JP2004157497A - 光学用反射防止膜及びその成膜方法 - Google Patents

光学用反射防止膜及びその成膜方法 Download PDF

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淳史 生水出
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勲 床本
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崇展 堀
Takeshi Kozuka
毅士 古塚
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Abstract

【課題】合成樹脂から成る基材との密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性を確保し、且つ、好適な光学特性を有するケイ素酸化物の膜を有する光学用反射防止膜、及びその成膜方法の提供。
【解決手段】アクリルの基材上に、該アクリルと同程度の屈折率を有するSiO膜を約200nmの膜厚だけ形成し、その上に、1.48〜1.62の範囲内の値の屈折率を有するSiO膜を約200nmの膜厚だけ形成する。更に、例えばHLHL型の反射防止膜の場合、最外層から2番目に位置する層を成すTiO膜を特殊なイオンプレーティング装置を用いて成膜することにより、このTiO膜の屈折率が2.2〜2.4の範囲内の値を有するTiO膜を形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学系に用いられる反射防止膜及びその成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学レンズ、コンパクトディスクの記録内容を読み取るための対物レンズ等の光学系には、反射による光量損失等を抑制するために反射防止膜が形成されている。反射防止膜が形成される基材としては、従来からガラスが多く使用されてきたが、近年では、軽量であり、射出成型による大量生産が可能な合成樹脂、特に光透過性にも優れたアクリル(PMMA)が使用されてきている。
【0003】
反射防止膜の一般的な構成としては、所謂「HLHL型」と称される構成と、「MHL型」と称される構成とがある。HLHL型の反射防止膜とは、隣り合う膜の屈折率が互いに異なるように基材上に積層された多層膜から成り、各膜の屈折率は交互に且つ相対的に高/低と成してある。なお、この多層膜は、4層,5層,或いはそれ以上の層数から成り、何れの場合も最外層(基材から最も離隔して位置する層)は相対的に低屈折率の膜となっている。他方でMHL型の反射防止膜とは、基材上に3層の膜が積層された構成となっており、更にこの3層の膜の屈折率は、基材に近い側の膜から順に、相対的に中程度の屈折率,高い屈折率,低い屈折率を夫々有している。
【0004】
また、合成樹脂を基材として形成された反射防止膜としては、種々の構成例が開示されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。一般に合成樹脂は軟質性を有し、また、薬品により侵食されやすいという性質を有している。そこで、合成樹脂を基材としてその上に反射防止膜を形成する場合には、前記公報にも開示されているように、基材表面にケイ素酸化物による膜を形成し、該膜上に前記HLHL型の多層膜又は前記MHL型の多層膜を形成することにより反射防止膜としている。
【0005】
このケイ素酸化物は、あまりに薄く(例えば、200nm以下)形成すると、基材への密着性,耐環境性(熱,湿気に対する耐性等),耐磨耗性,及び耐薬品性等にて十分な性質を確保することが困難となる。一例としてケイ素酸化物を比較的薄く形成した場合について、環境テストを行った後の反射防止膜の表面状態の写真を図11に示す。該反射防止膜は、合成樹脂の表面に比較的薄くケイ素酸化物を形成し、その上に反射防止特性を有するHLHL型の多層膜が形成されている。図11に示すように、ケイ素酸化物が比較的薄い場合には、反射防止膜の表面に多数のクラックが発生しており、耐環境性が不十分であることが判る。従って、ケイ素酸化物の膜は通常は単層で300nm以上の比較的厚い膜厚で形成されており、上記特許文献1,2においてもこのようなケイ素酸化物の膜を有する反射防止膜が開示されている。
【0006】
また、上述したような反射防止膜を構成する各層の膜は、真空チャンバ内に設けられた電子銃から射出される電子ビームにより成膜材料を加熱・蒸散させ、基材に蒸着させることにより成膜することが多い。これは、成膜時における制御性及び操作性に優れており、安定した成膜条件を確保し易いからである。
【0007】
【特許文献1】
特許第3221764号公報(表1〜表6)
【特許文献2】
特開2002−202401号公報(表1,表5)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、光学特性として反射防止特性を鑑みた場合、ケイ素酸化物の膜は、屈折率が1.48〜1.62の範囲内、好ましくは1.5〜1.6の範囲内の値であり且つ膜厚が200nm程度であることが好ましい。しかしながら、上述したような理由から、従来はケイ素酸化物の膜を200nm程度に薄くすることができなかった。
【0009】
また、特にアクリルを基材とし、電子銃を用いて形成した反射防止膜は、一般に密着性が非常に低い。これは、電子銃から射出されて成膜材料へ照射された電子の一部が跳ね返り、2次電子としてなって基材の表面へ衝突する結果、該基材の表面が変質してしまうためである。従来から真空チャンバ内に磁石を配置し、2次電子を捕獲する方法が用いられているが、適用できる真空チャンバのサイズに制限があり、また、場所によって捕獲効果が異なるため、反射防止膜と基材との密着力にムラが生じていた。
【0010】
これに対し、塗装,ディップ等のウエットプロセスによってアクリルの基材にハードコート層を形成することにより、密着性及び耐磨耗性は向上する。しかしながら、膜厚が厚くなり、また、アクリルと同程度の屈折率を有するハードコート液が存在しないため、アクリルとハードコート層との間の光の干渉によって反射特性が低下してしまうという問題がある。また、反射防止膜を形成する全ての膜を抵抗加熱により蒸散させて成膜する方法があり、これにより成膜された反射防止膜は密着性が良好である。しかしながら、大量に生産する際の品質の安定性、及び生産時における操作性が低く、また高融点材料を成膜材料として用いることができないという問題点がある。
【0011】
他方、上述したHLHL型の多層膜からなる反射防止膜の場合、その反射防止特性を向上させるため、最外層から2番目の層に位置する膜の屈折率は可及的に高いことが好ましい。ガラスを基材として用いた場合には、該基材を300℃程度に加熱することにより、成膜される前記膜の屈折率を高めることができる。しかしながら、基材として用いられるアクリルは耐熱温度が80℃程度であるため、従来は十分に高い屈折率が得られなかった。また、上述した公報において開示されている反射防止膜の場合、最外層から2番目の層に位置する膜の屈折率は、高くてもせいぜい2.15程度であり、より高い屈折率を実現することが要望されている。
【0012】
また、実用的な光学膜用の材料のうちで弗化マグネシウム(MgF)は最も低屈折率(屈折率n=1.38)であるため、反射防止膜の最外層に用いれば反射防止特性が向上する。また、基材を加熱して成膜することにより十分な硬性を有するため、ガラスを基材としてを用いた反射防止膜には広く使用されている。しかしながら、アクリル基材に形成すべく無加熱で成膜した場合、非常に脆くて耐磨耗性に乏しくなるため、従来はアクリルを基材として用いた反射防止膜には利用することができなかった。
【0013】
なお、従来から用いられてきた所謂プラズマ・イオンプロセスによって基材を加熱することなくMgF膜を成膜した場合、十分な硬性を有するMgF膜を得ることができる。しかしながらこのプロセスによれば、成膜されたMgF膜中にて弗素が欠乏するという欠点がある。その結果、膜が茶色を帯び、光学膜としては到底利用できない程に光の吸収率が高くなってしまう。
【0014】
そこで本発明は、合成樹脂から成る基材との密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性を確保し、且つ、好適な光学特性を有する光学用反射防止膜、及びその成膜方法を提供することを第1の目的とする。
【0015】
また、合成樹脂を基材とし、所謂HLHL型の多層膜を有する反射防止膜において、最外層から2番目の層に位置する膜の屈折率を従来に比して一段と高めた光学用反射防止膜、及びその成膜方法を提供することを第2の目的とする。
【0016】
また、合成樹脂を基材とし、所謂MHL型の多層膜を有する反射防止膜において、十分な硬性と、光学膜として十分に低い屈折率とを有するMgF膜を備える光学用反射防止膜、及びその成膜方法を提供することを第3の目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る光学用反射防止膜は、合成樹脂製の基材上に形成された光学用反射防止膜において、前記基材表面には、該基材の屈折率と略同一の屈折率を有する所定の膜厚の第1膜が形成され、該第1膜表面には、1.48〜1.62の範囲内の値の屈折率を有し前記第1膜と同一又は異なる材料から構成される所定の膜厚の第2膜が形成されており、前記第2膜表面には、反射防止特性を有する多層膜が備えられたものである。特に、 前記第1及び第2膜が、ケイ素酸化物から構成されることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、第1膜及び第2膜を合わせた膜厚によって、密着性、耐環境性、耐磨耗性、耐薬品性等を十分に確保できるように、例えば100nm〜200nm程度の膜厚を有する第1膜を形成した上で、良好な光学特性が得られるように、1.48〜1.62の範囲内、好ましくは1.5〜1.6の範囲内の値の屈折率を有する第2膜を好ましい膜厚(例えば、200nm程度)で形成することができる。なお、第1膜の屈折率は、合成樹脂製の基材の屈折率と略同一であるため、該第1膜が形成されていることによって反射防止膜の光学特性が低下することは殆どない。また、第1及び第2膜が同一の材料から構成される場合には、第1及び第2膜間の密着性のさらなる向上が図られ、特に、第1及び第2膜がケイ素酸化物から構成される場合には、反射防止膜の光学特性を良好に保ちつつ、密着性、耐環境性、耐磨耗性、耐薬品性等を十分に確保することが可能となる。
