JP4026349B2 - 光学薄膜の作製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層の光学層を有する光学薄膜、特に誘電体材料からなる多層の光学層を有する光学薄膜の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多層膜系の誘電体光学薄膜を作製するに当たっては、例えば電子ビーム蒸着等の蒸着法やイオンビームスパッタ法等のスパッタ法といった製膜法が用いられてきた。特に、光通信の分野では、WDM(波長分割多重化)やDWDM(稠密波長分割多重)といった高密度伝送に用いられる光学多層膜の干渉効果を利用する狭帯域フィルタとして100層以上にも及ぶ多層にコーティングされた誘電体光学薄膜が利用されるため、多層膜の形成工程が継続する長時間にわたって安定に動作し、しかも極めて精密に膜厚や光学特性を制御した薄膜形成プロセスが求められている。
【0003】
このような誘電体光学多層薄膜を製造するために、特開平5−196810、特開平11−342354などにより真空蒸着法を用いた製法が提案されている。しかし、真空蒸着法においては、蒸発源が点源であるため基板の広い領域に対して均一な膜厚分布を得ることが困難である。また蒸着物質の温度分布、溶解状態を常に均一で一定な状態に保つことが困難であり、長時間にわたって安定した蒸着プロセスを維持することが難しく、これらWDMやDWDM用フィルタ作製に要求される高精度の誘電体光学多層薄膜を安定に得ることは難しい。
【0004】
また、通常の真空蒸着プロセスにより作製された光学薄膜は、原子の充填密度が低くポーラスなため、耐久性に問題があり、フィルタとしての信頼性に問題があった。これらのうちで、イオン照射やプラズマ照射を併用して、光学膜性能の信頼性改善を図れるが、真空蒸着の制御性や安定性の問題は蒸発源自体に起因しており、これらの問題はイオンやプラズマ照射によっても解決は困難である。
【0005】
一方、真空蒸着プロセスの低い安定性、制御性を改善する多層系光学薄膜の形成方法として、特開平12−178731などではイオンビームスパッタ法を用いた製法が提案されている。しかし、一般的にイオンビームスパッタは膜の形成速度が遅いために、一つの多層系光学薄膜を作製するのに、長時間を要し、生産性が低い欠点がある。また、長時間運転に起因する装置上のトラブルも製品歩留まりを下げる要因となり、これによっても、生産性がさらに低下する問題がある。さらに、イオンソース本体およびその消耗部品が高価であるため、運転コストが非常に高くなる欠点も生産上は大きな問題である。
【0006】
マグネトロンスパッタ法については、真空蒸着法やイオンスパッタ法などに比べて通常は比較的高い放電圧力(約1Pa程度)で形成されるために、形成される薄膜はポーラスでその緻密性は低く、この低緻密性に起因する光学特性の劣化、例えば屈折率などの経時変化による光学特性変化が起り、信頼性の問題があった。また、誘電体膜でも特に酸化物薄膜のマグネトロンスパッタ法は、膜の形成速度が遅く、これを改善するために放電パワーの供給を増加すると、ターゲット表面やスパッタ槽内壁に付着した誘電体の絶縁膜に荷電が蓄積して、放電が不安定になりアーキングなど異常放電が発生し、膜の不良が発生する。
【0007】
さらに、典型的なマグネトロンスパッタ法は、基板とターゲットの距離が短いために、光学モニタを取付けて、精度よく制御するのが難しかった。これらのために層数が非常に多く、しかも高精度の膜厚制御を要求される誘電体光学薄膜多層膜を作製するプロセスには、一般的なマグネトロンスパッタ法はほとんど適用されなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術が有する前述の欠点を解消し、不純物の混入が少なく、緻密性が高い光学層を多層数有する光学薄膜を作製する方法を提供することを目的とする。また、量産性に優れ安定したプロセスで精度よく多層膜を有する光学薄膜を作製する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、さらに一層、緻密性に優れ、屈折率などの光学特性の経時変化が少なく、耐久性の改善された多層の光学層を有する光学薄膜を作製する方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、多層系光学フィルタ等の製造に適し、充分高い光学層の膜形成速度が得られ、また多層の光学層の形成の際に長時間にわたって放電の安定性が得られ、高い生産安定性および精度の良い制御性が得られる多層の光学層を有する光学薄膜を作製する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)スパッタ槽内にカソードと基板とターゲットとが配置されたマグネトロンスパッタ装置により前記基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する光学薄膜の作製方法であって、前記スパッタ槽内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、0.6×10 −1 〜1.1×10−1Paの放電圧力の条件下において反応性マグネトロンスパッタ法により前記基板面上に順次光学層を形成させることを特徴とする光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0011】
