JP4059480B2 - 積層体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に樹脂製の薄膜を形成することにより、その表面を平滑化した積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのため従来から、温度・湿度などによる影響が少ないアルミ等の金属からなる金属箔やそれらの金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルムやこれらの樹脂をコーティングしたものがガスバリア層として一般的に包装材料に用いられてきた。
【0004】
ところが、アルミ等の金属からなる金属箔やそれらの金属蒸着フィルムを用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し問題があった。またガスバリア性樹脂フィルムやそれらをコーティングしたフィルムは、温湿度依存性が大きく高度なガスバリア性を維持できない、さらにポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリル等は廃棄・焼却の際に有害物質の原料となりうる可能性があるなどの問題がある。
【0005】
また、電子デバイスの分野においては、電子デバイス用基板として従来、Siウエハやガラスなどの無機材料が広く用いられてきた。ところが、近年、製品の軽量化、基板のフレキシブル化、低コスト化、ハンドリング特性などの様々な理由から高分子基板が望まれるようになっている。しかしながら、高分子材料は、ガラスなどの無機材料と比較した場合、ガスの透過性が著しく大きいという問題を有している。
【0006】
このため、電子デバイス用基板として高分子基板を用いた場合には、高分子基板を透過して電子デバイス内に侵入・拡散した酸素によりデバイスが酸化して劣化してしまうといった問題や、電子デバイス内の必要な真空度を維持できない、等の問題がある。
【0007】
例えば、特開平2−251429号公報や特開平6−124785号公報では、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として高分子フィルムが用いられている。しかしながら、これらの有機EL素子の場合は、基板である高分子フィルムを透過して有機EL素子内に侵入する酸素や水蒸気により有機膜が劣化してしまうため、発光特性が不十分となり、また、耐久性に不安がある、等の問題が考えられる。
【0008】
すなわち、上述したように、種々の分野において十分なガスバリア性を有し、そのガスバリア性によりガスバリア対象物の良好な品質を確保することが可能な、優れたガスバリア性能を備えた高分子フィルムは確立されていない。
【0009】
このような高分子フィルム上に酸化珪素膜等の無機酸化物の蒸着膜を製膜してガスバリアフィルムとする場合の問題点の一つとして、高分子フィルム表面の平滑性の問題がある。一般に高分子フィルム上には微細な凹凸があり、この上に無機酸化物を真空成膜法により成膜した場合に、この微細な凹凸上に成膜したことに起因する欠陥が蒸着膜内に発生し、ガスバリア性を低下させてしまうといった問題が指摘されている。
【0010】
また、例えば有機EL素子等においては、発光層を形成する面に平坦性がない場合に、ブラックスポットが発生してしまうといった不都合があり、このように種々の機能性素子において、表面の平滑性が求められている。特に、可撓性を付与するために、高分子フィルム上に機能性素子を形成する場合等においては、樹脂製フィルム上の凹凸が問題となり、このような凹凸を平滑化する手段が求められていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面が平滑であることから種々の用途に用いることが可能であり、また無機酸化物の蒸着膜と共に用いることにより、ガスバリア性を向上させることができる積層体を提供することを主目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、基材と、上記基材の少なくとも片面に積層された樹脂からなる樹脂薄膜層を有し、上記樹脂薄膜層は、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解せず、炭素数5〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するビニル重合性モノマーを重合して形成された樹脂薄膜層であることを特徴とするガスバリア積層体を提供する。本発明によれば、このような材料を用いて樹脂薄膜層を形成するものであるので、極めて平滑な表面とすることが可能となり、これにより種々の機能を有する機能性素子の基板等に用いることができる。また、このような置換基を有するビニル重合性モノマーを重合させて得られる樹脂薄膜層は、表面が撥水性を有するものであるので、表面に撥水性を必要とする用途や、表面汚染の低減が必要な用途、例えば無機酸化物の蒸着膜と共に用いることによりガスバリア性を向上させる用途等に好適に用いることができる。
【0015】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記樹脂薄膜層が、真空中で成膜されたものであることが好ましい。乾式製膜法により形成することにより、より均一で平滑な樹脂薄膜層を形成することができるからである。
【0016】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記ビニル重合性モノマーが、常温常圧(23度、1atm)において固体状態であることが好ましい。樹脂薄膜層を形成するに当り、このようなビニル重合性モノマーが製造工程上好ましいからである。
【0018】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、上記ビニル重合性モノマーが、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーは、置換基の導入が容易であることから、樹脂薄膜層に対して必要な特性、例えば撥水性等を付与するのに必要な置換基を容易に導入することが可能となり、樹脂薄膜層の特性の設計を容易に行うことができるからである。
【0019】
