JP2004200614A - 配線基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上下主面間を貫通する貫通穴2を有するとともに、この貫通穴2の周辺に配線導体3が配設された絶縁基板1に、上側主面に半導体素子4が接着される板状の高熱伝導部材5が、絶縁基板1の上下主面と高熱伝導部材5の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、貫通穴2の内面と高熱伝導部材5の側面との間にロウ材6を介して接合されて成る配線基板7である。絶縁基板1と高熱伝導部材5との間の熱応力を効率よく分散させ減衰することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板に関し、特に、半導体素子から発生する熱を効率良く吸収し、外部に放散するための高熱伝導部材と絶縁基板との接合信頼性を改善した配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子等の電子部品の高集積化・高速化に伴い、半導体素子等が動作した際に発生する熱量は増加する傾向にある。そして、この発生した熱が半導体素子等に蓄積されると、半導体素子等の回路の誤動作を発生させたり、さらには回路自身を破壊したりするという問題がある。そこで従来から、半導体素子等を搭載する配線基板には、半導体素子等から発生する熱を効率良く吸収し、外部に放散するための放熱板を設けるといった工夫がなされている。
【0003】
このような放熱板は、一般に、銅やその他の金属から成る高熱伝導部材で形成されており、半導体素子等を搭載する配線基板の裏面または両面に面接合したり、あるいは半導体素子等を放熱板に直接搭載することによって、半導体素子等に発生した熱をこの放熱板に吸収させるとともに吸収した熱を外部に放散させることにより半導体素子等を熱から保護している。そして、このような配線基板における半導体素子等が発する熱の放熱構造においては、放熱板に半導体素子等を直接搭載した構造のものが特に放熱性に優れている。
【0004】
放熱板に半導体素子等を直接搭載した従来の配線基板としては、例えば、図2に断面図で示すような構造が一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図2において、従来の配線基板107は、中央部に貫通穴102が形成され、ビアホール導体103aと配線回路層103bとから成る配線導体103が配設された、複数の絶縁層101a〜101hから成る絶縁基板101の下側主面に、貫通穴102を塞ぐようにして、その上側主面に半導体素子104が搭載される板状の高熱伝導部材105がロウ材106を介して接合されて構成されている。
【0006】
このような従来の配線基板107に使用される絶縁基板101としては、各種のセラミック材料または有機絶縁樹脂材料、あるいは無機絶縁物粉末を有機絶縁樹脂で結合したもの等が使用され、配線導体103にはタングステン・モリブデン等の高融点金属や銅・銀・金等の低抵抗金属が用いられている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−296084号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の配線基板107においては、前述のように、絶縁基板101には各種のセラミック材料および有機絶縁樹脂材料あるいは無機絶縁物粉末を有機絶縁樹脂で結合したもの等が使用されるのに対して、高熱伝導部材105には熱伝導性が高い金属等が使用されるため、熱膨張係数が異なる異種の材料がロウ材106を介して接合されることとなる。
【0009】
そして、高熱伝導部材105の上側主面と絶縁基板101の下側主面とが互いにロウ材106を介して接合される平行な面のみで接合される構造となっていることから、高熱伝導部材105に枠状の絶縁基板101をロウ材106により接合する際の加熱とその後の冷却過程において高熱伝導部材105と絶縁基板101では熱膨張ならびに熱収縮挙動が異なることから、例えば、高熱伝導部材105よりも絶縁基板101の熱膨張係数が大きい場合には、冷却時の熱収縮量が大きな絶縁基板101が、ロウ材106で接合されている面を力点として高熱伝導部材105を配線基板107の中心方向へ圧縮する応力を発生させるために、配線基板107全体が凹形に反ってしまうこととなる。
【0010】
また、これとは反対に、高熱伝導部材105よりも絶縁基板101の熱膨張係数が小さい場合には、冷却時の熱収縮量の大きな高熱伝導部材105が、ロウ材106で接合されている面を力点として絶縁基板101を配線基板107の内側方向へ引っ張る応力を発生させるために、配線基板107全体が凸形に反ってしまうこととなる。