なお、本発明において不活性ガスとしてはArガスが一般的に用いられ、反応性ガスとしては、酸化物系の光学層を形成する場合にはO2ガスまたは不活性ガスを同伴したO2ガスが用いられ、また窒化物系の光学層を形成する場合にはN2ガスまたは不活性ガスを同伴したN2ガスが用いられる。その他反応性ガスとしては所望の光学層の種類に応じて適宜のガスが用いられる。また、用いられるターゲットとしてはプレーナー型ターゲットが挙げられる。
【0012】
また、本発明は、(2)スパッタ槽内にカソードと基板とターゲットとが配置されたマグネトロンスパッタ装置により前記基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する光学薄膜の作製方法であって、光学薄膜を形成するに先立ってスパッタ槽内を1.0×10−4Pa以下に真空排気し、次いで同スパッタ槽内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、0.6×10 −1 〜1.1×10−1Paの放電圧力の条件下においてマグネトロンスパッタ法により前記基板面上に順次光学層を形成させることを特徴とする光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0013】
また、本発明は、(3)光学薄膜は、光学定数の異なる2種以上の光学層を順次交互に繰返し形成してなる多層を有し、光学定数の異なる2種以上の光学層は夫々当該光学層形成のための2種以上のターゲットを用いて基板面上に順次多層に形成する上記(1)または(2)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0014】
本発明において、光学薄膜を形成するに先立ってスパッタ槽内の圧力を1.0×10−4 Pa以下に真空排気し、次いで同スパッタ槽内にArガスなどの不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、0.6×10 −1 〜1.1×10−1Paの放電圧力の条件下において反応性マグネトロンスパッタすることにより、スパッタ槽内に残存する水分に起因する不純物の混入が少なく、したがって屈折率などの光学特性の経時変化が少なく、かつ充填密度が高く緻密な光学層が得られる。
【0015】
一方、光学薄膜を作製するに先立ってスパッタ槽内の圧力が1.0×10-4Paより大の場合には、スパッタ中にスパッタ槽内に残存する水分のために、充分緻密性の高い光学層を得られず、したがって温度や湿度の変化に対して光学特性が変化し、好ましくない。
【0016】
また、スパッタ槽内の圧力を1.0×10-4Pa以下に排気した後、スパッタ槽内にArガスおよび反応性ガスを導入し、マグネトロンスパッタ法により前記基板面上に順に光学層を形成する際のスパッタ槽内の放電圧力、すなわち動作圧力を1.3×10-1Paより大で行うと、スパッタされた粒子がターゲットから基板に到る途中でスパッタ槽内のArガスなどの不活性ガスとの衝突により運動エネルギーを失って基板に到達するので、緻密な光学層形成を行うのに必要なエネルギーが得られず、充填密度の高い緻密な光学層の形成が阻害される。
【0017】
特に、光学層の形成では、層の残留応力を小さくするために、スパッタ中には積極的な加熱は行わないので、スパッタ槽内に残存するArガスやArイオンが光学層内に取り込まれやすくなり、このために光学層の充填率が低くなりやすい。これらのために、温度や湿度の変化に対して光学特性が変化し、好ましくない。
【0018】
また、本発明は、(4)光学定数の異なる2種以上の光学層が夫々誘電体材料からなる上記(3)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0019】
また、本発明は、(5)光学薄膜が透過波長または反射波長の選択性を有する光学多層薄膜干渉フィルタである上記(4)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。本発明は、前記光学多層薄膜干渉フィルタを製造するのに適している。
【0020】
また、本発明は、(6)光学定数の異なる2種以上の光学層を形成するための2種以上のターゲットが基板の位置から略等距離に設置された夫々のカソード上に装着されたマグネトロンスパッタ装置により前記基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する際、各光学層ごとにスパッタさせるターゲットを切り替えて所望の光学定数を有する光学層を順次、多層に形成する上記(3)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0021】
また、本発明は、(7)光学定数の異なる2種以上の光学層を形成するための2種以上のターゲットが基板の位置から略等距離に設置された夫々のカソード上に装着されたマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタ槽内にArガスなどのスパッタ用の不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、0.6×10 −1 〜1.1×10−1Paの放電圧力の条件下において反応性マグネトロンスパッタ法により前記基板面上に順次光学層を形成させる際、不活性ガスとは別に、基板直近から反応性ガスを、流量を調整しながら導入することを特徴とする上記(6)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0022】