上記請求項4に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記(メタ)アクリレートモノマーが、フッ化アルキル(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。樹脂薄膜層の原料として、このような材料を用いることにより、表面が平滑であると共に、種々の特性、例えば撥水性や防汚性等を付与することが可能となり、種々の用途に応用することが可能となるからである。
【0020】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記樹脂薄膜層表面における水との接触角が70°以上(測定温度23℃)であることが好ましい。撥水性の用途、例えば無機酸化物の蒸着層と共に用い、ガスバリア性が要求される用途の場合等においては、この程度の撥水性を有することが好ましいからである。
【0021】
上記請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記樹脂薄膜層の膜厚が、5〜2000nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が薄い場合は、樹脂薄膜層を形成することにより平滑性を得ることが困難であるからであり、また、平滑性を得る上では上記上限を超える必要性があまりないからである。
【0022】
上記請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記基材上に無機酸化物からなる蒸着層が形成され、さらにその上に上記樹脂薄膜層が形成されているものであっても、請求項9に記載するように、上記基材上に上記樹脂薄膜層が形成され、さらにその上に無機酸化物からなる蒸着層が積層されているものであってもよい。このように無機酸化物の蒸着膜と共に用いることにより、樹脂薄膜層が蒸着層の応力を緩和し、変形による蒸着層の欠陥を抑制するため、可撓性の高いガスバリア性フィルムが得られることから、よりガスバリア性を向上させたガスバリア積層体として用いることができるからである。
【0023】
上記請求項8または請求項9に記載された発明においては、請求項10に記載するように、上記蒸着層および上記樹脂薄膜層が2層〜10層の範囲内で積層されていることが好ましい。積層することにより、樹脂薄膜層が蒸着層の応力を緩和し、変形による蒸着層の欠陥を抑制するため、可撓性の高いガスバリア性フィルムが得られることにより、ガスバリア性が向上するからである。
【0024】
また、請求項8から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項11に記載するように、最外層が上記樹脂薄膜層であることが好ましい。このように最外層を樹脂薄膜層とすることにより、表面の平滑性を向上させることが可能となり、表面平滑性およびガスバリア性の両特性を必要とする用途、例えば有機EL素子の基板等の用途に好適に用いることができるからである。
【0025】
上記請求項8から請求項11までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項12に記載するように、上記無機酸化物からなる蒸着層が、酸化珪素もしくは酸化窒化珪素からなる蒸着層であることが好ましい。これらの蒸着層が、ガスバリア性に優れているからである。
【0026】
上記請求項8から請求項12までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項13に記載するように、上記蒸着層の膜厚が、5〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が薄い場合はガスバリア性に問題が生じる可能性がある場合があり、一方上記範囲を越えて膜厚を厚くすると蒸着膜にクラックが入り易くなる等の不具合が生じる可能性があるからである。
【0027】
上記請求項8から請求項13までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項14に記載するように、上記基材が、樹脂製フィルムであることが好ましい。例えば、可撓性を有するガスバリア性フィルム等が各種包装材料や、各種画像表示装置において要求されており、このような場合は基材として樹脂製フィルムが用いられるからである。
【0028】
上記請求項8から請求項14までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項15に記載するように、上記積層体の酸素透過率が1.0cc/m/day以下であり、水蒸気透過率が、1.0g/m/day以下であることが好ましい。酸素透過率および水蒸気透過率を上記の範囲内とすることにより、内容物の品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気を殆ど透過させないので、高いガスバリア性が要求される用途に好ましく用いることができるからである。
上記請求項1から請求項15までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項16に記載するように、上記樹脂薄膜層の表面平均粗さが4nm以下であることが好ましい。このように表面平均粗さが4nm以下であることから、平滑性が要求される種々の用途、例えば有機EL素子の基板等に用いた場合でも、ブラックスポットの発生等の不具合が生じない。また、このような平滑な面の表面に無機酸化物を蒸着させることにより、欠損部分の少ない均質な蒸着層を堆積することができるので、よりガスバリア性の高いガスバリアフィルムを得ることができる。
【0029】
本発明はまた、請求項17に記載するように、原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解せず、炭素数5〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中で成膜する成膜工程と、上記成膜されたモノマーに対し、活性照射線を照射して重合させ、樹脂薄膜層を形成する重合工程とを有することを特徴とするガスバリア積層体の製造方法を提供する。
【0030】