【0011】
このような、絶縁基板101と高熱伝導部材105のロウ材106による接合時に、特に、冷却過程における熱収縮挙動の違いによって発生する配線基板107の反りは、絶縁基板101と高熱伝導部材105の接合界面であるロウ材106の内部や、高熱伝導部材105の上側主面とロウ材106との接合界面または絶縁基板101の下側主面とロウ材106との接合界面に大きな応力を集中させることとなり、ロウ材106が破壊したり、ロウ材106と高熱伝導部材105の上側主面または絶縁基板101の下側主面との接合界面が剥離したり、一般に高熱伝導部材105よりも延性が低い絶縁基板101の内部にロウ材106との接合界面の端部を起点としたクラック等が発生するという問題点があった。
【0012】
また、半導体素子104の動作時における発熱および冷却のサイクルにおいては、前述のような高熱伝導部材105と絶縁基板101との熱膨張係数の差に起因する熱応力が、高熱伝導部材105および絶縁基板101の接合界面に繰り返し、かつ、長期間作用することから、これによっても同様に、ロウ材106が破壊したり、ロウ材106と高熱伝導部材105の上側主面または絶縁基板101の下側主面との接合界面が剥離したり、一般に高熱伝導部材105よりも延性が低い絶縁基板101の内部にロウ材106との接合界面の端部を起点としたクラック等が徐々に発生し進行したりすることから、配線基板107における絶縁基板101と高熱伝導部材105との接合信頼性が低いという問題点があった。
【0013】
そこで、以上のような高熱伝導部材105と絶縁基板101との熱膨張係数の差に起因する熱応力による接合信頼性の低下を防止するために、ロウ材106の接合状態を調整することによって熱応力を分散させたり、高熱伝導部材105と絶縁基板101との熱膨張係数の差を小さくするために、高熱伝導部材105および絶縁基板101の材料組成等を調整したりすることが種々試みられているが、近年の配線基板に要求されている機械的・電気的特性の多様化や、増加傾向にある半導体素子104の発熱量に十分対応できているとは言えないのが現状である。
【0014】
さらに、上記のような従来の配線基板107においては、高熱伝導部材105が絶縁基板101から下方に突出しているため、高熱伝導部材105の側面と絶縁基板101の下側主面とで形成されるコーナー部および絶縁基板101の貫通穴102の内面と高熱伝導部材105の上側主面とで形成される段差部に応力が集中しやすい構造となっており、配線基板107が落下する等の機械的衝撃が加わった際に、この機械的衝撃が高熱伝導部材105と絶縁基板101との間のコーナー部に集中して作用してしまうことから、ここを起点としたクラック等の破壊が絶縁基板101に発生しやすいという問題点もあった。
【0015】
また、高熱伝導部材105が絶縁基板101から突出した構造の従来の配線基板107においては、小型・薄型化が困難であり設計的に大きな制約があるという問題点もあった。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、高熱伝導部材と絶縁基板との熱膨張係数の差に起因する熱応力によって、ロウ材を用いた接合時に高熱伝導部材と絶縁基板との界面が破壊したり、半導体素子等の電子部品の動作時に絶縁基板にクラックが発生したりすることによる接合信頼性の低下や、機械的衝撃による高熱伝導部材と絶縁基板との界面の破壊等を防止し、高熱伝導部材と絶縁基板とを強固に接合するとともに、半導体素子が発生する熱を効率良く吸収・放散し、半導体素子を長期にわたり正常、かつ安定に作動させることができる信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、上下主面間を貫通する貫通穴を有するとともにこの貫通穴の周辺に配線導体が配設された絶縁基板に、上側主面に半導体素子が接着される板状の高熱伝導部材が、前記絶縁基板の前記上下主面と前記高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、前記貫通穴の内面と前記高熱伝導部材の側面との間にロウ材を介して接合されて成ることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の配線基板によれば、上側主面に半導体素子が接着される板状の高熱伝導部材が、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、絶縁基板の上下主面間を貫通する貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面との間にロウ材を介して接合されていることから、高熱伝導部材と絶縁基板との熱膨張係数の差に起因する、ロウ材による接合時および半導体素子動作時の配線基板の熱収縮挙動は、高熱伝導部材の熱収縮と絶縁基板の熱収縮とが横方向(配線基板の主面に対して平行な方向)に並ぶ状態で発生するため、そのような熱収縮挙動によって配線基板には反りが発生しないものとすることができる。