【0019】
前記基材は、アクリルから成ってもよい。上述したように第1膜及び第2膜が形成されているため、基材として密着性が悪いアクリルを用いた場合であっても、十分に高い密着性が得られ、反射防止膜にクラックが生じるのを抑制することができる。
【0020】
前記第1膜は、抵抗加熱法を用いた真空蒸着法により成膜されてもよい。このような構成とすることにより、基材の表面に変質等のダメージを与えることなくケイ素酸化物を主成分とする第1膜を形成することができる。また、基材表面が第1膜によりコーティングされるため、2次電子によって基材表面に与えられるダメージを防止することができる。従って、該第1膜の上に形成する膜の成膜には電子銃を用いることも可能となる。
【0021】
前記多層膜は、隣同士で屈折率が互いに異なる膜が積層されて成り、該各膜の屈折率は、交互に且つ相対的に高/低を成してもよい。このような構成とすることにより、所謂HLHL型の多層膜を有する反射防止膜においても、上述したような効果を奏することができる。
【0022】
前記多層膜は、前記第2膜から最も離隔した最外層から2番目の位置に、2.2〜2.4の範囲内の値の屈折率を有する第3膜を有することが好ましい。このような構成とすることにより、従来にない高屈折率の第3膜を有するHLHL型の反射防止膜を得ることができ、優れた光学特性を有する反射防止膜を実現することができる。
【0023】
前記第3膜は、TiO及びZrOの混合物、TiO、Ti、Ti、Ta、ZrO並びにNbのうち、何れか一つを主成分としてもよい。このような構成とすることにより、上述したような効果を得ることができる。
【0024】
前記第3膜は、真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するプロセスと、前記真空チャンバ内にて成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記バイアス供給電極を一方の電極として該電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるプロセスと、20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するプロセスとに基づいて成膜されてもよい。該バイアス電圧は、負の平均値及び正の最大値を有してもよい。
【0025】
また、前記第3膜は、真空チャンバと、成膜に利用するイオンビームを発生させるイオンビーム発生構造とを備える成膜装置を用い、前記真空チャンバ内に前記基材を配置するプロセスと、前記イオンビーム発生構造によりイオンビームを発生させるプロセスと、前記真空チャンバ内において前記イオンビームを用いて前記基材表面に成膜材料を堆積させるプロセスとに基づいて成膜されてもよい。例えば、前記イオンビーム発生構造がイオン銃であり、前記成膜材料を堆積させるプロセスは、前記イオン銃にて発生させたイオンビームを前記成膜材料に照射し該材料を蒸発させるプロセスと、前記蒸発した成膜材料を前記基材表面に蒸着させるプロセスとを含んでもよい。なお、イオンビームによる蒸発とは、イオンビームを用いたスパッタリングによる蒸発を含むものである。
【0026】
また、前記第3膜は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ構造(例えばプラズマ銃)と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に基材を配置するプロセスと、前記プラズマ発生構造においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くプロセスと、前記電子ビームを前記真空チャンバ内の前記成膜材料に照射して前記成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にプラズマを発生させるプロセスと、バイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加して前記基材表面に前記成膜材料を堆積させるプロセスとに基づいて成膜されてもよい。
【0027】
このような構成とすることにより、基材を加熱することなく(無加熱で)、加熱した場合と同程度の高屈折率を有する第3膜を形成することができる。従って、アクリル等の耐熱性の低い基材であっても、光学特性に優れた反射防止膜を実現することができる。
【0028】
前記多層膜は、前記第2膜から最も離隔して位置する外層膜と、前記第2膜に対して最も近くに位置する内層膜と、前記外層膜及び内層膜の間に位置する中間層膜との3層が積層されて成り、前記外層膜は、前記3層の膜のうち最も低い屈折率を有し、前記中間層膜は、前記3層のうち最も高い屈折率を有し、前記内層膜は、前記外層膜の屈折率と前記中間層膜の屈折率との間の値の屈折率を有してもよい。
【0029】
このような構成とすることにより、所謂MHL型の多層膜を有する反射防止膜においても、上述したような効果を奏することができる。
【0030】
前記外層膜は、弗化マグネシウム(MgF)を主成分とすることが好ましい。
このような構成とすることにより、実用的な光学用材料のうちで特に屈折率の低いMgFを用いるため、より光学特性に優れた反射防止膜を実現することができる。
【0031】
前記外層膜は、真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するプロセスと、前記真空チャンバ内にて成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記バイアス供給電極を一方の電極として該電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるプロセスと、負の平均値及び正の最大値を有して20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するプロセスとに基づいて成膜されてもよい。
【0032】
また、前記外層膜は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ発生構造(例えばプラズマ銃)と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に基材を配置するプロセスと、前記プラズマ発生構造においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くプロセスと、前記電子ビームを前記真空チャンバ内の前記成膜材料に照射して前記成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にプラズマを発生させるプロセスと、負の平均値及び正の最大値を有するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するプロセスとに基づいて成膜されてもよい。
【0033】
このような構成とすることにより、基材を加熱することなく最外層を成膜することができ、更に、最外層としてMgF膜を形成する場合には、硬性が十分に高く、また、弗素の欠乏のない低い屈折率を有するMgF膜を得ることができ、優れた光学特性を有する反射防止膜を実現することができる。
【0034】
本発明に係る光学用反射防止膜の成膜方法は、合成樹脂製の基材上に形成された光学用反射防止膜の成膜方法について、前記基材表面に、前記基材の屈折率と略同一の屈折率を有する所定の膜厚の第1膜を抵抗加熱法を用いた真空蒸着法により形成するステップと、前記第1膜表面に、1.48〜1.62の範囲内の値の屈折率を有し前記第1膜と同一又は異なる材料から構成される所定の膜厚の第2膜を抵抗加熱法を用いた真空蒸着法により形成するステップと、前記第2膜表面に、反射防止特性を有する多層膜を形成するステップとを備えたものである。特に、前記第1及び第2膜がケイ素酸化物を主成分とすることが好ましい。
【0035】
このような構成とすることにより、第1膜及び第2膜を合わせた膜厚によって、密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性等を十分に確保できるように、例えば100nm〜200nm程度の膜厚を有する第1膜を形成した上で、良好な光学特性が得られるように、1.48〜1.62の範囲内、好ましくは1.5〜1.6の範囲内の値の屈折率を有する第2膜を好ましい膜厚(例えば、200nm程度)で形成することができる。なお、第1膜の屈折率は、合成樹脂製の基材の屈折率と略同一であるため、該第1膜が形成されていることによって反射防止膜の光学特性が低下することは殆どない。
【0036】
前記多層膜を形成するステップは、前記第2膜表面に、隣同士で屈折率が互いに異なるように、また該屈折率が交互に且つ相対的に高/低を成すように、膜を積層するステップを含み、前記膜を積層するステップは、前記多層膜のうち前記基材から最も離隔した最外層から2番目に位置する第3膜として、TiO及びZrOの混合物、TiO、Ti、Ti、Ta、ZrO並びにNbから構成される成膜材料群のうちの何れか一つを主成分とする膜を形成するステップを含んでもよい。
【0037】
このようにして光学用反射防止膜を成膜することにより、例えば基材としてアクリルを用いた場合であっても、密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性に優れ、且つ、光学的な反射防止特性にも優れた所謂HLHL型の反射防止膜を実現することができる。
【0038】
前記第3膜を形成するステップは、真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するステップと、前記真空チャンバ内にて、前記成膜材料群のうちの何れか一つを成膜材料として蒸発させるステップと、前記バイアス供給電極を一方の電極として前記電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるステップと、20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するステップとを有してもよい。また、前記バイアス電圧は、負の平均値及び正の最大値を有してもよい。
