JP2004168878A - エチレン系難燃性樹脂組成物および難燃性電線・ケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼時にハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生がない高難燃性であって、かつ比重が1.14以下とすることによって、分別が可能なエチレン系の難燃性樹脂組成物を提供し、これを電線・ケーブルの被覆材料として用いた場合に、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格する高難燃性を有し、かつ特高屈曲性、高引張り強度並びに耐摩耗性にも優れた難燃性電線・ケーブルを提供することにある。
【解決手段】エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決できる。
【選択図】 なし
【解決手段】エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高難燃性並びに低比重のエチレン系難燃性樹脂組成物と、それを用いたJIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格し、機械的特性にも優れた難燃性電線・ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物としては、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、エチレンブテン共重合体、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体やエチレンアクリル酸エチル共重合体等のエチレン系共重合体、またハロゲンを含まないゴム系材料に、多量の水酸化マグネシウム等を配合したものが、各種成形品や電線・ケーブルの被覆材料として用いられている。特にJIS規格C3005の傾斜燃焼試験に合格するような高難燃性を要求される場合には、水酸化マグネシウム等の金属水和物を多量に添加することになるので、得られた難燃性樹脂組成物が硬くなりすぎたり、押出し加工性が悪くなったりする。さらに、このような難燃性樹脂組成物は前記のように水酸化マグネシウムを多量に添加するので、樹脂の比重が大きくなりポリ塩化ビニル等と比重による分別ができなかった。よって、要求によっては電線・ケーブルの難燃性被覆材料としては問題であった。
【0003】
そこで、前記水酸化マグネシウムの添加量を減らしかつ難燃性を向上させるために、難燃助剤としてポリオルガノシロキサンを併用することが提案されているが、このポリオルガノシロキサンをポリオレフィン系樹脂中に大量に添加すると、押出し加工時に前記ポリオルガノシロキサンが偏在し、押出し成形品にシーム割れと称される割れが発生することがある。これはもともとポリオレフィン系樹脂との相溶性が低いために、ポリオルガノシロキサンが分離してくるためと考えられる。そこで、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にポリオルガノシロキサンとシリカ粉末を混合することで、易流動性シリコーン重合体粉末として用いることが、特許文献1として知られている。しかしながらこのような樹脂組成物においても、要求される難燃性が得られなかったり、可とう性が十分でなかったり、さらには押出ししたときに外観不良を生じる等の問題があった。また、このものは比重が大きくポリ塩化ビニル樹脂との比重による分別には、問題があった。またこのような低比重の難燃性樹脂組成物に関する技術としては、特許文献2や特許文献3が知られているが、これらの難燃性樹脂組成物は、EM−EEF(多心の絶縁電線)絶縁電線の高難燃性を得るための比重に関して、若干満足できないものであった。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−113712号公報
【特許文献2】
特開2000−248121号公報
【特許文献3】
特許第2991696号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明が解決しようとする課題は、燃焼時にハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生がない高難燃性であって、かつ比重が1.14以下とすることによって、比重による分別が可能なエチレン系の難燃性樹脂組成物を提供し、これを電線・ケーブルの被覆材料として用いた場合に、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格し、かつ高屈曲性、高引張り強度並びに耐摩耗性にも優れた、難燃性電線・ケーブルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するためには、請求項1に記載されるように、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。さらに請求項2に記載されるように、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決できる。
【0007】
また、請求項3に記載されるように、前記難燃助剤が、水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。さらに請求項4に記載されるように、前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸化合物処理水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。さらにまた請求項5に記載されるように、前記難燃助剤が、シリコーンパウダーであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0008】
