JP4613015B2 - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、金属化合物膜の成膜方法及びこれを用いる成膜装置に関し、特に、光学薄膜を構成する酸化膜や窒化膜などの金属化合物膜の成膜装置及び成膜方法に関する。なお、この金属化合物膜の被化合物原料金属は、使用可能な金属元素を主成分とする合金組成を含む。
例えば、反射防止膜や熱線防止膜、各種光学フィルタなどの光学素子分野において、スパッタ法を用いて金属化合物膜(酸化膜、窒化膜、フッ化膜等)から成る光学薄膜を高速で精度良く形成することが要求されている。
しかしながら、スパッタ法により成膜を行う場合、金属あるいは合金膜形成の場合と異なり、例えば酸化物などの金属化合物から成るターゲットを用いると成膜速度が非常に遅くなる。このため、金属ターゲットを用い、スパッタ雰囲気中に反応ガス(例えば酸素、窒素、フッ素ガスなど)を導入する反応性スパッタ法により金属化合物膜の成膜を行う場合がある。ところが、反応性に富む反応ガスを不足なく供給しようとすると、ターゲット表面で化合物が形成され、成膜速度が著しく低下することがある。
そこで、例えば特許文献1に示すように、ターゲットと反応ガスとの反応を抑えることに留意して金属化合物の成膜を行う方法がある。この方法は、最初に、スパッタ法により金属超薄膜を基板上に堆積し、次に、反応ガス(酸素、オゾン等の酸化ガス、窒素、アンモニア等の窒化ガス、フッ素ガス等のフッ化ガスなど)を起源とするプラズマや活性種をこの超薄膜に照射する。即ち、基板上に堆積した金属超薄膜から出発し、金属半化合物薄膜の状態を経由して最終的に金属化合物膜に変換する。そして、この際に高い成膜速度が維持される。
この際の成膜速度に関して、図1を用いて説明することができる。即ち、スパッタガスを所定流量に固定した状態で酸素ガス流量を変更すると、酸素ガス流量の増減に応じて成膜速度が変化する。(ただし、スパッタガスとしてアルゴンを100sccm、成膜圧力を0.3Paとした。)図1において、スパッタ成膜速度が高水準で推移する領域は、成膜速度の大きな高速成膜領域(高速金属種成膜モード:Metal mode)に対応し、スパッタ成膜速度が低水準で推移する領域は、成膜速度の小さな低速成膜領域(低速酸化物種成膜モード:Oxide mode)に対応する。さらに、高速成膜領域から低速成膜領域への過渡期部分を遷移領域として、スパッタ成膜速度をこれら高中低速3モードに分類することができる。
上記した高速成膜領域では酸素ガス量が小さく、基板に付着する堆積種が専ら金属種により行われ、金属種特有の高い成膜速度が維持される。一方、低速成膜領域においては、酸素ガス流量の増大に伴って、酸素ガスを含んだ反応雰囲気がターゲット側に持ち込まれて生じるターゲットの変質などにより成膜速度の低下を招く。
一方、高速成膜領域において専ら金属種から成る堆積種は化学的に活性であるため、基板上へ堆積した膜厚成長後も反応性に富む。このため、ある程度の膜厚に形成された後に酸化反応を行うことにより、堆積膜がその全体に亘り膜厚方向に酸化される。この酸化反応は、基板上の金属超薄膜の表面に付着した反応種を原料として内部に進行する。
このため、金属酸化物膜の成膜は、金属超薄膜の堆積と、酸化物生成による膜厚成長とに依存する。そして、高速の金属種成膜モードを維持する限り、上記した酸化物種成膜モードに比べ格段に優位な成膜速度が得られる。
このような超薄膜堆積と化合物膜変換との工程を複数回繰り返すことにより、結果物として金属酸化物膜を得ることができる。そして、この酸化膜生成の機構は、窒化膜やフッ化膜など他の金属化合物膜においても同様であり、金属種成膜モードを維持することにより、高い成膜速度を得ることができる。
さらに、上記方法の応用例として、反応ガス源のプラズマ発生装置の替りに、反応種イオンを照射するイオンビームを用いて基板上の金属薄膜を化合物膜に変換する別方式のものもある。(例えば、特許文献2及び3参照。)
特開平8-176821号公報(第3頁、図1) 特開平3-229870号公報(第7−9頁、第6-7図) 特開昭62-284076号公報(第3頁、第3図)
ところで、例えば、金属酸化物膜の有力な用途である光学薄膜は、例えば高屈折率層と低屈折率層との交互多層膜を百層以上に積層して構成されることもあり、全工程に亘る成膜速度向上と各構成層での膜質安定化の要望が強い。