【0019】
また、発生した熱応力は、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面となっており、両者の間に部分的に応力が集中する箇所が存在しないことから、絶縁基板の貫通穴の内面および高熱伝導部材配線基板の側面に分散され、かつ、両者の間を接合しているロウ材が応力緩和層としても機能するため、効率良く減衰させることができる。
【0020】
したがって、ロウ材による接合時に高熱伝導部材と絶縁基板との界面が破壊したり、半導体素子等の電子部品の動作時に絶縁基板にクラックが発生したりすることによる絶縁基板と高熱伝導部材との接合信頼性の低下等を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように絶縁基板の貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面とがロウ材を介して接合されていることから、配線基板に落下等により機械的衝撃が加わった場合においても、従来の配線基板のように、応力が集中しやすい高熱伝導部材の側面と絶縁基板の下側主面とで形成される段差部および絶縁基板の貫通穴の内面と高熱伝導部材の上側主面とで形成される段差部が存在しないので、絶縁基板の破壊の起点となる部位が無く機械的衝撃に強いものとすることができる。そして、高熱伝導性部材が配線基板の内部に収納される構造となるため、容易に小型化・薄型化を図ることが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の配線基板を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の配線基板を半導体素子を収容する半導体素子収納用パッケージに適用した場合の実施の形態の一例を示す断面図である。
【0024】
図1において、本発明の配線基板8は、中央部に上下主面間を貫通する貫通穴2が形成され、ビアホール導体3aと配線回路層3bとから成る配線導体3が配設された、複数の絶縁層1a〜1dから成る絶縁基板1の下側主面に、貫通穴2を塞ぐようにして、その上側主面に半導体素子4が搭載される板状の高熱伝導部材5がロウ材6を介して接合されて構成されている。
【0025】
絶縁基板1は、酸化アルミニウム質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・炭化珪素質焼結体・ガラスセラミックス焼結体等のセラミックスやエポキシ樹脂等の電気絶縁材料から成り、例えば、ガラスセラミックス焼結体から成る場合には、ガラス粉末・フィラー粉末(セラミック粉末)・有機バインダ・可塑剤・有機溶剤等を混練したガラスセラミックグリーンシートを単層で、または複数積層し、焼焼することで作製される。
【0026】
ガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)・SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)・SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等が挙げられる。
【0027】
また、フィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
【0028】
これらガラスとフィラーとの混合割合は質量比で40:60〜99:1であるのが好ましい。
【0029】
また、有機バインダとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)・ポリビニルブチラール系・ポリビニルアルコール系・アクリル−スチレン系・ポリプロピレンカーボネート系・セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0030】
ガラスセラミックグリーンシートは、上記ガラス粉末・フィラー粉末・有機バインダに必要に応じて所定量の可塑剤・溶剤(有機溶剤,水等)を添加してスラリーを得て、これをドクターブレード・圧延・カレンダーロール・金型プレス等により厚さ約50〜500μmに成形することにより得られる。
【0031】