また、本発明は、(8)基板に近接しかつターゲット位置とは基板に対して反対側の位置に設置された排気口からスパッタ槽内のガスを排気することにより基板直近で導入された反応性ガスのターゲット近傍での分圧を最小に抑えて、光学層の成膜速度の低下を最小限に抑える上記(1)または(2)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0023】
また、本発明は、(9)光学薄膜の少なくとも1層の光学層を形成する際、当該光学層を形成するためのターゲットが複数個設置されたマグネトロンスパッタ装置を用い、これら複数個のターゲットを同時にスパッタして前記光学層を得る上記(1)〜(8)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0024】
また、本発明は、(10)同時スパッタする複数個のターゲットが同一の材料からなり、かつ、導入する反応ガスが同一種類からなる上記(9)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0025】
また、本発明は、(11)同時スパッタする複数個のターゲットが異なる材料からなる上記(9)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0026】
また、本発明は、同時スパッタする夫々のターゲットへ供給する放電電力や不活性ガスと反応性ガスの流量を制御することにより、所望の光学層の組成および所望の光学定数を有する光学薄膜を形成できる。
【0027】
また、本発明は、(12)マグネトロンスパッタ法により基板面上に順次光学層を形成させる際、イオンビームを基板の光学層の形成面に照射する上記(1)〜(11)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0028】
また、本発明は、(13)マグネトロンスパッタ法により基板面上に順次光学層を形成させる際、RF電力を基板に供給する上記(1)〜(11)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。本発明においては、RF電力を基板に供給して基板に負のバイアス電圧を生じさせて、Arイオンや反応性ガスのイオンを基板の光学層の形成面に照射させる。
【0029】
また、本発明は、(14)光学層を形成する際、電気的中和用電子銃によりスパッタ槽内に発生する異常放電を抑制する上記(1)〜(13)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0030】
上記(12)のイオンビームの基板への照射の場合、または上記(13)のRF電力の基板への供給によるRFバイアス印加の場合において光学層を形成する際、電気的中和用電子銃(イオンニュートラライザ)を用い、スパッタ槽内の空間電荷や、スパッタ槽の壁面の蓄積電荷、カソードおよびターゲットとそれらの周辺における蓄積電荷を電子銃から供給される電子流によって中和することにより異常放電を抑制し、放電が不安定になることを防止する。
【0031】
本発明において、複数個の同一材料のターゲットを同時にスパッタすれば、形成速度は、使用するターゲットの数に比例して、大幅に層形成速度を向上させることができる。
【0032】
また、本発明において、光学層として複合酸化物層、複合窒化物層、複合ホウ化物層、複合炭化物層、ケイ窒化物層、ホウ窒化物層等の複合化合物の層を形成する場合、これら複合化合物層を形成するために、これら層形成に対応する2種以上の異なる材料のターゲットを用い、同時スパッタすることができる。この場合、複数のターゲットの間の放電パワーの配分比率を調整することで、所望の組成、光学定数を持った光学層を精度よく形成できる。この場合も、光学層の形成の終点近くでは、ターゲットへの供給パワー比を変えずに、全体の放電パワーを減少させることで、層の形成速度を遅くし、層厚の精度良い制御ができる。
【0033】
また、本発明において、前記したように同時スパッタ時に、基板にRF電力を印加して、基板近傍のプラスイオンを基板の光学層の形成面に向けて照射させたり、基板の光学層の形成面にイオンビームを照射したりすることにより、光学層の緻密性や耐環境信頼性をさらに改善できる。
【0034】
この際、イオンビームの照射イオンとして、酸素イオンビームを用いたり、または不活性ガスイオンを用いる場合には酸素ガスを基板直近に供給することにより、酸素不足の組成を持つSiO2やTa25などの酸化物光学層を基板上で充分に酸化反応を進行させ、完全で安定な酸化物組成を持つ酸化物光学層が得られる。同様に、窒化物光学層の場合には照射イオンとして窒素イオンを用いたり、または不活性ガスイオンを用いる場合には窒素ガスを基板直近に供給したりすればよい。
【0035】
また、本発明は、(15)基板上に形成される光学層面に、スパッタ槽の外部または内部に配置された光源からレンズ系を通してモニタ用観測光を照射し、該観測光の基板の透過光量または光学層の層面からの反射光量を光検出器により測定して、形成された光学層の層厚の変化による光量変化から形成層厚を求める光学モニタにより各光学層の形成のスパッタの終点を検出して、各光学層の層厚を所望の層厚に制御する上記(1)〜(14)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0036】
