JP3906038B2 - 配線基板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子が作動時に発する熱を効率よく外部に放散する放熱層が形成された配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の高集積化に伴い、半導体装置から発する熱も飛躍的に増加しつつある。半導体装置の誤作動をなくすためには、このような熱を半導体装置外に効率よく放散することの可能な配線基板が必要となりつつある。一方、電気的な特性としては、半導体素子の演算速度の高速化により、僅かな信号の遅延が問題となってきており、そこで導体損失の小さい、即ち低抵抗の導体を配線に用いることが要求されている。
【0003】
このような半導体素子を搭載する配線基板としては、その信頼性の点から、アルミナ(Al23)セラミックスを絶縁基板とし、その表面または内部にタングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)などの高融点金属材料から成る放熱層や配線層を被着形成したセラミック配線基板が多用されている。ところが、このような従来から多用されている高融点金属材料から成る放熱層や配線層では、その抵抗を最低でも8mΩ/□程度までしか低くすることができなかった。また、放熱性に関しても、放熱フィンの接合やサーマルビア用の貫通導体の形成などにより改善を図っているが、W配線層自体の熱伝導率が小さいために大きな効果が得られていない。
【0004】
これに対して近年に至り、低抵抗で、かつ熱伝導率が大きい銅(Cu)や銀(Ag)と同時焼成が可能な、所謂ガラスセラミックスを絶縁基体として用いる配線基板が注目されている。図5の断面図にその一例を示す。同図に示すように、金属材料から成る放熱層104をガラスセラミックスからなる絶縁基板101の上下面に島状に形成すると共に、上下面の放熱層104同士を貫通導体102で接続した配線基板105が提案されている(特開平11−17047号公報参照)。この配線基板105においては、作動時に発熱する電子部品103が上面の放熱層104上に搭載され、電子部品103が発する熱を貫通導体102および内部配線層と下面の放熱層104を介して外部に放散している。
【0005】
しかしながら、ガラスセラミックスの熱伝導率は高々数W/m・K程度しかなく、たとえCuやAgのような熱伝導性が良好な導体を放熱層104として用いたとしても、ガラスセラミックスからなる絶縁基板101の温度上昇を回避することができず、この温度上昇に起因する半導体素子103の誤作動や熱破壊などの熱的問題が発生していた。
【0006】
そこで、このような不具合を解決するために、図3に示すような、Al23セラミックスを主成分とし、MnをMn23換算で2〜10重量%割合で含有する相対密度が95%以上のセラミックスから成り1200〜1500℃の低温で焼成することができる絶縁基板11と、Cuを10〜70体積%、Wおよび/またはMoを30〜90体積%の割合で含有するとともに絶縁基板11の表面に電極部11Bを除いて形成され、かつ電極部11Bに用いられる導体と同一の組成から成る放熱層14とを有する配線基板15がある。
【0007】
この配線基板15は、絶縁基板11がAl23を主体とするセラミック材料から成るため、絶縁基板11の熱伝導率は、Al23自体の熱伝導率(18W/m・K程度)に比べて遜色のない15W/m・K程度が得られ、効率よく熱を外部に放散することができる配線基板15を提供し得る。そして、この配線基板15によると、例えば発熱量の大きい半導体素子13を載置部11Aに搭載する場合においても、絶縁基板11内で局所的に熱が澱むことがなく、配線基板15の上面から下面へと効率よく熱を外部に放熱することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の配線基板15においては、図4(a)、(b)に示すように、焼結前のWおよび/またはMo101aとCu101cの粉末に有機溶剤、バインダ101bなどを添加混合して得た金属ペーストを前述のように1200〜1500℃の低温で焼成すると、その焼成時間や各々のWおよび/またはMo粒子の接近状態によっては、粒子同士が接触してその接触点に括れ部が形成され瓢箪状の湾曲部ができ、Wおよび/またはMo粒子表面の突起部から湾曲部へ表面に沿っての拡散、所謂表面拡散が起こり、各々のWおよび/またはMo粒子の接触点に大きな括れ部ができる場合がある。従って、表面拡散が進むにつれ、くびれ部も大きくなり最終的に融合し一体化されるものも発生し、その平均粒径は1〜15μm程度となる。尚、Cu101cは1200〜1500℃で完全に溶融されCu111cとなる。
