JP2004188811A - 金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート、金属薄膜付セラミックグリーンシート、および、セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents

金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート、金属薄膜付セラミックグリーンシート、および、セラミックコンデンサの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】剥離シートの剥離時に金属薄膜の破損を生じず、金属薄膜を精度よくパターン化できるとともに、金属薄膜の良好な転写性を確保することのできる剥離シート、その剥離シートが用いられる金属薄膜付セラミックグリーンシートおよびその金属薄膜付セラミックグリーンシートが用いられるセラミックコンデンサの製造方法を提供すること。
【解決手段】ベースフィルム1の表面に、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を側鎖として有する剥離性ポリマーからなる主剤と光硬化剤とを含む長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を塗布し、これを硬化させて剥離処理層2を形成することにより離型シート3を得て、その剥離処理層2の上に、金属薄膜4を所定の配線回路パターンとして形成した後、金属薄膜4を含む剥離処理層2の上に、セラミック粉末分散層8を形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート、金属薄膜付セラミックグリーンシート、および、セラミックコンデンサの製造方法に関し、詳しくは、セラミックコンデンサの製造に好適に用いられる金属薄膜付セラミックグリーンシート、および、その金属薄膜付セラミックグリーンシートに用いられる金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート、ならびに、その金属薄膜付セラミックグリーンシートが用いられるセラミックコンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミックコンデンサの製造において、内部電極の形成方法として、金属ペーストをセラミックグリーンシートにスクリーン印刷することがよく知られている。
【0003】
しかし、スクリーン印刷による方法では、内部電極の薄層化が困難であるため、近年のセラミックコンデンサの大容量化に伴なうますますの薄層化に応えるべく、転写技術を用いて内部電極を薄層形成することが種々提案されている。
【0004】
このような方法としては、例えば、ベースフィルムの上に、薄膜形成法により金属薄膜を所定のパターンで形成し、その金属薄膜を含むベースフィルムの上に、セラミックグリーンシートを形成することにより、ベースフィルムの上に支持された金属薄膜付セラミックグリーンシートを形成し、次いで、このようにして得られた複数の金属薄膜付セラミックグリーンシートを、各積層毎にベースフィルムを剥離しながら、順次積層し、その後、焼成することによって、積層セラミックコンデンサを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0005】
より具体的には、特許文献1には、セラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートの表面に形成された電極とを含んでなる積層セラミック電子部品の製造方法であって、(a)蒸着によりフィルム上に第1の金属層を形成するステップと、(b)湿式めっきにより前記第1の金属層の上に第2の金属層を形成するステップと、(c)前記第1および第2の金属層をパターニングするステップと、(d)前記金属層を覆うように、前記フィルム上にセラミックのスラリーをコーティングしてセラミックグリーンシートを形成するステップと、(e)前記フィルムに支持された金属一体化グリーンシートをセラミックグリーンシートまたは他の金属一体化グリーンシート上に圧着し積層するステップと、(f)前記フィルムを剥離するステップと、(g) 前記積層したセラミックグリーンシートを焼成するステップとを備える、積層セラミック電子部品の製造方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ベースフィルム上に薄膜形成方法により所定のパターンを有する金属膜を形成する第1工程と、次に前記金属膜を覆うように前記ベースフィルム上にセラミック誘電体層を形成してベースフィルム付きグリーンシートを作製する第2工程と、次に誘電体シート上に前記ベースフィルム付きグリーンシートを前記誘電体シートと前記ベースフィルム付きグリーンシートのセラミック誘電体層とが接するように重ね合わせた後、前記ベースフィルムを剥離する第3工程と、次に前記第1工程および第2工程によって得られた別のベースフィルム付きグリーンシートのセラミック誘電体層と前記第3工程で得られたグリーンシートとが接するように重ね合わせた後、前記ベースフィルムを剥離して、さらに積層する第4工程と、次に前記第4工程と同様の方法で所定回数繰り返してグリーンシートを積層する第5工程と、次に前記グリーンシートを切断してチップを作成し、前記チップを焼成する第6工程と、前記チップに外部電極を形成する第7工程とを備えた積層セラミックコンデンサの製造方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特許第2990621号公報
【特許文献2】
特許第2970238号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記のように、転写技術を用いる方法では、内部電極となる金属薄膜が、蒸着やスパッタリングなどの薄膜形成法によって形成されるため、形成された金属薄膜の金属結晶が小さく、結晶間の結合力が弱いために、ベースフィルムをセラミックグリーンシートから剥離する時に、セラミックグリーンシートに対するベースフィルムの剥離力が大きすぎると、金属薄膜の破損を生じるという不具合がある。
【0008】
一方、セラミックグリーンシートに対するフィルムの剥離力が小さすぎると、搬送中の振動などによって、フィルムがセラミックグリーンシートから容易に剥離したり、あるいは、蒸着工程やスパッタリング工程において金属薄膜の浮きを生じて、良好にパターン化できないという不具合を生じる。
【0009】
また、適度な剥離力を確保すべく、ベースフィルムの表面を、例えば、シリコーン系やフッ素系などの公知の剥離処理剤を用いて剥離処理すると、剥離処理層と、金属薄膜形成のためのマスクフィルムとの間の密着性が十分に得られず、金属薄膜を精度よくパターン化できず、また、金属薄膜形成時のエッチングによる損傷を受けて剥離性が低下し、さらには、セラミックグリーンシートを形成するためのスラリーとの間の濡れ性が不良であるために、ベースフィルムの表面でスラリーをはじいて、ベースフィルムの表面にスラリーを均一に塗布することができず、却って転写不良を生じるという不具合を生じる。また、例えば、長鎖アルキル系の剥離処理剤を用いれば、スラリーとの間の濡れ性を改善することはできるが、耐熱性が低いため、薄膜形成時の熱により、金属薄膜との密着性が大きくなって転写不良を生じるという不具合がある。
【0010】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、剥離シートの剥離時に金属薄膜の破損を生じず、かつ、金属薄膜を精度よくパターン化できるとともに、金属薄膜の良好な転写性を確保することのできる金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート、その金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートが用いられる金属薄膜付セラミックグリーンシート、および、その金属薄膜付セラミックグリーンシートが用いられるセラミックコンデンサの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートは、所定のパターンとして形成される金属薄膜と、セラミック粉末がバインダーに分散されているセラミック粉末分散層とが、その表面上に形成される、金属薄膜付セラミックグリーンシートの剥離シートであって、前記剥離シートは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面上において、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を側鎖として有する剥離性ポリマーからなる主剤と、光硬化剤とを含む長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤によって形成される剥離処理層とを備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートでは、前記剥離性ポリマーが、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体の重合体であり、前記光硬化剤が、少なくともトリクロロメチル基含有トリアジン誘導体を含んでいることが好ましく、また、前記長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤が、さらに、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物からなる硬化助剤を含んでいることが好ましい。
