JP2004082711A - 金属箔付フィルム、及び、回路形成用転写フィルム - Google Patents
金属箔付フィルム、及び、回路形成用転写フィルム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しており、粘着剤層に光が照射されることにより、容易に金属箔を剥離することができる金属箔付フィルム、及び、光が照射されることにより、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができる回路形成用転写フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルム、及び、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔及び上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属箔及び上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする金属箔付フィルム及び回路形成用転写フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルム、及び、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔及び上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属箔及び上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする金属箔付フィルム及び回路形成用転写フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属箔付フィルム、及び、回路形成用転写フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化が進んでいるが、携帯情報端末の発達やコンピュータを持ち運んで操作する所謂モバイルコンピューティングの普及によって、一層小型化が進み、これら電子機器に内蔵される多層配線基板には、一層の小型化、薄型化、回路の高精細化等が要求されている。
【0003】
又、通信機器に代表されるように、高速動作が求められる電子機器が広く使用されるようになってきたが、このような電子機器に対応するために、高速動作に適した多層配線基板が求められている。高速動作が求められるということは、高い周波数の信号に対して正確なスイッチングが可能である等、種々の要求を含んでいる。例えば、高速動作を行うためには、多層配線基板の配線の長さを短くすると共に、配線の幅を細くし、且つ、配線の間隙を小さくして、電気信号の伝搬に要する時間を短縮することが必要である。このように、高速動作に適応させるため、多層配線基板には、小型化、薄型化及び回路の高精細化(回路の高密度化)が要求されている。
【0004】
ところで、上述した要求を満足するような多層配線基板の製造方法として、ビルドアップ法が知られている。このビルドアップ法によれば、先ず、ガラスエポキシ複合材料等からなる絶縁基板の両主面に回路パターンを形成すると共に、これらの回路パターンと電気的に接合するスルーホール導体を形成することにより、コア基板を作製する。次に、このコア基板の表面に感光性樹脂を塗布して絶縁層を形成し、露光、現像を行うことにより、絶縁層にバイアホール用開口を形成した後、このバイアホール用開口の表面を含む絶縁層の全表面に、銅等のメッキ層を形成する。次に、メッキ層の表面に感光性レジストを塗布し、露光、現像、エッチング、レジスト除去の一連の作業を行って、回路パターン(バイアホール導体)を形成する。そして、必要により、上述した場合と同様に、絶縁層の形成及びレジストによる回路パターンの形成を繰り返して行うことにより、コア基板上に複数の回路基板が積層され、これらの回路パターンがバイアホール導体で接続された多層構造の配線基板が得られる。
【0005】
又、最近では、感光性樹脂を用いて絶縁層をコア基板上に積層する代わりに、未硬化の熱硬化性樹脂が塗布された銅箔をコア基板上に積層するビルドアップ法も開発されている。このようなビルドアップ法では、先ず、熱プレス等の方法により、コア基板の表面に未硬化の熱硬化性樹脂層を間に挟んで銅箔を貼り付けた後、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させることにより、表面に銅箔を有する絶縁層を形成する。次に、炭酸ガスレーザ等により、銅箔及び絶縁層にバイアホール用開口を形成し、更に前述した方法と同様にして、メッキ層の形成、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト除去の一連の作業を行うことにより、回路パターン(バイアホール導体)を形成する。そして、必要により、これらの工程を繰り返すことによって、コア基板上に複数の回路基板が積層された多層構造の配線基板が得られる。
【0006】
しかし、このようなビルドアップ法により多層配線基板を製造すると、銅箔の不要な部分をエッチングにより除去することによって、回路パターンを形成するため、絶縁層がエッチング液、レジスト除去液等の薬液に曝され、特性の変化や劣化を起こすという問題点がある。
【0007】
このような問題点を解決するために、樹脂フィルム上で金属箔から回路パターンを形成し、この回路パターンを絶縁層に転写する方法が種々検討されており、例えば、樹脂フィルム上に粘着剤層を設け、この粘着剤層上に回路パターン状の金属層を設けた転写シートが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示されている転写シートでは、回路パターン状の金属層が形成されていない表面の粘着剤層を低粘着力化するために、粘着剤層を除去したり、粘着剤層に光を照射する等の工程が必要であり、又、場合によっては、金属層と粘着剤層との粘着力を低下させて金属層の転写性を向上させるために、更に、粘着剤層に紫外線を照射するといった煩雑な工程が必要であって、生産性が悪いという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−178255号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しており、粘着剤層に光が照射されることにより、容易に金属箔を剥離することができる金属箔付フィルム、及び、光が照射されることにより、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができる回路形成用転写フィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明(本発明)による回路形成用転写フィルムは、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明による金属箔付フィルムは、上記請求項1に記載の金属箔付フィルムにおいて、粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の下記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることを特徴とする。
理論ラジカル発生量(mol/g)=(A×B)/C 式(1)
ここで、A:粘着剤層1g中の光ラジカル重合開始剤量(g)
B:光ラジカル重合開始剤1分子から発生可能なラジカル数(個)
C:光ラジカル重合開始剤の分子量
【0014】請求項4に記載の発明による回路形成用転写フィルムは、上記請求項2に記載の回路形成用転写フィルムにおいて、粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の上記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層が、光が照射されることより硬化し、硬化後の上記粘着剤層の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上である金属箔付フィルムである。
【0016】
本発明の金属箔付フィルムの用途としては特に限定されず、広い範囲にわたって用いることができるが、中でも、金属箔を回路パターン状に加工することで、回路基板の製造における回路形成用転写フィルムとして好適に用いることができる。従って、以下において、本発明の金属箔付フィルムは、回路基板の製造における回路形成用転写フィルムとして用いるための金属箔付フィルムであるとして説明する。
【0017】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着されている。
【0018】
上記樹脂フィルムとしては特に限定されず、適度な柔軟性を有している公知の樹脂フィルムを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂からなるフィルム等が挙げられる。
【0019】
上記樹脂フィルムの厚さの下限は10μm、上限は500μmであることが好ましく、下限は20μm、上限は300μmであることがより好ましい。上記樹脂フィルムの厚さが10μm未満であると、金属箔を加工して回路パターンを形成する際、樹脂フィルムの変形や折れ曲がり等が発生することにより、回路パターンの断線が生じやすくなることがある。一方、上記樹脂フィルムの厚さが500μmを超えると、柔軟性が損なわれて、樹脂フィルムを金属箔(回路パターン)から引き剥がしにくくなることがある。
【0020】
上記金属箔を構成する材料としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属、又は、これらの低抵抗金属を少なくとも1種含む合金等が挙げられる。
【0021】
上記金属箔の厚さの下限は1μm、上限は100μmであることが好ましく、下限は5μm、上限は50μmであることがより好ましい。上記金属箔の厚さが1μm未満であると、上記金属箔から形成される回路パターンの抵抗率が高くなって、回路基板の製造に不適当となることがある。一方、上記金属箔の厚さが100μmを超えると、本発明の金属箔付フィルムを用いて多層の回路基板を製造した場合、絶縁層の変形が大きくなることがある。又、金属箔から形成される回路パターンを絶縁シートに転写させる際に、上記回路パターンの埋め込み量が多くなり、絶縁シートの歪みが大きくなってしまい、粘着剤層を硬化させる時に変形を生じやすくなる等の不都合を生じることがある。更に、金属箔をエッチングして回路パターンを形成する際、エッチングが困難となり、精度の高い微細な回路パターンを得ることが困難となることもある。
【0022】
又、上記金属箔には、後述する粘着剤層との密着力を高めるために、その表面に粗面加工が施され、上記樹脂フィルム側の表面に微細な凹凸が形成されていても良い。具体的には、金属箔の表面に、JIS B 0601「表面粗さ−定義及び表示」に表面粗さを表すパラメーターとして定義されている算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.7μm程度となるように微細な凹凸が形成されていることが好ましい。
【0023】
更に、上記金属箔の樹脂フィルム側と反対側の表面にも、絶縁シートと回路パターンとの接合力を高めるために、上記と同様の粗面加工が施され、上記と同様の算術平均粗さ(Ra)の微細な凹凸が形成されていても良い。
【0024】
本発明の金属箔付フィルムに用いられる粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものである。
【0025】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されず、例えば、粘着性ポリマーと、光重合性官能基を含有する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。又、光重合性官能基を含有する粘着性ポリマーを用いる場合には、上記粘着剤は、上記光重合性化合物を含有していなくても良い。
【0026】
上記粘着性ポリマーは、上記粘着剤に感圧接着性(粘着性)を与えるポリマーであり、このような粘着性ポリマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、酢酸ビニル、酢酸ビニル−エチレン共重合体系、エチレン−アクリル酸エチル共重合体系、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系、ウレタン系、合成ゴム系、ポリブチラール系、エポキシ系等のポリマー等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル系ポリマーが特に好ましい。これらの粘着性ポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。尚、本発明で言う(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0027】