【0009】
その結果、焼結後にはCu111cの中に大きなWおよび/またはMo111aの塊が生じた状態となる。そのため、絶縁基体11となる焼成前のセラミックグリーンシートと、放熱層14となる金属ペーストとを1200〜1500℃の低温で同時焼成すると、Cu111cの熱膨張係数(約18ppm/℃)と、Wおよび/またはMo111aの大きな塊の熱膨張係数(約4.5ppm/℃)との違いが顕著になる。更には、Cu111cの熱膨張係数と図3に示す絶縁基板11との熱膨張係数(約7ppm/℃)の違いが顕著になる。
【0010】
即ち、絶縁基板11と放熱層14との間に発生する熱膨張差による熱歪み、および、放熱層14中のCu111cとWおよび/またはMo111aとの間に発生する熱膨張差による熱歪みにより、絶縁基板11と放熱層14との密着性や、放熱層14中のCu111cとWおよび/またはMo111aとの間の密着性が損なわれて熱伝導性が損なわれたり、また絶縁基板11に反り変形を発生させることとなる。そのため、半導体素子13を載置部11Aに密着させて載置固定するのが困難になったり、半導体素子13の作動時における放熱性を損なうという問題点を有していた。
【0011】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、同時焼成後における絶縁基板11と放熱層14との密着性や、放熱層14中の導体材料中の粒子同士の密着性を良好とするとともに、絶縁基板11の熱歪みを非常に小さいものとすることにより、半導体素子13の放熱層14上への密着性や、半導体素子13の作動時における放熱性を良好とすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板の製造方法は、Alを主成分とし、MnをMn換算で2〜10重量%含有した相対密度95%以上のセラミックスから成る絶縁基板と、銅を10〜70体積%、WおよびMoの少なくとも一方を30〜90体積%含有した導体とから成る配線基板の製造方法であって、WおよびMoの少なくとも一方から成る金属粒子とCu粒子とを含む金属ペーストを作製する工程と、該金属ペーストを1200℃以下で仮焼して金属塊を得る工程と、該金属塊を破砕して前記金属粒子の平均粒径が1〜5μmである導体粒子を作製する工程と、該導体粒子を含む導体ペーストを作製する工程と、該導体ペーストを前記絶縁基板のセラミックグリーンシートに印刷して1200〜1500℃で焼成する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明は、このような構成により、配線基板の熱歪みを非常に小さくできることから、同時焼成後における絶縁基板と放熱層との密着性や、放熱層と貫通導体との接合性を良好なものとできる。その結果、半導体素子を載置部に接合する際の密着性や、半導体素子の作動時における放熱性を良好とし得る。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板について、以下に説明する。図1は、本発明の配線基板の断面図、図2(a)は図1の放熱層を構成する導体材料を仮焼後に破砕したものの部分拡大断面図、図2(b)は放熱層を構成する導体材料の焼結後を示す部分拡大断面図である。
【0015】
これらの図に示すように、本発明の配線基板5は、Al23を主成分とし、MnをMn23換算で2〜10重量%含有した相対密度95%以上のセラミックスから成り、上面に半導体素子3を載置する載置部1Aを有する絶縁基板1と、Cuを10〜70体積%、Wおよび/またはMoを30〜90体積%含有した導体材料から成り、載置部1Aおよびその周囲から絶縁基板1の下面にかけて形成された複数の貫通導体2および上面に形成された電極部1Bとを具備する。また、絶縁基板1の電極部1B以外の表面に上記導体材料から成るとともに絶縁基板1の下面で貫通導体2に接続された放熱層4が形成されており、放熱層4のWおよび/またはMoの平均粒径が1〜5μmである。
【0016】
具体的には、絶縁基板1は、Al23を84重量%以上、第2成分としてMn化合物をMn23換算で2〜10重量%の割合で含有するものである。Mn化合物が2重量%未満の場合、1200〜1500℃の低温では緻密化が達成されず、一方10重量%を超える場合は絶縁基板1の絶縁性が低下する。
【0017】
また、絶縁基板1中には、第3成分としてSiO2およびMgO,CaO,SrO等のアルカリ土類元素酸化物を、放熱層4となる導体材料との同時焼結性を高める上で、合計で0.4〜8重量%含有させることが好ましい。更に第4成分として、W,Mo等の金属を着色成分として2重量%以下含有しても良い。
【0018】