本発明によれば、基材上に極めて平滑な表面を有する樹脂薄膜層を形成することができるので、例えばその上に無機酸化物の蒸着膜を積層させることにより欠陥の少ない蒸着膜とすることが可能となり、ガスバリア性を向上させることができる等の利点を有する積層体を製造することができる。
【0031】
また、本発明においては、請求項18に記載するように、原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解せず、炭素数5〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸着法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程を有することを特徴とするガスバリア積層体の製造方法を提供する。本発明によれば、イオンを援用した方法を用いて樹脂薄膜層を形成するものであるので、平滑な表面を有すると共に、形成された樹脂薄膜層中の樹脂の重合度が高く、物性の良好な樹脂薄膜層を形成することができる。
【0032】
上記請求項18に記載された発明においては、請求項19に記載するように、さらに形成された樹脂薄膜層に対し、活性照射線を照射して後処理を行う後処理工程を有することが好ましい。このような後処理工程を行うことにより、より樹脂薄膜層中の重合度を向上させることが可能となり、樹脂薄膜層における樹脂の物性を向上させることができるからである。
【0033】
上記請求項17から請求項19までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項20に記載するように、基材上に上記樹脂薄膜層を形成する工程を施した後、無機酸化物を真空成膜法により蒸着させる蒸着工程を有するものであっても、請求項21に記載するように、基材上に無機酸化物を真空成膜法により蒸着させる蒸着工程を行い、次いで上記樹脂薄膜層を形成する工程を施すものであってもよい。
【0034】
先に樹脂薄膜層を形成した場合は、平滑化された樹脂薄膜層表面に無機酸化物の蒸着膜を堆積させるものであるので、蒸着膜中の欠陥の発生を少なくすることが可能となり、その結果ガスバリア性を向上させることができるからであり、先に無機酸化物からなる蒸着膜を成膜し、その後樹脂薄膜を成膜した場合は、最外層が極めて平滑な面を有するガスバリア性を有する積層体とすることができるので、ガスバリア性と表面の平滑性を要求される、例えば有機EL素子の基板等に好適に用いることができる積層体を製造することができるからである。また、樹脂薄膜層が蒸着層の応力を緩和し、変形による蒸着層の欠陥を抑制するため、可撓性の高いガスバリア性フィルムが得ることが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に含まれる積層体について説明し、その後本発明に含まれる積層体の製造方法について説明する。
【0036】
A.積層体
本発明の積層体は、基材と、上記基材の少なくとも片面に形成された樹脂からなる特定の樹脂薄膜層とを有するものである。以下、このような本発明の積層体について、まず特徴部分である特定の樹脂薄膜層について説明し、次いで基材およびその他の構成について説明する。
【0037】
1.樹脂薄膜層
本発明における樹脂薄膜層は、材料面および形態面においてそれぞれ特徴を有するものである。
【0038】
まず材料面においては、上記積層体中の樹脂薄膜層を形成する原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解しないビニル重合性モノマーを用いている点を挙げることができる。
【0039】
本発明においては、このようなビニル重合性モノマーを用いて樹脂薄膜層を形成していることから、表面の平滑性に極めて優れた積層体とすることができるのである。以下、このような樹脂薄膜層を第1実施態様として説明する。
【0040】
一方、形態面では、上記樹脂薄膜層の表面平均粗さが4nm以下である点を挙げることができる。本発明においては、このように極めて凹凸の少ない表面であることから、例えばこの樹脂薄膜層表面に無機酸化物を成膜することにより、ガスバリア性の良好なガスバリア膜とすることができる等の種々の利点を有する積層体とすることができるのである。以下、このような樹脂薄膜層を第2実施態様として説明する。
【0041】
(1)第1実施態様
本実施態様において基材上に形成される樹脂薄膜層は、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃、好ましくは80℃〜450℃、特に100℃〜400℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解しないビニル重合性モノマーが重合されて形成されたものである。
【0042】
本実施態様において、この樹脂薄膜層の製造方法は特に限定されるものではなく、湿式法を用いてもよいが、一般的には真空中において、モノマーを徐々に蒸発させ、これを基材もしくは蒸着層上に堆積・重合させる方法により製造されることが好ましい。このような製法を用いるためには、上述したような材料を用いることが好ましいのである。具体的には、上記範囲より高い温度であるモノマーは熱分解しない温度で気化することが困難である可能性が高く、上記範囲より低い温度であるモノマーは、上述した製法において徐々に蒸発させることが困難であり、また蒸発した場合でも基材に堆積した際に再度蒸発してしまい、定着性が悪い等の問題がある。
【0043】
このような材料の他の特性としては、上記ビニル重合性モノマーが常温常圧(23度、1atm)において固体状態であることが好ましい。これも上述したように、真空中での成膜に際して、真空中で加熱することにより徐々に蒸発させて基材上に蒸着させるには、原材料が常温常圧で固体状態のものを用いることにより、その取り扱いが容易となるからである。
【0044】
このようなビニル重合性モノマーの分子量としては、分子量が50以上1000以下、中でも100〜800の範囲内であるものが好適に用いられる。このような平均分子量を有するものが、上述したような真空成膜に際して、取り扱いが容易であるからである。
【0045】
本発明に用いられるビニル重合性モノマーとは、ラジカル重合が可能な炭素・炭素間の二重結合を有する分子であり、かつ平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が上述した範囲内のものであれば特に限定されるものではなく、得られる樹脂薄膜層の特性に応じて種々の材料を選択することができる。