上記光重合性官能基を含有する光重合性化合物は、光が照射されることにより重合・硬化し、粘着剤層の金属箔に対する接着力を、光が照射される前よりも低下させるように作用するものである。このような光重合性官能基を含有する光重合性化合物としては特に限定されず、例えば、光ラジカル重合性官能基や光カチオン重合性官能基等を含有する光重合性化合物等が挙げられる。
【0028】
上記光ラジカル重合性官能基としては特に限定されず、例えば、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基等、その内部にラジカル重合性不飽和二重結合を有するものが挙げられ、このような光ラジカル重合性官能基を含有する光重合性化合物は、光が照射されることにより光ラジカル重合が進行する。
【0029】
又、上記光カチオン重合性官能基としては特に限定されず、例えば、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、水酸基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等が挙げられる。このような光カチオン重合性官能基を含有する光重合性化合物は、光が照射されることにより光カチオン重合が進行する。
【0030】
上記光重合性官能基を含有する光重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。又、これらの光重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
上記光重合開始剤は、光が照射されることにより活性化され、例えばラジカルやカチオンなどの光重合開始物質を発生させるものである。上記光重合開始剤は、光が照射されることにより活性化され、光重合開始物質を発生させるので、比較的低エネルギーで上記光重合性化合物の重合を開始させることができる。このような光重合開始剤としては、上記光重合性化合物の重合を開始することができるものであれば特に限定されず、例えば、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
上記光ラジカル重合開始剤としては、上記光ラジカル重合性官能基のラジカル重合を開始し得るものであれば特に限定されず、例えば、4−(2−ヒドロキシエトシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタールなどのケタール誘導体化合物、ハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキシド、アシルフォスフォナート、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルベンジルフォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0033】
又、上記光カチオン重合開始剤としては、上記光カチオン重合性官能基のカチオン重合を開始し得るものであれば特に限定されず、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
上記粘着剤中に含まれる光重合性官能基と光重合開始剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、上記光ラジカル重合性官能基と上記光ラジカル重合開始剤との組み合わせ、上記光カチオン重合性官能基と上記光カチオン重合開始剤との組み合わせ等が挙げられる。
【0035】
本発明の金属箔付フィルムにおいては、上記粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の下記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることが好ましい。尚、本発明で言う理論ラジカル発生量とは、粘着剤層中に含有される光ラジカル重合開始剤から発生し得る全てのラジカル量のことを意味する。
理論ラジカル発生量(mol/g)=(A×B)/C 式(1)
ここで、A:粘着剤層1g中の光ラジカル重合開始剤量(g)
B:光ラジカル重合開始剤1分子から発生可能なラジカル数(個)
C:光ラジカル重合開始剤の分子量
【0036】
粘着剤層の上記理論ラジカル発生量を1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲とすることにより、光照射による粘着剤層のラジカル重合反応をより効率的に進行させることが可能となり、少ない光量で粘着剤層のラジカル重合反応を行うことができる。
【0037】
粘着剤層の上記理論ラジカル発生量が1×10−4mol/g未満であると、粘着剤層のラジカル重合反応を効率的に進行させることができなくなることがある。一方、粘着剤層の上記理論ラジカル発生量が1×10−2mol/gを超えると、粘着剤層中の光ラジカル重合開始剤の含有量が多すぎることになって、経済的に不利となることがある。
【0038】
本発明の金属箔付フィルムにおいては、光が照射されて硬化する前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることが必要であり、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上である。
【0039】
硬化前の粘着剤層のゲル分率が10重量%未満であると、硬化前の粘着剤層を構成する粘着剤の凝集力が低いため、金属箔を加工して形成される回路パターンの細線化に対応することができなくなり、又、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、回路形成用転写フィルムを絶縁シートに接着し、光を照射して上記粘着剤層を硬化させた後、上記回路形成用転写フィルムを構成する樹脂フィルムと粘着剤層とを剥離する際に、絶縁シート上に粘着剤層が残ったり、回路パターンが位置ズレしたりする等の不具合が生じる。
【0040】
本発明の金属箔付フィルムにおいては、粘着剤中に含有される前記粘着性ポリマーを架橋させることにより、硬化前の粘着剤層のゲル分率を10重量%以上とすることができる。粘着性ポリマーを架橋させる方法としては特に限定されず、例えば、粘着性ポリマーと架橋剤とを反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
上記架橋剤としては、粘着性ポリマーと反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、イソシアネート系、メラミン系、アジリジン系、エポキシ系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、金属系などの架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0042】
又、光照射による硬化後の粘着剤層のゲル分率は、特に限定されるものではないが、40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上である。硬化後の粘着剤層のゲル分率が40重量%未満であると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、絶縁シート上や回路パターン上に粘着剤層が残るといった不具合が生じることがある。
【0043】
上記粘着剤層のゲル分率は、例えば、以下の方法により測定される。
[ゲル分率の測定方法]
先ず、溶媒として有機溶剤を用い、一定量精秤した硬化前又は硬化後の粘着剤層を、その粘着剤層の50〜500倍量の上記溶媒中に浸漬して、一昼夜振盪下で溶媒に膨潤させる。次に、不溶解分を200メッシュ網にて濾別し、溶媒を揮発させた後、不溶解分の重量を測定する。ゲル分率は、得られた不溶解分の重量に基づき、下記式(2)により算出される。尚、上記溶媒として用いられる有機溶剤としては、硬化前又は硬化後の粘着剤層中に含有される未架橋成分や未硬化成分を溶解可能なものであれば特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
ゲル分率(重量%)=(W2/W1)×100 式(2)
ここで、W1:溶媒浸漬前の重量(g)
W2:溶媒浸漬後の不溶解分の乾燥重量(g)
【0044】
本発明で用いられる粘着剤(層)中には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、フィラー(充填剤)、軟化剤(可塑剤)、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤等の公知の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が含有されていても良い。
【0045】
本発明の金属箔付フィルムを作製する方法としては特に限定されず、例えば、樹脂フィルムに粘着剤を塗工して粘着剤層を形成し、金属箔と貼り合せる方法、金属箔に粘着剤を塗工して粘着剤層を形成し、樹脂フィルムと貼り合せる方法等が挙げられる。
【0046】
上記粘着剤の塗工による粘着剤層の形成方法としては特に限定されず、例えば、粘着剤の溶剤溶液、水溶液又はエマルジョンを樹脂フィルム又は金属箔に塗工し、溶剤又は水を乾燥により揮発させて粘着剤層を形成する方法、粘着剤を加熱溶融し、この加熱溶融した粘着剤を樹脂フィルム又は金属箔に塗工し、冷却することにより粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。
【0047】
上記粘着剤により形成される粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、1〜100μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みが1μm未満であると、金属箔が樹脂フィルム上に十分な接着力で保持されず、金属箔が剥がれやすくなることがある。一方、粘着剤層の厚みが100μmを超えると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、回路パターンを転写させた後に樹脂フィルムを引き剥がす際、粘着剤層が回路パターン上に残りやすくなる等の不都合を生じることがある。
【0048】
本発明の金属箔付フィルムは、光が照射されることにより粘着剤層が硬化し、粘着剤層と金属箔との接着力が、光が照射される前よりも、硬化した後の方が低下するものであるが、硬化前における上記粘着剤層と金属箔との接着力の下限は50g/25mm(約0.5N/25mm)、上限は4000g/25mm(約40.0N/25mm)であることが好ましく、更に、下限は100g/25mm(約1.0N/25mm)、上限は2000g/25mm(約20.0N/25mm)であることがより好ましい。硬化前における粘着剤層と金属箔との接着力が上記範囲であると、金属箔にエッチング等を施して回路パターンを形成する際にも、上記金属箔が剥離することなく保持される。
【0049】
又、硬化後における上記粘着剤層と金属箔との接着力の下限は0g/25mm(0N/25mm)、上限は300g/25mm(3.0N/25mm)であることが好ましく、更に、下限は0g/25mm(0N/25mm)、上限は200g/25mm(2.0N/25mm)であることがより好ましい。硬化後における粘着剤層と金属箔との接着力が上記範囲であると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製における回路パターンの転写時に、樹脂フィルムを容易に引き剥がすことができる。
【0050】
尚、上記粘着剤層と金属箔との接着力は、JIS Z 0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して、樹脂フィルムを引き剥がす時の180度引き剥がし粘着力試験を行うことにより、測定することができる。
【0051】
本発明の金属箔付フィルムによれば、粘着剤層に光が照射される前には、金属箔は適度な粘着力で樹脂フィルムと接着されており、粘着剤層に光が照射されると、粘着剤層が硬化して接着力が低下し、容易に金属箔と樹脂フィルムとを剥離することができる。
【0052】
又、上記粘着剤層を構成する粘着剤は、エッチングに際して用いられる薬液に対する耐性を有し、且つ、薬液の染み込みも抑制されているため、粘着剤層に光が照射される前に、金属箔を以下のような方法で回路パターン状にエッチングした際、金属箔が剥がれる等の不具合が完全に防止される。従って、この金属箔のエッチングにより、微細で高密度の回路パターンを高精度で形成することができる。