上記Al23以外の成分は、Al23主結晶相の粒界に非晶質相あるいは結晶相として存在するが、熱伝導性を高める上で粒界中に助剤成分(Mn化合物)を含有する結晶相が形成されていることが好ましい。
【0019】
また、絶縁基板1を形成するAl23主結晶相は粒状または柱状の結晶として存在するが、これら主結晶相の平均結晶粒径は1.5〜5μmであることが好ましい。なお、主結晶相が柱状結晶からなる場合、上記平均結晶粒径は短軸径に基づくものである。この主結晶相の平均結晶粒径が1.5μmよりも小さい場合、高熱伝導化が困難となり、一方5μmを超える場合、基板材料として用いる場合に要求される十分な強度が得られ難い。
【0020】
絶縁基板1の製造方法は以下のようなものである。酸化物セラミックスの主成分となるAl23原料粉末として、平均粒径が0.5〜2.5μm、特に好ましくは0.5〜2μmの粉末を用いる。0.5μmよりも小さい場合、粉末の取り扱いが困難となるとともに、微細な粉末を製造するのにコスト高となる。一方、2.5μmを超えると、1500℃以下の温度で焼成することが困難となる。
【0021】
そして、このAl23粉末に対して、焼結助剤としてMnO2を2〜10重量%、好ましくは3〜7重量%の割合で添加する。また、SiO2,MgO,CaO,SrO粉末等を0.4〜8重量%、更にW,Mo,Cr等の遷移金属の金属粉末や酸化物粉末を着色成分として金属換算で2重量%以下の割合で添加する。なお、上記酸化物の添加について、酸化物粉末以外に焼成によって酸化物を形成し得る炭酸塩,酢酸塩等として添加しても良い。
【0022】
そして、この混合粉末を用いて絶縁層を形成するためのセラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートは、周知の成形方法により作製できる。例えば、上記混合粉末に有機バインダや溶媒を添加混合しスラリーを調製した後、ドクターブレード法により形成したり、混合粉末に有機バインダを加え、プレス成形,圧延成形等により所定の厚さのセラミックグリーンシートを作製できる。そして、このセラミックグリーンシートに対して、周知の打抜き法により貫通孔を形成する。
【0023】
このようにして作製されたセラミックグリーンシートの貫通孔に貫通導体2となる導体材料の金属ペーストを充填するとともに放熱層4となる金属ペーストを印刷し、次にこれらを同時焼成することにより、絶縁基板1が作製されるとともに配線基板5が作製される。
【0024】
本発明における放熱層4を図2(a),(b)に示す。Wおよび/またはMo1aおよびCu1cの各々の粒子に有機溶剤,溶媒等のバインダ1bを添加混合して得た金属ペーストを、1200℃よりも低い温度、例えばWおよび/またはMo1aが融点3410℃程度のWの場合は表面拡散が発生し始める、融点の0.3倍程度の温度(約1023℃程度)で仮焼する。この場合、大きな塊となったW1aをボールミル等により破砕することにより、W1a粒子のほとんどが、その粒径は約1〜5μm程度となる。また、破砕されたW1a粒子の外周にはCu1cが部分的に接触する程度に被着される。
【0025】
このCu1cは、放熱層4となる金属ペーストを焼成した際に各々のW1a粒子同士が接触し融合することを防止する、所謂バリア層として機能する。そのため、焼結後にはCu11c中に均一に分散された、平均粒径が約1〜5μmのW11a粒子が点在することとなる。その結果、Cu11cとW11a粒子との間に発生する熱膨張差による熱歪みは非常に小さくなるとともに、Cu11cとW11a粒子とから成る放熱層4は、その熱膨張係数がほぼ絶縁基板1の熱膨張係数に近似したものとなり、それらの間に発生する熱歪みを非常に小さくできる。そのため、絶縁基板1と放熱層4との密着性や、放熱層4中のW11a粒子とCu11cとの密着性が損なわれたり、絶縁基板1に反り変形を発生させることがなくなり、半導体素子3の接合不良も解消される。
【0026】
なお、放熱層4中のW11a粒子の平均粒径は、仮焼し破砕した後の平均粒径と同等の1〜5μm程度であり、1μmよりも小さい場合、放熱層4中のCu11cの保形性が劣化したり、組織が多孔質化し熱伝導性が低くなる。一方、5μmを超えると、Cu11cがW11a粒子により分断され熱伝導路が遮断されて熱抵抗が高くなったり、Cu11c成分が分離してにじみ等が発生する。
【0027】
また、放熱層4におけるCu11cと、Wおよび/またはMo11aとの組成比は、Cu11cが10〜70体積%、Wおよび/またはMo11aが30〜90体積%であるが、この組成比は、放熱層4の放熱性、絶縁基板1との同時焼結性、放熱層4の同時焼成後の保形性の維持、更には絶縁基板1との熱膨張特性の整合を図る上で重要である。Cu11cが10体積%よりも少なく、Wおよび/またはMo11aが90体積%よりも多いと、放熱層4の熱伝導率がWおよび/またはMo11aと同等になり低くなるばかりでなく、熱膨張差により絶縁基板1にクラック等の割れが生じ易くなる。