【0013】
また、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートでは、前記長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤において、前記主剤100重量部に対して、前記光硬化剤が0.01〜10重量部の割合で含有されていることが好ましく、前記剥離処理層が、前記ベースフィルムの表面に前記長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を塗布した後に、50mJ/cm以上の照射光量で紫外線を照射することにより、形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記した本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートと、前記剥離シートの前記剥離処理層の上に、所定のパターンとして形成されている金属薄膜と、前記金属薄膜を含む前記剥離処理層の上に形成され、セラミック粉末がバインダーに分散されているセラミック粉末分散層とを備えている、金属薄膜付セラミックグリーンシートを含んでいる。
【0015】
また、本発明は、上記した本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシートの前記剥離シートを剥離する剥離工程、前記剥離シートが剥離された金属薄膜付きセラミックグリーンシートを複数積層する積層工程、積層された複数の前記金属薄膜付きセラミックグリーンシートを焼成する工程を備える、セラミックコンデンサの製造方法を含んでいる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートが用いられる金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造方法の一実施形態を示す工程図である。以下、図1を参照して、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート、および、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシートの一実施形態を製造する方法を説明する。
【0017】
まず、この方法では、図1(a)に示すように、ベースフィルム1を用意する。
【0018】
ベースフィルム1としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、TPX(メチルペンテン樹脂)フィルム、アルキド系樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリサルフォンフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどの公知のプラスチックフィルムが挙げられる。また、ベースフィルム1の厚みは、特に制限されないが、例えば、5〜500μm、さらには、10〜100μmであることが好ましい。
【0019】
次いで、この方法では、図1(b)に示すように、ベースフィルム1の表面上に、剥離処理層2を形成することにより、剥離シート3を得る。
【0020】
剥離処理層2は、剥離性ポリマーからなる主剤と、光硬化剤とを含む長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤によって形成する。
【0021】
剥離性ポリマーは、側鎖に炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有するポリマーであって、例えば、ウレタン系重合体やアクリル系重合体などが挙げられる。
【0022】
なお、このような剥離性ポリマーにおいて、側鎖の炭素数が12未満であると、剥離性が低下し、また、側鎖の炭素数が28を超えると、入手や取り扱いが困難となる。
【0023】
ウレタン系重合体は、例えば、ポリビニルアルコールやポリエチレンイミンなどと、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有するアルキルイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。
【0024】
また、アクリル系重合体は、乳化重合や溶液重合などの通常のラジカル重合法によって、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート、以下同じ。)を、単独または複数、あるいは、他の単量体とともに重合させることにより、得ることができる。また、このようなアクリル系重合体は、好ましくは、上記した通常のラジカル重合法に代えて、無溶剤ないし少量の溶剤でも重合系の発熱制御が容易であるリビングラジカル重合法によって、上記と同様の単量体を重合させることにより、得ることができる。
【0025】
リビングラジカル重合法は、特表平10−509475号公報に記載されるように、活性化剤として遷移金属とその配位子を用いて、これらの存在下、重合開始剤を用いて、重合反応を進行させる方法である。この重合法において、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、つまり、一般式(1);CH=C(R)COOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数12〜28の長鎖アルキル基を示す。)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレートを必須の単量体として、1種だけを重合させると単独重合体を得ることができ、2種以上を重合させると共重合体を得ることができる。
【0026】
共重合体の場合には、2種以上を同時に重合させるとランダム共重合体を得ることができ、順次重合させると通常のラジカル重合では重合困難なブロック共重合体を得ることができる。例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの中から、まず、特定の単量体Aを重合し、次いで、その単量体A以外の特定の単量体B(長鎖アルキル(メタ)アクリレートまたは共重合可能な他の単量体から選択される。)を重合させると、重合体ブロックAと重合体ブロックBとからなるA−B型のブロック共重合体を得ることができる。また、これに続いて、さらに、単量体Aを重合させると、A−B−A型のブロック共重合体を得ることができる。また、単量体Aおよび単量体Bを、上記と逆の順序で重合させると、B−A−B型のブロック共重合体を得ることができる。
【0027】
なお、上記した各種のブロック共重合体を重合する場合に、設計通りのブロック構造とするためには、先の単量体の重合転化率が少なくとも50重量%を超えた時点、好ましくは、70重量%以上、さらに好ましくは、80重量%以上となった時点で、後の単量体を重合させることが好ましい。
【0028】
一般式(1);CH=C(R)COOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数12〜28の長鎖アルキル基を示す。)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートは、これらを単独使用または2種類以上併用することができ、具体的には、その目的および用途により適宜選択される。
【0029】