【0053】
本発明の金属箔付フィルムは、回路基板の製造における回路形成用転写フィルムとして好適に用いることができ、このような回路形成用転写フィルムも本発明の1つである。
【0054】
本発明の回路形成用転写フィルムは、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率は、10重量%以上である。
【0055】
本発明の回路形成用転写フィルムは、金属箔が回路パターン状の金属層であること以外は、上述した本発明の金属箔付フィルムと同様の構成である。
【0056】
本発明の回路形成用転写フィルムは、本発明の金属箔付フィルムの金属箔を回路パターン状に成形することにより得られる。上記金属箔を回路パターン状に成形する方法としては特に限定されず、例えば、公知のレジスト法が挙げられる。
【0057】
上記レジスト法により上記金属箔を回路パターン状に成形するには、先ず、上記金属箔の全面にフォトレジストを塗布し、所定パターンのマスクを介して露光を行い、現像後、プラズマエッチングやケミカルエッチングなどのエッチングにより、非パターン部(フォトレジストが除去されている部分)の金属箔を除去し、金属箔を回路パターン状に成形する。又、スクリーン印刷等により、金属箔の表面に所定の回路パターン状にフォトレジストを塗布し、次いで、上記の場合と同様に、露光後にエッチングすることによっても、金属箔を回路パターン状に成形することができる。
【0058】
上記エッチング終了後においては、回路パターン状の金属層上にレジストが残存するが、レジスト除去液で残存するレジストを除去し、洗浄することにより、上記金属箔を回路パターン状の金属層とすることができ、本発明の回路形成用転写フィルムを得ることができる。
【0059】
本発明の回路形成用転写フィルムによれば、粘着剤層に光が照射される前には、回路パターン状の金属層は適度な粘着力で樹脂フィルムと接着されており、上記粘着剤層に光が照射されると、粘着剤層が硬化して接着力が低下し、容易に回路パターン状の金属層と樹脂フィルムとを剥離することができる。従って、絶縁シートと接する粘着剤層部分を光の照射等で低接着力化する等の複雑な工程が不要であり、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができ、絶縁シート上に微細で高密度な回路パターンを高精度で形成することができる。
【0060】
又、本発明の回路形成用転写フィルムは、小型、薄型及び高密度の微細回路を高精度で有する多層配線基板の製造に極めて有利であり、しかも、絶縁シートの作製と回路パターンの形成とを別個の工程で同時に進行させることができるため、生産性(生産効率)も著しく向上する。
【0061】
本発明の回路形成用転写フィルムを用いた回路基板は、前述した本発明の金属箔付フィルムを作製する工程、上述した本発明の回路形成用転写フィルムを作製する工程に続き、絶縁シート上に本発明の回路形成用転写フィルムの回路パターン状の金属層を接着させる工程と、上記回路形成用転写フィルムの樹脂フィルム側から粘着剤層に光を照射して上記粘着剤層を硬化させ、上記粘着剤層の金属層に対する接着力を光照射前よりも低下させる工程と、上記樹脂フィルムと粘着剤層とを金属層から剥離し、上記回路パターンを絶縁シート上に転写する工程とを行うことにより、作製することができる。
【0062】
本発明の回路形成用転写フィルムを用いた回路基板を作製するには、先ず、前述した本発明の金属箔付フィルムを作製する工程、上述した本発明の回路形成用転写フィルムを作製する工程に続き、絶縁シート上に本発明の回路形成用転写フィルムの回路パターン状の金属層を接着させる工程を行う。
【0063】
上記絶縁シートとしては特に限定されず、例えば、セラミックグリーンシートや半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シート等が挙げられる。
【0064】
上記セラミックグリーンシートとしては特に限定されず、例えば、アルミナなどのセラミック粉末、バインダー樹脂及び可塑剤等からなる組成物をドクターブレード法等によってシート状に成形したもの等が挙げられる。
【0065】
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ビスマレイミドトリアジン(BT)レジンなどのビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、中でも、常温(室温)で液状の熱硬化性樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0066】
上記絶縁シートが半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる場合、強度をより向上させるために、上記熱硬化性樹脂中にフィラーを含有させることが好ましい。上記フィラーとしては特に限定されず、例えば、有機質又は無機質の粉末、繊維体等が挙げられる。これらのフィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0067】
上記有機質フィラーとしては特に限定されず、例えば、アラミド繊維、セルロース繊維等が挙げられる。これらの有機質フィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0068】
上記無機質フィラーとしては特に限定されず、例えば、SiO2 、Al2 O3 、ZrO2 、TiO2 、AlN、SiC、BaTiO3 、SrTiO3 、ゼオライト、CaTiO3 、ホウ酸アルミニウム等が挙げられる。これらの無機質フィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0069】
上記無機質フィラーは、特に限定されるものではないが、平均粒子径の下限が20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは7μm以下である。
【0070】
又、上記無機質フィラーは、略球形の粉末状であることが好ましいが、平均アスペクト比が2以上、特に5以上の繊維状のものであっても良い。
【0071】
上記繊維体のフィラーとしては特に限定されず、例えば、ガラス等の繊維体が挙げられ、これら繊維体は、織布、不織布等の任意の形状や性状のものであっても良い。又、これらの繊維体のフィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0072】
上記熱硬化性樹脂とフィラーとの混合割合は、特に限定されるものではないが、体積比で、熱硬化性樹脂/フィラー=15/85〜65/35であることが好ましい。
【0073】
上記絶縁シートが半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる場合、この絶縁シートは、上記熱硬化性樹脂又は上記熱硬化性樹脂と上記フィラーとを含有するスラリーを、ドクターブレード法等によってシート状に成形し、半硬化状態となる程度に加熱することによって得ることができる。
【0074】
又、上記絶縁シートには、炭酸ガスレーザ等によってバイアホールを形成し、このバイアホール内に、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属の粉末を充填することにより、バイアホール導体を形成しておくことが好ましい。
【0075】
このような絶縁シート上に本発明の回路形成用転写フィルムの金属層を接着させる工程においては、セラミックグリーンシートや半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シートに回路形成用転写フィルムの回路パターンが対面するように重ね合わせ、特に、絶縁シートに上記バイアホール導体が形成されている場合には、バイアホール導体の表面露出部分と回路パターンとが重なり合うように位置設定する。
【0076】
上記絶縁シートと回路形成用転写フィルムとの接着方法としては特に限定されず、例えば、プレスによるアンカー効果(投錨効果)で接着する方法、絶縁シート及び/又は回路形成用転写フィルムの金属層に接着剤を塗布し、貼り合せる方法等が挙げられる。中でも、半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シートにプレスにより接着する際には、適度な温度で加熱プレスを行う方法が好ましい。熱硬化性樹脂の一部又は全部を硬化させることにより、接着力が増大し、回路パターンの位置ズレや転写不良といった不具合が生じにくくなるからである。
【0077】
次に、上記回路形成用転写フィルムの樹脂フィルム側から粘着剤層に光を照射して上記粘着剤層を硬化させ、金属層に対する接着力を光照射前よりも低下させる工程を行う。
【0078】
この工程においては、粘着剤層中の前記光重合性官能基を含有する光重合性化合物を重合させるための光を樹脂フィルム側から粘着剤層に照射するが、この照射する光の種類としては、粘着剤層中の光重合性官能基を重合させることができるものであれば特に限定されず、例えば、紫外線や可視光線等が挙げられ、中でも、回路形成用転写フィルムの取扱い性や光の有するエネルギー量等が良好であることから、紫外線を用いることが好ましい。
【0079】
上記光の照射は、上記絶縁シート上に上記回路形成用転写フィルムの金属層を接着させる工程の前に行っても良いし、上記工程の後に行っても良い。
【0080】
上記光の照射量や照射時間は、粘着剤層を硬化させることができる照射量や照射時間であれば特に限定されず、例えば、光として紫外線を照射する場合には、0.1mJ/cm2 以上の照射量で1秒〜1時間の照射時間であることが好ましい。
【0081】
その後、上記樹脂フィルムと粘着剤層とを金属層から剥離し、上記回路パターンを絶縁シート上に転写する工程を行う。この工程を行うことにより、回路パターンが絶縁シート上に転写され、本発明の回路形成用転写フィルムを用いた回路基板を作製することができる。
【0082】
上記樹脂フィルムと粘着剤層とを金属層から剥離した後、金属層上に粘着剤層が残存していると、回路の導通等に不具合を起こすことがあるので、金属層上には粘着剤層が残存していないことが好ましい。
【0083】
こうして得られた回路基板は、必要に応じて、複数を重ねての積層、焼成、加熱硬化、加圧等を行うことにより、単層の回路基板はもとより、多層の回路基板を製造することができる。
【0084】
【作用】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層が、光が照射されることより硬化し、硬化後の上記粘着剤層の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものとなされており、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上となされているので、金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しており、金属箔を加工して形成される回路パターンの細線化に対応できると共に、粘着剤層に光が照射されることにより、容易に金属箔を剥離することができるものとなる。
【0085】
本発明の回路形成用転写フィルムは、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層が、光が照射されることより硬化し、硬化後の上記粘着剤層の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものとなされており、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上となされているので、回路形成用転写フィルムを絶縁シートに接着し、光を照射して上記粘着剤層を硬化させた後、上記樹脂フィルムと粘着剤層とを剥離する際に、絶縁シート上への粘着剤層の残存や回路パターンの位置ズレ等を起こすことなく、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができるものとなる。
【0086】
又、本発明の金属箔付フィルム及び本発明の回路形成用転写フィルムは、粘着剤層を光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤から形成し、且つ、前記式(1)で算出される上記粘着剤層の理論ラジカル発生量を1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲とすることにより、上記効果がより確実なものとなる。