【0039】
また、前記第3膜を形成するステップは、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置され成膜材料に照射するイオンビームを発生させるイオン銃とを備える成膜装置を用い、前記真空チャンバ内に前記基材を配置するステップと、前記イオン銃にてイオンビームを発生させ前記イオンビームを照射して前記成膜材料群のうちの何れか一つを成膜材料として蒸発させるステップと、前記蒸発した成膜材料を前記基材表面に蒸着させるステップとを有してもよい。
【0040】
また、前記第3膜を形成するステップは、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ銃と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に基材を配置するステップと、前記プラズマ銃においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くプロセスと、前記電子ビームを照射して前記真空チャンバ内にて前記成膜材料群のうちの何れか一つを成膜材料として蒸発させるステップと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にてプラズマを発生させるステップと、バイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加することにより前記基材の表面に前記成膜材料を堆積させるステップとを有してもよい。
【0041】
このような構成とすることにより、基材を加熱することなく(無加熱で)、加熱した場合と同程度の高屈折率を有する第3膜を形成することができる。従って、アクリル等の耐熱性の低い基材であっても、光学特性に優れた反射防止膜を実現することができる
前記多層膜を形成するステップは、前記第2膜に対して最も近くに位置する内層膜を形成するステップと、前記内層膜上に中間層膜を形成するステップと、前記中間層膜上に前記第2膜から最も離隔して位置する外層膜を形成するステップとを含み、前記外層膜は、前記3層の膜のうち最も低い屈折率を有し、前記中間層膜は、前記3層のうち最も高い屈折率を有し、前記内層膜は、前記外層膜の屈折率と前記中間層膜の屈折率との間の値の屈折率を有し、前記外層膜を形成するステップでは、弗化マグネシウムを主成分とする膜を形成することが好ましい。
【0042】
このようにして光学用反射防止膜を成膜することにより、上述したような優れた性質を有する反射防止膜を所謂MHL型においても実現することができる。
【0043】
弗化マグネシウムを主成分とする前記外層膜を形成するステップは、真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するステップと、前記真空チャンバ内にて弗化マグネシウムを成膜材料として蒸発させるステップと、前記バイアス供給電極を一方の電極として該電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるステップと、負の平均値及び正の最大値を有して20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するステップとを有してもよい。
【0044】
また、弗化マグネシウムを主成分とする前記外層膜を形成するステップは、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ銃と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するステップと、前記プラズマ銃においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くステップと、前記電子ビームを照射して前記真空チャンバ内にて弗化マグネシウムを成膜材料として蒸発させるステップと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にプラズマを発生させるステップと、負の平均値及び正の最大値を有するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加して前記基材表面に前記成膜材料を堆積させるステップとを有してもよい。
【0045】
このような構成とすることにより、基材を加熱することなく最外層を成膜することができ、更に、最外層としてMgF膜を形成する場合には、硬性が十分に高く、また、弗素の欠乏のない低い屈折率を有するMgF膜を得ることができ、優れた光学特性を有する反射防止膜を実現することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る反射防止膜の構成を示す断面図である。図1に示す反射防止膜Aは、所謂HLHL型の多層膜を有する反射防止膜を示している。該反射防止膜Aは、アクリル(PMMA)から成る基材100上に、該基材100に近い側から順に形成された第1層〜第6層の膜により6層構造を成す多層膜によって構成されている。
【0047】
図2は、本実施の形態に係る反射防止膜について、各層の主成分たる薬品,各層の物理膜厚(nm),光学膜厚,及び設計波長(nm)を示す図表である。図1,2に示すように前記反射防止膜Aは、第1層にSiO膜101,第2層にSiO膜102,第3層にZrO及びTiOの混合膜(ZrO+TiO膜)103,第4層にSiO膜104,第5層にTiO膜105,第6層にSiO膜106が夫々形成されている。
【0048】
ここで、第1層のSiO膜101は、基材100の材料の屈折率と同程度の屈折率を有することが望ましく、本実施の形態ではアクリルの屈折率と略同一になるように屈折率が1.502となるように成膜している。また、第1層のSiO膜101の膜厚は、第2層のSiO膜102と合わせて十分な密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性を得られるように所定の膜厚とされ、本実施の形態においては200nmとされている。該SiO2膜は抵抗加熱法を用い、真空チャンバ内にて基材100上に真空蒸着されて成膜されている。
【0049】
なお、SiO膜は、膜中のケイ素原子と酸素原子との組成比によって屈折率が変動する。従って、真空蒸着時に真空チャンバ内を適当な酸素雰囲気とすることにより、所望の屈折率を有するSiO膜を形成することができる。また、基材100としてアクリルを用いる場合、第1層のSiO膜101の屈折率は、約1.48〜1.51の範囲内にその値を有することが望ましい。
【0050】
第2層のSiO膜102は、優れた光学特性を確保することができる屈折率を有するように、その値は1.48〜1.62の範囲内であることが望ましく、本実施の形態では1.6021となるように成膜してある。また、第2層のSiO膜102の膜厚は200nmとしてあり、第1層のSiO膜101と合わせて400nmのSiO膜が基材100上に形成されていることになる。従って、反射防止膜Aは、アクリルから成る基材100に対する密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性に優れたものとなっている。なお、該SiO膜102は、第1層のSiO膜101と同様に適当な酸素雰囲気中にて抵抗加熱により真空蒸着されて成膜されている。
【0051】
第3層には、ZrO及びTiOの混合材によって比較的高い屈折率(本実施の形態では、屈折率n=1.9899)を有するZrO+TiO膜103が形成されている。該ZrO+TiO膜103は、電子銃を用いてZrO及びTiOの混合材を加熱し、前記第2層上に真空蒸着して成膜されている。なお、前述したように基材100上には第1層及び第2層を合わせて400nmの膜厚を有するSiO膜101,SiO膜102が既に形成されている。従って、電子銃を用いて真空蒸着を行った場合であっても、2次電子が基材100へ衝突して該基材100の表面が変質されることがなく、反射防止膜Aと基材100との密着性に影響はない。
【0052】
第4層には、第3層のZrO+TiO膜103に対して比較的低い屈折率(本実施の形態では、n=1.4471)を有するSiO膜104が形成されている。該SiO膜104は電子銃を用いて第3層上に真空蒸着されている。
【0053】
第5層には、第4層のSiO膜104と比較して十分に高い屈折率(本実施の形態では、n=2.3483)を有するTiO膜105が形成されている。該TiO膜105は、特殊なイオンプレーティング装置を用いた方法により成膜されている。この方法を用いて成膜することにより、基材100を加熱することなく、従来では実現できなかった高屈折率を有する第5層を実現している。なお、前記特殊なイオンプレーティング装置、及び該装置を用いた成膜方法については後述する。
【0054】
第6層には、第5層のTiO膜105と比較して十分に低い屈折率(本実施の形態では、n=1.4471)を有するSiO膜106が形成されている。該SiO膜106は電子銃を用いて第5層上に真空蒸着されている。
【0055】
次ぎに、図3に、本発明の実施の形態に係る反射防止膜の他の構成を表す断面図を示す。図3に示す反射防止膜Bは、所謂MHL型の多層膜を有する反射防止膜を示している。該反射防止膜Bは、アクリルから成る基材200上に、該基材200に近い側から順に形成された第1層〜第5層の膜により5層構造を成す多層膜によって構成されている。
【0056】
図2,3に示すように前記反射防止膜Bは、第1層にSiO膜201,第2層にSiO膜202,第3層にAl膜203,第4層にZrO及びTiOの混合膜(ZrO+TiO膜)204,第5層にMgF膜205が夫々形成されている。
【0057】