また、このような長鎖アルキル(メタ)アクリレートとともに共重合可能な他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートなどの短鎖アルキル(メタ)アクリレートや、例えば、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。これら他の単量体は、これらを単独使用または2種類以上併用することができ、具体的には、その目的および用途により適宜選択される。
【0030】
また、これら単量体の使用割合は、剥離性の観点より、長鎖アルキル(メタ)アクリレートが、単量体全体の30重量%以上、通常、50重量%以上、さらには、60重量%以上となる割合であることが好ましい。
【0031】
遷移金属としては、例えば、Cu、Ru、Fe、Rh、VまたはNiが挙げられ、通常は、これら金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物など)として用いられる。また、配位子は、遷移金属を中心にして配位して錯体を形成するものであって、ビピリジン誘導体、メルカプタン誘導体、トリフルオレート誘導体、アミン誘導体などが挙げられる。遷移金属とその配位子の組み合わせとしては、Cu+1−2,2’−ビピリジル錯体が、重合安定性や重合速度の観点から最も好ましい。
【0032】
重合開始剤としては、ハロゲン原子をα位に有するエステル系誘導体またはスチレン系誘導体が好ましく、特に、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸誘導体、塩化(または臭化)1−フェニル誘導体が好ましく用いられる。
【0033】
より具体的には、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸誘導体として、例えば、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸エチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸エチル、エチレンビス(2−ブロモ−2−メチルプロピオネート)などが挙げられ、また、塩化(または臭化)1−フェニル誘導体として、例えば、塩化(または臭化)1−フェニルエチルなどが挙げられる。
【0034】
リビングラジカル重合において、重合開始剤は、単量体に対して、通常、0.01〜10モル%、好ましくは、0.1〜2モル%の割合で用いられる。
【0035】
また、遷移金属は、ハロゲン化物として、上記の重合開始剤1モルに対して、通常、0.01〜3モル、好ましくは、0.1〜1モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物として)1モルに対して、通常、1〜5モル、好ましくは、2〜3モルの割合で用いられる。
【0036】
重合開始剤と活性化剤とを、このような割合で用いれば、リビングラジカル重合の反応性、生成ポリマーの分子量などに、好結果を得ることができる。
【0037】
そして、リビングラジカル重合は、無溶剤で進行させてもよく、また、例えば、酢酸ブチル、トルエン、キシレンなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。溶剤を用いる場合には、重合速度の低下を防止するため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となる少量の使用量であることが好ましい。無溶剤または少量の溶剤でも、重合熱の制御などに関する安全上の問題は特になく、むしろ溶剤削減によって経済性や環境対策などに、好結果を得ることができる。
【0038】
また、重合条件は、重合速度や触媒の失活の観点より、70〜130℃の重合温度で、最終的な分子量や重合温度にも依存するが、約3〜100時間の重合時間とすればよい。
【0039】
このようなリビングラジカル重合により得られるアクリル系重合体は、単独重合体、ランダム共重合体またはブロック共重合体のいずれかであって、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算として求められる数平均分子量が、通常、10000〜100000の範囲であることが好ましい。数平均分子量があまりに高すぎると、粘度が高くなって塗布時の作業性などが低下する場合があり、逆に低すぎると、剥離性ポリマーとして良好な物性を発現することができない場合がある。
【0040】
なお,アクリル系重合体の数平均分子量(Mn)は、重合開始剤と単量体のモル比から、Mn(計算値)=Σ(総和)[単量体の分子量×(単量体のモル比)/(重合開始剤のモル比)]として求めることができる。従って、単量体と重合開始剤からなる原料成分の仕込み比率を調整することで、数平均分子量を任意に制御することができる。
【0041】
そして、このようにして得られたアクリル系重合体中には、活性化剤として用いられた遷移金属とその配位子からなる不純物が多量に含まれており、これをそのまま剥離性ポリマーとして用いると、上記の不純物が着色の原因となったり、あるいは、ベースフィルム1や後述する金属薄膜4またはセラミック粉末分散層8などにマイグレートして汚染の原因となる。そのため、上記の不純物を、適宜の公知の除去手段によって除去しておくことが好ましい。除去の方法は、特に制限されないが、例えば、以下の方法を用いることができる。
【0042】
すなわち、重合後、得られたアクリル系重合体を、その粘度が100Pa・s以下の状態として、まず、この重合体に不溶な遷移金属とその配位子を遠心分離機などにより分離除去し、次いで、この重合体に溶解している遷移金属とその配位子をイオン交換樹脂などにより分離除去する。このような方法によれば、多量の溶剤を使用することも、また、重合体の収率を大きく低下させることもなく、重合体中の遷移金属とその配位子を、それぞれ30ppm以下にまで低減することができ、これら不純物を原因とする上記の問題を回避することができる。
【0043】
光硬化剤は、紫外線によりラジカルを発生する化合物であって、例えば、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類などが挙げられる。光硬化剤は、これらを単独使用または2種類以上併用することができ、具体的には、その目的および用途により適宜選択して、架橋度や剥離性を調節する。
【0044】
このような光硬化剤は、剥離性ポリマーからなる主剤100重量部(後述する硬化助剤を用いる場合には、主剤と硬化助剤との合計100重量部)に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.05〜5重量部の割合で用いられる。光硬化剤が、これより少ないと、紫外線による硬化反応が十分に進行せず、耐熱性の良好な剥離処理層2を形成できず、また、これより多いと、過度な硬化反応によって剥離処理層2が硬くなって耐久性に乏しくなり、また、未反応の光硬化剤や反応副生成物が、ベースフィルム1や後述する金属薄膜4またはセラミック粉末分散層8を汚染する場合がある。
【0045】
これら光硬化剤の中では、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体が好ましく用いられる。また、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体と、ベンゾフェノン類とを併用すれば、剥離処理層2の表面を十分に硬化させることができ、剥離力を十分に低下させることができる。
【0046】
トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体は、例えば、下記一般式(2)に示すように、トリアジン環に2つのトリクロロメチル基と、1つの置換基とを有するものが挙げられる。
【0047】
【化1】
Figure 2004188811
(式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2−クロロエチル基、1,1,2−トリクロロエチル基などが挙げられる。
【0048】
置換基を有していてもよいアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0049】
置換基を有していてもよいアルケニル基としては、例えば、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
【0050】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、クロロフェニル基、エチルフェニル基、フェノキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシナフチル基、スチリル基、メトキシスチリル基、ジメトキシスチリル基、イソプロポキシスチリル基、ピペロニル基などが挙げられる。