【0087】
【発明の実施の形態】
本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
ブチルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、カルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られたカルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液にグリシジルメタクリレート5重量部を添加し、40℃に加熱して、アクリルポリマー中のカルボン酸基とグリシジルメタクリレートのグリシジル基とを反応させ、カルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液を得た。次に、得られたカルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部及び4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン0.5重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0089】
上記で得られた粘着剤溶液を厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層付き樹脂フィルムを作製した。次に、厚み12μmの電解銅箔と得られた粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層面とが接着するようにラミネートを行って、銅箔付フィルムを作製した。
【0090】
又、シリコン離型フィルムの離型面側表面にも上記で得られた粘着剤溶液を粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層を形成し、ゲル分率測定用粘着剤層を作製した。上記で得られた銅箔付フィルム及びゲル分率測定用粘着剤層は、23℃の雰囲気下で1週間養生を行った。
【0091】
次に、得られた銅箔付フィルムの銅箔側にドライフィルムレジストをラミネートし、線幅30μm、線間隔30μmの回路パターン形状のマスクを通して露光、現像を行い、エッチング、レジスト剥離、洗浄工程を経て、回路形成用転写フィルムを作製した。
【0092】
上記で得られた回路形成用転写フィルムの銅箔回路パターン側をガラスエポキシからなる半硬化状態の絶縁シートと位置合わせして、130℃で熱プレスを行い、銅箔回路パターンと絶縁シートとを接着させた。次に、超高圧水銀灯を用いて、PETフィルム側より粘着剤層に紫外線を1.5J/cm2 の照射量となるように照射して、粘着剤層の硬化を行い、PETフィルムと粘着剤層とを絶縁シート及び銅箔より剥離し、回路基板を作製した。
【0093】
(実施例2)
実施例1で調製した粘着剤溶液に、更に、ペンタエリスリトールトリアクリレート10重量部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0094】
(実施例3)
ブチルアクリレート90重量部、ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、グリシジルメタクリレート5重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、水酸基とグリシジル基とを有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られた水酸基とグリシジル基とを有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部及び芳香族スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(商品名「オプトマーSP−170」、旭電化工業社製)1重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0095】
上記で得られた粘着剤溶液を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0096】
(実施例4)
ブチルアクリレート90重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、水酸基を有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られた水酸基を有するアクリルポリマー溶液に2−イソシアネートエチルメタクリレート3重量部を添加し、40℃に加熱して、アクリルポリマー中の水酸基と2−イソシアネートエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、水酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液を得た。次に、得られた水酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部及び4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(分子量224、1分子から発生可能なラジカル数2)10重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0097】
上記で得られた粘着剤溶液を厚み25μmのPETフィルムの表面に粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層付き樹脂フィルムを作製した。得られた粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層の理論ラジカル発生量は7.7×10−4mol/gであった。
【0098】
次に、厚み12μmの電解銅箔と得られた粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層面とが接着するようにラミネートを行って、銅箔付フィルムを作製した。
【0099】
又、シリコン離型フィルムの離型面側表面にも上記で得られた粘着剤溶液を粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層を形成し、ゲル分率測定用粘着剤層を作製した。上記で得られた銅箔付フィルム及びゲル分率測定用粘着剤層は、23℃の雰囲気下で1週間養生を行った。
【0100】
次に、得られた銅箔付フィルムの銅箔側にドライフィルムレジストをラミネートし、線幅30μm、線間隔30μmの回路パターン形状のマスクを通して露光、現像を行い、エッチング、レジスト剥離、洗浄工程を経て、回路形成用転写フィルムを作製した。
【0101】
次に、超高圧水銀灯を用いて、上記で得られた回路形成用転写フィルムのPETフィルム側より粘着剤層に紫外線を0.5J/cm2 の照射量となるように照射して、粘着剤層の硬化を行った。次に、ガラスエポキシからなる半硬化状態の絶縁シートと位置合わせして、130℃で熱プレスを行い、銅箔回路パターンと絶縁シートとを接着させた後、PETフィルムと粘着剤層とを絶縁シート及び銅箔から剥離して、回路基板を作製した。
【0102】
(比較例1)
カルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液に添加したトリレンジイソシアネートを添加しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着剤溶液、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0103】
(比較例2)
ブチルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、カルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られたカルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0104】
上記で得られた粘着剤溶液を用いたこと及び粘着剤層への紫外線照射を行わなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0105】
実施例1〜実施例4、及び、比較例1及び比較例2で得られた銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層及び回路基板の物性を以下の方法で測定した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0106】
(1)銅箔付フィルムの接着力
▲1▼光硬化前の剥離接着力
23℃の雰囲気下で1週間養生した銅箔付フィルムを供試体として用い、測定温度23℃、剥離速度300mm/分の条件で、上記銅箔付フィルムの180度角剥離接着力(N/25mm)を測定した。
▲2▼光硬化後の剥離接着力
超高圧水銀灯を用いて、23℃の雰囲気下で1週間養生した銅箔付フィルムのPETフィルム側より粘着剤層に紫外線を1.5J/cm2 の照射量となるよう照射して粘着剤層を硬化させた後、測定温度23℃、剥離速度300mm/分の条件で、上記銅箔付きフィルムの180度角剥離接着力(N/25mm)を測定した。
【0107】
(2)硬化前の粘着剤層のゲル分率
23℃の雰囲気下で1週間養生したゲル分率測定用粘着剤層を0.5g程度精秤し、ガラス瓶中で酢酸エチル50mlに浸漬して、23℃で12時間振盪した。次に、200メッシュの籠状に加工した金網を精秤し、その中にガラス瓶の内容物を移した。次いで、金網に残った酢酸エチル不溶の膨潤物を110℃のオーブン中で2時間乾燥した後、常温まで冷却し、再び精秤を行い、前記式(2)によりゲル分率(重量%)を算出した。
【0108】
(3)転写性
マイクロスコープを用いて、回路基板の銅箔回路パターンを目視で観察し、浮きや剥がれの有無を確認して、下記判定基準により転写性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥銅箔回路パターンの浮きや剥がれは全く認められず、優れた転写性であった。
×‥‥銅箔回路パターンの浮きや剥がれが認められ、転写性が悪かった。
【0109】
(4)糊残り
マイクロスコープを用いて、回路基板の銅箔回路パターン及び絶縁シートを目視で観察し、糊残り(粘着剤層の残存)の有無を確認して、下記判定基準により糊残りを評価した。
〔判定基準〕
○‥‥銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残りは全く認められなかった。
×‥‥銅箔回路パターン及び/又は絶縁シートに糊残りが認められた。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から明らかなように、本発明による実施例1〜実施例4の回路形成用転写フィルムを用いて作製した回路基板は、いずれも銅箔回路パターンの転写性に優れ、且つ、銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残り(粘着剤層の残存)が全く認められなかった。
【0112】
これに対し、硬化前の粘着剤層のゲル分率が10重量%未満であった比較例1の回路形成用転写フィルムを用いて作製した回路基板は、銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残りが認められた。又、粘着剤層への紫外線照射を行わず、粘着剤層を硬化させなかった比較例2の回路形成用転写フィルムを用いて作製した回路基板は、銅箔回路パターンの転写性が悪く、且つ、銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残りが認められた。
【0113】
【発明の効果】
本発明の金属箔付フィルムは、上記のような構成となされているので、粘着剤層に光が照射される前は金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しているが、粘着剤層に光が照射されることにより粘着剤層が硬化し、容易に金属箔と樹脂フィルムとを剥離することができる。
【0114】
又、本発明の回路形成用転写フィルムは、上記のような構成となされているので、粘着剤層に光が照射されることにより粘着剤層が硬化し、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターンの転写性を向上させることができると共に、絶縁シート上に微細で高密度な回路パターンを高精度で形成することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属箔付フィルム、及び、回路形成用転写フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化が進んでいるが、携帯情報端末の発達やコンピュータを持ち運んで操作する所謂モバイルコンピューティングの普及によって、一層小型化が進み、これら電子機器に内蔵される多層配線基板には、一層の小型化、薄型化、回路の高精細化等が要求されている。