【0046】
具体的には例えば表面の撥水性を向上させるためには、上記ビニル重合性モノマーが、疎水性基を有するものであることが好ましく、具体的には炭素数5〜50、好ましくは炭素数10〜30の範囲内であるアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するものが好適に用いられる。
【0047】
本実施態様においては、このようにビニル重合性モノマーに対して種々の置換基、すなわち得られる樹脂薄膜層に特性を付与することができる置換基を容易に付加することができるものであることが好ましい。また、樹脂薄膜層とした際に重合性が良好であるものが好ましい。このような観点から、本実施態様においては、上記ビニル重合性モノマーが(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。なお、ここで(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートモノマーとメタクリレートモノマーとを含む概念である。
【0048】
このような本実施態様に用いることができる(メタ)アクリレートモノマーとしては、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタアクリレート等を挙げることができる。
【0049】
また、本実施態様においては、その中でもフッ化アルキル(メタ)アクリレートモノマーを好適に用いることができる。これは以下の理由によるものである。
【0050】
すなわち、このようなフッ化アルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、得られる樹脂薄膜層の表面の撥水性を大幅に向上させることが可能となる。したがって、後述するように無機酸化物の蒸着膜と積層することにより、ガスバリア性を向上させた積層体を得ることができる。
【0051】
また、基材表面にフッ素を含有する平滑な膜が形成されることから、熱的・化学的に安定な表面を必要とする素材の表面改質としての保護膜、高撥水性・耐表面汚染性を必要とする素材の表面改質としての保護膜、低誘電率・高抵抗率を必要とする高速電子デバイスの絶縁膜、さらには低屈折率・高透過率を必要とする光学素子の表面コーティングおよび導波素子のクラッド層といった用途に適用の可能性の広がる積層体を得ることができるからである。
【0052】
本発明において用いることができるこのようなフッ化アルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、エイコサフルオロウンデシルアクリレート、エイコサフルオロウンデシルメタアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタアクリレート、ヘキサデカフルオロ−9−(トリフルオロメチル)デシルアクリレート、ヘキサデカフルオロ−9−(トリフルオロメチル)デシルメタアクリレートを用いることが可能であり、特にエイコサフルオロウンデシルアクリレートが好適に用いられる。
【0053】
また、本実施態様においては、この樹脂薄膜層が有する特性として撥水性を有することが好ましいといえる。この撥水性は、上述したようにガスバリア性を有する無機酸化物の蒸着膜と併用して、例えば高分子フィルムを基材として用いた際にガスバリア性を付与したい場合等においては、上記蒸着膜の表面にこの撥水性を有する樹脂薄膜層を形成することにより、ガスバリア性を大幅に向上させることができるからである。
【0054】
また、例えばガラス等の親水性を有する基板上に撥水性を有する樹脂薄膜層を成膜し、これをパターン状に除去することにより、濡れ性の異なるパターンを形成することが可能となり、この濡れ性に沿って種々の機能性素子形成用の塗工液を塗布する等により、例えばカラーフィルタ等の種々の機能性素子を形成することが可能となるからである。
【0055】
このような撥水性の目安としては、樹脂薄膜層表面における水との接触角が、70°以上、特に80°〜130°の範囲内(測定温度23℃)であることが好ましい。上述したような用途に用いるためにはこの程度の撥水性を有することが好ましいからである。
【0056】
ここで、この水との接触角の測定方法は、協和界面化学社の接触角測定装置(型番CA−Z)を用いて求めた値である。すなわち、被測定対象物の表面上に、純水を一滴(一定量)滴下させ、一定時間経過後、顕微鏡やCCDカメラを用い水滴形状を観察し、物理的に接触角を求める方法を用い、この方法により測定された水との接触角を本発明における水との接触角とすることとする。
【0057】
本発明においては、このような基材上に形成された樹脂薄膜層の膜厚は、用いられる用途や、基材の種類、樹脂薄膜層形成に際して用いたモノマーの種類、樹脂薄膜層の形成方法等により大幅に異なるものではあるが、一般的には5〜2000nmの範囲内であり、特に10nm〜1000nmの範囲内とすることが好ましい。上記範囲より膜厚が薄い場合は、樹脂薄膜層を形成することにより平滑性を得ることが困難である可能性が生じるからであり、また、平滑性を得る上では上記上限を超える必要性があまりなく、材料コスト面、生産効率面の問題が生じる可能性があるからである。
【0058】
また、このような樹脂薄膜層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば湿式法を用いて形成されたものであってもよい。しかしながら、スプレー法やスピンコ−ト法等の湿式法では、分子レベル(nmレベル)の平滑性を得ることが難しく、また溶剤を使用するため、電子デバイス用途には不向きである等の欠点がある。本発明においては、均一な膜で、かつ表面の平滑性を比較的容易に得ることができるといった観点から、真空中で成膜されたものであることが好ましい。そして、本発明においては、特に上述したようなビニル重合性モノマーを用いることが可能な真空中で徐々にビニル重合性モノマーを蒸発させて基材上に蒸着させる方法が好ましく、例えば特許第2996516号等において用いられているフラッシュ蒸着法を除いた真空中での蒸着法が好ましく用いられる。これは、フラッシュ蒸着法の場合、原料が液体であるため、形成された膜を硬化する後処理が必要である点、さらに充分に処理が施されない場合は、液状のモノマーが存在し、充分な平滑性は得ることができない点、またその場合モノマーの蒸気圧が高く、それ自身が電子デバイス特性を劣化してしまう点等の問題点があるからである。