【0051】
このようなトリクロロメチル基含有トリアジン誘導体は、従来の光重合開始剤(光硬化剤)に比べて、紫外線領域、特に長波長光(300〜400nm)における感度が高く、効率よく主剤を架橋することができ、高い架橋度(溶剤不溶分として評価)を得ることができる。また、酸素阻害を受けにくいという利点をも有する。従って、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体を光硬化剤として用いれば、剥離処理層2の耐熱性を改善することができ、また、ベースフィルム1や後述する金属薄膜4またはセラミック粉末分散層8に移行しない皮膜を形成することができる。
【0052】
このようなトリクロロメチル基含有トリアジン誘導体の具体例としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2−(4’−メトキシ−1’−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジンなどが挙げられる。
【0053】
また、このようなトリクロロメチル基含有トリアジン誘導体は、剥離性ポリマーからなる主剤100重量部(後述する硬化助剤を用いる場合には、主剤と硬化助剤との合計100重量部)に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.05〜5重量部の割合で用いられる。トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体が、これより少ないと、紫外線による硬化反応が十分に進行せず、耐熱性の良好な剥離処理層2を形成できず、また、これより多いと、過度な硬化反応によって剥離処理層2が硬くなって耐久性に乏しくなり、また、未反応の光硬化剤や反応副生成物が、ベースフィルム1や後述する金属薄膜4またはセラミック粉末分散層8を汚染する場合がある。
【0054】
なお、主剤としての剥離性ポリマーの側鎖に、予め適宜の手段で、紫外線の照射によりラジカルを発生する基を導入しておけば、その基と光硬化剤との相互作用によって、さらに良好な硬化反応を期待することができる。
【0055】
また、長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤は、さらに、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物からなる硬化助剤を含んでいることが好ましい。硬化助剤を配合することにより、主剤の硬化反応を、より一層進行させることができ、また、ベースフィルム1に対する投錨性を向上させることができ、さらには、剥離処理層2の皮膜強度の向上を図ることができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0056】
このような硬化助剤としては、例えば、長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤をベースフィルム1の表面に薄く塗布しても、蒸発しにくい沸点の高いものが好ましく、また、分子中に(メタ)アクロイル基などのエチレン性不飽和二重結合を複数有するものが好ましい。
【0057】
このような硬化助剤としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーや、例えば、オリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
また、このような硬化助剤は、剥離性ポリマーからなる主剤100重量部に対して、通常、50〜2000重量部、好ましくは、100〜1500重量部となる割合で用いられる。硬化助剤が、これより少ないと、硬化促進効果が少なく、また、これより多いと、剥離性に支障をきたす場合がある。
【0059】
なお、主剤としての剥離性ポリマーの側鎖に、予め適宜の手段で、エチレン性不飽和二重結合を導入しておけば、その結合と硬化助剤との相互作用によって、さらに良好な硬化反応を期待することができる。
【0060】
この長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤は、剥離性ポリマーの重合方法や、その後の調整方法により、有機溶剤溶液タイプ、水分散タイプ、無溶剤タイプなどの種々の形態に調製することができる。これらの中では、環境対策の観点より、水分散タイプや無溶剤タイプとして調製することが好ましく、とりわけ、無溶剤のリビングラジカル重合によって重合したアクリル系重合体からなる剥離性ポリマーを主剤とする、無溶剤タイプとして調製することが好ましい。
【0061】
なお、上記したリビングラジカル重合法で重合したアクリル系重合体は、上記したように、乳化重合などの通常のラジカル重合法で重合したものに比べて、数平均分子量がやや低くなるが、これをベースフィルム1に塗布した後、紫外線を照射して硬化させることで、剥離処理層2の耐熱性を大きく改善することができ、これによって、所望する耐熱性の良好な剥離処理層2を得ることができる。
【0062】
なお、この長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤には、必要に応じて、さらに充填剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、顔料などの公知の添加剤を、その目的および用途に応じて適宜添加することができる。
【0063】
そして、ベースフィルム1の表面上に剥離処理層2を形成するには、特に制限されないが、例えば、まず、ベースフィルム1の表面に、上記した長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を、必要により有機溶剤を用いて溶液として調製し、例えば、ロールコーター、キスコーター、グラビアコーター、スロットダイコーター、スクイズコーターなどの公知のコーティング方法によって、例えば、0.01〜10μm、好ましくは、0.05〜5μmで塗布し、必要により乾燥後、次いで、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの有極ランプや無極ランプを用いて、通常、50mJ/cm以上、20J/cm程度までの照射光量で紫外線を照射し、長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を硬化させる。
【0064】
このようにして形成された剥離処理層2は、その厚みが、例えば、0.1〜10μm、さらには、0.5〜5μmであることが好ましい。
【0065】
次いで、この方法では、図1(c)に示すように、上記で得られた剥離シート3の剥離処理層2の上に、金属薄膜4を所定の配線回路パターンとして形成する。
【0066】
金属薄膜4を形成する金属は、積層セラミックコンデンサ11の内部電極として用いられるものであれば、特に制限されないが、例えば、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、または、これらの合金などが挙げられる。
【0067】
また、剥離処理層2の上に金属薄膜4を形成するには、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの薄膜形成法が用いられる。
【0068】
そして、金属薄膜4を所定の配線回路パターンとして形成するには、特に制限されないが、例えば、まず、剥離処理層2の上に、マスクフィルムを配線回路パターンと逆パターン(反転パターン)で配置した後、配線回路パターンとして露出する剥離処理層2の表面に、薄膜形成法により金属薄膜4を形成し、その後、マスクフィルムを除去する方法が用いられる。
【0069】
この方法では、より具体的には、まず、図2(a)に示すように、剥離処理層2の上に、マスクフィルム5を配線回路パターンと逆パターンで配置して、剥離処理層2と接着させる。
【0070】
マスクフィルム5は、特に制限されないが、例えば、上記したベースフィルム1と同様の樹脂のフィルムが用いられる。なお、マスクフィルム5には、好ましくは、アクリル系粘着剤の塗布などによって、剥離処理層2との接着面に、弱粘着層6を形成する。また、マスクフィルム5の厚みは、例えば、1〜200μmが好ましいが、作業性、および、マスクフィルム5上の金属薄膜4と、剥離処理層2上の金属薄膜4との確実な不連続性を得るため、さらには、5〜50μmであることが好ましい。
【0071】