また、本発明は、(16)一つの基板に対して光学モニタが複数個配置され、各光学モニタには該光学モニタが測定する所望の領域を覆うシャッタが基板面の上方に設置されており、一つの光学モニタにより検出される領域においてシャッタの該当部分を開き、この領域において形成されている光学層のスパッタの終点を検出したとき、同領域に対応するシャッタ部分を閉じるという操作を行い、次いで次の光学モニタにより検出される次の領域においてシャッタの該当部分を開き、この領域において形成されている光学層のスパッタの終点を検出したとき、同領域に対応するシャッタ部分を閉じるという同様な操作を行い、順次配置された光学モニタの個数に応じて前記操作を所定回数繰返す上記(15)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0037】
また、本発明は、(17)光学モニタが所望の層厚に対して終点が近いことを検出した時点で、光学層の形成速度を遅くして、層厚を制御する上記(15)または(16)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。光学層の形成速度を遅くすれば、より正確に層厚(膜厚)を制御できる。
【0038】
1種の光学層を形成するために、スパッタ槽に同一材料からなる2個以上のターゲットを配置し、これらターゲットを同時スパッタして光学層を形成する際、前記光学モニタによる形成層厚の変化による光量変化から各層の層厚を求める光学モニタの測定値が、各層の形成層厚が所望の値に近づいたときに、一つのターゲットのみを放電を継続し他のターゲットの放電を停止するようにすれば、全体の層形成速度を減速させて、終点時間をより正確に測定して制御でき、その結果非常に正確な所望の膜厚を有する光学薄膜が得られる。
【0039】
また、本発明は、(18)カソードとして、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になるように磁石が配置されたカソード、または、可動磁石を有し、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になるように磁石が動く構成とされたカソード、を用いる上記(1)〜(17)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0040】
ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になるような磁場配置とするためには、磁石配置(必要に応じて形状)が工夫されたカソードを用いたり、また、磁石が偏心回転したり揺動するカソードを用いる。本発明においては、エロージョン領域がターゲット面全域になるようにすればよく、電場と磁場の方向が直交するマグネトロン放電に限定されない。用いる磁石としては、放電圧力領域をできるだけ低圧力側に広げる観点とターゲットのエロージョン領域をターゲット面全域にする観点から、強力な磁石を使用することが好ましく、例えば希土類磁石(ネオジウム−鉄磁石やサマリウム−コバルト磁石など)が挙げられる。
【0041】
スパッタリングにおいては、金属ターゲット表面へアーキングの原因となる物質(すなわち反応性スパッタ時に生成する誘電体物質)が堆積する一方で、主に不活性ガスイオン(以下、代表的なArイオンで説明)によってターゲット表面の金属原子やその反応性生物(金属酸化物など)がスパッタエッチングされる現象が起こる。ターゲットの表面では、常に、前記の堆積とスパッタエッチングという競合する反応が起こっており、放電電力が充分に大きいとき、またはエロージョン領域ではスパッタエッチングが主となり、安定にスパッタリングが継続する。しかし、反応性ガスの供給量が多い場合には、エロージョン領域においても誘電体物質の堆積が主となり、ここに電荷が蓄積されると、アーキングを生じ、さらには、放電停止に至る。
【0042】
通常のマグネトロンスパッタで多く使用される圧力は、0.4〜5Paという高い圧力であり、不活性ガスをターゲット付近に、反応性ガスを基板付近に導入し、かつ、ターゲット付近の圧力を高める一方で基板付近の圧力を低く抑えることによってガスの流れを生じさせる。このガスの流れを利用して、ターゲット表面への反応性ガスの拡散を防止でき、ある程度はターゲット表面上へのアーキング原因物質の堆積を抑制できる。
【0043】
しかし、本発明のような低圧力下でのスパッタリングでは、ガスの流れは分子流となり、気体の平均自由工程は装置サイズに近くなるので、前述したようなガスの流れを利用した反応性ガスの拡散防止は期待できない。したがって、本発明のような低圧力下でのスパッタリングでは、上記(18)に記載のカソードを用いたアーキング抑制方法がきわめて有効である。
【0044】
上記(18)に記載のカソードを用いることで、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になり、アーキングの原因となる誘電体物質がターゲット表面に堆積しにくくなり、アーキングが抑制され、結果として、大電力の投入が可能となる、また、アーキングに起因する膜質劣化や膜欠点を抑えられる。
【0045】