【0059】
(2)第2実施態様
本発明に用いられる樹脂薄膜層の第2実施態様は、表面平均粗さが4nm以下、
中でも3nm以下である樹脂からなる樹脂薄膜層である。本実施態様の樹脂薄膜層はその表面がこのような従来にない極めて平滑な面であることから、例えばこの樹脂薄膜層表面に無機酸化物を成膜することにより、ガスバリア性の良好なガスバリア膜とすることができ、また平滑性が必要とされる記録媒体の基材としての用途等の種々の用途に用いることができる。
【0060】
本実施態様における表面平均粗さの値としては、セイコーインスツルメント製原子間力顕微鏡(STM)を用い、100μMスキャン範囲、135sec/flameの条件により決定された値を用いることとする。
【0061】
このような樹脂からなる樹脂薄膜層は、特に限定されるものではないが、上記第1実施態様において説明した材料を用いることができる。なお、本実施態様の樹脂薄膜層の好適な材料、特性、膜厚等に関しては、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
2.基材
本発明に用いられる基材としては、樹脂等の有機物であっても、ガラス等の無機物であってもよく、また用いる用途に応じて透明なものであっても不透明なものであってもよい。しかしながら、例えば包装材、さらには有機EL素子等の画像表示装置の基板などの用途面を考慮すると、基材はプラスチック材料であり、かつ透明なフィルムであることが好ましい。
【0063】
このような樹脂製のフィルム基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエ−テルサルホンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0064】
基材は、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。この中で、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートが包装用途において好ましく用いられる。またポリエ−テルサルホンフィルムが耐溶剤性が良く、ポリカーボネートフィルムが耐熱性が良く、電子デバイス用途において好ましく用いられる。この基材の樹脂薄膜層が設けられる面もしくは反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などを塗布した薄膜を形成していても良い。
【0065】
さらに、樹脂薄膜層、もしくは後述する無機酸化物の蒸着膜との密着性を良くするために、基材の表面を前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施しても良い。
【0066】
基材の厚さは、包装用途の場合とくに制限を受けるものではなく、包装材料としての適性を考慮して、単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。しかしながら、樹脂薄膜層や後述する無機酸化物からなる蒸着層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜400μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
【0067】
電子デバイス用途の場合、現在の状況下においてはガラス基板の代替ということもあり、ガラス基板仕様で作製された後工程機器に合わせるため、比較的厚い100〜800μmの範囲、特に100〜400μmの範囲が好ましいが、技術の進歩とともに、基板の軽量化フレキシブル化、低コスト化が期待される3〜100μmも範囲になると考えられる。
【0068】
また、量産性を考慮すれば、連続的に上記各層を形成できるように長尺の連続フィルムとすることが望ましい。
【0069】
3.無機酸化物からなる蒸着層
本発明においては、上述した基材上に上記樹脂薄膜層の他に無機酸化物からなる蒸着膜を形成してもよい。このように無機酸化物からなる蒸着膜を形成して上記樹脂薄膜層と積層することにより、高いガスバリア性を有する積層体とすることができるからである。
【0070】
本発明においては、基材上に樹脂薄膜層を形成し、その表面に無機酸化物からなる蒸着層を形成するようにしてもよく、また基材上に無機酸化物からなる蒸着層を形成し、その上に樹脂薄膜層を形成するようにしてもよい。
【0071】
基材上に先に樹脂薄膜層を形成する場合は、無機酸化物からなる蒸着層が極めて平滑な面を有する樹脂薄膜層上に形成されることから、蒸着層に下地の凹凸に起因する欠陥が生じることがないため、極めて良好なガスバリア性が得られるという利点を有する。
【0072】
一方、無機酸化物からなる蒸着層上に樹脂薄膜層を形成する場合は、表面を平滑化することが可能となるため、この上に何らかの機能層、例えば有機EL素子における発光層等を形成する場合でも、ダークスポットが生じるといったような不具合が生じる可能性を低減することができる。
【0073】
本発明においては、この樹脂薄膜層と無機酸化物からなる蒸着層とを繰り返し積層することが好ましい。具体的にはガスバリア性の観点から上記蒸着層が少なくとも2回積層されることが好ましいことから2層〜10層の範囲内、特に2層〜6層の範囲内で積層することが好ましい。上記範囲より少ない場合は、蒸着層のガスバリア性能にもよるが、十分なガスバリア性が得られない可能性があることから好ましくなく、上記範囲を超えて積層しても、ガスバリア性が改良されるものではなく、むしろ全体的な膜厚の増加に伴うデメリット、例えばクラックの発生等が生じる可能性があることから好ましくない。
【0074】
本発明においては、基材上に平滑性を付与する目的で、まず基材上に樹脂薄膜層を形成し、次いで無機酸化物からなる蒸着層と樹脂薄膜層とをこの順で複数回積層した後、最表面を樹脂薄膜層とするような積層体が好ましい。基材上に樹脂薄膜層を形成することにより無機酸化物からなる蒸着膜を平滑な面上に形成することが可能となり、ガスバリア性が向上し、さらに最表面に樹脂薄膜層を形成することにより、積層体表面を平滑化することが可能となり、有機EL素子の基板等に用いる場合に好ましいからである。