マスクフィルム5を、剥離処理層2の上に、配線回路パターンと逆パターンで配置するには、特に制限されないが、例えば、マスクフィルム5を、予め配線回路パターンと逆パターンに打ち抜きなどによって開口しておき、それを剥離処理層2の上に配置するか、あるいは、剥離処理層2の全面に、感光性樹脂からなるマスクフィルム5を積層した後、そのマスクフィルム5を、露光および現像することにより、配線回路パターンと逆パターンに形成する。好ましくは、作業工数低減およびコスト低減の観点から、前者の方法が用いられる。
【0072】
配線回路パターンと逆パターンで配置したマスクフィルム5を剥離処理層2と接着させるには、特に制限されないが、例えば、常温、もしくは、必要により40〜200℃に加熱されたロールラミネータなどを用いて圧着させる。
【0073】
なお、このような圧着において、マスクフィルム5は、剥離処理層2との密着性を十分に確保することができる。
【0074】
次いで、図2(b)に示すように、マスクフィルム5から配線回路パターン(すなわち、マスクフィルム5と逆パターン)として露出する剥離処理層2の表面に、薄膜形成法により、金属薄膜4を形成する。
【0075】
薄膜形成法は、特に制限されないが、配線回路パターン、金属の種類、金属薄膜4の厚みなどを考慮して、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などから、適宜選択される。また、金属薄膜4は、その目的および用途などによっては、2層以上の多層構造として形成することもできる。
【0076】
その後、図2(c)に示すように、マスクフィルム5を除去する。マスクフィルム5の除去は、特に限定されないが、例えば、マスクフィルム5を剥離するか、あるいは、マスクフィルム5をエッチングする。
【0077】
また、金属薄膜4を所定の配線回路パターンとして形成するには、例えば、まず、剥離処理層2の全面に薄膜形成法により金属薄膜4を形成した後、その金属薄膜4の上に、エッチングレジストを配線回路パターンで配置して、そのエッチングレジストをマスクとして金属薄膜4をエッチングし、その後、エッチングレジストを除去する方法を用いることもできる。
【0078】
この方法では、より具体的には、まず、図3(a)に示すように、まず、剥離処理層2の全面に、薄膜形成法により金属薄膜4を形成する。薄膜形成法は、特に制限されないが、上記と同様に、配線回路パターン、金属の種類、金属薄膜4の厚みなどを考慮して、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などから、適宜選択される。また、金属薄膜4は、その目的および用途などによっては、上記と同様に、2層以上の多層構造として形成することもできる。
【0079】
次いで、図3(b)に示すように、金属薄膜4の上に、エッチングレジスト7を配線回路パターンで配置する。エッチングレジスト7を、配線回路パターンで金属薄膜4の上に配置するには、特に制限されないが、例えば、公知のドライフィルムレジストを用いて、これを露光および現像するなど公知の方法によりパターン化して配置する。
【0080】
そして、図3(c)に示すように、エッチングレジスト7をマスクとして、そのエッチングレジスト7から配線回路パターンと逆パターンで露出する金属薄膜4を、エッチングする。エッチングは、特に制限されないが、例えば、公知のエッチング液を用いて、ウエットエッチング(化学エッチング)する。
【0081】
なお、このようなエッチングにおいて、剥離処理層2は、エッチングによる損傷を受けにくいため、剥離性を保持することができる。
【0082】
その後、図3(d)に示すように、エッチングレジスト7を除去する。エッチングレジスト7の除去は、特に限定されないが、例えば、エッチングレジスト7を剥離するか、あるいは、エッチングレジスト7をエッチングする。
【0083】
なお、剥離処理層2の上に、金属薄膜4を所定の配線回路パターンとして形成する方法としては、上記した図2または図3に示す方法のうち、好ましくは、作業工数低減の観点から、前者の方法(図2に示す方法)が用いられる。
【0084】
また、このようにして、所定の配線回路パターンとして形成された金属薄膜4は、その厚みが、例えば、0.1〜1.0μm、さらには、0.1〜0.5μmであることが好ましい。
【0085】
そして、この方法では、図1(d)に示すように、金属薄膜4を含む剥離処理層2の上に、セラミック粉末分散層8を形成し、これによって、金属薄膜付セラミックグリーンシート9を得る。
【0086】
セラミック粉末分散層8の形成は、特に制限されないが、例えば、セラミック粉末およびバインダーを含むスラリーを調製し、このスラリーを、金属薄膜4を含む剥離処理層2の全面に塗布し、乾燥する。
【0087】
スラリーの調製は、セラミックグリーンシートの製造に用いられるスラリーの調製方法であれば、特に制限されず、例えば、セラミック粉末およびバインダーを分散媒(溶媒)に配合して、混合する。
【0088】
セラミック粉末は、特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム粉末、チタン酸ストロンチウム系粉末、チタン酸鉛系粉末などの誘電体セラミック粉末、例えば、フェライト系粉末などの磁性体セラミック粉末、圧電体セラミック粉末、例えば、アルミナ、シリカなどの絶縁体セラミック粉末などが挙げられる。セラミック粉末は、これらを単独使用または2種類以上併用することができ、具体的には、その目的および用途により適宜選択される。
【0089】
また、バインダーとしては、特に制限されないが、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系樹脂、例えば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダーは、これらを単独使用または2種類以上併用することができ、具体的には、その目的および用途により適宜選択される。
【0090】
分散媒は、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、例えば、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのグリコール系溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族系溶剤、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの極性溶剤などが挙げられる。分散媒は、これらを単独使用または2種類以上併用することができる。
【0091】
なお、このようなスラリーの調製においては、その目的および用途により、可塑剤や分散剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。例えば、可塑剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなどが挙げられる。
【0092】
そして、スラリーの調製は、上記した各成分を配合して、特に制限されないが、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミルなどの公知の粉体混合装置を用いて、混合する。各成分を配合する割合は、特に制限されず、その目的および用途によって適宜選択することができる。
【0093】
そして、この方法では、このようにして調製されたスラリーを、金属薄膜4を含む剥離処理層2の全面に塗布して、その後、乾燥させることによって、セラミック粉末分散層8を形成する。
【0094】
スラリーを、金属薄膜4を含む剥離処理層2の全面に塗布するには、特に制限されないが、例えば、ドクターブレード法、ロールコート法などの公知の塗布方法が用いられる。
【0095】
また、塗布されたスラリーの乾燥は、特に制限されないが、例えば、50〜200℃、好ましくは、80〜150℃で乾燥する。
【0096】
そして、このようにして得られた金属薄膜付セラミックグリーンシート9は、剥離シート3における剥離処理層2の形成により、剥離シート3を剥離する時には、金属薄膜4に対する良好な剥離性が確保されるので、たとえ金属薄膜4が薄膜形成法によって形成されていても、その金属薄膜4の破損を防止することができる。
【0097】
また、この金属薄膜付セラミックグリーンシート9では、搬送中の振動などによって剥離シート3が容易に剥離することもなく、また、蒸着工程やスパッタリング工程における金属薄膜4の浮きを防止して、良好な配線回路パターンの形成を確保することができる。
【0098】