ここで、第1層のSiO膜201,及び第2層のSiO膜202は、図1に示した反射防止膜Aにおける第1層のSiO膜101,及び第2層のSiO膜102と同様の製法により同様の構成(屈折率,膜厚等)と成してある。従って、反射防止膜Bは、アクリルからなる基材200に対する密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性に優れ、且つ、光学特性に優れたものとなっている。
【0058】
第3層には、後述する第4層のZrO+TiO膜204と第5層のMgF膜205との間の値の屈折率(本実施の形態では、n=1.631)を有するAl膜203が形成されている。該Al膜203は、電子銃を用いて真空蒸着されて第2層上に成膜されている。
【0059】
第4層には、第3層のAl膜203に対して比較的高い屈折率(本実施の形態では、n=1.9899)を有するZrO+TiO膜204が形成されている。該ZrO+TiO膜204は、電子銃を用いて真空蒸着されて第3層上に成膜されている。
【0060】
第5層には、第3層のAl膜203に対して比較的低い屈折率(本実施の形態では、n=1.3733)を有するMgF膜205が形成されている。該MgF膜205は、反射防止膜Aの第5層のTiO膜105を形成するために用いたのと同様の、特殊なイオンプレーティング装置を用いた方法により成膜されている。この方法を用いて成膜することにより、基材200を加熱することなく、高い耐磨耗性と優れた光学特性とを有するMgF膜205を実現している。この場合、最外層に耐磨耗性に優れた膜(例えば、SiO)を別個に形成する必要がない。
【0061】
また、既に述べたように反射防止膜A,Bでは、基材100,200上に第1層のSiO膜101,201、及び第2層のSiO膜102,202が形成されているため、第3層以上の層に成膜する際には電子銃を用いて成膜材料を加熱・蒸散させることができる。従って、抵抗加熱による場合と比較して、大量に生産する際の品質の安定性,生産時における操作性が高く、また、高融点材料を成膜材料として使用することも可能である。
【0062】
次ぎに、上述した本実施の形態に係る反射防止膜A,Bとの比較例として、前記特殊なイオンプレーティング装置を用いずに形成した反射防止膜Cの構成を表す断面図を図4に示す。図2,4に示すように反射防止膜Cは、図1に示した反射防止膜Aと同様の基材及び材料から成る所謂HLHL型の反射防止膜である。即ち、基材300に近い側から順に、第1層のSiO膜301,第2層のSiO膜302,第3層のZrO及びTiOの混合膜(ZrO+TiO膜)303,第4層のSiO膜304,第5層のTiO膜105,第6層のSiO膜106から構成されている。但し、第5層のTiO膜305は、上述した特殊なイオンプレーティング装置を用いず、従来から公知の真空蒸着法により成膜されている。
【0063】
次ぎに、上述した特殊なイオンプレーティング装置及び該装置を用いた成膜方法について説明する。図5は、前記反射防止膜Aの第5層のTiO膜,前記反射防止膜Bの第5層のMgF膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置の一例を示す模式図である。該成膜装置10は、成膜の方式としてイオンプレーティングに基づいて成膜できるように構成されている。
【0064】
成膜装置10は、真空チャンバ1と電力供給ユニット8とを主として備えている。該真空チャンバ1は導電性の材質により形成され、接地されている。該真空チャンバ1内の上部には、成膜される基材(例えば、基材200)を保持する基材ホルダ2が配置されている。該基材ホルダ2は、導電性の材質によって形成されている。また、該基材ホルダ2は、図示されないモータによって回転駆動されるように成されており、基材ホルダ2を回転させることにより、基材200を回転させつつ成膜できるように構成されている。真空チャンバ1内の下部には、成膜材料を保持するための坩堝3と、該坩堝3内の成膜材料へ電子ビームを照射するための電子銃4とが配置されている。
【0065】
また、該成膜装置10には、特に図示されない真空ポンプ等の排気手段と、ガス供給手段とが備えられ、真空チャンバ1内の空間を所要の真空雰囲気とすることができ、また、例えば所要の酸素雰囲気(又はアルゴン雰囲気等)とすることができる。
【0066】
前記電力供給ユニット8は、高周波電源ユニット11とバイアス電源ユニット12とを備えている。該高周波電源ユニット11は、一方の出力端子がハイパスフィルタ(HPF)15を介して前記基材ホルダ2に接続されており、他方の出力端子は接地されている。また、バイアス電源ユニット12は、一方の出力端子がローパスフィルタ(LPF)16を介して前記基材ホルダ2に接続されており、他方の出力端子は接地されている。
【0067】
従って、前記基材ホルダ2は、高周波電力とバイアス電力との双方を真空チャンバ1内へ供給するための電極をも成している。なお、基材ホルダ2へ高周波電力が印加された場合、真空チャンバ1内にはプラズマが生成され、前記坩堝3から蒸散した成膜材料はイオン化(励起)される。
【0068】
前記高周波電源ユニット11の出力について、その具体的な電力値及び周波数は、成膜しようとする膜の材質及び成膜条件等に応じて適宜決定される。
【0069】
また、高周波電源ユニット11とハイパスフィルタ15との間には特に図示しないマッチングボックスが設けられる。このマッチングボックスは、コンデンサ,コイル等からなる周知のマッチング回路により構成されており、該マッチング回路を調整することにより、高周波電源ユニット11側と真空チャンバ1側とのインピーダンスをマッチングさせることができる。
【0070】
他方、バイアス電源ユニット12は、波形生成器13とバイアス電源14とを備えている。波形生成器13は、バイアス電源ユニット12から出力するためのバイアス電圧の波形を生成してバイアス電源14へ入力するものである。この波形生成器13は、定常的に一定値を取る直流波形,各周波数の交流波形,及び方形波又は三角波等の各種の波形を、基本波形として生成させることができる。また、複数の基本波形に基づいて他の基本波形に合成することもできる。そして、波形生成器13により生成された基本波形に基づき、バイアス電源14によって所定の大きさの出力のバイアス電圧に増幅される。
【0071】
なお、前記ハイパスフィルタ15は、高周波電源ユニット11からの出力を基材ホルダ2側へ通過させ、バイアス電源ユニット12からの出力が高周波電源ユニット11へ入力されるのを阻止する機能を担っている。また、前記ローパスフィルタ16は、バイアス電源ユニット12からの出力を基材ホルダ2側へ通過させ、高周波電源ユニット11からの出力がバイアス電源ユニット12へ入力されるのを阻止する機能を担っている。
【0072】
次に、バイアス電源ユニット12から出力されるバイアス電圧について説明する。図6は、バイアス電源ユニット12から出力されるバイアス電圧の波形の一例を示している。図6において、横軸は時間(sec.)に対応しており、縦軸は電圧値(V)の大きさに対応している。
【0073】
バイアス電圧は、図6に示されるように周期的に電圧値が正負に変動する。より詳述すると該バイアス電圧は、一周期(TW1+T)のうちの期間TW1の間は一定の正の電圧値(VP1)をとる正バイアスを成し、該一周期のうちの他の期間Tの間は一定の負の電圧値(−VB1 )をとる負バイアスを成し、方形パルス状の波形を成している。
【0074】
以上に説明した成膜装置10を用い、以下のように光学膜を成膜することができる。なお、以下に示す成膜の手順においては、上述した反射防止膜Bの第5層を成すMgF膜205を成膜する場合について説明する。但し、反射防止膜Aの第5層を成すTiO膜105を成膜する場合についても同様の手順に基づいて行えばよい。
【0075】
初めに、坩堝3にはMgFからなる成膜材料を装填し、基材ホルダ2には基材200をセットする。基材200を基材ホルダ2にセットするにあたり、成膜しようとする基材200の表面が坩堝3に対向するようにセットする。そして、電子銃4から射出させた電子ビームを成膜材料へ照射し、該成膜材料を蒸発させる。
【0076】
他方、電力供給ユニット8を動作させ、基材ホルダ2を介して真空チャンバ1内へ高周波電力を供給し、更に、バイアス電源ユニット12を動作させて基材ホルダ2へバイアス電圧を印加する。
【0077】
これにより、真空チャンバ1内にはプラズマが生成される。また、坩堝3にて蒸散された成膜材料は、前記プラズマを通過する際にイオン化(励起)され、MgFイオンは基材200へ入射・付着し、該基材200上にMgF膜が形成される。
【0078】
ところで、成膜装置10を用いて基材200に成膜する過程において、基材ホルダ2に高周波電圧が印加され、更に真空チャンバ1内にプラズマが形成されると、基材200の表面近傍には、いわゆる自己バイアスに伴う負電位が形成される。
【0079】
そして、かかる自己バイアスに伴う負電位,及びバイアス電圧の負バイアスによって、正電荷を帯びたMgFイオンを基材200へ向かって加速させることができる。このように、バイアス電圧の負バイアスによってMgFイオンを一層加速することができ、基材200に形成されるMgF膜をより緻密な構造にすることができる。
【0080】
また、成膜装置10を用いた成膜過程においては、イオン化したMgFから結合の弱い弗素が解離され易いが、バイアス電圧が期間TW1の間に正バイアスをとるため、負電荷を帯びた弗素イオンを基材200に取り込むことができる。従って、基材200に形成される膜における弗素の欠乏を防ぐことができ、弗素の欠乏に伴って生ずるMgF膜の光学特性の低下を防ぐことができる。
【0081】
ここで、前記自己バイアスについて簡単に説明する。ハイパスフィルタ15は、高周波電源ユニット11に対して直列に接続されたブロッキングコンデンサ(図示せず)を有している。該ブロッキングコンデンサは、電流の高周波成分は透過させるが直流成分は遮断するという機能を有している。従って、高周波電力が真空チャンバ1内に供給された場合、該高周波電力の供給によって発生したプラズマから基材ホルダ2に流入した電荷は前記ブロッキングコンデンサに蓄積される。従って、ブロッキングコンデンサの両端には、ブロッキングコンデンサの容量と電荷量とによって決まるオフセット電圧が生じ、このオフセット電圧が基材ホルダ2に印加される。また、プラズマ中に存在する電子とイオンとを比較すると、電子の方が速い速度で基材ホルダ側に移動するため、前記オフセット電圧は基材ホルダ2側が負の一定値となる。このような仕組みでプラズマに接する電極(ここでは基材ホルダ2)に発生する電圧を自己バイアスと呼んでいる。