本発明においては多層膜を形成することから各誘電体薄膜の光学的吸収は最小であることが好ましく、そのために誘電体薄膜を化学量論的な組成とするべく、槽内への反応ガス供給量は比較的多い条件で行われるが、前記カソードの使用でアーキングが抑制される結果ターゲットに供給する放電電力を増やすことができ、容易に、安定して、効率よく成膜できる。
【0046】
また、前記の膜質劣化や膜欠点の抑制は、きわめて多層を積層する上では生産性(歩留まり低下防止)の観点から重要である。また、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になることで、ターゲットの使用効率も向上する。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明の光学薄膜を作製するために用いるマグネトロンスパッタ装置の一例を図1に示す。図1において、スパッタ槽1内、すなわち真空チャンバ内に、カソード2とターゲット4と、基板8が装着される基板ホルダ9とが配置されている。基板ホルダ9には複数枚の基板8が装着されるように設計されている。なお、図示されていないが、カソードの裏側(ターゲットが装着される側と反対側)には磁石が夫々配されている。ターゲットの材料としては、形成する光学層に応じた材料からなるものが選択され、例えば、金属材料からなるターゲット、誘電体材料からなるターゲットなどが使用される。
【0048】
WDMやDWDMといった高密度伝送に用いられる光学多層膜の干渉効果を利用する狭帯域フィルタを製造する場合、例えば1)SiO2層とTa25層とを交互に多数層積層する光学薄膜を製造する場合、または2)SiO2層とNb25層(もしくはTiO2層)とを交互に多数層積層する光学薄膜を製造する場合には、SiまたはSiO2、TaまたはTa25、TiまたはTiO2、NbまたはNb25などの材料からなるターゲットが使用される。
【0049】
本発明において用いられる基板の材料としては、結晶化ガラス(例えばオハラ社製の「WMS13」など)や光学ガラス(例えばボロシリケートクラウンガラス、具体的にはショット社製の「BK−7」など)が挙げられる。
【0050】
スパッタ槽1には、超高真空排気の可能な真空ポンプ6が設置され、光学薄膜を作製するに先立ってスパッタ槽内の圧力が1.0×10-4Pa以下になるまで排気される。7はガス導入系であり、Arガスなどの不活性ガスからなるスパッタガスや酸素、窒素などの反応性ガスを導入する。例えば、反応性スパッタ法の場合には、反応性ガスとしてのO2ガス、N2ガス、または、O2ガス(またはN2ガス)とArガスとの混合ガス、のガス導入系であり、これらガスがスパッタ槽1に供給される。
【0051】
なお、71は不活性ガスのガス導入口であり、72は反応性ガスのガス導入口である。これらのうち、例えばO2ガスのようにターゲット表面の結合状態を変化させてスパッタ速度に影響を与える反応性ガスなどを導入する場合には、ガス導入口72および真空ポンプに繋がる排気口61は基板8の近くに配して、ターゲット4の周りにはできるだけ反応性ガスが影響を与えないように配置することが好ましい。このために、排気口61は基板8に近接し、かつターゲット4の位置とは基板に対して反対側に位置して設置するのが好ましい。
【0052】
また、基板ホルダ9には回転機構11が装着され、基板8を高速回転させうるようにされている。さらに、基板ホルダ9には基板にRFバイアスを生じさせるためのRF電力導入系12が設置されている。このとき、通常光学薄膜の形成には、基板として光学ガラスなどの絶縁基板が使用されるので、基板全体にわたる均一なRFバイアス印加ができるように、基板ホルダの基板保持テーブル部分(基板ホルダにおける基板に接する部分)には導電性材料からなるものを使用したり、または基板保持テーブル部分が絶縁材料からなるものの場合には基板側の面に導電性膜が施されたものが使用される。
【0053】
一方、光学モニタとして、基板8の下部にはモニタ用観測光の受光器10、基板8の上部にはモニタ用観測光(例えばレーザ光)の光源3を設置し、これら光源3および受光器10を用いて、観測光の透過特性を用い光学膜厚を正確にモニタしながら成膜を行える。光源3および受光器10の設置については、光ファイバなどを用いてスパッタ槽1の内部に設置することもできる。また、光源と受光器を基板8上方に設置し、光の反射特性を用いて光学膜厚を正確にモニタしながら成膜してもよい。透過または反射の単独の測定において、S/N比が不充分で精度良く膜厚をモニタできない場合には、両者を併用して補完的に測定することで膜厚の制御精度を向上させうる。
【0054】
なお、基板全体にわたる均一なRFバイアス印加と、基板の透過光量の変化を測定するタイプの光学モニタを使用する場合のモニタ用観測光の透過とを両立させるためには、基板ホルダの基板保持テーブル部分にモニタ用観測光が透過できる光透過孔部分を設け、基板保持テーブル部分の下部に設けられた光の受光器にモニタ用観測光が入射されるようにする必要がある。光透過孔部分を設けた結果、光透過孔部分において、RFバイアスによって誘起される放電の分布が乱れるような場合には、導電膜がコーティングされた基板保持テーブル部分と基板との間に透明導電膜が施された透明基板(孔があいていない基板)を介在させ、あたかも前記光透過孔部分が存在しないかのごとくすることが好ましい。
【0055】