このようにして得られたガラスセラミックグリーンシートにビアホール導体3aや貫通穴2を作製するため打ち抜き加工を行ない、切断して適当な形状の絶縁層1a〜1dを作製する。
【0032】
なお、絶縁層1a〜1dがガラスセラミックスから成る場合は、例えば、銅・銀・金・銀−パラジウム等の銀系合金等の金属粉末に適当な有機バインダや溶剤を添加し混練して作製した金属ペーストをスクリーン印刷法等により所定パターンに埋め込むとともに印刷することにより、ビアホール導体3aおよび配線回路層3bを形成する。
【0033】
配線導体3が埋め込まれ印刷された絶縁層1a〜1dを複数枚積層した後、有機成分の除去および焼成を行なう。有機成分の除去は、例えば100〜500℃の温度範囲でこの積層体を加熱することにより行ない、有機成分を分解し揮散させる。
また、焼成温度はガラスセラミックスの組成により異なるが、通常は800〜1000℃の範囲内であり、配線導体3および絶縁層1a〜1dが焼結することにより、貫通穴2を有するとともに貫通穴2の周辺にビアホール導体3aと配線回路層3bとから成る配線導体3が配設された絶縁層1a〜1dから成る絶縁基板1が得られる。
【0034】
次に、絶縁基板1の貫通穴2に絶縁基板1の上下主面と上下主面がそれぞれ同一面をなすように高熱伝導部材5を埋設した後、ロウ材6を絶縁基板1の貫通穴2の内面と高熱伝導部材5の側面との間に充填して600〜800℃で加熱することによりロウ材6が溶融し、その後、冷却することによってロウ材6が固化し、これによって絶縁基板1と高熱伝導部材5とがロウ材6を介して接合される。
【0035】
ここで、絶縁基板1の上下主面と高熱伝導部材5の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、絶縁基板1の貫通穴2の内面と高熱伝導部材5の側面との間にロウ材6を介して接合することが重要である。
【0036】
絶縁基板1の上下主面と高熱伝導部材5の上下主面とがそれぞれ同一面をなすため、ロウ材6による接合時および半導体素子4の動作時において、高熱伝導部材5と絶縁基板1との熱膨張係数の差に起因して発生する引っ張りおよび圧縮応力は、高熱伝導部材5の側面と絶縁基板1の貫通穴2の内面との接合面において、局所的な偏りがない均等な応力分布をもつため、配線基板7には反りが発生せず、また、両者の間を接合しているロウ材6が応力緩和層として機能するため、高熱伝導部材5と絶縁基板1との熱膨張係数の差に起因して発生する引っ張りおよび圧縮応力を効率良く減衰させることができる。さらに、配線基板7に落下等により機械的衝撃が加わった場合においても、従来の配線基板のように、応力が集中しやすい高熱伝導部材5の側面と絶縁基板1の下側主面とで形成される段差部および絶縁基板1の貫通穴2の内面と高熱伝導部材5の上側主面とで形成される段差部が存在しないことから、絶縁基板1の破壊の起点となる部位が無く機械的衝撃に強いものとすることができる。
【0037】
なお、このように絶縁基板1の上下主面と高熱伝導部材5の上下主面とがそれぞれ同一面をなすようにする場合、その上側主面同士および下側主面同士は、高熱伝導部材5の側面と絶縁基板1の貫通穴2の内面との接合面において、局所的な偏りがない均等な応力分布をもたせるため、可能な限り同一平面をなすようにしておくことが好ましいが、絶縁基板1と高熱伝導部材5の厚みが各々の加工精度により寸法誤差が生じた場合でも、そのことにより、絶縁基板1と高熱伝導部材5の接合信頼性が著しく低下するようなことはない。
【0038】
貫通穴2は、板状の高熱伝導部材5を絶縁基板1の内部に収容し、絶縁基板1の上下主面と高熱伝導部材5の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、絶縁基板1の貫通穴2の内面と高熱伝導部材5の側面との間をロウ材6を介して接合するために形成される。従って、貫通穴2は高熱伝導部材5と同形状となっており、さらに、その内面と高熱伝導部材5との間に適量のロウ材6を充填できる程度の間隔が開けられるような開口寸法を有している。
【0039】
一方、高熱伝導部材5は、半導体素子4を直接搭載し半導体素子4が発生する熱を効率良く吸収し、外部に放散する機能を有する。このような高熱伝導部材5には、銅・アルミニウム・ニッケル・ベリリウム・マグネシウム・銅−タングステン合金・銅−モリブデン合金等の熱伝導性に優れた金属や合金が使用され、例えば、銅−タングステン合金から成る場合には、タングステンの粉末を約98MPaの圧力で加圧成形するとともにこれを還元雰囲気中にて約2000℃の温度で焼成して多孔質のタングステン焼結体を得た後に、約900℃の温度で加熱溶融させた銅をタングステン焼結体の多孔質部分に毛管現象を利用し含浸させることにより作製できる。