【0082】
次に、この自己バイアスとバイアス電源ユニット12から出力されるバイアス電圧との関係について説明する。ハイパスフィルタ15が有するブロッキングコンデンサとバイアス電源ユニット12とは基材ホルダ2に対し互いに並列に接続されている。このような場合には、自己バイアスとバイアス電源ユニット12によるバイアス電圧とのうち、優勢な方の電圧が支配的に基材ホルダ2に印加される。本実施の形態では、バイアス電源ユニット12からの出力であるバイアス電圧が優勢であり、このバイアス電圧が支配的に基材ホルダ2に印加される。図7は、基材ホルダ2の電位を示すグラフである。図7に示すように、基材ホルダ2の電位Vは、バイアス電源ユニット12によるバイアス電圧(図6参照)にほぼ従ったものとなり、それと同様に変化する。
【0083】
なお、バイアス電圧としては図6に示した波形のものに限られない。例えば、正弦波状の波形を有するものであってもよく、好ましくは負の平均値と正の最大値を有し、その周波数が20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化する電圧であればよい。また、バイアス電圧の周波数としてはより高い周波数であることが望ましいが、周波数を高くし過ぎると真空チャンバ1内に生成されるプラズマが不安定となるため、実用的には上述したように2.45GHz以下とするのが望ましい。
【0084】
次ぎに、上述した本実施の形態に係る反射防止膜A,Bと、比較例としての反射防止膜Cとを比較する。図8は、前記反射防止膜A,B,Cについて、各波長(約350nm〜800nm)を有する光に対する反射率を示すグラフである。
【0085】
図8に示すように、前記反射防止膜A,Bは、約400nm〜650nmの範囲の波長を有する光に対し、平均反射率が約0.2%であり、前記反射防止膜Cについての同範囲の波長を有する光に対する平均反射率は約0.5%であった。従って、本実施の形態に係る反射防止膜A,Bは共に、上記成膜装置10を用いずに形成した反射防止膜Cと比較して良好な反射防止特性を有していることが判る。
【0086】
ところで、上述した反射防止膜Aは、前記範囲の波長を有する光が透過する際に光量損失が無いとした場合、その光の透過率を99.8%と仮定することができる。同様に、反射防止膜Bの光の透過率も99.8%と仮定することができ、反射防止膜Cの光の透過率は99.5%と仮定することができる。
【0087】
従って、例えばレンズの両面を反射防止膜Aでコーティングした場合、このレンズ(以下、「レンズA」という)における反射防止膜の透過率は99.6%となる。同様に、レンズ両面を反射防止膜Bでコーティングした場合、このレンズ(以下、「レンズB」という)における反射防止膜の透過率は99.6%となる。他方、レンズ両面を反射防止膜Cでコーティングした場合、このレンズ(以下、「レンズC」という)における反射防止膜の透過率は99.0%となる。このようにレンズA,BとレンズCとでは、コーディングされた反射防止膜の透過率に約0.6%もの差が存在することとなる。
【0088】
また、望遠用のカメラレンズアレイでは、一般に10枚ものレンズが組み合わされて構成されていることが多々ある。このようなカメラレンズアレイを前記レンズA,B,又はレンズCを用いて構成した場合、レンズA,Bを用いて構成したカメラレンズアレイの光の透過率は0.99610=0.961(96.1%)となり、レンズCを用いて構成したカメラレンズアレイの光の透過率は0.99010=0.904(90.4%)となる。このように、反射防止膜A,Bを用いた場合と、反射防止膜Cを用いた場合とで、カメラレンズアレイの光の透過率は約5.7%もの差が存在することとなり、両カメラレンズアレイの光学特性に格段の差が生じることが判る。従って、反射防止膜A,Bが極めて良好な光学特性を有していることが判る。
【0089】
また、反射防止膜A,Bについての耐磨耗性試験の結果を表す写真を図9に、反射防止膜Cについての耐磨耗試験の結果を表す写真を図10に夫々示す。図9,10に示すように、反射防止膜Cに対して反射防止膜A,Bは、膜の剥離もなく、傷もほとんどない良好な耐磨耗性を有していることが判る。
【0090】
以上に詳述したように、本発明に係る光学用反射防止膜及びその成膜方法によれば、アクリル等の剛性樹脂から成る基材との密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性に優れ、且つ、好適な光学特性を有するケイ素酸化物の膜を有する光学用反射防止膜を実現することができる。
【0091】
また、合成樹脂を基材とし、所謂HLHL型の多層膜を有する反射防止膜において、最外層から2番目の層に位置する膜の屈折率を従来に比して一段と高め、優れた反射防止特性を有する反射防止膜を実現することができる。
【0092】
また、合成樹脂を基材とし、所謂MHL型の多層膜を有する反射防止膜において、十分な硬性と、光学膜として十分に低い屈折率とを有するMgF膜を形成し、優れた反射防止特性を有する反射防止膜を実現することができる。
【0093】
なお、本実施の形態においては図1に示すようにHLHL型として4層を成す反射防止膜Aについて説明しているが、5層又はそれ以上の多層を成すようにしてもよい。
【0094】
また、本実施の形態において、図1及び図3の反射防止膜A,Bを構成する各層の構成材料は上記に限定されるものではなく、これ以外の材料から構成されてもよい。例えば、図1に示すHLHL型の反射防止膜Aでは、前述のように最外層から2番目の層に位置する屈折率の高い第5層105がTiOを主成分として構成されているが、該性質を有する第5層は、TiO以外に、透明で屈折率が2.2〜2.4の範囲と高い材料から構成されてもよい。具体的には、反射防止膜Aにおいて、第5層105は、TiO、ZrO、Ti、Ti、Ti、Ta、Nb、並びに、TiO及びZrOの混合物の何れか一つを主成分として構成されてもよい。また、例えば、図1の反射防止膜Aにおいて、屈折率の低い最外層に相当する第6層106が、前述のイオンプレーティング法により形成されたMgF膜から構成されてもよい。第6層106をMgF膜で構成することにより、該層106において、十分な硬性と十分低い屈折率とを実現することができるので、優れた反射防止膜を実現することができる。
【0095】
また、基材100,200上に形成される第1層及び第2層は、SiO以外のケイ素酸化物から構成されてもよく、あるいは、それ以外の材料から構成されてもよい。さらに、第1層及び第2層が、異なる材料から構成されてもよい。なお、第1層及び第2層が同一の材料から構成される場合には、両層の密着性が良好となる。また、本実施の形態のように第1層及び第2層がSiOから構成される場合には、光学特性等において本発明の効果が有効に奏される。
【0096】
また、本実施の形態においては、図1に示すHLHL型の反射防止膜Aの第5層105を構成するTiO膜が、前述のイオンプレーティング法(すなわち高周波電圧を与えることにより生成させたプラズマを用いた特殊なイオンプレーティング法)により成膜する場合について説明したが、該TiO膜は、このようなイオンプレーティング法以外の成膜方法、例えば、イオン銃を用いたイオンビーム蒸着法やプラズマ銃を用いた方法によっても成膜が可能である。以下に、これらの方法について詳細に説明する。
【0097】
図12(a),(b)及び図13(c),(d)は、図1の反射防止膜Aの第5層105たるTiO膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置の他の構成例を示す概略的な模式図である。本実施の形態においては、成膜装置が、前述のイオンプレーティング法の代わりに、イオンビーム蒸着法に基づいて成膜できるように構成されている。
【0098】
まず、図12(a)に示す成膜装置では、真空チャンバ1内の上部に、基材100を保持する基材ホルダ2が配置されている。該基材ホルダ2は、モータMによって回転駆動されるように構成されている。真空チャンバ1内の下部には、基材ホルダ2に取り付けられた基材100の成膜面と対向するように、成膜材料を主成分として構成されるターゲット20が配設されている。ここでは、ターゲット20は、Tiを主成分として構成される。さらに、該ターゲット20の主面に上方からイオンビーム21を照射するイオン銃22が、真空チャンバ1内の側部に配設されている。そして、該イオン銃22には、イオン源たるガスを供給するイオン源供給部22aが配設されている。後述するように、ここでは、イオン源供給部22aからイオン銃22にアルゴンガスが供給される。イオン銃22としては従来から使用されているものを利用することができる。すなわち、ここでは図示を省略しているが、イオン銃22の内部には、プラズマを発生させる放電電極や、発生したプラズマからイオンを選択的に取り出してイオンビームを形成するための構造等が配設されている。
【0099】
また、ここでは図示を省略しているが、前述の実施の形態と同様、成膜装置には、真空ポンプ等の排気手段と、反応ガス供給手段とが配設されている。それにより、真空チャンバ1内の空間を所要の真空雰囲気とすることができ、また、例えば、所要の反応ガス雰囲気(ここでは酸素雰囲気)とすることができる。
【0100】
次ぎに、上記の成膜装置を用いて、図1の反射防止膜Aの第5層たるTiO膜を成膜する方法について説明する。
【0101】
まず、図1に示すように表面に第1〜第4層101〜104が形成された基材100を、基材ホルダ2に取り付ける。ここでは、各層101〜104が形成された基材100の面がTiO膜の成膜面であり、該成膜面がチャンバ内方を向くように基材100を配置する。また、基材100の成膜面と対向するように、真空チャンバ1内の下部に、ターゲット20を配置する。そして、排気を行って真空チャンバ1内を所要の真空雰囲気とするとともに、反応ガスたる酸素ガスを供給してチャンバ内を所要の酸素雰囲気とする。
【0102】