しかしながら、成膜速度の向上のためカソードへの印加電圧をさらに増大すると、金属薄膜堆積が支配的になり、その後の金属化合物膜への変換が不十分になるおそれがある。そして、先行して形成された金属薄膜の膜厚が増大するため、反応種による化合物変換が基板側まで十分に浸透しない可能性が生じる。
これは、従来例の誘導結合型プラズマ発生装置(特許文献1)の場合に、プラズマガスが拡散すること、また、イオンビーム照射(特許文献2及び3)の場合に、イオン照射部分が局所的に留まるという面積上の制約があることに対して留意が必要なためである。
即ち、プラズマ発生装置やイオンビームなどの反応源からの反応ガスの供給が不足する場合は、得られる金属化合物膜の膜構造では、反応種との反応に至らないままの未反応金属種が基板側に偏在する傾向となり、均一な膜質構造が得られない。この結果、所期の金属化合物膜が酸化膜である場合、透明の金属酸化膜を得ようとしても、金属色が支配的な非透明膜となる場合が多い。
あるいは、反応ガスの供給が過剰になると、図1に示すように金属種成膜モードの高速成膜領域から逸脱し、遷移領域若しくは酸化物種成膜モードに移行して、成膜速度への急激な低下を招くおそれがある。このような事態は、上記したプラズマガスを用いる場合に特に留意する必要がある。この場合も、高速成膜領域で所望の透明膜を得ることは難しい。
このように従来例の方法では、酸化や窒化などの反応収支の観点から化合能力の増減が容易でなく、したがって、上記した金属薄膜の堆積量増加に対する十分な対応が困難である。
本発明は、上記問題点に鑑み、金属化合物膜の成膜に際し、基板上に堆積した金属薄膜に対して、これへの化合物膜変換を確実に行い得る成膜方法及び成膜装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の成膜方法は、金属ターゲットを備えたスパッタ成膜源を作動して基板上に金属薄膜を堆積する薄膜堆積工程と、反応ガスを供給する反応ガス源を作動して金属薄膜を金属化合物に変換する化合物膜変換工程とを交互に繰り返して金属化合物膜の成膜を行う際に、前記薄膜堆積工程と前記化合物膜変換工程の両工程中に継続して、基板に対して高周波バイアス電圧を印加する。
これによれば、金属ターゲットに対してカソード電圧を印加することに加え、基板に対して高周波電圧を印加して基板バイアス電圧を生じさせる。この際に生じる高周波の放電状態では、基板近傍の電子とスパッタガス起源の正イオンとのうち、質量の小さい電子が基板や基板上の絶縁体膜(金属の酸化膜や窒化膜)に誘引され、この結果、基板あるいは基板上の絶縁体膜表面が負に帯電して自己バイアス電位が生じる。
したがって、反応ガス源を作動して行われる化合物膜変換工程で、基板バイアス電圧を印加すると、自己バイアスによる負電位が基板に生じた状態となり、正イオンが基板方向に誘引される。即ち、反応ガス源の反応ガスから生じるプラズマやラジカルなどの反応種を中間体として生成された正イオンが基板上の金属薄膜に誘導され付着する。したがって、金属化合物膜生成に必要な反応種ガスの拡散による損失を抑制することができる。
さらに、この際、反応ガス由来の正電荷のイオンは、基板表面の負電位に引き寄せられ、基板上の金属薄膜に接触し付着する。このとき、このエネルギーは、化合物膜変換に必要な反応エネルギーの一部として消費可能であるので、金属化合物生成の反応促進の効果が得られる。
このようにして、金属化合物膜の成膜に際し、先行して堆積された金属薄膜に対して、反応ガスによる化合物膜変換を確実に行うことができる。
この場合、基板への高周波バイアス電圧から生じる自己バイアス電位を、−5V〜−50Vの範囲とすることが望ましい。自己バイアスによる負電位が−50Vを越える帯電状態では、基板上で逆スパッタリングが生じ、基板上に形成される金属化合物膜の表面粗さが劣化するおそれがある。一方、基板上での負電位が−5Vを下回る場合は、自己バイアス効果が僅少に留まり、上記した反応ガス起源の正イオンの誘引や、化合物膜変換への反応促進効果が期待できない。
さらに、前記反応ガス源の作動の具体例として、反応ガス源からの反応ガスへのマイクロ波励起により得られるプラズマガスを用い、これにより化合物膜変換工程を行う方法がある。