さらに、請求項6に記載されるように、前記エチレン系難燃性樹脂組成物には、加工助剤が0.5〜5.0重量部添加されているエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0009】
また、請求項7に記載されるように、前記エチレン系難燃性樹脂組成物が導体上に被覆された難燃性電線・ケーブルとすることによって、解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。まず高い難燃性を示すエチレン系難燃性樹脂組成物に関する請求項1並びに請求項2について述べると、請求項1のエチレン系難燃性樹脂組成物は、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物であり、また請求項2のエチレン系難燃性樹脂組成物は、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物とするものである。そしてこのようなエチレン系の難燃性樹脂組成物とすることによって、燃焼時にハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生がない高難燃性であって、かつ比重が1.14以下とすることができ、比重による分別が可能なエチレン系の難燃性樹脂組成物となるものである。さらには、よく用いられる赤燐を難燃助剤に用いる場合のような、樹脂組成物が着色するという問題もない。このような本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物を用いた樹脂成形品は、高難燃性であり機械的特性にも優れ、それが廃却されるときには比重による分別が可能な、環境性にも優れたものとなる。
【0011】
より詳細に述べる。まず、本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物のベースポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン樹脂やポリプロピレン(PP)などのエチレン系の単独重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンプロピレン共重合体(EPRまたはEPDM)、エチレンブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレンメチルメタアクリレート共重合体(EMMA)等のエチレン系の共重合体が、単独で或いは混合物として使用できるが、これらの中でも請求項2に記載されるように、前記EVAと前記EEAの混合物が最も好ましい。これは、前記EVAが燃焼時に炭化を促進し、前記EEAが殻(チャー)を好ましく形成するためである。そしてその場合の混合比についても、前記EVAが20〜40重量部、前記EEAが80〜60重量部の混合物が、最も本発明の特性を達成するものとなる。この混合比は、前記EVAが20重量部未満で、前記EEAが80重量部を越えた混合物とすると前記殻の収縮の問題があり、また、前記EVAが40重量部を超え、前記EEAが60重量部未満の混合物とするとドリップする問題が生じるために、このように特定される。そして前記ベースポリマーは、いずれの形においてもこれを100重量部として、他の添加剤が重量割合で配合されて、エチレン系難燃性樹脂組成物となるものである。
【0012】
そして、このようなベースポリマーに対して、難燃剤としてポリオルガノシロキサンで表面処理された水酸化マグネシウムが、40〜50重量部添加される。このように水酸化マグネシウムの表面を、ポリオルガノシロキサンによって処理することによって、難燃性を向上させると共に、前記水酸化マグネシウムが水分や二酸化炭素と反応して白色の炭酸マグネシウムを生成して、押出し成形した時に外観不良となることを防止できることになる。また、前記オルガノポリシロキサンの処理量としては、5〜9%(wt)程度とするのが、好ましい。そしてこのような添加量とすることによって、得られる前記樹脂組成物の比重は、軽いものとすることができる。具体的には、比重が1.14以下の難燃性樹脂組成物となり、特に広く使用されているポリ塩化ビニル樹脂との、比重による分別が可能となる。また、難燃性についても前記添加量と後述する難燃助剤との併用により、この樹脂組成物を用いた電線・ケーブルは、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格する、難燃性が得られる。そして、前記難燃助剤の添加量も2〜10重量部の範囲とされる。これは、2重量部未満では難燃性が不十分であり、また10重量部を超えて添加すると、水酸化マグネシウムの添加量が不十分となるためである。なお、前記難燃助剤としては、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、粉末メラミン、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛やヒドロキシ錫酸亜鉛等が使用される。そして、このようなエチレン系の難燃性樹脂組成物には、老化防止剤やこの種樹脂組成物に通常添加される、着色剤、充填剤、紫外線防止剤等を、特に比重を大幅に変化させない範囲で、添加することができる。そして、このようなエチレン系難燃性樹脂組成物は、前述の難燃性と低比重のものであることの他に、燃焼時の発煙量が少ないこと、機械的特性として、耐摩耗性、耐屈曲性や引張り強度(破断強度)等にも優れたものである。さらには、押出し加工性にも優れているので、特に電線・ケーブルの難燃性被覆材料として有用である。
【0013】