また、図1では、光学定数の異なる2種以上の光学層を形成するためのカソードを2個設置した例について示しているが、上記(9)〜(11)のように同時スパッタを順次継続するには最低4個のカソードおよびターゲットが必要となる。これらカソードおよびターゲットは、スパッタ槽1の上部から見て基板8を中心に回転軸の周りに対称的に配置されていれば、その上限個数は特に限定されない。
【0056】
前記の基板にRFバイアスを印加して光学層の緻密性を向上させる代わりに、カソード2のいずれかをイオンソースで置き換えて、または別途イオンソース14を装着して、光学層形成のためのスパッタ中に同時に、例えばArイオンや酸素イオンビームを基板上に形成中の光学層表面に照射できる。どちらの方法でも光学層の緻密性、ひいては耐環境信頼性の向上が実現できる。イオンソースは、例えばマグネトロン型イオンソースやRFイオンソースが使用できる。
【0057】
スパッタのためのマグネトロン放電が低圧で行われるので、前記Arイオンまたは酸素イオンなどのイオンビームは途中でほとんど散乱されることなく、効果的に基板上に形成中の光学薄膜を照射しエネルギーを供給して層表面での反応を促進して緻密化をもたらすので、RFバイアス法よりも効果的である。
【0058】
また、イオンソースに付属する電気的中和用電子銃5によってスパッタ槽内壁にスパッタされた誘電体(絶縁物)膜表面の電荷蓄積に起因して発生する異常放電を防止できる。電気的中和用電子銃による電荷中和により、イオンソースを使用しない場合でも、RFバイアス法を使用しない場合でも、また、いずれも使用しない場合でも、異常放電を効果的に抑制できる。
【0059】
上述したような装置を用いて、SiO2層とTa25層とが交互に多数層積層された光学多層膜干渉フィルタ、またはSiO2層とNb25層(またはTiO2層)とが交互に多数層積層された光学多層膜干渉フィルタを、高速にしかも高精度に膜厚を制御して作製できる。
【0060】
スパッタを行うスパッタ槽1を1.0×10−4Pa以下の残留ガス圧の充分低い値まで排気して、残留水分が層内に取り込まれることに起因する光学多層薄膜の信頼性の低下を防止する。特に、低圧下でスパッタする本発明の場合では、光学薄膜を形成するに先立って、スパッタ槽内の圧力を1.0×10−4Pa以下の充分低い圧力まで排気することがより好ましい。ガス導入系7から所望のガスをスパッタ槽1に導入した後、0.6×10 −1 〜1.1×10−1aの放電圧力でスパッタされたターゲット材粒子は、基板8に飛来し光学層を形成する。このとき、複数のターゲットを同時に放電させることにより、層形成速度を2倍以上に促進できる。
また、必要に応じて前記イオンソース14からのArイオン照射や、RF電力導入系12から導入された負のバイアス電圧により加速されるプラズマ中のイオンのエネルギーを受け取って、基板8上に光学定数の異なる2種以上の誘電体材料からなる光学層を交互に多数層形成できる。例えば、WDMやDWDMといった高密度伝送に用いられる光学多層膜の干渉効果を利用する狭帯域フィルタを形成する場合には、前記方法により基板8上に緻密なSiOとTaの多層薄膜を交互に形成できる。
【0061】
正確に所望の光学層厚になるように、前記モニタ光の受光器10からの信号によって層形成プロセスを制御する際に、所望の層厚に達する直前に、例えば一つのターゲットのみ放電を継続し他は停止することにより、全体の層形成速度を減速させて、終点時間を正確に測定しながら制御でき、その結果非常に精度良く所望の層厚の光学層を有する光学薄膜が得られる。多層の光学層を得る場合には、その後に再び別の所望のターゲットを放電させ基板8に所望の光学層を形成せしめ前記同様の操作を繰り返せばよい。
【0062】
複数種のターゲットを同時に低圧放電させる場合には、これら複数種のターゲットへ供給する放電電力の配分比を変えることなく終点直前に電力を減少させて、層の形成速度を遅くした後に所望の層厚が得られた時点で放電を速やかに停止させるか、または基板8の直前に置かれたシャッタ13を閉じる。
【0063】
正確な層厚の制御とともに、基板の広い領域にわたって均一な層厚および光学特性分布をもつような多層の光学薄膜を作製することが、生産性の上で非常に重要である。このために、通常基板ホルダ9上の基板8は回転機構11によりスパッタ中に100〜1000rpm程度の回転数で回転させることで、基板8上の層厚分布の均一化を図れる。
【0064】
さらに、狭帯域化が要請される光学多層薄膜フィルタの作製では、モニタ用観測光により層厚の検出を実施している近傍の領域しか所望の光学特性を満足させることが難しいため、1個の基板に複数の光学モニタ系を取り付け、各々のモニタが検出している領域のみを、分割されたシャッタ13により、独立に開閉して広い範囲での層厚の均一性を確保できる。
【0065】
【実施例】
(例1)
図1に示されたマグネトロンスパッタ装置の基板ホルダに厚さ7mmの透明ガラス基板(直径200mmの円形基板)1枚を装着する。第1のカソードにはSiのターゲットを、第2のカソードにはTaのターゲットを装着する。光学薄膜を作製するに先立ってスパッタ槽内を0.8×10-4Paまで真空排気し、次いで同スパッタ槽内に不活性ガスとしてのArガスおよび反応性ガスとしてのO2ガスを導入し、1.1×10-1Paの放電圧力の条件下においてSiのターゲットとTaのターゲットとを順次切り替えてスパッタさせ、反応性マグネトロンスパッタ法により前記基板面上に層厚270nmのSiO2光学層と層厚190nmのTa25光学層とを各層順次交互に積層させ、合計積層数が127層のWDM用狭帯域フィルタを製造する。