【0028】
一方、Cu11cが70体積%よりも多く、Wおよび/またはMo11aが30体積%よりも少ないと、放熱層4の同時焼成後の保形性が低下し放熱層4の周囲ににじみなどが発生したり、放熱層4の表面の凹凸が大きくなり、更には焼成時に放熱層4内の金属粒子が欠落する不具合が生じ易くなる。
【0029】
このように、本発明の配線基板5における放熱層4は、W1aおよびCu1cを仮焼した後、表面拡散により融合しているW1a粒子を破砕することにより、その平均粒径を1〜5μmと小さくすることができるとともに、その外周にCu1cが被着された導体粒子が得られる。この導体粒子にバインダ1bを添加混合して得られた金属ペーストを、絶縁基板1と同時に1200〜1500℃で焼成することにより、焼結後にCu11c中に常に均一に分散されたW11a粒子が点在するものとなる。これにより、絶縁基板1と放熱層4との密着性や、放熱層4中のW11a粒子とCu11cとの密着性が損なわれたり、放熱層4と絶縁基板1との間に発生する熱応力により絶縁基板1に反り変形を発生させることがなくなる。その結果、半導体素子4を平坦な放熱層4上に設けた載置部1Aに載置固定でき、半導体素子3の作動時における放熱性を良好とし得る。
【0030】
放熱層4は、平均粒径が1〜10μmのCu1c含有粉末を10〜70体積%、好ましくは40〜70体積%、平均粒径が1〜5μmのWおよび/またはMo1aを30〜90体積%、好ましくは30〜60体積%の割合で含有して成る金属ペーストを調製し、この金属ペーストを各セラミックグリーンシートに印刷法により数回印刷塗布を繰り返して、焼成後に好ましくは100〜200μm程度の厚さになるように被着させると放熱層4として好適に機能する。厚さが100μm未満になると、熱が絶縁基板1内に澱んで放熱効果が小さくなり、厚さが200μmを超える場合その形成が困難となる。
【0031】
この金属ペースト中には、絶縁基板1との密着性を高めるために、Al23粉末や、絶縁基板1を構成する酸化物セラミックス成分と同一の組成物粉末を0.05〜2体積%の割合で添加することも可能である。
【0032】
その後、金属ペーストを充填したセラミックグリーンシートを位置合わせして積層圧着して積層体となした後、この積層体を、非酸化性雰囲気中、例えば1200〜1500℃の温度で焼成する。焼成温度が1200℃より低い場合、通常の原料を用いた際、絶縁基板1が相対密度95%以上まで緻密化できず、熱伝導性や強度が低下する。一方、1500℃よりも高い場合、Wおよび/またはMo11a自体の焼結が進み、Cu11c中に均一に分散した状態を維持できなくなる。延いては低抵抗を維持することが困難となり、Wおよび/またはMo11aと同程度の放熱性しか得られなくなる。
【0033】
また、焼成時の非酸化性雰囲気としては、窒素、あるいは窒素と水素との混合雰囲気であることが好ましい。なお、雰囲気には所望により、アルゴンガス等の不活性ガスを混入しても良い。
【0034】
本発明において、貫通導体2および放熱層4はCuを10〜70体積%、Wおよび/またはMoを30〜90体積%含有する導体材料(メタライズ層)から成るが、メタライズ層中のCu,W,Moの体積%は以下のようにして特定できる。即ち、このメタライズ層はCuの融点(1083℃)以上の1200〜1500℃で絶縁基板1と同時焼成されるものであり、従ってCuより融点が1000℃以上高いW,MoとCuとは固溶体を形成しない。よって、メタライズ層はW粒子,Mo粒子の間隔をCuが埋めた構成となり、Cu,W,Moの体積%を特定することが可能となる。
【0035】
具体的には以下のようになる。まず、一定量の貫通導体2や放熱層4の試料の重量を測定した後、それに含有されるCu成分のみを亜硫酸ナトリウム,塩酸または硫酸等の酸で溶解する。処理液にCu成分を溶解し終えて酸処理した試料の重量が変化しなくなったのを確認した後、酸処理後の試料の重量を再度測定し重量変化を算出する。Cuの比重8.94よりCuの体積を算出する。酸処理後の試料の重量から、W(比重19.3)および/またはMo(比重10.22)の体積を算出する。Cu,W,Moのそれぞれの体積から体積%を算出する。
【0036】