ところで、上記した成膜方法を行うための成膜装置を、スパッタ成膜源を有するスパッタ成膜領域と反応ガス源を有する反応領域とを真空室内に備え、スパッタ成膜領域内と反応領域内とで基板位置を選択可能とする基板位置選択機構を搭載し、さらに、基板に対して高周波バイアス電力の供給電源を接続した装置構成とすることができる。
この構成を搭載した成膜装置を用い、これの基板位置選択機構により、基板位置をスパッタ成膜領域に選択したときに金属薄膜の堆積工程を行い、基板位置を反応領域に選択したときに薄膜に対する化合物膜変換工程を行うことができる。そして、前記薄膜堆積工程と前記化合物膜変換工程の両工程中に継続して、基板に対して電源より高周波バイアス電圧を印加した状態とすることで、上記した成膜方法により、反応領域の反応ガス源からの反応種を原料として、金属薄膜を金属化合物膜に変換する反応を確実に行うことができる。
さらに、高周波バイアス電圧を印加することで、イオンを積極的に引き込むことにより反応性を高めることができる。このため、従来法に比べ、一工程あたりの金属薄膜の堆積速度を増大しても、充分に反応させることができ、成膜速度の向上が可能となる。
また、上記した反応ガス源は、該ガス源から供給される反応ガスをマイクロ波励起によりプラズマ化するプラズマガス発生機構を備えた構成とすることにより、反応種として充分な量のイオンの供給を行うことができる。
そして、上記装置における基板位置選択機構は、スパッタ成膜領域と反応領域とに対面する円筒周面を備える回転ドラム上に基板を保持して構成されるカルーセル式のものでも良いし、スパッタ成膜領域と反応領域とに対面する円板上に基板を保持して構成される回転基板式のものでも良い。
また、金属化合物膜製品の代表例たる光学薄膜は、例えば高屈折率層と低屈折率層との交互多層膜から成ることが多く、これに対応して、光学薄膜用の成膜装置は、複数種類のスパッタ成膜源を搭載するものが主流である。このため、上記の成膜装置構成において、スパッタ成膜源として、金属ターゲットを備えるものを用い、その金属ターゲットの種類ごとに別体構成で設置した。即ち、このような装置構成により、交互多層膜の形成を容易に行うことができ、光学薄膜用途に対応し易くなる。
さらに、上記の金属ターゲットは、Si、Ti、Ta、Nb、Al、Mg、Sb、Zr、Zn、Sn、In及びCaのいずれか、若しくは、これら金属元素のいずれかを主成分とする合金を含有したものを用いることが可能である。
本発明の成膜方法及び成膜装置により、薄膜堆積工程と化合物膜変換工程の両工程中に継続して、基板に対して高周波電圧を印加して基板バイアス電圧を生じさせると、自己バイアスにより基板が負電位となる。このため、反応ガス中の反応種を含むイオンが基板方向に有効に誘引され、直前の薄膜堆積工程で形成された金属薄膜への付着が確実に行われ、反応ガスの拡散による損失を抑制できる。また、基板表面の負電位に引き寄せられた反応ガス中の正イオンが基板上の金属薄膜にクーロンエネルギーを保持して入射するので、これを化合物膜変換に必要な反応エネルギーの一部として利用でき、金属化合物生成のための反応が促進される。
また、本発明の成膜装置に搭載した基板位置選択機構により、基板位置をスパッタ成膜領域に選択したときに金属薄膜の堆積工程を行い、基板位置を反応領域に選択したときに薄膜に対する化合物膜変換工程を行うことができ、金属薄膜を金属化合物膜に変換する反応を確実に行うことができる。
さらに、イオンを積極的に引き込むことで反応性が高くなるため、金属薄膜の堆積速度を増大しても、反応させることが可能となり、成膜速度を向上することができる。
図2は、本発明のカルーセル式光学薄膜用成膜装置を示す概略図である。図2(a)を参照して、成膜装置を構成するチャンバ1内の略中央部分には、基板2を周面上に保持した状態で回動軸3回りに回転可能な回転ドラム4を備えた基板回転機構5が設置されている。そして、回転ドラム4を介した対称位置に、それぞれ二式のSiターゲット6とTiターゲット7とが、ともに回転ドラム4上に保持されて回転移動する基板2に対向可能な状態で配置される。