【0040】
なお、高熱伝導部材5の材質は、絶縁基板1の材質に応じて種々選択することが可能であるが、特に、高周波用配線基板として絶縁基板1にガラスセラミックス焼結体を用いた場合には、一般にガラスセラミックス焼結体の熱膨張係数は10×10-6/℃程度と比較的小さいことから、他の高熱伝導部材に比べ熱膨張係数が5×10-6/℃程度と小さいタングステンを用いることが好ましい。
【0041】
また、高熱伝導部材5の上下主面の面積は、半導体素子4の搭載面積よりも全方向に渡って広く、かつ、半導体素子4の端部から高熱伝導部材5の上側主面の端部までの幅が絶縁基板1の厚み以上になるようにしておくと、半導体素子4から発生した熱は高熱伝導部材5の下側主面の方向におよそ45°の角度をもって放射状に伝熱する性質があることから、半導体素子4から発生した熱が高熱伝導部材5に吸収された後に低い熱伝導率を有する絶縁基板1で阻害されずに配線基板7の外部に効率よく放散されるため、より好ましいものとなる。
【0042】
また、高熱伝導部材5の上下主面の形状は、搭載する半導体素子4の形状や搭載形態に応じて任意の形状を選択することができるが、熱応力および機械的衝撃等の影響を抑制するという観点からは円形状であることが望ましく、四角形状等の多角形状を用いる際は、各角部に丸み(R面)を設けたりすることによって応力の集中を避けるようにしても良い。
【0043】
また、高熱伝導部材5の熱膨張係数が絶縁基板1の熱膨張係数よりも小さくなるようにすると、絶縁基板1の熱収縮が高熱伝導部材5の熱収縮より大きくなり、ロウ材6による接合時の冷却過程において、絶縁基板1が高熱伝導部材5の周囲を圧縮し、かしめる効果があり、絶縁基板1と高熱伝導部材5との接合強度をより向上させることができる点で好ましい。
【0044】
なお、図1に示す例では、貫通穴2および高熱伝導部材5は絶縁基板1の中央部に1つ設けた例を示しているが、複数個の半導体素子を搭載する混成集積回路基板や複数個のLEDを収容するLED収納用容器等に適用する場合においては、貫通穴2および高熱伝導部材5は所定の部位にそれぞれ複数個設けてもよい。
【0045】
ロウ材6は、絶縁基板1と高熱伝導部材5とを接合し、さらに発生した熱応力を緩和する機能を有しており、一般的な銀・銀−銅等のロウ材や、Ti・ZrまたはHfの少なくとも1種を含有する銀−銅系の活性金属ロウ材等を用いることができる。
【0046】
また、絶縁基板1の貫通穴2の内面に、例えば絶縁基板1がガラスセラミックス焼結体から成る場合には、予め焼成前に銅・銀・金・銀−パラジウム等の銀系合金等の金属粉末に適当な有機バインダや溶剤を添加し混練して作製した金属ペーストを塗布しておいてメタライズ層を形成し、このメタライズ層とロウ材6を介して絶縁基板1と高熱伝導部材5とを接合すると、応力緩和層がメタライズ層とロウ材6との二重となって、より強固に絶縁基板1と高熱伝導部材5とを接合することができるので好ましい。
【0047】
以上によって、絶縁基板1の上下主面と高熱伝導部材5の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、絶縁基板1の貫通穴2の内面と高熱伝導部材5の側面との間にロウ材6を介して接合された配線基板7が作製され、次に、高熱伝導部材5の上側主面に半導体素子4を銀エポキシ樹脂等の接着剤で接着して固定した後、配線導体3の絶縁基板1の上側主面に露出した部位と半導体素子4の電極とを金・アルミニウム等のボンディングワイヤを介して電気的に接続し、さらに、絶縁基板1の上側主面に金属やセラミックスから成る蓋体(図示せず)をガラスや樹脂・ロウ材等の封止材を介して接合させ、絶縁基板1と蓋体とから成る容器内部に半導体素子4を気密に収容することによって製品としての半導体装置が完成する。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例の試験結果を挙げて本発明の配線基板を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
絶縁基板には、ガラスセラミックス焼結体を用い、ガラス粉末・フィラー粉末(セラミック粉末)・有機バインダ・可塑剤・有機溶剤等を混練したガラスセラミックグリーンシートを焼成することで作製した。
【0050】
ガラスセラミック成分としては、SiO2−Al2O3−MgO−B2O3−ZnO系ガラス粉末60質量%,CaZrO3粉末20質量%,SrTiO3粉末17質量%およびAl2O3粉末3質量%を使用した。このガラスセラミック成分100重量部に有機バインダとしてアクリル樹脂12重量部,フタル酸系可塑剤6重量部および溶剤としてトルエン30重量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのガラスセラミックグリーンシートを作製した。
【0051】
このガラスセラミックグリーンシートにビアホール導体や貫通穴を作製するための打ち抜き加工を行ない、切断して適当な形状の絶縁層を作製した。
【0052】
そして、銀の金属粉末に有機バインダや溶剤を添加し混練して作製した金属ペーストをスクリーン印刷法により絶縁層上の所定パターンに埋め込むとともに印刷し、ビアホール導体および配線回路層を作製した。
【0053】
この配線導体が埋め込まれ印刷された絶縁層を複数枚積層した後、この積層体を約300℃に加熱して有機成分を分解・揮散させた後、約900℃で焼成することにより、配線導体および絶縁層を焼結させて、中央部に上下主面を貫通する貫通穴を有するとともに貫通穴の周辺に配線導体が配設された絶縁基板を作製した。
【0054】
次に、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、高熱伝導部材を絶縁基板の貫通穴に埋設した後、約700℃で加熱して冷却することにより、銀−銅ロウ材を絶縁基板の貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面との間に充填し固化させることによって、絶縁基板と高熱伝導部材とを接合した。なお、高熱伝導部材には、熱膨張係数が5×10-6/℃のタングステンを、絶縁基板には熱膨張係数が9×10-6/℃のガラスセラミックスを使用した。
【0055】
半導体素子は、高熱伝導部材の上側主面に搭載し、銀エポキシ樹脂接着剤で接着し固定して、配線導体の絶縁基板の上面に露出した部位に半導体素子の電極をアルミニウムのボンディングワイヤを介して電気的に接続した。
【0056】
以上により、絶縁基板と高熱伝導部材とが、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、絶縁基板の貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面との間にロウ材を介して接合されて成ることを特徴とする本発明の配線基板の実施例を作製した。
【0057】
また、比較例として、上記と同じ材料および作製方法によって、絶縁基板に形成した貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面との間ではなく、絶縁基板の貫通穴の周囲の下面とその貫通穴を覆うような大きさの高熱伝導部材の外周部の上面とをロウ材を介して接合した従来の構造の配線基板(以下、比較例という)を作製した。
【0058】
そして、本発明の実施例および比較例について応力の集中特性を評価するために、ロウ材付け接合試験、半導体素子発熱試験、機械的衝撃試験を実施したところ、各試験においてロウ材接合部の剥離というような重大な問題は両者とも発生しなかった。
【0059】
そこで、さらに詳細な比較を行なうために、ロウ材接合部における絶縁基板側のクラックの発生の有無を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0060】
表1に示す結果において、ロウ材付け接合試験については、高熱伝導部材と絶縁基板とをロウ材を介して接合する際に700℃まで加熱し、次いで25℃まで冷却した後に、絶縁基板の表面を倍率10〜40倍の顕微鏡を用いて観察し、クラックが有れば接合信頼性に問題が発生する可能性があるため「×」とし、クラックが無ければ実用上問題のない接合信頼性を有すると考えられることから「○」として評価した。
【0061】
また、半導体素子発熱試験については、高熱伝導部材の上側主面に半導体素子を搭載して、半導体素子を初めの1サイクルに動作開始後5秒間で125℃まで上昇し、次いで停止後15秒間で25℃まで下降するように半導体素子への印加電流を初期設定し、これを連続で5000サイクル繰り返して行なった後に、絶縁基板の表面を倍率10〜40倍の顕微鏡を用いて観察し、上記と同様にクラックが有れば「×」、無ければ「○」として評価した。
【0062】
また、機械的衝撃試験については、高熱伝導部材の上側主面に半導体素子を搭載した配線基板を10cmの高さから落とした後に、絶縁基板の表面を倍率10〜40倍の顕微鏡を用いて観察し、上記と同様にクラックが有れば「×」、無ければ「○」として評価した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示す結果から明らかなように、いずれの試験においても、比較例においてはクラックの発生が観察されたが、本発明の実施例においては絶縁基板にクラックは発生しておらず、これにより本発明の実施例においては絶縁基板と高熱伝導部材との間のロウ材を介した接合部への応力の集中度が低く、絶縁基板と高熱伝導部材とが強固に接合されていることが確認できた。