続いて、イオン源供給部22aからイオン銃22にアルゴンガスを供給し、イオン銃22の内部において、放電を行ってプラズマを形成し該プラズマからアルゴンイオンを選択的に取り出す。そして、取り出したアルゴンイオンの流束(以下、これをイオンビームと呼ぶ)21をターゲット20に向けて出射させ、イオンビーム21をターゲット20に照射する。このような照射により、ターゲット20を構成する成膜材料(すなわちTi)が該イオンによりスパッタされて蒸発する。蒸散したTi20aは、チャンバ内の酸素ガスと反応し、TiOとなって基材100へ付着・堆積する。それにより、TiO膜が形成される。このような成膜は、基材ホルダ2とともに基材100を回転させた状態で行う。
【0103】
本例のように、イオン銃22を備えた成膜装置を用いてTiO膜を成膜した場合においても、前述のイオンプレーティング法における効果と同様、基材100を高温に加熱することなく高屈折率のTiO膜を形成することが可能となる。
【0104】
図12(b)に示す成膜装置は、図12(a)の成膜装置と同様の構成を有するが、以下の点で図12(a)の装置と異なっている。すなわち、本例の成膜装置では、図12(a)の装置と同様に装置の上方側部にイオン銃22が配設されるだけでなく、さらに、装置の下方側部にイオン銃23が配設されている。ここでは、上方に配設されたイオン銃22を第1イオン銃と称し、下方に配設されたイオン銃23を第2イオン銃と称する。第1及び第2イオン銃22,23は、図12(a)の場合と同様、従来から使用されているものと同様の構成を有しており、イオン源としてアルゴンガスが供給される。
【0105】
このように2つのイオン銃22,23が配設された本例の装置では、第1イオン銃22が、図12(a)のイオン銃と同様に、ターゲット20にイオンビーム21を照射して成膜材料たるTiを蒸発させる。そして、該蒸発したTi20aを用いて、図12(a)の場合と同様にしてTiO膜が形成される。一方、第2イオン銃23は、より緻密な膜を形成するために、第1イオン銃22を補助(アシスト)する。すなわち、第2イオン銃23は、基材100の成膜面に堆積したTiO膜に、装置の下方からイオンビーム21を照射し、該TiO膜を押し固める(これをボンバードと呼ぶ)。本例では、図12(a)において前述した効果の他に、第2イオン銃23により堆積したTiO膜を押し固めることができるので、さらに緻密なTiO膜を成膜することが可能となる。
【0106】
図13(c)に示す成膜装置は、図12(b)の成膜装置と同様の構成を有するが、以下の点が異なっている。すなわち、本例の装置は、第1イオン銃22によりターゲット20をスパッタして成膜材料(Ti)を蒸発させる代わりに、坩堝24に充填された成膜材料25に、電子銃27から出射された電子ビーム28を照射して該材料25を蒸発させる構成である。具体的には、基材ホルダ2に取り付けられた基材100と対向するように坩堝24が配置されるとともに、該坩堝24に充填された成膜材料(Ti)25に電子ビーム28を出射する電子銃27、及び、該電子ビーム28を屈曲させて成膜材料25に導く電子ビーム誘導構造(図示せず)が配置されている。
【0107】
電子銃27としては、従来構成のものが用いられている。すなわち、ここでは図示を省略しているが、電子銃27では、内部においてフィラメントが加熱されて熱電子が発生し、該熱電子の流束(以下、これを電子ビームと呼ぶ)28が電子銃27を出射する。そして、例えば磁石を用いた電子ビーム誘導構造によって、該電子ビーム28が坩堝24に導かれ、成膜材料25に照射されて該材料25を蒸発させる。蒸発した成膜材料25aは、チャンバ内の酸素ガスと反応してTiOとなり、基材100の成膜面に付着・堆積する。ここで、本例では、図12(b)の場合と同様、堆積したTiO膜にイオン銃23からイオンビーム21を照射してアシストを行うため、前述のように、膜のさらなる緻密化が図られる。
【0108】
図13(d)示す成膜装置では、真空チャンバ1内に、導電性の材質から形成された基材ホルダ2が配設されている。そして、該基材ホルダ2に取り付けられる基材100の成膜面と対向するように、成膜材料(Ti)25を充填した坩堝24が配設されている。該坩堝24は導電性の材質から形成されており、前述の基材ホルダ2とともに電源に直列に接続されている。坩堝24と基材ホルダ2との間のチャンバ内空間には、加熱可能に形成されたフィラメント28とイオン化用電極29とが、坩堝24と基材100とを結ぶ方向に交差する方向において対向するように配設されている。さらに、該フィラメント28及びイオン化用電極29よりも基材ホルダ2側には、前述の交差方向において対向する一対の加速電極31が配設されている。該加速電極31は、図示しない電源に接続されている。
【0109】
なお、ここでは図示を省略しているが、本例の装置は、真空チャンバ1内の排気を行う排気手段、及び、チャンバ内に反応ガスを供給する反応ガス供給手段とを備えており、該反応ガスとしては、酸素が用いられる。
【0110】
本例の装置では、基材ホルダ2と坩堝24との間に電圧を印加し、坩堝24から成膜材料(Ti)25噴出させて、該材料25を中性クラスタ30状態として蒸発させる。なお、クラスタとは、500〜1000個の原子が緩く結合した状態をさす。そして、フィラメント28を加熱して熱電子を発生させ、イオン化用電極29との間の放電によって、中性クラスタ30をイオン化させる。以下、イオン化したクラスタをイオン化クラスタ32と呼ぶ。イオン化クラスタ32は、チャンバ内の酸素ガスと反応し、さらに、加速電極31により加速されて基材100の表面に付着・堆積する。それにより、TiO膜が形成される。以上のように、成膜材料自体をイオンビーム化する本例においても、イオン銃を用いた前述の場合と同様の効果が得られる。また、ここでは、成膜材料がイオン化クラスタを形成するため、より良好な膜質の膜が得られる。
【0111】
なお、上記図12(a),(b)及び図13(c)の成膜装置においては、成膜時に基材側にバイアス電圧を印加しないため、前述のイオンプレーティングの場合のように基材側に正バイアス及び負バイアスを印加することはできない。したがって、これらの装置を、図3の反射防止膜BのMgF膜の成膜に適用すると、基材側に適宜正バイアスを印加することによって弗素の解離を防止するという、前述のイオンプレーティング法における効果は得られない。一方、図13(d)の成膜装置は、基材側に電圧を印加する構成であるため、基材側に適宜正バイアスを印加することができる。したがって、該装置を図3の反射防止膜BのMgF膜の成膜に用いると、前述のイオンプレーティング法の場合と同様、弗素の解離防止効果が得られる。
【0112】
図14は、図1の反射防止膜Aの第5層105のTiO膜、及び、図3の反射防止膜Bの第5層205のMgF膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置のさらに他の例を示す概略的な模式図である。本実施の形態においては、成膜装置が、図12,13に示す実施の形態のイオン銃の代わりに、プラズマ銃を用いた方法に基づいて成膜できるように構成されている。
【0113】
図14に示すように、本実施の形態の成膜装置は、真空チャンバ1と、該真空チャンバ1内にプラズマを発生させるためのプラズマ銃40とを備える。なお、ここでは図示を省略しているが、成膜装置は、真空チャンバ1内の排気を行う真空ポンプ等の排気手段と、真空チャンバ1内に反応ガスを供給する供給ポンプ等の反応ガス供給手段とを備えている。ここでは、反応ガスとして、酸素が該チャンバ内に供給される。
【0114】
真空チャンバ1は、反応ガス供給口41、ガス排気口42、及びプラズマ導入口43を有している。反応ガス供給口41は反応ガス供給手段(図示せず)に接続されており、ガス排気口42は排気手段(図示せず)に接続されており、プラズマ導入口43はプラズマ銃40に接続されている。そして、真空チャンバ1内の上部には、基材100を保持する基材ホルダ2が配置されている。該基材ホルダ2は、導電性の材質によって形成されており、チャンバ外部に配設されたイオン集積電源44に電気的に接続されている。イオン集積電源44は、接地されている。また、基材ホルダ2は、モータ(図示せず)によって回転駆動されるように構成されている。
【0115】
真空チャンバ1内の下部には、蒸発源60が配置されている。蒸発源60は、成膜材料61が充填される坩堝62と、後述するようにプラズマ銃40から出射された電子ビーム45が成膜材料61に照射されるように該電子ビーム45の進行方向を屈曲させる電子ビーム集積磁石63が内部に配置された支持体64とから構成される。蒸発源60は導電性の材質から形成されており、外部に配設された放電電極50に接続されるとともに接地されている。このような蒸発源60は、後述のプラズマ発生のための放電の際に、陽極として機能する。
【0116】
プラズマ銃40は、真空チャンバ1の側部に配設されており、該銃40の内部空間は、発生した電子ビーム45が電子ビーム導入口43を介して真空チャンバ1内に導入されるように真空チャンバ1内に連通している。プラズマ銃40としては、従来から使用されるプラズマ銃を用いている。
【0117】
すなわち、プラズマ銃40の内部には、対向して配置された一対のプラズマ発生用陰極46が配置されており、また、真空チャンバ1との接続部と該陰極46との間には、発生したプラズマから電子を引き出すための第1及び第2中間電極47,48が、電子ビームの供給経路に順に配置されている。さらに、プラズマ銃40では、真空チャンバ1との接続部付近に、一対のプラズマ流収束用コイル49が配置されている。各電極46,47,48は、抵抗が適宜配置された配線を介して、蒸発源60と共通の放電電源50に接続されている。このようなプラズマ銃40では、陰極46の上流側にキャリアガス導入口51が形成されており、該キャリアガス導入口51は、キャリアガス供給手段(図示せず)に接続されている。ここでは、キャリアガス供給手段により、アルゴンガスがプラズマ源としてプラズマ銃40に供給される。
【0118】
次ぎに、上記構成を有する装置を用いて、図1の反射防止膜Aの第5層105たるTiO膜を成膜する場合について説明する。
【0119】
