて詳細に説明する。
A:芳香族ジカルボン酸成分
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、酸成分は、芳香族ジカルボン酸を主体とする。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などから選ばれる酸の1種もしくは2種以上の組み合わせを用いることが好ましく、これらの中、より好ましくは、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸は全酸成分の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0016】
その他の酸成分としては、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が用いられ、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらの酸はポリエステルエラストマーの融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは10モル%未満である。
【0017】
B:短鎖グリコール成分
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおける短鎖グリコール成分としては、炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。炭素数が1〜25のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキシド誘導体(XはA,S,F)及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。特に好ましくは1,4−ブタンジオールである。
【0018】
C:ランダム共重合ポリエーテルグリコール成分
本発明に使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーにおけるソフトセグメントは、炭素数2〜10の異なる2種以上のアルキレン単位のランダムな繰り返しからなる、分子量が2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコールを含む。分子量は、より好ましくは2,400〜3,600、さらに好ましくは2,600〜3,400、特に好ましくは2,800〜3,300、最も好ましくは約2,900〜3,200である。
【0019】
ランダム共重合ポリエーテルグリコール成分としては、-OCH2CH2-(以下、EO成分と略すときがある)、-OCH2CH2CH2-、-OCH2CH2CH2CH2-(以下、THF成分と略すときがある)、-OCH2CH(CH3)-(以下、PO成分と略すときがある)、-OCH2C(CH3)2CH2-などのアルキレンオキシド単位が挙げられる。共重合ポリエーテルグリコール成分としては、好ましくはテトラメチレンオキシド単位(THF成分)とエチレンオキシド単位(EO成分)がランダムに共重合したポリエーテルグリコールがある。
【0020】
ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が2,200未満である場合、十分な柔軟性と成型性を有するポリエステルエラストマーが得られないことがある。また、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が3,800を越える場合は、ポリマー合成時にポリエーテルグリコールと他の原料が相分離し、所望の分子量を有するポリエステルエラストマーが得られないことがある。
また、このようなランダム共重合ポリエーテルグリコールを用いることにより、0℃以下の低温から室温、さらには80℃を越える高温域まで幅広い範囲で、柔軟性や強度および伸度特性の変化の少ない、温度依存性の低いエラストマーが得られる。
【0021】
本発明においては、ランダム共重合ポリエーテルグリコールとすることにより、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの一成分として、EO成分を用いても吸水率の低いエラストマーが得られる。なお、ランダム共重合ポリエーテルグリコールに用いられる成分のうち、EO成分は80〜40モル%であることが好ましく、さらに好ましくは、70モル〜40%、特に好ましくは、60〜40モル%である。EO成分は80モル%を越えると吸水性が高くなり、用途によっては好ましくない場合がある。
【0022】
上記ランダム共重合ポリエーテルグリコールの両末端は、実質的に全てがEO成分由来の水酸基であることが望ましい。この条件を満たすランダム共重合ポリエーテルグリコールとして、たとえばTHFとEOのランダム共重合体であるDC−3000(日本油脂(株)製、分子量3000、THF/EO=50/50(モル比))などが挙げられる。末端がTHF成分由来の水酸基である場合、THF成分のみからなるポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールはいうまでもなく、ランダム共重合ポリエーテルグリコールにおいても末端の閉環反応によりTHFが生成し、副生成物の発生及び臭気の点から好ましくない。
【0023】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ランダム共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分を必要により共重合させても良い。共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分としては、分子量400〜6,000のポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等のポリエーテルグリコール、または炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族グリコールから製造されるポリエステル、例えばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリネオペンチルセバゲート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンアゼレート、ポリ−ε−カプロラクトンなどがある。これらのグリコールは各種特性のバランスにより適切な組み合わせで用いられる。