かくして、本発明の配線基板5は、1200〜1500℃で焼成できる絶縁基板1に、一度仮焼したCuと平均粒径1〜5μmのWおよび/またはMoの粉末から成る塊を粉砕し、得られた混合粉末を用いて調製した金属ペーストを放熱層4として同時焼成により形成できる点に特徴がある。即ち、この金属ペーストは、焼成時にCuがW粒子同士の融合を妨げることにより、その焼成時の収縮が進まなくなり、絶縁基体1の収縮に沿うように収縮することで焼成後の反りや放熱層4の剥離を有効に防止できるものとなる。また、このような効果は低温で焼成できる絶縁基体1と放熱層4の組み合わせにより初めて得られるものであり、実用上きわめて重要かつ有効なものである。
【0037】
具体的には、絶縁基板1の収縮率を1とした場合、Wおよび/またはMoの粒子の平均粒径の大きさに応じて放熱層4の収縮度は変化し、収縮度の大きさによって絶縁基体1の反りや放熱層4の表面におけるクラックが発生して放熱層4が剥落する場合がある。そこで、Wおよび/またはMoの粒子の平均粒径と反りおよびクラックの発生状況を調査したところ、下記表1に示すような結果を得た。
【0038】
【表1】
Figure 0003906038
【0039】
上記の表1から明らかなように、反りおよびクラックが発生しないようにするには平均粒径は1〜5μmとする必要があることが判った。
【0040】
従って、本発明は、絶縁基板1と放熱層4との密着性や、放熱層4中のWおよび/またはMo11aとCu11cとの密着性を良好とでき、絶縁基板1の反り変形を有効に防止できる。その結果、半導体素子3の作動時における熱を効率良く上面の放熱層4を介して下面の放熱層4に伝え得、外部に放散できる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を行うことは何等支障ない。
【0042】
【発明の効果】
本発明の配線基板の製造方法は、Alを主成分とし、MnをMn換算で2〜10重量%含有した相対密度95%以上のセラミックスから成る絶縁基板と、銅を10〜70体積%、WおよびMoの少なくとも一方を30〜90体積%含有した導体とから成る配線基板の製造方法であって、WおよびMoの少なくとも一方から成る金属粒子とCu粒子とを含む金属ペーストを作製する工程と、この金属ペーストを1200℃以下で仮焼して金属塊を得る工程と、この金属塊を破砕して金属粒子の平均粒径が1〜5μmである導体粒子を作製する工程と、この導体粒子を含む導体ペーストを作製する工程と、この導体ペーストを絶縁基板のセラミックグリーンシートに印刷して1200〜1500℃で焼成する工程とを含むことにより、放熱層のWおよび/またはMoの平均粒径が1〜5μmとできるので、配線基板の熱歪みを非常に小さくできることから、同時焼成後における絶縁基板と放熱層との密着性や、放熱層と貫通導体との接合性を良好なものとできるとともに、絶縁基板の反り変形を有効に防止できる。そのため、半導体素子を絶縁基板の平坦な上面に載置固定できるとともに、半導体素子の作動時に発生する熱を効率良く上面の放熱層を介して下面の放熱層に伝え得る。その結果、半導体素子を長期に亘り正常かつ安定に作動させ得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板について実施の形態の例を示す断面図である。
【図2】(a)は図1の配線基板の放熱層となる導体材料を仮焼後に破砕したものの部分拡大断面図、(b)は(a)の導体材料の焼結後の状態を示す部分拡大断面図である。
【図3】比較のために試作した配線基板の断面図である。
【図4】(a)は図3の配線基板の放熱層の焼結前の状態を示す部分拡大断面図、(b)は図3の放熱層の焼結後の状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】従来のガラスセラミックから成る絶縁基板を有する配線基板の断面図である。
【符号の説明】
1:絶縁基板
1A:載置部
1B:電極部
2:貫通導体
3:半導体素子
4:放熱層
5:配線基板
11a:Wおよび/またはMo
11c:Cu

Claims (1)

  1. Al を主成分とし、MnをMn 換算で2〜10重量%含有した相対密度95%以上のセラミックスから成る絶縁基板と、銅を10〜70体積%、WおよびMoの少なくとも一方を30〜90体積%含有した導体とから成る配線基板の製造方法であって、WおよびMoの少なくとも一方から成る金属粒子とCu粒子とを含む金属ペーストを作製する工程と、該金属ペーストを1200℃以下で仮焼して金属塊を得る工程と、該金属塊を破砕して前記金属粒子の平均粒径が1〜5μmである導体粒子を作製する工程と、該導体粒子を含む導体ペーストを作製する工程と、該導体ペーストを前記絶縁基板のセラミックグリーンシートに印刷して1200〜1500℃で焼成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
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