まず、図1に示すように表面に第1〜第4層101〜104が形成された基材100を、基材ホルダ2に取り付ける。ここでは、各層101〜104が形成された基材100の面がTiO膜膜の成膜面であり、該成膜面がチャンバ内方に向くように基材100が配置される。そして、坩堝62内に成膜材料61を充填する。なお、ここでは成膜材料61としてTiを用いているが、TiO等のTi酸化物を成膜材料として用いてもよい。そして、排気手段(図示せず)によって、ガス排気口42を通じて排気を行い、チャンバ内を所定の真空状態に保つとともに、反応ガスたる酸素ガスを、反応ガス供給手段(図示せず)から反応ガス導入口41を通じてチャンバ内に所定量供給する。
【0120】
一方、プラズマ発生のためのキャリアガスたるアルゴンガスを、キャリアガス供給手段(図示せず)からキャリアガス導入口51を通じてプラズマ銃40内に供給する。供給されたアルゴンガスは、陰極46と陽極たる蒸発源60との間の放電により、プラズマ状態となる。そして、第1及び第2中間電極47,48の作用により、該プラズマから電子が選択的に引き出される。プラズマから引き出された電子の流束(すなわち電子ビーム45)は、プラズマ流収束用コイル49によって収束され、さらに、蒸発源60の電子ビーム集積磁石63によって発生した磁界の作用を受ける。それにより、該電子ビーム45が、プラズマ導入口43を通じて真空チャンバ1内に導入され、坩堝62内の成膜材料61に照射される。このような電子ビーム45の照射により、成膜材料61が蒸発する。また、該電子ビーム45により、チャンバ内の酸素ガスと電子ビーム45の電子とが衝突し、それにより、チャンバ内にプラズマが発生する。
【0121】
蒸発した成膜材料61は、チャンバ内に発生した上記プラズマ中を通過する過程で、該プラズマにより励起されてイオン化する。本例では、特に、電子ビーム45が照射された成膜材料の蒸発濃度の高い部分において、プラズマによりイオン化を行うことができるため、イオン化効率の向上が図られる。
【0122】
イオン化した成膜材料は、チャンバ内の酸素と反応するとともに、イオン集積電源44からバイアス電圧が印加された基材側に該電圧によって加速されて移動し、基材100の成膜面に衝突・付着する。それにより、基材100の成膜面に、TiO膜が形成される。
【0123】
本実施の形態では、プラズマ銃40を用いているため、緻密な膜を形成することが可能となる。また、前述のようにイオン化効率の向上が図られるため、反応性が高くなり、膜質の向上が図られる。
【0124】
なお、上記においては、プラズマ銃を備えた本実施の形態の成膜装置を用いてTiO膜を成膜する場合について説明したが、該装置を、図3の反射防止膜Bの第5層205たるMgF膜の成膜に適用することも可能である。この場合、イオン集積電源44から基材側に、図6に示すように適宜正バイアスを印加することにより、前述の弗素解離防止効果を得ることが可能となる。
【0125】
【発明の効果】
本発明によれば、合成樹脂から成る基材との密着性,耐環境性,耐磨耗性,耐薬品性を確保し、且つ、好適な光学特性を有する光学用反射防止膜、及びその成膜方法を提供することができる。
【0126】
また、合成樹脂を基材とし、所謂HLHL型の多層膜を有する反射防止膜において、最外層から2番目の層に位置する膜の屈折率を従来に比して一段と高めた反射防止膜、及びその成膜方法を提供することができる。
【0127】
また、合成樹脂を基材とし、例えば所謂MHL型の多層膜を有する反射防止膜において、十分な硬性と、光学として十分に低い屈折率とを有するMgF膜を備える光学用反射防止膜、及びその成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る反射防止膜の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る反射防止膜について、各層の主成分たる薬品,各層の物理膜厚,光学膜厚,及び設計波長を示す図表である。
【図3】本発明の実施の形態に係る反射防止膜の他の構成を表す断面図である。
【図4】本実施の形態に係る反射防止膜との比較例としての反射防止膜の構成を表す断面図である。
【図5】図1に示す反射防止膜の第5層のTiO膜,及び図3に示す反射防止膜の第5層のMgF膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置の一例を示す模式図である。
【図6】図5に示す成膜装置が備えるバイアス電源ユニットから出力されるバイアス電圧の波形の一例を示している。
【図7】図5に示す成膜装置が備える基材ホルダの電位を示すグラフである。
【図8】図1,3,4に示す各反射防止膜について、各波長を有する光に対する反射率を示すグラフである。
【図9】図1,3に示す反射防止膜についての耐磨耗性試験の結果を表す写真である。
【図10】図4に示す反射防止膜についての耐磨耗試験の結果を表す写真である。
【図11】基材上にケイ素酸化物を比較的薄く形成した場合について、環境テストを行った後の反射防止膜の表面状態の写真である。
【図12】図1に示す反射防止膜の第5層のTiO膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置の他の例を示す該略的な模式図である。
【図13】図1に示す反射防止膜の第5層のTiO膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置の他の例を示す概略的な模式図である。
【図14】図1に示す反射防止膜の第5層のTiO膜等の光学膜を成膜することができる成膜装置のさらに他の例を示す概略的な模式図である。
【符号の説明】
1 真空チャンバ
2 基材ホルダ
3 坩堝
4 電子銃
8 電力供給ユニット
10 成膜装置
11 高周波電源ユニット
12 バイアス電源ユニット
13 波形生成器
14 バイアス電源
15 ハイパスフィルタ(HPF)
16 ローパスフィルタ(LPF)
20 ターゲット
22 イオン銃
40 プラズマ銃
100,200 基材
101,201 SiO膜(第1層)
102,202 SiO膜(第2層)
103 ZrO+TiO膜(第3層)
104 SiO膜(第4層)
105 TiO膜(第5層)
106 SiO膜(第6層)
203 Al膜(第3層)
204 ZrO+TiO膜(第4層)
205 MgF膜(第5層)

Claims (27)

  1. 合成樹脂製の基材上に形成された光学用反射防止膜において、
    前記基材表面には、該基材の屈折率と略同一の屈折率を有する所定の膜厚の第1膜が形成され、該第1膜表面には、1.48〜1.62の範囲内の値の屈折率を有し前記第1膜と同一又は異なる材料から構成される所定の膜厚の第2膜が形成されており、前記第2膜表面には、反射防止特性を有する多層膜が備えられていることを特徴とする光学用反射防止膜。
  2. 前記第1及び第2膜が、ケイ素酸化物から構成される請求項1記載の光学用反射防止膜。
  3. 前記基材は、アクリルから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用反射防止膜。
  4. 前記第1膜は、抵抗加熱法を用いた真空蒸着法により成膜されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用反射防止膜。
  5. 前記多層膜は、隣同士で屈折率が互いに異なる膜が積層されて成り、該各膜の屈折率は、交互に且つ相対的に高/低を成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学用反射防止膜。
  6. 前記多層膜は、前記第2膜から最も離隔した最外層から2番目の位置に、2.2〜2.4の範囲内の値の屈折率を有する第3膜を有していることを特徴とする請求項5記載の光学用反射防止膜。
  7. 前記第3膜は、TiO及びZrOの混合物、TiO、Ti、Ti、Ta、ZrO並びにNbのうち、何れか一つを主成分としていることを特徴とする請求項6に記載の光学用反射防止膜。
  8. 前記第3膜は、
    真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、
    前記バイアス供給電極に前記基材を配置するプロセスと、前記真空チャンバ内にて成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記バイアス供給電極を一方の電極として該電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるプロセスと、20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するプロセスとに基づいて成膜されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の光学用反射防止膜。
  9. 前記バイアス電圧が負の平均値及び正の最大値を有する請求項8に記載の光学用反射防止膜。
  10. 前記第3膜は、
    真空チャンバと、成膜に利用するイオンビームを発生させるイオンビーム発生構造とを備える成膜装置を用い、
    前記真空チャンバ内に前記基材を配置するプロセスと、前記イオンビーム発生構造によりイオンビームを発生させるプロセスと、前記真空チャンバ内において前記イオンビームを用いて前記基材表面に成膜材料を堆積させるプロセスに基づいて成膜されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の光学用反射防止膜。
  11. 前記イオンビーム発生構造がイオン銃であり、
    前記成膜材料を堆積させるプロセスは、前記イオン銃にて発生させたイオンビームを前記成膜材料に照射し該材料を蒸発させるプロセスと、前記蒸発した成膜材料を前記基材表面に蒸着させるプロセスとを含むことを特徴とする請求項10に記載の光学用反射防止膜。
  12. 前記第3膜は、
    真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ発生構造と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、