【0024】
D:上記熱可塑性ポリエステルエラストマーの全ポリエーテルグリコール成分の全重量中に、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位が10重量%未満である。
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーは前述のランダム共重合ポリエーテルグリコールのポリエーテルグリコール成分を含むことが必要であるが、熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリエーテルグリコール成分の全重量中に、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位、例えばネオペンチレンオキシド単位が10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であり、最も好ましくはポリエーテルグリコール成分中に4級炭素を有さない。4級炭素を有するアルキレンオキシド単位を含むポリエステルエラストマーは、過酷な条件での使用中に劣化する恐れがある。なお、ポリエーテルグリコール成分の全重量中、4級炭素を持つアルキレンオキシド単位の重量は、ポリエーテルグリコールの製造原料であるアルキレンオキシド単位を基に算出する。
【0025】
E:上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中の上記構成成分C成分の含有量が70〜95重量%である。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマーに用いられるソフトセグメントの含有量は、ランダム共重合ポリエーテルグリコールおよびランダム共重合ポリエーテルグリコール以外のソフトセグメント成分を合計して、全ポリマー中70〜95重量%である。好ましくは72〜90重量%、さらに好ましくは、75〜90重量%、特に好ましくは、80〜85重量%である。ソフトセグメント含有量が70重量%未満では、所望の表面硬度が達成できない場合があったり、透湿性が低下することがある。また、95重量%を越えると得られるエラストマーのブロック性が低下するため、ポリマーの融点や軟化点が低下する場合がある。
【0026】
通常、熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、柔軟性を高めようとする際には、可塑剤を多く混入する、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメント量を多くする等の方策が採られる。本発明では、高い柔軟性を持たせるためには、熱可塑性ポリエステルエラストマーのソフトセグメント量を70〜95重量%と多くして、柔軟性を上げる。
【0027】
しかし、柔軟性を高めようとするあまり、ソフトセグメント量を多くしすぎると、ポリエステルエラストマーが結晶性を保てなくなり、成形性に劣る場合がある。即ち、十分な柔軟性と成型性の両立が重要である。結晶性を確保したまま、ソフトセグメントの量を上げるためにはソフトセグメントの分子量を大きくすることが考えられるが、通常、ソフトセグメントの分子量を大きくすると重合時に相分離し、満足いく分子量の熱可塑性ポリエステルエラストマーが得られ難い。
本発明では、特定の分子量(2,200〜3,800)を有するランダム共重合ポリエーテルグリコールを用いることにより、これらの諸問題を解決した高い柔軟性を持つ熱可塑性ポリエステルエラストマーを得ることが出来る。すなわち、本発明では、分子量2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコールを全ポリマー中、70〜95重量%含有することにより、従来から公知である熱可塑性ポリエステルエラストマーに比べて、優れた透湿性を保持しつつ、吸水率を一定に低い状態としたフィルムが得られる。
【0028】
本発明で使用するポリエステルエラストマーにおいては、少量に限って、3官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分を含むこともできる。例えば、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、無水ピロメリット酸などを3モル%以下使用できる。3官能以上のポリカルボン酸や全ポリオール成分の合計量は、ポリエステルの全ポリカルボン酸成分およびポリオール成分の合計を100モル%とすると、5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
【0029】
本発明で使用するポリエステルエラストマーは、還元粘度が1.0〜4.0であることが望ましい。還元粘度が1.0以下の場合は機械特性に劣ることがあり、4.0を越えると流動性が悪いため成形性に劣ることがあり、成形材料としての使用範囲が限られてくる。還元粘度はより好ましくは、1.5〜3.7、さらに好ましくはは2.0〜3.4、特に好ましくは2.3〜3.2、特に好ましくは2.5〜3.0である。
【0030】
本発明で使用するポリエステルエラストマーの製造には、公知である任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合法の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことはもちろん望ましいことである。また、ポリエステルの重合後、イソシアネート化合物やエポキシ化合物等で鎖延長してもよい。
【0031】