【0003】
又、通信機器に代表されるように、高速動作が求められる電子機器が広く使用されるようになってきたが、このような電子機器に対応するために、高速動作に適した多層配線基板が求められている。高速動作が求められるということは、高い周波数の信号に対して正確なスイッチングが可能である等、種々の要求を含んでいる。例えば、高速動作を行うためには、多層配線基板の配線の長さを短くすると共に、配線の幅を細くし、且つ、配線の間隙を小さくして、電気信号の伝搬に要する時間を短縮することが必要である。このように、高速動作に適応させるため、多層配線基板には、小型化、薄型化及び回路の高精細化(回路の高密度化)が要求されている。
【0004】
ところで、上述した要求を満足するような多層配線基板の製造方法として、ビルドアップ法が知られている。このビルドアップ法によれば、先ず、ガラスエポキシ複合材料等からなる絶縁基板の両主面に回路パターンを形成すると共に、これらの回路パターンと電気的に接合するスルーホール導体を形成することにより、コア基板を作製する。次に、このコア基板の表面に感光性樹脂を塗布して絶縁層を形成し、露光、現像を行うことにより、絶縁層にバイアホール用開口を形成した後、このバイアホール用開口の表面を含む絶縁層の全表面に、銅等のメッキ層を形成する。次に、メッキ層の表面に感光性レジストを塗布し、露光、現像、エッチング、レジスト除去の一連の作業を行って、回路パターン(バイアホール導体)を形成する。そして、必要により、上述した場合と同様に、絶縁層の形成及びレジストによる回路パターンの形成を繰り返して行うことにより、コア基板上に複数の回路基板が積層され、これらの回路パターンがバイアホール導体で接続された多層構造の配線基板が得られる。
【0005】
又、最近では、感光性樹脂を用いて絶縁層をコア基板上に積層する代わりに、未硬化の熱硬化性樹脂が塗布された銅箔をコア基板上に積層するビルドアップ法も開発されている。このようなビルドアップ法では、先ず、熱プレス等の方法により、コア基板の表面に未硬化の熱硬化性樹脂層を間に挟んで銅箔を貼り付けた後、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させることにより、表面に銅箔を有する絶縁層を形成する。次に、炭酸ガスレーザ等により、銅箔及び絶縁層にバイアホール用開口を形成し、更に前述した方法と同様にして、メッキ層の形成、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト除去の一連の作業を行うことにより、回路パターン(バイアホール導体)を形成する。そして、必要により、これらの工程を繰り返すことによって、コア基板上に複数の回路基板が積層された多層構造の配線基板が得られる。
【0006】
しかし、このようなビルドアップ法により多層配線基板を製造すると、銅箔の不要な部分をエッチングにより除去することによって、回路パターンを形成するため、絶縁層がエッチング液、レジスト除去液等の薬液に曝され、特性の変化や劣化を起こすという問題点がある。
【0007】
このような問題点を解決するために、樹脂フィルム上で金属箔から回路パターンを形成し、この回路パターンを絶縁層に転写する方法が種々検討されており、例えば、樹脂フィルム上に粘着剤層を設け、この粘着剤層上に回路パターン状の金属層を設けた転写シートが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示されている転写シートでは、回路パターン状の金属層が形成されていない表面の粘着剤層を低粘着力化するために、粘着剤層を除去したり、粘着剤層に光を照射する等の工程が必要であり、又、場合によっては、金属層と粘着剤層との粘着力を低下させて金属層の転写性を向上させるために、更に、粘着剤層に紫外線を照射するといった煩雑な工程が必要であって、生産性が悪いという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−178255号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しており、粘着剤層に光が照射されることにより、容易に金属箔を剥離することができる金属箔付フィルム、及び、光が照射されることにより、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができる回路形成用転写フィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明(本発明)による回路形成用転写フィルムは、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明による金属箔付フィルムは、上記請求項1に記載の金属箔付フィルムにおいて、粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の下記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることを特徴とする。
理論ラジカル発生量(mol/g)=(A×B)/C 式(1)
ここで、A:粘着剤層1g中の光ラジカル重合開始剤量(g)
B:光ラジカル重合開始剤1分子から発生可能なラジカル数(個)
C:光ラジカル重合開始剤の分子量
【0014】請求項4に記載の発明による回路形成用転写フィルムは、上記請求項2に記載の回路形成用転写フィルムにおいて、粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の上記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層が、光が照射されることより硬化し、硬化後の上記粘着剤層の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上である金属箔付フィルムである。
【0016】
本発明の金属箔付フィルムの用途としては特に限定されず、広い範囲にわたって用いることができるが、中でも、金属箔を回路パターン状に加工することで、回路基板の製造における回路形成用転写フィルムとして好適に用いることができる。従って、以下において、本発明の金属箔付フィルムは、回路基板の製造における回路形成用転写フィルムとして用いるための金属箔付フィルムであるとして説明する。
【0017】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着されている。
【0018】
上記樹脂フィルムとしては特に限定されず、適度な柔軟性を有している公知の樹脂フィルムを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂からなるフィルム等が挙げられる。
【0019】
上記樹脂フィルムの厚さの下限は10μm、上限は500μmであることが好ましく、下限は20μm、上限は300μmであることがより好ましい。上記樹脂フィルムの厚さが10μm未満であると、金属箔を加工して回路パターンを形成する際、樹脂フィルムの変形や折れ曲がり等が発生することにより、回路パターンの断線が生じやすくなることがある。一方、上記樹脂フィルムの厚さが500μmを超えると、柔軟性が損なわれて、樹脂フィルムを金属箔(回路パターン)から引き剥がしにくくなることがある。
【0020】
上記金属箔を構成する材料としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属、又は、これらの低抵抗金属を少なくとも1種含む合金等が挙げられる。
【0021】
上記金属箔の厚さの下限は1μm、上限は100μmであることが好ましく、下限は5μm、上限は50μmであることがより好ましい。上記金属箔の厚さが1μm未満であると、上記金属箔から形成される回路パターンの抵抗率が高くなって、回路基板の製造に不適当となることがある。一方、上記金属箔の厚さが100μmを超えると、本発明の金属箔付フィルムを用いて多層の回路基板を製造した場合、絶縁層の変形が大きくなることがある。又、金属箔から形成される回路パターンを絶縁シートに転写させる際に、上記回路パターンの埋め込み量が多くなり、絶縁シートの歪みが大きくなってしまい、粘着剤層を硬化させる時に変形を生じやすくなる等の不都合を生じることがある。更に、金属箔をエッチングして回路パターンを形成する際、エッチングが困難となり、精度の高い微細な回路パターンを得ることが困難となることもある。
【0022】
又、上記金属箔には、後述する粘着剤層との密着力を高めるために、その表面に粗面加工が施され、上記樹脂フィルム側の表面に微細な凹凸が形成されていても良い。具体的には、金属箔の表面に、JIS B 0601「表面粗さ−定義及び表示」に表面粗さを表すパラメーターとして定義されている算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.7μm程度となるように微細な凹凸が形成されていることが好ましい。
【0023】
更に、上記金属箔の樹脂フィルム側と反対側の表面にも、絶縁シートと回路パターンとの接合力を高めるために、上記と同様の粗面加工が施され、上記と同様の算術平均粗さ(Ra)の微細な凹凸が形成されていても良い。
【0024】
本発明の金属箔付フィルムに用いられる粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものである。
【0025】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されず、例えば、粘着性ポリマーと、光重合性官能基を含有する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。又、光重合性官能基を含有する粘着性ポリマーを用いる場合には、上記粘着剤は、上記光重合性化合物を含有していなくても良い。
【0026】
上記粘着性ポリマーは、上記粘着剤に感圧接着性(粘着性)を与えるポリマーであり、このような粘着性ポリマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、酢酸ビニル、酢酸ビニル−エチレン共重合体系、エチレン−アクリル酸エチル共重合体系、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系、ウレタン系、合成ゴム系、ポリブチラール系、エポキシ系等のポリマー等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル系ポリマーが特に好ましい。これらの粘着性ポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。尚、本発明で言う(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0027】
上記光重合性官能基を含有する光重合性化合物は、光が照射されることにより重合・硬化し、粘着剤層の金属箔に対する接着力を、光が照射される前よりも低下させるように作用するものである。このような光重合性官能基を含有する光重合性化合物としては特に限定されず、例えば、光ラジカル重合性官能基や光カチオン重合性官能基等を含有する光重合性化合物等が挙げられる。
【0028】
上記光ラジカル重合性官能基としては特に限定されず、例えば、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基等、その内部にラジカル重合性不飽和二重結合を有するものが挙げられ、このような光ラジカル重合性官能基を含有する光重合性化合物は、光が照射されることにより光ラジカル重合が進行する。
【0029】
又、上記光カチオン重合性官能基としては特に限定されず、例えば、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、水酸基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等が挙げられる。このような光カチオン重合性官能基を含有する光重合性化合物は、光が照射されることにより光カチオン重合が進行する。
【0030】
上記光重合性官能基を含有する光重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。又、これらの光重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