Siターゲット6及びTiターゲット7は、それぞれスパッタカソード8、9と一体的に構成され、各カソード8、9は図外の外部交流電源に接続される。また、Siターゲット6及びTiターゲット7の近傍では、回転ドラム4と対向する空間を隔離するように、それぞれ防着板10、11により空間的に分割し、それぞれスパッタ成膜領域12、13を構成する。また、スパッタ成膜領域12、13のそれぞれの内部に達するように、スパッタガス導入口12a、13aが貫入されており、それぞれの導入口に連なる導入管16、17には、連動して流量調整が可能な図外のコンダクタンスバルブが設けられる。
また、図2(a)における基板2は、酸化領域14内に位置する。酸化領域14には、磁気回路15が設けられる。図2(b)に示すように、この磁気回路15は、マイクロ波放電用の静磁場発生を目的とするものであり、導波管16から導入窓17を介して伝播されたマイクロ波が、マイクロ波アンテナ機構18から発振される際に、静磁場環境を整備してプラズマ発生を促進する。また、図2(b)を参照して、酸化領域14には、酸素導入口19が貫入されており、流量調整可能なコンダクタンスバルブ(図示せず)が設けられる。
さらに、基板2に連なる回転ドラム4の回転機構5には、回動軸3に対して、高周波電源20に連なるインピーダンス調整用マッチングボックス21と接地電位22とを切替可能なスイッチ23が接続される。スイッチ23を高周波電源20側に切り替えると、回動軸3を介して基板2に対して高周波の基板バイアス電圧が印加される。
そして、図2(a)に略平面図として示す装置構成を有する成膜装置で、図外の真空排気系に連なる真空排気口24により排気作動を行い、所定の圧力条件(例えば10-5Pa以下程度)に設定されたチャンバ1内で回転ドラム4を回転させ、スパッタガス導入口12aから所定流量(例えば30sccm程度)のアルゴンガスを導入し、圧力状態を0.3Pa程度の状態とする。
そして、装置内に設置したSi及びTiの両ターゲット6、7のうち、一方のSiターゲット6の電源のみを印加し、Tiターゲット7の電源を切断したままにする。また、スイッチ23により回動軸3を介して基板2に高周波電源20からの高周波電力を供給する。
このとき、基板2には、基板バイアス電圧が印加されている。また、この基板バイアス電圧から生じる自己バイアス電位は、−5〜−50Vの範囲内であることが望ましい。
この状態で、基板2を保持する基板ホルダを兼ねる回転ドラム4の回動軸3を回転させ、基板2をスパッタ成膜領域12に移動する。さらに、スパッタガス導入口12aからのアルゴンガスにより、Siターゲット6のスパッタリングを行う。これにより、基板2上にSiから成る金属薄膜が形成される。そして、ドラム4を回転させて、基板2を反応領域14の位置に移動する。このとき、酸素導入口19から所定流量(例えば100sccm程度以下)の酸素ガスを導入する。そして、磁気回路15により磁場発生を行うと共にマイクロ波アンテナ機構18からマイクロ波を発振し、酸素導入口19から導入される酸素ガスに照射して基板2近傍をプラズマ雰囲気とする。
そして、基板2上のSi薄膜近傍のプラズマガスに対して、マイクロ波に励起された反応種が、例えばO+の形で、自己バイアスによる負電位の基板2に誘導されて付着する際、一部はクーロンエネルギーを保持した状態で基板2上のSi薄膜に接触し付着する。そして、このエネルギーを、酸化膜変換に必要な反応エネルギーの一部として消費するので、SiO2膜生成の反応促進効果が得られる。
そして、基板2を再びスパッタ成膜領域12に移動し、Siから成る薄膜堆積工程を行い、さらに再び、基板2を酸化領域12に移動し、マイクロ波により励起されたプラズマ雰囲気により、Si薄膜をSiO2膜に変換する酸化膜変換工程を行う。そして、この薄膜堆積工程と酸化膜変換工程とを交互に複数回繰り返すことで、所望の膜厚のSiO2膜を得ることができる。
次に、他方のTiターゲット7の電源のみを印加し、Siターゲット6の電源を切断したままにする。また、スイッチ23により回動軸3を介して基板2に高周波電源20からの高周波電力を供給する。
このとき、基板2には、基板バイアス電圧が印加されている。また、この基板バイアス電圧から生じる自己バイアス電位は、−5〜−50Vの範囲内であることが望ましい。