重合反応に用いる触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、チタン触媒が良好である。特にチタン触媒、詳しくはテトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩などが好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定はしないが、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物、酢酸鉛などの鉛化合物が挙げられる。
【0032】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、紫外線吸収剤を含有する。特に優れた耐候性を付与するためには、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用して配合することが好ましい。また、耐候性を向上させるために添加する紫外線吸収剤および/またはヒンダードアミン系光安定剤の20℃における蒸気圧は1×10-6以下が好ましく、より好ましくは1×10-7以下、特に好ましくは1×10-8以下である。蒸気圧の下限は小さいほど好ましいが、現実的には、1×10-15である。
【0033】
本発明で使用する紫外線吸収剤としては、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどの化合物が挙げられる。ポリエステルエラストマーへの配合量は、0.5重量%〜15重量%が好ましい。更に好ましくは2重量%〜10重量%である。ポリエステルエラストマーへの配合量が0.5重量%より少ない場合は十分な耐候性が得られない。一方、配合量が、15重量%より多いと紫外線吸収剤がブリードアウトし、外観が悪くなる。
【0034】
本発明で使用するヒンダードアミン系光安定剤としては、例えばジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどの化合物が挙げられる。ポリエステルエラストマーへの配合量は、0.5重量%〜15重量%が好ましい。更に好ましくは2重量%〜10重量%である。ポリエステルエラストマーへの配合量が0.5重量%より少ない場合は十分な耐候性が得られない。一方、配合量が、15重量%より多いとヒンダードアミン系光安定剤がブリードアウトし、外観が悪くなる。
【0035】
これらの添加物のポリエステルエラストマーへの配合方法としては、加熱ロール、押出機、バンバリミキサー等の混練機を用いて配合することができる。また、熱可塑性ポリエステルエラストマーを重合する際、エステル交換反応前の原料中または重縮合反応前のオリゴマー中に添加混合することもできる。
【0036】
また得られたポリエステルエラストマーには公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、などの酸化防止剤、ヒンダートアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、ガラス繊維、カーボン繊維シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機質繊維状物質、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如きケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムの如き金属の炭酸塩、その他の各種金属粉などの紛粒状充填剤、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属粉末などの板状充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機・無機の顔料などを一種類以上添加することができる。
【0037】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムに配合するこれら添加剤も20℃における蒸気圧が低いことが好ましい。
【0038】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、従来から知られている溶融成形法や溶液流延法などの製膜技術を使用して製造することができる。
溶融成形法でフィルムを成形するには、Tダイを用いる方法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などの方法がある。これらの方法の中でも厚さムラが小さくできるTダイ法を用いる溶融押出法が好ましい。溶融成形法の条件は、成形方法に応じて適宜選択されるが、例えば、Tダイを用いる溶融成形法では、ポリマー温度が結晶融点以上、分解温度以下の範囲で適宜選択されるが、通常、結晶融点より10〜30℃高い温度範囲で成形される。
【0039】
溶液流延法を用いてフィルムを作製するには、常法に従って行うことができ、例えば、各成分を溶媒に溶解または分散させた液状組成物を、適当な支持体上に流延し、次いで、溶媒を乾燥除去することで行うことができる。支持体としては、特に制限はなく、一般的な溶液流延法で用いられるものが使用され、例えば、ガラス板、金属ドラム、スチールベルト、フッ素樹脂ベルト、金属箔などの平板、ベルトまたはロールなどを挙げることができる。溶剤としては、フェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、四塩化炭素、二塩化エチレン、ヘキサフルオロイソプロパノールなどのハロゲン化溶剤;などを用いることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができる。溶剤中のポリエステルエラストマーの濃度は、製造するフィルム厚に応じて適宜選択されるが、通常、0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%の範囲である。
【0040】