上記光重合開始剤は、光が照射されることにより活性化され、例えばラジカルやカチオンなどの光重合開始物質を発生させるものである。上記光重合開始剤は、光が照射されることにより活性化され、光重合開始物質を発生させるので、比較的低エネルギーで上記光重合性化合物の重合を開始させることができる。このような光重合開始剤としては、上記光重合性化合物の重合を開始することができるものであれば特に限定されず、例えば、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
上記光ラジカル重合開始剤としては、上記光ラジカル重合性官能基のラジカル重合を開始し得るものであれば特に限定されず、例えば、4−(2−ヒドロキシエトシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタールなどのケタール誘導体化合物、ハロゲン化ケトン、アシルフォスフィンオキシド、アシルフォスフォナート、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルベンジルフォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0033】
又、上記光カチオン重合開始剤としては、上記光カチオン重合性官能基のカチオン重合を開始し得るものであれば特に限定されず、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
上記粘着剤中に含まれる光重合性官能基と光重合開始剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、上記光ラジカル重合性官能基と上記光ラジカル重合開始剤との組み合わせ、上記光カチオン重合性官能基と上記光カチオン重合開始剤との組み合わせ等が挙げられる。
【0035】
本発明の金属箔付フィルムにおいては、上記粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の下記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることが好ましい。尚、本発明で言う理論ラジカル発生量とは、粘着剤層中に含有される光ラジカル重合開始剤から発生し得る全てのラジカル量のことを意味する。
理論ラジカル発生量(mol/g)=(A×B)/C 式(1)
ここで、A:粘着剤層1g中の光ラジカル重合開始剤量(g)
B:光ラジカル重合開始剤1分子から発生可能なラジカル数(個)
C:光ラジカル重合開始剤の分子量
【0036】
粘着剤層の上記理論ラジカル発生量を1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲とすることにより、光照射による粘着剤層のラジカル重合反応をより効率的に進行させることが可能となり、少ない光量で粘着剤層のラジカル重合反応を行うことができる。
【0037】
粘着剤層の上記理論ラジカル発生量が1×10−4mol/g未満であると、粘着剤層のラジカル重合反応を効率的に進行させることができなくなることがある。一方、粘着剤層の上記理論ラジカル発生量が1×10−2mol/gを超えると、粘着剤層中の光ラジカル重合開始剤の含有量が多すぎることになって、経済的に不利となることがある。
【0038】
本発明の金属箔付フィルムにおいては、光が照射されて硬化する前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることが必要であり、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上である。
【0039】
硬化前の粘着剤層のゲル分率が10重量%未満であると、硬化前の粘着剤層を構成する粘着剤の凝集力が低いため、金属箔を加工して形成される回路パターンの細線化に対応することができなくなり、又、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、回路形成用転写フィルムを絶縁シートに接着し、光を照射して上記粘着剤層を硬化させた後、上記回路形成用転写フィルムを構成する樹脂フィルムと粘着剤層とを剥離する際に、絶縁シート上に粘着剤層が残ったり、回路パターンが位置ズレしたりする等の不具合が生じる。
【0040】
本発明の金属箔付フィルムにおいては、粘着剤中に含有される前記粘着性ポリマーを架橋させることにより、硬化前の粘着剤層のゲル分率を10重量%以上とすることができる。粘着性ポリマーを架橋させる方法としては特に限定されず、例えば、粘着性ポリマーと架橋剤とを反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
上記架橋剤としては、粘着性ポリマーと反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、イソシアネート系、メラミン系、アジリジン系、エポキシ系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、金属系などの架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0042】
又、光照射による硬化後の粘着剤層のゲル分率は、特に限定されるものではないが、40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上である。硬化後の粘着剤層のゲル分率が40重量%未満であると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、絶縁シート上や回路パターン上に粘着剤層が残るといった不具合が生じることがある。
【0043】
上記粘着剤層のゲル分率は、例えば、以下の方法により測定される。
[ゲル分率の測定方法]
先ず、溶媒として有機溶剤を用い、一定量精秤した硬化前又は硬化後の粘着剤層を、その粘着剤層の50〜500倍量の上記溶媒中に浸漬して、一昼夜振盪下で溶媒に膨潤させる。次に、不溶解分を200メッシュ網にて濾別し、溶媒を揮発させた後、不溶解分の重量を測定する。ゲル分率は、得られた不溶解分の重量に基づき、下記式(2)により算出される。尚、上記溶媒として用いられる有機溶剤としては、硬化前又は硬化後の粘着剤層中に含有される未架橋成分や未硬化成分を溶解可能なものであれば特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
ゲル分率(重量%)=(W2/W1)×100 式(2)
ここで、W1:溶媒浸漬前の重量(g)
W2:溶媒浸漬後の不溶解分の乾燥重量(g)
【0044】
本発明で用いられる粘着剤(層)中には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、フィラー(充填剤)、軟化剤(可塑剤)、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤等の公知の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が含有されていても良い。
【0045】
本発明の金属箔付フィルムを作製する方法としては特に限定されず、例えば、樹脂フィルムに粘着剤を塗工して粘着剤層を形成し、金属箔と貼り合せる方法、金属箔に粘着剤を塗工して粘着剤層を形成し、樹脂フィルムと貼り合せる方法等が挙げられる。
【0046】
上記粘着剤の塗工による粘着剤層の形成方法としては特に限定されず、例えば、粘着剤の溶剤溶液、水溶液又はエマルジョンを樹脂フィルム又は金属箔に塗工し、溶剤又は水を乾燥により揮発させて粘着剤層を形成する方法、粘着剤を加熱溶融し、この加熱溶融した粘着剤を樹脂フィルム又は金属箔に塗工し、冷却することにより粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。
【0047】
上記粘着剤により形成される粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、1〜100μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みが1μm未満であると、金属箔が樹脂フィルム上に十分な接着力で保持されず、金属箔が剥がれやすくなることがある。一方、粘着剤層の厚みが100μmを超えると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、回路パターンを転写させた後に樹脂フィルムを引き剥がす際、粘着剤層が回路パターン上に残りやすくなる等の不都合を生じることがある。
【0048】
本発明の金属箔付フィルムは、光が照射されることにより粘着剤層が硬化し、粘着剤層と金属箔との接着力が、光が照射される前よりも、硬化した後の方が低下するものであるが、硬化前における上記粘着剤層と金属箔との接着力の下限は50g/25mm(約0.5N/25mm)、上限は4000g/25mm(約40.0N/25mm)であることが好ましく、更に、下限は100g/25mm(約1.0N/25mm)、上限は2000g/25mm(約20.0N/25mm)であることがより好ましい。硬化前における粘着剤層と金属箔との接着力が上記範囲であると、金属箔にエッチング等を施して回路パターンを形成する際にも、上記金属箔が剥離することなく保持される。
【0049】
又、硬化後における上記粘着剤層と金属箔との接着力の下限は0g/25mm(0N/25mm)、上限は300g/25mm(3.0N/25mm)であることが好ましく、更に、下限は0g/25mm(0N/25mm)、上限は200g/25mm(2.0N/25mm)であることがより好ましい。硬化後における粘着剤層と金属箔との接着力が上記範囲であると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製における回路パターンの転写時に、樹脂フィルムを容易に引き剥がすことができる。
【0050】
尚、上記粘着剤層と金属箔との接着力は、JIS Z 0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して、樹脂フィルムを引き剥がす時の180度引き剥がし粘着力試験を行うことにより、測定することができる。
【0051】
本発明の金属箔付フィルムによれば、粘着剤層に光が照射される前には、金属箔は適度な粘着力で樹脂フィルムと接着されており、粘着剤層に光が照射されると、粘着剤層が硬化して接着力が低下し、容易に金属箔と樹脂フィルムとを剥離することができる。
【0052】
又、上記粘着剤層を構成する粘着剤は、エッチングに際して用いられる薬液に対する耐性を有し、且つ、薬液の染み込みも抑制されているため、粘着剤層に光が照射される前に、金属箔を以下のような方法で回路パターン状にエッチングした際、金属箔が剥がれる等の不具合が完全に防止される。従って、この金属箔のエッチングにより、微細で高密度の回路パターンを高精度で形成することができる。
【0053】
本発明の金属箔付フィルムは、回路基板の製造における回路形成用転写フィルムとして好適に用いることができ、このような回路形成用転写フィルムも本発明の1つである。
【0054】
本発明の回路形成用転写フィルムは、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率は、10重量%以上である。
【0055】
本発明の回路形成用転写フィルムは、金属箔が回路パターン状の金属層であること以外は、上述した本発明の金属箔付フィルムと同様の構成である。
【0056】
本発明の回路形成用転写フィルムは、本発明の金属箔付フィルムの金属箔を回路パターン状に成形することにより得られる。上記金属箔を回路パターン状に成形する方法としては特に限定されず、例えば、公知のレジスト法が挙げられる。
【0057】
上記レジスト法により上記金属箔を回路パターン状に成形するには、先ず、上記金属箔の全面にフォトレジストを塗布し、所定パターンのマスクを介して露光を行い、現像後、プラズマエッチングやケミカルエッチングなどのエッチングにより、非パターン部(フォトレジストが除去されている部分)の金属箔を除去し、金属箔を回路パターン状に成形する。又、スクリーン印刷等により、金属箔の表面に所定の回路パターン状にフォトレジストを塗布し、次いで、上記の場合と同様に、露光後にエッチングすることによっても、金属箔を回路パターン状に成形することができる。
【0058】
上記エッチング終了後においては、回路パターン状の金属層上にレジストが残存するが、レジスト除去液で残存するレジストを除去し、洗浄することにより、上記金属箔を回路パターン状の金属層とすることができ、本発明の回路形成用転写フィルムを得ることができる。