さらに、このた金属薄膜付セラミックグリーンシート9では、このような剥離処理層2の形成によって、剥離処理層2とマスクフィルム5との間の密着性が十分に確保されるので、金属薄膜4を精度よく所定の配線回路パターンとして形成することができ、また、エッチングによる損傷を受けにくく、良好な剥離性を保持し、さらには、セラミック粉末分散層8を形成するためのスラリーとの間の良好な濡れ性が確保されるので、スラリーを均一に塗布して、均一なセラミック粉末分散層8を均一に形成することができる。
【0099】
しかも、この剥離処理層2は、耐熱性が高いため、薄膜形成法による金属薄膜4の形成時の熱により、金属薄膜4との密着性が大きくなることを防止することができ、金属薄膜4の良好な転写性を確保することができる。
【0100】
そのため、この金属薄膜付セラミックグリーンシート9は、積層毎に剥離シート3を剥離しながら、順次積層し、その後、焼成することによって、積層セラミックコンデンサ11を製造する方法に好適に用いることができる。
【0101】
次に、そのような積層セラミックコンデンサ11の製造方法について、図4を参照して説明する。なお、図4においては、複数の金属薄膜付セラミックグリーンシート9を互いに区別するために、便宜上、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシート901、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシート902・・・第nの金属薄膜付セラミックグリーンシート9nとして説明する。
【0102】
この方法では、金属薄膜付セラミックグリーンシート9を複数用意して、図4(a)に示すように、まず、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシート901の剥離シート301を剥離する。そうすると、剥離シート301は、剥離処理層201の表面から容易に剥離される。これによって、金属薄膜401に対する剥離シート301の良好な剥離性が確保されるので、たとえ金属薄膜401が薄膜形成法によって形成されていても、その金属薄膜401の破損を防止することができる。
【0103】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシート902を、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシート901に、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシート902のセラミック粉末分散層802が、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシート901の金属薄膜401の表面と接触するように積層して、これらを加熱圧着させる。加熱圧着は、例えば、2〜70MPaで、50〜150℃の条件下で実施することができる。
【0104】
その後、この方法では、図4(c)に示すように、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシート902の剥離シート302を剥離する。
【0105】
そして、この方法では、上記と同様にして、図4(d)に示すように、目的とする枚数分(n枚)積層した後、必要により、チップ形状に切断し、各セラミック粉末分散層8のバインダーの消失温度以上(例えば、約400℃〜1200℃)で焼成することによって、図5に示すような積層セラミックコンデンサ11を製造する。
【0106】
そして、このような積層セラミックコンデンサ11の製造方法では、上記した金属薄膜付きセラミックグリーンシート9が用いられているので、各金属薄膜付きセラミックグリーンシート9の積層においては、金属薄膜4の破損を防止しつつ、剥離シート3を剥離することができる。そのため、信頼性の高い積層セラミックコンデンサ11を製造することができる。
【0107】
なお、図5は、図4に対する直交方向の断面図として概略的に示されており、この積層セラミックコンデンサ11では、金属薄膜4が内部電極12となり、焼成において、セラミック粉末分散層8のバインダーが消失されて、セラミック層13が形成されるため、内部電極12とセラミック層13とが、交互に積層された積層構造となる。また、この積層セラミックコンデンサ11には、焼成後において、公知の方法により、その両端部に外部電極14が形成される。
【0108】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0109】
実施例1(剥離シートの製造)
攪拌機、窒素導入管、冷却管、ラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、オクタデシルアクリレート66.7g、2,2’−ビピリジン0.52gを加え、4つ口フラスコ内を窒素置換した。次いで、窒素気流下、臭化銅0.24gを加えて90℃に加熱し、2−ブロモイソ酪酸エチル0.65を加えて重合を開始し、窒素気流下、90℃で14時間重合した。重合転化率が85重量%以上であることを確認した後、2−エチルヘキシルアクリレート33.3gをラバーセプタムから添加し、90℃で12時間加熱することにより、重合反応物を得た。
【0110】
得られた重合反応物を、60℃に加熱して、8000gの遠心力で30分遠心分離し、上澄みの重合体を得た。この重合体50gにスルホン酸型イオン交換樹脂10gを加え、100℃で1時間攪拌後、スルホン酸型イオン交換樹脂を濾過除去し、高純度のアクリル系重合体からなる剥離性ポリマーを得た。
【0111】
この剥離性ポリマーは、側鎖にオクタデシル基を有するアクリレートの重合体ブロックAと、側鎖に2−エチルヘキシル基を有するアクリレートの重合体ブロックBとからなるA−Bジブロック重合体であって、その数平均分子量が、28000であった。
【0112】
次いで、得られた剥離性ポリマー100重量部、光硬化剤として、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン1重量部を混合攪拌することにより、長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を調製した。
【0113】
この長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を10重量%トルエン溶液として調製し、このトルエン溶液を、ベースフィルムとして、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面上に、No.9のワイパーバーを用いて塗布後、90℃で3分間加熱することによって、厚み1μmの剥離処理層の前駆体層を形成した。
【0114】
次いで、この前駆体層に、メタルハライドランプを用いて紫外線を4J/cmの照射光量で照射して、前駆体層を硬化させることにより、剥離処理層を形成し、これによって、剥離シートを得た。
【0115】
実施例2(剥離シートの製造)
実施例1で得られた剥離性ポリマー100重量部、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート100重量部、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン2重量部を混合攪拌することにより、長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を調製した以外は、実施例1と同様の操作により、剥離シートを得た。
【0116】
実施例3(剥離シートの製造)
実施例1で得られた剥離性ポリマー100重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート1000重量部、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン40重量部を混合攪拌することにより、長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を調製した以外は、実施例1と同様の操作により、剥離シートを得た。
【0117】
実施例4(金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造)
実施例1で得られた剥離シートを用意して(図1(a)参照)、その上に、配線回路パターンと逆パターンに開口形成されたポリエチレンフタレートフィルムにアクリル系粘着剤からなる弱粘着層が形成されたマスクフィルムを、剥離処理層の上に弱粘着層が積層されるように、常温でロールラミネートすることにより、接着させた(図2(a)参照)。