液状組成物を支持体へに流延する方法としては、特に制限されないが、例えば、バーコーダー、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、メイア・バー、ロール・コート、ダイ・コートなどを用いて行うことができる。液状組成物の流延は、スプレー、ハケ、ロール、スピンコート、ディッピングなどで塗布することにより行ってもよい。1回の塗布で所望の膜厚が得られない場合は、繰返し塗布することができる。
【0041】
溶剤の乾燥除去には、特に制限はなく、常法にしたがって行うことができるが、残留溶剤濃度が5%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%とする。乾燥としては、平板またはロール上のフィルムを室温〜100℃、好ましくは室温〜80℃の温度範囲で、残留溶剤濃度が5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下になるまで乾燥する。この場合、乾燥温度が高すぎると、溶剤の揮発に際して、フィルムが発泡する。溶剤の乾燥は、必要に応じて減圧で行うことができる。
【0042】
本発明における(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは未延伸フィルムで用いることができ、また所望により一軸または二軸方向に延伸した延伸フィルムとして用いることができる。また延伸加工後、熱処理を行うことやコロナ放電処理等の表面処理等を行うこともできる。フィルムの厚みは透湿性能に直接的に影響する特性であるが、一般的に0.1〜1,000μm、好ましくは0.5〜200μm、より好ましくは1〜100μm、特に10〜50μmが好ましい。0.1μmより薄いフィルムまたはピンホールなしに工業的に生産することが困難であり、また1,000μmを越える厚みのフィルムは透湿性が十分でない。
【0043】
本発明に使用する(1)繊維状物質からなる基材は、用途に応じて実用上問題ない強度を有し、柔軟性に優れたものであればよく、特に制限されない。このような基材としては、編織布、不織布、紙またはシートが挙げられる。
本発明における編織布は、従来から公知である衣料用、医療用、建築用、工業用など種々の用途において使用される編物または織物をいう。また紙またはシートとは通常、短繊維を使用して梳かれた紙、またはシートをいう。
【0044】
本発明における不織布は、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により、上記原料樹脂を溶融または溶解した後、繊維化かつ不織布に成形する方法、あるいは上記樹脂からなるフィルムを機械的に繊維化した後、不織布に成形する方法等に従って製造したものでもよい。また、ニードルパンチ法、スパンレース法により製造してもよい。特に、柔軟性に優れ、引張強度に優れる積層体を得るには、スパンボンド法によって製造された不織布が好ましい。
【0045】
これらの基材を構成する繊維としては、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。ポリオレフィン繊維としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜10のα−オレフィンの単独重合体、これらのα−オレフィンの2種以上からなる共重合体、またはこれらのα−オレフィンと他の共重合性単量体との共重合体からなるポリオレフィン樹脂を主成分とする繊維である。ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン樹脂からなる繊維を構成繊維とする不織布が好ましい。
【0046】
ポリエステル繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの長繊維または短繊維からなる不織布が挙げられる。好ましくは、ポリエステル分子繰り返し単位のうちエチレンテレフタレート繰り返し単位が70重量%以上であるポリエステル長繊維からなる不織布が挙げられる。また、ポリエステル短繊維を抄紙したシートであってもよい。さらに熱可塑性ポリエステルエラストマーの繊維からなる不織布やシートであってもかまわない。
【0047】
ナイロン繊維としては、例えばナイロン6、ナイロン66を主体とする長繊維または短繊維からなる不織布などが挙げられる。
【0048】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、通常、10〜22μm程度であり、好ましくは10〜18μmである。基材である不織布の目付量は、3〜100g/m2、好ましくは10〜60g/m2、さらに好ましくは10〜35g/m2である。
基材の厚さは、通常、3〜300μm程度であるが、用途により強度が必要な場合には、さらに厚くすることも可能である。
【0049】
本発明の積層体は、上記した繊維状物質からなる基材と熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムとが積層した積層体であり、フィルムと基材の二層積層体、フィルム/基材/フィルムあるいは基材/フィルム/基材などの三層積層体、さらにはより多層の積層体を挙げることができる。積層体の厚さは、所望される透湿性ならびに吸水性ならびに繊維状物質からなる基材の特性に応じて種々選択される。
【0050】
本発明の積層体の製造方法は、特に制限されないが、例えば熱可塑性ポリエステルエラストマーを溶融押出法によってフィルム化し、該フィルムと繊維状物質からなる基材を熱接着によって積層することができる。フィルムと繊維状物質からなる基材を熱接着することにより接着剤が不要となり、優れた積層体を製造することができる。
【0051】
また、本発明の積層体は、繊維状物質からなる基材の上部に熱可塑性ポリエステルエラストマーからなるフィルムを押出しラミネーションして一体的に積層成形する。押出しラミネーションすることにより成形プロセスを簡略化でき、コスト低減を行うこともできる。
【0052】