【0075】
本発明においては、このように無機酸化物の蒸着層と共に樹脂薄膜層を形成する場合は、樹脂薄膜層が撥水性を有する層であることが好ましい。このように無機酸化物層の表面に撥水性を有する層を形成することにより、よりガスバリア性を向上させることができるからである。
【0076】
このような無機酸化物からなる蒸着層は、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、あるいはそれらの混合物などを挙げることができる。本発明においては、中でも高いガスバリア性を有する点から、酸化珪素もしくは酸化窒化珪素を用いることが好ましい。
【0077】
このような無機酸化物からなる蒸着層の膜厚は、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜500nmの範囲内が望ましく、中でも10〜200nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は均一な膜が得られない可能性があり、またガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合があることから好ましくない。また膜厚が上記範囲を越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができない可能性があり、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあることから好ましくない。
【0078】
本発明においては、このように基材上に樹脂薄膜層と無機酸化物からなる蒸着層を形成した場合においては、このような積層体の酸素透過率が、1cc/m/day以下であり、特に好ましくは0.5cc/m/day以下であり、水蒸気透過率が、1g/m/day以下であり、特に好ましくは0.5g/m/day以下であることが好ましい。酸素透過率および水蒸気透過率を上記の範囲内とすることにより、内容物の品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気を殆ど透過させないので、高いガスバリア性が要求される用途に好ましく用いることができるからである。なお、上記値は、基材として樹脂、特にプラスチック製フィルムを用いた場合の値である。
【0079】
B.積層体の製造方法
次に、本発明に含まれる積層体の製造方法について説明する。この積層体の製造方法は、イオンを援用した蒸着法を用いるか否かにより大きく二つの態様に分けることができる。以下、イオンを援用した蒸着法を用いない場合(第3実施態様)について先に説明し、次いでイオンを援用した蒸着法を用いる場合(第4実施態様)について説明する。
【0080】
1.第3実施態様
本実施態様は、原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解しないビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中で成膜する成膜工程と、
上記成膜されたモノマーに対し、活性照射線を照射して重合させ、樹脂薄膜層を形成する重合工程と
を有することを特徴とする積層体の製造方法である。
【0081】
ここで、ビニル重合性モノマーに関しては、上記「A.積層体」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
まず、上記成膜工程においては、このようなビニル重合性モノマーを、高真空中で加熱気化させ、基材上に堆積・成膜させる工程である。次いで、基材上に成膜されたビニル重合性モノマーに対し、活性照射線を照射して重合させて樹脂薄膜層を形成する重合工程が行われる。ここで用いられる活性照射線とは、ビニル重合性モノマーを重合させることができるものであれば特に限定されるものではないが、通常は電子線、紫外線、ガンマ線等が好適に用いられる。
【0083】
本発明においては、このような基材上に樹脂薄膜層を形成する工程を行う前、もしくは行った後に、無機酸化物からなる蒸着層を形成する蒸着工程が行われてもよい。この蒸着工程は、通常行われている種々の真空蒸着法により形成することができるが、基材が樹脂である等の熱的なダメージを受けやすい基材が用いられている場合は、スパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などの基材に熱的なダメージを与えない真空成膜法を選択することが好ましい。このような蒸着工程を行うことにより、ガスバリア性を有する積層体を得ることができる。
【0084】
なお、上記無機酸化物の種類や蒸着膜の膜厚等の事項、さらに得られるガスバリア性を有する積層体に関する事項については、上記「A.積層体」で説明した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0085】
2.第4実施態様
本実施態様は、原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解しないビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸着法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程を有することを特徴とする積層体の製造方法である。
【0086】
ここで、ビニル重合性モノマーに関しては、上記「A.積層体」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
本実施態様の特徴は、このビニル重合性モノマーを、真空中でイオンを援用した蒸着法を用いて基材上に成膜・重合する点にある。ここで、本発明に用いられるイオンを援用した蒸着法とは、成膜等に、電子あるいはプラズマを用いて、成膜材料の一部をイオン化して蒸着する手法であり、その代表例としては、イオン化蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、プラズマ重合法、プラズマCVD法等がある。具体的には、イオン化装置として、蒸着材料の通過領域を取り囲むグリッド状陽極と、その外側に配置したタングステンフィラメント状陰極からなる熱電子発生装置を用い、タングステンフィラメントに通電加熱して熱電子を発生させ、陽極に電子引出電圧を印加して、この熱電子を蒸発材料に照射することによって、イオン化する方法である。