【0118】
そして、真空蒸着装置を用いて、ニッケル薄膜からなる金属薄膜を、剥離処理層の上に、所定の配線回路パターンとして、厚み0.4μmで形成した(図2(b)参照)。
【0119】
その後、マスクフィルムを剥離処理層から剥離し(図2(c)参照)、これによって、剥離処理層の上に、金属薄膜を所定の配線回路パターンとして形成した(図1(c)参照)。なお、マスクフィルムと剥離処理層との密着性が良好であったので、金属薄膜は、所定の配線回路パターンとして精度よく形成できた。
【0120】
次いで、セラミック粉末としてチタン酸バリウムが主成分として配合され、各種バインダーが配合されているスラリーを、金属薄膜を含む剥離処理層の上に塗布し、100℃で乾燥させることにより、セラミック粉末分散層を、金属薄膜を含む剥離処理層の上に、厚み2.0μmで形成し(図1(d)参照)、これによって、金属薄膜付きセラミックグリーンシートを得た。なお、セラミック粉末分散層は、スラリーが剥離処理層ではじかれることなく均一に塗布できたので、均一層として形成することができた。
【0121】
その後、この金属薄膜付きセラミックグリーンシートから、剥離シートを、剥離強度24N/mで剥離させ、金属薄膜の状態を観察した。その結果、金属薄膜は、配線回路パターンに損傷を生ずることなく、100%剥離せず残存していることが確認された。
【0122】
実施例5(金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造)
実施例2で得られた剥離シートを用いて、実施例4と同様の操作によって金属薄膜付きセラミックグリーンシートを得た。なお、この操作においても、マスクフィルムと剥離処理層との密着性が良好であったので、金属薄膜は、所定の配線回路パターンとして精度よく形成でき、また、セラミック粉末分散層は、スラリーが剥離処理層ではじかれることなく均一に塗布できたので、均一層として形成することができた。
【0123】
その後、この金属薄膜付きセラミックグリーンシートから、剥離シートを、剥離強度28N/mで剥離させ、金属薄膜の状態を観察した。その結果、金属薄膜は、配線回路パターンに損傷を生ずることなく、100%剥離せず残存していることが確認された。
【0124】
実施例6(金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造)
実施例3で得られた剥離シートを用意して(図1(a)参照)、その剥離処理層の全面に、真空蒸着装置を用いて、ニッケル薄膜からなる金属薄膜を厚み0.4μmで形成した(図3(a)参照)。
【0125】
そして、この金属薄膜の上に、ドライフィルムレジストからなるエッチングレジストを積層し、これを露光および現像することにより、配線回路パターンに形成した(図3(b)参照)。
【0126】
次いで、過酸化水素を添加した硝酸をエッチング液として、エッチングレジストをマスクとして、そのエッチングレジストから配線回路パターンの逆パターンとして露出する金属薄膜をウエットエッチングした(図3(c)参照)。なお、剥離処理層は、このエッチングにより損傷を受けていないことを確認した。
【0127】
その後、エッチングレジストを金属薄膜から剥離し(図3(d)参照)、これによって、剥離処理層の上に、金属薄膜を所定の配線回路パターンとして形成した(図1(c)参照)。なお、エッチングレジストと金属薄膜との密着性が良好であったので、金属薄膜は、所定の配線回路パターンとして精度よく形成できた。
【0128】
次いで、セラミック粉末としてチタン酸バリウムが主成分として配合され、各種バインダーが配合されているスラリーを、金属薄膜を含む剥離処理層の上に塗布し、100℃で乾燥させることにより、セラミック粉末分散層を、金属薄膜を含む剥離処理層の上に、厚み2.0μmで形成し(図1(d)参照)、これによって、金属薄膜付きセラミックグリーンシートを得た。なお、セラミック粉末分散層は、スラリーが剥離処理層ではじかれることなく均一に塗布できたので、均一層として形成することができた。
【0129】
その後、この金属薄膜付きセラミックグリーンシートから、剥離シートを、剥離強度35N/mで剥離させ、金属薄膜の状態を観察した。その結果、金属薄膜は、配線回路パターンに損傷を生ずることなく、100%剥離せず残存していることが確認された。
【0130】
比較例1(金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造)
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートからなるベースフィルムの表面にシリコーン系剥離剤からなる剥離処理層が形成されている剥離シート(商品名:MRN38、三菱化学社製)を用意して(図1(a)参照)、その上に、配線回路パターンと逆パターンに開口形成されたポリエチレンフタレートフィルムにアクリル系粘着剤からなる弱粘着層が形成されたマスクフィルムを、剥離処理層の上に弱粘着層が積層されるように、常温でロールラミネートすることにより、接着させた(図2(a)参照)。
【0131】
そして、真空蒸着装置を用いて、ニッケル薄膜からなる金属薄膜を、剥離処理層の上に、所定の配線回路パターンとして、厚み0.4μmで形成した(図2(b)参照)。
【0132】
その後、マスクフィルムを剥離処理層から剥離し(図2(c)参照)、これによって、剥離処理層の上に、金属薄膜を所定の配線回路パターンとして形成した(図1(c)参照)。なお、マスクフィルムと剥離処理層との密着性が弱く、マスクフィルムが部分的に剥離して、その剥離部分にも、金属薄膜が付着してしまい、所定の配線回路パターンとして精度よく形成できなかった。
【0133】
次いで、セラミック粉末としてチタン酸バリウムが主成分として配合され、各種バインダーが配合されているスラリーを、金属薄膜を含む剥離処理層の上に塗布し、100℃で乾燥させることにより、セラミック粉末分散層を、金属薄膜を含む剥離処理層の上に、厚み2.0μmで形成し(図1(d)参照)、これによって、金属薄膜付きセラミックグリーンシートを得た。なお、セラミック粉末分散層は、スラリーが剥離処理層ではじかれ、均一に塗布できなかったので、均一層として形成できなかった。
【0134】
その後、この金属薄膜付きセラミックグリーンシートから、剥離シートを、剥離強度10N/mで剥離させ、金属薄膜の状態を観察した。その結果、金属薄膜は、配線回路パターンに損傷を生じ、金属薄膜の78%がセラミック粉末分散層に残存したが、100%残存させることはできなかった。
【0135】
比較例2(金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造)
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートからなるベースフィルムの表面にフッ素系剥離剤(商品名:ユニダインTG656、ダイキン化学工業社製)を厚み1mmで塗布した離型シートを用いて、比較例1と同様の操作(但し、ニッケル薄膜からなる金属薄膜の厚み0.3μm)によって金属薄膜付きセラミックグリーンシートを得た。なお、この操作においても、マスクフィルムと剥離処理層との密着性が弱く、マスクフィルムが部分的に剥離して、その剥離部分にも、金属薄膜が付着してしまい、所定の配線回路パターンとして精度よく形成できず、また、セラミック粉末分散層は、スラリーが剥離処理層ではじかれ、均一に塗布できなかったので、均一層として形成できなかった。
【0136】
その後、この金属薄膜付きセラミックグリーンシートから、剥離シートを、剥離強度22N/mで剥離させ、金属薄膜の状態を観察した。その結果、金属薄膜は、配線回路パターンに損傷を生じ、金属薄膜の63%がセラミック粉末分散層に残存したが、100%残存させることはできなかった。
【0137】
比較例3(金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造)
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートからなるベースフィルムの表面に、長鎖アルキル系剥離剤(商品名:ピーロイル1010、一方社油脂社製)を厚み1μmで塗布することによって剥離処理層を形成した剥離シートを用いて、実施例6と同様の操作によって金属薄膜付きセラミックグリーンシートを得た。なお、この操作においては、金属薄膜は、所定の配線回路パターンとして精度よく形成でき、また、セラミック粉末分散層は、スラリーが剥離処理層ではじかれることなく均一に塗布できたので、均一層として形成することができた。
【0138】