【0066】
光学層形成の際、Arガスはガス導入口71からスパッタ槽へ導入させ、O2ガスとArガスの混合ガス(Arガスの割合は20体積%)はガス導入口72からスパッタ槽内へ基板8の直近に向かうように導入させる。合計のガス流量は約10sccmである。
【0067】
なお、ガス導入口71と72の夫々からスパッタ槽内に導入されるガスの体積割合は、SiO2層の形成時では約2:1とし、またTa25層の形成時では約1:2とする。各光学層の形成時に酸素イオンビームの照射を行う場合は、基板直近に供給する混合ガスをイオンソースに供給して基板に約200eVの酸素イオンビームを照射させるとともに、電気的中和用電子銃を作動させ、異常放電を抑制させる。また、光学層の形成時は、基板ホルダを約500rpmの回転数で回転させる。
【0068】
また、各光学層については、基板上の光学層面にスパッタ槽外部におかれた光源からレンズ系を通してモニタ用観測光としてレーザ光を、高速で回転する基板表面に照射し、該レーザ光の基板および形成された光学層への透過光量を受光器により受光して、形成層厚の変化による光量変化から各層の層厚を求める光学モニタによりスパッタの終点を検出して、正確に所望の層厚に制御して作製される。
【0069】
本例で成膜される膜は、消衰係数が小さく、屈折率はバルクの値に近い。これら消衰係数や屈折率の値から不純物成分が少なく、緻密性に優れた膜が成膜されることが判る。
以上のようにして、水分等の不純物成分が少なく、緻密性に優れ、耐久性の改善されたSiO2層とTa25層とが交互に積層された合計積層数、120層のWDM用狭帯域フィルタを生産性よく安定して得られる。
【0070】
(例2)
図1に示されたマグネトロンスパッタ装置の基板ホルダに結晶化ガラスからなる基板(オハラ社製「WMS13」、直径265mm、厚さ10mm)をセットし、第1のカソードにはSiターゲット(直径7インチ)を、第2のカソードにはTaターゲット(直径7インチ)を装着する。なお、第1および第2のカソードはともに、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になるようにサマリウム−コバルト磁石が偏心回転する構成とされたカソードである。
【0071】
次いで、スパッタ槽内を1×10−4Pa以下まで排気した後、Arガスを10sccmの流量で供給し、15秒間シャッターを閉じて予備放電を行い、Taターゲット表面の清浄化を行う。
【0072】
続いて、Arガス7sccm、Oガス29sccmを導入し、Taターゲットを取り付けた第2のカソードに3kW(12W/cm)の直流電力を供給し放電させ、層厚が185nmになるまでTa層の成膜を行う。このときのスパッタ槽内の圧力は0.6×10−1Pa、放電電圧は540Vである。
【0073】
続いて、Arガス10sccmの流量で供給し、15秒間シャッターを閉じて予備放電を行い、Siターゲット表面の清浄化を行う。
続いて、Arガス10sccm、Oガス28sccmを導入し、Taターゲットを取り付けた第2のカソードに3kW(12W/cm)の直流電力を供給し放電させ、層厚が265nmになるまでSiO層の成膜を行う。このときのスパッタ槽内の圧力は0.8×10−1Pa、放電電圧は640Vである。
【0074】
以下同様な手順で、層厚185nmのTa層と層厚265nmのSiO層とを順次交互に積層させ、ガラス基板上に、(HL)7−H−8L−(HL)7−H−L−(HL)8−H−8L−(HL)8−H−L−(HL)8−H−8L−(HL)8−H−L−(HL)7−H−8L−(HL)7−H、の構成(合計層数135層)のWDM用狭帯域フィルタ(100GHz仕様)を製造する。ここで、Hは層厚185nmのTa層、Lは層厚265nmのSiO層を表し、(HL)7はHとLが交互に7回積層されること、また、8LはL層の厚さが単独で8倍厚く(すなわち2120nm)形成されること、を表す。
【0075】
なお、各光学層の成膜時は、基板ホルダを約500rpmの回転数で回転させる。
また、各光学層については、基板上の光学層面にスパッタ槽外部におかれた光源からレンズ系を通してモニタ用観測光としてレーザ光を、高速で回転する基板表面に照射し、該レーザ光の基板および形成された光学層への透過光量を受光器により受光して、形成層厚の変化による光量変化から各層の層厚を求める光学モニタによりスパッタの終点を検出して、正確に所望の層厚に制御して作製する。
【0076】
本例では、大量の酸素が導入され、高い放電電力が投入されているにもかかわらず、135層を成膜する間、放電状態は安定している。本例のようにターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になるようなカソードを用いることにより容易に異常放電を抑制することができる。
【0077】
また、Ta膜の成膜速度は1nm/秒以上であり、波長1550nmにおける屈折率は2.09、消衰係数は0.0001未満(光吸収がきわめて小さい膜)である。また、SiO膜の成膜速度は1nm/秒以上であり、波長1550nmにおける屈折率は1.46、消衰係数は0.0001未満(光吸収がきわめて小さい膜)である。これら消衰係数や屈折率の値から不純物成分が少なく、緻密性に優れた膜が成膜されることが判る。