【0065】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上記の例では本発明の配線基板を半導体素子を収容する半導体素子収納用パッケージに適用したが、混成集積回路基板やLED収納用容器等の他の用途に適用してもよい。
【0066】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、上側主面に半導体素子が接着される板状の高熱伝導部材が、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、絶縁基板の上下主面間を貫通する貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面との間にロウ材を介して接合されていることから、高熱伝導部材と絶縁基板との熱膨張係数の差に起因して発生する、ロウ材による接合時および半導体素子動作時の配線基板の引っ張りおよび圧縮応力は、高熱伝導部材の側面と絶縁基板の貫通穴の内面との接合面において、局所的な偏りがない均等な応力分布をもつため、そのような熱収縮挙動によって配線基板には反りが発生しないものとすることができる。
【0067】
また、発生した熱応力は、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面となっており、両者の間に部分的に応力が集中する箇所が存在しないことから絶縁基板の貫通穴の内面および高熱伝導部材配線基板の側面に分散され、かつ、両者の間を接合しているロウ材が応力緩和層としても機能するため効率良く減衰させることができる。
【0068】
また、発生した熱応力は、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面となっており、両者の間に部分的に応力が集中する箇所が存在しないことから、絶縁基板の貫通穴の内面および高熱伝導部材配線基板の側面に分散され、かつ、両者の間を接合しているロウ材が応力緩和層としても機能するため、効率良く減衰させることができる。
【0069】
したがって、ロウ材による接合時に高熱伝導部材と絶縁基板との界面が破壊したり、半導体素子等の電子部品の動作時に絶縁基板にクラックが発生したりすることによる絶縁基板と高熱伝導部材との接合強度および信頼性の低下等を効果的に抑制することができる。
【0070】
また、絶縁基板の上下主面と高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように絶縁基板の貫通穴の内面と高熱伝導部材の側面とがロウ材を介して接合されていることから、配線基板に落下等により機械的衝撃が加わった場合においても、従来の配線基板のように、応力が集中しやすい高熱伝導部材の側面と絶縁基板の下側主面とで形成される段差部および絶縁基板の貫通穴の内面と高熱伝導部材の上側主面とで形成される段差部が存在しないので、絶縁基板の破壊の起点となる部位が無く機械的衝撃に強いものとすることができる。そして、高熱伝導性部材が配線基板の内部に収納される構造となるため、容易に小型化・薄型化を図ることが可能となる。
【0071】
以上により、本発明によれば、高熱伝導部材と絶縁基板とを強固に接合するとともに、半導体素子が発生する熱を効率良く吸収・放散し、半導体素子を長期にわたり正常、かつ安定に作動させることができる信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】従来の配線基板の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・絶縁基板
1a〜1d・・・絶縁層
2・・・・・・・貫通穴
3・・・・・・・配線導体
3a・・・・・・ビアホール導体
3b・・・・・・配線回路層
4・・・・・・・半導体素子
5・・・・・・・高熱伝導部材
6・・・・・・・ロウ材
7・・・・・・・配線基板
Claims (1)
- 上下主面間を貫通する貫通穴を有するとともに該貫通穴の周辺に配線導体が配設された絶縁基板に、上側主面に半導体素子が接着される板状の高熱伝導部材が、前記絶縁基板の前記上下主面と前記高熱伝導部材の上下主面とがそれぞれ同一面をなすように、前記貫通穴の内面と前記高熱伝導部材の側面との間にロウ材を介して接合されて成ることを特徴とする配線基板。
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