さらにまた、請求項3に記載されるように、前記難燃助剤が水酸化アルミニウムであることによって、また請求項4に記載されるように、前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸化合物処理水酸化アルミニウムであることによって、さらに請求項5に記載されるように、前記難燃助剤がシリコーンパウダーであるエチレン系難燃性樹脂組成物としても、前記した種々の特性を有するエチレン系の難燃性樹脂組成物とすることが可能である。すなわち、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物や前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物において、難燃助剤を水酸化アルミニウムとすることによって、前記樹脂組成物の比重を増大させずに、また機械的特性を低下することなく、ポリオルガノシロキサン表面処理水酸化マグネシウムのみでは得られない難燃性を、併用することによって得ることができるようになる。さらにこの水酸化アルミニウムの表面を、モリブデン酸化合物で処理したものを用いることによって、モリブデンが吸熱し、何も処理しない水酸化アルミニウムの場合と比較して、難燃性が向上する。そしてこのような表面処理は、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン化合物の溶液中に、水酸化アルミニウムを浸漬して被覆すればよい。さらに、難燃助剤としてシリコーンパウダーを用いても前述と同様の効果、特性を有する、エチレン系の難燃性樹脂組成物を得ることができる。ただし、このシリコーンパウダーは、得られる樹脂組成物の比重を高くすると押出し加工性に影響するので、できうる限り少ない添加量とすべきである。好ましくは、ベースポリマー100重量部に対して、3〜8重量部がよい。また、これらの難燃助剤は、前記2〜10重量部の範囲で併用して用いてもよい。
【0014】
つぎに、前記エチレン系難燃性樹脂組成物の押出し加工性をより向上させるための、請求項6に記載される、前記エチレン系難燃性樹脂組成物には、加工助剤が0.5〜5.0重量部添加されているエチレン系難燃性樹脂組成物について、説明する。前述のように本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物は、押出し成形加工が十分なものであるが、最近の高速の製造に対応するために、より押出し加工性を高めることが要望される。このために、本発明では加工助剤を添加することが好ましい。すなわち、ステアリン酸、脂肪酸エステル等をベースポリマー100重量部当たり、0.5〜5.0重量部添加される。このことによって、添加しない本発明の難燃性樹脂組成物に対して、5%程度の製造速度を向上させることが可能となる。
【0015】
以上説明したように本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物は、この樹脂組成物が燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もなく、さらに後述するこの樹脂組成物を被覆した電線・ケーブルは、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性であり、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、前記の電線・ケーブルが撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。またリン系の難燃剤を配合していないので、得られた樹脂組成物は着色しておらず、自由に希望の着色を行うことが出来る。さらにまた、前記エチレン系の難燃性樹脂組成物中には、加工助剤を配合することによって、押出し加工性が向上する。
【0016】
さらに、前述したエチレン系難燃性樹脂組成物を用いた、電線・ケーブルに関する請求項7について説明する。この発明は、前記エチレン系難燃性樹脂組成物を導体上に押出し被覆することによって、難燃性電線・ケーブルとするものである。以上のような難燃性電線・ケーブルは、電気・電子機器の内・外配線用の電線・ケーブルとして有用なものである。すなわち前記難燃性脂組成物を銅、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等の導体上に、押出し被覆して製造される。そして前記被覆は、通常0.5〜1.8mm程度の厚さに被覆されるものである。さらに、前記電線・ケーブルは、電子線照射架橋することによって、耐熱性の向上した難燃性電線・ケーブルとすることができると共に、機械的特性としての引張り強度も十分満足できるものである。そしてこのようにして得られた電線・ケーブルは、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性が得られ、さらに機械的特性としても、破断強度が10MPa以上、伸びも350%以上と高屈曲性であり、さらに、耐外傷性も優れたものとなっている。当然に前記難燃性樹脂組成物は、燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もないものであるから、それを用いた電線・ケーブルも同様である。そしてこのような難燃性電線・ケーブルは、電気・電子機器の内・外配線の被覆材料に用いる高難燃性電線・ケーブルとして、有用なものである。
【0017】
【実施例】
以下に本発明の実験例を示して、その効果を説明する。表1に示す各種難燃性樹脂組成物を作製し、それぞれについて比重、破断強度(MPa)、伸び(%)および着色性について、測定した。比重はJIS規格K7112により、伸び(%)JIS規格C3005により、破断強度(MPa)は、JIS規格C3005によって測定した。なお、表1の組成割合に関する数字は、重量部である。結果を、表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