このようにして得られたポリエステルエラストマー積層体は、非常に柔軟であって、かつ、低温での温度変化に対して安定した透湿性を示し、さらに吸水性が低いことにより、吸水による物性変化も少ないので医療用途(救急絆創膏、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材、消炎・鎮痛・血行促進等の疾患治療用テープの基材、手術用手袋等)、衛生用途(紙おむつ固定用テープの基材、ナプキン固定用テープ基材)、スポーツ衣料用途、建築材料用途などにおいても大変有用である。特に耐候性が優れることにより、屋外や光のあたる場所でも使用できるので建築材料の用途に好適に使用できる。
【0053】
【実施例】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、これら実施例において、各測定項目は以下の方法に従った。
【0054】
(1)還元粘度
熱可塑性ポリエステルエラストマー0.05gを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40、容量比)に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(2)融点
融点は、上記エラストマーをセイコー電子工業(株)製DSC(示差走査熱量計)SSC/5200にて室温から20℃/分で昇温し、ピーク温度を測定値とした。サンプルはアルミ製のパンに10mg入れ、蓋で密封した。
【0055】
(3)表面硬度
JIS K6253により測定した。
(4)50%伸長応力
ASTM D638により−30℃および23℃において50%伸長応力を測定し、相対比α=(−30℃における50%伸長応力)/(23℃における50%伸長応力)の形で表した。
この値が1に近いほど室温から低温に至る温度変化に対して安定した柔軟性を示す。
【0056】
(5)吸水率
100×100×2mmのテストピースを作製し、このテストピースは100℃、10torr以下で24時間乾燥させた。これを23℃で水中に24時間浸漬した。
吸水率=(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量×100(%)
(6)透湿度
押出成形にて厚さ30μmのフィルムを得た。このフィルムを用いてJIS Z0208に記載の塩化カルシウム法に準じて透湿度を測定した。測定条件は40℃、90%RHで行った。
【0057】
(7)接着強度(水浸漬前後)
押出ラミ加工にて約30μm厚のフィルムと不織布を積層した積層体を用いて、剥離試験を実施した。また、吸水による影響を観察するため、フィルム面を24時間、水に浸した後に剥離試験を実施し、接着強度を○:基材破壊、△:剥離可能、×:自然に剥離、の3ランクで評価した。
【0058】
(8)耐候性
押出成形にて約30μm厚のフィルムを得た。このフィルムをサンシャインウェザーオメーター(SWOM)により200時間促進暴露試験を実施した。促進暴露試験は、温度63℃、全時間光照射、雨有り(水スプレー有)の条件下で実施した。促進暴露試験後のフィルム表面に亀裂が発生しているか否かを観察し、耐候性を○:亀裂なし、△:亀裂あり、×:形状保持せず のランクで評価した。
(9)ブリードアウト
上記の促進暴露試験後のフィルム表面に添加剤の析出がないか観察した。ブリードアウトを○:なし、△:ややあり、×:あり のランクで評価した。
【0059】
ポリエステルエラストマー合成例1(本発明)
ジメチルテレフタレート(DMT)197.4g、1,4−ブタンジオール(BD)153.5g、THF(テトラエチレンオキシド単位)とEO(エチレンオキシド単位)のランダム共重合体DC−3000(日本油脂(株)製、分子量3,000、THF/EO=50/50、モル比)1006.4g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、84重量%)、イルガノックス−1330(日本チバガイギー社製)2.40g、テトラブチルチタネート(TBT)1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで、重合缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、40分間かけて245℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出し、ポリマーAを得た。
【0060】
ポリエステルエラストマー合成例2(本発明)
ジメチルテレフタレート(DMT) 238.6g、1,4−ブタンジオール(BD)198.0g、THFとEOのランダム共重合体DC−3000(日本油脂(株)製、分子量3,000、THF/EO=50/50、モル比)958.2g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、80重量%)、イルガノックス−1330 2.40g、テトラブチルチタネート1.2gを5Lのオートクレーブに仕込み、室温から200℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、50分間かけて245℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出し、ポリマーBを得た。
【0061】
ポリエステルエラストマー合成例3(比較例)
DMT197.4g、BD153.5g、PTMG(分子量3,000)1006.4g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、80重量%)、イルガノックス−1330、2.40g、TBT1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーCを得た。
【0062】
ポリエステルエラストマー合成例4(比較例)