【0088】
このようなイオンを援用した蒸着法を用いることにより、基材とその上に成膜された樹脂薄膜層との密着性が向上し、かつビニル重合性モノマーの重合が促進されたより平滑性の高い樹脂薄膜層を得ることができる。
【0089】
上記イオンを援用した蒸着法において、電子の加速電圧は30〜300Vが好ましい範囲であるといえる。また、電流は、蒸着面積1cmにつき、0.01〜10mAが好ましい範囲である。加速電圧および電流共に、上述した範囲より低い場合は、重合化の進行が鈍る可能性があることから好ましくなく、上述した範囲を超えると、炭化が進む可能性や、分解して複雑な構造になるおそれがあることから好ましくない。
【0090】
本実施態様においては、このようにイオンを援用した蒸着法により樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程の後、さらに活性照射線を照射する後処理工程を行ってもよい。このような後処理工程を行うことにより、ビニル重合性モノマーの重合をより完全なものとすることが可能となるからである。なお、ここで用いる活性照射線は、第3実施態様で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
また、本実施態様においても、上記第3実施態様と同様に無機酸化物からなる蒸着膜を真空成膜法により成膜する工程を、上記樹脂薄膜層形成工程の前、もしくは後に行うようにしてもよい。この点に関しては、上記第3実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
【実施例】
以下、本発明の積層体について、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
[実施例1]
基材として、厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを準備した。チャンバー内の真空度を4.0×10−3Paに減圧した。電極に90kHzの周波数を有する電力(投入電力300W)を印加した。ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、酸素ガス、ヘリウムガスをそれぞれ所定量導入した。その際の真空度を30Paに制御して、プラズマ気相成長法(CVD法)により酸化珪素の薄膜を100nm形成した。
【0095】
次いで、図1に示すイオンを援用した真空蒸着装置の真空度を2×10−3Paに減圧した。その後ステンレススチール製のるつぼ1を100℃に加熱し、蒸発材料であるアクリレ−ト化合物2を蒸発させた。その際、3Aの電流をタングステンフィラメント3に流し、アノード4に50Vの電子引出電圧を加え、10mAの熱電子を真空チャンバー内で発生させた。それにより厚さ200nmの樹脂薄膜層5を、基材6上に形成し、本発明の積層体を得た。
【0096】
下記の評価方法により評価した結果を表1にまとめる。
【0097】
(酸化珪素膜形成条件)
導入ガス比:
ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=10:30:30(sccm)
(アクリレ−ト膜形成条件)
アクリレ−ト化合物:n−オクタデシルアクリレ−ト
蒸発温度:100℃
成膜速度:20nm/分
イオン化フィラメント電流:3A
電子放出電流:10mA
電子引出電圧:50V
イオン化アノ−ド電位:50V
基板電位:0V
[比較例1]
実施例1において、樹脂薄膜層を設けなかった以外は同様にして、積層体を得た。下記の評価方法により評価した結果を表1にまとめる。
【0098】
【表1】
Figure 0004059480
【0099】
(評価方法)
・酸素透過度:酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製:OX−TRAN2/20)を用い、23℃90%Rhの条件で測定した。
・水蒸気透過度:水蒸気透過率測定装置(MOCON社製:PERMATRAN3/31)を用い、37.8℃100%Rhの条件で測定した。
・表面平滑性:原子間力顕微鏡(セイコ−インストゥルメンツ製ナノピクス)を用い、100μMスキャン範囲・135sec/flameの条件で測定し、平均粗さRa、最大高低差Rmax、平均自乗粗さRmsを求めた。
・表面濡れ性:接触角計測器を用い、水に対する接触角を求めた。
・有機膜確認:赤外分光分析装置(日本分光製FT−610)を用い、備付のATR(全反射)測定装置を取り付け薄膜表面の赤外吸収スペクトルを測定した。
【0100】
[実施例2]
蒸着材料として、1H,1H,1H-Eicosafluoroundecyl acrylateを用い、100℃の温度で蒸発させた。基板材料として、アルミニウムを蒸着したガラス基板を用い、基板温度を−20℃に保った。
【0101】
エネルギー50eV、電流量5mAの電子を照射しつつ蒸着を行うと、毎分0.45nmの速度で薄膜が成長した。この膜の赤外吸収スペクトルをモノマーのものと比較すると、1416cm−1のビニル基の伸縮振動のピークが高周波側にシフトした。これは、モノマー材料の基本分子構造を保ったビニルポリマーが得られたことを示すものである。
【0102】
このようにして得られた樹脂薄膜層表面の水との接触角は、87°であった。
【0103】
[実施例3]
電子電流を30mAにした以外は、上記実施例2と同様にして基材上に樹脂薄膜層を形成した。成膜速度1.1nm/minでフッ素系高分子薄膜を得ることができた。
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のビニル重合性モノマーを用いて樹脂薄膜層を形成するものであるので、極めて平滑な表面とすることが可能となり、これにより種々の機能を有する機能性素子の基板等に用いることができるという効果を奏する。
【0105】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるイオンを援用した蒸着法の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1…るつぼ