表1の結果から明らかな通り、比重、破断強度、伸びを満足するものは、実験例1〜9の樹脂組成物である。すなわち、ベースポリマーがエチレン系の共重合体であって、特に前記EVAと前記EEAの混合物を用いる場合である。より具体的には、実験例2〜9に示すように、EVAが20〜40重量部とEEAが80〜60重量部からなる混合物をベースポリマーとする場合である。そして、この樹脂混合物100重量部に対して、ポリオルガノシロキサンで表面処理した水酸化マグネシウムを、40〜50重量部並びに難燃助剤2〜10重量部とするものである。ただしこの内、実験例8および9のように、難燃助剤として赤燐を用いた場合には、着色が見られるので希望する着色を得ようとする場合のものには使用できない。また、難燃助剤としては、水酸化アルミニウム、モリブデン酸表面処理水酸化アルミニウム、シリコーンパウダーが有用である。そしてこのような樹脂組成物は、比重が1.14以下であり、破断強度(MPa)が10以上であり、伸び(%)も350以上のものとなる。この内実験例14並びに15は、水酸化マグネシウムの添加量が100重量部と多いので、比重が1.14を超えてしまうので、好ましくない。そして以上のような樹脂組成物は、電気・電子機器類用の内・外配線用として、有望な特性を有するものである。
【0020】
つぎに難燃性については、前記各種難燃性樹脂組成物を外径1.6mmの銅導体上に0.8mm厚さに押出し被覆して、難燃性電線を作製し、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験を行った。この試験は、前記難燃性電線に着火後30秒以内に自己消火したものを、合格とするものである。さらに耐外傷性については、スクレープ試験(外径0.45mmのステンレス製針を用い、荷重72gで、NEMA式往復磨耗試験器によって、前記針と導体が導通するまでの回数を測定)を行った。導通するまでの回数が、10回以上を合格として、○印で記載した。結果を、表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
表2から明らかな如く、実験例16〜30の樹脂組成物は、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験並びに耐外傷性を、満足するものであることがわかる。しかしながら、表1の実験結果から実験例23並びに24のものは、絶縁被覆層が着色しているので、用途によっては使用できないものである。また、実験例29および30の電線は、絶縁被覆層の比重が1.14以上のものであるから、比重による分別を目的とする場合には、使用できない。しかしながら、実施例16〜22の難燃性電線は、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性を有し、破断強度が10MPa以上で、伸びも350%以上であり、着色性にも優れており耐外傷性も十分なものである。さらには、その絶縁被覆層は比重が1.14以下とポリ塩化ビニル樹脂と比重による分別が可能なものである。また、燃焼時に大量の有害ガスを発生せず、環境上も好ましいものであり、電気・電子機器類用の内・外配線用として、十分機能することが明らかである。
【0023】
【発明の効果】
本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物は、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、さらに好ましくは前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物することによって、この樹脂組成物は燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もなく、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、電線・ケーブル被覆が撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。また、破断強度が10MPa以上であり、伸びも350%以上であるので、電線・ケーブル用の被覆材料として、十分な特性のものである。
【0024】
また前記難燃助剤が、水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、さらに前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸処理水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、さらにまた、前記難燃助剤が、シリコーンパウダーであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、この樹脂組成物が燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もなく、さらに後述するこの樹脂組成物を被覆した電線・ケーブルは、JIS規格C3005の規定される60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性のものであり、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、前記の電線・ケーブルが撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。また、破断強度が10MPa以上であり、伸びも350%以上であるので、電線・ケーブル用の被覆材料として、十分な特性のものである。さらに得られた樹脂組成物は着色しておらず、自由に希望の着色を行うことが出来る。
【0025】