【0059】
本発明の回路形成用転写フィルムによれば、粘着剤層に光が照射される前には、回路パターン状の金属層は適度な粘着力で樹脂フィルムと接着されており、上記粘着剤層に光が照射されると、粘着剤層が硬化して接着力が低下し、容易に回路パターン状の金属層と樹脂フィルムとを剥離することができる。従って、絶縁シートと接する粘着剤層部分を光の照射等で低接着力化する等の複雑な工程が不要であり、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができ、絶縁シート上に微細で高密度な回路パターンを高精度で形成することができる。
【0060】
又、本発明の回路形成用転写フィルムは、小型、薄型及び高密度の微細回路を高精度で有する多層配線基板の製造に極めて有利であり、しかも、絶縁シートの作製と回路パターンの形成とを別個の工程で同時に進行させることができるため、生産性(生産効率)も著しく向上する。
【0061】
本発明の回路形成用転写フィルムを用いた回路基板は、前述した本発明の金属箔付フィルムを作製する工程、上述した本発明の回路形成用転写フィルムを作製する工程に続き、絶縁シート上に本発明の回路形成用転写フィルムの回路パターン状の金属層を接着させる工程と、上記回路形成用転写フィルムの樹脂フィルム側から粘着剤層に光を照射して上記粘着剤層を硬化させ、上記粘着剤層の金属層に対する接着力を光照射前よりも低下させる工程と、上記樹脂フィルムと粘着剤層とを金属層から剥離し、上記回路パターンを絶縁シート上に転写する工程とを行うことにより、作製することができる。
【0062】
本発明の回路形成用転写フィルムを用いた回路基板を作製するには、先ず、前述した本発明の金属箔付フィルムを作製する工程、上述した本発明の回路形成用転写フィルムを作製する工程に続き、絶縁シート上に本発明の回路形成用転写フィルムの回路パターン状の金属層を接着させる工程を行う。
【0063】
上記絶縁シートとしては特に限定されず、例えば、セラミックグリーンシートや半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シート等が挙げられる。
【0064】
上記セラミックグリーンシートとしては特に限定されず、例えば、アルミナなどのセラミック粉末、バインダー樹脂及び可塑剤等からなる組成物をドクターブレード法等によってシート状に成形したもの等が挙げられる。
【0065】
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ビスマレイミドトリアジン(BT)レジンなどのビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、中でも、常温(室温)で液状の熱硬化性樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0066】
上記絶縁シートが半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる場合、強度をより向上させるために、上記熱硬化性樹脂中にフィラーを含有させることが好ましい。上記フィラーとしては特に限定されず、例えば、有機質又は無機質の粉末、繊維体等が挙げられる。これらのフィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0067】
上記有機質フィラーとしては特に限定されず、例えば、アラミド繊維、セルロース繊維等が挙げられる。これらの有機質フィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0068】
上記無機質フィラーとしては特に限定されず、例えば、SiO2 、Al2 O3 、ZrO2 、TiO2 、AlN、SiC、BaTiO3 、SrTiO3 、ゼオライト、CaTiO3 、ホウ酸アルミニウム等が挙げられる。これらの無機質フィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0069】
上記無機質フィラーは、特に限定されるものではないが、平均粒子径の下限が20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは7μm以下である。
【0070】
又、上記無機質フィラーは、略球形の粉末状であることが好ましいが、平均アスペクト比が2以上、特に5以上の繊維状のものであっても良い。
【0071】
上記繊維体のフィラーとしては特に限定されず、例えば、ガラス等の繊維体が挙げられ、これら繊維体は、織布、不織布等の任意の形状や性状のものであっても良い。又、これらの繊維体のフィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0072】
上記熱硬化性樹脂とフィラーとの混合割合は、特に限定されるものではないが、体積比で、熱硬化性樹脂/フィラー=15/85〜65/35であることが好ましい。
【0073】
上記絶縁シートが半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる場合、この絶縁シートは、上記熱硬化性樹脂又は上記熱硬化性樹脂と上記フィラーとを含有するスラリーを、ドクターブレード法等によってシート状に成形し、半硬化状態となる程度に加熱することによって得ることができる。
【0074】
又、上記絶縁シートには、炭酸ガスレーザ等によってバイアホールを形成し、このバイアホール内に、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属の粉末を充填することにより、バイアホール導体を形成しておくことが好ましい。
【0075】
このような絶縁シート上に本発明の回路形成用転写フィルムの金属層を接着させる工程においては、セラミックグリーンシートや半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シートに回路形成用転写フィルムの回路パターンが対面するように重ね合わせ、特に、絶縁シートに上記バイアホール導体が形成されている場合には、バイアホール導体の表面露出部分と回路パターンとが重なり合うように位置設定する。
【0076】
上記絶縁シートと回路形成用転写フィルムとの接着方法としては特に限定されず、例えば、プレスによるアンカー効果(投錨効果)で接着する方法、絶縁シート及び/又は回路形成用転写フィルムの金属層に接着剤を塗布し、貼り合せる方法等が挙げられる。中でも、半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シートにプレスにより接着する際には、適度な温度で加熱プレスを行う方法が好ましい。熱硬化性樹脂の一部又は全部を硬化させることにより、接着力が増大し、回路パターンの位置ズレや転写不良といった不具合が生じにくくなるからである。
【0077】
次に、上記回路形成用転写フィルムの樹脂フィルム側から粘着剤層に光を照射して上記粘着剤層を硬化させ、金属層に対する接着力を光照射前よりも低下させる工程を行う。
【0078】
この工程においては、粘着剤層中の前記光重合性官能基を含有する光重合性化合物を重合させるための光を樹脂フィルム側から粘着剤層に照射するが、この照射する光の種類としては、粘着剤層中の光重合性官能基を重合させることができるものであれば特に限定されず、例えば、紫外線や可視光線等が挙げられ、中でも、回路形成用転写フィルムの取扱い性や光の有するエネルギー量等が良好であることから、紫外線を用いることが好ましい。
【0079】
上記光の照射は、上記絶縁シート上に上記回路形成用転写フィルムの金属層を接着させる工程の前に行っても良いし、上記工程の後に行っても良い。
【0080】
上記光の照射量や照射時間は、粘着剤層を硬化させることができる照射量や照射時間であれば特に限定されず、例えば、光として紫外線を照射する場合には、0.1mJ/cm2 以上の照射量で1秒〜1時間の照射時間であることが好ましい。
【0081】
その後、上記樹脂フィルムと粘着剤層とを金属層から剥離し、上記回路パターンを絶縁シート上に転写する工程を行う。この工程を行うことにより、回路パターンが絶縁シート上に転写され、本発明の回路形成用転写フィルムを用いた回路基板を作製することができる。
【0082】
上記樹脂フィルムと粘着剤層とを金属層から剥離した後、金属層上に粘着剤層が残存していると、回路の導通等に不具合を起こすことがあるので、金属層上には粘着剤層が残存していないことが好ましい。
【0083】
こうして得られた回路基板は、必要に応じて、複数を重ねての積層、焼成、加熱硬化、加圧等を行うことにより、単層の回路基板はもとより、多層の回路基板を製造することができる。
【0084】
【作用】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層が、光が照射されることより硬化し、硬化後の上記粘着剤層の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものとなされており、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上となされているので、金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しており、金属箔を加工して形成される回路パターンの細線化に対応できると共に、粘着剤層に光が照射されることにより、容易に金属箔を剥離することができるものとなる。
【0085】
本発明の回路形成用転写フィルムは、樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層が、光が照射されることより硬化し、硬化後の上記粘着剤層の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものとなされており、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上となされているので、回路形成用転写フィルムを絶縁シートに接着し、光を照射して上記粘着剤層を硬化させた後、上記樹脂フィルムと粘着剤層とを剥離する際に、絶縁シート上への粘着剤層の残存や回路パターンの位置ズレ等を起こすことなく、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができるものとなる。
【0086】
又、本発明の金属箔付フィルム及び本発明の回路形成用転写フィルムは、粘着剤層を光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤から形成し、且つ、前記式(1)で算出される上記粘着剤層の理論ラジカル発生量を1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲とすることにより、上記効果がより確実なものとなる。
【0087】
【発明の実施の形態】
本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
ブチルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、カルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られたカルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液にグリシジルメタクリレート5重量部を添加し、40℃に加熱して、アクリルポリマー中のカルボン酸基とグリシジルメタクリレートのグリシジル基とを反応させ、カルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液を得た。次に、得られたカルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部及び4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン0.5重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0089】
上記で得られた粘着剤溶液を厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層付き樹脂フィルムを作製した。次に、厚み12μmの電解銅箔と得られた粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層面とが接着するようにラミネートを行って、銅箔付フィルムを作製した。
【0090】