本例によれば、水分等の不純物成分が少なく、緻密性に優れ、耐久性の改善された135層のWDM用狭帯域フィルタを生産性よく安定して得ることができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、不純物成分の混入が少なく、更には緻密性に優れ、屈折率などの光学的特性の経時変化が少なく、耐久性が改善され、非常に高精度の膜厚をもって、所望の光学特性が要求される多層系の光学薄膜、特に誘電体の多層膜からなる光学薄膜が得られる。また、このような多層系の光学薄膜に対して、量産性に優れしかも安定で制御性の優れた薄膜作製プロセスを行える。
【0079】
特に、誘電体からなるSiO2層とTa25層とが交互に多数積層された合計積層数、約90層から150層にも及ぶ高品質で耐久性の高いWDM用狭帯域フィルタを生産性良く、安定して製造するのに最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるマグネトロンスパッタ装置の概念図。
【符号の説明】
1:スパッタ槽
2:カソード
3:光学モニタの光源
4:ターゲット
5:電気的中和用電子銃
6:真空ポンプ
7:ガス導入系
8:基板
9:基板ホルダ
10:光学モニタの受光器
11:回転機構
12:RF電力導入系
13:シャッタ
61:排気口
71:不活性ガスのガス導入口
72:反応性ガスのガス導入口

Claims (12)

  1. スパッタ槽内にカソードと基板とターゲットとが配置されたマグネトロンスパッタ装置により前記基板面上に光学定数の異なる2種以上の光学層を順次交互に繰返し形成してなる多層の光学層を有する光学薄膜を形成する光学薄膜の作製方法であって、光学薄膜を形成するに先立ってスパッタ槽内を1.0×10−4Pa以下に真空排気し、次いで同スパッタ槽内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、マグネトロンスパッタ法により0.6×10 −1 〜1.1×10−1Paの放電圧力の条件下において、2種以上のターゲットを用いて前記基板面上に順次光学定数の異なる2種以上の光学層を形成させることを特徴とする光学薄膜の作製方法。
  2. 光学定数の異なる2種以上の光学層が夫々誘電体材料からなる請求項1に記載の光学薄膜の作製方法。
  3. 光学定数の異なる2種以上の光学層の消衰係数が夫々0.0001未満である請求項1または2のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
  4. 光学定数の異なる2種以上の光学層の成膜速度が夫々1nm/秒以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
  5. 光学薄膜が透過波長または反射波長の選択性を有する光学多層薄膜干渉フィルタである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
  6. 前記2種以上のターゲットが基板の位置から略等距離に設置された夫々のカソード上に装着されたマグネトロンスパッタ装置により前記基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する際、各光学層ごとにスパッタさせるターゲットを切り替えて所望の光学定数を有する光学層を順次、多層に形成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
  7. 前記2種以上のターゲットが基板の位置から略等距離に設置された夫々のカソード上に装着されたマグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタ槽内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、0.6×10 −1 〜1.1×10−1Paの放電圧力の条件下において反応性マグネトロンスパッタ法により前記基板面上に順次光学層を形成させる際、スパッタ用の不活性ガスとは別に、基板直近から反応性ガスを流量を調整しながら導入する請求項6に記載の光学薄膜の作製方法。
  8. 基板に近接しかつターゲット位置とは基板に対して反対側の位置に設置された排気口からスパッタ槽内のガスを排気することにより基板直近で導入された反応性ガスのターゲット近傍での分圧を最小に抑えて光学層の成膜速度の低下を最小限に抑える請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
  9. 光学薄膜の少なくとも1層の光学層を形成する際、当該光学層を形成するためのターゲットが複数個設置されたマグネトロンスパッタ装置を用い、これら複数個のターゲットを同時にスパッタして前記光学層を得る請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
  10. 同時スパッタする複数個のターゲットが同一の材料からなり、かつ、導入する反応ガスが同一種類からなる請求項9に記載の光学薄膜の作製方法。
  11. 同時スパッタする複数個のターゲットが異なる材料からなる請求項9に記載の光学薄膜の作製方法。
  12. マグネトロンスパッタ法により基板面上に順次光学層を形成させる際、イオンビームを基板の光学層の形成面に照射する請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学薄膜の作製方法。
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