さらには、前記エチレン系難燃性樹脂組成物が導体上に被覆された電線・ケーブルとすることによって、得られた難燃性電線・ケーブルは、JIS規格C3005の規定される60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性のものであり、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、前記の電線・ケーブルが撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。また、破断強度が10MPa以上であり、伸びも350%以上であるので、機械的特性も十分なものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高難燃性並びに低比重のエチレン系難燃性樹脂組成物と、それを用いたJIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格し、機械的特性にも優れた難燃性電線・ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物としては、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、エチレンブテン共重合体、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体やエチレンアクリル酸エチル共重合体等のエチレン系共重合体、またハロゲンを含まないゴム系材料に、多量の水酸化マグネシウム等を配合したものが、各種成形品や電線・ケーブルの被覆材料として用いられている。特にJIS規格C3005の傾斜燃焼試験に合格するような高難燃性を要求される場合には、水酸化マグネシウム等の金属水和物を多量に添加することになるので、得られた難燃性樹脂組成物が硬くなりすぎたり、押出し加工性が悪くなったりする。さらに、このような難燃性樹脂組成物は前記のように水酸化マグネシウムを多量に添加するので、樹脂の比重が大きくなりポリ塩化ビニル等と比重による分別ができなかった。よって、要求によっては電線・ケーブルの難燃性被覆材料としては問題であった。
【0003】
そこで、前記水酸化マグネシウムの添加量を減らしかつ難燃性を向上させるために、難燃助剤としてポリオルガノシロキサンを併用することが提案されているが、このポリオルガノシロキサンをポリオレフィン系樹脂中に大量に添加すると、押出し加工時に前記ポリオルガノシロキサンが偏在し、押出し成形品にシーム割れと称される割れが発生することがある。これはもともとポリオレフィン系樹脂との相溶性が低いために、ポリオルガノシロキサンが分離してくるためと考えられる。そこで、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にポリオルガノシロキサンとシリカ粉末を混合することで、易流動性シリコーン重合体粉末として用いることが、特許文献1として知られている。しかしながらこのような樹脂組成物においても、要求される難燃性が得られなかったり、可とう性が十分でなかったり、さらには押出ししたときに外観不良を生じる等の問題があった。また、このものは比重が大きくポリ塩化ビニル樹脂との比重による分別には、問題があった。またこのような低比重の難燃性樹脂組成物に関する技術としては、特許文献2や特許文献3が知られているが、これらの難燃性樹脂組成物は、EM−EEF(多心の絶縁電線)絶縁電線の高難燃性を得るための比重に関して、若干満足できないものであった。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−113712号公報
【特許文献2】
特開2000−248121号公報
【特許文献3】
特許第2991696号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明が解決しようとする課題は、燃焼時にハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生がない高難燃性であって、かつ比重が1.14以下とすることによって、比重による分別が可能なエチレン系の難燃性樹脂組成物を提供し、これを電線・ケーブルの被覆材料として用いた場合に、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格し、かつ高屈曲性、高引張り強度並びに耐摩耗性にも優れた、難燃性電線・ケーブルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するためには、請求項1に記載されるように、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。さらに請求項2に記載されるように、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決できる。
【0007】
また、請求項3に記載されるように、前記難燃助剤が、水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。さらに請求項4に記載されるように、前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸化合物処理水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。さらにまた請求項5に記載されるように、前記難燃助剤が、シリコーンパウダーであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0008】
さらに、請求項6に記載されるように、前記エチレン系難燃性樹脂組成物には、加工助剤が0.5〜5.0重量部添加されているエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0009】
また、請求項7に記載されるように、前記エチレン系難燃性樹脂組成物が導体上に被覆された難燃性電線・ケーブルとすることによって、解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。まず高い難燃性を示すエチレン系難燃性樹脂組成物に関する請求項1並びに請求項2について述べると、請求項1のエチレン系難燃性樹脂組成物は、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物であり、また請求項2のエチレン系難燃性樹脂組成物は、前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物とするものである。そしてこのようなエチレン系の難燃性樹脂組成物とすることによって、燃焼時にハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生がない高難燃性であって、かつ比重が1.14以下とすることができ、比重による分別が可能なエチレン系の難燃性樹脂組成物となるものである。さらには、よく用いられる赤燐を難燃助剤に用いる場合のような、樹脂組成物が着色するという問題もない。このような本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物を用いた樹脂成形品は、高難燃性であり機械的特性にも優れ、それが廃却されるときには比重による分別が可能な、環境性にも優れたものとなる。