又、シリコン離型フィルムの離型面側表面にも上記で得られた粘着剤溶液を粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層を形成し、ゲル分率測定用粘着剤層を作製した。上記で得られた銅箔付フィルム及びゲル分率測定用粘着剤層は、23℃の雰囲気下で1週間養生を行った。
【0091】
次に、得られた銅箔付フィルムの銅箔側にドライフィルムレジストをラミネートし、線幅30μm、線間隔30μmの回路パターン形状のマスクを通して露光、現像を行い、エッチング、レジスト剥離、洗浄工程を経て、回路形成用転写フィルムを作製した。
【0092】
上記で得られた回路形成用転写フィルムの銅箔回路パターン側をガラスエポキシからなる半硬化状態の絶縁シートと位置合わせして、130℃で熱プレスを行い、銅箔回路パターンと絶縁シートとを接着させた。次に、超高圧水銀灯を用いて、PETフィルム側より粘着剤層に紫外線を1.5J/cm2 の照射量となるように照射して、粘着剤層の硬化を行い、PETフィルムと粘着剤層とを絶縁シート及び銅箔より剥離し、回路基板を作製した。
【0093】
(実施例2)
実施例1で調製した粘着剤溶液に、更に、ペンタエリスリトールトリアクリレート10重量部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0094】
(実施例3)
ブチルアクリレート90重量部、ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、グリシジルメタクリレート5重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、水酸基とグリシジル基とを有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られた水酸基とグリシジル基とを有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部及び芳香族スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(商品名「オプトマーSP−170」、旭電化工業社製)1重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0095】
上記で得られた粘着剤溶液を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0096】
(実施例4)
ブチルアクリレート90重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、水酸基を有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られた水酸基を有するアクリルポリマー溶液に2−イソシアネートエチルメタクリレート3重量部を添加し、40℃に加熱して、アクリルポリマー中の水酸基と2−イソシアネートエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、水酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液を得た。次に、得られた水酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部及び4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(分子量224、1分子から発生可能なラジカル数2)10重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0097】
上記で得られた粘着剤溶液を厚み25μmのPETフィルムの表面に粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層付き樹脂フィルムを作製した。得られた粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層の理論ラジカル発生量は7.7×10−4mol/gであった。
【0098】
次に、厚み12μmの電解銅箔と得られた粘着剤層付き樹脂フィルムの粘着剤層面とが接着するようにラミネートを行って、銅箔付フィルムを作製した。
【0099】
又、シリコン離型フィルムの離型面側表面にも上記で得られた粘着剤溶液を粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥して、粘着剤層を形成し、ゲル分率測定用粘着剤層を作製した。上記で得られた銅箔付フィルム及びゲル分率測定用粘着剤層は、23℃の雰囲気下で1週間養生を行った。
【0100】
次に、得られた銅箔付フィルムの銅箔側にドライフィルムレジストをラミネートし、線幅30μm、線間隔30μmの回路パターン形状のマスクを通して露光、現像を行い、エッチング、レジスト剥離、洗浄工程を経て、回路形成用転写フィルムを作製した。
【0101】
次に、超高圧水銀灯を用いて、上記で得られた回路形成用転写フィルムのPETフィルム側より粘着剤層に紫外線を0.5J/cm2 の照射量となるように照射して、粘着剤層の硬化を行った。次に、ガラスエポキシからなる半硬化状態の絶縁シートと位置合わせして、130℃で熱プレスを行い、銅箔回路パターンと絶縁シートとを接着させた後、PETフィルムと粘着剤層とを絶縁シート及び銅箔から剥離して、回路基板を作製した。
【0102】
(比較例1)
カルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液に添加したトリレンジイソシアネートを添加しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘着剤溶液、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0103】
(比較例2)
ブチルアクリレート90重量部、アクリル酸10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素ガス雰囲気下、80℃に加熱して共重合を行い、カルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液を合成した。次に、得られたカルボン酸基を有するアクリルポリマー溶液にトリレンジイソシアネート2.5重量部を添加し、粘着剤溶液を調製した。
【0104】
上記で得られた粘着剤溶液を用いたこと及び粘着剤層への紫外線照射を行わなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層、回路形成用転写フィルム及び回路基板を作製した。
【0105】
実施例1〜実施例4、及び、比較例1及び比較例2で得られた銅箔付フィルム、ゲル分率測定用粘着剤層及び回路基板の物性を以下の方法で測定した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0106】
(1)銅箔付フィルムの接着力
▲1▼光硬化前の剥離接着力
23℃の雰囲気下で1週間養生した銅箔付フィルムを供試体として用い、測定温度23℃、剥離速度300mm/分の条件で、上記銅箔付フィルムの180度角剥離接着力(N/25mm)を測定した。
▲2▼光硬化後の剥離接着力
超高圧水銀灯を用いて、23℃の雰囲気下で1週間養生した銅箔付フィルムのPETフィルム側より粘着剤層に紫外線を1.5J/cm2 の照射量となるよう照射して粘着剤層を硬化させた後、測定温度23℃、剥離速度300mm/分の条件で、上記銅箔付きフィルムの180度角剥離接着力(N/25mm)を測定した。
【0107】
(2)硬化前の粘着剤層のゲル分率
23℃の雰囲気下で1週間養生したゲル分率測定用粘着剤層を0.5g程度精秤し、ガラス瓶中で酢酸エチル50mlに浸漬して、23℃で12時間振盪した。次に、200メッシュの籠状に加工した金網を精秤し、その中にガラス瓶の内容物を移した。次いで、金網に残った酢酸エチル不溶の膨潤物を110℃のオーブン中で2時間乾燥した後、常温まで冷却し、再び精秤を行い、前記式(2)によりゲル分率(重量%)を算出した。
【0108】
(3)転写性
マイクロスコープを用いて、回路基板の銅箔回路パターンを目視で観察し、浮きや剥がれの有無を確認して、下記判定基準により転写性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥銅箔回路パターンの浮きや剥がれは全く認められず、優れた転写性であった。
×‥‥銅箔回路パターンの浮きや剥がれが認められ、転写性が悪かった。
【0109】
(4)糊残り
マイクロスコープを用いて、回路基板の銅箔回路パターン及び絶縁シートを目視で観察し、糊残り(粘着剤層の残存)の有無を確認して、下記判定基準により糊残りを評価した。
〔判定基準〕
○‥‥銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残りは全く認められなかった。
×‥‥銅箔回路パターン及び/又は絶縁シートに糊残りが認められた。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から明らかなように、本発明による実施例1〜実施例4の回路形成用転写フィルムを用いて作製した回路基板は、いずれも銅箔回路パターンの転写性に優れ、且つ、銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残り(粘着剤層の残存)が全く認められなかった。
【0112】
これに対し、硬化前の粘着剤層のゲル分率が10重量%未満であった比較例1の回路形成用転写フィルムを用いて作製した回路基板は、銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残りが認められた。又、粘着剤層への紫外線照射を行わず、粘着剤層を硬化させなかった比較例2の回路形成用転写フィルムを用いて作製した回路基板は、銅箔回路パターンの転写性が悪く、且つ、銅箔回路パターン及び絶縁シートのいずれにも糊残りが認められた。
【0113】
【発明の効果】
本発明の金属箔付フィルムは、上記のような構成となされているので、粘着剤層に光が照射される前は金属箔と樹脂フィルムとが適度な粘着力で接着しているが、粘着剤層に光が照射されることにより粘着剤層が硬化し、容易に金属箔と樹脂フィルムとを剥離することができる。
【0114】
又、本発明の回路形成用転写フィルムは、上記のような構成となされているので、粘着剤層に光が照射されることにより粘着剤層が硬化し、容易に回路パターン状の金属層を剥離することができ、回路パターンの転写性を向上させることができると共に、絶縁シート上に微細で高密度な回路パターンを高精度で形成することができる。
Claims (4)
- 樹脂フィルムと金属箔とが粘着剤層を介して貼着された金属箔付フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属箔に対する接着力が、硬化前の上記金属箔に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする金属箔付フィルム。
- 樹脂フィルムと回路パターン状の金属層とが粘着剤層を介して貼着された回路形成用転写フィルムであって、上記粘着剤層は、光が照射されることにより硬化し、硬化後の上記金属層に対する接着力が、硬化前の上記金属層に対する接着力よりも低下するものであり、且つ、硬化前の上記粘着剤層のゲル分率が、10重量%以上であることを特徴とする回路形成用転写フィルム。
- 粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の下記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付フィルム。
理論ラジカル発生量(mol/g)=(A×B)/C 式(1)
ここで、A:粘着剤層1g中の光ラジカル重合開始剤量(g)
B:光ラジカル重合開始剤1分子から発生可能なラジカル数(個)
C:光ラジカル重合開始剤の分子量 - 粘着剤層が、光ラジカル重合性官能基及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル硬化型粘着剤層であり、且つ、上記粘着剤層の下記式(1)で算出される理論ラジカル発生量が、1×10−4〜1×10−2mol/gの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の回路形成用転写フィルム。
理論ラジカル発生量(mol/g)=(A×B)/C 式(1)
ここで、A:粘着剤層1g中の光ラジカル重合開始剤量(g)
B:光ラジカル重合開始剤1分子から発生可能なラジカル数(個)
C:光ラジカル重合開始剤の分子量
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