    前記バイアス供給電極に基材を配置するプロセスと、前記プラズマ発生構造においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くプロセスと、前記電子ビームを前記成膜材料に照射して前記成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にプラズマを発生させるプロセスと、バイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加して前記基材表面に前記成膜材料を堆積させるプロセスとに基づいて成膜されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の光学用反射防止膜。
  13. 前記プラズマ発生構造がプラズマ銃である請求項12に記載の光学用反射防止膜。
  14. 前記多層膜は、前記第2膜から最も離隔して位置する外層膜と、前記第2膜に対して最も近くに位置する内層膜と、前記外層膜及び内層膜の間に位置する中間層膜との3層が積層されて成り、
    前記外層膜は、前記3層の膜のうち最も低い屈折率を有し、前記中間層膜は、前記3層のうち最も高い屈折率を有し、前記内層膜は、前記外層膜の屈折率と前記中間層膜の屈折率との間の値の屈折率を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学用反射防止膜。
  15. 前記外層膜は、弗化マグネシウム(MgF)を主成分としていることを特徴とする請求項14に記載の光学用反射防止膜。
  16. 前記外層膜は、
    真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、
    前記バイアス供給電極に前記基材を配置するプロセスと、前記真空チャンバ内にて成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記バイアス供給電極を一方の電極として該電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるプロセスと、負の平均値及び正の最大値を有して20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するプロセスとに基づいて成膜されていることを特徴とする請求項14又は15に記載の光学用反射防止膜。
  17. 前記外層膜は、
    真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ発生構造と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、
    前記バイアス供給電極に基材を配置するプロセスと、前記プラズマ発生構造においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くプロセスと、前記電子ビームを前記真空チャンバ内の前記成膜材料に照射して前記成膜材料を蒸発させるプロセスと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にプラズマを発生させるプロセスと、負の平均値及び正の最大値を有するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加して前記基材表面に前記成膜材料を堆積させるプロセスとに基づいて成膜されていることを特徴とする請求項14又は15に記載の光学用反射防止膜。
  18. 合成樹脂製の基材上に形成された光学用反射防止膜の成膜方法について、
    前記基材表面に、前記基材の屈折率と略同一の屈折率を有する所定の膜厚の第1膜を抵抗加熱法を用いた真空蒸着法により形成するステップと、
    前記第1膜表面に、1.48〜1.62の範囲内の値の屈折率を有し前記第1膜と同一又は異なる材料から構成される所定の膜厚の第2膜を抵抗加熱法を用いた真空蒸着法により形成するステップと、
    前記第2膜表面に、反射防止特性を有する多層膜を形成するステップとを備えたことを特徴とする光学用反射防止膜の成膜方法。
  19. 前記第1及び第2膜がケイ素酸化物を主成分とする請求項18記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  20. 前記多層膜を形成するステップは、前記第2膜表面に、隣同士で屈折率が互いに異なるように、また該屈折率が交互に且つ相対的に高/低を成すように、膜を積層するステップを含み、、
    前記膜を積層するステップは、前記多層膜のうち前記基材から最も離隔した最外層から2番目に位置する第3膜として、TiO及びZrOの混合物、TiO、Ti、Ti、Ta、ZrO並びにNbから構成される成膜材料群のうちの何れか一つを主成分とする膜を形成するステップを含む請求項18又は19に記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  21. 前記第3膜を形成するステップは、
    真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するステップと、前記真空チャンバ内にて、前記成膜材料群のうちの何れか一つを成膜材料として蒸発させるステップと、前記バイアス供給電極を一方の電極として前記電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるステップと、20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するステップとを有する請求項20記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  22. 前記バイアス電圧を印加するステップは、負の平均値及び正の最大値を有する前記バイアス電圧を印加する請求項21記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  23. 前記第3膜を形成するステップは、
    真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置される成膜材料に照射するイオンビームを発生させるイオン銃とを備える成膜装置を用い、前記真空チャンバ内に前記基材を配置するステップと、前記イオン銃にてイオンビームを発生させ前記イオンビームを照射して前記成膜材料群のうちの何れか一つを成膜材料として蒸発させるステップと、前記蒸発した成膜材料を前記基材表面に蒸着させるステップとを有する請求項20記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  24. 前記第3膜を形成するステップは、
    真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ銃と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に基材を配置するステップと、前記プラズマ銃においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くプロセスと、前記電子ビームを照射して前記真空チャンバ内にて前記成膜材料群のうちの何れか一つを成膜材料として蒸発させるステップと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にてプラズマを発生させるステップと、バイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加することにより前記基材の表面に前記成膜材料を堆積させるステップとを有する請求項20記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  25. 前記多層膜を形成するステップは、前記第2膜に対して最も近くに位置する内層膜を形成するステップと、前記内層膜上に中間層膜を形成するステップと、前記中間層膜上に前記第2膜から最も離隔して位置する外層膜を形成するステップとを含み、前記外層膜は、前記3層の膜のうち最も低い屈折率を有し、前記中間層膜は、前記3層のうち最も高い屈折率を有し、前記内層膜は、前記外層膜の屈折率と前記中間層膜の屈折率との間の値の屈折率を有し、
    前記外層膜を形成するステップでは、弗化マグネシウムを主成分とする膜を形成する請求項18又は19記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  26. 弗化マグネシウムを主成分とする前記外層膜を形成するステップは、真空チャンバと前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するステップと、前記真空チャンバ内にて弗化マグネシウムを成膜材料として蒸発させるステップと、前記バイアス供給電極を一方の電極として該電極に高周波電圧を供給することにより前記真空チャンバ内にプラズマを生成させるステップと、負の平均値及び正の最大値を有して20KHz以上且つ2.45GHz以下の周波数の波状に変化するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加するステップとを有する請求項25に記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
  27. 弗化マグネシウムを主成分とする前記外層膜を形成するステップは、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に供給するプラズマを発生させるプラズマ銃と、前記真空チャンバ内に配置されたバイアス供給電極とを備える成膜装置を用い、前記バイアス供給電極に前記基材を配置するステップと、前記プラズマ銃においてプラズマを発生させ、該プラズマ中の電子により構成される電子ビームを発生させて前記真空チャンバ内に導くステップと、前記電子ビームを照射して前記真空チャンバ内にて弗化マグネシウムを成膜材料として蒸発させるステップと、前記電子ビームにより前記真空チャンバ内にプラズマを発生させるステップと、負の平均値及び正の最大値を有するバイアス電圧を前記バイアス供給電極に印加して前記基材表面に前記成膜材料を堆積させるステップとを有する請求項25記載の光学用反射防止膜の成膜方法。
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