【0011】
より詳細に述べる。まず、本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物のベースポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン樹脂やポリプロピレン(PP)などのエチレン系の単独重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンプロピレン共重合体(EPRまたはEPDM)、エチレンブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレンメチルメタアクリレート共重合体(EMMA)等のエチレン系の共重合体が、単独で或いは混合物として使用できるが、これらの中でも請求項2に記載されるように、前記EVAと前記EEAの混合物が最も好ましい。これは、前記EVAが燃焼時に炭化を促進し、前記EEAが殻(チャー)を好ましく形成するためである。そしてその場合の混合比についても、前記EVAが20〜40重量部、前記EEAが80〜60重量部の混合物が、最も本発明の特性を達成するものとなる。この混合比は、前記EVAが20重量部未満で、前記EEAが80重量部を越えた混合物とすると前記殻の収縮の問題があり、また、前記EVAが40重量部を超え、前記EEAが60重量部未満の混合物とするとドリップする問題が生じるために、このように特定される。そして前記ベースポリマーは、いずれの形においてもこれを100重量部として、他の添加剤が重量割合で配合されて、エチレン系難燃性樹脂組成物となるものである。
【0012】
そして、このようなベースポリマーに対して、難燃剤としてポリオルガノシロキサンで表面処理された水酸化マグネシウムが、40〜50重量部添加される。このように水酸化マグネシウムの表面を、ポリオルガノシロキサンによって処理することによって、難燃性を向上させると共に、前記水酸化マグネシウムが水分や二酸化炭素と反応して白色の炭酸マグネシウムを生成して、押出し成形した時に外観不良となることを防止できることになる。また、前記オルガノポリシロキサンの処理量としては、5〜9%(wt)程度とするのが、好ましい。そしてこのような添加量とすることによって、得られる前記樹脂組成物の比重は、軽いものとすることができる。具体的には、比重が1.14以下の難燃性樹脂組成物となり、特に広く使用されているポリ塩化ビニル樹脂との、比重による分別が可能となる。また、難燃性についても前記添加量と後述する難燃助剤との併用により、この樹脂組成物を用いた電線・ケーブルは、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格する、難燃性が得られる。そして、前記難燃助剤の添加量も2〜10重量部の範囲とされる。これは、2重量部未満では難燃性が不十分であり、また10重量部を超えて添加すると、水酸化マグネシウムの添加量が不十分となるためである。なお、前記難燃助剤としては、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、粉末メラミン、メラミンシアヌレート、ホウ酸亜鉛やヒドロキシ錫酸亜鉛等が使用される。そして、このようなエチレン系の難燃性樹脂組成物には、老化防止剤やこの種樹脂組成物に通常添加される、着色剤、充填剤、紫外線防止剤等を、特に比重を大幅に変化させない範囲で、添加することができる。そして、このようなエチレン系難燃性樹脂組成物は、前述の難燃性と低比重のものであることの他に、燃焼時の発煙量が少ないこと、機械的特性として、耐摩耗性、耐屈曲性や引張り強度(破断強度)等にも優れたものである。さらには、押出し加工性にも優れているので、特に電線・ケーブルの難燃性被覆材料として有用である。
【0013】
さらにまた、請求項3に記載されるように、前記難燃助剤が水酸化アルミニウムであることによって、また請求項4に記載されるように、前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸化合物処理水酸化アルミニウムであることによって、さらに請求項5に記載されるように、前記難燃助剤がシリコーンパウダーであるエチレン系難燃性樹脂組成物としても、前記した種々の特性を有するエチレン系の難燃性樹脂組成物とすることが可能である。すなわち、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物や前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物において、難燃助剤を水酸化アルミニウムとすることによって、前記樹脂組成物の比重を増大させずに、また機械的特性を低下することなく、ポリオルガノシロキサン表面処理水酸化マグネシウムのみでは得られない難燃性を、併用することによって得ることができるようになる。さらにこの水酸化アルミニウムの表面を、モリブデン酸化合物で処理したものを用いることによって、モリブデンが吸熱し、何も処理しない水酸化アルミニウムの場合と比較して、難燃性が向上する。そしてこのような表面処理は、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン化合物の溶液中に、水酸化アルミニウムを浸漬して被覆すればよい。さらに、難燃助剤としてシリコーンパウダーを用いても前述と同様の効果、特性を有する、エチレン系の難燃性樹脂組成物を得ることができる。ただし、このシリコーンパウダーは、得られる樹脂組成物の比重を高くすると押出し加工性に影響するので、できうる限り少ない添加量とすべきである。好ましくは、ベースポリマー100重量部に対して、3〜8重量部がよい。また、これらの難燃助剤は、前記2〜10重量部の範囲で併用して用いてもよい。