DMT198.2g、BD 153.3g、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールブロック共重合体L−64(旭電化(株)製、分子量2,900、PEG/PPG=40/60wt%)1006.5g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、84重量%)、イルガノックス−1330、2.40g、TBT1.20gを5Lのオートクレーブに仕込み、熱可塑性エラストマーを重合した。反応温度は適宜適正化し、ポリマーDを得た。
【0063】
ポリエステルエラストマー合成例5(比較例)(特開平2001-172411号公報実施例1の追試)
DMT317.4g、BD245.4g、THFとEOのランダム共重合体(三洋化成(株)製、分子量2,000、THF/EO=70/30、モル比)440.0g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、60重量%)、イルガノックス−1330(チバガイギー社製)1.60g、TBT0.80gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで3時間かけて昇温しエステル交換を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分間かけて245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出した(ポリマーE)。
【0064】
ポリエステルエラストマー合成例6(比較例)(特開平2001-172411号公報実施例4の追試)
DMT211.6g、BD151.6g、THFとEOのランダム共重合体(分子量2,000、THF/EO=50/50(モル比))560.0g(上記熱可塑性ポリエステルエラストマー中、77重量%)、イルガノックス−1330(チバガイギー社製)1.60g、テトラブチルチタネート(TBT)0.80gをオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで3時間かけて昇温しエステル交換を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分間かけて245℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出した(ポリマーF)。
【0065】
(実施例1および2、比較例1〜4)
上記ポリエステル合成例1および2(本発明における熱)で得られたポリマーAおよびB、合成例3〜6(比較例)で得られたポリマーC〜Fの各々100重量部に対して、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部、ジラウリルチオプロピオネート0.3重量部を配合し、二軸押出機(PCM30mmφ、池貝鉄工(株)製)を用いて、ペレット状に取り出した。
【0066】
上記方法にて得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレットを、幅200mm、スリット間隙0.8mmのTダイを取りつけた30mmφ単軸押出し機((株)プラ技研製)を用いて溶融成形し、厚さ30μmのフィルムを作製した。押出し成形の樹脂温度は各熱可塑性エラストマーの結晶融点より20℃高い温度にした。
また、射出成形(東芝機械(株)製IS80)により100×100×2mmの表面硬度、50%伸長応力および吸水率の測定用テストピースを得た。射出成形の樹脂温度も各熱可塑性エラストマーの結晶融点より20℃高い温度にした。
【0067】
また、不織布として、スパンボンド法によるPETからなる不織布6301A(東洋紡績(株)製、目付量30g/m2)を準備した。上記方法にて得られた熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレットををスリットから溶融押出し、上記不織布と重ねてロール間でラミネートし、積層体(a)〜(f)を得た。得られた積層体の接着状態を知るためフィルムを不織布から剥離させてみた。その結果を下記表2に示す。また、吸水後の接着状態はフィルム面を24時間、水に浸した後、同様に剥離させた。また、得られた積層体を用いて促進暴露試験を実施した。
【0068】
ポリマーの還元粘度、表面硬度(JIS K6253)、50%伸長応力の相対比α、吸水率(%)、透湿度(30μm)(g/m2・日)、積層体の水浸漬前後の接着状態、を下記表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーである合成例1(ポリマーA)および合成例2(ポリマーB)のポリマーから得たフィルムはいずれも、非常に柔軟かつ低温での温度変化に対しても安定した特性を示し、更に透湿性が高くかつ吸水性が低い。
一方、本発明の構成と異なる熱可塑性ポリエステルエラストマーである合成例4(ポリマーD)では低温での柔軟性には優れるが、吸水率が高く、吸水性が問題になる用途には使用しにくい。また、合成例3(ポリマーC)のフィルムでは柔軟性が不足し、特に低温では柔軟性が悪くなり、柔軟性が要求されるフィルムとして使用しにくい。
【0071】
また、合成例5(ポリマーE)および合成例6(ポリマーF)では、ランダム共重合ポリエーテルグリコールの分子量が小さいため含有量をこれ以上に上げられず、柔軟性および透湿性が不足するフィルムしか得られない。
積層体の接着状態は、水浸漬前は積層体(a)〜(d)で良好であったが、水浸漬後は吸水により積層体(d)は接着状態が悪くなった。透湿性、柔軟性と合わせて判断すると積層体(a)および(b)が優れていることがわかる。
【0072】
次に本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーであるポリマーAおよびポリマーBに対して、下記表2に示す配合処方により添加剤を配合し、二軸押出機(PCM30mmφ、池貝鉄工(株)製)を用いて、ペレット状に取り出した。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のペレットを用いて、上記と同様にして、表面硬度(JIS K6253)、50%伸長応力の相対比α、吸水率(%)、透湿度(30μm)(g/m2・日)、積層体の水浸漬前後の接着状態、を評価した。また、得られた積層体の促進暴露試験を実施し、所定時間経過後のフィルム部を観察し評価した。結果を下記表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2における添加剤は次のとおりである。