この状態で、基板2を保持する基板ホルダを兼ねる回転ドラム4の回動軸3を回転させ、基板2をスパッタ成膜領域13に移動する。さらに、スパッタガス導入口13aからのアルゴンガスにより、Tiターゲット7のスパッタリングを行う。これにより、基板2上にTiから成る金属薄膜が形成される。そして、ドラム4を回転させて、基板2を反応領域14の位置に移動する。このとき、酸素導入口19から所定流量(例えば100sccm程度以下)の酸素ガスを導入する。そして、磁気回路15により磁場発生を行うと共にマイクロ波アンテナ機構18からマイクロ波を発振し、酸素導入口19から導入される酸素ガスに照射して基板2近傍をプラズマ雰囲気とする。
そして、基板2上のTi薄膜近傍のプラズマガスに対して、マイクロ波に励起された反応種が、例えば、O+の形で、自己バイアスによる負電位の基板2に誘導されて付着する際、一部はクーロンエネルギーを保持した状態で基板2上のTi薄膜に接触し付着する。そして、このエネルギーを、酸化膜変換に必要な反応エネルギーの一部として消費するので、TiO2膜生成の反応促進効果が得られる。
そして、基板2を再びスパッタ成膜領域13に移動し、Tiから成る薄膜堆積工程を行い、さらに再び、基板2を酸化領域12に移動し、マイクロ波により励起されたプラズマ雰囲気により、Ti薄膜をTiO2膜に変換する酸化膜変換工程を行う。そして、この薄膜堆積工程と酸化膜変換工程とを交互に複数回繰り返すことで、所望の膜厚のTiO2膜を得ることができる。
そして、Ti及びSiの両ターゲット6、7のいずれか一方を用いる成膜工程を交互に繰り返すことにより、交互多層膜の成膜を行うことができる。そして、Siターゲット6及びTiターゲット7による成膜工程を交互に繰り返すことにより、SiO2膜及びTiO2膜の交互多層膜が形成される。
なお、本形態において、SiO2膜及びTiO2膜のいずれの場合も、基板2に対して基板バイアス電圧を薄膜堆積工程及び酸化膜変換工程の両工程中に継続して印加する。
また、本形態においてSiO2膜及びTiO2膜により交互多層膜を形成するものとしたが、Ta25膜、Nb25膜、Al23膜、MgO膜、Sb24膜、ZrO2膜、ZnO2膜、SnO2膜、ln23膜などを形成するものとしても良いことは言うまでもない。この場合は、金属種類に応じてターゲット材質にTa、Nb、Al、Mg、Sb、Zr、Zn、Sn、In及びCaなどの金属元素や、これら金属元素を主成分として含有する合金組成を用いることになる。
さらに、本形態においては、形成される金属酸化物膜により光学薄膜を形成するものとしたが、本発明はこれに限定されるものでなく、酸化膜や窒化膜、フッ化膜などの誘電体多層膜などにも適用可能である。この場合は、所期の化合物膜に応じて反応ガスを選択する必要がある。即ち、反応ガスとして酸素ガスに替り窒素ガスあるいはアンモニアガスを使用し、Siターゲット、Tiターゲット、Taターゲット及びAlターゲットを用いて上記成膜方法を行うことでSiNX膜、TiNX膜、TaNX膜、AlN膜の形成が可能となる。
あるいは、反応ガスとして酸素ガスに替りフッ素ガスを使用し、Mgターゲット、Caターゲットを用いて上記成膜方法を行うことでMgF2膜、CaF2膜の形成が可能となる。
また、本形態において、ドラム4上に基板2を設置して回転するカルーセル式のものを採用しているが、円筒ドラム4の替りに回転円板上に基板2を保持する回転基板式のものを用いても良い。
最初に、図2に示す成膜装置において、一対の二式のSiターゲット6及びTiターゲット7を搭載したチャンバ1に対し、図外の排気系に連なる真空排気口24から排気を行い、チャンバ内部を1×10-5Paに到達させた。この状態で、スパッタガス導入口12aから流量30sccmのアルゴンガスを導入して0.3Paとした。
さらに、ガラス基板2を載置した回転ドラム4を200rpmで回転開始した。さらに、マイクロ波導入窓14を介して1kW、2.45GHzのマイクロ波を導入すると共に、図外のコンダクタンスバルブの開度を調整して酸素導入口19より100sccmの酸素ガスをチャンバ1内部に導入した。
そして、Tiターゲット7の電源を切断したままで、二式のSiターゲット6に対して外部交流電源により60kHz、5kWの交流電力を投入した。さらに、スイッチ23の切替により回動軸3を介して基板2に対して高周波電源20から13.56MHz、600Wの高周波電力を供給する。このとき、基板2には、−30Vの自己バイアス電位が生じた。