【0014】
つぎに、前記エチレン系難燃性樹脂組成物の押出し加工性をより向上させるための、請求項6に記載される、前記エチレン系難燃性樹脂組成物には、加工助剤が0.5〜5.0重量部添加されているエチレン系難燃性樹脂組成物について、説明する。前述のように本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物は、押出し成形加工が十分なものであるが、最近の高速の製造に対応するために、より押出し加工性を高めることが要望される。このために、本発明では加工助剤を添加することが好ましい。すなわち、ステアリン酸、脂肪酸エステル等をベースポリマー100重量部当たり、0.5〜5.0重量部添加される。このことによって、添加しない本発明の難燃性樹脂組成物に対して、5%程度の製造速度を向上させることが可能となる。
【0015】
以上説明したように本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物は、この樹脂組成物が燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もなく、さらに後述するこの樹脂組成物を被覆した電線・ケーブルは、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性であり、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、前記の電線・ケーブルが撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。またリン系の難燃剤を配合していないので、得られた樹脂組成物は着色しておらず、自由に希望の着色を行うことが出来る。さらにまた、前記エチレン系の難燃性樹脂組成物中には、加工助剤を配合することによって、押出し加工性が向上する。
【0016】
さらに、前述したエチレン系難燃性樹脂組成物を用いた、電線・ケーブルに関する請求項7について説明する。この発明は、前記エチレン系難燃性樹脂組成物を導体上に押出し被覆することによって、難燃性電線・ケーブルとするものである。以上のような難燃性電線・ケーブルは、電気・電子機器の内・外配線用の電線・ケーブルとして有用なものである。すなわち前記難燃性脂組成物を銅、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等の導体上に、押出し被覆して製造される。そして前記被覆は、通常0.5〜1.8mm程度の厚さに被覆されるものである。さらに、前記電線・ケーブルは、電子線照射架橋することによって、耐熱性の向上した難燃性電線・ケーブルとすることができると共に、機械的特性としての引張り強度も十分満足できるものである。そしてこのようにして得られた電線・ケーブルは、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性が得られ、さらに機械的特性としても、破断強度が10MPa以上、伸びも350%以上と高屈曲性であり、さらに、耐外傷性も優れたものとなっている。当然に前記難燃性樹脂組成物は、燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もないものであるから、それを用いた電線・ケーブルも同様である。そしてこのような難燃性電線・ケーブルは、電気・電子機器の内・外配線の被覆材料に用いる高難燃性電線・ケーブルとして、有用なものである。
【0017】
【実施例】
以下に本発明の実験例を示して、その効果を説明する。表1に示す各種難燃性樹脂組成物を作製し、それぞれについて比重、破断強度(MPa)、伸び(%)および着色性について、測定した。比重はJIS規格K7112により、伸び(%)JIS規格C3005により、破断強度(MPa)は、JIS規格C3005によって測定した。なお、表1の組成割合に関する数字は、重量部である。結果を、表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
表1の結果から明らかな通り、比重、破断強度、伸びを満足するものは、実験例1〜9の樹脂組成物である。すなわち、ベースポリマーがエチレン系の共重合体であって、特に前記EVAと前記EEAの混合物を用いる場合である。より具体的には、実験例2〜9に示すように、EVAが20〜40重量部とEEAが80〜60重量部からなる混合物をベースポリマーとする場合である。そして、この樹脂混合物100重量部に対して、ポリオルガノシロキサンで表面処理した水酸化マグネシウムを、40〜50重量部並びに難燃助剤2〜10重量部とするものである。ただしこの内、実験例8および9のように、難燃助剤として赤燐を用いた場合には、着色が見られるので希望する着色を得ようとする場合のものには使用できない。また、難燃助剤としては、水酸化アルミニウム、モリブデン酸表面処理水酸化アルミニウム、シリコーンパウダーが有用である。そしてこのような樹脂組成物は、比重が1.14以下であり、破断強度(MPa)が10以上であり、伸び(%)も350以上のものとなる。この内実験例14並びに15は、水酸化マグネシウムの添加量が100重量部と多いので、比重が1.14を超えてしまうので、好ましくない。そして以上のような樹脂組成物は、電気・電子機器類用の内・外配線用として、有望な特性を有するものである。
【0020】
つぎに難燃性については、前記各種難燃性樹脂組成物を外径1.6mmの銅導体上に0.8mm厚さに押出し被覆して、難燃性電線を作製し、JIS規格C3005に規定される60度傾斜燃焼試験を行った。この試験は、前記難燃性電線に着火後30秒以内に自己消火したものを、合格とするものである。さらに耐外傷性については、スクレープ試験(外径0.45mmのステンレス製針を用い、荷重72gで、NEMA式往復磨耗試験器によって、前記針と導体が導通するまでの回数を測定)を行った。導通するまでの回数が、10回以上を合格として、○印で記載した。結果を、表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