その後、この金属薄膜付きセラミックグリーンシートから、剥離シートを、剥離強度200N/mで剥離させ、金属薄膜の状態を観察した。その結果、金属薄膜は、配線回路パターンに損傷を生じ、金属薄膜の44%がセラミック粉末分散層に残存したが、100%残存させることはできなかった。
【0139】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートが用いられる本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシートは、剥離シートの剥離時において、金属薄膜に対する良好な剥離性が確保されるので、金属薄膜の破損を防止することができる。また、搬送中の振動などによって剥離シートが容易に剥離することもなく、また、製造工程中における金属薄膜の浮きを防止して、良好なパターンの形成を確保することができる。
【0140】
さらに、剥離処理層と金属薄膜形成のためのマスクフィルムとの間の密着性が十分に確保されるので、金属薄膜を精度よく所定の配線回路パターンとして形成することができ、また、エッチングによる損傷を受けにくく、良好な剥離性を保持し、さらには、セラミック粉末分散層を形成するためのスラリーとの間の良好な濡れ性が確保されるので、スラリーを均一に塗布して、均一なセラミック粉末分散層を均一に形成することができる。しかも、この剥離処理層は、耐熱性が高いため、金属薄膜の形成時の熱により、金属薄膜との密着性が大きくなることを防止することができ、金属薄膜の良好な転写性を確保することができる。
【0141】
そのため、本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシートが用いられる本発明のセラミックコンデンサの製造方法によれば、金属薄膜の破損を防止しつつ、剥離シートを剥離することができるので、信頼性の高いセラミックコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートが用いられる金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造方法の一実施形態を示す工程図であって、
(a)は、ベースフィルムを用意する工程、
(b)は、ベースフィルムの上に剥離処理層を形成することにより、剥離シートを得る工程、
(c)は、剥離処理層の上に金属薄膜を所定の配線回路パターンとして形成する工程、
(d)は、金属薄膜を含む剥離処理層の上にセラミック粉末分散層を形成する工程、
を示す。
【図2】図1に示す金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造方法において、(c)で示される剥離処理層の上に金属薄膜を所定の配線回路パターンとして形成する工程の一実施形態を示す工程図であって、
(a)は、剥離処理層の上に、マスクフィルムを配線回路パターンと逆パターンで配置して、剥離処理層と接着させる工程、
(b)は、マスクフィルムから配線回路パターンとして露出する剥離処理層の表面に、薄膜形成法により金属薄膜を形成する工程、
(c)は、マスクフィルムを除去する工程
を示す。
【図3】図1に示す金属薄膜付セラミックグリーンシートの製造方法において、(c)で示される剥離処理層の上に金属薄膜を所定の配線回路パターンとして形成する工程の他の実施形態を示す工程図であって、
(a)は、剥離処理層の全面に、薄膜形成法により金属薄膜を形成する工程、
(b)は、金属薄膜の上に、エッチングレジストを配線回路パターンで形成する工程、
(c)は、エッチングレジストから配線回路パターンと逆パターンで露出する金属薄膜をエッチングする工程、
(d)は、エッチングレジストを除去する工程
を示す。
【図4】本発明のセラミックコンデンサの製造方法の一実施形態を示す工程図であって、
(a)は、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシートの剥離シートを剥離する工程、
(b)は、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシートを、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシートに、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシートのセラミック粉末分散層が、第1の金属薄膜付セラミックグリーンシートの金属薄膜の表面と接触するように、積層する工程、
(c)は、第2の金属薄膜付セラミックグリーンシートの剥離シートを剥離する工程、
(d)は、目的とする枚数分積層した後、焼成する工程
を示す。
【図5】図4に示すセラミックコンデンサの製造方法により得られた積層セラミックコンデンサの一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 ベースフィルム
2 剥離処理層
3 剥離シート
4 金属薄膜
8 セラミック粉末分散層
9 金属薄膜付セラミックグリーンシート
11 積層セラミックコンデンサ

Claims (8)

  1. 所定のパターンとして形成される金属薄膜と、
    セラミック粉末がバインダーに分散されているセラミック粉末分散層とが、その表面上に形成される、金属薄膜付セラミックグリーンシートの剥離シートであって、
    前記剥離シートは、
    ベースフィルムと、
    前記ベースフィルムの表面上において、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を側鎖として有する剥離性ポリマーからなる主剤と、光硬化剤とを含む長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤によって形成される剥離処理層とを備えていることを特徴とする、金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート。
  2. 前記剥離性ポリマーが、炭素数12〜28の長鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体の重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート。
  3. 前記光硬化剤が、少なくともトリクロロメチル基含有トリアジン誘導体を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート。
  4. 前記長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤が、さらに、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物からなる硬化助剤を含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート。
  5. 前記長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤において、前記主剤100重量部に対して、前記光硬化剤が0.01〜10重量部の割合で含有されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート。
  6. 前記剥離処理層が、前記ベースフィルムの表面に前記長鎖アルキルペンダント系剥離処理剤を塗布した後に、50mJ/cm以上の照射光量で紫外線を照射することにより、形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シート。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の金属薄膜付セラミックグリーンシート用剥離シートと、
    前記剥離シートの前記剥離処理層の上に、所定のパターンとして形成されている金属薄膜と、
    前記金属薄膜を含む前記剥離処理層の上に形成され、セラミック粉末がバインダーに分散されているセラミック粉末分散層とを備えていることを特徴とする、金属薄膜付セラミックグリーンシート。
  8. 請求項7に記載の金属薄膜付セラミックグリーンシートの前記剥離シートを剥離する剥離工程、
    前記剥離シートが剥離された金属薄膜付きセラミックグリーンシートを複数積層する積層工程、
    積層された複数の前記金属薄膜付きセラミックグリーンシートを焼成する工程を備えることを特徴とする、セラミックコンデンサの製造方法。
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