この状態で、成膜を1時間持続して基板2上ににSiO2膜の成膜を行った。得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として5Å/secが得られた。また、このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として5×10-5が得られ、透明性が良好であることが示された。なお、得られたSiO2膜の表面粗さに関し、中心線平均粗さ(Ra)表示にて、Ra=0.2nmの値が得られ、平滑な表面性が確認された。
[比較例1]
スイッチ23の切替により、基板2を接地電位に設定し、高周波電源20からの基板バイアス電力投入を行わず、それ以外は[実施例1]と同様にして基板2上にSiO2膜の成膜を行った。得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として5Å/secが得られた。また、このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として6×10-3が得られ、透明性に劣ることが示された。
[比較例2]
導入するマイクロ波のエネルギーを2kWに増加した以外は、[比較例1]と同様にして基板2上にSiO2膜の成膜を行った。得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として5Å/secが得られた。また、このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として6×10-3が得られ、[比較例1]と同様に透明性に劣ることが示された。
[比較例3]
スイッチ23の切替により、基板2を接地電位に設定し、高周波電源20からの基板バイアス電力投入を行わず、また、Siターゲット6に対して投入する交流電力を2kWに減少した以外は[実施例1]と同様にして、基板2上にSiO2膜の成膜を行った。このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として6×10-5が得られ、透明性が良好であることが示された。しかし、得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として2Å/secが得られ、成膜速度が低下することが示された。
導入するマイクロ波のエネルギーを1.5kWに増加し、基板2に対して高周波電源20から投入する高周波電力を1000Wに増加した。このとき基板2には、−50Vの自己バイアス電位が生じた。さらに、Siターゲット6に対して投入する交流電力を8kWに増加した以外は[実施例1]と同様にして、基板2上にSiO2膜の成膜を行った。得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として8Å/secが得られた。また、このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として4×10-5が得られ、透明性が良好であることが示された。なお、得られたSiO2膜の表面粗さに関し、中心線平均粗さ(Ra)表示にて、Ra=0.3nmの値が得られ、平滑な表面性が確認された。
[比較例4]
導入するマイクロ波のエネルギーを1.5kWに増加し、Siターゲット6に対して投入する交流電力を8kWに増加し、さらに、スイッチ23の切替により、基板2を接地電位に設定した以外は[実施例1]と同様にして、基板2上にSiO2膜の成膜を行った。得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として8Å/secが得られた。また、このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として7×10-2が得られ、透明性に劣ることが示された。
[比較例5]
導入するマイクロ波のエネルギーを1.5kWに増加し、基板2に対して高周波電源20から投入する高周波電力を2000Wに増加した。このとき基板2には、−60Vの自己バイアス電位が生じた。さらに、Siターゲット6に対して投入する交流電力を8kWに増加した以外は[実施例1]と同様にして、基板2上にSiO2膜の成膜を行った。得られたSiO2膜の膜厚測定により、成膜速度として7.8Å/secが得られた。また、このSiO2膜の光学特性を測定した結果、消衰係数として8×10-4が得られ、透明性が低下したことが示された。