表2から明らかな如く、実験例16〜30の樹脂組成物は、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験並びに耐外傷性を、満足するものであることがわかる。しかしながら、表1の実験結果から実験例23並びに24のものは、絶縁被覆層が着色しているので、用途によっては使用できないものである。また、実験例29および30の電線は、絶縁被覆層の比重が1.14以上のものであるから、比重による分別を目的とする場合には、使用できない。しかしながら、実施例16〜22の難燃性電線は、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性を有し、破断強度が10MPa以上で、伸びも350%以上であり、着色性にも優れており耐外傷性も十分なものである。さらには、その絶縁被覆層は比重が1.14以下とポリ塩化ビニル樹脂と比重による分別が可能なものである。また、燃焼時に大量の有害ガスを発生せず、環境上も好ましいものであり、電気・電子機器類用の内・外配線用として、十分機能することが明らかである。
【0023】
【発明の効果】
本発明のエチレン系難燃性樹脂組成物は、エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、さらに好ましくは前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であるエチレン系難燃性樹脂組成物することによって、この樹脂組成物は燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もなく、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、電線・ケーブル被覆が撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。また、破断強度が10MPa以上であり、伸びも350%以上であるので、電線・ケーブル用の被覆材料として、十分な特性のものである。
【0024】
また前記難燃助剤が、水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、さらに前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸処理水酸化アルミニウムであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、さらにまた、前記難燃助剤が、シリコーンパウダーであるエチレン系難燃性樹脂組成物とすることによって、この樹脂組成物が燃焼時にはハロゲンガス等の有害ガスの発生や大量の煙の発生もなく、さらに後述するこの樹脂組成物を被覆した電線・ケーブルは、JIS規格C3005の規定される60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性のものであり、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、前記の電線・ケーブルが撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。また、破断強度が10MPa以上であり、伸びも350%以上であるので、電線・ケーブル用の被覆材料として、十分な特性のものである。さらに得られた樹脂組成物は着色しておらず、自由に希望の着色を行うことが出来る。
【0025】
さらには、前記エチレン系難燃性樹脂組成物が導体上に被覆された電線・ケーブルとすることによって、得られた難燃性電線・ケーブルは、JIS規格C3005の規定される60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性のものであり、さらにこの樹脂組成物は比重が1.14以下のものであるので、前記の電線・ケーブルが撤去され廃棄されたときに、他のプラスチック材料特にポリ塩化ビニル樹脂と、比重による分別が可能となり、好ましいものである。また、破断強度が10MPa以上であり、伸びも350%以上であるので、機械的特性も十分なものである。
Claims (7)
- エチレン系共重合体100重量部に対し、ポリオルガノシロキサン処理水酸化マグネシウム40〜50重量部と難燃助剤2〜10重量部を配合したことを特徴とするエチレン系難燃性樹脂組成物。
- 前記エチレン系共重合体が、エチレン酢酸ビニル共重合体20〜40重量部とエチレンエチルアクリレート共重合体80〜60重量部の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン系難燃性樹脂組成物。
- 前記難燃助剤が、水酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のエチレン系難燃性樹脂組成物。
- 前記水酸化アルミニウムが、モリブデン酸アンモニウム処理水酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項3に記載のエチレン系難燃性樹脂組成物。
- 前記難燃助剤が、シリコーンパウダーであることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のエチレン系難燃性樹脂組成物。
- 前記エチレン系難燃性樹脂組成物には、加工助剤が0.5〜5.0重量部添加されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン系難燃性樹脂組成物。
- 前記エチレン系難燃性樹脂組成物が導体上に被覆されたことを特徴とする、難燃性電線・ケーブル。
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