(1)紫外線吸収剤
UVA-1 : 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール (商品名:チヌビン234、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)2.0×10-10Pa)
UVA-2 : 2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール (商品名:チヌビン327、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)1.1×10-6Pa)
(2)ヒンダードアミン系光安定剤
HALS-1 : ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}] (商品名:キマソーブ944FDL、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)6×10-10Pa)
HALS-2 : コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物 (商品名:チヌビン622LD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)2.5×10-6Pa)
(3)酸化防止剤
AO-1 : ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] (商品名:イルガノックス1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、蒸気圧(20℃)1.3×10-10Pa)
AO-2 : ジラウリルチオプロピオネート (商品名:ラスミットLG、第一工業製薬製)
【0075】
表2に示すとおり、本発明のA−(1)およびB−(1)のポリエステルエラストマー積層体は耐候性に優れており、また促進暴露試験後にもブリードアウトがないことがわかる。また、優れた柔軟性と透湿性を有し、かつ水に浸漬しても層間の接着力が強い積層体であることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体は、非常に柔軟かつ低温での温度変化に対して安定した特性を示し、さらに吸水性も低い。このような積層体は、医療用途(救急絆創膏、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材、消炎・鎮痛・血行促進等の疾患治療用テープの基材、手術用手袋等)、衛生用途(紙おむつ固定用テープの基材、ナプキン固定用テープ基材)、スポーツ衣料、建築材料などの用途において、有効に利用できる。特に本発明の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムは、屋外や光のあたる場所でも使用できるので建築材料の用途に好適に使用できる。
Claims (5)
- (1)繊維状物質からなる基材上に、(2)ポリマー構成成分として下記A、BおよびC成分を含有し、かつ下記条件DおよびEを満足し、かつ紫外線吸収剤を含有する熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物からなり、かつ吸水率(23℃で24時間水中に浸漬した後測定)が0.005〜20重量%であり、かつ透湿度(JIS Z0208の塩化カルシウム法で40℃、90%RH条件により厚さ30μmで測定)が3,000g/m2・日以上である熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムを積層したことを特徴とする耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体。
A:芳香族ジカルボン酸成分
B:短鎖グリコール成分
C:少なくと2種の炭素数2〜10のアルキレンオキシド単位がランダムに繰り返してなる、分子量2,200〜3,800のランダム共重合ポリエーテルグリコール成分
D:該熱可塑性ポリエステルエラストマーのポリエーテルグリコール成分の全重量中、4級炭素を有するアルキレンオキシド単位が10重量%未満である。
E:該熱可塑性ポリエステルエラストマー中のC成分の含有量が70〜95重量%である。 - C成分が、テトラメチレンオキシド単位とエチレンオキシド単位が60/40〜20/80のモル比でランダムに共重合したポリエーテルグリコール成分であって、分子量が2,200〜3,800であり、C成分の熱可塑性ポリエステルエラストマー中の含有量が72〜90重量%である請求項1に記載の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体。
- 熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物がヒンダードアミン系光安定剤を含有することを特徴とする請求項1、2いずれか1項に記載の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体。
- 紫外線吸収剤および/またはヒンダードアミン系光安定剤の20℃における蒸気圧が1×10-6以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体。
- (1)繊維状物質からなる基材が、編織布、不織布、紙またはシートである請求項1〜4いずれか1項に記載の耐候性に優れた熱可塑性ポリエステルエラストマー積層体。
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