2…蒸発材料
3…タングステンフィラメント
4…アノード
5…樹脂薄膜層
6…基材

Claims (21)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された樹脂からなる樹脂薄膜層を有し、
    前記樹脂薄膜層は、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解せず、炭素数5〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するビニル重合性モノマーを重合して形成された樹脂薄膜層であることを特徴とするガスバリア積層体。
  2. 前記樹脂薄膜層が、真空中で成膜されたものであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層体。
  3. 前記ビニル重合性モノマーが、常温常圧(23度、1atm)において固体状態であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスバリア積層体。
  4. 前記ビニル重合性モノマーが、(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  5. 前記(メタ)アクリレートモノマーが、フッ化アルキル(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア積層体。
  6. 前記樹脂薄膜層表面における水との接触角が70°以上(測定温度23℃)であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  7. 前記樹脂薄膜層の膜厚が、5〜2000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  8. 前記基材上に無機酸化物からなる蒸着層が形成され、さらに前記樹脂薄膜層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  9. 前記基材上に前記樹脂薄膜層が形成され、さらに無機酸化物からなる蒸着層が積層されていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  10. 前記蒸着層および前記樹脂薄膜層が2層〜10層の範囲内で積層されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のガスバリア積層体。
  11. 最外層が前記樹脂薄膜層であることを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  12. 前記無機酸化物からなる蒸着層が、酸化珪素もしくは酸化窒化珪素からなる蒸着層であることを特徴とする請求項8から請求項11までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  13. 前記蒸着層の膜厚が、5〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項8から請求項12までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  14. 前記基材が、樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項8から請求項13までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  15. 前記積層体の酸素透過率が1.0cc/m/day以下であり、水蒸気透過率が、1.0g/m/day以下であることを特徴とする請求項8から請求項14までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  16. 前記樹脂薄膜層の表面平均粗さが4nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項15までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体。
  17. 原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解せず、炭素数5〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中で成膜する成膜工程と、
    前記成膜されたモノマーに対し、活性照射線を照射して重合させ、樹脂薄膜層を形成する重合工程と
    を有することを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
  18. 原料として、平衡蒸気圧が10−3Torrとなる温度が60℃〜500℃の範囲内であり、かつその温度において熱分解せず、炭素数5〜50のアルキル基もしくはフッ化アルキル基を置換基に有するビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸着法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程を有することを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
  19. さらに形成された樹脂薄膜層に対し、活性照射線を照射して後処理を行う後処理工程を有することを特徴とする請求項18に記載のガスバリア積層体の製造方法。
  20. 基材上に前記樹脂薄膜層を形成する工程を施した後、無機酸化物を真空成膜法により蒸着させる蒸着工程を有することを特徴とする請求項17から請求項19までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体の製造方法。
  21. 基材上に無機酸化物を真空成膜法により蒸着させる蒸着工程を行い、次いで前記樹脂薄膜層を形成する工程を施すことを特徴とする請求項17から請求項19までのいずれかの請求項に記載のガスバリア積層体の製造方法。
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