なお、得られたSiO2膜の表面粗さに関し、中心線平均粗さ(Ra)表示にて、Ra=0.8nmの値が得られ、[実施例1]及び[実施例2]の場合と比較して中心線平均粗さ表示値が3倍程度になり、平坦性が損なわれていることが示された。これは、基板バイアス電圧の印加に伴う自己バイアス電位が高いポテンシャル値(−60V)を示すことから、誘引するイオンの数が増大し、膜表面がエッチングされたためと考えられる。そして、消衰係数が劣化したのもこれが一因であると推定される。
本発明は、成膜速度の高速化を必要とする光学薄膜分野に重要である。光学薄膜製品は、多重構成層から成る構造であることが多く、特に高速化及び効率化が要望されるからである。
反応ガスとして酸素ガスを用いた場合の成膜速度特性を示すグラフ図 (a)本発明の成膜装置の概略平面図 (b)(a)の概略側面図
符号の説明
1 チャンバ(真空室)
2 基板
4 回転ドラム
5 基板回転機構(基板位置選択機構)
6 Siターゲット
7 Tiターゲット
12 13 スパッタ成膜領域
14 酸化領域(反応領域)
17 マイクロ波導入窓(プラズマガス発生機構)
18 マイクロ波アンテナ機構(プラズマガス発生機構)
19 酸素導入口(反応ガス源)
20 高周波電源


Claims (8)

  1. 金属ターゲットを備えたスパッタ成膜源の作動により基板上に金属薄膜を堆積する薄膜堆積工程と、反応ガスを供給する反応ガス源の作動により該薄膜を金属化合物に変換する化合物膜変換工程とを交互に繰り返して金属化合物膜の成膜を行う方法であって、前記基板を回転機構に保持し、前記回転機構を回転させて前記基板を移動し、前記薄膜堆積工程と前記化合物膜変換工程を繰り返し、前記薄膜堆積工程と前記化合物膜変換工程の両工程中に継続して、前記回転機構を介して、前記基板に対して高周波バイアス電圧を印加し、前記基板への高周波バイアス電圧から生じる自己バイアス電位を−5V〜−50Vの範囲とすることを特徴とする成膜方法。
  2. 前記反応ガス源の作動に際して、該ガス源からの反応ガスへのマイクロ波励起により得られるプラズマガスを用いて前記化合物膜変換工程を行うことを特徴とする請求項に記載の成膜方法。
  3. 基板を保持して回転する回転機構と、スパッタ成膜源を有するスパッタ成膜領域と反応ガス源を有する反応領域とを真空室内に備え、前記回転機構を回転させながら前記基板を前記スパッタ成膜領域と前記反応領域の間で移動させる成膜装置であって、前記回転機構を介して、前記基板に対して高周波バイアス電圧を印加するための高周波バイアス電力を供給するための供給電源を有し、前記基板への高周波バイアス電圧から生じる自己バイアス電位を−5V〜−50Vの範囲とするようにしたことを特徴とする成膜装置。
  4. 前記反応ガス源は、該ガス源から供給される反応ガスをマイクロ波励起によりプラズマ化するプラズマガス発生機構を備えることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
  5. 前記回転機構は、前記スパッタ成膜領域と前記反応領域とに対面する円筒周面を備える回転ドラムを有することを特徴とする請求項またはに記載の成膜装置。
  6. 前記回転機構は、前記スパッタ成膜領域と前記反応領域とに対面する円板を有することを特徴とする請求項またはに記載の成膜装置。
  7. 前記スパッタ成膜源は、金属ターゲットを備え、該金属ターゲットの種類ごとに別体構成で設置されることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の成膜装置。
  8. 前記金属ターゲットは、Si、Ti、Ta、Nb、Al、Mg、Sb、Zr、Zn、Sn、In及びCaのいずれか、若しくは、いずれかを主成分とする合金を含有することを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
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